説明

ナノインプリント用硬化性組成物およびパターン形成方法

【課題】モールド剥離性、エッチング耐性および耐溶剤性に優れたパターンを形成可能なナノインプリント用硬化性組成物およびこれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)と、光重合開始剤(B)と、を含むことを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物およびこれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用硬化性組成物に関する。より詳しくは、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、等の作製に用いられる光照射を利用した微細パターン形成のためのインプリント用硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法の適用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術としてナノインプリントリソグラフィ(光ナノインプリント法)が提案された。例えば、下記特許文献1および3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0007】
ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは、ヘッドの高性能化とメディアの高性能化とを両輪とし、大容量化と小型化との歴史を歩んできた。HDDは、メディア高性能化という観点においては、面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込み生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。これらメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリントの応用が提案されている。本用途においても数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリ法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、下記特許文献4および5に記載される透明保護膜材料や、あるいは下記特許文献5に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリントリソグラフィは有用である。
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。
【0010】
これらの用途においては良好なパターンが形成されることが前提であるが、パターン形成においてナノインプリント法に関しては、モールドとナノインプリント用硬化性組成物との剥離性が重要である。マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し、ナノインプリント法においてはモールドとナノインプリント用硬化性組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドに組成物の残渣が付着すると以降のインプリント時にパターン欠陥となってしまう問題がある。これに対しモールドの表面処理、具体的には、フロロアルキル鎖含有シランカップリング剤をモールド表面に結合させる方法や、モールドのフッ素プラズマ処理、フッ素含有樹脂モールドを用いる方法などにより付着問題を解決するなどの試みがこれまでになされてきた。しかしながら、量産時にはモールドには数万回のインプリント耐久性が求められており、モールド表面処理だけでなく、ナノインプリント用硬化性組成物からのモールド剥離性改良が求められている。
【0011】
下記特許文献7には、モールドとの剥離性をよくするために、フッソ含有硬化性材料を用いたパターン形成方法が開示されている。また、下記特許文献8には、ドライエッチング性を付与する為に、環状構造を含む(メタ)アクリレートモノマーを用いるナノインプイリント用の光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2000−143924号公報
【特許文献8】特開2007−186570号公報
【非特許文献1】S.Chou et al., Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al., Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のようにナノインプリント法を工業的に利用する上では、ナノインプリント用硬化性組成物のパターン形成性、特にモールド剥離性が極めて重要である。さらに、ナノインプリント用硬化性組成物には、エッチング耐性やパターン耐久性といった用途に応じた膜特性が要求される。しかし、上記特許文献7に提案されるパターン形成方法においては、フッ素系材料はエッチング耐性が低く、エッチングの際にパターンの劣化が大きいといった問題があった。また、上記特許文献8に提案にされる光硬化性樹脂組成物においても、パターン形成性や耐溶剤性が十分ではなく、従来の技術では、ナノインプリント用硬化性樹脂のパターン形成性と膜特性とを同時に達成することは困難であった。
【0014】
本発明の目的は、光硬化性はもちろんのこと、ナノメートルパターンに対応可能な微細パターン形成性、特にモールド剥離性に優れ、且つ、基板加工用途に求められる高いエッチング耐性、および、永久膜に求められる耐溶剤性を有するナノインプリントリソグラフィに用いられるナノインプリント用硬化性組成物およびこれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の通りである。
[1] 多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)と、光重合開始剤(B)と、を含むことを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物である。
【0016】
[2] 前記重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造が、炭化水素系多環芳香族構造であることを特徴とする[1]に記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0017】
[3] 前記重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造が、ナフタレン構造であることを特徴とする[1]または[2]に記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0018】
[4] 前記重合性単量体(Ax)が、ラジカル重合性官能基を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいれずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0019】
[5] 前記重合性単量体(Ax)が、(メタ)アクリル基、ビニル基およびアリル基から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0020】
[6] 前記重合性単量体(Ax)が、下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0021】
【化1】

(式(I)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは、単結合または有機連結基を示し、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0022】
[7] 前記重合性単量体(Ax)が、下記式(IA)で表される化合物であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0023】
【化2】

