ナノ結晶エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
【課題】エレクトロルミネッセンス素子が電圧などの駆動条件に殆ど影響されず、その他の有機層発光を最大抑えた純粋なナノ結晶スペクトルを提供するナノエレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に、前記高分子正孔輸送層に接触した独立のナノ結晶発光層を含む。
【解決手段】本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に、前記高分子正孔輸送層に接触した独立のナノ結晶発光層を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子と記す)およびその製造方法に係り、より詳しくは、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に独立に形成されたナノ結晶発光層を含むナノ結晶EL素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶は、数ナノサイズの結晶構造を有する物質であって、約数百〜数千個の原子から構成されている。このように小さいサイズの物質は、単位体積当たり表面積が広くて大部分の原子が表面に存在し、量子閉じ込め効果などを示すため、物質自体の固有な特性とは異なる独特な電気的、磁気的、光学的、化学的、機械的特性を持つ。すなわち、ナノ結晶の物理的な大きさを調節することにより、様々な特性を調節することが可能となる。
【0003】
既存のナノ結晶を合成する方法として、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)またはMBE(molecular beam epitaxy)などの気相蒸着法が用いられてきた。また、ここ数年の間に、有機溶媒に金属前駆体物質を入れてナノ結晶を成長させる化学的湿式法が急速に発展してきた。
【0004】
化学的湿式方法は、結晶が成長するときに有機溶媒が自然に量子点結晶表面に配位して分散剤の役割を行うようにすることで、結晶の成長を調節する方法であって、MOCVDまたはMBEなどの気相蒸着法より容易かつ低廉な工程によってナノ結晶の大きさと形状の均一度を調節することができるという利点をもつ。
【0005】
しかし、化学的湿式方法によって合成されたナノ結晶は、合成後に分離して溶液中に分散した状態で存在するので、これをEL素子に応用するためには固体状に薄膜化する技術が要求される。現在まで発表されたナノ結晶を用いたEL素子では、ナノ結晶は発光物質として使用され、あるいは発光機能と電荷輸送機能を併せ持つものとして使用されている。特許文献1は、ナノ結晶を採用したEL素子を最初に提示しているが、ナノ結晶を多層に積層して発光層かつ電子輸送層の役割を行うようにすることにより、電圧に応じて発光波長が変わる素子の概念を提示している。
【0006】
特許文献2は、両電極の間にナノ結晶を含んだ有機−無機混合マトリックスから構成されている素子について説明している。具体的には、ナノ結晶とN,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン(TPD)のような低分子正孔輸送物質を混合した溶媒を電極上にスピンコーティングする方法を提示している。この際、コーティング条件と物質の混合割合を適切に調節すると、低分子正孔輸送層とナノ結晶の分子間力の差または密度の差によってナノ結晶層が正孔輸送層の上端に形成される。
【0007】
しかし、このような製造工程により生成されたナノ結晶層は、正孔輸送層の上端に形成されるので、正孔輸送層においては、正孔輸送層の材料とナノ結晶が混合された状態になる。この結果、正孔輸送層と、その上部に形成された電子輸送層とが接触することになり、ナノ結晶と共に正孔/電子輸送層が発光する。特許文献2は、かかる問題点を解決するために、ナノ結晶を含んだ正孔輸送層の薄膜の上に正孔抑制層を形成し、この正孔抑制層の上に電子輸送層を形成する技術を開示している。
【0008】
ところで、ナノ結晶と混合する正孔輸送物質としては低分子が使用される。これは、仮に高分子材料を正孔輸送物質に用いる場合には、一般に高分子材料の溶媒への溶解性は低いため、ナノ結晶が溶解する溶媒に溶解可能な高分子材料は、ごく限定された種類であることによる。また、ナノ結晶が溶解する溶媒に溶解可能な高分子材料であっても、溶解性が不十分なため、ナノ結晶層と正孔輸送層の膜の厚みを制御することが困難になる。
【0009】
特許文献3では、両電極の間にナノ結晶−マトリックス混合層を発光層として用いるEL素子について説明している。この文献によれば、発光効率を高めるために、バンドギャップエネルギーが大きいマトリックスを用い、伝導帯エネルギー準位はナノ結晶より大きく、価電子帯エネルギー準位はナノ結晶より低いマトリックスを選択することにより、ナノ結晶が電子と正孔を閉じ込めて、ナノ結晶をよく発光させることができる。
【0010】
以上で説明したような既存のナノ結晶を発光物質として用いるEL素子では、ナノ結晶が発光機能と電荷輸送機能を併せ持つか、あるいは正孔輸送層の材料と混合された層を形成するか、あるいは正孔輸送層の材料と混合した後コーティングして、加工条件に応じて、密度差によって正孔輸送層とは別のナノ結晶層を形成している。ところが、このような従来の方法は、純粋なナノ結晶発光スペクトルを得ることができないため、EL素子の色純度が低下するという問題点をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,537,000号明細書
【特許文献2】国際公開特許WO/03/084293号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,049,090号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に、独立しているナノ結晶発光層を形成することにより、純粋なナノ結晶発光スペクトルが得られ、色純度が高いEL素子を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ナノ結晶を分散させる溶媒との溶解性に関係なく、高分子正孔輸送層の材料を選択することが可能なEL素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明によれば、基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送層上にコーティングして、あるいは、感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送層上にコーティングして、ナノ結晶発光層を形成する工程と、ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程とを含み、ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成されることを特徴とする、EL素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るEL素子は、可視光線から赤外線領域の範囲内で直接遷移型バンドギャップを有し、独立した発光効率の高いナノ結晶からなるナノ結晶発光層を含む。従って、本発明に係るEL素子は、電圧などの駆動条件に殆ど影響されず、その他の有機層の発光を最大限抑えた純粋なナノ結晶スペクトルが得られ、色純度が高いという利点をもつ。また、本発明に係るEL素子の製造方法によれば、ナノ結晶が分散している溶媒と高分子正孔輸送層材料との溶解性に関係なく高分子正孔輸送層の材料を選択することができる。このため、より適用範囲の広いEL素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係るナノ結晶EL素子の断面概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係るナノ結晶EL素子の製造方法を説明するための図である。
【図3a】ナノ結晶と高分子正孔輸送層を混合してコーティングする場合に高分子正孔輸送層とナノ結晶層の分離が不完全に起こる従来のEL素子の一部を示す断面概略図である。
【図3b】ナノ結晶と高分子正孔輸送層を混合してコーティングする場合にナノ結晶が正孔輸送材料内に均一に分散して形成される一つの層を示す図である。
【図3c】高分子正孔輸送層をまずコーティングして薄膜化し、熱処理した後、その上にナノ結晶をコーティングすることにより、ナノ結晶発光層が高分子正孔輸送層から完全に独立している本発明のナノ結晶EL素子の一部を示す断面概略図である。
【図4】本発明の実施例1によって得られた感光基とシリカナノ結晶の光励起発光スペクトルである。
【図5】本発明の実施例2によって得られた感光基とシリカナノ結晶の光励起発光スペクトルである。
【図6a】本発明の実施例3によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図6b】本発明の実施例4によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図7】本発明の実施例5によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図8】本発明の比較例1によって得られた従来の技術に係るEL素子の電気発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るEL素子は、高分子正孔輸送層と、ナノ結晶発光層と、有機物電子輸送層とを備え、ナノ結晶発光層は、高分子正孔輸送層と接触し、かつ、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に独立に形成されていることを特徴とする。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るEL素子の断面概略図である。図1を参照すると、本発明に係るEL素子は、透明な基板10の上に、陽極20、高分子正孔輸送層30、ナノ結晶発光層40、有機物電子輸送層50及び陰極60がこの順序で積層された構造をもつ。
