説明

ナノ構造材料およびナノ構造材料を含む光起電力素子

ナノ構造材料およびナノ構造材料を含む光起電力素子について説明する。一実施形態では、ナノ構造材料は、(a)ナノ粒子の第1の集合から形成された第1のナノネットワークと、(b)ナノ粒子の第2の集合から形成され、第1のナノネットワークと結合された第2のナノネットワークとを含む。ナノ粒子の第1の集合およびナノ粒子の第2の集合のうちの少なくとも一方が、間接遷移型材料から形成される。ナノ構造材料は、光を吸収して、第1のナノネットワーク内を移送される第1の種類の電荷キャリアと、第2のナノネットワーク内を移送される第2の種類の電荷キャリアとを発生させるように構成される。ナノ構造材料の吸収係数は、約400nmから約700nmの波長の範囲内で、少なくとも10cm−1である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、参照によりそのすべての開示が本明細書に組み込まれている、2004年6月18日に出願された米国仮出願第60/580816号の利益を主張するものである。
【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は、主にナノ構造材料に関する。より詳しくは、本発明は、ナノ構造材料、およびナノ構造材料を含む光起電力素子に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003]光起電力素子を用いると、太陽や熱源のような光エネルギーから電気エネルギーを発生させることが可能である。現行の光起電力素子としては、結晶質または非晶質の半導体材料をベースとするp−n接合素子、結晶質または非晶質の半導体材料をベースとするヘテロ接合素子、金属/半導体ショットキーヘテロ接合素子、そして金属、半導体材料、および電解液の組合せをベースとする素子などがある。現行の光起電力素子の場合は、動作中に、光活性材料が光を吸収して、電子正孔対または励起子の形で電荷キャリアを生成する。光活性材料の一方の電極から電子が出て、もう一方の電極から正孔が出る。正味の効果は、入射光エネルギーによって駆動された光起電力素子から流れる電流であり、この電流が外部負荷に流れて有効な仕事を実施することが可能である。入射光エネルギーのすべてを有効な電気エネルギーに変換することはできず、それは光起電力素子の損失または非効率として表される。
【0004】
[0004]一般に、現行の光起電力素子は、入射光エネルギーを有効な電気エネルギーに効率的に変換する能力に関して、いくつかの技術的限界を有する。現行の光起電力素子の損失の重大な原因は、一般に、太陽スペクトルのような入射光スペクトルと、光起電力素子の吸収スペクトルとの間の不整合にある。通常、光子が、光活性材料のバンドギャップエネルギー(エネルギーギャップ)より大きなエネルギーを有すると、過剰なエネルギーを有する、光励起された電子正孔対が生成される。通常、そのような過剰エネルギーは、電気エネルギーには変換されず、熱電荷キャリアの弛緩作用または熱化によって熱として失われる。光活性材料のバンドギャップエネルギーより小さなエネルギーを有する光子は、通常は吸収されず、したがって、電気エネルギーへの変換に寄与しない。結果として、入射光スペクトルの狭い範囲だけが、有効な電気エネルギーに効率的に変換されることが可能である。
【0005】
[0005]さらに、現行の光起電力素子の接合設計では、一般に、電子正孔対の電荷分離が空乏層周辺の領域に制限され、例えば、光活性材料内の面の程度に制限される可能性がある。空乏層から拡散(ドリフト)距離を超えて生成された電子正孔対は、通常、独立には荷電せず、したがって、電気エネルギーへの変換に寄与しない。結果として、通常は、光活性材料内で生成された電子正孔対のほとんどが、電流に寄与しない。
【0006】
[0006]現行の光起電力素子の損失の別の原因は、一般に、光励起された電子正孔対の再結合にある。光励起された電子正孔対の再結合により、電流に寄与する電荷キャリアの数が減り、したがって、変換効率が低下する。時として、現行の光起電力素子は、再結合時間が短いことと欠陥の存在との結果として、光励起された電子正孔対の再結合が有害なレベルに達する場合がある(欠陥は、再結合場所またはトラップ場所として動作する場合がある)。一般に現行の光起電力素子は少数電荷キャリアの到達を前提としているので、電荷キャリアの再結合の影響を低減させるためには、厳格な製造条件が必要になる可能性がある。
【0007】
[0007]現行の光起電力素子の損失のさらに別の原因は、一般に、直列抵抗および並列抵抗などによる抵抗損失にある。電荷キャリアは、光活性材料を横切る際に、一般に、電気抵抗と遭遇し、これが抵抗損失につながる。さらなる抵抗損失が、光励起された電荷キャリアを分離する空乏層における電気抵抗、ならびに電極と光活性材料との間の接点における電気抵抗から生ずる可能性がある。
【0008】
[0008]このような背景に対して、本明細書に示すナノ構造材料および光起電力素子の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0009]本発明は、一態様では、ナノ構造材料に関する。一実施形態では、ナノ構造材料は、(a)ナノ粒子の第1の集合から形成された第1のナノネットワークと、(b)ナノ粒子の第2の集合から形成され、第1のナノネットワークと結合された第2のナノネットワークとを含む。ナノ粒子の第1の集合およびナノ粒子の第2の集合のうちの少なくとも一方が、間接遷移型材料から形成される。ナノ構造材料は、光を吸収して、第1のナノネットワーク内で運ばれる第1のタイプの電荷キャリアと、第2のナノネットワーク内で運ばれる第2のタイプの電荷キャリアとを生成するように構成される。ナノ構造材料の吸収係数は、約400nmから約700nmの波長の範囲内で、少なくとも10cm−1である。
【0010】
[0010]別の実施形態では、ナノ構造材料は、(a)第1のタイプの電荷キャリアを移送するために、融合しているか相互連結しているかの少なくともどちらかであるSiナノ粒子の集合を含む第1のナノネットワークと、(b)第1のナノネットワークと結合されていて、第2のタイプの電荷キャリアを移送するために、融合しているか相互連結しているかの少なくともどちらかであるGeナノ粒子の集合を含む第2のナノネットワークとを含む。
【0011】
[0011]本発明は、別の態様では、光起電力素子に関する。一実施形態では、光起電力素子は、(a)第1の電極と、(b)第2の電極と、(c)第1の電極と第2の電極との間に位置するナノ構造材料とを含む。ナノ構造材料は、入射光を吸収して、第1の電極に運ばれる第1のタイプの電荷キャリアと、第2の電極に運ばれる第2のタイプの電荷キャリアとを生成するように構成される。ナノ構造材料は、ナノ構造材料の少なくとも一部を通る導電パスを提供するように構成されたナノ粒子の集合を含み、そのナノ粒子のセットは間接遷移型材料から形成される。光起電力素子は、入射光を照射されると、20mA/cmを超える短絡電流密度を与える。
【0012】
[0012]本発明の他の態様および実施形態も想定される。前述の要旨および後続の詳細説明は、本発明を何らかの特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、本発明のいくつかの実施形態を説明しようとするものに過ぎない。
【0013】
[0013]本発明の様々な実施形態の性質および目的をよりよく理解するために、以下の詳細説明を添付図面と併せて参照されたい。
【詳細な説明】
【0014】
定義
[0022]本発明のいくつかの実施形態に関して記載する要素のいくつかについては、以下の定義を適用する。これらの定義は、本明細書についても同様に拡張可能である。
【0015】
[0023]「集合」という用語は、本明細書において用いられるように、1つまたは複数の要素を集めたものを意味する。集合の要素は、集合のメンバと呼ぶことも可能である。集合の要素は、同じものであっても、異なるものであってもよい。場合によっては、集合の要素は、1つまたは複数の共通属性を共用することが可能である。
【0016】
[0024]「任意選択の」および「任意選択で」という用語は、本明細書において用いられるように、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、およびその記載が、その事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「任意選択でシェルに囲まれる」という表現には、シェルが存在してもしなくてもよいこと、およびシェルが存在することとシェルが存在しないことの両方が記載に含まれることが意味として含まれる。
【0017】
[0025]「光ルミネセンス」という用語は、本明細書において用いられるように、第2の波長(または第2の範囲の波長)の光を照射された材料が第1の波長(または第1の範囲の波長)の光を放出することを意味する。第1の波長(または第1の範囲の波長)と第2の波長(または第2の範囲の波長)は、同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
[0026]「光ルミネセンス量子効率」という用語は、本明細書において用いられるように、材料によって吸収された光子の数に対する、材料によって放出された光子の数の比を意味する。
【0019】
[0027]「最高占有分子軌道(HOMO)」という用語は、本明細書において用いられるように、電子状態の数または密度およびバンド構造の存在に関係なく、ある材料について占有される最高エネルギー電子状態を意味する。
【0020】
[0028]「最低非占有分子軌道(LUMO)」という用語は、本明細書において用いられるように、電子状態の数または密度およびバンド構造の存在に関係なく、ある材料について占有されない最低エネルギー電子状態を意味する。
【0021】
[0029]「欠陥」という用語は、本明細書において用いられるように、結晶スタックエラー、トラップ、空位、挿入、または不純物(原子または分子のドーパントなど)を意味する。
【0022】
[0030]「単層」という用語は、本明細書において用いられるように、別の材料がその上に追加されない、ある材料の単一の完結した被覆を意味する。
【0023】
[0031]「光活性材料」という用語は、本明細書において用いられるように、光エネルギーから電気エネルギーを発生させるために用いることが可能な材料を意味する。この用語は、本発明の特定の実施形態の文脈では一般にナノ構造材料を意味するように用いるが、他の光活性材料(従来の光活性材料など)を意味するように用いることも可能である。
【0024】
[0032]「吸収係数」および「振動子強度」という用語は、本明細書において用いられるように、材料の単位長さ(例えば、単位厚さ)当たりの、材料によって吸収される光の量を意味する。
【0025】
[0033]「電荷キャリア再結合時間」という用語は、本明細書において用いられるように、電荷キャリアが、再結合するまで分離状態で存続する時間量を意味する。光活性材料の場合、電荷キャリア再結合時間は、光励起された電子正孔対が、再結合するまで分離状態で存続する平均時間量であるとしてよい。一般に、電荷キャリア再結合時間は、「電荷キャリア再結合速度」に反比例する。
【0026】
[0034]「短絡電流密度」という用語は、本明細書で光起電力素子に関して用いる場合においては、光起電力素子が短絡条件下での動作時に提供することが可能な、単位面積当たりの電流量を意味する。例えば、短絡電流密度は、光起電力素子の電極同士が低抵抗外部負荷(例えば、ゼロ抵抗外部負荷)を介して結合されている場合に光起電力素子によって提供可能な、単位面積当たりの電流量であるとしてよい。
【0027】
[0035]「ナノメートル(nm)範囲」という用語は、本明細書において用いられるように、約0.1nmから約1000nm(例えば、約0.1nmから約500nm、約0.1nmから約200nm、約0.1nmから約100nm、約0.1nmから約50nm、約0.1nmから約20nm、あるいは約0.1nmから約10nm)のサイズ範囲を意味する。
【0028】
[0036]「ナノ粒子」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノメートル範囲の寸法を少なくとも1つ有する粒子を意味する。ナノ粒子は、任意の数の形状を有してよく、任意の数の材料から形成されてよい。場合によっては、ナノ粒子は第1の材料の「コア」を含み、そのコアは、任意選択で、第2の材料の「シェル」に、または「配位子層」に囲まれることが可能である。第1の材料と第2の材料は同じであっても、異なっていてもよい。ナノ粒子は、その構成に応じて、量子閉じ込めに関連するサイズ依存特性を呈することが可能である。しかしながら、ナノ粒子が、量子閉じ込めに関連するサイズ依存特性を実質的に欠くことや、そのようなサイズ依存特性を呈するとしても程度が小さいことも可能性として想定される。場合によっては、ナノ粒子の集合を、「実質的に無欠陥」であるとすることも可能である。ナノ粒子の集合を、実質的に無欠陥であるとした場合は、欠陥がナノ粒子当たり1個未満であると想定する(例えば、ナノ粒子1000個当たり1個未満、ナノ粒子10個当たり1個未満、あるいはナノ粒子10個当たり1個未満であると想定する)。一般には、ナノ粒子内のより少ない数の欠陥が、光ルミネセンス量子効率の増分になる。場合によっては、実質的に無欠陥であるナノ粒子の光ルミネセンス量子効率は、6パーセントより大きくなる(例えば、少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、あるいは、少なくとも50パーセントになる)。ナノ粒子の例としては、量子ドット、量子井戸、量子細線などがある。
【0029】
[0037]ナノ粒子の「サイズ」は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の特徴的な物理寸法を意味する。量子閉じ込めと関連するサイズ依存特性を呈するナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の量子閉じ込め物理寸法を意味するとしてよい。例えば、ナノ粒子がほぼ球形である場合、ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の直径に相当する。ナノ粒子がほぼ棒状であって断面がほぼ円形の場合、ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の断面の直径に相当する。ナノ粒子の集合が特定のサイズであるとした場合は、ナノ粒子の集合のサイズ分布が指定サイズの周辺にあると想定することが可能である。したがって、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の集合のサイズを、(サイズ分布のピークサイズのような)サイズ分布のモードの意味であるとすることが可能である。
【0030】
[0038]「単分散」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の集合の少なくとも約60%(例えば、少なくとも約75%から約90%)が指定のサイズ範囲に収まるようなナノ粒子の集合を意味する。場合によっては、単分散ナノ粒子の集合のサイズの偏りが、二乗平均平方根(「rms」)の約20%未満になる(例えば、約10%rms未満、あるいは約5%rms未満になる)。
【0031】
