説明

ナノカルサイト及びビニルエステル複合材料

ビニルエステルを含む硬化性樹脂系中に分散させた表面修飾ナノカルサイト粒子を含む組成物、並びにそのような組成物を組み込んだコーティング及び繊維複合材料が記載される。表面修飾剤は、カルサイトとイオン会合した結合基及び硬化性樹脂と相溶性のある相溶化セグメントを含む。表面修飾剤は、硬化性樹脂系と反応することができる反応性基をも含み得る。ナノカルサイト複合材料を調製する方法、及びそのようなナノカルサイト複合材料から調製される繊維複合材料を被覆する方法もまた、記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性ビニルエステル樹脂中に分散させた表面修飾ナノカルサイト粒子を含む組成物、並びにそのような組成物を組み込むコーティング及び繊維複合材料に関する。ビニルエステル樹脂中のナノカルサイト複合材料を調製する方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子含有樹脂は、コーティングとして、かつ繊維複合材料の含浸樹脂として使用されている。概して、ナノ粒子の添加は、純粋な樹脂と比較して、改善された強度対重量比を提供する。これらの材料は、乗り物(例えば、船舶用ゲルコート)及び風力タービンブレードのコーティング、並びに例えば、スポーツ用品、風力タービンブレード、及び乗り物の製造において使用される複合材料構造を含む、多種多様の用途において使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
簡潔には、一態様では、本開示は、ビニルエステル樹脂を含む硬化性樹脂系中に分散させた表面修飾ナノ粒子を含む組成物を提供する。表面修飾ナノ粒子は、カルサイトコアを含み、表面修飾ナノ粒子は、相溶化基と、カルサイトとイオン会合した結合基とを含む、第1の表面修飾剤を含む。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂の溶解度パラメーターと相溶化基の溶解度パラメーターとの間の差異は、溶解度パラメーター手順に従って決定される場合、4J1/2cm−3/2以下である。いくつかの実施形態では、結合基は、カルサイト豊富な表面を想定する結合エネルギー計算手順を用いて計算される場合、カルサイトに対して少なくとも0.50電子ボルトの結合エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも90%は、カルサイト粒径手順によって測定される場合、400nm未満の平均寸法を有する。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂系は、反応性希釈剤を更に含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、結合基は、ホスホン酸、スルホン酸、リン酸、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、結合基は、カルボン酸を含む。いくつかの実施形態では、相溶化基は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリエステルのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、相溶化基は、ポリエーテルアミンを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1の表面修飾剤は、両性イオンである。いくつかの実施形態では、第1の表面修飾剤は、ビニルエステル樹脂及び反応性希釈剤のうちの少なくとも1つと反応することができる反応性基を更に含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、本組成物は、カルサイトに結合される第2の表面修飾剤を更に含み、第2の表面修飾剤は、結合基と、ビニルエステル樹脂及び反応性希釈剤(存在する場合)のうちの少なくとも1つと反応することができる反応性基と、を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、ナノ粒子及び硬化性樹脂系の総重量に対して少なくとも10重量%のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、2重量%以下の溶媒を含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、本開示の組成物を含む硬化組成物を提供し、ビニルエステル樹脂を硬化させる。いくつかの実施形態では、第1の表面修飾剤が、ビニルエステル樹脂及び反応性希釈剤(存在する場合)のうちの少なくとも1つと反応する。いくつかの実施形態では、硬化組成物は、基材の少なくとも一部に結合される。
【0008】
更に別の態様では、本開示は、本開示の組成物で含浸された強化用繊維を含む繊維複合材料を提供する。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも90%は、カルサイト粒径手順によって測定される場合、400nm未満の平均寸法を有する。いくつかの実施形態では、ビニルエステル樹脂を硬化させる。
【0009】
上記の本開示の概要は、本発明のそれぞれの実施形態を説明することを目的としたものではない。本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明から、また「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概して、本開示の組成物は、ビニルエステル樹脂を含む硬化性樹脂系中に分散させた表面修飾ナノ粒子を含む。本明細書で使用される「樹脂系」とは、反応又は共反応して、最終硬化樹脂を形成する主要な反応性要素を指す。本開示の樹脂系には、少なくとも1つの硬化性ビニルエステル樹脂、1つ以上の追加の架橋性樹脂、及び/又は1つ以上の反応性希釈剤が含まれる。
