説明

ドラムブレーキ

【課題】ドラムブレーキの制動時においてアンカーと一対のブレーキシューの一端部の一方との間から発生する衝撃音を低減するドラムブレーキを提供する。
【解決手段】アンカー26と一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方との間にはその一端部の一方がそのアンカー26に受け止められる際の衝撃を低減する衝撃低減部材62が備えられていることから、ドラムブレーキ10の制動時に一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方は衝撃低減部材62を介してアンカー26に受け止められるので、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方はアンカー26に直接衝突するのではなく衝撃低減部材62を介して衝突するのでアンカー26と上記一端部の一方との間から発生する衝撃音を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にドラムブレーキから発生する異音を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキには、たとえば特許文献1に示すように、車輪と共に回転する回転ドラムと、その回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、そのバッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つそのバッキングプレート上に固設されたアンカーと、ブレーキ操作力によってその一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、その一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とを備え、その拡開機構によりその一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接しその一対のブレーキシューの一端部の一方がそのアンカーに受け止められることによってその回転ドラムの回転を制動するものがある。
【特許文献1】特開2006−46385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなドラムブレーキは、上記回転ドラムの回転を制動する際一対のブレーキシューの一端部の一方を上記アンカーに当接させて一対のブレーキシューを受け止めるので、その当接時にその一対のブレーキシューの一端部の一方はそのアンカーに衝突し衝撃音(打音)を発生するという問題があった。たとえば、ブレーキ作動時または人の乗り降りにより車輪が僅かに回転するとき等において衝突音が発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドラムブレーキの制動時においてアンカーと一対のブレーキシューの一端部の一方との間から発生する衝撃音を低減するドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 車輪と共に回転する回転ドラムと、その回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、そのバッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、その一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つそのバッキングプレート上に固設されたアンカーと、ブレーキ操作力によってその一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、その一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とを備え、その拡開機構によりその一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接しその一対のブレーキシューの一端部の一方がそのアンカーに受け止められることによってその回転ドラムの回転を制動するドラムブレーキであって、(b) 前記アンカーと前記一対のブレーキシューの一端部の一方との間にはその一方のブレーキシューの一端部がそのアンカーに受け止められる際の衝撃を低減する衝撃低減部材が備えられていることにある。
【0006】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記アンカーは、円柱状を成しており、前記衝撃低減部材は、前記アンカーの外周に嵌め付けられた一体構造または分割構造の円筒状の部材であることにある。
【0007】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、前記衝撃低減部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであることにある。
【0008】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項3に係る発明において、前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であることにある。
【0009】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項3または4に係る発明において、前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであることにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のドラムブレーキによれば、前記アンカーと前記一対のブレーキシューの一端部の一方との間にはその一端部の一方がそのアンカーに受け止められる際の衝撃を低減する衝撃低減部材が備えられていることから、ドラムブレーキの制動時に前記一対のブレーキシューの一端部の一方は前記衝撃低減部材を介して前記アンカーに受け止められるので、前記一対のブレーキシューの一端部の一方は前記アンカーに直接衝突するのではなく前記衝撃低減部材を介して衝突するので前記アンカーと前記一端部の一方との間から発生する衝撃音を低減させることができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明のドラムブレーキによれば、前記アンカーは、円柱状を成しており、前記衝撃低減部材は、前記アンカーの外周に嵌め付けられた一体構造または分割構造の円筒状の部材であるため、ドラムブレーキに前記衝撃低減部材を安定な面接触状態で円柱状のアンカーの外周面とそれに当接するブレーキシューの一端部の端面との間に介在できるとともに、容易に組み付けることができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明のドラムブレーキによれば、前記衝撃低減部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであるため、前記衝撃低減部材に埋設されている金属メッシュによって前記衝撃低減部材の強度を高めることができるので前記衝撃低減部材の厚みを薄くし耐久性を高めることができる。
