説明

ナノ粒子を用いたドラッグデリバリーのためのトリブロック共重合体

A−B−A構造を有し、各Aは、親水性であり生体適合性である末端ブロックであり、B中央ブロックは、疎水性のデサミノチロシルチロシンポリカーボネートまたはポリアリーレートである、生体適合性であり無毒のトリブロック共重合体である。前記共重合体は、自然に自己組織化して、疎水性の生物活性化合物または薬剤活性化合物のデリバリービークルとして有用な、低臨界凝集濃度のナノ粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
製薬およびバイオテクノロジー産業が抱える重要な問題点は、疎水性の治療用化合物のための効果的で無毒なデリバリーシステムの利用可能性が限られていることである。例えば、胸部および卵巣の腫瘍の治療に選択されるパクリタキセルは、疎水性である。したがって、パクリタキセルの臨床的な投与には、望ましくない副作用につながる油またはエタノールの賦形剤に分散させる必要がある。
【0002】
合成ポリマーは、高い溶解性および結合した治療化合物の安定性、および細胞の制限された集団への標的デリバリーの機会を与え、さまざまな薬物のデリバリービークルとして優位性が示されてきた。ナノ粒子、すなわち、サブミクロンレンジの大きさを有する担体は、血管内投与に望ましい。このため、最近の超分子化学の進歩によって、優れた特性を有する材料の設計が可能になった。
【0003】
非経口デリバリーシステムのためには、ナノサイズの粒子およびリポソームが、腫瘍の漏れやすい血管系からの浸出が可能であるため、癌の治療に大きな可能性があることが示されている。この目的を達成するために、ナノ粒子、ポリマーミセル、リポソーム、および表面修飾したナノ粒子などの、さまざまなナノサイズの粒子またはコロイド担体が提案されている。しかしながら、中でも、体内の薬剤および担体の分布、望ましくない副作用、マクロファージによる速い除去、熱的不安定性、構造的な脆性、および低い薬剤取り込み効率によってこれらのアプローチが制限され、このようなデリバリーシステムが臨床用途に進められたのはわずかであった。
【0004】
リポソームシステムのためには、その貯蔵安定性の低さおよび取り込みの不十分さが実質的な障壁であった。生分解性であり、抗原性が低く、薬剤用途が認められているために最も広く研究されているPLGA[ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)]およびPLA−PEG[ポリ(D,L−乳酸)−ポリ(エチレングリコール)]とともに、多くのポリマー系が探索されてきたが、その報告された薬剤組み込み濃度は一般に非常に低く、したがって治療効果が得られる十分な薬剤を封入することは困難であった。シアノアクリレートポリマーを用いると薬剤組み込みの改善がみられたが、これらの系はいくらかの毒性を示す。ナノ沈降/溶媒抽出技術を用いて製造された多くのナノ粒子の他の欠点は、ナノ粒子の形成中に界面活性剤が必要なことである。界面活性剤および/または残留溶媒の十分な除去は常に問題である。
【0005】
特に興味深いのは、ブロック共重合体の自己組織化を介して形成されたナノ粒子である。低分子量の脂質または界面活性剤分子と同様に、両親媒性のブロック共重合体は、親水性のブロックおよび疎水性のブロックの、少なくとも2つの部分から構成される。このような両親媒性のブロック共重合体は、その疎水性によって、水溶液中で自己組織化しうる。高濃度ではラメラ液晶相を構築する一方、希釈水溶液中ではミセルまたは多孔質構造のようなさまざまな形状の超構造を形成しうる。
【0006】
適当な中性の両親媒性のブロック共重合体は、希釈水溶液中で自然にナノメートルサイズの、明確な中空球の構造を形成する。これらの構造は、脂質または界面活性剤分子の高分子量アナログとしてみなされうる。しかしながら、これらは、その遅い動態のために通常のリポソームよりもはるかに安定な超構造を形成する。さらに、例えば球状に閉じた脂質二重層などのリポソームは、免疫系に速やかに認識され、血流から除かれる。ブロック共重合体化学の幅広い多様性によって、免疫原性反応を避けるための完全な合成材料を調製することができる。
【0007】
適当なブロック共重合体はナノ粒子を形成しうることはよく知られているが、希釈水溶液中で、生体適合性であって生分解性の構造に自己組織化するように設計されたものはほとんどなかった。両親媒性のブロックオリゴマーの自然な凝集の一例が、ポリ(メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチル−シロキサン)−ブロック−ポリ(メチル−オキサゾリン)、PMOXA−PDMS−PMOXAトリブロックオリゴマーで報告されている。押し出し技術と組み合わせた注入によって、そのサイズが50〜500nmに制御できるベシクルが形成される。しかしながら、細胞毒性のない、生分解性のトリブロック共重合体ベシクルの必要性は残っている。
【0008】
ブロック共重合体ベシクルは、多くの理由で、ドラッグデリバリーへの適用に関心が持たれている。第1に、疎水性の薬剤はブロック共重合体ミセルのコアに物理的にトラップされ、その本来の水溶性を超える濃度でデリバリーされうる。第2に、しばしばポリ(エチレンオキサイド)(PEO)から構成される親水性ブロックは、水性の環境と水素結合を形成し、ミセルのコアの周辺に緊密なシェルを形成しうる。結果的に、疎水性コアの内容物は、加水分解および酵素分解から効果的に保護される。さらに、PEOコロナは、細網内皮系による認識を防ぎ、したがってミセルの血流からの初期の脱離を防ぐ。
【0009】
したがって、安定性、コスト、および製剤の容易性の利点のため、ポリマーナノ粒子の使用がより好ましい。薬剤の組み込みおよび薬剤放出の制御は、薬剤との相互作用のレベルを向上させうる部分をポリマーに導入することで変化させることができると期待されている。このストラテジーは、インビボの生分解およびそれに続く体内からの除去を可能にする生分解性ポリマーを必要とする。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明者らのアプローチによって、幅広い疎水性の治療薬をデリバリーできる、ナノ粒子のための多用途の共重合体アーキテクチャが開発されてきた。本発明者らは、本明細書中に、ナノ粒子は、抗腫瘍剤であるパクリタキセルなどの疎水性分子と強く複合体化し、これをインビトロで腫瘍細胞に効果的にデリバリーすることをさらに示す。
【0011】
ナノ粒子に自己組織化する一群のABA型トリブロック共重合体は、現在では、重要な疎水性化合物を複合体化できることが示されている。これらの共重合体は、水溶液中で自然にナノ粒子に自己組織化し、前記ナノ粒子の性質は、AおよびBブロックの分子量、およびペンダントエステルのR基の分子組成を含む、いくつかの独立した容易に制御できる合成上のバリエーションの関数であることが示されている。
【0012】
前記トリブロック共重合体は、水溶性、親水性、および無毒である末端ブロックと、ポリアリーレートまたはポリカーボネートの中央ブロックとから誘導される。したがって、本発明の具体的な一形態によれば、A−B−A構造を有し、各A末端ブロックは水溶性、親水性、および無毒であり;B中央ブロックは式(I)で表される構造を有する、同一または異なった繰り返し単位を有するポリカーボネートである、トリブロック共重合体が提供される:
【0013】
【化1】

【0014】
この際、Xは
【0015】
【化2】

【0016】
であり;Zは2〜約100であり;RはCH=CHまたは(CHであり、この際、nは0〜18であり;Rは、水素、約18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに約18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択される。
【0017】
前記トリブロック共重合体は自然に自己組織化し、非常に低い濃度の場合でも薬剤および他の活性物質のデリバリーに有用な、生体適合性、生分解性のナノ粒子を形成する。
【0018】
したがって、本発明の他の形態によれば、(a)A−B−A構造を有し、各A末端ブロックは水溶性、親水性、および無毒であり;B中央ブロックは下記式(II)で表される構造を有する、同一または異なった繰り返し単位を有し、疎水性である、トリブロック共重合体のナノ粒子:
【0019】
【化3】

