説明

ドゴー病を処置するための方法および組成物

本開示は、とりわけ、ヒト補体阻害剤および/またはインターフェロンアルファ阻害剤を含有する組成物、ならびに被験体におけるドゴー病を処置または予防するための方法における上記組成物の使用に関する。一部の実施形態では、上記阻害剤が、ヒト補体成分C5タンパク質、またはC5aもしくはC5bなど、C5の生物学的活性断片に結合する抗体またはその抗原結合断片である。一部の実施形態では、上記阻害剤が、インターフェロンアルファまたはインターフェロンアルファ受容体に結合する抗体またはその抗原結合断片である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、2010年3月1日に出願された米国仮特許出願第61/309,393号に対する優先権および利益を主張する。米国仮特許出願第61/309,393号の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
配列表
本出願は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる配列表を含有する。配列表は、EFS−Webを介して提出されている。2011年2月25日において作成されたそのASCIIコピーは、ALXN153.txtと称し、サイズは61,625バイトである。
【0003】
本発明の分野は、医学、免疫学、分子生物学、およびタンパク質化学である。
【背景技術】
【0004】
ドゴー病(また、コールマイヤー病および悪性萎縮性丘疹症(MAP)としても公知である)とは、小血管から大血管までにおける血栓症を特徴とする、まれな血管症である(約200の症例が報告されている)。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい。一般には未知の病因によると考えられているが、ドゴー病は、ウイルス感染(例えば、B19パルボウイルス感染およびHIV感染)、エリテマトーデス(LE)、皮膚筋炎、および原発性抗リン脂質抗体症候群(APS)などの自己免疫疾患と関連している。例えば、非特許文献3、非特許文献2、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6および非特許文献7を参照されたい。ドゴー病の一部の形態は、家族性でありうる。例えば、非特許文献8および非特許文献9を参照されたい。ドゴー病は、どの年齢の患者においても生じうるが、約3:1の比で、男性が女性より選好的に罹患するようである。例えば、非特許文献8、非特許文献10および非特許文献11を参照されたい。
【0005】
ドゴー病は、良性の純粋な皮膚性形態として発症する場合もあり、侵襲性で多臓器性の全身性形態として発症する場合もあり、これらのうちの後者は一般に、診断後の1〜12年以内に致死性となる(非特許文献12)。皮膚性ドゴー病の表現型特徴は、皮膚における1つ以上の紅斑性で赤みがかった色の丘疹の出現であり、この丘疹が、白色の萎縮性中心を伴って一面瘢痕となる。
【0006】
ドゴー病の全身性形態を伴うほとんどすべての患者は死に至り、全身性罹患後の患者の平均余命は、約2〜3年間である。例えば、非特許文献12、前出を参照されたい。患者は通常、敗血症性の合併症を伴う場合も伴わない場合も腸穿孔により死亡するが、死亡は、あるいは、腸梗塞、心肺虚脱、ならびに/または神経学的梗塞および出血の結果としても生じうる(同上)。また、非特許文献13も参照されたい。
【0007】
ドゴー病の標準的な医学的処置は、定まっていない。ドゴー病の処置においては、多くの治療剤が、十分とはいえないそして/または一致しない奏効を示すにとどまっている。例えば、Scheinfeld (2007)、前出を参照されたい。例えば、一部のドゴー病患者は、静脈内免疫グロブリン療法の恩恵を受けているが、現在のところ、このような療法がどの患者に反応するのかを予測する方法は存在しないと考えられている(例えば、非特許文献14、非特許文献15および非特許文献16を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lester and Rapini (2009) Curr Opin astroenterol 25:66−73
【非特許文献2】Englert et al. (1984) Br Med J 289:576
【非特許文献3】Crowson et al. (2002) J Cutan Pathol 29:596−601
【非特許文献4】Heymann (2009) J Am Acad Dermatol 61:505−506
【非特許文献5】Durie et al. (1969) Arch Dermatol 100(5):575−581
【非特許文献6】Tsao et al. (1997) J Am Acad Dermatol 36:317−319
【非特許文献7】Requena et al. (1998) J Am Acad Dermatol 38:852−856
【非特許文献8】Katz et al. (1997) J Am Acad Dermatol 37:480−484
【非特許文献9】Penault et al. (2004) Ann Dermatol Venereol 131:989−993
【非特許文献10】Torrelo et al. (2002) Br J Dermatol 146:916−918
【非特許文献11】Wilson et al.(2007) Pediatr Dermatol 24(1):18−24
【非特許文献12】Scheinfeld (2007) Clin Exp Derm 32:483−487
【非特許文献13】High et al. (2004)J Am Acad Dermatol 50(6):895−899
【非特許文献14】Dyrsen et al. (2008)J Cutan Pathol 35(Suppl 1):20−25
【非特許文献15】Zhu et al. (2007) Br J Dermatol 157(1):206−207
【非特許文献16】De Breucker et al. (2008) Acta Clin Belg 63(2):99−102 (Abstract)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の観点から、ドゴー病患者を処置する新たなアプローチおよびより優れた方法に対する必要が存在することは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、少なくとも部分的に、補体阻害剤、すなわち、ヒト化抗C5抗体であるエクリズマブが、ドゴー病の全身性形態に罹患している患者の処置において高度に有効であったという、本発明者による発見に基づいている。したがって、本開示は、ドゴー病の予防および処置に有用な多様な組成物および方法を特徴とする。
【0011】
一態様では、本開示が、ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、この疾患を処置するのに十分な量で補体阻害剤を投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示が、ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、この患者における低下した補体活性レベルを維持し、これにより、この疾患を処置するのに十分な量および頻度で補体阻害剤を長期投与するステップを含む方法を特徴とする。
【0013】
別の態様では、本開示が、ドゴー病を処置するための方法であって、患者を、ドゴー病に罹患しているか、またはドゴー病に罹患する可能性があると同定するステップと;この患者に、この疾患を処置するのに十分な量で補体阻害剤を投与するステップとを含む方法を特徴とする。
【0014】
別の態様では、本開示が、ドゴー病を処置または予防するための方法(例えば、ドゴー病の発症を予防する方法、またはドゴー病の良性皮膚性形態が、この疾患の、より進行した、多臓器性および/または全身性形態へと進行することを予防する方法)を特徴とする。この方法は、それを必要とする患者に、この疾患を処置または予防するのに十分な量で補体阻害剤を投与するステップを包含する。一部の実施形態では、この阻害剤を、処置期間にわたり、患者の血液における低下した補体活性化レベルを維持するための量および頻度で長期投与することができる。
【0015】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、ドゴー病が、B19パルボウイルス感染またはヒト免疫不全ウイルス感染と関連する。一部の実施形態では、ドゴー病が、特発性である。
【0016】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、ドゴー病が、消化管、中枢神経系、および心血管系のうちの1つ以上に病理学的な影響を与える。一部の実施形態では、ドゴー病が、多臓器性、全身性ドゴー病である。一部の実施形態では、ドゴー病が、この疾患の皮膚性形態である。
【0017】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、ドゴー病が、抗炎症剤、抗凝固剤、抗血栓剤、および静脈内免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの療法に対して不応性である。抗炎症剤は、例えば、コルチコステロイド、フェニルブタゾン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチルからなる群から選択される抗炎症剤でありうる。抗凝固剤または抗血栓剤は、例えば、クロピドグレル、アスピリン、およびジピリダモールからなる群から選択される抗凝固剤または抗血栓剤でありうる。
【0018】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、補体阻害剤が、例えば、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、核酸、核酸類似体、および低分子からなる群から選択される補体阻害剤でありうる。一部の実施形態では、この補体阻害剤が、例えば、可溶性のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、およびK76 COOHからなる群から選択される補体阻害剤でありうる。
【0019】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、補体阻害剤が、ヒト補体成分タンパク質の発現を阻害する。一部の実施形態では、補体阻害剤が、補体成分C1s、補体成分C1r、C3コンベルターゼ、C5コンベルターゼ、またはC5b−9などであるがこれらに限定されない補体タンパク質の活性を阻害しうる。
【0020】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、補体阻害剤が、ヒト補体成分C5、C4、C3、またはC2の切断を阻害する。例えば、補体阻害剤は、補体成分C5が断片C5aおよびC5bへと切断されることを阻害しうる。
【0021】
一部の実施形態では、補体阻害剤が、ヒト補体成分タンパク質(例えば、C5タンパク質)に結合する抗体またはその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、C5タンパク質のアルファ鎖に結合する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、C5のベータ鎖に結合する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、ヒト補体成分C5のアルファ鎖に結合し、ここで、この抗体が、(i)ヒト体液中の補体の活性化を阻害し、(ii)精製ヒト補体成分C5が、ヒト補体成分C3bまたはヒト補体成分C4bに結合することを阻害し、(iii)ヒト補体活性化生成物である遊離C5aに結合しない。一部の実施形態では、抗体が、配列番号1〜26のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むかまたはこのアミノ酸配列からなる、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する。一部の実施形態では、この阻害剤が、補体成分C5断片であるC5bに結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0022】
一部の実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体でありうる。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、ヒト化抗体、組換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fv断片、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab’)断片からなる群から選択される抗体またはその抗原結合断片でありうる。
【0023】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかについての一部の実施形態では、補体阻害剤が、エクリズマブまたはパキセリズマブである。
【0024】
さらに別の態様では、本開示が、ラベルを含む容器と;補体阻害剤を含む組成物とを含む製品あって、ここで、上記ラベルには、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性があるヒトに上記組成物が投与されることが示されている、製品を特徴とする。阻害剤は、例えば、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片でありうる。阻害剤は、例えば、C5aまたはC5bなど、ヒト補体成分C5タンパク質の断片に結合する抗体またはその抗原結合断片でありうる。
【0025】
一部の実施形態では、製品が、1つ以上の抗炎症剤、抗凝固剤、または抗血栓剤などであるがこれらに限定されない1つ以上のさらなる活性剤を包含する。
【0026】
本発明者はまた、本明細書に記載されるドゴー病患者の、血清中ならびに生検された皮膚組織のインターフェロンアルファレベルが高いことも発見した。いかなる特定の理論または作用機構により拘束されるものではないが、インターフェロンアルファは、獲得免疫および自然免疫を上方制御し、任意の抗原性誘因の影響を強化し、外因性インターフェロンアルファの投与は、皮膚血栓および皮膚潰瘍形成の原因であると報告されているので、本発明者は、インターフェロンアルファの阻害が、ドゴー病を処置するのに有用な戦略であると考える。
【0027】
したがって、別の態様では、本開示が、ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、この疾患を処置するのに十分な量でインターフェロンアルファ阻害剤を投与するステップを含む方法を特徴とする。
【0028】
別の態様では、本開示が、ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、この患者におけるインターフェロンアルファの、低下した活性レベルを維持し、これにより、この疾患を処置するのに十分な量および頻度でインターフェロンアルファ阻害剤を長期投与するステップを含む方法を特徴とする。
【0029】
別の態様では、本開示が、ドゴー病を処置するための方法であって、患者を、ドゴー病に罹患しているか、またはドゴー病に罹患する可能性があると同定するステップと;この患者に、この疾患を処置するのに十分な量でインターフェロンアルファ阻害剤を投与するステップとを含む方法を特徴とする。
【0030】
別の態様では、本開示が、ドゴー病を処置または予防するための方法(例えば、ドゴー病の発症を予防する方法、またはドゴー病の良性皮膚性形態が、この疾患の、より進行した、多臓器性および/または全身性形態へと進行することを予防する方法)を特徴とする。この方法は、それを必要とする患者に、この疾患を処置または予防するのに十分な量でインターフェロンアルファ阻害剤を投与するステップを包含する。一部の実施形態では、この阻害剤を、処置期間にわたり、患者の血液におけるインターフェロンアルファの、低下した発現レベルまたは活性レベルを維持するための量および頻度で長期投与することができる。
【0031】
一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、例えば、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、核酸、核酸類似体、および低分子からなる群から選択されるインターフェロンアルファ阻害剤でありうる。阻害剤は、例えば、細胞によるインターフェロンアルファまたはインターフェロンアルファ受容体の発現を阻害しうる。阻害剤は、例えば、インターフェロンアルファタンパク質またはインターフェロンアルファ受容体タンパク質の活性を阻害しうる。
【0032】
一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファに結合する。一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファ受容体に結合する。例えば、一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファまたはインターフェロンアルファ受容体に結合する抗体(またはその抗原結合断片)である。抗体は、モノクローナル抗体でありうる。抗体またはその抗原結合断片は、例えば、ヒト化抗体、組換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fv断片、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab’)断片からなる群から選択される抗体またはその抗原結合断片でありうる。
【0033】
さらに別の態様では、本開示が、ラベルを含む容器と;インターフェロンアルファ阻害剤を含む組成物とを含む製品であって、ここで、上記ラベルには、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性があるヒトに上記組成物が投与されることが示されている、製品を特徴とする。インターフェロンアルファ阻害剤は、例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロン受容体に結合する抗体またはその抗原結合断片など、本明細書に記載される、任意のインターフェロンアルファ阻害剤でありうる。
【0034】
一部の実施形態では、製品が、抗炎症剤、抗凝固剤、または抗血栓剤などであるがこれらに限定されない1つ以上のさらなる活性剤を包含する。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法が、B細胞標的化療法の投与(単剤としての投与、または補体阻害剤および/もしくはインターフェロンアルファ阻害剤との組合せによる投与)を包含しうる。例えば、本開示は、ドゴー病を処置または予防するための方法であって、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性があるヒトに、治療有効量のB細胞標的化療法を投与するステップを含む方法を特徴とする。B細胞標的化療法は、例えば、抗CD20抗体などであるがこれらに限定されない、抗CD20結合剤でありうる。本明細書に記載される方法において用いうる、臨床使用について承認されているか、または臨床開発中である、例示的な治療用抗CD20抗体には、限定なしに述べると、リツキシマブ(Biogen Idec)、90Y−イブリツモマブチウキセタン(Biogen Idec)、131I−トシツモマブ(GlaxoSmithKline)、オファツムマブ(Genmab)、TRU−015(Trubion)、ベルツズマブ(IMMU−106;Immunomedics)、オクレリズマブ(Roche)、およびAME−133v(Applied Molecular Evolution)が含まれる。例えば、Levene et al. (2005)、前出; Burge et al. (2008) Clin Ther 30(10):1806−1816; Kausar et al. (2009) Expert Opin Biol Ther 9(7):889−895; Morschhauser et al. (2009) J Clin Oncol 27(20):3346−3353;およびMilani and Castillo (2009) Curr Opin Mol Ther 11(2):200−207を参照されたい。
【0036】
別の例では、本明細書に記載される方法、例えば、ドゴー病患者に補体阻害剤および/またはインターフェロンアルファ阻害剤を投与する方法のうちのいずれかはまた、抗CD20抗体など、B細胞標的化療法を投与するステップも包含しうる。
【0037】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、互換的に用いられ、長さまたは翻訳後修飾に関わらず、ペプチド結合した任意のアミノ酸鎖を意味する。本明細書に記載される補体成分タンパク質(例えば、補体成分C2タンパク質、補体成分C3タンパク質、補体成分C4タンパク質、または補体成分C5タンパク質)は、野生型のタンパク質を含有するか、または野生型のタンパク質である場合もあり、50以下(例えば、1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、12以下、15以下、20以下、25以下、30以下、35以下、40以下、または50以下)の保存的アミノ酸置換を有するバリアントの場合もある。保存的置換は、以下の群:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、およびトレオニン;リシン、ヒスチジン、およびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン、内の置換を包含することが典型的である。
【0038】
本明細書に記載されるヒト補体成分タンパク質はまた、全長の未成熟(プレプロ)タンパク質より短いが、哺乳動物において抗原反応を誘導する全長タンパク質の能力のうちの少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%以上)を保持する、そのタンパク質の「抗原ペプチド断片」も包含する。例えば、C5タンパク質の抗原ペプチド断片は、全長の未成熟タンパク質には満たないが、哺乳動物において抗原反応を誘導する全長タンパク質の能力のうちの少なくとも10%を保持する、C5タンパク質の任意の断片でありうる。補体成分タンパク質の抗原ペプチド断片は、このタンパク質の末端欠失バリアントのほか、内部欠失バリアントも包含する。欠失バリアントは、(2つ以上のアミノ酸による)1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のアミノ酸セグメントを欠く場合もあり、連続しない単一のアミノ酸を欠く場合もある。抗原ペプチド断片は、少なくとも6アミノ酸残基(例えば、少なくとも、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500または600アミノ酸残基以上)の長さ(例えば、配列番号1〜11のうちのいずれか1つにおける少なくとも6つの連続アミノ酸残基)でありうる。一部の実施形態では、ヒト補体成分タンパク質の抗原ペプチド断片が、500アミノ酸残基未満(例えば、450、400、350、325、300、275、250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8または7アミノ酸残基未満)の長さ(例えば、配列番号1〜11のうちのいずれか1つにおける500未満の連続アミノ酸残基)である。一部の実施形態では、全長の未成熟ヒト補体成分タンパク質(C5プレプロタンパク質)の抗原ペプチド断片が、少なくとも6アミノ酸残基の長さであるが、500アミノ酸残基未満の長さである。
【0039】
一部の実施形態では、ヒト補体成分C5タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1に示されているヒトC5タンパク質のアミノ酸配列と70%または70%超(例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%)同一でありうる。
【0040】
