説明

ドック・ロック(DNL)技術によるPEG化

本発明は、規定の化学量比および構造のPEG化複合体を形成させるための方法および組成物に関する。好ましい実施形態において、PEG化複合体を、ドック・ロック(dock-and-lock)技術を用いて、エフェクター部分をDDD配列に付着させ、PEG部分をAD配列に付着させ、DDD配列をAD配列に2:1の化学量比で結合させて、2つのエフェクター部分および1つのPEG部分を有するPEG化複合体を形成させることによって形成させる。代わりの実施形態において、エフェクター部分をAD配列に付着させ、PEGをDDD配列に付着させて、2つのPEG部分および1つのエフェクター部分を有するPEG化複合体を形成させてもよい。より好ましい実施形態において、エフェクター部分は生理活性または治療活性がある任意のペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。PEG化複合体は、対象に注射されたときに顕著により遅いクリアランス速度を示し、種々様々な疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全文が参照により本明細書に組み入れられる、2007年10月26日に出願された米国特許出願第11/925,408号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
治療剤の効力は、いくつかの手段よってそのバイオアベイラビリティを向上させることにより増強し得る。これらの手段のうちの1つが、ポリエチレングリコール(PEG)を関心となる治療剤に化学的に連結する方法であるPEG化であり、得られるコンジュゲートは増大した血清半減期を示す。また、PEG化産物のさらなる利点として、より低い免疫原性、減少した投薬頻度、増大した溶解度、増強された安定性、および低下した腎クリアランスが挙げられ得る。PEGを付着させるための最も一般的なタンパク質(ペプチドを含む)上の反応部位がリジンのεアミノ基およびN末端残基のαアミノ基であるために、初期のPEG化法によって、複数部位が修飾される結果になり、PEGINTRON(商標)(Grace et al., J. Biol. Chem. 2005;280:6327)およびPEGASYS(登録商標)(Dhalluin et al.,
Bioconjugate Chem. 2005;16:504)などの位置異性体の混合物からなるモノPEG化コンジュゲートだけでなく、2個以上のPEG鎖を含むアダクトも生じた。N末端残基のαアミノ基に単一PEGが部位特異的に付着したものが、PEG-アルデヒド(PEG-ALD)をIFN-β1b(Basu et al., Bioconjugate Chem. 2006;17:618)またはIFN-β1a(Pepinsky et al., J.
Pharmacol. Exp. Ther. 2001;297:1059)と低いpHで反応させたときの主産物であることが報告された。同様の戦略は、G-CSF(Kinstler et al., Pharm. Res. 1996;13:996)またはI型可溶性腫瘍壊死因子受容体(Kerwin et al., Protein Sci. 2002;11:1825)のN末端に連結したPEGを調製するために適用された。つい最近、組換えインターフェロンα2aのN末端のPEG化のための固相法が報告された(Lee et al., Bioconjug. Chem. Oct. 18, 2007, epub)。
【0003】
標的タンパク質に導入された遊離システイン残基の部位特異的PEG化も、PEG-マレイミド(PEG-MAL)を用いて、IL-2(Goodson and Katre, Biotechnology. 1990:8:343)、IFN-α2 (Rosendahl et al., Bioconjugate
Chem. 2005;16:200)、GM-CSF (Doherty et al., Bioconjugate Chem. 2005;16: 1291)、scFv (Yang et al.,
Protein Eng. 2003;16:761)、およびミニ抗体(Kubetzko et al., J. Biol. Chem; 2006;201:35186)を含むいくつかの組換えコンストラクトについて達成されている。酵素の治療効力を向上させるための一般的なアプローチは、メチオニナーゼ(Yang et al., Cancer Res. 2004;64:6673)、L-メチオニンγ-リアーゼ(Takakura et al.,
Cancer Res. 2006:66:2807)、アルギニンデアミナーゼ(Wang et al., Bioconjugate Chem. 2006;17: 1447)、アデノシンデアミナーゼ(Davis et al., Clin. Exp. Immunol. 1981;46:649)、L-アスパラギナーゼ(Bendich et al., Clin.
Exp. Immunol. 1982;48:273)、および肝カタラーゼ(Abuchowski et al., J. Biol. Chem. 1977;252:3582)について知られているように、複数の小さいサイズのPEGを含むコンジュゲートを調製することである。
【0004】
ウシ血清アルブミン(Abuchowski et al., J. Biol. Chem. 1977;252:3578)、ヘモグロビン(Manjula et al.,
Bioconjugate Chem. 2003;14:464)、ビソマント(Mosharraf et al., Int. J. Pharm. 2007;336:215)、インテグリンα4βlの阻害剤などの小分子(Pepinsky et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 2005;312:742)、リンパ腫標的化ペプチド(DeNardo et al., Clin. Cancer. Res. 2003;9(Suppl.):3854s)、抗VEGFアプタマー(Bunka and Stockley,
Nat. Rev. Microbiol. 2006;4:588)、およびオリゴデオキシヌクレオチド(Fisher et al., Drug Metab. Dispos. 2004;32:983)のPEG化も記載されている。しかしながら、候補薬剤の所定の位置に部位特異的に連結した単一PEGから構成されかつ未修飾対応物の生物活性を保持するモノPEG化コンジュゲートだけを産生する一般的なPEG化法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、候補薬剤の選択された位置に付着する選択された数の付着PEG残基を有するPEG化化合物を産生するための方法および組成物を開示する。好ましい実施形態において、薬剤をモノPEG化する。より好ましい実施形態において、以下により詳細に記載されるように、PEG化される標的をDDD(二量体化/ドッキングドメイン)配列に付着させてもよく、PEG部分をAD(アンカードメイン)配列に付着させてもよい。DDD配列の二量体は、AD配列の単量体に高い親和性で結合し、モノPEG化されたエフェクター部分の二量体を形成する。PEG残基の結合の化学量比と位置は、DDD/AD相互作用の特異性によって決定される。
【0006】
より好ましい実施形態において、モノPEG化複合体は、DDD配列およびAD配列の適当な位置にシステイン残基を導入することにより共有結合的に安定化されて、この複合体を安定化するジスルフィド結合を形成してもよい。その他の実施形態において、PEG試薬は、一方の端で線状または分岐状のメトキシ基によりキャッピングされてもよい(m-PEG)。
【0007】
その他の好ましい実施形態において、DNL法で作製されたPEG化複合体は、PEG化されていないエフェクター部分よりも少なくとも1桁遅い血清からのクリアランス速度を示す。ある代わりの実施形態において、PEG化複合体を代わりに、DDD配列に付着したPEG部分およびAD配列に付着したエフェクター部分を用いて構築し、複合体当たりのPEG部分とエフェクター部分の化学量比が2:1になるようにしてもよい。
【0008】
当業者は、酵素、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ペプチド、アプタマー、ヘモグロビン、抗体およびその断片を含むが、これらに限定されない、インビボで投与されるほとんど全ての生理活性剤または治療活性剤が、PEG化によって安定化され得るということを理解するであろう。例示的な薬剤としては、MIF、HMGB-1(高移動度グループボックスタンパク質1)、TNF-α、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL- 9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-23、IL-24、CCL19、CCL21、IL-8、MCP-1、RANTES、MIP-1A、MIP-1B、ENA-78、MCP-1、IP-10、Gro-β、エオタキシン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-λ、G-CSF、GM-CSF、SCF、PDGF、MSF、Flt-3リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、hGH、CNTF、レプチン、オンコスタチンM、VEGF、EGF、FGF、PlGF、インスリン、hGH、カルシトニン、第VIII因子、IGF、ソマトスタチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびLIFが挙げられる。
【0009】
モノPEG化複合体は、種々様々な治療用途および診断用途で使用するのに好適である。モノPEG化複合体の使用法は、疾患もしくはその他の医学的状態の検出、診断、および/または治療を含んでもよい。そのような状態としては、癌、過形成、糖尿病、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、乾癬、角膜移植拒絶反応、新生血管緑内障、オスラー・ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク血管新生、再狭窄症、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張症、血友病性関節、血管線維腫、慢性炎症と関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、または創傷肉芽形成が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0010】
特定の実施形態において、開示された方法および組成物は、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺症候群、水疱性類天疱瘡、若年型糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞炎などの自己免疫疾患を治療するのに有用であり得る。
【0011】
任意の種類の腫瘍および任意の種類の腫瘍抗原を標的にし得ることが予想されている。標的にし得る例示的な種類の腫瘍としては、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、腎癌、卵巣癌、膵癌、神経膠腫、黒色腫、肝癌、前立腺癌、および膀胱癌が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】DNL法の模式的説明図。三角形は構成要素Aを表しており、これは、二量体化/ドッキングドメイン(DDD)によって仲介されるホモ二量体(a2)を形成する。人工的に作り出されたシステイン残基の遊離チオール基(SH)の位置が示されている。八角形は、アンカードメイン(AD)ペプチドを含む構成要素Bを表している。DNL反応は、DDDペプチドとADペプチドの結合を介する共有結合三量体構造の生成、およびその後のジスルフィド架橋の形成をもたらす。
【図2】IMP362の模式図。20kDa PEG(星形)、AD2ペプチド(らせん)、EDANS蛍光タグ(楕円形)、および遊離スルフヒドリル基(SH)の位置が示されている。
【図3】IMP413の模式図。30 kDa PEG(星形)、AD2ペプチド(らせん)、EDANS蛍光タグ(楕円形)、および遊離スルフヒドリル基(SH)の位置が示されている。
【図4】抗IFNaイムノブロットおよびELISAによるローラーボトル産生および精製の解析。試料を示したように希釈し、5μlを還元SDS-PAGEおよびポリクローナル抗IFNαを用いたイムノブロット解析に供した。各試料についての希釈、総容量、および総容量のうちの解析された分率(f)が示されている。各バンド中のタンパク質の量を標準品から推定し、総容量で割って、総タンパク質の推定量を出した。ELISAで決定した総タンパク質の測定値も示されている。
【図5】α2b-362の模式図。IFNα2b基(五角形)20kDa PEG(星形)、AD2ペプチドおよびDDD2ペプチド(らせん)、ならびにEDANS蛍光タグ(楕円形)が示されている。
【図6】α2b-413の模式図。IFNα2b基(五角形)30kDa PEG(星形)、AD2ペプチドおよびDDD2ペプチド(らせん)、ならびにEDANS蛍光タグ(楕円形)が示されている。
【図7】rhIFN-α2b標準品、IFN-α2b-DDD2、またはα2b-362のいずれかの存在下で4日間培養した後のバーキットリンパ腫(Daudi)細胞のインビトロ増殖阻害を示す用量応答曲線。MTS色素をプレートに添加し、このプレートを3時間インキュベートした後、OD490を測定した。未処置細胞から得られたシグナルの%をモル濃度の対数に対してプロットした。50%有効濃度(EC50)値を、Graph Pad Prismソフトウェアを用いてシグモイドフィットの非線形回帰によって得た。
【図8】IFNαコンストラクトの薬物動態特性の評価。各試薬(試験および対照)を、等モルタンパク質用量で、rhuIFN-α2aについては3μg、PEGINTRON(商標)については5μg、α2b-362については11μg 、およびα2b-413については13μgの単回ボーラス静注としてSwiss-Websterマウスに投与した。示した時点で血清試料を単離し、IFN-αの血清濃度をELISAで決定した。pM濃度を注射後の時間に対してプロットした。データは、2匹のマウスからの平均値を表す。
【図9】バーキットリンパ腫(Daudi)を持つマウスにおけるIFNαコンストラクトの治療効力の評価。8週齢メスのSCIDマウスに1.5×107個のDaudi細胞を静注した。5匹のマウスの群に、PEGINTRON(商標)、α2b-362、およびα2b-413を、3,500ユニット、7,000ユニット、または14,000ユニットの用量で、週に1回、4週間投与した。Daudi細胞を移植した1日後に治療を開始した。注射時間は矢印で示されている。各グループについて生存曲線および生存中央値が示されている。
【図10】胆腫瘍マウスの治療用の投薬スケジュールの評価。8週齢メスのSCIDマウスに1.5×107個のDaudi細胞を静注した。6〜7匹のマウスの群に、14,000IUのPEGINTRON(商標)またはα2b-413のいずれかを皮下注射で投与した。Daudi細胞をマウスに投与した1日後に治療を開始した。群に、1週間に1回(q7d×4)、2週間に1回(q2wk×4)、または3週間に1回(q3wk×4)投薬した。注射時間は矢印で示されている。全てのマウスが合計4回の注射を受けた。各群について生存曲線および生存中央値が示されている。
【図11】G-CSF-413の模式図。G-CSF基(五角形)、30kDa PEG(星形)、AD2ペプチドおよびDDD2ペプチド(らせん)、ならびにEDANS蛍光タグ(楕円形)が示されている。
【図12】h679-Fab-DDD2(A)、二量体EPO-DDD2(B)(これらがDNL法で結合してEPO-679(C)を生成する)の模式図。h679 Fabの可変ドメインおよび定常ドメイン(楕円形)、AD2らせんおよびDDD2らせん、EPO基(五角形)、ならびに遊離スルフヒドリル基(SH)が示されている。
【図13】EPOコンストラクトによる細胞増殖の刺激。EPO応答性TF1細胞(1×104)を、 rhEPO、EPO-DDD2、またはEPO-679の存在下で72時間培養した。相対的な生存細胞密度をMTSアッセイで決定した。濃度(U/mL)の対数をOD490に対してプロットした。
【図14】EPO-413の模式図。EPO基(五角形)、30kDa PEG(星形)、AD2ペプチドおよびDDD2ペプチド(らせん)、ならびにEDANS蛍光タグ(楕円形)が示されている。
【図15】IMP-421の構造。
【図16】mPEG2-MAL-40Kの構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ドック・ロック(DNL)法
DNL法は、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットとAキナーゼアンカリングタンパク質(AKAP)のアンカリングドメイン(AD)との間で生じる特異的なタンパク質/タンパク質相互作用を利用している(Baillie et al., FEBS Letters. 2005; 579: 3264. Wong and
