説明

ドープド・セラミック材とその形成方法

【課題】 製造コストを抑えながらセラミック材の相対密度や硬度の低下を抑制して高速切削に適した硬度を有することができるドープド・セラミック材及びその形成方法を提供する。
【解決手段】 ドープド・セラミック材は、セラミック材と特定量のドーパントとを含む第1層110と、セラミック材を含む第2層120と、第1層110から第2層120に向かう方向に量が減少するようにしたドパーントを含み、第1層110と第2層130とをつなぐ遷移層と、を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドープド・セラミック材とその形成方法に関する。また、本発明は、ドープド・セラミック材で形成した切削工具にも関する。
【背景技術】
【0002】
工業上利用されるセラミック材は、一般的に、例えば、高い焼結密度、微細な粒径、高い硬度、及び適度な破壊靱性などの特性を有している。セラミック材は、これらの特性を有しているため、金属などの材料を切削する工具として用いることが可能である。このような利用に普通に使われているセラミック材の一つに、アルミナがある(特許文献1参照)。
【0003】
カーボン・スチールを高速切削する際には、切削速度は、1,000メートル/分の速さがあることが望ましい。多くの市販のアルミナ切削工具にあっては、アルミナの逃げ面摩耗(フランク摩耗)が促進されることから、そのような高速で切削するには適していない。アルミナの耐性は、セラミックの粒径を小さくして硬度が増すことで改善することが可能である。
【0004】
アルミナ・セラミック材の硬度を増す一つの方法としては、クロム酸化物(Cr2O3)などのようなト゛ーパントをセラミック材にドーピングするものがある(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、ドーパントを追加すると、セラミック材の焼結性が悪化することになる。この焼結性が悪化するという問題は、ドープド・セラミック材を高温プレスするか、あるいは非常に高い温度にて焼結することで解決することができる。しかしながら、高温プレスは、高価な工程となり、製造コストの高騰を招く。一方、高温焼結は、セラミック材の相対密度や硬度を低下させる。また、これら両工程にあっては、セラミック材の異常粒が成長する結果、きめの粗い粒構造となってしまう。
【特許文献1】特開2003−171172号公報
【特許文献2】特開平8−323507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、少なくとも上述した不具合の一つあるいはいくつかを解消あるいは改善するべく、製造コストを抑えながらセラミック材の相対密度や硬度の低下を抑制して高速切削に適した硬度を持つドープド・セラミック材及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明では、(a)セラミック材と特定量のドーパントとを含む第1層と、(b)セラミック材を含む第2層と、(c)第1層から第2層に向かう方向に量が減少するようにした上記ドパーントを含み、第1層と第2層とをつなぐ遷移層と、を有するドープド・セラミック材が提供される。
【0008】
第2の発明では、(a)第1層、第2層、第1層と第2層とをつなぐ遷移層を有する高焼結性セラミック予備成型品を準備するステップと、(b)遷移層内に含まれるドーパントの量が第1層から第2層に向かうに方向に減少するようにセラミック予備成型品の第1層に特定量のドーパントをドーピングするステップと、(c)特定時間、特定温度でセラミック予備成型品を焼結してドープド・セラミック材を形成するステップと、を有するドープド・セラミック材の形成方法が提供される。
【0009】
第3の発明では、(a)アルミナ(Al2O3)材と特定量のクロム酸化物(Cr2O3)とを含む第1層と、(b)アルミナ(Al2O3)材を含む第2層と、(c)第1層から第2層に向かう方向に量が減少するようにしたクロム酸化物を含み、第1層と第2層とをつなぐ遷移層と、を有するクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材が提供される。
【0010】
第4の発明では、第1層、第2層、第1層と第2層とをつなぐ遷移層を有する高焼結性アルミナ(Al2O3)の予備成型品を準備するステップと、第1層に特定量のクロム酸化物(Cr2O3)をドーピングして遷移層内のクロム酸化物の量が第1層から第2層に向かう方向に減少させるステップと、所定時間、アルミナの予備成型品を焼結してクロム酸化物をドーピングしたアルミナ材を形成するステップと、を有する、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の形成方法が提供される。
【0011】
第5の発明では、第1の発明に記載のドープド・セラミック材で形成した切削工具が提供される。
【0012】
第6の発明では、第3発明に記載のクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材で形成した切削工具が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より低い温度での焼結を可能とし、製造コストを抑えながらセラミック材の相対密度や硬度の低下を抑制して高速切削に適した硬度を有するドープド・セラミック材及びその形成方法を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[定義]
この明細書で用いている、以下の用語は、それぞれ下記の意味を有するものとする。
【0015】
ここで用いている用語としての「相対密度」とは、セラミック材や予備成型品の理論密度に対する、それらの実密度の比をいう。
【0016】
ここで用いている用語としての「圧粉体」とは、仮焼きも焼結もされていない、モールドしたセラミック体をいう。
【0017】
ここで用いている用語としての「予備成型品」とは、仮焼きされているものの未だ焼結されていない、モールドしたセラミック体をいう。
【0018】
ここで用いている用語としての「仮焼き」とは、圧粉体に緻密化が生じない時間と温度とで圧粉体を熱処理することをいう。圧粉体は、仮焼きしたときには、多孔性の予備成型品となり、この型形成、ドーピング、焼結のような後続の工程で利用可能である。「仮焼き」という用語が圧粉体を部分的に緻密化させるような熱処理を除外していないことは当然である。
【0019】
ここで用いている用語としての「焼結」とは、予備成型品を緻密化させて少なくとも95%、好ましくは96%、より好ましくは97%、さらに好ましくは98%の相対密度を有する焼結セラミック材を形成する時間や温度で予備成型品を熱処理することをいう。
【0020】
ここで用いている用語としての「組成勾配」とは、セラミック材の遷移層内で第1層から第2層に向かう方向に減少していくドーパント濃度のプロフィールをいう。
【0021】
ここで用いている用語としての「異常粒」とは、ドープド・セラミック材の平均粒径の約5〜10倍のサイズの粒をいう。アルミナ・セラミック材のにあっては、異常粒は5μm(マイクロメートル)より大きいサイズを有している。
【0022】
ここで用いている用語としての「実質的にドーパントなし」や「実質的にクロム酸化物(Cr2O3)なし」とは、「ドーパントが皆無である」や「クロム酸化物(Cr2O3)が皆無である」といったことを除外するものではない。たとえば、「実質的にドーパントなし」の層は、ドーパントが皆無であってもよい。必要であれば、「実質的に」の語は、本発明の定義から削除してもよい。
【0023】
本明細書中で用いているように、「約」という用語は、製剤成分の濃度のコンテクストにおいて、典型的にはその表示値の±5%、より典型的には表示値の±4%、さらに典型的には表示値の±3%、さらに典型的には表示値の±2%、さらに典型的には表示値の±1%、さらに典型的には表示値の±0.5%であることを意味する。
