説明

ドライダウン対応型校正システム、および、ドライダウン対応型校正方法

【課題】本発明の課題は、ドライダウンした印刷製品と、視覚的な色の一致が得られる校正紙を作成するドライダウン対応型校正システム、方法を提供することである。
【解決手段】印刷直後のカラーチャートとドライダウンした印刷カラーチャートと校正カラーチャートの測色データを用いて、測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成手段と、印刷デバイスプロファイルを参照して、製版データを測色データに変換する測色データ作成手段と、前記ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ作成手段と、校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成手段と、を備えるドライダウン対応型校正システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷製品のドライダウンを考慮した、ドライダウンした印刷発色の校正紙を作成する校正システム、および、校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製版工程では、ドライダウンした印刷製品の色と、校正紙の色と、が一致するように、ドライダウン対応型校正装置の製版データの色情報を補正処理して、ドライダウンした印刷色の校正紙を作成している。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ドライダウンした印刷の測定値を基準値として定めて、ドライダウン前の印刷物の測色値を用いて、ノイゲバウアー式を用いて近似計算して、基準値と比較して、条件を満たしているか否かを判定する技術が開示されている。(従来技術1)
【特許文献1】特許3661230号公報(13−14頁、図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在のデジタル製版工程では、ICCプロファイルを用いて、製版データの色補正処理を行っていているが、特許文献1では、ICCプロファイルに対応していないために、通常の作業形態になじまないという欠点があった。さらには、ICCプロファイルとは異なる特別の色補正処理用データを用いた作業手順を用いなければならず、作業内容が煩雑になるという問題点があった。
【0005】
ここで、ICCプロファイルとは、ICC(International Color Consortium)が提唱するファイル構造に沿って作成された電子データである。デバイスプロファイルと称するICCプロファイルは、その内部に、デバイス(たとえば、印刷装置やドライダウン対応型校正装置)に依存する色材量(CMYKで定義した値:以下CMYK値、あるいは、RGBで定義した値)と、デバイスに依存しない測色値(CIE L***の値:以下L***値、あるいは、CIE XYZの値)との対応関係を表す2つのテーブル、CMYK値からL***値への色変換テーブルと、L***値からCMYK値への色変換テーブルとを、備える。
【0006】
本発明は、このような従来技術を考慮してなされたものであって、本発明の課題は、カラー校正作業において、デジタルドライダウン対応型校正装置による校正紙と、ドライダウンした印刷製品と、に視覚的な色の一致が得られように、色補正処理を備えるデジタルドライダウン対応型校正装置、および、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。すなわち、請求項1に記載の発明は、ドライダウン対応ツール作成装置とドライダウン対応型校正装置とがネットワークで接続されて構成されるドライダウン対応型校正システムであって、前記ドライダウン対応ツール作成装置は、印刷直後のカラーチャートを測色した測色データと、ドライダウンしたカラーチャートを測色した測色データと、校正カラーチャートを測色した測色データと、カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、製版の網点データと印刷装置の色特性に適合させた測色データと印刷装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた印刷デバイスプロファイルと、製版の網点データと色特性に適合させた測色データと校正装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた校正デバイスプロファイルと、を記憶する記憶手段と、カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定手段と、カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成手段と、印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成手段と、前記作成されたドライダウン補正関数と、前記デバイスプロファイル作成手段にて作成された印刷デバイスプロファイルと校正デバイスプロファイルと、を送信するツール送信手段と、を備えるツール作成装置であって、前記ドライダウン対応型校正装置は、網点データを含む製版データと、前記印刷デバイスプロファイルと前記校正デバイスプロファイルと、ドライダウン補正関数と、を記憶する記憶手段と、前記送信されたドライダウン補正関数と印刷デバイスプロファイルと校正デバイスプロファイルとを受信するツール受信手段と、製版データを受信する製版データ受信手段と、製版データを取得して、前記印刷デバイスプロファイルを参照して、この製版データを測色データに変換する測色データ作成手段と、ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ作成手段と、前記校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成手段と、製版データを取得して、校正紙を印刷する校正紙作成手段と、を備えるドライダウン対応型校正装置であることを特徴とするドライダウン対応型校正システムである。
【0008】
ここで、印刷デバイスプロファイルと校正デバイスプロファイルとは、ICCプロファイルである。ICCプロファイルの2つの色変換テーブルを用いることで、CMYK値を、LAB値を経由させて、デバイスの色特性に適合させたCMYK値に色変換することができる。このとき、本発明においては、経由するL***値に加工処理を施している。つまり、製版データ(CMYK値)は、印刷デバイスプロファイルの色変換テーブルを参照して、測色データ(L***値)に変換する。次に、この測色データ(L***値)にドライダウン加工処理を施す。最後に、ドライダウン加工処理した測色データ(L***値)を、校正デバイスプロファイルの色変換テーブルを参照して、校正装置の色特性に適合させたCMYK値に色変換することができる。したがって、ドライダウン対応型校正装置は、製版データから、ドライダウンした印刷物と同じ発色のドライダウン用校正紙を印刷することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、網点データを含む製版データと、前記印刷デバイスプロファイルと前記校正デバイスプロファイルと、ドライダウン補正関数と、を記憶する記憶手段と、製版データを取得して、印刷デバイスプロファイルを参照して、この製版データを測色データに変換する測色データ作成手段と、ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ作成手段と、校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成手段と、製版データを取得して、校正紙を印刷する校正紙作成手段と、を備えることを特徴とするドライダウン対応型校正装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、印刷直後のカラーチャートを測色した測色データと、ドライダウンしたカラーチャートを測色した測色データと、校正カラーチャートを測色した測色データと、カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、製版の網点データと印刷装置の色特性に適合させた測色データと印刷装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた印刷デバイスプロファイルと、製版の網点データと色特性に適合させた測色データと校正装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた校正デバイスプロファイルと、を記憶する記憶手段と、カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定手段と、カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成手段と、印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成手段と、備えることを特徴とするドライダウン対応ツール作成装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、網点データを含む製版データと、カラーチャートを測色した測色データと、カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、網点データと測色データとを対応させたデバイスプロファイルと、を用いるドライダウン対応型校正方法であって、カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定ステップと、カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成ステップと、印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成ステップと、製版データを取得して、前記印刷デバイスプロファイルを用いて、この製版データを測色データに変換する測色データ変換ステップと、ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ変換ステップと、前記校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成ステップと、製版データを取得して、校正紙を印刷するドライダウン用校正紙作成ステップと、を含んだ手順でなされることを特徴とするドライダウン対応型校正方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、コンピュータに組込むことによって、コンピュータを請求項1から、請求項3のいずれか1項に記載のドライダウン対応型校正システム、または、ドライダウン対応型校正装置、または、ドライダウン対応ツール作成装置として動作させるコンピュータプログラムである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、ICCプロファイルを用いたドライダウン対応型校正装置を用いて、ドライダウン用校正紙を、容易簡便に、作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
図1は、本発明のドライダウンする印刷物の校正をするドライダウン対応型校正システムの大まかな構成の説明図である。
ドライダウン対応型校正システム1は、ドライダウン対応ツール作成装置100とドライダウン対応型校正装置300とDTP装置500と印刷装置700とが、ネットワーク900で接続されて構成されている。
【0016】
ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷デバイスプロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199とを作成して、送信する。
ドライダウン対応型校正装置300は、印刷デバイスプロファイル197とドライダウン補正関数199と校正デバイスプロファイル195とを保持して、製版データ599を、受信して、印刷校正紙399a、または、ドライダウン用校正紙399bを作成する。
【0017】
DTP装置500は、製版データ599を作成して、送信する。
印刷装置700は、印刷デバイスプロファイル791を保持して、製版データ599を受信して、印刷物799を作成する。
印刷校正紙399aと印刷直後の印刷物799とは、同じ発色である。
ドライダウン用校正紙399bとドライダウンした印刷物799とは、同じ発色である。
【0018】
図2は、ドライダウン色補正システム大まかな処理の流れを説明する図である。印刷機700は、印刷デバイスプロファイルを参照しないで、印刷カラーチャート799を印刷する(図2(ア))。ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷直後の印刷カラーチャート799を測色して、測色データ193を作成して、印刷デバイスプロファイル197を作成する。(図2(イ))。
【0019】
校正機300は、校正デバイスプロファイル195を参照しないで、校正カラーチャート399を印刷する(同(カ))。ドライダウン対応ツール作成装置100は、校正カラーチャート399を測色して、測色データ193を作成して、校正デバイスプロファイル195を作成する(同(キ))。
【0020】
ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷直後の印刷カラーチャート799の測色データとドライダウンした印刷カラーチャートの測色データを用いて、ドライダウン補正関数199を作成する(同(サ))。作成した印刷プロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199をドライダウン対応型校正装置300に送信する(同(タ))。ドライダウン対応型校正装置300は、印刷プロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199を受信して、これを登録する(同(ナ))。
【0021】
ドライダウン対応型校正装置300は、製版データ599を受信して、印刷直後の印刷物と同じ発色になる印刷校正紙399aを印刷する。また、ドライダウン対応型校正装置300は、印刷プロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199と受信した製版データ599を用いて、ドライダウンした印刷物と同じ発色のドライダウン用校正紙399bを作成する(同(ハ))。
【0022】
なお、印刷校正紙399aは、たとえば、印刷装置700直後の印刷物の校正に用いる。ドライダウン用校正紙399bは、たとえば、納入して、ドライダウンしている印刷物の校正に用いる。
【0023】
図3は、本発明によるドライダウン対応型校正システムの詳細な構成図である。ドライダウン対応型校正システム1は、ドライダウン対応ツール作成装置100とドライダウン対応型校正装置300とがネットワークで接続されて構成される。ドライダウン対応ツール作成装置100は、分光測定手段130と、デバイスプロファイル作成手段110と、ドライダウン補正関数作成手段120と、ツール送信手段170と、記憶手段190と、を備える。記憶手段190は、製版データ599と、測色データ193と、カラーチャート基準データ191と、校正デバイスプロファイル195と、印刷デバイスプロファイル197と、ドライダウン補正関数199と、を記憶する。
