説明

ナノ複合材組成物とその製造方法

カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと、少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるナノ複合材組成物を製造する方法を提供する。また、硬化されたナノ複合材組成物と、このナノ複合材組成物を用いた物品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
<技術分野>
この発明は低透過性のナノ複合材組成物、好ましくは層間挿入されたナノクレイを含む弾性ナノ複合材組成物に関し、特にハロゲン化された共重合体と、カチオン性部位とアニオン性部位とを有する多官能性層挿入剤が層間挿入されたクレイとからなる組成物に関する。この 組成物はカーボンブラックなどの充填剤を有し、タイヤのインナーライナーなどに成形される。
【0002】
<背景技術>
チューブレスタイヤには、空気保持性の高い組成物が要求される。ブロモブチルゴムとクロロブチルゴムはチューブレスタイヤに用いられる空気保持性の高いポリマーである。また、米国特許第5162445号と5698640号に開示されているブロム化されたポリ(イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体) (BIMS)は、耐熱性が重要なときよく用いられる。ゴムの商業的配合処方に用いる原料の選択は、要求物性と最終用途に依存する。例えば、タイヤの技術分野では、タイヤ工場でのグリーン(非加硫)コンパウンドの加工特性と、加硫されたゴムタイヤ組成物の使用時の性能とのバランス、また、タイヤの性状、すなわちバイアスタイヤとラジアルタイヤ、あるいは、乗用車用とトラック用と航空機用タイヤ用など、これらの全てを考慮してバランスをとることが重要である。
【0003】
製品の物性を変え、空気遮断性を向上させる一手段はゴムにクレイを添加して"ナノ複合材"にすることである。ナノ複合材は、少なくとも一方向の寸法がナノメータオーダーの無機粒子を含有するポリマー系である。これらのいくつかの例は、米国特許第6060549号、 6103817号、 6034164号、 5973053号、 5936023号、 5883173号、5807629号、5665183号、5576373号、5576372号に開示されている。ナノ複合材に用いられる一般的なタイプの無機粒子は、いわゆる「ナノクレイ」または「クレイ」の一般的な等級の無機材料である、フィロシリケートである。理想的には、ナノ複合材内で、クレイ界面間の空間、または配列の間にポリマーが挿入される、層間挿入が生じるべきである。最終的には、ナノメータオーダーのクレイ薄片間にポリマーが完全に分散するか、層間挿入されて、ほとんど完全に剥離することが望ましい。クレイの存在下でポリマー組成物の空気遮断性を強化する要求が高まっており、空気透過性の低いナノ複合材が求められている。
【0004】
ナノ複合材はブロム化されたイソブチレンとp−メチルスチレン共重合体を用いて製造されている。例えば、Elspassらの米国特許第5807629号、第5807629号、第5883173号、第6034164号が参照される。これらのゴム材料の加硫または未加硫の物性は、加工助剤によっても改善することができる。例えば、ナフタレン系、パラフィン系、脂肪族系樹脂などの樹脂やオイル(または他の加工助剤)を、ゴム組成物の加工性改善に用いることができる。しかし、しかし、加工性の改善は、空気遮断性が低下したり、その他の物性が好ましくない方向へ変化したりすることがある。また、その他の欠点は、加工助剤が最終製品から放出され、母材の物性が全体的に低下することである。
【0005】
ナノ複合材を生産するためには有機クレイを剥離する必要がある。有機クレイの剥離は層挿入剤を用いて行うことができる。少なくとも一部層間挿入された有機クレイは、例えばモンモリロナイトナトリウムなどのクレイの表面にあるナトリウムイオンを、アルキルアンモニウム化合物またはアリールアンモニウム化合物で置換する溶液イオン交換反応により製造することができる。この方法の欠点のひとつは、アミンの熱安定性に限界がある点である。別の欠点は、クレイが分散されるポリマー母材とクレイとが、化学的に結合しない点である。これらの欠点のため、機械的物性が劣り、加工性も低下することがある。
【0006】
有機クレイの性能を改良する方法のひとつは、クレイを処理するため官能化ポリマーを用いることである。この方法は、水に溶ける物質か、重合反応に取り込まれる物質に限られている。この方法は、例えばオリゴマー性、またはモノマー性のカプロラクタムを改質剤に用いるナイロンナノ複合材料の製造に用いられている。ポリオレフィンナノ複合材では、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンが利用され、いくつかのナノ複合材が成功裡に製造されている。
【0007】
例えば、Liらの米国特許第6060549号などに開示された、剥離クレイを充填したナイロンの高耐衝撃性プラスチック母材が知られている。特に、Liらはナイロンなどの熱可塑性樹脂と、CからCのイソモノオレフィン、パラ−メチルスチレン、およびパラ−(ハロメチルスチレン)の共重合体のブレンド物であり、さらに、高耐衝撃性材料として剥離クレーを含有するナイロンを含むブレンド物を開示している。さらに、日本のYuichiらの特許公開公報2000−16002号には、空気バリヤとして用いることができる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。Yuichiらのナノ複合材には、Liらと同様のブレンド物が含まれている。
【0008】
また、イソブチレンとパラ−メチルスチレンの共重合体の臭素化物を用いたナノ複合材が製造されている。例えばElspassらの米国特許第5807629号、5883173号、6034164号が参照される。クレイの剥離効率は、ポリマーの臭素化レベルが高くなるに従い増加することが見出された。しかし、これらの共重合体は非常に反応性が高く、過度の追加の加硫化をもたらすことなく、高い官能化を達成することは困難である。多くの用途の適正な性能として、組成物の耐久性が最大になり適切な物性となるよう、最小限の加硫化が要求される。
【0009】
すなわち、空気遮断用に適したナノ複合材、特に空気遮断性を有するCからCのイソモノオレフィン、パラ−メチルスチレン、およびパラ−(ハロメチルスチレン)の共重合体(または“中間体ポリマー”)を得るにはまだ問題がある。このような共重合体の加工性の改良は、空気遮断性の劣る共重合体を得る結果になりがちである。空気遮断性と改善された加工性とを備える、ハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィン、パラ−メチルスチレン、およびパラ−(ハロメチルスチレン)の共重合体の、剥離されたナノ複合材が要求されている。
【0010】
<発明の概要>
この発明の一側面は、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、1以上の官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0011】
この発明の別の側面では、多官能性の層挿入剤は式:(CM)n-R−(AM)mで表され、CMはカチオン性部位であり、Rは少なくとも1つの炭素原子からなり、AMはアニオン性部位であり、nとmはそれぞれ1以上である。
【0012】
この発明の別の側面では、多官能性の層挿入剤は、RRN-R-AM, または RRRN+-R-AMで表され、R1はCからC50のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、置換されたハロカルビルの内のいずれかであり、R,R, Rは、それぞれ独立に、水素、CからC30のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、置換されたハロカルビルのいずれかである。
【0013】
また別のこの発明の側面では、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入され、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位とクレイとの間に化学結合および/または物理的相互作用を有するクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、1以上の官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位と官能化された中間体ポリマーとの間に化学結合および/または物理的相互作用を有するナノ複合材組成物が生成するために必要な温度、時間と塩基性pHにおいて接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0014】
また別のこの発明の側面では、a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと、b)官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、1以上の官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0015】
また別のこの発明の側面では、a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいてクレイと接触させるステップと、b)官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0016】
また別のこの発明の側面では、a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、クレイの一部層間挿入され、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位とクレイとの間に化学結合および/または物理的相互作用を有するクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと、b)官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0017】
また別のこの発明の側面では、a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと、b)官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度、時間と、7より大きいpHにおいて接触させるステップとからなる、ナノ複合材組成物の製造方法である。
【0018】
この発明の別の側面は、この発明に係るナノ複合材組成物からなる物品に係る。
【0019】
この発明の別の側面は、この発明に係るナノ複合材組成物からなるタイヤのインターライナー、あるいはインナーチューブに係る。
【0020】
この発明の別の側面では、この発明のナノ複合材組成物のX線回折で求めたd100の面間隔が20オングストロームより大きい。
【0021】
この発明の別の側面では、この発明のナノ複合材組成物の酸素透過率が、40℃において、1日当たり100mm−cc/mである。
【0022】
<発明の詳細な説明>
この発明と請求項において、ポリマーがモノマーからなるというときは、 モノマーがポリマー中に重合された状態で存在することを意味する。この発明でオリゴマーというときは、2−40個のmer単位を有する組成物をいい、ポリマーというときは41以上のmer単位を有する組成物をいう。merとは、オリゴマーあるいはポリマーの単位と定義され、オリゴマー化反応またはポリマー化反応に用いられたモノマーに相当する。例えば、ポリエチレンのmerは、エチレンである。ポリマーというときには、特に断りの無い限り、オリゴマーも含まれる。従って、特に断りの無い限り、ポリマーとオリゴマーは互換的意味で使われる。さらに、特に断りの無い限り、「ポリマー」と「中間体ポリマー」には、ホモポリマー(すなわち、1種類のモノマーからなるポリマー)および/または共重合体(すなわち、1種類より多いモノマーからなるポリマー)の両者が含まれる。
【0023】
本願には、種々の物性や組成物の成分の数値範囲が記載されている。ある物性や組成物の下限値と上限値は組み合わされて、物性や組成物の範囲が特定される。
【0024】
「phr」はゴム100重量に対する重量部の意であり、主要なゴム成分の100重量部に対する組成物の成分を量るとき、この技術分野で一般的な単位である。
【0025】
ここで周期律表の「族」というときは、HAWLEY'S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY 852 (13版、 1997)の周期律表に示された番号に従う。
【0026】
エラストマーという用語は、ASTM D1566の定義に従うポリマーまたはポリマー組成物の意味で用いる。エラストマーという用語はゴムと同義で用いられる。
【0027】
この発明には、ハロゲン化されたエラストマーと、多官能性の層挿入剤とカチオン性の界面活性剤で処理されて少なくとも一部が剥離されたクレイとのナノ複合材組成物が含まれる。多官能性の層挿入剤は、好ましくは、アニオン性の部位から少なくとも炭素数1、好ましくは少なくとも炭素数4離間したカチオン性部位を有する。多官能性の層挿入剤のアニオン性部位は、官能化された中間体ポリマー (例えばハロゲン化されたエラストマー)と反応して両者の間に化学結合、あるいは物理的相互作用(例えばイオン結合、配位、共有結合、ファンデルワールス力など)を生じ、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位は、クレイと反応して両者の間に化学結合、あるいは物理的な誘引を生じる事、すなわちクレイと相互作用を持つことが好ましい。官能化された中間体ポリマーは、ひとつの実施態様では、好ましくは、CからCのイソオレフィンに由来するユニットと、パラ−メチルスチレンに由来するユニットと、パラ−ハロメチルスチレンに由来するユニットからなるハロゲン化されたエラストマーであり、別の実施態様では、好ましくは、CからCのイソオレフィンに由来するユニットと、マルチオレフィンに由来するユニットと、ハロゲン化されたマルチオレフィンに由来するユニットからなるハロゲン化されたエラストマーである。ナノ複合材は、他の架橋剤、熱可塑性樹脂、2番目のゴム成分、その他の添加剤、あるいは以下説明する「一般的なゴム」を含むことができる。
【0028】
官能化された中間体ポリマーは、単に中間体ポリマーというとき、および/またはランダムエラストマー共重合体というときと同義で用いられる、官能化されたエラストマーからなる。官能化とは、ハロゲン、またはベンジルのハロゲンが、求核反応によりカルボン酸、カルボン酸塩、カルボキシエステル、アミド、イミド、ヒドロキシ、アルコキシド、 フェノール塩、チオール、チオエーテル、キサントゲン酸塩、; シアン化物; シアン酸塩; イソシアネート、アミノ、およびこれらの混合物等の、他の基で置換された、1以上の官能基を有する中間体ポリマーを意味する。官能基は好ましくは臭素、塩素、ヨウ素であり、臭素がもっとも好ましい。
【0029】
官能化された中間体ポリマーは、 好ましくはC−Cのオレフィンモノマー、アルキルスチレンモノマー、官能化されたアルキルスチレンモノマーからなる。好ましい実施形態では、オレフィンは、イソブチレンなどのC−Cのイソモノオレフィン、および/またはパラ−アルキルスチレンモノマー、好ましくはパラ−メチルスチレンなどのアルキルスチレンから成る。
【0030】
ひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、少なくとも 質量で80%, より好ましくは少なくとも 90%のパライソマーからなる。官能化された中間体ポリマーには、スチレンモノマー単位中にあるアルキル置換基の少なくともいくつかが、ハロゲン化ベンジル基、または他の官能基を有するものが含まれる。この発明の別の実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、エチレンまたはCからCのαオレフィンと、好ましくは質量で少なくとも80%、より好ましくは 少なくとも90%のパライソマーを含むパラ−メチルスチレンのパラ−アルキルスチレンコモノマーとのランダムなエラストマー共重合体である。また、官能化された中間体ポリマーには、スチレンモノマー単位中にあるアルキル置換基の少なくともいくつかが、ハロゲン化ベンジル基、好ましくは臭素化ベンジル基、またはその他の官能基を含むものが含まれる。好ましくは、下記のモノマーユニットがポリマー鎖に沿ってランダムに並ぶことを特徴とする物質である。
