説明

ナノ構造炭素材料の製造方法、前記製造方法により形成されたナノ構造炭素材料および前記ナノ構造炭素材料を有する基板

大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に少なくとも放電ガスを導入し、前記電極間に高周波電圧を印加することにより放電プラズマを発生させ、ナノ構造炭素材料を形成する原料ガスを前記放電プラズマと共存させて活性化した原料ガスとし、基板を前記活性化した原料ガスに晒すことで、前記基板上にナノ構造炭素材料を形成することを特徴とするナノ構造炭素材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ナノ構造炭素材料の製造方法に関し、詳しくは該材料を容易に、且つ、高速に、形成し得る製造方法に関する。
【背景技術】
近年、ナノメートル(nm)オーダーの径を有するナノ構造炭素材料、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー等について数多くの研究が行われている。このうち、カーボンナノチューブは、炭素6員環を平面上に繋げた網状構造グラフェン・シートを円筒状に巻き、継ぎ目がない様に繋げた構造を持っている。1枚のグラフェン・シートから構成されるものはシングルウォールナノチューブと呼ばれ、複数個のグラフェン・シートが入れ子状に積層され多重構造を取るものはマルチウォールナノチューブと呼ばれる。また、グラファイトナノファイバーは、グラフェン・シートが先端の切られたアイスクリームコーン形状を有し積層された円柱状構造や、形成に用いる触媒金属の表面形状に沿った形状を有するグラフェンシートの小片が積み重なった構造を有する材料である。
ところで、真空中に置かれた金属や半導体等に或る閾値以上の強さの電界を与えると、金属や半導体の表面近傍のエネルギー障壁を電子が量子トンネル効果によって通過し、常温でも真空中に電子が放出される様になる。かかる原理に基づく電子放出は、冷陰極電界電子放出、或いは単に電界放出(フィールド・エミッション)と呼ばれる。
ナノ構造炭素材料は、電子放出特性、耐熱性、化学安定性等の性能において優れているため、近年は、上述の電界放出の原理を画像表示に応用した電子放出源等への採用が期待されている。又、半導体にも導体にもなり得る性質を有することから、電子・電気デバイスへの応用にも期待されている。
従来、ナノ構造炭素材料は、アーク放電法、熱CVD法、真空プラズマ法等により製造されており、例えば特開2002−115071号公報には触媒金属薄膜を形成した基板を真空下で熱処理した後に熱CVD法によってグラファイトナノファイバー薄膜を基板上の所定の箇所に選択的に形成させることが、特開2001−64775号公報には真空製膜室にプラズマを発生させるためのマイクロ波の出力を時間的に変調させて基板上にカーボンナノチューブを垂直方向に配向させて生成することが、それぞれ記載されている。
従来、ナノ構造炭素材料の製造に採用されているアーク放電法、真空プラズマ法においては、装置内を真空にする設備が必要となることから製造設備が複雑となり、設備費や製造コストが大きい。更にアーク放電法では、平面を有する基材上に直接ナノ構造炭素材料を生成成長させるのが困難で、できるとしても局部的な範囲に止まり、大面積基板上への直接生成は不可能に近い。また、真空中でガス濃度が低いためと推定されるが、ナノ構造炭素材料の形成速度は非常に遅い。一方、熱CVD法では、熱で原料ガスを分解する必要から、非常に高温状態(450℃〜600℃)で製造を行わねばならない。基板上に直接ナノ構造炭素材料を形成する様な場合には、基板が高温に耐えられるセラミックや石英ガラスの様な素材のものに限定されてしまい、例えば、ソーダガラス、低アルカリガラス(無アルカリガラスを含む)等の一般的なガラスやプラスティックといった基板材料として従来用いられている素材を用いることが困難である。
【発明の開示】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は第1に、ナノ構造炭素材料を容易に、且つ、高速に形成し得る製造方法を提供することにあり、第2に、様々な基板上にナノ構造炭素材料を形成可能な製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の項(1)〜項(11)のいずれかにより達成された。
項(1) 大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に少なくとも放電ガスを導入し、前記電極間に高周波電圧を印加することにより放電プラズマを発生させ、ナノ構造炭素材料を形成する原料ガスを前記放電プラズマと共存させて活性化した原料ガスとし、基板を前記活性化した原料ガスに晒すことで、前記基板上にナノ構造炭素材料を形成することを特徴とするナノ構造炭素材料の製造方法。
項(2) 電極間に印加する電圧が周波数0.5kHz〜100MHzであることを特徴とする項(1)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(3) 少なくとも一方の電極が誘電体で被覆されていることを特徴とする項(1)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(4) 前記電極間に導入するガスの50体積%以上がArガス及び/又はNガスであることを特徴とする項(1)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(5) 前記基板上に金属微粒子を付着させる金属微粒子付着工程と、該金属微粒子が付着した基板上にナノ構造炭素材料を形成するナノ構造炭素材料形成工程と、を有することを特徴とする項(1)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(6) 前記金属微粒子付着工程が基板上に有機金属化合物を含む溶液を塗布した後、該有機金属化合物の有機成分を分解除去する工程を有することを特徴とする項(5)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(7) 電極温度400℃以下で行うことを特徴とする項(1)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(8) 電極温度300℃以下で行うことを特徴とする項(7)に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
項(9) 項(1)〜項(10)の何れか1項に記載の製造方法により形成されたことを特徴とするナノ構造炭素材料。
項(10) 項(9)に記載のナノ構造炭素材料が、カーボンナノチューブであることを特徴とするナノ構造炭素材料。
項(11) 項(10)に記載のナノ構造炭素材料を表面に有することを特徴とする基板。
即ち本発明者は、大気圧プラズマ方法により、ナノ構造炭素材料を形成する物質と基板表面上の触媒が活性化されればナノ構造炭素材料が堆積できることから、基板全体を高温にしなくても、基板上に構造的な純度の高いナノ構造炭素材料が堆積するであろうと考え、大気圧プラズマ方法の条件を検討してナノ構造炭素材料が形成されることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、大気圧プラズマ方法を採用することにより、真空設備等を必要とせずに容易にナノ構造炭素材料を製造することができ、また耐熱性の小さい基板上にもナノ構造炭素材料を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は大気圧プラズマ放電処理装置のガス導入部及び電極部の一例を示す断面図である。
第2図は大気圧プラズマ放電処理装置のガス導入部及び電極部の他の例を示す断面図である。
第3図は大気圧プラズマ放電処理装置の他の例を示す図である。
第4図は大気圧プラズマ放電処理装置の更に他の例を示す図である。
第5図は実施例の金属微粒子付着工程に用いた装置構成を示すモデル図である。
第6図は実施例のナノ構造炭素材料形成工程に用いた装置構成を示すモデル図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、高周波電圧を対向する電極間に印加することにより放電プラズマを発生させる大気圧プラズマ方法を用いてナノ構造炭素材料を形成することを特徴とする。
ナノ構造炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー等が挙げられる。
本発明における、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、93kPa〜104kPaが好ましい。
また本発明における、高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。好ましくは5kHz〜100MHz、更に好ましくは50kHz〜50MHzである。また、特開2004−68143号公報に記載の如く、対向する電極のそれぞれに異なる周波数で印加しても良い。
本発明に係る大気圧プラズマ方法に用いる放電処理装置は、少なくとも一方に誘電体を被覆した一対以上の対向する電極間に高周波電圧を印加して、当該対向電極の間で放電させ、放電ガスとナノ構造炭素材料を形成するガスをプラズマ状態とし、該対向電極間に静置あるいは移送される基板を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基板の上にナノ構造炭素材料を形成させるものである。また他の方式として、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基板(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基板の上にナノ構造炭素材料を形成させるジェット方式の装置がある。
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、前記対向電極間に、放電ガスとナノ構造炭素材料形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
本発明おいて、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、電界により励起する放電ガスと、そのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になりナノ構造炭素材料を形成するガスを含んでいる。即ち、ナノ構造炭素材料形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性となり、基板上に化学的に堆積してナノ構造炭素材料を形成する原料のことである。この様にナノ構造炭素材料を形成する物質自体が活性となるため、基板を熱CVDのように高温に加熱しなくても基板上に構造的な純度の高いナノ構造炭素材料が堆積していく。なお更に添加ガスを加えることもある。