【0024】
製版データ599は、YMCK値の網点データである。測色データ193は、カラーチャートを測色したL***値である。カラーチャート基準データは、カラーチャートの基準測色データ(基準L***値)である。校正デバイスプロファイル195は、製版データの網点データ(YMCK値)とドライダウン対応型校正装置の測色データ(L***値)とドライダウン対応型校正装置の網点データ(YMCK値)を対応させたデータである。印刷デバイスプロファイル197は、製版データの網点データ(YMCK値)と印刷装置の測色データ(L***値)とを対応させたデータである。ドライダウン補正関数199は、数式である。
【0025】
分光測定段130は、カラーチャート799を分光測定して、測色データ193を作成する。
【0026】
デバイスプロファイル作成手段110は、カラーチャートの測色データ193と、カラーチャート基準データ191とを取得して、デバイスプロファイルを作成する。詳細には、デバイスプロファイル作成手段110は、印刷装置で印刷した直後のカラーチャートから作成した測色データ193とカラーチャート基準データとを取得して、印刷デバイスプロファイル197を作成する。同様にして、デバイスプロファイル作成手段110は、ドライダウン対応型校正装置で印刷したカラーチャートから作成した測色データ193とカラーチャート基準データとを取得して、校正デバイスプロファイル195を作成する。
【0027】
ドライダウン補正関数作成手段120は、印刷直後のカラーチャートの測色データ193と、ドライダウンしたカラーチャートの測色データ193とを用いて、ドライダウン前の測色データ193からドライダウンした測色データ193を算出するドライダウン補正関数199を作成する。ツール送信手段170は、作成した印刷デバイスプロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199を送信する。
【0028】
分光測定手段130と、デバイスプロファイル作成手段110と、ドライダウン補正関数作成手段120と、ツール送信手段170と、は、コンピュータプログラムである。製版データ599と、測色データ193と、カラーチャート基準データと、校正デバイスプロファイル195と、印刷デバイスプロファイル197と、ドライダウン補正関数199と、は、コンピュータが可読なデータである。記憶手段190は、メモリである。
【0029】
ドライダウン対応型校正装置300は、ツール受信手段310と、測色データ作成手段322と、ドライダウン用測色データ作成手段324と、ドライダウン用の製版データ作成手段326と、記憶手段390と、を備える。記憶手段390は、製版データ599と測色データ193とドライダウン補正関数199を記憶する。
【0030】
ツール受信手段310は、印刷デバイスプロファイル197と校正デバイスプロファイル195とドライダウン補正関数199を受信する。
【0031】
前記測色データ作成手段322は、製版データを取得して、印刷デバイスプロファイルを参照して、この製版データのYMCK値に対応するLAB値を選択して、LAB値を含む測色データ193を作成する。前記ドライダウン用測色データ作成手段324は、ドライダウン補正関数199を用いて、前記測色データ193をドライダウン用測色データ193に変換する。
前記ドライダウン用の製版データ作成手段326は、校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データ193からドライダウン用の製版データを作成する。
【0032】
このようにして、測色データ作成手段322と、ドライダウン用測色データ作成手段324と、ドライダウン用の製版データ作成手段326とを組み合わせることで、ドライダウン前の製版データ599から、ドライダウン発色をするドライダウン用の製版データ599を作成する。
【0033】
校正紙作成手段330は、製版データ599を取得して、印刷用校正紙を、印刷する。また、校正紙作成手段330は、ドライダウン用の製版データ599を取得して、ドライダウン用校正紙399bを、印刷する。
【0034】
ツール受信手段310と、測色データ作成手段322と、ドライダウン用測色データ作成手段324と、ドライダウン用の製版データ作成手段326とは、コンピュータプログラムである。記憶手段190は、メモリである。
【0035】
図4は、本発明によるドライダウン対応ツール作成装置100の処理概要を説明する図である。印刷装置700は、カラーチャートデータ599を用いて、印刷カラーチャート799を印刷する(図4(1))。ドライダウン対応型ドライダウン対応型校正装置は、カラーチャートデータ599を用いて、校正カラーチャート399を印刷する(同(2))。
【0036】
ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷直後の印刷カラーチャート799と充分に時間が経過して(たとえば、17時間後)ドライダウンした印刷カラーチャート799と校正カラーチャート399とを分光器130を用いて、測色して、測色データ193を作成する(同(3))。
【0037】
ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷直後の印刷カラーチャート799の測色データ193から、印刷デバイスプロファイル197を作成する。ドライダウン対応ツール作成装置100は、校正カラーチャート399の測色データ193から、校正デバイスプロファイル195を作成する。ドライダウン対応ツール作成装置100は、印刷直後の印刷カラーチャート799の測色データ193と、ドライダウンした印刷カラーチャート799と、からドライダウン補正関数199を作成する(同(4))。
【0038】
図5と図6は、印刷カラーチャートの測定データの例である。図5は、印刷直後印刷カラーチャートの測色データ193である。図6は、印刷から17時間後のドライダウンした印刷カラーチャートの測色データ193である。たとえば、図5の印刷直後印刷カラーチャートの測色データ193の「C」の値は、「L*=52.92」、「a*= -36.04」、「 b*= -51.59 」であって、図6の17時間後のドライダウンした印刷カラーチャートの測色データ193の「C」の値は、「L*=53.38 」、「 a*= -36.31」「 b*= -51.01」であるものが例示されている。
【0039】
図7は、ドライダウン補正関数の例である。ドライダウン補正関数は、印刷直後印刷物の測色値「L***値」から、ドライダウンした印刷物の測色値「L*’a*’b*’値」を算出する2次関数である。図7には、補完値L*’を算出するドライダウン補正関数f(L*’)が、「 f(L*’)= -0.3589 + 1.276087×L* + 0.056779 × a* -0.05104 × b* -0.0025 × (L*)2 - 0.00117 × (a*)2 - 0.00167 × (b*)2 - 0.00124 × L*×a* + 0.001696 × L*×b* + 0.000459 × a*×b* 」であるものが例示されている(図7(1))。さらに、補完値a*’を算出するドライダウン補正関数f(a*’)が、「f(a*’)= -0.18963 - 0.00358 ×L* + 0.977034 × a* + 0.008911 × b* - 0.00013 × (L*)2 + 0.000144 × (a*)2 + 0.000252 × (b*)2 + 0.000298 × L*×a* - 0.00016 × L*×b* - 0.00033 × a*×b* 」であるものが例示されている(同(2))。また、補完値b*’を算出するドライダウン補正関数f(b*’)が、「f(b*’)= 2.200389 - 0.25309 ×L* + 0.012552 × a* + 1.051908 × b* + 0.002153 ×(L*)2 + 0.000942 ×(a*)2 + 0.001261 ×(b*)2 - 0.00027 × L*×a* - 0.00163 × L*×b* - 0.00036 × a*×b* 」であるものが例示されている(同(3))。
【0040】
なお、このドライダウン補正関数は、非線形の影響を考慮して、 2次重回帰分析により算出した。(算出手順の詳細は、後述する。)また、補間精度は、2次重回帰分析式から算出したドライダウン補正関数で、実用上は問題ないが、より高い補間精度を求めたいときには、高次数の重回帰分析式からドライダウン補正関数を算出して、それを使用すればよい。
【0041】
図12は、重回帰分析(2次)によるドライダウン補正関数の算出手順の説明図である。
2次重回帰分析モデルの一般式は、「Yi0i+ α1i×L*i+ α2i× a*i+ α3i× b*i+ α4i×(L*i)2 + α5i(a*i)2 + α6i× (b*i)2 + α7i×L*i× a*i + α8i×L*i× b*i + α9i× a*i× b*i」である(図12(1))。
【0042】
ここで、「Yi 」は、「ドライダウンした印刷カラーチャートの各色の、L*‘の値、または、a*‘の値、または、 b*‘の値」である。「αi」は、「L*の値のときの補完係数、または、a* の値のときの補完係数、または、 b* の値のときの補完係数」である。「L*i」は、「印刷カラーチャートの各色の、L*の値」である。「a*i 」は、「 印刷カラーチャートの各色の、a*の値」である。「b*i 」は、「 印刷カラーチャートの各色の、b*の値」である。
【0043】
印刷カラーチャートの「C」色の測色値が、それぞれ、「L*i=52.92」、「a*i=-36.04」、「b*i=-51.59」であって、ドライダウンした印刷カラーチャートの「C」色の測色値が、「L*‘=53.38」である。このとき、「(L*i)2=2800.526」、 「(a*i)2=1298.882」、 「(b*i)2=2661.528」、「L*i× a*i=-1907.24」、「L*i× b*i=-2730.14」、「a*i× b*i=1859.304」である(同(2))。
【0044】