[0039]「量子ドット」という用語は、本明細書において用いられるように、直交する3つの次元にほぼ沿うサイズ依存特性(化学特性、光学特性、電気特性など)を呈するナノ粒子を意味する。量子ドットは、様々な形状(例えば、球、四面体、トライポッド、円板、角錐、箱、正六面体、および他のいくつかの幾何学的形状および非幾何学的形状)のうちの任意の形状を有することが可能である。シェルに囲まれたコアを含む量子ドットを「コアシェル量子ドット」と呼ぶことも可能である。量子ドットの例として、ナノスフェア、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノマルチポッド、ナノボックスなどがある。
【0032】
[0040]「量子井戸」という用語は、本明細書において用いられるように、せいぜい1つの次元にほぼ沿うサイズ依存特性(化学特性、光学特性、電気特性など)を呈するナノ粒子を意味する。量子井戸の例として、ナノプレートがある。
【0033】
[0041]「量子細線」という用語は、本明細書において用いられるように、せいぜい2つの直交する次元にほぼ沿うサイズ依存特性(化学特性、光学特性、電気特性など)を呈するナノ粒子を意味する。量子細線の例として、ナノロッド、ナノチューブ、ナノコラムなどがある(ナノポーラスSiおよびナノポーラスGeを含むナノポーラス半導体材料から形成されたものなど)。
【0034】
[0042]「コア」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の内側部分を意味する。コアは、単一の均質の単原子材料または多原子材料を実質的に含むことが可能である。コアは、結晶質、多結晶質、または非晶質であってよく、任意選択でドーパントを含むことが可能である。コアは、実質的に無欠陥であるとしてよいか、ある範囲の欠陥密度を含んでよい。コアは「結晶質」あるいは「実質的に結晶質」であるとしてよい場合があるが、コアの表面は多結晶質または非晶質である可能性があること、およびこの多結晶質または非晶質の表面がコア内部の測定可能な深さまで延びて「コア表面領域」を形成する可能性があることが想定される。コア表面領域が潜在的に非晶質であっても、本明細書において実質的に結晶質コアとして記載されているものは変わらない。コア表面領域には欠陥が含まれる場合がある。場合によっては、コア表面領域は、約1原子層から約5原子層の深さに広がる可能性があり、実質的に均質であるか、実質的に不均質であるか、コア表面領域内の位置の関数として連続的に変化する可能性がある。
【0035】
[0043]「シェル」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の外側部分を意味する。シェルは、コアの表面の少なくとも一部を覆う材料の層を含んでよい。コアとシェルとの間に、任意選択で界面領域が位置することが可能である。シェルは、単一の均質の単原子材料または多原子材料を実質的に含むことが可能である。シェルは、結晶質、多結晶質、または非晶質であってよく、任意選択でドーパントを含むことが可能である。シェルは、実質的に無欠陥であるとしてよいか、ある範囲の欠陥密度を含んでよい。場合によっては、シェルを形成する材料が、コアを形成する材料より大きなバンドギャップエネルギーを有する。また、場合によっては、シェルを形成する材料が、コアを形成する材料より小さなバンドギャップエネルギーを有することも可能である。シェルを形成する材料は、シェルの伝導帯をコアの伝導帯より高くしたり低くしたりすることが可能であるように、かつ、シェルの価電子帯をコアの価電子帯より高くしたり低くしたりすることが可能であるように、コアを形成する材料に対してバンドオフセットを有することが可能である。シェルを形成する材料は、任意選択で、コアを形成する材料のそれに近い原子間隔を有するように選択されることが可能である。シェルは、コアの表面を実質的に完全に覆うことによって、例えば、コアのすべての表面原子を実質的に覆うという意味で、「完全」であることが可能である。あるいは、シェルは、コアの表面を部分的に覆うことによって、例えば、コアの表面原子を部分的に覆うという意味で、「不完全」であることが可能である。シェルは、ある範囲の厚さ(例えば、約0.1nmから約10nm)を有することが可能である。シェルの厚さは、シェルを形成する材料の単層の数で定義することが可能である。場合によっては、シェルは、約0単層から約10単層の厚さを有することが可能である。非整数個の単層は、不完全な単層が存在する状態に相当するとしてよい。不完全な単層は、均質であっても不均質であってもよく、コアの表面に島状のものや塊が形成されていてもよい。シェルの厚さは、均一であっても不均一であってもよい。厚さが不均一なシェルの場合、シェルが不完全であれば材料の複数の単層を含むことが可能であると想定される。シェルは、任意選択で、1つまたは複数の材料の複数の層を、各層がその次に内側にある層のシェルとして働くようなタマネギ状の構造で含むことが可能である。各層の間に、任意選択で界面領域が位置する。
【0036】
[0044]「界面領域」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の2つ以上の部分の間の境界を意味する。例えば、界面領域は、コアとシェルの間や、シェルの2つの層の間に位置しうる。場合によっては、界面領域は、ナノ粒子の1つの部分を形成する材料と、ナノ粒子のもう1つの部分を形成する材料との間で、原子的に離散的な遷移を呈してもよい。また、場合によっては、界面領域は、ナノ粒子の2つの部分を形成する材料の合金であってもよい。界面領域は、格子整合していても、していなくてもよく、結晶質、多結晶質、または非晶質であってもよく、任意選択でドーパントを含んでもよい。界面領域は、実質的に無欠陥であるとしてよく、ある範囲の欠陥密度を含んでよい。界面領域は、均質であっても不均質であってもよく、(例えば、段階的または連続的な遷移を与えるために)ナノ粒子の2つの部分の間で特性が勾配化されていてもよい。あるいは、遷移は非連続的であってもよい。界面領域は、ある範囲の厚さ(例えば、約1原子層から約5原子層)を有することが可能である。
【0037】
[0045]「配位子層」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子のコアを囲む表面配位子の集合を意味する。配位子層を含むナノ粒子は、シェルを含むことも可能である。したがって、配位子層の表面配位子の集合は、コア、シェル、またはその両方(不完全なシェルの場合)と共有結合または非共有結合することが可能である。配位子層は、単一タイプの表面配位子(単一の分子種など)、または2つ以上のタイプの表面配位子(2つ以上の異なる分子種など)の混合物を含むことが可能である。表面配位子は、表面配位子の少なくとも一部分において、コア、シェル、またはその両方に対する親和性を有するか、それらと選択的に結合されることが可能である。表面配位子は、任意選択で、表面配位子に沿う複数の部分において結合されることが可能である。表面配位子は、任意選択で、特にコアまたはシェルと相互作用を行わない1つまたは複数の追加活性基を含むことが可能である。表面配位子は、実質的に親水性であっても、実質的に疎水性あっても、実質的に両親媒性であってもよい。表面配位子の例としては、有機分子、ポリマー(重合反応の場合はモノマー)、無機錯体、分子テザー、ナノ粒子、および拡張結晶構造物などがある。配位子層は、ある範囲の厚さを有することが可能である。配位子層の厚さは、配位子層を形成する表面配位子の集合の単層の数で定義することが可能である。場合によっては、配位子層の厚さは、1つの単層以下(例えば、実質的に1つの単層未満)である。
【0038】
[0046]「ナノネットワーク」という用語は、本明細書において用いられるように、ナノ粒子の配列または系を意味する。場合によっては、ナノネットワークは、ナノメートル範囲の寸法を少なくとも1つ有する。ナノネットワークは、ナノネットワークを形成する材料、ナノネットワークの構成または形態、またはその両方に基づいて互いに区別されることが可能である。ナノネットワークの一例は、融合または相互連結しているナノ粒子の集合であって、その融合または相互連結の程度が、融合または相互連結がほとんどまたはまったくなされていない程度から、融合または相互連結が完結している程度まで、広い範囲にわたって変化しうるナノ粒子の集合である。そのようなナノネットワークは、任意の数の他のナノネットワークと相互分散するか、相互浸透するか、融合するか、相互連結するか、重なり合うことが可能である。ナノネットワークの別の例は、あるマトリックスにおいていくらかの濃度または数密度で分散しているナノ粒子の集合である。ナノネットワークのさらに別の例は、おおむね並んでいるナノロッド、ナノコラム、ナノチューブ、または量子細線の配列のように、空間的に延びているナノ粒子の集合である。
【0039】
ナノ構造材料
[0047]本発明の特定の実施形態は、光電子デバイス(例えば、光起電力素子、光導電体、光検出器、発光ダイオード(「LED」)、レーザ、および他の、動作時に光子および電荷キャリアを伴うデバイス)に用いられることが可能なナノ構造材料に関する。ナノ構造材料の構成およびその結果としての特性を、様々な光電子用途の所望のレベルの性能に合わせて設計することが可能である。場合によっては、ナノ構造材料の設計は、いくつかの特性(例えば、光吸収、電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップなど)と、電荷キャリアの移送および収集とのトレードオフを伴う可能性がある。本発明のいくつかの実施形態によれば、ナノ構造材料の構成は、浸透限界および連続限界と呼ばれる2種類の材料形態の間の広い範囲をカバーする。後で詳述するように、浸透限界および連続限界は、一般に、連続性または連結性の程度が異なる。この範囲の材料形態において、ナノネットワークの集合を用いて、いくつかの望ましい特性を促進することが可能であり、光起電力素子の場合には、例えば、実効的な光吸収、実効的な電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップの低減、電荷キャリアの実効的な移送および収集などを促進することが可能である。
【0040】
[0048]浸透限界においては、ナノ構造材料の少なくとも一部が非連続構成を有する。例えば、ナノ構造材料はナノネットワークの集合を含むことが可能であり、そのナノネットワークの集合のうちの少なくとも1つが非連続構成を有する可能性がある。場合によっては、ナノネットワークを形成するナノ粒子の少なくとも部分集合が、離散的であるか、融合または相互連結していないか、融合または相互連結している程度が低い。例えば、ナノ構造材料は、マトリックスの形に分散したナノ粒子の集合を含む可能性がある。浸透限界における非連続構成のため、電荷キャリアの移送は、一般に、ホッピング機構またはトンネリング機構を介して行われる。一般に、濃度または数密度が比較的高いナノ粒子は、浸透閾値に達することが望ましく、それによって、1つのナノ粒子から別のナノ粒子への実効的な電荷キャリア移送が可能になる。
【0041】
[0049]連続限界においては、ナノ構造材料が連続構成を有する。例えば、ナノ構造材料はナノネットワークの集合を含むことが可能であり、そのナノネットワークの集合のそれぞれが連続構成を有する可能性がある。場合によっては、ナノネットワークを形成するナノ粒子の集合が、融合または相互連結している。有利なことに、そのようなナノネットワークは連続的な導電パスを提供し、それによって、実効性が劣る移送機構(ホッピング機構やトンネリング機構など)を頼りにしない、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。同時に、量子閉じ込めに関連する設計可能な特性がほぼ維持されるように、ナノ粒子の融合または相互連結の程度を調節することが可能である。また、場合によっては、ナノネットワークを形成するナノ粒子の集合が、空間的に延びている。有利なことに、そのようなナノネットワークは連続的な導電パスを提供し、それによって、ナノ粒子を融合または相互連結しなくてよい、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。そのようなナノネットワークの例は、おおむね並んでいるナノロッド、ナノコラム、ナノチューブ、または量子細線の配列である。
【0042】
[0050]ナノ構造材料は、浸透限界と連続限界との間で、連続性または連結性の程度によって区別される、任意の範囲の材料形態を有することが可能である。場合によっては、連続性または連結性の程度を連続的に調節することが可能であり、それは、例えば、ナノ粒子の濃度または数密度を変化させること、ナノ粒子の融合または相互連結の程度を変化させること、ナノ粒子の空間的範囲を変化させること、またはこれらの組合せによって可能である。結果として得られるナノ構造材料は、本発明のいくつかの実施形態に対応する、非常に入り組んだ、複雑な構成を有することから、本発明の他の実施形態に対応する、入り組んでいない、整列した構成を有することまでの範囲を有することが可能である。
【0043】
[0051]浸透限界および連続限界において、ならびにこれらの間において、任意の数のナノネットワークが、任意の数の他のナノネットワークと、少なくともある程度まで、相互分散するか、相互浸透するか、融合するか、相互連結するか、重なり合うことが可能である。同じ材料からでも異なる材料からでも、ナノ構造材料の様々なナノネットワークを形成することが可能である。図1は、本発明の実施形態による、相互浸透している2つのナノネットワーク102および104を含むナノ構造材料100を示している。図示した実施形態では、ナノネットワーク102は、融合または相互連結しているSiナノ粒子の集合から形成され、ナノネットワーク104は、融合または相互連結しているGeナノ粒子の集合から形成される。ナノネットワーク102を形成するSiナノ粒子の融合または相互連結の程度は、ほとんどまたはまったく融合または相互連結していない程度から、完全に融合または相互連結している程度まで、広い範囲で変化する可能性がある。同様に、ナノネットワーク104を形成するGeナノ粒子の融合または相互連結の程度も、ほとんどまたはまったく融合または相互連結していない程度から、完全に融合または相互連結している程度まで、広い範囲で変化する可能性がある。本発明の他の実施形態については、ナノネットワーク102および104の両方がSiナノ粒子またはGeナノ粒子のいずれかから形成可能であること、およびナノネットワーク102および104の構成またはそれらのそれぞれのナノ粒子のサイズが異なっていてもよいことが想定される。
【0044】
[0052]本発明の各種実施形態によるナノ構造材料は、以下に示すようないくつかの材料を用いて形成可能である。
1.無機材料(ドープまたは非ドープ無機半導体材料、無機ポリマー、無機オリゴマー、無機分子など)
2.有機材料(ドープまたは非ドープ有機半導体材料、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機分子など)
3.金属
4.ドープ材料
5.非ドープ材料
6.固体状態材料
7.液体状態材料
8.上記の組合せ
特定の用途では、無機材料の使用が有利である可能性がある。これは、それらの材料が所望のレベルのロバスト性および安定性を与えることが可能なためである。さらに、固体状態材料の使用も、同じロバスト性および安定性の理由で有利である可能性がある。例えば、本発明の実施形態によるナノ構造材料は、少なくとも1つのナノネットワークを含む、完全に無機質であって完全に固体状態であるナノ構造材料に相当するとしてよい。
【0045】
[0053]本発明の各種実施形態によるナノ構造材料は、以下に示すようないくつかの方法を用いて形成可能である。
