ナノワイヤ構造体
本発明は、たとえばマイクロリアクタシステム又はマイクロ触媒システム内に設置するのに適しているナノワイヤ構造体に関する。ナノワイヤ構造体の製造のために、ナノ細孔内でナノワイヤを電気化学的に堆積するテンプレートベースの方法を用いる。異なる角度で照射を行い、それによってナノワイヤ網を形成する。テンプレートフィルムの溶解及び溶解したテンプレート材料の除去によって、ナノワイヤ網内で構造化空隙を露出させる。ナノワイヤの網目状結合はナノワイヤ構造体に安定性をもたらす。ナノワイヤ間においては、電気的接続が確立される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤ構造体、該ナノワイヤ構造体を製造する方法、及びマイクロリアクタシステム、特にマイクロ触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
K. Jaehnisch他は、非特許文献1において、化学反応及び分析目的に対するマイクロ構造部品の利点を実証した。これによって、化学合成及び分析に対するこのようなシステムの重要性が増した。従来のリアクタと比較して、これらのマイクロ構造リアクタは、非常に大きな面積・体積比を有し、これは、熱交換性能及び物質輸送の進展に有利な影響を及ぼす(非特許文献2を参照されたい)。
【0003】
マイクロ構造リアクタにおいては、既に多数の既知の反応が実施されており、特に多数の触媒反応も実施されている。ここで、液相反応であるか、気相反応であるか、又は気液相反応であるかは重要ではない。触媒の潜在活性の利用を可能にするために、触媒材料は、様々な幾何形状を有するマイクロ構造システムに一体化される。最も単純な場合を前提とすると、マイクロリアクタを構成するために使用されるリアクタ材料はそれ自体で、触媒活性物質から成る(非特許文献3を参照されたい)。しかしながら、これは、触媒表面をリアクタ壁に限定してしまう。この欠点は部分的に、最適化されている触媒/担体システムによって回避される。大抵の場合、今日のマイクロ構造リアクタは、チャネル内に入れられている小さな粒子又は粉末を含む。
【0004】
しかしながら、触媒繊維、触媒ワイヤ、及び触媒膜も使用される(非特許文献4)。金属ナノ構造体、特に貴金属から成る金属ナノ構造体は、面積と質量との比が大きいことに起因して(これは製造コストがわずかであることに関連している)、不均一触媒において既知である(非特許文献5を参照されたい)。
【0005】
元来、ナノ化学における研究は、等方性金属粒子の調査に集中してきた。したがって、その触媒特性はよく研究されている。しかしながら、今日まで、多数の1次元ナノ構造体も、不均一触媒における使用を考慮した上で分析されてきた。しかし、その固定化は大きな問題である。非特許文献6から、ナノ構造体を担体上に設けるか、又は、たとえばナフィオンのような多孔性材料内に入れることが既知であるが、これは、利用可能な触媒表面を強制的に排除することになる。さらに、拡散プロセスに起因して、触媒活性は触媒材料の分布に依存することに注意する必要がある。したがって、ナノ粒子は確かに表面・体積比を劇的に増大させるが、以下の理由から、このようなリアクタの長期間安定性は比較的低くなってしまう。
1.担体の腐食に起因するナノ粒子の接触の損失
2.溶解及び再度の堆積又はオストワルト熟成
3.表面エネルギーを最小化するためのナノ粒子の凝集
4.ナノ粒子の溶解及び水溶性イオンの移動
【0006】
平行に方向付けられているワイヤアレイ及び管アレイは既に、グルコースセンサとして(非特許文献7)、電極触媒として、たとえばアルコール酸化(非特許文献8)及び水素過酸化物還元(非特許文献9)において使用されている。しかしながら、これらの場合、ナノ構造体はあまり安定していない。
【0007】
Nielsch他は、非特許文献10において、薄い金属膜からの堆積のためにパルス(gepulste: pulsed)堆積を使用することを報告している。
【0008】
ナノワイヤ生成のための方法は、たとえば非特許文献11、又は非特許文献12、非特許文献13、及び非特許文献14から既知である。なお、これらは本明細書に参照により援用される。ただし、これらの方法では、別個のナノワイヤのみが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Chemistry in Microstructured Reactors」(Ang. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 406-446)
【非特許文献2】O. Woerz他著「Microreactors - a New Efficient Tool for Reactor Development」(Chem. Eng. Technol. 2001, 24, 138-142)
【非特許文献3】M. Fichtner著「Microstructured Rhodium Catalysts for the Partial Oxidation of Methane to Syngas under Pressure」(Ind. Eng. Chem. Res . 2001, 40, 3475-3483)
【非特許文献4】G. Veser著「Experimental and Theoretical Investigation of H2 Oxidation in a High-Temperature Catalytic Microreactor」(Chem. Eng. Sei. 2001, 56, 1265-1273)
【非特許文献5】R. Narayanan他著「Catalysis with Transition Metal Nanoparticles in Colloidal Solution: Nanoparticle Shape Dependence and Stability」(J. Chem. Phys. B, 2005, 109, 12663-12676)
【非特許文献6】Z. Chen他「Supportless Pt and PtPd Nanotubes as Electrocatalysts for Oxygen-Reduction Reactions」(Angew. Chem. 2007, 119, S. 4138-4141)
【非特許文献7】J. H. Yuan他著「Highly ordered Platinum-Nanotubule Arrays for Amperometric Glucose Sensing」(Adv. Funct . Mater 2005, 15, 803)
【非特許文献8】H. Wang他著「Pd nanowire arrays as electrocatalysts for ethanol electrooxidation」(Electrochem. Commun. 2007, 9, 1212-1216)
【非特許文献9】H. M. Zhang他「novel electrocatalytic activity in layered Ni-Cu nanowire arrays」(Chem. Commun. 2003, 3022)
【非特許文献10】「Uniform Nickel Deposition into ordered Alumina pores by pulsed electrodeposition」(Adv. Mater. 2000, 12, 582-586)
【非特許文献11】T. W. Cornelius他著「Controlled fabrication of poly- and single-crystalline bismuth nanowires」(Nanotechnology 2005, 16, S. 246-249)
【非特許文献12】Thomas Walter Corneliusの論文(GSI, 2006)
【非特許文献13】Florian Maurerの論文(GSI, 2007)
【非特許文献14】Shafqat Karimの論文(GSI, 2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、比表面積が大きい安定した空隙構造を有する複雑な(komplex: complex)ナノワイヤ構造体と、該ナノワイヤ構造体の製造方法とを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる課題は、広範囲に使用可能であると共に、たとえば触媒要素として適している、そのようなナノワイヤ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利なさらなる構成は、従属請求項において規定されている。
【0013】
ナノワイヤ構造体を製造する方法を提供する。該ナノワイヤ構造体は、多数のナノワイヤから成るアレイを含む。ナノワイヤは異なる方向に延在している。異なる方向に延在しているナノワイヤは互いに交差し、それによって、該ナノワイヤから成る相互接続(vermascht: meshed)網を形成する。ここで、相互接続網は、非常に大きな相互作用表面を有するオープンセル型の空隙を形成する。
【0014】
製造のために、いわゆるテンプレートベースの方法を以下のように使用する。
【0015】
第1の方法ステップ(a)では、まず、誘電性テンプレート、特に誘電性テンプレートフィルムを用意する。テンプレートフィルムは、たとえば、通常の市販のプラスチックフィルム、特にポリマーフィルムである。
【0016】
後続の方法ステップ(b)では、エネルギー放射、特に、たとえばダルムシュタット所在の重イオン研究所の加速器施設において利用可能であるような高エネルギーイオンビームをテンプレートフィルムに照射する。照射によって、テンプレートフィルムを貫通する多数の潜在トラックが生じる。該トラックは、フィルムの分子構造、たとえばポリマー構造が、個別の各照射イオンの軌道に沿って破壊されることを特徴とする。これらのトラックを「潜在トラック」と呼ぶ。破損はトラック中心部(Spurkern; track core)において最大であり、1/r2で低減する。エッチング技法によって、破壊された分子構造を有する材料をトラックから除去して、潜在トラックをエッチングして、開いたチャネル、すなわちいわゆるナノ細孔を形成することができる。ここで、潜在トラック、ひいては後に生成されるナノ細孔は、テンプレート表面の平面に関して確率的に分布している。
【0017】
本発明によれば、ステップ(b)において、テンプレートの表面に対して少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の角度で、換言すると、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の異なる方向から、テンプレート又はテンプレートフィルムにイオンビームを照射する。それによって、まず、テンプレートフィルム内に、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の異なる平行でない方向に延在する潜在トラックが生じる。たとえば、テンプレートフィルムの面法線に対して2つの角度(+45度、−45度)で、数MeV/u〜数十MeV/uのエネルギーによって重イオンをポリカーボネートフィルムに照射する。
【0018】
特に好ましくは、この場合、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの(又はそれ以上の数の)異なる方向からテンプレートフィルムに対して照射を行う。それによって、より詳細に後で述べるように、3次元の網目状に結合したナノワイヤ網を製造することができる。たとえば、数MeV/u〜数百MeV/uのエネルギーで、3つの異なる方向から、たとえば面法線に対してそれぞれ45度の極角で、且つ、面法線を中心とした0度、120度、及び240度の方位角で、それぞれ数108イオン/cm−2のフルエンスでポリカーボネートフィルムに重イオンを照射する。網の複雑性を、照射方向を増やすことによって高めることができることは明白である。ここで、イオンのエネルギーは、該イオンがフィルムを完全に横断するように選択する。イオンビームのエネルギーはしたがって、照射されるフィルムの厚さに依存する。
【0019】
好ましくは、伝導性金属層を、場合によっては一時的な陰極層として、テンプレートフィルムの第1の面に施す。詳細には、これは、好ましくはイオン照射を行った後に行い、さらに好ましくはエッチングの前に、ただし少なくとも電気化学的堆積の前に行う。したがって、好ましくは、潜在イオン誘起トラックからエッチングによりナノ細孔を形成する前に、陰極層を少なくとも部分的にテンプレートフィルム上に施す。このようにして、陰極層の材料が孔内で堆積する可能性を排除する。さらに、孔は正確な円筒形を有し、その両端が狭窄化することはない。
【0020】
好ましくは、陰極層の製造のために、まず、テンプレートフィルムの第1の面において薄い金属層、たとえば金層をスパッタリングし、その後、この金層を電気化学的に、たとえば銅層を用いて補強する。これは、最初に比較的薄い層をスパッタリングすることができるという利点を有する。
【0021】
そして、ステップ(c)において、テンプレートフィルムにエッチングプロセスを受けさせる。このエッチングプロセスによって、テンプレートフィルム内の潜在トラックを広げて貫通チャネルを形成する。該チャネルはテンプレートフィルムを完全に貫通する、すなわち、テンプレートフィルムの表面からテンプレートフィルムの対向する表面にまで延びている。これらのチャネルは専門家の間ではナノ細孔と呼ばれる。ここで、エッチングプロセスの最初では、トラック中心部における分子構造の破損が最も大きい部分が溶解し、エッチング時間が経過するにつれて、ナノ細孔の直径は拡大していく。異なる方向からのテンプレートフィルムの照射と、その結果として生じる、潜在トラックの交差網とに起因して、エッチング時に、交差ナノ細孔の網が生じる。交差ナノ細孔は、特に、著しい数の交差ナノ細孔が互いに結合するほど密に配置されており、それによって、多数の分岐を有する結合しているチャネルシステムが生じる。共通の1つの平面には存在していない少なくとも3つの方向から照射を行った場合、3次元の網目状に結合した、ナノ細孔から成るチャネルシステムが生じる。
【0022】
後続のステップ(d)では、陰極層の内側から開始して、テンプレートフィルム内のナノ細孔内で、電気化学的堆積によってナノワイヤを成長させる。すなわち、ナノ細孔を、陰極層から電気化学的堆積を用いて満たす。ここで、ナノワイヤがナノ細孔内で成長する。このために、孔によって貫通されており且つ片側が伝導的に被覆されている誘電性フィルムを電気化学的堆積装置内に設置する。ここで、陰極層が、ナノワイヤの電気化学的堆積過程のための陰極としての役割を果たす。そして、金属イオンの電気化学的堆積を用いて、ナノワイヤをナノ細孔内で成長させる。ナノ細孔内部の金属から成るナノワイヤは、特に直接的に陰極層上で成長する。ここで、ナノワイヤは陰極層と固く一体化する。陰極層は、生成されるナノワイヤ構造体の、個別のナノワイヤと固く結合している基板層として残ることができるが、所望であれば、ナノワイヤ網を生成した後に除去することもできる。ここで、ナノ細孔又はナノチャネルから成る相互接続網において、交差ナノワイヤから成る相互接続網が生じる。ナノ細孔が互いに結合している節点では、したがって、交差金属ナノワイヤが互いに一体化するか又は互いに一体的に結合する、ナノワイヤ網の節点が生じる。したがって、互いに結合している交差ナノワイヤから成る一体的な網を生成させることができる。テンプレートフィルムはこの方法段階においては、鉄筋補強におけるように、交差していると共に互いに結合しているナノワイヤから成る結合網によって貫通されている。
【0023】
したがって、ナノワイヤは、テンプレートフィルム内のナノ細孔内部で、照射方向によって予め与えられる少なくとも2つの、少なくとも3つの、又はそれ以上の所定の異なる方向において成長する。共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの方向から照射を行う場合、ナノワイヤは、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの所定の異なる方向に沿って網内で延在する。それによって、3次元で網目状に結合したナノワイヤ網が製造される。したがって、3次元で網目状に結合したナノワイヤ網では、少なくとも3つの所定の方向のうちの第1の方向のナノワイヤは、第2の所定の方向の他のナノワイヤとだけでなく、少なくとも第3の方向のナノワイヤとも結合している。ここで、第3の方向は、第1の方向及び第2の方向が張る平面に存在していない。
【0024】