たとえば、上記の印刷カラーチャート「C」色の値を、2次重回帰分析モデルの一般式に、代入すると、「 (53.38 )= α0i+ α1i×( 52.92)+ α2i×( -36.04 )+ α3i× (-51.59 )+ α4i×(2800.526) + α5i×( 1298.882) + α6i× (2661.528) + α7i×( -1907.24 ) + α8i×( -2730.14 ) + α9i× ( 1859.304 ) 」となる(同(3))。
【0045】
このようにして、印刷カラーチャートの全ての色の測色値を、2次重回帰分析モデルの一般式に、代入して、左辺と右辺の差の自乗式Gを作成して、これを、補完係数「α0i、 α1i、・・、 α9i」で、偏微分して、10個の連立1次方程式を得る(同(4))。
【0046】
ここで、左辺と右辺の差の自乗式Gの一般式は、次のようになる。「G=総和 {Yi−(α0i+ α1i×L*i+ ・・ + α9i× a*i× b*i)}2 」である。また、たとえば、自乗式Gを補完係数α0iで偏微分した1次方程式は、「 ΦG/Φ α0i=−2 × 総和 {Yi−(α0i+ α1i×L*i+ ・・ + α9i× a*i× b*i)} 」である。
【0047】
算出した補完係数は、「α0i= -0.3589」、「α1i= 1.276087」、「α2i= 0.056779」、「α3i= -0.05104」、「α4i= -0.0025」、「α5i= -0.00117」、「α6i=-0.00167」、「α7i=-0.00124 」、「α8i=0.001696 」、「α9i=0.000459 」となる(同(5))。
【0048】
図8は、ドライダウン対応型校正装置300のドライダウン用校正紙作成処理の流れの説明図である。ドライダウン対応型校正装置300は、印刷デバイスプロファイルを用いて、製版データのCMYK値をL***値に変換する(図8(1))。ドライダウン補正関数を用いて、測色データ(L***値)をドライダウン用の測色データ(L*’a*’b*’値)に変換する(同(2))。校正デバイスプロファイルを参照して、ドライダウン用測色データ(L*’a*’b*’値)を校正装置の発色特性に合わせたドライダウン用製版データ(CMYK値)に変換する(同(3))。校正装置の発色特性に合わせたドライダウン用製版データ(CMYK値)を用いて、校正紙を作成する(同(4))。
【0049】
印刷デバイスプロファイル791は、印刷機指定情報(たとえば、印刷機名)に関連づけられたファイルであって、網点情報(たとえば、Y、M、C、Kの4色の網点面積率の組合せ)と測色情報(たとえば、L***値)とを対応付けた表形式のデバイスプロファイルデータを記録する。なお、Yは、黄色、Mは、紅色、Cは、藍色、Kは、墨色(黒色)をそれぞれ意味する。
【0050】
図9は、目標色カラーチャート799の説明図である。目標色カラーチャート799は、目標色カラーパッチ番号799aを関連付けた目標色カラーパッチ799bから構成されている。目標色カラーパッチ799bは、網点100%の基本色を組み合わせた目標色カラーパッチデータを印刷したものである。そこで、たとえば、基本色がY、M、C、Kの場合には、目標色カラーパッチ799bの色は、単色で構成する目標色カラーパッチが4色と、2色で構成する目標色カラーパッチが6色と、3色で構成する目標色カラーパッチが4色と、4色で構成する目標色カラーパッチが1色と無色(用紙色)が1色の16色となる。
【0051】
ちなみに、この16色の基本色の組み合わせ方は、単色の組み合わせが“Y100%+M0%+C0%+K0%”、“M100%+Y0%+C0%+K0%”、“C100%+Y0%+M0%+K0%”、“K100%+Y0%+M0%+C0%”の構成であって、2色の組み合わせが“Y100%+M100%+C0%+K0%”、“Y100%+C100%+M0%+K0%”、“Y100%+K100%+M0%+C0%”、“M100%+C100%+Y0%+K0%”、“M100%+K100%+Y0%+C0%”、“C100%+K100%+Y0%+M0%”の構成であって、3色の組み合わせが“Y100%+M100%+C100%+K0%”、“Y100%+M100%+K100%+C0%”、“Y100%+C100%+K100%+M0%”、“M100%+C100%+K100%+Y0%”の構成であって、4色の組み合わせが“Y100%+M100%+C100%+K100%”であって、無色の組み合わせが“Y0%+M0%+C0%+K0%”である。
【0052】
ただし、たとえば、“Y100%”とは、網点100%の基本色Yを表している。“Y0%”とは、基本色Yが存在しないことを表している。
【0053】
図10は、印刷デバイスプロファイル791のCMYK値−L***値変換テーブルの構造図である。CMYK値−L***値変換テーブル197aは、製版データの網点情報(CMYK値)をデバイスに依存しない測色値情報(L***値)に変換する。CMYK値−L***値変換テーブル197aは、“データ識別”と“網点情報”と“測色情報”とを対応付けた表形式のデータである。“データ識別”は、CMYK値−L***値変換テーブル197aの各データを識別するユニークな番号であり、“網点情報”は、製版データのYMCK値(網点面積値)であり、“測色情報”は、デバイスに依存しない測色値(L***値)である。