1.ナノ粒子の集合をマトリックスの形で分散させること。
2.連続であって空間的に延びている構成を有するナノ構造材料を直接形成すること。
3.ほとんどまたはまったく融合していない程度から、完全に融合している程度までの範囲で、ナノ粒子の集合を融合させること。
4.(表面配位子、量子細線、または他の、ナノ粒子の表面に付着した構造を用いるなどして)ほとんどまたはまったく相互連結していない程度から、完全に相互連結している程度までの範囲で、ナノ粒子の集合を相互連結させること。
5.ほとんどまたはまったく融合していない程度から、完全に融合している程度までの範囲で、材料の様々な部分を融合させること。
6.(表面配位子、量子細線、または他の、材料の様々な部分の表面に付着した構造を用いるなどして)ほとんどまたはまったく相互連結していない程度から、完全に相互連結している程度までの範囲で、材料の様々な部分を相互連結させること。
7.上記の組合せ(材料の特定部分を融合させ、その材料の他の部分を相互連結かつ融合させるなど)。
【0046】
[0054]本発明の各種実施形態によるナノ構造材料は、以下に示すようないくつかの構成を有する膜として形成可能である。
1.ナノ構造材料を、単一材料の膜(例えば、単一成分の膜)として形成することが可能であり、これに単一のナノネットワークを含めることが可能である。
2.ナノ構造材料を、単一材料の膜(例えば、単一成分の膜)として形成することが可能であり、これに複数のナノネットワークを含めることが可能である。この場合、それらのナノネットワークの構成または形態が異なってもよく、それらのそれぞれのナノ粒子のサイズが異なってもよく、それらのドーピングが異なってもよい。ナノネットワークは、相互分散したり、相互浸透したり、融合したり、相互連結したり、互いに重なり合ったりすることが可能である。例えば、ナノネットワークは、様々なサイズのナノ粒子から形成されることが可能であり、様々な材料形態で並べられることが可能であり、様々にドープされることが可能であり、これらの組合せも可能である。特にナノネットワークは、Geナノ粒子から形成可能であり、様々なドーピングが可能である。後で詳述するように、ナノネットワーク間の境界は、実効的な電荷分離を可能にするホモ接合を形成することが可能である。これらのホモ接合のバンドギャップエネルギーおよび数の設計次第で、これらのホモ接合は、より広い範囲の入射光スペクトルが有効な電気エネルギーに効率的に変換されることが可能になるように、実効的な光吸収を可能にすることができる。
3.ナノ構造材料を、複数材料の膜(例えば、複数成分の膜)として形成することが可能であり、これに複数のナノネットワークを含めることが可能である。この場合、それらのナノネットワークの材料が異なってもよく、それらの構成または形態が異なってもよく、それらのそれぞれのナノ粒子のサイズが異なってもよく、それらのドーピングが異なってもよい。ナノネットワークは、相互分散したり、相互浸透したり、融合したり、相互連結したり、互いに重なり合ったりすることが可能である。例えば、ナノネットワークは、Siナノ粒子およびGeナノ粒子から形成されることが可能であり、それらのナノ粒子は、様々なサイズであることが可能であり、様々な材料形態で並べられることが可能であり、様々にドープされることが可能であり、これらの組合せも可能である。後で詳述するように、ナノネットワーク間の境界は、実効的な電荷分離を可能にするヘテロ接合を形成することが可能である。これらのヘテロ接合のバンドギャップエネルギーおよび数の設計次第で、これらのヘテロ接合は、より広い範囲の入射光スペクトルが有効な電気エネルギーに効率的に変換されることが可能になるように、実効的な光吸収を可能にすることができる。
4.ナノ構造材料を、単一材料の膜(例えば、単一成分の膜)として形成することが可能であり、これに、完全に「全密度」まで融合しているナノ粒子を含めることが可能である。
5.ナノ構造材料を、複数材料の膜(例えば、複数成分の膜)として形成することが可能であり、これに、完全に「全密度」まで融合しているナノ粒子を含めることが可能である。
6.ナノ構造材料を、ナノ粒子の単一の層を含む膜として形成することが可能である。
7.ナノ構造材料を、上記の組合せ(例えば、上述のカテゴリのうちの1つまたは複数の、複数の層を含む膜)として形成することが可能である。例えば、ナノ構造材料を、上述のカテゴリ3の複数の層を含む膜として形成することが可能である。この場合、層と層の間の境界は、実効的な電荷分離を可能にするヘテロ接合を形成することが可能である。これらのヘテロ接合内のバンドギャップエネルギーの設計次第で、これらのヘテロ接合は、より広い範囲の入射光スペクトルが有効な電気エネルギーに効率的に変換されることが可能になるように、実効的な光吸収を可能にすることができる。
【0047】
ナノ粒子と設計可能な特性
[0055]本発明の各種実施形態によるナノ構造材料を、ナノ粒子を用いて形成することが可能である。有利なことに、ナノ粒子を用いて、ナノ構造材料を、いくつかの望ましい特性を有する光活性材料として設計することが可能であり、そのような特性として、例えば、実効的な光吸収、実効的な電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップの低減、電荷キャリアの実効的な移送および収集などがある。
【0048】
[0056]利用可能なナノ粒子の例として、以下のものがある。
1.少なくとも1つの寸法に沿って、量子閉じ込めに関連するサイズ依存特性を呈するナノ粒子
a.量子ドット
b.量子井戸
c.量子細線
2.量子閉じ込めに関連するサイズ依存特性を欠くナノ粒子、またはそのようなサイズ依存特性を呈する程度が低いナノ粒子
3.上記の組合せ
【0049】
[0057]ナノ粒子の望ましい特性の例として、以下のものがある。
1.膜または非膜の形で、光源から光エネルギーを、吸収係数のスペクトルの範囲および強度の点で効果的に吸収すること。
2.膜または非膜の形で、電荷キャリアを効果的に移送すること。
3.比較的緩やかな条件の下でナノネットワーク内に形成されることが可能であること。
4.実質的に毒性がないこと。
5.上記の組合せ
【0050】
[0058]本発明の各種実施形態によるナノ粒子は、以下に示すようないくつかの材料を用いて形成可能である。
1.無機材料(ドープまたは非ドープ無機半導体材料、無機ポリマー、無機オリゴマー、無機分子など)
2.有機材料(ドープまたは非ドープ有機半導体材料、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機分子など)
3.金属
4.金属酸化物(ドープまたは非ドープ金属酸化物など)
5.合金
6.誘電体材料
7.セラミック
8.上記の組合せ
【0051】
[0059]本発明の各種実施形態によるナノ粒子は、以下に示すような元素材料および非元素材料を用いて形成可能である。
1.元素材料
a.IV族半導体材料(C、Si、Ge、Sn、Pbなど)
2.二成分材料
a.IV−IV族半導体材料(Si、Ge、SiGeなど)
b.II−VI族半導体材料(CdSe、CdS、ZnO、SnO、NiO、WOなど)
c.III−V族半導体材料(GaAs、InAs、InP、InSb、GaP、GaSb、GaNなど)
3.三成分材料
4.四成分材料
5.上記の組合せ
【0052】
[0060]本発明のいくつかの実施形態については、量子閉じ込めナノ粒子が望ましい。これは、そのようなナノ粒子が、量子閉じ込め効果を活用することによって設計可能な特性を有するからである。場合によっては、ナノ粒子の特性を設計することが可能であり、それは、例えば、ナノ粒子のサイズを制御すること、ナノ粒子の形状を制御すること、ナノ粒子のコアを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルの厚さを制御すること、ナノ粒子の界面領域を制御すること、ナノ粒子の表面配位子を制御すること、ナノ粒子が分散しているマトリックスの特性を制御すること、またはこれらの組合せによって可能である。有利なことに、ナノネットワークおよびナノ構造材料は、そのような量子閉じ込めナノ粒子から、量子閉じ込めに関連する設計可能な特性がほぼ維持されるように形成されることが可能である。
【0053】
[0061]設計可能な特性の一例は、バンドギャップエネルギーである。量子閉じ込めナノ粒子の場合、光吸収端は一般にバンドギャップエネルギーに関連し、そのバンドギャップエネルギーは、ナノ粒子のサイズ、ナノ粒子の形状、ナノ粒子のコアを形成する材料、ナノ粒子のシェルを形成する材料、ナノ粒子のシェルの厚さ、ナノ粒子の表面配位子、およびナノ粒子が分散しているマトリックスの特性によって決定されることが可能である。ナノ粒子のサイズは、一般に、バンドギャップエネルギーに対する影響が最も大きい。例えば、一般に、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、バンドギャップエネルギーが増える。したがって、一般には、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、光吸収端がより高いエネルギーに向かって増える。一般に、バンドギャップエネルギーは、何乗かされた量子閉じ込め物理寸法の逆数として増える。ナノ粒子がほぼ球形であれば、バンドギャップエネルギーは、次式のように、ナノ粒子のサイズに依存することが可能である。
【数1】


ただし、dはナノ粒子の直径を表し、E(d)は、直径dのナノ粒子のバンドギャップエネルギーを表し、E(∞)は、塊状材料のバンドギャップエネルギーを表し、Cは、関与する特定の材料によって決まる定数を表し、nは、一般に約1から約2の範囲である。したがって、ナノ粒子のサイズを制御することによって、ナノ粒子の光吸収端を設計することが可能である。結果として、特定の光源(例えば、日中の様々な時刻の、かつ、様々な大気状態での太陽光、蛍光光源、白熱光源、LED、レーザ、電気アークなど)に合わせて光吸収を最適化あるいは調整することが可能である。さらに、ナノ粒子が特定の範囲の入射光スペクトルを選択的に吸収して、他の範囲の入射光スペクトルを透過させることが可能になるように、光吸収を設計することが可能である。そのようなナノ粒子は、建築資材(例えば、太陽光の中の高エネルギーの光子を吸収して電気エネルギーに変換し、低エネルギーの光子を透過させて眺めを確保する窓)としても利用される光起電力素子において有用である。本発明のいくつかの実施形態によれば、光吸収を設計することにより、結果として得られるナノ構造材料の吸収スペクトルの範囲を約300nmから約2000nmにすることが可能であり、例えば、約300nmから約1850nm、約400nmから約1850nm、約400nmから約1100nm、約400nmから約885nm、約400nmから約700nmなどにすることが可能である。
【0054】
[0062]ナノ粒子のバンドギャップエネルギーおよび光吸収端は、一般に、ナノ粒子の電子状態のHOMOおよびLUMOエネルギーレベルおよび密度に関連する。HOMOおよびLUMOエネルギーレベルを設計することが可能であり、それは、例えば、ナノ粒子のサイズを制御すること、ナノ粒子の形状を制御すること、ナノ粒子のコアを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルの厚さを制御すること、ナノ粒子の表面配位子を制御すること、およびナノ粒子が分散しているマトリックスの特性を制御することによって可能である。例えば、一般に、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルが互いに離れるようにシフトとしていき、前述のように、バンドギャップエネルギーが増える。HOMOおよびLUMOエネルギーレベルのシフトの程度は、場合によって異なる可能性がある。例えば、エネルギーレベルが関連する実効質量が小さいほど、シフトの程度が大きくなる。後で詳述するように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルを設計することにより、適切なバンドオフセットを与えて電荷分離を促進することが可能になり、特定の金属/材料接合(オーム接触や整流接触など)を与えることが可能になる。
【0055】
[0063]設計可能な特性の別の例は、吸収係数または振動子強度である。一般に、量子閉じ込め物理寸法が小さくなるにつれ、吸収係数または振動子強度が大きくなる。特定の光源(例えば、日中の様々な時刻の、かつ、様々な大気状態での太陽光、蛍光光源、白熱光源、LED、レーザ、電気アークなど)に合わせて吸収係数の設計を最適化あるいは調整することが可能である。さらに、吸収係数を大きくするほど、適切な量の光エネルギーを吸収できる膜を大幅に薄くすることが可能になる。例えば、厚さが約10nmから約100nmである膜が、太陽光を効果的に吸収できる。膜が薄いほど、光励起された電荷キャリアが電極まで移動する距離を短くすることが可能になり、それによって、電荷キャリアの再結合およびトラップが減り、より多くの電荷キャリアが電極に到達することが可能になって変換効率が上がる。吸収係数は、例えば、ナノ粒子のシェルを形成する材料を制御することや、ナノ粒子の表面配位子を制御することによっても設計可能である。例えば、シェルまたは表面配位子を、光エネルギーを吸収するように選択することが可能である。本発明のいくつかの実施形態によれば、結果として得られるナノ構造材料の(その吸収スペクトル内の)吸収係数を、少なくとも約10cm−1(例えば、約10cm−1から約10cm−1)、少なくとも約10cm−1(例えば、約10cm−1から約10cm−1)、または少なくとも約10cm−1(例えば、約10cm−1から約10cm−1)にすることが可能である。
【0056】
[0064]設計可能な特性の別の例は、ナノ粒子から形成されたナノ構造材料の光学的屈折率である。一般に、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、ナノ構造材料の誘電率および屈折率が小さくなる。適切なサイズのナノ粒子を選択することにより、特定の光源に対する反射損失が小さくなるように屈折率を設計することが可能である。場合によっては、結果として得られるナノ構造材料を反射防止材料として機能させることが可能である。
【0057】
[0065]設計可能な特性の別の例は、電荷分離である。場合によっては、相互分散しているか相互浸透しているナノネットワーク同士の間の境界、またはナノネットワークの層間の境界を、ほぼナノ構造材料全体に広がる電荷分離領域として機能させることが可能である。結果として、最多数の光励起された電荷キャリア対(例えば、光励起された電子正孔対)が一般に、電荷分離が発生可能な、そのような境界から数ナノメートル以内にある。したがって、電荷分離は、ナノ構造材料内の場所に関係なく、最多数の光励起された電荷キャリア対に対して効果的でありうる。
【0058】