【0024】
本開示内容を通じて、いくつかの実施例では、数値範囲の形で開示することがある。この数値範囲の形での記載は、単に利便性及び簡潔さのためのものであって、その開示した数値範囲を不変であると限定して解釈すべきではない。したがって、数値範囲の記載は、その範囲内の個々の数値と同様、その数値範囲内にある、より狭いすべての数値範囲を具体的に開示しているものと考えるべきである。例として、1から6といった数値範囲を記載したとすれば、その数値範囲内にある個々の数値(たとえば、1、2、3、4、5、6)と同様に、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの、上記数値範囲ないに含まれる、より下位の数値範囲が開示されていると考えるべきである。このことは、数値範囲の広さに関係なく当てはまる。
【実施例】
【0025】
ドープド・セラミック材、特にクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材、及びそれらの形成方法の好例となる、非限定の実施例につき、以下に説明する。
【0026】
ドープド・セラミック材は、
(a)セラミック材と特定量のドーパントとを含む第1層と、
(b)セラミック材を含む第2層と、
(c)第1層から第2層に向かう方向に量が減少するドーパントを含み、第1層と第2層とをつなぐ遷移層と、
を有する。
【0027】
ドープド・セラミック材の相対密度は、少なくとも約97%にすることができる。
【0028】
ドープド・セラミック材は、約0.5μm〜約5μm、約0.5μm〜約4μm、約0.5μm〜約3μm、約0.5μm〜約2μm、約0.5μm〜約1μm、約1μm〜約5μm、約2μm〜約5μm、約3μm〜約5μm、及び約4μm〜約5μmからなるグループの中から選んだ平均粒径を有する。
【0029】
ドープド・セラミック材の表面硬度及び破壊靭性は、一般的に、ドープド・セラミック材が異なれば値が異なる。開示した実施例のドープド・セラミック材は、一般的に、ドーピングしていないセラミック及び/又はこれに相当する、均一にドーピングしたセラミック材よりも高い表面硬度及び破壊靭性を有している。
【0030】
実施例のものにあっては、ドープド・セラミック材の表面硬度は、少なくとも約17GPa(ギガパスカル)である。
【0031】
また、実施例のものにあっては、ドープド・セラミック材の破壊靭性は、少なくとも約3.6MPa(m1/2)(メガパスカル(メートル1/2)である。
【0032】
ドープド・セラミック材、とりわけクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、切削工具を製作するのに利用可能である。
【0033】
ドープド・セラミック材の形成方法は、
(a)第1層、第2層、第1層と第2層をつなぐ遷移層を有する高焼結性セラミック予備成型品を準備するステップと、
(b)前記遷移層内に含まれるドーパントの量が第1層から第2層に向かうに方向に減少するようにセラミック予備成型品の第1層に特定量のドーパントをドーピングするステップと、
(c)ドープド・セラミック材を形成するため特定時間、特定温度でセラミック予備成型品を焼結するステップと、
を有している。
【0034】
上記ステップ(a)で定義した三つの層は、ステップ(a)に続くステップ(b)、(c)をより明確にするための先行詞として表現したものであって、セラミック予備成型品が三つに分離されてまったく別個の層になっているものと限定解釈してはならない。
【0035】
一つの実施例では、第1層、第2層、及び遷移層は、一体構造を形成している。
【0036】
上記焼結ステップ(c)は、(c-1)約1,200℃〜約1,600℃、約1,200℃〜約1,500℃、約1,200℃〜約1,400℃、約1,200℃〜約1,300℃、約1,300℃〜約1,600℃、約1,400℃〜約1,600℃、約1,500℃〜約1,600℃、及び約1,350℃〜約1,550℃からなるグレープの中から選んだ温度でセラミック予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0037】
また、上記焼結ステップ(c)は、(c-2)約1時間〜約24時間、約5時間〜約24時間、約10時間〜約24時間、約15時間〜約24時間、約20時間〜約24時間、約1時間〜約20時間、約1時間〜約15時間、約1時間〜約10時間、及び約1時間〜約5時間からなるグループの中から選んだ特定時間の間、セラミック予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0038】
上記焼結ステップ(c)は、真空下、あるいは酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、又は空気といった適当な環境下で実行することも可能である。
【0039】
上記焼結するステップ(c)は、(c-3)真空下でセラミック予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0040】
上記焼結ステップ(c)は又、(c-4)酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、及びそれらの混合物からなるグループの中から選んだガスの環境下でセラミック予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
〔高焼結性セラミック予備成型品〕
セラミック予備成型品は、元素周期表のIIIA族の元素、IVA族の元素、IVB族の元素、VA族の元素、及びVI]A族の元素の中から選んだ少なくとも二つの元素から形成することができる。
【0041】
一実施例では、セラミック予備成型品は、シリコンカーバイト(SiC)、シリコン窒化物(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミニウム窒化物(AlN)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、シリコン酸化物(SiO2)及びこれらの混合物からなるグループの中から選んでいる。他の実施例では、セラミック予備成型品は、アルミナ(Al2O3)からなる。
【0042】
セラミック予備成型品は、その物理特性を改善するため、添加物を含むようにしてもよい。たとえば、ジルコニアをアルミニウムに添加することで、破壊靭性を向上させることが可能となる。
【0043】
セラミック予備成型品の準備ステップ(a)は、(a-1)圧粉体を形成するためにセラミック粉の懸濁液を型に流し込むステップと、(a-2)高焼結性セラミック予備成型品を形成するため圧粉体を特定時間、特定温度で仮焼きするステップと、を有している。
【0044】
セラミック粉は、その平均粒径がサブミクロンの範囲内にあるものを用いるようにしてもよい。実施例のものでは、型への流し込みステップ(a-1)は、(a-3)セラミック粉を、この平均粒径が約0.05μm〜約1μm、約0.05μm〜約0.8μm、約0.05μm〜約0.6μm、約0.05μm〜約0.4μm、約0.05μm〜約0.2μm、約0.05μm〜約0.1μm、約0.1μm〜約1μm、約0.2μm〜約1μm、約0.4μm〜約1μm、約0.6μm〜約1μm、約0.8μm〜約1μm、及び約0.1μm〜約0.2μmとなるグループの中から選ぶステップを有している。好都合なことに、サブミクロンの大きさの粒からなるセラミック予備成型品では、きめの粗い粒構造になる可能のある、実施例のドープド・セラミック材中に、異常粒が成長するのを少なくし、あるいはなくすことができる。さらに、サブミクコロンの大きさの粒からなるセラミック予備成型品では、均一にドーピングしたセラミック材に比べて、形成方法での焼結ステップ(c)をより低い温度で実行することが可能となる。
【0045】
型への流し込みステップ(a-1)は、たとえば、スリップキャスト、テーパキャスト、ゲルキャスト、インジェクション・モールディング、冷間圧縮などで実行することができる。