Scott, Nat. Rev. MoI. Cell Biol. 2004; 5: 959)。PKAは、セカンドメッセンジャーcAMPのRサブユニットへの結合によって引き起こされる最もよく研究されたシグナル伝達経路の1つで中心的な役割を果たしているが、これは 1968年にウサギの骨格筋から最初に単離された(Walsh et al., J. Biol. Chem. 1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットによって不活性形に保たれた2つの触媒サブユニットからなる(Taylor, J. Biol. Chem. 1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは2種類のRサブユニット(RIおよびRII)を有することが分かっており、各々の種類はαアイソフォームおよびβアイソフォームを有する(Scott, Pharmacol. Ther. 1991 ;50:123)。Rサブユニットは、安定な二量体としてのみ単離されており、二量体化ドメインは、最初の44個のアミノ末端残基からなることが示されている(Newlon et al., Nat. Struct. Biol. 1999;6:222)。cAMPのRサブユニットへの結合は、広範囲のセリン/トレオニンキナーゼ活性のために活性触媒サブユニットの放出を引き起こし、この活性は、AKAPとのドッキングを介したPKAのコンパートメント化を通じて選択された基質へと向かう(Scott et al., J. Biol. Chem. 1990;265;21561)。
【0014】
最初のAKAPである微小管関連タンパク質-2が1984年に特性解析されて以来(Lohmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA. 1984;81
:6723)、形質膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、および小胞体を含む、様々な細胞内部位に局在する50個を超えるAKAPが、酵母からヒトに及ぶ種で多様な構造を有することが同定されている(Wong and Scott, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2004;5:959)。PKAに対するAKAPのADは、14〜18残基の両親媒性ヘリックスである(Carr et al., J. Biol. Chem. 1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAP間で全く異なっており、RII二量体について報告された結合親和性の範囲は2〜90nMである(Alto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003;100:4445)。興味深いことに、AKAPは、二量体のRサブユニットにしか結合しない。ヒトRIIαの場合、ADは、23個のアミノ末端残基により形成される疎水性表面に結合する(Colledge and Scott, Trends Cell Biol. 1999; 6:216)。したがって、ヒトRIIαの二量体化ドメインとAKAP結合ドメインは両方とも、同じN末端の44個のアミノ酸配列中にあり(Newlon et al., Nat. Struct. Biol. 1999;6:222; Newlon et
al., EMBO J. 2001 ;20: 1651)、この配列を本明細書ではDDDと呼ぶ。
【0015】
リンカーモジュールとしてのヒトRIIαのDDDおよびAKAPのAD
本発明者らは、ヒトRIIαのDDDおよびある種のアミノ酸配列のADを、任意の2つの実体(以後、AおよびBと表す)をドッキングさせて非共有結合複合体にするためのリンカーモジュールの優れたペアとして利用するためのプラットフォーム技術を開発した。この複合体は、図1に示すように、DDDとADの両方の戦略的位置にシステイン残基を導入することによって、安定に連結された構造へとさらにロックして、ジスルフィド結合を形成しやすくすることができる。「ドック・ロック」アプローチの一般的方法論は以下の通りである。DDD配列をAの前駆体に連結することによって実体Aを構築し、第一構成要素(以後、aと表す)を生じさせる。DDD配列は二量体を自発的に形成するので、Aはa2から構成される。AD配列をBの前駆体に連結することによって実体Bを構築し、第二構成要素(以後、bと表す)を生じさせる。a2に含まれるDDDの二量体モチーフは、bに含まれるAD配列に結合するためのドッキング部位を作り出し、それによってa2とbの素早い会合を促進して、a2bから構成される2成分の三量体複合体を形成させる。この結合事象は、ジスルフィド架橋を介して2つの実体を共有結合的に固定するための次の反応で不可逆的になる。この反応は、有効局所濃度の原理に基づいて非常に効率的に生じる。なぜなら、最初の結合相互作用がDDDとADの両方の上に配置された反応性チオール基を近接させて(Chimura et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2001 ;98:8480)、部位特異的にライゲートするはずであるからである。
【0016】
2つの前駆体の官能基から離れた所でDDDおよびADを付着させることにり、そのような部位特異的ライゲーションが2つの前駆体のもとの活性を保持することも期待される。このアプローチは、本質的にモジュール方式であり、ペプチド、タンパク質、核酸、およびPEGを含む、広範囲の基質を、部位特異的かつ共有結合的に、連結するために潜在的に適用することができる。DNL法は、2005年10月20日に出願された米国仮特許出願第60/728,292号;2005年12月16日に出願された米国仮特許出願第60/751,196号;および2006年3月14日に出願された米国仮特許出願第60/782,332号;ならびに2006年3月24日に出願された米国特許出願第11/389,358号;2006年3月28日に出願された米国特許出願第11/391,584号;2006年6月29日に出願された米国特許出願第11/478,021号;2006年12月5日に出願された米国特許出願第11/633,729号および2007年10月26日に出願された米国特許出願第11/925,408に開示された。
【0017】
好ましい実施形態において、下記の実施例に示すように、PEG化されるエフェクター部分は、タンパク質またはペプチドであり、これをDDDユニットまたはADユニットに連結して、融合タンパク質または融合ペプチドを形成させることができる。融合タンパク質を作製するための様々な方法が公知であり、関心となる融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生するための核酸の合成、ハイブリダイゼーション、および/または増幅が含まれる。そのような二本鎖核酸を、標準的な分子生物学の技術によって融合タンパク質産生用の発現ベクターに挿入してもよい(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 第2版, 1989参照)。そのような好適な実施形態において、AD部分および/またはDDD部分を、エフェクタータンパク質またはペプチドのN末端またはC末端のいずれかに付着させてもよい。しかしながら、当業者は、AD部分またはDDD部分のエフェクター部分への付着部位が、エフェクター部分およびその生理活性に関与するエフェクター部分の部分の化学的性質によって異なり得るということを理解するであろう。様々なエフェクター部分の部位特異的付着を、二価のクロスリンキング試薬の使用および/またはその他の化学的コンジュゲーション技術などの、当技術分野において公知の技術を用いて行なってもよい。
【0018】
DNLによるPEG化
好ましい方法において、PEG化される標的をDDD配列に連結し、DDDモジュールを作製する。望ましい分子サイズのPEG試薬を、関連するAD配列で誘導体化し、得られたPEG-ADモジュールをDDDモジュールと組み合わせて、PEG化コンジュゲートを産生する。このPEG化コンジュゲートは、DDDとADの間に形成されたジスルフィド結合を介して2コピーのエフェクター部分と部位特異的につながれた単一PEGからなる。PEG試薬は、一方の端でメトキシ基によりキャッピングされてもよく(m-PEG)、線状または分岐状であることができ、以下の官能基、すなわち、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、オルト-ピリジルチオエステル(OPTE)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン-2-チオン、炭酸スクシンイミジル(SC)、マレイミド、またはオルト-ピリジルジスルフィド(OPPS)のうちの1つを含んでもよい。PEG化用の関心となり得るエフェクター部分の中には、酵素、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ペプチド、アプタマー、ヘモグロビン、抗体、および抗体断片が含まれる。本方法は限定的ではなく、開示された方法および組成物を用いて種々様々な薬剤がPEG化されてもよい。様々なサイズの、様々な反応性部分で誘導体化されたPEGを、下記の実施例でより詳細に議論されるような市販源から入手してもよい。
【0019】
サイトカインおよびその他の免疫モジュレーター
ある好ましい実施形態において、PEG化されるエフェクター部分は、免疫モジュレーターである。免疫モジュレーターは、存在するときに、体の免疫系を変化させるか、抑制するか、または刺激する薬剤である。有用な免疫モジュレーターとしては、サイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。特に有用なのは、リンホトキシン(例えば、腫瘍壊死因子(TNF))、造血因子(例えば、インターロイキン(IL))、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、インターフェロン-β、またはインターフェロン-γ)、および幹細胞成長因子(例えば、「S1因子」と表されるもの)である。
【0020】
より好ましい実施形態において、PEG化されるエフェクター部分は、リンホカイン、モノカイン、成長因子、および従来的なポリペプチドホルモンなどの、サイトカインである。サイトカインに含まれるものとして、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン);副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH));肝成長因子;プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-αおよび腫瘍壊死因子-β;ミューラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子(例えば、NGF-β);血小板成長因子;形質転換成長因子(TGF)(例えば、TGF-αおよびTGF-β);インスリン様成長因子-Iおよびインスリン様成長因子-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、インターフェロン-β、およびインターフェロン-γ);コロニー刺激因子(CSF)(例えば、マクロファージ-CSF(M-CSF));インターロイキン(IL)(例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL- 9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、kitリガンド、またはFLT-3)、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF、例えば、TNF-α)ならびにLTが挙げられる。例示的なサイトカインのPEG化は、下記の実施例2〜12に記載されている。
【0021】
タンパク質免疫モジュレーターまたはペプチド免疫モジュレーター(例えば、サイトカイン)のアミノ酸配列は、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の配列を本発明の実施で使用し得る。当業者は、サイトカイン配列に関する公開情報の多くの源を知っている。例えば、NCBIデータベースは、多数のサイトカインおよび免疫モジュレーター(例えば、エリスロポエチン(GenBank NM 000799)、IL-1β(GenPept AAH08678)、GM-CSF(GenPept AAA52578)、TNF-α(GenPept CAA26669)、および上で列挙されたほとんど全てのペプチド免疫モジュレーターまたはタンパク質免疫モジュレーター)のタンパク質配列およびコード核酸配列の両方を含む。当業者が、関心となる本質的に全てのタンパク質またはペプチドのエフェクター部分についての適当なアミノ酸配列および/または核酸配列を同定するのは、日常的なことである。
【0022】
抗体および抗体断片
その他の実施形態において、抗体または抗体の抗原結合断片をPEG化してもよい。抗原結合抗体断片(例えば、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、Fv、scFvなど)は、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の断片を使用してもよい。本明細書で使用するとき、抗原結合抗体断片とは、インタクト抗体または親抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する抗体の任意の断片を指す。関心となるほとんど全ての抗体または断片のADコンジュゲートおよび/またはDDDコンジュゲートを調製する技術が公知である(例えば、米国特許出願第11/633,729号)。
【0023】
治療剤とコンジュゲートされていない抗体またはその断片(「裸の」抗体またはその断片と表す)を使用してもよい。代わりの実施形態において、抗体または断片を、1つもしくは複数の治療剤および/または診断剤とコンジュゲートしてもよい。以下でより詳細に議論されるように、種々様々なそのような治療剤および診断剤が当技術分野において公知であり、任意のそのような公知の治療剤および診断剤を使用してもよい。
【0024】
ほとんど全ての標的抗原に対するモノクローナル抗体を調製する技術が当技術分野において周知である。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)、およびColigan et al.(編), CURRENT PROTOCOLS IN
IMMUNOLOGY, 第1巻, 2.5.1-2.6.7頁 (John Wiley & Sons 1991)を参照されたい。簡潔に述べると、モノクローナル抗体は、マウスに抗原を含む組成物を注射し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを産生し、そのハイブリドーマをクローンニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、このハイブリドーマ培養液から抗体を単離することによって得ることができる。
【0025】
MAbは、様々な十分確立された技術により、ハイブリドーマ培養液から単離および精製することができる。そのような単離技術には、プロテイン-Aセファロースを用いる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。例えば、Coligan(2.7.1-2.7.12頁および2.9.1-2.9.3頁)を参照されたい。また、Baines et al.,「Purification of Immunoglobulin G (IgG)」(METHODS IN MOLECULAR
BIOLOGY, 第10巻, 79-104頁 (The Humana Press, Inc. 1992))を参照されたい。
【0026】
免疫原に対する抗体を最初に作製した後に、その抗体の配列を決定し、次に組換え技術によって調製することができる。マウス抗体および抗体断片のヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体に由来する抗体成分を使用することにより、マウス定常領域の免疫原性と関連する潜在的な問題が未然に防がれる。
【0027】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、マウス抗体の可変領域に置換されている組換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与されたときに減少した免疫原性および増大した安定性を示す。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技術は、例えば、Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. ScL USA 86: 3833 (1989)に開示されている。キメラ抗体を構築するための技術は当業者に周知である。一例として、Leungら(Hybridoma 13:469 (1994))は、マウスLL2、抗CD22モノクローナル抗体のVκドメインおよびVHドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκ定常領域ドメインおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせることによって、LL2キメラを産生した。
【0028】
ヒト化抗体
ヒト化MAbを産生するための技術は当技術分野において周知である(例えば、Jones et al., Nature 321: 522 (1986)、Riechmann et al.,
Nature 332: 323 (1988)、Verhoeyen et al., Science 239: 1534 (1988)、Carter et al., Proc.