【0020】
この際、Xは
【0021】
【化4】

【0022】
または
【0023】
【化5】

【0024】
であり;Zは2〜約100であり;RはCH=CHまたは(CHであり、この際、nは0〜18であり;Rは、水素、18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択され;Rは、結合または18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択される;および(b)前記ナノ粒子によって複合体化される疎水性化合物;を含む組成物が提供される。
【0025】
前記末端ブロックは、好ましくは、以下の構造を有するポリ(アルキレンオキサイド)である:
【0026】
【化6】

【0027】
この際、各Aのmは、独立して、各Aの分子量が約1000〜約15,000g/molとなるように選択され;各Aの、および各A中のRは、独立して、水素および1〜4の炭素原子を含む低アルキル基からなる群から選択され;aは1以上の整数である。好ましい実施形態においては、前記末端ブロックは、CHO−[CHCH−O−]の構造を有する。
【0028】
特に、本発明の共重合体ナノ粒子は、抗腫瘍剤、抗生物質、抗菌剤、スタチン、ペプチド、タンパク質、ホルモン、ワクチン、および造影剤などの、薬剤または他の活性成分、すなわち、原則的に広い意味での任意の有用な薬剤または生物剤を複合体化するために用いられ、複合体化された材料の持続放出の手段を提供する。したがって、本発明のさらに他の形態によれば、製薬上許容される担体と、疎水剤を本発明のトリブロック共重合体とを複合体化するナノ粒子の有効量とを含む、疎水性の活性剤を必要とする患者にデリバリーするための組成物が提供される。
【0029】
本発明のこの形態の好ましい実施形態は、活性化合物のナノ粒子が有効な部位特位的な、または全身のデリバリーに十分な量で存在する、ナノ粒子と複合体化された生物活性化合物または薬剤活性化合物を提供する。担体は前記ナノ粒子が懸濁する水溶液またはドラッグデリバリーマトリックスでありうる。本発明のこの形態は、本発明の共重合体ナノ粒子がマトリックスベースの制御放出デバイス中の活性剤のリザーバーとして機能する実施形態を含む(例えば、P.Sinko and J.Kohn,“Polymeric drug delivery systems:An overview”,Polymeric Delivery Systems:Properties and Applications,(M.A.El−Nokaly,D.M.Piatt and B.A.Charpentier,eds.),ACS Symposium Series,Vol.520,1993,American Chemical Society,Washington,DC,18−41.に記載されるようなハイドロゲルまたは任意の他の種類の制御放出システム)。
【0030】
本発明の共重合体ナノ粒子のこの有用性が与えられれば、本発明のさらに他の形態によれば、本発明のポリマーナノ粒子によって複合体化された疎水性活性化合物の有効量を必要とする患者に投与することによる、部位特異的なまたは全身のデリバリーの方法が提供される。
【0031】
本発明は、ドラッグデリバリーおよび活性剤の制御(または長時間)放出の分野において幅広い有用性を与える、重要な技術的進歩を示す。具体的には、本明細書中に記載される一群のトリブロック共重合体は、他のトリブロック共重合体に対して、少なくとも3つの大きな、特徴的な利点を有する:
1.一群のトリブロック共重合体は、患者に導入された後、完全に再吸収可能である。前記組成物は、無毒のビルディングブロックのみから誘導されるため、前記トリブロック共重合体はそれ自体、予想されるインビボの分解産物と同様、無毒であって生体適合性である。
【0032】
2.一群のトリブロック共重合体は、自己組織化して臨界凝集濃度(CAC)の低いナノ粒子を形成し、非常な高希釈下であっても安定に保たれる。
【0033】
3.一群のトリブロック共重合体は、有機合成における技術を有する者によって変更されうる、基本性質(生体再吸収率、形成されるナノ粒子の物理的特性、および封入された活性剤について得られる放出プロファイルなど)の調整を可能にする一方で、全体的な化学構造において互いに密接に関連する、幅広い構造パラメータを提供する。
【0034】
本発明のより完全な応用および多くの他の意図される利点は、発明の原理およびこれを実施するための現在検討されている最良の形態を開示した、以下の好ましい実施形態の詳細な説明、および特許請求の範囲を参照することによって、容易に得られるであろう。
【0035】
図面の簡単な説明
図1は、PEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の典型的な構造を示す図面である。
【0036】
図2は、オリゴ(DTR−SA)ブロックおよびPEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の熱挙動を示す表である。
【0037】
図3は、PEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の分子量特性およびその対応するナノ粒子の流体力学直径を示す表である。
【0038】
図4Aは、以下の、5K/DTO−SAナノ粒子の存在下または非存在下での蛍光を示す:(1)遊離フルオレセイン;(2)ナノ粒子/フルオレセイン;(3)遊離DAF;(4)ナノ粒子/DAF。
【0039】
図4Bは、超遠心分離で精製した5K/DTO−SAナノ粒子を2.5μMのDAF溶液(▲)または0.25%DMF中の1μMのフルオレセイン溶液(●)に添加したときの、ナノ粒子の濃度の関数としての相対的な蛍光を示すグラフである。
【0040】
図5A〜5Dは、以下のように、ゲルろ過クロマトグラフィーの後の、フルオレセイン−5K/DTO−SAおよびDAF−5K/DTO−SAナノ粒子のフラクションの分析を示す:
図5Aは、遊離フルオレセイン分画後のナノ粒子(▲)、およびフルオレセイン存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;
図5Bは、遊離DAF分画後のナノ粒子(▲)およびDAF存在下19で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;
図5Cは、遊離フルオレセイン分画後のナノ粒子(▲)およびフルオレセイン存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;
図5Dは、遊離DAF分画後のナノ粒子(▲)およびDAF存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
図7は、ゲルろ過クロマトグラフィーのフラクションの関数としての吸光度を示すグラフであり、パクリタキセル存在下で形成され、ゲルろ過クロマトグラフィーによって分画された5K/DTOSAナノ粒子の奇数フラクションならびにフラクション7および9は、260nmでの吸光度によって検出された(●)、パクリタキセルの活性は各フラクションを20μL用いたKB細胞増殖の関数として決定され、細胞増殖はMTSアッセイを用いて決定され、490nmで測定された(▲)。
【0043】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の共重合体は、A−B−A型のトリブロックである。A末端ブロックは水溶性、親水性、および無毒であり、好ましくはポリ(アルキレンオキサイド)から選択され、疎水性の中央のBブロックはポリアリーレートまたはポリカーボネートである。好ましいポリアリーレートの実施形態においては、中央ブロックは、チロシン誘導ジフェノールのフェノール性ヒドロキシル基と二酸のカルボン酸基との間のエステル結合によって互いに結合する、チロシン誘導ジフェノールおよび二酸から共重合される。他の好ましい実施形態においては、前記ポリカーボネート中央ブロックは、同一のジヒドロキシモノマーから共重合される。
【0044】
中でも、より好ましいポリ(アルキレンオキサイド)末端ブロックは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、プルロニック(商標)ポリマーなどである。ポリエチレングリコールが好ましい。
【0045】
本発明のポリアリーレート中央ブロックは、ジフェノール化合物が、脂肪族または芳香族のジカルボン酸と、4−(ジメチル−アミノ)−ピリジニウム−p−トルエンスルホネート(DPTS)を触媒として用いて、カルボジイミド媒介直接ポリエステル化で反応する、米国特許第5,216,115号に記載される方法に従って、二酸のジフェノールとの縮合によって調製される。米国特許第5,216,115号の開示は、この点で本明細書中に参照として組み込まれる。ビス−二酸は、A末端ブロックが共重合体の各末端に結合できるようにポリアリーレート中央ブロックとして選択される。
【0046】
ジフェノール化合物は、その両方の開示もまた本明細書中に参照として組み込まれる、米国特許第5,587,507号および第5,670,602号のチロシン誘導ジフェノールモノマーである。ポリアリーレートは、式IIIの構造を有するチロシン誘導ジフェノールモノマーを用いて調製される:
【0047】
【化7】