ナノ構造炭素材料形成ガスとしては、メタン等の炭化水素系ガスをはじめとして、フッ素系の炭化化合物、COやCOといった酸化炭素類、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、エステル類などが挙げられ、好ましくはアルコール類、炭化水素系ガス、フッ素系の炭化化合物である。
ナノ構造炭素材料形成ガスの種類に応じて添加ガスを含有しても良い。当該添加ガスとしては水素ガス、水蒸気、過酸化水素ガス、一酸化炭素ガスフッ化炭素やフッ化炭化水素等のガス等が挙げられるが、その中では、水素ガス、フッ化炭素やフッ化炭化水素、水蒸気が好ましい。
放電ガスとしては、窒素ガス、希ガス、水素ガスなどがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。希ガスとしては、周期表の第18属元素であるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。本発明において、放電ガスとして好ましいのはアルゴンガス(Ar)と窒素ガス(N)であり、放電空間に導入するガスの50体積%以上がAr及び/又はNガスであることが好ましい。放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有されることが好ましい。
ナノ構造炭素材料形成ガスは、放電プラズマ処理により基板上に均一に堆積させる観点から、上記放電ガス及び添加ガス及びナノ構造炭素材料形成ガスの総量に対し、0.01〜10体積%の割合で存在させることが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。また放電ガスに対しては、0.01〜50体積%であることが好ましい。
大気圧プラズマ方法を用いて基板上にナノ構造炭素材料を形成する際の電極温度は、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。この様に基板上にナノ構造炭素材料を形成する際の温度の上昇を抑えることで、例えば、無アルカリガラスやプラスチックの様な耐熱性の小さい素材であっても基板として用いることができる様になる。
用いる基板としては絶縁性、導電性、半導体性のいずれでも良く、例えば石英、ガラス、セラミックス、金属、シリコン基板などが使用できる。特にガラスは、ソーダライムガラスや低ソーダガラス(無アルカリガラスを含む)、鉛アルカリケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスなどの透明ガラス基板を用いることが望ましく、特に高歪点低ソーダガラス(無アルカリガラスを含む)が好適である。
また、セラミックとしてはアルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素などが挙げられる。
また、形成時の温度に対する耐熱性をみたすものであれば種々の樹脂を用いることができるが、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)やポリパラバン酸樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリレート樹脂、更にはエポキシ樹脂を用いることができる。中でもポリイミドは、好適に用いることができる。
また、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四弗化エチレン樹脂(PTFE)、四弗化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四弗化エチレン−六弗化プロピレン共重合体(FEP)、高温ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、三弗化塩化エチレン樹脂(CTFP)、変性フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂にガラス繊維、ガラスビーズ、グラファイト、カーボン繊維、フッ素樹脂、二硫化モリブデン、酸化チタン等の充填材を加え、耐熱性と共に摺動性、耐摩耗性を確保した耐熱摺動樹脂が用いられる。例えば、グラファイト入りポリイミド樹脂、グラファイト入りナイロン樹脂、PTFE入りアセタール樹脂、PTFE入りフェノール樹脂等である。
また、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のベース樹脂にガラス繊維、ガラスビーズ、グラファイト、カーボン繊維、フッ素樹脂、二硫化モリブデン、酸化チタン等の充填材を加えた耐熱樹脂も可能であり耐熱温度250℃以上である。また、フッ素系樹脂に上記の充填材を加えた耐熱樹脂も連続使用温度250℃以上である。
これらの樹脂基板、複合基板を板型、もしくはフィルム状として用いる。
第1図は、本発明に用いる大気圧プラズマ放電処理装置のガス導入部及び電極部の一例を示す断面図である。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、また、以下の説明には用語等に対する断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明における好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
