ドライアイを処置するための方法および組成物
本発明は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む眼科用組成物を対象とする。好ましい一実施形態においては、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質はゼラチンである。本組成物は、ガラクトマンナンも含むことができる。特に好ましい一実施形態においては、本組成物は、ゼラチン、ガラクトマンナン及びホウ酸塩を含む。本発明は、本組成物を使用してプロテアーゼMMP−9を阻害する方法及び、特にドライアイ治療のために、本組成物を眼に局所投与する方法も記述する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年11月16日に出願された米国仮特許出願第60/988,623号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/988,623号の開示は特に、本明細書中に参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ又は眼球乾燥症は、多数の個体にとう痛及び不快を引き起こす症状である。大部分の個体では、1日を通したまばたき及び涙液補給は、清浄で調節された眼球表面を規定する。ドライアイでは、眼球表面がかなり敏感になり、とう痛及び炎症を生じる。ドライアイの原因は不明であるが、この症状の原因又は複数の原因に関して多数の理論がある。一理論は、腺の欠陥を仮定する。涙液を分泌して、まばたき、排液及び蒸発で失われた涙液を補給する眼腺が欠乏し、不十分な量の涙液を分泌する。ドライアイの別の考えられる原因は、結膜及び角膜に存在する神経を含む。これらの神経の感受性が低下し、まばたきが減少し、したがって乾燥する。あるいは、これらの神経が過度に敏感になり、ドライアイの総体的症状に特有であるとう痛及び炎症の増加を直接もたらす。慢性炎症は、炎症性傷害の起源が何であれ、ドライアイの別の原因因子又は寄与因子であり得る。眼の感染はドライアイを生じ得る。感染に起因する炎症は、涙管を遮断し得る。体がその自己組織を外来起源であると誤認する自己免疫異常は、眼組織を免疫学的攻撃にさらし、やはりドライアイの原因の寄与因子であり得る。一つのかかる自己免疫異常であるシェーグレン症候群においては、ドライアイ(及び口内乾燥症)は、涙及び唾液を産生する外分泌腺を攻撃する免疫細胞に起因する特徴的症候の一つである。シェーグレン症候群は、米国単独で四百万人もの人を苦しめていると推定され、2番目に多い自己免疫疾患になっている。ドライアイの別の考えられる原因としては、ホルモン又はビタミンの欠乏又は過剰が挙げられる。ドライアイは、実際に、多数の異なる症状の結果であり得る。そのいずれか1つ以上が、任意の個々の患者における症状をもたらし得る。
【0003】
原因因子(単数又は複数)が何であれ、大部分のドライアイ患者が求めているのは、有痛性で消耗性の症候から解放されることである。そのために、外科的介入から処方薬、市販点眼剤にいたるまで多数の手法が試みられてきた。外科的選択肢としては、涙管の閉鎖による正常な排液経路の恒久的又は一時的な除去が挙げられる。一時的閉鎖の場合、涙点プラグとして知られる装置を利用する。ドライアイ治療のために開発された非外科的装置としては、眼の水分を増加させるために使用される湿度チャンバーが挙げられる。点眼剤の形態であってもなくてもよい治療薬は、根本的な生理的状態を改善し、それによってドライアイの重症度を軽減し、又はそれを完全に解消しようとするものである。しかし、現在まで、ドライアイ治療にはただ1つの治療薬しかFDAによって認可されていない。これらの治療又は改善手法の各々は、ある患者には利点をもたらし得るが、これらの手法は、かなりのリスク、費用及び/又は不便を患者に引き起こす。簡便で比較的安価で低リスクの治療は、人工涙液製品の形態でドライアイ患者に利用可能である。これらの局所的薬剤は、通常、涙液膜の補充又は再調節が必要なときに点眼剤として適用される。したがって、人工涙液は、最も基本的な意味で、眼に水分を添加する単純に別の一方法である。人工涙液は症候を軽減できる場合もあるが、いかなる根本的な眼球又は角膜の病状をもめったに変えることはない。
【0004】
ドライアイの起源又は原因についての比較的最近の一連の研究は、角膜におけるメタロプロテイナーゼの潜在的役割を調べる。メタロプロテイナーゼは、触媒作用的に活性であるために、その活性部位においてZn2+、又はCa2+などの金属イオンの結合を必要とする特徴を有する一群のタンパク質分解酵素である。メタロプロテイナーゼは、MMPと略記され、組織再構築を含むプロセスに関与することが知られている。したがって、生理学的に、MMPは、腫よう転移、胚発生及び創傷治癒にある役割を果たす。約20種類の公知のMMPが存在し、そのすべては互いに構造的に関連するように見え、約40%のアミノ酸が相同である。歴史的に、個々のMMPは、その主要な基質と考えられるものに基づいた名称を与えられ(例えば、(i)間質コラーゲン(I、II及びIII型)を分解するコラゲナーゼ、(ii)4型基底膜コラーゲン及びゼラチン(変性コラーゲン)を分解するIV型コラゲナーゼ及びゼラチナーゼ、(iii)プロテオグリカン、ラミニン、ゼラチン及びフィブロネクチンを含めた広範囲の基質を分解するストロメライシン)、又は細胞の酵素源によって名称を与えられることもある(例えば、多形核白血球ゼラチナーゼ)。最終的に、これらの酵素の大部分が別のファミリーメンバーの不活性ポリペプチド代用形(proform)(酵素前駆体)を含めた複数の基質を開裂させ、これらの酵素がミエリン塩基性タンパク質、アルファ−1−抗トリプシンなどの非基質タンパク質も分解できることが認められた。構造的に、大部分のMMPは、触媒ドメイン、カルボキシ末端ヘモペキシン様ドメイン(ヘモペキシンドメイン)、及び酵素活性化中に切断されるプロドメインを有する。
【0005】
H.Nagase等によって1992年に発表された論文は、当時公知であったMMP(例えば、MMP−1、MMP−2など)の数字で表した命名法及び用語集を提供し、その後発見されたMMPは、その方式に従ってきた。MMP−9(ゼラチナーゼB、IV−B型コラゲナーゼ)は、生理学的組織再構築物質として、広範囲の細胞外マトリックス(ECM)及び基底膜成分の分解において活性である。MMP−9は、炎症性サイトカインインターロイキンIL−1βをその活性な分泌型に変換することによって、腫よう壊死因子(TNFα)の翻訳後活性化を触媒することによって、IL−8、プロセスケモカインを増強することによって、さらに、セリンプロテアーゼ阻害剤を分解することによって、炎症の媒介にある役割を果たすように見える。さらに、MMP−9は、自己免疫にもある役割を果たし得、自己免疫ネオエピトープの発生を促進し得る。MMP−9の局所的活性は、シェーグレン症候群患者の涙液中で増加することが示された。幾つかの研究は、健康な角膜の涙液膜に比べて、潰よう性角膜炎のヒト及び他のほ乳動物の涙液膜において、MMP−9を含めたゼラチナーゼの活性のかなりの増加を実証した。潰よう性角膜炎の病変形成におけるゼラチナーゼの役割も検討されてきた。MMP−9ノックアウトマウスを使用した研究によれば、MMP−9の欠如は、実験的に誘導されるドライアイからの角膜上皮性関門破壊に対してある程度の抵抗性を与える。
【0006】
種々のMMPの活性をin vivoで阻害するように作用する治療薬を提供するそれらの試みにおいては、多数の新しい化学物質が、多数の異なる研究組織によって合成されてきた。これらの合理的に設計されたMMP阻害剤の幾つかは、幾つかの前臨床のハードルを越え、MMPを含むと考えられる幾つかの病的症状の治療用物質としての可能性を示した。残念ながら、これらの化合物の幾つか、例えば、広域MMP阻害剤であるマリマスタット(BB−2516)、及びMMP−1選択的阻害剤であるTrocade(Ro32−3555)は、臨床試験において期待されたようには機能しなかった。成功しなかった一つの理由は、特に広域阻害剤を用いた、筋骨格毒性などの重大な副作用である。ウサギ関節炎モデルにおける有望な結果がヒトにおいて実施された試験では再現されなかったTrocadeの場合と同様に、疾患修飾効果の欠如は別の問題である。実際、British Biotechのマリマスタットは、少なくとも5回不合格になった第三相試験の対象であり、BayerとPfizerのどちらも第三相MMP阻害剤試験を打ち切った。
【0007】
最近、新規ゼラチン結合部位が、MMP−9のヘモペキシンサブユニットの一部として発見された。
【0008】
特許文献1は、サイトカイン又は増殖因子、特にTGFβ8を含む涙液補充療法組成物に関する。
【0009】
特許文献2(Quay)は、アルファ2−マクログロブリン及びアルファ1−プロテアーゼ阻害剤を含めたプロテアーゼ阻害剤を使用して円錐角膜を治療する方法に関する。
【0010】
特許文献3(Kaufman)は、ムチン型粒子及び脂質型材料の水性懸濁液を含む人工涙液システムに関する。ムチン型粒子は、コラーゲン、ゼラチン及び/又は血清から形成される。
【0011】
特許文献4(Pflugfelder他)は、涙液クリアランスの遅延に付随する炎症を減少させる局所的テトラサイクリンの使用に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第95/2969号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,444,791号明細書
【特許文献3】米国特許第4,923,700号明細書
【特許文献4】米国特許第6,455,583号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
今回、比較的少量の天然ペプチドプロテアーゼ阻害剤が、人工涙液型組成物に使用されるものなどの眼科的に許容される賦形剤に組み入れられると、メタロプロテイナーゼのかなりの阻害を示すことが驚くべきことに発見された。得られた組成物は、角膜上皮細胞の生存度を高め、その乾燥を減少させるように作用し得ることも驚くべきことに発見された。本発明は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含むMMP阻害性局所眼科用組成物を対象とする。本発明は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法も対象とする。
【0014】
本発明の第1の実施形態群は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質と眼科的に許容される賦形剤とを含む局所眼科用組成物を対象とする。この実施形態群における好ましい一実施形態は、眼科的に許容される賦形剤中のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質及びガラクトマンナンである。更に好ましい一実施形態は、ゼラチンとガラクトマンナンとを含む局所眼科用組成物である。別の好ましい一実施形態は、アルファ−2−マクログロブリン及びガラクトマンナンの組成物である。本発明の別の実施形態としては、ガラクトマンナンとオボマクログロブリン、ガラクトマンナンとコラーゲン、及びガラクトマンナンとカゼインを含む各組成物が挙げられる。好ましいガラクトマンナンはHP−グアルである。
【0015】
本発明の第2の実施形態群は、有効量のMMP−9阻害性ペプチド基質を眼球表面に適用することを含むドライアイ治療方法を対象とする。ここで好ましい実施形態においては、ペプチド基質の量は、MMP−9を少なくとも50%阻害するのに十分である。
【0016】
理論に拘泥するものではないが、MMP−9などのプロテアーゼの活性を阻害するように作用するプロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、それによって、ドライアイ障害を受けやすい眼組織中に通常存在する内在性基質に作用するプロテアーゼの能力を低下させると考えられる。このようにして、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、MMP−9又は他の眼球プロテアーゼの直接損傷作用を低下させるように働くことができる。MMP−9などのプロテアーゼに対するプロテアーゼ阻害性ペプチド基質の阻害効果の一部又はすべては、間接的であり得、すなわち、アロステリック型阻害様式であり得る。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質のサイズ又は分子量は、この阻害効力をもたらし得る。さらに、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、過敏になった眼球表面組織に対して直接又は間接的な抗炎症効果、並びに抗組織再構築効果をもたらすことができる。これらの作用は、ペプチド基質とMMP酵素、特にMMP−9の相互作用によって媒介されると考えられる。さらに、本発明のある実施形態は、プロテアーゼ阻害性ペプチドの徐放性を与えることによって、これらの治療上の作用を延長することができる。例えば、本発明の好ましい一実施形態においては、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、HP−グアル及びホウ酸塩と化合してゲルを形成する。このゲルは、涙液膜の安定性を高め、眼球表面を乾燥から保護するように作用する。さらに、ゲルは、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を捕捉することができ、基質はそれによって涙液膜中に保持され、活性の持続時間が延長される。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、ゼラチン−ムチンゲルマトリックスを形成する可溶性ムチンの足場として作用し、それによって涙液膜の安定性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トリシン緩衝剤中のゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図2】粘滑ポリマーと組み合わせた0.1%w/vのゼラチンAがMMP−9のかなりの阻害を示すことを示したグラフである。
