説明

ドライスーツ用排気バルブ

【課題】安全且つ確実な動作を実現すると共に、構造を合理的に簡素化して外形上の厚みを薄くすることができるドライスーツ用排気バルブを提供すること。
【解決手段】開口3aの周縁部が弁座1aとして設けられたバルブベース1と、バルブベース1を覆うように設けられると共に、排気口16が形成されたカバー部15と、弁座1aのシール面に当接して開口3aを塞ぐことで水密状態にする弁体5と、弁体5とカバー部15との間に配され、ドライスーツの内圧が外圧よりも一定差圧以上に上昇した際には弁体5及び弁座1aによる水密状態の解除を許容する弁圧用ばね部材8と、弁体5の往復動方向と実質的に直交する横方向へ手動操作によって往復移動可能に設けられ、弁体5に一体的に設けられた従動カム部5aに接して水密状態を解除させるように作動するカム部9aが設けられた手動排気ボタン9とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スキューバダイビングに使用するドライスーツに設けられる排気バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
スキューバダイビング用のドライスーツ(以下、「ドライスーツ」と記す。)においては、スキューバ用タンクに接続したホース及びドライスーツに設けられた給気バルブを介して、スーツ内圧が潜水水深に応じて調整されるように、スーツ内への給気がなされる。これにより、ドライスーツを装着したダイバーは、潜水水深に伴う周囲圧による圧迫を不快に感じないようになる。
このようなドライスーツによってダイバーは快適に潜水できるが、給気した深度より浅い所へ移動した場合、周囲圧が減少してスーツ内の空気が膨張し、ダイバーは浮力を受けることになる。この浮力はダイバーを不用意に浮上させることになり、ダイバーを潜水病などの危険にさらすことになる。これを防止すべく、多くのドライスーツは、スーツ内圧が一定以上になると余剰空気を排気させる自動排気弁が配置されている。
【0003】
また、この自動排気弁は、水中で一定の浮力をドライスーツ内の空気の持つ浮力で確保しようとする潜水手法を用いた場合など、自動による排気が不要になるため、その自動による排気を行わないようにする事が出来るようになっている(自動排気のロック)。
さらに、必要時には、排気ボタンを押す等の手動操作により、排気が必要なだけできるようになっている。
以上の機能を備えるドライスーツ用排気バルブには、本出願人が先に提案した「潜水具の排気バルブ」がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−105560号公報(第1頁、図1)
【0004】
このようなドライスーツ用排気バルブ(以下、単に「排気バルブ」と記すことがある。)においては、弁体を必須の機構要素とするため、外形上の厚さが必然的にある程度必要となる。
そして、ドライスーツにおける排気バルブの配設位置は、上半身の中でも一番上部になり易く、具体的には排気量を確保し易い上腕部に配置されることが一般的である。
このため、タンクを着けるためのハーネスやBCジャケットをダイバーが着脱する際に、その排気バルブが邪魔になり、迅速な着脱ができなかったり、着脱時に排気バルブを損傷する等の可能性がある。
これに対しては、ドライスーツ用排気バルブの構造を合理的に簡素化し、その外形上の厚みを可及的に薄くすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、ドライスーツ用排気バルブには、以下のような機能上の制約があり、構造を合理的に簡素化して外形上の厚みを薄くすることは、難しいものと考えられてきた。
先ず、潜水時における周囲圧とドライスーツ内圧との関係については、ドライスーツ内へ空気を入れない限り、潜水深度とともに周囲圧が高くなる。このとき、周囲圧によって排気バルブの一方向弁機能に支障を来たし、実際の潜水時に起こりうる差圧によってドライスーツ内へ水が入ることがあってはならない。
【0006】
また、ドライスーツでは、ダイバーは保温のためにインナースーツを着用しており、これは多くの場合に保温性を高めるために、厚手の繊維及び保温綿等で設けられている。排気時には、これらから排出される綿毛や繊維くずが排気バルブのシール部に付着することがあり、長時間使用するとこれらのためにシール部が周囲圧に対して防水機能を保持できなくなり、潜水中の水漏れが発生する。このため、バルブの定期的な分解清掃が不可欠であり、ドライスーツ用排気バルブは、ダイバーによって簡単に分解清掃できることが望まれている。
【0007】
さらに、自動排気を機能させない自動排気のロック状態において、過大なドライスーツ内圧はドライスーツ自体の接合縫製部に過大な引っ張り応力をかけることとなり、ドライスーツの防水性に影響を与えることがある。これを回避するためには、自動排気のロック状態においても、一定のドライスーツ内圧になったら空気を外へ逃がすことが求められる。