第1図においては、電源11に接続した1対の電極21a、21bが2対、平行に併設されている。電極は各々、少なくとも一方が誘電体22で被覆されており、その電極間で形成された空間23に電源11により高周波電圧が印加される。なお、電極21の内部は中空構造24を有し、放電中は水、オイルなどによって放電により発生する熱の廃熱を行い、かつ安定な温度に保つための熱交換ができるようになっている。
ここでは、図示しないガス供給手段により、放電ガスを含むガス1が流路4を通って空間23に供給され、該空間23に高周波が印加されると放電が発生することによりガス1はプラズマ化もしくは活性化される。プラズマ化もしくは活性化されたガス1は、ナノ構造炭素材料形成ガスとの混合空間25に噴出される。
一方、図示しないガス供給手段により供給される、ナノ構造炭素材料形成ガスを含む混合ガス2は流路5を通り、同じく混合空間25へ運ばれ、前記プラズマ化された放電ガスと合流し混合され、移動ステージ27に乗せられた基板26上へ吹き付けられる。プラズマ化された混合ガスに接触したナノ構造炭素材料形成ガスはプラズマのエネルギーにより活性化され、基板26上でナノ構造炭素材料が形成される。
この例の装置においては、ナノ構造炭素材料形成ガスを含む混合ガス2が活性化された放電ガスに挟まれる、もしくは囲まれる様な構造を有する。
移動ステージ27は往復走査、もしくは連続走査が可能な構造を有しており、必要に応じて、基材の温度が保てる様に前記電極と同じような熱交換ができる構造になっている。また、基材上に吹き付けられたガスを排気する機構28を必要に応じて設けることもできる。これにより空間中に生成される不要な副生成物を速やかに放電空間及び基材上から除去できる。用いる基板も板型の平面基板に限らず、立体物、フィルム状の基板も移動ステージの構造を変えることで採用可能となる。
なお、この例の装置は、放電ガスが放電し活性化した後にナノ構造炭素材料形成ガスを含む混合ガスと合流する構造となっており、これにより、電極表面に生成物が堆積することを防ぐことができるが、本出願人が特願2003−095367で提案した様に、電極表面に汚れ防止フィルムなどをはわせることにより、第2図に示す様に放電前に放電ガスとナノ構造炭素材料形成ガスを混合させる構造とすることもできる。
また、特開2004−68143号公報に記載の如く、対向する各々の電極に異なる周波数を印加する複数の電源を設置する方式で実施することもできる。
更にこの装置を複数台数ステージの走査方向に並べることによって生成の能力を上げることができる。また、電極、ステージ全体を囲み外気が入らないような構造にすることで、装置内を一定のガス雰囲気にすることができ、所望の高質なナノ構造炭素材料を形成することができる。
第3図に、更に他のプラズマ放電処理装置の一例を示す。
この例では移動ステージ27が対向する一方の電極を構成し、電源11に接続した2本の電極21a、21bが移動ステージ電極27に各々平行になるように併設されている。電極21a、21b、27は各々、少なくとも一方を誘電体22で被覆されており、その電極21、27間で形成された空間23に電極11により高周波電圧が印加される様になっている。なお、電極21、27の内部は中空構造24を有し、放電中は水、オイルなどによって放電により発生する熱の廃熱を行い、かつ安定な温度に保つための熱交換ができるようになっている。
ここでは図示されないガス供給手段により、放電ガスを含むガス1が流路4を経て、またナノ構造炭素材料形成ガスを含む混合ガス2が流路5を経て、混合空間25に合流混合される。混合されたガスは、電極21a、21b間を通り電極21,27間の空間23に供給され、空間23に高周波が印加されると放電が発生することにより放電ガスはプラズマ化もしくは活性化される。プラズマ化もしくは活性化された放電ガスのエネルギーにより、ナノ構造炭素材料形成ガスは活性化され、基板26上にナノ構造炭素材料が形成される。
なおこの装置の電極21a、21bをFe、Cr、Niなどのスパッタターゲットに変更することで大気圧プラズマを用いたスパッタ製膜を行うことができる。この場合、電極27には誘電体22が必要であり、電極21,と基材26の間隙を5mm以下にすることが好ましい。
第4図に、更に他のプラズマ放電処理装置の一例を示す。
21a、21bは、金属母材の表面を誘電体22で被覆した誘電体被覆電極である。内部は中空構造24を有し、放電中は、その内部を冷却水、もしくはオイル等を流通させることにより、電極表面温度を一定に制御することができる構成となっている。
一方、電極21a、21bに対向する位置には、移動ステージ電極27が配置されており、放電空間23を形成している。移動ステージ電極27も同様に、金属母材上に、誘電体22を被覆した誘電体被覆電極であり、必要に応じて、その内部に冷却水等を流通し、電極表面温度を制御することができる構造となっている。
上述の各電極において、金属母材としては、例えば、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスやチタンであることが好ましい。
誘電体は、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、アルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。また必要に応じて封孔処理を行うことが好ましい。
対向する電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、基板の厚み、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