【0019】
高分子正孔輸送層30は正孔を輸送することが可能な材料で作られ、有機物電子輸送層50は電子を輸送することが可能な材料で作られる。2つの電極に電圧が印加されると、陽極20では正孔が高分子正孔輸送層30に注入され、陰極60では電子が有機物電子輸送層50に注入される。注入された電子と正孔が同じ分子で出会うと、電子−正孔対の励起子が形成され、この励起子の再結合によって発光が行われる。
【0020】
本発明の別の実施形態として、陽極20と高分子正孔輸送層30との間に正孔注入層、あるいはナノ結晶発光層40と有機物電子輸送層50との間に電子抑制層または正孔抑制層または電子/正孔抑制層を導入することができる。
【0021】
本発明のEL素子で使用される透明な基板10は、通常の有機EL素子に用いられる基板を使用することができる。透明性、表面平滑性、取扱容易性および防水性に優れる、ガラス基板または透明プラスチック基板が好ましい。さらに具体的な例としては、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリカーボネート基板などがあり、その厚さは0.3〜1.1mmであることが好ましい。
【0022】
透明な基板10上に形成される陽極20の材料には、正孔の注入が容易なように導電性の金属またはその酸化物を用いることができる。具体的な例として、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。
【0023】
高分子正孔輸送層30の素材の具体的な例として、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/PPS(ポリスチレンパラスルフォネート)誘導体、ポリN−ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリ−9,9−オクチルフルオレン誘導体、ポリ−スピロ−フルオレン誘導体等を含むが、必ずしもこれらに局限されるのではない。高分子正孔輸送層30の厚さは10〜100nmであることが好ましい。
【0024】
本発明において、有機物電子輸送層50の素材としては、通常用いられる物質を使用することができる。その具体的な例は、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、オキシジアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、ペリレン系化合物、Alq3(tris(8−hydroxyquinoline)−aluminum)、Balq(aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate)、Almq3(tris−(4−methyl−8−hydroxyquinolinato)aluminum(III))などのアルミニウム錯体を含むが、必ずしもこれらに局限されない。本発明において、有機物電子輸送層50の厚さは10〜100nmであることが好ましい。
【0025】
本発明において、電子抑制層、正孔抑制層または電子/正孔抑制層の素材としては、通常用いられる物質を使用することができ、その具体的な例は、TAZ(3−フェニル−4(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール)、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェナントロリン系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、アルミニウム錯体などを含むが、必ずしもこれらに局限されない。本発明において、好ましい電子抑制層、正孔抑制層または電子/正孔抑制層の厚さは5〜50nmである。
【0026】
電子注入のための陰極60の材料は、仕事関数が小さく電子注入が容易な金属、すなわち、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Ag/Mg合金などを含むが、これらに限定されない。陰極の厚さは50nm〜300nmであることが好ましい。
【0027】
本発明では、金属ナノ結晶や半導体ナノ結晶など、化学的湿式方法で合成された大部分のナノ結晶を使用可能である。具体的には、本発明において、ナノ結晶発光層40には、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Cu、Moなどの金属ナノ結晶、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなどのII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsなどのIII−V族化合物半導体ナノ結晶、Pbs、PbSe、PbTeよりなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0028】
本発明において、ナノ結晶発光層40が2種以上の物質の混合物の形態で存在する場合、単純な混合物の形態で存在してもよいし、コアーシェル(core−shell)構造を有する結晶またはグラジエント(gradient)構造を有する結晶のように各物質の結晶構造が部分的に分けられて同一の粒子内に存在してもよいし、或いは共晶の形態で存在してもよい。本発明において、ナノ結晶発光層40の厚さは3〜30nmである。
【0029】
本発明は、ナノ結晶EL素子の製造方法にも関係する。本発明のEL素子の製造方法では、まず正孔が注入される陽極20上に、高分子正孔輸送層30を様々なコーティング方法で薄膜化した後、熱処理を行って堅固な高分子正孔輸送層30の薄膜を形成する。その上に高分子正孔輸送層を溶解させない溶媒中に分散しているナノ結晶溶液をいろいろのコーティング方法で薄膜化することにより、高分子正孔輸送層30と独立的なナノ結晶発光層40を形成し、その上に有機物電子輸送層50と電子が注入される陰極を順次積層する。
【0030】
図2は、図1の断面構造を有する本発明に係るEL素子の製造工程を説明するための図である。図2を参照すると、まず陽極20がパターニングされた基板10上に高分子正孔輸送層30をスピンコーティングなどの様々なコーティング方法で形成し、熱処理を行うことによって、次工程でナノ結晶発光層40を形成するときでも高分子正孔輸送層30の薄膜が損傷しない堅固な薄膜を形成する。次に、その上に、高分子正孔輸送層30を溶解させない溶媒に分散しているナノ結晶溶液を、スピンコーティングなどの様々なコーティング方法で薄膜化して独立的なナノ結晶発光層40を形成する。その上にさらに有機物電子輸送層50を形成し、陰極60を蒸着してEL素子を製造する。
【0031】
陽極20がパターニングされた基板10は、一般に、中性洗剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコールなどの溶媒で洗浄した後、UV−オゾン処理及びプラズマ処理を施して使用する。
【0032】
本発明のEL素子の製造方法において、感光基のある物質が配位したナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を損傷させない溶媒に分散させてナノ結晶溶液を調製する。このナノ結晶溶液を、高分子正孔輸送層30の上にコーティングしてナノ結晶層の薄膜を形成する。或いは、感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質を高分子正孔輸送層30を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送の上にコーティングしてナノ結晶層の薄膜を形成する。
【0033】
本発明において、高分子正孔輸送層30の薄膜を損傷させないために使用するナノ結晶の分散溶媒は、水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノ ール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0034】
また、本発明では、ナノ結晶発光層40の上に有機物電子輸送層50をコーティングする前に、ナノ結晶発光層40を紫外線に露光させて架橋させることができる。この際、200nm〜450nmの紫外線波長範囲でナノ結晶発光層40を露光させて架橋させることができる。こうして得られたナノ結晶発光層40の発光波長は350nm〜1300nmである。
【0035】
本発明において、ナノ結晶発光層40と高分子正孔輸送層30の材料、及び高分子正孔輸送層30の薄膜を損傷させないために使用するナノ結晶の分散溶媒は、上述したとおりである。ナノ結晶の分散溶液の濃度は、好ましくは0.01wt%〜10wt%であり、さらに好ましくは0.1wt%〜5wt%であり、最も好ましくは0.2wt%〜2wt%である。
本発明において、有機物電子輸送層50の材料には、低分子または高分子材料が全て使用可能であり、コーティング方法も真空蒸着または湿式コーティング方法などのいずれも使用することができる。
【0036】
湿式コーティングで有機物電子輸送層50を形成する第1の方法は次のように行なう。
感光基のある物質が配位したナノ結晶を薄膜化した後、紫外線などに露光させて架橋状態の薄膜を製造することにより、ナノ結晶の薄膜層が、有機物電子輸送層を含んだ溶媒に溶けないようにする。そして、その上に有機物電子輸送層の材料を湿式コーティングして、有機物電子輸送層50を形成することができる。
【0037】
有機物電子輸送層50を形成する第2の方法では、感光基のない物質が配位したナノ結晶を、感光性物質とよく混合して薄膜化した後、紫外線に露光させ、感光性物質を架橋させて網目構造にする。この網目構造がナノ結晶を捕捉することにより、有機物電子輸送層の材料を含んだ溶媒に溶けないナノ結晶薄膜層を形成する。そして、その上に有機物電子輸送層50を湿式コーティング方法で形成することができる。
【0038】