(式(IA)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは単結合または有機連結基を示し、mは1〜3の整数を示し、R2有機置換基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
[8] 前記重合性単量体(Ax)が、下記一般式(IC)または(ID)の少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化3】

(式(IC)および(IC)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を表す。)
【0024】
[9] さらに、前記重合性単量体(Ax)と異なる他の重合性単量体を含むことを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0025】
[10] 全重合性単量体に対し溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
【0026】
[11] さらに、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物である。
[12] さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、並びに、乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有することを特徴とする[1]〜[11]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【0027】
[13] [1]〜[12]のいずれか1つに記載のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、モールド剥離性、エッチング耐性および耐溶剤性に優れたパターンを形成可能なナノインプリント用硬化性組成物を提供することができる。また、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いた本発明のパターン形成方法によれば、モールド剥離性、エッチング耐性および耐溶剤性に優れたパターンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0030】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合反応に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“ナノインプリント”とは、およそ数nmから数μmのサイズのパターン転写をいう。
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0031】
[本発明のナノインプリント用硬化性組成物]
本発明のナノインプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)は、少なくとも、多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)と、光重合開始剤(B)と、を含む。通常、光ナノインプリント法に用いられる硬化性組成物は、重合性官能基を有する重合性単量体と、光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤と、を含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本発明のナノインプリント用硬化性組成物においては、重合性官能基を有する重合性単量体(以下、本発明の組成物に含有される重合性単量体を総称して「光重合性単量体(A)」と称する場合がある)として少なくとも前記重合性単量体(Ax)を含む。本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)を含むことで、ナノインプリント法によってモールド剥離性、エッチング耐性および耐溶剤性に優れたパターンを形成することができる。
【0032】
(重合性単量体)
−重合性単量体(Ax)−
本発明における重合性単量体(Ax)は、重合性官能基を含む化合物である。前記重合性官能基としては、カチオン重合性官能基、ラジカル重合性官能基が挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましい。前記カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基が好ましい。また、前記ラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基が好ましい。本発明における重合性単量体(Ax)中に含まれる重合性官能基の数は、硬化性、粘度の観点から1〜4が好ましく、1〜2がさらに好ましい。
また、本発明における重合性単量体(Ax)は多環芳香族構造、即ち、少なくとも2以上の環構造が縮合している縮合多環式の芳香族構造を有する。したがって、前記多環芳香族構造には、ビスフェノール等の2以上の単独の芳香環が単結合や有機連結基で連結されている環集合構造は含まれない。また、本発明において「多環芳香族」とは、ナフタレン等の縮合している環が全て芳香環であるもののみではなく、芳香環と非芳香環とが縮合した、例えば、ベンゼンとシクロヘキサンとが融合した1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン構造等なども含まれる。また、本発明における多環芳香族構造は、2〜4の縮合環構造であることが好ましく、2〜3の縮合環構造であることがさらに好ましく、2つの縮合環構造であることが特に好ましい。ナノインプリント用硬化性組成物中に、多環芳香族構造を有する重合性単量体が含まれていない、即ち、ナノインプリント用硬化組成物中の全ての重合化合物が、1以下の環芳香族構造を有する化合物であると、ドライエッチング時においてパターンの劣化が大きく(すなわち、ドライエッチング耐性が低い)、また、パターン現像時における溶剤耐性も十分ではなく、さらにモールドとパターンとの剥離性も低くなってしまい、これらの性能を十分に高いレベルで同時に発揮することができない。本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、特にナノメートルオーダーのパターンを形成する際であっても、モールドとの剥離性が良好である。
【0033】
本発明における重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどの炭化水素系多環芳香族構造のほか、インドール、カルバゾール、キノリン、ベンソイソキノリンなどのヘテロ多環芳香族構造などが挙げられる。本発明における多環芳香族構造としては、炭化水素系多環芳香族構造が好ましく、さらに好ましくはナフタレン構造、アントラセン構造であり、特に好ましくはナフタレン構造である。
【0034】
本発明における重合性単量体(Ax)の炭素数としては、粘度、耐溶剤性の観点から10〜30が好ましく、10〜20がさらに好ましく、11〜16が特に好ましい。また、重合性単量体(Ax)の分子量は、粘度、耐溶剤性の観点から150〜400が好ましく、150〜300がさらに好ましく、190〜300が特に好ましい。
【0035】
多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化4】

