説明

ナノスケールの疎水性粒子を含有する防汚被覆、及びその製造方法

ナノスケールの疎水性粒子を含有する樹脂バインダー層からなる防汚被覆であって、その際、−該粒子は、バインダー層に位置するだけでなく、その層から突出しており、−該粒子/バインダー比は、2.5〜5であり、かつ−バインダー層の該粒子の濃度は、0.01〜1g/m2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚被覆に、その製造方法に、及びその使用に関する。
【0002】
大気と接触し、かつ水がたまにしか作用しない自己洗浄性被覆の原理は、一般の知識である。効果的な表面自己洗浄性を得るために、前記被覆は、より高い疎水性表面だけでなく、一定の粗さも有さなければならない。構造と撥水性との適切な組合せは、表面上で動く水の少量でさえ、付着した汚れ粒子を連行し、その表面を洗浄することを可能にする(WO 96/04123号、US 3,354,022号)。
【0003】
EP−A−933388号から、さらに、この種類の自己洗浄性表面のために、1より大きいアスペクト比及び20mN/m未満の表面エネルギーが要求されることが公知である。本明細書では、アスペクト比を、構造の幅に対する高さの比として定義する。前記の基準は、例えば、自然界において、例えばハスの葉において認識される。前記の植物の表面は、疎水性の、蝋のような材料から形成され、お互いから数μmの間隔で隆起を有する。水滴は、本質的に、該隆起の先端とのみ接触する。この種類の撥水性表面は、例えば、EP−A−909747号、WO 00/58410号、又はUS 5,599,489号において記載されている。
【0004】
この方法において改質された表面の必要性は、大気によって囲まれた物品の場合においてだけでなく、特に、水生生物の繁殖を妨げるための、水が流れる物品の全体又は部分の周りの物品の動作に関しても存在する。前記の物品は、例えば、壁、コンテナ表面、防護壁、防波堤、杭、及び長期間、淡水又は海水のいずれかと接触する他の耐力構造であってよい。水中の繁殖圧は、非常に大きい。例えば、固体表面上に永久に成長する目的で住み着くことで知られる海洋生物の約6000種の幼生及び胞子がある。
【0005】
付着生物の分泌物は、前記の物質の腐食を促進しうる。特に、船体の輪郭は、かかる方法で、流れ抵抗が平均約15%だけ増加され、より高い燃料消費量をもたらす、立体の突出した外寄生によって変更される。
【0006】
対処として、殺菌性塗料が、望ましくない生物の幼生及び胞子を殺す又は追い払うために適用される。ここで含まれるのは、水生生物に対して有毒な浸出可能な物質を含有する被覆である。かかる化合物は、例えば天然で有機体、例えばDDTのような塩素化芳香族炭化水素であってよく、又はそれらは、例えば天然で無機体、例えば酸化銅もしくはチオシアン酸銅であってよく、或いは例えば有機金属化合物、例えばホウ酸アルキルもしくはアルキルスズ化合物であってよい。
【0007】
前記先行技術の殺菌塗料の欠点は、長期間にわたって該塗料から浸出した物質が、水、及び水域の堆積物を汚染し、かつ従って、望ましくない有害な影響を生じうることである。さらなる欠点は、現在、保護被覆を、定期的な間隔で取り除き、そして新たな被覆によって交換しなければならないことである。このことは、非標準の廃棄物の処理費用、新たな被覆材料の費用、及び労働費を導く。
【0008】
前記の欠点を回避するためには、物理的作用によって、毒素無しで望ましくない生物付着を止めることを意図する先行技術における方法がある。これらは、船体上へのゲル様シリコーンポリマーの被覆、又は遅い走行中のそれらの移動の長所によって、幼生による定着を妨げる繊維の皮様織物の適用であってよい。
【0009】
前記の後者の技術は、有害化合物を回避するが、これらは、製造及び適用するためには複雑であり、又は当該材料のために高価であり、かつ従って、これらは特殊な場合に限られたままである。
【0010】
従って、本発明の目的は、物品の表面を、使用において安定であり、及び物質のその使用を節約する、非常に薄い持続的な被覆で処理することを可能にする防汚被覆の製造方法を提供することであった。
【0011】
本発明は、ナノスケールの疎水性粒子を含有する樹脂バインダー層からなる防汚被覆を提供し、その際、
−該粒子は、前記バインダー層に位置するだけでなく、該層から突出しており、
−該粒子/バインダー比は、2.5〜5であり、かつ
−バインダー層の該粒子の濃度は、0.01〜1g/m2である。
【0012】
本発明の目的のために、防汚とは、大きなサイズに成長する軟体類及び藻類による物品の表面の定着が、低減又は完全に妨げられることを意味する。
【0013】
本発明の被覆は、持続的な被覆である。持続的に関しては、長期間にわたって流水中で、本発明の被覆が、物品から取り外すことができないことを意味する。使用持続時間は、水の組成、及び水温に依存する。
【0014】
本発明の被覆の厚さは、幅広い範囲内で変動されてよい。一般に、そこから突出している粒子を含む、被覆の厚さは、0.1〜100μmである。
【0015】