【図3】Systaneに組み入れられたゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図4】Tears Naturale II中のゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図5】ゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図6】Systane中のゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図7】Tears Naturale II中のゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図8】粘滑ポリマーと組み合わせたゼラチンAが様々な程度の細菌コラゲナーゼ阻害を示すことを示したグラフである。
【図9】ゼラチンAを含む人工涙液製品で処理したときの細胞の乾燥保護及び生存度の増加を示したグラフである。
【図10】α−2マクログロブリンによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図11】組換えヒトゼラチン8.5kDによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図12】組換えヒトコラーゲンによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で利用される以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0019】
「プロテアーゼ」という用語は、ペプチド結合の切断を触媒する酵素を包含する。代表的プロテアーゼとしては、コラゲナーゼ及びマトリックスメタロプロテイナーゼが挙げられる。
【0020】
「プロテアーゼ阻害性ペプチド基質」という用語は、本質的に主にペプチド性である、すなわち1本以上のアミノ酸鎖で構成される、物質を包含し、プロテアーゼ酵素の基質である性質を有する。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の代表例としては、ゼラチン、アルファ−2マクログロブリン、オボマクログロブリン、カゼイン及びコラーゲンが挙げられる。
【0021】
「MMP」という用語は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(酵素)を指す。
【0022】
「MMP−9」という用語は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9として知られる酵素を指す。
【0023】
「ガラクトマンナン」という用語は、マンノース若しくはガラクトース部分又は両方のグループを主構造成分として含む、天然ゴム又は類似の天然若しくは合成ゴムから誘導される多糖を指す。
【0024】
「CMC」という用語は、カルボキシメチルセルロース及びその塩を指す。
【0025】
「HPMC」という用語は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを指す。
【0026】
「HP−グアル」という用語は、ヒドロキシプロピルグアルを指す。低モル置換(例えば、0.6未満)のヒドロキシプロピルグアルが好ましい。
【0027】
「眼球表面」という用語は、外部から接触可能な眼組織を指す。その代表的な非限定的例としては、角膜、結膜、円蓋及び強膜が挙げられる。
【0028】
「阻害量」という用語は、所望の活性を与えるために、阻害性物質の無毒であるが十分な量を指す。
【0029】
「眼科的に許容される賦形剤」という用語は、眼組織に生理学的に適合した物性(例えば、pH及び/又は重量オスモル濃度)を有する組成物を意味する。
【0030】
驚くべきことに、比較的少量の天然ペプチドプロテアーゼ阻害剤が、人工涙液型組成物に組み入れられると、メタロプロテイナーゼのかなりの阻害を示すことが発見された。更に驚くべきことに、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の量はかなり低くすることができ、0.1%w/vと低い、その一実施形態がゼラチンであるプロテアーゼ阻害性ペプチド基質の濃度が、50%を超えるMMP−9阻害をもたらし得ることが見いだされた。
【0031】
例示的なプロテアーゼ阻害性ペプチド基質としては、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインが挙げられ、以下に更に記述される。しかしながら、別のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を使用することができ、本発明の範囲内であることを見いだし得ることを理解すべきである。
【0032】
ゼラチンは、動物結合組織から抽出されたコラーゲンの部分加水分解によって生成するタンパク質である。2タイプのゼラチンが市販されており、タイプAは酸処理前駆体から誘導され、タイプBはアルカリ処理前駆体から誘導される。両方のタイプのゼラチンは、種々のMMPの基質であり、MMPの競合的阻害剤として作用する。
【0033】
肝臓によって産生され、血中に存在する大きいタンパク質であるアルファ−2マクログロブリンは、メタロプロテイナーゼを含めて、幾つかのプロテイナーゼを不活性化することができる。この不活性化の機序は、プロテイナーゼの「餌」として働く35アミノ酸領域であると報告され、プロテイナーゼがこの領域に結合し、この領域を切断すると、それはアルファ−2−マクログロブリンに結合する。生成した複合体は、次いで、マクロファージによって血液から除去される。
【0034】
カゼインは、チーズ及び乳中に存在するリンタンパク質である。カゼインは、比較的多数のプロリン残基を含み、その結果、二次又は三次構造をほとんど持たない。カゼインは、比較的疎水性であるが、希アルカリ及び塩溶液に容易に分散することができる。
【0035】
オボスタチンとも称されるオボマクログロブリンは、ジスルフィド結合によってペアで連結された4個のサブユニットで構成される糖タンパク質である。オボマクログロブリンは、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ及びメタロプロテアーゼを含めて、種々のタイプのプロテアーゼに対する広域阻害活性を示した。
【0036】
コラーゲンは、動物における主要なタンパク質であり、総タンパク質量のほぼ25%を与え、結合組織における主要なタンパク質である。コラーゲンは、長線維性タンパク質であり、強靱な線維束又は線維を形成し、組織及び細胞に構造を与える細胞外マトリックスから一緒である。コラーゲンは、ある種の細胞の内部にも存在し得る。コラーゲンは、最も一般的には、トロポコラーゲンとして知られる三重らせん体で存在する。ゼラチンを生成するのはトロポコラーゲンの部分加水分解である。
【0037】
本発明において利用されるプロテアーゼ阻害性ペプチド基質源は、典型的には、動物起源である。例えば、ウシ又はブタの皮膚又は骨に由来するゼラチンは、今日の医薬品に使用される主な形態である。できるだけ均質で純粋な製品を提供するために、意図された用途(経口、非経口、装置)を考慮して、大規模なプロセシングが試みられている。伝達性海綿状脳症(TSR)及びウシ海綿状脳症(BSE)のないコラーゲン及び/又はゼラチンが、例えば、Gelita(Sergeant Bluff、Iowa)及びRousselot(a Sobel Company、Dubuque、Iowa)を含めて、幾つかの供給業者から市販されている。合成及び/又は組換え技術によって製造される材料の使用は、別の選択肢である。例えば、Fibrogen(San Francisco、California)は、組換え酵母系を使用して完全合成ゼラチン及びコラーゲンを製造している。これらの合成材料は、一貫性(ロット間均一性、明確な分子量及び物理化学的性質)、個別化容易性(所定の特性、デザイナー分子)並びに生体適合性及び安全性(免疫応答を誘発するリスクの低減、汚染物質の除去)の点で幾つかの利点を有し得る。
【0038】
本発明の組成物及び方法は、メタロプロテイナーゼを阻害するのに十分な量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む。好ましいメタロプロテイナーゼはMMP−9である。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の量は、具体的な基質に応じて変わり得るが、一般に約0.010%から10%重量/体積(w/v)、より好ましくは約0.05%から1.0%(w/v)、さらにより好ましくは約0.05%から0.25%(w/v)である。MMP阻害割合は、好ましくは約50%を超え、より好ましくは約60%を超え、さらにより好ましくは約70%を超える。
【0039】
本発明の一実施形態においては、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、潤滑ポリマー系を含むSYSTANE(登録商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.)などの既存のドライアイ製剤と組み合わせられる。SYSTANE(登録商標)の重合性保護(polymerizing protection)は、粘滑剤(ポリエチレングリコール400及びプロピレングリコール)、HP−グアル及び患者の自然の涙液の相互作用によって得られる。HP−グアルが自然の涙液と化合すると、化学反応が起こる。HP−グアルは、疎水性(はっ水)表面に結合し、ゲル様粘ちゅう性を有するネットワークを形成する。HP−グアルは、眼球表面の粘滑系をより長く維持するのにも役立つ。
【0040】
本発明の一実施形態は、ガラクトマンナン、ホウ酸塩及びゼラチンを組み合わせる組成物である。本発明に使用することができるガラクトマンナンのタイプは、典型的には、ガーゴム、イナゴマメゴム及びタラゴムから誘導される。さらに、ガラクトマンナンは、古典的合成経路によって得ることもでき、又は天然ガラクトマンナンの化学修飾によって得ることができる。
【0041】
本明細書では「ガラクトマンナン」という用語は、マンノース若しくはガラクトース部分又は両方のグループを主構造成分として含む、上記天然ゴム又は類似の天然若しくは合成ゴムから誘導される多糖を指す。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1−6)結合によって連結された(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位の線状鎖で構成される。好ましいガラクトマンナンでは、D−ガラクトースとD−マンノースの比は変動するが、一般に約1:2から1:4である。D−ガラクトース:D−マンノース比が約1:2のガラクトマンナンが最も好ましい。さらに、多糖の別の化学修飾変種も「ガラクトマンナン」の定義に含まれる。例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換を本発明のガラクトマンナンに行うことができる。アルコキシ及びアルキル(C1−C6)基を含むものなどのガラクトマンナンの非イオン性置換は、柔らかいゲルが所望であるときに特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非cisヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。ガラクトマンナンの非イオン性置換によって形成される組成物の例は、モル置換約0.4のヒドロキシプロピルグアルである。陰イオン性置換もガラクトマンナンに行うことができる。陰イオン性置換は、高応答性ゲルが所望であるときに特に好ましい。
【0042】