ナノ結晶に配位する有機物には、アルキル鎖の一方または両方の末端、または芳香族環の一部にアセチル基、酢酸基、ホスフィン基、ホスホン酸基、アルコール基、ビニル基、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、アミン基、アクリル基、シラン基、シアン基およびチオール基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在する化合物を、1種以上使用することができる。
ナノ結晶に配位する感光基のある物質は二重結合、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、ビフェニル基、ペルオキシド基、アミン基、アクリル基などを含む。
【0039】
本発明のEL素子の製造方法によってEL素子を製造する場合には、陽極20と高分子正孔輸送層30との間に正孔注入層を挿入し、ナノ結晶発光層40と有機物電子輸送層50との間に正孔抑制層を挿入することができる。
【0040】
図3aおよび図3bは、高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶25を混合した溶液を、基板10の上にスピンコーティングして薄膜化した場合を示す図である。この際の高分子正孔輸送層30の材料は、低分子の場合または高分子の場合が全て該当する。図3aは高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶25の混合溶液を、従来の技術によってスピンコーティングした場合であり、両者の密度または分子間力の差異によって、ナノ結晶層は高分子正孔輸送層30の上端に形成されることを示す図である。
【0041】
この際、高分子正孔輸送層30の上端に存在するナノ結晶25は、部分的に独立した層を形成するが、大部分は高分子正孔輸送層30の物質と混合している。図3bは、ナノ結晶25が高分子正孔輸送層30の材料内に均一に分散して、一つの混合された層を形成する場合の図である。図3cは図2で説明した本発明の製造方法によって、ナノ結晶発光層40が高分子正孔輸送層30から完全に独立した層を形成する場合の図である。
【0042】
本発明のEL素子において、独立しているナノ結晶発光層40以外の製造は、特別な装置または方法を必要とせず、通常の発光材料を用いた有機EL素子の製造方法によって製造できる。
【0043】
本発明において、高分子正孔輸送層30及び有機物電子輸送層50の薄膜化方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ブレードコーティングなどを用いることができる。また、薄膜の露光方法としては、接触露光法と非接触露光法のいずれも使用できる。本発明では、ナノ結晶発光層40上に熱蒸着法、分子蒸着法、化学蒸着法によって有機物電子輸送層50を形成することができる。
【0044】
各薄膜を形成した後の乾燥温度は、20℃〜300℃、好ましくは40℃〜120℃である。また、感光処理するときのエネルギは薄膜の厚さに依存するが、好ましくは約50mJ/cm2〜850mJ/cm2であって、この範囲から外れると、十分な架橋反応が起こり難く、あるいは薄膜が損傷するおそれがある。使用する光源は200nm〜500nmの光源であって、好ましくは300nm〜400nmの有効波長を有し、エネルギーは約100〜800W程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明の好適な具現例を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
<実施例1.CdSeSナノ結晶の製造>
トリオクチルアミン(以下「TOA」という)16g、オレイン酸0.5gおよび酸化カドミウム0.4mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を300℃に調節した。これとは別途に、Se粉末をトリオクチルホスフィン(TOP)に溶かしてSe濃度約0.25MのSe−TOP錯体溶液を作り、硫黄(以下Sという)粉末をTOPに溶かしてS濃度約1.0MのS−TOP錯体溶液を作った。
【0046】
攪拌されている反応混合物にS−TOP錯体溶液0.9mLとSe−TOP錯体溶液0.1mLとの混合物を素早く注入し、さらに4分間攪拌した。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒(non solvent)のエタノールを添加して遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションで除き、得られた沈殿物をトルエン中に1重量%となるように分散させて、CdSeSナノ結晶の分散液を調製した。このように合成されたナノ結晶は365nmのUVランプの下で緑色に発光する。こうして得られたナノ結晶溶液の光励起発光スペクトルを図4に示した。図4によれば、発光波長の中心は約552nmであり、半値幅は約30nmである。なお、図4〜図8の縦軸は発光強度を表す。
【0047】
<実施例2.CdSe/ZnSナノ結晶の製造>
TOA16g、オレイン酸0.5gおよび酸化カドミウム0.1mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を300℃に調節した。これとは別途に、Se粉末をTOPに溶かしてSe濃度約2MのSe−TOP錯体溶液を作った。攪拌されている反応混合物にS−TOP錯体溶液1mLを素早く注入し、さらに約10秒間攪拌した。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒のエタノールを添加して遠心分離を行った。遠心分離した沈殿物を除いた溶液の上澄み液は捨て、沈殿物はトルエンに分散させてCdSeナノ結晶溶液を調製した。
【0048】
次に、TOA8g、オレイン酸0.1g及び酢酸亜鉛0.4mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を260℃に調節した。前記で合成したCdSeナノ結晶溶液を反応物に添加した後、S−TOP錯体溶液を徐々に加えて約1時間反応させた。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒のエタノールを付加して遠心分離を行った。遠心分離した沈殿物を除いた溶液の上澄み液は捨て、沈殿物はトルエンに分散させてCdSe/ZnSナノ結晶溶液を調製した。
【0049】
こうして得られたCdSe/ZnSナノ結晶は、365nmのUVランプの下で緑色に発光する。こうして得られたナノ結晶溶液の光励起発光スペクトルを図5に示した。図5によれば、発光波長の中心は約527nmであり、半値幅は約30nmである。
【0050】
<実施例3.オクタン溶媒に分散しているCdSeSナノ結晶発光層を採用したEL素子の製造例>
本実施例は、独立しているナノ結晶発光層40を備えるEL素子の製造例である。まず、ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。
Poly(9,9−dioctylfluorene−co−N−(4−butylphenyl)diphenylamine(TFB)の1wt%クロロベンゼン溶液を、ITO基板上に50nm程度の厚さにスピンコーティングして180℃で10分間熱処理することにより、高分子正孔輸送層30を形成した。
【0051】
この高分子正孔輸送層30の上に、実施例1で合成したCdSeSナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を全く溶解させないオクタン溶媒に1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶発光層40を形成した。このナノ結晶発光層40を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層の3−(4−biphenylyl)−4−phenyl−5−(4−tert−butylphenyl)−1,2,4−triazole(TAZ)を10nm蒸着し、有機物電子輸送層のtris−(8−hydroxyquionline)aluminum(Alq3)を30nm程度の厚さに蒸着して形成した。さらに、この上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、EL素子を完成した。
【0052】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図6aに示した。図6aに示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立している本発明のEL素子は、発光波長の中心が約556nmであり、半値幅は約40nmであった。
【0053】
<実施例4.クロロベンゼン溶媒に分散しているCdSeSナノ結晶発光層40を採用したEL素子の製造例>
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。ITO基板上に、Poly(9,9−dioctylfluorene−co−N−(4−butylphenyl)diphenylamine(TFB)の1wt%クロロベンゼン溶媒を50nm程度の厚さにスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して、高分子正孔輸送層30を形成した。
【0054】
次に、この高分子正孔輸送層30の上に、高分子正孔輸送層30を溶解させないクロロベンゼン中に実施例1で合成したCdSeSナノ結晶を1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶薄膜を形成した。
【0055】
このナノ結晶薄膜を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層としてのTAZを10nm蒸着し、有機物電子輸送層50としてのAlq3(tris−(8−hydroxyquionline)aluminum)を30nm程度の厚さに蒸着して形成し、さらにこの上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成し、EL素子を完成した。