アミノ酸配列の同一性百分率(%)とは、配列を整列させ、必要な場合はギャップを導入して、最大の配列同一性百分率を達成した後に、基準配列のアミノ酸と同一である候補配列のアミノ酸百分率として定義される。配列同一性百分率を決定することを目的とするアライメントは、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST−2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、ALIGN−2ソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、公に利用可能であるコンピュータソフトウェアを用いる、当技術分野の技能の範囲内にある各種の手段により達成することができる。比較される配列の全長にわたる最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、アライメントを測定するのに適切なパラメータは、公知の方法により決定することができる。
【0041】
当技術分野では、例示的なヒトC5タンパク質ならびにそれらの抗原ペプチド断片のアミノ酸配列が公知であり、これらを以下に示す。
【0042】
本開示全体で用いられる「抗体」という用語は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載される各種の方法のうちのいずれか1つにより生成させる抗体分子全体または完全抗体分子(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、またはIgE)を指す。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ化抗体またはキメラ抗体、ヒト化抗体、脱免疫化ヒト抗体、および完全ヒト抗体を包含する。抗体は、様々な種、例えば、ヒト、非ヒト霊長動物(例えば、サル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ラット、およびマウスなどの哺乳動物のうちのいずれかにおいて作製する場合もあり、これに由来する場合もある。抗体は、精製抗体の場合もあり、組換え抗体の場合もある。
【0043】
本明細書で用いられる「抗体断片」という用語、「抗原結合断片」という用語、または類似の用語は、抗原(例えば、補体成分C5タンパク質)に結合する能力を保持する抗体の断片、例えば、単鎖抗体、単鎖Fv断片(scFv)、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、またはF(ab’)断片を指す。scFv断片とは、そのscFvが由来する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を包含する単一のポリペプチド鎖である。加えて、補体成分タンパク質(例えば、補体成分C5)に結合する、ダイアボディ(それらの両方の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Poljak (1994) Structure 2(12):1121−1123; Hudson et al. (1999) J Immunol Methods 23(1−2):177−189)、およびイントラボディ(それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Huston et al. (2001) Hum. Antibodies 10(3−4):127−142; Wheeler et al. (2003) Mol Ther 8(3):355−366; Stocks (2004) Drug Discov Today 9(22): 960−966)も、本明細書に記載される組成物に組み込むことができ、本明細書に記載される方法において用いることができる。
【0044】
別段に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。齟齬が生じた場合は、定義を含めた本文書が優先する。本明細書に記載される方法および材料と類似するかまたは同等である方法および材料もまた、本明細書で開示される方法および組成物の実施または試験において用いうるが、以下では、好ましい方法および材料が記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。
【0045】
本開示の他の特徴および利点、例えば、ドゴー病を処置または予防するための方法は、以下の記載、実施例、および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、ヒト補体阻害剤(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体)を含有する組成物、およびこの組成物を用いてドゴー病を処置または予防するための方法を提供する。限定を意図するものでは全くないが、以下では、例示的な組成物(例えば、薬学的組成物および薬学的処方物)およびこれらの組成物を用いるための方法について詳述し、作業実施例ではこれらについて例示する。
【0047】
補体経路
補体系は、体の他の免疫系と共に作用して、細胞性病原体およびウイルス性病原体の侵入に対して防御する。少なくとも25の補体タンパク質が、血漿タンパク質と膜補因子との複合体のコレクションとして見出されている。脊椎動物の血清において、血漿タンパク質の約10%をグロブリンが占める。補体成分は、一連の複雑ではあるが精密な酵素的切断イベントおよび膜結合イベントの相互作用によって、それらの免疫防御機能を達成する。生じる補体カスケードは、オプソニン機能、免疫制御機能、および溶解機能を伴う生成物の生成をもたらす。補体活性化と関連する生物学的活性についての簡潔な概要は、例えば、「Merck Manual」、16版において示されている。
【0048】
補体カスケードは、古典的経路、代替経路、またはレクチン経路を介して進行する。これらの経路は、多くの成分を共有し、それらの初期段階では異なるが、それらは収束し、標的細胞の活性化および破壊に関与する、同じ「終末補体」成分(C5〜C9)を共有する。
【0049】
古典的補体経路は、標的細胞における抗原部位に対する抗体による認識およびこれに対する抗体の結合により開始されることが典型的である。代替経路は、抗体非依存性であり得、病原体表面の特定の分子により開始されうる。加えて、レクチン経路は、高マンノース基質にマンノース結合レクチン(MBL)が結合することにより開始されることが典型的である。これらの経路は、補体成分C3が、活性プロテアーゼ(これは、各経路で異なる)により切断され、C3aおよびC3bを生じる段階において収束する。補体による傷害(attack)を活性化する他の経路は、補体機能の多様な側面をもたらす、下流の一連のイベントにおいて作用しうる。
【0050】
C3aは、アナフィラトキシンである。C3bは、細菌細胞および他の細胞のほか、特定のウイルスおよび免疫複合体に結合し、これらを標識して、循環から除去させる(この役割におけるC3bは、オプソニンとして公知である)。C3bのオプソニン機能は一般に、補体系のうちで最も重要な抗感染作用であると考えられている。C3b機能を遮断する遺伝子病変を有する患者が、多種多様な病原性生物による感染を受ける傾向があるのに対し、補体カスケード連鎖の下流において病変を有する患者、すなわち、C5機能を遮断する病変を有する患者は、Neisseria属感染に対してのみ感染し易い傾向があるが、その傾向が幾分か増大するに過ぎないことが見出されている。
【0051】
C3bはまた、各経路に固有の他の成分との複合体も形成して、古典的または代替経路のC5コンベルターゼを形成し、これにより、C5がC5aおよびC5bへと切断される。したがって、C3は、代替経路および古典的経路の両方にとって不可欠であるので、補体反応の連鎖における中心的なタンパク質として考えられる。このC3bの特性は、C3bに作用してiC3bを生成させる血清プロテアーゼである、因子Iにより制御される。オプソニンとしてはなおも機能性であるが、iC3bは、活性のC5コンベルターゼを形成することが不可能である。
【0052】
C5とは、約75μg/mL(0.4μM)の濃度で正常血清において見出される、190kDaのベータグロブリンである。C5は、グリコシル化されており、その質量の約1.5〜3パーセントは、炭水化物に帰せられる。成熟C5は、655アミノ酸で75kDaのベータ鎖にジスルフィド結合した、999アミノ酸で115kDaのアルファ鎖によるヘテロ二量体である。C5は、単一のコピー遺伝子による単鎖前駆体タンパク質生成物として合成される(Haviland et al. (1991) J Immunol 146:362−368)。この遺伝子の転写物のcDNA配列は、18アミノ酸のリーダー配列と共に分泌される、1658アミノ酸のプロC5前駆体を予測させる(例えば、米国特許第6,355,245号を参照されたい)。
【0053】
プロC5前駆体は、アミノ酸655および659の下流で切断され、アミノ末端断片(上記配列のアミノ酸残基+1〜655)としてのベータ鎖と、カルボキシル末端断片(上記配列のアミノ酸残基660〜1658)としてのアルファ鎖とを、これら2つの鎖の間で4アミノ酸(上記配列のアミノ酸残基656〜659)を欠失させて生じる。
【0054】
C5aは、C5のアルファ鎖から、代替経路のC5コンベルターゼまたは古典的経路のC5コンベルターゼにより、このアルファ鎖の最初の74アミノ酸(すなわち、上記配列のアミノ酸残基660〜733)を含むアミノ末端断片として切断される。C5aの11kDaの質量のうち、約20パーセントは、炭水化物に帰せられる。コンベルターゼ作用についての切断部位は、上記配列のアミノ酸残基733におけるか、またはこの残基とじかに隣接するところである。この切断部位に結合するか、またはこの切断部位に隣接して結合する化合物であれば、この切断部位へのC5コンベルターゼ酵素の接近を遮断し、これにより、補体阻害剤として作用する潜在能力を有することになる。
【0055】
C5はまた、C5コンベルターゼ活性以外の手段によっても活性化させることができる。限定的なトリプシン消化(例えば、Minta and Man (1997) J Immunol 119:1597−1602 およびWetsel and Kolb (1982) J Immunol 128:2209−2216を参照されたい)および酸による処理(Yamamoto and Gewurz (1978) J Immunol 120:2008およびDamerau et al. (1989) Molec Immunol 26:1133−1142)もまた、C5を切断し、活性C5bを生成させうる。
【0056】
C5を切断すると、強力なアナフィラトキシンおよび走化性因子であるC5aが放出され、溶解性の末端補体複合体であるC5b−9が形成される。C5aおよびC5b−9はまた、加水分解酵素、反応性酸素種、アラキドン酸代謝物、および各種のサイトカインなど、下流の炎症性因子の放出を増幅することにより、多面的発現性の細胞活性化特性も有する。
【0057】
C5bは、C6、C7、およびC8と結合して、標的細胞の表面において、C5b−8複合体を形成する。複数のC9分子が結合すると、膜傷害複合体(MAC;C5b−9;終末補体複合体:TCC)が形成される。十分な数のMACが標的細胞膜へと挿入されると、MACが創出する開口部(MAC小孔)による、標的細胞に対する急速な浸透圧性溶解が媒介される。より低い、非溶解性濃度のMACは、他の影響をもたらしうる。特に、少数のC5b−9複合体が、内皮細胞および血小板の膜内に挿入されると、有害な細胞活性化を引き起こし得る。場合によっては、活性化が、細胞の溶解に先行しうる。
【0058】
上述の通り、C3aおよびC5aは、アナフィラトキシンである。これらの活性化補体成分は、マスト細胞の脱顆粒を誘発することが可能であり、これにより、好塩基球およびマスト細胞からのヒスタミン、ならびに他の炎症メディエーターが放出され、その結果として、平滑筋の収縮、血管透過性の増大、白血球の活性化、および細胞過形成を結果としてもたらす細胞増殖を含めた他の炎症現象がもたらされる。C5aはまた、炎症促進性顆粒球を補体活性化部位へと誘引するように働く、走化性ペプチドとしても機能する。
【0059】
C5a受容体は、気管支上皮細胞および肺胞上皮細胞、ならびに気管支平滑筋細胞の表面において見出される。C5a受容体はまた、好酸球、マスト細胞、単球、好中球、および活性化リンパ球においても見出されている。
【0060】
組成物
本明細書に記載される組成物は、ヒト補体阻害剤を含有しうる。ヒト補体成分のうちのいずれかに結合するか、またはその生成および/もしくは活性を他の方法で遮断する任意の化合物を、本開示に従い用いることができる。例えば、補体阻害剤は、例えば、低分子、核酸もしくは核酸類似体、ペプチド模倣体、または核酸もしくはタンパク質以外の高分子でありうる。これらの剤には、有機低分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、二本鎖RNA、低分子干渉RNA、ロックト核酸による阻害剤、およびペプチド核酸による阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、補体阻害剤が、タンパク質またはタンパク質断片でありうる。
【0061】
一部の実施形態では、上記組成物が、ヒト補体成分に特異的な抗体を含有する。一部の化合物には、補体成分C1、C2、C3、C4、C5(またはその断片;下記を参照されたい)、C6、C7、C8、C9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、またはMASP−2に対し指向し、これにより、C5aと関連するアナフィラトキシン活性の生成を阻止し、かつ/またはC5bと関連する膜傷害複合体(MAC)のアセンブリーを阻止する抗体が含まれる。一部の実施形態では、補体阻害剤が、C5b−9複合体の活性および/またはアセンブリーを阻害する。例えば、一部の実施形態では、上記阻害剤が、C6、C7、C8、C9、またはC5bのうちの1つに結合し、これにより、MACのアセンブリーおよび/または活性を阻止する、抗体またはその抗原結合断片である。
【0062】
組成物はまた、CR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、およびK76 COOHなど、補体阻害化合物の天然形態または可溶性形態も含有しうる。ヒト補体成分のうちのいずれかに結合するか、またはその生成および/もしくは活性を他の方法で遮断するのに用いうる他の化合物には、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、低分子、ARC187(これは、Archemix Corporation、Cambridge、MAから市販されている)を含めたRNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼ阻害剤、低分子干渉RNA(siRNA)を含めた二本鎖RNAなど、RNA干渉(RNAi)において用いられうる分子、ロックト核酸(LNA)による阻害剤、ペプチド核酸(PNA)による阻害剤などが含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
一部の実施形態では、補体阻害剤が、補体の活性化を阻害する。例えば、補体阻害剤は、C1(例えば、C1q、C1r、またはC1s)に結合し、C1の補体活性化活性を阻害することができ、補体阻害剤は、C2、C3、またはC4に結合し、これを阻害する(例えば、その切断を阻害する)ことができる。一部の実施形態では、阻害剤が、補体の代替経路および/または古典的経路のC3コンベルターゼおよび/またはC5コンベルターゼの形成またはアセンブリーを阻害する。一部の実施形態では、補体阻害剤が、終末補体形成、例えば、C5b−9膜傷害複合体の形成を阻害する。例えば、抗体の補体阻害剤には、抗C5抗体が含まれうる。このような抗C5抗体は、C5bの形成および/または生理学的機能を阻害するように、C5および/またはC5bと直接に相互作用しうる。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物が、ヒト補体成分C5阻害剤(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質、またはC5aもしくはC5bなど、その生物学的に活性な断片に結合する抗体またはその抗原結合断片)を含有しうる。本明細書で用いられる「補体成分C5阻害剤」とは、(i)細胞による補体成分C5タンパク質の発現もしくは適正な細胞内輸送もしくは分泌;(ii)C5切断断片であるC5aまたはC5bの活性(例えば、C5aのその同族の細胞受容体への結合、またはC5bのC6および/もしくは終末補体複合体の他の成分への結合;上記を参照されたい);(iii)C5aおよびC5bを形成するヒトC5タンパク質の切断;または(iv)細胞による補体成分C5タンパク質の適正な細胞内輸送もしくは分泌、を阻害する任意の剤である。補体成分C5タンパク質の発現の阻害には、ヒトC5タンパク質をコードする遺伝子の転写の阻害;ヒトC5タンパク質をコードするmRNAの分解の増大;ヒトC5タンパク質をコードするmRNAの翻訳の阻害;ヒトC5タンパク質の分解の増大;ヒトC5プレプロタンパク質の適正なプロセシングの阻害;または細胞によるヒトC5タンパク質の適正な輸送もしくは分泌の阻害が含まれる。当技術分野では、候補剤がヒト補体成分C5阻害剤であるかどうかを決定するための方法が公知であり、本明細書に記載される。
【0065】
ヒト補体成分C5阻害剤は、例えば、低分子、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、核酸、または核酸類似体でありうる。
【0066】
本明細書で用いられる「低分子」とは、分子量が約6kDa未満であり、最も好ましくは約2.5kDa未満である剤を指すことを意味する。多くの製薬会社は、本出願のアッセイのうちのいずれかによりスクリーニングされうる、真菌性抽出物、細菌性抽出物、または藻類性抽出物であることが多い低分子のアレイを含む、化学的混合物および/または生物学的混合物の広範なライブラリーを有する。本出願は、何にもまして、低分子化学物質ライブラリー、ペプチドライブラリー、または天然生成物のコレクションを用いることを意図する。Tanらは、ミニチュア化された細胞ベースのアッセイと適合的な、200万を超える合成化合物を伴うライブラリーについて記載した(J Am Chem Soc (1998) 120:8565−8566)。このようなライブラリーを用いて、ヒト補体成分C5阻害剤をスクリーニングしうることは、本出願の範囲内にある。Chembridge DIVERSetなど、多くの化合物ライブラリーが市販されている。ライブラリーはまた、NCI治療剤開発プログラムによるDiversityセットなど、学術研究者からも入手可能である。ラショナルドラッグデザインもまた用いることができる。例えば、ラショナルドラッグデザインでは、ヒト補体成分C5タンパク質についての結晶構造情報または溶液構造情報の使用を採用しうる。例えば、Hagemann et al. (2008) J Biol Chem 283(12):7763−75 およびZuiderweg et al. (1989) Biochemistry 28(1):172-85に記載されている構造を参照されたい。ラショナルドラッグデザインはまた、公知の化合物、例えば、公知のC5阻害剤(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片)に基づき達成することもできる。
【0067】
ペプチド模倣体は、対象のポリペプチドの少なくとも一部が改変されており、このペプチド模倣体の三次元構造が、対象のポリペプチドの三次元構造と実質的に同じであることを維持する化合物でありうる。ペプチド模倣体は、それ自体が、対象のポリペプチド配列内に1つ以上の置換または他の改変を含有するポリペプチドである、本開示による対象のポリペプチドの類似体でありうる。あるいは、対象のポリペプチドの三次元構造が実質的に保持されるように、対象のポリペプチド配列の少なくとも一部を、ペプチド以外の構造で置き換えることもできる。言い換えれば、対象のポリペプチド配列内の1つ、2つ、または3つのアミノ酸残基を、ペプチド以外の構造で置き換えることができる。加えて、対象のポリペプチドの他のペプチド部分を、ペプチド以外の構造で置き換えることもできるが、置き換えなくともよい。ペプチド模倣体(ペプチド類似体およびペプチジル以外の類似体の両方)は、特性が改善されている(例えば、タンパク質分解が低下しているか、貯留量が増大しているか、またはバイオアベイラビリティーが増大している)。ペプチド模倣体は一般に、経口アベイラビリティーが改善されており、このため、ヒトまたは動物における障害の処置にとりわけ適するものとなっている。ペプチド模倣体は、類似の二次元的化学構造を有する場合もあり、これを有さない場合もあるが、共通の三次元的構造の特徴および形状を共有する。各ペプチド模倣体は、1つ以上のさらなる固有の結合エレメントをさらに有しうる。
【0068】
核酸阻害剤は、内因性遺伝子、例えば、ヒト補体成分C5をコードする遺伝子の発現を低下させるのに用いることができる。核酸アンタゴニストは、例えば、siRNA、dsRNA、リボザイム、三重螺旋形成剤、アプタマー、またはアンチセンス核酸でありうる。siRNAとは、必要に応じて突出を包含する、低分子の二本鎖RNA(dsRNA)である。例えば、siRNAの二重鎖領域は、約18〜25ヌクレオチドの長さ、例えば、約19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、siRNA配列が、標的mRNAと正確に相補的でありうる。dsRNAおよびsiRNAは、特に、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)における遺伝子発現をサイレンシングするのに用いることができる。例えば、Clemens et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:6499−6503; Billy et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:14428−14433; Elbashir et al. (2001) Nature 411:494−8; Yang et al. (2002) Proc Natl Acad Sci USA 99:9942−9947;ならびに米国特許出願公開第20030166282号、同第20030143204号、同第20040038278号、および同第20030224432号を参照されたい。アンチセンス剤は、例えば、約8〜約80核酸塩基(すなわち、約8〜約80ヌクレオチド)、例えば、約8〜約50核酸塩基、または約12〜約30核酸塩基を包含しうる。アンチセンス化合物には、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、および標的核酸にハイブリダイズし、その発現を調節する、他の短鎖触媒性RNAまたは触媒性オリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンス化合物は、標的遺伝子内の配列に相補的な、少なくとも8つの連続する核酸塩基のストレッチを包含しうる。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列と100%相補的でなくともよい。標的に対するオリゴヌクレオチドの結合が、標的分子の正常な機能に干渉し、有用性の喪失を引き起こすとき、および特定の結合が所望される条件下において、すなわち、in vivoアッセイもしくは治療的処置の場合には生理学的条件下において、またはin vitroアッセイの場合にはアッセイが実施される条件下において、標的以外の配列に対するオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在するときは、オリゴヌクレオチドが、特異的にハイブリダイズ可能である。mRNA(例えば、ヒトC5タンパク質をコードするmRNA)とのアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、mRNAの正常な機能のうちの1つ以上に干渉しうる。干渉されるmRNAの機能には、例えば、タンパク質の翻訳部位へのRNAの移動、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のmRNA種をもたらすRNAのスプライシング、およびRNAが関与しうる触媒活性など、すべての重要な機能が含まれる。また、RNAに対する特異的なタンパク質(複数可)の結合も、このRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって干渉されうる。例示的なアンチセンス化合物には、標的核酸、例えば、ヒト補体成分C5タンパク質をコードするmRNAに特異的にハイブリダイズするDNA配列またはRNA配列が含まれる。相補的領域は、約8〜約80核酸塩基にわたりうる。化合物は、1つ以上の改変核酸塩基を包含しうる。