Nat'l Acad. Sci. USA 89: 4285 (1992)、Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12: 437 (1992)、およびSinger et al., J.
Immun. 150: 2844 (1993)参照)。キメラ抗体またはマウスモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重可変鎖および軽可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインに移すことによってヒト化し得る。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)もヒトFR配列と置換される。マウスCDRをヒトFRに単に移すだけでは、しばしば抗体親和性の低下または損失さえ起こるため、マウス抗体のもとの親和性を回復するためにさらなる修飾が必要になる場合がある。これは、そのエピトープに対して良好な結合親和性を保有する抗体を得るために、FR領域の1つまたは複数のあるヒト残基をマウスの相当部分と置換することにより達成することができる。例えば、Tempest et al., Biotechnology 9:266 (1991)およびVerhoeyen et al.,
Science 239: 1534 (1988)を参照されたい。一般に、マウスの相当部分と異なりかつ1つもしくは複数のCDRアミノ酸残基の近くに位置するかまたは該アミノ酸残基と接しているヒトFRアミノ酸残基が置換の候補となるであろう。
【0029】
ヒト抗体
コンビナトリアルアプローチまたはヒト免疫グロブリン座を形質転換したトランスジェニック動物のいずれかを用いて完全ヒト化抗体を産生するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、Mancini et al., 2004, New Microbiol. 27:315-28; Conrad
and Scheller, 2005, Comb. Chem. High Throughput Screen. 8: 1 17-26; Brekke and
Loset, 2003, Curr. Opin. Phamacol 3:544-50)。完全ヒト抗体は、遺伝子または染色体トランスフェクション法、およびファージディスプレイ技術によって構築することもでき、これらの方法は全て当技術分野において公知である。例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990)を参照されたい。そのような完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりもずっと少ない副作用を示すことおよび本質的に内在性のヒト抗体としてインビボで機能することが期待される。ある実施形態において、請求された方法および手順は、そのような技術によって産生されたヒト抗体を利用してもよい。
【0030】
1つの代替法において、ファージディスプレイ技術を用いて、ヒト抗体を作製してもよい(例えば、Dantas-Barbosa et al., 2005, Genet. Mol. Res. 4: 126-40)。ヒト抗体は、正常ヒトからまたは癌などの特定の疾患状態を示すヒトから作製してもよい(Dantas-Barbosa et al., 2005)。罹患した個人からヒト抗体を構築する利点は、循環抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体に偏っている可能性があるということである。
【0031】
この方法論の1つの非限定的な例において、Dantas-Barbosaら(2005)は、骨肉腫患者由来のヒトFab抗体断片のファージディスプレイライブラリーを構築した。一般に、トータルRNAは、循環血液白血球から取得された(同上)。組換えFabは、μ鎖、γ鎖、およびκ鎖の抗体レパートリーからクローニングされ、ファージディスプレイライブラリーに挿入された(同上)。RNAはcDNAに変換され、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン配列に対する特異的プライマー(Marks et al., 1991, J Mol. Biol. 222:581-97)を用いてFab cDNAライブラリーを作製するために使用された。ライブラリー構築は、Andris-Widhopfら(2000, Phage Display Laboratory Manual, Barbasら(編), 初版, Cold Spring Harbor
Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY 9.1〜9.22頁)に従って行なわれた。最終的なFab断片が制限エンドヌクレアーゼで消化され、バクテリオファージゲノムに挿入されて、ファージディスプレイライブラリーが作製された。そのようなライブラリーは、当技術分野において公知であるような、標準的なファージディスプレイ法によってスクリーニングし得る。
【0032】
ファージディスプレイを様々なフォーマットで行なうことができる。これらのフォーマットの総説については、例えば、Johnson and Chiswell, Current Opinion in Structural
Biology 3:5564-571 (1993)を参照されたい。また、ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞によって生成されてもよい。例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい。当業者は、これらの技術が例示的なものであり、ヒトの抗体または抗体断片を作製およびスクリーニングするための任意の公知の方法を利用し得るということを理解するであろう。
【0033】
別の代替法において、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変されているトランスジェニック動物を用いて、標準的な免疫化プロトコルを用いて、本質的に全ての免疫原性標的に対する抗体を作製してもよい。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7: 13 (1994)、Lonberg et al., Nature
5(55:856 (1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)によって開示されている。そのような系の非限定的な例は、Abgenix (Fremont, CA)からのXenoMouse(登録商標)(例えば、Green et al., 1999, J Immunol. Methods 231 : 11-23)である。XenoMouse(登録商標)および同様の動物において、マウス抗体遺伝子は不活化され、機能的ヒト抗体遺伝子に置換されているが、残りのマウス免疫系はインタクトのままである。
【0034】
XenoMouse(登録商標)は、生殖系列の構成を持つYAC(酵母人工染色体)で形質転換された。このYACは、アクセサリー遺伝子および調製配列の間に、可変領域配列の大部分を含むヒトのIgH座およびIgκ座の部分を含んでいた。ヒト可変領域レパートリーを用いて、抗体産生B細胞を作製してもよく、この抗体産生B細胞は、公知の技術で処理してハイブリドーマにし得る。標的抗原で免疫化されたXenoMouse(登録商標)は、正常な免疫応答によりヒト抗体を産生し、その抗体は、上で議論された標準的な技術により採取および/または産生され得る。様々な系統のXenoMouse(登録商標)が利用可能であり、その各々は異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子組換えで産生されたヒト抗体は、正常ヒト抗体の薬物動態特性を保持しながら、治療潜在能力を有することが示されている(Green et al., 1999)。当業者は、請求された組成物および方法が、XenoMouse(登録商標)系の使用に限定されるのではなく、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変されている任意のトランスジェニック動物を利用し得るということを理解するであろう。
【0035】
抗体断片
特異的エピトープを認識する抗体断片を公知の技術によって作製することができる。抗体断片とは、抗体の抗原結合部分(例えば、F(ab')2、Fab'、F(ab)2、Fab、Fv、sFvなど)である。F(ab')2断片は、抗体分子のペプシン消化によって産生することができ、Fab'断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製することができる。あるいは、Fab'発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science, 246: 1274-1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab'断片の迅速かつ簡単な同定を可能にすることができる。F(ab)2断片は、抗体のパパイン消化によって作製し得、Fab断片は、ジスルフィドの還元によって取得し得る。
【0036】
単鎖Fv分子(scFv)は、1つのVLドメインおよび1つのVHドメインを含む。VLドメインおよびVHドメインが会合して、標的結合部位を形成する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によってさらに共有結合的に連結される。scFv分子を作製するための方法および好適なペプチドリンカーを設計するための方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R. Raag and M. Whitlow, 「Single Chain Fvs」, FASEB 第9巻:73-80 (1995)、およびR.E. Bird and B.W. Walker, 「Single Chain Antibody Variable Regions」, TIBTECH, 第9巻: 132-137 (1991)に記載されている。
【0037】
抗体断片は、全長抗体のタンパク質分解的な加水分解によってまたは断片をコードするDNAの大腸菌(E. coli)もしくは別の宿主における発現によって調製することができる。抗体断片は、従来法による全長抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号および第4,331,647号、ならびにそれらの中に含まれている参考文献によって記載されている。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230 (1960)、Porter, Biochem. J.