ホウ酸塩化合物は本発明のある実施形態で使用することができる。本発明の組成物に使用することができるホウ酸塩化合物としては、ホウ酸及びホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸カリウムなどの他の薬学的に許容される塩が挙げられる。本明細書では「ホウ酸塩」という用語は、すべての薬学的に適切な形態のホウ酸塩を指す。ホウ酸塩は、生理的pHにおける良好な緩衝能力、周知の安全性、並びに広範囲の薬物及び防腐剤との適合性のために、眼科用製剤における一般的賦形剤である。ホウ酸塩は、固有の静菌及び静真菌性も有し、したがって組成物の保存に役立つ。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態は、0.01%から5%(w/v)の量のゼラチン、約0.1から5%(w/v)の量の1種類以上のガラクトマンナン(単数又は複数)、及び約0.05から5%(w/v)の量のホウ酸塩を含む組成物である。好ましくは、組成物は、0.01%から1.0%ゼラチン(w/v)、0.2から2.0%(w/v)ガラクトマンナン及び0.1から2.0%(w/v)ホウ酸塩化合物を含む。最も好ましくは、組成物は、0.05%から0.5%ゼラチン(w/v)、0.3から0.8%(w/v)ガラクトマンナン、及び0.25から1.0%(w/v)ホウ酸塩化合物を含む。個々の量は、所望の個々のゲル化性に応じて変わる。一般に、ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度は、ゲル活性化後(すなわち、投与後)に組成物の適切な粘度に達するために、操作することができる。ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を操作すると、所与のpHにおいてより強力な又はより弱いゲル化を与えることができる。強力なゲル化組成物が所望の場合、ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を増加させることができる。部分ゲル化組成物などのより弱いゲル化組成物が所望の場合、ゼラチンホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を減少させることができる。組成物中の塩、防腐剤、キレート化剤などの追加の成分の性質、濃度などの他の要因も、本発明の組成物のゲル化の特徴に影響を及ぼし得る。一般に、本発明の好ましい非ゲル化組成物、すなわち、眼によってゲル活性化されない組成物は、約5から1000cpsの粘度を有する。一般に、本発明の好ましいゲル化組成物、すなわち、眼によってゲル活性化される組成物は、約50から50,000cpsの粘度を有する。
【0044】
最も早く最も成功した人工涙溶液は、米国特許第4,039,662号(Hecht他)に記載されている。この溶液は、TEARS NATURALE(商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.、Fort Worth、Texas)として長年市販されている。Hecht他の’662号特許に記載され、特許請求された溶液、及び対応する市販品は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70及び塩化ベンザルコニウムの独特の組合せの使用に基づく。TEARS NATURALE(商標)II Polyquad(登録商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.)の名称で現在市販されているこの製品のその後のバージョンでは、塩化ベンザルコニウムは、重合体抗菌剤/防腐剤であるポリクオタニウム−1で置換された。
【0045】
本発明に利用することができる有機緩衝剤の一例は、トリシン、すなわちN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシンである。有機緩衝剤は、塩基性基と酸性基の両方を有し、結果として双性イオンであり、生理的pH条件下では、これらの緩衝剤は、正電荷と負電荷の両方を保有する。
【0046】
コンタクトレンズ及び点眼剤の場合には、種々の薬剤を添加して、眼との適合性を高める。刺すような痛み又は炎症を回避するために、溶液は、生理学的範囲内の張性及びpH、例えば、張性200〜350mオスモル及びpH6.5〜8.5を有することが重要である。そのために、種々の緩衝及び浸透圧剤が添加されることが多い。最も単純な浸透圧剤は、塩化ナトリウムである。というのは、塩化ナトリウムは、ヒトの涙液中の主要な溶質であるからである。さらに、プロピレングリコール、ラクツロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール又は他の浸透圧剤を添加して、塩化ナトリウムの一部又はすべてを置換することもできる。さらに、クエン酸塩、リン酸塩(Na2HPO4、NaH2PO4及びKH2PO4の適切な混合物)、ホウ酸塩(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム及び混合物)、炭酸水素塩、並びにトロメタミン及び(ACES、BES、BICINE、BIS−Tris、BIS−Trisプロパン、HEPES、HEPPS、イミダゾール、MES、MOPS、PIPES、TAPS、TES、トリシンなどの)他の適切な窒素含有緩衝剤などの種々の緩衝系を使用して、約pH6.5から8.5の生理的pHを確保することができる。
【0047】
本発明のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質組成物は、例えば、抗生物質、免疫抑制薬、抗炎症剤など、ドライアイ治療に有益な効果を有すると考えられる他の薬効分類からの1種類以上の追加の治療薬と組み合わせることができる。
【0048】
本発明の組成物に含めることができる抗炎症剤としては、ステロイド性又は非ステロイド性薬物(NSAID)が挙げられる。例示的なNSAIDとしては、ケトロラクトロメタミン(Acular(登録商標))、インドメタシン、フルルビプロフェンナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、スプロフェン及びジクロフェナク(Voltaren(登録商標))が挙げられるが、それだけに限定されない。例示的なコルチコステロイドとしては、リメキソリン(rimexoline)、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、フルオロメタロン(fluoromethalone)、ロテプレドノール、トリアムシノロン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチゾン、アルドステロン、ミドリゾン(mydrysone)及びベタメタゾンが挙げられるが、それだけに限定されない。例示的な性ステロイドとしては、アンドロゲン、エストロゲン及び/又はプロゲスチンに基づくステロイドが挙げられる。
【0049】
例示的な抗生物質としては、テトラサイクリン、ドキシサイクリン及び化学修飾テトラサイクリン、セフォキシチン、n−ホルムアミドイルチエナマイシン(formamidoylthienamycin)、及び他のチエナマイシン誘導体などのベータ−ラクタム抗生物質、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミキシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、チブロリファマイシン(chibrorifamycin)、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミドエノキサシン、オフロキサシン、シノキサシン、スパルフロキサシン、チアンフェニコール、ナリジキシン酸、トシル酸トスフロキサシン、ノルフロキサシン、ピペミド酸三水和物、ピロミド酸、フレロキサシン、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ノルフロキサシン、スルファセタミド、スルフィキソキサゾール(sulfixoxazole)、トブラマイシン、モキシフロキサシン及びレボフロキサシンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0050】
例示的な免疫抑制剤としては、例えば、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、並びにFK−506、ラパマイシン及びタクロリムスなどのアスコマイシンが挙げられる。
【0051】
他の成分を本発明の組成物に添加することができる。かかる成分としては、一般に、張性調節剤、キレート化剤、活性薬剤、可溶化剤、防腐剤、pH調節剤及び担体が挙げられる。ポリエチレングリコール及びグリセロールなどの他の高分子又は単量体薬剤も特別なプロセシングのために添加することができる。本発明の組成物に有用である張性剤(tonicity agent)としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムなどの塩を挙げることができる。非イオン性張性剤としては、プロピレングリコール及びグリセロールを挙げることができる。キレート化剤としては、プロピレングリコール及びグリセロールを挙げることができる。キレート化剤としては、EDTA及びその塩を挙げることができる。可溶化剤としては、Cremophor EL(登録商標)及びTween 80を挙げることができる。別の担体としては、Amberlite(登録商標)IRP−60を挙げることができる。pH調節剤としては、塩酸、Tris、トリエタノールアミン及び水酸化ナトリウムを挙げることができる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1及びポリエキサメチレン(polyexamethylene)ビグアナイドを挙げることができる。上に列挙した例は、説明のためのものであって、網羅的なものではない。上記目的に有用である他の薬剤の例は眼科用製剤において周知であり、本発明によって企図される。
【0052】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を更に説明するものである。これらの実施例は、本発明の理解を助けるためのものであって、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本実施例及び以下の実施例においては、別段の記載がない限り、DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH及びDNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2を含めて、MMP−1、−2及び−9に感受性のある蛍光発生基質を使用してMMP活性を評価した。これらの蛍光発生基質アッセイは当分野で周知である。例えば、その両方を参照により本開示に援用する、Bickett et al.Analytical Biochemistry 212,58−64(1993)及びNetzel−Arnett et al.,Analytical Biochemistry 195,86−92(1991)を参照されたい。アッセイを実施する前に、pro−MMP−9をp−アミノフェニル水銀アセタートによって活性化した。細菌コラゲナーゼの活性化は不要であった。アッセイのために、DMSO中0.1mM濃度で基質原液を調製し、阻害剤を用いる又は用いない酵素活性アッセイのすべてを、0.2M NaCl、10mM CaCl2、50mM ZnSO4及び0.05%Brij−35を含む50mMトリシン緩衝剤、pH7.5中で室温で実施した。(Brij−35は市販ポリオキシエチレンラウリルエーテル界面活性剤である。)。総試料体積は200μlであり、96ウェルマイクロプレート中で実施された。使用した特定の基質に対して適切な励起/発光波長(すなわち、λex=280nm;λem=360nm及びλex=280nm;λem=360nm)に設定されたマイクロプレート蛍光リーダー(モデルFL x800I、Bio−Tek Instrument)を用いて蛍光変化を1分ごとに10分間記録した。酵素の活性は、1分当たりの蛍光変化として表され、酵素反応に対して10分以内に記録された蛍光対時間に関する直線の傾斜であった。阻害剤のない試料の割合から阻害剤試料の割合を減算し、次いで阻害剤のない試料の割合で除算し、100%を掛けて、%阻害を計算した。
【0054】
この試験は、MMP−9活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。この特別な試験では、MMP−9濃度はトリシン緩衝剤中360μ単位/アッセイであり、使用ゼラチンはゼラチンA(Sigmaカタログ#1890−50G、Lot#014K0077、ブタの皮膚からの酸抽出物)であり、使用基質はMMP−2/MMP−9蛍光発生基質I(Calbiochemカタログ#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)20μM/アッセイであった。トリシン緩衝剤中のゼラチンAは、MMP−9活性の用量反応阻害を示した。0.01%から0.2%(w/v)まで、阻害の比例的増加が認められた。0.2%後、阻害は横ばいになり始めた。試験結果を図1にグラフを用いて示す。
(実施例2)
【0055】
