説明

ドライ真空ポンプ装置の冷却構造、及び冷却方法

【課題】インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を冷却水等の冷媒液による高効率冷却手段で冷却することにより、冷却構造の小型化が可能で、装置全体の小型化が可能なドライ真空ポンプ装置の冷却構造、及び冷却方法を提供すること。
【解決手段】整流器で交流電力を直流電力に変換し、該直流電力をインバータ回路で交流に変換し、ドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に供給する電源装置と、ドライ真空ポンプと駆動用電動機と組み込んだポンプ装置を一体のインクロージャに収容したドライ真空ポンプ装置の冷却構造であって、大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャ(インバータ部16)と、制御回路を収納した第2の電装エンクロージャ(制御回路部19)と、を備え、第1の電装エンクロージャは冷媒液による高効率冷却手段15で冷却し、第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ真空ポンプ装置の冷却構造、及び冷却方法に関し、特に冷却構造体を最小限としつつ、簡素で効果的な冷却を行うことができるドライ真空ポンプ装置の冷却構造、及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧から動作が可能で、クリーンな真空環境が容易に得られるドライ真空ポンプが、半導体製造設備等の幅広い分野で使用されている。このようなドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に駆動電力を供給する電源装置にはインバータを使用する場合が多い。これには幾つかの理由があり、その1つは駆動用電動機に供給する駆動電力の周波数をインバータにて、商用周波数より大きくすることで、電動機回転数を増速して真空ポンプの排気性能を向上させ、より小型の駆動用電動機を使った真空ポンプ装置で所定の真空度の真空を得るためである。
【0003】
また、真空ポンプの運転により所望の真空度に達し、負荷が非常に小さい軽負荷運転となった場合、高効率で駆動用電動機を運転できるように、出力端子電圧の制御を行ったり、回転数の制御を行ったりすることが容易なためである。
【0004】
上記インバータ装置は、内部に半導体スイッチング素子を搭載し、交流/直流/交流変換回路によって入力電圧に周波数とは異なる周波数の出力電圧を出力することが可能であるが、周波数変更に使用する半導体スイッチング素子自身の内部損失によりスイッチング素子そのものが発熱するため、適切な冷却装置を設ける必要がある。
【0005】
従来の駆動用電動機の電源装置にインバータを使用するドライ真空ポンプ装置では、該インバータ装置を大気自然循環或いは強制循環による空気冷却構造によって、内部スイッチング素子を冷却していた。一方、真空ポンプ本体側では、同じく空気冷却構造によるポンプモータ及びポンプケーシングでは、冷却面積が巨大になるため早期の段階で、冷却水循環構造を採用した水冷ポンプモータ・ケーシングが採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−520873号公報
【特許文献2】特開平8−21392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記インバータ装置を大気自然循環或いは強制循環による空気冷却構造によって、内部のスイッチング素子を冷却する空気冷却構造はその冷却効率が低いことから構造体が大きく、ドライ真空ポンプ装置全体の小型化の障害となっていた。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を冷却水等の冷媒液による高効率冷却手段で冷却することにより、冷却構造の小型化が可能で、装置全体の小型化が可能なドライ真空ポンプ装置の冷却構造、及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ回路を備え、交流電源からの交流電力を整流器で直流電力に変換し、直流回路を介してインバータ回路に供給し、該インバータ回路で所定周波数の交流電力に変換し、ドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に供給するように構成された電源装置と、ドライ真空ポンプと駆動用電動機と組み込んだポンプ装置を一体のインクロージャに収容したドライ真空ポンプ装置の冷却構造であって、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路を収納した第2の電装エンクロージャと、ドライ真空ポンプの運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備え、第1の電装エンクロージャは冷媒液による高効率冷却手段で冷却し、第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却することを特徴とする。
【0010】
また、上記ドライ真空ポンプ装置の冷却構造において、高効率冷却手段は装置の駆動用電動機或いは同期ギアボックスを冷却するために設けた水を冷媒液とする水冷手段であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ回路を備え、交流電源からの交流電力を整流器で直流電力に変換し、直流回路を介してインバータ回路に供給し、該インバータ回路で所定周波数の交流電力に変換し、ドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に供給するように構成された電源装置と、ドライ真空ポンプと駆動用電動機と組み込んだポンプ装置を一体のインクロージャに収容したドライ真空ポンプ装置の冷却方法であって、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路を収納した第2の電装エンクロージャと、ドライ真空ポンプの運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備え、第1の電装エンクロージャは駆動用電動機或いは同期ギアを冷却する水等の冷媒液による高効率冷却手段で冷却し、第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャを冷媒液による高効率冷却手段で冷却するので、第1の電装エンクロージャを高効率で冷却でき、冷却構造が小型となり、ドライ真空ポンプ装置全体を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプの概念構成例を示す図である。