【0008】
また、手動排気時においては、ボタンを手探りでも確実に判断し、操作できることが求められる。さらに、海水飛沫の進入等によって機構部分の摺動に支障を来たし、手動排気操作に不都合が生じることを、防止する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ドライスーツ用排気バルブに関して解決しようとする問題点は、従来品と比べて、同等以上に安全且つ確実な動作を実現すると共に、構造を合理的に簡素化して外形上の厚みを薄くすることが難しい点にある。
そこで本発明の目的は、安全且つ確実な動作を実現すると共に、構造を合理的に簡素化して外形上の厚みを薄くすることができるドライスーツ用排気バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるドライスーツ用排気バルブの一形態によれば、スキューバダイビング用のドライスーツにおける開口の周縁部を形成すると共に、該周縁部が弁座として設けられたバルブベースと、該バルブベースを覆うように設けられると共に、前記ドライスーツの外部へ空気を排気するための排気口が形成されたカバー部と、前記弁座のシール面に対して実質的に直交する方向へ往復動可能に設けられ、該弁座のシール面に当接して前記開口を塞ぐことで水密状態にする弁体と、該弁体と前記カバー部との間に配され、常時においては前記弁体を前記弁座に当接するように付勢し、ドライスーツの内圧が外圧よりも一定差圧以上に上昇した際には前記弁体及び前記弁座による水密状態の解除を許容する弁圧用ばね部材と、前記弁体の往復動方向と実質的に直交する横方向へ手動操作によって往復移動可能に設けられ、前記弁体に一体的に設けられた従動カム部に接して該弁体を前記弁圧用ばね部材の付勢力に抗して前記弁座から離れる方向へ移動させ、水密状態を解除させるように作動するカム部が設けられた手動排気ボタンとを具備する。
【0011】
また、本発明にかかるドライスーツ用排気バルブの一形態によれば、前記手動排気ボタンは、手動によって横方向内側へ押し込まれることで水密状態を解除させるように作動し、戻しばねによって元の位置に復帰することを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明にかかるドライスーツ用排気バルブの一形態によれば、前記弁体及び前記カバー部の双方に接する位置と接しない位置との間で変位可能に配され、前記弁体及び前記カバー部の双方に接する状態に位置した際には、潜水時の自動的な排気を阻止するように前記弁体が前記弁座から離れる方向の移動を阻止すると共に、一定差圧以上ではドライスーツ内部の空気を外部へ逃がすように前記弁体が前記弁座から離れる方向の移動を許容可能に、前記弁圧用ばね部材よりもばね圧が高く設けられた弾性ロック部材を備えることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかるドライスーツ用排気バルブの一形態によれば、前記弾性ロック部材は、前記弁体と同心に配置されたリング状の板ばねであり、該リング状の板ばねの一部若しくはこれに連動する部分であるレバー部がバルブの外部に露出され、該レバー部が手動操作されて回転されることで、前記弁体及び前記カバー部の双方に接する位置と接しない位置との間で変位可能に設けられていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明にかかるドライスーツ等の潜水具によれば、上記のドライスーツ用排気バルブが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドライスーツ用排気バルブによれば、安全且つ確実な動作を実現すると共に、構造を合理的に簡素化して外形上の厚みを薄くすることができるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るドライスーツ用排気バルブの最良の形態例を添付図面(図1〜10)に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係るドライスーツ用排気バルブの自動排気モードの非排気時を示す断面図である。図2は、同ドライスーツ用排気バルブの手動による排気時を示す断面図である。図3〜8は、同形態例の各作動状態を示す断面図である。また、図9は、同形態例の外観形状を示す側面図であり、図10は同形態例の外観形状を示す平面図である。
【0017】
1はバルブベースであり、スキューバダイビング用のドライスーツにおける開口3aの周縁部を形成すると共に、その周縁部が弁座1a(図2参照)として設けられている。
15はカバー部(以下、単に「カバー」とも記す。)であり、バルブベース1を覆うように設けられると共に、ドライスーツの外部へ空気を排気するための排気口16が形成されている。