[0066]電荷分離は、任意の数の機構によって発生させることが可能である。例えば、相互分散しているか相互浸透しているナノネットワーク同士の間の境界、またはナノネットワークの層間の境界における電荷分離接合は、実効的なバンドオフセットを有する材料の使用、電子親和力またはイオン化ポテンシャルが異なる材料の使用、仕事関数が異なる材料の使用、ヘテロ接合を形成するバンドギャップエネルギーが異なる材料の使用、ドープ材料の使用、またはこれらの組合せによって形成可能である。電荷分離はさらに、例えば、ナノ粒子のシェルを形成する材料の制御、ナノ粒子の表面配位子の制御、または空乏層の長さまたは障壁の高さおよび幅の制御によっても設計可能である。ドープされていないか、軽くドープされているナノネットワーク内への電荷分離は、関与する材料のHOMOおよびLUMOエネルギーレベル間の実効的なバンドオフセットによって駆動されることが可能である。図2A、図2B、および図2Cは、本発明の実施形態による、2つのナノネットワークを形成するナノ粒子の間で発生させることが可能な、様々なタイプのバンドオフセットを示している。具体的には、図2A、図2B、および図2Cは、それぞれ、スタガーバンドオフセット、ブロークンギャップバンドオフセット、およびストラドリングギャップバンドオフセットを示している。実効的なバンドオフセットがクーロン相互作用エネルギーまたは励起子結合エネルギーを超えていれば、電子は、最大の電子親和力を有する材料から形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送され、正孔は、最小のイオン化ポテンシャルを有する材料から形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。
【0059】
[0067]有利なことに、量子閉じ込め効果を利用して、適切な電子構造を設計することが可能である。例えば、ナノ粒子のサイズを制御することにより(したがって、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルおよび電子親和力およびイオン化ポテンシャルを制御することにより)、様々なタイプのバンドオフセットを設計することが可能である。場合によっては、組み込み(または印加された)電界が、電荷分離ならびにその後の電荷キャリア移送を支援することが可能である。組み込み電界は、ナノ構造材料を形成する材料の仕事関数の差、またはそのナノ構造材料を形成する材料と電極との仕事関数の差から発生させることが可能である。例えば、電荷分離に必要な、適切なエナジェティクスは、ナノネットワークの仕事関数またはフェルミ準位の差を関与させることが可能である。他の場合には、電荷分離に対して組み込み電界が存在しなくてもよい。電荷キャリアの不均一な分布から化学的ポテンシャル勾配または電気的ポテンシャル勾配を発生させることが可能であり、例えば、別々の材料または別々のナノネットワークに分離される電子および正孔から発生させることが可能であり、あるいは、他の任意の、電荷分離に関連する非対称性から発生させることが可能である。この化学的ポテンシャル勾配または電気的ポテンシャル勾配は、場合によっては、電流または電圧を発生させるのに十分であることが可能である。単一の材料が関与する場合は、別々の電極に収集される電子および正孔の優先傾向(または他の任意の、電荷分離に関連する非対称性)が、場合によっては、電流または電圧を発生させるのに十分であることが可能である。
【0060】
[0068]前述のように、量子閉じ込め効果を利用して、適切な電子構造を設計することが可能である。電子構造を設計することは、ナノネットワークをドープすることや、表面機能化条件を操作することによって行われることが可能である。融合しているか相互連結している、ドープされたナノ粒子から形成されたナノネットワークのような、ドープされたナノネットワークの場合は、ドープされていないか軽くドープされているナノネットワークの場合と同様に、電荷分離およびその後の電荷キャリア移送を行わせることが可能である。しかしながら、ドープされたナノネットワークに適切なエネルギーレベルは、一般にフェルミ準位に相当し、フェルミ準位は仕事関数に関連する。電子は、(そのフェルミ準位で決定される)よりn型であるナノネットワークに向かって優先的に分離および移送され、正孔は、(そのフェルミ準位で決定される)よりp型であるナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。ドープされたナノネットワークの場合、形成された接合は、バンドティルティングよりむしろバンドベンディングを呈する可能性がある。これは、ドープされていないか、軽くドープされているナノネットワークの場合には一般的である。
【0061】
[0069]設計可能な特性の別の例は、電荷キャリア再結合速度である。間接遷移型材料(Si、Ge、Si、SiGe、Geなど)から形成されたナノ粒子の場合は、一般に、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれ、電荷キャリア再結合速度が上がる。この依存は、図3を参照することにより理解されよう。図3は、光ルミネセンス減衰速度を光ルミネセンスエネルギーの関数としてプロットしたものである。この依存を利用して、ナノ粒子のサイズを適切に制御することにより、電荷キャリア再結合速度を下げることが可能である。例えば、電荷キャリアが膜を通過する時間が電荷キャリアの再結合時間より短くなるように、電荷キャリア再結合速度を設計することが可能である。そのようにして、電荷キャリアが膜を横切って移送され、再結合する前に電極に到達するようにできる。本発明のいくつかの実施形態によれば、結果として得られるナノ構造材料の電荷キャリア再結合時間を、少なくとも約1ns(例えば、約1nsから約10ms)、少なくとも約10ns(例えば、約10nsから約0.05ms、または約10nsから約10ms)、少なくとも約100ns(例えば、約100nsから約0.5ms、または約100nsから約10ms)、または少なくとも約1000ns(例えば、約1000nsから約10ms)にすることが可能である。
【0062】
[0070]設計可能な特性のさらなる例は、電荷キャリア移動度または導電率である。これは、ナノ粒子から形成されるナノ構造材料の構成を制御することによって設計可能である。例えば、浸透限界またはその近くにおいては、電荷キャリアの移送は、一般に、ホッピング機構またはトンネリング機構を介して行われる。したがって、電荷キャリア移動度を上げることは、ナノ粒子の濃度または数密度を上げて、必要なホッピングまたはトンネリングのステップ数を減らすことによって可能である。別の例として、連続限界に向かうナノ構造材料について、ナノ粒子の融合または相互連結の程度、またはナノ粒子の相互連結のタイプを制御することが可能である。一般に、融合または相互連続の程度が高いほど、電荷キャリアの移動度が高くなる。別の例として、ナノ粒子を並べて、ほぼまっすぐな導電パスを形成することによって、電荷キャリア移動度を設計することが可能である。一般に、入り組んだ導電パスと比較して、まっすぐな導電パスでは電荷キャリア移動度が高くなる。さらに別の例として、相互連結しているナノ粒子の場合は、ナノ粒子を相互に連結させるために用いられている表面配位子を選択することによって、電荷キャリア移動度を設計することが可能である。例えば、表面配位子の電気特性および長さに基づいて電荷キャリアの移送を強化するか、抑止するために、表面配位子を選択することが可能である。場合によっては、共役導電ポリマーなどの共役群を含み、適切なエナジェティクスを有する表面配位子が、そのような共役群を有しない表面配位子より高い電荷キャリア移動度をナノ粒子間に与えることが可能である。表面配位子の選択は、ナノ構造材料の他の特性を設計するために用いられることも想定されており、そのような特性として、バンドギャップエネルギー、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの位置、光吸収、電荷キャリア再結合速度、屈折率、ならびに形成される任意の接合の性質がある。電荷キャリア移動度も、ナノ粒子のシェルを選択することにより設計可能である。具体的には、例えば、シェルの電気特性に基づいて電荷キャリアの移送を強化するか、抑止するために、シェルを選択することが可能である。電荷キャリア移動度を設計することは、特定の光電子デバイス(多成分光起電力素子など)に特に有利である場合がある。具体的には、前述のように電荷キャリア移動度を設計することにより、そのような光電子デバイスの様々な部分または層における電流を、ほぼ同等になるように調整することが可能である。
【0063】
[0071]有利なことに、本発明の各種実施形態によるナノ構造材料は、実効的な電荷キャリア移送を実現することが可能であり、従来の光活性材料に対して比較的高い電流をサポートすることが可能である。例えば、連続限界または連続限界の近くにおいて、ナノ構造材料が電極間に連続的な導電パスを提供することが可能であり、それによって、実効性が劣る移送機構(ホッピング機構やトンネリング機構)を頼りにしない、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。場合によっては、この連続的な導電パスは、帯状の導通が生ずることを可能にすることができる。電荷分離後、分離された電荷キャリアは、互いに離れて別々に、それぞれのナノネットワーク内を別々の電極まで移送されることが可能である。具体的には、正の電荷キャリアと負の電荷キャリアとを、それぞれのナノネットワーク(正の電荷キャリアに対応する、一方のナノネットワークと、負の電荷キャリアに対応する、もう一方のナノネットワーク)を介して、別々の電極まで移送することが可能である。したがって、電荷キャリア移送は、小数電荷キャリア移送ではなく多数電荷キャリア移送に基づくことが可能である。多数電荷キャリア移送は、電荷キャリア再結合および欠陥の影響を緩和することによって電荷キャリア移送をより効率的に実施することを可能にし、それによって、より緩やかな製造条件を可能にすることができる。
【0064】
[0072]ナノ構造材料の設計には、いくつかの望ましい特性(例えば、実効的な光吸収、実効的な電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップの低減、実効的な電荷キャリア移送など)の間にトレードオフを伴う場合がある。具体的には、例えば、ナノ粒子のサイズを制御すること、ナノ粒子の形状を制御すること、ナノ粒子のコアを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルを形成する材料を制御すること、ナノ粒子のシェルの厚さを制御すること、ナノ粒子の界面領域を制御すること、ナノ粒子の表面配位子を制御すること、ナノ粒子が分散しているマトリックスの特性を制御すること、またはこれらの組合せの際に、特定の特性が、対立する形で変化する可能性がある。したがって、いくつかの望ましい特性の間で妥協点を探ることにより、望ましいレベルの全体性能を得ることが可能である。対立する形で変化する可能性がある特性の例として、屈折率と、光吸収端が入射光スペクトルの赤外範囲に延びる程度とがある。一般に、ナノ粒子が小さいほど、屈折率が小さく、このことが、低屈折率の媒体(例えば、いくつかの液体および気体のいずれか)から伝わる光エネルギーの表面反射を低減するために望ましい場合がある。しかしながら、ナノ粒子が小さいほど、光吸収の赤外範囲への延びが小さくなる場合があり、このことが、光起電力素子の太陽エネルギー利用にとって望ましくない場合がある。対立する形で変化する可能性のある特性の別の例として、光吸収と電荷キャリア移送とがある。一般に、ナノ構造材料の膜が厚いほど、多くの光エネルギーを吸収することが可能である。しかしながら、電荷キャリアが電極に到達するまでに横切るパスが長くなる影響が電荷キャリア移送に及ぶ可能性がある。前述のように、小さなナノ粒子を用いるほど、吸収係数を大きくすることが可能であり、それによって、適切な電荷キャリア移送を実現しながら、適切な量の光エネルギーを吸収できる膜をより薄くすることが可能になる。しかしながら、前述のように、ナノ粒子が小さいほど、光吸収の赤外範囲への延びが小さくなる場合があり、このことが、光起電力素子の太陽エネルギー利用にとって望ましくない場合がある。
【0065】
[0073]ナノ構造材料の設計に、ナノ粒子が融合または相互連結している程度に関する考慮が必要になる場合もある。ナノ粒子が融合または相互連結してナノ構造材料が形成されるので、実効的な量子閉じ込め物理寸法が変化すると、その結果として、量子閉じ込めに関連するナノ粒子の特性が変化する場合がある。したがって、ナノ粒子が融合または相互連結する程度を制御することによって、望ましいレベルの性能を得ることが可能である。
【0066】
IV族半導体材料のナノ粒子
[0074]本発明のいくつかの実施形態によるナノ粒子は、IV族半導体材料のような間接遷移型材料を用いて形成されることが可能である。例えば、Siナノ粒子およびGeナノ粒子を、それぞれ単独で使用するか、組み合わせて使用して、相互分散しているか、相互浸透しているか、融合しているか、相互連結しているか、または重なり合っているナノネットワークを形成することが可能である。本発明のいくつかの実施形態によれば、IV族半導体材料は、その化学特性、光学特性、電子特性、および物理特性によって、光起電力素子の太陽エネルギー利用用途に特に好適であるという理由で望ましい。場合によっては、元素のIV族半導体材料(SiやGeなど)が、不定比性および欠陥の影響を緩和するために特に望ましい。
【0067】
[0075]バルクSiおよびバルクGeのバンドギャップエネルギーは、それぞれ、1.12eVおよび0.67eVであり、これによって、SiおよびGeが、バルクの形で、または量子閉じ込め構造として、太陽光スペクトルの重要な部分を吸収することが可能である。図4は、太陽光スペクトルと、バルクSi、バルクGe、および本発明の実施形態に従って形成されたGeナノ粒子による、この太陽光スペクトルの吸収を示している。SiもGeも、比較的大きな吸収係数を与えることが可能な、上述のバンドギャップ遷移を有する。具体的には、バルクの形のSiおよびGeの吸収係数が、紫外から赤外の範囲で10〜10cm−1を超える場合がある。量子閉じ込め効果を利用すると、SiおよびGeの吸収係数を、前述のように制御可能な形で大きくすることが可能である。
【0068】
[0076]さらに、SiやGeなどのIV族半導体材料は、電荷キャリア再結合速度が一般に比較的低いという理由で望ましい。具体的には、バルクの形のSiおよびGeの再結合時間は、マイクロ秒またはミリ秒のレンジに入ることが可能である。これに対し、間接遷移型材料の再結合時間は、ナノ秒のレンジまたはそれ以下に入ることが可能である。量子閉じ込め効果を利用すると、SiおよびGeの再結合時間を、前述のように制御可能な形で長くすることが可能である。SiおよびGeの再結合時間が比較的長いので、ナノ構造材料を形成するナノネットワークの集合の表面または境界における電荷キャリア再結合を低減することが可能である。特に、ナノネットワークの境界は、電荷分離のために広い面積を提供することが可能でありながら、電荷キャリア再結合を強化する広い面積を提供することも可能である。有利なことに、SiおよびGeの再結合時間が比較的長いので、電荷キャリアを、ナノ構造材料の端から端まで移送し、再結合が起こる前に電極に到達させることが可能である。
【0069】
[0077]さらに、SiやGeなどのIV族半導体材料は、一般に、いくつかの材料との共有結合を形成することが可能であるという理由で望ましい。具体的には、SiもGeも、Si−C結合やGe−C結合のように強力かつロバストな共有結合を形成することが可能である。共有結合を形成することが可能なので、有機材料および無機材料を含む多様な材料を用いてナノ粒子またはナノネットワークの表面を機能化することが可能である。そして、このことによって、結果として得られるナノ構造材料の特性を設計するために用いることが可能な表面配位子の広範な選択が可能になる。さらに、共有結合を形成できることにより、ナノ粒子またはナノネットワークの表面を機能化して、他のタイプの結合(例えば、水素結合、ファンデルワールス結合、またはイオン特性を有する結合)の場合よりロバストにすることが可能である。
【0070】