【0046】
仮焼きステップ(a-2)は、
(a-4)圧粉体を、約700℃〜約1,100℃、約800℃〜約1,100℃、約900℃〜約1,100℃、約1,000℃〜約1,100℃、約700℃〜約1,000℃、約700℃〜約900℃、及び約700℃〜約800℃のグループの中から選んだ温度で仮焼きするステップを有するようにしてもよい。
【0047】
また、仮焼きステップ(a-2)は、
(a-5)圧粉体を、約1時間〜約4時間、約2時間〜約4時間、約3時間〜約4時間、約1時間〜約3時間、約1時間〜約2時間からなるグループから選んだ時間の間、仮焼きするステップを有するようにしてもよい。
【0048】
セラミック予備成型品は、ドーピングに先だって、研磨加工、サンディング、切削、グラインディング、あるいは他の機械成型加工により、所望の外形寸法に形成することができる。したがって、形成方法でのセラミック予備成型品の準備ステップ(a)は、
(a-6)セラミック予備成型品の外観を型作りするステップを有するようにしてもよい。
【0049】
上記ステップ(a-1)〜(a-6)により得られたセラミック予備成型品は、高い焼結性を有し、かつ少なくとも約58%の相対密度を有することが可能である。
[ドーパント]
ドーパントは、金属酸化物とすることができる。金属酸化物は、遷移金属酸化物とすることが可能である。遷移金属酸化物としては、クロム酸化物(Cr2O3)を用いることが可能である。
【0050】
一実施例でしては、第1層中のドーパントの量は、約0.1モル%〜約5モル%、約0.3モル%〜約5モル%、約0.6モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約3モル%〜約5モル%、約4モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1モル%、約0.1モル%〜約0.6モル%、及び約0.1モル%〜約0.3モル%からなるグループの中から選ぶことが可能である。
【0051】
一実施例としては、第2層は実質的にドーパントを含んでいないようにしてある。
【0052】
ドーピング・ステップ(b)は、
(b-1)第1層に特定量のドーパントをドーピングし、セラミック予備成型品中にドーパントを浸透させるべく、特定時間、特定濃度のドーパントの溶液にセラミック予備成型品を浸漬するステップを有するようにしてもよい。
【0053】
セラミック予備成型品の浸漬ステップ(b-1)は、
(b-2)約15分〜約5時間、約30分〜約5時間、約1時間〜約5時間、約2時間〜約5時間、約3時間〜約5時間、約4時間〜約5時間、約15分〜約4時間、約15分〜約3時間、約15分〜約2時間、約15分〜約1時間、及び約15分〜約30分からなるグループの中から選んだ時間の間、セラミック予備成型品をドーパントの溶液中に浸漬するステップを有するようにしてもよい。
【0054】
また、セラミック予備成型品の浸漬ステップ(b-1)は、
(b-3)セラミック成型品をドーパントの飽和溶液中に浸漬するステップを有するようにしてもよい。
【0055】
ドーピング・ステップ(b)から得られたセラミック予備成型品は、焼結ステップ(c)に先だって、乾燥するようにしてもよい。乾燥の条件としては、一般的には、約1時間〜約5時間の間、又はセラミック成型品が乾燥するまでの間、約50℃〜約100℃にするようにしてもよい。
【0056】
ドーピング・ステップ(b)では、ドーパントがセラミック成型品の内部に浸透し、この結果、ドーパントの量が遷移層中で第1層から第2層に向かう方向に減少するような組成勾配が生じる。第1層と第2層との内部に含まれるドーパントの量を望ましい値にするには、ドーパントの溶液にセラミック成型品を浸漬する時間をコントロールすることにより、あるいはドーパント溶液の濃度を変えることにより行うことができる。
【0057】
セラミック予備成型品を均一にドーピングすると、一般的に、セラミック予備成型品の焼結性が減少する。しかしながら、セラミック成型品の遷移層に組成勾配を持たせると、セラミック成型品の焼結性を維持することができるようになる。
【0058】
すなわち、遷移層に組成勾配を持たせると、ドーパントをドーピングしたセラミック成型品は、均一にドーパントをドーピングしたセラミック成型品の焼結温度に比べて、より低い温度で焼結することができるようになる。
【0059】
また、組成勾配を持たせると、均一にドーピングしたセラミック材に比べて、高い焼結相対密度、高い表面硬度、目の細かい粒構造、改善された破壊靭性を、ドープド・セラミック材に持たせることができる。第1層中にドーパント、とりわけクロム酸化物(Cr2O3)があると、表面硬度を高くすることが可能となる。また、異常粒の成長を抑制するようにコントロールすると、組成勾配により表面圧縮応力状態が生じることが可能となって、破壊靭性を改善することができる。
[クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材]
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、
(a)アルミナ(Al2O3)と特定量のクロム酸化物(Cr2O3)とを含む第1層と、
(b)アルミナ(Al2O3)を含む第2層と、
(c)第1層から第2層へ向かう方向に量が減少するようにしたクロム酸化物(Cr2O3)を含み、第1層と第2層とをつなぐ遷移層と、
を有している。
【0060】
一実施例にあっては、第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量を、約0.1モル%〜約5モル%、約0.3モル%〜約5モル%、約0.6モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約3モル%〜約5モル%、約4モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1モル%、約0.1モル%〜約0.6モル%、及び約0.1モル%〜約0.3モル%からなるグループの中から選ぶようにしている。
【0061】
また、一実施例にあっては、第2層内に、クロム酸化物(Cr2O3)を実質的に含んでいない。
【0062】
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、少なくとも約98%の焼結相対密度を持つことが可能となる。
【0063】
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の平均粒径は、約0.5μm〜約5μm、約0.5μm〜約4μm、約0.5μm〜約3μm、約0.5μm〜約2μm、約0.5μm〜約1μm、約1μm〜約5μm、約2μm〜約5μm、約3μm〜約5μm、約4μm〜約5μmとなるグループの中から選ぶことができる。
【0064】
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の表面硬度は、少なくとも約17GPaとなるようにすることができる。
【0065】
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の破壊靭性は、少なくとも約3.6MPa(m1/2)となるようにすることができる。
【0066】
クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の形成方法は、
(a)第1層、第2層、第1層及び第2層をつなぐ遷移層を有する高焼結性のアルミナ(Al2O3)の予備成型品を準備するステップと、
(b)遷移層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量が第1層から第2層へ向かう方向に減少するように特定量のクロム酸化物(Cr2O3)を第1層にドーピングするステップと、