ナノワイヤから成る網が完全に堆積するか又は成長すると、ステップ(e)において、テンプレートフィルムを、特に化学的に溶解させ、それによって、ナノワイヤから成る網を露出させる。テンプレートフィルムは溶解時に少なくとも小さな部分に分解され、これらの部分は小さいため、ナノワイヤ網によって貫通されている空間から、ナノワイヤ網に損傷を与えることなく、除去することができる。テンプレートフィルムがプラスチックフィルムである場合、該テンプレートフィルムは、たとえば溶媒を用いて溶解することができる。網の相互接続又は交差ナノワイヤの互いとの結合に起因して、結合ナノワイヤ網は、テンプレートフィルムの除去後も固有の安定性を有し、詳細には、1つのみのカバー層(陰極/基板層)のみでも、場合によっては全くカバー層が無くても安定性を有する。ナノワイヤから成る結合網は、少なくとも固有安定性を有するオープンセル型の空隙構造を形成する。該空隙構造は、慎重を要するが、相対的に良好に取り扱うことができる。
【0025】
すなわち、本発明によればさらに、ナノワイヤから成る網が完全に堆積又は成長すると、所望であれば、陰極層を除去することもできる。この場合、陰極層を、特にナノワイヤ網の堆積後であり且つテンプレートフィルムの溶解及び除去前に、テンプレートフィルムから除去する。これはたとえば、陰極層及びナノワイヤ網が界面において異なる材料から成る場合に、良好に可能となる。しかしながら、陰極層の除去は強制ではなく、たとえばナノワイヤ網と結合している閉じているカバー層が望ましい場合、陰極層はナノワイヤ網と結合したままであり続けることもできる。陰極層は、ナノワイヤ網に接したままである場合、付加的に安定性を向上させると共にナノワイヤ構造体をより良好に取り扱うことを可能にする基板層を形成する。したがって、好ましくは、ナノワイヤ構造体は、平坦なマット状の形状を形成する。したがって、特に、ナノワイヤ網の少なくとも1つの平坦な面においてカバー層が設けられていない、すなわち開いており、且つ、ナノワイヤ網の対向する平坦な面が基板層と固く結合しているか又は一体化している平坦なナノワイヤ構造体を製造することが可能である。ここで、個別のナノワイヤはそれぞれ、単独で基板層と結合している。平らなマット状のナノワイヤ構造体の平坦な面は、テンプレートフィルムの表面によって規定される。したがって、ナノワイヤの安定した網目状結合(節点における機械的な一体的結合)によって、ナノワイヤ網をカバー層無しで完全に製造することも可能である。
【0026】
ナノワイヤ網の十分なナノワイヤ密度及び安定性を得るために、十分な数の交差ナノワイヤが節点で重なり合い、それによって、交差ナノワイヤが十分に多い節点において互いに一体化して結合網を形成するのに十分な大きさのイオンビームの強度でイオン照射を実施する。イオンビームの強度、より正確には照明方向当たりの面密度(面単位のイオン数)は、好ましくは少なくとも1・107イオン/cm2、好ましくは少なくとも5・107イオン/cm2、特に好ましくは5・108イオン/cm2の大きさを有するべきである。イオンビームの強度は、好ましくは少なくとも、ナノワイヤ当たり、平均で少なくとも1つの節点、特にさらには複数の節点が生成される網目状結合が生じるほど高くするべきである。ここで、節点は、交差ナノワイヤにおいてナノワイヤの端部間で存在しており、詳細には、照射時のイオンの確率分布に起因して、異なる複数のナノワイヤにおいて該ナノワイヤの長さに沿って異なる箇所に存在している。
【0027】
本発明の利点は特に、少なくとも4つの面が、又は少なくとも5つの面が、又はさらには(スポンジのように)全ての面が開いているが、それでも安定しており、且つ十分に独立して存在することができるように製造可能なナノワイヤ網を生成することができるという点にある。したがって、ナノワイヤ網は、特に安定した又は独立して存在するナノワイヤ構造体を形成する。したがって、テンプレートフィルムを完全に除去した後、対応して、ナノワイヤ網構造を有する構造的に安定した空隙構成要素が残る。
【0028】
全ての面が開いているナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体、又は、片側だけが基板層によって閉じているか若しくは両側が平坦に閉じているナノワイヤ構造体は、たとえばマイクロリアクタの構成要素として、特に不均一触媒のためのマイクロ触媒構成要素として非常に適している。さらに、ナノワイヤ構造体は長期的な安定性が高い。これは、ナノワイヤが、多数の節点において互いに固く固定されており、たとえばマイクロチャネル内に緩く存在していないためである。たとえ個々の節点が万が一解けることがあっても、残っている節点の数は依然として、網の安定性を保証するのに十分である。
【0029】
好ましくはナノワイヤをパルス堆積する。パルス堆積は少なくとも以下のオプションを含む。
1)堆積をパルス堆積によって行う。すなわち、堆積パルスと、堆積が行われない拡散期間とが交互に生じる。
2)堆積を反転パルス堆積によって行う。すなわち、堆積パルスと、陽極逆パルスとが交互に生じる。
【0030】
2つのオプションは、堆積パルス間の間隔中に、電解質溶液において、イオンがナノ細孔内に拡散する(nachdiffundieren: diffuse; diffuse in addition:再拡散する)ことができ、それによって、ナノワイヤがより均一に成長するようになるという利点を有する。
【0031】
伝導性の、たとえば金属の層を施すのに適している、それ自体既知である被覆方法を用いて陰極層を生成することができる(たとえば蒸着、PVD、スパッタリング等)。ここで、陰極層は一層で生成することができる。ただし、好ましくは、陰極層を少なくとも二層で生成する。ここで、第1の部分層を、たとえばPVD、たとえばスパッタリング又は蒸着を用いて堆積し、その後、電気化学的堆積を用いて、場合によっては別の金属、たとえば銅から成る、金上の第2の部分層によってこの第1の部分層を補強する。
【0032】
したがって、上述の製造方法の結果として、多数の節点において互いに一体化している、交差して又は角度を有して配置されているナノワイヤから成るアレイを含む空隙構造を有するナノワイヤ構造体が得られる。一体化とは、この文脈においては、ナノワイヤが電気化学的堆積過程によって原子/分子レベルで互いに一体的に結合することを意味する。相互接続ナノワイヤ網はすなわち、電気化学的に堆積された材料から成る、均一に成長した材料系である。
【0033】
ナノワイヤ網内のナノワイヤ間には、互いに結合している複数の空間が存在する。ナノワイヤ網を形成する空隙構造はしたがって、オープンセル型である。それによって、大きな表面積を形成するナノワイヤの円柱面との相互作用のために、オープンセル型の空隙構造を通じて流体を導くことができる。
【0034】
しかしながら、この製造方法によって、生成されるナノワイヤ構造体のさらなる特定の構造特性が生じる。ナノワイヤ又はナノワイヤ網は、電気化学的に堆積される材料から成長することによって、たとえばX線回折によって調査することができる特定の結晶構造を有することができる。それによって、結晶構造に基づいて、ナノワイヤ網が上記方法によって製造されたか否かを認識することができる。
【0035】
ナノワイヤの直径は、好ましくは2000nm以下であり、特に好ましくは500nm以下又は100nm以下である。目下、直径は、10nmまで、又はさらにはより短く製造することができると考えられる。
【0036】
ナノワイヤのアスペクト比が大きくなればなるほど、ナノワイヤ構造体の活性表面は大きく生成することができる。したがって、ナノワイヤのアスペクト比は、好ましくは1対50以上、特に好ましくは1対100以上である。さらに好ましくは、ナノワイヤ間の平均距離は、ナノワイヤの平均直径よりも大きい。
【0037】
ナノワイヤ構造体の厚さは、テンプレートフィルムの厚さによって規定される。テンプレートフィルムが平坦であることに起因して、ナノワイヤ構造体は好ましくは同様に平坦であるか又は薄いマットの形状を有する。ナノワイヤ網の厚さは、好ましくは200μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。厚さに対して垂直な平面の2つの次元における大きさは、これの何倍にもすることができる。たとえば、0.5cm2の面を有するこのようなナノワイヤ網を製造することが可能である。
【0038】
ナノワイヤの数の面密度は概ね照射密度(イオン/cm2)に一致し、同様に活性表面に対する尺度である。ナノワイヤの数の面密度は、好ましくはn/F=107cm−2以上、特に好ましくはn/F=108cm−2以上である。
【0039】
ナノワイヤ構造体の活性表面に対する特定の尺度として、ナノ構造体の面及びナノワイヤアレイの厚さ当たりのナノワイヤの幾何学的比表面積を挙げることができる。この幾何学的比表面積Avはしたがって、概ね以下のようになる。
Av=π・nD/Fcosα
式中、Dはナノワイヤの平均直径であり、n/Fはナノワイヤの面密度であり、αは、テンプレートフィルムの面法線に対するナノワイヤの平均角度である。
【0040】
面及び厚さ当たりの幾何学的比表面積Avは、ナノワイヤの合計数によって形成され、少なくとも1mm2/(cm2 μm)とすべきである。しかしながら、より大きな値が好ましい。すなわち、Avは、5mm2/(cm2 μm)以上、20mm2/(cm2 μm)以上、又はさらには100mm2/(cm2 μm)以上である。さらに、場合によっては、値は、1000mm2/(cm2 μm)までとすることができる。
【0041】
反転パルス方法を用いるナノワイヤの製造においては、ナノワイヤは明確な<100>集合組織又は結晶構造を有する。たとえば金のような特定の金属に関しては、可能な限り小さな結晶を生成することが有利であり得る。このために、4nm以下の結晶サイズを達成することが好ましい。既に、一般的には、10nm以下の平均結晶サイズが有利であり得るとされている。
【0042】
結晶集合組織に起因して、表面の、特に活性表面の実際の大きさは、滑らかな円柱表面に基づく幾何学的比表面積Avよりも大きく、詳細には、好ましくは約4倍〜5倍である。
【0043】
本発明に従って製造されるナノワイヤ構造体に対する特に好ましい利用分野は不均一触媒である。すなわち、1つ又は複数のナノワイヤ構造体は、特にマイクロ触媒のための触媒構成要素としての役割を果たす。
【0044】
マイクロ触媒は好ましくは、流体供給部及び流体排出部を備えるマイクロ構造チャネルシステムと、流体供給部と流体排出部との間の触媒要素としての少なくとも1つのナノワイヤ構造体とを含む。それによって、流体供給部からナノワイヤ網の空隙構造内に流体を導き入れ、ナノワイヤ間の空間を通じて導き、流体排出部を通じて空隙構造から排出することができる。ここで、ナノワイヤ構造体のオープンセル型の空隙構造は触媒反応容積を形成し、ナノワイヤの円柱面は触媒活性表面を形成し、該活性表面と流体が空隙構造内で相互作用する。好ましくは、ナノワイヤは、堆積によって、たとえば多量に(完全に同じ材料から)、たとえば白金から形成されているため、触媒要素は非担持触媒(Vollkatalysator: unsupported catalyst: bulk catalyst:バルク触媒)要素である。
【0045】
ナノワイヤ網の特別な安定性に起因して、ナノワイヤ構造体の2つの平坦な面のいずれにおいてもカバー層を施すことは必ずしも必要ではないが、所望であれば、これを省く必要はない。2つのカバー層が望ましい場合、たとえば以下のようなことを行う。すなわち、ナノワイヤの電気化学的堆積プロセスを少なくとも、テンプレートフィルムの第2の面においてナノワイヤ上にキャップが形成され、これらのキャップが一体化して第2の平坦に閉じているカバー層が陰極層の対向する面において形成されるまで続ける。この平坦に閉じているカバー層は、堆積時間が長くなるにつれて厚くなる。したがって、ナノワイヤの生成又は成長に用いられる電気化学的堆積過程を単に、第2のカバー層が、十分に厚く、安定した、平坦に閉じている層の形態に完全に成長するまで続ければよい。ここで、ナノワイヤは、電気化学的堆積に起因して、両側においてそれぞれのカバー層と固く直接一体化している。しかしながら、カバー層は、所望であれば、後続する別個の第2の堆積過程において補強及び完成することができる。別個の第2の堆積過程は、同様に電気化学的堆積とすることができるが、被覆方法、たとえばPVD法、蒸着、又はスパッタリングを含むこともできる。この別個の堆積過程が電気化学的堆積であっても、第2の部分層のために、ワイヤ及びキャップのための材料とは別の材料を使用することができる。特に、ナノワイヤ及びキャップをパルス電気化学的堆積方法によって生成し、第2の部分層を直流法によって電気化学的に堆積することが適していることが分かった。特に、ナノワイヤ及び場合によってはキャップを、反転パルス堆積によって、金属又は金属を含有する化合物から生成する。たとえば、ナノワイヤ及び場合によってはキャップを白金から反転パルス堆積によって生成し、第2の部分層を銅から直流堆積によって生成することが適していることが分かった。それによって、堆積時間を短縮すると共に材料コストを低減することができる。基板層及びカバー層の厚さは、好ましくはそれぞれ10μm未満であり、たとえば概ね5μm〜10μmである。
【0046】
個々のナノワイヤ構造体からセンサ素子を構築することができる。センサ素子はたとえば、気体貫流及び温度の測定に適しているか、又は、該測定のために設けられる。さらに、センサ素子は、運動センサとしての役割も果たすことができる。センサ素子は、第1のナノワイヤ構造体及び第2のナノワイヤ構造体を備える少なくとも1つの測定ユニットを備える。これらのナノワイヤ構造体はそれぞれ、それぞれのナノワイヤ構造体の接触のために第1の基板層及び第2の基板層を備える。これらのナノワイヤ構造体間には、「加熱可能/加温可能素子」が配置されている。加熱は、たとえば、たとえば加熱可能なマイクロワイヤである素子に電圧を印加することによって行う。ここで、好ましくは、各ナノワイヤ構造体は個別に接触されている。気体がセンサ素子を通じて導かれると、該気体は、加熱された素子において加温され、該素子の後方に存在するナノワイヤ構造体を加温する。それによって、センサ素子の抵抗の変化が起こるか、又は該変化が誘起される。したがって、抵抗変化は、センサ素子を通る気体貫流に対する尺度である。抵抗変化は同様に、気体貫流によって影響を受ける温度変化に対する尺度とすることができる。センサ素子が動かされる場合、抵抗変化は運動変化を示す。ここで、気体は、まず、第1のナノワイヤ構造体を、その後、加熱可能な素子を、そして第2のナノワイヤ構造体を横断する。センサ素子は、使用されるテンプレートに対する照射において、たとえばマスクによって製造可能であり、すなわち請求項5による方法によって製造可能である。
【0047】
以下において、実施例に基づいて且つ図面を参照してより詳細に本発明を説明する。同じ要素及び同様の要素には部分的に同じ参照符号を付している。様々な実施例の特徴を、互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体の製造の概要を図式的に示す図である。
【図2】電気化学的堆積のために使用される堆積装置の立体図である。
【図3】陰極層の堆積のための堆積装置の透明な立体分解図である。
【図4】ナノワイヤ及び場合によってはカバー層の堆積のための堆積装置の透明な立体分解図である。
【図5】2次元のナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体のREM写真である。
【図6】図5のナノワイヤ構造体の、大幅に拡大したREM写真である。
【図7】3次元(3D)のナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体の製造の概要を図式的に示す図である。
【図8】3次元のナノワイヤ網のTEM写真である。
【図9】図8の3次元のナノワイヤ網の、わずかに拡大したREM写真である。
【図10】図8及び図9の3次元のナノワイヤ網の、さらにわずかに拡大したREM写真である。
【図11】貫流モードのためのナノワイヤ構造体を有するマイクロリアクタの概略分解図である。
【図12】2つのナノワイヤ構造体を有するセンサ素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
製造方法の概要
ナノワイヤ構造体の製造は、テンプレートベースの方法に基づく。該方法の部分ステップを図1において以下のように概略的に示す。
(a)テンプレートフィルムの用意
(b)イオン照射
(b1)金層の施し
(b2)金層の電気化学的補強(任意)
(c)イオントラックのエッチングによるナノ細孔の形成
(d)ナノ細孔内でのナノワイヤの堆積
(d1)陰極層の除去(任意)
(e)テンプレートフィルムの溶解及び除去
