説明

ドックフードおよびその製造方法

【課題】嗜好性を向上させると共に、犬の肥満や生活習慣病の改善などをすることが可能なドックフードおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】小麦粉を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加して混合し、45℃以上65℃以下の温度で保温してパパイン酵素を活性化したのち、焼成する。これにより、クッキー状のドックフードが得られる。パパイン酵素の添加量は、小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下である。焼成時における温度は、170℃以上180℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドックフードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されているドックフードは、水分含水量が少なく、栄養バランスの調整や製造が簡単なドライタイプとソフトドライタイプが主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらのドックフードは水分含有量が少ないので、嗜好性が低くなるという問題があった。よって、嗜好性の高いドックフードの開発が望まれていた。
【0005】
なお、嗜好性の改善を目的としたドックフードとして、メープルシロップを含むドックフードが提供されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、最近では犬が運動不足により肥満になったり、生活習慣病が発生したりするなど、犬の健康やダイエットの観点からは、更なる改良が求められている。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、嗜好性を向上させると共に、犬の肥満や生活習慣病の改善などをすることが可能なドックフードおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドックフードは、小麦粉を原料として焼いたクッキー状のドックフードであって、パパイン酵素を添加したものである。また、米ぬかを含むものである。
【0008】
本発明のドックフードの製造方法は、小麦粉を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加して混合し、45℃以上65℃以下の温度で保温してパパイン酵素を活性化したのち、焼成するものである。また、原料として米ぬかを含んでいる。更に、パパイン酵素の添加量は、小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下である。加えて、焼成時における温度は、170℃以上180℃以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドックフードによれば、パパイン酵素を添加するようにしたので、犬が好む香りを高めることができ、嗜好性を向上させることができる。
【0010】
更に、米ぬかを含むようにすれば、カロリーを低くすることができるので、犬のダイエットや生活習慣病の改善に有効である。また、ミネラルが豊富であるので栄養バランスが良く、しかも食物繊維が多いので排便性を良好にすることができる。加えて、従来は廃棄されていた米ぬかを再利用することもできる。
【0011】
また、本発明のドックフードの製造方法によれば、小麦粉を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加して混合し、45℃以上65℃以下の温度で保温してパパイン酵素を活性化したのち、焼成するようにしたので、本発明のドックフードを簡単に製造することができる。
【0012】
更に、パパイン酵素の添加量を小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下とするようにすれば、犬が好む香りを高めつつドックフードの硬さを良好にすることができる。加えて、焼成時における温度を170℃以上180℃以下とするようにすれば、ドックフードが焦げてしまうのを抑制しつつ、硬さを良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るドックフードは、小麦粉を原料として焼いたクッキー状のものであり、パパイン酵素が添加されたものである。パパイン酵素は、タンパク質分解酵素であり、消化吸収を助ける効果があると共に、中性脂肪を分解したりコレステロールを低減させる効果を有している。また、犬が好む香りを発するので、嗜好性を向上させることができるようになっている。
【0015】
また、このドックフードは、米ぬかを含んでいることが好ましい。米ぬかは、カロリーが低いので、犬のダイエットや生活習慣病の改善に効果的だからである。また、ミネラルが豊富であるので栄養バランスが良く、しかも食物繊維が多いので排便性を良好にすることができるからである。更に、皮膚、血管あるいは内臓などの若返り効果や体の調子を整える効果があるからである。加えて、米ぬかは、従来は廃棄されていたものであるが、再利用することもできるからである。なお、米ぬか100gのカロリーは286Kcalであり、小麦100gのカロリー398Kcalよりも低い。
【0016】
米ぬかは、脱脂していないものであっても、脱脂したものであってもよい。脱脂している米ぬかは、よりカロリーが低いので好ましい。また、脱脂していない米ぬかは、脂の量が多く栄養価が高いので、授乳中の犬や子犬に好適である。
【0017】
ドックフードにおける米ぬかの含有量は、15質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。含有量が少ないと、カロリーを低く抑える効果が小さくなり、含有量が多いと、ビタミンB1の過剰摂取となるからである。
【0018】
このドックフードは、小麦粉あるいは米ぬかに加えて、他の材料を加えてもよい。他の材料としては、例えば、粉チーズ,ごま、サラダ油が挙げられる。これらは、味や香りの調整等の目的に合わせて用いることができる。
【0019】
このようなドックフードは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0020】
まず、小麦を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加し、混合して生地を作製する。原料には、小麦に加えて、米ぬか,粉チーズ,ごま,サラダ油などを用いることができる。パパイン酵素の添加量は、小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下とすることが好ましい。添加量が少ないと、犬が好む香りを高める効果が低くなり、添加量が多すぎると生地が柔らかくなり、成形し難くなるからである。
【0021】
続いて、例えば、恒温器において45℃以上65℃以下の温度で保温して、パパイン酵素を活性化する。