[0078]本発明のいくつかの実施形態によれば、シェル(SiまたはGeの酸化物から形成されたシェルなど)または表面配位子で表面を被膜保護または終端されたSiナノ粒子またはGeナノ粒子を用いてナノ構造材料を形成することが可能である。例えば、Siナノ粒子は、実質的に無欠陥であることが可能であり、サイズが約1nmから約100nm(例えば、約1nmから約20nm、または約1nmから約10nm)であることが可能である。同様に、Geナノ粒子は、実質的に無欠陥であることが可能であり、サイズが約1nmから約100nm(例えば、約1nmから約50nm、または約1nmから約20nm)であることが可能である。欠陥は、光励起された荷電キャリアの再結合場所またはトラップ場所として働く可能性があるので、実質的に無欠陥であるSiナノ粒子またはGeナノ粒子を用いることが、特に望ましい場合がある。Siナノ粒子は、実質的に結晶質であるSiコアを含むことが望ましく、Geナノ粒子は、実質的に結晶質であるGeコアを含むことが望ましい。SiコアまたはGeコアを囲むシェルの場合、シェルの厚さは、一般に約0.1nmから約5nmである。シェルの例としては、Siナノ粒子についてはSiO、Geナノ粒子についてはGeOがあり、nの範囲は約0から約2(例えば、約1.5から約2、または約1.8から約2)である。シェルの化学組成は、シェルの一部の中で連続的に変えることが可能であり、任意選択で、シェルの一部の中で不連続に変えることも可能である。後者の場合、nは、シェル内の平均値を表すことが可能である。SiコアまたはGeコアを囲む表面配位子の場合、表面配位子は、構造Rを有する有機分子を含むことが可能である。Rは、いくつかの疎水性有機分子、親水性有機分子、または両親媒性有機分子のいずれかであることが可能である。表面配位子の与える表面被覆率は、約0%から約100%(例えば、約20%から約100%、約50%から約100%、または約80%から約100%)であることが可能である。表面配位子は、任意選択で、様々な種類の有機分子を含むことが可能であり、あるいは、SiコアまたはGeコアの表面と直接的に相互に作用する別の分子を介して、SiコアまたはGeコアの表面と間接的に相互に作用する分子を含むことが可能である。
【0071】
[0079]本発明のいくつかの実施形態による、Siナノ粒子およびGeナノ粒子の形成方法には、バルク材料をナノ粒子に変換する「トップダウン」手法と、化学的前駆体からナノ粒子を形成する「ボトムアップ」手法とが含まれる。「トップダウン」手法および「ボトムアップ」手法の詳細については、例えば、Leeらの特許である、2004年9月21日に発行され、その開示が参照により本明細書に完全に組み込まれている米国特許第6794265号(件名「Methods of Forming Quantum Dots of Group IV Semiconductor Materials」)に記載されている。
【0072】
[0080]一例として、Siナノ粒子とGeナノ粒子との組合せを用いてナノ構造材料を形成することが可能である。Siナノ粒子とGeナノ粒子との組合せは、それらの好ましいバンドオフセットゆえに望ましい場合がある。図5は、本発明の実施形態に従って形成されたSiナノ粒子とGeナノ粒子との間で発生させることが可能なバンドオフセットを示している。図5はさらに、バルクSiおよびバルクGeの間で発生させることが可能なバンドオフセットを基準として示している。一般に、Siナノ粒子とGeナノ粒子との間のイオン化ポテンシャルの差が、Geナノ粒子に向かって優先的に分離される正孔になる。バルクSiおよびバルクGeの電子親和力は、同等であってよい。しかしながら、量子閉じ込め効果を利用して、Siナノ粒子とGeナノ粒子との間に電子親和力の差を与えることが可能である。適度に量子閉じ込めされたGeナノ粒子(例えば、適度なサイズのGe量子ドット)との組合せで用いられる、弱く量子閉じ込めされたSiナノ粒子(例えば、大きなSi量子ドット)は、Siナノ粒子がGeナノ粒子より大きな電子親和力およびイオン化ポテンシャルを有するナノ構造材料を与えることが可能である。結果として、電子は、Siナノ粒子から形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送され、正孔は、Geナノ粒子から形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。
【0073】
[0081]別の例として、ドープSiナノ粒子とドープGeナノ粒子との組合せを用いてナノ構造材料を形成することが可能である。さらに、Siナノ粒子から形成されたナノネットワークをドープし、Geナノ粒子から形成されたナノネットワークをドープすることによってナノ構造材料を形成することが可能である。この場合、電子は、n型ナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能であり、正孔は、p型ナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。ドープ材料と非ドープ材料との組合せ(例えば、Siナノ粒子から形成されたドープナノネットワークと、Geナノ粒子から形成された非ドープナノネットワークとの組合せ)を用いることも可能である。
【0074】
[0082]別の例として、チタニアまたはTiOナノ粒子と、Siナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せを用いてナノ構造材料を形成することが可能である。これらのナノ粒子を融合または相互連結させて、相互分散しているか、相互浸透しているか、融合しているか、相互連結しているか、または互いに重なり合っているナノネットワークを形成することが可能である。TiOナノ粒子と、Siナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せは、それらの好ましいバンドオフセットゆえに望ましい場合がある。図6は、本発明の実施形態に従って形成されたTiOナノ粒子、Siナノ粒子、およびGeナノ粒子の間で発生させることが可能なバンドオフセットを示している。図6はさらに、TiOナノ粒子、バルクSi、およびバルクGeの間で発生させることが可能なバンドオフセットを基準として示している。一般に、TiOナノ粒子は、Siナノ粒子およびGeナノ粒子より大きな電子親和力およびイオン化ポテンシャルを有する。結果として、電子は、TiOナノ粒子から形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送され、正孔は、Siナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかから形成されたナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。TiOナノ粒子と、Siナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せはさらに、TiOナノ粒子の、電子を効果的に移送する能力を利用するためにも望ましい。他の金属酸化物(WO、ZnO、SnO、SnO、NiOなど)から形成されたナノ粒子を、TiOナノ粒子の代わりに、またはTiOナノ粒子と組み合わせて使用することが可能であることも想定される。
【0075】
[0083]さらに別の例として、ナノポーラスSiまたはナノポーラスGeとSiナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せ、ZnSeとSiナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せ、GaAsとSiナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せ、またはマトリックスとSiナノ粒子およびGeナノ粒子のいずれかまたは両方との組合せを用いてナノ構造材料を形成することも可能である。
【0076】
浸透限界
[0084]前述のように、浸透限界にあるナノ構造材料の少なくとも一部が非連続構成を有する。場合によっては、ナノ構造材料を形成するナノ粒子の少なくとも部分集合が、離散的であるか、融合または相互連結していないか、融合または相互連結している程度が低い。例えば、ナノ構造材料は、いくらかの濃度または数密度でマトリックス内に分散しているナノ粒子の集合を含むことが可能である。このナノ粒子の集合は、1つまたは複数の種類のナノ粒子を含むことが可能である。マトリックスの性質は、巨視的、微視的、または超微視的(ナノスケール)であることが可能である。巨視的マトリックスの例として、バルクポリマー(例えば、バルク有機ポリマーおよびバルク無機ポリマーなど)やバルク半導体材料がある。微視的マトリックスまたは超微視的マトリックスの例として、小分子(有機小分子および無機小分子など)、オリゴマー(有機オリゴマーおよび無機オリゴマーなど)、ポリマー主鎖(有機および無機ポリマー主鎖、ナノ粒子など)、およびナノ粒子と結合された表面配位子がある。ナノ構造材料を、単一成分膜のような単一材料の膜として、または複数成分膜のような複数材料の膜として形成することが可能である。
【0077】
[0085]特定の種類の電荷キャリアがナノ粒子またはマトリックスのいずれかに向かって優先的に分離および移送されることが可能であるように、ナノ粒子とマトリックスとの間の境界またはその近くで電荷分離を発生させることが可能である。場合によっては、電子は、ナノ粒子に向かって優先的に分離および移送され、正孔は、マトリックスに向かって優先的に分離および移送されることが可能である。また、場合によっては、電子は、マトリックスに向かって優先的に分離および移送され、正孔は、ナノ粒子に向かって優先的に分離および移送されることが可能である。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるように、いくつかの特性(例えば、電子親和力、イオン化ポテンシャル、電荷キャリア移動度、抵抗率など)に基づいて、ナノ粒子およびマトリックスを選択することが可能である。例えば、電子が、最大電子親和力を有する成分に向かって優先的に分離および移送され、正孔が、最小イオン化ポテンシャルを有する成分に向かって優先的に分離および移送されることが可能であるように、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差に基づいて、ナノ粒子およびマトリックスを選択することが可能である。マトリックス内のナノ粒子の構成が離散的であることから、ナノ粒子が浸透閾値に到達するためには、ナノ粒子の濃度または数密度が比較的高いことが望ましく、それによって、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。一般に、浸透限界における電荷キャリア移送は、ホッピング機構またはトンネリング機構を介して、1つのナノ粒子から別のナノ粒子へと行われる。マトリックスの性質が微視的または超微視的である場合も、マトリックス内の電荷キャリア移送は、ホッピング機構またはトンネリング機構を介して、マトリックスの1つの成分からマトリックスの別の成分へと行われることが可能である。したがって、マトリックスの成分が浸透閾値に到達するためには、マトリックスの成分の濃度または数密度が比較的高いことが望ましい。
【0078】
[0086]浸透限界またはその近くにあるナノ構造材料は、以下に示すようないくつかの方法を用いて形成可能である。
1.ナノ粒子が、1つの種類の電荷キャリアを移送し、マトリックスが相補的な種類の電荷キャリアを移送するように、ナノ粒子を溶質としてマトリックス内に分散させること。
2.ナノ粒子を、表面配位子を介してマトリックスと連結すること。
a.任意選択で、ナノ粒子を溶質としてマトリックス内に分散させることが可能である。
3.異なる種類のナノ粒子を混合して、1つの種類のナノ粒子を溶質として機能させ、もう1つの種類のナノ粒子を超微視的マトリックスとして機能させること。
a.混合するナノ粒子は何種類あってもよい。
b.ナノ粒子の少なくとも部分集合を、ある程度まで融合または相互連結させることが可能である。
i.ナノ粒子の部分集合が、ある程度まで融合または相互連結している。
ii.ナノ粒子の部分集合が、融合または相互連結していない。
iii.上記の組合せ。
4.ナノ粒子をポリマー主鎖と連結して、超微視的マトリックスとして機能させること。
5.表面配位子を介してナノ粒子を互いに連結し、超微視的マトリックスとして機能させること。
6.ナノ粒子の固体(例えば、量子ドットの固体や、量子ドットの超格子など)を形成すること。
【0079】
[0087]例えば、図7に示すように、ナノ粒子(例えば、ナノ粒子702および704)をマトリックス706内の溶質として分散させることにより、ナノ構造材料700を形成することが可能である。実効的な電荷分離が行われるように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの差、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差、またはドーピングの差に基づいて、ナノ粒子およびマトリックス706を選択することが可能である。マトリックス706を形成できる材料の例として、以下のものがある。
1.無機材料(ドープまたは非ドープ無機半導体材料、無機ポリマー、無機オリゴマー、無機分子(例えば、供与体/受容体(「D/A」)無機分子)など)
2.有機材料(ドープまたは非ドープ有機半導体材料、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機分子(例えば、D/A有機分子)など)
3.金属
4.金属酸化物(ドープまたは非ドープ金属酸化物など)
5.誘電体材料
6.ガラス
7.セラミック
8.上記の組合せ
【0080】
[0088]表面配位子をナノ粒子の表面と共有結合または非共有結合させて、いくつかの機能を実施させることが可能である。表面配位子によって実施可能な機能の1つは、マトリックス内のナノ粒子の溶解度を高めることである。マトリックスと同等の特性を有する表面配位子を適切に選択することにより、ナノ粒子の溶解度を高めることができ、それによって、マトリックス内のナノ粒子の濃度または数密度を高めることが可能になる。表面配位子によって実施可能な別の機能は、ナノ粒子とマトリックスとの間の境界またはその近くでの電荷キャリアの分離を支援することである。最初に、ナノ粒子内またはマトリックス内で電荷キャリアを発生させることが可能である。化学特性、電子特性、物理特性などの諸特性に基づいて表面配位子を適切に選択することにより、ナノ粒子の表面と表面配位子との間の界面領域またはその近くに接合を形成して、電荷分離を促進することが可能である。そのような接合は、例えば、p−n接合またはD/A界面に相当することが可能である。表面配位子は、接合を形成することに加えて、電荷キャリアを空間的に分離してそれらの再結合を低減または阻止するための、ナノ粒子とマトリックスとの間の中間領域として機能することも可能である。例えば、表面配位子は、一方の種類の電荷キャリアをナノ粒子から空間的に離してマトリックスに移送することによって電荷分離を促進することが可能である。別の例として、表面配位子は、もう一方の種類の電荷キャリアをマトリックスから空間的に離してナノ粒子に移送することによって電荷分離を促進することが可能である。同様に、前述の様々な機能を実施させるようにナノ粒子のシェルを選択することが可能である。
【0081】