【0054】
たとえば、“データ識別=841”の印刷デバイスプロファイルのデータは、“網点情報”が、“C=1.0000、M=1.0000、Y=0.0000、K=0.0000”である“測色情報”は、“L*値=22.670037、a*値=19.625000、b*値=-48.503906”である。
【0055】
図11は、校正デバイスプロファイル195のL***値−CMYK値変換テーブル195bの構造図である。L**B値−CMYK値変換テーブル195bは、デバイスに依存しない測色値(L***値)をドライダウン対応型校正装置300の発色特性に合わせた網点情報(CMYK値)に変換する。L***値−CMYK値変換テーブル195bは、“データ識別”と“測色情報”と“網点情報”とを対応付けた表形式のデータである。
各項目の定義は、CMYK値−L***値変換テーブル197aの各項目の定義と同じである。
【0056】
たとえば、“データ識別=2708”の印刷デバイスプロファイルのデータは、 “測色情報” が “L*値=49.476103、a*値=-72.085938、b*値=28.070312”である“網点情報” は、 “C=0.9218、M=0.0000、Y=0.9467、K=0.0000”である。
【0057】
以上詳しく説明したように、本願発明によれば、ICCプロファイルを用いたドライダウン対応型校正装置を用いて、ドライダウン用校正紙を、容易簡便に、作成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ドライダウンする印刷物の校正をするドライダウン対応型校正システムの概要
【図2】ドライダウン対応型校正システムの大まかな処理の流れ
【図3】本発明によるドライダウン対応ツール作成装置の詳細な構成図
【図4】本発明によるドライダウン対応ツール作成装置100の概要
【図5】印刷直後印刷カラーチャートの測色データ
【図6】印刷から17時間後のドライダウンした印刷カラーチャートの測色データ
【図7】ドライダウン補正関数の説明図
【図8】ドライダウン対応型校正装置のドライダウン用校正紙作成処理の流れ
【図9】目標カラーチャートの例
【図10】印刷デバイスプロファイル791のCMYK値−L***値変換テーブル構造図
【図11】校正デバイスプロファイル195のL***値−CMYK値変換テーブル構造図
【図12】重回帰分析によるドライダウン補正関数の算出手順の説明図
【符号の説明】
【0059】
1 ドライダウン対応型校正システム
100 ドライダウン対応ツール作成装置
130 分光測定手段
110 デバイスプロファイル作成手段
120 ドライダウン補正関数作成手段
170 ツール送信手段
190 記憶手段
193 測色データ
195 校正デバイスプロファイル
197 印刷デバイスプロファイル
197a CMYK値−L***値変換テーブル
195b L***値−CMYK値変換テーブル
199 ドライダウン補正関数
300 ドライダウン対応型校正装置
310 ツール受信手段
322 測色データ作成手段
324 ドライダウン用測色データ作成手段
326 ドライダウン用の製版データ作成手段
390 記憶手段
399a 印刷校正紙
399b ドライダウン用校正紙
500 DTP装置
599 製版データ
700 印刷装置
791 印刷デバイスプロファイル
799 印刷物、印刷カラーチャート
799a 目標色カラーパッチ番号
799b 目標色カラーパッチ
900 ネットワーク






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライダウン対応ツール作成装置とドライダウン対応型校正装置とがネットワークで接続されて構成されるドライダウン対応型校正システムであって、
前記ドライダウン対応ツール作成装置は、
印刷直後のカラーチャートを測色した測色データと、
ドライダウンしたカラーチャートを測色した測色データと、
校正カラーチャートを測色した測色データと、
カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、
製版の網点データと印刷装置の色特性に適合させた測色データと印刷装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた印刷デバイスプロファイルと、
製版の網点データと色特性に適合させた測色データと校正装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた校正デバイスプロファイルと、
を記憶する記憶手段と、
カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定手段と、
カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成手段と、
印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成手段と、