73:119 (1959)、Edelman et al., METHODS IN ENZYMOLOGY, 第1巻, 422頁(Academic Press 1967)、およびColigan(2.8.1-2.8.10および2.10-2.10.4頁)も参照されたい。
【0038】
公知の抗体
有用な抗体は、種々様々な公知の源から市販で入手し得る。例えば、様々な抗体分泌ハイブリドーマ株が、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能である。腫瘍関連抗原を含むが、これらに限定されない、様々な疾患標的に対する多くの抗体がATCCに寄託されており、かつ/または該抗体は可変領域配列を公表しており、請求された方法および組成物で使用することができる。例えば、米国特許第7,312,318号;第7,282,567号;第7,151,164号;第7,074,403号;第7,060,802号;第7,056,509号;第7,049,060号;第7,045,132号;第7,041,803号;第7,041,802号;第7,041,293号;第7,038,018号;第7,037,498号;第7,012,133号;第7,001,598号;第6,998,468号;第6,994,976号;第6,994,852号;第6,989,241号;第6,974,863号;第6,965,018号;第6,964,854号;第6,962,981号;第6,962,813号;第6,956,107号;第6,951,924号;第6,949,244号;第6,946,129号;第6,943,020号;第6,939,547号;第6,921,645号;第6,921,645号;第6,921,533号;第6,919,433号;第6,919,078号;第6,916,475号;第6,905,681号;第6,899,879号;第6,893,625号;第6,887,468号;第6,887,466号;第6,884,594号;第6,881,405号;第6,878,812号;第6,875,580号;第6,872,568号;第6,867,006号;第6,864,062号;第6,861,511号;第6,861,227号;第6,861,226号;第6,838,282号;第6,835,549号;第6,835,370号;第6,824,780号;第6,824,778号;第6,812,206号;第6,793,924号;第6,783,758号;第6,770,450号;第6,767,711号;第6,764,688号;第6,764,681号;第6,764,679号;第6,743,898号;第6,733,981号;第6,730,307号;第6,720,15号;第6,716,966号;第6,709,653号;第6,693,176号;第6,692,908号;第6,689,607号;第6,689,362号;第6,689,355号;第6,682,737号;第6,682,736号;第6,682,734号;第6,673,344号;第6,653,104号;第6,652,852号;第6,635,482号;第6,630,144号;第6,610,833号;第6,610,294号;第6,605,441号;第6,605,279号;第6,596,852号;第6,592,868号;第6,576,745号;第6,572;856号;第6,566,076号;第6,562,618号;第6,545,130号;第6,544,749号;第6,534,058号;第6,528,625号;第6,528,269号;第6,521,227号;第6,518,404号;第6,511,665号;第6,491,915号;第6,488,930号;第6,482,598号;第6,482,408号;第6,479,247号;第6,468,531号;第6,468,529号;第6,465,173号;第6,461,823号;第6,458,356号;第6,455,044号;第6,455,040号;第6,451,310号;第6,444,206号;第6,441,143号;第6,432,404号;第6,432,402号;第6,419,928号;第6,413,726号;第6,406,694号;第6,403,770号;第6,403,091号;第6,395,276号;第6,395,274号;第6,387,350号;第6,383,759号;第6,383,484号;第6,376,654号;第6,372,215号;第6,359,126号;第6,355,481号;第6,355,444号;第6,355,245号;第6,355,244号;第6,346,246号;第6,344,198号;第6,340,571号;第6,340,459号;第6,331,175号;第6,306,393号;第6,254,868号;第6,187,287号;第6,183,744号;第6,129,914号;第6,120,767号;第6,096,289号;第6,077,499号;第5,922,302号;第5,874,540号;第5,814,440号;第5,798,229号;第5,789,554号;第5,776,456号;第5,736,119号;第5,716,595号;第5,677,136号;第5,587,459号;第5,443,953号;第5,525,338を参照されたい。これらは、例示的であるに過ぎず、種々様々なその他の抗体およびそれらのハイブリドーマが当技術分野において公知である。当業者は、関心となる選択された疾患関連標的に対する抗体についてATCC、NCBI、および/またはUSPTOのデータベースを簡単に探索することにより、ほとんど全ての疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマを入手し得るということを理解するであろう。当技術分野において周知の標準的な技術を用いて、クローニングした抗体の抗原結合ドメインを増幅し、切り出し、発現ベクターにライゲートし、適合宿主細胞にトランスフェクトし、タンパク質産生に使用してもよい。
【0039】
治療剤
代わりの実施形態において、細胞毒性剤、抗血管形成剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、またはその他の薬剤などの治療剤を本明細書に記載されるようにPEG化してもよい。例えば、SN38(Zhao et al., Bioconjug Chem 2008, 10:849-59)、ウリカーゼ(Biggers &
Scheinfeld, Curr Opin Investig Drugs 2008, 9:422-29)、ドセタキセル(Liu et al., 2008, J
Pharm Sci 97:3274-90)、およびカンプトテシン(Haverstick et al., 2007, Bioconjug Chem 18:21 15-21)について、PEG化型の治療剤が開示されている。有用な薬物は、抗有糸分裂剤、抗キナーゼ剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生剤、アルカロイド剤、抗血管形成剤、アポトーシス促進剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬学的特性を保有していてもよい。
【0040】
有用な例示的薬物としては、5-フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、 アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドホスフェート、フロクスウリジン(FUdR)、3',5'-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、レノリダミド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソ尿素、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンカアルカロイドが挙げられ得る。
【0041】
有用な毒素としては、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)(例えば、オンコナーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。
【0042】
有用なケモカインとして、RANTES、MCAF、MIP1-α、MIP1-β、およびIP-10が挙げられ得る。
【0043】
ある実施形態において、アンジオスタチン、バキュロスタチン、カンスタチン、マスピン、抗VEGF抗体、抗PlGFペプチドおよび抗PlGF抗体、抗血管成長因子抗体、抗Flk-1抗体、抗Flt-1抗体および抗Flt-1ペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻害因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン-12、IP-10、Gro-β、トロンボスポンジン、2-メトキソエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミノトリアゾル、CM101、マリマスタット、ペントサンポリスルフェート、アンジオポエチン-2、インターフェロン-α、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチン断片、リノミド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板因子4、またはミノサイクリンなどの、抗血管新生剤が有用であり得る。
【0044】
その他の有用な治療剤は、オリゴヌクレオチド、特に、好ましくはオンコジーンおよびオンコジーン産物(例えば、bcl-2またはp53)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0045】
コンジュゲーション
小分子をタンパク質またはペプチド(例えば、ADペプチドもしくはDDDペプチド)にコンジュゲートするための様々な技術および組成物が公知であり、使用され得る。治療剤を、例えば、還元されたSH基および/または炭水化物側鎖に付着させることができる。治療剤を、ジスルフィド結合の形成を通じてシステイン残基を含む還元されたタンパク質またはペプチドに付着させることができる。あるいは、そのような薬剤を、ヘテロ二官能性クロスリンカー(例えば、N-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))を用いて付着させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56: 244 (1994)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技術は当技術分野において周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING
(CRC Press 1991);Upeslacis et al., 「Modification of Antibodies by Chemical Methods」(MONOCLONAL ANTIBODIES:
PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (編), 187-230頁 (Wiley-Liss, Inc. 1995));Price, 「Production and Characterization of Synthetic
Peptide-Derived Antibodies」(MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND
CLINICAL APPLICATION, Ritter et al., (編), 60-84頁 (Cambridge University Press 1995))を参照されたい。
【0046】
治療的使用
本明細書に記載された組成物は、様々な疾患状態の治療に特に有用である。好ましい実施形態において、疾患は、自己免疫疾患または癌(例えば、造血系癌もしくは固形腫瘍)であってもよい。開示された組成物および方法を用いて治療し得る例示的で非限定的な疾患としては、遅発性型のB細胞リンパ腫、侵攻型のB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにGVHD、クリオグロブリン血症、溶血性貧血、同種感作、および臓器移植拒絶反応が挙げられる。免疫介在性血小板減少症(例えば、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病)、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、関節リウマチ、多腺症候群、水疱性類天疱瘡、若年型糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、ならびに線維化性肺胞炎などのクラスIII自己免疫疾患も挙げられる。
【0047】
治療し得る固形腫瘍としては、神経芽腫、悪性黒色腫、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、肺癌、腎癌、結腸直腸癌、胃癌、膀胱癌、神経膠腫、肉腫、脳腫瘍、食道癌、上皮癌、骨肉腫、精巣癌、肝癌、および膵癌が挙げられる。
【0048】
キット
様々な実施形態は、患者の罹患組織を治療または診断するのに好適な構成要素を含むキットに関係し得る。例示的なキットは、本明細書に記載されたような少なくともPEG化された治療剤を含んでもよい。投与用の構成要素を含む組成物が、経口送達のような、消化管経由の送達用に処方されていない場合、何らかのその他の経路を通してキット構成要素を送達することができる装置が含まれてもよい。非経口送達などの用途のための装置の1つの種類は、対象の体内に組成物を注射するのに使用される注射器である。吸入装置も使用してよい。ある実施形態において、PEG化された治療剤は、滅菌された液体製剤または凍結乾燥調製物を含む前充填注射器または前充填自動注射ペンの形態で提供されてもよい。
【0049】
キット構成要素をまとめて包装してもよくまたは2つ以上の容器に分けてもよい。いくつかの実施形態において、容器は、再構成に好適である滅菌凍結乾燥製剤の組成物を含むバイアルであってもよい。キットは、その他の試薬の再構成および/または希釈に好適な1つまたは複数の緩衝液も含んでよい。使用し得るその他の容器としては、ポーチ、トレイ、箱、チューブなどが挙げられるが、これらに限定されない。キット構成要素を容器に滅菌的に包装し、維持してもよい。含めることができる別の構成要素は、キットを使用する人への使用上の取扱説明書である。
【0050】
実施例
以下の実施例は、限定されるわけではないが、本発明の特許請求の範囲を例証するために提供される。
【0051】
実施例1.PEG-AD2モジュールの作製
IMP350の合成
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(SS-tbu)-NH2(配列番号:1)MH+2354
AD2の配列を組み入れたIMP350を、Protein TechnologiesのPS3ペプチド合成機でFmoc法を用いて、Sieber Amide樹脂を用いて0.1mmolスケールで作製した。C末端から順に、使用された保護アミノ酸は、Fmoc-Cys(t-Buthio)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OBut)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Tyr(But)-OH、Fmoc-Glu(OBut)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Gly-OH、およびFmoc-Cys(Trt)-OHであった。ペプチドを樹脂から切断し、逆相(RP)-HPLCで精製した。
【0052】
PEG20-IMP350の合成
IMP350(0.0104g)を、7mLの1M Tris緩衝液(pH7.81)中で、0.1022 gのmPEG-OPTE(20kDa, Nektar Therapeutics)と混合した。その後、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応物を室温で3時間撹拌し、その後、0.0549gのシステインと共に0.0527gのTCEPを添加した。この反応混合物を1.5時間撹拌し、その後、水中の20%エタノールで平衡化したPD-10脱塩カラムで精製した。この試料を溶出し、凍結し、凍結乾燥して、0.0924gの粗PEG20-IMP350(MALDIでMH+ 23508)を得た。