(式(I)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは、単結合または有機連結基を示し、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0037】
前記式(I)において、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を示す。前記置換基を有していてもよいアルキル基としては、硬化性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。前記アルキル基が有していてもよい置換基としては、好ましくはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基が挙げられる。
1および前記アルキル基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0038】
前記式(I)において、Xは単結合または有機連結基を示す。前記有機連結基としては、−O−、−C(=O)O−、−C(=O)NRx−(Rxは、水素原子または有機基を示し、前記有機基としては、アリール基、アルキル基が好ましい)、アルキレン基、およびこれらの複数が組み合わさった連結基が好ましく、−C(=O)O−、−C(=O)O−アルキレン−がさらに好ましい。
また、式(I)中、mは1〜3の整数を示し、粘度、硬化性の観点から、1または2が好ましい。mが2以上のとき、複数存在するX、R1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0039】
前記式(I)において、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示す。該前記多環芳香族基は、上述の多環芳香族構造を有する基を意味し、ナフタレン構造を有する基であることが好ましい。前記Lの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0040】
本発明における多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)としては、下記式(IA)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0041】
【化5】

(式(IA)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは単結合または有機連結基を示し、mは1〜3の整数を示し、R2有機置換基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
【0042】
式(IA)中のR1、X、mは、上述の式(I)におけるものと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、mが2以上の時、複数存在するXおよびR1は同一でもよいし、異なっていてもよい。
式(IA)中、R2は有機置換基を示す。前記有機置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基が好ましい
【0043】
式(IA)中、nは0〜6の整数を示し、0〜3が好ましい。nが2以上の時、複数存在するR2は同一でもあってもよいし異なっていてもよい。前記式(IA)で表される化合物として、好ましくは、ナフタレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類またはナフタレン構造を有するアクリルアミド類であり、特に好ましくは式(IB)で表される化合物である
【0044】
【化6】

【0045】
前記式(IB)中、Yは単結合または鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を示す。該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、−(CH2CH2O)−が挙げられ、メチレン基が好ましい。前記Yとしては、エッチング耐性、耐溶剤性の観点から、単結合、メチレン基が好ましい。mが2以上の時、複数存在するYおよびR1は同一でもよいし、異なっていてもよい
【0046】
前記重合性単量体(Ax)としては、下記式(IC)または(ID)で表される化合物であることが、低粘度で他の成分との相溶性に優れ、且つ、モールド充填性が良好となる観点から、さらに好ましい。なお、モールド充填性が向上すると、ナノインプリント法によるパターン量産時においてモールド圧接圧力を高くしなくても速やかにモールドに硬化性組成物が充填され、モールド耐久性およびスループットの観点からより好ましいこととなる。
【0047】
【化7】

【0048】
前記式(IB)中、R1は、上述の式(IA)におけるものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
以下に本発明における重合性単量体(Ax)の具体例(化合物(I−1)〜(I−29)を示す。
【0050】
【化8】

【0051】
本発明の組成物に用いられる重合性単量体(Ax)は常法により合成可能である。例えば式(IB)の化合物は一般的なエステル化合物の合成法により合成可能である。具体的には下記Schme1に示すようなカルボン酸とアルコールを酸条件下反応させる方法、下記Scheme2に示すようなカルボン酸エステルとアルコールのエステル交換法、下記Scheme3に示すようなカルボン酸と脱離基(好ましくはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基)を有する化合物を塩基性条件下で反応させる方法等により合成することができる。
【0052】
【化9】