(c)クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)を形成するため、アルミナ(Al2O3)予備成型品を特定時間、特定温度で焼結するステップと、
を有する。
【0067】
上記ステップ(a)で定義した3つの層は、ステップ(a)に続くステップ(b)、(c)をより明確にするための先行詞として表現したものであって、セラミック予備成型出発品が三つに分離されてまったく別個の層になっているものと限定解釈してはならない。
【0068】
一実施例にあっては、第1層、第2層、及び遷移層は、一体構造として形成してある。
【0069】
上記準備ステップ(a)は、
(a-1)成型体を作るためアルミナ(Al2O3)粉の縣濁液を型に流し込むステップと、
(a-2)高焼結性のアルミナ(Al2O3)予備成型品を作るため成型体を所定時間、所定温度で仮焼きするステップと、
を有するようにしてもよい。
【0070】
上記型への流し込みステップ(a-1)は、(a-3)アルミナ(Al2O3)粉をこれらの平均粒径が約0.05μm〜約1μm、約0.05μm〜約0.8μm、約0.05μm〜約0.6μm、約0.05μm〜約0.4μm、約0.05μm〜約0.2μm、約0.05μm〜約0.1μm、約0.1μm〜約1μm、約0.2μm〜約1μm、約0.4μm〜約1μm、約0.6μm〜約1μm、約0.8μm〜約1μm、及び約0.1μm〜約0.2μmとなるようなグループの中から選ぶステップ、
を有するようにしてもよい。
【0071】
上記仮焼きステップ(a-2)は、成型体を、約700℃〜約1,100℃、約800℃〜約1,100℃、約900℃〜約1,100℃、約1,000℃〜約1,100℃、約700℃〜約1,000℃、約700℃〜約900℃、及び約700℃〜約800℃のグループの中から選んだ温度で仮焼きするステップを有するようにしてもよい。
【0072】
上記仮焼きステップ(a-2)は、(a-5)圧粉体を、約1時間〜約4時間、約2時間〜約4時間、約3時間〜約4時間、約1時間〜約3時間、約1時間〜約2時間からなるグループから選んだ特定時間の間、仮焼きするステップを有するようにしてもよい。
【0073】
ドーピング・ステップ(b)は、(b-1)第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量を、約0.1モル%〜約5モル%、約0.3モル%〜約5モル%、約0.6モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約3モル%〜約5モル%、約4モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1モル%、約0.1モル%〜約0.6モル%、及び約0.1モル%〜約0.3モル%からなるグループの中から選ぶステップを有するようにしてもよい。
【0074】
ドーピング・ステップ(b)は、(b-2)第2層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量が約0モル%となるように選ぶステップを有するようにしてもよい。
【0075】
また、ドーピング・ステップ(b)は、
(b-3)アルミナ(Al2O3)予備成型品内にクロム酸を浸透させるため、特定時間、特定濃度のクロム酸溶液にアルミナ(Al2O3)予備成型品を浸漬するステップと、
(b-4)してクロム酸をクロム酸化物(Cr2O3)に変えるため、所定時間、所定温度でアルミナ(Al2O3)予備成型品を加熱するステップと、
を有するようにしてもよい。
【0076】
浸漬ステップ(b-3)は、(b-5)約15分〜約5時間、約30分〜約5時間、約1時間〜約5時間、約2時間〜約5時間、約3時間〜約5時間、約4時間〜約5時間、約15分〜約4時間、約15分〜約3時間、約15分〜約2時間、約15分〜約1時間、及び約15分〜約30分からなるグループの中から選んだ時間の間、アルミナ(Al2O3)予備成型品をクロム酸の溶液に浸漬するステップを有するようにしてもよい。
【0077】
また、浸漬ステップ(b-3)は、(b-6)アルミナ(Al2O3)予備成型品をクロム酸の飽和溶液に浸漬するステップを有するようにしてもよい。
【0078】
加熱ステップ(b-4)は、(b-7)約15分〜約10時間、約15分〜約8時間、約15分〜約6時間、約15分〜約4時間、約15分〜約2時間、約15分〜約1時間、約1時間〜約10時間、約2時間〜約10時間、約4時間〜約10時間、約6時間〜約10時間、及び約8時間〜約10時間からなるグループの中から選んだ時間の間、アルミナ(Al2O3)予備成型品を加熱するステップを有するようにしてもよい。
【0079】
加熱ステップ(b-4)は、(b-8)約400℃〜約800℃、約500℃〜約800℃、約600℃〜約800℃、約700℃〜約800℃、約400℃〜約700℃、約400℃〜約600℃、約400℃〜約500℃、及び約450℃〜約750℃からなるグレープの中から選んだ温度でアルミナ(Al2O3)予備成型品を加熱するステップを有するようにしてもよい。
【0080】
焼結ステップ(c)は、(c-1)約1,200℃〜約1,600℃、約1,200℃〜約1,500℃、約1,200℃〜約1,400℃、約1,200℃〜約1,300℃、約1,300℃〜約1,600℃、約1,400℃〜約1,600℃、約1,500℃〜約1,600℃、及び約1,350℃〜約1,550℃からなるグレープの中から選んだ温度でアルミナ(Al2O3)予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0081】
焼結ステップ(c)は、(c-2)約1時間〜約24時間、約5時間〜約24時間、約10時間〜約24時間、約15時間〜約24時間、約20時間〜約24時間、約1時間〜約20時間、約1時間〜約15時間、約1時間〜約10時間、及び約1時間〜約5時間からなるグループの中から選んだ時間の間、アルミナ(Al2O3)予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0082】
焼結ステップ(c)は、(c-3)真空中でアルミナ(Al2O3)予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
【0083】
また、焼結ステップ(c)は、(c-4)酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、及びそれらの混合物からなるグループの中から選んだガスの環境下でアルミナ(Al2O3)予備成型品を焼結するステップを有するようにしてもよい。
[好ましい実施例]
さらに、発明の非限定例につき、具体例を参照しながらより詳細に説明する。ここで具体例はいかなる意味においても発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
[例1:クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の形成方法]
図1は、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の形成方法のステップを示す。
【0084】
ステップ1では、第1層110、第2層120、第1層110と第2層120とをつなぐ遷移層130を有する高焼結性のアルミナ(Al2O3)予備成型品を準備する。第1層110と第2層120と遷移層130とは、一体構造に形成してあり、はっきりと識別可能に分離した層ではない。高焼結性のアルミナ(Al2O3)予備成型品を準備するには、アルミナ(Al2O3)粉(平均粒径が0.18μm)の縣濁コロイドを型に入れてスリップキャストにより成型体を形成し、この成型体を1時間の間、850℃で仮焼きして高焼結性のアルミナ(Al2O3)予備成型品を形成する。この高焼結性のアルミナ(Al2O3)予備成型品は、64%の相対密度を有しており、17mm×17mm×6mmの寸法を有する長方形の予備成型品となるようにやすりがけする。
【0085】