【0069】
改変核酸塩基には、例えば、5−ヨードウラシル、5−ヨードシトシンなどの5−置換ピリミジン、およびC−プロピニルシトシンおよびC−プロピニルウラシルなどのC−プロピニルピリミジンが含まれうる。他の適切な改変核酸塩基には、例えば、7−置換−8−アザ−7−デアザプリン、および、例えば、7−ヨード−7−デアザプリン、7−シアノ−7−デアザプリン、7−アミノカルボニル−7−デアザプリンなどの7−置換−7−デアザプリンが含まれる。これらの例には、6−アミノ−7−ヨード−7−デアザプリン、6−アミノ−7−シアノ−7−デアザプリン、6−アミノ−7−アミノカルボニル−7−デアザプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−7−ヨード−7−デアザプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−7−シアノ−7−デアザプリン、および2−アミノ−6−ヒドロキシ−7−アミノカルボニル−7−デアザプリンが含まれる。例えば、米国特許第4,987,071号;同第5,116,742号;および同第5,093,246号;“Antisense RNA and DNA,” D.A. Melton, 編, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988); Haselhoff and Gerlach (1988) Nature 334:585−59; Helene, C. (1991) Anticancer Drug D :569−84; Helene (1992) Ann NY Acad Sci 660:27−36; およびMaher (1992) Bioassays 14:807−15を参照されたい。
【0070】
アプタマーとは、細胞表面タンパク質を含め、ほとんど任意の分子を認識させ、これに特異的に結合させるのに用いうる、短鎖のオリゴヌクレオチド配列である。指数富化によるリガンドの組織的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)工程は強力であり、これを用いてこのようなアプタマーを容易に同定することができる。アプタマーは、増殖因子および細胞表面抗原など、治療および診断に重要な、広範にわたるタンパク質について作製することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、抗体と同様のアフィニティーおよび特異性で、それらの標的に結合する。例えば、Ulrich (2006) Handb Exp Pharmacol 173:305−326を参照されたい。
【0071】
一部の実施形態では、ヒトC5阻害剤が、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片である(本明細書の以下では、時には、抗体を、「抗C5抗体」と称することもある)。
【0072】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒトプロ−C5前駆体タンパク質のエピトープに結合する。例えば、抗C5抗体は、配列番号1(NCBI受託番号第AAA51925号;およびHavilandら、前出)に示されるアミノ酸配列を含むか、またはこのアミノ酸配列からなる、ヒト補体成分C5タンパク質のエピトープに結合しうる。
【0073】
「エピトープ」とは、抗体が結合するタンパク質(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質)の部位を指す。「重複エピトープ」は、少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)の共通なアミノ酸残基(複数可)を包含する。
【0074】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、リーダー配列を欠く、ヒトプロ−C5前駆体タンパク質のエピトープに結合する。例えば、抗C5抗体は、アミノ末端におけるリーダー配列を欠くヒトC5タンパク質である、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、またはこのアミノ酸配列からなる、ヒト補体成分C5タンパク質のエピトープに結合しうる。
【0075】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質のアルファ鎖のエピトープに結合しうる。例えば、抗C5抗体は、ヒト補体成分C5アルファ鎖タンパク質である、配列番号3に示されているアミノ酸配列を有するタンパク質内のエピトープ、またはこのタンパク質と重複するエピトープに結合しうる。C5のアルファ鎖に結合する抗体は、例えば、Ames et al. (1994) J Immunol 152:4572−4581に記載されている。
【0076】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質のベータ鎖のエピトープに結合しうる。例えば、抗C5抗体は、ヒト補体成分C5ベータ鎖タンパク質である、配列番号4に示されているアミノ酸配列を有するタンパク質内のエピトープ、またはこのタンパク質と重複するエピトープに結合しうる。C5のベータ鎖に結合する抗体は、例えば、Moongkarndi et al. (1982) Immunobiol 162:397; Moongkarndi et al. (1983) Immunobiol 165:323;およびMollnes et al. (1988) Scand J Immunol 28:307−312に記載されている。
【0077】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質の抗原ペプチド断片内のエピトープ、またはこの抗原ペプチド断片と重複するエピトープに結合しうる。例えば、抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質の抗原ペプチド断片であって、以下のアミノ酸配列:
【0078】
【化1】

【0079】
を含有するか、またはこのアミノ酸配列からなる上記断片内のエピトープ、またはこの断片と重複するエピトープに結合しうる。
【0080】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質の断片であって、以下のアミノ酸配列(これは、配列番号1による例示的な抗原断片である):
【0081】
【化2】

【0082】
のいずれかの1つを含有するか、またはこのアミノ酸配列のいずれか1つからなる上記断片内のエピトープ、またはこの断片と重複するエピトープに結合しうる。
【0083】
ヒト補体成分C5のさらなる例示的な抗原断片は、例えば、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,355,245号において開示されている。
【0084】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質(例えば、配列番号1に示されているアミノ酸配列を有するヒトC5タンパク質)に特異的に結合する。「特異的な結合」または「特異的に結合する」という用語は、生理学的条件下において比較的安定な複合体(例えば、抗体と補体成分C5タンパク質との複合体)を形成する2つの分子を指す。結合定数(K)が、10−1より大きいとき、結合を特異的と考えるのが典型的である。したがって、抗体は、Kが少なくとも10−1である(またはそれよりも大きい)(例えば、少なくとも10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014−1、もしくは1015−1以上か、または10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014−1よりも大きい、もしくは1015−1以上)C5タンパク質に特異的に結合しうる。ヒト補体成分C5タンパク質に特異的に結合する抗体の例は、例えば、その開示が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,355,245号に記載されている。
【0085】
当技術分野では、抗体がタンパク質抗原に結合するかどうか、および/またはタンパク質抗原に対する抗体のアフィニティーを決定する方法が公知である。例えば、タンパク質抗原に対する抗体の結合は、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden;およびPiscataway、N.J.)、または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などであるがこれらに限定されない各種の技法を用いて検出および/または定量化することができる。例えば、Harlow and Lane (1988) “Antibodies: A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Benny K. C. Lo (2004) “Antibody Engineering: Methods and Protocols,” Humana Press (ISBN: 1588290921); Borrebaek (1992) “Antibody Engineering, A Practical Guide,” W.H. Freeman and Co., NY; Borrebaek (1995) “Antibody Engineering,” 第2版, Oxford University Press, NY, Oxford; Johne et al. (1993) J Immunol Meth 160:191−198; Jonsson et al. (1993) Ann Biol Clin 51:19−26; およびJonsson et al. (1991) Biotechniques 11:620−627を参照されたい。また、米国特許第6,355,245号も参照されたい。
【0086】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質内のエピトープ、またはこのタンパク質と重複するエピトープに結合する別の抗体の結合を交差遮断しうる。一部の実施形態では、抗C5抗体が、ヒト補体成分C5タンパク質のペプチド断片内のエピトープ、またはこのペプチド断片と重複するエピトープに結合する抗体の結合を交差遮断しうる。ペプチド断片は、配列番号1〜11のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を有するヒト補体成分C5タンパク質の断片でありうる。例えば、ペプチド断片は、以下のアミノ酸配列:
【0087】
【化3】

【0088】
を含有するか、またはこのアミノ酸配列からなり得る。
【0089】
本明細書で用いられる「交差遮断抗体」という用語は、補体成分C5タンパク質のエピトープに対する抗C5抗体の結合量を、この抗体の非存在下における、このエピトープに対する抗C5抗体の結合量と比べて低減する抗体を指す。当技術分野では、第1の抗体が、エピトープに対する第2の抗体の結合を交差遮断するかどうかを決定するのに適する方法が公知である。例えば、被験抗体の存在下および非存在下における、抗C5モノクローナル抗体である5G1.1(ATCC名称HB−11625のハイブリドーマ細胞系により生成させた抗体;米国特許第6,355,245号を参照されたい)の結合を比較することにより、交差遮断抗体を同定することができる。被験抗体の存在下における5G1.1抗体の結合が、被験抗体の非存在下における5G1.1抗体の結合と比較して低下すれば、この被験抗体が、交差遮断抗体であることが示される。
【0090】
当技術分野ではまた、特定の抗体(例えば、抗C5抗体)が結合するエピトープを同定するための方法も公知である。例えば、補体成分C5タンパク質の数個(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、または30以上)の重複ペプチド断片(例えば、配列番号1〜11のうちのいずれか1つにおいて示されているアミノ酸配列を有するタンパク質の数個の重複断片)に対する抗体の結合を測定することにより、抗C5抗体の結合エピトープを同定することができる。そこで、異なる重複ペプチドの各々を、固体の支持体、例えば、マルチウェルアッセイプレートの個別のウェルの固有のアドレスに結合させる。次に、抗C5抗体を、そのエピトープに対する抗体の結合を可能とする時間の長さにわたり、この結合を可能とする条件下において、アッセイプレート内のペプチドの各々と接触させることにより、これを探査する。ウェルの各々を洗浄することにより、結合しなかった抗C5抗体を除去する。次に、プレートのウェル内に存在する場合は、抗C5抗体に結合する、検出可能に標識された二次抗体を、ウェルの各々と接触させ、洗浄ステップにより、結合しなかった二次抗体を除去する。ウェル内で検出可能に標識された二次抗体により生成した検出可能なシグナルの存在または量は、抗C5抗体が、ウェルと会合する特定のペプチド断片に結合することを示す。例えば、その開示が、参照によりその全体において組み込まれる、HarlowおよびLane(前出)、Benny K.C.Lo(前出)、および米国特許出願公開第20060153836号を参照されたい。抗体が結合する特定のエピトープはまた、BIAcoreクロマトグラフィー法(例えば、Pharmacia BIAtechnology Handbook、「Epitope Mapping」、6.3.2節、(1994年5月);およびJohneら(1993年)、J Immunol Methods、160巻:20191〜8頁を参照されたい)を用いても同定することができる。
【0091】
本明細書に記載される抗C5抗体は、補体成分C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5a活性断片および/またはC5b活性断片の生成または活性を遮断する活性を有しうる。この遮断効果により、抗C5抗体は、例えば、C5aの炎症促進作用および細胞表面におけるC5b−9膜傷害複合体(MAC)の生成を阻害する。C5aの生成を遮断する能力を有する抗C5抗体は、例えば、Moongkarndi et al. (1982) Immunobiol 162:397 およびMoongkarndi et al. (1983) Immunobiol 165:323に記載されている。
【0092】
一部の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片が、ヒト補体成分C3b(例えば、代替経路(AP)C5コンベルターゼ複合体または古典的経路(CP)C5コンベルターゼ複合体に存在するC3b)に結合するC5タンパク質の能力を、50%を超えて(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90%を超えて、または95%以上)低減しうる。一部の実施形態では、C5タンパク質に結合すると、抗C5抗体またはその抗原結合断片が、補体成分C4b(例えば、CP C5コンベルターゼに存在するC4b)に結合するC5タンパク質の能力を、50%を超えて(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90%を超えて、または95%以上)低減しうる。当技術分野では、抗体が、補体成分C5タンパク質のC5a活性断片および/もしくはC5b活性断片の生成もしくは活性、または補体成分C4bもしくはC3bに対する結合を遮断しうるかどうかを決定するための方法が公知であり、例えば、米国特許第6,355,245号、およびWurzner et al. (1991) Complement Inflamm :328−340に記載されている。
【0093】
一部の実施形態では、抗C5抗体が、補体成分C5タンパク質のアルファ鎖のアミノ末端領域には結合するが、遊離C5aには結合しない。アルファ鎖のアミノ末端領域内にある抗C5抗体のエピトープには、例えば、ヒト配列
【0094】
【化4】

【0095】
内のエピトープが含まれる。
【0096】
一部の実施形態では、組成物が、エクリズマブ(Soliris(登録商標);Alexion Pharmaceuticals,Inc.、Cheshire、CT)を含み、かつ/または抗体が、エクリズマブ(Soliris(登録商標);Alexion Pharmaceuticals,Inc.、Cheshire、CT)である。(例えば、Kaplan (2002) Curr Opin Investig Drugs 3(7):1017−23; Hill (2005) Clin Adv Hematol Oncol 3(11):849−50;およびRother et al. (2007) Nature Biotechnology 25(11):1256−1488を参照されたい)。
【0097】
一部の実施形態では、組成物が、パキセリズマブ(Alexion Pharmaceuticals,Inc.、Cheshire、CT)を含み、かつ/または抗体が、パキセリズマブ(Alexion Pharmaceuticals,Inc.、Cheshire、CT)である。例えば、Whiss (2002) Curr Opin Investig Drugs 3(6):870−7; Patel et al. (2005) Drugs Today (Barc) 41(3):165−70;およびThomas et al. (1996) Mol Immunol 33(17−18):1389−401を参照されたい。
【0098】
一部の実施形態では、C5阻害剤が、C5aに結合する抗体(本明細書では、時には、「抗C5a抗体」と称する)である。一部の実施形態では、抗体が、C5aに結合するが、全長C5には結合しない。上記で論じた通り、C5のプロ形態である、1676アミノ酸残基の前駆体タンパク質は、一連のタンパク質分解性の切断イベントによりプロセシングされる。最初の18ペプチド(−18〜−1と番号付けされる)は、前駆体タンパク質から切断されるシグナルペプチドを構成する。残る1658アミノ酸のタンパク質は、2つの部分に切断され、アルファ鎖およびベータ鎖を形成する。最初の切断イベントは、アミノ酸残基655と、アミノ酸残基656との間で生じる。第2の切断は、アミノ酸残基659とアミノ酸残基660との間で生じる。2つの切断イベントの結果として、3つの異なるポリペプチド断片:(i)アミノ酸1〜655を含む断片で、これをベータ鎖と称する;(ii)アミノ酸660〜1658を含む断片で、これをアルファ鎖と称する;および(iii)アミノ酸656〜659からなるテトラペプチド断片、が得られる。アルファ鎖のポリペプチド断片とベータ鎖のポリペプチド断片とは、ジスルフィド結合を介して互いに連結され、成熟C5タンパク質を構成する。CP C5コンベルターゼまたはAP C5コンベルターゼは、残基733と734との間でアルファ鎖を切断することにより、成熟C5を活性化させ、この結果、C5a断片(アミノ酸660〜733)が放出される。成熟C5の残りの部分は、断片C5bであり、これは、ベータ鎖にジスルフィド結合したアルファ鎖の残基734〜1658を含有する。
【0099】
in vivoにおいて、C5aは、血清酵素であるカルボキシペプチダーゼBにより、カルボキシ末端のアルギニン残基を喪失した、「C5a des−Arg」と称する73アミノ酸の形態へと迅速に代謝される。したがって、一部の実施形態では、C5aに結合する抗体がまた、脱アルギニン化C5aにも結合する。一部の実施形態では、C5aに結合する抗体が、脱アルギニン化C5aには結合しない。
【0100】
一部の実施形態では、C5阻害剤が、C5aに存在するネオエピトープ、すなわち、成熟C5のアルファ鎖断片からC5aが放出されると露出するエピトープに結合する抗体である。当技術分野では、C5a(例えば、C5aに存在するネオエピトープ)に結合する抗体が、このような抗体を生成させるための方法と同様に公知である。例えば、C5aに結合する抗体は、例えば、PCT特許公開第WO01/15731号;Amesら(1994年)、J Immunol、152巻(9号):4572〜4581頁;Inoue(1989年)、Complement Inflamm、6巻(3号):219〜222頁;および米国特許第6,866,845号のうちのいずれか1つに記載されている、C5aネオエピトープ特異的抗体の結合特異性を有しうる。別の例では、C5aに結合する抗体が、sc−52633(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、Santa Cruz、California)、I52−1486(BD Pharmingen/BD Biosciences)、ab11877(Abcam、Cambridge、Massachusetts)、およびHM2079(クローン2952;HyCult Biotechnology、the Netherlands)などであるがこれらに限定されない、市販のC5aネオエピトープ特異的抗体の結合特異性を有しうる。一部の実施形態では、C5aに結合する抗体が、前述のC5aネオエピトープ特異的抗体のうちのいずれかの結合を交差遮断しうる。
【0101】
一部の実施形態では、C5阻害剤が、哺乳動物(例えば、ヒト)C5aタンパク質に結合する抗体でありうる。例えば、抗体は、以下のアミノ酸配列:
【0102】
【化5】

【0103】
を有するヒトC5aタンパク質に結合しうる。抗体は、アミノ酸配列:
【0104】
【化6】

【0105】
内のエピトープまたはこのアミノ酸配列と重複するエピトープにおいて、ヒトC5aに結合しうる。一部の実施形態では、抗体が、配列番号12〜25のうちのいずれか1つにおいて示される、少なくとも4つ(例えば、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、または17以上)の連続アミノ酸を含有するか、またはこれらの連続アミノ酸からなるアミノ酸配列を含有する、ヒトC5aタンパク質またはその断片に結合しうる。本明細書に記載される抗体が結合しうる、さらなるC5aタンパク質断片、および適切なC5a特異的抗原結合部位を生成させるための方法は、例えば、その開示が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第4,686,100号に示されている。
【0106】
一部の実施形態では、C5aに対する抗体の結合が、C5aの生物学的活性を阻害しうる。C5aの活性を測定するための方法には、例えば、走化性アッセイ、RIA、またはELISA(例えば、Ward and Zvaifler (1971) J Clin Invest 50(3):606−16およびWurzner et al. (1991) Complement Inflamm :328−340を参照されたい)が含まれる。一部の実施形態では、C5aに対する抗体の結合が、C5aとC5aR1との相互作用を阻害しうる。当技術分野では、C5aとC5aR1との相互作用(抗体の存在下および非存在下における)を検出および/または測定するのに適する方法が公知であり、例えば、Mary and Boulay (1993) Eur J Haematol 51(5):282−287; Kaneko et al. (1995) Immunology 86(1):149−154; Giannini et al. (1995) J Biol Chem 270(32):19166−19172;および米国特許出願公開第20060160726号に記載されている。例えば、抗体の存在下および非存在下において、C5aR1を発現する末梢血単核細胞に対する、検出可能に標識した(例えば、放射性標識した)C5aの結合を評価することができる。抗体の存在下においてC5aR1に結合する、検出可能に標識したC5aの量が、抗体の非存在下における結合量と比較して減少すれば、この抗体が、C5aとC5aR1との相互作用を阻害することが示される。一部の実施形態では、抗体がC5aに結合すると、C5aとC5L2との相互作用が阻害されうる(下記を参照されたい)。当技術分野では、C5aとC5L2との相互作用を検出および/または測定するための方法が公知であり、例えば、Ward (2009) J Mol Med 87(4):375−378およびChen et al. (2007) Nature 446(7132):203−207に記載されている(下記を参照されたい)。
【0107】