ナノスケール粒子の疎水性は、本質的に、例としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の場合において存在してよい。しかしながら、適切な処理の後のみに疎水性を示す疎水性粒子を使用することも可能である。
【0016】
使用されるナノスケールの疎水性粒子は、ケイ酸塩、鉱物、金属酸化物粉末、金属粉末、顔料及び/又はポリマーであってよい。
【0017】
好ましくは、ナノスケールの疎水性金属酸化物粒子を使用することが可能である。
【0018】
特定の利点に関して、BET表面積20〜400m2/g、及び特に35〜300m2/gを有する熱分解により製造される金属酸化物粒子を使用することが可能である。本発明の目的のために熱分解により製造された金属酸化物粒子は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛、並びに前記化合物の混合酸化物も含む。
【0019】
熱分解性、又はヒュームドの金属酸化物粒子に関しては、火炎酸化及び/又は火炎加水分解によって得られる金属酸化物粒子を意味する。該方法において、酸化可能な及び/又は加水分解可能な出発材料は、一般に、酸水素炎中で酸化され、又は加水分解される。熱分解法のために使用される出発材料は、有機物又は無機物を含んでよい。例えば、特に好適であるのは、すぐに利用できる塩化物、例えば四塩化ケイ素、塩化アルミニウム又は四塩化チタンである。好適な有機出発化合物は、例えば、アルコキシド、例えばSi(OC254、Al(OiC373又はTi(OiPr)4であってよい。得られた金属酸化物粒子は、大半は孔を有さず、かつ表面上でヒドロキシル基を有さない。一般に、熱分解性金属酸化物粒子は、少なくとも部分的に凝集された一次粒子の形状である。本発明において、例えば、半金属酸化物、例えば二酸化ケイ素は、金属酸化物とする。
【0020】
熱分解性金属酸化物は、表面上の活性基と反応する表面改質試薬によってそれらの疎水性を獲得する。この目的のために、好ましくは、次のシランを、個々に又は混合物として使用することができる。
【0021】
(RO)3Si(Cn2n+1)及び(RO)3Si(Cn2n-1
[式中、Rは、アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルであり、かつnは、1〜20である]で示されるオルガノシラン。
【0022】
R’x(RO)ySi(Cn2n+1)及びR’x(RO)ySi(Cn2n-1
[式中、Rは、アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルであり、R’は、アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルであり、R’は、シクロアルキルであり、nは、1〜20であり、x+yは、3であり、xは、1、2であり、yは、1、2である]で示されるオルガノシラン。
【0023】
3Si(Cn2n+1)及びX3Si(Cn2n-1
[式中、Xは、Cl、Brであり、nは、1〜20である]で示されるハロオルガノシラン。
【0024】
2(R’)Si(Cn2n+1)及びX2(R’)Si(Cn2n-1
[式中、Xは、Cl、Brであり、R’は、アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル−であり、R’は、シクロアルキルであり、nは、1〜20である]で示されるハロオルガノシラン。
【0025】
X(R’)2Si(Cn2n+1)及びX(R’)2Si(Cn2n-1
[式中、Xは、Cl、Brであり、R’は、アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、ブチル−であり、R’は、シクロアルキルであり、nは、1〜20である]で示されるハロオルガノシラン。
【0026】
(RO)3Si(CH2m−R’
[式中、Rは、アルキル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−であり、mは、0.1〜20であり、R’は、メチル、アリール例えば−C65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、OCF2CHF2、Sx−(CH23Si(OR)3である]で示されるオルガノシラン。
【0027】
(R’’)x(RO)ySi(CH2m−R’
[式中、R’’は、アルキルであり、シクロアルキルであり、x+yは、3であり、xは、1、2であり、yは、1、2であり、mは、0.1〜20であり、R’は、メチル、アリール例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、OCF2CHF2、Sx−(CH23Si(OR)3、SH、NR’R’’R’’’であり、その際R’は、アルキル、アリールであり、R’’は、H、アルキル、アリールであり、R’’’は、H、アルキル、アリール、ベンジル、C24NR’’’’R’’’’’であり、R’’’’はH、アルキルであり、かつR’’’’’は、H、アルキルである]で示されるオルガノシラン。
【0028】
3Si(CH2m−R’