[0089]別の例として、ナノ構造材料を、異なる種類のナノ粒子を含む膜として形成することが可能であり、その異なる種類のナノ粒子は、それぞれのナノネットワークを膜内に形成することが可能である。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるようにするために、相補的な種類の電荷キャリアがそれぞれのナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されるように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの差、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差、またはドーピングの差に基づいて、異なる種類のナノ粒子を選択することが可能である。
【0082】
[0090]別の例として、1つの種類のナノ粒子が溶質として機能し、もう1つの種類のナノ粒子が超微視的マトリックスとして機能するように、異なる種類のナノ粒子を混合することが可能である。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの差、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差、またはドーピングの差に基づいて、異なる種類のナノ粒子を選択することが可能である。場合によっては、結果として得られる混合物を、例えば、加熱焼結処理または低温焼結処理して、超微視的マトリックスとして機能するナノ粒子がほぼ全密度まで融合し、溶質として機能するナノ粒子が融合しないか低い程度で融合するようにできる。
【0083】
[0091]別の例として、ナノ粒子間の化学結合、ナノ粒子と結合した表面配位子間の化学結合、ナノ粒子間、またはナノ粒子と結合した表面配位子間の電気化学的相互作用、ナノ粒子間、またはナノ粒子と結合した表面配位子間のD/A相互作用、様々な種類の電界または磁界、またはこれらの組合せを介して、ナノ粒子を相互連結させることが可能である。具体的には、ナノ粒子は、表面配位子またはポリマー主鎖を介して相互連結することが可能である。場合によっては、ナノ粒子は、表面配位子を介してポリマー主鎖と連結することが可能である。1つの種類の電荷キャリアが表面配位子またはポリマー主鎖を介して移送され、相補的な種類の電荷キャリアがホッピング機構またはトンネリング機構を介して、1つのナノ粒子から別のナノ粒子へと移送されることが可能である。しかしながら、両方の種類の電荷キャリアの電荷キャリア移送を表面配位子またはポリマー主鎖を介して行わせることが可能であり、それによって、実効性が劣る移送機構(ホッピング機構やトンネリング機構)を頼りにしない、実効的な電荷キャリア移送が可能になることが想定される。表面配位子またはポリマー主鎖の特定の特性(長さや共役の程度など)が電荷分離および電荷キャリア移送に影響を及ぼす場合がある。したがって、表面配位子またはポリマー主鎖を、化学特性、電子特性、および物理特性に基づいて適切に選択することによって、電荷分離および電荷キャリア移送を強化することが可能である。例えば、電荷移送分子種、D/A分子種、または共役分子種を表面配位子として選択したり、導電ポリマーをポリマー主鎖として選択したりできる。
【0084】
[0092]さらに別の例として、サイズの異なるナノ粒子の層を、マトリックスを用いるか用いないで、連続的に形成することが可能である。具体的には、1つの層を特定サイズのナノ粒子から形成し、もう1つの層を別のサイズのナノ粒子から形成することが可能である。そのようにして、結果として得られる膜に光エネルギーが浸透する際に、入射光スペクトルの別々の部分を別々の層に吸収させることが可能である。場合によっては、入射光エネルギーが最初に、最大エネルギーを吸収するナノ粒子(例えば、最小サイズのナノ粒子)から形成された層に到達し、その後に、その次に大きなエネルギーを吸収するナノ粒子(例えば、その次にサイズが小さいナノ粒子)から形成された層に到達するように、各層を形成することが可能である。そのようにして、各層が、それぞれのバンドギャップエネルギーに近いエネルギーを有する入射光スペクトルの部分を主として吸収し、それによって、上述のバンドギャップ吸収と、それぞれに関連する、入射光エネルギーから有効な電気エネルギーへの変換における非効率(例えば、熱電荷キャリア弛緩)とを低減する。
【0085】
連続限界
[0093]前述のように、連続限界にあるナノ構造材料は連続構成を有する。有利なことに、ナノ構造材料の連続構成は、電極間に連続的な導電パスを提供し、それによって、実効性が劣る移送機構(ホッピング機構やトンネリング機構)を頼りにしない、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。具体的には、この連続的な導電パスは、帯状の導通が生ずることを可能にすることができる。場合によっては、ナノ構造材料は、少なくとも1つのナノネットワークを含み、そのナノネットワークを形成するナノ粒子の集合は、少なくともある程度まで融合または相互連結する。そのナノネットワークは、任意の数の他のナノネットワークと相互分散するか、相互浸透するか、融合するか、相互連結するか、重なり合うことが可能である。また、場合によっては、ナノ構造材料は、少なくとも1つのナノネットワークを含み、そのナノネットワークを形成するナノ粒子の集合は空間的に延びている。そのナノネットワークは、任意の数の他のナノネットワークと相互分散するか、相互浸透するか、融合するか、相互連結するか、重なり合うことが可能である。
【0086】
[0094]連続限界またはその近くにあるナノ構造材料は、以下に示すようないくつかの方法を用いて形成可能である。
1.1つの種類のナノ粒子(例えば、Siナノ粒子またはGeナノ粒子)を融合または相互連結させてナノネットワークを形成し、任意選択で、そのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
2.2つの種類のナノ粒子(例えば、Siナノ粒子およびGeナノ粒子)を融合または相互連結させること。
a.1つのナノネットワークをSiナノ粒子から形成し、もう1つのナノネットワークをGeナノ粒子から形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
b.Siナノ粒子およびGeナノ粒子から混合ナノネットワークを形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
c.SiGeなどの合金から混合ナノネットワークを形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
3.2つの種類のナノ粒子(例えば、TiOナノ粒子とSiナノ粒子またはGeナノ粒子)を融合または相互連結させること。
a.1つのナノネットワークをTiOナノ粒子から形成し、もう1つのナノネットワークをSiナノ粒子またはGeナノ粒子から形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
b.TiOナノ粒子とSiナノ粒子またはGeナノ粒子とから混合ナノネットワークを形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
c.合金から混合ナノネットワークを形成し、任意選択で、それらのナノネットワークをマトリックスと相互分散させること。
4.3つ以上の種類のナノ粒子(例えば、TiO2ナノ粒子、Siナノ粒子、Geナノ粒子など)を融合または相互連結させてナノネットワークの集合を形成し、任意選択で、それらのナノネットワークの集合をマトリックスと相互分散させること。
【0087】
[0095]例えば、最初は融合または相互連結していなかったナノ粒子からナノ構造材料を形成することが可能である。場合によっては、それらのナノ粒子は、量子閉じ込め効果を利用することによって設計可能な特性を有する。有利なことに、結果として得られるナノ構造材料は、いくつかの望ましい特性を有することが可能であり、そのような特性として、例えば、実効的な光吸収、実効的な電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップの低減、実効的な電荷キャリア移送などがある。そのナノ構造材料は、ナノ粒子を融合または相互連結させてナノネットワークの集合を形成することによって形成可能である。融合または相互連結の程度は、(例えば、ほとんどまたはまったく融合または相互連結していない程度から、完全に融合または相互連結している程度まで)広い範囲にわたって変わりうる。有利なことに、融合または相互連結の程度は、用途ごとに制御可能であり、ナノ構造材料の特定の特性(例えば、化学特性、光学特性、電子特性、物理特性など)を決定することが可能である。ナノ構造材料を、単一成分膜のような単一材料の膜として、または複数成分膜のような複数材料の膜として形成することが可能である。複数成分の膜の場合は、様々な材料から形成されたナノネットワークが、相互分散したり、相互浸透したり、融合したり、相互連結したり、互いに重なり合ったりすることが可能である。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるようにするために、相補的な種類の電荷キャリアがそれぞれのナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されるように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの差、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差、またはドーピングの差に基づいて、様々な材料を選択することが可能である。
【0088】
[0096]ナノ粒子を融合または相互連結させるには、いくつかの方法を用いる。例えば、エネルギーをナノ粒子に印加することによって、ナノ粒子を融合させることが可能である。印加可能なエネルギーの形態としては、例えば、(例えば、加熱焼結を介する)熱エネルギー、(例えば、低温焼結または圧力を介する)機械的エネルギー、電気エネルギー、(例えば、光波、電波、またはマイクロ波の形の)電磁エネルギー、磁気エネルギー、(例えば、音波または超音波の形の)振動エネルギー、(例えば、表面張力または毛管力に基づく)表面エネルギー、およびこれらの組合せがある、融合の程度は、いくつかのパラメータに基づいて制御可能であり、そのようなパラメータとしては、印加されるエネルギーの形態、エネルギー源の数、印加されるエネルギーの大きさ、エネルギーの印加方法、エネルギーが印加される継続時間などがある。
【0089】
[0097]単一成分膜の場合は、同じ材料から形成されたナノ粒子が様々な条件下で融合することが可能である。例えば、加熱焼結の場合は、同じ材料から形成され、サイズの異なるナノ粒子が、様々な温度(または、様々な焼結継続時間)で融合することが可能である。最高温度(または最長焼結継続時間)で融合したナノ粒子が、基板上に最初に堆積し、加熱焼結されてポーラス構造物を形成することが可能である。次に高い温度(または次に長い焼結継続時間)で融合するナノ粒子が、そのポーラス構造物の上または中に続いて堆積することが可能であり、その後に堆積するナノ粒子がそのポーラス構造物に浸透することが可能である。場合によっては、続いて堆積するナノ粒子を、ポーラス構造物への浸透を促進するためにコロイド形態で与えることが可能であり、溶媒が存在すれば、それを、例えば加熱によって除去することが可能である。続いて堆積したナノ粒子が浸透したポーラス構造物は、加熱焼結されることによって、そのポーラス構造物内で、続いて堆積したナノ粒子を互いに融合させることが可能である。さらに、加熱焼結により、続いて堆積したナノ粒子をポーラス構造物と融合させることが可能である。用途によっては、続いて堆積したナノ粒子がポーラス構造物内で「全密度」まで完全に融合するように、加熱焼結を実施することが可能である。具体的には、続いて堆積したナノ粒子を、ポーラス構造物内で完全に溶解することが可能である。結果として得られるナノ構造材料は、完全に溶解しているナノ粒子に相当するマトリックスと相互分散しているポーラス構造物に相当するナノネットワークを含む。有利なことに、そのマトリックスは、実効的な電荷キャリア移送を可能にする連続的な導電パスを提供することが可能である。
【0090】
[0098]複数成分膜の場合は、膜を形成する様々な材料が様々な条件下で融合することが可能である。例えば、加熱焼結の場合は、異なる材料から形成されたナノ粒子が、様々な温度(または、様々な焼結継続時間)で融合することが可能である。単一成分膜に関して前述したことと同様に、最高温度(または最長焼結継続時間)で融合するナノ粒子が、基板上に最初に堆積し、加熱焼結されてポーラス構造物を形成することが可能である。連続的により低い温度(またはより短い焼結継続時間)で融合するナノ粒子が、そのポーラス構造物の上または中に続いて堆積することが可能であり、その後に堆積するナノ粒子がそのポーラス構造物に浸透することが可能である。続いて堆積したナノ粒子が浸透したポーラス構造物は、加熱焼結されることによって、そのポーラス構造物内で、続いて堆積したナノ粒子を互いに融合させることが可能である。さらに、加熱焼結により、続いて堆積したナノ粒子をポーラス構造物と融合させることが可能である。用途によっては、続いて堆積したナノ粒子がポーラス構造物内で「全密度」まで完全に融合するように、加熱焼結を実施することが可能である。
【0091】
[0099]複数成分膜を形成する過程では、膜を形成する様々な材料を融合させて混合ナノネットワークを形成することが可能である。例えば、Siナノ粒子およびGeナノ粒子を混合および融合させて、SiGeのような合金の混合ナノネットワークを形成することが可能である。合金は、ナノネットワーク間の境界においても形成可能である。様々な材料を融合させることにより、結果として得られる混合ナノネットワークおよび結果として得られる複数成分膜の特性を望ましいものにすることが可能である。
【0092】
[00100]用途によっては、有機材料などのマトリックスを、融合しているナノ粒子から形成したポーラス構造物の上または中に堆積させて、マトリックスをポーラス構造物に浸透させることが可能である。場合によっては、マトリックスを溶剤に溶かしてポーラス構造物への浸透を促進することが可能であり、存在する溶剤を、例えば加熱によって、除去することが可能である。結果として得られるナノ構造材料は、マトリックスと相互分散しているポーラス構造物に相当するナノネットワークを含む。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるようにするために、一方の種類の電荷キャリアがナノネットワークに向かって優先的に分離および移送され、もう一方の種類の電荷キャリアがマトリックスに向かって優先的に分離および移送されるように、マトリックスを選択することが可能である。有利なことに、そのマトリックスは、実効的な電荷キャリア移送を可能にする連続的な導電パスを提供することが可能である。
【0093】