【化1】

RとRは、それぞれ独立して、水素、低級アルキル、好ましくはCからCのアルキル、1級または2級ハロゲン化アルキルであり、Xは官能基、またはハロゲン等の脱離基である。好ましくは、RとRはいずれも水素である。ひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマー中のパラ置換スチレンの最大60モル%までが、上記の官能化された構造(2)を有し、別の実施形態では0.1から5モル%である。また別の実施形態では、官能化された構造(2)の量は0.4から1モル%である。
【0031】
官能基Xは、ハロゲン、またはベンジルハロゲンの求核反応で置換されたカルボン酸、カルボン酸塩、カルボキシエステル、アミド、イミド、ヒドロキシ、アルコキシド、 フェノール塩、チオール、チオエーテル、キサントゲン酸塩、シアン化物、シアン酸塩、アミノ、およびこれらの混合物等の、他の官能基である。Xは好ましくは、臭素、塩素またはヨウ素であり、臭素がもっとも好ましい。これらの官能化されたイソモノオレフィン共重合体、その製造方法、官能化の方法、および加硫に関しては、米国特許第5162445号に詳しく開示されている。
【0032】
最も有用な官能化された物質は、イソブチレンと、0.5から20モル%のパラ−メチルスチレンとからなる弾性ランダム中間体ポリマーであり、パラ−メチルスチレンのベンジル環上のメチル基の最大60モル%までが、臭素または塩素原子、好ましくは臭素原子(パラ−ブロモメチルスチレン)を有するか、あるいは、酸またはエステルで官能化されたものである。
【0033】
好ましい実施形態では、官能性は、高温でポリマー成分と混合されたとき、母材ポリマー中の例えば酸、アミノ、水酸基などの官能基と極性結合するように選択される。
【0034】
官能化された中間体ポリマーは、少なくともその95質量%が、ポリマー全体の平均パラ−アルキルスチレン含量に対し10%以内となるパラ−アルキルスチレン含量を有するような、均一な組成分布であることが好ましい。また、望ましい中間体ポリマーは、GPCで測定したMw/Mnが5未満、好ましくは2.5未満の狭い分子量分布を有することで特徴付けられ、好ましい重量平均分子量は20万から200万の範囲であり、好ましい数平均分子量は2万5千から75万の範囲である。
【0035】
官能化された中間体ポリマーは、ルイス酸触媒を用いて、モノマー混合物をスラリー法で重合して製造され、次いで溶液中で、ハロゲンと、熱および/または光および/または化学分解性のラジカル開始剤の存在下でハロゲン化、好ましくは臭素化される。この次に、求核反応により、臭素を別の官能基で置換することもできる。
【0036】
官能化された中間体ポリマーは、ポリマー中の全モノマー単位に対し、0.1から10モル%、好ましくは 0.1から5モル%の臭素化メチルスチレン基を含有する臭素化ポリマーである、いわゆる“BIMS”ポリマーを含むことが好ましい。別の実施形態では、臭素化メチル基の含有量は0.2から3.0モル%、また別の実施形態では0.3から2.8モル%、望ましい範囲はこれらのうちのいずれかの上限値と下限値の組合せである。
【0037】
別の言い方をすると、好ましい官能化された中間体ポリマーは、全ポリマーの重量に対し臭素を0.2から10wt%含有し、別の実施形態では0.4から6wt%含有し、別の実施形態では0.6から5.6wt%含有し、環上あるいはポリマー主鎖上にハロゲンを有さない。この発明のひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマーはCからCのイソオレフィン由来のモノマー単位(またはイソモノオレフィン)と、パラ−メチルスチレン由来のモノマー単位と、パラ−ハロメチルスチレン由来のモノマー単位との共重合体であり、ひとつの実施形態では、パラ−ハロメチルスチレン由来のモノマー単位は、官能化された中間体ポリマー中に、全パラ−メチルスチレンに対し0.4から3.0モル%存在し、パラ−メチルスチレン由来のモノマー単位は全ポリマーの重量に対し3wt%から15wt%存在し、別の実施形態では、4wt%から10wt%存在する。別の実施形態では、パラ−ハロメチルスチレンはパラ−ブロモメチルスチレンである。
【0038】
この発明のナノ複合材は、 ハロゲン化ブチルゴム単独、あるいはハロゲン化ブチルゴムと別の官能化された中間体ポリマーとを含有する、官能化された中間体ポリマーを含む。この発明のひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、ポリジエンまたはブロック共重合体と、CからC のイソオレフィンまたはマルチオレフィンと共有結合または“星状に分岐した”ブチルポリマーの共重合体とのブレンドを含む。この発明に有用な官能化された中間体ポリマーは、CからC のイソオレフィン由来のモノマーユニットと、マルチオレフィン由来のモノマーユニットと、ハロゲン化されたマルチオレフィン由来のモノマーユニットとを含むハロゲン化されたエラストマーであり、“ハロゲン化ブチルゴム”と、いわゆる“星状に分岐した”ブチルゴムの両者を含む。
【0039】
ひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、臭素化されたブチルゴムからなるハロゲン化ブチルゴムであり、別の実施形態では、塩素化されたブチルゴムである。ハロゲン化ブチルゴムの一般的性質と加工方法は、THE VANDERBILT RUBBER HANDBOOK 105-122 (Robert F. Ohm ed., R. T. Vanderbilt Co., Inc. 1990)と、RUBBER TECHNOLOGY 311-321 (Maurice Morton ed., Chapman & Hall 1995)に開示されている。ブチルゴム, ハロゲン化ブチルゴム、星状に分岐したブチルゴムは、Edward KresgeとH. C. Wangによって、8 KIRK-OTHMER ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY 934-955 (John Wiley & Sons, Inc. 4th ed. 1993) に開示されている。
【0040】
すなわち、官能化された中間体ポリマーには、以下に示すようなハロゲン化ゴムからなるが、これに限定されない。臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状に分岐したポリイソブチレンゴム、星状に分岐した臭素化ブチル (ポリイソブチレン/イソプレン共重合体) ゴム、イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/パラ−ブロモメチルスチレンなどのイソブチレン−ブロモメチルスチレン共重合体、イソブチレン/クロロ−メチルスチレン、ハロゲン化されたイソブチレン−シクロペンタジエン、イソブチレン/パラクロロメチルスチレンなど、米国特許第4074035号、4395506号のような、ハロメチル化された芳香族中間体ポリマー、イソプレンとハロゲン化されたイソブチレンの共重合体、ポリクロロプレンなど、およびこれらの混合物。ハロゲン化ゴム成分のいくつかの実施例が、米国特許第4703091号、463万2963号に開示されている。
【0041】
より詳しくは、ひとつの実施形態では、この発明の臭素化されたゴム成分には、ハロゲン化ブチルゴムが用いられる。本願では、「ハロゲン化ブチルゴム」というときは、ブチルゴムと、前記のいわゆる星状に分岐したブチルゴムの両者を意味する。ハロゲン化ブチルゴムはブチルゴムをハロゲン化して製造される。好ましくは、この発明のハロゲン化ブチルゴムの製造に用いられるオレフィン重合用原料は、公知のブチルタイプのゴムの製造に用いられているオレフィン化合物である。ブチルポリマーは、コモノマーの混合物を反応させて製造され、この混合物は、少なくとも(1)イソブチレンなどのCからCのイソオレフィンモノマーと、(2)マルチオレフィンまたは共役したジエンのモノマーとを有する。イソオレフィンは、ひとつの実施形態では全コモノマーに対し70から99.5wt%の範囲であり、別の実施形態では、85から99.5wt%である。ひとつの実施形態では、共役したジエン成分はコモノマーの混合物中に0.5から30wt%存在し、別の実施形態では0.5から15wt%存在する。また別の実施形態では、コモノマーの混合物の0.5から8wt%が共役したジエン成分である。
【0042】
イソオレフィンは、イソブチレン, イソブテン、2−メチル−1ブテン、3−メチル−1ブテン、2−メチル−2ブテン、4−メチル−1ペンテンなどの、CからCの化合物である。マルチオレフィンは、CからC14の、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、シクロペンタジエン、ヘキサジエン、およびピペリレンなどの、共役したジエンである。この発明の実施形態に係るブチルゴムポリマーは、92から99.5wt%のイソブチレンを0.5から8wt%のイソプレンと反応させて得られ、また別の実施形態では95から99.5wt%のイソブチレンを0.5から5.0wt%のイソプレンと反応させて得られる。
【0043】
ハロゲン化ブチルゴムは、前記のようにブチルゴム製品をハロゲン化して製造される。この発明ではハロゲン化の方法に制限はなく、いかなる方法で行ってもよい。ブチルポリマーなどのポリマーのハロゲン化方法は、米国特許第2631984号、3099644号、4554326号、4681921号、4650831号、4384072号、4513116号、5681901号に開示されている。ひとつの実施形態では、ハロゲンは、例えばRUBBER TECHNOLOGY, 298-299 (1995)に開示されている、いわゆるII,III構造である。ひとつの実施形態では、ブチルゴムは、ハロゲン化剤に臭素Brまたは塩素Clを用いて、40から60℃のヘキサン溶液中でハロゲン化される。ハロゲン化ブチルゴムは、ひとつの実施形態では20から70のムーニー粘度(ML1+8、125℃)を有し、また別の実施形態では、25から55のムーニー粘度を有する。ハロゲン化ブチルゴム中のハロゲン含有量wt%は、ひとつの実施形態では0.1から10wt%であり、別の実施形態では0.5から5wt%である。また別の実施形態では、ハロゲン化ブチルゴム中のハロゲン含有量wt%は1から2.2wt%である。
【0044】
別の実施形態では、ハロゲン化されたブチルゴムあるいは星状に分岐したブチルゴムは、第1アリル位にハロゲン化が生じてハロゲン化される。これは、遊離ラジカルによる臭素化、または遊離ラジカルによる塩素化によって達成される。あるいは、ハロゲン化されたゴムの、加熱などによる二次処理によって、アリル位がハロゲン化されたブチルゴムや星状に分岐したブチルゴムが生成する。アリル位がハロゲン化されたポリマーを精製させる一般的な方法は、Gardnerらの、米国特許第4632963号、4649178号、4703091号に開示されている。すなわち、この発明のひとつの実施形態では、ハロゲン化ブチルゴムは、ハロゲン化されたマルチオレフィンモノマー単位が、第1アリル位がハロゲン化されたものであり、第1アリル位の構造は(ハロゲン化マルチオレフィンの全量に対して)少なくとも20モル%であり、別の実施形態では、少なくとも30モル%である。これは、下記の(3)で表され、Xは、好ましくは塩素または臭素であるハロゲン、qは、ひとつの実施形態では、全ハロゲンのモル数に対し少なくとも10モル%、別の実施形態では少なくとも30モル%、また別の実施形態では25モル%から90モル%である。
【化2】

【0045】
このゴムの商業的実施形態は、Bromobutyl 2222 (ExxonMobil Chemical社)である。この製品のムーニー粘度(ML1+8、125℃、ASTM1646、修正(modified))は27から37、臭素含有量は1.8から2.2wt%である。ハロゲン化ブチルゴムの別の商業的実施形態は、Bromobutyl 2255 (ExxonMobil Chemical社)である。この製品のムーニー粘度(ML1+8、125℃、ASTM1646、修正(modified))は41から51、臭素含有量は1.8から2.2wt%である。この発明は、ハロゲン化ゴムの商業的入手源によって限定されるものではない。
【0046】
別の実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、分岐、あるいは「星状に分岐」したハロゲン化ブチルゴムから成る。ひとつの実施形態では、星状に分岐したハロゲン化ブチルゴム(SBHR)は、ハロゲン化された、あるいはされていないブチルゴムと、ハロゲン化された、あるいはされていないポリジエンまたはブロック共重合体との組成物である。ハロゲン化方法は、米国特許第4074035号、4074035号、5071913号、5286804号、5182333号、および6228978号に詳しく開示されている。この発明は、SBHRを生成させる方法によって限定されるものではない。ポリジエン/ブロック共重合体、または分岐剤(以下、ポリジエンという)は、カチオン性の反応性を有し、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムの重合中に共存し、あるいはSBHRを生成するために、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムにブレンドされる。分岐剤、あるいはポリジエンは、分岐剤に適したものであればよく、この発明はSBHRを生成するために用いられるポリジエンのタイプによって限定されるものではない。
【0047】
ひとつの実施形態では、SBHRはブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムの組成物であり、ポリジエンと、スチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン、およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体からなる群から選択されて一部水素化されたポリジエンとの共重合体である。ひとつの実施形態では、ポリジエンの量は、モノマーのwt%で表したとき、0.3wt%を超え、別の実施形態では0.3から3wt%であり、さらに別の実施形態では0.4から2.7wt%である。
【0048】
この発明の官能化された中間体ポリマー中では、ハロゲン化ゴム成分はこの発明に係る組成物中に少なくとも 10phr、好ましくは少なくとも20phr、より好ましくは少なくとも30phr存在する。また、ハロゲン化ゴム成分はこの発明に係る組成物中に90phr未満、好ましくは80phr未満、より好ましくは70phr未満存在し、望ましい範囲はいずれかの上限値と下限値との組み合わせである。
【0049】
<クレイ>
この発明の組成物は、少なくとも一部が剥離した少なくとも1のクレイに適切な手段により接触させられた、少なくとも1の官能化された前記の中間体ポリマーを含む。少なくとも一部が剥離したクレイは、クレイと、カチオン性部位とアニオン性部位が少なくとも炭素1個分離間している多官能性層挿入剤とを組み合わせて製造される。
【0050】
ここで用いるクレイは、膨潤性で多層のクレイが含まれ、このようなクレイには、天然および/または合成のフィロシリケート、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤアイト、ステベンサイトなどの一部スメクティックなクレイ、また、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミン酸塩酸化物、ハイドロタルサイトなどが含まれる。これらのいわゆる多層クレイは、一般に厚みが8−12Å(0.8−1.2ナノメータ(nm))、層間距離が4Å未満で、層間の表面にNa+、Ca+2、 K+、あるいはMg+2などの交換可能なカチオンを含んで固く結合した、多数のプレート状珪酸の粒子を含んでなる。
【0051】
この発明の多層クレイは、多層クレイの層間表面に存在するカチオンとイオン交換反応可能な1以上の有機分子(膨潤または剥離「剤」または「添加剤」)によるクレイの処理、もしくは反応により、少なくとも部分的に層間挿入され、剥離されている。この処理、もしくは反応を以下「接触」と呼ぶ。
【0052】
