ナノ粒子を含む高分子電解質ブレンド物の有機/無機複合ブレンド物膜組成物
本発明は、一種または複数の高分子電解質と一種または複数のタイプのナノ粒子とのブレンド物から形成される複合ブレンド物膜に関する。そのブレンド物がさらに、一種または複数のフルオロポリマーを含んでいれば好ましい。ナノ粒子を添加すると、その膜の導電性および機械的性質が向上することが見出された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種または複数の高分子電解質と一種または複数のタイプのナノ粒子とのブレンド物から形成される複合ブレンド物膜に関する。そのブレンド物がさらに、一種または複数のフルオロポリマーを含んでいれば好ましい。ナノ粒子を添加すると、その膜の導電性および機械的性質が向上することが見出された。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)の主要成分の一つがポリマー電解質膜(PEM)である。PEMは、アノードとカソードとの間にプロトン輸送ビヒクルを与えると同時に、燃料と酸化剤の流れが相互混合することを妨げるバリヤーとしても機能する、プロトン導電性高分子固体物質である。PEMは、これらのプロトン輸送性とガスバリヤー性に加えて、燃料電池を適切に動作させるためのその他の本質的な要件を満たす必要があるが、そのような要件としては、低導電性、水輸送性、高耐加水分解安定性、とりわけ優れた機械的結着性が挙げられる。
【0003】
この数年来、現実のPEMFC技術(主としてペルフルオロスルホン酸(PFSA)膜をベースとしている)と商業化目標(たとえば、可搬性燃料電池のためのDOE目標)との間のギャップを埋める目的で、新規な、経済性に優れ、操作性が安定したPEM材料を開発することに研究の努力の焦点が合わせられてきた。これら新規なPEM材料の開発においては、PFSAベースの膜の改良、高性能炭化水素ポリマーの機能化、不活性でイオン伝導性前駆体のポリマーブレンド物、および有機/無機複合材料膜、および有機/無機複合またはハイブリッドプロトン交換膜など、各種のアプローチ方法が考案されてきた。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)および共有結合的に架橋されたスルホン化アクリル系高分子電解質の半相互貫通ネットワークからのPEMが、標準的なNAFIONと同等またはそれ以上の、受容可能なプロトン導電性および機械的性質を示すということが見出されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PVDF/PE膜の導電性および機械的性質をさらに改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/高分子電解質ブレンド物の中に、ナノ充填剤、特にジルコニウムベースのナノ充填剤を添加することによって、改良された導電性および機械的性質を有する、有機/有機/無機の3相PEMが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ZrO、ZrS、およびZrHPナノ粒子粉体の広角X線回折スペクトル。
【図2】ナノ粒子担持量を変化させた複合材料膜の広角X線回折スペクトル。
【図3】各種のPVDF/PE/ZrX複合材料膜の断面の代表的な走査型電子顕微鏡法画像。
【図4】PVDF/PE/ZrX複合材料膜のプロトン導電率。
【図5】ナノ粒子のタイプ(左側)およびナノ粒子含量(右側)の関数としての、導電率の包括重み無し平均(global unweighted means)。エラーバーは、95%信頼区間の上限および下限を表している。
【図6】PVDFグレードによるPVDF/PE/ZrX複合材料膜
【化1】
の弾性率(二軸)。(a)KYNAR(登録商標)500、(b)KYNAR(登録商標)2851。
【図7】PVDFグレードによるPVDF/PE/ZrX複合材料膜
【化2】
の靱性(二軸)。(a)KYNAR(登録商標)500、(b)KYNAR(登録商標)2851。
【図8】ナノ粒子含量の関数として、三元一変量不平衡(3−way univariate unbalanced)GLM分析(フルファクトリアルモデル(full factorial model))から推算した弾性率および靱性の包括重み無し平均。エラーバーは、95%信頼区間の上限および下限を表している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複合ブレンド物膜は、高分子電解質と、ナノ粒子と、任意成分ではあるが好ましいフルオロポリマーとの複合ブレンド物膜である。
【0009】
高分子電解質
高分子電解質は、イオン性基および/またはイオン化可能基、たとえば当業者には公知のようなスルホン化された基および/またはホスホン化された基を含むポリマー樹脂である。高分子電解質には一般的に、イオン性および/またはイオン化可能なペンダント基を含む、脂肪族または芳香族(炭化水素、フッ素化またはペルフルオロ化)含有主鎖が含まれる。1モルのイオン性/イオン化可能基あたりの物質のグラム数として表される当量は、各種所定の物質の中でのイオン性/イオン化可能基の含量を表現するのに使用される典型的な方法である。本発明においては、使用される高分子電解質は、130〜2000g/molの範囲の当量を有している。一種または複数のイオン性/イオン化可能基を含むモノマーを、他のモノマーと共に重合させてコポリマーを形成させることができる。そのコポリマーの残りの部分は、そのイオン性/イオン化可能基含有モノマーと重合することが可能な一種または複数のモノマーで構成されている。
【0010】
本明細書で使用するとき、ポリマーおよび(コ)ポリマーという用語は、一種または複数のモノマーから形成されたポリマーを指している。それには、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、および四種以上のモノマーから形成されたポリマーが含まれる。コポリマーは、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方、さらにはグラフトコポリマーも指している。コポリマーという用語は、ホモポリマーの側基のいくつかを部分的に反応/置換させることによって、側鎖として2種以上の異なった残基を有するポリマー骨格とすることによって形成される、コポリマーに似せたポリマーを記述するのにも使用される。コポリマーは一般的に、20〜99モルパーセント、より好ましくは30〜90モルパーセントの高分子電解質を含んでいる。
【0011】
ナノ粒子
複合材料膜において使用するための候補無機物質としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:シリカ/シリケート、チタニア、ジルコニア、アルミナ、ゼオライト、スルホン化シリカ、無機ヘテロポリ酸(たとえば、金属酸化物担体上のリンタングステン酸粒子)、リン酸水素ジルコニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、ナノダイヤモンド、スルホン化ナノチューブ、ナノクレーたとえばモンモリロナイト、スルホン化ナノクレーたとえばスルホン化グラフトを含むモンモリロナイト、シルセスキオキサン、スルホン酸を含む基を用いて官能化されたシルセスキオキサン、および金属−有機骨格(MOF)物質。興味深いものとしてはさらに、遷移金属の硫化物、セレン化物、およびテルル化物、たとえばセレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、および硫化鉛(PdS)、さらには、さらなる触媒性能を示すことが可能な元素金属、たとえばパラジウム、金および白金の「伝統的な」ナノ粒子も挙げられる。それらのナノ粒子を、部分的または全面的に、たとえばポリマー格子、架橋高分子量イオン交換樹脂、液晶タイプの分子のクラスター、および有機官能性多面体シルセスキオキサンの場合のように本来的に有機のものとすることもまた考えられる。これらの場合においては、その有機タイプのナノ粒子に、当業者には周知のように、マトリックス物質の中で、それらを分散または固定するのに役立つ可能性があるイオン性、イオン化可能、またはさらなる官能性をさらに担持させることもできるであろう。
【0012】
その化学的性質を上に述べたような、候補となる無機ナノ粒子は、対象となっている粒子の一般的な幾何学的形状に応じて、一次元的または多次元的に測定したそれらの物理的なサイズによって定義することも可能である。たとえばシリカ、シルセスキオキサン、白金のような、典型的な三次元球状粒子は、その粒子の一端から、粒子の中心を垂直に通って反対側の端までの粒子直径を測定することによって定義することができる。ファセット面を有していたり、デンドリマー状であったり、その他の幾何学的形状を有する粒子の場合においては、一つのファセット面または頂点から、その粒子の中心を通って、反対側の面または頂点までを測定して、その直径を定義することができる。複数のナノ粒子が凝集して大きな構造体となっている場合には、本発明における記述は、そのような凝集物の、最小の三次元サブユニットを指している。本発明において適用する場合、三次元ナノ粒子は、0.5nm〜1000nm、好ましくは1.0〜200nm、最も好ましくは1.0〜100nmの範囲の、先に定義された直径を有するであろう。
【0013】
個々の粒子が約1nm未満の厚みを有すると定義することが可能である、シート状の二次元ナノ粒子の場合を考えると、その長さ方向および幅方向の寸法は比較的に大きく、1.0nm〜100μm、好ましくは5.0nm〜10μm、最も好ましくは10.0nm〜5μmとすることができよう。そのようなタイプの物質としては、グラフェン、グラファイトおよびモンモリロナイトが挙げられるが、それらは典型的には、複数の「シート」の積層物として存在し、当業者には公知のような、各種の物理的加工法または化学的手段によって、個々の「シート」または粒子として分離することが可能である。
【0014】
さらに、筒状または円筒状の形状の「ナノ粒子」、たとえばカーボン、金属、または金属合金のナノチューブを考えると、それらの粒子は、そのチューブの一端から、中心を垂直に通過させて、チューブの反対側の端まで延在させたチューブ直径を測定することによって定義することができる。このチューブの直径の測定値は、0.5nm〜100nm、好ましくは1.0nm〜50nm、最も好ましくは1.0nm〜30nmの範囲とすることができる。この場合、そのチューブの長さは、たとえば1.0nm〜100μm、好ましくは10nm〜10μm、最も好ましくは50nm〜5μmの広い範囲をとることができる。さらに、この場合においては、それらのナノ粒子は、周知の「多層カーボンナノチューブ」の場合のように、大きな円筒の中に複数の円筒として存在していることができる。この場合において、および本発明において適用するためには、所定のいかなる多層ナノチューブ構造物においても、そのような構造物を測定し、最も外側のチューブの壁面の直径によって定義する。
【0015】
それらの内では、イオン性基またはイオン化可能基(すなわち、酸性の基)を含むナノ粒子は、それらがプロトン導電性、さらには親水性および自己増湿特性を有しているために、プロトン導電膜に応用するために、最も可能性が高いと考えられる。このようになる理由は、プロトン導電性、機械的性質、熱安定性、膜増湿性、および膜のポリマーマトリックスの中に無機ナノ充填剤を導入することによって起こりうる、燃料のクロスオーバー減少(crossover reduction)における有利な相乗効果にある。
【0016】
特に興味深いのは、そのプロトン導電性を300℃まで維持することが可能な、ジルコニウムをベースとする四価の金属酸(すなわち、酸化ジルコニウム、リン酸水素ジルコニウム、および硫酸化水酸化ジルコニウム)および特にリン酸ジルコニウム、ならびに、知られている内で最も強い固体の超酸の一つであり、プロトン電導を受け持つスルホン酸基を500℃まで保持することが可能な硫酸化ジルコニアである。
【0017】
それらのナノ粒子は、組成物中に、高分子電解質または高分子電解質/フルオロポリマーブレンド物を基準にして、0.1〜20重量パーセント、好ましくは0.1〜5重量パーセントの量で存在させる。
【0018】
フルオロポリマー