【0011】
本明細書で使用される「ビニルエステル」という用語は、エチレン性不飽和モノカルボン酸とのエポキシ樹脂の反応生成物を指す。代表的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Columbus,Ohioから入手可能なEPON 828)が挙げられる。代表的なモノカルボン酸には、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。そのような反応生成物は、アクリル又はメタクリルエステルであるが、「ビニルエステル」という用語は、例えば、ゲルコート産業において一貫して使用されている。(例えば、Handbook of Thermoset Plastics(Second Edition),William Andrew Publishing,page 122(1998)参照のこと。)市販のビニルエステル樹脂には、Ashland,Inc.,Covington Kentuckyから商標名HETRON、DERAKANE、及びDERAKANE MOMENTUMエポキシビニルエステルで入手可能なものが含まれる。
【0012】
概して、ビニルエステル樹脂は、樹脂系の反応性希釈剤において可溶性であり、かつ反応性希釈剤と反応して共重合化したネットワークを形成する。概して、任意の既知の反応性希釈剤が使用され得る。代表的な反応性希釈剤には、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、及びトリアリルシアヌレートが挙げられる。
【0013】
本開示の表面修飾ナノ粒子は、カルサイトコアと、カルサイトに結合される表面修飾剤とを含む。カルサイトは、炭酸カルシウムの結晶形態(すなわち、カルサイト及びその多形アラゴナイト及びバテライト)である。炭酸カルシウムは、典型的には、良好にファセットされた円柱状又は板状の菱面体晶を形成する。しかしながら、ある場合には、炭酸カルシウムは、高度に異方性の不規則な形状の結晶を形成し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、例えば、繊維複合材料を生成するためにナノカルサイト含有樹脂を使用する時に、繊維によってナノカルサイトの濾過を制御すること、例えば、最小限に抑えるか、又は更には排除することが望ましくあり得る。より大きい粒子又は粒子凝集体は、混合物が、連続繊維複合材料を作製するプロセスにおいて、高度圧縮繊維配列を介して加圧される間に、樹脂から濾過又は分離され得る。これは、最終複合材料にわたって粒子及び樹脂の非均一分布もたらし、物理的特性の減少をもたらし得る。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも70%、例えば、少なくとも75%は、400nm未満の平均寸法を有する。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも90%、いくつかの実施形態では、少なくとも95%、又は更には少なくとも98%が、400nm未満の平均寸法を有する。
【0015】
概して、本開示の表面修飾剤は、少なくとも結合基と相溶化セグメントとを含む。
【0016】
Comp.Seg.−結合基;
式中、「Comp.Seg.」は、相溶化セグメントを指す。
【0017】
相溶化セグメントは、カルサイトナノ粒子の硬化性樹脂との相溶性を改善し、かつ最終的には樹脂中のこれらのナノ粒子の分散を改善するように選択される。概して、相溶化基の選択は、硬化性樹脂の性質、ナノ粒子の濃度、及び所望の相溶性の度合いを含む、多くの要因によって決まる。ビニルエステル樹脂系について、有用な相溶化剤には、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、及びそれらの組み合わせが含まれる。他の有用な相溶化セグメントには、ポリエステル及びポリエーテルアミンが含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、相溶化セグメントは、表面修飾ナノ粒子及び硬化性樹脂を含有する組成物に対して、正の混合エンタルピーを提供するように選択されてもよい。混合エンタルピーが正である場合、樹脂中のナノ粒子の分散は、典型的には、安定している。正の混合エンタルピーを確実にするために、相溶化セグメントの溶解度パラメーターは、硬化性樹脂の溶解度パラメーターに適合されてもよい。いくつかの実施形態では、材料は、これらの溶解度パラメーターにおける差異が、Properties of Polymers;Their Correlation with Chemical Structure;Their Numerical Estimation and Prediction from Additive Group Contributions,third edition,edited by D.W.Van Krevelen,Elsevier Science Publishers B.V.,Chapter 7,189〜225(1990)、すなわち、「溶解度パラメーター手順」に従って決定される場合、4J1/2cm−3/2を以下、いくつかの実施形態では、2J1/2cm−3/2以下であるように、選択され得る。
【0019】