ひとつの実施形態では、少なくとも一部が剥離されたクレイは、クレイを多官能層挿入剤と予め混合して製造される。このとき、1以上の追加の剥離剤を混合してもよい。別の実施形態では、少なくとも一部が剥離されたクレイは、この発明に係る官能化された中間体ポリマーの存在下で、多官能層挿入剤と、任意の追加の剥離剤と組み合わされて製造される。
【0053】
この発明のひとつの実施形態では、少なくとも部分的に層間挿入されたクレイのナノ複合材中の量は、例えば引張強さ、および/または酸素透過性、および/または空気透過性などの、ナノ複合材の機械的強度またはバリヤ性を改善するために十分な量である。このクレイの量は、通常組成物の全重量に対し0.5から10wt%の範囲である。好ましくは、少なくとも部分的に層間挿入されたクレイは、1から5wt%含有される。ゴム百重量部に対して表示すると、剥離されたクレイ(すなわち、少なくとも部分的に層間挿入されたクレイ)は、ひとつの実施形態では1から30phr、別の実施形態では5から20phr含有される。
【0054】
<層挿入剤>
この発明のクレイには、多官能層挿入剤が、少なくとも部分的に層間挿入されている。多官能層挿入剤はカチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間しており、次の構造で表される。
(CM)n-R(AM)m
ここで、CMはカチオン性部位を表し;
は少なくとも1つの炭素原子を表し;
AMはアニオン性部位を表し;
nとmはいずれも1以上である。
【0055】
好ましいカチオン性部位には、アンモニアイオン、および/または1以上のホスフィン、アルキル硫化物、アリール硫化物、チオール、およびこれらの多官能性誘導体などの、カチオン誘導体が含まれる。好ましいアンモニアイオンには、置換されたアンモニアイオン、プロトン化されたアルキルアミン、アルキルアンモニウム(1級、2級、3級)、および4級アンモニア塩が含まれる。望ましい多官能性層挿入剤はアンモニア部位を有するものであり、構造がRN−R−AM、およびRN−R−AMで表され;RはCからC50のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および/または置換されたハロカルビルであって、置換、または非置換のアルキル、アリール、アルケン、および/または置換、または非置換のハロゲン化されたアルキル、ハロゲン化されたアリール、ハロゲン化されたアルケンを含み;R、R、および任意のR(すなわち、存在するとき)はそれぞれ独立して、水素、CからC30のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および置換されたハロカルビルであって、置換、または非置換のアルキル、アリール、アルケン、および置換、または非置換のハロゲン化されたアルキル、ハロゲン化されたアリール、ハロゲン化されたアルケンを含む。
【0056】
好ましい実施形態では、Rは炭素数が少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、好ましくは少なくとも12好ましくは少なくとも13、好ましくは少なくとも 14、 好ましくは少なくとも15、好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも21、より好ましくは少なくとも22である。別の実施形態では、Rは炭素数が4から20、好ましくは4から15で、炭素数10から12が最も好ましい。
【0057】
別の好ましい実施形態では、R、R、および任意のR(すなわち、存在するとき)は水素、または炭素数が1から50、好ましくは1から20、好ましくは1から10、好ましくは1から5、好ましくは1から4、好ましくは1から3、好ましくは1から2である。R、R、および任意のR(すなわち、存在するとき)には、酸素、硫黄などのヘテロ原子が含まれる。具体例には、エトキシル化合物(EO)、プロポキシル化合物(PO)などが含まれる。好ましい例は、エトキシル化、および/または2から50モルのEOとPOの組合せを有する、プロポキシル化されたCからC22のアミンである。
【0058】
より好ましい実施形態では、RとRはメチルまたはエチル、Rは水素、RはCからC12の脂肪族アルキル、または置換された脂肪族アルキル、より好ましくはC10からC12の脂肪族アルキル、または置換された脂肪族アルキルである。別の好ましい実施形態では、RとRはメチルまたはエチル、Rは水素、RはCからC10の芳香族、または置換された芳香族である。別の好ましい実施形態では、多官能性層挿入剤は、少なくともRがCからC20のアルキルまたはアルケンであり、プロトン化された、いわゆる「長鎖三級アミン」である。
【0059】
好ましいアニオン性部位には、カルボン酸基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、水酸基、アルコキシド基、フェノキシド基、チオール基、チオエステル基、キサントゲン酸塩基、シアン基、シアン酸塩基、フォスフェイト基、亜燐酸塩基、硫酸塩基、亜硫酸塩基などが含まれ、これらは全て所定のpH値以上でアニオン性官能基となる。より好ましいアニオン性部位は、カルボキシルアニオン(CA‐RCOO‐)を有する。
【0060】
最も好ましい多官能性層挿入剤には、4から30の炭素数を有するプロトン化されたアミノ酸、およびその塩基が含まれる。好ましいものの例として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、12−アミノドデカン酸、N−置換12−アミノドデカン酸、N−置換基がC1からC12のアルキル基であるN,N−二置換12−アミノドデカン酸、およびN,N,N−三置換12−アミノドデカン酸が挙げられる。他の好ましい例として、ε−カプロラクタム、置換または非置換のアミノ安息香酸などが挙げられる。より好ましい多官能性層挿入剤には、CからC10のアルキル基で置換されたアミノ安息香酸が含まれ、ジメチルアミノ安息香酸が最も好ましい。
【0061】
多官能性層挿入剤は単独で用いられ、あるいは他の膨潤剤、剥離剤、および/または層挿入剤と組み合わせて用いられる。他の適切な層挿入剤には、クレイの内層の表面に共有結合可能な剥離剤が含まれる。このようなものには、構造がSi(R)2Rで表されるポリシランが含まれ、Rは同一または異なっており、アルキル、アルコキシ、珪酸化物(oxysilane)から選択され、Rは組成物の官能化された中間体ポリマーと混合可能な有機化合物の基である。層状の珪酸塩に層挿入する方法は、米国特許第4472538号、4810734号、4889885号および、WO92/02582公開パンフレットに開示されている。
【0062】
追加の剥離剤あるいは添加剤の例には、一級、二級、三級アミンおよびホスフィン;アルキルおよびアリール硫化物およびチオール;およびこれらの官能基多数有するものが含まれる。望ましい添加剤には、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシル−メチルアミン、二水素化タローアルキル−メチルアミンなど;および、末端がアミンのポリテトラヒドロフラン;および/または、ヘキサメチレンチオ硫酸ナトリウムを含む、長鎖チオールおよび/またはチオ硫酸塩化合物などの長鎖三級アミンが含まれる。
【0063】
多官能性層挿入剤と、ここに開示する任意の剥離添加剤との組成物中の量は、クレイを剥離して、ここに開示する透過性試験で測定したこの発明の組成物の空気透過性が、比較例に対し改善され得る量存在する。例えば、ひとつの実施形態では、多官能性層挿入剤は0.1から20phr含有され、別の実施形態では0.2から15phr含有され、また別の実施形態では0.3から10phr存在する。多官能性層挿入剤は、組成物中のクレイとどの段階で接触してもよく、例えば多官能性層挿入剤は官能化された中間体ポリマーに添加され、次にクレイが添加される。あるいは、官能化された中間体ポリマーとクレイの混合物にクレイを接触させることができる。あるいは、先ず多官能性層挿入剤をクレイに適切なpHの下で接触させ、次に官能化された中間体ポリマー、あるいは他の添加剤、フィラー、ゴム、硬化剤などと接触させる。
【0064】
多官能性層挿入剤とクレイの接触は、プレート状のクレイの層の層挿入または「剥離」が生じる条件下で行われ、好ましくは、層同士をつなぐイオン結合力が減少することで分子が層間に導入される結果、層間の距離が4Å、好ましくは9Åより大きくなる条件下で行われる。この距離の拡大は、多層の珪酸塩の層間にポリマー材料が容易に入るのを許し、層挿入が混合、混練による剪断下で行われたとき、あるいは、組成物の官能化された中間体ポリマー材の母材中に、剥離された層が均一に分散するように、中間体ポリマー材の母材にクレイをブレンドするとき、層の剥離がさらに加速される。
【0065】
<層挿入改質剤>
この発明の組成物は、少なくとも1の少なくとも部分的に剥離したクレイと、適切な手段により接触した、少なくとも1の前記官能化された中間体ポリマーを含有する。少なくとも部分的に剥離したクレイは、クレイと、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分、好ましくは少なくとも炭素4個分離間した多官能性の層挿入剤とを組み合わせて製造される。この発明の方法は、多官能性層挿入剤をクレイと接触させるステップをさらに備え、および/または、少なくとも部分的に層間挿入されたクレイを、層挿入改質剤の存在下で、官能化された中間体ポリマーと接触させるステップを備え、層挿入改質剤は界面活性剤、ブロック共重合体、湿潤剤、乳化剤、あるいはこれらの組合せなどの、表面活性化剤である。
【0066】
層挿入改質剤の添加は、好ましくはクレイの剥離が改善され、および/または少なくとも部分的に剥離したクレイが官能化された中間体ポリマーの母材中により均一に分散するように作用する。
【0067】
層挿入改質剤の例には、ブロック共重合体、湿潤剤、乳化剤などの、イオン性または非イオン性界面活性剤が含まれる。多種類のこのような界面活性剤が入手可能であり、当業者であれば、参照として本願に組み込まれる“The Handbook of Industrial Surfactants,” 2nd Edition, Gower (1997)から、容易に選択することができる。用いる界面活性剤のタイプあるいは化学的分類に、特に制限は無い。従って、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤、あるいはこれらの内の1以上の組合せの、いずれもこの発明の層挿入改質剤に用いることができる。
【0068】
非イオン性界面活性剤のうち、好ましいものの例は、一級または二級ポリオキシエチレンアルコール、アルキルフェノール、ポリオキシエチレン、アルキル、アルケン、アルキニル、あるいはアルキルアリールエーテル、あるいはアセチレンジオール;修飾された脂肪酸、エトキシ化脂肪酸などのポリオキシエチレンアルキルエステルまたはポリオキシエチレンアルケンエステル;エトキシ化されているか、されていないソルビタンアルキルエステル、グリセリンアルキルエステル;サッカロースエステル;あるいはアルキルポリグリコサイドなどである。アニオン性界面活性剤のうち、好ましいものの例は、脂肪酸、硫酸塩、スルホン酸塩、フォスフェイトモノ−またはジエステル、あるいはフォスフェイトモノ−またはジアルコール、アルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、およびカルボキシル化ポリオキシエチレンアルコール、カルボキシル化ポリオキシエチレンアルキルフェノールが含まれる。これらは、酸の状態で用いることができるが、より好ましくは、例えばナトリウム、カリウム、あるいはアンモニウム塩などの塩として用いられる。
【0069】
好ましい層挿入改質剤には、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンC−C18アルキル三級アミン、置換されたC−C18アルキル三級アミン、置換されたC−C18アルケニル三級アミン、エトキシ化および/またはプロポキシ化された脂肪族アミン、C−C18アルキル置換脂肪族アミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンアルキルエーテルアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンココアミン(cocoamine)、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンタローアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンタロー四級アミン、塩化または臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化または臭化N−ドデシルピリジン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、および塩化または臭化ポリオキシプロピレンエトキシトリメチルアンモニウムなどの、カチオン性界面活性剤が含まれる。
【0070】
この発明の組成物には、公知の種々の構造の四級アンモニウムのカチオン性界面活性剤を用いることができる。適切な表面活性化剤(すなわち海界面活性剤)には、ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸または、ナフタレンスルホン酸、エチレンオキサイドと脂肪族アルコール、脂肪酸、あるいは脂肪族アミンとの縮合物、置換されたフェノール、(特にエトキシ化アルキルフェノール、またはエトキシ化アリールフェノール)、スルホノ琥珀酸エステル塩(sulphonosuccinic acid ester salt)、タウリン誘導体(特にアルキルタウリン)、アルコールのリン酸エステル、エチレンオキサイドとフェノールの縮合物、脂肪酸の多価アルコールとのエステル、およびこれらの化合物の硫酸、スルホン酸、およびリン酸誘導体などの、イオン性または非イオン性の乳化剤や湿潤剤が含まれる。
【0071】
<添加剤>
この発明の組成物は、1以上の第2ゴム成分、熱可塑性樹脂、フィラー、硬化剤、その他の添加剤などの、1以上の添加剤を含む。添加剤とは、この発明の組成物の物性を変える成分のことである。
【0072】
<第2ゴム成分>
この発明の組成物、またはこの発明の最終製品は、1以上の第2ゴム成分、あるいは「一般用途用ゴム」を、その組成中に含有する。これらのゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリ(イソプレン−ブタジエン)ゴム(IBR)、 スチレン−イソプレ−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、 エチレン−プロピレンゴム−ジエンゴム(EPDM)、ポリ硫化物、ニトリルゴム、ポリプロピレンオキサイドポリマー、星状に分岐したブチルゴム、およびこれらの混合物。
【0073】
好ましい実施形態の第2ゴム成分は天然ゴムである。天然ゴムについてSubramaniamによってRUBBER TECHNOLOGY 179-208 (Maurice Morton, Chapman & Hall 1995)に詳しく説明されている。この発明の望ましい実施形態の天然ゴムは、SMR CV, SMR 5, SMR 10, SMR 20, SMR 50,およびこれらの混合物などのマレーシア産の天然ゴムから選択される。天然ゴムのムーニー粘度100℃(ML1+4)が35から70の範囲、好ましくは40から65の範囲である。ムーニー粘度の測定方法は、ASTM D−1646に従う。
【0074】
ポリブタジエンゴム(BR)も、この発明の組成物に好ましい第2ゴム成分である。ポリブタジエンゴムのムーニー粘度100℃(ML1+4)が35から70の範囲、別の実施形態では40から65、また別の実施形態では45から60の範囲である。この発明に有用な市販の合成ゴムの例は、NATSYNTM(登録商標) (Goodyear Chemical Company社), arid BUDENETM(登録商標) 1207、または BR 1207 (Goodyear Chemical Company社)である。望ましいゴムは、高シス−ポリブタジエン(cis−BR)のものである。「シス−ポリブタジエン」「高シス−ポリブタジエン」というときは、1,4−シスポリブタジエンが用いられ、シス成分の含有量が少なくとも95%のものをいう。高シス−ポリブタジエンの商業製品の一例は、BUDENE(登録商標)1207組成物に用いられたものである。
【0075】