【0053】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物中における重合性単量体の総含有量は、硬化性の観点から、溶剤を除く全成分中、50〜99.5質量%が好ましく、70〜99質量%がさらに好ましく、90〜99質量%が特に好ましい。本発明における重合性単量体(Ax)の含有量は、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を1つ有する化合物である場合には、ドライエッチング耐性、耐溶剤性、パターン形成性の観点から、全重合性単量体中5〜100質量%が好ましく、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは30〜100質量%である。また、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を2つ有する化合物である場合には、本発明における重合性単量体(Ax)の含有量は全重合性単量体中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。また、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を3つ以上有する化合物である場合には、本発明における重合性単量体(Ax)の含有量は、全重合性単量体中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。即ち、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、特に重合性単量体(Ax)が2以上の重合性官能基を有する場合には、重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0054】
−他の重合性単量体−
上述のように本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、さらに、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を目的に、重合性単量体として、さらに、重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体を含んでいてもよい。前記他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0055】
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
これらの中で特に、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0056】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0057】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0058】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0060】
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0061】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0062】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0063】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0065】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0066】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
また、本発明で用いる他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0068】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0069】
本発明で用いる他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0070】
上述の他の重合性単量体は、本発明における重合性単量体の含有量によってその好ましい含有量が変わるが、例えば、本発明の組成物中に含まれる全重合性単量体に対して0〜90質量%の範囲で含むことが好ましく、5〜80質量%の範囲で含むことがより好ましく、10〜50質量%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0071】
次に、本発明における重合性単量体(Ax)および他の重合性単量体(以下、これらを併せて「重合性不飽和単量体」ということがある)の好ましいブレンド形態について説明する。
1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明のナノインプリント硬化性組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜80質量%がさらにこのましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは、60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
本発明における重合性単量体(Ax)および他の重合性単量体の更に好ましいブレンド形態としては全重合性単量体中、1官能の重合性単量体(Ax)を20〜90質量%、重合性単量体(Ax)以外の1官能の重合性単量体を0〜50質量%、重合性単量体(Ax)以外の2及び/又は3官能の重合性単量体を10〜50質量%、4官能以上の重合性単量体を0〜30質量%含有する形態である。最も好ましいブレンド形態としては、1官能の重合性単量体(Ax)を40〜80質量%、重合性単量体(Ax)以外の1官能の重合性単量体を0〜40質量%、重合性単量体(Ax)以外の2及び/又は3官能の重合性単量体を20〜50質量%、4官能以上の重合性単量体を0〜10質量%含有する形態である。更に、上記ブレンド形態に加えて、重合性官能基としてアクリレート基を有する重合性単量体が全重合性単量体中90〜100質量%である形態である。これにより、光硬化性、モールド充填性、ドライエッチング耐性、モールド剥離性を高いレベルで両立することができる。
【0072】
(光重合開始剤(B))
本発明のナノインプリント硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤、光照射により酸を発生するカチオン重合開始剤が好ましく、より好ましくはラジカル重合開始剤であるが、前記重合性単量体の重合性基の種類に応じて適宜決定される。即ち、本発明における光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる必要がある。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0073】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、組成物に含まれる全重合性単量体に対して、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光ナノインプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明のナノインプリント硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0074】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。光重合開始剤は例えば市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0075】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0076】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、光硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させるなどの問題を生じる。
【0077】
本発明のナノインプリント硬化性組成物は、重合性単量体(A)がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤(B)が光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であるラジカル重合性組成物であることが好ましい。
【0078】
(その他成分)
本発明のナノインプリント硬化性組成物は、上述の重合性単量体(A)および光重合開始剤(B)の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント硬化性組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0079】
−界面活性剤−
本発明のナノインプリント硬化性組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0080】
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のナノインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のナノインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0081】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0082】
−酸化防止剤−
さらに、本発明のナノインプリント硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性単量体の総量に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0083】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0084】
−溶剤−
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性の観点から、組成物の0〜95質量%が好ましく、0〜90質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がさらに好ましく、40〜90質量%が特に好ましい。
【0085】
−ポリマー成分−
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上する。また、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない法が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0086】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0087】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光ナノインプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1〜100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは2〜50mPa・s、更に好ましくは5〜30mPa・sである。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、更に残膜を低く抑えることができる。