高分子電解質は、膜を形成させるための物理的、化学的、および電気化学的性質を改良するために、一種または複数のフルオロポリマー、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマーおよびコポリマーのブレンド物とすることが可能であり、それらであるのが好ましい。広い範囲の官能性を担持する高分子電解質は、使用する加工パラメーターを注意深く調節することによりPVDF(たとえばKYNAR樹脂)ブレンド物の中に満足のいくレベルで組み入れて、その高分子電解質が、たとえばスルホン酸塩、ホスホン酸塩、またはカルボン酸塩のような、イオン性/イオン化可能単位のかなりの部分を担持するようにすることができる。米国特許第6,872,781号明細書;米国特許第6,780,935号明細書;米国特許第7,449,111号明細書および米国特許第7,396,880号明細書を参照されたい(すべての特許を参考として引用し本明細書に組み入れるものとする)。
【0019】
本発明のポリマーブレンド物は、高分子電解質とフルオロポリマーとを密にブレンドしたものである。高分子電解質とフルオロポリマーとの間の結びつきが物理的な結びつきであるのが好ましいが、化学的な結びつきも含めて、物理的な結びつき以外の結びつきも本発明の範疇に入っている。フルオロポリマーの量を約5〜約95重量パーセントとし、そして高分子電解質の量を約95〜約5重量パーセントとすることができる。フルオロポリマーが約20〜約70重量パーセントの量で存在し、高分子電解質が約30〜約80重量パーセントの量で存在しているのが好ましい。
【0020】
フルオロポリマーに関しては、そのフルオロポリマーが、ホモポリマーであっても、他のタイプのポリマーであってもよく、また、フルオロポリマーの混合物であっても、フルオロポリマーと他の非フルオロポリマーとの混合物であってもよい。熱可塑性フルオロポリマーを使用するのが好ましい。好ましくは、このフルオロポリマーまたはフルオロポリマーの混合物が、存在しているその他のポリマーも含めて、他の成分との間でポリマーブレンド物を形成することが可能な各種のフルオロポリマー(単一または複数)とすることができる。そのフルオロポリマーが、たとえばポリフッ化ビニリデンホモポリマーのような、ポリフッ化ビニリデンポリマーであるのが好ましい。フルオロポリマーの他の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:少なくとも1個のフッ素原子を含むポリ(アルキレン)たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−フッ素化ビニルエーテル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−フッ素化ビニルエーテル)、ポリ(フッ素化アルキレン−コ−ビニルエーテル)またはそれらの組合せ。より好ましくは、そのフルオロポリマーが、約30%〜約100重量%、好ましくは70〜95重量%のフッ化ビニリデンと、0%〜約70重量%、好ましくは5〜30重量%の少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも一種のポリ(アルキレン)たとえばヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン、および/またはフッ化ビニルとを含むポリマー組成物である。ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー、およその他のタイプのポリマーを含むことが可能な、そのフルオロポリマーの重量平均分子量(MW)は、好ましくは約80,000MW〜約1,000,000MW、より好ましくは約100,000MW〜約500,000MWである。それらのフルオロポリマーは以下の特許に記載の技術を用いて調製することができる:米国特許第3,051,677号明細書;米国特許第3,178,399号明細書;米国特許第3,475,396号明細書;米国特許第3,857,827号明細書および米国特許第5,093,427号明細書(すべての特許を参考として引用し、それらのすべてを本明細書に組み入れるものとする)。
【0021】
マトリックスのフルオロポリマーと高分子電解質とのブレンドプロセスには、そのプロトン性/酸性基を、中和した形、好ましくはテトラアルキルアンモニウム(TAA)中和させた形へと転換させることを含んでいるのが好ましい。これは、当業者公知の各種のプロセスを用いて達成することが可能である。そのアンモニウム塩が、少なくとも186g/molの分子量を有しているのが好ましい。適切なアンモニウム塩の例としては以下のものが挙げられる:テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、および非対称タイプの残基たとえばオクチルトリメチルアンモニウムまたはベンジルトリメチルアンモニウム。
【0022】
次いで、選択したマトリックス(コ)ポリマーを適切に溶解することが可能な適切な溶媒の中で、TAA中和した高分子電解質の溶液を調製する。先に記したように、ブレンド物の溶液中のマトリックスポリマーの量を5〜95重量パーセント、そして高分子電解質の量を95〜5重量パーセントとすることができる。ブレンド物溶液の中のマトリックスポリマーを20%〜70重量パーセントの量で存在させ、高分子電解質を30〜80重量パーセントの量で存在させるのが好ましい。次いで、このブレンド溶液をキャスティングして薄いフィルムとするか、またはさらに加工して、たとえばイオン交換膜のような有用な物品とする。
【0023】
膜の形成
ブレンド溶液のキャスティングは、当業者にはよく知られた各種の手順、たとえば押出し、成形、溶媒キャスティング、およびラテックスキャスティングなどによって実施することができる。その成形したフィルムまたは膜は、単一層として使用してもよいし、あるいは、多層フィルムまたは膜の一部としてもよい。好ましい方法は、加熱を伴う溶液キャスティングである。そのようにして成形した、乾燥させる前の湿潤フィルムの厚みは、その材料の最終用途に依存するが、1.0μm〜2.0mmの間で変化させることができる。成形したフィルムは、好ましくは5.0μm〜500.0μm、最も好ましくは20.0μm〜500.0μmの厚みを有している。次いで、この湿潤フィルムを、高温の空気循環オーブンの中で乾燥させる。フィルムを乾燥させるための時間と温度は、広く変化させることができる。使用する温度は、20℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、最も好ましくは120℃〜200℃である。湿潤フィルムのための乾燥時間もまた、広く変化させることができる。オーブンでの滞留時間は、商業的に適用可能であって測定可能とするべきであり、1.0秒〜24時間、好ましくは1.0分〜2.0時間、最も好ましくは1.0分〜45.0分とすることができる。
【0024】
最終的な乾燥フィルムの厚みは、乾燥前の湿潤フィルムの元の厚みに依存する。この厚みは、最終的な物品のための用途に応じて変化するであろう。その厚みは、1.0nm〜2.0mm、好ましくは5.0μm〜500.0μm、最も好ましくは10.0μm〜300.0μmとすることができる。乾燥フィルムは、当業者には知られた典型的な方法によって基材から剥離する。
【0025】
キャスティングした乾燥ポリマーブレンド物フィルムにおける高分子電解質のドメインサイズは、1.0μm未満、より好ましくは1nm〜500nmの間とするべきである。本明細書においてドメインサイズを論ずる場合には、それは、最大ドメインサイズおよび/または平均ドメインサイズに関連する。好ましい実施態様においては、そこで引用されるドメインサイズが最大ドメインサイズであるが、それが平均ドメインサイズであってもよい。
【0026】
本発明のポリマーブレンド物のプロトン導電率は、>10mS/cm、好ましくは>50mS/cm、最も好ましくは>100mS/cmである。さらに、そのポリマーブレンド物は、高度な機械的強度、(水和した場合の)低い膨潤性、加水分解(化学的)安定性、ならびに熱水中、高温の酸の中、酸化性および/または還元性環境中における低レベルの硫黄ロス(スルホン化した場合)を有している。
【0027】
本発明のポリマーブレンド物から製造した物品、たとえば膜は、そのまま使用することもできるし、あるいは、酸性洗浄工程によってさらに処理して、テトラアルキル基を除去すると当時に、出発(コ)ポリマー成分に存在していたイオン化可能な基を再プロトン化させることもできる。
【0028】
先に説明したような各種の利点を有しているので、本発明の用途としては、フィルム、膜、燃料電池、コーティング、イオン交換樹脂、オイル回収、生体膜、電池、水精製膜などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。そうして得られた物品は、燃料電池、バッテリー、またはその他の電気化学的デバイス用途のための選択透過性膜として使用することも可能である。さらに、そうして得られた物品は、電極に適用してもよいし、あるいは膜・電極アセンブリーを構築するためにそれに適用される電極材料を有していてもよいし、各種の液体を用いて膨潤されていてもよいし、あるいは、強化用のマットもしくは多孔質ウェブの上または中に導入して機械的な一体性を向上させてもよい。
【0029】
ポリマーマトリックスの中におけるナノ粒子の分散は、特に粒子担持量が高い(すなわち、5.0重量%)場合には、望ましくない粒子−ポリマー相互作用として、固体相の激しいアグリゲーションが起きるので、熱力学的に制限を受ける可能性がある。それにも関わらず、ナノ粒子が低〜中程度の担持量(すなわち、0.5〜1重量%)の場合の複合材料膜では、対照としての非ハイブリッドPVDF/高分子電解質ブレンド物膜に比較して、プロトン導電率が一般的に改良されることが実証された。この有利な効果は、高結晶質のPVDFホモポリマーから製造された膜では特に顕著であった(7%〜14.3%増大)。同様にして、同一の粒子担持量でも、引張性能が向上した(19.5%〜22.5%弾性率増大)。可撓性がより高いPVDF/HFPコポリマーを含む膜においては特に、補強的な補剛効果(reinforcing stiffening effect)が明白であった。
【0030】
各種のPVDFグレードと架橋スルホン化アクリル系高分子電解質とのポリマーブレンド物に対して、酸化ジルコニウム、硫酸塩化水酸化ジルコニウム、およびリン酸水素ジルコニウムのナノ粒子を組み入れることによって、プロトン導電性3相複合材料膜を形成させた。それらの膜のプロトン導電性および機械的性質を、特別設計の電気化学的インピーダンススペクトロスコピーおよび二軸軸対称性変形高速処理(biaxial axisymmetric deformation high−throughput)スクリーニングツールの手段によって評価した。非ハイブリッドPVDF/PEの参照膜に比較して、得られた複合材料膜は、低〜中程度の粒子担持量で、全体として改良された導電率を示した。添加したナノ充填剤から得られる、導電率における特に有益な効果が、高結晶質のPVDFホモポリマー(すなわち、KYNAR500および731)から調製した複合材料膜において観察されたが、この場合、埋め込まれたナノ粒子の水和層がプロトン導電ルートを構成していた。可撓性がより高いPVDF:HFPコポリマー(すなわち、KYNAR2801、2821、および2851)を含む膜において特に、無機ナノ充填剤を組み入れることによって、引張性能も同様に向上したが、この場合はナノ粒子が低〜中程度の担持量のときに、補強的な補剛効果が明らかであった。しかしながら弾性率におけるこの増大は、PVDFグレードおよび粒子担持量の全域にわたって、膜の靱性にとっては有害であった。高い粒子含量の場合には、望ましくない粒子−ポリマー相互作用として、固体相の激しいアグリゲーションが起きるので、ナノ粒子の分散が熱力学的に制限された。弾性率および強度の発現にはナノ粒子の分散の程度が極めて重要であるので、ナノ粒子の担持量が高いところでは、すべての機械的性質が顕著に低下した。アグリゲート化されたナノ粒子が、そうでなければプロトン導電チャンネルに相当する容積を占拠することによって、拡散抵抗が増大する結果となるために、プロトン導電性も同様に影響を受けた。
【実施例】
【0031】
複合材料膜の合成とプロトン化