【0048】
この際、RおよびRは上述の式IIについて記載したものと同様である。
【0049】
好ましいジフェノールモノマーは、デサミノチロシル−チロシンカルボン酸およびそのエステルであり、この際、Rは−CH−CH−であり、これをDTエステルと称する。本発明の目的上、エチルエステル(R=エチル)をDTE、ベンジルエステル(R=ベンジル)をDTBn、などのように称する。両特許はこれらのモノマーが調製されうる方法を開示している。本発明の目的上、デサミノチロシル−チロシン遊離カルボン酸(R=水素)をDTと称する。
【0050】
ポリアリーレートジカルボン酸は以下の構造を有する:
【0051】
【化8】

【0052】
この際、Rは上述の式IIについて記載したものと同様であり、好ましくは12までの炭素原子を含む。Rは、好ましくは、出発物質として採用されるジカルボン酸が、重要な天然の代謝産物または高度に生体適合性の化合物であるように選択される。したがって、好ましい式IVのジカルボン酸は、クレブス回路として知られる細胞呼吸経路の中間体のジカルボン酸を含む。これらのジカルボン酸としては、アルファ−ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、およびオキサロ酢酸;この際、Rは、それぞれ−CH−CH−C(=O)−、−CH−CH−、−CH=CH=、−CH−CH(−OH)−、および−CH−C(=O)−である;が挙げられる。
【0053】
他の天然の、好ましいジカルボン酸は、ビートの汁にみられるアジピン酸(R=(−CH−))である。他の好ましい生体適合性のジカルボン酸としては、シュウ酸(Rを有さない)、マロン酸(R=−CH−)、グルタル酸(R=(CH−))、ピメリン酸(R=(−CH−))、スベリン酸(R=(−CH−))およびアザライン酸(R=(−CH−))が挙げられる。言い換えれば、ジカルボン酸の中でも、本発明における使用に適したものは、Rが(−CH−)であり、この際、zは0〜12の整数である、化合物である。高い生体適合性の芳香族ジカルボン酸の好ましい類は、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンなどのビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンである。
【0054】
前記ポリアリーレートトリブロックオリゴマーは、官能基を有さないポリ(アルキレンオキサイド)モノアルキルエーテルとオリゴ(DTOスベレート)とのインサイチュのカルボジイミドカップリングを用いてワンポット反応で合成される。以下は、この一般設計の具体的な例であり、PEG−オリゴ−(DTOスベレート)−PEGの合成を示す:
【0055】
【化9】