一部の実施形態では、C5阻害剤が、C5bに結合する抗体(本明細書では、時には、「抗C5b抗体」と称する)である。一部の実施形態では、抗体が、C5bに結合するが、全長C5には結合しない。C5bの構造は、上記で説明されており、また、例えば、Mueller−Eberhard (1985) Biochem Soc Symp 50:235−246; Yamamoto and Gewurz (1978) J Immunol 120(6):2008−2015;およびHaviland et al. (1991)、前出においても詳述されている。上記で説明した通り、C5bは、C6、C7、およびC8と結合して、標的細胞の表面において、C5b−8複合体を形成する。一連の結合の間に形成されるタンパク質複合体の中間体には、C5b−6(C5bおよびC6を包含する)、C5b−7(C5b、C6、およびC7を包含する)、およびC5b−8(C5b、C6、C7、およびC8を包含する)が含まれる。数個のC9分子が結合すると、膜傷害複合体(MAC;C5b−9終末補体複合体:TCC)が形成される。十分な数のMACが標的細胞の膜へと挿入されると、MACが創出する開口部(MAC小孔)が、標的細胞に対する迅速な浸透圧性溶解を媒介する。
【0108】
一部の実施形態では、C5bに対する抗体の結合が、C5bとC6との相互作用を阻害しうる。一部の実施形態では、C5bに対する抗体の結合が、C5b−9 MAC−TCCのアセンブリーまたは活性を阻害しうる。一部の実施形態では、C5bに対する抗体の結合が、補体依存性細胞溶解(例えば、in vitroおよび/またはin vivoにおける)を阻害しうる。抗体が、補体依存性溶解を阻害するかどうかを評価するのに適する方法には、例えば、溶血アッセイ、または可溶性C5b−9の活性を検出するための他の機能的アッセイが含まれる。例えば、抗体の存在下における補体の細胞溶解能の低下は、Kabat and Mayer (編), “Experimental Immunochemistry,第2版,” 135−240, Springfield, IL, CC Thomas (1961), 135−139頁により説明されている溶血アッセイ、または、例えば、Hillmen et al. (2004) N Engl J Med 350(6):552に記載されているトリ赤血球溶血法などのアッセイに対する従来の変法により測定することができる。
【0109】
当技術分野では、C5bに結合する抗体のほか、このような抗体を作製するための方法も公知である。例えば、米国特許第6,355,245号を参照されたい。市販の抗C5b抗体は、例えば、Hycult Biotechnology(型番:HM2080;クローン568)およびAbcam(商標)(ab46151またはab46168)を含めた多数の販売元から利用可能である。
【0110】
一部の実施形態では、C5阻害剤が、C5bの哺乳動物(例えば、ヒト)形態に結合する抗体である。例えば、抗体は、以下のアミノ酸配列:
【0111】
【化7】

【0112】
を有するヒトC5bタンパク質の一部に結合しうる。一部の実施形態では、抗体が、以下のアミノ酸配列:
【0113】
【化8】

【0114】
を有するヒトC5bタンパク質の一部に結合しうる。一部の実施形態では、抗体が、配列番号4または配列番号26において示される、少なくとも4つ(例えば、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20以上)の連続アミノ酸を含有するか、またはこれらの連続アミノ酸からなるアミノ酸配列を含有する、ヒトC5bタンパク質またはその断片に結合しうる。
【0115】
C5阻害剤抗体が結合しうるヒトC5bまたはC5aのさらなる例示的な亜断片は、例えば、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,355,245号において開示されている。
【0116】
一部の実施形態では、阻害剤が、C5aポリペプチド(例えば、配列番号12に示されているアミノ酸配列を有するヒトC5aポリペプチド)に特異的に結合する抗体である。一部の実施形態では、阻害剤が、C5bポリペプチドに特異的に結合する抗体である。
【0117】
特定の剤が、ヒト補体成分C5の阻害剤であるかどうかを決定する方法は、本明細書に記載されており、当技術分野においても公知である。例えば、体液中のC5aおよびC5bの濃度および/または生理学的活性は、当技術分野において周知の方法により測定することができる。C5aの濃度または活性を測定するための方法には、例えば、走化性アッセイ、RIA、またはELISA(例えば、Ward and Zvaifler (1971) J Clin Invest 50(3):606−16およびWurzner et al. (1991) Complement Inflamm :328−340を参照されたい)が含まれる。C5bについては、本明細書で論じられる、溶血アッセイまたは可溶性C5b−9についてのアッセイを用いることができる。当技術分野において公知の他のアッセイもまた用いることができる。例えば、本明細書に記載される方法において有用である化合物を同定し、このような化合物の適切な投与量レベルを決定するためには、これらの種類のアッセイまたは他の適切な種類のアッセイを用いて、抗C5抗体など、ヒト補体成分C5を阻害することが可能な候補剤をスクリーニングすることができる。
【0118】
分子生物学の技術分野では、mRNAまたはタンパク質の発現の阻害(例えば、ヒトC5タンパク質の発現、またはヒトC5タンパク質をコードするmRNAの発現の阻害)を検出するための方法が周知であり、これらには、例えば、mRNAのためのノーザンブロット法およびRT−PCR(または定量的RT−PCR)法、およびタンパク質を検出する場合は、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、またはELISA法が含まれる。例えば、Sambrook et al. (1989) “Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,” Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Yを参照されたい。
【0119】
当技術分野では、ヒトC5が形態C5aおよびC5bへと切断されることを、候補化合物が阻害するかどうかを決定するための方法が公知であり、例えば、 Moongkarndi et al. (1982) Immunobiol 162:397; Moongkarndi et al. (1983) Immunobiol 165:323; Isenman et al. (1980) J Immunol 124(1):326−31; Thomas et al. (1996) Mol Immunol 33(17−18):1389−401;およびEvans et al. (1995) Mol Immunol 32(16):1183−95に記載されている。
【0120】
ヒト補体成分C5を阻害するとまた、被験体の体液中の補体の細胞溶解能も低減されうる。存在する補体の細胞溶解能に対するこのような低減は、例えば、Kabat and Mayer (編), “Experimental Immunochemistry,第2版,” 135−240, Springfield, IL, CC Thomas (1961),135−139頁により説明されている溶血アッセイなどの従来の溶血アッセイ、または、例えば、Hillmen et al. (2004) N Engl J Med 350(6):552に記載されているトリ赤血球溶血法などのアッセイに対する従来の変法など、当技術分野において周知の方法により測定することができる。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物が、インターフェロンアルファ阻害剤を含有しうる。インターフェロンアルファに結合するか、またはインターフェロンアルファの生成および/もしくは活性を他の方法で遮断する任意の化合物を、本開示に従い用いることができる。例えば、インターフェロンアルファ阻害剤は、例えば、低分子、核酸もしくは核酸類似体(例えば、siRNA、dsRNA、リボザイム、三重螺旋形成剤、アプタマー)、ペプチド模倣体、または核酸もしくはタンパク質以外の高分子でありうる。これらの剤には、有機低分子、RNAアプタマー、L−RNAアプタマー、シュピーゲルマー、アンチセンス化合物、二本鎖RNA、低分子干渉RNA、ロックト核酸による阻害剤、およびペプチド核酸による阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、タンパク質またはタンパク質断片でありうる。一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファが結合する受容体(インターフェロンアルファ受容体)の阻害剤である。ヒトインターフェロンアルファ受容体は、例えば、Novick et al. (1994) Cell 77(3):391−400; Chill et al. (2003) Structure 11(7):791−802;およびUze’ et al. (2007) Curr Top Microbiol Immunol 316:71−95に記載されている。一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファまたはその受容体に結合し、インターフェロンアルファとその受容体との相互作用を阻害する。
【0122】
一部の実施形態では、インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片である。(本明細書の以下では、時には、その抗体を、「抗インターフェロンアルファ抗体」と称することもある)。当技術分野では、例示的な抗インターフェロンアルファ抗体が公知であり、例えば、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20090324605号、同第20070059309号、および同第20080160030号;米国特許第7,087,726号および同第4,423,147号に記載されている。
【0123】
本明細書に記載される組成物および方法において用いうる、さらなる例示的な抗インターフェロンアルファ抗体には、例えば、MEDI−545(MDX−1103;AstraZeneca/Medimmune)が含まれる。
抗体を生成させるための方法
当技術分野では、本開示に従い、抗体(例えば、抗C5抗体または抗インターフェロンアルファ抗体)またはこれらの抗原結合断片を生成させるのに適する方法が公知であり(例えば、米国特許第6,355,245号を参照されたい)、本明細書に記載される。例えば、補体成分C5発現細胞、C5ポリペプチド、またはC5ポリペプチドの抗原断片を免疫原として用い、これにより、そこから抗体産生細胞、そして、次にはモノクローナル抗体を単離しうる動物において免疫反応を引き起こして、抗C5モノクローナル抗体を生成させることができる。このような抗体の配列を決定することができ、抗体またはそれらのバリアントを、組換え法により生成させることができる。ヒト補体成分C5に結合することが可能なモノクローナル抗体ならびにポリペプチドの配列に基づき、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体を生成させるのに、組換え法を用いることができる。同様に、インターフェロンアルファポリペプチド、またはインターフェロンアルファポリペプチドの抗原断片を免疫原として用い、これにより、そこから抗体産生細胞、そして、次にはモノクローナル抗体を単離しうる動物において免疫反応を引き起こして、抗インターフェロンアルファモノクローナル抗体を生成させることができる。
【0124】
さらに、補体成分タンパク質またはインターフェロンアルファなどの抗原ポリペプチドを、標的特異性に基づき抗体またはポリペプチドを単離するためのベイト(bait)として用いて、組換えライブラリーに由来する抗体(「ファージ抗体」)を選択することができる。非ヒト抗体およびキメラ抗体の生成および単離は、十分に当業者の専門の範囲内にある。
【0125】
組換えDNA法を用いて、非ヒト細胞において生成させる抗体の1つ以上の特徴を改変することができる。したがって、診断適用または治療適用におけるその免疫原性を低下させるために、キメラ抗体を構築することができる。さらに、CDR移植、および、必要に応じて、フレームワーク改変による抗体をヒト化することにより、免疫原性を最小化することもできる。それらの各々の内容が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,225,539号、および同第7,393,648号を参照されたい。
【0126】
抗体は、動物の血清から得ることもでき、モノクローナル抗体またはそれらの断片の場合には、細胞培養物中で生成させることもできる。細菌細胞培養物または好ましくは哺乳動物細胞培養物における手順を含め、確立された手順に従い抗体を生成させるのに、組換えDNA法を用いることができる。選択される細胞培養系は、抗体生成物を分泌することが好ましい。
【0127】
別の実施形態では、本明細書で開示される抗体を生成するためのプロセスが、ハイブリッドベクターにより形質転換された宿主細胞、例えば、E.coli細胞または哺乳動物細胞を培養するステップを包含する。ベクターは、抗体タンパク質をコードする第2のDNA配列に対して、適正なリーディングフレームにおいて連結された、シグナルペプチドをコードする第1のDNA配列に作動可能に連結されたプロモーターを含有する、1つ以上の発現カセットを包含する。次いで、抗体タンパク質を回収および単離する。必要に応じて、発現カセットは、各々が個別に、適正なリーディングフレームにおいてシグナルペプチドに作動可能に連結された、抗体タンパク質をコードするポリシストロニック(例えば、バイシストロニック)のDNA配列に作動可能に連結されたプロモーターを包含しうる。
【0128】
in vitroにおけるハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖は、必要に応じて、哺乳動物の血清(例えば、ウシ胎仔血清)、または微量元素、および増殖を維持する補充物質(例えば、正常マウス腹腔滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージなどのフィーダー細胞、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)を補充した、従来の標準的な培養培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはRPMI 1640培地など)が含まれる、適切な培養培地中で実施される。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖もまた、当技術分野において公知の適切な培養培地中で実施される。例えば、細菌に適する培養培地には、LE培地、NZCYM培地、NZYM培地、NZM培地、Terrific Broth培地、SOB培地、SOC培地、2倍濃度のYT培地、またはM9最小培地が含まれる。酵母の場合、適切な培養培地には、YPD培地、YEPD培地、最小培地、または完全最小ドロップアウト培地が含まれる。
【0129】
in vitroにおける生成は、比較的純粋な抗体調製物をもたらし、所望の抗体を大量に与えるためのスケールアップ生成を可能とする。当技術分野では、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞を培養するための技法が公知であり、これには、ホモジニアスな懸濁培養(例えば、エアリフト反応器または連続撹拌反応器による培養)、および固定化細胞培養または捕捉細胞培養(例えば、中空糸、マイクロカプセル、アガロース製マイクロビーズ、またはセラミック製カートリッジによる培養)が含まれる。
【0130】
大量の所望の抗体はまた、in vivoにおいて哺乳動物細胞を増殖させることによっても得ることができる。この目的では、所望の抗体を生成するハイブリドーマ細胞を、組織適合性の哺乳動物へと注射し、抗体生成腫瘍を増殖させる。必要に応じて、動物を、炭化水素、とりわけ、プリスタン(テトラメチルペンタデカン)などの鉱油でプライミングしてから注射する。1〜3週間後、これらの哺乳動物の体液から抗体を単離する。例えば、Balb/cマウスに由来する抗体生成脾臓細胞と適切な骨髄腫細胞との融合により得られるハイブリドーマ細胞、または所望の抗体を生成するハイブリドーマ細胞系であるSp2/0に由来するトランスフェクト細胞を、必要に応じて、プリスタンで前処置したBalb/cマウスの腹腔内に注射する。1〜2週間後、これらの動物から腹水を採取する。
【0131】
前出の技法および他の技法は、例えば、それらの開示がすべて、参照により本明細書に組み込まれる、KohlerおよびMilstein(1975年)、Nature、256巻:495〜497頁;米国特許第4,376,110号; HarlowおよびLane、Antibodies: a Laboratory Manual、(1988年)、Cold Spring Harborに記載されている。組換え抗体分子を調製するための技法は、上記の参考文献に記載されており、また、例えば、それらの各々の内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO97/08320;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,508,717号;Smith (1985) Science 225:1315−1317; Parmley and Smith (1988) Gene 73:305−318; De La Cruz et al. (1988) Journal of Biological Chemistry 263:4318−4322; U.S. Patent No. 5,403,484;米国特許第5,223,409; WO88/06630; WO92/15679;米国特許第5,780,279;米国特許第5,571,698;米国特許第6,040,136; Davis et al. (1999) Cancer Metastasis Rev 18(4):421−5;およびTaylor et al. (1992) Nucleic Acids Research 20: 6287−6295; Tomizuka et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97(2): 722−727においても記載されている。
【0132】
例えば、免疫ブロット法、酵素免疫アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイもしくはドットアッセイ、またはラジオイムノアッセイにより、細胞培養上清を、所望の抗体についてスクリーニングする。
【0133】
抗体を単離するためには、培養上清中、または腹水中の免疫グロブリンを、例えば、硫酸アンモニウムによる沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性材料に対する透析、選択膜を介する濾過などにより濃縮することができる。必要および/または所望の場合は、従来のクロマトグラフィー法、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースによるクロマトグラフィー、および/または(免疫)アフィニティークロマトグラフィー、例えば、補体成分C5発現細胞系に由来する1つ以上の表面ポリペプチド、またはプロテインAもしくはプロテインGによるアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製する。
【0134】
別の実施形態は、適切な哺乳動物において、タンパク質(例えば、補体タンパク質またはインターフェロンアルファ)に対して指向する抗体を分泌する細菌細胞系を調製するためのプロセスを提供する。当技術分野において周知の方法(例えば、参照により本明細書に組み込まれる多様な参考文献において開示されている方法など)に従い、免疫したウサギから生成させるファージディスプレイライブラリーを構築し、所望の抗体についてこれをパニングする。
【0135】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞もまた開示される。好ましいハイブリドーマ細胞は、遺伝子的に安定であり、本明細書に記載される、所望の特異性を有するモノクローナル抗体を分泌し、十分に凍結させた培養物から、in vitroにおける解凍および増殖により増やすこともでき、in vivoにおける腹水として増やすこともできる。
【0136】
別の実施形態では、対象のタンパク質(例えば、C5タンパク質またはインターフェロンアルファ)に対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞系を調製するためのプロセスが提供される。このプロセスでは、適切な哺乳動物、例えば、Balb/cマウスを、対象の1つ以上のポリペプチド抗原またはこれらの抗原断片により免疫する。免疫した哺乳動物の抗体産生細胞を、培養で短時間にわたり増殖させるか、または適切な骨髄腫細胞系の細胞と融合させる。融合により得られるハイブリッド細胞をクローニングし、所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択する。ハイブリドーマ細胞系を調製するための方法は、対象のタンパク質(またはその免疫原性断片)を含有する免疫原性組成物を、数カ月間、例えば、2〜4カ月間、数回、例えば、4〜6回にわたり皮下注射および/または腹腔内注射することにより、Balb/cマウスを免疫するステップを包含する。最終回の注射の2〜4日後に、免疫したマウスから脾臓細胞を採取し、融合プロモーター、好ましくはポリエチレングリコールの存在下において、骨髄腫細胞系であるPAIと融合させる。分子量約4000のポリエチレングリコール約30%〜約50%を含有する溶液において、骨髄腫細胞を、3〜20倍過剰の、免疫したマウスからの脾臓細胞と融合させることが好ましい。融合させた後、通常の骨髄腫細胞が、所望のハイブリドーマ細胞を凌駕して増殖することを阻止するために、定期的な間隔で選択培地、例えば、HAT培地を補充して、前出に記載された、適切な培養培地中で細胞を増殖させる。
【0137】
抗体およびそれらの断片は、「キメラ」でありうる。キメラ抗体およびそれらの抗原結合断片は、2つ以上の異なる種(例えば、マウスおよびヒト)に由来する部分を含む。キメラ抗体は、所望の特異性を有するマウス可変領域を、ヒト定常ドメインの遺伝子セグメントへとスプライシングすることにより生成させることができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。このようにして、非ヒト抗体を、それらが、ヒトへの臨床適用(例えば、ヒト被験体において、ドゴー病を処置または予防するための方法)に、より適切となるように改変することができる。
【0138】
本開示のモノクローナル抗体には、非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態が含まれる。ヒト化mAbまたはCDR移植mAbは、マウス抗体ほど急速には循環からクリアランスされず、典型的には有害な免疫反応を引き起こさないため、ヒトに対する治療剤として特に有用である。当技術分野では、ヒト化抗体を調製する方法が一般に周知である。例えば、ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者らの方法(例えば、Jones et al.(1986) Nature 321:522−525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323−327; およびVerhoeyen et al. (1988) Science 239:1534−1536を参照されたい)に従い、げっ歯動物のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することにより実施することができる。また、例えば、Staelens et al. (2006) Mol Immunol 43:1243−1257も参照されたい。一部の実施形態では、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態が、ヒト抗体(レシピエント抗体)であり、そこでは、レシピエント抗体の超可変(CDR)領域残基を、所望の特異性、アフィニティー、および結合能を有する、マウス、ラット、ウサギ、および非ヒト霊長動物など、非ヒト種に由来する超可変領域残基(ドナー抗体)で置き換える。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域の残基もまた、対応する非ヒト残基によって置き換えられる(いわゆる、「復帰突然変異」)。加えて、ファージディスプレイライブラリーを用いて、抗体配列内の選択した位置において、アミノ酸を変化させることもできる。ヒト化抗体の特性はまた、ヒトフレームワークの選択によっても影響を受ける。さらに、例えば、アフィニティーまたはエフェクター機能などの抗体特性をさらに改善するために、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても見出されない残基を含むように、ヒト化抗体およびキメラ化抗体を改変することもできる。