有機/有機/無機の3相ナノ複合材料プロトン導電性複合材料膜を、ジルコニウムベースのナノ粒子、ならびに5種のKYNAR(PVDF)グレードと、メタクリル酸2−スルホエチル(SEM)(約69重量%)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)(約15重量%)、メタクリル酸メチル(MMA)(約8重量%)、およびスチレン(約7重量%)のランダムコポリマーからなるスルホン化アクリル系高分子電解質(PE)(280gPE/モルSO3Hの当量)との個々のブレンド物を混合することによって調製した。その5種のPVDFのグレードには、2種のPVDFホモポリマー(KYNAR500およびKYNAR731)、および3種のPVDFとヘキサフルオロプロピレン(PVDF:HFP)のコポリマー(KYNAR2801、KYNAR2821、およびKYNAR2851)(Arkema Inc.製)が含まれるが、それらを、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(Sigma−Aldrich Co.製、純度≧99.5%)に溶解させて、溶液あたりの全濃度を10重量%とした。これらのPVDF溶液を、PEの原液(NMP中固形分25重量%)と、65:35(PVDF:PE、酸の形態)の一定質量比(乾量基準)で混合した。3種のタイプ、すなわち、酸化ジルコニウム(IV)ナノ粉体(ZrO2)(粒径<100nm)、硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)(Zr(H2SO4)4)、およびリン酸水素ジルコニウム(IV)(Zr(HPO4)2)(Sigma−Aldrich Co.製)のジルコニウムベースの粒子を使用した。メソポーラスな硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)およびリン酸水素ジルコニウム(IV)粒子は、ジルコニア製の乳鉢および乳棒を用いて粉砕することによってそのサイズをさらに細かくしたが、酸化ジルコニウムナノ粉体は、入手したままで使用した。最終的な粒径は、硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)では約100〜300nm、リン酸水素ジルコニウム(IV)では200〜1000nmであった。本明細書の残りにおいては、簡単とするために、酸化ジルコニウムならびに変更を施した硫酸塩化水酸化ジルコニウムおよびリン酸水素ジルコニウムをそれぞれ、ZrO、ZrS、およびZrHPと呼ぶことにする。PVDF/PEブレンド物と混合する前に、ナノ粒子の解凝集を行ったが、それには、NMP中で6時間激しく撹拌して分散させ、次いで超音波浴の中で一夜超音波処理をし、次いでホーンタイプのソニケーターを用いて20分間「強い」超音波処理をした。それぞれのタイプのナノ粒子懸濁液をそれぞれのPVDF/PEブレンド物と、0.5重量%(低)、1重量%(中)および5重量%(高)(乾量基準)で混合して、全部で45種の混合物を得た(さらに、ナノ粒子を含まない5種の参照用PVDF/PEブレンド物を含む)。それらのPVDF/PE/ZrX(X=O、P、HP)混合物を、Desmodur N3300A(Bayer AG.製)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート誘導トリイソシアネート架橋剤と、1:0.8のOH:NCO比(高分子電解質のすべてのヒドロキシル基と反応させるのに必要な架橋剤の化学量論的量の80モル%)で組み合わせた。その最終的なブレンド物を、室温で不活性な窒素雰囲気下に約30分かけて完全に混合し、次いで超音波処理(約15分間)によって脱気とナノ粒子の再分散とを行ってから、直ちにフィルムコーティングを行った。コーティングは、ナイフエッジ装置を使用し、Piranha溶液(70%H2SO4、9%H2O2、21%H2O)中80℃で2時間かけて予め洗浄しておいたシリコン<100>基材(Silicon,Inc.製)の上に液状のPVDF/PE/ZrX膜を拡げることによって実施した。そうして得られたフィルムを、強制対流オーブン中175℃で20分間かけて硬化させてPEを架橋させ、過剰のNMPを除去した。室温で脱イオン(DI)水の中に浸漬させることによって、硬化させた複合材料膜をシリコン基材から剥離させた。
【0032】
複合材料膜は、1M塩酸溶液中80℃で2時間かけて洗浄してから、DI水中で15分間水洗いした。その酸洗浄した膜を、1MのH2SO4中に80℃で2時間浸漬させることによってプロトン化させ、次いで、DI水中で15分間ずつ、洗浄水のpHが4以上になるまで連続して数回洗い流して過剰の硫酸を除去した。プロトン化された複合材料膜、さらにはナノ粒子を含まないPVDF/PE参照物質のコンディショニングを、18.2MΩの沸騰水中に1時間浸漬させることによって実施して、膜が完全に膨潤するようにした。膨潤膜は、導電率および機械的性質の測定を実施するまで、18.2MΩの水の中に保存しておいた。
【0033】
複合材料膜の特性解析
プロトン導電率および機械的性質の高速処理測定
プロトン導電率の測定は、本願発明者らの研究室で設計した特注の自動化四探針法高速処理導電率測定器(HTC)を使用した、交流電気化学的インピーダンススペクトロスコピー(EIS)によって実施した。約25℃で18.2MΩの水中に浸漬させておいた複合材料膜および参照膜の導電率の測定は、定電圧モードで、1000Hz、30mV(約20mV RMS)の励起信号と、5000サイクルの応答信号積分時間の後に5秒間の安定化時間とを用いて実施した。
【0034】
機械的性質の特性解析は、本願発明者らの研究室で以前に開発した設計に基づく改良高速処理機械的試験装置(HTMECH)を用いて実施した。すべての機械的特性解析試験は、直径1.24mmのニードルを使用し、10mm/秒の一定速度で実施した(ニートルの、絶縁プレートの孔の直径に対する比率:0.413)。ロードセル信号のサンプリング速度は、1秒あたり5000サンプルに設定した。膜はすべて、完全に水和させた状態で試験した。特に断らない限り、HTMECH試験からの生データのコンディショニングおよび解析は、ノイズ分散(ノイズが白色であるとの想定はしなかった)、普遍的閾値、および直交八次シムレット(Sym8)ウェーブレットタイプを評価するための多重レベル倍率変更を用いたアンデシメーテッド(undecimated)ウェーブレット変換か、または、一次チェビシェフ係数、通過帯域リプル0.3dB、および遮断周波数10Hzを使用した非因果的零相(non−causal zero−phase)IIRフィルターのいずれかを用いて実施した。弾性率の線形フィッティングについての二重平方フィッティング感度は95%に設定した。
【0035】
X線回折(XRD)
複合材料膜およびナノ粒子粉体のX線回折スペクトルは、PANalytical X’Pert PRO回折計(PANalytical製)を使用して記録した。入射ビーム構成は、固定1/16度(0.19mm)拡散スリット、0.04radのSollerスリット、およびCuKβ照射を排除するためのニッケルβ−フィルターを備えた、Cu−陽極管(λCuKα1=1.540598Å、λCuKα2=1.544426Å)を45kV、40mAで運転することからなっていた。検出器(PANalytical X’Celerometer)には、10mmの散乱線除去スリットおよび0.04radのSollerスリットが備えられていた。データは、1度〜65度の2θ範囲にわたって、ステップサイズ0.033度で集めた。
【0036】
フーリエ変換赤外スペクトロスコピー(FT−IR)
複合材料膜の赤外吸収スペクトルは、KBrビームスプリッターと組み合わせたBruker Equinox55分光計(Bruker Optics Inc.製)を用いて室温でデータ収集をした。スペクトルは、400〜5000cm-1の範囲について分解能4cm-1で、128回分を平均して記録した。
【0037】
走査型電子顕微鏡法(SEM)
複合材料膜の断面領域についての高分解能画像は、LEO 1530熱電界放出走査型電子顕微鏡(LEO Electron Microscopy Group製)を使用し10keVで運転して得た。SEM撮影のための膜のサンプルは、液体窒素中で極低温破砕をしてから、金を用いて真空蒸着することにより調製した。
【0038】
統計的解析
不平衡一変量一般線形モデル(unvalanced univariate general linear model)(GLM)(二元および三元、タイプIII平方和)を使用して、有意因子を評価し、p<0.05を有意と定義した(5%有意水準)。三元GLM試験からの有意因子の対比較は、Sidak−補正信頼区間を用いて、主効果の重み無し平均を比較することにより実施したが、それに対して、TamhaneのT2事後試験を、二元GLM試験からの有意因子の対比較のために使用した。結果は全て、(表示に従って)平均±平均の標準誤差(±S.E.M.)、または平均±95%信頼区間として表した。
【0039】
結果および考察
複合材料膜の微細構造
ジルコニウムベースの添加剤(ZrX)の構造は、それらの有機/無機ハイブリッド性のために、複合材料膜の特性解析に関係している。したがって、膜の特性解析をする前に、粉体X線回折(XRD)を用いて各種のジルコニウムベースの固体粒子の予備的な検討を完了させた。得られたXRDスペクトルを図1に再現する。ジルコニア(ZrO)のスペクトル中の結晶質の反射(ブラッグピーク)、特に28.2度、30.2度、および31.5度に位置する散乱角(2θ)は、単斜晶系と正方晶系のZrO相の混合結晶形を示している。対照的に、ZrHPおよびZrSは、結晶質の反射を有さない、非晶性のハローを特徴としている。ZrHPの場合においては、その非晶質スペクトルは、無秩序な層アグリゲーション、従って層状のα−ZrHPおよび/またはγ−ZrHPを示す。実際的な見地からは、このことが、ZrHPベースの複合材料膜のプロトン導電率全体にとっては有利に働く可能性があるが、その理由は、非晶質なZrHPが、比較対象の結晶質および半晶質のα−ZrHPおよびγ−ZrHPよりも高い導電率を示すからである(100℃、95%相対湿度(RH)で1〜5×10-3に対して、それぞれ1.8×10-5および2×10-4S/cm)。同様にして、非晶質のZrSをベースとする膜の導電率も、非晶質物質が一般的に結晶質の対照物よりも大きい表面積を示すということから、より多くの表面酸サイトが露出しているということによって有利となる可能性があろう。
【0040】
PVDFマトリックスの中に高分子電解質(PE)またはZrXのいずれかを組み入れると、αからβへの相転移が誘起されることによって、PVDFの結晶質構造が乱され、その結果として、β相の多形が、その複合材料膜のPVDF支持体マトリックスの中で優勢となるということが知られており、このことは、図2に示したような広角X線回折(XRD)データにも認められる。複合材料膜の代表的なXRDスペクトルにおける28.2度、30.2度、および31.5度の回折ピークは、ポリマーマトリックスの中に埋め込まれたZrO粒子に対応している。これらの結晶質反射の強度の変動は、粒子担持量が異なっていることの明瞭な指標である。ポリマーの溶液または分散体に対して無機成分を添加することによってポリマー複合材料を調製する際に最も重要な関心事は、そのポリマーマトリックスの内部で高度に分散された固体相が形成されるかどうかである。したがって、複合材料膜のPVDF/PEポリマーマトリックス中におけるジルコニウムベースの添加剤の分散を評価するために、SEM画像を採用した(図3a〜e)。特に担持量が高い場合には、粒子がアグリゲートして、クラスターを形成し、それが膜全体にわたって不均質に分散しているということが容易に認められる。したがって、粒子担持量が低い場合には、固体相の分散体を安定化させることが可能な、ZrXとPVDFの極性基との間の水素結合および/または双極子−双極子相互作用に基づく相互誘引的な作用が生じうるにも関わらず、粒子質量分率が中程度および高いPVDF/PE/ZrX複合材料膜において認められるアグリゲーション挙動は、ZrX粒子の親水性表面と疎水性ポリマーマトリックスとの間の一般的には望ましくない相互作用によって説明することができる。特に表面変性剤または相溶化剤をまったく使用しない場合には、ナノ粒子では表面対容積の比率が高いために、この非相溶性が強くなる。同様にして、ZrO粒子の場合においては、それらが結晶質の形態をとっているために、表面対容積の比率が低下していることで、ZrSおよびZrHPに比較すると、質量分率全体で、この添加剤がより良好な分散となっていることが説明できるであろう(図3dおよび3e)。