この試験は、種々の粘滑ポリマーを併用したときに、MMP−9活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。この目的のために、実施例1から約59%阻害を与えた0.1%w/vゼラチンAを選択した。MMP−9=Calbiochem Cat#444231;Lot#B56458;ヒト好中球。使用活性は200μ単位/アッセイであった。ゼラチン=ゼラチンA。Sigma Cat#1890−50G、Lot#014K0077(ブタの皮膚からの酸抽出物)。アッセイ緩衝剤=0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5。基質=MMP−1/MMP−9蛍光発生基質。Calbiochem cat#44221、lot#B54710。MWt、1077.2;アッセイにおいて1μM。ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2。Ex、365nm;Em、450nm。
【0056】
この試験結果によれば、図2に示すように、0.18%w/v HP−グアル、0.3%w/v HPMC及び0.5%w/v CMCと組み合わせた0.1%w/vのゼラチンAは、MMP−9のそれぞれ74.8%、71.8%及び79.1%阻害をもたらすことができた。
(実施例3)
【0057】
次の一連の試験では、2種類の代表的人工涙溶液に組み入れたときのゼラチンAのMMP−9活性阻害能力を調べた。この目的のために、Systane及びTears Naturale IIとして知られる人工涙溶液を選択した。この一連の試験では、0.01%から0.20%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを市販SystaneとTears Naturale IIの両方の溶液に組み入れた。実施例2に記載の同じ酵素及び基質を用いて、同じ手順に従ってアッセイを実施した。この試験の結果によれば、ゼラチンAは、SystaneとTears Naturale IIの両方の溶液に組み入れたときにMMP−9活性の用量反応阻害を示し、Systaneにおいて0.01%w/v以上から、さらに、Tears Naturale IIにおいて0.05%w/v以上から、50%を超える阻害に寄与した。これらの試験の結果を図3及び4にグラフを用いて示す。
(実施例4)
【0058】
この試験は、細菌コラゲナーゼに対するゼラチンAの阻害反応性を調べるために試みられた。細菌コラゲナーゼは、細菌病原における細胞外構造の破壊を助ける外毒素である。試験のために、0.05%から0.8%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを、0.2M NaCl、10mM CaCl2、ZnSO4及びBrij−35を含む50mMトリシン緩衝剤pH7.5中で調製した。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによって細菌コラゲナーゼの活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。細菌コラゲナーゼ&基質Iの濃度はそれぞれ20単位/アッセイ及び20μM/アッセイであった。使用コラゲナーゼはクロストリドペプチダーゼ(Clostridopeptidase)(Sigmaカタログ#C−7657;lot#107H8632)であった。使用ゼラチンはゼラチンA(Sigma Cat#1890−50G、Lot#014K0077。ブタの皮膚からの酸抽出物)であった。使用基質は、MMP−2/MMP−9蛍光発生基質I(Calbiochem cat#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)であった。結果によれば、細菌酵素に対して50%を超える阻害を発揮するには0.4%w/vを超えるゼラチンAが必要であったのに対して、0.05%から0.1%(w/v)の範囲ではゼラチンAはMMP−9に対して50%を超える阻害を容易に与えることができた。したがって、細菌コラゲナーゼに対するゼラチンAの阻害は、MMP−9に対するほど有効ではないようであった。この試験の結果を図5にグラフを用いて示す。
(実施例5)
【0059】
この試験は、人工涙液製品に組み入れたときのゼラチンAの細菌コラゲナーゼ阻害能力を試験した。この一連の試験では、0.05%から0.25%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを市販SystaneとTears Naturale IIの両方に組み入れた。実施例4に記載した同じ手順によって、同じ基質を用いて、アッセイを実施した。その結果、ゼラチンAは、人工涙液製品Systane及びTears Naturale IIに組み入れると、細菌コラゲナーゼに対しても用量反応阻害をもたらすことができた。しかし、図6及び7のグラフに示すように、両方の人工涙液において50%阻害に達するにはさほど有効ではなく、0.25%w/vを超えるゼラチンが必要であった。
(実施例6)
【0060】
この試験は、種々の粘滑ポリマーを併用したときに、細菌コラゲナーゼ活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。そのために、0.1%w/vのゼラチンAをHP−グアル、CMC及びHPMCと組み合わせた。実施例4に記載した同じ手順によって、同じ基質を用いて、試験を実施した。その結果、0.18%HP−グアルを用いて51%阻害が得られ、一方、0.3%HPMC及び0.5%CMCではそれぞれ24%及び21%阻害しか得られなかった。これらの結果を図8にグラフを用いて示す。
(実施例7)
【0061】
これらの試験では、乾燥保護を与え、ヒト角膜上皮細胞の生存度を高めるゼラチンAの能力を調べた。これらの試験では、CEPI 17ヒト角膜上皮細胞を、本明細書に記載のAlamar Blue法によって分析した。ヒト角膜上皮細胞系(CEPI 17、Alcon Laboratories Inc.)を96ウェルマイクロプレート中でコンフルエントに増殖させた。試験ウェルから媒体を除去し、各試験溶液100μlを添加した。培地を含む対照ウェルを単独で放置した。プレートを恒温器中に60分間戻した。インキュベーション後、すべてのウェルを吸引し、HyQ緩衝剤(改変ダルベッコリン酸緩衝溶液、Hyclone cat#SH30028.02)200μl/ウェルで1回リンスした。HyQ中のAlamar Blue(Biosource、DAL1100)の1/10希釈物を調製し、100μlを各ウェルに添加して、37℃でインキュベートした。4時間インキュベーション後、プレートを蛍光マイクロプレートリーダー(モデルFLx800、Bio−Tek Instrument)によって励起560nm及び発光590nmの設定で読み取った。試料の平均蛍光を対照の平均蛍光で除算し、100%を掛けて、%細胞生存率を計算した。
【0062】
乾燥保護を評価するために、プレインキュベーション15分及び乾燥時間30分の類似手順を使用する。プレインキュベーション後、対照以外のすべての試験ウェルを吸引した。対照をParafilmで覆った。プレートを下向き空気流のフード中に30分間置いて、細胞を曝露乾燥させた。乾燥後、すべてのウェルをHyQ200μlで1回洗浄した。細胞生存率アッセイ手順に記載のAlamar Blueアッセイによって細胞の生存度を分析した。試料の平均蛍光を対照の平均蛍光で除算し、100%を掛けて、乾燥保護を計算した。
【0063】
この試験の結果によれば、Systane、Tears Naturale II及びGenTeal Mildを含めた種々の人工涙液製品にゼラチンAを組み入れると、細胞の乾燥保護を改善し、細胞生存率を高めるように見える。この試験の結果を図9にグラフを用いて示す。
(実施例8)
【0064】
この試験は、MMP−9活性を阻害するアルファ−2−マクログロブリンの能力を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9 360μ単位/アッセイを使用した(Calbiochem Cat#444231、Lot#B56458;ヒト好中球)。α2−マクログロブリン(Sigma Cat#M−6159、Lot#118H7606;ヒト胎盤由来)。使用基質は、MMP−2/MMP−9蛍光発生基質I 10μM/アッセイ(Calbiochem cat#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)であった。その結果、アルファ−2−マクログロブリンは、MMP−9活性を用量反応様式で阻害する。結果を図10にグラフを用いて示す。
(実施例9)
【0065】
この試験は、MMP−9活性を阻害する既知サイズの組換えゼラチンの効果を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9(Calbiochemカタログ#444231、lot#B56458、ヒト好中球)の濃度は、トリシン緩衝剤(0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5)中200μ単位/アッセイであった。使用ゼラチンは、組換えヒトゼラチン8.5kD(FibroGen、Lot#04AE001R−01)であった。使用基質は、MMP−1/MMP−9蛍光発生基質(Calbiochemカタログ#44221、lot#B54710;ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2;Ex 365nm;Em 450nm)であった。1.0μM/アッセイを使用した。50%を超える阻害を得るには0.15%から0.25%(w/v)の組換えヒトゼラチン8.5kDがこのアッセイでは必要であった。試験結果を図11にグラフを用いて示す。
(実施例10)
【0066】
この試験は、MMP−9活性を阻害する組換えヒトコラーゲンI型の効果を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9(Calbiochemカタログ#444231、lot#B56458、ヒト好中球)の濃度は、トリシン緩衝剤(0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5)中200μ単位/アッセイであった。使用コラーゲンは、組換えヒトコラーゲンI型(FibroGen、Lot#04AE001R−01)であった。使用基質は、MMP−1/MMP−9蛍光発生基質(Calbiochemカタログ#44221、lot#B54710;ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2;Ex 365nm;Em 450nm)であった。1.0μM/アッセイを使用した。50%を超える阻害を得るには0.03%から0.04%(w/v)の組換えヒトコラーゲンI型がこのアッセイでは必要であった。試験結果を図12にグラフを用いて示す。
(実施例11)
【0067】
以下は、本発明の2種類の人工涙溶液の例である。
【表1】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年11月16日に出願された米国仮特許出願第60/988,623号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/988,623号の開示は特に、本明細書中に参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ又は眼球乾燥症は、多数の個体にとう痛及び不快を引き起こす症状である。大部分の個体では、1日を通したまばたき及び涙液補給は、清浄で調節された眼球表面を規定する。ドライアイでは、眼球表面がかなり敏感になり、とう痛及び炎症を生じる。ドライアイの原因は不明であるが、この症状の原因又は複数の原因に関して多数の理論がある。一理論は、腺の欠陥を仮定する。涙液を分泌して、まばたき、排液及び蒸発で失われた涙液を補給する眼腺が欠乏し、不十分な量の涙液を分泌する。ドライアイの別の考えられる原因は、結膜及び角膜に存在する神経を含む。これらの神経の感受性が低下し、まばたきが減少し、したがって乾燥する。あるいは、これらの神経が過度に敏感になり、ドライアイの総体的症状に特有であるとう痛及び炎症の増加を直接もたらす。慢性炎症は、炎症性傷害の起源が何であれ、ドライアイの別の原因因子又は寄与因子であり得る。眼の感染はドライアイを生じ得る。感染に起因する炎症は、涙管を遮断し得る。体がその自己組織を外来起源であると誤認する自己免疫異常は、眼組織を免疫学的攻撃にさらし、やはりドライアイの原因の寄与因子であり得る。一つのかかる自己免疫異常であるシェーグレン症候群においては、ドライアイ(及び口内乾燥症)は、涙及び唾液を産生する外分泌腺を攻撃する免疫細胞に起因する特徴的症候の一つである。シェーグレン症候群は、米国単独で四百万人もの人を苦しめていると推定され、2番目に多い自己免疫疾患になっている。ドライアイの別の考えられる原因としては、ホルモン又はビタミンの欠乏又は過剰が挙げられる。ドライアイは、実際に、多数の異なる症状の結果であり得る。そのいずれか1つ以上が、任意の個々の患者における症状をもたらし得る。
【0003】