【0139】
本開示では、完全ヒト抗体もまた提供される。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域(存在する場合)を有する抗体を包含する。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってはコードされないアミノ酸残基を包含しうる(例えば、in vitroにおける無作為的変異誘発または部位特異的変異誘発により導入される変異、またはin vivoにおける体細胞変異により導入される変異)。しかし、「ヒト抗体」という用語は、マウスなど別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へと移植された抗体(すなわち、ヒト化抗体)は包含しない。完全ヒト抗体またはヒト抗体は、ヒト抗体遺伝子を保有するトランスジェニックマウス(可変(V)エクソン、多様性(D)エクソン、連結(J)エクソン、および定常(C)エクソンを保有するトランスジェニックマウス)から誘導することもでき、ヒト細胞から誘導することもできる。例えば、現在では、免疫すると、内因性免疫グロブリン生成の非存在下において、ヒト抗体の完全なレパートリーを生成させることが可能なトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)を生成させることが可能である。例えば、Jakobovits et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:2551; Jakobovits et al. (1993) Nature 362:255−258; Bruggemann et al. (1993) Year in Immunol :33;およびDuchosal et al. (1992) Nature 355:258を参照されたい。トランスジェニックマウス株は、再配列させていないヒト免疫グロブリン遺伝子に由来する遺伝子配列を含有するように操作することができる。ヒト配列は、ヒト抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードすることが可能であり、マウスにおいて適正に機能し、再配列を受けて、ヒトにおける抗体と類似する広範な抗体レパートリーをもたらすことになる。トランスジェニックマウスを標的タンパク質により免疫して、特異的な抗体およびこれらをコードするRNAの多様なアレイを創出することができる。次いで、このような抗体の抗体鎖の構成要素をコードする核酸を、トランスジェニック動物から、ディスプレイベクターへとクローニングすることができる。重鎖配列および軽鎖配列をコードする核酸の個別の集団をクローニングし、次いで、ベクターの任意の所与のコピーが、重鎖および軽鎖の無作為の組合せを受容するように、これらの個別の集団を、ベクターへと挿入して組み替える。ベクターを含有するディスプレイパッケージの外部表面において、抗体鎖がアセンブリーおよびディスプレイされうるようにベクターをデザインして、抗体鎖を発現させる。例えば、抗体鎖は、ファージの外部表面に由来するファージコートタンパク質との融合タンパク質として発現させることができる。その後、標的に結合する抗体のディスプレイについて、ディスプレイパッケージをスクリーニングすることができる。
【0140】
加えて、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーから誘導することもできる(Hoogenboom et al. (1991) J Mol Biol 227:381; Marks et al. (1991) J Mol Biol, 222:581−597;およびVaughan et al. (1996) Nature Biotech 14:309 (1996))。合成によるヒト抗体V領域の無作為化組合せを用いる、合成ファージライブラリーを創出することができる。抗原について選択することにより、V領域の性質が、極めてヒト様である完全ヒト抗体を作製することができる。例えば、それらの各々の内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,794,132号、同第6,680,209号、同第4,634,666号;およびOstberg et al. (1983), Hybridoma :361−367を参照されたい。
【0141】
ヒト抗体を生成させるにはまた、それらの開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Mendez et al. (1998) Nature Genetics 15:146−156 およびGreen and Jakobovits (1998) J Exp Med 188:483−495も参照されたい。ヒト抗体は、米国特許第5,939,598号;同第6,673,986号;同第6,114,598号;同第6,075,181号;同第6,162,963号;同第6,150,584号;同第6,713,610号;および同第6,657,103号のほか、米国特許公開第2003−0229905A1号、同第2004−0010810A1号、同第US2004−0093622A1号、同第2006−0040363A1号、同第2005−0054055A1号、同第2005−0076395A1号、同第2005−0287630A1号においてもさらに論じられ、詳述されている。また、国際特許公開第WO94/02602号、同第WO96/34096号、および同第WO98/24893号;ならびに欧州特許第EP0463151B1号も参照されたい。上記で引用した特許、特許出願、および参考文献は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0142】
代替的なアプローチでは、GenPharm International,Inc.を含めた他の研究者らが、「ミニ遺伝子座」アプローチを用いている。ミニ遺伝子座アプローチでは、Ig遺伝子座に由来する小片(個別の遺伝子)を組み入れることにより、外因性Ig遺伝子座を模倣する。したがって、1つ以上のV遺伝子、1つ以上のD遺伝子、1つ以上のJ遺伝子、ミュー定常領域、および第2の定常領域(好ましくは、ガンマ定常領域)を構築物へと形成して動物へと挿入する。このアプローチは、例えば、それらの開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,625,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;同第5,770,429号;同第5,789,650号;および同第5,814,318号;同第5,591,669号;同第5,612,205号;同第5,721,367号;同第5,789,215号;同第5,643,763号;同第5,569,825号;同第5,877,397号;同第6,300,129号;同第5,874,299号;同第6,255,458号;および同第7,041,871号に記載されている。また、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、欧州特許第0546073B1号;国際特許出願公開第WO92/03918号、同第WO92/22645号、同第WO92/22647号、同第WO92/22670号、同第WO93/12227号、同第WO94/00569号、同第WO94/25585号、同第WO96/14436号、同第WO97/13852号、および同第WO98/24884号も参照されたい。さらに、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Taylor et al. (1992) Nucleic Acids Res 20: 6287; Chen et al. (1993) Int. Immunol. : 647; Tuaillon et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90: 3720−4; Choi et al. (1993) Nature Genetics : 117; Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856−859; Taylor et al. (1994) International Immunology : 579−591; Tuaillon et al. (1995) J Immunol 154: 6453−65; Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845; およびTuaillon et al. (2000) Eur J Immunol. 10: 2998−3005も参照されたい。
【0143】
特定の実施形態では、脱免疫化抗体またはそれらの抗原結合断片が提供される。脱免疫化抗体またはそれらの抗原結合断片とは、これらの抗体またはそれらの抗原結合断片を、所与の種に対して(例えば、ヒトに対して)非免疫原性とするか、またはこれらに対する免疫原性を低下させるように改変した抗体である。脱免疫化は、当業者に公知である各種の技法のうちのいずれか(例えば、PCT特許公開第WO04/108158号および同第WO00/34317号を参照されたい)を用いて、抗体またはそれらの抗原結合断片を改変することにより達成することができる。例えば、抗体またはそれらの抗原結合断片のアミノ酸配列内の潜在的なT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを同定し、例えば、組換え法を用いて、これらの抗体またはそれらの抗原結合断片から、上記潜在的なT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープのうちの1つ以上を除去することにより、抗体またはそれらの抗原結合断片を脱免疫化することができる。次いで、必要に応じて、改変した抗体またはそれらの抗原結合断片を生成させ、これらを調べて、例えば、結合アフィニティーなど、1つ以上の所望の生物学的活性を保持しているが、免疫原性は低下させている抗体またはそれらの抗原結合断片を同定することもできる。潜在的なT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを同定するための方法は、例えば、コンピュータによる方法(例えば、PCT特許公開第WO02/069232号を参照されたい)、in vitroまたはin silicoにおける技法、および生物学的アッセイまたは物理的方法(例えば、MHC分子に対するペプチドの結合の決定;抗体もしくはその抗原結合断片を受けとる種に由来するT細胞受容体に対するペプチド:MHC複合体の結合の決定;抗体またはその抗原結合断片を受けとる種のMHC分子を有するトランスジェニック動物を用いる、タンパク質もしくはそのペプチド部分についての試験;または抗体またはその抗原結合断片を受けとる種に由来する免疫系細胞により再構成されたトランスジェニック動物による試験などのような)などの当技術分野において公知の技法を用いて実施することができる。各種の実施形態では、本明細書に記載される脱免疫化抗体に、脱免疫化した抗原結合断片、Fab、Fv、scFv、Fab’、およびF(ab’)、モノクローナル抗体、マウス抗体、操作抗体(例えば、キメラ抗体、単鎖抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および人工的に選択した抗体など)、合成抗体および半合成抗体が含まれる。
【0144】
一部の実施形態では、抗体(例えば、抗C5抗体または抗インターフェロンアルファ抗体)の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする挿入物を含む組換えDNAを生成させ、抗体を発現させるための宿主細胞へとトランスフェクトする。DNAという用語は、一本鎖コードDNA、上記コードDNAおよびこれと相補的なDNAからなる二本鎖DNA、またはこれらの相補的(一本鎖)DNA自体を包含する。
【0145】
さらに、抗C5抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAは、重鎖可変ドメインおよび/もしくは軽鎖可変ドメイン、またはこれらの変異体をコードする真正DNAの配列を含有するように、酵素的または化学的に合成することもできる。真正DNAの変異体とは、1つ以上のアミノ酸が、欠失しているか、挿入されているか、または1つ以上のアミノ酸と交換されている、上記の抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。上記改変(複数可)は、ヒト化適用および発現最適化適用される抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外部にあることが好ましい。変異体DNAという用語はまた、1つ以上のヌクレオチドが、同じアミノ酸(複数可)をコードする新たなコドンを伴う他のヌクレオチドで置き換えられるサイレント変異体も包含する。変異体配列という用語はまた、縮重配列も包含する。縮重配列とは、非限定的な数のヌクレオチドが、元来コードされるアミノ酸配列の変化を結果としてもたらさずに、他のヌクレオチドによって置き換えられるという点で、遺伝子コードの意味の範囲内で縮重である。このような縮重配列は、マウス重鎖可変ドメインおよび/またはマウス軽鎖可変ドメインの最適な発現を得るように、特定の宿主、特に、E. coliにより優先される、それらの異なる制限部位および/または特定のコドン頻度のために有用でありうる。
【0146】
変異体という用語は、当技術分野において公知の方法により、真正DNAをin vitroにおいて変異誘発することにより得られるDNA変異体を包含することを意図する。
【0147】
キメラ抗体の完全な四量体の免疫グロブリン分子をアセンブリーし、これを発現させるためには、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードする組換えDNA挿入物を、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする、対応するDNAと融合させ、次いで、例えば、ハイブリッドベクター内に組み込んだ後に、適切な宿主細胞へと移入する。
【0148】
別の実施形態は、組換えポリペプチドをコードする組換えDNAに関し、この場合、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを促進するシグナル配列、および/または抗体の精製を容易にするペプチドをコードするDNA配列、および/または切断部位、および/またはペプチドスペーサー、および/または剤も含むスペーサーグループにより連結する。剤をコードするDNAは、診断適用または治療適用において有用な剤をコードするDNAであることを意図する。したがって、毒素または酵素、とりわけ、プロドラッグの活性化を触媒することが可能な酵素である剤分子が、特に必要とされる。このような剤をコードするDNAは、天然に存在する酵素または毒素をコードするDNA、またはその変異体の配列を有し、当技術分野において周知の方法により調製することができる。
【0149】
したがって、本開示のモノクローナル抗体または抗原結合断片は、他の剤、例えば、治療剤または検出可能な標識に結合体化されていない、裸の抗体または抗原結合断片でありうる。あるいは、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、例えば、細胞傷害剤、低分子、ホルモン、酵素、増殖因子、サイトカイン、リボザイム、ペプチド模倣物、化学物質、プロドラッグ、コード配列を含めた核酸分子(アンチセンス、RNAi、遺伝子標的化構築物などのような)、または検出可能な標識(例えば、NMR造影剤またはX線造影剤、蛍光分子など)などの剤に結合体化することもできる。特定の実施形態では、抗C5抗体または抗原結合断片(例えば、Fab、Fv、単鎖scFv、Fab’、およびF(ab’))を、抗体または抗原結合断片の半減期を延長する分子に連結する(上記を参照されたい)。
【0150】
哺乳動物細胞においてクローニングされた重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を発現させるには、数個の可能なベクター系が利用可能である。ベクターの1クラスは、所望の遺伝子配列の、宿主細胞のゲノムへの組み込みに依拠する。DNAを安定的に組み込んだ細胞は、E. coliのgpt(Mulligan and Berg (1981) Proc Natl Acad Sci USA, 78:2072)またはTn5 neo(Southern and Berg (1982) Mol Appl Genet :327)などの薬物耐性遺伝子を同時に導入することにより選択することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現させるDNA遺伝子配列に連結することができるか、同時トランスフェクションにより同じ細胞へと導入することができる(Wigler et al. (1979) Cell 16:77)。ベクターの第2のクラスは、染色体外のプラスミドに複製能を自動的に付与するDNAエレメントを用いる。これらのベクターは、ウシパピローマウイルス(Sarver et al. (1982) Proc Natl Acad Sci USA, 79:7147)、ポリオーマウイルス(Deans et al. (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81:1292)、またはSV40ウイルス(Lusky and Botchan (1981) Nature 293:79)などの動物ウイルスに由来しうる。
【0151】
免疫グロブリンのcDNAは、抗体タンパク質をコードする成熟mRNAを表す配列だけから構成されるので、免疫グロブリンのmRNAを合成するには、遺伝子の転写およびRNAのプロセシングを制御する、さらなる遺伝子発現エレメントが必要とされる。これらのエレメントには、スプライスシグナル、誘導性プロモーターを含めた転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルが含まれうる。このようなエレメントを組み込むcDNA発現ベクターには、Okayama and Berg (1983) Mol Cell Biol :280; Cepko et al. (1984) Cell 37:1053;およびKaufman (1985) Proc Natl Acad Sci USA 82:689により説明されているcDNA発現ベクターが含まれる。
【0152】
本開示の治療的実施形態では、二重特異性抗体が意図される。二重特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。本発明の場合、結合特異性のうちの1つが、ヒト補体タンパク質またはインターフェロンアルファタンパク質に対するものであり、他の結合特異性は、他の任意の抗原に対するものである。
【0153】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当業者の専門の範囲内にある。従来、組換えによる二重特異性抗体の生成は、2つの重鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対を同時発現させることに基づいている(MilsteinおよびCuello(1983年)、Nature、305巻:537〜539頁)。所望の結合特異性を有する抗体の可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合させることができる。融合は、少なくともヒンジ領域、C2領域、およびC3領域のうちの一部を含めた、免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとの融合であることが好ましい。免疫グロブリンの重鎖融合体をコードするDNAと、所望の場合は、免疫グロブリンの軽鎖をコードするDNAとを、個別の発現ベクターへと挿入し、適切な宿主生物へと同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を生成させるための例示的な現在公知の方法のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al. (1986) Methods in Enzymology 121:210; PCT特許公開第WO 96/27011; Brennan et al. (1985) Science 229:81; Shalaby et al., J Exp Med (1992) 175:217−225; Kostelny et al. (1992) J Immunol 148(5):1547−1553; Hollinger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:6444−6448; Gruber et al. (1994) J Immunol 152:5368; およびTutt et al. (1991) J Immunol 147:60を参照されたい。二重特異性抗体はまた、架橋抗体またはヘテロコンジュゲート抗体も包含する。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋形成法を用いて作製することができる。当技術分野では適切な架橋形成剤が周知であり、多くの架橋形成法と共に、米国特許第4,676,980号において開示されている。
【0154】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接作製および単離するための各種の技法もまた記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて二重特異性抗体を生成させている。例えば、Kostelny et al. (1992) J Immunol 148(5):1547−1553を参照されたい。Fosタンパク質およびJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結させることができる。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、次いで、これを再酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成することができる。この方法はまた、抗体のホモ二量体を生成させるのにも用いることができる。Hollinger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:6444−6448により説明されている「ダイアボディ」法は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的な機構を提示している。これらの断片は、同じ鎖における2つのドメイン間の対合を可能とするには短すぎるリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)へと連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVHドメインおよびVLドメインは、別の断片の相補的なVLドメインおよびVHドメインと対合し、これにより2つの抗原結合部位を形成するように強制される。単鎖Fv(scFv)の二量体を用いることにより、二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略もまた報告されている。例えば、Gruber et al. (1994) J Immunol 152:5368を参照されたい。あるいは、抗体は、例えば、Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057−1062に記載されている通り、「線状抗体」でもありうる。略述すると、これらの抗体は、抗原結合領域の対を形成するタンデムのFdセグメント(V−C1−V−C1)の対を含む。線状抗体は、二重特異性であっても、単一特異性であってもよい。
【0155】