【0053】
IMP360の合成
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(SS-tbu)G-EDANS(配列番号:1)MH+ 2660
AD2の配列を組み入れたIMP36Oを、Protein TechnologiesのPS3ペプチド合成機でFmoc法を用いて、Fmoc-Gly-EDANS樹脂を用いて0.1mmolスケールで作製した。0.23gのFmoc-Gly-OH、0.29gのHATU、26μLのDIEA、7.5mLのDMF、および0.57gのEDANS樹脂(Nova Biochem)を用いて、Fmoc-Gly-OHを樹脂に手作業で添加した。試薬を混合し、樹脂に添加した。この反応物を室温で2.5時間混合し、樹脂をDMFおよびIPAで洗浄して、余分な試薬を除去した。C末端から順に、使用された保護アミノ酸は、Fmoc-Cys(t-Buthio)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OBut)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Tyr(But)-OH、Fmoc-Glu(OBut)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Gly-OH、およびFmoc-Cys(Trt)-OHであった。ペプチドを樹脂から切断し、RP-HPLCで精製した。
【0054】
IMP362(PEG20-IMP360)の合成
IMP362の模式図を図2に示す。IMP362の合成のために、IMP360(0.0115g)を、7mLの1M tris緩衝液(pH7.81)中で0.1272gのmPEG-OPTE(20kDa, Nektar Therapeutics)と混合した。その後、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応物を室温で4時間撹拌し、その後、0.0431gのシステインと共に0.0410gのTCEPを添加した。この反応混合物を1時間撹拌し、水中の20%エタノールで平衡化したPD-10脱塩カラムで精製した。この試料を溶出し、凍結し、凍結乾燥して、0.1471gの粗IMP362(MH+ 23713)を得た。
【0055】
IMP413(PEG30-MP360)の合成
IMP413の模式図を図3に示す。IMP413の合成のために、IMP360(0.0103g)を、7mLの1M tris緩衝液(pH7.81)中で0.1601gのmPEG-OPTE(30kDa, Nektar Therapeutics)と混合した。その後、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応物を室温で4.5時間撹拌し、その後、0.0473gのシステインと共に0.0423gのTCEPを添加した。この反応混合物を2時間撹拌した後、2日間透析した。透析した材料を凍結し、凍結乾燥して、0.1552gの粗IMP413(MH+ 34499)を得た。
【0056】
IMP421の合成
IMP421 Ac-C-PEG3-C(S-tBu)GQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(S-tBU)G-NH2(配列番号:9)
以下のアミノ酸を以下に示す順序で樹脂に添加することによって、ペプチドIMP421(MH+ 2891)をNovaSyn(登録商標)TGR樹脂(487.6 mg, 0.112mmol)上に作製した:Fmoc-Gly- OH、Fmoc-Cys(t-Buthio)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc- Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OBut)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Tyr(But)-OH、Fmoc-Glu(OBut)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Cys(t-Buthio)-OH、Fmoc-NH-PEG3-COOH、Fmoc-Cys(Trt)-OH。N末端アミノ酸はアセチル誘導体として保護された。その後、ペプチドを樹脂から切断し、RP-HPLCで精製して、32.7mgの白色固体を生じた。
【0057】
IMP457の合成
AD2の配列を組み入れたIMP421(配列番号:9、図15)を、標準的な化学的手段で合成した。15.2mg(5.26μmol)のIMP421(F.W. 2890.50)と274.5mg(6.86μmol)のmPEG2-MAL-40Kのアセトニトリル溶液(1mL)に、7mLの1M Tris(pH7.8)を添加し、室温で3時間反応させた。余分なmPEG2-MAL-40K(図16)を49.4mg L-システインでクエンチした後、59.1mg TCEPを用いて1時間かけてS-S-tBu脱保護を行なった。この反応混合物を、2つの3〜12mLの限度容量の10K Slide-A-Lyzer透析カセット(各カセットに4ml)を用いて、5Lの5mM酢酸アンモニウム(pH5.0)中に2〜8℃で終夜透析した。次の日、5Lの5mM酢酸アンモニウム(pH5.0)緩衝液の交換をさらに3回行ない、各透析を少なくとも2.5時間続けた。精製産物(19.4mL)を2つの20mLシンチレーションバイアルに移し、凍結し、凍結乾燥して、246.7mgの白色固体が得られた。MALDI-TOFにより、mPEG2-MAL-40K 42,982およびIMP-457 45,500という結果が得られた。
【0058】
実施例2.インターフェロン(IFN)-α2bをベースにしたDDDモジュールの作製
哺乳動物細胞での発現用のIFN-α2b-DDD2-pdHL2の構築
IFN-α2bのcDNA配列をPCRで増幅し、以下の特徴、すなわち、XbaI---シグナルペプチド---IFNα2b---6 His---BamHIを含む配列(配列中、XbaIおよびBamHIは制限部位であり、シグナルペプチドはIFN-α2b由来のものであり、6 Hisはヘキサヒスチジンタグである)が結果として得られた。得られる分泌タンパク質は、そのC末端で配列番号:2からなるポリペプチドに融合したIFN-α2bからなる。
KSHHHHHHGSGGGGSGGGCGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:2)
【0059】
全長ヒトIFNα2b cDNAクローン(Invitrogen Ultimate ORFヒトクローン カタログ番号HORF01 クローン番号IOH35221)を鋳型とし、以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR増幅を遂行した。
IFNA2 XbaI 左
5'-TCTAGACACAGGACCTCATCATGGCCTTGACCTTTGCTTTACTGG-3'(配列番号:3)
IFNA2 BamHI 右
5'-GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTTTCCTTACTTCTTAAACTTTCTTGC-3'(配列番号:4)
【0060】
PCR増幅物をpGemTベクター(Promega)にクローニングした。IFN-α2bとのライゲーション用に、XbaIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、DDD2-pdHL2哺乳動物発現ベクターを調製した。IFN-α2b増幅物を、XbaIおよびBamHIを用いてpGemTから切り出し、DDD2-pdHL2ベクターにライゲートして、発現ベクターIFN-α2b-DDD2-pdHL2を作製した。
【0061】
IFN-α2b-DDD2の哺乳動物発現
SalI酵素で消化することによって、IFN-α2b-DDD2-pdHL2を線状化し、エレクトロポレーションでSp/EEEミエローマ細胞内に安定的にトランスフェクトした(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、2006年7月14日に出願された米国特許出願第11/487,215号参照)。2つのクローンが検出可能なレベルのIFN-α2bを有することがELISAで分かった。2つのクローンのうちの1つ(95と表す)を、生産性を実質的に減少させることなく、無血清培地中での増殖に適合させた。次に、このクローンを、0.1〜0.8μMの増加するメトトレキサート(MTX)濃度で5週間にわたって増幅させた。この段階で、クローンを限界希釈によりサブクローニングし、最も生産性の高いサブクローン(95-5)を拡大した。市販のrIFN-α2b(Chemicon IF007, ロット06008039084)を標準品として用いて、振盪フラスコで増殖させた95-5の生産性が、2.5mg/Lであると推定した。
【0062】
ローラーボトルで増殖させたバッチ培養物からのIFN-α2b-DDD2の精製
クローン95-5を、合計20Lの無血清Hybridoma SFM(0.8μM MTXを含む)を含む34個のローラーボトルに拡大し、最終培養物に到達させた。この上清液を遠心分離で清澄化し、濾過(0.2μM)した。この濾過物を1×結合緩衝液(10mMイミダゾル、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7.5)中に透析濾過し、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)による精製に備えて310mLに濃縮した。この濃縮物を30-mL Ni-NTAカラムに充填し、これを500mLの1×結合緩衝液中の0.02%Tween 20で洗浄し、その後、290mLの30mMイミダゾル、0.02%Tween 20、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4(pH7.5)で洗浄した。この産物を110 mLの250mMイミダゾル、0.02%Tween 20、150mM NaCl、50mM NaH2PO4(pH7.5)で溶出した。約6mgのIFNα2b-DDD2が精製された。図4は、IFNα2b-DDD2を定量するために用いた抗IFNαイムノブロットおよびELISAの結果を示す。
【0063】
IFN-α2b-DDD2の特性解析
IFN-α2b-DDD2の純度を還元条件下のSDS-PAGEで評価した(図示せず)。クマシーブルー染色ゲルにより、ローラーボトルから産生されたバッチは、それより前のバッチよりも純度が高いということが示された(図示せず)。IFN-α2b-DDD2は最も強く染色されたバンドであり、総タンパク質の約50%を占めた(図示せず)。この産物は、分子量約26kDaのダブレットとして分離したが、これは、IFN-α2b-DDD2-SPの計算分子量(26kDa)と一致している。分子量34kDaの1つの主要な汚染物質と多くの微かな汚染バンドがあった(図示せず)。
【0064】
実施例3.DNLによるPEG化IFN-α2bの作製
α2b-362(IFN-α2b-DDD2-IMP362)の調製および精製
20kDa PEGに連結した2コピーのIFNα2bを有するα2b-362の構造を表した模式図を図5に示す。11mgの還元された凍結乾燥IMP362を、250mMイミダゾル、0.02%Tween 20、150mM NaCl、1mM EDTA、50mM NaH2PO4(pH7.5)中の2.25mg(3.5ml)のIFN-α2b-DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、DNL反応を行なった。室温、暗所で6時間後、この反応混合物を、4℃、暗所で、CMローディング緩衝液(150mM NaCl、20mM NaAc、pH4.5)に対して透析した。この溶液を、CMローディング緩衝液で事前に平衡化した1-mL Hi-Trap CM-FFカラム(Amersham)に充填した。試料を充填した後、カラムをCMローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、その後、15mLの0.25M NaCl、20mM NaAc(pH4.5)で洗浄した。PEG化産物を12.5mLの0.5M NaCl、20mM NaAc(pH4.5)で溶出した。
【0065】
コンジュゲーション過程を、クマシーブルー染色を用いたSDS-PAGE、蛍光イメージング、および抗IFNαイムノブロッティングにより解析した(図示せず)。直接的なタンパク質質量比較用に試料を標準化するために、CM-FFカラムから溶出した各画分を3.5mLに濃縮して、反応容量を合わせた。非還元条件下で、クマシーブルー染色ゲルにより、反応混合物中に分子量110kDaの主要バンドが存在することが明らかとなった。このバンドは、未結合画分または0.25M NaCl洗浄画分には存在しなかったが、0.5M NaCl画分にはっきり示された(図示せず)。IMP362上のEDANSタグを検出するために用いた蛍光イメージングにより、110kDaバンドがIMP362を含むこと、ならびにクマシーブルーで染色されない、余分なIMP362が反応混合物および未結合画分中に存在することが示された(図示せず)。抗IFNαイムノブロッティングにより、IFN-α2bと110kDaバンドとの会合が確認された(図示せず)。これらのデータはともに、DNL反応によって、IMP362とIFN-α2bの二量体との部位特異的で共有結合的なコンジュゲーションが生じたことを示している。ジスルフィド結合を破壊する還元条件下で、DNL構造物の構成要素は分離されなかった(図示せず)。α2b-362の計算分子量は約75kDaであったが、これはMALDI TOFで決定された質量76,728Daとよく一致している。計算質量とSDS-PAGEによる推定質量の間に見られた食い違いはPEGが原因であり、PEG化産物がSDS-PAGEまたはSE-HPLCで解析された場合、PEGが分子サイズを大きくすることが知られている。全体に、DNL反応によって、陽イオン交換クロマトグラフィーで精製した後、>90%純粋である均質な産物がほぼ定量的に得られた(図示せず)。
【0066】
α2b-457(IFN-α2b-DDD2-IMP457)の調製および精製
2.5mgの還元された凍結乾燥IMP457を、250mMイミダゾル、0.02%Tween 20、150mM NaCl、1mM EDTA、50mM NaH2PO4(pH7.5)中の1mg(1.7ml)のIFN-α2b-DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、DNL反応を行なった。室温で60時間後、1mMの酸化グルタチオンをこの反応混合物に添加し、その後、これをさらに2時間保持した。この混合物を、CMローディング緩衝液(150mM NaCl、20mM NaAc、pH4.5)で1:20に希釈し、酢酸でpH4.5に滴定した。この溶液を、CMローディング緩衝液で事前に平衡化した1-mL Hi-Trap CM-FFカラム(Amersham)に充填した。試料を充填した後、カラムをCMローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、その後、15mLの0.25M NaCl、20mM NaAc(pH4.5)で洗浄した。PEG化産物を20mLの0.5M NaCl、20mM NaAc(pH4.5)で溶出した。a2b-457を2mLに濃縮し、0.4M PBS(pH7.4)中に透析濾過した。SDS-PAGEおよびIFNα ELISAで決定した場合、最終的な収量は、a2b-457 約1mgで、純度は>90%であった。
【0067】
α2b-413(IFN-α2b-DDD2-IMP413)の調製および精製
30kDa PEGに連結した2コピーのIFNα2bを有するα2b-413の構造を表した模式図を図6に示す。IMP362の代わりにIMP413を用いてすぐ上で記載したようにα2b-413を調製した。
【0068】
実施例4.IFN-α2b-DDD2、α2b-362、およびα2b-413のインビトロ効力の評価
インビトロ抗増殖アッセイ