原因因子(単数又は複数)が何であれ、大部分のドライアイ患者が求めているのは、有痛性で消耗性の症候から解放されることである。そのために、外科的介入から処方薬、市販点眼剤にいたるまで多数の手法が試みられてきた。外科的選択肢としては、涙管の閉鎖による正常な排液経路の恒久的又は一時的な除去が挙げられる。一時的閉鎖の場合、涙点プラグとして知られる装置を利用する。ドライアイ治療のために開発された非外科的装置としては、眼の水分を増加させるために使用される湿度チャンバーが挙げられる。点眼剤の形態であってもなくてもよい治療薬は、根本的な生理的状態を改善し、それによってドライアイの重症度を軽減し、又はそれを完全に解消しようとするものである。しかし、現在まで、ドライアイ治療にはただ1つの治療薬しかFDAによって認可されていない。これらの治療又は改善手法の各々は、ある患者には利点をもたらし得るが、これらの手法は、かなりのリスク、費用及び/又は不便を患者に引き起こす。簡便で比較的安価で低リスクの治療は、人工涙液製品の形態でドライアイ患者に利用可能である。これらの局所的薬剤は、通常、涙液膜の補充又は再調節が必要なときに点眼剤として適用される。したがって、人工涙液は、最も基本的な意味で、眼に水分を添加する単純に別の一方法である。人工涙液は症候を軽減できる場合もあるが、いかなる根本的な眼球又は角膜の病状をもめったに変えることはない。
【0004】
ドライアイの起源又は原因についての比較的最近の一連の研究は、角膜におけるメタロプロテイナーゼの潜在的役割を調べる。メタロプロテイナーゼは、触媒作用的に活性であるために、その活性部位においてZn2+、又はCa2+などの金属イオンの結合を必要とする特徴を有する一群のタンパク質分解酵素である。メタロプロテイナーゼは、MMPと略記され、組織再構築を含むプロセスに関与することが知られている。したがって、生理学的に、MMPは、腫よう転移、胚発生及び創傷治癒にある役割を果たす。約20種類の公知のMMPが存在し、そのすべては互いに構造的に関連するように見え、約40%のアミノ酸が相同である。歴史的に、個々のMMPは、その主要な基質と考えられるものに基づいた名称を与えられ(例えば、(i)間質コラーゲン(I、II及びIII型)を分解するコラゲナーゼ、(ii)4型基底膜コラーゲン及びゼラチン(変性コラーゲン)を分解するIV型コラゲナーゼ及びゼラチナーゼ、(iii)プロテオグリカン、ラミニン、ゼラチン及びフィブロネクチンを含めた広範囲の基質を分解するストロメライシン)、又は細胞の酵素源によって名称を与えられることもある(例えば、多形核白血球ゼラチナーゼ)。最終的に、これらの酵素の大部分が別のファミリーメンバーの不活性ポリペプチド代用形(proform)(酵素前駆体)を含めた複数の基質を開裂させ、これらの酵素がミエリン塩基性タンパク質、アルファ−1−抗トリプシンなどの非基質タンパク質も分解できることが認められた。構造的に、大部分のMMPは、触媒ドメイン、カルボキシ末端ヘモペキシン様ドメイン(ヘモペキシンドメイン)、及び酵素活性化中に切断されるプロドメインを有する。
【0005】
H.Nagase等によって1992年に発表された論文は、当時公知であったMMP(例えば、MMP−1、MMP−2など)の数字で表した命名法及び用語集を提供し、その後発見されたMMPは、その方式に従ってきた。MMP−9(ゼラチナーゼB、IV−B型コラゲナーゼ)は、生理学的組織再構築物質として、広範囲の細胞外マトリックス(ECM)及び基底膜成分の分解において活性である。MMP−9は、炎症性サイトカインインターロイキンIL−1βをその活性な分泌型に変換することによって、腫よう壊死因子(TNFα)の翻訳後活性化を触媒することによって、IL−8、プロセスケモカインを増強することによって、さらに、セリンプロテアーゼ阻害剤を分解することによって、炎症の媒介にある役割を果たすように見える。さらに、MMP−9は、自己免疫にもある役割を果たし得、自己免疫ネオエピトープの発生を促進し得る。MMP−9の局所的活性は、シェーグレン症候群患者の涙液中で増加することが示された。幾つかの研究は、健康な角膜の涙液膜に比べて、潰よう性角膜炎のヒト及び他のほ乳動物の涙液膜において、MMP−9を含めたゼラチナーゼの活性のかなりの増加を実証した。潰よう性角膜炎の病変形成におけるゼラチナーゼの役割も検討されてきた。MMP−9ノックアウトマウスを使用した研究によれば、MMP−9の欠如は、実験的に誘導されるドライアイからの角膜上皮性関門破壊に対してある程度の抵抗性を与える。
【0006】
種々のMMPの活性をin vivoで阻害するように作用する治療薬を提供するそれらの試みにおいては、多数の新しい化学物質が、多数の異なる研究組織によって合成されてきた。これらの合理的に設計されたMMP阻害剤の幾つかは、幾つかの前臨床のハードルを越え、MMPを含むと考えられる幾つかの病的症状の治療用物質としての可能性を示した。残念ながら、これらの化合物の幾つか、例えば、広域MMP阻害剤であるマリマスタット(BB−2516)、及びMMP−1選択的阻害剤であるTrocade(Ro32−3555)は、臨床試験において期待されたようには機能しなかった。成功しなかった一つの理由は、特に広域阻害剤を用いた、筋骨格毒性などの重大な副作用である。ウサギ関節炎モデルにおける有望な結果がヒトにおいて実施された試験では再現されなかったTrocadeの場合と同様に、疾患修飾効果の欠如は別の問題である。実際、British Biotechのマリマスタットは、少なくとも5回不合格になった第三相試験の対象であり、BayerとPfizerのどちらも第三相MMP阻害剤試験を打ち切った。
【0007】
最近、新規ゼラチン結合部位が、MMP−9のヘモペキシンサブユニットの一部として発見された。
【0008】
特許文献1は、サイトカイン又は増殖因子、特にTGFβ8を含む涙液補充療法組成物に関する。
【0009】
特許文献2(Quay)は、アルファ2−マクログロブリン及びアルファ1−プロテアーゼ阻害剤を含めたプロテアーゼ阻害剤を使用して円錐角膜を治療する方法に関する。
【0010】
特許文献3(Kaufman)は、ムチン型粒子及び脂質型材料の水性懸濁液を含む人工涙液システムに関する。ムチン型粒子は、コラーゲン、ゼラチン及び/又は血清から形成される。
【0011】
特許文献4(Pflugfelder他)は、涙液クリアランスの遅延に付随する炎症を減少させる局所的テトラサイクリンの使用に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第95/2969号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,444,791号明細書
【特許文献3】米国特許第4,923,700号明細書
【特許文献4】米国特許第6,455,583号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
今回、比較的少量の天然ペプチドプロテアーゼ阻害剤が、人工涙液型組成物に使用されるものなどの眼科的に許容される賦形剤に組み入れられると、メタロプロテイナーゼのかなりの阻害を示すことが驚くべきことに発見された。得られた組成物は、角膜上皮細胞の生存度を高め、その乾燥を減少させるように作用し得ることも驚くべきことに発見された。本発明は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含むMMP阻害性局所眼科用組成物を対象とする。本発明は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法も対象とする。
【0014】
本発明の第1の実施形態群は、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質と眼科的に許容される賦形剤とを含む局所眼科用組成物を対象とする。この実施形態群における好ましい一実施形態は、眼科的に許容される賦形剤中のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質及びガラクトマンナンである。更に好ましい一実施形態は、ゼラチンとガラクトマンナンとを含む局所眼科用組成物である。別の好ましい一実施形態は、アルファ−2−マクログロブリン及びガラクトマンナンの組成物である。本発明の別の実施形態としては、ガラクトマンナンとオボマクログロブリン、ガラクトマンナンとコラーゲン、及びガラクトマンナンとカゼインを含む各組成物が挙げられる。好ましいガラクトマンナンはHP−グアルである。
【0015】
本発明の第2の実施形態群は、有効量のMMP−9阻害性ペプチド基質を眼球表面に適用することを含むドライアイ治療方法を対象とする。ここで好ましい実施形態においては、ペプチド基質の量は、MMP−9を少なくとも50%阻害するのに十分である。
【0016】
理論に拘泥するものではないが、MMP−9などのプロテアーゼの活性を阻害するように作用するプロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、それによって、ドライアイ障害を受けやすい眼組織中に通常存在する内在性基質に作用するプロテアーゼの能力を低下させると考えられる。このようにして、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、MMP−9又は他の眼球プロテアーゼの直接損傷作用を低下させるように働くことができる。MMP−9などのプロテアーゼに対するプロテアーゼ阻害性ペプチド基質の阻害効果の一部又はすべては、間接的であり得、すなわち、アロステリック型阻害様式であり得る。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質のサイズ又は分子量は、この阻害効力をもたらし得る。さらに、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、過敏になった眼球表面組織に対して直接又は間接的な抗炎症効果、並びに抗組織再構築効果をもたらすことができる。これらの作用は、ペプチド基質とMMP酵素、特にMMP−9の相互作用によって媒介されると考えられる。さらに、本発明のある実施形態は、プロテアーゼ阻害性ペプチドの徐放性を与えることによって、これらの治療上の作用を延長することができる。例えば、本発明の好ましい一実施形態においては、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、HP−グアル及びホウ酸塩と化合してゲルを形成する。このゲルは、涙液膜の安定性を高め、眼球表面を乾燥から保護するように作用する。さらに、ゲルは、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を捕捉することができ、基質はそれによって涙液膜中に保持され、活性の持続時間が延長される。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、ゼラチン−ムチンゲルマトリックスを形成する可溶性ムチンの足場として作用し、それによって涙液膜の安定性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トリシン緩衝剤中のゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図2】粘滑ポリマーと組み合わせた0.1%w/vのゼラチンAがMMP−9のかなりの阻害を示すことを示したグラフである。
【図3】Systaneに組み入れられたゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図4】Tears Naturale II中のゼラチンAによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図5】ゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図6】Systane中のゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図7】Tears Naturale II中のゼラチンAによる細菌コラゲナーゼの用量反応阻害を示したグラフである。
【図8】粘滑ポリマーと組み合わせたゼラチンAが様々な程度の細菌コラゲナーゼ阻害を示すことを示したグラフである。
【図9】ゼラチンAを含む人工涙液製品で処理したときの細胞の乾燥保護及び生存度の増加を示したグラフである。
【図10】α−2マクログロブリンによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図11】組換えヒトゼラチン8.5kDによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【図12】組換えヒトコラーゲンによるMMP−9の用量反応阻害を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で利用される以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0019】
「プロテアーゼ」という用語は、ペプチド結合の切断を触媒する酵素を包含する。代表的プロテアーゼとしては、コラゲナーゼ及びマトリックスメタロプロテイナーゼが挙げられる。
【0020】
「プロテアーゼ阻害性ペプチド基質」という用語は、本質的に主にペプチド性である、すなわち1本以上のアミノ酸鎖で構成される、物質を包含し、プロテアーゼ酵素の基質である性質を有する。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の代表例としては、ゼラチン、アルファ−2マクログロブリン、オボマクログロブリン、カゼイン及びコラーゲンが挙げられる。
【0021】