【0056】
本発明のポリカーボネート中央ブロックは、その開示が参照として本明細書中に組み込まれる米国特許第5,099,060号に記載されるような、ジフェノールをこれに重合させるための通常の方法によって調製されうる。これらの方法は、その開示が参照として本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,980,449号に記載されるものを含むアミノ酸誘導ジフェノール化合物のホスゲンまたはホスゲン前駆体(例えばジホスゲンまたはトリホスゲン)との触媒存在下での反応を含む。適当な工程、関連する触媒および溶媒は当業者に公知であり、その教示が参照として本明細書中に組み込まれる、SchnellのChemistry and Physics of Polycarbonates(Interscience,New York 1964)に記載されている。
【0057】
ペンダントのないカルボン酸基を有するオリゴマーを、遊離カルボン酸基をコモノマーと交差反応させることなく、ペンダントのないカルボン酸基を有するジフェノールから重合することはできない。したがって、DTBnのようなベンジルエステルジフェニルモノマーのホモポリマーまたはコポリマーは、同時係属中であって共通所有の米国特許第6,120,491号によって開示される、パラジウム接触水素化分解法によるベンジル基の選択的な除去を通して、対応する遊離カルボン酸ホモポリマーおよびコポリマーに変換されうる。この特許の開示は参照として組み込まれる。接触水素化分解は、オリゴマー骨格の不安定性がより厳しい加水分解の方法の採用を妨げるため、必要である。同時係属中であって共通所有の米国特許出願第10/952,202号に開示される他の方法は、tert−ブチルエステル基を加水分解に不安定なポリマーから選択的に除去し、前記tert−ブチルエステル基の代わりに遊離カルボン酸基を有する新たなポリマー組成物を形成することを含む。この出願の開示もまた参照として組み込まれる。
【0058】
本発明のトリブロック共重合体は、ヨウ素または臭素置換されていてもよく、これは共重合体を放射線不透過にする。これらの共重合体およびその調製方法は、米国特許第6,475,577号に開示されている。この特許の開示は参照として本明細書中に組み込まれる。放射線不透過の共重合体は、芳香環、アルキレン炭素、またはその両方の1以上の水素がヨウ素原子または臭素原子で置換された繰り返し構造単位を含む。本発明のトリブロック共重合体は、同様にヨウ素および臭素置換であってもよい。式Iの繰り返し構造単位を含む本発明による共重合体は、前記共重合体もまた放射線不透過の繰り返し構造単位、好ましくは、芳香環、アルキレン炭素、またはその両方の1以上の水素がヨウ素原子または臭素原子で置換された、AまたはBブロックの1以上を含むように、放射線不透過のモノマーと共重合した場合、放射線不透過である。
【0059】
前記トリブロック共重合体の分子量は、反応時間または成分の比を限定することによって制御されうる。分子量はまた、用いられるカルボジイミドカップリング試薬の量によって制御されうる。
【0060】
好ましいポリアリーレートは、約1,000〜100,000g/mol、好ましくは約3,000〜50,000g/mol、より好ましくは約10,000〜25,000g/molの重量平均分子量を有する。分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて、テトラヒドロフラン中のポリスチレン標準に対して、更なる補正をせずに計算した。したがって、トリブロック共重合体は、約2,500〜130,000g/mol、好ましくは約5,000〜80,000g/mol、より好ましくは約10,000〜50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0061】
本発明によれば、好ましいポリカーボネートは、約1,000〜100,000g/mol、好ましくは約3,000〜50,000g/mol、より好ましくは約10,000〜25,000g/molの重量平均分子量を有する。分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて、テトラヒドロフラン中のポリスチレン標準に対して、更なる補正をせずに計算した。したがって、トリブロック共重合体は、約2,500〜130,000g/mol、好ましくは約5,000〜80,000g/mol、より好ましくは約10,000〜50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0062】
前記トリブロック共重合体は、加水分解によって元の出発物質、すなわち、チロシン誘導ジフェノール、ジカルボン酸、および水溶性、親水性であり無毒のオリゴマー末端ブロックに分解される。本発明の共重合体は、高い親水性を有し、ナノ粒子のドラッグデリバリーシステムに有利である。しかしながら、共重合体の親水性:疎水性のバランスは、いくつかの方法で変化しうる。ジフェノールのペンダント鎖のエステルを変化させることもでき、長鎖のエステル基ほど疎水性は高くなる。例えばポリ(アルキレンオキサイド)のアルキレン基の炭素数の増加などによるA末端ブロックの分子量の増加は、疎水性をも高めるであろう。ジカルボン酸の変化は、親水性:疎水性のバランスをも変化させるであろう。
【0063】
本発明のトリブロック共重合体は、希釈水溶液中で5〜200nmの範囲(直径)で多孔質構造を形成する。好ましい構造は、50〜150nmの直径を有する。例えば、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−オリゴ−(DTOスベレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、すなわちPEG−オリゴ−(DTOスベレート)−PEGトリブロックオリゴマーは、希釈水溶液中で約100nmの範囲の直径を有する多孔質構造を形成する。気孔は、通常の手法、すなわち光散乱で特性評価される。
【0064】
トリブロック共重合体は、上述のように、ナノ粒子の疎水性ドラッグデリバリーシステムを形成するために用いられうる。無毒であって生分解性のビルディングブロックを含み、自己組織化工程によってナノ粒子を形成することができるトリブロック共重合体の合成は、特に制限されないが、疎水性薬剤の担体としての使用を含む、多くの生物医学的用途における使用に重要である。本発明の目的上、疎水性活性剤は、オクタノールに対してlogP>0であり、この際Pは分配係数である、薬剤または他の生物活性物質などの活性剤として定義する。
【0065】
両親媒性分子の自己組織化は根底にある物質の相互関係のあるいくつかの性質、すなわち、その化学構造、アーキテクチャ、または分子量に依存することは十分に確立されている。しかしながら、自己組織化の駆動力は主に疎水性相互作用によって支配されると仮定すると、自己組織化するブロック共重合体の設計は本質的に、その分子量および疎水性の親水性に対するバランスに依存する。希釈水溶液中のトリブロック共重合体の自己組織化は、単純な滴下による添加によって誘起され、超音波処理、高せん断混合、ナノ沈殿、または乳化の方法によって促進されうる。活性な疎水性生成物は、ナノ粒子の形成の前に適当な溶媒中でトリブロックと疎水性生成物とをプレミックスすることによって、または生成物が複合体化される溶液もしくは懸濁液中でナノ粒子を形成することによって、複合体化される。
【0066】
したがって、本発明はまた、注射に適した溶液中での活性化合物のナノ粒子との複合体化によって形成された、生物活性化合物または薬剤活性化合物の注射可能なデリバリーシステムを含む。前記デリバリーシステムおよびその調製方法は、他の小さな薬理活性分子および造影剤に加えて、薬理活性なタンパク質、ペプチド、ワクチンなどの活性化合物との使用に特に好適である。具体的な活性化合物としては、パクリタキセル、カンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、シスプラチン、カルボプラチン、シプロフロキサシン、ドキソルビシン、ロリプラム、シンバスタチン、メトトレキサート、インドメタシン、プロビプロフェン、ケトプロフェン、イロキシカム、ジクロフェナク、シクロスポリン、エトラコナゾール、ラパマイシン、ノコダゾール、コルヒチン、ケトコナゾール、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、オフロキサシン、ゲンタマイシン、オクトレオチド、カルシトニン、インターフェロン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、エストロゲン、およびインスリンが挙げられる。
【0067】
デリバリーされる疎水剤を封入したナノ粒子はまた、薬剤のリザーバーとして、制御放出装置のオリゴマーマトリックス中に分散されうる。ホストオリゴマーマトリックスは、ハイドロゲルまたは他の生体内分解性オリゴマーであってもよい。このような分散液は、例えば、経皮ドラッグデリバリー装置に貯蔵する活性剤としての有用性を有する。
【0068】
本発明のデリバリーシステムは、全身のデリバリーが求められる状況に加えて、局所的なデリバリーが求められる応用に適している。治療上有効な投与量は、インビボ法またはインビトロ法で決定されうる。本発明のそれぞれの特定の化合物について、必要とされる最適な投与量を決定するために、個々に決定が行われうる。治療上有効な投与量の範囲は、投与経路、治療目的、および患者の状態に当然影響される。さまざまな適切な投与経路において、吸収効率は、薬理学において公知の方法で各活性化合物について個々に決定されなければならない。したがって、治療者は、最適な治療効果を得るために、必要に応じて投与量を調整し、投与経路を変更することが必要であろう。有効な投与量の値、すなわち所望の結果に到達するために必要な投与量の決定は、当業者の技術の範囲である。典型的には、化合物の投与は、低い投与量で開始され、所望の結果に到達するまで投与量を増加させる。本発明の製剤からの活性化合物の放出速度はまた、治療する治療状態に依存して、当業者の通常の技術の範囲で、有利なプロフィールを決定するために変更される。
【0069】
典型的な投与量は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kgであり、好ましくは約0.01mg/kg〜約100mg/kgであり、より好ましくは約0.10mg/kg〜約20mg/kgでありうる。有利には、本発明の化合物は毎日数回投与されうるが、他の用法もまた有用でありうる。
【0070】