【0041】
PVDF/PEマトリックス中におけるナノ粒子の分散性を改良するために、たとえば、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムを用いて有機変性し、PVDF/PEブレンド物と相溶性のあるNMPの中に予備分散させた粒子のゲルを形成させることによる、ジルコニウムベースのナノ粒子の相溶化および予備的表面剥離など、その他の手段を使用することが可能であるということも考えられる。
【0042】
プロトン導電率
45種の異なったジルコニウムベースの複合材料膜、さらには5種のPVDF/PE参照膜についての高処理導電率(HTC)スクリーニングからのプロトン導電率を、図4a〜eに示す。プロットの最初の評価からは、PVDF:HFPコポリマーを含む膜がPVDFホモポリマーの膜に対して、総合的により高い導電率の値を示していて、このことは、非ハイブリッドのPVDF/PEプロトン交換膜についての本願発明者らの従来の知見と一致している。ナノ粒子の含量が高いものでは、それに相当するナノ粒子を含まない対照物に比較して、複合材料膜においてプロトン導電率が一般的に低下していることもまた認められるが、このことは、粒子の質量分率が高いところで認められる粒子のアグリゲーションおよびクラスタリングに直接関連している可能性がある(図3dおよび3e)。さらに、PVDF/PEブレンド物に対してジルコニウムベースの添加剤を組み入れることによる見かけ上有利な効果は、PVDFホモポリマー(KYNAR PVDF 500および731)を含む複合材料膜において、ナノ粒子が低〜中程度の担持のときに明らかである。複合材料膜からの導電率データを、不平衡一般線形モデル(GLM)を使用した統計的解析にかけた。導電率の初期包括(initial global)解析(三元GLM)からは、ナノ粒子濃度(F(2,1181)=54.07、p<0.001);ナノ粒子タイプ(F(2,1181)=20.64、p<0.001)(おそらくは、各種のジルコニウムベースのナノ粒子の間の酸度が異なっていることに関係している);ならびにPVDFグレード(F(4,1181)=172.58、p<0.001)の統計的に有意な効果が明らかとなった。図5は、複合材料膜についての、ナノ粒子のタイプおよびナノ粒子の質量分率(いずれも有意因子と認められた)の関数としての(GLM分析からの)プロトン導電率の重み無し平均のプロットを示している。後者の効果は、ナノ粒子担持量が5重量%に相当する、導電率の重み無し平均が最も低いことからも直ぐに理解されるが、このことは、高いナノ粒子含量では固体相のアグリゲーションのために上述のように導電率が低下するということを裏書きしている。さらに、非ハイブリッドPVDF/PE参照物において、導電率における総合的な実効利得が少しある(2〜3%)ということは、0.5重量%および1重量%のジルコニウムベースの添加剤を含む複合材料膜についても認められる(図5、右)。ナノ粒子のタイプによって平均導電率が明らかに変動することも同様に実証され(図5、左)、ZrSが、ZrOおよびZrHPよりも顕著な利点を有している。この挙動は、硫酸化ジルコニア固体の酸度が公知のすべての固体超酸の中では最も強いものに入るので、予想されていたことである(Hammet酸度関数Hθ≦−16.04)。さらに、ZrOベースの膜とZrHPベースの膜との間で認められる導電率の差が小さいということは、ZrHPに比較してZrO固体酸導電体ではわずかに改良された導電率が観察されることと一致している。
【0043】
興味深いことには、PVDF/PEブレンド物に対してジルコニウムベースの酸無機充填剤を添加することによって生じる統計的に有意な(PVDFタイプによる二元GLM、p<0.05)導電率の増大は、PVDFホモポリマーを含む膜(低〜中程度のナノ粒子の担持量)の場合においてのみ起きた(図4aおよび4b)。特に、ナノ粒子含量が0.5重量%と1重量%のところでそれぞれ、KYNAR500をベースとする膜では、9.5%および7%の全導電率の増大を示したが、それに対してKYNAR731を含むものでは12.4%および14.3%の改良を示した(独立した二元GLMからの重み無し平均の比較)。
【0044】
機械的強度および化学的な安定性が向上する可能性も含めて、ポリマー性プロトン交換膜の中に固体酸粒子を組み入れることの主たる目的の一つは、水和レベルの変化に対する膜の感受性を抑制すること、および中程度の操作温度(100〜200℃)におけるそれらの性能を改良することである。
【0045】
機械的性質
ポリマーマトリックス中の無機添加剤の量およびそれらの分散度を調節することは、可撓性および引裂き強度の面で複合材料膜に十分な機械的性質を与えるための基本的な因子である。したがって、複合材料膜の機械的な特性解析は、二つの変数、すなわち弾性率および靱性に焦点を合わせた。重要なことは、慣用される機械的特性解析系においては典型的な一軸変形とは対照的に、HTMECH試験においては、膜を軸対称性二軸変形にかけるということを強調しておく。したがって、本明細書に記載された結果を一軸引張試験と比較する場合には、それら二つの変形モデルの間では機械的な応答性が当然異なってくると考えられるので、注意しなければならない。
【0046】
ナノ粒子の質量分率の関数として、複合材料膜の弾性率および靱性の相当するプロファイルを、それぞれ図6および7に示す。プロトン導電率の場合に実施したのと同様の統計的解析からは、膜の弾性率におよぼす、ナノ粒子の含量(F(2,1105)=37.19、p<0.001)、ナノ粒子のタイプ(F(2,1105)=11.3、p<0.001)、およびPVDFのグレード(F(4,1105)=249.52、p<0.001)の有意な効果が明らかとなった。しかしながら、ナノ粒子の含量およびタイプの「実際的な」効果は、PVDFのグレードの効果に比較すると弱いものである(ηp2≦0.06対ηp2=0.48、ηp2は、偏イータ2乗統計量である)。このことは、PVDFの支持体マトリックスが膜の引張性能を与えていることから、予想されることである。同様にして、膜の靱性におよぼす、ナノ粒子の含量(F(2,1105)=221.58、p<0.001)、ナノ粒子のタイプ(F(2,1105)=129.94、p<0.001)、およびPVDFのグレード(F(4,1105)=66.05、p<0.001)の有意な効果も同定された。しかしながら、それらが膜の弾性率におよぼす効果とは対照的に、ナノ粒子のタイプおよび含量は、靱性に対しては重要な効果を有している。一般的には、ナノ粒子のサイズは、クラックブリッジング機構(crack−bridging mechanism)を介しての強靱化効果を付与するには小さすぎ、そしてそれらは、クラック軌跡のくねり(crack trajectory tortuosity)を効果的に促進させることはできない。したがって、ナノ粒子のタイプおよび含量が靱性に対して強い効果を有していることは、ナノ粒子を挿入することによって生じる、膜の剛化および/または欠陥部位のような因子に直接的に関連している可能性がある。
【0047】
膜の弾性率に対するナノ粒子の含量の効果は低いけれども、低〜中程度の粒子担持量では、非ハイブリッド膜に比較して明らかな補強効果が認められる。その効果は、可撓性のPVDF:HFPコポリマーを含む複合材料膜では特に明らかであり(統計的に有意、PVDFのタイプによる二元GLM、p<0.05)、従って、膜の剛性における増大を示唆している。それとは対照的に、すべてのナノ粒子含量において、すべての複合材料膜で靱性が低下していたが(統計的に有意、PVDFのタイプによる二元GLM、p<0.001)、おそらくこれは、粒子担持量が高いところでは、固体相のアグリゲーションによって上述のような膜の剛化および高密度で欠陥部位があるためであろう(図3dおよび3e)。複合材料膜の機械的性質におよぼす無機ジルコニウムベースのナノ充填剤の効果をさらに視覚化させるために、弾性率および靱性の包括重み無し平均を図8に示す。参照のPVDF/PE膜に比較して、総合弾性率を特徴とする明らかな補強的な補剛効果が、ナノ粒子の担持量が0.5重量%および1重量%のときにそれぞれ、19.5%および22.5%増大していることが実証されている。この剛直化は、同一のナノ粒子含量では、膜靱性の総合的な低下(29.7%および33.4%の低下)と完全に相関がある。これらの結果は、ナノ複合材料が効果的に剛性化作用を有するものの、靱性低下の結果として早々と低下する傾向があるという、他の有機/無機系において観察される機械的挙動と一致している。ナノ粒子の担持量が中程度から高へと変化させたときの、全弾性率の突然の低下(22.5%の上昇から2%の降下まで)およびさらなる靱性の低下(33.4%〜46.9%の低下)は、粒子の凝集から誘導される膜の欠陥が生成して、機械的な変形の際の膜のエネルギー吸収性に悪影響が出ていることを裏付けている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種または複数の高分子電解質と一種または複数のタイプのナノ粒子とのブレンド物から形成される複合ブレンド物膜に関する。そのブレンド物がさらに、一種または複数のフルオロポリマーを含んでいれば好ましい。ナノ粒子を添加すると、その膜の導電性および機械的性質が向上することが見出された。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)の主要成分の一つがポリマー電解質膜(PEM)である。PEMは、アノードとカソードとの間にプロトン輸送ビヒクルを与えると同時に、燃料と酸化剤の流れが相互混合することを妨げるバリヤーとしても機能する、プロトン導電性高分子固体物質である。PEMは、これらのプロトン輸送性とガスバリヤー性に加えて、燃料電池を適切に動作させるためのその他の本質的な要件を満たす必要があるが、そのような要件としては、低導電性、水輸送性、高耐加水分解安定性、とりわけ優れた機械的結着性が挙げられる。
【0003】
この数年来、現実のPEMFC技術(主としてペルフルオロスルホン酸(PFSA)膜をベースとしている)と商業化目標(たとえば、可搬性燃料電池のためのDOE目標)との間のギャップを埋める目的で、新規な、経済性に優れ、操作性が安定したPEM材料を開発することに研究の努力の焦点が合わせられてきた。これら新規なPEM材料の開発においては、PFSAベースの膜の改良、高性能炭化水素ポリマーの機能化、不活性でイオン伝導性前駆体のポリマーブレンド物、および有機/無機複合材料膜、および有機/無機複合またはハイブリッドプロトン交換膜など、各種のアプローチ方法が考案されてきた。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)および共有結合的に架橋されたスルホン化アクリル系高分子電解質の半相互貫通ネットワークからのPEMが、標準的なNAFIONと同等またはそれ以上の、受容可能なプロトン導電性および機械的性質を示すということが見出されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PVDF/PE膜の導電性および機械的性質をさらに改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/高分子電解質ブレンド物の中に、ナノ充填剤、特にジルコニウムベースのナノ充填剤を添加することによって、改良された導電性および機械的性質を有する、有機/有機/無機の3相PEMが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ZrO、ZrS、およびZrHPナノ粒子粉体の広角X線回折スペクトル。
【図2】ナノ粒子担持量を変化させた複合材料膜の広角X線回折スペクトル。
【図3】各種のPVDF/PE/ZrX複合材料膜の断面の代表的な走査型電子顕微鏡法画像。
【図4】PVDF/PE/ZrX複合材料膜のプロトン導電率。
【図5】ナノ粒子のタイプ(左側)およびナノ粒子含量(右側)の関数としての、導電率の包括重み無し平均(global unweighted means)。エラーバーは、95%信頼区間の上限および下限を表している。
【図6】PVDFグレードによるPVDF/PE/ZrX複合材料膜
【化1】
の弾性率(二軸)。(a)KYNAR(登録商標)500、(b)KYNAR(登録商標)2851。