相溶化セグメント又は樹脂などの材料の溶解度パラメーターを求めるいくつかの方法が知られている。例えば、材料の溶解度パラメーターは、異なる溶解度パラメーターの溶媒の範囲内で材料の平衡膨潤度の測定から求めることができる。溶媒自体の溶解度パラメーターは、それらの蒸発熱から求めることができる。溶解度パラメーターデルタ(δ)は、δ=(Ecoh/V)1/2の関係により、凝集エネルギーEcoh及び比容積Vに関連付けられている。低分子量の溶媒について、凝集エネルギーは、Ecoh=ΔHvap−pΔV=ΔHvap−RTによって、分子蒸発熱ΔHvapに密に関連付けられている。したがって、Ecoh及びδは、溶媒の蒸発熱から、又は蒸気圧の経過から、温度の関数として計算され得る。材料の溶解度パラメーターを求めるため、材料の平衡膨潤対溶媒の溶解度パラメーターのプロットを作成する。材料の溶解度パラメーターは、最大膨潤が得られるこのプロット上の点として画定される。膨潤は、材料の溶解度パラメーター未満又はそれを超える溶解度パラメーターを有する溶媒に対して、より小さくなる。あるいは、官能基の付加寄与に基づき、材料の溶解度パラメーターを理論的に見積もるいくつかの既知の方法がある。
【0020】
結合基はカルサイトに結合し、表面修飾剤をカルサイトコアに結び付ける。表面修飾剤がシリカに共有結合される多くのシリカ系ナノ粒子系とは異なり、本開示の表面修飾剤は、カルサイトにイオン結合される(例えば、会合する)。
【0021】
組成物の処理中に、表面修飾剤をカルサイトコアに保持するために、カルサイトに対して高い結合エネルギーを有する結合基を選択することが望ましいこともある。結合エネルギーは、密度汎関数理論計算を用いて予測され得る。いくつかの実施形態では、計算された結合エネルギーは、少なくとも0.5、例えば、少なくとも0.6、又は更には少なくとも0.7電子ボルトであり得る。概して、結合エネルギーが大きいほど、結合基が粒子表面とイオン会合したままである可能性が大きい。いくつかの実施形態では、少なくとも0.8、例えば、少なくとも0.9、又は更には少なくとも0.95電子ボルトの結合エネルギーが有用であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、結合基は、ホスホン酸、例えば、以下の式を有する表面官能化剤を含む。
【0023】
【化1】

【0024】
いくつかの実施形態では、結合基は、スルホン酸、例えば、以下の式を有する表面官能化剤を含む。
【0025】
【化2】

【0026】
いくつかの実施形態では、表面修飾剤はまた、反応性基、例えば、硬化性樹脂と例えば硬化プロセス中に反応することができる基をも含む。これは、樹脂マトリックスに強く結合されるナノカルサイト粒子をもたらすことができ、得られる硬化ナノ複合材料の物理的特性の改善をもたらし得る。概して、反応基は、硬化性樹脂の性質に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、反応基は、相溶化セグメントの末端部に位置してもよい。
【0027】
Rx.Group−Comp.Seg.−結合基;
式中、「Rx.Group」は、反応性基である。いくつかの実施形態では、反応性基は、相溶化セグメントの骨格に沿って、又は同骨格にぶら下がるように、位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、反応基は、相溶化セグメントと結合基との間に位置してもよい。
【0028】
Comp.Seg.−Rx.Group−結合基。
【0029】
いくつかの実施形態では、連結基が存在し、相溶化セグメントを結合基と結び付ける。
【0030】
Comp.Seg.−連結基−結合基。
【0031】
例えば、いくつかの実施形態では、表面修飾剤は、ポリエーテルアミンを含む。代表的なポリエーテルアミンとしては、Huntsman Corporation,The Woodlands,Texasから商品名JEFFAMINE(登録商標)で入手可能なものが挙げられる。ポリエーテルが相溶化セグメントとしての機能を果たす一方で、アミンは、相溶化セグメントを結合基と連結する連結基、例えば、スルホン酸、ホスホン酸、又はカルボン酸結合基である。
【0032】
いくつかの実施形態では、表面修飾剤は、両性イオン、すなわち、ゼロの正味荷電を帯びるが、異なる原子上で形式的な正及び負電荷を帯びることが可能である、化合物を含む。いくつかの実施形態では、形式的な負電荷は、結合基により担持される。いくつかの実施形態では、形式的な正電荷は、アミンの窒素原子、例えば、アミン連結基上で担持される。そのような実施形態では、アミンは、連結基及び反応基の両方としての役割を果たし得る。
【0033】
概して、本開示の組成物は、ナノ粒子及び硬化性樹脂系の総重量に対して少なくとも10重量%、いくつかの実施形態では、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は更には少なくとも50重量%の表面修飾ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、例えば、組成物が噴霧される時(例えば、コーティングを塗布する時)、又は繊維を通して流動しなければならない時(例えば、繊維複合材料を作製する時)、低粘度組成物を有することが有用であり得る。
【0034】
粘度は、溶媒、例えば、水、有機溶媒、又はそれらの組み合わせの中で組成物を希釈することにより減少させることができる。溶媒が使用される場合、溶媒又は溶媒の組み合わせは、樹脂が可溶性になるように容易に選択することができる。溶媒の含有は、いくつかの用途において有用である一方で、費用、取扱い要件、及びプロセス工程を増加させる傾向がある。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、5重量%以下、任意で、2重量%以下、1重量%以下、又は更には0.5重量%以下の溶媒を含む。いくつかの実施形態では、ある特定の工程、例えば、ナノ粒子のミリング又は硬化性樹脂系中でのナノ粒子の分散は、溶媒の存在下で発生し得る。次に、溶媒は、硬化性組成物中の残留溶媒を所望のレベルまで減少させるために、例えば乾燥させることによって除去され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、硬化剤、硬化促進剤、触媒、架橋剤、染料、顔料、難燃剤、衝撃改質剤、及び流動制御剤等の更なる添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、強化剤、例えば、ゴム強化剤を含んでもよい。代表的なゴム強化剤は、コアシェルゴムを含む。いくつかの実施形態では、ナノサイズコアシェルゴム強化剤、すなわち、1マイクロメートル未満の平均粒径を有するコアシェルゴム強化剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ナノサイズコアシェルゴム強化剤は、500nm未満、250nm未満、又は更には100nm未満の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、マイクロメートルサイズコアシェルゴム強化剤、すなわち、1マイクロメートルを超える、例えば、1〜10マイクロメートルの平均粒径を有するコアシェルゴム強化剤が使用されてもよい。