【0056】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図6bに示す。図6bに示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立しているEL素子の発光波長の中心は約556nmであり、半値幅は約50nmであった。
【0057】
<実施例5.正孔抑制層を含まず、オクタン溶媒に分散しているCdSe/ZnSナノ結晶発光層を採用したEL素子の製造例>
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。このITO基板上に、TFBの1wt%クロロベンゼン溶液を、50nm程度の厚さにスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して高分子正孔輸送層30を形成した。
【0058】
次に、この高分子正孔輸送層30の上に、実施例2で合成したCdSe/ZnSナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を損傷させないオクタン溶媒に1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶発光層40を形成した。このナノ結晶発光層40を完全に乾燥させた後、その上にAlq3を40nm程度の厚さに蒸着して有機物電子輸送層50を形成し、この上部にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成することにより、EL素子を完成した。
【0059】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図7に示す。図7に示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立しているEL素子の発光波長の中心は約530nmであり、半値幅は約46nmであった。
【0060】
<比較例1.高分子正孔輸送層30の材料とCdSeSナノ結晶が混合された溶液をコーティングして製造された従来の技術によるEL素子の製造例>
本比較例は、従来の技術によって高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶が混合された溶液をコーティングし、コーティング過程で生じる層分離に起因して高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶の密度差によって高分子正孔輸送層30と発光層が分離する従来の技術によるEL素子の製造方法を実現した。
【0061】
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水、イソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。このITO基板上に、TFBと実施例1で合成したCdSeSナノ結晶との重量比1:1混合物の1wt%クロロベンゼン溶液をスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して高分子正孔輸送層30にナノ結晶発光層40が含有された薄膜を形成した。
【0062】
このナノ結晶発光層40を含む高分子正孔輸送層30を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層としてTAZを10nm蒸着し、次いで有機物電子輸送層としてAlq3を約30nmの厚さに蒸着した。次に、この有機物電子輸送層の上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成することにより、EL素子を製造した。
【0063】
本比較例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図8に示した。図8に示すように、従来の技術によって製造されたEL素子は、発光層のナノ結晶を含んだ高分子正孔輸送層30と有機物電子輸送層の全領域にわたって発光していることが分かる。
【0064】
以上、本発明について説明したがこれらは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、一部を変更、付加、置換したとしても本発明に属するものである。
【符号の説明】
【0065】
10 基板
20 陽極
30 高分子正孔輸送層
40 ナノ結晶発光層
50 有機物電子輸送層
60 陰極
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子と記す)およびその製造方法に係り、より詳しくは、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に独立に形成されたナノ結晶発光層を含むナノ結晶EL素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶は、数ナノサイズの結晶構造を有する物質であって、約数百〜数千個の原子から構成されている。このように小さいサイズの物質は、単位体積当たり表面積が広くて大部分の原子が表面に存在し、量子閉じ込め効果などを示すため、物質自体の固有な特性とは異なる独特な電気的、磁気的、光学的、化学的、機械的特性を持つ。すなわち、ナノ結晶の物理的な大きさを調節することにより、様々な特性を調節することが可能となる。
【0003】
既存のナノ結晶を合成する方法として、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)またはMBE(molecular beam epitaxy)などの気相蒸着法が用いられてきた。また、ここ数年の間に、有機溶媒に金属前駆体物質を入れてナノ結晶を成長させる化学的湿式法が急速に発展してきた。
【0004】
化学的湿式方法は、結晶が成長するときに有機溶媒が自然に量子点結晶表面に配位して分散剤の役割を行うようにすることで、結晶の成長を調節する方法であって、MOCVDまたはMBEなどの気相蒸着法より容易かつ低廉な工程によってナノ結晶の大きさと形状の均一度を調節することができるという利点をもつ。
【0005】
しかし、化学的湿式方法によって合成されたナノ結晶は、合成後に分離して溶液中に分散した状態で存在するので、これをEL素子に応用するためには固体状に薄膜化する技術が要求される。現在まで発表されたナノ結晶を用いたEL素子では、ナノ結晶は発光物質として使用され、あるいは発光機能と電荷輸送機能を併せ持つものとして使用されている。特許文献1は、ナノ結晶を採用したEL素子を最初に提示しているが、ナノ結晶を多層に積層して発光層かつ電子輸送層の役割を行うようにすることにより、電圧に応じて発光波長が変わる素子の概念を提示している。
【0006】
特許文献2は、両電極の間にナノ結晶を含んだ有機−無機混合マトリックスから構成されている素子について説明している。具体的には、ナノ結晶とN,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン(TPD)のような低分子正孔輸送物質を混合した溶媒を電極上にスピンコーティングする方法を提示している。この際、コーティング条件と物質の混合割合を適切に調節すると、低分子正孔輸送層とナノ結晶の分子間力の差または密度の差によってナノ結晶層が正孔輸送層の上端に形成される。
【0007】
しかし、このような製造工程により生成されたナノ結晶層は、正孔輸送層の上端に形成されるので、正孔輸送層においては、正孔輸送層の材料とナノ結晶が混合された状態になる。この結果、正孔輸送層と、その上部に形成された電子輸送層とが接触することになり、ナノ結晶と共に正孔/電子輸送層が発光する。特許文献2は、かかる問題点を解決するために、ナノ結晶を含んだ正孔輸送層の薄膜の上に正孔抑制層を形成し、この正孔抑制層の上に電子輸送層を形成する技術を開示している。
【0008】
ところで、ナノ結晶と混合する正孔輸送物質としては低分子が使用される。これは、仮に高分子材料を正孔輸送物質に用いる場合には、一般に高分子材料の溶媒への溶解性は低いため、ナノ結晶が溶解する溶媒に溶解可能な高分子材料は、ごく限定された種類であることによる。また、ナノ結晶が溶解する溶媒に溶解可能な高分子材料であっても、溶解性が不十分なため、ナノ結晶層と正孔輸送層の膜の厚みを制御することが困難になる。
【0009】
特許文献3では、両電極の間にナノ結晶−マトリックス混合層を発光層として用いるEL素子について説明している。この文献によれば、発光効率を高めるために、バンドギャップエネルギーが大きいマトリックスを用い、伝導帯エネルギー準位はナノ結晶より大きく、価電子帯エネルギー準位はナノ結晶より低いマトリックスを選択することにより、ナノ結晶が電子と正孔を閉じ込めて、ナノ結晶をよく発光させることができる。
【0010】
以上で説明したような既存のナノ結晶を発光物質として用いるEL素子では、ナノ結晶が発光機能と電荷輸送機能を併せ持つか、あるいは正孔輸送層の材料と混合された層を形成するか、あるいは正孔輸送層の材料と混合した後コーティングして、加工条件に応じて、密度差によって正孔輸送層とは別のナノ結晶層を形成している。ところが、このような従来の方法は、純粋なナノ結晶発光スペクトルを得ることができないため、EL素子の色純度が低下するという問題点をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,537,000号明細書