エチレンとプロピレンから作られるEPMやEPDMなどのゴムも、第2ゴム成分に好適に用いられる。EPDMの製造に適したコモノマーは、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、その他である。これらのゴムは、RUBBER TECHNOLOGY 260- 283 (1995)に開示されている。好ましいエチレン−プロピレンゴムは商業的に、VISTALON(登録商標) (ExxonMobil Chemical Company社、 Houston Tex)が入手可能である。
【0076】
この発明のひとつの実施形態では、いわゆる半結晶性共重合体(SCC)が第2ゴム成分として存在する。半結晶性共重合体は、国際公開パンフレットWO00/69966に開示されている。一般に、SCCはエチレンまたはプロピレン由来のモノマー単位と、α−オレフィン由来のモノマー単位との共重合体であって、ひとつの実施形態では、α−オレフィンの炭素数は4から16であり、別の実施形態では、SCCはエチレン由来のモノマー単位とα−オレフィン由来のモノマー単位との共重合体であって、α−オレフィンの炭素数は4から10であり、SCCはある程度結晶性を有する。また別の実施形態では、SCCは1−ブテン由来のモノマー単位と、それ以外のα−オレフィン由来のモノマー単位との共重合体であって、α−オレフィンの炭素数は5から16であり、SCCはある程度結晶性を有する。SCCはエチレンとスチレンの共重合体であってもよい。
【0077】
ナノ複合材組成物に第2ゴム成分が用いられるときは、ひとつの実施形態では、第2ゴム成分の量は1から90phrであり、別の実施形態では最大50phrまでであり、別の実施形態では最大40phrまでであり、また別の実施形態では最大30phrまでである。また別の実施形態では、第2ゴム成分の量は少なくとも2phr、別の実施形態では少なくとも5phr、別の実施形態では少なくとも10phr、また別の実施形態では少なくとも20phrである。望ましい 実施形態では、いずれかの上限値と、いずれかの下限値とが組み合わされる。例えば、第2ゴム成分は、単独、または例えばNRとBRのブレンドされたゴムとして、ひとつの実施形態では、5から90phr存在し、別の実施形態では10から80phr、別の実施形態では30 から70phr、別の実施形態では40から60phr存在し、また別の実施形態では5から40phr、別の実施形態では20から60phr、別の実施形態では20から50phr存在し、いずれの実施形態を選択するかは、組成物の最終的な用途による。
【0078】
<フィラー>
この発明の組成物は、少なくとも1以上の炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、シリカ、珪酸塩、タルク、二酸化チタン、カーボンブラックなどのフィラーを含む。ひとつの実施形態では、フィラーはカーボンブラックまたは修飾されたカーボンブラックである。好ましいフィラーは、半補強性グレードのカーボンブラックであり、ナノ複合材組成物中に10から150phr、より好ましくは30から120phr存在する。カーボンブラックの有用なグレードは、RUBBER TECHNOLOGY 59-85 (1995)に開示されたN110からN990の範囲のものである。より好ましくは、例えばタイヤのトレッド用に有用なカーボンブラックは、ASTM(D3037, D1510, とD3765)に規定されたN229、 N351, N339, N220, N234およびN110である。また、タイヤの側壁用に有用なカーボンブラックの例は、N330, N351, N550, N650,N660と、N762である。タイヤのインナーライナー用に有用なカーボンブラックの例は、N550, N650, N660, N762, and N990である。
【0079】
<硬化剤>
この発明の組成物は、官能化されたエラストマー共重合体ブレンドを硬化可能な硬化剤を任意に含ませて、加硫可能な組成物を提供することができる。この発明のエラストマー共重合体の適した硬化剤には、有機化酸化物、ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸と組み合わせて用いられる酸化亜鉛、任意に1以上の促進剤または硬化剤が含まれる。また、組成物を、紫外線または電子照射で硬化させてもよい。
【0080】
この発明の別の実施形態では、少なくとも1の多官能性硬化剤を用いて、組成物の空気透過性が改善される。このような多官能性硬化剤は、式「Z−R−Z´」で表され、Rは置換または非置換の、CからC15のアルキル、CからC15のアルケニル、CからC12の環状芳香族のいずれかであり;ZとZ´は同じか異なり、チオ硫酸基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボン酸基、パーオキサイド基アルケニル基、または同様の基のいずれかであり、不飽和結合などの反応性基を有するポリマー鎖を、分子間または分子内で架橋させることができるものである。いわゆるビスチオ硫酸基化合物は、望ましい多官能性化合物の一例である。このような多官能性硬化剤の非限定的例示として、ヘキサメチレンビス(チオ硫酸ナトリウム)とヘキサメチレンビス(桂皮アルデヒド)などが、ゴム配合技術の分野で広く知られている。この他の好適な硬化剤は、例えば、BLUE BOOK, MATERIALS, COMPOUNDING INGREDIENTS, MACHINERY AND SERVICES FOR RUBBER (Don. R. Smith, ed., Lippincott & Petto hie. 2001)に開示されている。多官能性硬化剤が用いられる場合、ひとつの実施形態では、組成物中に0.1から8phr、別の実施形態では0.2から5phr存在する。
【0081】
好適な促進剤、および/または加硫剤として、アミン、グアニジン、チオ尿素、チオアゾール、チウラム、スルホンアミド、スルフェニイミド、チオカーバメイト、キサントゲン酸塩などが上げられる。促進剤および加硫剤の例として、ジカテコールボレイトのジ−オルソ−トリルグアニジン塩、m−フェニレンビスマレイミド、2,4,6−トリメルカプト−5トリアジン、ジエチルジチオカルバメート亜鉛、この他のジチオカルバメート、ジペンタ−メチレンチウラムヘキサ硫化物、アルキル化フェノール硫化物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、ジフェニルフェニレンジアミン、サリシクリック酸(o−ヒドロキシ安息香酸)、木のロジン(アビエチン酸)、テトラメチルチウラム二硫化物と硫黄、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)の組み合わせ、テトラエチルチウラム二硫化物(TMTD)、4,4´−ジチオジモルフォリン(DTDM)、テトラブチルチウラム二硫化物(TBTD)、2,2´−ベンゾチオアジル二硫化物(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオサルフェートナトリウム塩の二水加物、2−(モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、MORが90%とMBTSが10%からなる組成物、N−三級ブチル−2−ベンゾチアゾールサルファミド(TBBS)、N−オキシジエチレンチオカーバミル−N−オキシジエチレンサルファミド(OTOS)、2−エチルヘキサネート亜鉛(ZEH),およびN,N´ジエチルチオ尿素が挙げられる。
【0082】
硬化ステップの加速は、組成物に加速剤を添加することで行うことができる。天然ゴムの加硫の加速の機構には、硬化剤、加速剤、活性化剤やポリマーなどの複雑な相互作用が関与している。すべての硬化剤が2以上のポリマーを結合させ有効な架橋を生じ、ポリマー母材の全体的な強度が向上するのが想的である。
【0083】
この発明のひとつの実施形態では、少なくともひとつの硬化剤が0.2から15phr存在し、別の実施形態では0.5から10phr存在する。硬化剤には、金属、加速剤、硫黄、パーオキサイドなど、エラストマーの硬化を促進または影響を及ぼす化合物が含まれる。
【0084】
<他の添加剤>
この発明の組成物はまた、顔料、着色剤、染料、酸化防止剤、熱および光安定剤、可塑剤、オイルや他の公知の副原料など、従来用いられている他の添加剤を含むことができる。
【0085】
<製造方法>
この発明の組成物の製造方法には以下のステップが含まれ、特に断りの無い限り、ステップは順不同で記載されている。
【0086】
組成物の各成分を互いに接触させて、各成分の緊密な混合物、ブレンド、組成物などを形成する。以下、分かり易くするため、このような接触ステップをブレンドという。各成分のブレンドは、ポリマー成分と、少なくとも一部層間挿入されたクレイとを、例えば、バンバリー(登録商標)ミキサー、ブラベンダー(登録商標)ミキサー、好ましくはミキサー/押出機などの適切な混合装置を用いて、温度120℃から300℃で、層間挿入されたクレイが官能化された中間体ポリマー中に均一に分散してこの発明のナノ複合材組成物が形成されるのに十分なせん断下で混合して行う。
【0087】
ひとつの実施形態では、ナノ複合材組成物を製造する方法は次のステップを有する。
a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップ;
b)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させる。
【0088】
ひとつの実施形態では、ステップa)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤と、クレイとの接触を、好ましくは20から120℃、より好ましくは30から90℃、さらに好ましくは40から70℃で行う。
【0089】
また、ステップa)は好ましくは、1分から24時間、より好ましくは0.5から8時間、さらに好ましくは1から4時間行う。
【0090】
ひとつの実施形態では、ステップb)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させることは、好ましくは40から140℃、より好ましくは60から120℃、さらに好ましくは80から100℃で行う。
【0091】
また、ステップb)は好ましくは、1分から24時間、より好ましくは0.5から8時間、さらに好ましくは1から4時間行う。
【0092】
ひとつの実施形態では、ステップa)の多官能性の層挿入剤とクレイの接触を、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がプラスの電荷となるpHでおこなう。従って、多官能性の層挿入剤とクレイの接触は、好ましくは酸性のpH(すなわちph7未満)で行う。すなわち、多官能性の層挿入剤とクレイの接触が生じるステップa)に、酸の添加が含まれる。多官能性の層挿入剤とクレイ接触させる好ましいpHは、pH6以下、好ましくは5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2未満、好ましくは1未満である。好ましい酸には、ブロンステッド酸とルイス酸の両者が含まれ、鉱酸(例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、亜リン酸、これらの組み合わせなどが含まれる。
【0093】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位の少なくとも一部がクレイ表面のサイトと交換するのに必要な温度と時間において、多官能性の層挿入剤をクレイに接触させる。多官能性の層挿入剤は、まず少なくとも一部が、水、有機溶剤、またはこれらを組み合わせた溶剤に溶解され、次に、酸と混合される。特に好ましい溶剤には、低分子量アルコール(例えばC1からC6のアルコール、好ましくはメタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(iPrOH)、プロパノール(PrOH)、およびブタノール(BuOH))が含まれる。酸性化された多官能性の層挿入剤混合物またはその溶液は、電荷を帯びたカチオン性部位の存在を確実にするため(例えば多官能性の層挿入剤のアミン官能基をプロトン化するため)、必要により加熱される。
【0094】
界面活性剤である第2の層挿入剤が、多官能性の層挿入剤の溶液または混合物に、クレイの添加に先立ち、あるいはクレイの添加と同時に、あるいはクレイの添加後に添加される。ひとつの実施形態では、界面活性剤、 好ましくは中性またはカチオン性界面活性剤、最も好ましくはカチオン性界面活性剤を、多官能性の層挿入剤の溶液(および/または混合物)に、酸とともに、あるいは酸の後に、好ましくはクレイを添加する前に添加する。混合物は加熱され、混合され、振盪等されて、多官能性の層挿入剤と、酸と、第2の層挿入剤の混合物を生成させる。
【0095】
第2の層挿入剤(層挿入改質剤、例えば界面活性剤)は、好ましくは混合物中に、その界面活性剤、あるいは複数の界面活性剤の、臨界ミセル濃度と同じか、それ以上の濃度で存在する。多官能性の層挿入剤溶液にクレイが加えられ、好ましくは、例えばクロイサイトNa+のように、Na+となっているクレイが加えられる。クレイは、多官能性の層挿入剤に加えられる前に、水、アルコール、有機溶剤、あるいはこれらの組み合わせなどの溶剤によって、スラリー状にしておく。多官能性の層挿入剤とクレイと、任意の溶剤、酸、第2の層挿入剤は混ぜ合わされ、および/または、少なくとも一部が層間挿入されたクレイ、あるいは少なくとも一部が剥離したクレイが生成するために必要な時間、加熱される。別の実施形態では、層挿入改質剤はナノ複合材組成物中に0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1wt%以上存在する。
【0096】
少なくとも一部層間挿入されたクレイ(改質されたクレイ)は、溶剤から分離され、溶剤で洗浄され、および/または、乾燥され、および/または、その後官能化された中間体ポリマーに添加するために、任意の添加剤とともに粉砕される。
【0097】
官能化された中間体ポリマーを、少なくとも一部層間挿入されたクレイと接触させる。ひとつの実施形態では、官能化された中間体ポリマーは、少なくとも一部が適切な溶剤に溶解され、改質されたクレイがそこに添加される。好ましい溶剤には、脂肪族炭化水素(例えばペンタン、ヘキサンなど)を含む炭化水素溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを含む芳香族溶剤、およびこれらの組み合わせが含まれる。改質されたクレイは固体状、あるいはスラリー状、あるいは溶剤に混合された状態で添加される。改質されたクレイと官能化された中間体ポリマーを、この発明のナノ複合材組成物を製造するために必要な温度と時間において、接触(例えば混合、ブレンド、混練など)させる。
【0098】
好ましい実施形態では、改質されたクレイと官能化された中間体ポリマーは、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位と、官能化された中間体ポリマーのハロゲン置換基との間に、化学結合を形成させるために必要な温度と時間において、ブレンドされる。例えば多官能性の層挿入剤のカルボン酸基と、官能化された中間体ポリマーのフェニル環のハロゲン原子と反応して、多官能性の層挿入剤と官能化された中間体ポリマーの間にエステル結合が形成される。従って、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位が接続したおよび/または結合した改質されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとの間に結合が形成される。
【0099】
好ましい実施形態では、少なくとも一部層間挿入されたクレイと官能化された中間体ポリマーは、この発明のナノ組成物形成するために必要な温度と、時間と、pHとにおいてブレンドされる。好ましくは、改質されたクレイと官能化された中間体ポリマーとを、7より大きいpH、好ましくは8より大きいpH、好ましくは9より大きいpH、好ましくは10より大きいpHで接触させる。このため、NaOH、KOH、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基性物質を、少なくとも一部層間挿入されたクレイと官能化された中間体ポリマーを接触させるときに添加する。ブロンステッド塩基および/またはルイス塩基を含む、この他の塩基性物質を用いることもできる。
【0100】