【図7】PVDFグレードによるPVDF/PE/ZrX複合材料膜
【化2】
の靱性(二軸)。(a)KYNAR(登録商標)500、(b)KYNAR(登録商標)2851。
【図8】ナノ粒子含量の関数として、三元一変量不平衡(3−way univariate unbalanced)GLM分析(フルファクトリアルモデル(full factorial model))から推算した弾性率および靱性の包括重み無し平均。エラーバーは、95%信頼区間の上限および下限を表している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複合ブレンド物膜は、高分子電解質と、ナノ粒子と、任意成分ではあるが好ましいフルオロポリマーとの複合ブレンド物膜である。
【0009】
高分子電解質
高分子電解質は、イオン性基および/またはイオン化可能基、たとえば当業者には公知のようなスルホン化された基および/またはホスホン化された基を含むポリマー樹脂である。高分子電解質には一般的に、イオン性および/またはイオン化可能なペンダント基を含む、脂肪族または芳香族(炭化水素、フッ素化またはペルフルオロ化)含有主鎖が含まれる。1モルのイオン性/イオン化可能基あたりの物質のグラム数として表される当量は、各種所定の物質の中でのイオン性/イオン化可能基の含量を表現するのに使用される典型的な方法である。本発明においては、使用される高分子電解質は、130〜2000g/molの範囲の当量を有している。一種または複数のイオン性/イオン化可能基を含むモノマーを、他のモノマーと共に重合させてコポリマーを形成させることができる。そのコポリマーの残りの部分は、そのイオン性/イオン化可能基含有モノマーと重合することが可能な一種または複数のモノマーで構成されている。
【0010】
本明細書で使用するとき、ポリマーおよび(コ)ポリマーという用語は、一種または複数のモノマーから形成されたポリマーを指している。それには、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、および四種以上のモノマーから形成されたポリマーが含まれる。コポリマーは、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方、さらにはグラフトコポリマーも指している。コポリマーという用語は、ホモポリマーの側基のいくつかを部分的に反応/置換させることによって、側鎖として2種以上の異なった残基を有するポリマー骨格とすることによって形成される、コポリマーに似せたポリマーを記述するのにも使用される。コポリマーは一般的に、20〜99モルパーセント、より好ましくは30〜90モルパーセントの高分子電解質を含んでいる。
【0011】
ナノ粒子
複合材料膜において使用するための候補無機物質としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:シリカ/シリケート、チタニア、ジルコニア、アルミナ、ゼオライト、スルホン化シリカ、無機ヘテロポリ酸(たとえば、金属酸化物担体上のリンタングステン酸粒子)、リン酸水素ジルコニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、ナノダイヤモンド、スルホン化ナノチューブ、ナノクレーたとえばモンモリロナイト、スルホン化ナノクレーたとえばスルホン化グラフトを含むモンモリロナイト、シルセスキオキサン、スルホン酸を含む基を用いて官能化されたシルセスキオキサン、および金属−有機骨格(MOF)物質。興味深いものとしてはさらに、遷移金属の硫化物、セレン化物、およびテルル化物、たとえばセレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、および硫化鉛(PdS)、さらには、さらなる触媒性能を示すことが可能な元素金属、たとえばパラジウム、金および白金の「伝統的な」ナノ粒子も挙げられる。それらのナノ粒子を、部分的または全面的に、たとえばポリマー格子、架橋高分子量イオン交換樹脂、液晶タイプの分子のクラスター、および有機官能性多面体シルセスキオキサンの場合のように本来的に有機のものとすることもまた考えられる。これらの場合においては、その有機タイプのナノ粒子に、当業者には周知のように、マトリックス物質の中で、それらを分散または固定するのに役立つ可能性があるイオン性、イオン化可能、またはさらなる官能性をさらに担持させることもできるであろう。
【0012】
その化学的性質を上に述べたような、候補となる無機ナノ粒子は、対象となっている粒子の一般的な幾何学的形状に応じて、一次元的または多次元的に測定したそれらの物理的なサイズによって定義することも可能である。たとえばシリカ、シルセスキオキサン、白金のような、典型的な三次元球状粒子は、その粒子の一端から、粒子の中心を垂直に通って反対側の端までの粒子直径を測定することによって定義することができる。ファセット面を有していたり、デンドリマー状であったり、その他の幾何学的形状を有する粒子の場合においては、一つのファセット面または頂点から、その粒子の中心を通って、反対側の面または頂点までを測定して、その直径を定義することができる。複数のナノ粒子が凝集して大きな構造体となっている場合には、本発明における記述は、そのような凝集物の、最小の三次元サブユニットを指している。本発明において適用する場合、三次元ナノ粒子は、0.5nm〜1000nm、好ましくは1.0〜200nm、最も好ましくは1.0〜100nmの範囲の、先に定義された直径を有するであろう。
【0013】
個々の粒子が約1nm未満の厚みを有すると定義することが可能である、シート状の二次元ナノ粒子の場合を考えると、その長さ方向および幅方向の寸法は比較的に大きく、1.0nm〜100μm、好ましくは5.0nm〜10μm、最も好ましくは10.0nm〜5μmとすることができよう。そのようなタイプの物質としては、グラフェン、グラファイトおよびモンモリロナイトが挙げられるが、それらは典型的には、複数の「シート」の積層物として存在し、当業者には公知のような、各種の物理的加工法または化学的手段によって、個々の「シート」または粒子として分離することが可能である。
【0014】
さらに、筒状または円筒状の形状の「ナノ粒子」、たとえばカーボン、金属、または金属合金のナノチューブを考えると、それらの粒子は、そのチューブの一端から、中心を垂直に通過させて、チューブの反対側の端まで延在させたチューブ直径を測定することによって定義することができる。このチューブの直径の測定値は、0.5nm〜100nm、好ましくは1.0nm〜50nm、最も好ましくは1.0nm〜30nmの範囲とすることができる。この場合、そのチューブの長さは、たとえば1.0nm〜100μm、好ましくは10nm〜10μm、最も好ましくは50nm〜5μmの広い範囲をとることができる。さらに、この場合においては、それらのナノ粒子は、周知の「多層カーボンナノチューブ」の場合のように、大きな円筒の中に複数の円筒として存在していることができる。この場合において、および本発明において適用するためには、所定のいかなる多層ナノチューブ構造物においても、そのような構造物を測定し、最も外側のチューブの壁面の直径によって定義する。
【0015】
それらの内では、イオン性基またはイオン化可能基(すなわち、酸性の基)を含むナノ粒子は、それらがプロトン導電性、さらには親水性および自己増湿特性を有しているために、プロトン導電膜に応用するために、最も可能性が高いと考えられる。このようになる理由は、プロトン導電性、機械的性質、熱安定性、膜増湿性、および膜のポリマーマトリックスの中に無機ナノ充填剤を導入することによって起こりうる、燃料のクロスオーバー減少(crossover reduction)における有利な相乗効果にある。
【0016】
特に興味深いのは、そのプロトン導電性を300℃まで維持することが可能な、ジルコニウムをベースとする四価の金属酸(すなわち、酸化ジルコニウム、リン酸水素ジルコニウム、および硫酸化水酸化ジルコニウム)および特にリン酸ジルコニウム、ならびに、知られている内で最も強い固体の超酸の一つであり、プロトン電導を受け持つスルホン酸基を500℃まで保持することが可能な硫酸化ジルコニアである。
【0017】
それらのナノ粒子は、組成物中に、高分子電解質または高分子電解質/フルオロポリマーブレンド物を基準にして、0.1〜20重量パーセント、好ましくは0.1〜5重量パーセントの量で存在させる。
【0018】
フルオロポリマー
高分子電解質は、膜を形成させるための物理的、化学的、および電気化学的性質を改良するために、一種または複数のフルオロポリマー、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマーおよびコポリマーのブレンド物とすることが可能であり、それらであるのが好ましい。広い範囲の官能性を担持する高分子電解質は、使用する加工パラメーターを注意深く調節することによりPVDF(たとえばKYNAR樹脂)ブレンド物の中に満足のいくレベルで組み入れて、その高分子電解質が、たとえばスルホン酸塩、ホスホン酸塩、またはカルボン酸塩のような、イオン性/イオン化可能単位のかなりの部分を担持するようにすることができる。米国特許第6,872,781号明細書;米国特許第6,780,935号明細書;米国特許第7,449,111号明細書および米国特許第7,396,880号明細書を参照されたい(すべての特許を参考として引用し本明細書に組み入れるものとする)。
【0019】
本発明のポリマーブレンド物は、高分子電解質とフルオロポリマーとを密にブレンドしたものである。高分子電解質とフルオロポリマーとの間の結びつきが物理的な結びつきであるのが好ましいが、化学的な結びつきも含めて、物理的な結びつき以外の結びつきも本発明の範疇に入っている。フルオロポリマーの量を約5〜約95重量パーセントとし、そして高分子電解質の量を約95〜約5重量パーセントとすることができる。フルオロポリマーが約20〜約70重量パーセントの量で存在し、高分子電解質が約30〜約80重量パーセントの量で存在しているのが好ましい。
【0020】
フルオロポリマーに関しては、そのフルオロポリマーが、ホモポリマーであっても、他のタイプのポリマーであってもよく、また、フルオロポリマーの混合物であっても、フルオロポリマーと他の非フルオロポリマーとの混合物であってもよい。熱可塑性フルオロポリマーを使用するのが好ましい。好ましくは、このフルオロポリマーまたはフルオロポリマーの混合物が、存在しているその他のポリマーも含めて、他の成分との間でポリマーブレンド物を形成することが可能な各種のフルオロポリマー(単一または複数)とすることができる。そのフルオロポリマーが、たとえばポリフッ化ビニリデンホモポリマーのような、ポリフッ化ビニリデンポリマーであるのが好ましい。フルオロポリマーの他の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:少なくとも1個のフッ素原子を含むポリ(アルキレン)たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−フッ素化ビニルエーテル)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−フッ素化ビニルエーテル)、ポリ(フッ素化アルキレン−コ−ビニルエーテル)またはそれらの組合せ。より好ましくは、そのフルオロポリマーが、約30%〜約100重量%、好ましくは70〜95重量%のフッ化ビニリデンと、0%〜約70重量%、好ましくは5〜30重量%の少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも一種のポリ(アルキレン)たとえばヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン、および/またはフッ化ビニルとを含むポリマー組成物である。ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー、およその他のタイプのポリマーを含むことが可能な、そのフルオロポリマーの重量平均分子量(MW)は、好ましくは約80,000MW〜約1,000,000MW、より好ましくは約100,000MW〜約500,000MWである。それらのフルオロポリマーは以下の特許に記載の技術を用いて調製することができる:米国特許第3,051,677号明細書;米国特許第3,178,399号明細書;米国特許第3,475,396号明細書;米国特許第3,857,827号明細書および米国特許第5,093,427号明細書(すべての特許を参考として引用し、それらのすべてを本明細書に組み入れるものとする)。