【特許文献2】国際公開特許WO/03/084293号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,049,090号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に、独立しているナノ結晶発光層を形成することにより、純粋なナノ結晶発光スペクトルが得られ、色純度が高いEL素子を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ナノ結晶を分散させる溶媒との溶解性に関係なく、高分子正孔輸送層の材料を選択することが可能なEL素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明によれば、基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送層上にコーティングして、あるいは、感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送層上にコーティングして、ナノ結晶発光層を形成する工程と、ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程とを含み、ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成されることを特徴とする、EL素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るEL素子は、可視光線から赤外線領域の範囲内で直接遷移型バンドギャップを有し、独立した発光効率の高いナノ結晶からなるナノ結晶発光層を含む。従って、本発明に係るEL素子は、電圧などの駆動条件に殆ど影響されず、その他の有機層の発光を最大限抑えた純粋なナノ結晶スペクトルが得られ、色純度が高いという利点をもつ。また、本発明に係るEL素子の製造方法によれば、ナノ結晶が分散している溶媒と高分子正孔輸送層材料との溶解性に関係なく高分子正孔輸送層の材料を選択することができる。このため、より適用範囲の広いEL素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係るナノ結晶EL素子の断面概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係るナノ結晶EL素子の製造方法を説明するための図である。
【図3a】ナノ結晶と高分子正孔輸送層を混合してコーティングする場合に高分子正孔輸送層とナノ結晶層の分離が不完全に起こる従来のEL素子の一部を示す断面概略図である。
【図3b】ナノ結晶と高分子正孔輸送層を混合してコーティングする場合にナノ結晶が正孔輸送材料内に均一に分散して形成される一つの層を示す図である。
【図3c】高分子正孔輸送層をまずコーティングして薄膜化し、熱処理した後、その上にナノ結晶をコーティングすることにより、ナノ結晶発光層が高分子正孔輸送層から完全に独立している本発明のナノ結晶EL素子の一部を示す断面概略図である。
【図4】本発明の実施例1によって得られた感光基とシリカナノ結晶の光励起発光スペクトルである。
【図5】本発明の実施例2によって得られた感光基とシリカナノ結晶の光励起発光スペクトルである。
【図6a】本発明の実施例3によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図6b】本発明の実施例4によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図7】本発明の実施例5によって得られたEL素子の電気発光スペクトルである。
【図8】本発明の比較例1によって得られた従来の技術に係るEL素子の電気発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るEL素子は、高分子正孔輸送層と、ナノ結晶発光層と、有機物電子輸送層とを備え、ナノ結晶発光層は、高分子正孔輸送層と接触し、かつ、高分子正孔輸送層と有機物電子輸送層との間に独立に形成されていることを特徴とする。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るEL素子の断面概略図である。図1を参照すると、本発明に係るEL素子は、透明な基板10の上に、陽極20、高分子正孔輸送層30、ナノ結晶発光層40、有機物電子輸送層50及び陰極60がこの順序で積層された構造をもつ。
【0019】
高分子正孔輸送層30は正孔を輸送することが可能な材料で作られ、有機物電子輸送層50は電子を輸送することが可能な材料で作られる。2つの電極に電圧が印加されると、陽極20では正孔が高分子正孔輸送層30に注入され、陰極60では電子が有機物電子輸送層50に注入される。注入された電子と正孔が同じ分子で出会うと、電子−正孔対の励起子が形成され、この励起子の再結合によって発光が行われる。
【0020】
本発明の別の実施形態として、陽極20と高分子正孔輸送層30との間に正孔注入層、あるいはナノ結晶発光層40と有機物電子輸送層50との間に電子抑制層または正孔抑制層または電子/正孔抑制層を導入することができる。
【0021】
本発明のEL素子で使用される透明な基板10は、通常の有機EL素子に用いられる基板を使用することができる。透明性、表面平滑性、取扱容易性および防水性に優れる、ガラス基板または透明プラスチック基板が好ましい。さらに具体的な例としては、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリカーボネート基板などがあり、その厚さは0.3〜1.1mmであることが好ましい。
【0022】
透明な基板10上に形成される陽極20の材料には、正孔の注入が容易なように導電性の金属またはその酸化物を用いることができる。具体的な例として、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。
【0023】
高分子正孔輸送層30の素材の具体的な例として、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/PPS(ポリスチレンパラスルフォネート)誘導体、ポリN−ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリ−9,9−オクチルフルオレン誘導体、ポリ−スピロ−フルオレン誘導体等を含むが、必ずしもこれらに局限されるのではない。高分子正孔輸送層30の厚さは10〜100nmであることが好ましい。
【0024】
本発明において、有機物電子輸送層50の素材としては、通常用いられる物質を使用することができる。その具体的な例は、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、オキシジアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、ペリレン系化合物、Alq3(tris(8−hydroxyquinoline)−aluminum)、Balq(aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate)、Almq3(tris−(4−methyl−8−hydroxyquinolinato)aluminum(III))などのアルミニウム錯体を含むが、必ずしもこれらに局限されない。本発明において、有機物電子輸送層50の厚さは10〜100nmであることが好ましい。
【0025】
本発明において、電子抑制層、正孔抑制層または電子/正孔抑制層の素材としては、通常用いられる物質を使用することができ、その具体的な例は、TAZ(3−フェニル−4(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール)、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェナントロリン系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、アルミニウム錯体などを含むが、必ずしもこれらに局限されない。本発明において、好ましい電子抑制層、正孔抑制層または電子/正孔抑制層の厚さは5〜50nmである。
【0026】
電子注入のための陰極60の材料は、仕事関数が小さく電子注入が容易な金属、すなわち、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Ag/Mg合金などを含むが、これらに限定されない。陰極の厚さは50nm〜300nmであることが好ましい。
【0027】
本発明では、金属ナノ結晶や半導体ナノ結晶など、化学的湿式方法で合成された大部分のナノ結晶を使用可能である。具体的には、本発明において、ナノ結晶発光層40には、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Cu、Moなどの金属ナノ結晶、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなどのII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsなどのIII−V族化合物半導体ナノ結晶、Pbs、PbSe、PbTeよりなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0028】
本発明において、ナノ結晶発光層40が2種以上の物質の混合物の形態で存在する場合、単純な混合物の形態で存在してもよいし、コアーシェル(core−shell)構造を有する結晶またはグラジエント(gradient)構造を有する結晶のように各物質の結晶構造が部分的に分けられて同一の粒子内に存在してもよいし、或いは共晶の形態で存在してもよい。本発明において、ナノ結晶発光層40の厚さは3〜30nmである。
【0029】
本発明は、ナノ結晶EL素子の製造方法にも関係する。本発明のEL素子の製造方法では、まず正孔が注入される陽極20上に、高分子正孔輸送層30を様々なコーティング方法で薄膜化した後、熱処理を行って堅固な高分子正孔輸送層30の薄膜を形成する。その上に高分子正孔輸送層を溶解させない溶媒中に分散しているナノ結晶溶液をいろいろのコーティング方法で薄膜化することにより、高分子正孔輸送層30と独立的なナノ結晶発光層40を形成し、その上に有機物電子輸送層50と電子が注入される陰極を順次積層する。
【0030】
図2は、図1の断面構造を有する本発明に係るEL素子の製造工程を説明するための図である。図2を参照すると、まず陽極20がパターニングされた基板10上に高分子正孔輸送層30をスピンコーティングなどの様々なコーティング方法で形成し、熱処理を行うことによって、次工程でナノ結晶発光層40を形成するときでも高分子正孔輸送層30の薄膜が損傷しない堅固な薄膜を形成する。次に、その上に、高分子正孔輸送層30を溶解させない溶媒に分散しているナノ結晶溶液を、スピンコーティングなどの様々なコーティング方法で薄膜化して独立的なナノ結晶発光層40を形成する。その上にさらに有機物電子輸送層50を形成し、陰極60を蒸着してEL素子を製造する。