前記作成されたドライダウン補正関数と、前記デバイスプロファイル作成手段にて作成された印刷デバイスプロファイルと校正デバイスプロファイルと、を送信するツール送信手段と、
を備えるツール作成装置であって、
前記ドライダウン対応型校正装置は、
網点データを含む製版データと、
前記印刷デバイスプロファイルと前記校正デバイスプロファイルと、
前記ドライダウン補正関数と、
を記憶する記憶手段と、
前記送信されたドライダウン補正関数と印刷デバイスプロファイルと校正デバイスプロファイルとを受信するツール受信手段と、
製版データを受信する製版データ受信手段と、
製版データを取得して、前記印刷デバイスプロファイルを参照して、この製版データを測色データに変換する測色データ作成手段と、
ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ作成手段と、
前記校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成手段と、
製版データを取得して、校正紙を印刷する校正紙作成手段と、
を備えるドライダウン対応型校正装置である、
ことを特徴とするドライダウン対応型校正システム。
【請求項2】
網点データを含む製版データと、
前記印刷デバイスプロファイルと前記校正デバイスプロファイルと、
ドライダウン補正関数と、
を記憶する記憶手段と、
製版データを取得して、印刷デバイスプロファイルを参照して、この製版データを測色データに変換する測色データ作成手段と、
ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ作成手段と、
校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成手段と、
製版データを取得して、校正紙を印刷する校正紙作成手段と、
を備えることを特徴とするドライダウン対応型校正装置。
【請求項3】
印刷直後のカラーチャートを測色した測色データと、
ドライダウンしたカラーチャートを測色した測色データと、
校正カラーチャートを測色した測色データと、
カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、
製版の網点データと印刷装置の色特性に適合させた測色データと印刷装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた印刷デバイスプロファイルと、
製版の網点データと色特性に適合させた測色データと校正装置の色特性に適合させた網点データとを対応させた校正デバイスプロファイルと、
を記憶する記憶手段と、
カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定手段と、
カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成手段と、
印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成手段と、
備えることを特徴とするドライダウン対応ツール作成装置。
【請求項4】
網点データを含む製版データと、
カラーチャートを測色した測色データと、
カラーチャートの基準測色データを含むカラーチャート基準データと、
網点データと測色データとを対応させたデバイスプロファイルと、
を用いるドライダウン対応型校正方法であって、
カラーチャートを分光測定して、測色データを作成する分光測定ステップと、
カラーチャートの測色データと、カラーチャート基準データとを取得して、デバイスプロファイルを作成するデバイスプロファイル作成ステップと、
印刷直後のカラーチャートの測色データと、ドライダウンしたカラーチャートの測色データと、から、ドライダウン補正関数を作成するドライダウン補正関数作成ステップと、
製版データを取得して、前記印刷デバイスプロファイルを用いて、この製版データを測色データに変換する測色データ変換ステップと、
ドライダウン補正関数を用いて、前記測色データをドライダウン用測色データに変換するドライダウン用測色データ変換ステップと、
前記校正デバイスプロファイルを用いて、前記ドライダウン用測色データからドライダウン用の製版データを作成するドライダウン用の製版データ作成ステップと、
製版データを取得して、校正紙を印刷するドライダウン用校正紙作成ステップと、
を含んだ手順でなされることを特徴とするドライダウン対応型校正方法。
【請求項5】
コンピュータに組込むことによって、コンピュータを請求項1から、請求項3のいずれか1項に記載のドライダウン対応型校正システム、または、ドライダウン対応型校正装置、または、ドライダウン対応ツール作成装置として動作させるコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−176015(P2007−176015A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377322(P2005−377322)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】