【0013】
また、請求項4に係る発明のドラムブレーキによれば、前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であるため、前記衝撃低減部材の衝撃吸収性および耐摩耗性を高めることができる。
【0014】
また、請求項5に係る発明のドラムブレーキによれば、前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであるため、銅合金ばね材料としても用いられる銅−錫合金製メッシュが前記衝撃低減部材に埋設されているので前記アンカーと前記一端部の一方との間から発生する衝撃音を好適に低減させることができ、耐久性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム(回転ドラム)14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0017】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0018】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられたアンカー26と、そのアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。また、リターンスプリング28の一端部28aはストラット32側に延長されており、その一端部28aはストラット32がブレーキシュー22側に常時付勢されるようにストラット32に掛止している。
【0019】
スプリング36の中間部分は間隙調節装置34のアジャストホイール34aに接触されており、アジャストホイール34aが振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置34およびスプリング36は、一対のブレーキシュー22,24の他端部間を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結部材38として機能している。
【0020】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ40,42と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム44,46と、それらシューリム44,46の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング48,50とを備えてそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ40およびシューウェブ42にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置52,54によってバッキングプレート18側へ押圧されることによりそのバッキングプレート18に対して面方向の相対移動が可能に保持されている。バッキングプレート18、シューウェブ40,42、シューリム44,46は、いずれも鋼板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。また、ブレーキシュー22および24には、ストラット32を支持するために相手に向かって支持突起22aおよび24aがそれぞれ形成されている。
【0021】
図1において左側に位置するブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー56の基端部56aがピン58により回動可能に連結されており、ブレーキレバー56の中間部であってピン58に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ40と共に係合させられている。また、ブレーキレバー56の先端部56bは、パーキングブレーキケーブル60に連結されている。
【0022】
図2に示すように、アンカー26と一対のブレーキシュー22,24の一端部との間には、衝撃低減部材62が配設されている。図3に示すように衝撃低減部材62は、円筒状の円筒部62aと、その円筒部62aの一方の縁からバッキングブレート18の外周方向に延長されたフランジ部62bとを備えており、一枚の板状複合材料をプレスによって一体的に曲成された一体構造の円筒状の部材である。衝撃低減部材62は、一枚の板状複合材料をプレスによって一体的に曲成されたものであるためその円筒部62aにはスリット63が設けられており、そのスリット63は、衝撃低減部材62がアンカー26回りに回動しドラムブレーキ10の作動時に円筒部62aのどの位置に一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方が衝突しても耐えられるようにブレーキシュー22、24の厚み方向に対して斜めたとえば45°方向に配置されている。フランジ部62bは、ブレーキシュー22,24の厚み方向において図2に示すように一対のブレーキシュー22,24とアンカー26との間に介在されているため車両走行時の振動によってブレーキシュー22,24とアンカー26とが当接することを防止し、異音の発生を防ぐことができる。
【0023】
図4に詳しく示すように衝撃低減部材62は、耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとを含む板状複合材料によって構成されている。衝撃低減部材62は埋設された銅−錫合金製メッシュ62dによって強度が高められておりその厚みは薄くたとえば0.5mm程度の厚みのものである。銅−錫合金製メッシュ62dは、図5に示すような複数本の銅−錫合金の線材62eをたとえば平織で編むことによってできたものである。
【0024】