【0031】
陽極20がパターニングされた基板10は、一般に、中性洗剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコールなどの溶媒で洗浄した後、UV−オゾン処理及びプラズマ処理を施して使用する。
【0032】
本発明のEL素子の製造方法において、感光基のある物質が配位したナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を損傷させない溶媒に分散させてナノ結晶溶液を調製する。このナノ結晶溶液を、高分子正孔輸送層30の上にコーティングしてナノ結晶層の薄膜を形成する。或いは、感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質を高分子正孔輸送層30を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を高分子正孔輸送の上にコーティングしてナノ結晶層の薄膜を形成する。
【0033】
本発明において、高分子正孔輸送層30の薄膜を損傷させないために使用するナノ結晶の分散溶媒は、水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノ ール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0034】
また、本発明では、ナノ結晶発光層40の上に有機物電子輸送層50をコーティングする前に、ナノ結晶発光層40を紫外線に露光させて架橋させることができる。この際、200nm〜450nmの紫外線波長範囲でナノ結晶発光層40を露光させて架橋させることができる。こうして得られたナノ結晶発光層40の発光波長は350nm〜1300nmである。
【0035】
本発明において、ナノ結晶発光層40と高分子正孔輸送層30の材料、及び高分子正孔輸送層30の薄膜を損傷させないために使用するナノ結晶の分散溶媒は、上述したとおりである。ナノ結晶の分散溶液の濃度は、好ましくは0.01wt%〜10wt%であり、さらに好ましくは0.1wt%〜5wt%であり、最も好ましくは0.2wt%〜2wt%である。
本発明において、有機物電子輸送層50の材料には、低分子または高分子材料が全て使用可能であり、コーティング方法も真空蒸着または湿式コーティング方法などのいずれも使用することができる。
【0036】
湿式コーティングで有機物電子輸送層50を形成する第1の方法は次のように行なう。
感光基のある物質が配位したナノ結晶を薄膜化した後、紫外線などに露光させて架橋状態の薄膜を製造することにより、ナノ結晶の薄膜層が、有機物電子輸送層を含んだ溶媒に溶けないようにする。そして、その上に有機物電子輸送層の材料を湿式コーティングして、有機物電子輸送層50を形成することができる。
【0037】
有機物電子輸送層50を形成する第2の方法では、感光基のない物質が配位したナノ結晶を、感光性物質とよく混合して薄膜化した後、紫外線に露光させ、感光性物質を架橋させて網目構造にする。この網目構造がナノ結晶を捕捉することにより、有機物電子輸送層の材料を含んだ溶媒に溶けないナノ結晶薄膜層を形成する。そして、その上に有機物電子輸送層50を湿式コーティング方法で形成することができる。
【0038】
ナノ結晶に配位する有機物には、アルキル鎖の一方または両方の末端、または芳香族環の一部にアセチル基、酢酸基、ホスフィン基、ホスホン酸基、アルコール基、ビニル基、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、アミン基、アクリル基、シラン基、シアン基およびチオール基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在する化合物を、1種以上使用することができる。
ナノ結晶に配位する感光基のある物質は二重結合、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、ビフェニル基、ペルオキシド基、アミン基、アクリル基などを含む。
【0039】
本発明のEL素子の製造方法によってEL素子を製造する場合には、陽極20と高分子正孔輸送層30との間に正孔注入層を挿入し、ナノ結晶発光層40と有機物電子輸送層50との間に正孔抑制層を挿入することができる。
【0040】
図3aおよび図3bは、高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶25を混合した溶液を、基板10の上にスピンコーティングして薄膜化した場合を示す図である。この際の高分子正孔輸送層30の材料は、低分子の場合または高分子の場合が全て該当する。図3aは高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶25の混合溶液を、従来の技術によってスピンコーティングした場合であり、両者の密度または分子間力の差異によって、ナノ結晶層は高分子正孔輸送層30の上端に形成されることを示す図である。
【0041】
この際、高分子正孔輸送層30の上端に存在するナノ結晶25は、部分的に独立した層を形成するが、大部分は高分子正孔輸送層30の物質と混合している。図3bは、ナノ結晶25が高分子正孔輸送層30の材料内に均一に分散して、一つの混合された層を形成する場合の図である。図3cは図2で説明した本発明の製造方法によって、ナノ結晶発光層40が高分子正孔輸送層30から完全に独立した層を形成する場合の図である。
【0042】
本発明のEL素子において、独立しているナノ結晶発光層40以外の製造は、特別な装置または方法を必要とせず、通常の発光材料を用いた有機EL素子の製造方法によって製造できる。
【0043】
本発明において、高分子正孔輸送層30及び有機物電子輸送層50の薄膜化方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ブレードコーティングなどを用いることができる。また、薄膜の露光方法としては、接触露光法と非接触露光法のいずれも使用できる。本発明では、ナノ結晶発光層40上に熱蒸着法、分子蒸着法、化学蒸着法によって有機物電子輸送層50を形成することができる。
【0044】
各薄膜を形成した後の乾燥温度は、20℃〜300℃、好ましくは40℃〜120℃である。また、感光処理するときのエネルギは薄膜の厚さに依存するが、好ましくは約50mJ/cm2〜850mJ/cm2であって、この範囲から外れると、十分な架橋反応が起こり難く、あるいは薄膜が損傷するおそれがある。使用する光源は200nm〜500nmの光源であって、好ましくは300nm〜400nmの有効波長を有し、エネルギーは約100〜800W程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本発明の好適な具現例を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
<実施例1.CdSeSナノ結晶の製造>
トリオクチルアミン(以下「TOA」という)16g、オレイン酸0.5gおよび酸化カドミウム0.4mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を300℃に調節した。これとは別途に、Se粉末をトリオクチルホスフィン(TOP)に溶かしてSe濃度約0.25MのSe−TOP錯体溶液を作り、硫黄(以下Sという)粉末をTOPに溶かしてS濃度約1.0MのS−TOP錯体溶液を作った。
【0046】
攪拌されている反応混合物にS−TOP錯体溶液0.9mLとSe−TOP錯体溶液0.1mLとの混合物を素早く注入し、さらに4分間攪拌した。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒(non solvent)のエタノールを添加して遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションで除き、得られた沈殿物をトルエン中に1重量%となるように分散させて、CdSeSナノ結晶の分散液を調製した。このように合成されたナノ結晶は365nmのUVランプの下で緑色に発光する。こうして得られたナノ結晶溶液の光励起発光スペクトルを図4に示した。図4によれば、発光波長の中心は約552nmであり、半値幅は約30nmである。なお、図4〜図8の縦軸は発光強度を表す。
【0047】
<実施例2.CdSe/ZnSナノ結晶の製造>
TOA16g、オレイン酸0.5gおよび酸化カドミウム0.1mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を300℃に調節した。これとは別途に、Se粉末をTOPに溶かしてSe濃度約2MのSe−TOP錯体溶液を作った。攪拌されている反応混合物にS−TOP錯体溶液1mLを素早く注入し、さらに約10秒間攪拌した。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒のエタノールを添加して遠心分離を行った。遠心分離した沈殿物を除いた溶液の上澄み液は捨て、沈殿物はトルエンに分散させてCdSeナノ結晶溶液を調製した。
【0048】
次に、TOA8g、オレイン酸0.1g及び酢酸亜鉛0.4mmolを同時に125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、攪拌しながら反応温度を260℃に調節した。前記で合成したCdSeナノ結晶溶液を反応物に添加した後、S−TOP錯体溶液を徐々に加えて約1時間反応させた。反応が終結すると、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降下させ、非溶媒のエタノールを付加して遠心分離を行った。遠心分離した沈殿物を除いた溶液の上澄み液は捨て、沈殿物はトルエンに分散させてCdSe/ZnSナノ結晶溶液を調製した。
【0049】