ArガスやNガスの様に安価なガスを採用すると、ナノ構造炭素材料形成のコストを低下できて好ましく、この様なガスで高エネルギーのプラズマを生成させるのは、第4図の大気圧プラズマ放電装置の如く、対向する各電極(第1電極および第2電極)に異なる周波数を印加することで可能である。
第1電極である21a、21bに周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する高周波電源11a(第1電源ともいう)が接続され、第2電極である移動ステージ電極27に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧11b(第2電源ともいう)を印加する高周波電源が接続されている。
第1電源としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
周波数ω、周波数ω、高周波電圧V、高周波電圧Vおよび放電開始電圧IVとの関係が、
≧IV>V
または V>IV≧V を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上であることが好ましい。
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
重畳する高周波電界が、ともにサイン波である場合、第1の高周波電界の周波数ωと該周波数ωより高い第2の高周波電界の周波数ωとを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ωのサイン波上に、それより高い周波数ωのサイン波が重なった鋸歯状の波形となる。
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
また、第1電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルタを、また第2電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルタを接続することが好ましく、第1フィルタは第1電源から第1電極への第1の高周波電界の電流を通過しやすくし、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくする。また、第2フィルタはその逆で、第2電源から第2電極への第2の高周波電界の電流を通過しやすくし、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
上記放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来る。
電極21a、21bと第1電源11aとの間には、第1フィルター28aが設置されており、第1電源11aから電極21a、21bへの電流を通過しやすくし、第2電源11bからの電流をアースして、第2電源から第1電源への電流が通過しにくくなるように設計されている。また、移動ステージ電極27と第2電源11bとの間には、第2フィルター28bが設置されており、第2電源11bから移動ステージ電極27への電流を通過しやすくし、第1電源11aからの電流をアースして、第1電源から第2電源への電流が通過しにくくなるよう設計されている。第1フィルター28aとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルター28bとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用出来る。
電極間(放電空間)に導入する電圧の放電出力は、1W/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1〜50W/cmである。
この装置においては、白矢印で示すナノ構造炭素材料形成ガスを含む混合ガス2と、黒矢印で示す放電ガスを含むガス1が混合されて基板26上に流入される。基板26に衝突した混合ガスは基板26表面に沿って放電空間内を移動し、その後、外側に排出される。
本発明においては、ナノ構造炭素材料の形成を容易にするために、予め基板上に金属微粒子を付着させる金属微粒子付着工程を経て、該金属微粒子が付着した基板上にナノ構造炭素材料を形成することが好ましい。
用いる金属としては、グラファイトの生成、カーボンナノチューブの気相分解成長において触媒作用を示す各種の金属を用いることができる。具体的には、たとえば、Ni,Fe,Coなどの鉄族、Pd,Pt,Rhなどの白金族,La,Yなどの希土類金属、あるはMo,Mnなどの遷移金属や、これらの金属化合物のいずれか1種、もしくはこれらの2種以上の混合物等を用いることができる。これらの触媒作用を示す金属の中でも好ましくは、Ni、Fe、Mo、Co、Mnであり、これらは1種でも2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの触媒作用を示す金属にTi、Al等の他の金属を担持材として混合させてもよい。
金属微粒子付着工程では、基板上に金属微粒子を付着させることができれば、どの様な方法を用いても良いが、先に説明した大気圧プラズマ方法で行うことも可能で、この場合簡単な装置構成で基板に金属微粒子を付着させることができる。
なお、金属微粒子を大気圧プラズマ方法を利用して基板上に付着する方法は、CVD法と、スパッタ法に大別される。スパッタ法は前述の如く各金属のターゲットを使用すればよい。CVD法の場合は、原料として、アルコキシドやベータジケトン系などの金属錯体など揮発性の有機金属化合物が使用できる。これら材料を市販の気化器、蒸発器などを用いてガス化させ、放電ガス、添加ガスなどに希釈させプラズマ空間に導入する。