[00101]ナノ粒子間の化学結合、ナノ粒子と結合した表面配位子間の化学結合、ナノ粒子間、またはナノ粒子と結合した表面配位子間の電気化学的相互作用、ナノ粒子間、またはナノ粒子と結合した表面配位子間のD/A相互作用、様々な種類の電界または磁界、およびこれらの組合せを介して、ナノ粒子を相互連結させることが可能である。具体的には、ナノ粒子は、表面配位子またはポリマー主鎖を介して相互連結することが可能である。場合によっては、ナノ粒子は、表面配位子を介してポリマー主鎖と連結することが可能である。相補的な種類の電荷キャリアの電荷キャリア移送を表面配位子またはポリマー主鎖を介して行わせることが可能であり、それによって、実効性が劣る移送機構(ホッピング機構やトンネリング機構)を頼りにしない、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。表面配位子またはポリマー主鎖の特定の特性(長さや共役の程度など)が電荷分離および電荷キャリア移送に影響を及ぼす場合がある。したがって、表面配位子またはポリマー主鎖を、それらの化学特性、電子特性、および物理特性に基づいて適切に選択することによって、電荷分離および電荷キャリア移送を強化することが可能である。例えば、電荷移送分子種、D/A分子種、または共役分子種を表面配位子として選択したり、導電ポリマーをポリマー主鎖として選択したりできる。別の例として、ナノ粒子の表面またはその近くにおける電荷キャリアの分離を支援するように表面配位子を選択することが可能である。化学特性、電子特性、物理特性などの諸特性に基づいて表面配位子を適切に選択することにより、ナノ粒子の表面と表面配位子との間の界面領域またはその近くに接合を形成して、電荷分離を促進することが可能である。そのような接合は、例えば、p−n接合またはD/A界面に相当することが可能である。表面配位子は、接合を形成することに加えて、電荷キャリアを空間的に分離してそれらの再結合を低減または阻止するための中間領域として機能することも可能である。
【0094】
[00102]別の例として、空間的に延びているポーラス構造物からナノ構造材料を形成することが可能である。有利なことに、そのようなポーラス構造物は連続的な導電パスを提供し、それによって、ナノ粒子を融合または相互連結させなくてよい、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。そのようなポーラス構造物の例として、ナノポーラスSiやナノポーラスGeなどの、ナノポーラス半導体材料から形成されたポーラス構造物がある。単一成分膜および複数成分膜に関して前述したことと同様に、より低い温度(またはより短い焼結継続時間)で融合するナノ粒子が、そのポーラス構造物の上または中に続いて堆積することが可能であり、その後に堆積するナノ粒子がそのポーラス構造物に浸透することが可能である。代替として、または組合せで、有機材料などのマトリックスを、ポーラス構造物の上または中に堆積させて、マトリックスをポーラス構造物に浸透させることが可能である。例えば、いくつかの従来の方法のいずれかを用いてナノポーラスSiを形成することが可能である。ナノポーラスSiは、Siウェハ上の膜として形成可能である。ナノポーラスSiの孔または空胞にGeナノ粒子のコロイド懸濁系を与えて浸透させることが可能であり、これは、例えば、コロイド懸濁系をナノポーラスSiに廻しかけるか吹き付けること、またはナノポーラスSiをコロイド懸濁系の中に浸すことによって可能である。存在する溶剤は、例えば加熱によって、除去することが可能である。次に、そのナノポーラスSiの中でGeナノ粒子を融合または相互連結させることが可能であり、これは、例えば、加熱焼結すること、または表面配位子を介してGeナノ粒子を相互連結させることによって可能である。
【0095】
[00103]別の例として、「犠牲」鋳型を用いてナノ構造材料を形成することが可能である。具体的には、「犠牲」鋳型として機能する「犠牲」ポーラス構造物を用いてナノ構造材料を形成することが可能である。場合によっては、ナノ粒子の「犠牲」集合を融合させることによって「犠牲」ポーラス構造物を形成することが可能である。単一成分膜および複数成分膜に関して前述したことと同様に、ナノ粒子が、その「犠牲」ポーラス構造物の上または中に続いて堆積することが可能であり、その後に堆積するナノ粒子がその「犠牲」ポーラス構造物に浸透することが可能である。次に、その「犠牲」ポーラス構造物内で、続いて堆積したナノ粒子を互いに融合または相互連結させることが可能である。「犠牲」ポーラス構造物は、例えば、エネルギーの印加、あるいは、化学的または機械的手段によって除去することが可能である。
【0096】
[00104]別の例として、空間的に延びているナノ粒子からナノ構造材料を形成することが可能である。有利なことに、そのようなナノ粒子は連続的な導電パスを提供し、それによって、ナノ粒子を融合または相互連結させなくてよい、実効的な電荷キャリア移送が可能になる。例えば、ナノ構造材料は、実効的な電荷キャリア移送の方向にほぼ並べられたナノロッド、ナノコラム、ナノチューブ、または量子細線の配列として形成されたナノネットワークを含むことが可能である。この方向は、一般に、ナノ粒子が堆積する基板に垂直である。ナノ構造材料は、単一成分膜のような単一材料の膜として、または複数成分膜のような複数材料の膜として形成することが可能である。複数成分の膜の場合は、様々な材料から形成されたナノネットワークが、相互分散したり、相互浸透したり、融合したり、相互連結したり、互いに重なり合ったりすることが可能である。実効的な電荷分離および電荷キャリア移送が行われるようにするために、相補的な種類の電荷キャリアがそれぞれのナノネットワークに向かって優先的に分離および移送されるように、HOMOおよびLUMOエネルギーレベルの差、電子親和力およびイオン化ポテンシャルの差、またはドーピングの差に基づいて、様々な材料を選択することが可能である。前述したことと同様に、より低い温度(またはより短い焼結継続時間)で融合するナノ粒子が、空間的に延びているナノ粒子から形成されたナノネットワークの上または中に続いて堆積することが可能であり、その後に堆積するナノ粒子がそのナノネットワークに浸透することが可能である。場合によっては、続いて堆積するナノ粒子も空間的に延びることが可能である。代替として、または組合せで、有機材料などのマトリックスを、ナノネットワークの上または中に堆積させて、マトリックスをナノネットワークに浸透させることが可能である。
【0097】
[00105]さらに別の例として、サイズの異なるナノ粒子の層を、マトリックスを用いてまたは用いないで、連続的に形成することが可能である。具体的には、1つの層を、特定サイズのナノ粒子を融合させるか相互連結させて形成し、もう1つの層を、別のサイズのナノ粒子を融合させるか相互連結させて形成することが可能である。結果として得られる膜の連続する層を、互いに融合させるか相互連結させることが可能である。場合によっては、入射光エネルギーが最初に、最大のエネルギーを吸収するナノ粒子(例えば、最小サイズのナノ粒子)から形成された層に到達し、その後に、連続的により低いエネルギーを吸収するナノ粒子(例えば、連続的にサイズがより大きいナノ粒子)から形成された層に到達するように、各層を形成することが可能である。そのようにして、結果として得られる膜に光エネルギーが浸透する際に、入射光スペクトルの別々の部分を別々の層に吸収させることが可能である。さらに、各層が、それぞれのバンドギャップエネルギーに近いエネルギーを有する入射光エネルギーの部分を主として吸収することが可能であり、それによって、上述のバンドギャップ吸収と、それぞれに関連する、入射光エネルギーから有効な電気エネルギーへの変換における非効率(例えば、熱電荷キャリア弛緩)とを低減する。
【0098】
光起電力素子
[00106]本発明の特定の実施形態は、本明細書で示すナノ構造材料を用いて形成される、光起電力素子のような光電子デバイスに関する。有利なことに、ナノ構造材料の構成を設計することによって、いくつかの望ましい特性を促進することが可能であり、光起電力素子の場合には、例えば、実効的な光吸収、実効的な電荷分離、電荷キャリアの再結合およびトラップの低減、電荷キャリアの実効的な移送および収集などを促進することが可能である。当業者であれば理解されるように、光起電力素子の変換効率の1つの指標が短絡電流密度である。有利なことに、本発明のいくつかの実施形態による光起電力素子は、約20mA/cmより大きいか(例えば、約20mA/cmから約100mA/cmであるか)、少なくとも約25mA/cmであるか(例えば、約25mA/cmから約100mA/cmであるか)、少なくとも約30mA/cmであるか(例えば、約30mA/cmから約100mA/cmであるか)、少なくとも約40mA/cmであるか(例えば、約40mA/cmから約100mA/cmであるか)、少なくとも約50mA/cmであるか(例えば、約50mA/cmから約100mA/cmであるか)、または少なくとも約60mA/cmである(例えば、約60mA/cmから約100mA/cmである)短絡電流密度を与えることが可能である。
【0099】
[00107]本発明の各種実施形態による光起電力素子は、以下に示すようないくつかの構成により形成可能である。
1.金属−絶縁体−金属(「MIM」)
2.金属−半導体−金属(「MSM」)
3.P型半導体−絶縁体−N型半導体(「PIN」)
4.P型半導体−半導体−N型半導体(「PSN」)
5.金属−絶縁体−N型半導体(「MIN」)
6.金属−半導体−N型半導体(「MSN」)
7.P型半導体−絶縁体−金属(「PIM」)
8.P型半導体−半導体−金属(「PSM」)
上述の構成において、ナノ構造材料は、絶縁体または半導体として機能することが可能である。
【0100】
[00108]本発明の各種実施形態による光起電力素子は、単一成分の光起電力素子、または複数成分の光起電力素子として形成可能である。単一成分の光起電力素子は、光活性材料として機能するナノ構造材料を含み、単一成分膜として形成される。単一成分の光起電力素子の一例は、Siナノ粒子またはGeナノ粒子から形成された単一成分膜を含む光起電力素子である。太陽エネルギー利用の場合は、バンドギャップエネルギーが約1.1eVから約1.6eV(例えば、1.4eVまたはその近辺)である単一成分膜を用いて、望ましいレベルの効率を得ることが可能である。複数成分の光起電力素子は、光活性材料として機能するナノ構造材料を含み、複数成分膜として形成される。複数成分の光起電力素子の一例は、ヘテロ接合または複数のバンドギャップエネルギーを用いて形成された複数成分膜を含む光起電力素子である。ヘテロ接合またはバンドギャップエネルギーの設計次第で、複数成分膜は、より広い範囲の入射光スペクトルが有効な電気エネルギーに効率的に変換されることが可能になるように、実効的な光吸収を可能にすることができる。
【0101】
[00109]図8は、本発明の実施形態による光起電力素子800を示している。具体的には、図8は、光起電力素子800の分解斜視図および組立斜視図を示している。光起電力素子800は、電極802および804の対と、電極802および804の間に位置するナノ構造材料806とを含む。図示した実施形態では、光起電力素子800はさらにカバー808を含み、カバー808は、ほぼ透明であって、光起電力素子800の各成分を使用中に保護するよう機能する。
【0102】
[00110]図示した実施形態では、電極802は、ほぼ透明であって、ナノ構造材料806の上方に位置し、入射光エネルギーを直接受ける。一方、電極804は、ナノ構造材料806の下方に位置し、基板として機能する。電極802および804は、同じ材料からでも異なる材料からでも形成可能である。電極802および804の形成に用いることが可能な材料の例として、以下のものがある。
1.導電率が比較的高い無機材料(ドープまたは非ドープ無機半導体材料、無機ポリマー、無機オリゴマー、無機分子など)
2.導電率が比較的高い有機材料(ドープまたは非ドープ有機半導体材料、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機分子など)
3.金属
4.金属酸化物(ドープまたは非ドープ金属酸化物など)
5.上記の組合せ
【0103】
[00111]ナノ構造材料806は、光活性材料として機能し、電子移送ナノネットワーク810および正孔移送ナノネットワーク812を含む。図示した実施形態では、電子移送ナノネットワーク810は、融合または相互連結しているSiナノ粒子の集合から形成され、正孔移送ナノネットワーク812は、融合または相互連結しているGeナノ粒子の集合から形成される。電子移送ナノネットワーク810を形成するSiナノ粒子の融合または相互連結の程度は、ほとんどまたはまったく融合または相互連結していない程度から、完全に融合または相互連結している程度まで、広い範囲で変化する可能性がある。同様に、正孔移送ナノネットワーク812を形成するGeナノ粒子の融合または相互連結の程度も、ほとんどまたはまったく融合または相互連結していない程度から、完全に融合または相互連結している程度まで、広い範囲で変化する可能性がある。
【0104】
[00112]電極802および804を形成する材料、ならびにナノ構造材料806は、電極802および804のフェルミ準位が電子移送ナノネットワーク810のLUMOエネルギーレベル、ならびに正孔移送ナノネットワーク812のHOMOエネルギーレベルに対して適切に並ぶように選択されることが望ましい。場合によっては、電極802のような正孔収集電極のフェルミ準位が、正孔移送ナノネットワーク812のHOMOエネルギーレベルとほぼ並び、電極804のような電子収集電極のフェルミ準位が、電子移送ナノネットワーク810のLUMOエネルギーレベルとほぼ並ぶ。
【0105】
[00113]光起電力素子800の動作時には、ナノ構造材料806が入射光エネルギーを吸収して、電荷キャリアを、例えば、電子正孔対または励起子の形で発生させる。電子は、電子移送ナノネットワーク810内を移送され、電極804を通ってナノ構造材料806から出る。一方、正孔は、正孔移送ナノネットワーク812内を移送され、電極802を通ってナノ構造材料806から出る。正味の効果は、入射光エネルギーによって駆動された光起電力素子800から流れる電流であり、この電流が外部負荷に送られて有効な仕事を実施することが可能である。
【0106】
[00114]前述の、本発明の各実施形態は、例示的として与えられたものであって、他の様々な実施形態が本発明に包含されることを理解されたい。例えば、本発明のいくつかの実施形態は、光起電力素子に関して記載されているが、本明細書に記載のナノ構造材料は、他の光電子デバイス(例えば、光導電体、光検出器、LED、レーザ、および他の、動作中に光子および電荷キャリアを伴うデバイス)にも含まれうることが想定されている。
【0107】
[00115]当業者であれば、本明細書の記載のナノ構造材料および光起電力素子の開発についての補足的な説明を必要としないであろうが、それでも、参照によって開示のすべてが本明細書に組み込まれているLeeらの特許(米国特許第6710366号、件名「Nanocomposite Materials with Engineered Properties」、2004年3月23日発行)、Leeらの特許(米国特許第6794265号、件名「Methods of Forming Quantum Dots of Group IV Semiconductor Materials」、2004年9月21日発行)、およびLeeらの特許(米国特許第6819845号、件名「Optical Devices with Engineered Nonlinear Nanocomposite Materials」、2004年11月16日発行)を参照されれば、何らかの有益な手がかりが得られるであろう。また、当業者であれば、参照によって開示のすべてが本明細書に組み込まれているLeeの特許出願(米国特許出願第10/212001号(米国特許出願公開第2003/0066998号)、件名「Quantum Dots of Group IV Semiconductor Materials」、2002年8月2日出願)、ならびにLeeらの特許出願(米国特許出願第10/212002号、件名「Quantum Dots, Nanocomposite Materials with Quantum Dots, Devices with Quantum Dots, and Related Fabrication Methods」、2002年8月2日出願)を検討することによりさらに何らかの有益な手がかりが得られるであろう。