こうして得られたCdSe/ZnSナノ結晶は、365nmのUVランプの下で緑色に発光する。こうして得られたナノ結晶溶液の光励起発光スペクトルを図5に示した。図5によれば、発光波長の中心は約527nmであり、半値幅は約30nmである。
【0050】
<実施例3.オクタン溶媒に分散しているCdSeSナノ結晶発光層を採用したEL素子の製造例>
本実施例は、独立しているナノ結晶発光層40を備えるEL素子の製造例である。まず、ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。
Poly(9,9−dioctylfluorene−co−N−(4−butylphenyl)diphenylamine(TFB)の1wt%クロロベンゼン溶液を、ITO基板上に50nm程度の厚さにスピンコーティングして180℃で10分間熱処理することにより、高分子正孔輸送層30を形成した。
【0051】
この高分子正孔輸送層30の上に、実施例1で合成したCdSeSナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を全く溶解させないオクタン溶媒に1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶発光層40を形成した。このナノ結晶発光層40を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層の3−(4−biphenylyl)−4−phenyl−5−(4−tert−butylphenyl)−1,2,4−triazole(TAZ)を10nm蒸着し、有機物電子輸送層のtris−(8−hydroxyquionline)aluminum(Alq3)を30nm程度の厚さに蒸着して形成した。さらに、この上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、EL素子を完成した。
【0052】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図6aに示した。図6aに示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立している本発明のEL素子は、発光波長の中心が約556nmであり、半値幅は約40nmであった。
【0053】
<実施例4.クロロベンゼン溶媒に分散しているCdSeSナノ結晶発光層40を採用したEL素子の製造例>
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。ITO基板上に、Poly(9,9−dioctylfluorene−co−N−(4−butylphenyl)diphenylamine(TFB)の1wt%クロロベンゼン溶媒を50nm程度の厚さにスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して、高分子正孔輸送層30を形成した。
【0054】
次に、この高分子正孔輸送層30の上に、高分子正孔輸送層30を溶解させないクロロベンゼン中に実施例1で合成したCdSeSナノ結晶を1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶薄膜を形成した。
【0055】
このナノ結晶薄膜を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層としてのTAZを10nm蒸着し、有機物電子輸送層50としてのAlq3(tris−(8−hydroxyquionline)aluminum)を30nm程度の厚さに蒸着して形成し、さらにこの上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成し、EL素子を完成した。
【0056】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図6bに示す。図6bに示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立しているEL素子の発光波長の中心は約556nmであり、半値幅は約50nmであった。
【0057】
<実施例5.正孔抑制層を含まず、オクタン溶媒に分散しているCdSe/ZnSナノ結晶発光層を採用したEL素子の製造例>
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水およびイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。このITO基板上に、TFBの1wt%クロロベンゼン溶液を、50nm程度の厚さにスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して高分子正孔輸送層30を形成した。
【0058】
次に、この高分子正孔輸送層30の上に、実施例2で合成したCdSe/ZnSナノ結晶を、高分子正孔輸送層30を損傷させないオクタン溶媒に1wt%で分散させた溶液をスピンコーティングし、これを乾燥させて厚さ約5nmのナノ結晶発光層40を形成した。このナノ結晶発光層40を完全に乾燥させた後、その上にAlq3を40nm程度の厚さに蒸着して有機物電子輸送層50を形成し、この上部にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成することにより、EL素子を完成した。
【0059】
本実施例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図7に示す。図7に示すように、本実施例によって製造されたナノ結晶発光層40が独立しているEL素子の発光波長の中心は約530nmであり、半値幅は約46nmであった。
【0060】
<比較例1.高分子正孔輸送層30の材料とCdSeSナノ結晶が混合された溶液をコーティングして製造された従来の技術によるEL素子の製造例>
本比較例は、従来の技術によって高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶が混合された溶液をコーティングし、コーティング過程で生じる層分離に起因して高分子正孔輸送層30の材料とナノ結晶の密度差によって高分子正孔輸送層30と発光層が分離する従来の技術によるEL素子の製造方法を実現した。
【0061】
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板を中性洗剤、脱イオン水、水、イソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。このITO基板上に、TFBと実施例1で合成したCdSeSナノ結晶との重量比1:1混合物の1wt%クロロベンゼン溶液をスピンコーティングした後、180℃で10分間熱処理して高分子正孔輸送層30にナノ結晶発光層40が含有された薄膜を形成した。
【0062】
このナノ結晶発光層40を含む高分子正孔輸送層30を完全に乾燥させた後、その上に正孔抑制層としてTAZを10nm蒸着し、次いで有機物電子輸送層としてAlq3を約30nmの厚さに蒸着した。次に、この有機物電子輸送層の上にLiFを1nmの厚さに蒸着し、アルミニウムを200nmの厚さに蒸着して電極を形成することにより、EL素子を製造した。
【0063】
本比較例で得たEL素子に印加する電圧を変えた場合の電気発光スペクトルを図8に示した。図8に示すように、従来の技術によって製造されたEL素子は、発光層のナノ結晶を含んだ高分子正孔輸送層30と有機物電子輸送層の全領域にわたって発光していることが分かる。
【0064】
以上、本発明について説明したがこれらは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、一部を変更、付加、置換したとしても本発明に属するものである。
【符号の説明】
【0065】
10 基板
20 陽極
30 高分子正孔輸送層
40 ナノ結晶発光層
50 有機物電子輸送層
60 陰極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、
感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、前記高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
あるいは、
感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、前記高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
ナノ結晶発光層を形成する工程と、
前記ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、
前記有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程と
を含み、
前記ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、
感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、前記高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
あるいは、
感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、前記高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
ナノ結晶発光層を形成する工程と、
前記ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、
前記有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程と
を含み、
前記ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成され、
前記ナノ結晶が分散され、前記高分子正孔輸送層を損傷しない前記溶媒は、水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶発光層は、II−VI族化合物半導体ナノ結晶、III−V族化合物半導体ナノ結晶、PbS、PbSe、PbTeよりなる群から選択される1種以上をさらに含んで構成され、