ステップ2では、アルミナ(Al2O3)予備成型品をクロム酸の飽和溶液140中に1時間浸漬して、アルミナ(Al2O3)予備成型100の第1層110内が2.0モル%のクロム酸濃度となるようにする。一方、アルミナ(Al2O3)予備成型品100の第2層120にはクロム酸がないようにする。アルミナ(Al2O3)予備成型品100は、クロム酸溶液140から取り出して1時間80℃で乾燥する。その後、アルミナ(Al2O3)予備成型品100を1時間650℃で加熱すれば、クロム酸はクロム酸化物(Cr2O3)に変化する。
【0086】
ステップ3では、アルミナ(Al2O3)予備成型品100を炉150にて3時間真空下でかつ1,450℃で焼結し、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材を形成する。その後、この焼結した、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材を炉から取り出す。焼結した、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、15mm×15mm×5mmの最終的寸法とされる。
【0087】
第1層110や第2層120内におけるクロム酸とクロム酸化物(Cr2O3)との濃度は、X線回析にて測定した。
【0088】
図2は、上記各ステップにて形成した、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の中央面を示す。第1層110では領域115に示すようにクロム酸化物(Cr2O3)濃度が最高となり、第2層120では領域125に示すようにクロム酸化物(Cr2O3)濃度が最低となり、遷移層130では領域135に示すように第1層から第2層へ向かう方向にクロム酸化物(Cr2O3)濃度が減少する。より濃い色の領域はクロム酸化物(Cr2O3)がより高い濃度である領域を示し、より薄い色の領域はクロム酸化物(Cr2O3)がより低い濃度である領域を示す。
【0089】
図3は、上記各ステップにて形成したクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の4,000倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)による顕微鏡写真を示す。クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材100の平均粒径が5.0μmより小さいことが観察された。得られたクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、97%]以上の相対密度であった。
[例2:第1層内にそれぞれ0.0モル%,0.6モル%,1モル%,2モル%,及び3.5モル%のクロム酸化物(Cr2O3)濃度を有するクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材間における比較]
例1の方法を繰り返して、第1層がそれぞれ0.6モル%,1モル%,2モル%,及び3.5モル%のクロム酸化物(Cr2O3)濃度を有するクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材を形成した。
【0090】
ドーピングしていないアルミナ(Al2O3)材を準備するには、アルミナ(Al2O3)粉(平均粒径0.18μm)の縣濁コロイドを型に流し込んでスリップキャストにより成型体を作り、この成型体を1時間850℃で仮焼きしてアルミナ(Al2O3)予備成型品を作る。この後、このアルミナ(Al2O3)予備成型品を、真空下で3時間1,450℃の温度で焼結して、ドーピングしていないアルミナ(Al2O3)材を形成する。
【0091】
下記表1は、第1層が0.6モル%,1モル%,2モル%,及び3.5モル%のクロム酸化物(Cr2O3)濃度を有する各クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の相対密度、粒経、硬度、破壊靭性の値を表にしたものである。
【表1】

図4は、第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)濃度に応じた、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の平均粒径のグラフを示す。図4のグラフを作成するにあたっては、表1の値を用いた。どのクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材も、約5.0μmより大きい平均粒径のものはなく、また第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)濃度が増加するにつれて平均粒径は小さくなっていく結果となった。さらに、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、ドーピングしていないアルミナ(Al2O3)材に比べてさらに細かい粒径となった。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮ったクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の表面の顕微鏡写真から測定した。
【0092】
図5中、上半部半部の(a)と下半部の(b)とは、それぞれ第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)の含有量に応じた、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の表面硬度及び破壊靭性を示す。これらの図5のグラフを作成するにあたっては、表1の値を用いた。このグラフには、また市販のホワイト・アルミナ[3〜5体積%(vol%)のジルコニウム酸化物(ZrO2)を有するアルミナ(Al2O3)]材の硬度及び破壊靭性の値を示してある。
【0093】
本例で準備したクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材は、市販のホワイト・アルミナの表面硬度(15〜16GPa)に比べてより高い表面硬度(17.5〜21.5GPa)を示した。さらに、このクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の表面硬度は、第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)含有量が増加するにつれて大きくなることが観察された。
【0094】
各クロム酸化物(Cr2O3)濃度における破壊靭性については、3つの測定点[図5の(b)に示すグラフに3つの点で表してある]を得ている。破壊靭性は、ミクロの圧痕によって測定できる。一般的に、本例で準備したクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の破壊靭性は、市販のホワイト・アルミナと少なくとも同じかより高くなる。さらに、最適にドーピングしたアルミナ(Al2O3)材、すなわち第1層中に約1.0モル%のクロム酸化物(Cr2O3)をドーピングしたアルミナ(Al2O3)材は、ドーピングしていないアルミナ(Al2O3)に比べて著しく高い破壊靭性を示した。さらに、この破壊靭性は、第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)濃度が増加するにつれて大きくなる。
【0095】
表1と図5とを参照すると、第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)の量を約1.0モル%まで増加することで、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の表面硬度及び破壊靭性の両方を同時に大きくすることができることが観察された。