5は弁体であり、弁座1aのシール面に対して実質的に直交する方向へ往復動可能に設けられ、その弁座1aのシール面に当接して開口3aを塞ぐことで水密状態にする。
8は弁圧用ばね部材(以下、「弁圧ばね」とも記す。)であり、弁体5とカバー部15との間に配され、常時においては弁体5を弁座1aに当接するように付勢し、ドライスーツの内圧が外圧よりも一定差圧以上に上昇した際には弁体5及び弁座1aによる水密状態の解除を許容する。
【0018】
9は手動排気ボタン(以下、単に「排気ボタン」とも記す。)であり、弁体5の往復動方向と実質的に直交する横方向へ手動操作によって往復移動可能に設けられ、弁体5に一体的に設けられた従動カム部(外突起)5aに接してその弁体5を弁圧用ばね部材8の付勢力に抗して弁座1aから離れる方向へ移動させ、水密状態を解除させるように作動するカム部9aが設けられている(図1〜3等参照)。
この手動排気ボタン9は、手動によって横方向内側へ押し込まれることで水密状態を解除させるように作動し、戻しばね11によって元の位置に復帰する。
【0019】
12はリング状の板ばね(以下、「ロック板ばね」とも記す。)であり、弾性ロック部材の一形態例である。
このリング状の板ばね12は、弁体5及びカバー部15の双方に接する位置と接しない位置との間で変位可能に配され、弁体5及びカバー部15の双方に接する状態に位置した際には、潜水時の自動的な排気を阻止するように弁体5が弁座1aから離れる方向の移動を阻止する(図4参照)と共に、一定差圧以上ではドライスーツ内部の空気を外部へ逃がすように弁体5が弁座1aから離れる方向の移動を許容可能(図5参照)に、弁圧用ばね部材8よりもばね圧が高く設けられている。
【0020】
また、リング状の板ばね12は、弁体5と同心に配置されており、そのリング状の板ばね12の一部若しくはこれに連動する部分であるレバー部13(以下、「ロック切り替えレバー13」とも記す。)がバルブの外部に露出され、そのレバー部13が手動操作されて回転されることで、弁体5及びカバー部15の双方に接する位置(図8参照)と接しない位置(図7参照)との間で変位可能に設けられている。
このドライスーツ用排気バルブは、ドライスーツに限らず、同等の機能を有する他の潜水具に装着しても好適に利用できるのは勿論である。
【実施例1】
【0021】
バルブベース1は、パッキン2を介してドライスーツの生地3をリテーナー4により締め付け、ドライスーツ内への水の浸入を防止している。このバルブベース1には、生地3の面と実質的に平行なシール面を有する弁座1aが設けられている。
弁体5には、その周囲にリング状に弁シート6が設けられている。この弁体5は、バルブベース1に装填してあるスポークリング7によってバルブベース1の中央に配置されている。また、弁体5は、スポークリング7によって、弁座1aのシール面に直交する方向へ所要の区間について往復動可能、且つ弁体5に設けた凸部5bとスポークリング7の凹部7bとの嵌め合い(図3、6等参照)によって回転不能にガイドされている。
本形態例の弁体5は、有底筒状の芯部を中心として、外突起5aが設けられた上段部と、リング状の弁シート6が嵌められて拡径した部分になっている中段部と、スポークリング7によって案内される下段部とによって構成されている。
【0022】
ドライスーツ内圧が周囲圧より高くなり、弁圧ばね8で押し付けている弁体5が押し上げられると、弁体5の周囲に配置された弁シート6と弁座1aの間から空気が外部へ放出される(図2参照)。なお、本形態例の弁圧ばね8は、コイルスプリングであり、カバー15の天板部内面と弁体5のばね収納部内底面との間に圧縮状態で配されている。
また、カバー15には、排気口16が複数開いており、外部とは空気及び水が流通するようになっている。
ドライスーツ内圧が周囲圧及び弁圧ばね8による弁体5の押し圧以下となると、排気は停止する(図1参照)。
【0023】
次に、手動排気操作時は、排気ボタン9をスライドさせて、その排気ボタン9と一体的に設けられたカム部9aが、弁体5の上部に半径方向外側へ突起して一体的に設けられた外突起5a(従動カム部)を上方へ持ち上げることにより、弁体5が上方へ移動する(図3参照)。これにより、ドライスーツ内部の空気を排気する。
このとき、ドライスーツ内圧と周囲圧の差がほとんどない場合、周囲の水が逆流し、ドライスーツ内へ入ろうとする。しかし、弁シート6がテーパー状に形成されると共に十分に柔軟なことにより、この弁シート6がバルブベース1(弁座1aのシール面)に接触している間は、周囲の水の浸入を防止することができる(図3参照)。
【0024】
また、万が一、横方向からの海流や水流によって弁シート6の接触が不安定となり、バルブベース1内へ周囲の水が浸入した場合でも、一方向弁10によってドライスーツ内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0025】