以上のよう構成されたドラムブレーキ10は、図6に示す一対のリターンスプリング28,30の付勢力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部が衝撃低減部材62を介してアンカー26に受け止められた状態から、パーキングブレーキペダル、パーキングブレーキレバー等の図示されていないブレーキ操作装置が操作されることによって発生するブレーキ操作力によって、パーキングブレーキケーブル60を介してブレーキレバー56の先端部56bが図1の矢印F方向に引っ張られブレーキレバー56が回動すると、ブレーキシュー24がストラット32に押されて図7の矢印R方向に回動させられると共にブレーキシュー22がピン58に押されて図7の矢印L方向に回動させられ一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡大すなわち拡開する。この際、それら一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60は、ブレーキ操作力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部間を拡大させる拡開機構64として機能する。また、図7は、その一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡大した状態を示すものであり、この状態では一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50がブレーキドラム14の内周面16に当接している。
【0025】
上記ブレーキ操作装置の操作時に、たとえば図7に示す矢印R方向に車輪が回転すなわちブレーキドラム14が回転しようとするとブレーキドラム14の内周面16と当接しているブレーキシュー22および24は、ブレーキドラム14の回転方向すなわち矢印R方向に連れ回されるので、ブレーキシュー22の一端部は矢印G方向に移動させられてブレーキシュー22の一端部はその一端部とアンカー26との間に備えられた衝撃低減部材62に衝突させられる。衝撃低減部材62の4フッ化エチレン樹脂62cは、振動減衰機能或いは振動吸収機能が高いため、ブレーキシュー22の一端部が衝撃低減部材62に衝突したときの衝撃力はその衝撃低減部材62内において減衰され且つ吸収されるので、その衝突する際の衝撃音を低減させることができる。図8は、そのブレーキシュー22の一端部が衝撃低減部材62に衝突した状態を示すものである。また、衝撃低減部材62は、摩擦係数の低い4フッ化エチレン樹脂62cを使用しているので、長い期間使用してもほとんど摩耗せず、その衝撃低減部材62の性能の低下を抑制することができる。また、衝撃低減部材62は、銅合金ばね材料である銅−錫合金を使用しているので、衝撃低減部材62の柔軟性および耐久性を一層高めることができる。
【0026】
衝撃低減部材62に衝突後、ブレーキシュー22の一端部は、衝撃低減部材62を介してアンカー26に受け止められることによって、ブレーキシュー22および24のライニング48および50がブレーキドラム14の内周面16に強く押し付けられるので、ブレーキドラム14のR方向の回転すなわち車輪の回転が制動される。
【0027】
そして、ブレーキ操作力が解除されると一対のブレーキシュー22,24の一端部間はリターンスプリング28,30の付勢力によって接近し、ブレーキドラム14の内周面16と一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50とが離間させられドラムブレーキ10の制動力は解除される。
【0028】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、アンカー26と一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方との間にはその一端部の一方がそのアンカー26に受け止められる際の衝撃を低減する衝撃低減部材62が備えられていることから、ドラムブレーキ10の制動時に一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方は衝撃低減部材62を介してアンカー26に受け止められるので、一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方はアンカー26に直接衝突するのではなく衝撃低減部材62を介して衝突するので、アンカー26と上記一端部の一方との間から発生する衝撃音を低減させることができる。
【0029】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、アンカー26は、円柱状を成しており、衝撃低減部材62は、アンカー26の外周に嵌め付けられた一体構造の円筒状の部材であるため、ドラムブレーキ10に衝撃低減部材62を安定な面接触状態で円筒状のアンカー26の外周面とそれに当接するブレーキシュー22,24の一端部の端面との間に介在できるとともに、容易に組み付けることができる。
【0030】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、衝撃低減部材62は、銅−錫合金製メッシュ62dが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであるため、衝撃低減部材62に埋設されている銅−錫合金製メッシュ62dによって衝撃低減部材62の強度を高めることができるので衝撃低減部材62の厚みを薄くし耐久性を高めることができる。
【0031】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、4フッ化エチレン樹脂62cによって衝撃低減部材62の衝撃吸収性および耐摩耗性を高めることができる。
【0032】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、銅合金ばね材料としても用いられる銅−錫合金製メッシュ62dが衝撃低減部材62の全体に埋設されているのでアンカー26と一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方との間から発生する衝撃音を好適に低減させることができ、耐久性が高められる。
【実施例2】
【0033】
また、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例の説明において前述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
本実施例のドラムブレーキは、前述の実施例とは異なる衝撃低減部材66を備える以外はドラムブレーキ10と略同様であって、図9はその他の実施例の衝撃低減部材66を説明する図であり、図3に対応するものである。
【0035】
衝撃低減部材66は、図9に示すような略円筒形状を軸心を通る分割面で二等分割した分割構造の円筒状の部材66a,66bによって構成されており、その分割構造の円筒状の部材66a,66bは円筒形状を保つようにそれぞれの周方向の両端部分66cが相互に固定され或いは固定されないでアンカー26の外周に嵌め付けられている。
【0036】