また、1以上の前記の添加剤を上記のステップのいずれかにおいて添加することができる。好ましい実施形態では、硬化剤、第2のゴム、フィラー、またはその他の添加剤が、製造中にこの発明の組成物に添加される。
【0101】
この発明の組成物を製造する実施形態には、以下のステップを備える方法が含まれる。
a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分、好ましくは少なくとも炭素4個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと、b)ハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィンモノマー単位を有するランダム共重合体などの、官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、この発明のナノ複合材組成物を生成させるために必要な温度と時間において接触させるステップ。
【0102】
ひとつの実施形態では、ステップa)の、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分分離間した多官能性の層挿入剤をクレイと接触させるステップは、好ましくは温度20から120℃、より好ましくは温度30から90℃、最も好ましくは温度40から70℃で行われる。ステップa)はまた、時間が1分から24時間、好ましくは0.5から8時間、より好ましくは1時間から4時間で行われる。
【0103】
ひとつの実施形態では、ステップb)のハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィンモノマー単位を有するランダム共重合体などの、官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップは、好ましくは温度0から250℃、より好ましくは温度25から100℃、より好ましくは温度35から70℃で行われる。ステップb)はまた、時間が1分から48時間、好ましくは0.5から24時間、より好ましくは1時間から8時間で行われる。
【0104】
ひとつの実施形態では、ステップc)の、少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、この発明のナノ複合材組成物を生成させるために必要な温度と時間において接触させるステップは、好ましくは温度20から120℃、より好ましくは温度30から90℃、より好ましくは温度40から70℃で行われる。ステップc)はまた、時間が1分から24時間、好ましくは0.5から8時間、より好ましくは1時間から4時間で行われる。
【0105】
別の実施形態では、この発明の組成物は、以下のステップを備える方法により製造される。
a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと、
b)ハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィンモノマー単位を有するランダム共重合体などの、官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かして、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、
c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマー混合物とを、この発明のナノ複合材組成物を生成させるために必要な温度と時間において接触させるステップ。
【0106】
別の実施形態では、この発明の組成物は、以下のステップを備える方法により製造される。
a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素4個分離間した多官能性の層挿入剤を、アニオン性界面活性剤、中性界面活性剤、および/またはカチオン性界面活性剤、好ましくはカチオン性界面活性剤の存在下で少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と、酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと、
b)ハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィンモノマー単位を有するランダム共重合体などの、官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かして、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、
c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマー混合物とを、この発明のナノ複合材組成物を生成させるために必要な温度と時間において接触させるステップ。
【0107】
また別の実施形態では、この発明の組成物は、以下のステップを備える方法により製造される。
a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素4個分離間した多官能性の層挿入剤を、アニオン性界面活性剤、中性界面活性剤、および/またはカチオン性界面活性剤、好ましくはカチオン性界面活性剤の存在下で少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と、酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと、
b)ハロゲン化されたCからCのイソモノオレフィンモノマー単位を有するランダム共重合体などの、官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かして、官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと、
c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、この発明のナノ複合材組成物が生成するために必要な温度、時間と、7より大きいpHにおいて接触させるステップ。好ましくは、多官能性層挿入剤のアニオン性部位は官能化された中間体ポリマーと化学結合し、より好ましくは多官能性層挿入剤のカルボキシル基部と官能化された中間体ポリマーの間にエステル結合が生じ、エステル結合は、官能化された中間体ポリマーのハロゲン化サイトにおける反応で生じる。
【0108】
上記のいずれの方法も、第2ゴム成分、熱可塑性樹脂、フィラー、顔料、硬化剤などを添加するステップ;および/または、上記のいずれの方法も、組成物を硬化、混練、混合、ブレンド、粉砕などの組成物を加工するステップを含むことができる。
【0109】
この発明の組成物は、押出加工、圧縮成形、ブロー成形、射出成形により、繊維、フィルム、自動車部品、電気製品のハウジング、日用品、包装資材などの、いろいろな形状の物品に成形することができる。成形された物品は高い耐衝撃強度と低い気体透過性を有する。特に、この発明の組成物は空気遮断性に優れており、袋状容器(bladders)、自動車(トラック、商用車および/または乗用車)や航空機の、インナーライナー、および/またはインナーチューブに有用である。
【0110】
<ナノ複合材組成物>
この発明の組成物は、袋状容器やインナーライナー、エアバッグなどのエアスリーブ、ダイアフラム、その他高い空気または酸素遮断性が望ましい用途の空気遮断材料として有用である。ひとつの実施形態では、硬化された組成物の酸素透過性(ここでは空気透過性ともいう)は、40℃において100mm・cc/m2・日未満である。酸素透過性は、40℃において、好ましくは99未満、好ましくは98未満、好ましくは97未満、好ましくは96未満、好ましくは95未満、好ましくは94未満、好ましくは93未満、好ましくは92未満、好ましくは91未満、好ましくは90未満、好ましくは88未満、好ましくは88未満、好ましくは87未満、好ましくは86未満、好ましくは85mm・cc/m2・日未満である。
【0111】
この発明の、少なくとも一部層間挿入されたクレイとナノ組成物は、ある割合で剥離している改質されたクレイを含むことが、X線回折により確認される。サンプルのX線回折は、クレイ、および/またはナノ複合材組成物の面間隔d(d-spacing)により確認される。従って、クレイの各層の間の距離はいわゆる「d100面間隔d」である。剥離したクレイの場合、20Åより大きい面間隔(d100)を示す。好ましい実施形態では、この発明に係る一部層間挿入されたクレイは、20Åより大きい面間隔(d100)を示す。好ましくは、面間隔(d100)は30Åより大きく、好ましくは40Åより大きく、好ましくは50Åより大きく、好ましくは60Åより大きく、好ましくは68Åより大きく、好ましくは70Åより大きく、好ましくは80Åより大きく、より好ましくは90Åより大きい。
【0112】
好ましい実施形態では、硬化または非硬化のこの発明のナノ組成物は20Åより大きい面間隔(d100)を示す。好ましくは、面間隔(d100)は30Åより大きく、好ましくは40Åより大きく、好ましくは50Åより大きく、好ましくは60Åより大きく、好ましくは68Åより大きく、好ましくは70Åより大きく、好ましくは80Åより大きく、より好ましくは90Åより大きい。
【0113】
<テスト方法>
酸素透過率は、R. A. PasternakらがVol. 8 JOURNAL OF POLYMER SCIENCE: PART A-2 467 (1970)に開示した、酸素のフィルム透過の動的測定方法の原理に基づいて動作するMOCON OxTran Model 2/61を用いて測定した。測定値の単位はmm・cc/m・日である。一般に、測定方法は次の通りである。平らなフィルムまたはゴムのサンプルを、酸素を含まないキャリヤガスで内部の酸素をパージできる拡散セルの間に挟む。キャリヤガスをセンサまで導き、酸素濃度がゼロで安定するまで流通させる。次に、純酸素、または空気を、拡散セルのチャンバーの外側に導入する。フィルムを透過してチャンバーの内側に拡散した酸素を、酸素の拡散速度を測定するセンサに導く。
【0114】
空気透過性は、以下の方法で試験した。組成物のサンプルから得た、加硫され、薄い試験片を拡散セルの中に取り付け、オイルバス中、65℃で状態調整した。空気が所与の試験片を透過するのに要した時間を測定して、空気透過性を評価した。試験片は、直径12.7cm、厚み0.38mmの円盤状であった。空気透過性の測定誤差(2σ)は、±0.245((X108)単位であった。その他の試験方法は、表2に示した。
【0115】
<透過率の測定>
以下に説明する方法で、透過率の測定を行った。全ての試料は、圧縮成型において除冷することにより、欠陥の無いパッドを調製した。ゴムの試料については、圧縮と加硫を同時に行い調製した。Carverプレス機で圧縮成型したパッドの典型的厚みは約0.38mmであり、成型したパッドから直径2インチの円盤を透過試験用に打ち抜いた。これらの円盤は、測定の前に60℃の真空オーブン中に一晩おき、状態調整した。酸素透過率試験は、40℃でMocon OX-TRAN 2/61透過試験機を用い、上記のR. A. PasternakらがVol. 8 Journal of Polymer Science: Part A-2 467 (1970)に開示した原理に従い測定した。調製した円盤を型枠上に置き、真空グリースでシールした。円盤の片側に10ミリリットル/分の酸素の一定流を供給し、円盤の反対側に10ミリリットル/分の窒素の一定流を供給した。窒素側に設けた酸素センサを用いて、窒素側の酸素濃度の増加の経時変化をモニターした。酸素が円盤を透過するのに要した時間、または窒素側の酸素濃度が一定値に達するまでの時間を測定し、酸素透過率を求めた。
【0116】
<X線分析>
X線分析は、以下説明する方法で行った。X線のデータは、2つの異なるゴニオメータを用いて測定した。X線小角散乱(SAXS)ビームストップと点原を備えた、D/MAX高速二次元微量拡散検出器を一組のデータ測定に用い、平行ビームモードSAXSのUltimaIII線源を用いて別の一組のデータを測定した。図1から6の、強度対面間隔のプロットは、平行ビームモードSAXSによるものである。このデータでは、サンプルの偏りを避けるため、サンプルの種々の場所を異なる角度で切削し、平行ビームをサンプルの全表面に照射した。
【0117】
<組成物について>
物性評価用の処方は、以下の通りである。
原料 重量部
エラストマー/クレイマスターバッチ 108(ゴム 100部と、クレイ 8部)
カーボンブラックN660 60.0
ステアリン酸 1.0
酸化亜鉛Kadox 911 1.0
MBTS 1.0
【0118】
カーボンブラックN660はCabot Corp社 (Billerica, MA)から入手した。硬化剤であるステアリン酸は、C. K. Witco Corp社(Taft, LA) から入手した。活性化剤であるKadox 911は、C. P. Hall 社(Chicago, IL) から入手した。2−メルカプトベンゾチアゾールジサルファイドであるMBTSはR. T. Vanderbilt社(Norwalk, CT)、またはElastochem社(Chardon, OH)から入手した。
【実施例】
【0119】
以下の実施例では、少なくとも一部層間挿入されたクレイを調製した後、以下説明するように、種々の官能化された中間体ポリマーと組み合わせた。組成物を硬化させ、粉砕し、圧縮成形してサンプルを得た。そして、透過性と面間隔を評価した。
【表1】

【0120】
<少なくとも一部層間挿入されたクレイの調製>
室温(〜25℃)でガラス製反応器にメタノール(700ml)を入れた。この反応器に、多官能性の層挿入剤(改質剤I)と、0.5Nの塩酸溶液を、表1に従って加えた。この混合液を、3時間撹拌した。溶液を60℃に加熱し、表1に従って、界面活性剤(改質剤II)を添加した。15分間撹拌した後、表1に示す量のクロイサイトNa+を添加し、4時間反応させた。反応後の溶液をフラスコに回収した。改質されたクレイをロ別し、90℃、真空下で一晩乾燥した。この改質されたクレイは、実施例5〜8で使用した。
【表2】

【0121】
次に、以下のようにして、改質したクレイを官能化された中間体ポリマーと接触させ、この発明の組成物を得た。
【0122】
80gの官能化された中間体ポリマー(MDX 03−01)を、キシレン600mlが入れられ、90℃の反応器に加えた。ポリマーが全部溶解した後、200mlのブチルアルコールと、改質されたクレイを添加した。次に、NaOH(0.5N)を含むエタノールを0.3ml加え、この混合液を3時間撹拌した。生成物を注ぎ出し、溶剤を蒸発させた。さらに、生成物を90℃、真空下で一晩乾燥し、次いで150℃で15分間粉砕した。この発明の組成物(36g)を、150℃、で60rpmのブラベンダー(登録商標)ミキサーに投入した。1分間混練した後、カーボンブラック(N660、20g)を添加し、7分間混合した。得られたカーボンブラック/ゴムの混合物を40℃のブラベンダーに再度投入した。1分間混練した後、硬化剤成分(Kadox 911:0.33g、MBTS:0.33g、およびステアリン酸:0.33g)を、添加して3分間混合した。得られたサンプルを粉砕し、透過性測定用にプレス成形した。得られたデータを表2に示す。
【表3】

クレイは表3の実施例9〜16に従って改質されたものである。
【0123】
メタノール(600ml)をガラス製反応器に入れ、60℃に加熱した。この反応器に30gのクロイサイトNa+を加えた。同時に、層挿入改質剤Iを150mlのメタノールに溶解させ、塩酸と混合してpHを3未満にし、この混合液を1時間振蕩した。層挿入改質剤IIをこの溶液に添加し、この混合液をさらに半時間振蕩した。この改質剤溶液を、メタノール(600ml)とクロイサイトNa+の混合液が入れられた反応器に添加し、この混合液を60℃で4時間撹拌した。最後に、この溶液をろ過し、改質されたクレイをエタノールで2回、メタノールで2回洗浄した。80℃、真空下で一晩乾燥した後、交換されたクレイを微粉になるまで粉砕した。表3に示した、実施例9〜15および比較例3の改質されたクレイは、実施例17〜23、比較例4,実施例25〜31、および比較例5に使用した。
【表4】

【0124】
官能化された中間体ポリマーを、150℃のブラベンダーに投入し、1分間混合した。ここに改質されたクレイをゆっくりと添加し、160℃で10分間、ポリマーと混合した。次のステップで、36gのゴム/クレイ混合物を150℃のブラベンダーに添加し、1分間混合した。20gのカーボンブラック(N660)を添加し、さらに7分間混合した。カーボンブラックを含有するすべての材料を40℃のブラベンダーに再投入し、硬化剤成分(Kadox 911:0.33g、MBTS:0.33g、およびステアリン酸:0.33g)と混合した。得られたサンプルをプレス成形し、硬化させて透過性を測定した。得られたデータを表4に示す。