【0021】
マトリックスのフルオロポリマーと高分子電解質とのブレンドプロセスには、そのプロトン性/酸性基を、中和した形、好ましくはテトラアルキルアンモニウム(TAA)中和させた形へと転換させることを含んでいるのが好ましい。これは、当業者公知の各種のプロセスを用いて達成することが可能である。そのアンモニウム塩が、少なくとも186g/molの分子量を有しているのが好ましい。適切なアンモニウム塩の例としては以下のものが挙げられる:テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、および非対称タイプの残基たとえばオクチルトリメチルアンモニウムまたはベンジルトリメチルアンモニウム。
【0022】
次いで、選択したマトリックス(コ)ポリマーを適切に溶解することが可能な適切な溶媒の中で、TAA中和した高分子電解質の溶液を調製する。先に記したように、ブレンド物の溶液中のマトリックスポリマーの量を5〜95重量パーセント、そして高分子電解質の量を95〜5重量パーセントとすることができる。ブレンド物溶液の中のマトリックスポリマーを20%〜70重量パーセントの量で存在させ、高分子電解質を30〜80重量パーセントの量で存在させるのが好ましい。次いで、このブレンド溶液をキャスティングして薄いフィルムとするか、またはさらに加工して、たとえばイオン交換膜のような有用な物品とする。
【0023】
膜の形成
ブレンド溶液のキャスティングは、当業者にはよく知られた各種の手順、たとえば押出し、成形、溶媒キャスティング、およびラテックスキャスティングなどによって実施することができる。その成形したフィルムまたは膜は、単一層として使用してもよいし、あるいは、多層フィルムまたは膜の一部としてもよい。好ましい方法は、加熱を伴う溶液キャスティングである。そのようにして成形した、乾燥させる前の湿潤フィルムの厚みは、その材料の最終用途に依存するが、1.0μm〜2.0mmの間で変化させることができる。成形したフィルムは、好ましくは5.0μm〜500.0μm、最も好ましくは20.0μm〜500.0μmの厚みを有している。次いで、この湿潤フィルムを、高温の空気循環オーブンの中で乾燥させる。フィルムを乾燥させるための時間と温度は、広く変化させることができる。使用する温度は、20℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、最も好ましくは120℃〜200℃である。湿潤フィルムのための乾燥時間もまた、広く変化させることができる。オーブンでの滞留時間は、商業的に適用可能であって測定可能とするべきであり、1.0秒〜24時間、好ましくは1.0分〜2.0時間、最も好ましくは1.0分〜45.0分とすることができる。
【0024】
最終的な乾燥フィルムの厚みは、乾燥前の湿潤フィルムの元の厚みに依存する。この厚みは、最終的な物品のための用途に応じて変化するであろう。その厚みは、1.0nm〜2.0mm、好ましくは5.0μm〜500.0μm、最も好ましくは10.0μm〜300.0μmとすることができる。乾燥フィルムは、当業者には知られた典型的な方法によって基材から剥離する。
【0025】
キャスティングした乾燥ポリマーブレンド物フィルムにおける高分子電解質のドメインサイズは、1.0μm未満、より好ましくは1nm〜500nmの間とするべきである。本明細書においてドメインサイズを論ずる場合には、それは、最大ドメインサイズおよび/または平均ドメインサイズに関連する。好ましい実施態様においては、そこで引用されるドメインサイズが最大ドメインサイズであるが、それが平均ドメインサイズであってもよい。
【0026】
本発明のポリマーブレンド物のプロトン導電率は、>10mS/cm、好ましくは>50mS/cm、最も好ましくは>100mS/cmである。さらに、そのポリマーブレンド物は、高度な機械的強度、(水和した場合の)低い膨潤性、加水分解(化学的)安定性、ならびに熱水中、高温の酸の中、酸化性および/または還元性環境中における低レベルの硫黄ロス(スルホン化した場合)を有している。
【0027】
本発明のポリマーブレンド物から製造した物品、たとえば膜は、そのまま使用することもできるし、あるいは、酸性洗浄工程によってさらに処理して、テトラアルキル基を除去すると当時に、出発(コ)ポリマー成分に存在していたイオン化可能な基を再プロトン化させることもできる。
【0028】
先に説明したような各種の利点を有しているので、本発明の用途としては、フィルム、膜、燃料電池、コーティング、イオン交換樹脂、オイル回収、生体膜、電池、水精製膜などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。そうして得られた物品は、燃料電池、バッテリー、またはその他の電気化学的デバイス用途のための選択透過性膜として使用することも可能である。さらに、そうして得られた物品は、電極に適用してもよいし、あるいは膜・電極アセンブリーを構築するためにそれに適用される電極材料を有していてもよいし、各種の液体を用いて膨潤されていてもよいし、あるいは、強化用のマットもしくは多孔質ウェブの上または中に導入して機械的な一体性を向上させてもよい。
【0029】
ポリマーマトリックスの中におけるナノ粒子の分散は、特に粒子担持量が高い(すなわち、5.0重量%)場合には、望ましくない粒子−ポリマー相互作用として、固体相の激しいアグリゲーションが起きるので、熱力学的に制限を受ける可能性がある。それにも関わらず、ナノ粒子が低〜中程度の担持量(すなわち、0.5〜1重量%)の場合の複合材料膜では、対照としての非ハイブリッドPVDF/高分子電解質ブレンド物膜に比較して、プロトン導電率が一般的に改良されることが実証された。この有利な効果は、高結晶質のPVDFホモポリマーから製造された膜では特に顕著であった(7%〜14.3%増大)。同様にして、同一の粒子担持量でも、引張性能が向上した(19.5%〜22.5%弾性率増大)。可撓性がより高いPVDF/HFPコポリマーを含む膜においては特に、補強的な補剛効果(reinforcing stiffening effect)が明白であった。
【0030】
各種のPVDFグレードと架橋スルホン化アクリル系高分子電解質とのポリマーブレンド物に対して、酸化ジルコニウム、硫酸塩化水酸化ジルコニウム、およびリン酸水素ジルコニウムのナノ粒子を組み入れることによって、プロトン導電性3相複合材料膜を形成させた。それらの膜のプロトン導電性および機械的性質を、特別設計の電気化学的インピーダンススペクトロスコピーおよび二軸軸対称性変形高速処理(biaxial axisymmetric deformation high−throughput)スクリーニングツールの手段によって評価した。非ハイブリッドPVDF/PEの参照膜に比較して、得られた複合材料膜は、低〜中程度の粒子担持量で、全体として改良された導電率を示した。添加したナノ充填剤から得られる、導電率における特に有益な効果が、高結晶質のPVDFホモポリマー(すなわち、KYNAR500および731)から調製した複合材料膜において観察されたが、この場合、埋め込まれたナノ粒子の水和層がプロトン導電ルートを構成していた。可撓性がより高いPVDF:HFPコポリマー(すなわち、KYNAR2801、2821、および2851)を含む膜において特に、無機ナノ充填剤を組み入れることによって、引張性能も同様に向上したが、この場合はナノ粒子が低〜中程度の担持量のときに、補強的な補剛効果が明らかであった。しかしながら弾性率におけるこの増大は、PVDFグレードおよび粒子担持量の全域にわたって、膜の靱性にとっては有害であった。高い粒子含量の場合には、望ましくない粒子−ポリマー相互作用として、固体相の激しいアグリゲーションが起きるので、ナノ粒子の分散が熱力学的に制限された。弾性率および強度の発現にはナノ粒子の分散の程度が極めて重要であるので、ナノ粒子の担持量が高いところでは、すべての機械的性質が顕著に低下した。アグリゲート化されたナノ粒子が、そうでなければプロトン導電チャンネルに相当する容積を占拠することによって、拡散抵抗が増大する結果となるために、プロトン導電性も同様に影響を受けた。
【実施例】
【0031】
複合材料膜の合成とプロトン化
有機/有機/無機の3相ナノ複合材料プロトン導電性複合材料膜を、ジルコニウムベースのナノ粒子、ならびに5種のKYNAR(PVDF)グレードと、メタクリル酸2−スルホエチル(SEM)(約69重量%)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)(約15重量%)、メタクリル酸メチル(MMA)(約8重量%)、およびスチレン(約7重量%)のランダムコポリマーからなるスルホン化アクリル系高分子電解質(PE)(280gPE/モルSO3Hの当量)との個々のブレンド物を混合することによって調製した。その5種のPVDFのグレードには、2種のPVDFホモポリマー(KYNAR500およびKYNAR731)、および3種のPVDFとヘキサフルオロプロピレン(PVDF:HFP)のコポリマー(KYNAR2801、KYNAR2821、およびKYNAR2851)(Arkema Inc.製)が含まれるが、それらを、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(Sigma−Aldrich Co.製、純度≧99.5%)に溶解させて、溶液あたりの全濃度を10重量%とした。これらのPVDF溶液を、PEの原液(NMP中固形分25重量%)と、65:35(PVDF:PE、酸の形態)の一定質量比(乾量基準)で混合した。3種のタイプ、すなわち、酸化ジルコニウム(IV)ナノ粉体(ZrO2)(粒径<100nm)、硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)(Zr(H2SO4)4)、およびリン酸水素ジルコニウム(IV)(Zr(HPO4)2)(Sigma−Aldrich Co.製)のジルコニウムベースの粒子を使用した。メソポーラスな硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)およびリン酸水素ジルコニウム(IV)粒子は、ジルコニア製の乳鉢および乳棒を用いて粉砕することによってそのサイズをさらに細かくしたが、酸化ジルコニウムナノ粉体は、入手したままで使用した。最終的な粒径は、硫酸塩化水酸化ジルコニウム(IV)では約100〜300nm、リン酸水素ジルコニウム(IV)では200〜1000nmであった。本明細書の残りにおいては、簡単とするために、酸化ジルコニウムならびに変更を施した硫酸塩化水酸化ジルコニウムおよびリン酸水素ジルコニウムをそれぞれ、ZrO、ZrS、およびZrHPと呼ぶことにする。PVDF/PEブレンド物と混合する前に、ナノ粒子の解凝集を行ったが、それには、NMP中で6時間激しく撹拌して分散させ、次いで超音波浴の中で一夜超音波処理をし、次いでホーンタイプのソニケーターを用いて20分間「強い」超音波処理をした。それぞれのタイプのナノ粒子懸濁液をそれぞれのPVDF/PEブレンド物と、0.5重量%(低)、1重量%(中)および5重量%(高)(乾量基準)で混合して、全部で45種の混合物を得た(さらに、ナノ粒子を含まない5種の参照用PVDF/PEブレンド物を含む)。それらのPVDF/PE/ZrX(X=O、P、HP)混合物を、Desmodur N3300A(Bayer AG.製)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート誘導トリイソシアネート架橋剤と、1:0.8のOH:NCO比(高分子電解質のすべてのヒドロキシル基と反応させるのに必要な架橋剤の化学量論的量の80モル%)で組み合わせた。その最終的なブレンド物を、室温で不活性な窒素雰囲気下に約30分かけて完全に混合し、次いで超音波処理(約15分間)によって脱気とナノ粒子の再分散とを行ってから、直ちにフィルムコーティングを行った。コーティングは、ナイフエッジ装置を使用し、Piranha溶液(70%H2SO4、9%H2O2、21%H2O)中80℃で2時間かけて予め洗浄しておいたシリコン<100>基材(Silicon,Inc.製)の上に液状のPVDF/PE/ZrX膜を拡げることによって実施した。そうして得られたフィルムを、強制対流オーブン中175℃で20分間かけて硬化させてPEを架橋させ、過剰のNMPを除去した。室温で脱イオン(DI)水の中に浸漬させることによって、硬化させた複合材料膜をシリコン基材から剥離させた。