[式中、Xは、Cl、Brであり、mは、0.1〜20でありであり、R’は、メチル、アリール例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、Sx−(CH23Si(OR)3、SHであり、その際、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルであり、かつxは、1又は2である]で示されるハロオルガノシラン。
【0029】
RX2Si(CH2mR’
[式中、Xは、Cl、Brであり、mは、0.1〜20であり、R’は、メチル、アリール例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、−OOC(CH3)C=CH2、−Sx−(CH23Si(OR)3、SHであり、その際、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルであり、かつxは、1又は2である]で示されるハロオルガノシラン。
【0030】
2XSi(CH2mR’
[式中、XはCl、Brであり、mは0.1〜20であり、R’は、メチル、アリール例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、−Sx−(CH23Si(OR)3、SHであり、その際、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルであり、かつxは、1又は2である]で示されるハロオルガノシラン。
【0031】
R’R2SiNHSiR2R’
[式中、R、R’は、アルキル、ビニル、アリールである]で示されるシラザン。
【0032】
環状ポリシロキサンD3、D4、D5、及びそれらの同族体であって、その際、D3、D4及びD5は、−O−Si(CH32のタイプの3、4又は5構成単位を有する環状ポリシロキサンを意味し、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンが、D4である。
【化1】

【0033】
【化2】

[式中、Rは、アルキルであり、
R’は、アルキル、アリール、Hであり、
R’’は、アルキル、アリールであり、
R’’’は、アルキル、アリール、Hであり、
Yは、CH3、H、zが1〜20であるCz2z+1、Si(CH33、Si(CH32H、Si(CH32OH、Si(CH32(OCH3)、Si(CH32(Cz2z+1)であり、
その際、R’又はR’’又はR’’’は、(CH2z−NH2であり、かつ
zは、1〜20であり、
mは、0、1、2、3、・・・∞であり、
nは、0、1、2、3、・・・∞であり、
uは、0、1、2、3、・・・∞である]で示されるタイプのポリシロキサン又はシリコーン油。
【0034】
表面改質剤として、好ましくは、次の化合物を使用することができる:オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン。
【0035】
特に好ましくは、ヘキサメチルジシラザン、オクチルトリエトキシシラン、及びジメチルポリシロキサンを使用することができる。
【0036】
好適な疎水性の、熱分解性金属酸化物は、例えば、AEROSIL(登録商標)及びAEROXIDE(登録商標)の生成物(全てDegussa社製)を示した表から選択することができる。
【表1】

【0037】
本発明の被覆の樹脂バインダー層は、有利には、疎水性合成ポリマー又は同様の混合物である。
【0038】
さらに本発明は、本発明の被覆の製造方法を提供し、その際、ナノスケールの疎水性粒子、及び望ましい場合に、充填剤及び顔料及び少なくとも1つのバインダーも含有する調合物が、物品の少なくとも1表面に適用され、そして硬化される。
【0039】
前記バインダーは、空気乾燥してよく、該バインダーは、過酸化物によって遊離基架橋、もしくは縮合反応又は付加反応によって化学架橋してよく、又は、該バインダーは、例えば光もしくは紫外線によって架橋する放射線架橋をしてよい。
【0040】
使用されうるバインダーは、モノマー、低分子質量プレポリマー、高分子質量ポリマー、及びそれらの混合物を含む。従って、例えば、次を使用することができる:アクリロイルモルホリン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート並びにそのエトキシ化及び/又はプロポキシ化された誘導体、ヘキシルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、エチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート並びにそのエトキシ化及び/又はプロポキシ化された誘導体、オクチルアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、スチレン、メチルスチレン、シクロペンタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルカプロラクタム、並びに上記モノマーから製造されるコポリマー、並びに/又はカプロラクタム。
【0041】