【0036】
本開示の組成物は、硬化されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂は、架橋される。熱エネルギー又は化学線(例えば、紫外線及び電子ビーム照射)への暴露を含む、任意の既知の架橋法が使用されてよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂はまた、表面修飾剤と反応してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、表面修飾剤の反応基が、硬化性樹脂と反応、例えば、共有結合してもよい。
【0037】
本開示の組成物の種々の実施形態は、多種多様な用途で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、物品の表面に塗布されてもよい。そのようなコーティングは、硬化、例えば、架橋されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物を使用して、繊維複合材料を形成してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、強化用繊維を組成物で含浸して、複合品を形成してもよい。複合材料は、例えば、樹脂トランスファー成形(RTM)、フィラメントワインディング、トウ配置、樹脂注入プロセス、引き抜き成形プロセス、又は伝統的なプリプレグプロセスを含む、任意の既知の手段を使用して形成されてよい。次いで、樹脂は、熱エネルギー及び/又は化学線への暴露を含む、任意の既知の手段を使用して硬化されてよい。
【0039】
概して、繊維複合材料での使用に好適な任意の繊維が使用されてよい。代表的な繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、及びポリエチレン繊維が挙げられる。また、材料の組み合わせが使用されてもよい。概して、繊維の形態は、特に限定されない。代表的な繊維形態としては、個々の連続繊維の単一方向配列、織物、編物、毛糸、粗紡、網状構造物、及び不織布マットが挙げられる。
【0040】
概して、本開示の組成物は、例えば風力タービンブレード上のコーティングとして、例えば乗り物、例えばボート上のゲルコートとして、並びに例えばスポーツ用品(例えば、ラケット、釣竿、ホッケースティック、野球バット、帆走マスト等)、風力タービンブレード、並びに自動車、船舶、航空機、並びに人工衛星及び宇宙船を含む乗り物及び乗り物部品の製造において使用される複合材料としてなど、多種多様の用途において使用され得る。
【実施例】
【0041】
【表1】

【0042】
試験方法
破壊靭性手順硬化サンプルの破壊靭性を、小型引張形状を用いてASTM D 5045−99に従って測定したが、試料は、3.18cm×3.05cm×0.64cm(1.25インチ×1.20インチ×0.25インチ)の呼び寸法を有した。以下のパラメーター:W=2.54cm(1.00インチ)及びB=0.64cm(0.25インチ)を採用した。亀裂長さaを、それぞれのサンプルにおいて測定したが、それぞれの事例において、約1.3cmであった。0.13cm/分(0.050インチ/分)の修正負荷速度を用いた。破壊靭性の値、KIcを、メガパスカル×メートル平方根の単位、すなわち、MPa・m1/2で報告する。
【0043】
剪断係数手順ねじり矩形試験モードを使用して、RDA−700 Rheometrics Dynamic Analyzer(Rheometrics,Inc.,Piscataway,New Jerseyから入手可能)により剪断係数を決定した。試験試料を、5.08cm×1.27cm×0.16cmになるように機械加工した。それぞれの測定を行う前に1分間熱ソークした上で、1分当たり5℃の加熱速度により、35℃から樹脂のガラス転移温度を超えるまで、5℃間隔でデータを収集した。初期歪みは、0.45%であり、機械は、歪み調節モードであった。振動数は、10ラジアン/秒であった。
【0044】
カルサイト濃度手順20〜50ミリグラムの樹脂中カルサイトのサンプルを、TA Instruments TGA 500熱重量分析計の中に設置した。サンプル温度を50℃〜900℃まで、30℃/分で空気中で上昇させ、次いで、900℃で3分間保持した。残留物重量は、カルサイトから全ての有機物及び二酸化炭素を揮発させた後に、サンプル中に残るCaOであると仮定した。重量%のCaO残留物を0.56で割ることにより、元のサンプル中のカルサイト濃度を計算した。
【0045】
カルサイト粒径手順カルサイトの粒径を、その添付ソフトウェア(Horiba Instruments,Inc.,Irvine,Californiaから入手可能)を含む、HORIBA LA−950レーザー回折粒径分析計を用いて、レーザー回折で測定した。カルサイト分散を、メチルエチルケトンで希釈して、約1%の固体にした。次に、サンプルを測定用セルに添加し、透過性が85%〜95%の推奨レベルになるまで、これをメチルエチルケトンで充填した。