好ましくは、方法ステップは、図1に示す順番、すなわち(a)、(b)、(bl)、(b2)、(c)、(d)、(d1)、(e)で実施される。しかしながら、基本的に、別の順序を使用することも可能であり、たとえば2つの面からエッチングを行い、その後に初めて陰極層を施す部分ステップ(ステップ(b1)及び(b2)の前に(c))も可能である(たとえば図7を参照されたい)。
【0050】
図1(b)を参照すると、まず、テンプレートフィルム12にイオン14を照射する。ここで、軌道に沿って、テンプレートフィルム12の材料内で潜在イオントラック16を生成させる(b1)。テンプレートフィルム12はこの例では、ポリマーフィルム、より正確にはポリカーボネートフィルムである。本明細書に記載する方法は、テンプレートフィルムが、複数の、この例では2つの角度でイオンを照射されるという点において特別である。この例では、テンプレートフィルムに、テンプレートフィルムの表面に対して+45度で1回、−45度で1回照射を行う。それによって、潜在トラック、及び後では、交差ナノ細孔又は交差ナノワイヤが、互いに対して90度の角度で延在するようになる。当然のことながら、他の角度も可能である。
【0051】
異なる角度でテンプレートフィルム12に対して連続して照射を続けるために、まず、対応する放射管、たとえばGSIのシンクロトロンにおけるイオンビームの方向に対する第1の角度でテンプレートフィルム12を位置決めし、所定の第1のイオン面密度で該テンプレートフィルムに対して照射を行う。引き続いて、テンプレートフィルム12を放射方向に対して傾斜させ、所定の第2のイオン面密度でもう一度、該テンプレートフィルムに対して照射を行う。さらなる他の角度でナノワイヤを生成することになっている場合は、所望の角度の数だけこの過程を繰り返す。イオン密度又はイオンの面密度は、ナノワイヤの特定の面密度のために必要であり、事前に計算及び確定される。そして、この所定のイオン密度で照射を行う。以下で詳細に説明するような3D網の製造のために、たとえば、ビーム軸に対する極角で位置決めされるテンプレートフィルム12を、ビーム軸を中心にして方位角回転させる。
【0052】
続いて、テンプレートフィルム12の第1の面12aにおいて、薄い伝導性の金属層22a、たとえば金層をスパッタリングする(b1)。該金属層は第1の部分層を形成する。引き続いて、第1の部分層22aを第2の部分層24aによって電気化学的に補強する。ここで、第1の部分層及び第2の部分層は共に陰極層26aを形成する(b2)。該陰極層は後に、ナノワイヤ堆積のための陰極としての役割を果たす(d)。第2の部分層24aの電気化学的堆積のために、テンプレートフィルム12を、図2〜図4に示す堆積装置82内に嵌め込む。
【0053】
引き続いて、片側だけ被覆されているテンプレートフィルム12を堆積装置82から取り外し、潜在イオントラック16を化学的にエッチングする。それによって、貫通交差チャネルを形成する。これらのチャネルをナノ細孔と呼ぶ。該チャネルは、テンプレートフィルム12において延在方向が異なることに起因して、交差すると共に互いと網目状に結合するナノ細孔32を形成する。代替的に、対応する槽88をエッチング液で満たして、エッチングの終了後に空にすることによって、エッチングプロセスを堆積装置82において行うことができる。テンプレートフィルムの取り外し及び再度の設置は不要である。ナノ細孔32の直径は、エッチング時間の制御によってコントロールすることができる(c)。
【0054】
続いて、以上のようにして用意された、ナノ細孔32から成る交差網33が混じっているテンプレートフィルム12を再び堆積装置82内に嵌め込み、第2の電気化学的プロセスにおいて、ナノワイヤ34から成る網37を形成しながら、所望の金属をナノ細孔32内に電気化学的に堆積する(d)。この例では、白金をナノ細孔内に堆積するため、ナノワイヤ34又はナノワイヤ網37は白金から成る。この白金ナノワイヤ網37は、白金ナノワイヤ34の触媒活性表面に起因して、触媒活性網である。
【0055】
テンプレートフィルム12においてナノワイヤを堆積した後又はナノワイヤ網37を生成した後、所望であるならば、陰極層26aを除去することができる(d1)。陰極層26aの除去は有利には、テンプレートフィルム12を溶解及び除去する前に実施される。この例で使用される金陰極層は、白金ナノワイヤから良好に除去することができる。しかしながら、陰極層26aは、テンプレートフィルム12上に残って、テンプレートフィルムの溶解及び除去後に、基板層27を形成することもできる。該基板層上に、ナノワイヤ網37が配置され、この基板層と固く結合する(以下で図7を参照されたい)。
【0056】
最後に、ポリマーフィルム12を適切な有機溶媒内で溶解させる(e)。このように製造される本発明による金属ナノワイヤ構造体1を図1(e)に概略的に示す。
【0057】
ナノワイヤ構造体1は、交差して一体化しているナノワイヤ34から成るナノワイヤアレイ35を含むか、又は、該ナノワイヤアレイから成る。該ナノワイヤは、一体的な相互接続ナノワイヤ網37を形成する。網37は、一体化しているナノワイヤの相互接続構造に起因して、カバー層がなくても、すなわち全面において開いていても、特定の固有安定性を有する。ただし、たとえば片側(基板層27)の、又は、サンドウィッチ構造を形成するための両側のこのようなカバー層を排除することは意図していない。
【0058】
テンプレートベースの方法は、多数のパラメータに対して意図した通りに影響を及ぼすことができるという利点を提供する。ナノワイヤ34の長さは、使用されるテンプレート12の厚さと、照射角度とによって決定され、好ましくは10μm〜200μmであり、特に好ましくは約50μm±50%である。ナノワイヤ34の面密度は、照射によって確定される。イオン照射の、ひいてはナノ細孔の最小面密度は、十分な数のナノワイヤ34が互いに一体化することができるように選択すべきである。これに関連して、アレイの製造のための好ましい面密度は、好ましくは1・107cm−2〜1・109cm−2である。ナノワイヤ34の直径Dは、エッチングの時間長さによって調整され、約20nm〜2000nmとすることができる。ナノワイヤ34のアスペクト比は、1000までの値をとることができる。
【0059】
ナノワイヤ34のための材料として、電気化学的堆積に適している導電性材料、特に金属又は金属を含む化合物を使用することができる。以下の金属を用いての経験があり、これらの金属は好適であることが分かっている:Cu、Au、Bi、Pt、Ag、Cu、Cu/Co多層、Bi2Te3。
【0060】
一方では、大きな活性表面を得るために、わずかな直径Dを有するナノワイヤ34が多数存在していることが望ましく、他方では良好な機械的安定性を達成する必要がある。この最適化は、材料に依存し、要求に応じるものである。
【0061】
白金ナノワイヤ34を備えるナノワイヤ構造体1のために、たとえば、250nmの直径及び30μmの長さを有する108/cm2本のワイヤを有する安定した実施態様を製造した。ここで、アスペクト比は120であった。このようなナノワイヤ構造体は、たとえば白金又は他の含まれている要素の触媒特性に起因して、触媒要素として適している。
【実施例1】
【0062】
ナノワイヤ構造体1の製造のために、30μmの厚さの、円形の(r=1.5cm)ポリカーボネートフィルム12(Makrofol(登録商標))を使用し、該ポリカーボネートフィルムに、11.1MeV/uのエネルギーで、且つ、2つの角度(+45度、−45度)において、それぞれ5・108イオン/cm−2のフルエンスで重イオン14を照射した。伝導性金属層22aを施す前に、トラック16に沿ったエッチングの選択性を高めるために、ポリマーフィルム12の各面を、1時間にわたってUV光で照射する。
【0063】
ポリマーフィルム12の第1の面12aにおいて、約30nmの厚さの金層22aをスパッタリングする(b1)。CuSO4系の電解質溶液(Cupatierbad、Riedel)に基づく銅を、U=−500mVの電圧で定電位堆積することによって該金層を補強する。ここで、銅棒電極が陽極としての役割を果たす(部分層24a)(b2)。堆積を30分後に終了させる。その後、銅層24aの厚さがおおよそ10μmになる。続いて、60℃で、NaOH溶液(6M)を用いて数十分にわたって、テンプレートフィルム12の未処理の面12bからエッチングを行い、脱イオン水によって徹底的に洗浄を行い、それによって、エッチング液の残りを除去する(c)。そして、ナノ細孔を有するテンプレートフィルム12を堆積装置82内に嵌め込む。
【0064】
ナノワイヤ34の堆積を、65℃で、アルカリ性Pt電解質(Pt-OH-Bad、Metakem)を用いて行う。ナノワイヤ34を生成するために、反転パルス堆積の方法を使用し、それによって、ナノ細孔32内でのゆっくりとした拡散駆動型の物質輸送を補償すると共に、均一的なナノワイヤの成長を達成する。4秒間にわたるU=−1.3Vの堆積パルスの後に、1秒間にわたる陽極パルスがU=+0.4Vで続く。数分〜数十分後に、堆積を停止し、成長をコントロールする。ナノワイヤ34は、この時点において、十分に成長して、ナノ細孔内で一体化している。
【0065】
最後に、ナノワイヤ構造体全体1をテンプレートフィルム12と共に、数時間にわたって10mlの塩化メチレンを有する容器内に置くことによって、テンプレート材料を除去する。したがって、この実施例では、陰極層は基板27としてナノワイヤアレイ35に接して残り、ナノワイヤ構造体1の構成要素を形成する。ナノワイヤアレイ35の内部空間38から完全にポリマー残留物を除去するために、溶媒を3回交換する。
【0066】
このようにして製造されるナノワイヤ構造体1は、走査型電子顕微鏡写真(REM)で図5及び図6において見ることができる。ナノワイヤ34はここでは、おおよそ150nmの直径を有する。2つの角度下での照射に起因して、網を2次元と呼ぶ。したがって、図5及び図6では、複数の角度で2回照射を行った(+45度、−45度)テンプレート内で製造された、そのような2Dナノワイヤ網構造が見てとれる。ポリマーマトリクスの除去後に既に基板上で相対的に安定して分布しており且つ該基板と結合している網が形成された。
【0067】
図6による、個別のナノワイヤ34の拡大REM写真は、ナノワイヤ34が、節点39において非常に整って互いと一体化し、ひいては固く結合しており、また、照射によって予め与えられる90度の配向が維持されることを示している。ナノワイヤ34が互いと一体化する節点39は、ナノ細孔の交差点によって予め与えられ、ナノワイヤ34の長さにわたって、すなわちナノワイヤ34の端部間で1つ又は複数の箇所において分布している。
【実施例2】
【0068】
図7〜図10を参照すると、さらなる実施例がもたらされている。図7は、本方法の以下の部分ステップを概略的に且つ部分的にまとめて示している。
(a)テンプレートフィルムの用意
(b)、(c)照射、及びイオントラックのエッチングによるナノ細孔の形成
(b1)、(b2)、(d)陰極層の生成及びナノ細孔内でのナノワイヤの堆積
(e)テンプレートフィルムの溶解及び除去
【0069】
ここで、図7を参照すると、テンプレートフィルム又はポリマー膜12に対して、2つよりも多くの異なる方向から照射を行う。この実施例では、照射は4つの異なる角度で行う。これらの4つの照射方向は1つの平面に存在していない。図7に示されている透視図を参照すると、4つの側から、それぞれ1回ずつ上から斜めに照射を行う。詳細には、基板表面の法線に対して45度の極角下で、0度、90度、180度、及び270度の方位角で照射を行う。したがって、テンプレートフィルム12を照射時に少なくとも3回回転させる。
【0070】
すなわち、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの方向(この実施例では4つの方向)からテンプレートフィルムを照射すると、3次元ナノ細孔網33(c)と、その後に3次元ナノワイヤ網37(d)及び(e)とを製造することができる。換言すると、ここでは、照射方向、ひいてはナノワイヤ34は、テンプレート表面12a及び12bに対して斜めに延在する複数の異なる(平行でない)平面に存在している。したがって、このように生成される3次元ナノワイヤ網37では、ナノワイヤも異なる平行でない平面に存在する。それによって、網目状に結合した3次元の網構造が存在するようになる。数学的に表現すると、ナノワイヤはすなわち、少なくとも、平行ではない少なくとも2つの平面を張る同様に平行ではない3つの軸に沿って延在する。それによって、ナノワイヤが同じ平面からの他のナノワイヤと結合しないだけでなく、これらのナノワイヤによって形成される平面に対して斜めに延在するナノワイヤも存在するようになる。ベクトル数学の表現で言い換えると、少なくとも3つの軸又はナノワイヤ方向によって、3次元ベクトル空間を張ることができる。少なくとも3つの軸又はナノワイヤ方向は線形独立している。このような3次元で網目状に結合したナノワイヤ網を、本明細書では、3次元(3D)ナノワイヤ網と呼ぶことにする。
【0071】
図8は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を示しており、図9は、このような3次元ナノワイヤ網37をわずかに拡大したREM写真を示している。これらの図において、所定の角度で延在するナノワイヤ34が互いに結合している機械的に安定したシステムが形成されることが分かる。該システムは、特に図9のREM写真において分かるように、ポリマーマトリクスによって予め与えられる配向をテンプレート除去後に大幅に維持する。示されている網37のテンプレート12は、5・108イオン/cm2で、4つの異なる線形独立方向から4回放射することによって製造した。ここでは、ナノワイヤの厚さは約50nmである。
【0072】
活性表面の凝集(Aggregation: aggregation)及び喪失はほとんど観察されなかった。これは、可触性が高く且つ触媒回収がわずかであることを意味している。本製造方法は、ナノワイヤの直径、集積密度、及び複雑性(異なるナノワイヤ方向の数)の調整による網パラメータの簡単なコントロールを可能にする。たとえば図10において分かるように、2つの次元において数ミリメートルである非常に大きなナノワイヤ網37を製造することができる。図10は、概ね1cm2の大きさの図9のナノワイヤ構造体のREM写真を示している。したがって、ナノワイヤ構造体1全体は巨視的な大きさを有する。写真の左縁では、幾らかより小さいさらなるナノワイヤ構造体を見てとれる。Ptナノワイヤ網は、担持基板27を必要とすることなく大きな触媒活性表面を有する。しかしながら、該担持基板を排除するようには意図していない。
【0073】
本発明によるナノワイヤ構造体1はしたがって、結合して網37を形成するナノワイヤ34を備える。該ナノワイヤ構造体においては、網構造、特に3D網構造によって、ナノワイヤを機械的に安定して結合して、微視的な、そしてさらには巨視的な構造を形成することが可能になる。非常に安定しているため、該構造は、両側にカバー層がなくとも、場合によっては担持基板すらなくとも一体化に適している。ほとんど全てのナノワイヤ34は機械的に固く結合しているだけでなく、互いと導電的に結合している。したがって、これらの構造は、電解質向けの用途として大きな可能性を有している。
【0074】
堆積パラメータのさらなる実施例
別の実施例では、エッチング時間を18分に調整した。これによって、約250nmの直径を有するナノワイヤ34が生じた。ここでは、面密度(面当たりの数)は108cm−2であった。ワイヤの電気化学的堆積のために再び反転パルス方法を使用した。40msにわたるU1=−1.4Vの堆積パルスの後、2msにわたるU2=−0.1Vの短い逆パルスと、U=−0.4Vの電圧での100msのパルス間隔とが続いた。これは、約0Vの過電圧に対応する。すなわち、逆パルスの期間中、システムは平衡状態にある。
【0075】
電気化学的堆積のための構成
図2〜図4を参照すると、多数のナノワイヤ34から成るナノワイヤアレイ35の電気化学的堆積は完全に、図2に示されている堆積装置82において行われる。該堆積装置は、2つの電解槽86及び88を収容する金属キャリッジを押し入れることができる金属ハウジング84から成る。金属の良好な伝熱性に起因して、コントロールされる外部熱供給によって堆積装置を温度調整することが可能である。
【0076】
PCTFEから製造される電解槽86及び88は、互いの方を向いている面においてそれぞれ同じ大きさの円形の開口87及び89を有し、つまみネジ90によって互いに密に圧接することができる。2つの電解槽86及び88間の銅リング92は、電気化学的堆積のために、陰極としての役割を果たすか、又は、第1のカバー層と接触する役割を果たす。
【0077】