加えて、バインダーとして、エポキシ樹脂、エポキシ化ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、イソシアネート樹脂、及びそれらの架橋剤、又はアミン、アミド、無水カルボン酸、メルカプタン、ポリオール、過酸化物から選択される硬化成分、並びに第1族〜第4族の主族及び副族から、及び副族第8族からの元素の化合物から選択されるそれらの触媒を使用することができる。
【0042】
使用されうる光開始剤(photoinitiator)は、全ての従来の系、特にアセトフェノン、有機的に置換されたホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、例えばIrgacure 801、Irgacure 2005、オキシムエステル、チアゾリウム塩、チオエーテルケトン、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、及び例えば金属酸化物又は金属硫化物のタイプ、例えばZnOもしくはCdSのナノ粒子の半導体である。
【0043】
加えて、調合物は、従来の充填剤も含んでよい。これらは、自然に生じた沈殿物、例えばタルク、微粉雲母、グラファイト、ケイ藻土、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、微粉石英、もしくは重晶石からの充填剤を含み、又は該充填剤は、例えば、湿潤沈降シリカ、ケイ酸アルミニウムナトリウム、酸化アルミニウム水和物、カーボンブラック、微粉ガラス、及び空洞ガラスビーズのように合成製造されてよい。また含まれるのは、例えば、天然又は合成の単繊維、例えばセルロース繊維、珪灰石、ポリプロピレン繊維又はポリアミド繊維であってよい。
【0044】
充填剤及び繊維は、表面改質されて、化学官能性、又はバインダーとの相容化を得てよい。上記で列挙された表面改質剤は、この表面改質に好適である。
【0045】
いくつか又は全ての前記充填剤は、防汚層の着色が所望される場合に、顔料と交換してよい。
【0046】
加えて、周期表の第Ib、第III又は第IV族からの金属が存在することが可能であり、例えば酸化物、水酸化物、酸塩化物、酢酸塩、マロン酸塩、及びステアリン酸塩である。かかる多数の殺菌性化合物が、公知であり、かつ制生表面を製造するために使用される。この種類の殺菌効力は、本発明の被覆との組合せで増加されてよく、それによって先行技術と比較してそれらの濃度を低減することを可能にする。
【0047】
前記の調合物は、さらに、バインダーが溶液で存在する、揮発性溶剤を含有してよい。前記揮発性溶剤は、該調合物が適用された後に取り除かれる。揮発性溶剤の除去は、蒸発又は揮発によって実施され、高い温度の使用によって、空気排出によって、又は真空又は減圧の使用によって加速されてよい。揮発性とは、少なくとも95%の溶剤が、25℃で24時間以内に蒸発されることを意味する。
【0048】
該調製物において使用されるナノスケールの疎水性粒子の割合は、該調製物の固体及び液体の成分の総質量に対して、有利には0.5質量%〜15質量%である。特に、1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
この意味における揮発性溶剤として、該調合物は、単独で又は互いに混合して、36℃〜240℃、有利には120℃〜200℃の範囲の沸点を有する、標準状態で液体である、1つ以上の炭化水素、エステル及びケトン、並びにアルコールを含有してよい。
【0050】
該調合物におけるこれら化合物の割合は、有利には、該調合物の固体及び液体の成分の総質量の99質量%までである。特に、80質量%〜98質量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
本発明の方法に関して、該調製物は、さらに、噴射ガス、例えばブタン/プロパン混合物を含有してよい。加圧ガス容器において収容された、この形の該調製物は、処理される物品の表面への噴霧適用に好適である。
【0052】
疎水性粒子の濃度は、加圧容器中の合計の液体の体積に対して、1〜200g/l、有利には10〜50g/lである。
【0053】
物品の少なくとも1表面への前記調合物の適用は、あらゆる公知の方法で、当業者に実施されうる。好ましくは、該調製物は、該調合物中で物品を浸すことによって、はけ塗によって、フリースローラを使用するローラ適用によって、又は物品への該調合物の噴霧適用によって、適用される。
【0054】
該調合物の噴霧は、有利には、1〜5barの圧力で実施されうる。
【0055】
本発明の方法は、少なくとも1表面上を防汚被覆で処理された物品を製造するために使用されうる。
【0056】
被覆される物品は、例えば、金属、プラスチック、木、セラミック又はガラスからなってよい。
【0057】
本発明の被覆の特徴は、該塗料が、空気中で見られる場合に光沢のない外観をもたらす微粗度を有し、かつ最初に水によって完全に湿潤されないことである。最初に、代わりに、三成分の固相/液相/気相の境界が、物品の表面上にある。流体動力学的圧力を含む要因に依存し、かつ数時間〜数日に達するが、しかし本発明に対して決定的ではない、一定の滞留時間後に、該相の境界は、完全に湿潤された状態への変化を受ける。その後、該境界は、固相/液相の境界のみである。これは、たとえ被覆された物品が、気相、例えば空気と一時的に接触されても、存在したままである。これは、本発明の被覆を、従来の被覆からだけでなく、理論的な超疎水性被覆からも区別する。