【表5】

【0125】
表5に示した実施例では、官能化された中間体ポリマーをトルエン(500ml)に予め溶解させた。この溶液を70℃の反応器に移した。この溶液に、表に示すクレイ4.4gを、30mlのエタノールとともに添加した。この混合液を60℃で3時間撹拌した。溶液を注ぎ出し、溶剤を蒸発させた。ゴムとクレイの混合物を、真空下、80℃でさらに乾燥させた。36gのゴムとクレイの混合物を150℃のブラベンダーに添加し、1分間混合し、次いでカーボンブラック(N660)20gを添加して、さらに7分間、60rpmで混合した。最後に、得られた混合物を40℃で硬化剤成分(Kadox 911:0.33g、MBTS:0.33g、およびステアリン酸:0.33g)と混合した。得られたサンプルをプレス成形し、硬化させて、表5に示すように、透過性を測定した。
【表6】

【0126】
この発明の実施形態に係る最終的ナノ複合材は、自動車のタイヤのインナーライナーやインナーチューブ、あるいは自動車用のホースの製造に用いられる、空気遮断材として有用である。特に、このナノ複合材は、トラックのタイヤ、バスのタイヤ、乗用車やオートバイのタイヤ、オフロード用のタイヤなどの物品のインナーライナーとして有用である。このインナーライナー組成物の改善された耐熱劣化性は、タイヤの再生(retreading)可能性を高めるため、特にトラックタイヤへの使用に適している。
【0127】
この発明の実施形態には以下が含まれる。
【0128】
1a.ナノ複合材組成物を製造する方法であって、以下のステップからなる方法:
カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと;
少なくとも一部層間挿入されたクレイと、1以上の官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップ。
【0129】
2a.官能化された中間体ポリマーが、C〜Cのオレフィンモノマー、アルキルスチレンモノマー、および官能化されたアルキルスチレンモノマーの、いずれかからなるランダムエラストマー共重合体である、1aの方法。
【0130】
3a.C〜Cのオレフィンモノマーが、エチレン、C〜Cイソオレフィン、C〜Cαオレフィン、およびこれらの混合物のいずれかである2aの方法。
【0131】
4a.C〜Cイソオレフィンがイソブチレンである2aの方法。
【0132】
5a.少なくとも80wt%のアルキルスチレンモノマーが、パラ−アルキルスチレンモノマーである2aの方法。
【0133】
6a.官能化されたアルキルスチレンモノマーが、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボキシエステル、アミド、イミド、ヒドロキシ、アルコキシド、 フェノール塩、チオール、チオエーテル、キサントゲン酸塩、; シアン化物; シアン酸塩; イソシアネート、アミノ、およびこれらの混合物からなる群から選択された官能基を備えるベンジル基を有するものである2aの方法。
【0134】
7a.官能化されたアルキルスチレンモノマーが、パラ−ブロモメチルスチレンである2aの方法。
【0135】
8a.アルキルスチレンモノマーが、パラ−メチルスチレンである2aの方法。
【0136】
9a.官能化された中間体ポリマーが3から15wt%のパラ−メチルスチレンを含有する1aから8aの方法。
【0137】
10a.官能化された中間体ポリマーが、最大15モル%の官能化されたアルキルスチレンモノマーを含有する1aから9aの方法。
【0138】
11a.官能化された中間体ポリマーが0.1から10モル%のパラ−ブロモメチルスチレンモノマーを含有する1aから10aの方法。
【0139】
12a.少なくとも95wt%の官能化された中間体ポリマーが、官能化された中間体ポリマーの平均パラ−アルキルスチレン含量に対し、10%以内のパラ−アルキルスチレン含量を有する1aから11aの方法。
【0140】
13a.官能化された中間体ポリマーが、臭化ブチルゴム、 塩化ブチルゴム、星状に分岐したポリイソブチレンゴム、星状に分岐した臭化ブチルゴム、イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレンゴム、イソブチレン/パラ−ブロモメチルスチレンゴム、 イソブチレン/クロロメチルスチレンゴム、ハロゲン化されたイソブチレンシクロペンタジエンゴム、イソブチレン/パラ−クロロメチルスチレンゴム、ポリクロロプレンゴム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化ゴム成分からなる1aから12aの方法。
【0141】
14a.クレイが、天然のフィロシリケート、合成のフィロシリケート、およびこれらの組み合わせのいずれかである1aから13aの方法。
【0142】
15a.クレイが、スメクチッククレイからなる1aから14aの方法。
【0143】
16a.クレイが、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミン酸塩酸化物、ハイドロタルサイト、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1aから15aの方法。
【0144】
17a.クレイが、多数の厚みが0.8〜1.2nmで珪酸塩の小片からなり、珪酸塩の小片の層間表面にある交換可能なカチオンが、Na+; Ca+2, K+ およびMg+2からなる群のいずれかである1aから16aの方法。
【0145】
18a.ナノ複合材組成物が、0.5〜10wt%のクレイを含有する1aから17aの方法。
【0146】
19a.多官能性の層挿入剤が式:(CM)n−R−(AM)mで表され、CMはカチオン性部位であり、Rは少なくとも1つの炭素原子からなり、AMはアニオン性部位であり、nとmはそれぞれ1以上である1aから18aの方法。
【0147】
20a.カチオン性部位が、アンモニアイオン、ホスホニウムイオン、あるいは、1以上のホスフィン、アルキル硫化物、アリール硫化物、チオールから誘導されるカチオンのいずれかである19aの方法。
【0148】
21a.多官能性の層挿入剤が式:RN−R−AM、あるいはRN−R−AMで表され;RはCからC50のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および置換されたハロカルビル;R、R、およびRが存在するとき、それぞれ独立して、水素、CからC30のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および置換されたハロカルビルである、19aの方法。
【0149】
22a.R、R、がメチル基またはエチル基で、Rが水素で、RがCからC12の脂肪族アルキルまたは置換された脂肪族アルキルである21aの方法。
【0150】
23a.R、R、がメチル基またはエチル基で、Rが水素で、RがCからC10の芳香族または置換された芳香族である21aの方法。
【0151】
24a.Rの炭素数が少なくとも4である、19aから23aのいずれか1の方法。
【0152】
25a.Rの炭素数が少なくとも11である、19aから24aのいずれか1の方法。
【0153】
26a.Rの炭素数が10から12である、19aから25aのいずれか1の方法。
【0154】
27a.RがC14からC20のアルキルまたはアルケンである、19aから26aのいずれか1の方法。
【0155】
28a.アニオン性部位が、カルボン酸基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、水酸基、アルコキシド基、フェノキシド基、チオール基、チオエステル基、キサントゲン酸塩基、シアン基、シアン酸塩基、フォスフェイト基、亜燐酸塩基、硫酸塩基、亜硫酸塩基、およびこれらの組合せ、のいずれかである、19aのいずれか1の方法。
【0156】
29a.アニオン性部位がカルボキシルアニオンである19aのいずれか1の方法。
【0157】
30a.多官能性の層挿入剤が、12−アミノドデカン酸、N−置換12−アミノドデカン酸、N−置換基がC1からC12のアルキル基であるN,N−二置換12−アミノドデカン酸、およびN,N,N−三置換12−アミノドデカン酸からなり、N−置換基が、CからC12のアルキル基、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸のいずれかである群から選択される、1aから29aのいずれか1の方法。
【0158】
31a.多官能性の層挿入剤が、ε−カプロラクタム、置換または非置換のアミノ安息香酸、CからC10のアルキル基で置換されたアミノ安息香酸のいずれかである、1aから30aのいずれか1の方法。
【0159】
32a.多官能性の層挿入剤が、ジメチルアミノ安息香酸である、1aから31aのいずれか1の方法。
【0160】
33a.さらに、クレイを、構造がSi(R)2Rで表され、Rは同一または異なっており、アルキル、アルコキシ、珪酸化物(oxysilane)から選択され、Rは有機化合物の基であるポリシラン;一級、二級、三級アミン;一級、二級、三級ホスフィン;アルキル硫化物;アリール硫化物;アルキルチオール;アリールチオール;およびこれらの多価類似物、からなる群から選択される追加の層挿入剤に接触させる、1aから32aのいずれか1の方法。
【0161】
34a.さらに、クレイを、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシル−メチルアミン、二水素化タローアルキル−メチルアミン、末端がアミンのポリテトラヒドロフラン、ヘキサメチレンチオ硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せ、からなる群から選択される追加の層挿入剤に接触させる、1aから33aのいずれか1の方法。
【0162】
35a.多官能性の層挿入剤がナノ複合材組成物中に0.1から20phr存在する、1aから34aのいずれか1の方法。
【0163】
36a.少なくとも一部層間挿入されたクレイが、0.4nmより大きい距離離間した多層の小片からなる、1aから35aのいずれか1の方法。
【0164】
37a.さらに、多官能性の層挿入剤とクレイとを層挿入改質剤の存在下に接触させるステップ、および/または少なくとも部分的に層間挿入されたクレイを、層挿入改質剤の存在下で、官能化された中間体ポリマーと接触させるステップを備え、層挿入改質剤は界面活性剤、ブロック共重合体、湿潤剤、乳化剤、あるいはこれらの組合せなどの、表面活性化剤であり、層挿入改質剤のナノ複合材組成物中の含有量は0.1wt%以上である、1aから36aのいずれか1の方法。
【0165】
38a.層挿入改質剤が非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせ、のいずれかである37aの方法。
【0166】
39a.層挿入改質剤がカチオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンC−C18アルキル三級アミン、置換されたC−C18アルキル三級アミン、置換されたC−C18アルケニル三級アミン、エトキシ化および/またはプロポキシ化された脂肪族アミン、C−C18アルキル置換脂肪族アミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンアルキルエーテルアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンココアミン(cocoamine)、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンタローアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン四級タローアミン、塩化または臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化または臭化N−ドデシルピリジン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、および塩化または臭化ポリオキシプロピレンエトキシトリメチルアンモニウム、からなる群から選択される、37aの方法。
【0167】
40a.層挿入改質剤が、ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸または、ナフタレンスルホン酸、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化アリールフェノール、スルホン琥珀酸エステル塩(sulphonosuccinic acid ester salt)、アルキルタウリン、アルコールのリン酸エステル、およびこれらの化合物の硫酸、スルホン酸、およびリン酸誘導体からなる群から選択される表面活性化剤である、37aの方法。
【0168】
41a.さらに1以上の添加剤を添加するステップを含み、添加剤が、第2ゴム成分、フィラー、硬化剤成分、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定化剤、光安定化剤、可塑剤、オイル、およびこれらの組み合わせ、のいずれかである、1aから40aのいずれか1の方法。
【0169】
42a.第2ゴム成分が、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリブタジエンゴム、ポリ(イソプレン−ブタジエン)ゴム、 スチレン−イソプレ−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、 エチレン−プロピレンゴム−ジエンゴム、ポリ硫化物ゴム、ニトリルゴム、ポリプロピレンオキサイドポリマー、星状に分岐したブチルゴム、およびこれらの混合物からなる、41aの方法。
【0170】
43a.第2ゴム成分がナノ複合材組成物中に、1から90phr存在する42aの方法。
【0171】
44a.さらに、炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、シリカ、珪酸塩、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなるフィラーを添加する、1aから43aのいずれか1の方法。
【0172】
45a.フィラーがカーボンブラック、または改質されたカーボンブラックである、1aから44aのいずれか1の方法。
【0173】
46a.フィラーが半補強性グレードのカーボンブラックであり、ナノ複合材組成物中に10から150phr存在する、45aの方法。
【0174】
47a.硬化剤成分が、式「Z−R−Z´」で表され、Rは置換または非置換の、CからC15のアルキル、CからC15のアルケニル、CからC12の環状芳香族のいずれかであり;ZとZ´は同じか異なり、チオ硫酸基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボン酸基、パーオキサイド基、アルケニル基、またはこれらの組み合わせ、からなる多官能性硬化剤である、41aの方法。
【0175】
48a.硬化剤成分が、ヘキサメチレンビス(チオ硫酸ナトリウム)、ヘキサメチレンビス(桂皮アルデヒド)、またはこれらの組み合わせ、からなる41aの方法。
【0176】
49a.多官能性硬化剤が、ナノ複合材組成物中に0.1から8phr存在する47aの方法。
【0177】
50a.硬化剤成分が、ジカテコールボレイトのジ−オルソ−トリルグアニジン塩、m−フェニレンビスマレイミド、2,4,6−トリメルカプト−5トリアジン、ジエチルジチオカルバメート亜鉛、ジペンタ−メチレンチウラムヘキサ硫化物、アルキル化フェノール硫化物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、ジフェニルフェニレンジアミン、サリシクリック酸、木のロジン(、テトラメチルチウラム二硫化物と硫黄、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン、テトラエチルチウラム二硫化物、4,4´−ジチオジモルフォリン、テトラブチルチウラム二硫化物(、2,2´−ベンゾチオアジル、N−三級ブチル−2−ベンゾチアゾールサルファミド(TBBS)、N−オキシジエチレンチオカーバミル−N−オキシジエチレンサルファミド、2−エチルヘキサネート亜鉛(ZEH)、N,N´ジエチルチオ尿素、およびこれらの組み合わせからなる41aの方法。