本発明においては、金属微粒子付着工程としては、所望の金属化合物を含む溶液を基板に塗布した後、該金属化合物の金属成分以外の成分を分解除去する工程を有するものとすることが好ましい。金属化合物としては、無機化合物であっても有機金属化合物であってもよい。無機の金属化合物としてはハロゲン化物や水酸化物を挙げることができる。
金属化合物としては有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物を用いることにより、金属微粒子が凝集等を起こさずに適度の間隙を持って基板上に配置するものと思われる。金属化合物として有機金属化合物を用いる場合は、有機金属化合物の金属成分以外の成分を分解除去する工程は、有機金属化合物の有機成分を分解除去する工程を言う。
所望の金属化合物を含む溶液を基板に塗布する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、ディップ法(浸漬法)、バーコーティング法、スロット塗布法、スライド塗布法、カーテン塗布法、グラビア塗布法、ウェブテンション法、エアードクター法、スプレイ塗布法等が挙げられる。
所望の金属化合物を含む溶液を基板に塗布するに際して、塗布のために界面活性剤や適宜のバインダー等の添加剤を含ませることができる。
金属化合物の金属成分以外の成分を分解除去する手段としては、プラズマ処理、火炎処理、コロナ処理、UV処理、電子線処理、高温処理、等公知の手段を採用することができる。
有機金属化合物としては、所望の金属元素が含まれるものであれば特に制限はない。有機金属化合物としては、例えば、アルキル化合物、アリール化合物、シクロペンタジエニル化合物及びその類似構造を有する化合物、アルコキシド、カルボン酸塩等の有機酸塩、有機金属錯体等が挙げられる。
本発明においては、有機金属化合物として、好ましくは有機金属錯体である。有機金属錯体としては、金属カルボニル錯化合物、イソニトリル錯化合物、ジオキシ化合物の錯塩、オキシアルデヒド錯塩、オキシケトン錯塩、オキシキノン錯塩、オキシ酸錯塩、オキシエステル錯塩、ジケトンジオキシム錯塩、o−オキシベンジルアミン錯塩、8−オキシキノリン錯塩、1−オキシアクリジン錯塩、オキシベンゾキノリン錯塩、オキシフェナジン錯塩、オキシアゾ錯塩、ニトロソナフトール錯塩、オキシキノリン−N−オキシド錯塩、アミノ酸錯塩、アントラニル酸錯塩、キナルジン酸錯塩、フェナジン−N−カルボン酸錯塩、ニトロソヒドロキシルアミン錯塩、トリアゼン錯塩、ジチゾン錯塩、ジピリジル錯塩、フェナントロリン錯塩、サリチルアルデヒド−o−オキシフェニルイミン銅、ビス(サリチルアルデヒド)エチレンジイミン錯塩、フタロシアニン錯塩、ポルフィン錯塩、ポルフィリン錯塩、ビタミンB12、トリサリチルアルデヒドジイミン錯塩、エチレンジアミンテトラ酢酸錯塩、1,8−ビス(サリチリデンアミノ)−3,6−ジチアオクタン錯塩、オレフィン類の金属錯化合物、シクロペンタジエニルの金属錯化合物、芳香族炭化水素の金属錯化合物、等を挙げることができる。
ジオキシ化合物の錯塩としては、例えばアセチルアセトン(acac)錯体、ジピバロイルメタン(DPM)錯体、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン(DMHD)錯体等のベータジケトンが挙げられる。
溶液に用いる溶媒としては、任意の溶媒を用いることができる。例えば、水、脂肪族炭化水素類(ヘプタン、石油ベンジン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロルエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(ギ酸メチル、酢酸−n−プロピル等)、多価アルコール誘導体(エチレングリコールモノエチルエーテル等)、脂肪酸類(酢酸等)、フェノール類(フェノール等)、その他窒素や硫黄を含む化合物が挙げられる。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の方法においては、少なくともナノ構造炭素材料形成工程には大気圧プラズマ方法を用いる。
本発明の方法においては、ナノ構造炭素材料の形成の際高温にする必要が無いことから、例えば一般的なソーダガラス、低ソーダガラス(無アルカリガラスを含む)やプラスチックといった素材の基板も用いることが可能となる。従って、例えば、今後量産の要請があるフィールドエミッションディスプレイ(FED)用の電子放出源を製造する様な場合、ガラス基板、プラスチック基板にナノ構造炭素材料を形成し得る好適な方法となる。なおフィールドエミッションはディスプレイのほかにも電子線源や微小真空管などのさまざまな応用が期待されている。
前記電子放出源等を製造する場合、電極となる導電性膜を有する基板を用いることが好ましく、具体的にはAl、Ru、Cu等の金属膜やITO膜などが挙げられる。
【実施例】
[実施例1]
(金属微粒子付着工程)
第5図に示す装置構成で基板上に金属微粒子を付着させた。
電極21a、21bとしては、20×20mmで長さ120mmの純Feターゲットを用いた。このターゲットには、保温冷却用シリコンオイルが流れるように穴を貫通させ、角をR3に加工した部材を2本用いた。
移動ステージ電極27としては、100×500×20mmの平板のチタン金属(JIS第2種)に保温用の穴を100×20mmの面に3カ所貫通させた部材を用い、さらに、電極の表面にアルミナセラミックを0.8mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミック被膜に塗布し、乾燥させた後に、300℃で加熱し封孔処理を行って誘電体22を形成した。