前記組成物は、坐薬、埋め込みのペレットまたは小さなシリンダー、エアロゾル、経口投与製剤ならびに軟膏、ドロップ、および経皮貼布などの局所製剤などのさまざまな投与形態を採用し、皮下、筋肉内、結腸内、直腸内、経鼻で、経口で、または腹腔内に投与されうる。投与形態は、任意で1以上の担体を含んでもよい。
【0071】
治療用途の許容される製薬上の担体は、製薬分野でよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,Mac Publishing Co.,(A.R.Gennaro edt.1985)に記載されている。このような材料は、採用される投与量および濃度で受容者に無毒であり、希釈剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、封入材料、溶媒、増粘剤、分散剤、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩および他の有機酸塩などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、保存料、ポリアルギニンなどの低分子量(約10残基未満)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリ(ビニルピロリジノン)などの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンなどのアミノ酸、セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの対イオン、および/またはTween(商標)、Pluronics(商標)またはPEGなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0072】
本発明のナノ粒子−薬剤複合体は、凍結乾燥を含む、共重合体の完全性の維持に加えて、薬剤活性の保持に適した条件下での貯蔵のために調製されうる。典型的には常温または冷蔵温度での貯蔵に適する。滅菌は通常の方法によって容易に達成されうる。
【0073】
以下の非制限的な実施例は、発明の特定の形態を説明するものである。部およびパーセントは特にことわりのないかぎり全て重量基準であり、温度は全て摂氏である。ジカルボン酸および他の全ての試薬は純粋な形態で購入し、そのまま用いた。溶媒は「HPLCグレード」のものであった。ジフェノールモノマー(例えばデサミノチロシル−チロシンのエステル)は、米国特許第5,099,060号の実施例Iに与えられる手順に従って調製した。この手順は特にDTHに関するが、ヘキシルエステル以外のエステルを有するモノマーも同様の基礎的な手順によって容易に調製されうる。DPTS触媒は、Moore,et al.,Macromol.,23(1),65−70(1990)に記載される方法で調製した。
【実施例】
【0074】
実施例
実施例1−2:ポリ(エチレングリコール)−ブロック−オリゴ−(DTRスベレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)自己組織化ナノ粒子の調製
命名:一群のABAトリブロック共重合体であるポリ(エチレングリコール)−ブロック−オリゴ−(DTRスベレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)を以下のように略す:対称PEGのA−ブロックを、2000または5000g/molの分子量を有する意味で、それぞれ2Kまたは5Kと略す;オリゴB−ブロック(デサミノチロシル−チロシンアルキルエステル(DTR)のスベリン酸エステル(SA))は、そのペンダントエステルのR基で区別され、この際、RはE=エチル、B=n−ブチル、O=n−オクチル、またはBn=ベンジルである(図1)。例えば、トリブロックオリゴマーであるPEG5K−b−オリゴ(デサミノチロシル−チロシンエチルエステルスベレート)−b−PEG5Kは、5K/DTE−SAと略す。
【0075】
試薬:デサミノチロシルチロシンオクチルエステル(DTO)は、公知の方法を用いて調製した。塩化メチレン(HPLCグレード)、2−プロパノール、およびメタノールは、ペンシルバニア州ピッツバーグのFisher Scientific社から購入した。スベリン酸、4−ジメチルアミノピリジニウム−p−トルエンスルフェート(DMPTS)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(Mw:2000または5000g/mol)、およびセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical社から購入した。ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)は、Tanabe Chemicals社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した。5−ドデカノイルアミノフルオレセイン(DAF)およびオレゴングリーンは、Molecular Probes社(ユージーン、オレゴン州)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS;1×PBSは0.138MのNaClおよび0.0027MのKClを含む0.01Mのリン酸緩衝生理食塩水である;pH7.4)、ブルーデキストラン、フルオレセイン、ウサギ肝臓エステラーゼ、およびパクリタキセルはSigma社(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。N,N−ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフラン(THF)は、Merck社(EM Science,ダルムシュタット、ドイツ)から購入した。ジメチルスルホキシドは、Merck社およびSigma社から購入した。これらの試薬は、さらなる精製をせずに用いた。
【0076】
合成手順:トリブロック共重合体は、その開示が本明細書中に参照として組み込まれる、Nardin et al.,Langinuir,vol.20,11721−25(2004)に開示される、PEGとオリゴ(DTR−SA)とのインサイチュのカルボジイミドカップリングを用いて20℃でワンポット反応で合成された。この方法によってランダムブロック共重合体ではなくABAトリブロック共重合体が生成したことを確認するために、オリゴ(DTO−SA)Bブロックが、DTOとスベリン酸とのDIPCおよびDMPTS−触媒反応で調製される、2段階合成の調製も行った。CTABおよび水でクエンチした後、このオリゴマーを沈殿によって単離し、精製し、特性評価した。
【0077】
別の反応で、オリゴ(DTO−SA)をモノメトキシ末端PEG(MeO−PEG−OH)と同一のカップリング条件下で反応させた。
【0078】
ブロック共重合体の物理的特性の評価:分子量(MおよびM)を、ゲル透過クロマトグラフィー、GPC(PL−gelカラム、ポアサイズ10および10Å、Perkin−Elmer,Shelton,CT;Waters 410 RI detector)で、1mL/minのTHF流速でポリスチレン標準を用いて決定した。H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、CDCl中、400MHz(Varian Unity 400 spectrophotometer,Palo Alto,CA)で得た:6.98−7.20ppm(Ar−H),5.98(d,NH),4.86(d,チロシンのCH),4.08(m,DTRのOCH),3.65(PEGのCHCH),3.38(s,PEGのOCH),3.05(t,DTのCH),2.95(t,SAのCH),2.56(m,SAのCH;DTのCH;DTのCH),1.78(p,SAのCH),1.60(p,RのCH),1.50(p,SAのCH),1.3(m,RのCH)および0.92(t,RのCH)。
【0079】
溶液の示差走査熱量測定、DSC(DSC−7熱量計、Perkin−Elmer,Shelton,CT)は、2℃/分の昇温/降温速度で行われた。固体のDSC(2920変調示差走査熱量計、TA Instruments−Water LLC,New Castle,DE)は、その内容が本明細書中に参照として組み込まれる、d’Acunzo et al.,Macromolecules,vol.35,9366−71(2002)に記載される方法で行われた。
【0080】
PEGの添加前に1段階反応混合物のサンプリングによって得られた(DTR−SA)ブロックの分子量、およびワンポット工程で作製される最終的なPEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロックの分子量を、これらが製造するナノ粒子の流体力学直径とともに図2にまとめた。2K PEG含有トリブロックのM値は、10,300〜11,500g/molの狭い範囲内であった。5K PEG含有トリブロックのM値は、15,200〜15,700g/molの狭い範囲内であった。これらの結果は、各トリブロック共重合体のPEGブロックに依存する共重合体の分子量の差に一致する。さらに、H−NMRの研究によって、GPCによって決定された分子量の精度が支持される。DTR−SAとPEGブロックとの積分ピーク面積の比は、トリブロック中の(DTR−SA)繰り返し単位の数を与え(データは示さず)、既知のDTR−SAモノマーおよびPEGの分子量を用いると、GPCの分子量の値とほぼ一致する共重合体の分子量が得られる。
【0081】
2段階反応工程で調製された5K/DTO−SAトリブロックの分子量は、M=15300g/molおよびM=25300g/molである。1段階および2段階の手順で調製された5K/DTO−SAトリブロック生成物のNMRスペクトルは同一であった。他のトリブロックの同様の比較(図示せず)は、1段階および2段階反応による生成物が等価であることを矛盾なく示す。
【0082】
疎水性オリゴ(DTR−SA)ブロックのガラス転移温度Tは、すべて0℃より高く、ペンダントR基の長さが増加するにつれて低下する(図3)。純粋なPEGホモポリマーの分子量が2000g/molから5000g/molに増加すると、融点Tは53℃から63℃に上昇する。トリブロック共重合体2K/DTO−SAおよび5K/DTO−SAにおいては、PEGの分子量が2000g/molから5000g/molに増加すると、同様にTが49℃から54℃に上昇する。すべての場合において共重合体の融点は対応する純粋なPEGブロックの融点よりも低く、これはDTR−SAユニットがPEGの結晶化度の程度を低下させることを示唆する。同様に、すべてのトリブロックのT値(−33℃)とPEGホモポリマーのT値(−40℃)との差は、トリブロックにおける混合相のモルフォロジーに起因するものでありうる。