【0088】
[パターン形成方法]
次に、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。
ここで、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させることが好ましい。具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。本発明のパターン形成方法による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0089】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、光ナノインプリント法により微細なパターンを低コスト且つ高い精度で形成すること可能である。このため、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて形成されていたものをさらに高い精度且つ低コストで形成することができる。例えば、基板または支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることによって、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜や、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。特に本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いて形成されたパターンは、エッチング性にも優れ、フッ化炭素等を用いるドライエッチングのエッチングレジストとしても好ましく用いることができる。
【0090】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)や電子材料の基板加工に用いられるレジストにおいては、製品の動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましい。このため、本発明のナノインプリント用硬化性組成物中における金属または有機物のイオン性不純物の濃度としては、1000ppm以下、望ましくは10ppm以下、さらに好ましくは100ppb以下にすることが好ましい。
【0091】
以下において、本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布する際の塗布方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、インクジェット法などを挙げることができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。尚、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基材とが直接接しないことから、基材に対するごみの付着や基材の損傷等を防止したり、パターン形成層と基材との密着性を向上したりすることができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0092】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0093】
次いで、本発明のパターン形成方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明のナノインプリント用硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光ナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0094】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0095】
本発明において光透過性の基材を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0096】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、光ナノインプリント用硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0097】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の光ナノインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0098】
本発明のパターン形成方法中、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光ナノインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0099】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0100】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0101】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要におうじて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0102】
また、本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、エッチングレジストとしても有用である。本発明のナノインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。
【0103】
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0105】
[合成例1]
−化合物(I−1A)の合成−
α−ナフトール150gを酢酸エチル600mlに溶解させ、これにトリエチルアミン158gを加えた。この溶液に氷冷下アクリル酸クロリド113gを1時間かけて加えた。室温で5時間反応させた後、水100mlを加え1時間攪拌した。攪拌後、有機相を1N−塩酸水溶液で洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、下記化合物(I−1A)を100g得た。化合物(I−1A)は室温で液体であり25℃における粘度は27.8mPa・sであった。
1H−NMR(CDCl3):δ6.1(d,1H)、δ6.5(dd,1H)、δ6.75(d,1H)、δ7.3(d,1H)、δ7.5(m,3H)、δ7.8(d,1H)、δ7.8−7.9(m,2H)
また、上記合成例において、アクリル酸クロリドをメタクリル酸クロリドに変えて合成することにより、化合物(I−1M)を合成した。
【0106】
[合成例2]
−化合物(I−2A)の合成−
β−ナフトール70gをアセトン400mlに溶解させ、これにトリエチルアミン69gを加えた。この溶液に氷冷下アクリル酸クロリド53gを1時間かけて加えた。室温で5時間反応させた後、水300mlを加え1時間攪拌した。これを酢酸エチルで2回抽出し、有機相を1N−塩酸水溶液で洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(I−2A)を51g得た。
1H−NMR(CDCl3):δ6.05(d,1H)、δ6.4(dd,1H)、δ6.65(d,1H)、δ7.3(d,1H)、δ7.5(m,2H)、δ7.6(s,1H)、δ7.8−7.9(m,3H)
【0107】
[合成例3]
−化合物(I−3A)の合成−
1−ヒドロキシメチルナフタレン30gをアセトン200mlに溶解させ、これにトリエチルアミン31gを加えた。この溶液に氷冷下アクリル酸クロリド22gを30分かけて加えた。室温で5時間反応させた後、水100mlを加え1時間攪拌した。これを酢酸エチルで2回抽出し、有機相を1N−塩酸水溶液で洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(I−3A)を32g得た。化合物(I−3A)は室温で液体であり25℃における粘度は26.0mPa・sであった。
1H−NMR(CDCl3):δ6.05(d,1H)、δ6.4(dd,1H)、δ6.65(d,1H)、δ7.3(d,1H)、δ7.5(m,2H)、δ7.6(s,1H)、δ7.8−7.9(m,3H)
【0108】
[合成例4]
−化合物(I−4A)の合成−
上記化合物(I−3A)の合成において1−ヒドロキシメチルナフタレンを2−ヒドロキシメチルナフタレンに変えた以外は合成例3と同様の手法を用いて合成した。化合物(I−4A)は0℃にて保管すると固体状となり、融点は23〜25℃であったが、25℃で保管している限りは液体であり25℃における粘度は11.0mPa・sであった。
【0109】
[合成例5]
−化合物(I−8A)の合成−
β−ナフトールを1,5−ジヒドロキシナフタレンに変えた以外は、合成例2と同様の手法を用いて合成した。
1H−NMR(CDCl3):δ6.1(d,2H)、δ6.5(dd,2H)、δ6.75(d,2H)、δ7.35(d,2H)、δ7.5(t,2H)、δ7.8(d,2H)
【0110】
[合成例6]
−化合物(I−9A)の合成−
β−ナフトールを2,7−ジヒドロキシナフタレンに変えた以外は、合成例2と同様の手法を用いて合成した。
1H−NMR(CDCl3):δ6.05(d,2H)、δ6.4(dd,2H)、δ6.65(d,2H)、δ7.25(d,2H)、δ7.6(s,2H)、δ7.85(d,2H)
【0111】
[合成例7]
−化合物(I−10A)の合成−
β−ナフトールを1,3−ジヒドロキシナフタレンに変えた以外は、合成例2と同様の手法を用いて合成した。
1H−NMR(CDCl3):δ6.05(d,1H)、δ6.1(d,1H)、δ6.4(dd,1H)、δ6.45(dd,1H)、δ6.7(d,1H)、δ6.75(d,1H)、δ7.25(s,1H)、δ7.5−7.6(m,3H)、δ7.8−7.9(m,2H)
【0112】
[合成例8]
−化合物(I−11A)の合成−
β−ナフトールを2,3−ジヒドロキシナフタレンに変えた以外は、合成例2と同様の手法を用いて合成した。
1H−NMR(CDCl3):δ6.0(d,2H)、δ6.5(dd,2H)、δ6.6(d,2H)、δ7.5(m,2H)、δ7.75(s,2H)、δ7.8(m,2H)
【0113】
化合物(I−1A)、(I−3A)および(I−4A)は室温において液状であり、且つ粘度が低く、特に好適である。また、化合物(I−2A)は室温において固体状ではあるが、他の重合性単量体との相溶性が良好であり、好適に用いることができる。これらの中でも特に化合物(I−4A)は最も粘度が低く、モールド充填性が良好となり、好適に用いることが出来る。
【0114】
(ナノインプリント用硬化性組成物の調製)
下記表1に示す重合性単量体に、下記重合開始剤P−1(2質量%)、下記界面活性剤W−1(0.1質量%)、下記界面活性剤W−2(0.04質量%)、下記酸化防止剤A−1およびA−2(各1質量%)を加えてナノインプリント用硬化性組成物を調製した。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去した。なお、化合物(I−16A)はアルドリッチ社製の化合物を用いた。
【0115】
【表1】