【0178】
51a.硬化剤成分が、ナノ複合材組成物中に0.2から15phr存在する47aの方法。
【0179】
52a.多官能性の層挿入剤とクレイを、温度20℃から120℃で、1分から24時間接触させる1aから51aのいずれか1の方法。
【0180】
53a.層間挿入されたクレイと官能性中間体ポリマーを、温度40℃から140℃で、1分から24時間接触させる1aから52aのいずれか1の方法。
【0181】
54a.多官能性の層挿入剤とクレイを、多官能性の層挿入剤とクレイの混合物のpHが、7より小さくなるような酸の存在下で接触させる、1aから53aのいずれか1の方法。
【0182】
55a.酸が、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素、リン酸、亜リン酸、硫酸、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される54aの方法。
【0183】
56a.層間挿入されたクレイと官能性と中間体ポリマーを、層間挿入されたクレイと官能性と中間体ポリマーの混合物のpHが、7より大きくなるような塩基の存在下で接触させる、1aから55aのいずれか1の方法。
【0184】
57a.塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである56aの方法。
【0185】
58a.ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入され、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位とクレイとの間に化学結合および/または物理的相互作用を有するクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位と官能化された中間体ポリマーとの間に化学結合および/または物理的相互作用を有するナノ複合材組成物が生成するために必要な温度、時間と塩基性pHにおいて接触させるステップとからなる方法。
【0186】
59a.多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、58aの方法。
【0187】
60a.多官能性の層挿入剤とクレイとを、5より低いpHにおいて接触させる58a、または59aの方法。
【0188】
61a.少なくとも部分層間挿入されたクレイと官能化された中間体ポリマーとを、8より大きいpHにおいて接触させる、58aから60aのいずれか1の方法。
【0189】
62a.ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる方法。
【0190】
63a.多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、62aの方法。
【0191】
64a.ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる方法。
【0192】
65a.多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、64aの方法。
【0193】
66a.ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために、必要な温度、時間と酸性pHにおいて、カチオン性界面活性剤の存在下で、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間接触させるステップとからなる方法。
【0194】
67a.多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、66aの方法。
【0195】
68a.ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために、必要な温度、時間と酸性pHにおいて、カチオン性界面活性剤の存在下で、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーとを、7より大きいpHにおいて、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間、接触させるステップとからなる方法。
【0196】
69a.多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、68aの方法。
【0197】
70a.第2ゴム成分、熱可塑性樹脂、フィラー、顔料、硬化剤、およびこれらの組み合わせ、を添加するステップをさらに含む、68aまたは69aの方法。
【0198】
71a.ナノ複合材組成物を製造するために、押出加工、圧縮成形、ブロー成形、乾燥、溶媒除去、粉砕、粉末化、混合のステップをさらに含む、68aから70aのいずれか1の方法。
【0199】
72a.1aから71aのいずれか1の方法に係るナノ複合材組成物からなる物品。
【0200】
73a.射出成形され、繊維、フィルム、自動車部品、電気製品のハウジング、日用品、包装資材、およびこれらの組み合わせである、72aの物品。
【0201】
74a.1aから71aのいずれか1の方法に係るナノ複合材組成物からなる、タイヤのインターライナー、またはタイヤのインナーチューブ。
【0202】
75a.少なくとも部分層間挿入されたクレイのX線回折で測定した面間隔(d100)が20Åより大きい、1aから71aのいずれか1の方法に係るナノ複合材組成物。
【0203】
76a.少なくとも部分層間挿入されたクレイのX線回折で測定した面間隔(d100)が50Åより大きい、1aから71aのいずれか1の方法に係るナノ複合材組成物。
【0204】
77a.少なくとも部分層間挿入されたクレイのX線回折で測定した面間隔(d100)が60Åより大きい、1aから71aのいずれか1の方法に係るナノ複合材組成物。
【0205】
78a.ナノ複合材組成物を硬化して、硬化されたナノ複合材組成物を形成するステップをさらに備える、1aから71aのいずれか1の方法。
【0206】
79a.硬化されたナノ複合材組成物のX線回折で測定した面間隔(d100)が20Åより大きい、78aの方法に係るナノ複合材組成物。
【0207】
80a.硬化されたナノ複合材組成物の40℃における酸素透過率が100mm・cc/m ・日未満である、78aまたは79aの方法に係るナノ複合材組成物。
【0208】
81a.硬化されたナノ複合材組成物の40℃における酸素透過率が90mm・cc/m ・日未満である、78aまたは80aの方法に係るナノ複合材組成物。
【0209】
82a.本願の実施例に開示されたナノ複合材組成物の製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ複合材組成物を製造する方法であって、以下のステップからなる方法:
(a)カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと;
(b)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、1以上の官能基を有する官能化された中間体ポリマーとを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させ、官能化された中間体ポリマーが、CからCのオレフィンモノマー、アルキルスチレンモノマー、および官能化されたアルキルスチレンモノマーの、いずれかからなるランダムエラストマー共重合体であるステップ。
【請求項2】
からCのオレフィンモノマーが、エチレン、CからCのイソモノオレフィン、CからCα−オレフィン、およびこれらの混合物のいずれかである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
からCのイソモノオレフィンがイソブチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも80wt%のアルキルスチレンモノマーが、パラ−アルキルスチレンモノマーである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
官能化されたアルキルスチレンモノマーが、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボキシエステル、カルボキシアミド、カルボキシイミド、カルボキシヒドロキシ、アルコキシド、 フェノール塩、チオレート、チオエーテル、キサントゲン酸塩、; シアン化物; シアン酸塩; イソシアネート、アミノ、およびこれらの混合物からなる群から選択された官能基を備えたベンジル基を有するものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
官能化されたアルキルスチレンモノマーが、パラ−ブロモメチルスチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アルキルスチレンモノマーが、パラ−メチルスチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
官能化された中間体ポリマーが3から15wt%のパラ−メチルスチレンを含有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
官能化された中間体ポリマーが、最大15モル%の官能化されたアルキルスチレンモノマーを含有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
官能化された中間体ポリマーが0.1から10モル%のパラ−ブロモメチルスチレンモノマーを含有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも95wt%の官能化された中間体ポリマーが、官能化された中間体ポリマーの平均パラ−アルキルスチレン含量に対し、10%以内のパラ−アルキルスチレン含量を有する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
官能化された中間体ポリマーが、臭化ブチルゴム、塩化ブチルゴム、星状に分岐したポリイソブチレンゴム、星状に分岐した臭化ブチルゴム、イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレンゴム、イソブチレン/パラ−ブロモメチルスチレンゴム、イソブチレン/クロロメチルスチレンゴム、ハロゲン化されたイソブチレンシクロペンタジエンゴム、イソブチレン/パラ−クロロメチルスチレンゴム、ポリクロロプレンゴム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化ゴム成分からなる、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
クレイが、天然のフィロシリケート、合成のフィロシリケート、およびこれらの組み合わせのいずれかである請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
クレイが、スメクチッククレイからなる請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
クレイが、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミン酸塩酸化物、ハイドロタルサイト、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
クレイが、多数の厚みが0.8から1.2nmで珪酸塩の小片からなり、珪酸塩の小片の層間表面にある交換可能なカチオンが、Na; Ca+2, KおよびMg+2からなる群のいずれかである、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ナノ複合材組成物が、0.5〜10wt%のクレイを含有する、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
多官能性の層挿入剤が式:(CM)n−R−(AM)mで表され、CMはカチオン性部位であり、Rは少なくとも1つの炭素原子からなり、AMはアニオン性部位であり、nとmはそれぞれ1以上である、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
カチオン性部位が、アンモニアイオン、およびホスホニウムイオン、並びに1以上のホスフィン、アルキル硫化物、アリール硫化物、およびチオールから誘導されるカチオンのいずれかである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
多官能性の層挿入剤が式:RN−R−AM、あるいはRN−R−AMで表され;RはCからC50のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および置換されたハロカルビル;R、R、およびRが存在するとき、それぞれ独立して、水素、CからC30のヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ハロカルビル、および置換されたハロカルビルである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
、R、がメチルまたはエチルで、Rが水素で、RがCからC12の脂肪族アルキル、または置換された脂肪族アルキルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
、R、がメチルまたはエチルで、Rが水素で、RがCからC10の芳香族または置換された芳香族である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
の炭素数が少なくとも4である、請求項18から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
の炭素数が少なくとも11である、請求項18から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
の炭素数が10から12である、請求項18から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
がC14からC20のアルキルまたはアルケンである、請求項18から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
アニオン性部位が、カルボン酸基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、水酸基、アルコキシド基、フェノキシド基、チオレート、チオエステル基、キサントゲン酸塩基、シアン基、シアン酸塩基、フォスフェイト基、亜燐酸塩基、硫酸塩基、亜硫酸塩基、およびこれらの組合せ、のいずれかである、請求項18から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
アニオン性部位がカルボキシルアニオンである、請求項18から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
多官能性の層挿入剤が、12−アミノドデカン酸、N−置換12−アミノドデカン酸、N−置換基がCからC12のアルキル基であるN,N−二置換12−アミノドデカン酸、およびN,N,N−三置換12−アミノドデカン酸からなり、N−置換基が、CからC12のアルキル基、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸のいずれかである群から選択される、請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
多官能性の層挿入剤が、ε−カプロラクタム、置換または非置換のアミノ安息香酸、CからC10のアルキル基で置換されたアミノ安息香酸のいずれかである、請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
多官能性の層挿入剤が、ジメチルアミノ安息香酸である、請求項1から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