【0032】
複合材料膜は、1M塩酸溶液中80℃で2時間かけて洗浄してから、DI水中で15分間水洗いした。その酸洗浄した膜を、1MのH2SO4中に80℃で2時間浸漬させることによってプロトン化させ、次いで、DI水中で15分間ずつ、洗浄水のpHが4以上になるまで連続して数回洗い流して過剰の硫酸を除去した。プロトン化された複合材料膜、さらにはナノ粒子を含まないPVDF/PE参照物質のコンディショニングを、18.2MΩの沸騰水中に1時間浸漬させることによって実施して、膜が完全に膨潤するようにした。膨潤膜は、導電率および機械的性質の測定を実施するまで、18.2MΩの水の中に保存しておいた。
【0033】
複合材料膜の特性解析
プロトン導電率および機械的性質の高速処理測定
プロトン導電率の測定は、本願発明者らの研究室で設計した特注の自動化四探針法高速処理導電率測定器(HTC)を使用した、交流電気化学的インピーダンススペクトロスコピー(EIS)によって実施した。約25℃で18.2MΩの水中に浸漬させておいた複合材料膜および参照膜の導電率の測定は、定電圧モードで、1000Hz、30mV(約20mV RMS)の励起信号と、5000サイクルの応答信号積分時間の後に5秒間の安定化時間とを用いて実施した。
【0034】
機械的性質の特性解析は、本願発明者らの研究室で以前に開発した設計に基づく改良高速処理機械的試験装置(HTMECH)を用いて実施した。すべての機械的特性解析試験は、直径1.24mmのニードルを使用し、10mm/秒の一定速度で実施した(ニートルの、絶縁プレートの孔の直径に対する比率:0.413)。ロードセル信号のサンプリング速度は、1秒あたり5000サンプルに設定した。膜はすべて、完全に水和させた状態で試験した。特に断らない限り、HTMECH試験からの生データのコンディショニングおよび解析は、ノイズ分散(ノイズが白色であるとの想定はしなかった)、普遍的閾値、および直交八次シムレット(Sym8)ウェーブレットタイプを評価するための多重レベル倍率変更を用いたアンデシメーテッド(undecimated)ウェーブレット変換か、または、一次チェビシェフ係数、通過帯域リプル0.3dB、および遮断周波数10Hzを使用した非因果的零相(non−causal zero−phase)IIRフィルターのいずれかを用いて実施した。弾性率の線形フィッティングについての二重平方フィッティング感度は95%に設定した。
【0035】
X線回折(XRD)
複合材料膜およびナノ粒子粉体のX線回折スペクトルは、PANalytical X’Pert PRO回折計(PANalytical製)を使用して記録した。入射ビーム構成は、固定1/16度(0.19mm)拡散スリット、0.04radのSollerスリット、およびCuKβ照射を排除するためのニッケルβ−フィルターを備えた、Cu−陽極管(λCuKα1=1.540598Å、λCuKα2=1.544426Å)を45kV、40mAで運転することからなっていた。検出器(PANalytical X’Celerometer)には、10mmの散乱線除去スリットおよび0.04radのSollerスリットが備えられていた。データは、1度〜65度の2θ範囲にわたって、ステップサイズ0.033度で集めた。
【0036】
フーリエ変換赤外スペクトロスコピー(FT−IR)
複合材料膜の赤外吸収スペクトルは、KBrビームスプリッターと組み合わせたBruker Equinox55分光計(Bruker Optics Inc.製)を用いて室温でデータ収集をした。スペクトルは、400〜5000cm-1の範囲について分解能4cm-1で、128回分を平均して記録した。
【0037】
走査型電子顕微鏡法(SEM)
複合材料膜の断面領域についての高分解能画像は、LEO 1530熱電界放出走査型電子顕微鏡(LEO Electron Microscopy Group製)を使用し10keVで運転して得た。SEM撮影のための膜のサンプルは、液体窒素中で極低温破砕をしてから、金を用いて真空蒸着することにより調製した。
【0038】
統計的解析
不平衡一変量一般線形モデル(unvalanced univariate general linear model)(GLM)(二元および三元、タイプIII平方和)を使用して、有意因子を評価し、p<0.05を有意と定義した(5%有意水準)。三元GLM試験からの有意因子の対比較は、Sidak−補正信頼区間を用いて、主効果の重み無し平均を比較することにより実施したが、それに対して、TamhaneのT2事後試験を、二元GLM試験からの有意因子の対比較のために使用した。結果は全て、(表示に従って)平均±平均の標準誤差(±S.E.M.)、または平均±95%信頼区間として表した。
【0039】
結果および考察
複合材料膜の微細構造
ジルコニウムベースの添加剤(ZrX)の構造は、それらの有機/無機ハイブリッド性のために、複合材料膜の特性解析に関係している。したがって、膜の特性解析をする前に、粉体X線回折(XRD)を用いて各種のジルコニウムベースの固体粒子の予備的な検討を完了させた。得られたXRDスペクトルを図1に再現する。ジルコニア(ZrO)のスペクトル中の結晶質の反射(ブラッグピーク)、特に28.2度、30.2度、および31.5度に位置する散乱角(2θ)は、単斜晶系と正方晶系のZrO相の混合結晶形を示している。対照的に、ZrHPおよびZrSは、結晶質の反射を有さない、非晶性のハローを特徴としている。ZrHPの場合においては、その非晶質スペクトルは、無秩序な層アグリゲーション、従って層状のα−ZrHPおよび/またはγ−ZrHPを示す。実際的な見地からは、このことが、ZrHPベースの複合材料膜のプロトン導電率全体にとっては有利に働く可能性があるが、その理由は、非晶質なZrHPが、比較対象の結晶質および半晶質のα−ZrHPおよびγ−ZrHPよりも高い導電率を示すからである(100℃、95%相対湿度(RH)で1〜5×10-3に対して、それぞれ1.8×10-5および2×10-4S/cm)。同様にして、非晶質のZrSをベースとする膜の導電率も、非晶質物質が一般的に結晶質の対照物よりも大きい表面積を示すということから、より多くの表面酸サイトが露出しているということによって有利となる可能性があろう。
【0040】
PVDFマトリックスの中に高分子電解質(PE)またはZrXのいずれかを組み入れると、αからβへの相転移が誘起されることによって、PVDFの結晶質構造が乱され、その結果として、β相の多形が、その複合材料膜のPVDF支持体マトリックスの中で優勢となるということが知られており、このことは、図2に示したような広角X線回折(XRD)データにも認められる。複合材料膜の代表的なXRDスペクトルにおける28.2度、30.2度、および31.5度の回折ピークは、ポリマーマトリックスの中に埋め込まれたZrO粒子に対応している。これらの結晶質反射の強度の変動は、粒子担持量が異なっていることの明瞭な指標である。ポリマーの溶液または分散体に対して無機成分を添加することによってポリマー複合材料を調製する際に最も重要な関心事は、そのポリマーマトリックスの内部で高度に分散された固体相が形成されるかどうかである。したがって、複合材料膜のPVDF/PEポリマーマトリックス中におけるジルコニウムベースの添加剤の分散を評価するために、SEM画像を採用した(図3a〜e)。特に担持量が高い場合には、粒子がアグリゲートして、クラスターを形成し、それが膜全体にわたって不均質に分散しているということが容易に認められる。したがって、粒子担持量が低い場合には、固体相の分散体を安定化させることが可能な、ZrXとPVDFの極性基との間の水素結合および/または双極子−双極子相互作用に基づく相互誘引的な作用が生じうるにも関わらず、粒子質量分率が中程度および高いPVDF/PE/ZrX複合材料膜において認められるアグリゲーション挙動は、ZrX粒子の親水性表面と疎水性ポリマーマトリックスとの間の一般的には望ましくない相互作用によって説明することができる。特に表面変性剤または相溶化剤をまったく使用しない場合には、ナノ粒子では表面対容積の比率が高いために、この非相溶性が強くなる。同様にして、ZrO粒子の場合においては、それらが結晶質の形態をとっているために、表面対容積の比率が低下していることで、ZrSおよびZrHPに比較すると、質量分率全体で、この添加剤がより良好な分散となっていることが説明できるであろう(図3dおよび3e)。
【0041】
PVDF/PEマトリックス中におけるナノ粒子の分散性を改良するために、たとえば、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムを用いて有機変性し、PVDF/PEブレンド物と相溶性のあるNMPの中に予備分散させた粒子のゲルを形成させることによる、ジルコニウムベースのナノ粒子の相溶化および予備的表面剥離など、その他の手段を使用することが可能であるということも考えられる。
【0042】
プロトン導電率
45種の異なったジルコニウムベースの複合材料膜、さらには5種のPVDF/PE参照膜についての高処理導電率(HTC)スクリーニングからのプロトン導電率を、図4a〜eに示す。プロットの最初の評価からは、PVDF:HFPコポリマーを含む膜がPVDFホモポリマーの膜に対して、総合的により高い導電率の値を示していて、このことは、非ハイブリッドのPVDF/PEプロトン交換膜についての本願発明者らの従来の知見と一致している。ナノ粒子の含量が高いものでは、それに相当するナノ粒子を含まない対照物に比較して、複合材料膜においてプロトン導電率が一般的に低下していることもまた認められるが、このことは、粒子の質量分率が高いところで認められる粒子のアグリゲーションおよびクラスタリングに直接関連している可能性がある(図3dおよび3e)。さらに、PVDF/PEブレンド物に対してジルコニウムベースの添加剤を組み入れることによる見かけ上有利な効果は、PVDFホモポリマー(KYNAR PVDF 500および731)を含む複合材料膜において、ナノ粒子が低〜中程度の担持のときに明らかである。複合材料膜からの導電率データを、不平衡一般線形モデル(GLM)を使用した統計的解析にかけた。導電率の初期包括(initial global)解析(三元GLM)からは、ナノ粒子濃度(F(2,1181)=54.07、p<0.001);ナノ粒子タイプ(F(2,1181)=20.64、p<0.001)(おそらくは、各種のジルコニウムベースのナノ粒子の間の酸度が異なっていることに関係している);ならびにPVDFグレード(F(4,1181)=172.58、p<0.001)の統計的に有意な効果が明らかとなった。図5は、複合材料膜についての、ナノ粒子のタイプおよびナノ粒子の質量分率(いずれも有意因子と認められた)の関数としての(GLM分析からの)プロトン導電率の重み無し平均のプロットを示している。後者の効果は、ナノ粒子担持量が5重量%に相当する、導電率の重み無し平均が最も低いことからも直ぐに理解されるが、このことは、高いナノ粒子含量では固体相のアグリゲーションのために上述のように導電率が低下するということを裏書きしている。さらに、非ハイブリッドPVDF/PE参照物において、導電率における総合的な実効利得が少しある(2〜3%)ということは、0.5重量%および1重量%のジルコニウムベースの添加剤を含む複合材料膜についても認められる(図5、右)。ナノ粒子のタイプによって平均導電率が明らかに変動することも同様に実証され(図5、左)、ZrSが、ZrOおよびZrHPよりも顕著な利点を有している。この挙動は、硫酸化ジルコニア固体の酸度が公知のすべての固体超酸の中では最も強いものに入るので、予想されていたことである(Hammet酸度関数Hθ≦−16.04)。さらに、ZrOベースの膜とZrHPベースの膜との間で認められる導電率の差が小さいということは、ZrHPに比較してZrO固体酸導電体ではわずかに改良された導電率が観察されることと一致している。
【0043】
興味深いことには、PVDF/PEブレンド物に対してジルコニウムベースの酸無機充填剤を添加することによって生じる統計的に有意な(PVDFタイプによる二元GLM、p<0.05)導電率の増大は、PVDFホモポリマーを含む膜(低〜中程度のナノ粒子の担持量)の場合においてのみ起きた(図4aおよび4b)。特に、ナノ粒子含量が0.5重量%と1重量%のところでそれぞれ、KYNAR500をベースとする膜では、9.5%および7%の全導電率の増大を示したが、それに対してKYNAR731を含むものでは12.4%および14.3%の改良を示した(独立した二元GLMからの重み無し平均の比較)。