【0096】
第1層中のクロム酸化物(Cr2O3)の含有量をより増加させると、ドープド・アルミナの表面硬度は大きくなるものの、破壊靭性はドーピングしていないアルミナの破壊靭性まで小さくなることが観察された。
[例3:クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材で形成した切削工具インサートと市販のホワイト・アルミナ(3〜5体積%(vol%)のジルコニウム酸化物(ZrO2)を含むアルミナ(Al2O3))で形成した切削工具インサートとの工具寿命]
例1に記載の方法にしたがって、第1層内に2.0モル%のクロム酸化物(Cr2O3)の含有量を有するクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材で形成した切削工具インサート(C型インサートという)を製造した。
【0097】
また、2つのホワイト・アルミナ(3〜5体積%(vol%)のジルコニウム酸化物(ZrO2)を有するアルミナ(Al2O3))製の切削インサート(S型インサート、K型インサートという)を、比較するために準備した。
【0098】
C型、S型、K型の各インサートを用いて、切削剤なしで中炭素鋼を1,000メートル/分の高切削速度にて切削した。
【0099】
上記3つのインサートの平均粒径、室温特性、工具寿命を、下記表2に示す。
【表2】

回転検査を行って、3つのインサートの逃げ面摩耗と工具寿命とを評価した。オオクマ(LH35−H)のコンピュータ数値制御(CNC)旋盤を用いて上記3つのインサートの逃げ面摩耗と工具寿命とを測定した。切削ジオメトリとしては、−6°の傾き角、−6°のすくい角、75°の切り込み角、6°の逃げ角を設定した。送り速度と切削深さは、それぞれ0.25ミリメートル/回転、1.5ミリメートルとした。
【0100】
図6に、時間の関数として逃げ面摩耗のグラフを示す。各インサートの工具寿命は、表2の最後の欄に示してあり、所定の逃げ面摩耗(マイクロメートル/分)となるのに要する時間(分)で表してある。
【0101】
図6及び表2から分かるように、C型の切削工具インサートは、優れた耐逃げ面摩耗性を示し、工具寿命が大幅に長くなる。
【0102】
また、(低い温度で焼結することにより)その粒径を小さくすることで、及び/あるいは(クロム酸化物(Cr2O3)のドーピング量を多くすることにより)表面硬度を硬くすることで、C型の切削工具インサートの性能をさらに向上させることが可能であることが分かる。図5の(a)を参照すると、第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の含有量を4.0モル%以上に増やすと、表面硬度を、22GPaを超えるまで大きくすることができる。
【0103】
開示したドープド・セラミック材とこれの形成方法とは、アルミナ材やクロム酸化物のドーパントに限られることなく、他の種類のセラミック材やドーパントにも広げることができる。
【0104】
開示した実施例のドープド・セラミック材は、同程度の相対密度を有するドーピングしないセラミック材や均一にドーピングしたセラミック材よりもおおむね高い、少なくとも97%の相対密度を有することができる。
【0105】
開示した実施例のドープド・セラミック材では、約0.5μm〜約5μm、約0.5μm〜約4μm、約0.5μm〜約3μm、約0.5μm〜約2μm、約0.5μm〜約1μm、約1μm〜約5μm、約2μm〜約5μm、約3μm〜約5μm、及び約4μm〜約5μmからなるグループの中から選んだ平均粒径を有することが可能である。これらの平均粒径は、同程度の相対密度を有するドーピングしないセラミック材や均一にドーピングしたセラミック材よりもおおむねきめが細かい。
【0106】
開示した実施例のドープド・セラミック材は、少なくとも17GPaの表面硬度にすることができ、この表面硬度の値は同程度の相対密度を有するドーピングしないセラミック材や均一にドーピングしたセラミック材よりもおしなべて高い。
【0107】
開示した実施例のドープド・セラミック材には、少なくとも3.6MPa(m1/2)の破壊靭性を持たせることができ、この破壊靭性の値は同程度の相対密度を有するドーピングしないセラミック材や均一にドーピングしたセラミック材よりもおしなべて高い。
【0108】
開示した実施例のドープド・セラミック材は、均一にドーピングしたセラミック材よりも一般に低い温度で焼結することができる。このことにより、第2層の高焼結性を得ることができる。
【0109】
本発明の精神や範囲から離れることなく上記開示内容を読んだ後に本発明の他のいろいろな変形や変更を行えることは当業者にとって明らかであり、そのような変形例や変更例は特許請求の範囲内に含まれることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、カーボン・スティールなどを高速で切削するのに使用するセラミック材の切削工具等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例のドープド・セラミック材の形成方法におけるステップ1からステップ3を示す図
【図2】実施例により生産したクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の中央面での断面図
【図3】実施例の第1層内にクロム酸化物(Cr2O3)を2.0モル%(mol%)となるようにドーピングしたセラミック材の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて4,000倍に拡大した顕微鏡写真の図
【図4】第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量を関数として、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の平均粒径を示すグラフの図
【図5】第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量を関数として、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の室温での表面硬度を示すグラフ、及び第1層内のクロム酸化物(Cr2O3)の量を関数として、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の破壊靱性を示すグラフの図
【図6】実施例のクロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材を含むアルミナ切削工具のインサートを異ならせて、切削剤なしで中炭素鋼を1,000メートル/分の速度で切削した場合における、インサートの逃げ面摩耗の挙動を示す図
【符号の説明】
【0112】
100 ドープド・アルミナ(Al2O3)予備成型品
110 第1層
115 領域
120 第2層
125 領域
130 遷移層
135 領域
140 クロム酸の飽和溶液
150 炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材と特定量のドーパントとを含む第1層と、
前記セラミック材を含む第2層と、
前記第1層から前記第2層に向かう方向に量が減少するようにした前記ドーパントを含み、前記第1層と前記第2層とをつなぐ遷移層と、
を有するドープド・セラミック材。
【請求項2】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記セラミック材を、元素周期表のIIIA族の元素、IVA族の元素、IVB族の元素、VA族の元素、及びVIA族の元素の中から選んだ少なくとも二つの元素で形成したドープド・セラミック材。
【請求項3】