「MMP」という用語は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(酵素)を指す。
【0022】
「MMP−9」という用語は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9として知られる酵素を指す。
【0023】
「ガラクトマンナン」という用語は、マンノース若しくはガラクトース部分又は両方のグループを主構造成分として含む、天然ゴム又は類似の天然若しくは合成ゴムから誘導される多糖を指す。
【0024】
「CMC」という用語は、カルボキシメチルセルロース及びその塩を指す。
【0025】
「HPMC」という用語は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを指す。
【0026】
「HP−グアル」という用語は、ヒドロキシプロピルグアルを指す。低モル置換(例えば、0.6未満)のヒドロキシプロピルグアルが好ましい。
【0027】
「眼球表面」という用語は、外部から接触可能な眼組織を指す。その代表的な非限定的例としては、角膜、結膜、円蓋及び強膜が挙げられる。
【0028】
「阻害量」という用語は、所望の活性を与えるために、阻害性物質の無毒であるが十分な量を指す。
【0029】
「眼科的に許容される賦形剤」という用語は、眼組織に生理学的に適合した物性(例えば、pH及び/又は重量オスモル濃度)を有する組成物を意味する。
【0030】
驚くべきことに、比較的少量の天然ペプチドプロテアーゼ阻害剤が、人工涙液型組成物に組み入れられると、メタロプロテイナーゼのかなりの阻害を示すことが発見された。更に驚くべきことに、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の量はかなり低くすることができ、0.1%w/vと低い、その一実施形態がゼラチンであるプロテアーゼ阻害性ペプチド基質の濃度が、50%を超えるMMP−9阻害をもたらし得ることが見いだされた。
【0031】
例示的なプロテアーゼ阻害性ペプチド基質としては、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインが挙げられ、以下に更に記述される。しかしながら、別のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を使用することができ、本発明の範囲内であることを見いだし得ることを理解すべきである。
【0032】
ゼラチンは、動物結合組織から抽出されたコラーゲンの部分加水分解によって生成するタンパク質である。2タイプのゼラチンが市販されており、タイプAは酸処理前駆体から誘導され、タイプBはアルカリ処理前駆体から誘導される。両方のタイプのゼラチンは、種々のMMPの基質であり、MMPの競合的阻害剤として作用する。
【0033】
肝臓によって産生され、血中に存在する大きいタンパク質であるアルファ−2マクログロブリンは、メタロプロテイナーゼを含めて、幾つかのプロテイナーゼを不活性化することができる。この不活性化の機序は、プロテイナーゼの「餌」として働く35アミノ酸領域であると報告され、プロテイナーゼがこの領域に結合し、この領域を切断すると、それはアルファ−2−マクログロブリンに結合する。生成した複合体は、次いで、マクロファージによって血液から除去される。
【0034】
カゼインは、チーズ及び乳中に存在するリンタンパク質である。カゼインは、比較的多数のプロリン残基を含み、その結果、二次又は三次構造をほとんど持たない。カゼインは、比較的疎水性であるが、希アルカリ及び塩溶液に容易に分散することができる。
【0035】
オボスタチンとも称されるオボマクログロブリンは、ジスルフィド結合によってペアで連結された4個のサブユニットで構成される糖タンパク質である。オボマクログロブリンは、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ及びメタロプロテアーゼを含めて、種々のタイプのプロテアーゼに対する広域阻害活性を示した。
【0036】
コラーゲンは、動物における主要なタンパク質であり、総タンパク質量のほぼ25%を与え、結合組織における主要なタンパク質である。コラーゲンは、長線維性タンパク質であり、強靱な線維束又は線維を形成し、組織及び細胞に構造を与える細胞外マトリックスから一緒である。コラーゲンは、ある種の細胞の内部にも存在し得る。コラーゲンは、最も一般的には、トロポコラーゲンとして知られる三重らせん体で存在する。ゼラチンを生成するのはトロポコラーゲンの部分加水分解である。
【0037】
本発明において利用されるプロテアーゼ阻害性ペプチド基質源は、典型的には、動物起源である。例えば、ウシ又はブタの皮膚又は骨に由来するゼラチンは、今日の医薬品に使用される主な形態である。できるだけ均質で純粋な製品を提供するために、意図された用途(経口、非経口、装置)を考慮して、大規模なプロセシングが試みられている。伝達性海綿状脳症(TSR)及びウシ海綿状脳症(BSE)のないコラーゲン及び/又はゼラチンが、例えば、Gelita(Sergeant Bluff、Iowa)及びRousselot(a Sobel Company、Dubuque、Iowa)を含めて、幾つかの供給業者から市販されている。合成及び/又は組換え技術によって製造される材料の使用は、別の選択肢である。例えば、Fibrogen(San Francisco、California)は、組換え酵母系を使用して完全合成ゼラチン及びコラーゲンを製造している。これらの合成材料は、一貫性(ロット間均一性、明確な分子量及び物理化学的性質)、個別化容易性(所定の特性、デザイナー分子)並びに生体適合性及び安全性(免疫応答を誘発するリスクの低減、汚染物質の除去)の点で幾つかの利点を有し得る。
【0038】
本発明の組成物及び方法は、メタロプロテイナーゼを阻害するのに十分な量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む。好ましいメタロプロテイナーゼはMMP−9である。プロテアーゼ阻害性ペプチド基質の量は、具体的な基質に応じて変わり得るが、一般に約0.010%から10%重量/体積(w/v)、より好ましくは約0.05%から1.0%(w/v)、さらにより好ましくは約0.05%から0.25%(w/v)である。MMP阻害割合は、好ましくは約50%を超え、より好ましくは約60%を超え、さらにより好ましくは約70%を超える。
【0039】
本発明の一実施形態においては、プロテアーゼ阻害性ペプチド基質は、潤滑ポリマー系を含むSYSTANE(登録商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.)などの既存のドライアイ製剤と組み合わせられる。SYSTANE(登録商標)の重合性保護(polymerizing protection)は、粘滑剤(ポリエチレングリコール400及びプロピレングリコール)、HP−グアル及び患者の自然の涙液の相互作用によって得られる。HP−グアルが自然の涙液と化合すると、化学反応が起こる。HP−グアルは、疎水性(はっ水)表面に結合し、ゲル様粘ちゅう性を有するネットワークを形成する。HP−グアルは、眼球表面の粘滑系をより長く維持するのにも役立つ。
【0040】
本発明の一実施形態は、ガラクトマンナン、ホウ酸塩及びゼラチンを組み合わせる組成物である。本発明に使用することができるガラクトマンナンのタイプは、典型的には、ガーゴム、イナゴマメゴム及びタラゴムから誘導される。さらに、ガラクトマンナンは、古典的合成経路によって得ることもでき、又は天然ガラクトマンナンの化学修飾によって得ることができる。
【0041】
本明細書では「ガラクトマンナン」という用語は、マンノース若しくはガラクトース部分又は両方のグループを主構造成分として含む、上記天然ゴム又は類似の天然若しくは合成ゴムから誘導される多糖を指す。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1−6)結合によって連結された(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位とα−D−ガラクトピラノシル単位の線状鎖で構成される。好ましいガラクトマンナンでは、D−ガラクトースとD−マンノースの比は変動するが、一般に約1:2から1:4である。D−ガラクトース:D−マンノース比が約1:2のガラクトマンナンが最も好ましい。さらに、多糖の別の化学修飾変種も「ガラクトマンナン」の定義に含まれる。例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換を本発明のガラクトマンナンに行うことができる。アルコキシ及びアルキル(C1−C6)基を含むものなどのガラクトマンナンの非イオン性置換は、柔らかいゲルが所望であるときに特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非cisヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。ガラクトマンナンの非イオン性置換によって形成される組成物の例は、モル置換約0.4のヒドロキシプロピルグアルである。陰イオン性置換もガラクトマンナンに行うことができる。陰イオン性置換は、高応答性ゲルが所望であるときに特に好ましい。
【0042】
ホウ酸塩化合物は本発明のある実施形態で使用することができる。本発明の組成物に使用することができるホウ酸塩化合物としては、ホウ酸及びホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸カリウムなどの他の薬学的に許容される塩が挙げられる。本明細書では「ホウ酸塩」という用語は、すべての薬学的に適切な形態のホウ酸塩を指す。ホウ酸塩は、生理的pHにおける良好な緩衝能力、周知の安全性、並びに広範囲の薬物及び防腐剤との適合性のために、眼科用製剤における一般的賦形剤である。ホウ酸塩は、固有の静菌及び静真菌性も有し、したがって組成物の保存に役立つ。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態は、0.01%から5%(w/v)の量のゼラチン、約0.1から5%(w/v)の量の1種類以上のガラクトマンナン(単数又は複数)、及び約0.05から5%(w/v)の量のホウ酸塩を含む組成物である。好ましくは、組成物は、0.01%から1.0%ゼラチン(w/v)、0.2から2.0%(w/v)ガラクトマンナン及び0.1から2.0%(w/v)ホウ酸塩化合物を含む。最も好ましくは、組成物は、0.05%から0.5%ゼラチン(w/v)、0.3から0.8%(w/v)ガラクトマンナン、及び0.25から1.0%(w/v)ホウ酸塩化合物を含む。個々の量は、所望の個々のゲル化性に応じて変わる。一般に、ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度は、ゲル活性化後(すなわち、投与後)に組成物の適切な粘度に達するために、操作することができる。ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を操作すると、所与のpHにおいてより強力な又はより弱いゲル化を与えることができる。強力なゲル化組成物が所望の場合、ゼラチン、ホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を増加させることができる。部分ゲル化組成物などのより弱いゲル化組成物が所望の場合、ゼラチンホウ酸塩又はガラクトマンナン濃度を減少させることができる。組成物中の塩、防腐剤、キレート化剤などの追加の成分の性質、濃度などの他の要因も、本発明の組成物のゲル化の特徴に影響を及ぼし得る。一般に、本発明の好ましい非ゲル化組成物、すなわち、眼によってゲル活性化されない組成物は、約5から1000cpsの粘度を有する。一般に、本発明の好ましいゲル化組成物、すなわち、眼によってゲル活性化される組成物は、約50から50,000cpsの粘度を有する。
【0044】
最も早く最も成功した人工涙溶液は、米国特許第4,039,662号(Hecht他)に記載されている。この溶液は、TEARS NATURALE(商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.、Fort Worth、Texas)として長年市販されている。Hecht他の’662号特許に記載され、特許請求された溶液、及び対応する市販品は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70及び塩化ベンザルコニウムの独特の組合せの使用に基づく。TEARS NATURALE(商標)II Polyquad(登録商標)Lubricant Eye Drops(Alcon Laboratories,Inc.)の名称で現在市販されているこの製品のその後のバージョンでは、塩化ベンザルコニウムは、重合体抗菌剤/防腐剤であるポリクオタニウム−1で置換された。
【0045】
本発明に利用することができる有機緩衝剤の一例は、トリシン、すなわちN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシンである。有機緩衝剤は、塩基性基と酸性基の両方を有し、結果として双性イオンであり、生理的pH条件下では、これらの緩衝剤は、正電荷と負電荷の両方を保有する。