本開示はまた、Wu et al. (2007) Nat Biotechnol 25(11):1290−1297に記載されている、四価の二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)分子などの二重特異性抗体のバリアント形態も包含する。DVD−Ig分子は、2つの異なる親抗体に由来する2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)を、組換えDNA法により、直接に、または短いリンカーを介してタンデムに連結し、これに軽鎖定常ドメインを後続させるようにデザインする。例えば、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO08/024188号および同第WO07/024715号において、2つの親抗体からDVD−Ig分子を生成させるための方法がさらに記載されている。
【0156】
薬学的組成物および薬学的処方物
補体阻害剤(例えば、抗C5抗体もしくはその抗原結合断片などのヒト補体成分C5阻害剤、またはインターフェロンアルファ阻害剤)を含有する組成物は、薬学的組成物、例えば、被験体に投与してドゴー病を処置するための薬学的組成物として処方することができる。薬学的組成物は一般に、薬学的に許容されるキャリアを包含する。本明細書で用いられる「薬学的に許容されるキャリア」とは、生理学的に適合性である、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性剤および吸収遅延剤などを指し、これらが含まれる。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩または塩基付加塩を包含しうる(例えば、Berge et al. (1977) J Pharm Sci 66:1−19を参照されたい)。
【0157】
組成物は、標準的な方法に従って処方することができる。薬学的処方は、十分に確立された技術であり、例えば、Gennaro(2000年)、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins(ISBN:0683306472); Anselら(1999年)、「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);およびKibbe(2000年)、「Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association」、第3版(ISBN:091733096X)においてさらに記載されている。一部の実施形態では、組成物を、例えば、適切な濃度であり、2〜8℃で保存するのに適する緩衝化溶液として処方することができる。一部の実施形態では、組成物を、0℃未満の温度(例えば、−20℃または−80℃)で保存するように処方することができる。
【0158】
薬学的組成物は、各種の形態でありうる。これらの形態には、例えば、液体の溶液(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散物または懸濁物、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム、および坐剤など、液体の剤形、半固体の剤形、および固体の剤形が含まれる。好ましい形態は、部分的に、意図される投与方式および治療適用に依存する。例えば、全身送達または局所送達を意図する抗C5抗体を含有する組成物は、注射用溶液または注入用溶液の形態でありうる。したがって、組成物は、非経口方式(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、または筋肉内注射)による投与用に処方することができる。本明細書で用いられる「非経口投与」、「非経口投与される」、および他の文法的に同等の語句は、通常、注射による、経腸投与および局所投与以外の投与方式を指し、限定なしに述べると、静脈内注射および静脈内注入、鼻腔内注射および鼻腔内注入、眼内注射および眼内注入、肺(pulmonary)注射および肺注入、筋肉内注射および筋肉内注入、動脈内注射および動脈内注入、くも膜下腔内注射およびくも膜下腔内注入、包内注射および包内注入、眼窩内注射および眼窩内注入、心内注射および心内注入、皮内注射および皮内注入、肺内注射および肺内注入、腹腔内注射および腹腔内注入、経気管注射および経気管注入、皮下注射および皮下注入、表皮下注射および表皮下注入、関節内注射および関節内注入、被膜下注射および被膜下注入、くも膜下注射およびくも膜下注入、髄腔内注射および髄腔内注入、硬膜外注射および硬膜外注入、脳内注射および脳内注入、頭蓋内注射および頭蓋内注入、頸動脈内注射および頸動脈内注入、ならびに胸骨内注射および胸骨内注入が含まれる(下記を参照されたい)。
【0159】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、または高濃度での安定的な保存に適する他の規則構造物として処方することができる。滅菌の注射用溶液は、本明細書に記載される抗体を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に、必要とされる量で組み込み、続いて濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散物は、本明細書に記載されるヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)および/またはインターフェロンアルファ阻害剤を、基本的な分散媒および上記で列挙した成分に由来する、必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製法は、本明細書に記載される抗体に、あらかじめ滅菌濾過したその溶液に由来する任意のさらなる所望の成分を加えたものからの粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥を包含する。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散物の場合には、必要とされる粒子サイズを維持することにより、かつ、界面活性剤を用いることにより維持することができる。注射用組成物の吸収遅延は、組成物中に、吸収を遅延させる剤(reagent)、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
【0160】
特定の実施形態では、補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)またはインターフェロンアルファ阻害剤を、埋没物(implant)およびマイクロ封入送達系を含めた、制御放出処方物など、急速な放出に対して化合物を保護するキャリアと共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など、生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマーを用いることができる。当技術分野では、このような処方物を調製するための多くの方法が公知である。例えば、J.R. Robinson (1978) “Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,” Marcel Dekker, Inc., New Yorkを参照されたい。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書に記載される阻害剤を、ヒトなどの哺乳動物に対する肺内投与に適する組成物(例えば、噴霧器を介する投与に適する組成物)に処方することができる。当技術分野ではこのような組成物を調製するための方法が周知であり、例えば、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20080202513号;米国特許第7,112,341号および同第6,019,968号;およびPCT特許公開第WO00/061178号および同第WO06/122257号に記載されている。乾燥粉末吸入器用処方物、およびこれらの処方物を投与するのに適するシステムは、例えば、米国特許出願公開第20070235029号;およびPCT特許公開第WO00/69887号;および米国特許第5,997,848号に記載されている。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)またはインターフェロンアルファ阻害剤を、例えば、循環、例えば、血液、血清、または他の組織における安定化および/または貯留を改善する部分(moiety)により改変することができる。安定化部分(moiety)は、抗体の安定性または貯留を、少なくとも1.5倍(例えば、少なくとも2、5、10、15、20、25、30、40、または50倍以上)改善しうる。
【0163】
本明細書に記載される、核酸によるヒト補体阻害剤(例えば、アンチセンス核酸またはsiRNA)を、遺伝子治療プロトコールの一部として用いられる遺伝子構築物へと組み込んで、細胞内において剤を発現させ、生成させるのに用いうる核酸を送達することができる。このような構成要素による発現構築物は、任意の生物学的に有効なキャリア、例えば、in vivoにおいて、構成要素の遺伝子を細胞へと有効に送達することが可能な任意の処方物または組成物により投与することができる。アプローチには、組換えレトロウイルス、組換えアデノウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、組換えレンチウイルス、および組換え単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)、または組換え細菌プラスミドもしくは組換え真核生物プラスミドを含めたウイルスベクター内への対象遺伝子の挿入を包含する。ウイルスベクターは、細胞に直接トランスフェクトしうる;プラスミドDNAは、例えば、カチオン性リポソーム(リポフェクチン)または誘導体化リポソーム(例えば、抗体結合体化リポソーム)、ポリリシンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ、または他のこのような細胞内キャリアのほか、in vivoにおいて実施される、遺伝子構築物またはCaPO沈殿物の直接的な注射の支援により送達することができる(また、下記の「ex vivoにおけるアプローチ」も参照されたい)。適切なレトロウイルスベクターの例には、pLJ、pZIP、pWE、およびpEMが含まれ、これらは、当業者に公知である(例えば、Eglitis et al. (1985) Science 230:1395−1398; Danos and Mulligan (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:6460−6464; Wilson et al. (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:3014−3018; Armentano et al. (1990) Proc Natl Acad Sci USA 87:6141−6145; Huber et al. (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:8039−8043; Ferry et al. (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:8377−8381; Chowdhury et al. (1991) Science 254:1802−1805; van Beusechem et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:7640−7644; Kay et al. (1992) Human Gene Therapy :641−647; Dai et al. (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:10892−10895; Hwu et al. (1993) J Immunol 150:4104−4115;米国特許第4,868,116号および同第4,980,286号;PCT特許公開第WO89/07136号、同第WO89/02468号、同第WO89/05345号および同第WO92/07573号を参照されたい)。別のウイルス遺伝子送達系は、アデノウイルス由来ベクターを用いる(例えば、Berkner et al. (1988) BioTechniques :616; Rosenfeld et al. (1991) Science 252:431−434; およびRosenfeld et al. (1992) Cell 68:143−155を参照されたい)。当業者には、アデノウイルスAd5型dl324株またはアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2型、Ad3型、Ad7型などの株)に由来する適切なアデノウイルスベクターが公知である。対象の遺伝子を送達するのに有用な、さらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。例えば、Flotte et al. (1992) Am J Respir Cell Mol Biol :349−356; Samulski et al. (1989) J Virol 63:3822−3828;およびMcLaughlin et al. (1989) J Virol 62: 1963−1973を参照されたい。
【0164】
一部の実施形態では、1つ超(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上)の阻害剤(複数可)(例えば、1つ以上のヒトC5阻害剤)を、同時処方することができる。例えば、C5特異的siRNAおよび抗C5抗体を、一緒に処方することができる。
【0165】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片などのヒト補体阻害剤)またはインターフェロンアルファ阻害剤を、ドゴー病を処置するか、またはその症状を改善するのに有用な、1つ以上のさらなる活性剤と共に処方することができる。例えば、抗C5抗体は、免疫抑制剤と共に処方することができる。免疫抑制剤には、例えば、コルチコステロイド、フェニルブタゾン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、およびリツキシマブ(Rituxan(商標);Biogen Idec、Cambridge、MA)などの抗CD20剤が含まれる。一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤を、静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)、赤血球輸血、プラズマフェレーシス、または血漿交換と共に被験体に投与するために処方することができる。例えば、Dyrsen et al. (2008)(前出)およびZhu et al.(2007)、前出を参照されたい。
【0166】
一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤を、クロピドグレル、アスピリン、ジピリダモール、ワルファリン(Coumadin)、ヘパリン、フェニンジオン、フォンダパリナックス、イドラパリナックス、およびトロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、またはダビガトラン)などであるがこれらに限定されない抗血栓剤および/または抗凝固剤との共同療法(例えば、同時的または共働的)のために処方することができる。ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)はまた、ドゴー病を処置するための線維素溶解剤(例えば、アンクロッド、ε−アミノカプロン酸、抗プラスミンα、プロスタサイクリン、およびデフィブロチド)を伴う使用のために処方することもできる。
【0167】
例えば、ドゴー病が、感染症を随伴する一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤および/またはインターフェロンアルファ阻害剤を、感染症の処置に使用するための1つ以上の剤と共に処方することができる。例えば、C5阻害剤を、抗生物質と処方することもでき、抗ウイルス剤と処方することもできる。
【0168】
ヒト補体阻害剤を、第2の活性剤と組み合わせて用いる場合、または2つ以上のヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体および抗因子B抗体)を用いる場合、上記剤を個別に処方することもでき、一緒に処方することもできる。例えば、それぞれの薬学的組成物を、例えば、投与の直前に混合して、一緒に投与することもでき、例えば、同時にまたは異なる時点において、個別に投与することもできる(下記を参照されたい)。
【0169】
同様に、インターフェロンアルファ阻害剤(例えば、抗インターフェロンアルファ抗体)を、第2の活性剤と組み合わせて用いる場合、または2つ以上のインターフェロンアルファ阻害剤を用いる場合、上記剤を個別に処方することもでき、一緒に処方することもできる。
【0170】
上記で説明した通り、組成物が治療有効量のヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)を包含するようにその組成物を処方することもできるか、または、成分の全体がドゴー病を処置するのに治療的に有効であるよう、治療量未満の阻害剤と、治療量未満の1つ以上のさらなる活性剤とを包含するように、組成物を処方することもできる。一部の実施形態では、阻害剤の全体がドゴー病を処置するのに治療的に有効な濃度であるよう、各々が治療用量未満である2つ以上のヒト補体阻害剤を包含するように、組成物を処方することができる。組成物が治療有効量のインターフェロンアルファ阻害剤(例えば、抗インターフェロンアルファ抗体またはその抗原結合断片)を包含するようにその組成物を処方することもできるか、または、成分の全体がドゴー病を処置するのに治療的に有効であるよう、治療量未満の阻害剤と、治療量未満の1つ以上のさらなる活性剤とを包含するように、組成物を処方することもできる。一部の実施形態では、阻害剤の全体がドゴー病を処置するのに治療的に有効な濃度であるよう、各々が治療用量未満である2つ以上のインターフェロンアルファ阻害剤を包含するように、組成物を処方することができる。一部の実施形態では、組成物が、ヒト補体阻害剤と、インターフェロンアルファ阻害剤とを包含する。当技術分野では、治療有効用量(例えば、抗C5抗体または抗インターフェロン抗体の治療有効用量)を決定するための方法が公知であり、本明細書中に記載する。
【0171】
処置のための方法
上記で説明した組成物は、とりわけ、被験体(例えば、ヒト)におけるドゴー病を処置または予防するための方法において有用である。組成物は、部分的には投与経路に依存する各種の方法を用いて、被験体、例えば、ヒト被験体へと投与することができる。経路は、例えば、静脈内注射もしくは静脈内注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、または筋肉内注射でありうる。
【0172】
投与は、例えば、局所注入、局所注射により達成することもでき、埋没物により達成することもできる。埋没物は、サイラスティック(sialastic)膜などの膜または繊維を含めた、多孔性材料、非多孔性材料、またはゼラチン性材料による埋没物でありうる。埋没物は、被験体に組成物を持続放出または周期放出するために構成することができる(例えば、それらの各々の開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20080241223号;米国特許第5,501,856号;同第4,863,457号;および同第3,710,795号;EP488401;およびEP430539を参照されたい)。組成物は、例えば、拡散システム、侵食システム、または対流システムに基づく植え込み式デバイス、例えば、浸透圧ポンプ、生体分解性埋没物、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、気泡ポンプ、圧電ポンプ、侵食ベースのシステム、または電子機械システムにより、被験体に送達することができる。
【0173】
ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその断片)またはインターフェロンアルファ阻害剤(例えば、抗インターフェロンアルファ抗体)の適切な用量であって、被験体におけるドゴー病を処置または予防することが可能な用量は、例えば、処置される被験体の年齢、性別、および体重、ならびに用いられる特定の阻害剤化合物を含めた多様な因子に依存しうる。例えば、ドゴー病を伴う被験体を処置するには、同じ患者を処置するのに必要とされる抗C5抗体の用量と比較して異なる用量の、ヒトC5に特異的なsiRNAが必要とされうる。被験体に投与される用量に影響を及ぼす他の因子には、例えば、ドゴー病の型または重症度が含まれる。例えば、ドゴー病の皮膚性形態を有する被験体は、ドゴー病の全身性形態を伴う被験体とは異なる投与量の阻害剤の投与を必要としうる。他の因子には、例えば、被験体が同時に罹患しているか、またはかつて罹患していた他の医学的障害、被験体の全般的な健康、被験体の遺伝素因、食餌、投与回数、排出速度、薬物の組合せ、および被験体に投与される他の任意のさらなる治療剤が含まれうる。また、任意の具体的な被験体に対する特定の投与量および処置レジメンが、処置する医療従事者(例えば、医師または看護師)の判断に依存することも理解されるべきである。
【0174】
阻害剤は、固定用量、または体重1キログラム当たりのミリグラム単位(mg/kg)の用量で投与することができる。一部の実施形態ではまた、組成物中の1つ以上の活性剤に対する抗体の生成または宿主による他の免疫反応を低減または回避するように用量を選択することもできる。限定的であることを意図するものでは全くないが、補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)および/またはインターフェロンアルファ阻害剤の例示的な投与量には、例えば、1〜100μg/kg、0.5〜50μg/kg、0.1〜100μg/kg、0.5〜25μg/kg、1〜20μg/kg、および1〜10μg/kg;1〜100mg/kg、0.5〜50mg/kg、0.1〜100mg/kg、0.5〜25mg/kg、1〜20mg/kg、および1〜10mg/kgが含まれる。本明細書に記載される抗体の例示的な投与量には、限定なしに述べると、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1.0μg/kg、2.0μg/kg、4μg/kg、および8μg/kg;0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4mg/kg、および8mg/kgが含まれる。
【0175】
一部の実施形態では、約12日間ごとに(例えば、約10日間ごとに、約11日間ごとに、約13日間ごとに、約14日間ごとに、約15日間ごとに、約16日間ごとに、約17日間ごとに、約18日間ごとに、約19日間ごとに、約20日間ごとに、約21日間ごとに、約28日間ごとに、約30日間ごとに、約42日間ごとに、または約49日間以上ごとに)約900mgの用量で、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)を、ヒトに静脈内投与することができる。例えば、Hillら(2005年)、Blood、106巻(7号):2559頁を参照されたい。
【0176】
一部の実施形態では、毎週、必要に応じて、2週間以上(例えば、3、4、5、6、7、または8週間以上)にわたり、約600mg(例えば、約625、約650、約700、約725、約750、約800、約825、約850、約875、約900、約925、約950、または約1,000mg以上)の用量で、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)を、ヒトに静脈内投与することができる。初期処置の後、例えば維持用量として、約14日間ごとに(例えば、約15日間ごとに、約16日間ごとに、約17日間ごとに、約18日間ごとに、約19日間ごとに、約20日間ごとに、約21日間ごとに、約28日間ごとに、約30日間ごとに、約42日間ごとに、または49日間以上ごとに)、約900mgの用量で、この抗体を、ヒトに投与することができる。例えば、Hillmen et al. (2004) N Engl J Med. 350(6):552−9 およびDmytrijuk et al. (2008) The Oncologist 13(9):993を参照されたい。
【0177】