IFN-α2b-DDD2およびα2b-362を、バーキットリンパ腫(Daudi)細胞の増殖の阻害についてアッセイした。簡潔に述べると、IFN-α2b標準品(Chemicon IF007, ロット06008039084)、IFN-α2b-DDD2(品番010207)、およびα2b-362 (品番010807)を、各々、10%FBSを補充したRPMI1640培地で500pMに希釈し、そこから3通りの3倍連続希釈を96ウェル組織培養プレート中に作製した(50μL試料/ウェル)。Daudi細胞を4×105細胞/mLに希釈し、50μLを各ウェルに添加した(20K/ウェル)。各試験試薬の濃度範囲は、500pM〜0.008pMであった。37℃で4日後、MTS色素をプレートに添加し(ウェル当たり20μL)、3時間後、このプレートをEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer, Boston MA)を用いて490nmで読み取った。用量応答曲線を作成し(図7)、50%有効濃度(EC50)値を、Graph Pad Prismソフトウェア(Advanced Graphics
Software, Encinitas, CA)を用いてシグモイドフィットの非線形回帰によって得た。IFNα2b-DDD2およびα2b-362についての計算EC50はよく似ており(約16pM)、IFN-α2b標準品(EC50 約4pM)よりも約5倍効力が小さかった。同様の実験で、α2b- 413は、α2b-362と同様の効力を有していた。
【0069】
抗ウイルスアッセイ
脳心筋炎(EMC)ウイルスをA549細胞に対して用いるウイルスチャレンジアッセイで、独立の分析実験室(PBL Interferon Source, Piscataway, NJ)が2通りの試料を解析した。プレートをクリスタルバイオレットで染色し、色素を溶解した後、96ウェルプレートリーダーで分光光度法によりODを測定した。データは、Graph Pad Prismソフトウェア(Advanced Graphics Software, Encinitas, CA)でシグモイドフィット(可変の傾き)の非線形回帰を用いて解析した。EC50値をIFNα標準品のEC50値と比較することによって、抗ウイルス力価を決定した。特異的な抗ウイルス活性は、α2b-362およびα2b-413について、それぞれ1.2×108U/mgおよび8.8×106U/mgと計算された。
【0070】
実施例5.α2b-413およびα2b-362のインビボ評価
薬物動態
成体メスのSwiss-Websterマウス(約35g)で研究を行った。マウス2匹ずつの4つの異なる処置群があった。各試薬(試験および対照)を、単回ボーラス静注として、等モルタンパク質用量(3μgのrhuIFN-α2a、5μgのPEGINTRON(商標)、11μgのα2b-362、および13μgのα2b-413)で投与した。マウスに、経後眼窩(retro-orbital)法により様々な時点で(投薬前、注射5分後、2時間後、8時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および168時間後に)餌を与えた。血液を凝固させ、遠心分離し、血清を単離し、IFN-α濃度のアッセイと、それに続く薬物動態(PK)解析まで-70℃で保存した。
【0071】
製造元の取扱説明書(PBL Interferon Source)に従ってヒトインターフェロンα ELISAキットを用いて血清試料中のIFN-αの濃度を決定した。簡潔に述べると、血清試料を、キットに提供されているヒトIFN-α標準品に準じて適切に希釈した。マイクロタイタープレートウェルに結合した抗体がインターフェロンを捕捉した。その後、第二の抗体を用いて、結合したインターフェロンを見えるようにした。これを、テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗二次抗体で定量した。プレートを450nmで読み取った。結果を図8に示す。
【0072】
各薬剤のPK特性を表1にまとめる。予想された通り、rhIFN-α2aは、注射されたマウスの血液から最も速やかにクリアランスされた。そのクリアランスは、PEGINTRON(商標)よりも約3倍速く、DNL-IFN試薬よりも13倍を上回って速かった。同様に、PEGINTRON(商標)は、α2b-362またはα2b-413よりも4倍を上回って速く排除された。α2b-362とα2b-413の間に除去速度の相違はほとんどなかった。
【0073】
平均滞留時間(MRT)に関して、様々な試薬間でサイズとの明らかな相関があった。19-kDa rhIFN-α2aは、31kDa PEGINTRON(商標)よりも7倍短いMRTを有し(それぞれ、0.7時間対5.1時間)、31kDa PEGINTRON(商標)は、70kDa α2b-362(10.3時間)と比較して、2倍短いMRTを有していた。80kDa α2b-413(21.7時間)のMRTは、α2b-362よりも2倍長かった。最後に、生物学的同等性試験は、試験した試薬がPKに関してどれも同じではないことを示しており、この違いが本物であること(すなわち、循環半減期が、α2b-413>α2b-362>PEGINTRON(商標)>rhIFN-α2aであること)を示している。
【表1】

【0074】
抗腫瘍治療効力
初期のインビボでの腫瘍治療研究により、DNL-PEG化インターフェロンは、PEGINTRON(商標)と比較してより強力でかつより長く持続することが示された。8週齢メスのC.B.-17 SCIDマウスに、動物当たり1.5×107細胞のヒトバーキットリンパ腫細胞株(Daudi)を静注した。マウス5匹ずつの10の異なる処置群があった。同等の活性ユニットのPEGINTRON(商標)、α2b-362、およびα2b-413を、3つの異なる用量(3500ユニット、7000ユニット、および14000ユニット)で、左右いずれかの脇腹に皮下注射で、7日に1回投与した。Daudi細胞を移植した1日後に治療を開始した。
【0075】
マウスの苦痛および麻痺の徴候を毎日観察した。マウスの体重を毎週測定した。マウスが体重の15%超(しかし20%未満)を損失した場合、マウスの体重が15%未満の損失に戻るかまたは20%を上回る損失のために屠殺されるかのいずれかになるまで、2日おきに体重を測定した。後肢麻痺を発症した場合またはそれとは別の形で瀕死になった場合にも、マウスを処分した。
【0076】
この研究から作成した生存曲線を図9に示す。PEGINTRON(商標)、α2b-362、およびα2b-413は全て、生理食塩水対照マウスと比較して有意な生存の向上を示した(P<0.0016)。等しい活性用量で投与された場合、3,500IU用量のα2b-362を除き、α2b-413とα2b-362は両方とも、PEGINTRON(商標)よりも優れていた(P<0.0027)。α2b-362は、PEGINTRON(商標)の2倍よりも大きい効力を示した。7,000IU用量および3,500IU用量のα2b-362は、それぞれ14,000IU用量(P=0.0016)および7,000IU用量(P=0.0027)のPEGINTRON(商標)よりも優れていた。3,500IU用量のα2b-413は、14,000IUのPEGINTRON(商標)よりも優れていたので(P=0.0027)、α2b-413は、PEGINTRON(商標)の4倍を上回る効力がある。等しい用量で投与された場合、α2b-413は、α2b-362よりも有意に優れていた(P<0.0025)。しかしながら、3,500IU用量およびその46日の生存中央値と比較して、14,000IU用量により60日の生存中央値が得られたにしても、α2b-413の3つの用量の間には統計的に有意な差がなかった(P=0.1255)。したがって、α2b-362、α2b-413、およびPEGINTRON(商標)について観察されたインビボ効力は、PKデータとよく相関している。
【0077】
PK解析で示されたα2b-362およびα2b-413のバイオアベイラビリティの増大は、DNL-PEG化IFNαのインビボでの抗腫瘍効力の増強に寄与する。同様に、これら2つの因子は、より頻度の少ない投薬スケジュールが腫瘍治療で用いられるのを可能にする。これは、上記と同様のインビボでの腫瘍治療研究で示された。この研究では、等しい活性ユニットのPEGINTRON(商標)またはα2b-413が様々な投薬スケジュールで投与された。1.5×107個のDaudi細胞を静注した8週齢メスのSCIDマウスでこの研究を行った。マウス6〜7匹ずつの7つの異なる処置群があった。各試薬(試験および対照)を左右いずれかの脇腹に皮下注射で14,000IU投与した。Daudi細胞をマウスに投与した1日後に治療を開始した。ある組のマウスには、週に1回、4週間(q7d×4)投薬し、別の組のマウスには2週間に1回のスケジュールで8週間にわたって投薬し(q2wk×4)、一方、3つ目の組のマウスには、3週間に1回、12週間にわたって投薬した(q3wk×4)。全てのマウスが合計4回の注射を受けた。
【0078】
この研究から作成した生存曲線を図10に示す。いずれかの形態のインターフェロンを様々なスケジュールのいずれかで受けたマウスは全て、生理食塩水対照マウスと比較して生存が有意に向上していた(P<0.0009)。重要なことに、IFN-IMP413で処置したマウスは全て、同じスケジュールで、PEGINTRON(商標)で処置したマウスと比較して、生存が有意に向上していた(P<0.0097)。注目すべきことに、1週間おきにIFN-IMP413で処置したマウス(q2wk×4)は、同じスケジュールで、PEGINTRON(商標)で処置したマウスと比較して、生存が有意に向上していただけでなく(ぞれぞれ、MST=>54日対28日;P=0.0002)、毎週PEGINTRON(商標)で処置したマウス(q7d×4)より有意に優れてもいた(MST=36.5日;P=0.0049)。さらに、3週間に1回、IFN-IMP413で処置したマウス(q3wk×4)の生存は、2週間に1回、PEGINTRON(商標)で処置したマウスよりも有意に優れており(MST=54日対28日;P=0.002)、毎週PEGINTRON(商標)で処置したマウスと比較したときの有意さに匹敵する(P=0.0598)。
【0079】
これらの研究により、IFNα2bのDNL-PEG化が、その他のPEG化型のIFNα2bと比較した場合でも、効力の向上および長期持続をもたらし、より頻度の少ない投薬を可能にすることが示された。この技術がその他のサイトカイン(例えば、G-CSFおよびEPO)、成長因子、酵素、抗体、免疫モジュレーター、ホルモン、ペプチド、薬物、干渉RNA、オリゴヌクレオチド、ワクチン、ならびにその他の生物活性剤に適用されたとき、同様の増強が実現される。
【0080】
実施例6.顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)をベースにしたDDDモジュールの作製
哺乳動物細胞での発現用のG-CSF-DDD2-pdHL2の構築
G-CSFのcDNA配列をPCRで増幅し、以下の特徴、すなわち、Xbal---シグナルペプチド---G-CSF---6 His---BamHIを含む配列(配列中、XbaIおよびBamHIは制限部位であり、シグナルペプチドはヒトG-CSF由来のものであり、6 Hisはヘキサヒスチジンタグである)が結果として得られた。得られる分泌タンパク質は、そのC末端で配列番号:5からなるポリペプチドに融合したG-CSFからなっていた。
KSHHHHHHGSGGGGSGGGCGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:2)
【0081】
全長ヒトG-CSF cDNAクローン(Invitrogen IMAGE ヒト カタログ番号97002RG クローン番号5759022)を鋳型とし、以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR増幅を遂行した。
G-CSF XbaI 左
5'-TCTAGACACAGGACCTCATCATGGCTGGACCTGCCACCCAG-3'(配列番号:5)
G-CSF BamHI-右
5'-GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTGGGCTGGGCAAGGTGGCGTAG-3'(配列番号:6)
【0082】
PCR増幅物をpGemTベクターにクローニングした。G-CSFとのライゲーション用に、XbaIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、DDD2-pdHL2哺乳動物発現ベクターを調製した。G-CSF増幅物を、XbaIおよびBamHIを用いてpGemTから切り出し、DDD2-pdHL2ベクターにライゲートして、発現ベクターG-CSF-DDD2-pdHL2を作製した。
【0083】
G-CSF-DDD2の哺乳動物発現
SalI酵素で消化することによって、G-CSF-pdHL2を線状化し、エレクトロポレーションでSp/EEEミエローマ細胞内に安定的にトランスフェクトした。0.15μM MTXを含む培地でクローンを選択した。サンドイッチELISAにより、クローン#4が、0.15mg/LのG-CSF-DDD2を産生することが示された。
【0084】
ローラーボトルで増殖させたバッチ培養物からのG-CSF-DDD2の精製
約3mgのG-CSF-DDD2を実施例2に記載されたように精製する。クローン4を、合計20Lの無血清Hybridoma SFM(0.4μM MTXを含む)を含む34個のローラーボトルに拡大し、最終培養物に到達させる。この上清液を遠心分離で清澄化し、濾過(0.2μM)し、1×結合緩衝液(10mMイミダゾル、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7.5)中に透析濾過し、濃縮する。この濃縮物をNi-NTAカラムに充填し、これを1×結合緩衝液中の0.02%Tween 20で洗浄し、その後、30mMイミダゾル、0.02%Tween 20、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4(pH7.5)で洗浄する。この産物を250mMイミダゾル、0.02%Tween 20、150mM NaCl、50mM NaH2PO4(pH7.5)で溶出する。
【0085】
実施例7.DNLによるPEG化G-CSFの作製
30kDa PEGに連結した2コピーのG-CSFを有するG-CSF-413の構造を表した模式図を図11に示す。還元された凍結乾燥IMP413を、PBS中のG-CSF-DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、DNL反応を行なう。室温、暗所で6時間後、この反応混合物を、Ni-NTAを用いた固定化金属親和性クロマトグラフィーによって精製する。
【0086】
実施例8.エリスロポエチン(EPO)をベースにしたDDDモジュールの作製
哺乳動物細胞での発現用のG-CSF-DDD2-pdHL2の構築
EPOのcDNA配列をPCRで増幅し、以下の特徴、すなわち、Xbal---シグナルペプチド---EPO---6 His---BamHIを含む配列(配列中、XbaIおよびBamHIは制限部位であり、シグナルペプチドはヒトEPO由来のものであり、6 Hisはヘキサヒスチジンタグである)を含む配列が結果として得られた。得られる分泌タンパク質は、そのC末端で配列番号:2からなるポリペプチドに融合したEPOからなる。
【0087】
全長ヒトEPO cDNAクローンを鋳型とし、以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR増幅を遂行した。
EPO XbaI 左
5'-TCTAGACACAGGACCTCATCATGGGGGTGCACGAATGTCC-3'(配列番号:7)
EPO BamHI 右
5'-GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTTCTGTCCCCTGTCCTGCAG-3'(配列番号:8)
【0088】
PCR増幅物をpGemTベクターにクローニングした。EPOとのライゲーション用に、XbaIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、DDD2-pdHL2哺乳動物発現ベクターを調製した。EPO増幅物を、XbaIおよびBamHIを用いてpGemTから切り出し、DDD2-pdHL2ベクターにライゲートして、発現ベクターEPO-DDD2-pdHL2を作製した。
【0089】
EPO-DDD2の哺乳動物発現