【0046】
コンタクトレンズ及び点眼剤の場合には、種々の薬剤を添加して、眼との適合性を高める。刺すような痛み又は炎症を回避するために、溶液は、生理学的範囲内の張性及びpH、例えば、張性200〜350mオスモル及びpH6.5〜8.5を有することが重要である。そのために、種々の緩衝及び浸透圧剤が添加されることが多い。最も単純な浸透圧剤は、塩化ナトリウムである。というのは、塩化ナトリウムは、ヒトの涙液中の主要な溶質であるからである。さらに、プロピレングリコール、ラクツロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール又は他の浸透圧剤を添加して、塩化ナトリウムの一部又はすべてを置換することもできる。さらに、クエン酸塩、リン酸塩(Na2HPO4、NaH2PO4及びKH2PO4の適切な混合物)、ホウ酸塩(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム及び混合物)、炭酸水素塩、並びにトロメタミン及び(ACES、BES、BICINE、BIS−Tris、BIS−Trisプロパン、HEPES、HEPPS、イミダゾール、MES、MOPS、PIPES、TAPS、TES、トリシンなどの)他の適切な窒素含有緩衝剤などの種々の緩衝系を使用して、約pH6.5から8.5の生理的pHを確保することができる。
【0047】
本発明のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質組成物は、例えば、抗生物質、免疫抑制薬、抗炎症剤など、ドライアイ治療に有益な効果を有すると考えられる他の薬効分類からの1種類以上の追加の治療薬と組み合わせることができる。
【0048】
本発明の組成物に含めることができる抗炎症剤としては、ステロイド性又は非ステロイド性薬物(NSAID)が挙げられる。例示的なNSAIDとしては、ケトロラクトロメタミン(Acular(登録商標))、インドメタシン、フルルビプロフェンナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、スプロフェン及びジクロフェナク(Voltaren(登録商標))が挙げられるが、それだけに限定されない。例示的なコルチコステロイドとしては、リメキソリン(rimexoline)、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、フルオロメタロン(fluoromethalone)、ロテプレドノール、トリアムシノロン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチゾン、アルドステロン、ミドリゾン(mydrysone)及びベタメタゾンが挙げられるが、それだけに限定されない。例示的な性ステロイドとしては、アンドロゲン、エストロゲン及び/又はプロゲスチンに基づくステロイドが挙げられる。
【0049】
例示的な抗生物質としては、テトラサイクリン、ドキシサイクリン及び化学修飾テトラサイクリン、セフォキシチン、n−ホルムアミドイルチエナマイシン(formamidoylthienamycin)、及び他のチエナマイシン誘導体などのベータ−ラクタム抗生物質、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミキシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、チブロリファマイシン(chibrorifamycin)、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミドエノキサシン、オフロキサシン、シノキサシン、スパルフロキサシン、チアンフェニコール、ナリジキシン酸、トシル酸トスフロキサシン、ノルフロキサシン、ピペミド酸三水和物、ピロミド酸、フレロキサシン、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ノルフロキサシン、スルファセタミド、スルフィキソキサゾール(sulfixoxazole)、トブラマイシン、モキシフロキサシン及びレボフロキサシンが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0050】
例示的な免疫抑制剤としては、例えば、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、並びにFK−506、ラパマイシン及びタクロリムスなどのアスコマイシンが挙げられる。
【0051】
他の成分を本発明の組成物に添加することができる。かかる成分としては、一般に、張性調節剤、キレート化剤、活性薬剤、可溶化剤、防腐剤、pH調節剤及び担体が挙げられる。ポリエチレングリコール及びグリセロールなどの他の高分子又は単量体薬剤も特別なプロセシングのために添加することができる。本発明の組成物に有用である張性剤(tonicity agent)としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムなどの塩を挙げることができる。非イオン性張性剤としては、プロピレングリコール及びグリセロールを挙げることができる。キレート化剤としては、プロピレングリコール及びグリセロールを挙げることができる。キレート化剤としては、EDTA及びその塩を挙げることができる。可溶化剤としては、Cremophor EL(登録商標)及びTween 80を挙げることができる。別の担体としては、Amberlite(登録商標)IRP−60を挙げることができる。pH調節剤としては、塩酸、Tris、トリエタノールアミン及び水酸化ナトリウムを挙げることができる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1及びポリエキサメチレン(polyexamethylene)ビグアナイドを挙げることができる。上に列挙した例は、説明のためのものであって、網羅的なものではない。上記目的に有用である他の薬剤の例は眼科用製剤において周知であり、本発明によって企図される。
【0052】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を更に説明するものである。これらの実施例は、本発明の理解を助けるためのものであって、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本実施例及び以下の実施例においては、別段の記載がない限り、DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH及びDNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2を含めて、MMP−1、−2及び−9に感受性のある蛍光発生基質を使用してMMP活性を評価した。これらの蛍光発生基質アッセイは当分野で周知である。例えば、その両方を参照により本開示に援用する、Bickett et al.Analytical Biochemistry 212,58−64(1993)及びNetzel−Arnett et al.,Analytical Biochemistry 195,86−92(1991)を参照されたい。アッセイを実施する前に、pro−MMP−9をp−アミノフェニル水銀アセタートによって活性化した。細菌コラゲナーゼの活性化は不要であった。アッセイのために、DMSO中0.1mM濃度で基質原液を調製し、阻害剤を用いる又は用いない酵素活性アッセイのすべてを、0.2M NaCl、10mM CaCl2、50mM ZnSO4及び0.05%Brij−35を含む50mMトリシン緩衝剤、pH7.5中で室温で実施した。(Brij−35は市販ポリオキシエチレンラウリルエーテル界面活性剤である。)。総試料体積は200μlであり、96ウェルマイクロプレート中で実施された。使用した特定の基質に対して適切な励起/発光波長(すなわち、λex=280nm;λem=360nm及びλex=280nm;λem=360nm)に設定されたマイクロプレート蛍光リーダー(モデルFL x800I、Bio−Tek Instrument)を用いて蛍光変化を1分ごとに10分間記録した。酵素の活性は、1分当たりの蛍光変化として表され、酵素反応に対して10分以内に記録された蛍光対時間に関する直線の傾斜であった。阻害剤のない試料の割合から阻害剤試料の割合を減算し、次いで阻害剤のない試料の割合で除算し、100%を掛けて、%阻害を計算した。
【0054】
この試験は、MMP−9活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。この特別な試験では、MMP−9濃度はトリシン緩衝剤中360μ単位/アッセイであり、使用ゼラチンはゼラチンA(Sigmaカタログ#1890−50G、Lot#014K0077、ブタの皮膚からの酸抽出物)であり、使用基質はMMP−2/MMP−9蛍光発生基質I(Calbiochemカタログ#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)20μM/アッセイであった。トリシン緩衝剤中のゼラチンAは、MMP−9活性の用量反応阻害を示した。0.01%から0.2%(w/v)まで、阻害の比例的増加が認められた。0.2%後、阻害は横ばいになり始めた。試験結果を図1にグラフを用いて示す。
(実施例2)
【0055】
この試験は、種々の粘滑ポリマーを併用したときに、MMP−9活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。この目的のために、実施例1から約59%阻害を与えた0.1%w/vゼラチンAを選択した。MMP−9=Calbiochem Cat#444231;Lot#B56458;ヒト好中球。使用活性は200μ単位/アッセイであった。ゼラチン=ゼラチンA。Sigma Cat#1890−50G、Lot#014K0077(ブタの皮膚からの酸抽出物)。アッセイ緩衝剤=0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5。基質=MMP−1/MMP−9蛍光発生基質。Calbiochem cat#44221、lot#B54710。MWt、1077.2;アッセイにおいて1μM。ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2。Ex、365nm;Em、450nm。
【0056】
この試験結果によれば、図2に示すように、0.18%w/v HP−グアル、0.3%w/v HPMC及び0.5%w/v CMCと組み合わせた0.1%w/vのゼラチンAは、MMP−9のそれぞれ74.8%、71.8%及び79.1%阻害をもたらすことができた。
(実施例3)
【0057】
次の一連の試験では、2種類の代表的人工涙溶液に組み入れたときのゼラチンAのMMP−9活性阻害能力を調べた。この目的のために、Systane及びTears Naturale IIとして知られる人工涙溶液を選択した。この一連の試験では、0.01%から0.20%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを市販SystaneとTears Naturale IIの両方の溶液に組み入れた。実施例2に記載の同じ酵素及び基質を用いて、同じ手順に従ってアッセイを実施した。この試験の結果によれば、ゼラチンAは、SystaneとTears Naturale IIの両方の溶液に組み入れたときにMMP−9活性の用量反応阻害を示し、Systaneにおいて0.01%w/v以上から、さらに、Tears Naturale IIにおいて0.05%w/v以上から、50%を超える阻害に寄与した。これらの試験の結果を図3及び4にグラフを用いて示す。
(実施例4)
【0058】
この試験は、細菌コラゲナーゼに対するゼラチンAの阻害反応性を調べるために試みられた。細菌コラゲナーゼは、細菌病原における細胞外構造の破壊を助ける外毒素である。試験のために、0.05%から0.8%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを、0.2M NaCl、10mM CaCl2、ZnSO4及びBrij−35を含む50mMトリシン緩衝剤pH7.5中で調製した。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによって細菌コラゲナーゼの活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。細菌コラゲナーゼ&基質Iの濃度はそれぞれ20単位/アッセイ及び20μM/アッセイであった。使用コラゲナーゼはクロストリドペプチダーゼ(Clostridopeptidase)(Sigmaカタログ#C−7657;lot#107H8632)であった。使用ゼラチンはゼラチンA(Sigma Cat#1890−50G、Lot#014K0077。ブタの皮膚からの酸抽出物)であった。使用基質は、MMP−2/MMP−9蛍光発生基質I(Calbiochem cat#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)であった。結果によれば、細菌酵素に対して50%を超える阻害を発揮するには0.4%w/vを超えるゼラチンAが必要であったのに対して、0.05%から0.1%(w/v)の範囲ではゼラチンAはMMP−9に対して50%を超える阻害を容易に与えることができた。したがって、細菌コラゲナーゼに対するゼラチンAの阻害は、MMP−9に対するほど有効ではないようであった。この試験の結果を図5にグラフを用いて示す。