【0083】
ナノ粒子の調製:共重合体のナノ粒子への自己組織化は、THF溶液中の100mg/mLのトリブロックオリゴマーを、最終的なオリゴマー濃度が4mg/mLになるまで、ゆっくりとした撹拌下で脱イオン水に滴下して添加することによって誘導された。得られた不透明な水性分散液を0.45μm、0.22μmおよび0.1μmのサイズのPVDFシリンジフィルター(Millipore,Bedford,MA)に順に通してろ過し、澄明なろ液をすべての物理的特性の評価に用いた。ナノ粒子の流体力学直径は、動的光散乱(PSS Nicomp Particle Sizing Systems,SantaBarbara,CA)によって、30℃で、累積解析およびストークス−アインシュタインの式を用いて決定され、Nardin et al.,Langmuir,vol.20,11721−25(2004)に開示される電子顕微鏡によって測定された粒子サイズと一致した。
【0084】
精製したナノ粒子を、12.25mLのナノ粒子溶液を25℃で65,000rpm(290,000×g)で2.5時間超遠心分離(Beckman L8−70M ultracentrifuge,Beckman Coulter,Fullerton,CA)することによって単離した。上澄みを取り除いた後、ペレット状のナノ粒子を水で2回洗浄し、25℃で1mLの水中でゆっくりと撹拌して再懸濁させた。再懸濁したペレットの体積は、水の添加によって12.25mLに増加し、溶液はフィルター殺菌された。
【0085】
ナノ粒子の特性の評価:本明細書中に記載したすべてのトリブロック共重合体は、水溶液にゆっくり添加すると自然にナノ粒子に自己組織化する。ナノ粒子の流体力学直径は、2Kまたは5KのいずれのPEGブロックを含むかに依存して、それぞれ、約46nmおよび70nmの2つの群になり、特定のペンダントR基には依存しなかった。超遠心分離の前後の5K/DTO−SAナノ粒子のサイズ分布は、それぞれ、62.9±31.3nmおよび60.6±25.9nmであり、ナノ粒子調製における残留した共溶媒の存在も超遠心分離もナノ粒子の構造に有意な影響を与えないことを示した。ナノ粒子の自己組織化は非共有相互作用によって引き起こされるため、ナノ粒子は、臨界凝集濃度(CAC)未満に希釈すると分解する。しかしながら、2K/DTO−SAトリブロックの0.26μg/mLのCACは、他の自己組織化ブロックオリゴマー系で以前に発表された値よりも有意に低い。
【0086】
ナノ粒子のTは、溶液DSCで決定すると、全てのナノ粒子組成物において21℃である。水和したPEGブロックの存在は、Tが21℃以上の疎水性のDTR−SAコア成分のガラス転移を柔軟にすると考えられる。
【0087】
この一群のトリブロック共重合体は、生理条件下で生体適合性化合物に分解するように設計される。HPLC分析から、約70%のDTEモノマー(図1、R=エチルエステル)が、ウサギ肝臓エステラーゼの存在下での30分間のインキュベーションの後、遊離酸であるデサミノチロシン(DT)に変換されたことがわかった。5K/DTO−SAナノ粒子は、PBS中、pH7.4、37℃でインキュベートされたとき、白色の沈殿が形成され、ろ過によってDLSで検出可能なすべての構造が失われる、6か月まで安定に見える。
【0088】
実施例3:ナノ粒子−モデル化合物相互作用
モデル化合物と複合体化したナノ粒子を、20mgのトリブロック共重合体を、200μLのDMF中の100μgのフルオレセイン色素または1%のDMSOを含む200μLのDMF中の200μgのパクリタキセルと結合させることによって調製した。これらの溶液を、4.8mLの脱イオン水に撹拌しながら滴下して添加し、得られたナノ粒子−溶質複合体をろ過(孔径0.22μm)し、使用前にガラスまたはポリプロピレンの容器に室温で保存した。特定の用途には、この手順を3倍にスケールアップした。トリブロック共重合体を入れないこと以外は上記と同様にして遊離の溶質の溶液を調製した。
【0089】
ナノ粒子−溶質複合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Sepharose CL−4B(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を用いて、PBSを移動相として行った。カラムのボトムフリットは、多孔性ポリテトラフルオロエチレン(Small Parts,Inc.,Miami Lakes,Fl)であり、これはカラムから出る疎水性分子の結合を有意に減少させた。一般に、36×0.25mLのフラクションを収集した。カラム空隙容量は、高分子量蛍光標識デキストランを用いて決定した。ナノ粒子は、そのUV吸光度(260nm;PowerWave,Bio−Tek Instruments,Inc.,Winooski,VT)によって検出し、蛍光色素は、その蛍光(励起485nm/発光538nm;Spectra Max Gemini,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)によって検出した。必要に応じて、ナノ粒子依存性消光を除くために、蛍光決定の前に50μLの各フラクションを150μLのDMF/PBS(1:1)と結合させた。
【0090】
ナノ粒子複合体におけるパクリタキセル濃度は、高速液体クロマトグラフィー、HPLC(3cm C18 HPLCカラム、Perkin−Elmer,Shelton,CT)によって、移動層として水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の0.1%の勾配で決定された。ナノ粒子−パクリタキセル複合体は、60mgのトリブロックオリゴマーを1%のDMSOを含む600μLのDMF中の600μgのパクリタキセルと結合させ、これに14.4mLの水を滴下して加えることによって調製した。遊離のパクリタキセルを、上述のように超遠心分離によってパクリタキセル含有ナノ粒子から分離した。次いで、1.5mLの再懸濁させたパクリタキセル−ナノ粒子懸濁液を凍結乾燥し、0.15mLの塩化メチレンおよび0.1mLのアセトニトリルに激しいボルテックス下で再溶解させた。塩化メチレンを窒素気流下で蒸発させ、最終的な澄明な溶液の、それぞれ一定量をHPLCで分析した;パクリタキセルは230nmでの吸光度によって検出された。溶離ピークの面積は、アセトニトリル中の遊離パクリタキセル標準との比較によって定量した。薬剤の結合効率は、与えられたパクリタキセル−ナノ粒子複合体における、g共重合体あたりのパクリタキセルのmgとして表される。
【0091】
細胞毒性アッセイ:結合した薬剤分子の非存在下でのナノ粒子の細胞毒性アッセイのために、KB子宮頸癌細胞(500〜5000細胞)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む、合わせて100μLのDMEM(Sigma)中で、96穴プレートに設置した。約1〜2時間後、10μLのナノ粒子溶液を細胞に添加し、細胞を37℃/5%COで8〜72時間増殖させた。細胞数は、製造者によって記載された条件に従い、MTSアッセイによって間接的に決定された(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay;Promega Corp.,Madison,WI)。KB細胞株は、American Type Culture Collection(CCL−17;Manassas,VA)から購入し、ストックは、10%の加熱不活性化したFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンの存在下で、葉酸フリーRPMI 1640培地(Grand Island,NY)中で37℃/5%COで維持した。
【0092】
パクリタキセルの活性を決定するために、5K/DTO−SAナノ粒子を、上述のようにパクリタキセルの存在下で調製し、超遠心分離によってペレットにした。上澄みを回収し、ナノ粒子のペレットを洗浄し、もとの開始体積に再懸濁させた。初期の調製(遠心分離前)、回収した上澄み、および再懸濁させたナノ粒子のペレットの段階希釈液を調製し、それぞれ10μLをKB細胞に投与した。3日間増殖させた後、50%の増殖阻害に必要な体積を決定した。
【0093】
ナノ粒子の蛍光モデル化合物との相互作用:すべてのナノ粒子は、疎水性色素であるDAFの蛍光を消光するが、親水性色素であるフルオレセインに対してはほとんど影響しない(図4B)。ナノ粒子の濃度が25μg/mLであり、オリゴマー1モルあたりのDAFのモル数の比がおよそ2のとき、DAFの蛍光は、ほぼ一桁減少した。対照的に、オリゴマー1モルあたりのフルオレセインのモル数の比が1であっても、蛍光は15%しか減少しない。DAFの蛍光に対するこれらのナノ粒子依存性効果は、ナノ粒子によるDAF分子の物理的な複合体化を示している。ナノ粒子の非存在下では、DAFおよびフルオレセインの平均蛍光は、それぞれ、4200および8300ユニットであった。
【0094】
ナノ粒子によるDAFの強い結合はまた、SEC実験におけるDAFおよびナノ粒子の共転移からも明らかである(図5)。ナノ粒子は、色素の存在下(図5Aおよび5B)または非存在下(データは示さず)にかかわらず、空隙容量であるフラクション7および8に現れる。ナノ粒子の非存在下で、DAFおよびフルオレセインはそれぞれフラクション20および22に現れる(図5Cおよび5D)。蛍光のピークはまた、フルオレセイン存在下で形成されたナノ粒子のフラクション20(図5C)および他の親水性蛍光色素であるオレゴングリーン(データは示さず)存在下で形成されたナノ粒子のフラクションで現れる。これらの結果は、ナノ粒子と親水性分子との間に有意な複合体形成がないことを示す。一方、蛍光のピークは、DAF存在下で形成されたナノ粒子のフラクション7および8(図5D)で生じる。5K/DTOSAナノ粒子は、260の吸光度によって検出され、フルオレセインおよびDAFは蛍光によって検出された。ナノ粒子依存性消光を除くために、すべての蛍光読み取りは、上述のようにDMF/PBSの存在下で行った。
【0095】