SalI酵素で消化することによって、EPO-DDD2-pdHL2を線状化し、エレクトロポレーションでSp/EEEミエローマ細胞内に安定的にトランスフェクトした。0.15μM MTXを含む培地でクローンを選択した。Hisタグ付き融合タンパク質を捕捉するためのNunc Immobilizer Nickel-Chelateプレートおよび抗EPO抗体による検出を用いたELISAにより、クローン#41、#49、および#37が各々約0.5mg/LのEPOを産生することが示された。
【0090】
ローラーボトルで増殖させたバッチ培養物からのEPOの精製
約2.5mgのEPO-DDD2を実施例2に記載されたように9.6リットルの無血清ローラーボトル培養液からIMACで精製した。SDS-PAGEおよびイムノブロット解析により、精製産物が、IMAC後の総タンパク質の約10%を構成することが示された(図示せず)。還元条件下では、EPO-DDD2ポリペプチドは、広範囲でかつ不均質なグリコシル化のためにその計算質量(28kDa)よりも大きい分子量(40〜45kDa)を有する幅広いバンドとして分離された。非還元条件下では、EPO-DDD2は、主として分子量80〜90kDaのジスルフィド結合した共有結合二量体として分離する。
【0091】
実施例9.EPO-DDD2とFab-AD2モジュールとのDNLコンジュゲーション
h679は、ハプテンHSG(ヒスタミン-スクシニル-グリシン)に極めて特異的であるヒト化モノクローナル抗体である。図12の模式図に表す、h679-Fab-AD2モジュールの産生は、以前に記載されている(Rossi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2006; 103:6841)。 EPO-DDD2の二量体構造を表した模式図を図12Bに示す。EPO-679(EPO-DDD2 x h679- Fab-AD2)の小規模な調製物をDNLで作製した。EPO-DDD2(1mg)を、1mMの還元グルタチオンおよび2mMの酸化グルタチオンを含むPBS中でh679-Fab-AD2(1mg)と終夜反応させた。DNLコンジュゲートを、以前に記載されたように(Rossi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2006; 103:6841)HSGベースの親和性クロマトグラフィーで精製した。2つのEPO部分およびh679-Fabを有するEPO-679の構造を表した模式図を図12Cに示した。SDS-PAGEゲルのクマシーブルー染色により、EPO-679の生成が示された(図示せず)。非還元条件下で分子量150〜170kDaの幅広いバンドとして分離するDNL産物は、還元条件下のSDS-PAGEで示されるように、高度に精製され、3つの成分ポリペプチド(EPO、h679-Fd-AD2、およびh679κ)のみからなっていた(図示せず)。
【0092】
実施例10.EPO-DDD2およびEPO-679の生物活性
組換えヒトEPO(Calbiochem)を陽性対照として用いて、EPO-DDD2およびEPO-679が、EPO応答性のTF1細胞(ATCC)の増殖を刺激する能力についてアッセイした。TF1細胞を、1×104細胞/ウェルを含む96ウェルプレート中のRPMI培地(20%FBSを補充、GM-CSFは補充せず)で増殖させた。EPOコンストラクトの濃度(ユニット/ml)を、市販のキット(ヒトエリスロポエチンELISAキット、Stem Cell Research、カタログ番号01630)を用いて決定した。細胞を、900U/ml〜0.001U/mlの範囲の濃度のrhEPO、EPO-DDD2、またはEPO-679の存在下で72時間培養した。96ウェルプレートリーダーでOD490を測定する前に6時間インキュベートした20μlのMTS試薬/ウェルを用いてMTSアッセイで生存細胞密度を比較した。用量応答曲線およびEC50値を、Graph Pad Prismソフトウェアを用いて作成した(図13)。EPO-DDD2とEPO-679の両方が、rhEPOの効力の約10%のインビトロ生物活性を示した。
【0093】
実施例11.DNLによるPEG化EPOの作製
30kDa PEGに連結した2コピーのEPOを有するEPO-413の構造を表した模式図を図14に示す。還元された凍結乾燥IMP413を、PBS中のEPO-DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、DNL反応を行なう。室温、暗所で6時間後、この反応混合物を、Ni-NTAを用いた固定化金属親和性クロマトグラフィーによって精製する。
【0094】
実施例12.2-PEG:1-エフェクター部分複合体の産生
代わりの実施形態において、PEG部分とエフェクター部分の分子量比が2:1のPEG化複合体を作製することが望ましい。そのようなPEG化複合体は、PEG部分をDDD配列に付着させ、活性剤をAD配列に付着させることにより、上記の実施例1〜3の方法で容易に作製される。実施例1〜3の方法を修正することにより、PEGとIFN-α2bの化学量比が2:1のPEG化複合体が調製される。この複合体は、血清中での安定性を示し、PEGとIFN-α2bの化学量比が1:2のPEG化複合体よりも低いインターフェロン活性を示す。しかしながら、バイPEG化複合体のクリアランス速度は、モノPEG化複合体のクリアランス速度よりも遅い。
【0095】
実施例13.PEG化用の抗体断片の産生
Fab抗体断片を、DDD配列またはAD配列のいずれかを含む融合タンパク質として産生してもよい。独立のトランスジェニック細胞株を各々のFab融合タンパク質用に開発する。ひとたび産生されれば、所望の場合にそのモジュールを精製するかまたは細胞培養上清液中に維持することができる。産生した後、PEG化Fabコンストラクトを作製するために、任意の(Fab-DDD2)モジュールを任意のPEG-ADモジュールと組み合わせることができ、または任意のFab-ADモジュールを任意の(PEG-DDD)2モジュールと組み合わせることができる。
DDD1:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:10)
DDD2:CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:11)
AD1:QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号:12)
AD2:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号:1)
【0096】
プラスミドベクターpdHL2が用いて、多くの抗体および抗体ベースのコンストラクトが産生されている。Gillies et al., J Immunol Methods (1989), 125:191-202;
Losman et al., Cancer (Phila) (1997), 80:2660-6を参照されたい。ジシストロン性の哺乳動物発現ベクターは、IgGの重鎖および軽鎖の合成を導く。このベクター配列は、多くの異なるIgG-pdHL2コンストラクトとほとんど同一であり、可変ドメイン(VHおよびVL)配列にのみ違いが存在する。当業者に公知の分子生物学のツールを用いて、これらのIgG発現ベクターをFab-DDDまたはFab-AD発現ベクターに変換することができる。Fab-DDD発現ベクターを作製するために、重鎖のヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインのコード配列を、ヒンジの最初の4残基、14残基のGly-Serリンカー、およびヒトRIIαの最初の44残基(DDD1と表す)をコードする配列と置換する。Fab-AD発現ベクターを作製するために、IgGのヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインの配列を、ヒンジの最初の4残基、15残基のGly-Serリンカー、ならびにバイオインフォマティックスおよびペプチドアレイ技術を用いて作製され、RIIα二量体と非常に高い親和性(0.4nM)で結合することが示されたAKAP-ISと呼ばれる17残基の合成AD(AD1と表す)をコードする配列と置換する。Alto, et al., Proc. Natl. Acad. ScL, U.S.A (2003),
100:4445-50を参照されたい。
【0097】
以下に記載されるように、IgG-pdHL2ベクターを、Fab-DDD1発現ベクターまたはFab-AD1発現ベクターのいずれかに変換しやすくするために、2つのシャトルベクターを設計した。
【0098】
CH1の調製
CH1ドメインを、pdHL2プラスミドベクターを鋳型として用いてPCRで増幅した。左側のPCRプライマーは、CH1ドメインの上流(5')およびCH1コード配列の5'にあるSacII制限エンドヌクレアーゼ部位からなる。右側のプライマーは、ヒンジの最初の4残基(PKSC)と、それに続くGGGGS(その最後の2つのコドン(GS)がBamHI制限部位を含む)をコードする配列からなる。
CH1の5' 左側のプライマー
5'GAACCTCGCGGACAGTTAAG-3'(配列番号:13)
CH1+G4S-Bam 右
5'GGATCCTCCGCCGCCGCAGCTCTTAGGTTTCTTGTCCACCTTGGTGTTGCTGG-3'(配列番号:14)
【0099】
410bpのPCR増幅物をpGemT PCRクローニングベクター(Promega, Inc.)にクローニングし、クローンをT7(5')方向での挿入についてスクリーニングした。
【0100】
(G4S)2DDD1の構築
二重鎖オリゴヌクレオチド((G4S)2DDD1と表す)は、DDD1のアミノ酸配列と、それに続く11残基のリンカーペプチド(その最初の2つのコドンがBamHI制限部位を含む)をコードするように、Sigma Genosys(Haverhill, UK)によって合成された。停止コドンおよびEagI制限部位が3'末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号:15)
【0101】
174bp DDD1配列の中央の154塩基対を含むように、3'末端で30塩基対だけ重複する2つのオリゴヌクレオチド(RIIA1-44上およびRIIA1-44下と表す)を合成し(Sigma Genosys)、結合させた。これらのオリゴヌクレオチドをアニールさせ、Taqポリメラーゼを用いたプライマー伸張反応に供した。
RIIA1-44 上
5'GTGGCGGGTCTGGCGGAGGTGGCAGCCACATCCAGATCCCGCCGGGGCTCACGGAGCTGCTGCAGGGCTACACGGTGGAGGTGCTGCGACAG-3'(配列番号:16)
RIIA1-44 下
5'GCGCGAGCTTCTCTCAGGCGGGTGAAGTACTCCACTGCGAATTCGACGAGGTCAGGCGGCTGCTGTCGCAGCACCTCCACCGTGTAGCCCTG-3'(配列番号:17)
【0102】
プライマー伸張の後、二重鎖を、以下のプライマーを用いてPCRで増幅した。
GS4 Bam 左
5'-GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGT-3'(配列番号:18)
1-44 停止 Eag 右
5'-CGGCCGTCAAGCGCGAGCTTCTCTCAGGCG-3'(配列番号:19)
【0103】
この増幅物をpGemTにクローニングし、T7(5')方向での挿入についてスクリーニングした。
【0104】
(G4S)2-AD1の構築
二重鎖オリゴヌクレオチド((G4S)2-AD1と表す)を、AD1のアミノ酸配列と、それに続く11残基のリンカーペプチド(その最初の2つのコドンがBamHI制限部位を含む)をコードするように合成した(Sigma Genosys)。停止コドンおよびEagI制限部位が3'末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号:20)
【0105】
2つの相補的な重複するオリゴヌクレオチド(AKAP-IS上およびAKAP-IS下と表す)を合成した。
AKAP-IS 上
5'GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGTGGCAGCCAGATCGAGTACCTGGCCAAGCAGATCGTGGACAACGCCATCCAGCAGGCCTGACGGCCG-3'(配列番号:21)
AKAP-IS 下
5'CGGCCGTCAGGCCTGCTGGATGGCGTTGTCCACGATCTGCTTGGCCAGGTACTCGATCTGGCTGCCACCTCCGCCAGACCCGCCACCTCCGGATCC-3'(配列番号:22)
【0106】
二重鎖を、以下のプライマーを用いてPCRで増幅した。
GS4 Bam 左
5'-GGATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGT-3'(配列番号:23)
AKAP-IS 停止 Eag 右
5'-CGGCCGTCAGGCCTGCTGGATG-3'(配列番号:24)
【0107】
この増幅物をpGemTベクターにクローニングし、T7(5')方向での挿入についてスクリーニングした。
【0108】
DDD1とCH1とのライゲーション
DDD1配列をコードする190bp断片を、BamHIおよびNotI制限酵素を用いてpGemTから切り出し、その後、CH1-pGemTの同位置にライゲートして、シャトルベクターCH1-DDD1-pGemTを作製した。
【0109】
AD1とCH1とのライゲーション
AD1配列を含む110bp断片を、BamHIおよびNotIを用いてpGemTから切り出し、その後、CH1-pGemTの同位置にライゲートして、シャトルベクターCH1-AD1-pGemTを作製した。
【0110】
pdHL2ベースのベクターへのCH1-DDD1またはCH1-AD1のクローニング
このモジュラー設計を用いて、CH1-DDD1またはCH1-AD1のいずれかを、pdHL2ベクター中の任意のIgGコンストラクトに組み入れることができる。SacII/EagI制限断片(CH1-CH3)をpdHL2から取り除き、それをそれぞれのpGemTシャトルベクターから切り出されたCH1-DDD1またはCH1-AD1のSacII/EagI断片と置換することによって、重鎖定常ドメイン全体を上記コンストラクトのうちの1つと置換する。
【0111】
C-DDD1-Fd-hMN-14-pdHL2の構築
hMN-14抗体は、マウスMN-14 CDR配列を含むヒト化CEA結合抗体である(例えば、米国特許第6,676,924号参照)。C-DDD1-Fd-hMN-14-pdHL2は、2コピーの融合タンパク質C-DDD 1-Fab-hMN-14を含む安定二量体を産生するための発現ベクターである。この融合タンパク質C-DDD 1-Fab-hMN-14において、DDD1は、柔軟なペプチドスペーサーを介してCH1のカルボキシル末端でhMN-14 Fabに連結している。SacIIおよびEagI制限エンドヌクレアーゼで消化してCH1-CH3ドメインを取り除き、SacIIおよびEagIでCH1-DDD1-SV3シャトルベクターから切り出したCH1-DDD1断片を挿入することにより、プラスミドベクターhMN14(I)-pdHL2(これは、hMN-14 IgGを産生するのに使用されている)をC-DDD1-Fd-hMN-14-pdHL2に変換した。
【0112】
C-DDD2-Fd-hMN-14-pdHL2
C-DDD2-Fd-hMN-14-pdHL2は、C-DDD2-Fab- hMN-14を産生するための発現ベクターである。C-DDD2-Fab-hMN-14は、14アミノ酸残基のGly/Serペプチドリンカーを介してFdのカルボキシル末端に付加されたDDD2の二量体化/ドッキング配列を有する。分泌される融合タンパク質は、DDD2ドメインの非共有結合相互作用によって結び付いている2つの同一コピーのhMN-14 Fabから構成される。
【0113】
この発現ベクターを以下のように人工的に作製した。リンカーペプチドの一部(GGGGSGGGCG、配列番号:25)およびDDD2の残基1〜13のコード配列を含む、2つの重複する相補的オリゴヌクレオチドを合成により作製した。このオリゴヌクレオチドをアニールさせ、T4 PNKでリン酸化し、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびPstIで消化したDNAとのライゲーションに適合する5'末端および3'末端上の突出を生じさせた。