【0044】
機械的強度および化学的な安定性が向上する可能性も含めて、ポリマー性プロトン交換膜の中に固体酸粒子を組み入れることの主たる目的の一つは、水和レベルの変化に対する膜の感受性を抑制すること、および中程度の操作温度(100〜200℃)におけるそれらの性能を改良することである。
【0045】
機械的性質
ポリマーマトリックス中の無機添加剤の量およびそれらの分散度を調節することは、可撓性および引裂き強度の面で複合材料膜に十分な機械的性質を与えるための基本的な因子である。したがって、複合材料膜の機械的な特性解析は、二つの変数、すなわち弾性率および靱性に焦点を合わせた。重要なことは、慣用される機械的特性解析系においては典型的な一軸変形とは対照的に、HTMECH試験においては、膜を軸対称性二軸変形にかけるということを強調しておく。したがって、本明細書に記載された結果を一軸引張試験と比較する場合には、それら二つの変形モデルの間では機械的な応答性が当然異なってくると考えられるので、注意しなければならない。
【0046】
ナノ粒子の質量分率の関数として、複合材料膜の弾性率および靱性の相当するプロファイルを、それぞれ図6および7に示す。プロトン導電率の場合に実施したのと同様の統計的解析からは、膜の弾性率におよぼす、ナノ粒子の含量(F(2,1105)=37.19、p<0.001)、ナノ粒子のタイプ(F(2,1105)=11.3、p<0.001)、およびPVDFのグレード(F(4,1105)=249.52、p<0.001)の有意な効果が明らかとなった。しかしながら、ナノ粒子の含量およびタイプの「実際的な」効果は、PVDFのグレードの効果に比較すると弱いものである(ηp2≦0.06対ηp2=0.48、ηp2は、偏イータ2乗統計量である)。このことは、PVDFの支持体マトリックスが膜の引張性能を与えていることから、予想されることである。同様にして、膜の靱性におよぼす、ナノ粒子の含量(F(2,1105)=221.58、p<0.001)、ナノ粒子のタイプ(F(2,1105)=129.94、p<0.001)、およびPVDFのグレード(F(4,1105)=66.05、p<0.001)の有意な効果も同定された。しかしながら、それらが膜の弾性率におよぼす効果とは対照的に、ナノ粒子のタイプおよび含量は、靱性に対しては重要な効果を有している。一般的には、ナノ粒子のサイズは、クラックブリッジング機構(crack−bridging mechanism)を介しての強靱化効果を付与するには小さすぎ、そしてそれらは、クラック軌跡のくねり(crack trajectory tortuosity)を効果的に促進させることはできない。したがって、ナノ粒子のタイプおよび含量が靱性に対して強い効果を有していることは、ナノ粒子を挿入することによって生じる、膜の剛化および/または欠陥部位のような因子に直接的に関連している可能性がある。
【0047】
膜の弾性率に対するナノ粒子の含量の効果は低いけれども、低〜中程度の粒子担持量では、非ハイブリッド膜に比較して明らかな補強効果が認められる。その効果は、可撓性のPVDF:HFPコポリマーを含む複合材料膜では特に明らかであり(統計的に有意、PVDFのタイプによる二元GLM、p<0.05)、従って、膜の剛性における増大を示唆している。それとは対照的に、すべてのナノ粒子含量において、すべての複合材料膜で靱性が低下していたが(統計的に有意、PVDFのタイプによる二元GLM、p<0.001)、おそらくこれは、粒子担持量が高いところでは、固体相のアグリゲーションによって上述のような膜の剛化および高密度で欠陥部位があるためであろう(図3dおよび3e)。複合材料膜の機械的性質におよぼす無機ジルコニウムベースのナノ充填剤の効果をさらに視覚化させるために、弾性率および靱性の包括重み無し平均を図8に示す。参照のPVDF/PE膜に比較して、総合弾性率を特徴とする明らかな補強的な補剛効果が、ナノ粒子の担持量が0.5重量%および1重量%のときにそれぞれ、19.5%および22.5%増大していることが実証されている。この剛直化は、同一のナノ粒子含量では、膜靱性の総合的な低下(29.7%および33.4%の低下)と完全に相関がある。これらの結果は、ナノ複合材料が効果的に剛性化作用を有するものの、靱性低下の結果として早々と低下する傾向があるという、他の有機/無機系において観察される機械的挙動と一致している。ナノ粒子の担持量が中程度から高へと変化させたときの、全弾性率の突然の低下(22.5%の上昇から2%の降下まで)およびさらなる靱性の低下(33.4%〜46.9%の低下)は、粒子の凝集から誘導される膜の欠陥が生成して、機械的な変形の際の膜のエネルギー吸収性に悪影響が出ていることを裏付けている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フルオロポリマー;
b)一種または複数の高分子電解質;および
c)一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む複合ブレンド物膜。
【請求項2】
a)5〜95重量パーセントのフルオロポリマー;
b)5〜95重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
c)0.1〜20重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項3】
a)80〜99.9重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
b)0.1〜20重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項4】
a)20〜70重量パーセントのフルオロポリマー;
b)30〜80重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
c)0.1〜10重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、金属酸化物、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl2O3、固体酸、硫酸塩、リン酸塩、ならびにナノクレーからなる群から選択される、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、ジルコニウムをベースとする四価の金属酸である、請求項4に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項7】
前記四価の金属酸が、酸化ジルコニウム、リン酸水素ジルコニウム、硫酸塩化水酸化ジルコニウム、硫酸化ジルコニア、およびリン酸ジルコニウムからなる群から選択される、請求項5に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項8】
前記高分子電解質が、スルホン化された基、ホスホン化された基、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項9】
前記高分子電解質が、一種または複数のイオン性および/またはイオン化可能なモノマーと、前記(一種または複数の)イオン性および/またはイオン化可能モノマーと共重合することが可能な一種または複数のモノマーとのコポリマーである、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーであるか、または少なくとも70重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項11】
前記高分子電解質が、中和された形態にあるプロトン性/酸性基を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項12】
前記乾燥膜が、1nm〜2mmの厚みを有する、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項1】
a)フルオロポリマー;
b)一種または複数の高分子電解質;および
c)一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む複合ブレンド物膜。
【請求項2】
a)5〜95重量パーセントのフルオロポリマー;
b)5〜95重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
c)0.1〜20重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項3】
a)80〜99.9重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
b)0.1〜20重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項4】
a)20〜70重量パーセントのフルオロポリマー;
b)30〜80重量パーセントの一種または複数の高分子電解質;および
c)0.1〜10重量パーセントの一種または複数のタイプのナノ粒子;
のブレンド物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、金属酸化物、SiO2、TiO2、ZrO2およびAl2O3、固体酸、硫酸塩、リン酸塩、ならびにナノクレーからなる群から選択される、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、ジルコニウムをベースとする四価の金属酸である、請求項4に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項7】
前記四価の金属酸が、酸化ジルコニウム、リン酸水素ジルコニウム、硫酸塩化水酸化ジルコニウム、硫酸化ジルコニア、およびリン酸ジルコニウムからなる群から選択される、請求項5に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項8】
前記高分子電解質が、スルホン化された基、ホスホン化された基、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項9】
前記高分子電解質が、一種または複数のイオン性および/またはイオン化可能なモノマーと、前記(一種または複数の)イオン性および/またはイオン化可能モノマーと共重合することが可能な一種または複数のモノマーとのコポリマーである、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーであるか、または少なくとも70重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項11】
前記高分子電解質が、中和された形態にあるプロトン性/酸性基を含む、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【請求項12】
前記乾燥膜が、1nm〜2mmの厚みを有する、請求項1に記載の複合ブレンド物膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図2】
【図3】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【公表番号】特表2012−530181(P2012−530181A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516147(P2012−516147)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038451
【国際公開番号】WO2010/147867
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038451
【国際公開番号】WO2010/147867
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】
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