本実施例では、カム部9aの上面であるカム面が実質的に斜面となっていると共に、その斜面に対応して外突起5aの下面である従動カム面が実質的に斜面となっている。
このように、カム部9aと外突起5aの少なくとも一方が実質的に斜面に形成されていることで、手動排気ボタン9の操作によって、弁体5を弁座1aから離れる方向へ移動できる。
また、外突起5aは、図3〜8に示すように、弁体5の上部に一対が対称に耳状に突起して設けられている。これに対応してカム部9aも、排気ボタン9に一対が対称に設けられている。排気ボタン9は、使用者の指等が当たる操作部と、カム部9aとを備えている。そのカム部9aは、弁体5に嵌る穴部を形成する周囲部に一対が対称に設けられている。
また、この排気ボタン9は、カバー15に形成された案内溝に案内されて弁座1aのシール面と平行にスライド(往復動)できるように設けられている。9bは先端ガイド部であり、排気ボタン9の前記操作部とは反対側の先端に突き出て設けられ、カバー15に形成された孔に嵌っており、その孔によって往復動が案内される。このように排気ボタン9は、両側で案内されることで、安定的に往復動できる。
【0026】
また、排気ボタン9を押すことを止めると、戻しばね11によって排気ボタン9は元の位置へ戻り、弁体5が弁圧ばね8によってバルブベース1へ押し付けられ、排気は停止する。なお、戻しばね11は、カバー15の側面と、排気ボタン9の操作部との間に配されており、常時排気ボタン9を外側へ付勢している。
これによれば、ダイバーは、手で握るようにして排気ボタン9に指をかけて押すことができるため、より適切且つ確実に操作できる。
【0027】
図4及び5は、通常の自動排気がされないようにロックされた状態(ロックモード)を示す断面図である。また、図7は自動排気モードのバルブ内部を上面側から見た断面図であり、図8はロックモードのバルブ内部を上面側から見た断面図である。
【0028】
ロック板ばね12は、バネ性を持った素材によって形成されている。このロック板ばね12は、ロック切り替えレバー13によって弁体5と同心に回転する。
なお、図1、7等に示すように、15aは案内突起であり、カバー15の天板部内面に突起しており、ロック板ばね12が回転できるようにガイドする。
15bは保持用凸部であり、カバー15の天板部内面に部分的(2箇所)に突起し、ロック板ばね12を前記天板部内面から所定の間隔を離した位置に保持するように設けられている(図1、5、6等参照)。つまり、ロック板ばね12の全周のうちの大部分は、保持用凸部15bに当接されず、前記天板部内面との間で自由に弾性変形できる状態になっている。
また、ロック切り替えレバー13は、カバー15に形成されたスリット等によって、弁座1aのシール面と平行な所要の区間について往復移動が可能に案内されている。
なお、図4、7等に示すように、ロック板ばね12に形成されたピン部12bが、ロック切り替えレバー13の連携孔13aに嵌っていることで、両者が連携(連動)されている。
【0029】
ロック切り替えレバー13を操作してロック状態にすると、ロック板ばね12の内突起12aは、弁体の外突起5aを介して弁体5を上方から押さえつける状態となる(図4、8参照)。ロック板ばね12の押し付け力は、弁圧ばね8の押し付け力より大きく、通常のダイビング時は排気しない。しかし、陸上などでドライスーツ内へ過剰に空気を入れ、ドライスーツ内圧を一定以上に高めた場合は、このロック板ばね12の弁体5への押し付け力(付勢力)よりもドライスーツ内圧による弁体5の押し上げ力が勝る。このため、ロック板ばね12の付勢力に抗して弁体5は上方へ移動し、弁シート6から空気が排出される(図5参照)。つまり、図5に示すように、ロック板ばね12が弁体5によって押されて変形し、弁体5が弁座1aから離れる方向へ移動する。
【0030】
本実施例のバルブの分解洗浄時は、カバーロックつまみ14を押し上げながら、カバー15を約60度回転させることにより、カバー15とバルブベース1とに設けたバヨネット部1c、15cが外れてカバー15を外すことができる(図3、6参照)。この状態で、弁体5及び弁圧ばね8は、バルブベース1に残っているが、指でつまんで持ち上げるだけで簡単に外すことができる。
【0031】
十分に洗浄し、弁体5に設けた凸部5bとバルブベース1に装填してあるスポークリング7の凹部7bを合わせて装填する(図3、6等参照)。そして、カバー15に設けた指標とバルブベース1に設けた指標を合わせてカバー15を被せ、カバーロックつまみ14がロックするまで約60度回転させることで、使用状態に組み戻すことができる。
【0032】
このように、極めて簡単に分解・洗浄・組み立てができることで、ダイバーは使用後に容易に洗浄することができ、弁シート6に付着した繊維くずや海水が乾燥して付着した固形物等を洗い流し、確実な防水状態及び作動状態を維持することが可能である。
【0033】