【0058】
本発明の被覆の他の特徴は、該被覆が、摩擦のような機械的負荷下で、又は高圧水ジェット下で、流水中の物品へ持続的に付着したままであることである。
【0059】
本発明は、さらに、水と接触したままの表面の防汚処理のための本発明の被覆の使用を提供する。
【0060】
本発明は、全ての種類の物品が、単純な方法で、防汚の、生理学的に好ましい、持続的被覆で処理されうる利点を有する。
【0061】
実施例
実施例1:イソブチルメタクリレート及び比較的長鎖のメタクリレートに基づくポリアクリレートバインダー100gを、市販のニトロセルロースシンナー500g中へ、塊のないように撹拌し、透明な溶液を得る。
【0062】
AEROSIL R 812Sの130gを、撹拌しながら、少しずつこの溶液に添加する。その粉末を塊のないように取り込む場合には、均一化を、およそ、3000rpmで10分以上さらに撹拌することによってもたらす。これを、続いて、ニトロセルロースシンナー100gでレットダウンする。
【0063】
表面への適用、及び溶剤の蒸発に続いて、持続的な撥水被覆を形成する。
【0064】
実施例2:イソブチルメタクリレート及び比較的長鎖のメタクリレートに基づくポリアクリレートバインダー100gを、ニトロセルロースシンナー500g中へ、塊のないように取り込み、透明な溶液を得る。続いて、AEROSIL R 8200の130gを、撹拌しながら添加する。その調合物を塊のないように取り込む場合には、均一化を、およそ、3000rpmで10分以上さらに撹拌することによってもたらす。レットダウンを、さらにニトロセルロースシンナー780gで実施する。表面への適用、及び溶剤の蒸発に続いて、持続的な付着撥水被覆を形成する。
【0065】
試験法:実施例1及び2の調製物を、帆船の水中の船体の部分に適用する。施工速度は、被覆表面1m2あたり疎水化させた二酸化ケイ素の平均0.25gであるようなやり方である。完全に乾燥した後に、実施例1及び2の被覆は、大気条件下で完全に撥水する。該船は、水中に置かれ、そしてバルト海の水中に3ヶ月半留める。この時間の後、該船を陸上に揚げ、そして、海洋生物による外寄生がないか調べる。
【0066】
処理した全範囲が、完全に湿っていることが判明する。実施例1及び2の調製物で被覆した領域は、同様の水域で同時間費やした同様の大きさの船上でも見られた典型的な付着物を有した。しかしながら、付着物の除去は、通常の防汚塗料のみに耐える表面の洗浄と比較して、適用されるより少ない力を必要とし、4分の1の時間のみがかかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケールの疎水性粒子を含有する樹脂バインダー層からなる防汚被覆であって、その際、
−該粒子は、前記バインダー層に位置するだけでなく、該層から突出しており、
−該粒子/バインダー比は、2.5〜5であり、かつ
−バインダー層の該粒子の濃度は、0.01〜1g/m2である防汚被覆。
【請求項2】
前記のバインダー層から突出した粒子を有する該バインダー層の厚さが、0.1〜100μmであることを特徴とする、請求項1に記載の防汚被覆。
【請求項3】
前記のナノスケールの疎水性粒子が、BET表面積10〜400m2/gを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の防汚被覆。
【請求項4】
該粒子が、熱分解によって製造された金属酸化物粒子であることを特徴とする、請求項3に記載の防汚被覆。
【請求項5】
ナノスケールの疎水性粒子及び少なくとも1つのバインダーを含有する調製物が、物品の少なくとも1表面に適用され、そして硬化されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の防汚被覆の製造方法。
【請求項6】
前記のナノスケールの疎水性粒子の割合が、前記の調製物の固体及び液体の成分の総質量に対して、0.5質量%〜15質量%であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の調製物が、噴射ガスを含有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
該調製物を、噴霧によって基層に適用することを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
水と接触したままの表面の制生処理のための請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆の使用。

【公表番号】特表2009−541544(P2009−541544A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517068(P2009−517068)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055200
【国際公開番号】WO2008/000570
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】