【図2】図2は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプの概念構成例を示す図である。
【図3】図3は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプの概念構成例を示す図である。
【図4】図4はドライ真空ポンプ装置のシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプ装置の概念構成例を示す図である。図示するように、本ドライ真空ポンプ装置10は、装置筐体24の中央部に真空ポンプ部11が配置され、その両側に駆動用電動機部12と同期ギア部13とが配置されている。駆動用電動機部12の側部には水等の冷媒液で冷却する高効率冷却手段15を介在させてインバータ部16が配置され、同期ギア部13の側部には水等の冷媒液で冷却する高効率冷却手段18が配置されている。真空ポンプ部11及び駆動用電動機部12の上部にはポンプ運転制御用CPUで代表される電子回路素子や部品を備えた制御回路部19が配置されている。真空ポンプ部11のケーシングには吸気口21と排気口22が設けられている。
【0015】
真空ポンプ部11は、例えば容積型真空ポンプで、ロータケーシング内に2本の回転軸が回転自在に配置され、該2本の回転軸には一対のルーツ型ロータが複数段固定されている。ロータとロータの間、及びロータとケーシングの内周面との間には微小な隙間が形成されており、2本の回転軸に固定された複数段のロータは、それぞれ回転軸を中心に非接触で回転するようになっている。ロータケーシング内には2本の回転軸に沿って各段のロータをそれぞれ収容して気体を移送するロータ室が直列に配置されている。駆動用電動機部12の回転軸には1本の回転軸が連結されており、該駆動用電動機部12を運転して該回転軸を回転すると、同期ギア部13のギアを介して、2本の回転軸が互いに同期して回転し、吸気口21から吸気された気体は、排気口22から排気される。
【0016】
駆動用電動機部12により電動機ステータで発生した熱は、駆動用電動機部12の電動機ケーシングに伝達され、ケーシングの温度は上昇する。また、2本の回転軸の回転により、同期ギア部13のギアで発生した熱は同期ギア部13のギア部ケーシングに伝達され、該ギア部ケーシングの温度は上昇する。そして電動機ケーシングを冷却するため水等の冷媒液で冷却する高効率冷却手段15が設けられ、ギア部ケーシングを冷却するため水等の冷媒液で冷却する高効率冷却手段18が設けられている。
【0017】
上記構成のドライ真空ポンプ装置10において、ドライ真空ポンプ装置10の運転により、駆動用電動機部12のステータからの発熱により電動機ケーシング、同期ギア部13のケーシングが高温となるため一般的には水冷など高効率冷却手段(冷却構造体)15、18が設けられている。一方、駆動用電動機部12に駆動電力を供給するインバータ部16内にもIGBT等のスイッチング素子が配置され、該スイッチング素子で取り扱う電流の大きさ、スイッチング損失等により比較的高い発熱があるため、冷却手段が必要となる。ここでは、インバータ部16を冷却する冷却手段として電動機ケーシングを冷却するため高効率冷却手段15を用いている。
【0018】
ドライ真空ポンプ装置10の運転管理制御を行う制御回路部19は、ポンプ運転制御用CPUで代表される一般的に大きな発熱源となる電子回路素子を用いないので、制御回路自身が設置される場所が、電子部品の使用可能な環境温度の範囲であれば、特別な放熱構造を設ける必要がなく、通常の運転範囲ではない条件を想定して、強制空冷を含む空冷手段を用いている。
【0019】
上記のように、インバータ部16のスイッチング素子から発生する熱を冷却する冷却手段として駆動用電動機部12のステータからの発熱を冷却する水冷却等の高効率冷却手段15を用い、発熱量の少ない電子回路素子で構成される制御回路部19を冷却する冷却手段として強制空冷を含む空冷手段を用いることにより、ドライ真空ポンプ装置10の冷却構造体を最小限としつつ、簡素で効果的なドライ真空ポンプ装置の冷却構造を構築している。
【0020】
図2は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプ装置の概念構成例を示す図である。図2において、図1と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。なお、他の図面についても同様とする。本ドライ真空ポンプ装置10が図1に示すドライ真空ポンプ装置10と相違する点は、同期ギア部13の側部に同期ギア部13のケーシングの発熱を冷却する高効率冷却手段18を介してインバータ部16を配置している点で、他は図1に示すドライ真空ポンプ装置10と同様である。
【0021】
上記のように、インバータ部16のスイッチング素子から発生する熱を冷却する冷却手段として同期ギア部13のケーシングの発熱を冷却する高効率冷却手段18を用い、発熱量の少ない電子回路素子で構成される制御回路部19を冷却する冷却手段として強制空冷を含む空冷手段を用いることにより、ドライ真空ポンプ装置10の冷却構造体を最小限としつつ、簡素で効果的なドライ真空ポンプ装置の冷却構造を構築している。
【0022】
図3は本発明に係る冷却構造を採用するドライ真空ポンプ装置の概念構成例を示す図である。本ドライ真空ポンプ装置10が図1に示すドライ真空ポンプ装置10と相違する点は、制御回路部19の側部に制御回路冷却用ファン25を設け、該制御回路冷却用ファン25で送風される空気により、制御回路部19からの発熱を強制的に冷却している点で、他は図1に示すドライ真空ポンプ装置10と同様である。
【0023】
上記のように、インバータ部16のスイッチング素子から発生する熱を冷却する冷却手段として同期ギア部13のケーシングからの発熱を冷却する高効率冷却手段18を用い、発熱量の少ない電子回路素子で構成される制御回路部19を冷却する冷却手段として制御回路部19の側部に制御回路冷却用ファン25を設け、強制空冷することにより、ドライ真空ポンプ装置10の冷却構造体を最小限としつつ、簡素で効果的なドライ真空ポンプ装置の冷却構造を構築している。
【0024】