さらに、クレイを、構造がSi(R)2Rで表され、Rは同一または異なっており、アルキル、アルコキシ、珪酸化物(oxysilane)から選択され、Rは有機化合物の基であるポリシラン;一級、二級、三級アミン;一級、二級、三級ホスフィン;アルキル硫化物;アリール硫化物;アルキルチオール;アリールチオール;およびこれらの多価類似物、からなる群から選択される追加の層挿入剤に接触させる、請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
さらに、クレイを、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシル−メチルアミン、二水素化タローアルキル−メチルアミン、末端がアミンのポリテトラヒドロフラン、ヘキサメチレンチオ硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せ、からなる群から選択される追加の層挿入剤に接触させる、請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
多官能性の層挿入剤がナノ複合材組成物中に0.1から20phr存在する、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一部層間挿入されたクレイが、0.4nmより大きい距離離間した多層の小片からなる、請求項1から請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
さらに、多官能性の層挿入剤とクレイとを層挿入改質剤の存在下に接触させるステップ、および/または少なくとも部分的に層間挿入されたクレイを、層挿入改質剤の存在下で、官能化された中間体ポリマーと接触させるステップを備え、層挿入改質剤は界面活性剤、ブロック共重合体、湿潤剤、乳化剤、あるいはこれらの組合せのいずれかであり、層挿入改質剤のナノ複合材組成物中の含有量は0.1wt%以上である、請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
層挿入改質剤が非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせ、のいずれかである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
層挿入改質剤がカチオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンCからC18アルキル三級アミン、置換されたCからC18アルキル三級アミン、置換されたCからC18アルケニル三級アミン、エトキシ化および/またはプロポキシ化された脂肪族アミン、C−C18アルキル置換脂肪族アミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンアルキルエーテルアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンココアミン(cocoamine)、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンタローアミン、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン四級タローアミン、塩化または臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化または臭化N−ドデシルピリジン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、および塩化または臭化ポリオキシプロピレンエトキシトリメチルアンモニウム、からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
層挿入改質剤が、ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸または、ナフタレンスルホン酸、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化アリールフェノール、スルホン琥珀酸エステル塩(sulphonosuccinic acid ester salt)、アルキルタウリン、アルコールのリン酸エステル、およびこれらの化合物の硫酸、スルホン酸、およびリン酸誘導体からなる群から選択される表面活性化剤である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
さらに1以上の添加剤を添加するステップを含み、添加剤が、第2ゴム成分、フィラー、硬化剤成分、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定化剤、光安定化剤、可塑剤、オイル、およびこれらの組み合わせ、のいずれかである、請求項1から請求項39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
第2ゴム成分が、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリブタジエンゴム、ポリ(イソプレン−ブタジエン)ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、 エチレン−プロピレンゴム−ジエンゴム、ポリ硫化物ゴム、ニトリルゴム、ポリプロピレンオキサイドポリマー、星状に分岐したブチルゴム、およびこれらの混合物からなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第2ゴム成分がナノ複合材組成物中に、1から90phr存在する、請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
さらに、炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、シリカ、珪酸塩、タルク、酸化チタン、カーボンブラック、およびこれらの組み合わせからなるフィラーを添加する、請求項1から請求項42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
フィラーがカーボンブラック、または改質されたカーボンブラックである、請求項1から請求項43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
フィラーが半補強性グレードのカーボンブラックであり、ナノ複合材組成物中に10から150phr存在する、請求項1から請求項44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
硬化剤成分が、式「Z−R−Z´」で表され、Rは置換または非置換の、CからC15のアルキル、CからC15のアルケニル、CからC12の環状芳香族のいずれかであり;ZとZ´は同じか異なり、チオ硫酸基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボン酸基、パーオキサイド基、アルケニル基、またはこれらの組み合わせ、からなる多官能性硬化剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
硬化剤成分が、ヘキサメチレンビス(チオ硫酸ナトリウム)、ヘキサメチレンビス(桂皮アルデヒド)、またはこれらの組み合わせ、からなる請求項40に記載の方法。
【請求項48】
多官能性硬化剤が、ナノ複合材組成物中に0.1から8phr存在する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
硬化剤成分が、ジカテコールボレイトのジ−オルソ−トリルグアニジン塩、m−フェニレンビスマレイミド、2,4,6−トリメルカプト−5トリアジン、ジエチルジチオカルバメート亜鉛、ジペンタ−メチレンチウラムヘキサ硫化物、アルキル化フェノール硫化物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、ジフェニルフェニレンジアミン、サリシクリック酸、木のロジン(、テトラメチルチウラム二硫化物と硫黄、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン、テトラエチルチウラム二硫化物、4,4´−ジチオジモルフォリン、テトラブチルチウラム二硫化物(、2,2´−ベンゾチオアジル、N−三級ブチル−2−ベンゾチアゾールサルファミド(TBBS)、N−オキシジエチレンチオカーバミル−N−オキシジエチレンサルファミド、2−エチルヘキサネート亜鉛(ZEH)、N,N´ジエチルチオ尿素、およびこれらの組み合わせからなる、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
硬化剤成分が、ナノ複合材組成物中に0.2から15phr存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
多官能性の層挿入剤とクレイを、温度20℃から120℃で、1分から24時間接触させる、請求項1から請求項50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
層間挿入されたクレイと官能性中間体ポリマーを、温度40℃から140℃で、1分から24時間接触させる、請求項1から請求項51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
多官能性の層挿入剤とクレイを、多官能性の層挿入剤とクレイの混合物のpHが、7より小さくなるような酸の存在下で接触させる、請求項1から請求項52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
酸が、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素、リン酸、亜リン酸、硫酸、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
層間挿入されたクレイと官能性と中間体ポリマーを、層間挿入されたクレイと官能性と中間体ポリマーの混合物のpHが、7より大きくなるような塩基の存在下で接触させる、請求項1から請求項54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(a)において、多官能性の層挿入剤のカチオン性部位とクレイとの間に化学結合および/または物理的相互作用を生じさせるために必要な温度、時間と酸性pH下で、多官能性の層挿入剤とクレイとを接触させ、ステップ(b)において、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位と官能化された中間体ポリマーとの間に化学結合および/または物理的相互作用を生じさせるために必要な温度、時間と塩基性pH下で、多官能性の層挿入剤と官能化された中間体ポリマーとを接触させる方法。
【請求項58】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
多官能性の層挿入剤とクレイとを、5より低いpHにおいて接触させる請求項57または請求項58に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも部分層間挿入されたクレイと官能化された中間体ポリマーとを、8より大きいpHにおいて接触させる、請求項57から請求項59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度と時間において、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;c)少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる方法。
【請求項62】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために必要な温度、時間と酸性pHにおいて、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間において接触させるステップとからなる方法。
【請求項64】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために、必要な温度、時間と酸性pHにおいて、カチオン性界面活性剤の存在下で、クレイと接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度時間接触させるステップとからなる方法。
【請求項66】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ナノ複合材組成物の製造方法であって、カチオン性部位とアニオン性部位との間が少なくとも炭素1個分離間した多官能性の層挿入剤を、少なくとも一部層間挿入されたクレイを得るために、必要な温度、時間と酸性pHにおいて、カチオン性界面活性剤の存在下で、多官能性の層挿入剤とクレイとを接触させるステップと;官能化された中間体ポリマーの少なくとも一部を溶剤に溶かし官能化された中間体ポリマーの混合物を生成させるステップと;少なくとも一部層間挿入されたクレイと、官能化された中間体ポリマーの混合物とを、7より大きいpHにおいて、ナノ複合材組成物が生成するために必要な温度と時間、接触させるステップとからなる方法。
【請求項68】
多官能性の層挿入剤のカチオン性部位がクレイに結合し、多官能性の層挿入剤のアニオン性部位が、官能化された中間体ポリマーとエステル結合する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
第2ゴム成分、熱可塑性樹脂、フィラー、顔料、硬化剤、およびこれらの組み合わせを添加するステップをさらに含む、請求項67または請求項68に記載の方法。
【請求項70】
ナノ複合材組成物を製造するために、押出加工、圧縮成形、ブロー成形、乾燥、溶媒除去、粉砕、粉末化、混合のステップをさらに含む、請求項67から請求項69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
請求項1から請求項70のいずれか1項に記載のナノ複合材組成物からなる物品。
【請求項72】
射出成形され、繊維、フィルム、自動車部品、電気製品のハウジング、日用品、包装資材、およびこれらの組み合わせである、請求項71に記載の物品。
【請求項73】
請求項1から請求項70のいずれか1項に記載のナノ複合材組成物からなる、タイヤのインターライナー、またはタイヤのインナーチューブ。
【請求項74】
少なくとも部分層間挿入されたクレイを含むナノ複合材組成物のX線回折で測定した面間隔(d100)が20Åより大きい、請求項1から請求項70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
少なくとも部分層間挿入されたクレイを含むナノ複合材組成物のX線回折で測定した面間隔(d100)が50Åより大きい、請求項1から請求項70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
少なくとも部分層間挿入されたクレイを含むナノ複合材組成物のX線回折で測定した面間隔(d100)が60Åより大きい、請求項1から請求項70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
ナノ複合材組成物を硬化して、硬化されたナノ複合材組成物を形成するステップをさらに備える、請求項1から請求項70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
硬化されたナノ複合材組成物のX線回折で測定した面間隔(d100)が20Åより大きい、請求項77の方法。
【請求項79】
硬化されたナノ複合材組成物の40℃における酸素透過率が100mm・cc/m ・日未満である、請求項77または請求項78の方法。
【請求項80】
硬化されたナノ複合材組成物の40℃における酸素透過率が90mm・cc/m ・日未満である、請求項77から請求項79のいずれか1項の方法。
【請求項81】
本願の実施例に開示されたナノ複合材組成物の製造方法。

【公表番号】特表2009−514771(P2009−514771A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540020(P2008−540020)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035266
【国際公開番号】WO2007/055793
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】