図3を参照すると、部分層22aの電気化学的補強のために、イオントラックエッチングされるテンプレートフィルム12が、部分層22a、ここではスパッタリングされた金層22aが環状の銅電極92と良好に接触するように、2つの電解槽86及び88の間に取り付けられる。陰極として使用される銅リングの両側では、電解槽が電解質で満たされる。部分層22aの方を向いている電解槽86内に配置されている第1の陽極94と、制御装置を備える外部電流源とを用いて金層22aの電気化学的補強が行われ、第1のカバー層26aが形成される。
【0078】
テンプレートフィルム12の取り外し、及び、堆積装置82の外側でのナノ細孔32のエッチングの後、テンプレートフィルム12は、再び堆積装置82内に設置される。
【0079】
図4を参照すると、ナノワイヤ34、及び場合によっては、陰極層26aに対向するカバー層の電気化学的堆積のために、片側が被覆されており且つナノ細孔が設けられたテンプレートフィルム12を、図3におけるように堆積装置82内に再び嵌め込む。それによって、陰極層26aがリング電極92と接触する。そして、テンプレートフィルム12の第2の面12bにおいて、陰極層26aに対して背を向けている電解槽88内で、該電解槽内に配置されている第2の陽極96によって堆積を行う。
【0080】
電気化学的堆積条件の、ナノワイヤの成長に対する影響の調査
ナノワイヤ34を生成するためのパルス堆積方法を用いて、有利には、堆積の各時点において、ナノワイヤの長さを均一にすることができる。これは、完全性及び正確性を期さないならば、直流堆積と比較して拡散層が短く保たれるということによって説明することができる。堆積パルス間の間隔(平衡状態又は逆パルス)においては、金属イオンはナノ細孔32内に拡散することができ、それによって、各堆積パルスの開始時において、電極表面全体にてほとんど同じ集中度が存在するようになり、それによって、成長が均一となる。拡散層はほとんど重なり合うことはなく、表面における不均一性が増大することはない。
【0081】
ナノワイヤ34の構造特性
本発明においては、様々な材料から成るナノワイヤ34の構造特性も調査した。電気化学的に堆積される材料においては、たとえば、晶子のサイズをコントロールすることが可能である。これは、機械的安定性、熱輸送特性及び電気輸送特性並びに表面積、ひいては触媒活性に対しても効果を有する。したがって、多数の特性に対して意図した通りに影響を与えることができる。
【0082】
特に、ナノワイヤ34の構造を、X線回折を使用して調査した。このために、集合組織を電気化学的堆積条件の作用として分析した。
【0083】
直流下で製造されるPtナノワイヤ34は、明確な<100>集合組織を示す。集合組織係数TC100は2.32であり、その最大値は3である。晶子のサイズは、シェラーの式を用いて白金信号(Platin-Signal: platinum signal)の半値幅から求め、8nmであった。触媒としての使用のためには、晶子のサイズは可能な限り小さいことが望ましい。ここで提示される値は、通常は触媒内で使用されるナノ粒子の範囲内にある。晶子のサイズを、電気化学的堆積条件の変更によってさらに小さくすることができることを前提としている。
【0084】
パルス堆積下で製造したナノワイヤ34を調査すると、特に集合組織は見つからなかった。信号強度は、多結晶白金の信号強度に一致する。
【0085】
最後に、反転パルスで製造したサンプルを分析した。再び明確な<100>集合組織が示され、集合組織係数TC100は4.16である。したがって、晶子は好ましい配向を有し、整列度(Grad der Ausrichtung: degree of alignment)は83%である。少なくとも50%の整列度が場合によって有利である。
【0086】
異なって製造されたナノワイヤ34のX線回折による特性評価は、堆積条件が集合組織に影響を及ぼすことを示した。したがって、ナノワイヤの構造に意図した通りに影響を与えることができる。
【0087】
ナノワイヤ34の表面は、幾何学的表面積の算定の基礎となる、円柱の滑らかな表面には一致せず、面積を大幅に増大する多数の凹凸を示す。したがって、表面の実際のサイズは通常、特にナノワイヤ34を構築する晶子が非常に小さいため、幾何学的表面積よりも大きい。ナノワイヤアレイ35の表面のより正確なイメージを得るために、サイクリックボルタンメトリー測定を、60℃で0.5MのH2SO4において、標準水素電極に関して0mV〜1300mVの電位範囲内で実施した。水素の吸着時に伝達される負荷から、容量性電流を考慮して電極表面積を算定する。ナノワイヤアレイ電極のサイクリックボルタンメトリー調査によって、実際の表面積が幾何学的表面積よりも4〜5倍大きいことが明らかになった。
【0088】
用途
触媒のために、本発明による多数のナノワイヤ構造体1を積み重ねてまとめて扱うことが可能である。しかしながら、ナノワイヤ構造体1は寸法に起因して、1mm未満の、大抵は10マイクロメートル〜数百マイクロメートルの内部寸法を有する3次元構造体であるマイクロ構造システム内に個別に組み込むのにも適している。
【0089】
図10は、流体供給部102と流体排出部104との間に本発明によるナノワイヤ構造体1が嵌め込まれているマイクロ触媒100を概略的に示す。このようなマイクロ触媒100においては、気相反応又は液相反応を行うことが考えられる。さらに、気体流又は液体流が、好ましくは圧力をかけられてマイクロ触媒100を通じて導かれる。
【0090】
本発明に従って製造可能なナノワイヤ構造体1は本質的に、2つの金属層間に配置されている全てのナノワイヤの電気的接触をさらに含む。それによって、コントロールされる電圧をナノワイヤ34に印加することができ、ひいては、電極触媒プロセスが可能となる。さらに、この構成要素は、電流測定センサとして使用することができる。
【0091】
照射マスクを用いたマイクロ要素の製造
本発明によれば、テンプレートフィルム12、この例ではポリマーフィルムに、対応するマスクを通じて重イオンを照射することによって、非常に小さな寸法を有するナノワイヤ構造体又はナノワイヤアレイを生成することができる。事前に設けられるマスク、たとえばシャドーマスクが複数の開口又は孔を有し、各開口が後のマイクロ要素を規定する。マスクは、照射時にテンプレートフィルム12を覆い、それによって、覆われていない領域、すなわちマスクの開口において潜在イオントラック16が形成される。該潜在イオントラックは後にエッチングされてナノ細孔32となる。マイクロ要素の輪郭及び形状はしたがって、マスクによって予め与えられる。
【0092】
この方法は、特に、上述したようにマイクロ要素の形態の多数の非常に小さなナノワイヤ構造体を製造するのに適している。それによって製造可能なマイクロ要素は、2又は3次元のナノワイヤ網37を含み、500μm未満、特に100μm未満、そして場合によっては数マイクロメートルまでのサイズを有することができる。
【0093】
たとえば、イオン照射のためのシャドーマスクには、約2000個の穴がおおよそ0.5cm2の堆積面全体に設けられており、それによって、テンプレートフィルム12内の孤立部分のようなナノワイヤアレイを備える約2000個のマイクロ要素を一度で生成することができた。陰極層の除去後、マイクロ要素は互いから離れ、テンプレートフィルムの溶解及び除去後、別々になる。しかしながら、たとえば個別の各マイクロ要素のためにカバー層を再び生成するために追加のステップを設けることもできる。
【0094】
全てのナノワイヤ34は電気的に接触しているため、ナノワイヤアレイを備えるマイクロ要素は特に、小型センサの製造に適している。ワイヤが多数存在しているため、高い感受性だけでなく、高い欠陥許容値も得られるはずである。
【0095】
さらなる用途
特に、マイクロ要素は、たとえば気体流、温度を測定するための、且つ運動センサとしてのセンサ素子の製造に適している。図12を参照すると、そのようなセンサ150は、第1のマイクロ要素ナノワイヤ構造体1a及び第2のマイクロ要素ナノワイヤ構造体1aを備える少なくとも1つの測定ユニットを備える。これらのマイクロ要素ナノワイヤ構造体1aはそれぞれ、両側においてカバー層27を設けられており、2つのナノワイヤ構造体1aのそれぞれは、1つ又は2つのカバー層27によって電気的に接触される。2つのナノワイヤ構造体1aは別個に接触される。2つのナノワイヤ構造体の間に、加熱素子、たとえば電圧の印加によって加熱可能なマイクロワイヤ152が配置されている。センサ素子150の抵抗の変化は、気体流又は温度変化又は運動変化に対する基準として使用される。
【0096】
上述した実施形態は例示として理解されるべきであり、本発明はこれらの実施形態には限定されず、本発明から離れることなく多様に変更することができることは当業者に明らかである。特に、マイクロ触媒の製造は、本発明によるナノワイヤ構造体に対する多数の利用分野のうちの1つに過ぎない。さらに、特徴が、明細書、特許請求の範囲、図面、又は他の箇所のいずれに開示されているかを問わず、たとえ他の特徴と共に記載されていようとも、個々に本発明の本質的な構成要素を定めるものであることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤ構造体、該ナノワイヤ構造体を製造する方法、及びマイクロリアクタシステム、特にマイクロ触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
K. Jaehnisch他は、非特許文献1において、化学反応及び分析目的に対するマイクロ構造部品の利点を実証した。これによって、化学合成及び分析に対するこのようなシステムの重要性が増した。従来のリアクタと比較して、これらのマイクロ構造リアクタは、非常に大きな面積・体積比を有し、これは、熱交換性能及び物質輸送の進展に有利な影響を及ぼす(非特許文献2を参照されたい)。
【0003】
マイクロ構造リアクタにおいては、既に多数の既知の反応が実施されており、特に多数の触媒反応も実施されている。ここで、液相反応であるか、気相反応であるか、又は気液相反応であるかは重要ではない。触媒の潜在活性の利用を可能にするために、触媒材料は、様々な幾何形状を有するマイクロ構造システムに一体化される。最も単純な場合を前提とすると、マイクロリアクタを構成するために使用されるリアクタ材料はそれ自体で、触媒活性物質から成る(非特許文献3を参照されたい)。しかしながら、これは、触媒表面をリアクタ壁に限定してしまう。この欠点は部分的に、最適化されている触媒/担体システムによって回避される。大抵の場合、今日のマイクロ構造リアクタは、チャネル内に入れられている小さな粒子又は粉末を含む。
【0004】
しかしながら、触媒繊維、触媒ワイヤ、及び触媒膜も使用される(非特許文献4)。金属ナノ構造体、特に貴金属から成る金属ナノ構造体は、面積と質量との比が大きいことに起因して(これは製造コストがわずかであることに関連している)、不均一触媒において既知である(非特許文献5を参照されたい)。
【0005】
元来、ナノ化学における研究は、等方性金属粒子の調査に集中してきた。したがって、その触媒特性はよく研究されている。しかしながら、今日まで、多数の1次元ナノ構造体も、不均一触媒における使用を考慮した上で分析されてきた。しかし、その固定化は大きな問題である。非特許文献6から、ナノ構造体を担体上に設けるか、又は、たとえばナフィオンのような多孔性材料内に入れることが既知であるが、これは、利用可能な触媒表面を強制的に排除することになる。さらに、拡散プロセスに起因して、触媒活性は触媒材料の分布に依存することに注意する必要がある。したがって、ナノ粒子は確かに表面・体積比を劇的に増大させるが、以下の理由から、このようなリアクタの長期間安定性は比較的低くなってしまう。
1.担体の腐食に起因するナノ粒子の接触の損失
2.溶解及び再度の堆積又はオストワルト熟成
3.表面エネルギーを最小化するためのナノ粒子の凝集
4.ナノ粒子の溶解及び水溶性イオンの移動
【0006】
平行に方向付けられているワイヤアレイ及び管アレイは既に、グルコースセンサとして(非特許文献7)、電極触媒として、たとえばアルコール酸化(非特許文献8)及び水素過酸化物還元(非特許文献9)において使用されている。しかしながら、これらの場合、ナノ構造体はあまり安定していない。
【0007】
Nielsch他は、非特許文献10において、薄い金属膜からの堆積のためにパルス(gepulste: pulsed)堆積を使用することを報告している。
【0008】
ナノワイヤ生成のための方法は、たとえば非特許文献11、又は非特許文献12、非特許文献13、及び非特許文献14から既知である。なお、これらは本明細書に参照により援用される。ただし、これらの方法では、別個のナノワイヤのみが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Chemistry in Microstructured Reactors」(Ang. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 406-446)
【非特許文献2】O. Woerz他著「Microreactors - a New Efficient Tool for Reactor Development」(Chem. Eng. Technol. 2001, 24, 138-142)
【非特許文献3】M. Fichtner著「Microstructured Rhodium Catalysts for the Partial Oxidation of Methane to Syngas under Pressure」(Ind. Eng. Chem. Res . 2001, 40, 3475-3483)
【非特許文献4】G. Veser著「Experimental and Theoretical Investigation of H2 Oxidation in a High-Temperature Catalytic Microreactor」(Chem. Eng. Sei. 2001, 56, 1265-1273)
【非特許文献5】R. Narayanan他著「Catalysis with Transition Metal Nanoparticles in Colloidal Solution: Nanoparticle Shape Dependence and Stability」(J. Chem. Phys. B, 2005, 109, 12663-12676)
【非特許文献6】Z. Chen他「Supportless Pt and PtPd Nanotubes as Electrocatalysts for Oxygen-Reduction Reactions」(Angew. Chem. 2007, 119, S. 4138-4141)
【非特許文献7】J. H. Yuan他著「Highly ordered Platinum-Nanotubule Arrays for Amperometric Glucose Sensing」(Adv. Funct . Mater 2005, 15, 803)
【非特許文献8】H. Wang他著「Pd nanowire arrays as electrocatalysts for ethanol electrooxidation」(Electrochem. Commun. 2007, 9, 1212-1216)
【非特許文献9】H. M. Zhang他「novel electrocatalytic activity in layered Ni-Cu nanowire arrays」(Chem. Commun. 2003, 3022)
【非特許文献10】「Uniform Nickel Deposition into ordered Alumina pores by pulsed electrodeposition」(Adv. Mater. 2000, 12, 582-586)
【非特許文献11】T. W. Cornelius他著「Controlled fabrication of poly- and single-crystalline bismuth nanowires」(Nanotechnology 2005, 16, S. 246-249)
【非特許文献12】Thomas Walter Corneliusの論文(GSI, 2006)
【非特許文献13】Florian Maurerの論文(GSI, 2007)
【非特許文献14】Shafqat Karimの論文(GSI, 2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、比表面積が大きい安定した空隙構造を有する複雑な(komplex: complex)ナノワイヤ構造体と、該ナノワイヤ構造体の製造方法とを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる課題は、広範囲に使用可能であると共に、たとえば触媒要素として適している、そのようなナノワイヤ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利なさらなる構成は、従属請求項において規定されている。