そして、手動排気ボタンをスライド式とし、さらに自動排気のロックを弁体5上方の板ばね部材(ロック板ばね12)の移動で行なうことで、全体の構成を単純化し、厚みを極めて薄くすることができたばかりか、部品点数も少なくすることができ、製造コストを削減できる。
【0034】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るドライスーツ用排気バルブの最良の形態例における自動排気モードの非排気時の状態を示す断面図である。
【図2】自動排気モードの排気時の状態を示す断面図である。
【図3】手動排気時の状態を示す断面図である。
【図4】通常の自動排気がされないロックモードの状態を示す断面図である。
【図5】ロックモードにおいてスーツ内圧が高い場合の状態を示す断面図である。
【図6】自動排気モードの非排気時の状態を示す別角度の断面図である。
【図7】自動排気モードのバルブ内部を上面側から見た断面図である。
【図8】ロックモードのバルブ内部を上面側から見た断面図である。
【図9】同形態例の外観形状を示す側面図である。
【図10】同形態例の外観形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 バルブベース
3 生地
3a 開口
5 弁体
5a 外突起(従動カム部)
6 弁シート
7 スポークリング
8 弁圧ばね(弁圧用ばね部材)
9 排気ボタン(手動排気ボタン)
9a カム部
11 戻しばね
12 ロック板ばね(リング状の板ばね)
12a 内突起
13 ロック切り替えレバー(レバー部)
15 カバー(カバー部)
16 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキューバダイビング用のドライスーツにおける開口の周縁部を形成すると共に、該周縁部が弁座として設けられたバルブベースと、
該バルブベースを覆うように設けられると共に、前記ドライスーツの外部へ空気を排気するための排気口が形成されたカバー部と、
前記弁座のシール面に対して実質的に直交する方向へ往復動可能に設けられ、該弁座のシール面に当接して前記開口を塞ぐことで水密状態にする弁体と、
該弁体と前記カバー部との間に配され、常時においては前記弁体を前記弁座に当接するように付勢し、ドライスーツの内圧が外圧よりも一定差圧以上に上昇した際には前記弁体及び前記弁座による水密状態の解除を許容する弁圧用ばね部材と、
前記弁体の往復動方向と実質的に直交する横方向へ手動操作によって往復移動可能に設けられ、前記弁体に一体的に設けられた従動カム部に接して該弁体を前記弁圧用ばね部材の付勢力に抗して前記弁座から離れる方向へ移動させ、水密状態を解除させるように作動するカム部が設けられた手動排気ボタンとを具備することを特徴とするドライスーツ用排気バルブ。
【請求項2】
前記手動排気ボタンは、手動によって横方向内側へ押し込まれることで水密状態を解除させるように作動し、戻しばねによって元の位置に復帰することを特徴とする請求項1記載のドライスーツ用排気バルブ。
【請求項3】
前記弁体及び前記カバー部の双方に接する位置と接しない位置との間で変位可能に配され、前記弁体及び前記カバー部の双方に接する状態に位置した際には、潜水時の自動的な排気を阻止するように前記弁体が前記弁座から離れる方向の移動を阻止すると共に、一定差圧以上ではドライスーツ内部の空気を外部へ逃がすように前記弁体が前記弁座から離れる方向の移動を許容可能に、前記弁圧用ばね部材よりもばね圧が高く設けられた弾性ロック部材を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のドライスーツ用排気バルブ。
【請求項4】
前記弾性ロック部材は、前記弁体と同心に配置されたリング状の板ばねであり、該リング状の板ばねの一部若しくはこれに連動する部分であるレバー部がバルブの外部に露出され、該レバー部が手動操作されて回転されることで、前記弁体及び前記カバー部の双方に接する位置と接しない位置との間で変位可能に設けられていることを特徴とする請求項3記載のドライスーツ用排気バルブ。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のドライスーツ用排気バルブが設けられたことを特徴とするドライスーツ等の潜水具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−265606(P2008−265606A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113076(P2007−113076)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(308028016)日本潜水機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】