前記II−VI族化合物半導体ナノ結晶にはCdS、CdSe、CdTe,ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeが含まれ、
前記III−V族化合物半導体ナノ結晶にはGaN、GaP、GaAs、InP、InAsが含まれ、
前記ナノ結晶発光層が2種以上の前記ナノ結晶の混合物を含んで構成される場合、
2種以上の前記ナノ結晶は、単純な混合物の形態で存在し、或いは各物質の結晶構造が部分的に分けられて同一の粒子内に存在し、或いは共晶の形態で存在することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶が分散され、前記高分子正孔輸送層を損傷しない前記溶媒は、
水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記有機物電子輸送層の形成工程は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、またはブレードコーティングによって行われることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ結晶分散溶液の濃度は、0.01wt%〜10wt%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ結晶発光層の厚さは、3〜30nmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
前記高分子正孔輸送層の素材は、PEDOT(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/PSS(polystyrene parasulfonate))、ポリN−ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリ−9,9−オクチルフルオレン誘導体、ポリ−スピロ−フルオレン誘導体よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機物電子輸送層の形成工程は、ナノ結晶発光層上に熱蒸着法、化学蒸着法によって有機物電子輸送層を形成することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
ナノ結晶発光層上に有機物電子輸送層をコーティングする前に、ナノ結晶発光層を紫外線に露光させて架橋させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
前記ナノ結晶に配位した感光基を有する物質は、二重結合、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、ビフェニル基、ペルオキシド基、アミン基、アクリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
前記方法は、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を挿入し、或いは正孔輸送層とナノ結晶発光層との間に電子抑制層を挿入し、或いはナノ結晶発光層と有機物電子輸送層との間に正孔抑制層を挿入する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項1】
基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、
感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、前記高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
あるいは、
感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、前記高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
ナノ結晶発光層を形成する工程と、
前記ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、
前記有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程と
を含み、
前記ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
基板上に、正孔を注入するための陽極をパターニングし、その上に高分子正孔輸送層を形成する工程と、
感光基を有する物質が配位したナノ結晶を、前記高分子正孔輸送層を損傷しない溶媒中に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
あるいは、
感光基のない物質が配位したナノ結晶と感光性物質とを、前記高分子正孔輸送層を損傷させない溶媒に分散させたナノ結晶溶液を前記高分子正孔輸送層上にコーティングして、
ナノ結晶発光層を形成する工程と、
前記ナノ結晶発光層の上に有機物電子輸送層を形成する工程と、
前記有機物電子輸送層の上に、電子を注入するための陰極を形成する工程と
を含み、
前記ナノ結晶発光層は、Au、Pt、Pd、Co、Moよりなる群から選択される金属ナノ結晶を含んで構成され、
前記ナノ結晶が分散され、前記高分子正孔輸送層を損傷しない前記溶媒は、水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶発光層は、II−VI族化合物半導体ナノ結晶、III−V族化合物半導体ナノ結晶、PbS、PbSe、PbTeよりなる群から選択される1種以上をさらに含んで構成され、
前記II−VI族化合物半導体ナノ結晶にはCdS、CdSe、CdTe,ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeが含まれ、
前記III−V族化合物半導体ナノ結晶にはGaN、GaP、GaAs、InP、InAsが含まれ、
前記ナノ結晶発光層が2種以上の前記ナノ結晶の混合物を含んで構成される場合、
2種以上の前記ナノ結晶は、単純な混合物の形態で存在し、或いは各物質の結晶構造が部分的に分けられて同一の粒子内に存在し、或いは共晶の形態で存在することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶が分散され、前記高分子正孔輸送層を損傷しない前記溶媒は、
水、ピリジン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、THF、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチレンクロライド、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記有機物電子輸送層の形成工程は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、またはブレードコーティングによって行われることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ結晶分散溶液の濃度は、0.01wt%〜10wt%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ結晶発光層の厚さは、3〜30nmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
前記高分子正孔輸送層の素材は、PEDOT(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/PSS(polystyrene parasulfonate))、ポリN−ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリ−9,9−オクチルフルオレン誘導体、ポリ−スピロ−フルオレン誘導体よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機物電子輸送層の形成工程は、ナノ結晶発光層上に熱蒸着法、化学蒸着法によって有機物電子輸送層を形成することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
ナノ結晶発光層上に有機物電子輸送層をコーティングする前に、ナノ結晶発光層を紫外線に露光させて架橋させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
前記ナノ結晶に配位した感光基を有する物質は、二重結合、カルボキシル基、アミド基、フェニル基、ビフェニル基、ペルオキシド基、アミン基、アクリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
前記方法は、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を挿入し、或いは正孔輸送層とナノ結晶発光層との間に電子抑制層を挿入し、或いはナノ結晶発光層と有機物電子輸送層との間に正孔抑制層を挿入する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−38741(P2012−38741A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243999(P2011−243999)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2005−163609(P2005−163609)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2005−163609(P2005−163609)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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