【0013】
ナノワイヤ構造体を製造する方法を提供する。該ナノワイヤ構造体は、多数のナノワイヤから成るアレイを含む。ナノワイヤは異なる方向に延在している。異なる方向に延在しているナノワイヤは互いに交差し、それによって、該ナノワイヤから成る相互接続(vermascht: meshed)網を形成する。ここで、相互接続網は、非常に大きな相互作用表面を有するオープンセル型の空隙を形成する。
【0014】
製造のために、いわゆるテンプレートベースの方法を以下のように使用する。
【0015】
第1の方法ステップ(a)では、まず、誘電性テンプレート、特に誘電性テンプレートフィルムを用意する。テンプレートフィルムは、たとえば、通常の市販のプラスチックフィルム、特にポリマーフィルムである。
【0016】
後続の方法ステップ(b)では、エネルギー放射、特に、たとえばダルムシュタット所在の重イオン研究所の加速器施設において利用可能であるような高エネルギーイオンビームをテンプレートフィルムに照射する。照射によって、テンプレートフィルムを貫通する多数の潜在トラックが生じる。該トラックは、フィルムの分子構造、たとえばポリマー構造が、個別の各照射イオンの軌道に沿って破壊されることを特徴とする。これらのトラックを「潜在トラック」と呼ぶ。破損はトラック中心部(Spurkern; track core)において最大であり、1/r2で低減する。エッチング技法によって、破壊された分子構造を有する材料をトラックから除去して、潜在トラックをエッチングして、開いたチャネル、すなわちいわゆるナノ細孔を形成することができる。ここで、潜在トラック、ひいては後に生成されるナノ細孔は、テンプレート表面の平面に関して確率的に分布している。
【0017】
本発明によれば、ステップ(b)において、テンプレートの表面に対して少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の角度で、換言すると、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の異なる方向から、テンプレート又はテンプレートフィルムにイオンビームを照射する。それによって、まず、テンプレートフィルム内に、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、又はそれ以上の数の異なる平行でない方向に延在する潜在トラックが生じる。たとえば、テンプレートフィルムの面法線に対して2つの角度(+45度、−45度)で、数MeV/u〜数十MeV/uのエネルギーによって重イオンをポリカーボネートフィルムに照射する。
【0018】
特に好ましくは、この場合、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの(又はそれ以上の数の)異なる方向からテンプレートフィルムに対して照射を行う。それによって、より詳細に後で述べるように、3次元の網目状に結合したナノワイヤ網を製造することができる。たとえば、数MeV/u〜数百MeV/uのエネルギーで、3つの異なる方向から、たとえば面法線に対してそれぞれ45度の極角で、且つ、面法線を中心とした0度、120度、及び240度の方位角で、それぞれ数108イオン/cm−2のフルエンスでポリカーボネートフィルムに重イオンを照射する。網の複雑性を、照射方向を増やすことによって高めることができることは明白である。ここで、イオンのエネルギーは、該イオンがフィルムを完全に横断するように選択する。イオンビームのエネルギーはしたがって、照射されるフィルムの厚さに依存する。
【0019】
好ましくは、伝導性金属層を、場合によっては一時的な陰極層として、テンプレートフィルムの第1の面に施す。詳細には、これは、好ましくはイオン照射を行った後に行い、さらに好ましくはエッチングの前に、ただし少なくとも電気化学的堆積の前に行う。したがって、好ましくは、潜在イオン誘起トラックからエッチングによりナノ細孔を形成する前に、陰極層を少なくとも部分的にテンプレートフィルム上に施す。このようにして、陰極層の材料が孔内で堆積する可能性を排除する。さらに、孔は正確な円筒形を有し、その両端が狭窄化することはない。
【0020】
好ましくは、陰極層の製造のために、まず、テンプレートフィルムの第1の面において薄い金属層、たとえば金層をスパッタリングし、その後、この金層を電気化学的に、たとえば銅層を用いて補強する。これは、最初に比較的薄い層をスパッタリングすることができるという利点を有する。
【0021】
そして、ステップ(c)において、テンプレートフィルムにエッチングプロセスを受けさせる。このエッチングプロセスによって、テンプレートフィルム内の潜在トラックを広げて貫通チャネルを形成する。該チャネルはテンプレートフィルムを完全に貫通する、すなわち、テンプレートフィルムの表面からテンプレートフィルムの対向する表面にまで延びている。これらのチャネルは専門家の間ではナノ細孔と呼ばれる。ここで、エッチングプロセスの最初では、トラック中心部における分子構造の破損が最も大きい部分が溶解し、エッチング時間が経過するにつれて、ナノ細孔の直径は拡大していく。異なる方向からのテンプレートフィルムの照射と、その結果として生じる、潜在トラックの交差網とに起因して、エッチング時に、交差ナノ細孔の網が生じる。交差ナノ細孔は、特に、著しい数の交差ナノ細孔が互いに結合するほど密に配置されており、それによって、多数の分岐を有する結合しているチャネルシステムが生じる。共通の1つの平面には存在していない少なくとも3つの方向から照射を行った場合、3次元の網目状に結合した、ナノ細孔から成るチャネルシステムが生じる。
【0022】
後続のステップ(d)では、陰極層の内側から開始して、テンプレートフィルム内のナノ細孔内で、電気化学的堆積によってナノワイヤを成長させる。すなわち、ナノ細孔を、陰極層から電気化学的堆積を用いて満たす。ここで、ナノワイヤがナノ細孔内で成長する。このために、孔によって貫通されており且つ片側が伝導的に被覆されている誘電性フィルムを電気化学的堆積装置内に設置する。ここで、陰極層が、ナノワイヤの電気化学的堆積過程のための陰極としての役割を果たす。そして、金属イオンの電気化学的堆積を用いて、ナノワイヤをナノ細孔内で成長させる。ナノ細孔内部の金属から成るナノワイヤは、特に直接的に陰極層上で成長する。ここで、ナノワイヤは陰極層と固く一体化する。陰極層は、生成されるナノワイヤ構造体の、個別のナノワイヤと固く結合している基板層として残ることができるが、所望であれば、ナノワイヤ網を生成した後に除去することもできる。ここで、ナノ細孔又はナノチャネルから成る相互接続網において、交差ナノワイヤから成る相互接続網が生じる。ナノ細孔が互いに結合している節点では、したがって、交差金属ナノワイヤが互いに一体化するか又は互いに一体的に結合する、ナノワイヤ網の節点が生じる。したがって、互いに結合している交差ナノワイヤから成る一体的な網を生成させることができる。テンプレートフィルムはこの方法段階においては、鉄筋補強におけるように、交差していると共に互いに結合しているナノワイヤから成る結合網によって貫通されている。
【0023】
したがって、ナノワイヤは、テンプレートフィルム内のナノ細孔内部で、照射方向によって予め与えられる少なくとも2つの、少なくとも3つの、又はそれ以上の所定の異なる方向において成長する。共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの方向から照射を行う場合、ナノワイヤは、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの所定の異なる方向に沿って網内で延在する。それによって、3次元で網目状に結合したナノワイヤ網が製造される。したがって、3次元で網目状に結合したナノワイヤ網では、少なくとも3つの所定の方向のうちの第1の方向のナノワイヤは、第2の所定の方向の他のナノワイヤとだけでなく、少なくとも第3の方向のナノワイヤとも結合している。ここで、第3の方向は、第1の方向及び第2の方向が張る平面に存在していない。
【0024】
ナノワイヤから成る網が完全に堆積するか又は成長すると、ステップ(e)において、テンプレートフィルムを、特に化学的に溶解させ、それによって、ナノワイヤから成る網を露出させる。テンプレートフィルムは溶解時に少なくとも小さな部分に分解され、これらの部分は小さいため、ナノワイヤ網によって貫通されている空間から、ナノワイヤ網に損傷を与えることなく、除去することができる。テンプレートフィルムがプラスチックフィルムである場合、該テンプレートフィルムは、たとえば溶媒を用いて溶解することができる。網の相互接続又は交差ナノワイヤの互いとの結合に起因して、結合ナノワイヤ網は、テンプレートフィルムの除去後も固有の安定性を有し、詳細には、1つのみのカバー層(陰極/基板層)のみでも、場合によっては全くカバー層が無くても安定性を有する。ナノワイヤから成る結合網は、少なくとも固有安定性を有するオープンセル型の空隙構造を形成する。該空隙構造は、慎重を要するが、相対的に良好に取り扱うことができる。
【0025】
すなわち、本発明によればさらに、ナノワイヤから成る網が完全に堆積又は成長すると、所望であれば、陰極層を除去することもできる。この場合、陰極層を、特にナノワイヤ網の堆積後であり且つテンプレートフィルムの溶解及び除去前に、テンプレートフィルムから除去する。これはたとえば、陰極層及びナノワイヤ網が界面において異なる材料から成る場合に、良好に可能となる。しかしながら、陰極層の除去は強制ではなく、たとえばナノワイヤ網と結合している閉じているカバー層が望ましい場合、陰極層はナノワイヤ網と結合したままであり続けることもできる。陰極層は、ナノワイヤ網に接したままである場合、付加的に安定性を向上させると共にナノワイヤ構造体をより良好に取り扱うことを可能にする基板層を形成する。したがって、好ましくは、ナノワイヤ構造体は、平坦なマット状の形状を形成する。したがって、特に、ナノワイヤ網の少なくとも1つの平坦な面においてカバー層が設けられていない、すなわち開いており、且つ、ナノワイヤ網の対向する平坦な面が基板層と固く結合しているか又は一体化している平坦なナノワイヤ構造体を製造することが可能である。ここで、個別のナノワイヤはそれぞれ、単独で基板層と結合している。平らなマット状のナノワイヤ構造体の平坦な面は、テンプレートフィルムの表面によって規定される。したがって、ナノワイヤの安定した網目状結合(節点における機械的な一体的結合)によって、ナノワイヤ網をカバー層無しで完全に製造することも可能である。
【0026】
ナノワイヤ網の十分なナノワイヤ密度及び安定性を得るために、十分な数の交差ナノワイヤが節点で重なり合い、それによって、交差ナノワイヤが十分に多い節点において互いに一体化して結合網を形成するのに十分な大きさのイオンビームの強度でイオン照射を実施する。イオンビームの強度、より正確には照明方向当たりの面密度(面単位のイオン数)は、好ましくは少なくとも1・107イオン/cm2、好ましくは少なくとも5・107イオン/cm2、特に好ましくは5・108イオン/cm2の大きさを有するべきである。イオンビームの強度は、好ましくは少なくとも、ナノワイヤ当たり、平均で少なくとも1つの節点、特にさらには複数の節点が生成される網目状結合が生じるほど高くするべきである。ここで、節点は、交差ナノワイヤにおいてナノワイヤの端部間で存在しており、詳細には、照射時のイオンの確率分布に起因して、異なる複数のナノワイヤにおいて該ナノワイヤの長さに沿って異なる箇所に存在している。
【0027】
本発明の利点は特に、少なくとも4つの面が、又は少なくとも5つの面が、又はさらには(スポンジのように)全ての面が開いているが、それでも安定しており、且つ十分に独立して存在することができるように製造可能なナノワイヤ網を生成することができるという点にある。したがって、ナノワイヤ網は、特に安定した又は独立して存在するナノワイヤ構造体を形成する。したがって、テンプレートフィルムを完全に除去した後、対応して、ナノワイヤ網構造を有する構造的に安定した空隙構成要素が残る。
【0028】
全ての面が開いているナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体、又は、片側だけが基板層によって閉じているか若しくは両側が平坦に閉じているナノワイヤ構造体は、たとえばマイクロリアクタの構成要素として、特に不均一触媒のためのマイクロ触媒構成要素として非常に適している。さらに、ナノワイヤ構造体は長期的な安定性が高い。これは、ナノワイヤが、多数の節点において互いに固く固定されており、たとえばマイクロチャネル内に緩く存在していないためである。たとえ個々の節点が万が一解けることがあっても、残っている節点の数は依然として、網の安定性を保証するのに十分である。
【0029】
好ましくはナノワイヤをパルス堆積する。パルス堆積は少なくとも以下のオプションを含む。
1)堆積をパルス堆積によって行う。すなわち、堆積パルスと、堆積が行われない拡散期間とが交互に生じる。
2)堆積を反転パルス堆積によって行う。すなわち、堆積パルスと、陽極逆パルスとが交互に生じる。
【0030】
2つのオプションは、堆積パルス間の間隔中に、電解質溶液において、イオンがナノ細孔内に拡散する(nachdiffundieren: diffuse; diffuse in addition:再拡散する)ことができ、それによって、ナノワイヤがより均一に成長するようになるという利点を有する。
【0031】
伝導性の、たとえば金属の層を施すのに適している、それ自体既知である被覆方法を用いて陰極層を生成することができる(たとえば蒸着、PVD、スパッタリング等)。ここで、陰極層は一層で生成することができる。ただし、好ましくは、陰極層を少なくとも二層で生成する。ここで、第1の部分層を、たとえばPVD、たとえばスパッタリング又は蒸着を用いて堆積し、その後、電気化学的堆積を用いて、場合によっては別の金属、たとえば銅から成る、金上の第2の部分層によってこの第1の部分層を補強する。
【0032】
したがって、上述の製造方法の結果として、多数の節点において互いに一体化している、交差して又は角度を有して配置されているナノワイヤから成るアレイを含む空隙構造を有するナノワイヤ構造体が得られる。一体化とは、この文脈においては、ナノワイヤが電気化学的堆積過程によって原子/分子レベルで互いに一体的に結合することを意味する。相互接続ナノワイヤ網はすなわち、電気化学的に堆積された材料から成る、均一に成長した材料系である。
【0033】
ナノワイヤ網内のナノワイヤ間には、互いに結合している複数の空間が存在する。ナノワイヤ網を形成する空隙構造はしたがって、オープンセル型である。それによって、大きな表面積を形成するナノワイヤの円柱面との相互作用のために、オープンセル型の空隙構造を通じて流体を導くことができる。
【0034】
しかしながら、この製造方法によって、生成されるナノワイヤ構造体のさらなる特定の構造特性が生じる。ナノワイヤ又はナノワイヤ網は、電気化学的に堆積される材料から成長することによって、たとえばX線回折によって調査することができる特定の結晶構造を有することができる。それによって、結晶構造に基づいて、ナノワイヤ網が上記方法によって製造されたか否かを認識することができる。
【0035】
ナノワイヤの直径は、好ましくは2000nm以下であり、特に好ましくは500nm以下又は100nm以下である。目下、直径は、10nmまで、又はさらにはより短く製造することができると考えられる。
【0036】
ナノワイヤのアスペクト比が大きくなればなるほど、ナノワイヤ構造体の活性表面は大きく生成することができる。したがって、ナノワイヤのアスペクト比は、好ましくは1対50以上、特に好ましくは1対100以上である。さらに好ましくは、ナノワイヤ間の平均距離は、ナノワイヤの平均直径よりも大きい。
【0037】
ナノワイヤ構造体の厚さは、テンプレートフィルムの厚さによって規定される。テンプレートフィルムが平坦であることに起因して、ナノワイヤ構造体は好ましくは同様に平坦であるか又は薄いマットの形状を有する。ナノワイヤ網の厚さは、好ましくは200μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。厚さに対して垂直な平面の2つの次元における大きさは、これの何倍にもすることができる。たとえば、0.5cm2の面を有するこのようなナノワイヤ網を製造することが可能である。
【0038】