請求項2に記載のドープド・セラミック材において、前記セラミック材が、シリコンカーバイト(SiC)、シリコン窒化物(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミニウム窒化物(AlN)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、及びこれらの混合物からなるグループの中から選ばれたドープド・セラミック材。
【請求項4】
請求項3に記載のドープド・セラミック材において、前記セラミック材が、アルミナ(Al2O3)であるドープド・セラミック材。
【請求項5】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記ドーパントが、金属酸化物であるドープド・セラミック材。
【請求項6】
請求項5に記載のドープド・セラミック材において、前記金属酸化物が、遷移金属酸化物であるドープド・セラミック材。
【請求項7】
請求項6に記載のドープド・セラミック材において、前記遷移金属酸化物が、クロム酸化物(Cr2O3)であるドープド・セラミック材。
【請求項8】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記第1層中の前記ドーパントが、約0.1モル%〜約5モル%、約0.3モル%〜約5モル%、約0.6モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約3モル%〜約5モル%、約4モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1モル%、約0.1モル%〜約0.6モル%、及び約0.1モル%〜約0.3モル%からなるグループの中から選択した量を有するドープド・セラミック材。
【請求項9】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記第2層が、実質的にドーパントを含まないドープド・セラミック材。
【請求項10】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記ドープド・セラミック材が、少なくとも約97%の焼結相対密度を有するドープド・セラミック材。
【請求項11】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記ドープド・セラミック材が、約0.5μm〜約5μm、約0.5μm〜約4μm、約0.5μm〜約3μm、約0.5μm〜約2μm、約0.5μm〜約1μm、約1μm〜約5μm、約2μm〜約5μm、約3μm〜約5μm、及び約4μm〜約5μmからなるグループの中から選んだ平均粒径を有するドープド・セラミック材。
【請求項12】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記ドープド・セラミック材が、少なくとも約17GPaの表面硬度を有するドープド・セラミック材。
【請求項13】
請求項1に記載のドープド・セラミック材において、前記ドープド・セラミック材が、少なくとも約3.6MPa(m1/2)の破壊靱性を有するドープド・セラミック材。
【請求項14】
(a) 第1層、第2層、前記第1層と前記第2層をつなぐ遷移層を有する高焼結性セラミック予備成型品を準備するステップと、
(b) 前記遷移層内に含まれる前記ドーパントの量が前記第1層から前記第2層に向かうに方向に減少するように前記セラミック予備成型品の前記第1層に特定量のドーパントをドーピングするステップと、
(c) ドープド・セラミック材を形成するため特定時間、特定温度で前記セラミック予備成型品を焼結するステップと、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記第1層、前記第2層、及び前記遷移層を、一体構造に形成するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項16】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記高焼結性セラミック予備成型品の準備ステップ(a)が、
(a1) 圧粉体を形成するためにセラミック粉の懸濁液を型に流し込むステップと、
(a2) 前記高焼結性セラミック予備成型品を形成するため前記圧粉体を特定時間、特定温度で仮焼きするステップと、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項17】
請求項16に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記型への流し込みステップ(a1)が、
(a3) 前記セラミック粉を、この平均粒径が約0.05μm〜約1μm、約0.05μm〜約0.8μm、約0.05μm〜約0.6μm、約0.05μm〜約0.4μm、約0.05μm〜約0.2μm、約0.05μm〜約0.1μm、約0.1μm〜約1μm、約0.2μm〜約1μm、約0.4μm〜約1μm、約0.6μm〜約1μm、約0.8μm〜約1μm、及び約0.1μm〜約0.2μmとなるグループの中から選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項18】
請求項16に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記圧粉体の仮焼きステップ(a2)が、
(a4) 前記圧粉体を、約700℃〜約1,100℃、約800℃〜約1,100℃、約900℃〜約1,100℃、約1,000℃〜約1,100℃、約700℃〜約1,000℃、約700℃〜約900℃、及び約700℃〜約800℃のグループの中から選んだ温度で仮焼きするステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項19】
請求項16に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記圧粉体の仮焼きステップ(a2)が、
(a5) 前記圧粉体を、約1時間〜約4時間、約2時間〜約4時間、約3時間〜約4時間、約1時間〜約3時間、約1時間〜約2時間からなるグループの中から選んだ時間、仮焼きするステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項20】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記高焼結性セラミック予備成型品の準備ステップ(a)が、
(a6) 前記セラミック予備成型品を、元素周期表のIIIA族の元素、IVA族の元素、IVB族の元素、VA族の元素、及びVIA族の元素のグループの中の少なくとも二つの元素で形成した混合物から選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項21】
請求項20に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記混合物からの選択ステップ(a6)が、
(a7) 前記セラミック予備成型品を、シリコンカーバイト(SiC)、シリコン窒化物(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミニウム窒化物(AlN)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、及びこれらの混合物からなるグループの中から選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項22】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記高焼結性セラミック予備成型品の準備ステップ(a)が、
(a8) 前記セラミック予備成型品を形作るステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項23】
請求項21に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記セラミック予備成型品の材料の選択ステップ(a7)が、