ナノ粒子結合色素を遊離色素から分離するために超遠心分離を用いると、5K/DTO−SAナノ粒子と強く結びついているDAF分子のフラクションは、超遠心分離前のナノ粒子/DAF調製、並びに超遠心分離後に回収された上澄みおよび再懸濁されたナノ粒子のペレットの蛍光分析に基づいて、約95%(4.75mg/gオリゴマー)であることがわかった。DAFのわずか1%が上澄みに残る。DAF分子の残りの4%は、おそらく、ナノ粒子と弱く結びついて、洗浄の間に除去される。DAFをあらかじめ形成されたナノ粒子に添加して超遠心分離すると、投入したDAFの、95%および3%が、それぞれペレットおよび上澄みに回収される。したがって、ナノ粒子は、疎水性分子を吸収し結合する有効なシンクとして作用する。DAF含有ナノ粒子が水に対して透析される場合、全DAF濃度(蛍光によって決定される)の約30%の初期損失がはじめの24時間で観察され、次いで色素の少量の損失が次の4日間にわたって観察される。したがって、ナノ粒子は、疎水性分子を吸収し結合する有効なシンクとして作用する。
【0096】
ナノ粒子のパクリタキセルとの相互作用:ナノ粒子によるパクリタキセルの結合に対するオリゴマーの疎水性の影響の予備的な研究において、ろ過および超遠心分離の後、ナノ粒子に結合しているパクリタキセルの濃度は、5K/DTO−SAおよび2K/DTOSAの両方で、3.5mgパクリタキセル/gオリゴマーであることがHPLC分析によって明らかになった。より疎水性の低いエチルペンダントエステルオリゴマーである5K/DTE−SAおよび2K/DTESAでは、ナノ粒子に結合したパクリタキセルの量は、3.2mg/gオリゴマーであった。これらの結果は、このオリゴマーシステムの「調節可能な」性質を示す。
【0097】
ナノ粒子およびパクリタキセル−ナノ粒子複合体の細胞毒性:細胞がインビトロで超遠心分離−精製された5K/DTO−SAナノ粒子に0.1〜4mg/mLの濃度でさらされたとき、短期間の細胞毒性効果またはKB細胞の生存能力の変化はみられなかった(図6)。さらに、5K/DTE−SA、5K/DTB−SA、または5K/DTBn−SAのナノ粒子に1mg/mLで72時間さらされたKB細胞において、細胞毒性効果は観察されなかった(データは示さず)。これらの結果は、先に2K/DTO−SAナノ粒子で行った予備的な短期間の細胞毒性試験と一致する。
【0098】
パクリタキセルによるKBヒト癌細胞の増殖阻害は、SEC実験において、5K/DTO−SAナノ粒子と共分画することがわかった(図7)。ここでMTSアッセイにおいて490nmでの吸光度測定によって測定される生存細胞集団によって定量されるKB細胞増殖阻害は、所定のカラムフラクションに存在するパクリタキセル−ナノ粒子複合体の量に正比例して生じる。致死効果のピークは、パクリタキセル−ナノ粒子複合体の溶出濃度のピーク(フラクション8)と正確に同じフラクションで生じる。さらに、超遠心分離後のパクリタキセル−ナノ粒子複合体によるKB細胞の50%増殖阻害の相対的な活性は、KB細胞を初期の調製および再懸濁したペレットの一定量で滴定することによって決定すると、初期の調製の活性の40%である(データは示さず)。同様の方法で、上澄みの相対的な活性は、初期の調製の活性の9%であることが明らかになった。これらの活性は、ナノ粒子に結合するパクリタキセルについてHPLCによって得られた濃度と一致し、パクリタキセルが水溶液に溶けにくいことを反映する。5K/DTO−SA−パクリタキセルおよび遊離パクリタキセルのKB細胞の増殖阻害のLC50は、それぞれ、2.2±0.3nMおよび2.9±1.1nMであることがわかった。したがって、ナノ粒子は、複合体化したパクリタキセルの活性を阻害しない。薬剤の非存在下で調製され、同様の方法で分取されたナノ粒子は、KB細胞の増殖を阻害しなかった(データは示さず)。
【0099】
実施例4:ポリ(エチレングリコール)−ブロック−オリゴ−(DTOカーボネート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)自己組織化ナノ粒子の調製
試薬:デサミノチロシルチロシンオクチルエステル(DTO)は既知の手法を用いて調製した。塩化メチレン(DCM)(HPLCグレード)およびピリジン(認証ACS)は、Fisher Scientific社(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から購入した。トリホスゲン(TP)はAldrich Chemical社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入した。ポリ(エチレングリコール)(PEG)(Mw=5000)はFluka社(スイス)から購入した。これらの試薬は、さらなる精製をせずに用いた。
【0100】
合成手順:機械的撹拌子およびポンプを備えた0.5Lの三つ口フラスコを、Nで15分間パージした。フラスコにPEGを添加し、次いでTP(固体)およびDCMを添加した。混合物を澄明な溶液が得られるまで撹拌した(10〜15分)。この時点で、反応混合物は、「活性化されたPEG」−PEG−クロロギ酸エステルおよび過剰の未反応のTPを含む。DTOおよびDCMをねじ口びんに入れ、TP溶液をFMIポンプを用いて反応混合物に添加した(1時間超)。添加が完了した後、10mlのDCMをびんに加え、反応混合物にポンプを用いて10分超の時間をかけて添加した。添加が完了した後、150mLを抜き取り、蒸発させて空気で乾燥させ、1mLのTHFで希釈し、ろ過し、ろ液をGPCで分析して分子量分布を決定した。GPCクロマトグラムによって、生成物および反応したモノマーが明らかになった。GPCランが完了した後、100mLのHOを加えて反応を停止させた。
【0101】
試験:反応混合物の全体を、濃いシロップ状(全体で約10mL)までエバポレーションによって濃縮し、次いでこれを60mLの2−プロパノール(滴下して添加)を用いて沈殿させ、静置した。生成物は、黄色の濃い油として得られ、溶媒はデカンテーションで除かれた。沈殿を20分間乾燥させ(N下)、10mLの塩化メチレンに再溶解させ、60mLの2−プロパノールで沈殿させた。段階3は、a)50mLのメタノール:IPA=l:1;b)50mLのメタノールで、さらに2回繰り返された。生成物(濃いゴム状)を窒素気流下で乾燥させ、次いで真空乾燥させた。
【0102】
ブロック共重合体の物理的特性の評価:PEG5K−オリゴDTOカーボネート−PEG5Kの分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー、GPC(PL−gelカラム、ポアサイズ10および10Å、Perkin−Elmer,Shelton,CT;Waters 410 RI detector)で、1mL/minのTHF流速でポリスチレン標準を用いて、M=39,102およびM=53,758と決定された。H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、DMSO中、400MHz(Varian Unity 400 spectrophotometer,Palo Alto,CA)で取得し、PEGに対して約180の(DTOカーボネート)ユニットが示され、これはPEG5K−オリゴDTOカーボネート−PEG5K構造に一致した。
【0103】
ナノ粒子の調製および特性の評価:オリゴマーのナノ粒子への自己組織化は、THF溶液中の100mg/mLのトリブロックオリゴマーを、最終的なオリゴマー濃度が4mg/mLになるまでゆっくりとした撹拌下で脱イオン水に滴下して添加することによって誘導された。得られた不透明な水性分散液を0.45μm、0.22μmおよび0.1μmのサイズのPVDFシリンジフィルター(Millipore,Bedford,MA)に順に通してろ過し、澄明なろ液をすべての物理的特性の評価に用いた。ナノ粒子の流体力学直径は、動的光散乱(PSS Nicomp Particle Sizing Systems,SantaBarbara,CA)によって、30℃で、累積解析およびストークス−アインシュタインの式を用いて決定され、ろ過後、以下の結果を得た:0.45μm:132.4±48.6nm;0.22μm:121.5±39.0nm;および0.1μm:111.9±32.0nm。本明細書中に記載したトリブロック共重合体はすべて、水溶液にゆっくりと添加すると、ナノ粒子に自然に自己組織化する。前記ナノ粒子の流体力学直径は、約112nmである。
【0104】
上述の実施例および好ましい実施形態の記載は、説明のためのものであって、特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。容易に理解されるように、上述の特徴のさまざまな変化および組み合わせは、特許請求の範囲に示される本発明から逸脱することなく用いられうる。このような変化は、発明の精神およびスクリプトから逸脱しないものと考えられ、このような変化のすべては以下の特許請求の範囲に含まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】PEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の構造を示す図面である。
【図2】は、オリゴ(DTR−SA)ブロックおよびPEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の熱挙動を示す表である。
【図3】は、PEG−b−オリゴ(DTR−SA)−b−PEGトリブロック共重合体の分子量特性およびその対応するナノ粒子の流体力学直径を示す表である。
【図4】図4Aは、以下の、5K/DTO−SAナノ粒子の存在下または非存在下での蛍光を示す:(1)遊離フルオレセイン;(2)ナノ粒子/フルオレセイン;(3)遊離DAF;(4)ナノ粒子/DAF。図4Bは、超遠心分離で精製した5K/DTO−SAナノ粒子を2.5μMのDAF溶液(▲)または0.25%DMF中の1μMのフルオレセイン溶液(●)に添加したときの、ナノ粒子の濃度の関数としての相対的な蛍光を示すグラフである。
【図5】図5A〜5Dは、以下のように、ゲルろ過クロマトグラフィー後の、フルオレセイン−5K/DTO−SAおよびDAF−5K/DTO−SAナノ粒子のフラクションの分析を示す:図5Aは、遊離フルオレセイン分画後のナノ粒子(▲)、およびフルオレセイン存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;図5Bは、遊離DAF分画後のナノ粒子(▲)およびDAF存在下19で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;図5Cは、遊離フルオレセイン分画後のナノ粒子(▲)およびフルオレセイン存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す;図5Dは、遊離DAF分画後のナノ粒子(▲)およびDAF存在下で調製したナノ粒子(●)の検出を示す。
【0106】
【表2】