ナノワイヤの数の面密度は概ね照射密度(イオン/cm2)に一致し、同様に活性表面に対する尺度である。ナノワイヤの数の面密度は、好ましくはn/F=107cm−2以上、特に好ましくはn/F=108cm−2以上である。
【0039】
ナノワイヤ構造体の活性表面に対する特定の尺度として、ナノ構造体の面及びナノワイヤアレイの厚さ当たりのナノワイヤの幾何学的比表面積を挙げることができる。この幾何学的比表面積Avはしたがって、概ね以下のようになる。
Av=π・nD/Fcosα
式中、Dはナノワイヤの平均直径であり、n/Fはナノワイヤの面密度であり、αは、テンプレートフィルムの面法線に対するナノワイヤの平均角度である。
【0040】
面及び厚さ当たりの幾何学的比表面積Avは、ナノワイヤの合計数によって形成され、少なくとも1mm2/(cm2 μm)とすべきである。しかしながら、より大きな値が好ましい。すなわち、Avは、5mm2/(cm2 μm)以上、20mm2/(cm2 μm)以上、又はさらには100mm2/(cm2 μm)以上である。さらに、場合によっては、値は、1000mm2/(cm2 μm)までとすることができる。
【0041】
反転パルス方法を用いるナノワイヤの製造においては、ナノワイヤは明確な<100>集合組織又は結晶構造を有する。たとえば金のような特定の金属に関しては、可能な限り小さな結晶を生成することが有利であり得る。このために、4nm以下の結晶サイズを達成することが好ましい。既に、一般的には、10nm以下の平均結晶サイズが有利であり得るとされている。
【0042】
結晶集合組織に起因して、表面の、特に活性表面の実際の大きさは、滑らかな円柱表面に基づく幾何学的比表面積Avよりも大きく、詳細には、好ましくは約4倍〜5倍である。
【0043】
本発明に従って製造されるナノワイヤ構造体に対する特に好ましい利用分野は不均一触媒である。すなわち、1つ又は複数のナノワイヤ構造体は、特にマイクロ触媒のための触媒構成要素としての役割を果たす。
【0044】
マイクロ触媒は好ましくは、流体供給部及び流体排出部を備えるマイクロ構造チャネルシステムと、流体供給部と流体排出部との間の触媒要素としての少なくとも1つのナノワイヤ構造体とを含む。それによって、流体供給部からナノワイヤ網の空隙構造内に流体を導き入れ、ナノワイヤ間の空間を通じて導き、流体排出部を通じて空隙構造から排出することができる。ここで、ナノワイヤ構造体のオープンセル型の空隙構造は触媒反応容積を形成し、ナノワイヤの円柱面は触媒活性表面を形成し、該活性表面と流体が空隙構造内で相互作用する。好ましくは、ナノワイヤは、堆積によって、たとえば多量に(完全に同じ材料から)、たとえば白金から形成されているため、触媒要素は非担持触媒(Vollkatalysator: unsupported catalyst: bulk catalyst:バルク触媒)要素である。
【0045】
ナノワイヤ網の特別な安定性に起因して、ナノワイヤ構造体の2つの平坦な面のいずれにおいてもカバー層を施すことは必ずしも必要ではないが、所望であれば、これを省く必要はない。2つのカバー層が望ましい場合、たとえば以下のようなことを行う。すなわち、ナノワイヤの電気化学的堆積プロセスを少なくとも、テンプレートフィルムの第2の面においてナノワイヤ上にキャップが形成され、これらのキャップが一体化して第2の平坦に閉じているカバー層が陰極層の対向する面において形成されるまで続ける。この平坦に閉じているカバー層は、堆積時間が長くなるにつれて厚くなる。したがって、ナノワイヤの生成又は成長に用いられる電気化学的堆積過程を単に、第2のカバー層が、十分に厚く、安定した、平坦に閉じている層の形態に完全に成長するまで続ければよい。ここで、ナノワイヤは、電気化学的堆積に起因して、両側においてそれぞれのカバー層と固く直接一体化している。しかしながら、カバー層は、所望であれば、後続する別個の第2の堆積過程において補強及び完成することができる。別個の第2の堆積過程は、同様に電気化学的堆積とすることができるが、被覆方法、たとえばPVD法、蒸着、又はスパッタリングを含むこともできる。この別個の堆積過程が電気化学的堆積であっても、第2の部分層のために、ワイヤ及びキャップのための材料とは別の材料を使用することができる。特に、ナノワイヤ及びキャップをパルス電気化学的堆積方法によって生成し、第2の部分層を直流法によって電気化学的に堆積することが適していることが分かった。特に、ナノワイヤ及び場合によってはキャップを、反転パルス堆積によって、金属又は金属を含有する化合物から生成する。たとえば、ナノワイヤ及び場合によってはキャップを白金から反転パルス堆積によって生成し、第2の部分層を銅から直流堆積によって生成することが適していることが分かった。それによって、堆積時間を短縮すると共に材料コストを低減することができる。基板層及びカバー層の厚さは、好ましくはそれぞれ10μm未満であり、たとえば概ね5μm〜10μmである。
【0046】
個々のナノワイヤ構造体からセンサ素子を構築することができる。センサ素子はたとえば、気体貫流及び温度の測定に適しているか、又は、該測定のために設けられる。さらに、センサ素子は、運動センサとしての役割も果たすことができる。センサ素子は、第1のナノワイヤ構造体及び第2のナノワイヤ構造体を備える少なくとも1つの測定ユニットを備える。これらのナノワイヤ構造体はそれぞれ、それぞれのナノワイヤ構造体の接触のために第1の基板層及び第2の基板層を備える。これらのナノワイヤ構造体間には、「加熱可能/加温可能素子」が配置されている。加熱は、たとえば、たとえば加熱可能なマイクロワイヤである素子に電圧を印加することによって行う。ここで、好ましくは、各ナノワイヤ構造体は個別に接触されている。気体がセンサ素子を通じて導かれると、該気体は、加熱された素子において加温され、該素子の後方に存在するナノワイヤ構造体を加温する。それによって、センサ素子の抵抗の変化が起こるか、又は該変化が誘起される。したがって、抵抗変化は、センサ素子を通る気体貫流に対する尺度である。抵抗変化は同様に、気体貫流によって影響を受ける温度変化に対する尺度とすることができる。センサ素子が動かされる場合、抵抗変化は運動変化を示す。ここで、気体は、まず、第1のナノワイヤ構造体を、その後、加熱可能な素子を、そして第2のナノワイヤ構造体を横断する。センサ素子は、使用されるテンプレートに対する照射において、たとえばマスクによって製造可能であり、すなわち請求項5による方法によって製造可能である。
【0047】
以下において、実施例に基づいて且つ図面を参照してより詳細に本発明を説明する。同じ要素及び同様の要素には部分的に同じ参照符号を付している。様々な実施例の特徴を、互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体の製造の概要を図式的に示す図である。
【図2】電気化学的堆積のために使用される堆積装置の立体図である。
【図3】陰極層の堆積のための堆積装置の透明な立体分解図である。
【図4】ナノワイヤ及び場合によってはカバー層の堆積のための堆積装置の透明な立体分解図である。
【図5】2次元のナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体のREM写真である。
【図6】図5のナノワイヤ構造体の、大幅に拡大したREM写真である。
【図7】3次元(3D)のナノワイヤ網を有するナノワイヤ構造体の製造の概要を図式的に示す図である。
【図8】3次元のナノワイヤ網のTEM写真である。
【図9】図8の3次元のナノワイヤ網の、わずかに拡大したREM写真である。
【図10】図8及び図9の3次元のナノワイヤ網の、さらにわずかに拡大したREM写真である。
【図11】貫流モードのためのナノワイヤ構造体を有するマイクロリアクタの概略分解図である。
【図12】2つのナノワイヤ構造体を有するセンサ素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
製造方法の概要
ナノワイヤ構造体の製造は、テンプレートベースの方法に基づく。該方法の部分ステップを図1において以下のように概略的に示す。
(a)テンプレートフィルムの用意
(b)イオン照射
(b1)金層の施し
(b2)金層の電気化学的補強(任意)
(c)イオントラックのエッチングによるナノ細孔の形成
(d)ナノ細孔内でのナノワイヤの堆積
(d1)陰極層の除去(任意)
(e)テンプレートフィルムの溶解及び除去
好ましくは、方法ステップは、図1に示す順番、すなわち(a)、(b)、(bl)、(b2)、(c)、(d)、(d1)、(e)で実施される。しかしながら、基本的に、別の順序を使用することも可能であり、たとえば2つの面からエッチングを行い、その後に初めて陰極層を施す部分ステップ(ステップ(b1)及び(b2)の前に(c))も可能である(たとえば図7を参照されたい)。
【0050】
図1(b)を参照すると、まず、テンプレートフィルム12にイオン14を照射する。ここで、軌道に沿って、テンプレートフィルム12の材料内で潜在イオントラック16を生成させる(b1)。テンプレートフィルム12はこの例では、ポリマーフィルム、より正確にはポリカーボネートフィルムである。本明細書に記載する方法は、テンプレートフィルムが、複数の、この例では2つの角度でイオンを照射されるという点において特別である。この例では、テンプレートフィルムに、テンプレートフィルムの表面に対して+45度で1回、−45度で1回照射を行う。それによって、潜在トラック、及び後では、交差ナノ細孔又は交差ナノワイヤが、互いに対して90度の角度で延在するようになる。当然のことながら、他の角度も可能である。
【0051】
異なる角度でテンプレートフィルム12に対して連続して照射を続けるために、まず、対応する放射管、たとえばGSIのシンクロトロンにおけるイオンビームの方向に対する第1の角度でテンプレートフィルム12を位置決めし、所定の第1のイオン面密度で該テンプレートフィルムに対して照射を行う。引き続いて、テンプレートフィルム12を放射方向に対して傾斜させ、所定の第2のイオン面密度でもう一度、該テンプレートフィルムに対して照射を行う。さらなる他の角度でナノワイヤを生成することになっている場合は、所望の角度の数だけこの過程を繰り返す。イオン密度又はイオンの面密度は、ナノワイヤの特定の面密度のために必要であり、事前に計算及び確定される。そして、この所定のイオン密度で照射を行う。以下で詳細に説明するような3D網の製造のために、たとえば、ビーム軸に対する極角で位置決めされるテンプレートフィルム12を、ビーム軸を中心にして方位角回転させる。
【0052】
続いて、テンプレートフィルム12の第1の面12aにおいて、薄い伝導性の金属層22a、たとえば金層をスパッタリングする(b1)。該金属層は第1の部分層を形成する。引き続いて、第1の部分層22aを第2の部分層24aによって電気化学的に補強する。ここで、第1の部分層及び第2の部分層は共に陰極層26aを形成する(b2)。該陰極層は後に、ナノワイヤ堆積のための陰極としての役割を果たす(d)。第2の部分層24aの電気化学的堆積のために、テンプレートフィルム12を、図2〜図4に示す堆積装置82内に嵌め込む。
【0053】
引き続いて、片側だけ被覆されているテンプレートフィルム12を堆積装置82から取り外し、潜在イオントラック16を化学的にエッチングする。それによって、貫通交差チャネルを形成する。これらのチャネルをナノ細孔と呼ぶ。該チャネルは、テンプレートフィルム12において延在方向が異なることに起因して、交差すると共に互いと網目状に結合するナノ細孔32を形成する。代替的に、対応する槽88をエッチング液で満たして、エッチングの終了後に空にすることによって、エッチングプロセスを堆積装置82において行うことができる。テンプレートフィルムの取り外し及び再度の設置は不要である。ナノ細孔32の直径は、エッチング時間の制御によってコントロールすることができる(c)。
【0054】
続いて、以上のようにして用意された、ナノ細孔32から成る交差網33が混じっているテンプレートフィルム12を再び堆積装置82内に嵌め込み、第2の電気化学的プロセスにおいて、ナノワイヤ34から成る網37を形成しながら、所望の金属をナノ細孔32内に電気化学的に堆積する(d)。この例では、白金をナノ細孔内に堆積するため、ナノワイヤ34又はナノワイヤ網37は白金から成る。この白金ナノワイヤ網37は、白金ナノワイヤ34の触媒活性表面に起因して、触媒活性網である。
【0055】
テンプレートフィルム12においてナノワイヤを堆積した後又はナノワイヤ網37を生成した後、所望であるならば、陰極層26aを除去することができる(d1)。陰極層26aの除去は有利には、テンプレートフィルム12を溶解及び除去する前に実施される。この例で使用される金陰極層は、白金ナノワイヤから良好に除去することができる。しかしながら、陰極層26aは、テンプレートフィルム12上に残って、テンプレートフィルムの溶解及び除去後に、基板層27を形成することもできる。該基板層上に、ナノワイヤ網37が配置され、この基板層と固く結合する(以下で図7を参照されたい)。
【0056】
最後に、ポリマーフィルム12を適切な有機溶媒内で溶解させる(e)。このように製造される本発明による金属ナノワイヤ構造体1を図1(e)に概略的に示す。
【0057】
ナノワイヤ構造体1は、交差して一体化しているナノワイヤ34から成るナノワイヤアレイ35を含むか、又は、該ナノワイヤアレイから成る。該ナノワイヤは、一体的な相互接続ナノワイヤ網37を形成する。網37は、一体化しているナノワイヤの相互接続構造に起因して、カバー層がなくても、すなわち全面において開いていても、特定の固有安定性を有する。ただし、たとえば片側(基板層27)の、又は、サンドウィッチ構造を形成するための両側のこのようなカバー層を排除することは意図していない。
【0058】
テンプレートベースの方法は、多数のパラメータに対して意図した通りに影響を及ぼすことができるという利点を提供する。ナノワイヤ34の長さは、使用されるテンプレート12の厚さと、照射角度とによって決定され、好ましくは10μm〜200μmであり、特に好ましくは約50μm±50%である。ナノワイヤ34の面密度は、照射によって確定される。イオン照射の、ひいてはナノ細孔の最小面密度は、十分な数のナノワイヤ34が互いに一体化することができるように選択すべきである。これに関連して、アレイの製造のための好ましい面密度は、好ましくは1・107cm−2〜1・109cm−2である。ナノワイヤ34の直径Dは、エッチングの時間長さによって調整され、約20nm〜2000nmとすることができる。ナノワイヤ34のアスペクト比は、1000までの値をとることができる。
【0059】
ナノワイヤ34のための材料として、電気化学的堆積に適している導電性材料、特に金属又は金属を含む化合物を使用することができる。以下の金属を用いての経験があり、これらの金属は好適であることが分かっている:Cu、Au、Bi、Pt、Ag、Cu、Cu/Co多層、Bi2Te3。
【0060】
一方では、大きな活性表面を得るために、わずかな直径Dを有するナノワイヤ34が多数存在していることが望ましく、他方では良好な機械的安定性を達成する必要がある。この最適化は、材料に依存し、要求に応じるものである。
【0061】
白金ナノワイヤ34を備えるナノワイヤ構造体1のために、たとえば、250nmの直径及び30μmの長さを有する108/cm2本のワイヤを有する安定した実施態様を製造した。ここで、アスペクト比は120であった。このようなナノワイヤ構造体は、たとえば白金又は他の含まれている要素の触媒特性に起因して、触媒要素として適している。
【実施例1】
【0062】
ナノワイヤ構造体1の製造のために、30μmの厚さの、円形の(r=1.5cm)ポリカーボネートフィルム12(Makrofol(登録商標))を使用し、該ポリカーボネートフィルムに、11.1MeV/uのエネルギーで、且つ、2つの角度(+45度、−45度)において、それぞれ5・108イオン/cm−2のフルエンスで重イオン14を照射した。伝導性金属層22aを施す前に、トラック16に沿ったエッチングの選択性を高めるために、ポリマーフィルム12の各面を、1時間にわたってUV光で照射する。
【0063】
ポリマーフィルム12の第1の面12aにおいて、約30nmの厚さの金層22aをスパッタリングする(b1)。CuSO4系の電解質溶液(Cupatierbad、Riedel)に基づく銅を、U=−500mVの電圧で定電位堆積することによって該金層を補強する。ここで、銅棒電極が陽極としての役割を果たす(部分層24a)(b2)。堆積を30分後に終了させる。その後、銅層24aの厚さがおおよそ10μmになる。続いて、60℃で、NaOH溶液(6M)を用いて数十分にわたって、テンプレートフィルム12の未処理の面12bからエッチングを行い、脱イオン水によって徹底的に洗浄を行い、それによって、エッチング液の残りを除去する(c)。そして、ナノ細孔を有するテンプレートフィルム12を堆積装置82内に嵌め込む。