【0108】
[00116]本発明を、その特定の実施形態に関して記載してきたが、当業者であれば、添付の特許請求項で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であること、ならびに等価物との置換が可能であることを理解されよう。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、またはプロセスを本発明の目的、趣旨、および範囲に適合させるために、様々な修正を施すことが可能である。そのような修正はすべて、添付の特許請求項の範囲に含まれるものとする。特に、本明細書で開示される方法を、特定の順序で実施される特定の操作に関して記載してきたが、これらの操作を組み合わせたり、細分したり、並べ替えたりして、本発明の教示から逸脱しない、等価な方法を形成することが可能であることが理解されよう。したがって、本明細書において特に断らない限り、操作の順序およびグループ分けは、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態による、相互浸透している2つのナノネットワークを含むナノ構造材料を示す図である。
【図2A】本発明の実施形態による、2つのナノネットワークを形成するナノ粒子の間で発生させることが可能な、様々なタイプのバンドオフセットの一つを示す図である。
【図2B】本発明の実施形態による、2つのナノネットワークを形成するナノ粒子の間で発生させることが可能な、様々なタイプのバンドオフセットの一つを示す図である。
【図2C】本発明の実施形態による、2つのナノネットワークを形成するナノ粒子の間で発生させることが可能な、様々なタイプのバンドオフセットの一つを示す図である。
【図3】本発明の実施形態による、光ルミネセンス減衰速度を光ルミネセンスエネルギーの関数としてプロットした図である。
【図4】太陽光スペクトルと、バルクSi、バルクGe、および本発明の実施形態に従って形成されたGeナノ粒子による、この太陽光スペクトルの吸収を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に従って形成されたSiナノ粒子とGeナノ粒子との間で発生させることが可能なバンドオフセットを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従って形成されたTiOナノ粒子、Siナノ粒子、およびGeナノ粒子の間で発生させることが可能なバンドオフセットを示す図である。
【図7】本発明の実施形態による、ナノ粒子を溶質としてマトリックス内に分散させることによって形成されるナノ構造材料を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による光起電力素子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の複数のナノ粒子から形成された第1のナノネットワークと、
(b)第2の複数のナノ粒子から形成され、前記第1のナノネットワークと結合された第2のナノネットワークとを含むナノ構造材料であって、
前記第1の複数のナノ粒子および前記第2の複数のナノ粒子のうちの少なくとも一方が間接遷移型材料から形成され、
光を吸収して、前記第1のナノネットワーク内を移送される第1の種類の電荷キャリアと、前記第2のナノネットワーク内を移送される第2の種類の電荷キャリアとを発生させるように構成され、吸収係数が、約400nmから約700nmの波長の範囲において少なくとも10cm−1であるナノ構造材料。
【請求項2】
前記第1の複数のナノ粒子が、前記第1の種類の電荷キャリアに対して、前記第1のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために、少なくとも融合しているか、相互連結している、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項3】
前記第2の複数のナノ粒子が、前記第2の種類の電荷キャリアに対して、前記第2のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために、少なくとも融合しているか、相互連結している、請求項2に記載のナノ構造材料。
【請求項4】
前記間接遷移型材料が、IV族半導体材料およびIV−IV族半導体材料から選択される、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項5】
前記第1の複数のナノ粒子が複数のSi量子ドットを含み、前記第2の複数のナノ粒子が複数のGe量子ドットを含む、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項6】
前記複数のSi量子ドットおよび前記複数のGe量子ドットが実質的に無欠陥である、請求項5に記載のナノ構造材料。
【請求項7】
前記複数のSi量子ドットの1000個当たりの欠陥が1個未満である程度に前記複数のSi量子ドットが実質的に無欠陥である、請求項6に記載のナノ構造材料。
【請求項8】
前記複数のGe量子ドットの1000個当たりの欠陥が1個未満である程度に前記複数のGe量子ドットが実質的に無欠陥である、請求項6に記載のナノ構造材料。
【請求項9】
前記複数のSi量子ドットのピークサイズが約1nmから約20nmであり、前記複数のGe量子ドットのピークサイズが約1nmから約50nmである、請求項5に記載のナノ構造材料。
【請求項10】
前記第1の種類の電荷キャリアが電子に相当し、前記第2の種類の電荷キャリアが正孔に相当する、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項11】
前記第1の種類の電荷キャリアおよび前記第2の種類の電荷キャリアが、前記第1のナノネットワークと前記第2のナノネットワークとの間の境界において分離される、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項12】
前記吸収係数が少なくとも10cm−1である、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項13】
前記吸収係数が少なくとも10cm−1である、請求項12に記載のナノ構造材料。
【請求項14】
電荷キャリア再結合時間が少なくとも1nsである、請求項1に記載のナノ構造材料。
【請求項15】
前記電荷キャリア再結合時間が少なくとも10nsである、請求項14に記載のナノ構造材料。
【請求項16】
前記電荷キャリア再結合時間が少なくとも100nsである、請求項15に記載のナノ構造材料。
【請求項17】
(a)第1の種類の電荷キャリアを移送するために少なくとも融合しているか相互連結している複数のSiナノ粒子を含む第1のナノネットワークと、
(b)第2の種類の電荷キャリアを移送するために少なくとも融合しているか相互連結している複数のGeナノ粒子を含み、前記第1のナノネットワークと結合されている第2のナノネットワークとを含むナノ構造材料。
【請求項18】
前記複数のSiナノ粒子が、前記第1の種類の電荷キャリアに対して、前記第1のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために融合しており、前記複数のGeナノ粒子が、前記第2の種類の電荷キャリアに対して、前記第2のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために融合している、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項19】
前記複数のSiナノ粒子が、前記第1の種類の電荷キャリアに対して、前記第1のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために相互連結しており、前記複数のGeナノ粒子が、前記第2の種類の電荷キャリアに対して、前記第2のナノネットワークの少なくとも一部を通る連続的な導電パスを提供するために相互連結している、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項20】
前記第1のナノネットワークが、前記複数のSiナノ粒子と相互連結している第1の複数の分子種を含み、前記第2のナノネットワークが、前記複数のGeナノ粒子と相互連結している第2の複数の分子種を含む、請求項19に記載のナノ構造材料。
【請求項21】
前記第1の複数の分子種と前記第2の複数の分子種とが、電荷移送分子種、供与体/受容体分子種、または共役分子種から独立に選択される、請求項20に記載のナノ構造材料。
【請求項22】
前記複数のSiナノ粒子の1000個当たりの欠陥が1個未満である程度に前記複数のSiナノ粒子が実質的に無欠陥であり、前記複数のGeナノ粒子の1000個当たりの欠陥が1個未満である程度に前記複数のGeナノ粒子が実質的に無欠陥である、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項23】
前記複数のSiナノ粒子のピークサイズが約1nmから約10nmであり、前記複数のGeナノ粒子のピークサイズが約1nmから約20nmである、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項24】
光を照射された場合に、前記第1の種類の電荷キャリアおよび前記第2の種類の電荷キャリアを発生させるように構成された、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項25】
前記第1の種類の電荷キャリアおよび前記第2の種類の電荷キャリアが、前記第1のナノネットワークと前記第2のナノネットワークとの間の境界において分離される、請求項24に記載のナノ構造材料。
【請求項26】
吸収係数が、約400nmから約885nmの波長の範囲において少なくとも10cm−1である、請求項24に記載のナノ構造材料。
【請求項27】
前記吸収係数が少なくとも10cm−1である、請求項26に記載のナノ構造材料。
【請求項28】
電荷キャリア再結合時間が少なくとも10nsである、請求項17に記載のナノ構造材料。
【請求項29】
前記電荷キャリア再結合時間が少なくとも100nsである、請求項28に記載のナノ構造材料。
【請求項30】
(a)第1の電極と、
(b)第2の電極と、
(c)前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置するナノ構造材料とを含む光起電力素子であって、
前記ナノ構造材料が、入射光を吸収して、前記第1の電極へ移送される第1の種類の電荷キャリアと、前記第2の電極へ移送される第2の種類の電荷キャリアとを発生させるように構成され、前記ナノ構造材料が、前記ナノ構造材料の少なくとも一部を通る導電パスを提供するように構成された複数のナノ粒子を含み、前記複数のナノ粒子が間接遷移型材料から形成され、
前記入射光を照射された場合に、20mA/cmを超える短絡電流密度を与える光起電力素子。
【請求項31】
前記第1の電極がほぼ透明であり、前記入射光を直接受けるように位置する、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項32】
前記間接遷移型材料が、IV族半導体材料およびIV−IV族半導体材料から選択される、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項33】
前記複数のナノ粒子が、前記第1の種類の電荷キャリアおよび前記第2の種類の電荷キャリアのうちの少なくとも一方に対して連続的な導電パスを提供するために、少なくとも融合しているか相互連結している、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項34】
前記ナノ構造材料が、前記第1の種類の電荷キャリアを移送するように構成されたマトリックスを含み、前記複数のナノ粒子が、前記マトリックス内で分散し、前記第2の種類の電荷キャリアを移送するように構成された、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項35】
前記マトリックスが、ポリマーおよび半導体材料から選択される、請求項34に記載の光起電力素子。
【請求項36】
前記複数のナノ粒子が、前記第1の種類の電荷キャリアを移送するように構成された第1の複数のナノ粒子に相当し、前記ナノ構造材料が、前記第2の種類の電荷キャリアを移送するように構成された第2の複数のナノ粒子を含む、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項37】
前記第1の複数のナノ粒子が、第1のナノネットワークを形成するために、少なくとも融合しているか相互連結しており、前記第2の複数のナノ粒子が、前記第1のナノネットワークと結合された第2のナノネットワークを形成するために、少なくとも融合しているか相互連結している、請求項36に記載の光起電力素子。
【請求項38】
前記間接遷移型材料が第1の間接遷移型材料に相当し、前記第2の複数のナノ粒子が第2の間接遷移型材料から形成され、前記第1の間接遷移型材料および前記第2の間接遷移型材料が、IV族半導体材料およびIV−IV族半導体材料から独立に選択される、請求項36に記載の光起電力素子。
【請求項39】
前記第2の複数のナノ粒子が金属酸化物から形成される、請求項36に記載の光起電力素子。
【請求項40】
前記金属酸化物がTiO、WO、ZnO、SnO、SnO、およびNiOから選択される、請求項39に記載の光起電力素子。
【請求項41】
前記第1の複数のナノ粒子が複数のSiナノ粒子を含み、前記第2の複数のナノ粒子が複数のTiOナノ粒子を含む、請求項40に記載の光起電力素子。
【請求項42】
前記第1の複数のナノ粒子が複数のGeナノ粒子を含み、前記第2の複数のナノ粒子が複数のTiOナノ粒子を含む、請求項40に記載の光起電力素子。
【請求項43】
前記短絡電流密度が少なくとも25mA/cmである、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項44】
前記短絡電流密度が少なくとも30mA/cmである、請求項43に記載の光起電力素子。
【請求項45】
前記入射光の波長が約300nmから約2000nmである、請求項30に記載の光起電力素子。
【請求項46】
前記波長が約400nmから約885nmである、請求項45に記載の光起電力素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−503880(P2008−503880A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516784(P2007−516784)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021488
【国際公開番号】WO2006/085940
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505041911)ウルトラドッツ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】UltraDots, Inc.
【Fターム(参考)】