以上で作製したターゲット部材2本を2mmの間隙を作るように並べて、その間隙を放電ガスの導入口とした。また電極21a、21bと、移動ステージ電極27との距離Dは、1.0mmとなるように配置した。これを製造装置として排ガス導出路を備した容器内に設置した。
基板26として、面積100×100mm、厚み0.5mmの無アルカリガラス板を電極間に設置し、搬送速度を0.1m/secとして移動ステージ電極27を反復移動させた。
シリコンオイルを電極、ターゲット内に流通させて保温温度を250℃に保ちながらArガスを電極間に導入し、約10分間空気をパージさせ、13.56MHz、20W/cmで電極とターゲット間でプラズマ放電させた。60秒処理した結果、基材上にFeの微粒子が堆積した。
(ナノ構造炭素材料形成工程)
第6図に示す装置構成で上記金属微粒子が付着した基板26´上にナノ構造炭素材料を形成させた。
電極21a、21bとして、20×20mmで長さ120mmのチタン金属(JIS第2種)に保温用の穴を貫通させ、角をR3に加工した部材を2本用いた。該棒形電極の表面にアルミナセラミックを0.8mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミック被膜に塗布し、乾燥させた後に、300℃で加熱し封孔処理を行って誘電体22を形成した。
上記で作製した棒形電極部材を2mmの間隙を作るように並べて、その間隙を放電ガスを含む原料ガスの導入口とした。移動ステージ電極27は金属微粒子付着工程と同じものを用い、電極21a、21bとの距離D、1.5mmとなるように配置した。これを製造装置として排ガス導出路を備した容器内に設置した。
ヒーターを電極内に設置して保温温度を300℃に保ちながら、ArガスにCOガス0.2体積%と水素4体積%を含有させた混合ガスを電極間に導入し10分間パージさせ、13.56MHz、25W/cmで600秒プラズマ放電をさせた。
尚、製膜直前の基材表面の温度を、キーエンス社製非接触ハンディ温度計IT2−80を用いて測定したところ、230℃であった。
その基材上の様子をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、多層構造のカーボンナノチューブ構造の炭素材料が触媒の微粒子上成長していることを確認した。
(評価)
得られた試料について、ラマン散乱スペクトルを測定したところ、共にカーボンナノチューブに特徴的なスペクトル、すなわち、Gバンド(Graphite band;1590cm−1)、Dバンド(Disorder band;1360cm−1)に大きなピークを示すという分析結果が得られた。
[実施例2]
(導電性膜を有する基板を用いた実施例)
基板を表面に導電性を持つ薄膜を有するものに変えた以外は、金属微粒子付着工程、ナノ炭素構造体材料形成工程を実施例1同様に逐次実施した。この結果においても、前記実施例とほぼ同様のカーボンナノチューブ構造の炭素材料ができた。なお、基材上への導電性薄膜形成は以下のように行った。
第5図に示す装置(誘電体付き電極)を用いて、移動ステージ電極27上に基材をおき、容器内に酸素濃度50ppmになるまで窒素を導入し、パージさせた。
次に、窒素95.9体積%、気化したアルミニウムアセチルアセトナートを0.1体積%、水素4体積%を導入すると同時に、特開2004−68143号公報に記載の如く、第1電極と第2電極にそれぞれ50kHzで8KV、13.56MHzで8W/cmの2周波を印加した。
搬送速度0.5cm/secで第2電極を往復させて、600秒製膜した結果、300nmのAl膜が形成された。
尚、酸素濃度計は東レ社製を用いた。
また、アルミニウムアセチルアセトナートは、容器内を230℃に保ちつつ所定の窒素によりバブリングさせて導入した。
なお、ここではAl膜を用いたが、導電性をもつものであれば何でもよい。
[実施例3]
第4図に示す装置構成で実施例1と同様に金属微粒子を付着させた基板上にナノ構造炭素材料を形成させた。
電極21a、21bとして、20×20mmで長さ120mmのチタン金属(JIS第2種)に保温用の穴を貫通させ、角をR3に加工した部材を2本用いた。該棒形電極の表面にアルミナセラミックを0.8mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミック被膜に塗布し、乾燥させた後に、300℃で加熱し封孔処理を行って誘電体22を形成した。
上記で作製した棒形電極部材を2mmの間隙を作るように並べて、その間隙を放電ガスを含む原料ガスの導入口とした。移動ステージ電極27は金属微粒子付着工程と同じものを用い、電極21a、21bとの距離Dが、1.5mmとなるように配置した。これを製造装置として排ガス導出路を備した容器内に設置した。
ヒーターを電極内に設置させて保温温度を300℃に保ちながら、窒素ガスにCガス0.2体積%と水素4体積%を含有させた混合ガスを電極間に導入し10分間パージさせ、特開2004−68143号公報に記載の如く、第1電極と第2電極にそれぞれ50kHzで8KV、13.56MHzで10W/cmの2周波を印加し600秒間プラズマ放電させた。
尚、製膜直前の基材表面の温度を、キーエンス社製非接触ハンディ温度計IT2−80を用いて測定したところ、230℃であった。