【0046】
計算用の光学モデルは、カルサイトにおいては1.6000の屈折率、メチルエチルケトン溶媒においては1.379の屈折率を使用し、球状粒子を想定した。平滑化のために第2の差動法が使用され、150回の反復に基づいた。400nm未満の平均粒径の割合(400nm未満の%)の報告値は、体積分率平均及び静的光散乱に基づいた。
【0047】
結合エネルギー
概して、表面修飾剤は、樹脂中にナノ粒子を分散させることを補助する相溶化基と、相溶化基をナノ粒子と会合させるための結合基とを含む。種々の一般的及び可能性のある結合基のカルサイトに対する結合エネルギーを、密度汎関数理論計算を用いて決定することができる。そのような計算に関する詳細は、Pendrew,J.P.;Burke,K.J.;Ernzerhof,M.;Phys.Rev.Lett.1996,3865,77から得られる。
【0048】
結合エネルギー計算手順周期的境界条件密度汎関数理論(PBC−DFT)によるナノカルサイトの表面への異なる官能基の結合エネルギーを計算した。この方法において、ナノ粒子の表面は、二次元周期的スラブで表された。計算は、実際には三次元で周期的であったが、スラブがz方向において相互作用することを防止するために、真空の20オングストローム層が含まれた。したがって、スラブは、二次元周期性を有した。スラブは、3〜4層を含み、ミラー平面に沿って切断された。ナノカルサイトの場合、表面を{1014}表面に沿って切断した。
【0049】
2つの可能性のある表面、化学量論的表面及びカルシウム豊富な表面をモデル化した。カルシウム豊富な表面の場合、表面上の配位不十分なカルシウムイオンをヒドロキシル基で終端した。11又は12オングストロームの縁の長さを有する周期箱において、孤立分子を計算した。距離は、分子が相互作用することを防止するのに十分大きかった。
【0050】
これらの計算のために、VASP(Vienna ab−initioシミュレーションパッケージ)コンピュータプログラム((a)Kresse,G.;Hafner,J.Phys.Rev.B 1993,588,47、(b)Kresse,G.;Hafner,J.Phys.Rev.B 1994,251,49、(c)Kresse,G.;Furthmueller,J.Comput.Mater.Sci.1996,15,6、及び(d)Kresse,G.;Furthmueller,J.Phys.Rev.B 1996,11 169,54)に実装されるようなPBE密度汎関数(Perdew,J.P.、Burke,K.、Ernzerhof,M.、Phys.Rev.Lett.1996,3865,77)を使用した。使用した擬ポテンシャルは、平面波増強波型のものであり、VASPコンピュータプログラムで分布された。カルシウムの場合、3p電子を擬ポテンシャルで明白に処理した。400eVの平面波カットオフ及び2X2X1のk点メッシュを、スラブ計算のために使用した。孤立分子に対して、偽ポテンシャル及び平面波カットオフは、1X1X1のk点メッシュを使用したことを除いて、スラブ計算のために使用したものと同一であった。
【0051】
結合エネルギー(BE)を、表面想定に応じて、2つの異なる方法で計算した。
【0052】
化学量論的表面について、
BE=E(スラブ)+E(分子)−E(スラブ+分子) (1)
式中、E(スラブ+分子)、E(スラブ)、及びE(分子)は、それぞれ、錯体、孤立スラブ、及び孤立分子の電子エネルギーである。全ての場合において、形状をそれらのそれぞれの最小値に最適化した。
【0053】
カルシウム豊富な表面に対して、
BE=E(スラブ)+E(分子)+E(水)−E(スラブ+分子) (2)
式中、E(スラブ+分子)、E(スラブ)、及びE(分子)は、上で定義され、E(水)は、孤立水分子の電子エネルギーである。
【0054】
計算された電子ボルト(e.v.)値を、表2に要約する。
【0055】
【表2】

【0056】
これらのモデル化結果に基づいて、以下の配位子を選択したが、それぞれ結合基及び相溶化セグメントを含んだ。
【0057】
ポリエーテルアミンスルホネート配位子配位子Aを、以下のように調製した。100g(0.167モル)のポリエーテルアミン(Huntsman International,LLC,Salt Lake City,Utahから得たJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、17.88g(0.146モル)の溶かしたプロパンスルトン(TCI America,Portland,Oregonから購入)を添加した。混合物を80℃になるまで加熱し、16時間撹拌した。1H NMRスペクトルは、プロパンスルトンの完全な消費を示した。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。スルホン酸配位子の構造は、以下の通りであった。
【0058】
【化3】

【0059】
ポリエチレングリコールホスホン酸配位子配位子Bを、以下のように調製した。50℃の355.8g(1.017モル)のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn=350、Alfa Aesar,Ward Hill,Massachusettsから購入)に、152.8g(1.284モル)の塩化チオニルを撹拌しながら滴加した。発生気体を、25%の水性水酸化ナトリウムを含有させたトラップを介して通気させた。添加が完了した後、反応混合物の温度を70℃まで上昇させた。4時間後、温度を90℃まで上昇させながら、窒素をゆっくりと混合物中で泡立て、継続して泡立てながら、一晩、反応混合物を90℃で保持した。残留揮発物を減圧下、120℃で2時間加熱することにより分離し、338.7gの透明、淡琥珀色の液体を残した。材料の1H及び13C NMRスペクトルは、所望の生成物の構造と一致しており、粗塩化物を更なる精製なしで使用した。