【0064】
ナノワイヤ34の堆積を、65℃で、アルカリ性Pt電解質(Pt-OH-Bad、Metakem)を用いて行う。ナノワイヤ34を生成するために、反転パルス堆積の方法を使用し、それによって、ナノ細孔32内でのゆっくりとした拡散駆動型の物質輸送を補償すると共に、均一的なナノワイヤの成長を達成する。4秒間にわたるU=−1.3Vの堆積パルスの後に、1秒間にわたる陽極パルスがU=+0.4Vで続く。数分〜数十分後に、堆積を停止し、成長をコントロールする。ナノワイヤ34は、この時点において、十分に成長して、ナノ細孔内で一体化している。
【0065】
最後に、ナノワイヤ構造体全体1をテンプレートフィルム12と共に、数時間にわたって10mlの塩化メチレンを有する容器内に置くことによって、テンプレート材料を除去する。したがって、この実施例では、陰極層は基板27としてナノワイヤアレイ35に接して残り、ナノワイヤ構造体1の構成要素を形成する。ナノワイヤアレイ35の内部空間38から完全にポリマー残留物を除去するために、溶媒を3回交換する。
【0066】
このようにして製造されるナノワイヤ構造体1は、走査型電子顕微鏡写真(REM)で図5及び図6において見ることができる。ナノワイヤ34はここでは、おおよそ150nmの直径を有する。2つの角度下での照射に起因して、網を2次元と呼ぶ。したがって、図5及び図6では、複数の角度で2回照射を行った(+45度、−45度)テンプレート内で製造された、そのような2Dナノワイヤ網構造が見てとれる。ポリマーマトリクスの除去後に既に基板上で相対的に安定して分布しており且つ該基板と結合している網が形成された。
【0067】
図6による、個別のナノワイヤ34の拡大REM写真は、ナノワイヤ34が、節点39において非常に整って互いと一体化し、ひいては固く結合しており、また、照射によって予め与えられる90度の配向が維持されることを示している。ナノワイヤ34が互いと一体化する節点39は、ナノ細孔の交差点によって予め与えられ、ナノワイヤ34の長さにわたって、すなわちナノワイヤ34の端部間で1つ又は複数の箇所において分布している。
【実施例2】
【0068】
図7〜図10を参照すると、さらなる実施例がもたらされている。図7は、本方法の以下の部分ステップを概略的に且つ部分的にまとめて示している。
(a)テンプレートフィルムの用意
(b)、(c)照射、及びイオントラックのエッチングによるナノ細孔の形成
(b1)、(b2)、(d)陰極層の生成及びナノ細孔内でのナノワイヤの堆積
(e)テンプレートフィルムの溶解及び除去
【0069】
ここで、図7を参照すると、テンプレートフィルム又はポリマー膜12に対して、2つよりも多くの異なる方向から照射を行う。この実施例では、照射は4つの異なる角度で行う。これらの4つの照射方向は1つの平面に存在していない。図7に示されている透視図を参照すると、4つの側から、それぞれ1回ずつ上から斜めに照射を行う。詳細には、基板表面の法線に対して45度の極角下で、0度、90度、180度、及び270度の方位角で照射を行う。したがって、テンプレートフィルム12を照射時に少なくとも3回回転させる。
【0070】
すなわち、共通の1つの平面に存在していない少なくとも3つの方向(この実施例では4つの方向)からテンプレートフィルムを照射すると、3次元ナノ細孔網33(c)と、その後に3次元ナノワイヤ網37(d)及び(e)とを製造することができる。換言すると、ここでは、照射方向、ひいてはナノワイヤ34は、テンプレート表面12a及び12bに対して斜めに延在する複数の異なる(平行でない)平面に存在している。したがって、このように生成される3次元ナノワイヤ網37では、ナノワイヤも異なる平行でない平面に存在する。それによって、網目状に結合した3次元の網構造が存在するようになる。数学的に表現すると、ナノワイヤはすなわち、少なくとも、平行ではない少なくとも2つの平面を張る同様に平行ではない3つの軸に沿って延在する。それによって、ナノワイヤが同じ平面からの他のナノワイヤと結合しないだけでなく、これらのナノワイヤによって形成される平面に対して斜めに延在するナノワイヤも存在するようになる。ベクトル数学の表現で言い換えると、少なくとも3つの軸又はナノワイヤ方向によって、3次元ベクトル空間を張ることができる。少なくとも3つの軸又はナノワイヤ方向は線形独立している。このような3次元で網目状に結合したナノワイヤ網を、本明細書では、3次元(3D)ナノワイヤ網と呼ぶことにする。
【0071】
図8は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を示しており、図9は、このような3次元ナノワイヤ網37をわずかに拡大したREM写真を示している。これらの図において、所定の角度で延在するナノワイヤ34が互いに結合している機械的に安定したシステムが形成されることが分かる。該システムは、特に図9のREM写真において分かるように、ポリマーマトリクスによって予め与えられる配向をテンプレート除去後に大幅に維持する。示されている網37のテンプレート12は、5・108イオン/cm2で、4つの異なる線形独立方向から4回放射することによって製造した。ここでは、ナノワイヤの厚さは約50nmである。
【0072】
活性表面の凝集(Aggregation: aggregation)及び喪失はほとんど観察されなかった。これは、可触性が高く且つ触媒回収がわずかであることを意味している。本製造方法は、ナノワイヤの直径、集積密度、及び複雑性(異なるナノワイヤ方向の数)の調整による網パラメータの簡単なコントロールを可能にする。たとえば図10において分かるように、2つの次元において数ミリメートルである非常に大きなナノワイヤ網37を製造することができる。図10は、概ね1cm2の大きさの図9のナノワイヤ構造体のREM写真を示している。したがって、ナノワイヤ構造体1全体は巨視的な大きさを有する。写真の左縁では、幾らかより小さいさらなるナノワイヤ構造体を見てとれる。Ptナノワイヤ網は、担持基板27を必要とすることなく大きな触媒活性表面を有する。しかしながら、該担持基板を排除するようには意図していない。
【0073】
本発明によるナノワイヤ構造体1はしたがって、結合して網37を形成するナノワイヤ34を備える。該ナノワイヤ構造体においては、網構造、特に3D網構造によって、ナノワイヤを機械的に安定して結合して、微視的な、そしてさらには巨視的な構造を形成することが可能になる。非常に安定しているため、該構造は、両側にカバー層がなくとも、場合によっては担持基板すらなくとも一体化に適している。ほとんど全てのナノワイヤ34は機械的に固く結合しているだけでなく、互いと導電的に結合している。したがって、これらの構造は、電解質向けの用途として大きな可能性を有している。
【0074】
堆積パラメータのさらなる実施例
別の実施例では、エッチング時間を18分に調整した。これによって、約250nmの直径を有するナノワイヤ34が生じた。ここでは、面密度(面当たりの数)は108cm−2であった。ワイヤの電気化学的堆積のために再び反転パルス方法を使用した。40msにわたるU1=−1.4Vの堆積パルスの後、2msにわたるU2=−0.1Vの短い逆パルスと、U=−0.4Vの電圧での100msのパルス間隔とが続いた。これは、約0Vの過電圧に対応する。すなわち、逆パルスの期間中、システムは平衡状態にある。
【0075】
電気化学的堆積のための構成
図2〜図4を参照すると、多数のナノワイヤ34から成るナノワイヤアレイ35の電気化学的堆積は完全に、図2に示されている堆積装置82において行われる。該堆積装置は、2つの電解槽86及び88を収容する金属キャリッジを押し入れることができる金属ハウジング84から成る。金属の良好な伝熱性に起因して、コントロールされる外部熱供給によって堆積装置を温度調整することが可能である。
【0076】
PCTFEから製造される電解槽86及び88は、互いの方を向いている面においてそれぞれ同じ大きさの円形の開口87及び89を有し、つまみネジ90によって互いに密に圧接することができる。2つの電解槽86及び88間の銅リング92は、電気化学的堆積のために、陰極としての役割を果たすか、又は、第1のカバー層と接触する役割を果たす。
【0077】
図3を参照すると、部分層22aの電気化学的補強のために、イオントラックエッチングされるテンプレートフィルム12が、部分層22a、ここではスパッタリングされた金層22aが環状の銅電極92と良好に接触するように、2つの電解槽86及び88の間に取り付けられる。陰極として使用される銅リングの両側では、電解槽が電解質で満たされる。部分層22aの方を向いている電解槽86内に配置されている第1の陽極94と、制御装置を備える外部電流源とを用いて金層22aの電気化学的補強が行われ、第1のカバー層26aが形成される。
【0078】
テンプレートフィルム12の取り外し、及び、堆積装置82の外側でのナノ細孔32のエッチングの後、テンプレートフィルム12は、再び堆積装置82内に設置される。
【0079】
図4を参照すると、ナノワイヤ34、及び場合によっては、陰極層26aに対向するカバー層の電気化学的堆積のために、片側が被覆されており且つナノ細孔が設けられたテンプレートフィルム12を、図3におけるように堆積装置82内に再び嵌め込む。それによって、陰極層26aがリング電極92と接触する。そして、テンプレートフィルム12の第2の面12bにおいて、陰極層26aに対して背を向けている電解槽88内で、該電解槽内に配置されている第2の陽極96によって堆積を行う。
【0080】
電気化学的堆積条件の、ナノワイヤの成長に対する影響の調査
ナノワイヤ34を生成するためのパルス堆積方法を用いて、有利には、堆積の各時点において、ナノワイヤの長さを均一にすることができる。これは、完全性及び正確性を期さないならば、直流堆積と比較して拡散層が短く保たれるということによって説明することができる。堆積パルス間の間隔(平衡状態又は逆パルス)においては、金属イオンはナノ細孔32内に拡散することができ、それによって、各堆積パルスの開始時において、電極表面全体にてほとんど同じ集中度が存在するようになり、それによって、成長が均一となる。拡散層はほとんど重なり合うことはなく、表面における不均一性が増大することはない。
【0081】
ナノワイヤ34の構造特性
本発明においては、様々な材料から成るナノワイヤ34の構造特性も調査した。電気化学的に堆積される材料においては、たとえば、晶子のサイズをコントロールすることが可能である。これは、機械的安定性、熱輸送特性及び電気輸送特性並びに表面積、ひいては触媒活性に対しても効果を有する。したがって、多数の特性に対して意図した通りに影響を与えることができる。
【0082】
特に、ナノワイヤ34の構造を、X線回折を使用して調査した。このために、集合組織を電気化学的堆積条件の作用として分析した。
【0083】
直流下で製造されるPtナノワイヤ34は、明確な<100>集合組織を示す。集合組織係数TC100は2.32であり、その最大値は3である。晶子のサイズは、シェラーの式を用いて白金信号(Platin-Signal: platinum signal)の半値幅から求め、8nmであった。触媒としての使用のためには、晶子のサイズは可能な限り小さいことが望ましい。ここで提示される値は、通常は触媒内で使用されるナノ粒子の範囲内にある。晶子のサイズを、電気化学的堆積条件の変更によってさらに小さくすることができることを前提としている。
【0084】
パルス堆積下で製造したナノワイヤ34を調査すると、特に集合組織は見つからなかった。信号強度は、多結晶白金の信号強度に一致する。
【0085】
最後に、反転パルスで製造したサンプルを分析した。再び明確な<100>集合組織が示され、集合組織係数TC100は4.16である。したがって、晶子は好ましい配向を有し、整列度(Grad der Ausrichtung: degree of alignment)は83%である。少なくとも50%の整列度が場合によって有利である。
【0086】
異なって製造されたナノワイヤ34のX線回折による特性評価は、堆積条件が集合組織に影響を及ぼすことを示した。したがって、ナノワイヤの構造に意図した通りに影響を与えることができる。
【0087】
ナノワイヤ34の表面は、幾何学的表面積の算定の基礎となる、円柱の滑らかな表面には一致せず、面積を大幅に増大する多数の凹凸を示す。したがって、表面の実際のサイズは通常、特にナノワイヤ34を構築する晶子が非常に小さいため、幾何学的表面積よりも大きい。ナノワイヤアレイ35の表面のより正確なイメージを得るために、サイクリックボルタンメトリー測定を、60℃で0.5MのH2SO4において、標準水素電極に関して0mV〜1300mVの電位範囲内で実施した。水素の吸着時に伝達される負荷から、容量性電流を考慮して電極表面積を算定する。ナノワイヤアレイ電極のサイクリックボルタンメトリー調査によって、実際の表面積が幾何学的表面積よりも4〜5倍大きいことが明らかになった。
【0088】
用途
触媒のために、本発明による多数のナノワイヤ構造体1を積み重ねてまとめて扱うことが可能である。しかしながら、ナノワイヤ構造体1は寸法に起因して、1mm未満の、大抵は10マイクロメートル〜数百マイクロメートルの内部寸法を有する3次元構造体であるマイクロ構造システム内に個別に組み込むのにも適している。
【0089】
図10は、流体供給部102と流体排出部104との間に本発明によるナノワイヤ構造体1が嵌め込まれているマイクロ触媒100を概略的に示す。このようなマイクロ触媒100においては、気相反応又は液相反応を行うことが考えられる。さらに、気体流又は液体流が、好ましくは圧力をかけられてマイクロ触媒100を通じて導かれる。
【0090】
本発明に従って製造可能なナノワイヤ構造体1は本質的に、2つの金属層間に配置されている全てのナノワイヤの電気的接触をさらに含む。それによって、コントロールされる電圧をナノワイヤ34に印加することができ、ひいては、電極触媒プロセスが可能となる。さらに、この構成要素は、電流測定センサとして使用することができる。
【0091】
照射マスクを用いたマイクロ要素の製造
本発明によれば、テンプレートフィルム12、この例ではポリマーフィルムに、対応するマスクを通じて重イオンを照射することによって、非常に小さな寸法を有するナノワイヤ構造体又はナノワイヤアレイを生成することができる。事前に設けられるマスク、たとえばシャドーマスクが複数の開口又は孔を有し、各開口が後のマイクロ要素を規定する。マスクは、照射時にテンプレートフィルム12を覆い、それによって、覆われていない領域、すなわちマスクの開口において潜在イオントラック16が形成される。該潜在イオントラックは後にエッチングされてナノ細孔32となる。マイクロ要素の輪郭及び形状はしたがって、マスクによって予め与えられる。
【0092】
この方法は、特に、上述したようにマイクロ要素の形態の多数の非常に小さなナノワイヤ構造体を製造するのに適している。それによって製造可能なマイクロ要素は、2又は3次元のナノワイヤ網37を含み、500μm未満、特に100μm未満、そして場合によっては数マイクロメートルまでのサイズを有することができる。
【0093】
たとえば、イオン照射のためのシャドーマスクには、約2000個の穴がおおよそ0.5cm2の堆積面全体に設けられており、それによって、テンプレートフィルム12内の孤立部分のようなナノワイヤアレイを備える約2000個のマイクロ要素を一度で生成することができた。陰極層の除去後、マイクロ要素は互いから離れ、テンプレートフィルムの溶解及び除去後、別々になる。しかしながら、たとえば個別の各マイクロ要素のためにカバー層を再び生成するために追加のステップを設けることもできる。
【0094】
全てのナノワイヤ34は電気的に接触しているため、ナノワイヤアレイを備えるマイクロ要素は特に、小型センサの製造に適している。ワイヤが多数存在しているため、高い感受性だけでなく、高い欠陥許容値も得られるはずである。
【0095】
さらなる用途
特に、マイクロ要素は、たとえば気体流、温度を測定するための、且つ運動センサとしてのセンサ素子の製造に適している。図12を参照すると、そのようなセンサ150は、第1のマイクロ要素ナノワイヤ構造体1a及び第2のマイクロ要素ナノワイヤ構造体1aを備える少なくとも1つの測定ユニットを備える。これらのマイクロ要素ナノワイヤ構造体1aはそれぞれ、両側においてカバー層27を設けられており、2つのナノワイヤ構造体1aのそれぞれは、1つ又は2つのカバー層27によって電気的に接触される。2つのナノワイヤ構造体1aは別個に接触される。2つのナノワイヤ構造体の間に、加熱素子、たとえば電圧の印加によって加熱可能なマイクロワイヤ152が配置されている。センサ素子150の抵抗の変化は、気体流又は温度変化又は運動変化に対する基準として使用される。