【0022】
そののち、得られた生地を適度の形に成形して焼成することにより、ドックフードを製造する。焼成時における温度は、170℃以上180℃以下とすることが好ましい。温度が低いと、十分に焼くことができず、温度が高いと焦げてしまうからである。
【0023】
このように、本実施の形態によれば、パパイン酵素を添加するようにしたので、犬が好む香りを高めることができ、嗜好性を向上させることができる。
【0024】
更に、米ぬかを含むようにすれば、カロリーを低くすることができるので、犬のダイエットや生活習慣病の改善に有効である。また、ミネラルが豊富であるので栄養バランスが良く、しかも食物繊維が多いので排便性を良好にすることができる。加えて、従来は廃棄されていた米ぬかを再利用することもできる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、小麦粉を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加して混合し、45℃以上65℃以下の温度で保温してパパイン酵素を活性化したのち、焼成するようにしたので、本実施の形態のドックフードを簡単に製造することができる。
【0026】
更に、パパイン酵素の添加量を小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下とするようにすれば、犬が好む香りを高めつつドックフードの硬さを良好にすることができる。加えて、焼成時における温度を170℃以上180℃以下とするようにすれば、ドックフードが焦げてしまうのを抑制しつつ、硬さを良好にすることができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
原料として、小麦粉(80g)と粉チーズ(大さじ1.0)とサラダ油(大さじ1.0)とを混合した後、米ぬか(20g)とすりごま(大さじ3.0)とをそれぞれから煎りしたものを加えてよく混合した。なお、すりごまは、から煎りすると香ばしくなり、米ぬかは、から煎りすると苦みのある油分を除去することができる。
【0028】
次いで、得られた混合原料に、パパイン酵素(0.15g)を水(50cc)に溶かしたものを加えて、手で揉んでひとつにまとめて生地にした。得られた生地を50℃に設定した恒温器中で1時間保温した。1時間後、生地を2mm程度の厚さに揃えて食べやすい大きさに切り、170℃〜180℃で予熱したオーブンに入れて10分間焼いて、クッキー状のドックフードを作製した。なお、1mm程度の厚みでも製造することができたが、厚めにしてクッキーを硬くした方が、犬に歯石が溜まらないので好ましい。また、180℃を超えた温度で焼くと焦げてしまい、170℃よりも低い温度で焼くと十分に焼けなかった。
【0029】
実施例1に対する比較例1として、パパイン酵素を添加しなかったことを除き、他は実施例1と同様にしてクッキー状のドックフードを作製した。
【0030】
得られた実施例1および比較例1のドックフードについて、犬の嗜好性試験を行った。
嗜好性試験は、次のようにして行った。まず、実施例1のドックフード50gと比較例1のドックフード50gとをそれぞれ並べて設置した。続いて、犬を放ちドックフードを食べる様子を観察した。なお、実験は、各犬毎に1日1回として2日間行い、それぞれの日で実施例1のドックフードと比較例1のドックフードの位置を入れ替えた。また、犬は、生後37ヶ月のボーダー・コリーと、生後48ヶ月の雑種とした。
【0031】
嗜好性試験の結果、いずれの犬も最初に実施例1のドックフードに向かって進み、それを食べて完食した。よって、パパイン酵素を添加することにより、犬の嗜好性が向上することが分かった。
【0032】
(実施例2−1〜2−6)
パパイン酵素の添加量を、実施例2−1では0.1g、実施例2−2では0.2g、実施例2−3では0.25g、実施例2−4では0.5g、実施例2−5では0.75g、実施例2−6では1.0gとしたことを除き、他は実施例1と同様にしてクッキー状のドックフードを作製した。なお、小麦粉および米ぬかの質量に対するパパイン酵素の割合[パパイン酵素/(小麦粉+米ぬか)]は、比較例1では0質量%であり、実施例2−1では0.1質量%であり、実施例1では0.15質量%であり、実施例2−2では0.2質量%であり、実施例2−3では0.25質量%であり、実施例2−4では0.5質量%であり、実施例2−5では0.75質量%であり、実施例2−6では1.0質量%である。
【0033】
実施例1,実施例2−1〜2−6,比較例1のドックフードでは、パパイン酵素の添加量を多くするに伴い、香りが強くなり犬の嗜好性が向上したが、一方、生地が柔らかくなり、パパイン酵素の割合が0.5質量%以上の実施例2−4〜2−6では成形し難くなった。よって、パパイン酵素の添加量は、小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下とすれば好ましいことが分かった。
【0034】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、原料として他の材料を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
ドックフードとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を原料として焼いたクッキー状のドックフードであって、パパイン酵素を添加したことを特徴とするドックフード。
【請求項2】
更に米ぬかを含むことを特徴とする請求項1記載のドックフード。
【請求項3】
小麦粉を含む原料に、水とパパイン酵素とを添加して混合し、45℃以上65℃以下の温度で保温してパパイン酵素を活性化したのち、焼成することを特徴とするドックフードの製造方法。
【請求項4】
前記原料は、米ぬかを含むことを特徴とする請求項3に記載のドックフードの製造方法。
【請求項5】
パパイン酵素の添加量は、小麦粉および米ぬかに対して0.1質量%以上0.25質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載のドックフードの製造方法。
【請求項6】
前記焼成時における温度は、170℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のドックフードの製造方法。

【公開番号】特開2010−200678(P2010−200678A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50101(P2009−50101)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【特許番号】特許第4424624号(P4424624)
【特許公報発行日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(309001562)
【出願人】(309001492)
【出願人】(309001584)
【Fターム(参考)】