また、衝撃低減部材66は前述の実施例と同様の耐熱性硬質樹脂である4フッ化エチレン樹脂62cと、その4フッ化エチレン樹脂62cの全体に埋設された銅−錫合金製メッシュ62dとによって構成されている。そのため、本実施例の衝撃低減部材66は前述の実施例の衝撃低減部材62と形状で相違するが機能では前述の実施例の衝撃低減部材62と略同様である。
【0037】
衝撃低減部材66を構成する分割構造の円筒状の部材66a,66bの周方向の両端部分66cは相対的に強度および耐久性が低いため、ドラムブレーキ作動時その両端部分66cに一対のブレーキシュー22,24の一端部の一方が衝突しないように、衝撃低減部材66の位置を位置決めさせる一対のストッパー66dを備えている点が前述の実施例の衝撃低減部材62と相違する。ストッパー66dは、衝撃低減部材66がアンカー26を軸心として回動すると一対のブレーキシュー22,24の一端部に当接されるので衝撃低減部材66を位置決めすることができる。
【0038】
本実施例のドラムブレーキによれば、アンカー26は、円柱状を成しており、衝撃低減部材66は、アンカー26の外周に嵌め付けられた分割構造の円筒状の部材66a,66bであるため、ドラムブレーキに衝撃低減部材66を安定な面接触状態で円筒状のアンカー26の外周面とそれに当接するブレーキシュー22,24の一端部の端面との間に介在できるとともに、容易に組み付けることができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0040】
たとえば、本発明のドラムブレーキ10において、拡開機構64は、一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60を備えてブレーキ操作力によって一対のブレーキシュー22,24の一端部間を拡大させたが、必ずしも拡開機構64は、これら一対のブレーキシュー22,24、ストラット32、ブレーキレバー56、ピン58、パーキングブレーキケーブル60を備えなければならないものではなく、ブレーキ操作力によって一対のブレーキシューの一端部を拡大するものであれば拡開機構の構成はどのようなものが使用されても差し支えない。
【0041】
また、前述の実施例の衝撃低減部材62、66は、4フッ化エチレン樹脂62cおよび銅−錫合金製メッシュ62dから成る複合材料であったが、制振合金等の他の材料から構成されていてもよい。
【0042】
また、本発明のドラムブレーキにおいて、衝撃低減部材66を構成する分割構造の円筒状の部材66a,66bは、円筒形状を保つようにそれぞれの両端が固定されていたが分割構造の円筒状の部材66a,66bがアンカー26から脱落しなければそれぞれの両端が固定されていなくてもよい。
【0043】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例のデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図1の実施例のドラムブレーキに備えられた衝撃低減部材を説明するための斜視図である。
【図4】図3のIV-IV視断面図である。
【図5】衝撃低減部材に備えられた銅−錫合金製メッシュを説明する図であり、衝撃低減部材の表面の拡大図である。
【図6】図2のVI-VI視断面図であり、一対のブレーキシューの一端部が拡大する前を示す図である。
【図7】一対のブレーキシューの一端部がブレーキ操作力によって拡大した時を示す図である。
【図8】一対のブレーキシューの一端部の一方が衝撃低減部材に衝突した時を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例の衝撃低減部材を示す図であり、図3に対応するものである。
【符号の説明】
【0045】
10:ドラムブレーキ
14:ブレーキドラム(回転ドラム)
16:ブレーキドラム(回転ドラム)の内周面
18:バッキングプレート
22,24:一対のブレーキシュー
26:アンカー
28,30:一対のリターンスプリング(リターンスプリング)
38:連結部材
62、66:衝撃低減部材
62c:4フッ化エチレン樹脂
62d:銅−錫合金製メッシュ
64:拡開機構
66a,66b:分割構造の円筒状の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転する回転ドラムと、該回転ドラムの開口を塞ぐように非回転部材に固定されたバッキングプレートと、該バッキングプレート上に拡開可能に支持され且つリターンスプリングによって一端部が互いに接近する方向に付勢された円弧状を成す一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一端部間に位置し且つ該バッキングプレート上に固設されたアンカーと、ブレーキ操作力によって該一対のブレーキシューの一端部間を拡大させる拡開機構と、該一対のブレーキシューの他端部間を連結する連結部材とを備え、該拡開機構により該一対のブレーキシューの一端部間が拡大されて前記回転ドラムの内周面に当接し該一対のブレーキシューの一端部の一方が該アンカーに受け止められることによって該回転ドラムの回転を制動するドラムブレーキであって、
前記アンカーと前記一対のブレーキシューの一端部の一方との間には該一端部が該アンカーに受け止められる際の衝撃を低減する衝撃低減部材が備えられていることを特徴とするドラムブレーキ。
【請求項2】
前記アンカーは、円柱状を成しており、
前記衝撃低減部材は、前記アンカーの外周に嵌め付けられた一体構造または分割構造の円筒状の部材であることを特徴とする請求項1のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記衝撃低減部材は、金属メッシュが全体に埋設された耐熱性硬質樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1または2のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記耐熱性硬質樹脂は、4フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする請求項3のドラムブレーキ。
【請求項5】
前記金属メッシュは、銅−錫合金製メッシュであることを特徴とする請求項3または4のドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−121719(P2008−121719A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303223(P2006−303223)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】