薬学的組成物は、治療有効量のヒト補体成分C5阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)および/または治療有効量のインターフェロンアルファ阻害剤を包含しうる。このような有効量は、部分的には、投与される阻害剤の効果、または1つ超の剤を用いる場合は、抗体と1つ以上のさらなる活性剤との組合せ(combinatorial)効果に基づき、当業者が容易に決定することができる。ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)の治療有効量はまた、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに抗体(および1つ以上のさらなる活性剤)が個体において所望の応答、例えば、少なくとも1つの状態パラメータの改善、例えば、少なくとも1つのドゴー病症状の改善を誘発する能力などの因子に応じても変化しうる。例えば、ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)の治療有効量は、ドゴー病および/または当技術分野において公知であるかもしくは本明細書に記載されるドゴー病の症状のうちのいずれか1つを阻害し(その重症度を軽減するか、またはその発症を除去し)、かつ/または予防することが可能である。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性作用または有害作用が、治療的に有益な効果により凌駕される量でもある。
【0178】
本明細書で用いられる、「治療有効量」、または「治療有効用量」、または類似の用語は、所望の生物学的応答または医学的応答(例えば、ドゴー病の1つ以上の症状の改善)を誘発する剤(例えば、ヒト補体阻害剤)の量を意味することを意図する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物が、治療有効量のヒト補体成分C5阻害剤を含有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物が、補体成分C5タンパク質に結合する、治療有効量の抗体またはその抗原結合断片を含有する。一部の実施形態では、組成物が全体として治療的に有効であるように、その組成物が、2つ以上の(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11以上の)異なるヒト補体阻害剤を含有する。例えば、組成物は、ヒトC5タンパク質に結合する抗体と、ヒトC5タンパク質をコードするmRNAに結合し、mRNAの分解を促進するsiRNAとを含有することができ、この場合、この抗体およびsiRNAの各々は、組み合わされると治療的に有効となる濃度で存在する。一部の実施形態では、組成物が全体として治療的に有効であるように、その組成物が、阻害剤と、1つ以上の第2の活性剤とを含有する。例えば、組成物は、ヒトC5タンパク質に結合する抗体と、ドゴー病を処置または予防するのに有用な別の剤とを含有しうる。
【0179】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物が、治療有効量の抗インターフェロンアルファ抗体またはその抗原結合断片を含有する。
【0180】
このような組成物の毒性および治療的効力は、細胞培養物または実験動物における公知の薬学的手順により決定することができる。これらの手順は、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死性である用量)およびED50(集団のうちの50%に対して治療的に有効である用量)を決定するのに用いることができる。毒性作用と治療効果との用量比を治療指数とし、これを、比LD50/ED50として表すことができる。治療指数が高い組成物、または組成物のうちの補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)が好ましい。毒性の副作用を示す組成物も用いうるが、罹患組織の部位をこのような化合物の標的とする送達系をデザインし、正常細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、これにより、副作用を軽減するように注意を払うべきである。
【0181】
ヒトにおいて用いるための投与量範囲を処方するには、細胞培養物によるアッセイおよび動物による研究から得られるデータを用いることができる。このような阻害剤の投与量は一般に、毒性をほとんどまたはまったく伴わないED50を包含する、阻害剤(複数可)(例えば、抗C5抗体、抗インターフェロンアルファ抗体、またはこれらの抗原結合断片)の循環濃度範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変化しうる。本明細書に記載される通りに(例えば、ドゴー病を処置または予防するために)用いられる、ヒト補体成分C5阻害剤(例えば、抗C5抗体)の場合は、まず、細胞培養物によるアッセイから、治療有効用量を推定することができる。例えば、処置されるヒトまたは動物の血漿における補体阻害剤レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0182】
一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)の必要用量は、この阻害剤が指向する補体タンパク質の、被験体の血液中における濃度に基づいて決定することができる。例えば、高濃度の循環ヒトC5タンパク質レベルを有する被験体は、循環ヒトC5レベルが低い被験体より高用量のヒトC5阻害剤を必要としうる。当技術分野では、被験体からの、血液に由来する流体試料におけるヒト補体の濃度を決定するための方法が公知である。例えば、血清C5レベルを決定するための方法は、例えば、Rawalら(1998年)、J Biol Chem、273巻(27号):16828〜16835頁に記載されている。
【0183】
本明細書で用いられる「被験体」とは、任意の哺乳動物でありうる。例えば、被験体は、ヒト、非ヒト霊長動物(例えば、サル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ラット、またはマウスでありうる。一部の実施形態では、被験体が、乳仔(例えば、ヒト乳児)である。
【0184】
一部の実施形態では、被験体が、ドゴー病を処置するのに投与された、1つ以上のさらなる治療剤に対して不応性の被験体である。本明細書で用いられる、療法に対する「抵抗性」、療法に対して「不応性」であるなどの文法的語句は、所与の障害(例えば、ドゴー病)を処置するかまたは治癒させることにおける所与の療法の有効性が低下するか、またはこの障害と関連する1つ以上の症状を改善することにおける処置の有効性が低下する患者の臨床状態を指す。例えば、ドゴー病に罹患している患者に対するIVIgの治療的利益は、IVIg療法によってもなお、この疾患が温存されるかまたは増悪するように、時間と共に減少しうる。例えば、De Breuckerら(2008年)、前出を参照されたい。
【0185】
本明細書で用いられる「予防を必要とする」被験体、「処置を必要とする」被験体、または「それを必要とする」被験体とは、適切な医療従事者(例えば、ヒトの場合には、医師、看護師、または看護従事者;非ヒト哺乳動物の場合には、獣医師)の判断によるならば、所与の処置(ヒト補体阻害剤またはインターフェロンアルファ阻害剤を含む組成物による処置など)から正当に利益を得ることになる被験体を指す。
【0186】
本明細書で用いられる、「ドゴー病を発症する危険性がある」被験体とは、この障害を発症する1つ以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ以上の)危険因子を有する被験体である。医療技術分野では、ドゴー病の危険因子が周知であり、これらには、例えば、この状態を発症する素因、すなわち、この状態の家族歴、または、例えば、プロテインS欠損症など、ドゴー病と関連する遺伝子状態が含まれる。例えば、Gileberteら(2005年)、Br J Dermatol、153巻(3号):666〜7頁を参照されたい。ドゴー病の危険因子にはまた、ウイルス感染症(例えば、HIV感染症、またはB19パルボウイルス感染症)、プロコアギュラントの状態(例えば、因子V Leiden)、またはLE、皮膚筋炎、強皮症、および抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫疾患などであるがこれらに限定されない、ドゴー病と関連する状態も含まれる。本明細書の以下では、ドゴー病のこのような発現を、適切な場合は、例えば、「感染症関連ドゴー病」または「自己免疫関連ドゴー病」と称する。上記からは、「ドゴー病を発症する危険性がある」被験体が、対象の種内のすべての被験体ではないことが明らかである。
【0187】
「ドゴー病を有することが疑われる」被験体とは、この状態の1つ以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の)症状を有する被験体である。医療技術分野の当業者には、この状態の症状が公知であり、これらには、例えば、皮膚病変(例えば、隆起し、皮膚色またはバラ色の1つ以上の丘疹であって、白色の中心部および周囲の紅斑および毛細血管拡張を伴う陥凹性瘢痕へと増悪する丘疹)、消化管の出血、嘔吐、腸皮フィステル、神経学的症状(例えば、顔面および末端感覚異常、頭痛、めまい、嚥下不能、対麻痺、凝視麻痺、癲癇、記憶喪失、または感覚の異変)、発作、複視、下垂、視野欠損、脱力、息切れ、ならびに胸痛が含まれる。一部の実施形態では、ドゴー病が、患者における抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子、抗リン脂質抗体、または血管におけるIgA沈着の存在と関連する。例えば、Englert et al. (1984)(前出); Crowson et al. (2002)(前出);およびGrattan and Burton (1991) Semin Dermatol 10(3):152−159を参照されたい。上記からは、「ドゴー病を有することが疑われる」被験体が、対象の種内のすべての被験体ではないことが明らかである。
【0188】
一部の実施形態では、方法が、被験体を、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性がある被験体であるかを同定するステップを包含しうる。当技術分野では、被験体を同定するのに適する方法が公知である。例えば、Ackermanは、ドゴー病関連皮膚病変を明確に同定するための組織学的方法について記載している(Am J Dermatopathol (1985) 7(2):105−7)。上記で説明した通り、ドゴー病は、患者における抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子、および/または抗リン脂質抗体の存在と関連しうる。研究例では、診断のための組織学的方法もまた例示される。当技術分野では、患者の血液におけるこれらの抗体の存在を検出するのに適する方法が公知であり、例えば、Caux et al. (1994) Ann Dermatol Venereol 121:537−542に記載されている。一部の実施形態では、ドゴー病が、皮膚血管内のIgA沈着と関連しうる。当技術分野では、このような沈着を検出するための方法が公知である。例えば、Crowson et al. (2002)、前出を参照されたい。
【0189】
加えて、研究例に記載される通り、ドゴー病は、血管におけるC5b−9 MACの顕著な沈着のほか、血清におけるC反応性タンパク質レベルおよび因子VIIIレベルの上昇とも関連しうる。本明細書では、これらのパラメータの各々を検出するための方法についても例示する。
【0190】
一部の実施形態では、組成物を被験体に投与して、ドゴー病の良性形態が、この疾患の全身性、多臓器性形態へと増悪することを予防的に防止することができる。例えば、ドゴー病の皮膚性形態を有する被験体に、本明細書に記載される組成物を投与して、この患者における、ドゴー病の致死性で、全身性形態の発症を予防するか、またはこの発症の可能性を低下させることができる。同様に、ドゴー病に関連するB19パルボウイルス感染、HIV感染、または自己免疫疾患を有する被験体に、本明細書に記載される組成物を投与して、この患者における、ドゴー病の発症を予防するか、またはこの発症の可能性を低下させることができる。
【0191】
「予防」という用語は、当技術分野で認知された用語であり、当技術分野では、状態との関連で用いられる場合に十分に理解されており、この組成物を施されない被験体と比べて、被験体における医学的状態の症状の頻度を低減するか、この症状の発生を遅延させる組成物の投与を包含する。したがって、ドゴー病の予防は、例えば、処置されない対照集団と比べて、予防的処置を受ける患者集団において、ドゴー病の良性形態が、この疾患の全身性、多臓器性形態へと増悪することを遅延させるステップ、ならびに/あるいは処置されない対照集団に対して処置集団において、この疾患の1つ以上の症状の重症度を、例えば、統計学的および/もしくは臨床的に有意な量だけ軽減するステップ、ならびに/あるいは上記症状の発生を、例えば、統計学的および/もしくは臨床的に有意な量だけ遅延させるステップを包含する。
【0192】
一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)および/またはインターフェロンアルファ阻害剤を、被験体に、単剤療法として投与することができる。あるいは、上記で説明した通り、阻害剤は、被験体に、別の処置、例えば、ドゴー病に対する別の処置との組合せ療法としても投与することができる。例えば、組合せ療法は、被験体(例えば、ヒト患者)に、ドゴー病を有するかまたはドゴー病を発症する危険性がある被験体に治療的利益をもたらす1つ以上のさらなる剤(例えば、抗凝固剤または抗炎症剤)を投与するステップを包含しうる。一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)またはインターフェロンアルファ阻害剤、および1つ以上のさらなる活性剤を同時に投与する。他の実施形態では、阻害剤をまず投与し、1つ以上のさらなる活性剤を次に投与する。一部の実施形態では、1つ以上のさらなる活性剤をまず投与し、阻害剤を次に投与する。
【0193】
ヒト補体阻害剤またはインターフェロンアルファ阻害剤は、既に投与されたかまたは現在投与されている療法を置き換える場合もあり、これを増強する場合もある。例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片で処置するときは、1つ以上のさらなる活性剤の投与を休薬または減量する、例えば、より少ない量で投与することができる。一部の実施形態では、先行療法の投与を維持することができる。一部の実施形態では、ヒト補体阻害剤(例えば、抗C5抗体)またはインターフェロンアルファ阻害剤のレベルが、治療効果をもたらすのに十分なレベルに達するまでは、先行療法を維持する。2つの療法は、組み合わせて投与することができる。
【0194】
本明細書で定義されるドゴー病の改善について、被験体(例えば、ヒト患者)をモニタリングするステップとは、この被験体を、疾患パラメータの変化、例えば、この疾患の1つ以上の症状の改善について評価するステップを意味する。例えば、医療従事者は、本明細書に記載される補体阻害剤を用いる処置の前後に、血管におけるC5b−9 MACの沈着の程度を検査することができる。このような症状には、本明細書に記載されるドゴー病の任意の症状が含まれる。一部の実施形態では、投与の少なくとも1時間後、例えば、少なくとも2、4、6、8、12、24、もしくは48時間後、または少なくとも1日間、2日間、4日間、10日間、13日間、20日間以上後、または少なくとも1週間、2週間、4週間、10週間、13週間、20週間以上後において評価を実施する。以下の期間:処置の開始前;処置の間;または処置の1つ以上のエレメントが投与された後のうちの1つ以上において被験体を評価することができる。評価するステップには、さらなる処置の必要性を評価するステップ、例えば、投与量、投与頻度、または処置期間を変更すべきかどうかを評価するステップが含まれうる。評価するステップにはまた、選択された治療モダリティーを追加または減らす必要性を評価するステップ、例えば、本明細書に記載されるドゴー病に対する処置のうちのいずれかを追加または減らすステップも含むことができる。
【0195】
ex vivoにおけるアプローチ:ヒト補体阻害剤またはインターフェロンアルファ阻害剤が、ポリペプチド(例えば、抗体)または核酸(例えば、siRNAまたはアンチセンス核酸)である場合、ドゴー病を処置または予防するためのex vivoにおける戦略は、被験体から得られた1つ以上の細胞に、上記タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは核酸をトランスフェクトまたは形質導入するステップを包含しうる。例えば、細胞に、抗C5抗体の重鎖および軽鎖をコードする単一のベクターをトランスフェクトすることもでき、細胞に、上記抗体の重鎖をコードする第1のベクターと、上記抗体の軽鎖をコードする第2のベクターとをトランスフェクトすることもできる。
【0196】
次いで、トランスフェクトまたは形質導入した細胞を、被験体に戻す。細胞は、限定なしに述べると、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、または筋肉細胞が含まれる、広範にわたる細胞型のうちのいずれでもありうる。このような細胞は、これらが被験体において生存する限りにおいて、補体阻害剤(例えば、抗C5抗体もしくはその抗原結合断片、または抗C5 siRNA)またはインターフェロンアルファ阻害剤の供給源(例えば、持続的な供給源または周期的な供給源)として作用しうる。一部の実施形態では、ベクターおよび/または細胞を、抗体の誘導性発現または抑制性発現に応じて構成することができる(例えば、Schockett et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93: 5173−5176 および米国特許第7,056,897号を参照されたい)。
【0197】
細胞は、被験体から得ることが好ましい(自己細胞)が、潜在的には、被験体以外の同じ種の被験体から得ることもできる(同種異系細胞)。
【0198】
分子生物学の技術分野では、被験体から細胞を得るのに適する方法、および細胞に形質導入またはトランスフェクトするのに適する方法が公知である。例えば、形質導入ステップは、リン酸カルシウム、リポフェクション、電気穿孔、ウイルス感染(上記を参照されたい)、および遺伝子銃による遺伝子導入を含めた、ex vivoにおける遺伝子治療のために用いられる任意の標準的な手段により達成することができる。例えば、Sambrook et al. (前出)およびAusubel et al. (1992) “Current Protocols in Molecular Biology,” Greene Publishing Associatesを参照されたい。あるいは、リポソームまたはポリマー製マイクロ粒子も用いることができる。形質導入に成功した細胞は、例えば、コード配列または薬物耐性遺伝子の発現について選択することができる。
キット
本開示はまた、ラベルを有する容器と;1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の)ヒト補体阻害剤(複数可)(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合断片)および/または1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の)インターフェロンアルファ阻害剤(例えば、抗インターフェロンアルファ抗体)を含有する組成物とを包含する製品またはキットも特徴とする。ラベルは、組成物が、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性がある被験体(例えば、ヒト)に投与されることを示す。キットは、必要に応じて、組成物を被験体に投与するための手段も包含しうる。例えば、キットは、1つ以上のシリンジを包含しうる。
【0199】
一部の実施形態では、キットが、2つ以上の(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の)異なる種類のヒト補体阻害剤を含有しうる。例えば、キットは、抗C5抗体(またはその抗原結合断片)およびヒトC5タンパク質をコードするmRNAに結合するsiRNAを含有しうる。一部の実施形態では、キットが、抗C5抗体、siRNA、および補体の低分子阻害剤を含有しうる。
【0200】
一部の実施形態では、キットが、本明細書に記載される活性剤のうちのいずれかなど、1つ以上のさらなる活性剤をさらに包含しうる。例えば、キットは、1つ以上の抗凝固剤、抗血栓剤、または抗炎症剤を包含しうる。キットはまた、抗CD20抗体など、1つ以上のB細胞標的化療法も包含しうる。キットは必要に応じて、抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子、抗リン脂質抗体、および/または血管におけるIgA沈着の存在を検出するための1つ以上の手段も包含しうる。
【0201】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するものであり、これを限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0202】
(実施例1)
材料および方法
通常の光学顕微鏡法:厚さ5ミクロンの、パラフィンに包埋し、ホルマリンで固定した組織切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、従来の光学顕微鏡法により検査した。
【0203】
MxAについての免疫組織化学的評価:MxAタンパク質を検出するのに用いるためのスライドガラスを、Tissue Tek Slide Holderおよび染色用ディッシュ(Miles、Elkhart、IL)に取り付け、200mLのEDTAバッファー、pH8.0(Zymed Laboratories、South San Francisco、CA)中に浸漬した。一次抗体との30分間にわたるインキュベーションの後、市販のVision BioSystems Define Kitを、プロトコールに従って用いて、染色を実施した。一次抗体とのインキュベーションは、以下の希釈率:1:1600の抗MxA抗体を用いて実施した。特定のマーカーについて染色された細胞のおおよその百分率、ならびにスライドガラスにわたる染色の分布に基づき、染色の程度についての半定量的な評価を行った。スライドガラスは、Consul自動カバースリッパー(ThermoShandon、Pittsburgh、PA)上において、Shandon Consul(登録商標)−Mount Histology(製品番号:9990440)を用いて、カバースリッピングした。Magro et al. (2009) J Cutan Pathol(出版に先立ち、11月4日に電子版が公開されている;PMID:19891658)を参照されたい。
【0204】
組織についての免疫蛍光研究:マイケル輸送培地中で得られ、その後、−30℃で保存された皮膚生検材料について、以下の免疫蛍光研究(Crowson and Magro (1996) Human Pathol 27:15−19に記載されている)を実施した。個々の生検切片上にフルオレセイン結合体化一次抗体をおくことにより、病変皮膚上において、免疫グロブリンG(IgG)、IgA、IgM、フィブリン、および補体成分C3(DAKO、Carpinteria、CA、USA)についての直接的免疫蛍光(DIF)研究を実施した。フルオレセイン結合体化ウサギ抗マウス抗体(DAKO)による間接免疫蛍光(IF)法を用いて、生検切片にまず接触させた抗C5b−9一次抗体に対するその結合を介して、C5b−9 MACの存在を検出した。
【0205】
電子顕微鏡法:超微細構造を検査するため、皮膚生検組織を、グルタルアルデヒド固定剤中に置いた。
【0206】
間接免疫蛍光研究およびウェスタンブロット研究のための細胞培養物:ヒト新生児皮膚微小血管内皮細胞である、HMVEC−dBlNeo(Lonza、Walkersville、MD)を、5%のCOを伴う完全培地(EGM(登録商標)−2 MV BulletKit(登録商標)試薬および5%のPremium FBSを補充した、EGM(登録商標)−2 Basal Medium)(Lonza)中37℃で培養した。培養フラスコ内で75%〜80%のコンフルエンシーに達するのに十分な時間にわたり、細胞を培養した。次いで、細胞を、加温したリン酸緩衝食塩液(PBS)で洗浄し、1倍濃度のトリプシン−EDTA溶液(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を用いて回収した。PBSによりさらに洗浄した後、細胞を、組織培養チャンバースライド(Nunc Lab−Tek(商標)Chamber Slide System;Permanox(商標)(Sigma−Aldrich)上の2つのウェル)上のあらかじめ加温した完全培地中に、1mL当たりの細胞2×10個の密度で再播種した。チャンバースライドを、5%のCOを伴う37℃で24時間にわたり培養し、その時間の後、培地を廃棄した。培地を除去した後、各チャンバーのスライドを取り外し、PBS中ですすぎ、次いで、ペーパータオルで過剰なPBSを拭い去りながら、空気乾燥させた。次いで、乾燥させたスライドを、免疫蛍光顕微鏡法を用いて検査するまで、気密式容器内に、−80℃で保存した。