【0116】
【化10】

【0117】
<その他の1官能単量体>
R−1A:ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学(株)製)
R−1M:ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ:共栄社化学(株)製)
R−PA:フェニルアクリレート
R−PM:フェニルメタクリレート
<その他の2官能単量体>
R−2:ネオペンチルグリコールジアクリレート
<その他の3官能以上の単量体>
R−3:トリメチロールプロパントリアクリレート
(アロニックスM−309:東亞合成(株)製)
R−4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(カヤラッドDPHA:日本化薬(株)製)
【0118】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィン
オキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0119】
<界面活性剤>
W−1:フッ素系界面活性剤(トーケムプロダクツ(株)製:フッ素系界面活性剤)
W−2:シリコーン系界面活性剤
(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックペインタッド31)
【0120】
<酸化防止剤>
A−1:スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)
A−2:アデカスタブAO503((株)ADEKA製)
【0121】
(評価)
得られた組成物について以下の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0122】
<ドライエッチング耐性>
Siウェハ上に硬化後の膜厚が1μmとなるようにレジスト(ナノインプリント用組成物)を塗布した後、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し硬化膜を得た。これを、日立ハイテクノロジー(株)製ドライエッチャー(U−621)を用いてAr/C46/O2=100:4:2のガスで2分間プラズマドライエッチングを行い、残膜量を測定し、1 秒間当りのエッチングレートを算出した。得られたエチングレートを比較例2の値が1となるように規格化し、これとの比較において各実施例および比較例を評価した。値が小さいほどドライエッチング耐性が良好であることを示す。
【0123】
<耐溶剤性試験>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量240mJ/cm2で露光し、その後オーブンで230℃、30分間加熱して硬化させた膜を25℃のN−メチルピロリドン溶媒に30分間浸漬させ、浸漬前後での硬化膜の変化を下記のように評価した。膜厚変化が少ないものが耐溶剤性に優れていることを示す。
A:膜厚変化 1%未満
B:膜厚変化 1%以上、2%未満
C:膜厚変化 2%以上、10%未満
D:面状荒れが発生
【0124】
<モールド剥離性の評価>
−剥離性10μm−
各組成物を、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜に10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするモールドをのせ、ナノインプリント装置にセットした。装置内を真空とした後窒素パージを行い装置内を窒素置換した。25℃で1.5気圧の圧力でモールドを基板に圧着させ、これにモールドの裏面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、パターンを得た。パターン形成に使用したモールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、10μmのライン/スペースパターンを有するモールドを用いた場合の剥離性(剥離性10μm)を以下のように評価した。
A:モールドに硬化性組成物の付着がまったく認められなかった。
B:モールドにわずかな硬化性組成物の付着が認められた。
C:モールドの硬化性組成物の付着が明らかに認められた。
【0125】
−剥離性200nm−
各組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、これをシリコン基板上にスピンコートし、60℃で60秒加熱し、膜厚200nmの塗布膜を得た。得られた塗布膜に200nmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが200nmの石英を材質とするパターン表面がフッ素系処理されたモールドをのせ、ナノインプリント装置にセットした。装置内を真空とした後窒素パージを行い装置内を窒素置換した。25℃で1.5気圧の圧力でモールドを基板に圧着させ、これにモールドの裏面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、パターンを得た。パターン形成に使用したモールドに組成物成分が付着しているか否かを走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、200nmのライン/スペースパターンを有するモールドを用いた場合の剥離性(剥離性200nm)を同様に評価した。
【0126】
【表2】