【0060】
上で調製した150.0g(0.430モル)の粗塩化物と214.0g(1.290モル)の亜リン酸トリエチルとの混合物を、170℃で加熱した。3日後、追加の100.0g(0.600モル)の亜リン酸トリエチルを添加し、反応温度を180℃に上昇させた。180℃で更に2日後、100.0g(0.600モル)の亜リン酸トリエチルの第3の量を添加し、180℃での加熱を続けた。更に2日間経過後、反応混合物の13C NMR分析は、43ppmで出発塩化物がないことを示した。エチルホスホン酸ジエチル及び他の揮発物を、130℃の最終浴槽温度、bp 35〜60℃になるように0.05mm Hg(6.67Pa)で蒸留し、187.5gの透明な薄黄色の液体を得た。材料の1H及び13C NMRスペクトルは、所望の生成物の構造と一致しており、粗ホスホン酸ジエチルエステルを更なる精製なしで使用した。
【0061】
200mLのジクロロメタン中の上記で調製した90.0g(0.257モル)の粗ホスホン酸ジエチルエステルの溶液に、98.0g(0.643モル)のブロモトリメチルシランを添加した。室温で18時間後、溶液を減圧下で濃縮し、中間体シリルホスホン酸エステルを250mLのメタノール中に溶解させた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、濃縮物を250mLのメタノール中に再び溶解させ、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。混合物をこれまでのように濃縮し、溶媒の完全分離を確実にするために一晩真空下で濃縮物を維持した後、80.0gの透明、淡黄色の液体を得た。最終生成物の1H及び13C NMRスペクトルは、所望のホスホン酸配位子の構造と一致した。生成物、ホスホン酸の13C NMRスペクトルは、27.17ppmで、リンに対する炭素αをダブレット(JC−P=138.8Hz)として示した。ホスホン酸配位子の構造は、以下の通りであった。
【0062】
【化4】

【0063】
アクリルホスホネート配位子配位子Cを、以下のように調製した。80.0g(950ミリモル)のジヒドロピラン中の60.8g(240ミリモル)の11−ブロモ−1−ウンデカノールのスラリーに、10滴のPOClを添加した。適度な発熱を留意し、残りの固体を溶解させて、透明な琥珀色の溶液を得た。溶液を2時間撹拌し、500mLの飽和水性NaHCO中に注いだ。この混合物をジエチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を、飽和水性NaClで洗浄し、MgSO上で乾燥させた。濾過及び濃縮により、透明な琥珀色の液体として所望のテトラヒドロピラニルエーテルを得て、これを更なる精製なしで使用した。
【0064】
テトラヒドロピラニルエーテルと99.7g(600ミリモル)の亜リン酸トリエチルの混合物を、135℃で16時間加熱した。追加の50.0g(300ミリモル)の亜リン酸トリエチルを添加し、135℃での加熱を更に17時間続けた。揮発物を、110℃の浴槽温度に0.1mmで混合物から蒸留し、所望のホスホン酸ジエチルエステルを得て、これを更なる精製なしで使用した。
【0065】
200mLのジクロロメタン中のホスホン酸ジエチルエステルの溶液に、91.9g(600ミリモル)のブロモトリメチルシランを、約30分間にわたって滴加した。混合物を室温で一晩撹拌し、暗色の液体に濃縮した。濃縮物を300mLのメタノール中に溶解させ、この溶液を室温で一晩撹拌した。濃縮により暗色の半固体を得て、これを次に、300mLのメタノール中に溶解させ、この溶液を再び室温で一晩撹拌した。溶液を暗色の半固体になるまで濃縮し、300mLのジクロロメタンを添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。濾過により、薄褐色の固体を得た。ヘプタン及び2−プロパノールの80:20の混合物からの再結晶化により、薄褐色の結晶として、109〜112℃の融点を有する32.2gの1−ホスホノ−11−ウンデカノールを得た。
【0066】
400mLのトルエン中の25.2g(100ミリモル)の1−ホスホノ−11−ウンデカノール、8.6g(120ミリモル)のアクリル酸、及び40mgの2,6−ジ−第三級ブチル−4−メチルフェノールの溶液を、水の共沸蒸留に備えて一晩還流加熱した。追加の5.8g(80ミリモル)のアクリル酸を添加し、還流加熱を更に10時間続けた。溶液を室温まで冷却し、セライトを通して濾過し、濃縮して、柔らかい褐色の固体にした。固体を1Lのヘキサン中で粉砕し、濾過により、オフホワイト色の固体として、27.1gの11−ホスホノウンデシルアクリレートを得た。最終生成物及び全ての中間体の1H、13C、及び31P NMRスペクトルは、標的化合物の構造に一致した。
【0067】
DISPERBYK D−111(配位子D)は、BYK−Chemie GmbHから市販されているリン酸ポリエステル配位子である。
【0068】
樹脂系における充填剤として、炭酸カルシウムを使用した。しかしながら、ほとんどの市販のフィルタは、大きな平均粒径、例えば、1〜10マイクロメートルを有する。ナノメートルサイズの一次粒径に基づく市販の炭酸カルシウム材料でさえ、典型的には、一次粒径よりも有意に大きい有効粒径をもたらす、そのような一次粒子の凝集体を含有する。一般的な表面処理でさえ、そのような凝集した粒子は、より高い粒子負荷において高粘性の樹脂系をもたらし得る。
【0069】
広くは、「凝集した」及び「凝集体」とは、例えば、化学的残材処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合でしばしば結合される一次粒子の強い結合を説明している。凝集体の、より小さな存在物への更なる分解は、達成するのが非常に困難である。通常、凝集粒子は、例えば、液体中の凝集粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解されない。対照的に、「集塊した」及び「集塊体」とは、電荷又は極性により通常結び付けられる一次粒子の弱い会合を説明している。集塊した粒子は、通常、例えば、液体中の集塊した粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解され得る。