【0207】
ウェスタンブロット研究:培養したHMVEC−dBlNeo細胞を、0.05Mのフッ化ナトリウム、1%のTriton X−100、50mMのトリス−HCl(pH8.0)、150mMのNaCl、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル、およびCalbiochem Protease Inhibitor Cocktail Set III(EMD Chemicals,Inc.、Gibbstown、NJ)の1:200希釈物からなる溶解バッファーを用いて、時折のボルテックスを伴い4℃で30分間にわたり溶解させた。次いで、溶解産物から、核および他の不溶性物質を、マイクロ遠心分離により除去した。次に、β−メルカプトエタノール(5%の最終濃度)を含有する、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)のローディングバッファーを、細胞溶解産物(溶解産物に5倍濃度のローディングバッファーを入れて1:4の希釈率とする)に添加してから、2分間にわたり煮沸した。次いで、勾配を8%〜16%とするトリス−HCl SDS−PAGEゲル(BioRad、Hercules、CA)中を電気泳動させることにより、溶解産物を分離し、Whatman Protran(商標)ニトロセルロース膜(Sigma−Aldrich)へと転写した。膜を、オービタルシェーカー上で、0.1%のTween−20を含むトリス緩衝食塩液(TBS−T)中3%脱脂乳のブロッキング溶液と共に、室温で6時間にわたりインキュベートし、次いで、Miniblotter 25ブロット用マニホールド(Immunetics、Cambridge、MA)へと取り付けた。Miniblotterウェルを、0.2%のウシ血清アルブミンを含有するTBS−T中で1:250に希釈した患者血清または健常対照血清のいずれかで満たし、このMiniblotterを、オービタルシェーカー上、4℃で一晩にわたり静かに振とうした。次いで、血清を除去し、ウェルをTBS−Tで2回にわたり洗浄し、膜を器具から取り外した。TBS−Tによるさらなる集中的な洗浄の後、膜を、希釈率1:20,000の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗ヒトIg(重鎖および軽鎖)二次抗体(SouthernBiotech、Birmingham、AL)により、室温で2時間にわたり染色した。TBS−Tにより膜を集中的に洗浄した後、Supersignal(登録商標)West Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific、Rockford、IL)を用いて抗体複合体を検出し、HyBlot CL(商標)オートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific,Inc.、Metuchen、NJ)上で、化学発光バンドを視覚化した。
【0208】
抗内皮細胞抗体の存在を検出するための間接免疫蛍光研究:血清試料を、希釈率1:100まで希釈し、ヒト皮膚内皮細胞と共にインキュベートした。フルオレセイン結合体化ヤギ抗ヒトIgG(PBS中で1:100に希釈した;Caltag、Burlingame、CA)を用いて抗体の結合を検出した。Olympus製の顕微鏡を用いて蛍光−抗体複合体を視覚化し、デジタルカメラで記録した。
【0209】
(実施例2)
結果
臨床履歴:2年間の期間にわたり、43歳の、以前は健康だった男性が、はじめは隆起した丘疹状病変による輪郭が明瞭な小さな無症候性皮膚病変を発症し、やがては陥凹性白色瘢痕の結果となった。2009年7月23日、患者は、3日間に及ぶ間欠的な微熱に重度の腹痛および緑色を帯びた嘔吐を随伴する病歴を伴って緊急治療室へ入った。診査の開腹術を実施した(腸の小部分を切除した)。皮膚および腸の検体はいずれも、ドゴー病と関連する典型的な変化を示していた。抗カルジオリピン抗体も、抗ベータ2糖タンパク質抗体も、ループス抗凝固因子も検出されなかった。さらなる検査室試験により、血清因子VIIIレベルの異常な上昇(正常を199上回る)、フォンウィレブランド因子(VWF)レベルの上昇(正常を217上回る)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)レベルの上昇が確認された。補体成分タンパク質C2、C3、およびC4は、正常レベル内にあることが決定されたが、C5レベルは高かった。
【0210】
気胸を緩和するため、患者に胸腔穿刺を実施した。患者には、毎日490mgの静脈内ガンマグロブリンおよびLovenox(登録商標)を開始した。2009年8月12日の追跡来院時に、患者の体重は、遷延性の腹痛に帰せられる食欲不振のために、15ポンド減っていた。患者に呼吸器検査を行ったところ、両側肺底部(bibasilar)領域における呼吸音の低下が裏付けられた。患者のC反応性タンパク質レベル、VWFレベル、およびVEGFレベルは、それぞれ、6.51、177、および971で依然として高かった。4回にわたるIVIG処置の後、患者の皮膚病変にはある程度の改善が見られたが、患者は、依然として腹痛に苦しんでいた。2009年10月、患者は、胸痛および息切れを発症し、このため、入院が必要となった。患者は、急速に血行動態性代償不全を生じ、集中治療ユニットへ入れられた。大量の心外膜液滲出および胸水を随伴する患者の駆出率は14%であることが注目された。心膜生検を得たところ、重度の血栓性細小血管症が確認され、ドゴー病と符合した。血管のC5b−9の沈着もまた観察された。次いで、患者にエクリズマブを投与した。ほとんど即座に患者の状態が改善した。例えば、患者の駆出率は劇的に改善された。エクリズマブを施して24時間以内に、患者は抜管され、一般病棟へと移された。これに続く数週間にわたり、患者の症状は改善され、皮膚病変の外観も客観的に改善された。
【0211】
病理:患者からは、3セットの皮膚生検を得た。これらの生検を実施した時期は、処置的介入の変化と時間的に関連していた。第1のセットは、IVIGまたはエクリズマブを投与する前の患者から得たもので、皮膚病変の2つの進行相を包含した。1つの生検は、隆起した丘疹病変に由来し、顕著な間葉性のムチン沈着を示し、2年前に腫脹性エリテマトーデスという初回の誤診をもたらした形態的所見であった。血管系を検査したところ、内皮細胞の腫脹、壊死、ならびに壁および管腔における限局性のフィブリン沈着を伴う剥離を含めた異常が示された。典型的なドゴー病と関連する、陶器様陥没瘢痕化丘疹の生検は、顕著な表皮の薄層化および血管の脱落を伴う皮膚の線維症を裏付けた。血管は、内皮細胞の変性/壊死および血管内腔への内皮細胞の脱落を伴う、広範にわたる閉塞性血栓性細小血管症を示した。生検のすべては、炎症細胞の欠乏を示した。腸検体は、粘膜下の大口径動脈が罹患する、広範な閉塞性血管症を示した。
【0212】
IVIGを開始して数週間後、別の皮膚生検を得、これを解析したところ、ムチン、線維症、および表皮の薄層化を含めた、遷延性の皮膚虚血性変化が示された。しかし、活動性の血管傷害の程度は低下していた。著明な管腔および壁におけるフィブリンの沈着を含有する血管は、観察されなかった。
【0213】
エクリズマブを投与して2週間後に、患者から、さらなる生検のセット(第3のセット)を得た。生検組織を解析したところ、血管の脱落を伴う、表面の線維増殖が示された。血管が肥厚しており、これは基底膜域の重複を反映していた。内皮細胞の損傷および血栓症を示す血管は、ごくまれであった。
【0214】
組織試料におけるインターフェロンアルファ評価:内皮細胞、炎症性細胞、および表皮ケラチノサイトでは、広範なMxAタンパク質の発現が認められた。
【0215】
C5b−9についての免疫蛍光研究:間接免疫蛍光研究により、IVIGおよび/またはエクリズマブを開始する前の第1の生検セットの皮膚血管内に、広範なC5b−9の沈着が示された。沈着のパターンは、内腔および壁の両方における沈着であった。沈着の範囲は極めて大きく、真皮全体にわたる複数の血管に及んだ。IVIGもC5b−9の沈着をある程度軽減したが、エクリズマブ療法後の患者から得られた生検において観察されるC5b−9沈着の程度は、顕著に低かった。壁におけるC5b−9の沈着を示す血管は、3つだけであった。
【0216】
電子顕微鏡法:処置前に得られた生検組織に対する超微細構造解析は、真皮全体にわたる、表皮ケラチノサイトおよび内皮細胞における、広範な管状網状構造を示した。管壁の内皮細胞は、深甚な変性変化を示し、血管腔からの細胞の剥離を伴った。血管基底膜域は重複し、これはまた、コラーゲンの沈着によっても示された。
【0217】
抗内皮細胞抗体アッセイ:エクリズマブ処置前に得られた患者血清、およびエクリズマブ処置の2週間後に得られた血清を、皮膚内皮細胞およびフルオレセイン結合体化ヒト抗IgG抗体と共にインキュベートした。エクリズマブ処置前の試料およびエクリズマブ処置後の試料の内皮細胞の大半において、顆粒状核修飾が観察された。患者の血清を、ヒト臍帯静脈内皮細胞と接触させたところ、染色は観察されなかった。
【0218】
内皮細胞溶解産物を用いるウェスタンブロット研究:処置前および処置後の患者血清はまた、患者血清中のヒト抗ヒト抗体が結合する1つまたは複数のタンパク質を同定するためのウェスタンブロット解析においても用いた。上記で説明した通り、処置前の血清および処置後の血清を、サイズにより分離した内皮細胞タンパク質を含有する膜と共にインキュベートし、膜のタンパク質に対する抗体の任意の結合を、フルオレセイン結合体化二次抗体を介して検出した。92kDaの分子量に対応する免疫反応性の区別可能なバンドが観察された。正常対照の場合、またはヒト臍帯静脈内皮細胞の溶解産物についてのウェスタンブロットでは、同様の反応性バンドが同定されなかった。
【0219】
血清インターフェロンアルファレベルの評価:患者の末梢血におけるインターフェロンアルファレベルは極めて高かった(20.56と測定され、これは、エリテマトーデスを有する患者と同等であり、健常者に由来する血液におけるインターフェロンアルファレベルより数倍高かった)。
【0220】
考察:本明細書に記載される患者は、顕著な内皮細胞傷害に帰せられる、腸、心膜、心筋、および皮膚における多病巣性虚血を発症した。患者の症状は、ドゴー病と符合した。皮膚の内皮細胞を基質として用いる、間接免疫蛍光法およびウェスタンブロット法を用いて、抗内皮細胞抗体の証拠を得た。その実態(identity)は不明であるが、ウェスタンブロット解析に基づき、主要な抗原エピトープが単離された。抗内皮細胞抗体が、ヒト臍帯静脈細胞と反応性でなかったという知見からすると、この患者において観察された抗内皮細胞抗体が、器官選択性であり、このため、選択された内皮細胞ベースのエピトープに対する免疫原性は、部位依存性である可能性がある。
【0221】
本明細書に記載される研究は、補体媒介性内皮傷害について、エクリズマブで処置したドゴー病患者において可能性のあるエフェクター機構であるとして示唆する。この薬物の投与に対しては、劇的で客観的な臨床反応および病理学的反応が認められた。
【0222】
患者の血清ならびに患者の組織内では、インターフェロンアルファの発現が顕著に上昇した。インターフェロンアルファは、獲得免疫および自然免疫を上方制御し、任意の抗原性トリガーの作用を強化することが公知である。外因性インターフェロンアルファの投与は、皮膚血栓症および皮膚潰瘍の原因として報告されている。患者の末梢血におけるインターフェロンアルファの特徴は、SLE患者において観察される特徴と顕著に同様であるが、この患者は、全身性エリテマトーデスに特異的な臨床特徴を示さなかった。本明細書に記載される知見は、ドゴー病患者におけるインターフェロンアルファの阻害が、ドゴー病を処置するのに有用でありうるという結論を裏付ける。
【0223】
結論として述べると、エクリズマブは、別の方法では致死性であるドゴー病を処置するための重要な治療モダリティーを定める。補体カスケードの連鎖を活性化する正確なトリガーは不明である。古典的な補体カスケード連鎖の活性化を引き起こす抗内皮細胞抗体(例えば、内皮細胞に存在する92kDaの抗原に結合する自己抗体)が、C5b−9沈着の原因でありうるが、天然の組織傷害経過において広範に存在するエピトープの役割は、これらの抗体の直接的原因作用(direct causal effect)の確立を妨害する。にもかかわらず、自己抗体が遷延すると仮定すれば、患者の臨床経過のある時点において、これらの抗体の生成を低減する、さらなるB細胞標的化療法を行えば、ドゴー病の処置に有用になることになる。
【0224】
その特定の実施形態に言及しながら、本開示について記載してきたが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、各種の変更を行うことができ、同等物に置き換えうることを当業者は理解されたい。加えて、特定の状況、材料、組成物、プロセス、1つまたは複数のプロセスステップを、本開示の目的、精神、および範囲に適合させるための多くの改変を行うことも可能である。このような改変のすべては、本開示の範囲内にあることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、該疾患を処置するのに十分な量で補体阻害剤を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、該患者における低下した補体活性レベルを維持し、これにより、該疾患を処置するのに十分な量および頻度で補体阻害剤を長期投与するステップを含む方法。
【請求項3】
ドゴー病を処置するための方法であって、
患者を、ドゴー病に罹患しているか、またはドゴー病に罹患する可能性があるとして同定するステップと、
該患者に、該疾患を処置するのに十分な量で補体阻害剤を投与するステップと
を含む方法。
【請求項4】
前記ドゴー病が、B19パルボウイルス感染またはヒト免疫不全ウイルス感染と関連する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドゴー病が、特発性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドゴー病が、消化管に病理学的な影響を与える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドゴー病が、中枢神経系に病理学的な影響を与える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ドゴー病が、心血管系に病理学的な影響を与える、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ドゴー病が、多臓器性、全身性ドゴー病である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ドゴー病が、抗炎症剤、抗凝固剤、抗血栓剤、および静脈内免疫グロブリンからなる群から選択される少なくとも1つの療法に対して不応性である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗炎症剤が、コルチコステロイド、フェニルブタゾン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチルからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗凝固剤または抗血栓剤が、クロピドグレル、アスピリン、およびジピリダモールからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記補体阻害剤が、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、核酸、核酸類似体、および低分子からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記補体阻害剤が、可溶性のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、およびK76 COOHからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記補体阻害剤が、ヒト補体成分タンパク質の発現を阻害する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記補体阻害剤が、補体成分C1sまたは補体成分C1rの活性化または活性を阻害する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記補体阻害剤が、ヒト補体成分C5、C4、C3、またはC2の切断を阻害する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記補体阻害剤が、補体成分C5が断片C5aおよびC5bへと切断されることを阻害する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記補体阻害剤が、ヒト補体成分タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項1から13または15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、前記補体成分C5タンパク質のアルファ鎖に結合する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、ヒト補体成分C5のアルファ鎖に結合し、ここで、該抗体が、(i)ヒト体液中の補体の活性化を阻害し、(ii)精製ヒト補体成分C5が、ヒト補体成分C3bまたはヒト補体成分C4bに結合することを阻害し、(iii)ヒト補体活性化生成物である遊離C5aに結合しない、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、配列番号1〜26のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を有するヒト補体成分C5タンパク質に結合する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、補体成分C5断片であるC5bに結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒト化抗体、組換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fv断片、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab’)断片からなる群から選択される、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記阻害剤が、エクリズマブである、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記阻害剤が、パキセリズマブである、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ラベルを含む容器と、
補体阻害剤を含む組成物と
を含む製品であって、ここで、該ラベルには、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性があるヒトに該組成物が投与されることが示されている、
製品。
【請求項30】
前記阻害剤が、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項29に記載の製品。
【請求項31】
前記阻害剤が、ヒト補体成分C5タンパク質の断片に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項29または30に記載の製品。
【請求項32】
ヒト補体成分C5タンパク質の前記断片が、C5aまたはC5bである、請求項31に記載の製品。
【請求項33】
1つ以上のさらなる活性剤をさらに含む、請求項29から32のいずれか一項に記載の製品。
【請求項34】
前記1つ以上のさらなる活性剤が、抗炎症剤、抗凝固剤、および抗血栓剤からなる群から選択される、請求項33に記載の製品。
【請求項35】
ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、該疾患を処置するのに十分な量でインターフェロンアルファ阻害剤を投与するステップを含む方法。
【請求項36】
ドゴー病に罹患している患者を処置するための方法であって、ドゴー病に罹患している患者に、該患者におけるインターフェロンアルファの、低下した発現レベルまたは活性レベルを維持し、これにより、該疾患を処置するのに十分な量および頻度でインターフェロンアルファ阻害剤を長期投与するステップを含む方法。
【請求項37】
ドゴー病を処置するための方法であって、
患者を、ドゴー病に罹患しているか、またはドゴー病に罹患する可能性があるとして同定するステップと、
該患者に、該疾患を処置するのに十分な量でインターフェロンアルファ阻害剤を投与するステップと
を含む方法。
【請求項38】
前記ドゴー病が、前記ドゴー病の多臓器性、全身性形態である、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、核酸、核酸類似体、および低分子からなる群から選択される、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、細胞によるインターフェロンアルファまたはインターフェロンアルファ受容体の発現を阻害する、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファまたはインターフェロンアルファ受容体の活性を阻害する、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファタンパク質に結合する、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファ受容体に結合する、請求項35から39に記載の方法。
【請求項45】
前記インターフェロンアルファ阻害剤が、インターフェロンアルファ受容体に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項43または45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒト化抗体、組換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fv断片、Fd断片、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab’)断片からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ラベルを含む容器と、
インターフェロンアルファ阻害剤を含む組成物と
を含む製品であって、ここで、該ラベルには、ドゴー病を有するか、ドゴー病を有することが疑われるか、またはドゴー病を発症する危険性があるヒトに該組成物が投与されることが示されている、
製品。
【請求項49】
前記阻害剤が、インターフェロンアルファに結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項48に記載の製品。
【請求項50】
前記阻害剤が、インターフェロンアルファ受容体に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項48に記載の製品。
【請求項51】
1つ以上のさらなる活性剤をさらに含む、請求項48から50のいずれか一項に記載の製品。
【請求項52】
前記1つ以上のさらなる活性剤が、抗炎症剤、抗凝固剤、および抗血栓剤からなる群から選択される、請求項51に記載の製品。

【公表番号】特表2013−521294(P2013−521294A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556156(P2012−556156)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026602
【国際公開番号】WO2011/109338
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】