(実施例5)
【0059】
この試験は、人工涙液製品に組み入れたときのゼラチンAの細菌コラゲナーゼ阻害能力を試験した。この一連の試験では、0.05%から0.25%(w/v)の種々の濃度のゼラチンAを市販SystaneとTears Naturale IIの両方に組み入れた。実施例4に記載した同じ手順によって、同じ基質を用いて、アッセイを実施した。その結果、ゼラチンAは、人工涙液製品Systane及びTears Naturale IIに組み入れると、細菌コラゲナーゼに対しても用量反応阻害をもたらすことができた。しかし、図6及び7のグラフに示すように、両方の人工涙液において50%阻害に達するにはさほど有効ではなく、0.25%w/vを超えるゼラチンが必要であった。
(実施例6)
【0060】
この試験は、種々の粘滑ポリマーを併用したときに、細菌コラゲナーゼ活性を阻害するゼラチンAの潜在能力を調べるために試みられた。そのために、0.1%w/vのゼラチンAをHP−グアル、CMC及びHPMCと組み合わせた。実施例4に記載した同じ手順によって、同じ基質を用いて、試験を実施した。その結果、0.18%HP−グアルを用いて51%阻害が得られ、一方、0.3%HPMC及び0.5%CMCではそれぞれ24%及び21%阻害しか得られなかった。これらの結果を図8にグラフを用いて示す。
(実施例7)
【0061】
これらの試験では、乾燥保護を与え、ヒト角膜上皮細胞の生存度を高めるゼラチンAの能力を調べた。これらの試験では、CEPI 17ヒト角膜上皮細胞を、本明細書に記載のAlamar Blue法によって分析した。ヒト角膜上皮細胞系(CEPI 17、Alcon Laboratories Inc.)を96ウェルマイクロプレート中でコンフルエントに増殖させた。試験ウェルから媒体を除去し、各試験溶液100μlを添加した。培地を含む対照ウェルを単独で放置した。プレートを恒温器中に60分間戻した。インキュベーション後、すべてのウェルを吸引し、HyQ緩衝剤(改変ダルベッコリン酸緩衝溶液、Hyclone cat#SH30028.02)200μl/ウェルで1回リンスした。HyQ中のAlamar Blue(Biosource、DAL1100)の1/10希釈物を調製し、100μlを各ウェルに添加して、37℃でインキュベートした。4時間インキュベーション後、プレートを蛍光マイクロプレートリーダー(モデルFLx800、Bio−Tek Instrument)によって励起560nm及び発光590nmの設定で読み取った。試料の平均蛍光を対照の平均蛍光で除算し、100%を掛けて、%細胞生存率を計算した。
【0062】
乾燥保護を評価するために、プレインキュベーション15分及び乾燥時間30分の類似手順を使用する。プレインキュベーション後、対照以外のすべての試験ウェルを吸引した。対照をParafilmで覆った。プレートを下向き空気流のフード中に30分間置いて、細胞を曝露乾燥させた。乾燥後、すべてのウェルをHyQ200μlで1回洗浄した。細胞生存率アッセイ手順に記載のAlamar Blueアッセイによって細胞の生存度を分析した。試料の平均蛍光を対照の平均蛍光で除算し、100%を掛けて、乾燥保護を計算した。
【0063】
この試験の結果によれば、Systane、Tears Naturale II及びGenTeal Mildを含めた種々の人工涙液製品にゼラチンAを組み入れると、細胞の乾燥保護を改善し、細胞生存率を高めるように見える。この試験の結果を図9にグラフを用いて示す。
(実施例8)
【0064】
この試験は、MMP−9活性を阻害するアルファ−2−マクログロブリンの能力を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9 360μ単位/アッセイを使用した(Calbiochem Cat#444231、Lot#B56458;ヒト好中球)。α2−マクログロブリン(Sigma Cat#M−6159、Lot#118H7606;ヒト胎盤由来)。使用基質は、MMP−2/MMP−9蛍光発生基質I 10μM/アッセイ(Calbiochem cat#44215、lot#B47246;ペプチド構造=DNP−Pro−Leu−Gly−Met−Trp−Ser−Arg−OH)であった。その結果、アルファ−2−マクログロブリンは、MMP−9活性を用量反応様式で阻害する。結果を図10にグラフを用いて示す。
(実施例9)
【0065】
この試験は、MMP−9活性を阻害する既知サイズの組換えゼラチンの効果を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9(Calbiochemカタログ#444231、lot#B56458、ヒト好中球)の濃度は、トリシン緩衝剤(0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5)中200μ単位/アッセイであった。使用ゼラチンは、組換えヒトゼラチン8.5kD(FibroGen、Lot#04AE001R−01)であった。使用基質は、MMP−1/MMP−9蛍光発生基質(Calbiochemカタログ#44221、lot#B54710;ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2;Ex 365nm;Em 450nm)であった。1.0μM/アッセイを使用した。50%を超える阻害を得るには0.15%から0.25%(w/v)の組換えヒトゼラチン8.5kDがこのアッセイでは必要であった。試験結果を図11にグラフを用いて示す。
(実施例10)
【0066】
この試験は、MMP−9活性を阻害する組換えヒトコラーゲンI型の効果を調べるために試みられた。分光蛍光計を用いて蛍光変化を25℃で10分間記録することによってMMP−9の活性を評価した。活性を1分当たりの蛍光変化として表した。MMP−9(Calbiochemカタログ#444231、lot#B56458、ヒト好中球)の濃度は、トリシン緩衝剤(0.2M NaCl、10mM CaCl2を含む50mMトリシン、pH7.5)中200μ単位/アッセイであった。使用コラーゲンは、組換えヒトコラーゲンI型(FibroGen、Lot#04AE001R−01)であった。使用基質は、MMP−1/MMP−9蛍光発生基質(Calbiochemカタログ#44221、lot#B54710;ペプチド構造=DNP−Pro−Cha−Gly−Cys(Me)−His−Ala−Lys(N−Me−Abz)−NH2;Ex 365nm;Em 450nm)であった。1.0μM/アッセイを使用した。50%を超える阻害を得るには0.03%から0.04%(w/v)の組換えヒトコラーゲンI型がこのアッセイでは必要であった。試験結果を図12にグラフを用いて示す。
(実施例11)
【0067】
以下は、本発明の2種類の人工涙溶液の例である。
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含む、局所眼科用組成物。
【請求項2】
ガラクトマンナンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が前記プロテアーゼMMP−9を阻害する能力のある、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインからなる群から選択される、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラクトマンナンがHP−グアルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
有効量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項7】
MMP−9を阻害するのに有効なある量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインからなる群から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
有効量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質とガラクトマンナンとを含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項10】
MMP−9を阻害する量の請求項1に記載の組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が約0.05%を超え約0.25%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、約0.05%w/vを超える量で存在するゼラチンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、約0.03%w/vを超える量で存在するコラーゲンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記基質が、約0.015%w/vを超える量で存在するアルファ−2−マクログロブリンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
抗生物質、抗炎症剤及び免疫抑制薬からなる群から選択される治療薬を更に含む、請求項1、2、3、4、5又は11のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
プロテアーゼ阻害性ペプチド基質を眼科的に許容される賦形剤中に含む、局所眼科用組成物。
【請求項2】
ガラクトマンナンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が前記プロテアーゼMMP−9を阻害する能力のある、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインからなる群から選択される、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラクトマンナンがHP−グアルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
有効量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項7】
MMP−9を阻害するのに有効なある量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質を含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、ゼラチン、アルファ−2−マクログロブリン、オボマクログロブリン、コラーゲン及びカゼインからなる群から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
有効量のプロテアーゼ阻害性ペプチド基質とガラクトマンナンとを含む組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項10】
MMP−9を阻害する量の請求項1に記載の組成物を眼球表面に適用することを含む、ドライアイ治療方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が約0.05%を超え約0.25%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、約0.05%w/vを超える量で存在するゼラチンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記プロテアーゼ阻害性ペプチド基質が、約0.03%w/vを超える量で存在するコラーゲンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記基質が、約0.015%w/vを超える量で存在するアルファ−2−マクログロブリンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
抗生物質、抗炎症剤及び免疫抑制薬からなる群から選択される治療薬を更に含む、請求項1、2、3、4、5又は11のいずれかに記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−503202(P2011−503202A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534206(P2010−534206)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083551
【国際公開番号】WO2009/064983
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083551
【国際公開番号】WO2009/064983
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
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