G4S-DDD2 上
5'GATCCGGAGGTGGCGGGTCTGGCGGAGGTTGCGGCCACATCCAGATCCCGCCGGGGCTCACGGAGCTGCTGCA-3'(配列番号:26)
G4S-DDD2 下
5'GCAGCTCCGTGAGCCCCGGCGGGATCTGGATGTGGCCGCAACCTCCGCCAGACCCGCCACCTCCG-3'(配列番号:27)
【0114】
この二重鎖DNAを、BamHIおよびPstIで消化することにより調製したシャトルベクターCH1-DDD1-pGemTとライゲートして、シャトルベクターCH1-DDD2-pGemTを作製した。507bp断片を、SacIIおよびEagIでCH1-DDD2-pGemTから切り出し、SacIIおよびEagIで消化することにより調製したIgG発現ベクターhMN14(I)-pdHL2とライゲートした。最終的な発現コンストラクトは、C-DDD2-Fd-hMN-14-pdHL2である。
【0115】
実施例14.Fab抗体断片のPEG化
C-DDD2-Fd-hMN14-pdHL2ベクターをSp/EEE細胞(米国特許出願第11/487,215号)にトランスフェクトし、C-DDD2-Fab-hMN-14を産生するのに用いる。このジジストロン性発現ベクターは、hMN-14κ軽鎖とC-DDD2-Fd-hMN-14の両方の合成および分泌を導き、これらが組み合わさって、C-DDD2-Fab-hMN14を形成する。このC-DDD2-Fab-hMN-14は、自発的に二量体を形成する。この二量体を等モル量のIMP362、IMP413、またはIMP457と混合し、PEG化C-DDD2-Fab-hMN-14二量体を産生させる。hMN-14 Fab部分は、CEA抗原に対する結合特異性を保持する。CEA発現腫瘍を持つヌードマウスへの注射により、PEG化C-DDD2-Fab-hMN-14が、非PEG化hMN-14 F(ab)2と比べて顕著に長い循環半減期を示し、より頻度の少ない投薬スケジュールで効力が向上するということが示されている。
【0116】
実施例15.C-H-AD2-IgG-pdHL2発現ベクターの作製
pdHL2哺乳動物発現ベクターは、多くの組換えIgGの発現を仲介するのに用いられている。任意のIgG-pdHL2ベクターをC-H-AD2-IgG-pdHL2ベクターに変換しやすくするために、プラスミドシャトルベクターを産生した。Fc(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)の遺伝子を、pdHL2ベクターを鋳型とし、オリゴヌクレオチドFc BglII左およびFc Bam-EcoRI右をプライマーとして用いて増幅した。
Fc BglII 左
5'-AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG-3'(配列番号:28)
Fc Bam-EcoRI 右
5'-GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG-3'(配列番号:29)
【0117】
この増幅物をpGemT PCRクローニングベクターにクローニングした。Fcインサート断片をpGemTから切り出し、AD2-pdHL2ベクターとライゲートして、シャトルベクターFc-AD2-pdHL2を作製した。
【0118】
任意のIgG-pdHL2発現ベクターをC-H-AD2-IgG-pdHL2発現ベクターに変換するために、861bpのBsrGI/NdeI制限断片を前者から切り出し、Fc-AD2-pdHL2ベクターから切り出された952bpのBsrGI/NdeI制限断片と置換する。BsrGIはCH3ドメイン内で切断し、NdeIは発現カセットの下流(3')で切断する。
【0119】
実施例16.C-H-AD2-hLL2 IgGの産生
エプラツズマブ、すなわちhLL2 IgGは、ヒト化抗ヒトCD22 Mabである(例えば、米国特許第5,443,953号;第5,789,554号;第6,187,287号;第7,074,403号参照)。C-H-AD2-hLL2 IgG用の発現ベクターを、実施例15に記載されたように、hLL2 IgG-pdHL2から作製し、エレクトロポレーションでSp2/0ミエローマ細胞にトランスフェクトするのに用いた。トランスフェクション後、細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、トランスジェニッククローンを、メトトレキサートを含む培地で選択した。hLL2特異的な抗イディオタイプMAbでコーティングした96ウェルマイクロタイタープレートおよびペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗ヒトIgGによる検出を用いたサンドイッチELISAによって、クローンのC-H-AD2-hLL2 IgG生産性をスクリーニングした。クローンをタンパク質産生用のローラーボトルに拡大し、C-H-AD2-hLL2 IgGを、プロテイン-A親和性クロマトグラフィーを用いて一段階で使用済み培養培地から精製した。SE-HPLC分析により、2つのタンパク質ピークが分離された(図示せず)。より遅く溶出されるピークの保持時間(8.63分)は、hLL2 IgGと類似している。より速く溶出されるピークの保持時間(7.75分)は、約300kDaのタンパク質と一致する。後に、このピークが、C-H-AD2-hLL2-IgGのジスルフィド結合二量体に相当することが明らかにされた。この二量体は、DNL反応中に単量体型に還元される。SDS-PAGE解析により、精製されたC-H-AD2-hLL2-IgGが、単量体型とジスルフィド結合二量体型の両方のモジュールからなることが示された(図示せず)。これら2つの型に相当するタンパク質バンドは、非還元条件下のSDS-PAGEにより明らかであるが、還元条件下では、全ての型が、これらの成分ポリペプチド(重鎖AD2およびκ鎖)に相当する2つのバンドに還元される。その他の汚染バンドは検出されなかった。
【0120】
実施例17.C-H-AD2-hA20 IgGの産生
hA20 IgGは、ヒト化抗ヒトCD20 MAbである(例えば、米国特許第7,154,164号参照)。C-H-AD2-hA20 IgG用の発現ベクターを、実施例15に記載されたように、hA20 IgG-pDHL2から作製し、エレクトロポレーションでSp2/0ミエローマ細胞にトランスフェクトするのに用いた。トランスフェクション後、細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、トランスジェニッククローンを、メトトレキサートを含む培地で選択した。hA20特異的な抗イディオタイプMAbでコーティングした96ウェルマイクロタイタープレートおよびペルオキシダーゼをコンジュゲートした抗ヒトIgGによる検出を用いたサンドイッチELISAによって、クローンのC-H-AD2-hA20 IgG生産性をスクリーニングした。クローンをタンパク質産生用のローラーボトルに拡大し、C-H-AD2-hA20 IgGを、プロテイン-A親和性クロマトグラフィーを用いて一段階で使用済み培養培地から精製した。SE-HPLC分析およびSDS-PAGE解析により、実施例16のC-H-AD2-hLL2 IgG について得られた結果と非常によく似た結果が得られた。
【0121】
実施例18.PEG化IgGの産生
C-H-AD2-hLL2 IgG抗体またはC-H-AD2-hA20 IgG抗体をPEG-DDD2と混合して、PEG化されたhLL2またはhA20を形成させる。hLL2およびhA20は、それぞれCD22抗原およびCD20抗原に対する結合特異性を保持する。CD20またはCD22を発現するリンパ腫を持つヌードマウスへの注射により、これらのPEG化抗体が、非PEG化抗体と比べて顕著に長い循環半減期を示し、より頻度の少ない投薬スケジュールで効力が向上するということが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)DDD(二量体化/ドッキングドメイン)配列に付着したエフェクター部分;および
b)AD(アンカードメイン)配列に付着したPEG部分を含み
2つのDDD配列が1つのAD配列に結合してPEG化複合体を形成する、PEG化複合体。
【請求項2】
前記DDD配列とAD配列間のジスルフィド結合をさらに含む、請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記DDD配列がPKA RIIαの44個のN末端アミノ酸を含む、請求項1記載の複合体。
【請求項4】
前記DDD配列が配列番号:2を含む、請求項1記載の複合体。
【請求項5】
前記PEG部分が、一方の端でメトキシ基によりキャッピングされている、請求項1記載の複合体。
【請求項6】
前記エフェクター部分が、酵素、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ペプチド、アプタマー、ヘモグロビン、抗体、および抗体断片からなる群より選択される、請求項1記載の複合体。
【請求項7】
前記エフェクター部分が、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、MIF、HMGB-I(高移動度グループボックスタンパク質1)、TNF-α、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-23、IL-24、CCL19、CCL21、MCP-1、RANTES、MIP-1A、MIP-1B、ENA-78、MCP-1、IP-10、Gro-β、エオタキシン、G-CSF、GM-CSF、SCF、PDGF、MSF、Flt-3リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、hGH、CNTF、レプチン、オンコスタチンM、VEGF、EGF、FGF、PlGF、インスリン、hGH、カルシトニン、第VIII因子、IGF、ソマトスタチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびLIFからなる群より選択される、請求項6記載の複合体。
【請求項8】
AD配列に付着した前記PEG部分が、IMP350、IMP360、IMP362、IMP413、またはIMP457を含む、請求項1記載の複合体。
【請求項9】
前記エフェクター部分が、インターフェロン(IFN)-α2b、G-CSF、またはエリスロポエチンである、請求項1記載の複合体。
【請求項10】
DDD配列に付着した前記エフェクター部分が、融合タンパク質である、請求項1記載の複合体。
【請求項11】
各々の複合体が1つのPEG部分および2つのエフェクター部分を含む、請求項1記載の複合体。
【請求項12】
前記PEG化複合体の血清からのクリアランス速度が、PEG化されていないエフェクター部分のクリアランス速度よりも少なくとも1桁遅い、請求項1記載の複合体。
【請求項13】
a)AD配列に付着したエフェクター部分;および
b)DDD配列に付着したPEG部分を含み
2つのDDD配列が1つのAD配列に結合してPEG化複合体を形成する、PEG化複合体。
【請求項14】
各々の複合体が2つのPEG部分および1つのエフェクター部分を含む、請求項13記載の複合体。
【請求項15】
前記PEG化複合体の血清からのクリアランス速度が、PEG化されていないエフェクター部分のクリアランス速度よりも少なくとも1桁遅い、請求項13記載の複合体。
【請求項16】
エフェクター部分をPEG化する方法であって、
a)エフェクター部分をDDD配列に付着させる工程;
b)PEG部分をAD配列に付着させる工程;ならびに
c)前記DDD配列を前記AD配列に結合させて、2つのエフェクター部分-DDD配列および1つのPEG-AD配列を含むPEG化複合体を形成させる工程
を含む方法。
【請求項17】
前記エフェクター部分が、酵素、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ペプチド、アプタマー、ヘモグロビン、抗体、および抗体断片からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記PEG化複合体の血清からのクリアランス速度が、PEG化されていないエフェクター部分のクリアランス速度よりも少なくとも1桁遅い、請求項16記載の方法。
【請求項19】
エフェクター部分をPEG化する方法であって、
a)エフェクター部分をAD配列に付着させる工程;
b)PEG部分をDDD配列に付着させる工程;ならびに
c)前記DDD配列を前記AD配列に結合させて、2つのエフェクター部分-DDD配列および1つのPEG-AD配列を含むPEG化複合体を形成させる工程
を含む方法。
【請求項20】
疾患を治療する方法であって、
a)前記エフェクター部分が前記疾患の治療剤である、請求項1記載のPEG化複合体を得る工程;および
b)前記PEG化複合体を、前記疾患を有する対象に投与する工程
を含む方法。
【請求項21】
前記エフェクター部分が、MIF、HMGB-1(高移動度グループボックスタンパク質1)、TNF-α、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-23、IL-24、CCL19、CCL21、IL-8、MCP-1、RANTES、MIP-1A、MIP-1B、ENA-78、MCP-1、IP-10、Gro-β、エオタキシン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-λ、G-CSF、GM-CSF、SCF、PDGF、MSF、Flt-3リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、hGH、CNTF、レプチン、オンコスタチンM、VEGF、EGF、FGF、PlGF、インスリン、hGH、カルシトニン、第VIII因子、IGF、ソマトスタチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびLIFからなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が、癌、過形成、糖尿病、自己免疫疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、乾癬、角膜移植拒絶反応、新生血管緑内障、オスラー・ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク血管新生、再狭窄症、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張症、血友病性関節、血管線維腫、慢性炎症と関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、または創傷肉芽形成である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺症候群、水疱性類天疱瘡、若年型糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞炎である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、乳癌、骨癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、腎癌、卵巣癌、膵癌、神経膠腫、黒色腫、肝癌、前立腺癌、および膀胱癌からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記PEG化複合体が、各々のPEG化複合体に付着したPEG部分を1つだけ有する、請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−500842(P2011−500842A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531272(P2010−531272)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081085
【国際公開番号】WO2009/055653
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510116495)アイビーシー ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】