その基材上の様子をSEMで観察した結果、この結果においても実施例1、2とほぼ同様のカーボンナノチューブ構造の炭素材料が形成された。
また、この装置を用いて、ArガスにCOガス0.2体積%と水素4体積%を含有させた混合ガスを用いて、特開2004−68143号公報に記載の如く、第1電極と第2電極にそれぞれ50kHzで8KV、60MHzで10W/cmの2周波を印加し300秒間プラズマ放電させた。この結果において、ここまでの実施例とほぼ同様のカーボンナノチューブ構造の炭素材料ができた。
[実施例4]
酢酸モリブデン(II)(関東化学社製)と酢酸コバルト(II)四水和物(関東化学社製)をエタノールに溶解し、各0.05質量%の混合溶液を調製した。この溶液に、100mm×100mm×0.5mmの低ソーダガラス(コーニング社製)を浸し、1cm/分の速度で引き上げてディップ塗布を行った。
さらに、溶液を塗布した低ソーダガラスを350℃の高温炉に20分間放置して有機成分を除去した金属微粒子が付着した基板を作製した。この金属微粒子が付着した基板上に、第3図に示す構成の装置を用いてナノ構造炭素材料を形成させた。
温水を電極21内に流通させて保温温度を90℃に保ち、前記基板を設置した電極27は、ヒーターにて基板表面を300℃に保つように保温した。この電極間に、ガス流路を介して、Arガスに水素4体積%を含有させた混合ガスを電極間に導入し10分間パージさせた。パージ後、水素を止め、エタノールをArガスに対して0.2体積%含有させた混合ガスを電極間に導入し、電極21、27間に13.56MHz、10W/cmで300秒プラズマ放電をさせた。
得られた試料について、ラマン散乱分光装置(日本分光社製)にて測定した結果、1590cm−1付近に単層カーボンナノチューブの存在を示す分裂したG−bandと呼ばれるピーク、1350cm−1付近にはアモルファスカーボンや多層カーボンナノチューブといった副生成物の存在を示すD−bandと呼ばれるピーク、そして200cm−1付近の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の直径方向全対称伸縮振動(ラジアルブリージングモード(RBM))に起因するSWNTの直径分布を示すピークを確認した。前記D−bandのピークの高さは、G−bandのそれに対して1/6程度であり、収率よく単層カーボンナノチューブができていることがわかった。また、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、基板上に単層カーボンナノチューブと思われる構造体を一面に垂直配向した状態で確認した。
尚、このSWNTは、5分ないし10分程度で形成しており、通常知られている熱CVDによるSWNTの形成に比べ、10倍以上の速度での形成を達成できた。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に少なくとも放電ガスを導入し、前記電極間に高周波電圧を印加することにより放電プラズマを発生させ、ナノ構造炭素材料を形成する原料ガスを前記放電プラズマと共存させて活性化した原料ガスとし、基板を前記活性化した原料ガスに晒すことで、前記基板上にナノ構造炭素材料を形成することを特徴とするナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項2】
電極間に印加する電圧が周波数0.5kHz〜100MHzであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項3】
少なくとも一方の電極が誘電体で被覆されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記電極間に導入するガスの50体積%以上がArガス及び/又はNガスであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記基板上に金属微粒子を付着させる金属微粒子付着工程と、該金属微粒子が付着した基板上にナノ構造炭素材料を形成するナノ構造炭素材料形成工程と、を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属微粒子付着工程が基板上に有機金属化合物を含む溶液を塗布した後、該有機金属化合物の有機成分を分解除去する工程を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項7】
電極温度400℃以下で行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項8】
電極温度300℃以下で行うことを特徴とする請求の範囲第7項に記載のナノ構造炭素材料の製造方法。
【請求項9】
請求の範囲第1項から請求の範囲第10項の何れか1項に記載の製造方法により形成されたことを特徴とするナノ構造炭素材料。
【請求項10】
請求の範囲第9項に記載のナノ構造炭素材料が、カーボンナノチューブであることを特徴とするナノ構造炭素材料。
【請求項11】
請求の範囲第10項に記載のナノ構造炭素材料を表面に有することを特徴とする基板。

【国際公開番号】WO2005/047180
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515470(P2005−515470)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016904
【国際出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】