【0070】
例えば、繊維複合材料の調製を含む、多くの適用において、受容時のナノ粒子の凝集体の寸法の減少が、所望の機械的特性を達成するのに重要であり得る。概して、炭酸カルシウム等の充填物を樹脂中に混ぜるための一般的な手順は、低剪断法、例えば、混合気形成に依存し、所望の分散を提供するのには十分であるが、提供されるエネルギーは凝集体の寸法を減少させるのには不十分である。対照的に、本出願において使用されるミリング手順は、凝集体の寸法を減少させ、かつそれらを樹脂中に分散させるのに十分なエネルギーを提供した。
【0071】
ビニルエステルナノ複合材料調製手順VE−1398−5ビニルエステルを、4リットルのステンレス製ケトル中に設置した。ビニルエステルを含有するケトルに、反応性希釈剤であるスチレンを添加した。ビニルエステル及びスチレンに、配位子を添加し、これを、取扱いを容易にするために、90℃に予熱し、粘度を低下させた。Cowlesミキサーをケトルに取り付け、内容物を混合した。混合中に、SOCAL 31ナノカルサイトをケトルに段階的に添加した。完全に混合した時点で、内容物を、水平ミル(Netzsch LABSTAR)に取り付けられた別の4リットルケトルに移し、0.5mmのYTZ媒体を90%負荷で使用した。ナノ複合材料混合物を、蠕動ポンプを用いて、ミルを通して250ml/分で循環させた。それぞれの場合において、カルサイト粒子の99%超が、カルサイト粒径手順に従って決定される、400nm未満の平均寸法を有するまで、ミリングを実行した。
【0072】
実施例EX−1及びEX−2これらの実施例は、無溶媒ミリングを用いて、反応性希釈剤を含有する樹脂系でのカルサイトナノ粒子の表面修飾及び複合を説明する。サンプルを、ビニルエステルナノ複合材料調製手順に従って調製した。組成物及びミリング条件を表3に要約する。
【0073】
【表3】

【0074】
実施例EX−3及びEX−4これらの実施例は、無溶媒ミリングを用いて、反応性希釈剤を含有する樹脂系でのカルサイトナノ粒子の表面修飾及び複合を説明する。サンプルを、ビニルエステルナノ複合材料調製手順に従って調製した。組成物及びミリング条件を表4に要約する。
【0075】
【表4】

【0076】
実施例EX−5この実施例は、反応性希釈剤での無溶媒ミリング及びビニルエステル樹脂中にカルサイトを分散させるための市販の配位子(配位子D)を説明する。857gのVE−1398−5ビニルエステル、234gのスチレン、35gの配位子D(DISPERBYK−111、リン酸ポリエステル)、及び700gのSOCAL 31ナノカルサイトを含有する組成物を、ビニルエステルナノ複合材料調製に従って複合した。組成物を、57℃で3時間粉砕した。得られた表面修飾ナノ粒子を、樹脂系中に分散させ、カルサイト粒子の99%超が、カルサイト粒径手順に従って決定される、400nm未満の平均寸法を有した。
【0077】
硬化樹脂特性
実施例1の粉砕した生成物(270g)を、SpeedMixer容器内で、2つの過酸化物硬化剤、すなわち、PERKADOX 16(1.62g)及びTRIGONOX 121(1.62g)と混合させた。容器を密封し、内容物を、SpeedMixer(商標)二重非対称遠心分離機(Model DAC 600 FVZ−sp、Flack Tek,Incorporated,Landrum,South Carolinaから入手可能)を用いて、2000回転/分(rpm)で30秒間混合させた。次に、内容物を、2つのガラスモールド:(a)8.9cm×17.8cm×0.64cm(3.5インチ×7インチ×0.25インチ)及び(b)22.9cm×11.4cm×0.32cm(9インチ×4.5インチ×0.125インチ)中に注いだ。モールドを、室温で15分間静置した。次に、モールドを、121℃(250°F)のオーブンに45分間移動させた。次に、試料を、破壊靭性手順に従って破壊靭性(KIc)、及びニート樹脂引張手順に従ってニート樹脂引張特性を測定するために使用した。結果を表5に要約する。
【0078】
比較実施例CE−1比較のために、サンプルを、表面修飾ナノカルサイト材料なしで調製した。最初に、270gのVE−1398−5ビニルエステル樹脂を、SpeedMixer容器内で、PERKADOX 16過酸化物硬化剤(2.70g)及びTRIGONOX 121過酸化物硬化剤(2.70g)と混合した。次に、容器を密封し、内容物を、SpeedMixer(商標)二重非対称遠心分離機(Model DAC 600 FVZ−sp、Flack Tek,Incorporated,Landrum,South Carolinaから入手可能)を用いて、2000回転/分(rpm)で30秒間混合した。次に、内容物を、2つのガラスモールド:(a)8.9cm×17.8cm×0.64cm(3.5インチ×7インチ×0.25インチ)及び(b)22.9cm×11.4cm×0.32cm(9インチ×4.5インチ×0.125インチ)中に注いだ。モールドを、室温で15分間静置した。次に、モールドを、121℃(250°F)のオーブンに45分間移動させた。次に、試料を、破壊靭性手順に従って破壊靭性(KIc)、及びニート樹脂引張手順に従ってニート樹脂引張特性を測定するために使用した。結果を表5に要約する。
【0079】
【表5】

【0080】
SOCAL 31ナノカルサイトを、ビニルエステルナノ複合材料調製手順を用いて、VE−1398−5ビニルエステル中に分散させた。使用した配位子を表6に要約する。配位子を含有しない比較実施例も調製した。表6にも報告される配位子濃度を、ミリングプロセス中に調整し、粉砕した組成物中のカルサイト粒子の99%超が、カルサイト粒径手順に従って決定される、400nm未満の平均寸法を有した。