(a9) 前記セラミック予備成型品にアルミナ(Al2O3)を選ぶステップ、
を有するドープト゛・セラミック材の形成方法。
【請求項24】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記ドーピング・ステップ(b)が、
(b1) 前記ドーパントに金属酸化物を選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項25】
請求項24に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記金属酸化物の選択ステップ(b1)が、
(b2) 前記金属酸化物に遷移金属酸化物を選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項26】
請求項25に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記遷移金属酸化物の選択ステップ(b2)が、
(b3) 前記遷移金属酸化物にクロム酸化物(Cr2O3)を選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項27】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記ドーピング・ステップ(b)が、
(b4) 前記第1層中の前記ドーパントの量を、約0.1モル%〜約5モル%、約0.3モル%〜約5モル%、約0.6モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約3モル%〜約5モル%、約4モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1モル%、約0.1モル%〜約0.6モル%、及び約0.1モル%〜約0.3モル%からなるグループの中から選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項28】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記ドーピング・ステップ(b)が、
(b5) 前記第2層のドーパントの量を、約0モル%に選ぶステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項29】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記ドーピング・ステップ(b)が、
(b6) 前記第1層に前記選定量のドーパントをドーピングし、前記セラミック予備成型品中に前記ドーパントを浸透させるため、選定した時間の間、選定濃度を有するドーパント溶液に前記セラミック予備成型品を浸漬するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項30】
請求項29に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記浸漬ステップ(b6)が、
(b7) 約15分〜約5時間、約30分〜約5時間、約1時間〜約5時間、約2時間〜約5時間、約3時間〜約5時間、約4時間〜約5時間、約15分〜約4時間、約15分〜約3時間、約15分〜約2時間、約15分〜約1時間、及び約15分〜約30分からなるグループの中から選んだ時間の間、前記セラミック予備成型品をドーパントの溶液中に浸漬するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項31】
請求項29に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記浸漬ステップ(b6)が、
(b8) 前記セラミック予備成型品を前記ドーパントの飽和溶液中に浸漬するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項32】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記焼結ステップ(c)が、
(c1) 約1,200℃〜約1,600℃、約1,200℃〜約1,500℃、約1,200℃〜約1,400℃、約1,200℃〜約1,300℃、約1,300℃〜約1,600℃、約1,400℃〜約1,600℃、約1,500℃〜約1,600℃、及び約1,350℃〜約1,550℃からなるグレープの中から選んだ温度で前記セラミック予備成型品を焼結するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項33】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記焼結ステップ(c)が、
(c2) 約1時間〜約24時間、約5時間〜約24時間、約10時間〜約24時間、約15時間〜約24時間、約20時間〜約24時間、約1時間〜約20時間、約1時間〜約15時間、約1時間〜約10時間、及び約1時間〜約5時間からなるグループの中から選んだ時間の間、前記セラミック予備成型品を焼結するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項34】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記焼結ステップ(c)が、
(c3) 真空中で前記セラミック予備成型品を焼結するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項35】
請求項14に記載のドープド・セラミック材の形成方法において、前記焼結ステップ(c)が、
(c4) 酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、及びそれらの組み合わせからなるグループの中から選んだガスの環境下で前記セラミック予備成型品を焼結するステップ、
を有するドープド・セラミック材の形成方法。
【請求項36】
(a) アルミナ(Al2O3)と特定量のクロム酸化物(Cr2O3)とを含む第1層と、
(b) 前記アルミナ(Al2O3)を含む第2層と、
(c) 前記第1層から前記第2層に向かう方向に量が減少する前記クロム酸化物(Cr2O3)を含み、前記第1層と前記第2層とをつなぐ遷移層と、
を有するクロム酸化物・ドープド・アルミナ材。
【請求項37】
(a) 第1層、第2層、前記第1層と前記第2層とをつなぐ遷移層を有する高焼結性アルミナ(Al2O3)予備成型品を準備するステップと、
(b) 前記遷移層内の前記クロム酸化物(Cr2O3)の量が前記第1層から前記第2層に向かう方向に減少するように前記第1層に特定量のクロム酸化物(Cr2O3)をドーピングするステップと、
(c) 前記クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ材を形成するため、特定時間、特定温度で前記アルミナ(Al2O3)予備成型品を焼結するステップと、
を有する、クロム酸化物(Cr2O3)・ドープド・アルミナ(Al2O3)材の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−199581(P2006−199581A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−380741(P2005−380741)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(304038747)ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール (10)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE
【住所又は居所原語表記】10 Kent Ridge Crescent, Singapore 119260
【Fターム(参考)】