図4はドライ真空ポンプ装置のシステム構成を示す図である。図示するように、ドライ真空ポンプ42を駆動する駆動用電動機41に駆動電力を供給する電源装置40は、整流器43、平滑コンデンサ44を備えた直流回路45、DC/DC変換回路46、インバータ回路47を備えている。交流電源48からの交流電力を整流器43で直流電力に変換し、直流回路45を介してDC/DC変換回路46に供給し、該DC/DC変換回路46で任意電圧値の直流電力に変換し、インバータ回路47に供給する。該インバータ回路47で制御回路部19の制御により、任意の周波数の交流電力に変換し、駆動用電動機41に供給する。
【0025】
ドライ真空ポンプ装置の上記電源装置40と、ドライ真空ポンプ42と駆動用電動機41と組み込んだポンプ装置を装置筐体24内に収容している。そしてインバータ回路47で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される発熱量の少ない電子回路素子で構成される制御回路部19を収納した第2の電装エンクロージャと、ドライ真空ポンプ42の運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備えている。インバータ回路47で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収容した第1の電装エンクロージャは、駆動用電動機41或いは同期ギア部13を冷却するために設けた水冷等の冷媒液とする水冷手段である高効率冷却手段で冷却し、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路部19を収納した第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却する。
【0026】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、上記実施形態例では、高効率冷却手段15、18として、上記例では水冷による冷却手段を示したが、水冷に限定されるものではなく、他の冷媒液による冷却手段でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ドライ真空ポンプ装置の冷却構造であって、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路を収納した第2の電装エンクロージャと、ドライ真空ポンプの運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備え、第1の電装エンクロージャは冷媒液による高効率冷却手段で冷却し、第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却することより、インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャを高効率で冷却でき、小型化したドライ真空ポンプ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ドライ真空ポンプ装置
11 真空ポンプ部
12 駆動用電動機部
13 同期ギア部
15,18 高効率冷却手段
16 インバータ部
19 制御回路部
21 吸込口
22 排気口
25 制御回路冷却用ファン
40 電源装置
41 駆動用電動機
42 ドライ真空ポンプ
43 整流器
44 平滑コンデンサ
45 直流回路
46 DC/DC変換回路
47 インバータ回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ回路を備え、交流電源からの交流電力を前記整流器で直流電力に変換し、前記直流回路を介して前記インバータ回路に供給し、該インバータ回路で所定周波数の交流電力に変換し、ドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に供給するように構成された電源装置と、前記ドライ真空ポンプと前記駆動用電動機と組み込んだポンプ装置を一体のインクロージャに収容したドライ真空ポンプ装置の冷却構造であって、
前記インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路を収納した第2の電装エンクロージャと、前記ドライ真空ポンプの運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備え、
前記第1の電装エンクロージャは冷媒液による高効率冷却手段で冷却し、前記第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却することを特徴とするドライ真空ポンプ装置の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載のドライ真空ポンプ装置の冷却構造において、
前記高効率冷却手段は装置の前記駆動用電動機或いは同期ギアを冷却するために設けた水を冷媒液とする水冷手段であることを特徴とするドライ真空ポンプ装置の冷却構造。
【請求項3】
整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ回路を備え、交流電源からの交流電力を前記整流器で直流電力に変換し、前記直流回路を介して前記インバータ回路に供給し、該インバータ回路で所定周波数の交流電力に変換し、ドライ真空ポンプを駆動する駆動用電動機に供給するように構成された電源装置と、前記ドライ真空ポンプと前記駆動用電動機と組み込んだポンプ装置を一体のインクロージャに収容したドライ真空ポンプ装置の冷却方法であって、
前記インバータ回路で代表される自己発熱量の大きい大電流回路を収納した第1の電装エンクロージャと、ポンプ運転制御用CPUで代表される制御回路を収納した第2の電装エンクロージャと、ドライ真空ポンプの運転監視用センサ類を収納した第3の電装エンクロージャとを備え、前記第1の電装エンクロージャは駆動用電動機或いは同期ギアを冷却する水等の冷媒液による高効率冷却手段で冷却し、前記第2の電装エンクロージャは強制又は自然空冷手段で冷却することを特徴とするドライ真空ポンプ装置の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226364(P2011−226364A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96539(P2010−96539)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】