【0096】
上述した実施形態は例示として理解されるべきであり、本発明はこれらの実施形態には限定されず、本発明から離れることなく多様に変更することができることは当業者に明らかである。特に、マイクロ触媒の製造は、本発明によるナノワイヤ構造体に対する多数の利用分野のうちの1つに過ぎない。さらに、特徴が、明細書、特許請求の範囲、図面、又は他の箇所のいずれに開示されているかを問わず、たとえ他の特徴と共に記載されていようとも、個々に本発明の本質的な構成要素を定めるものであることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤ構造体(1)を製造する方法であって、
(a)テンプレート(12)を用意するステップと、
(b)前記テンプレートの表面に対して少なくとも2つの異なる角度でエネルギー放射(14)を前記テンプレート(12)に照射するステップであって、該テンプレートを貫通する多数の潜在トラック(16)を生成する、照射するステップと、
(c)前記放射誘起潜在トラック(16)をエッチングして、交差して互いに結合するナノ細孔(32)から成る網(33)を形成するように、前記テンプレート(12)をエッチングするステップと、
(d)前記ナノ細孔(32)内で材料を堆積するステップであって、交差して互いに結合するナノワイヤ(34)から成る網(37)を前記ナノ細孔網(33)内で生成し、それによって、生成される該ナノワイヤ網(37)は前記テンプレートを貫通する、堆積さするステップと、
(e)前記テンプレート(12)を溶解すると共に、生じた前記ナノワイヤ網(37)から除去するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、前記テンプレート(12)に、少なくとも3つの異なる方向から前記エネルギー放射が照射され、該3つの方向は共通の1つの平面に存在していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(d)の前に、前記テンプレート(12)の第1の面(12a)上に導電性金属層(26a)が施され、前記ステップ(d)において、前記ナノワイヤ網(37)は、前記ナノ細孔網(33)内で電気化学的堆積によって前記金属層(26a)上で成長する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノワイヤ網(37)は電気化学的にパルス堆積される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレートフィルムは、1つ又は複数の開口を備えるマスクを通じて照射され、それによって、前記潜在トラック(16)は前記マスクの前記開口の領域においてのみ生成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ナノワイヤ構造体(1)であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって製造可能なナノワイヤ構造体。
【請求項7】
ナノワイヤ構造体(1)であって、特に請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって製造可能であり、多数のナノワイヤ(34)から成るアレイ(35)を備え、該ナノワイヤ(34)は異なる方向に延在し、該ナノワイヤ(34)は多数の節点(39)において互いに交差し、該ナノワイヤ(34)は前記多数の節点(39)において互いに一体化しており、それによって、該ナノワイヤ(34)は網目状に結合して網(37)を形成する、ナノワイヤ構造体。
【請求項8】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ(34)は、前記網(37)内で、少なくとも3つの所定の異なる方向に沿って延在する、請求項7に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項9】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記3つの異なる方向は共通の1つの平面に存在しておらず、前記ナノワイヤ(34)は、2次元、特に3次元で網目状に結合している、請求項8に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項10】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ網(37)は、電気化学的に堆積される材料から成長する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項11】
ナノワイヤ構造体(1)であって、平らなマット状の形状を特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項12】
ナノワイヤ構造体(1)であって、少なくとも、1つの平坦な面においてカバー層を備えず、前記ナノワイヤ網(37)は、少なくとも、該1つの平坦な面において開いている、請求項11に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項13】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ網(37)が固く結合している基板層(27)をさらに備え、請求項7〜12のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項14】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ(34)は、結晶集合組織又は単結晶構造を有する、請求項7〜13のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項15】
マイクロリアクタシステムであって、
流体供給部及び流体排出部を備えるマイクロ構造チャネルシステムと、
前記流体供給部及び前記流体排出部間のリアクタ要素としての、請求項6〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノワイヤ構造体(1)とを、
流体が、前記流体供給部から前記ナノワイヤ網(37)内の前記空間を通じて導かれ、前記流体排出部を通じて前記ナノワイヤ網から排出されることができるように備え、
前記ナノワイヤ網(37)の、オープンセル型である前記空隙構造は前記反応容積を形成し、前記ナノワイヤ(34)の前記円柱面は前記活性表面の少なくとも一部を形成し、前記流体は該活性表面と前記空隙構造内で流れている間に相互作用する、マイクロリアクタシステム。
【請求項16】
触媒システムであって、
流体供給部及び流体排出部を備えるチャネルシステムと、
前記流体供給部及び前記流体排出部間の触媒要素としての、請求項6〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノワイヤ構造体(1)とを、
流体が、前記流体供給部から前記ナノワイヤ網(37)内の前記空間を通じて導かれ、前記流体排出部を通じて前記ナノワイヤ網から排出されることができるように備え、
前記ナノワイヤ網(37)の、オープンセル型である前記空隙構造は前記触媒反応容積を形成し、前記ナノワイヤ(34)の前記円柱面は前記触媒活性表面の少なくとも一部を形成し、前記流体は該触媒活性表面と前記空隙構造内で流れている間に相互作用する、触媒システム。
【請求項17】
特に気体流、温度、又は運動の測定のためのセンサ素子(150)であって、該センサ素子は、特にそれぞれ請求項5に記載の第1のナノワイヤ構造体(1)及び第2のナノワイヤ構造体(1a)を備える少なくとも1つの測定ユニットであって、前記ナノワイヤ構造体(1、1a)はそれぞれ、それぞれの該ナノワイヤ構造体の接触のために、前記ナノワイヤ(34)に結合している少なくとも1つの基板層(27)を備え、前記ナノワイヤ構造体間に加熱素子(152)が配置されている、少なくとも1つの測定ユニットを備える、センサ素子。
【請求項1】
ナノワイヤ構造体(1)を製造する方法であって、
(a)テンプレート(12)を用意するステップと、
(b)前記テンプレートの表面に対して少なくとも2つの異なる角度でエネルギー放射(14)を前記テンプレート(12)に照射するステップであって、該テンプレートを貫通する多数の潜在トラック(16)を生成する、照射するステップと、
(c)前記放射誘起潜在トラック(16)をエッチングして、交差して互いに結合するナノ細孔(32)から成る網(33)を形成するように、前記テンプレート(12)をエッチングするステップと、
(d)前記ナノ細孔(32)内で材料を堆積するステップであって、交差して互いに結合するナノワイヤ(34)から成る網(37)を前記ナノ細孔網(33)内で生成し、それによって、生成される該ナノワイヤ網(37)は前記テンプレートを貫通する、堆積さするステップと、
(e)前記テンプレート(12)を溶解すると共に、生じた前記ナノワイヤ網(37)から除去するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、前記テンプレート(12)に、少なくとも3つの異なる方向から前記エネルギー放射が照射され、該3つの方向は共通の1つの平面に存在していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(d)の前に、前記テンプレート(12)の第1の面(12a)上に導電性金属層(26a)が施され、前記ステップ(d)において、前記ナノワイヤ網(37)は、前記ナノ細孔網(33)内で電気化学的堆積によって前記金属層(26a)上で成長する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノワイヤ網(37)は電気化学的にパルス堆積される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレートフィルムは、1つ又は複数の開口を備えるマスクを通じて照射され、それによって、前記潜在トラック(16)は前記マスクの前記開口の領域においてのみ生成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ナノワイヤ構造体(1)であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって製造可能なナノワイヤ構造体。
【請求項7】
ナノワイヤ構造体(1)であって、特に請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって製造可能であり、多数のナノワイヤ(34)から成るアレイ(35)を備え、該ナノワイヤ(34)は異なる方向に延在し、該ナノワイヤ(34)は多数の節点(39)において互いに交差し、該ナノワイヤ(34)は前記多数の節点(39)において互いに一体化しており、それによって、該ナノワイヤ(34)は網目状に結合して網(37)を形成する、ナノワイヤ構造体。
【請求項8】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ(34)は、前記網(37)内で、少なくとも3つの所定の異なる方向に沿って延在する、請求項7に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項9】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記3つの異なる方向は共通の1つの平面に存在しておらず、前記ナノワイヤ(34)は、2次元、特に3次元で網目状に結合している、請求項8に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項10】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ網(37)は、電気化学的に堆積される材料から成長する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項11】
ナノワイヤ構造体(1)であって、平らなマット状の形状を特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項12】
ナノワイヤ構造体(1)であって、少なくとも、1つの平坦な面においてカバー層を備えず、前記ナノワイヤ網(37)は、少なくとも、該1つの平坦な面において開いている、請求項11に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項13】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ網(37)が固く結合している基板層(27)をさらに備え、請求項7〜12のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項14】
ナノワイヤ構造体(1)であって、前記ナノワイヤ(34)は、結晶集合組織又は単結晶構造を有する、請求項7〜13のいずれか一項に記載のナノワイヤ構造体。
【請求項15】
マイクロリアクタシステムであって、
流体供給部及び流体排出部を備えるマイクロ構造チャネルシステムと、
前記流体供給部及び前記流体排出部間のリアクタ要素としての、請求項6〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノワイヤ構造体(1)とを、
流体が、前記流体供給部から前記ナノワイヤ網(37)内の前記空間を通じて導かれ、前記流体排出部を通じて前記ナノワイヤ網から排出されることができるように備え、
前記ナノワイヤ網(37)の、オープンセル型である前記空隙構造は前記反応容積を形成し、前記ナノワイヤ(34)の前記円柱面は前記活性表面の少なくとも一部を形成し、前記流体は該活性表面と前記空隙構造内で流れている間に相互作用する、マイクロリアクタシステム。
【請求項16】
触媒システムであって、
流体供給部及び流体排出部を備えるチャネルシステムと、
前記流体供給部及び前記流体排出部間の触媒要素としての、請求項6〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのナノワイヤ構造体(1)とを、
流体が、前記流体供給部から前記ナノワイヤ網(37)内の前記空間を通じて導かれ、前記流体排出部を通じて前記ナノワイヤ網から排出されることができるように備え、
前記ナノワイヤ網(37)の、オープンセル型である前記空隙構造は前記触媒反応容積を形成し、前記ナノワイヤ(34)の前記円柱面は前記触媒活性表面の少なくとも一部を形成し、前記流体は該触媒活性表面と前記空隙構造内で流れている間に相互作用する、触媒システム。
【請求項17】
特に気体流、温度、又は運動の測定のためのセンサ素子(150)であって、該センサ素子は、特にそれぞれ請求項5に記載の第1のナノワイヤ構造体(1)及び第2のナノワイヤ構造体(1a)を備える少なくとも1つの測定ユニットであって、前記ナノワイヤ構造体(1、1a)はそれぞれ、それぞれの該ナノワイヤ構造体の接触のために、前記ナノワイヤ(34)に結合している少なくとも1つの基板層(27)を備え、前記ナノワイヤ構造体間に加熱素子(152)が配置されている、少なくとも1つの測定ユニットを備える、センサ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−518674(P2011−518674A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500077(P2011−500077)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001776
【国際公開番号】WO2009/115227
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508021624)ゲーエスイー ヘルムホルッツェントゥルム フュア シュヴェリオネンフォルシュンク ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001776
【国際公開番号】WO2009/115227
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508021624)ゲーエスイー ヘルムホルッツェントゥルム フュア シュヴェリオネンフォルシュンク ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】
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