【0081】
粉砕した生成物(270g)を、SpeedMixer容器内で、PERKADOX 16過酸化物硬化剤(1.62g)及びTRIGONOX 121過酸化物硬化剤(1.62g)と混合した。容器を密封し、内容物を、SpeedMixer(商標)二重非対称遠心分離機(Model DAC 600 FVZ−sp、Flack Tek,Incorporated,Landrum,South Carolinaから入手可能)を用いて、2000回転/分(rpm)で30秒間混合させた。次に、内容物を、2つのガラスモールド:(a)8.9cm×17.8cm×0.64cm(3.5インチ×7インチ×0.25インチ)及び(b)22.9cm×11.4cm×0.32cm(9インチ×4.5インチ×0.125インチ)中に注いだ。モールドを、室温で15分間静置した。次に、モールドを、121℃(250°F)のオーブンに45分間移動させた。次に、試料を、破壊靭性手順に従って破壊靭性(KIc)、及び剪断弾性率手順に従って剪断弾性率を測定するために使用した。結果を表6に要約する。
【0082】
【表6】

【0083】
本発明の様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル樹脂を含む硬化性樹脂系中に分散させたカルサイトコアを含む表面修飾ナノ粒子を含む組成物であって、前記表面修飾ナノ粒子が、相溶化基と、前記カルサイトとイオン会合した結合基と、を含む第1の表面修飾剤を含む、組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂の溶解度パラメーターと前記相溶化基の溶解度パラメーターとの間の差異が、溶解度パラメーター手順に従って決定される場合、4J1/2cm−3/2以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結合基がカルサイトに対して、カルサイト豊富な表面を想定する結合エネルギー計算手順を用いて計算される場合、少なくとも0.50電子ボルトの結合エネルギーを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルサイトコアの少なくとも90%は、カルサイト粒径手順により測定される場合、400nm未満の平均粒径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂系が、反応性希釈剤を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記結合基が、ホスホン酸、スルホン酸、リン酸、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記結合基が、カルボン酸を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記相溶化基が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリエステルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記相溶化基が、ポリエーテルアミンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の表面修飾剤が、両性イオンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の表面修飾剤が、前記ビニルエステル樹脂及び前記反応性希釈剤のうちの少なくとも1つと反応することができる反応性基を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記カルサイトに結合される第2の表面修飾剤を更に含み、該第2の表面修飾剤が、結合基と、前記ビニルエステル樹脂及び前記反応性希釈剤のうちの少なくとも1つと反応することができる反応性基と、を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記ナノ粒子及び前記硬化性樹脂系の総重量に対して少なくとも10重量%のナノ粒子を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、2重量%以下の溶媒を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ビニルエステル樹脂が硬化される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物を含む硬化組成物。
【請求項16】
前記第1の表面修飾剤が、前記ビニルエステル樹脂及び前記反応性希釈剤のうちの少なくとも1つと反応する、請求項15に記載の硬化組成物。
【請求項17】
基材と、該基材の少なくとも一部に結合される請求項15又は16に記載の硬化組成物とを含む、被覆物品。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物と、強化用繊維とを含む繊維複合材料であって、前記強化用繊維が前記組成物で含浸される、繊維複合材料。
【請求項19】
前記ビニルエステル樹脂が硬化される、請求項18に記載の繊維複合材料。

【公表番号】特表2013−514437(P2013−514437A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544683(P2012−544683)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/060082
【国際公開番号】WO2011/084380
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】