【図7】ゲルろ過クロマトグラフィーのフラクションの関数としての吸光度を示すグラフであり、パクリタキセル存在下で形成され、ゲルろ過クロマトグラフィーによって分画された5K/DTOSAナノ粒子の奇数フラクションならびにフラクション7および9は、260nmでの吸光度によって検出された(●)、パクリタキセルの活性は各フラクションを20μL用いたKB細胞増殖の関数として決定され、細胞増殖はMTSアッセイを用いて決定され、490nmで測定された(▲)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A−B−A構造を有し、各A末端ブロックは水溶性、親水性、および無毒であり;B中央ブロックは式(I)で表される構造を有する、同一または異なった繰り返し単位を有するポリカーボネートである、トリブロック共重合体:
【化1】

この際、Xは
【化2】

であり;Zは2〜約100であり;RはCH=CHまたは(CHであり、この際、nは0〜18であり;Rは、水素、約18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに約18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択される。
【請求項2】
前記末端ブロックが、以下の構造を有するポリ(アルキレンオキサイド)である、請求項1に記載のトリブロック共重合体:
【化3】

この際、各Aのmは、独立して、各Aの分子量が約1000〜約15,000g/molとなるように選択され;各Aの、および各A中のRは、独立して、水素および1〜4の炭素原子を含む低アルキル基からなる群から選択され;aは1以上の整数である。
【請求項3】
前記末端ブロックが、CHO−[CH−CH−O−]の構造を有する、請求項1に記載のトリブロック共重合体。
【請求項4】
Zが約10である、請求項1に記載のトリブロック共重合体。
【請求項5】
およびRの1以上がエーテル結合を含む、請求項1に記載のトリブロック共重合体。
【請求項6】
が−CH−CH−である、請求項1に記載のトリブロック共重合体。
【請求項7】
が、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、およびベンジル基からなる群から選択される、請求項1に記載のトリブロック共重合体。
【請求項8】
請求項1に記載のトリブロック共重合体から形成されるナノ粒子。
【請求項9】
(a)A−B−A構造を有し、各A末端ブロックは水溶性、親水性、および無毒であり;B中央ブロックは式IIで表される構造を有する、同一または異なった繰り返し単位を有し、疎水性である、トリブロック共重合体のナノ粒子:
【化4】

この際、Xは
【化5】

または
【化6】

であり;Zは2〜約100であり;RはCH=CHまたは(CHであり、この際、nは0〜18であり;Rは、水素、18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択され;Rは、結合または18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキル基ならびに18までの炭素原子を含む直鎖および分岐のアルキルアリール基からなる群から選択される;および
(b)前記ナノ粒子によって複合体化される疎水性化合物;
を含む組成物。
【請求項10】
前記末端ブロックが、以下の構造を有するポリ(アルキレンオキサイド)である、請求項9に記載の組成物:
【化7】

この際、各Aのmは、独立して、各Aの分子量が約1000〜約15,000g/molとなるように選択され;各Aの、および各A中のRは、独立して、水素および1〜4の炭素原子を含む低アルキル基からなる群から選択され;aは1以上の整数である。
【請求項11】
前記末端ブロックが、CHO−[CH−CH−O−]の構造を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
Zが約10である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
R、RおよびRの1以上がエーテル結合を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
が−CH−CH−である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
が、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、およびベンジル基からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
Rが、12までの炭素原子を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
Rが、−CH−CH−C(=O)−、−CH=CH−、−CH−CH(−OH)−、−CH−C(=O)−および(−CH−)からなる群から選択され、この際、zは0〜12である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記複合体化された疎水性化合物は、生物活性化合物または薬剤活性化合物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
製薬上許容される担体および有効量の請求項9に記載の組成物を含む、疎水性化合物を必要とする患者にデリバリーするための組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子がドラッグデリバリーオリゴマーマトリックスに組み込まれる、または分散される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記活性な疎水性化合物は、抗腫瘍剤、抗生物質、抗菌剤、スタチン、ペプチド、タンパク質、ホルモン、およびワクチンからなる群から選択される、請求項18、19、または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記活性な疎水性化合物は、パクリタキセル、カンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、シスプラチン、カルボプラチン、シプロフロキサシン、ドキソルビシン、ロリプラム、シンバスタチン、メトトレキサート、インドメタシン、プロビプロフェン、ケトプロフェン、イロキシカム、ジクロフェナク、シクロスポリン、エトラコナゾール、ラパマイシン、ノコダゾール、コルヒチン、ケトコナゾール、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、オフロキサシン、ゲンタマイシン、オクトレオチド、カルシトニン、インターフェロン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、エストロゲン、およびインスリンからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記複合体化された化合物は、造影剤である、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
請求項19または20に記載の組成物を必要とする患者に投与することを含む、部位特異的な、または全身の、ドラッグデリバリーの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−503187(P2009−503187A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523856(P2008−523856)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/028572
【国際公開番号】WO2007/018544
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(505421375)ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】