【0127】
表2からわかるように本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いて形成せれたパターンは、ドライエッチング耐性、耐溶剤性、剥離性10μm、剥離性200nmがいずれにおいても良好であった。比較例1は、実施例1の化合物(I−1A)に代えて、多環芳香族構造を有さないベンジルアクリレート(化合物R−1A)を用いたものであるが、比較例1の組成物は光照射により硬化しなかった。また、比較例2も同様に、実施例2〜4および15の多環芳香族構造を有する化合物に代えて、多環芳香族構造を有さないベンジルアクリレート(化合物R−1A)を用いたものであるが、エッチング耐性、耐溶剤性、剥離性200nmの結果が劣っていた。比較例3も同様に、実施例2〜4および15の多環芳香族構造を有する化合物に代えて、多環芳香族構造を有さないベンジルメタクリレート(化合物R−1M)を用いたものであるが、これも、エッチング耐性、耐溶剤性、剥離性200nmの結果が劣っていた。また、比較例4は、実施例6の化合物(I−1A)および実施例16の化合物(I−4A)に代えて、多環芳香族構造を有さないベンジルアクリレート(化合物R−1A)を用いたものであるが、全ての評価において不十分な結果となった。比較例5は、特開2007−186570の実施例1記載の組成物を用いたものであるが、特にエッチング耐性および耐溶剤に劣り、剥離性200nmもやや低いものであった。
以上のように、各比較例の組成物を用いたパターンは、実施例13と比較例2との比較からもわかるように、エッチング耐性、耐溶剤性、剥離性200nmの結果に劣り、特に、耐溶剤性や剥離性200nmの結果がよくなかった。実施例では、特にナノメートルオーダーのパターン形成時におけるモールド剥離性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)と、
光重合開始剤(B)と、
を含むことを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造が、炭化水素系多環芳香族構造であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造が、ナフタレン構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合性単量体(Ax)が、ラジカル重合性官能基を含むことを特徴とする請求項1〜3のいれずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合性単量体(Ax)が、(メタ)アクリル基、ビニル基およびアリル基から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合性単量体(Ax)が、下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化1】

(式(I)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは、単結合または有機連結基を示し、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【請求項7】
前記重合性単量体(Ax)が、下記式(IA)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化2】

(式(IA)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは単結合または有機連結基を示し、mは1〜3の整数を示し、R2有機置換基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
【請求項8】
前記重合性単量体(Ax)が、下記一般式(IC)または(ID)の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【化3】

(式(IC)および(IC)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を表す。)
【請求項9】
さらに、前記重合性単量体(Ax)と異なる他の重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
全重合性単量体に対し、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、並びに、乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−218550(P2009−218550A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207844(P2008−207844)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】