説明

ナビゲーション装置及び地図表示方法

【課題】カーブが連続する区間について道路形状等の地図情報を把握し易い形態で地図表示を行う「ナビゲーション装置及び地図表示方法」を提供する。
【解決手段】カーブが連続する区間である多旋回区間に自動車が進入した後の地点(t3、t4、t5)の案内画像(b3、b4、b5)では、多旋回区間全体に対して設定した区間標準方向を上方向として、多旋回区間内の道路の表示上の左右方向の全てが表示されるように設定した縮尺で生成した地図511を表示する。そして、現在位置の区間標準方向と平行な方向の移動については、地図511を表示する地理的範囲である地図表示範囲を区間標準方向に移動することにより、現在位置の区間標準方向と垂直な方向の移動については現在位置マーク512を表示上の左右に動かすことにより、現在位置の移動を表現する。また、現在位置マーク512の向きの変化により現在進行方向の変化を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの走行を案内するナビゲーション装置において、地図情報を提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるナビゲーション装置において、地図情報を提示する技術としては、現在位置を基準に定まる現在位置周辺の範囲を表示範囲として、表示範囲内の地図を、現在位置を示すマークと共に表示する技術が広く用いられている。そして、このような地図表示おける地図の表示方向を制御する技術としては、常に真北を表示上の上方向として地図を表示するノースアップと呼ばれる技術と、現在の進行方向を上方向として地図を表示するヘッドアップと呼ばれる技術が広く用いられている。
また、このようなヘッドアップによる地図表示を行った場合にワインディングロード等において地図の表示方向がめまぐるしく変化してしまうことを抑制する技術として、ユーザが所定の操作を行った時点における進行方向を、その後の表示の上方向として設定して地図を表示する技術(たとえば、特許文献1)や、地図の表示範囲内の走行中道路上に設定した1または複数の参照点の現在位置から見た方向の平均の方向を地図表示の上方向とする技術(たとえば、特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開平5−216405号公報
【特許文献2】特開平10−239070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1や特許文献2記載の、地図の表示方向がめまぐるしく変化してしまうことを抑制する技術によれば、現在位置を基準として地図の表示範囲を定めているために、ワインディングロードなどを走行した場合に以下のような問題が生じる。
すなわち、いま、峠などの左カーブ、右カーブと続くワインディングロードを考えた場合、前の左カーブと後の右カーブとの位置が、左カーブ付近走行時点における地図表示の左右方向に関して大きく離れた位置となる場合がある。そして、このような場合、現在位置を基準に現在位置周辺の範囲として地図の表示範囲を定めたのでは、左カーブ付近を走行している時点で、次に走行すべき右カーブが地図の表示範囲から外れてしまうことになり、ドライバに対してこの次の右カーブを予告することができなくなってしまう。
【0004】
また、上記した特許文献2の、地図の表示範囲内の走行中道路上に設定した1または複数の参照点の現在位置から見た方向の平均の方向を地図表示の上方向とする技術によれば、表示範囲内の走行中道路のみを考慮して地図表示の上方向を定めているために、ワインディングロードが続く区間が地図表示の範囲を越えて続いているような場合に、それまでとは旋回方向の傾向の異なるカーブが表示範囲内に含まれるようになった時点などに、地図の表示方向が大きく変化してしまうことを防ぐことができないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、ワインディングロード等のカーブが連続する区間について、よりユーザが道路形状等の地図情報を把握し易い形態で地図表示を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、地図上に現在位置を表した案内画像を表示するナビゲーション装置に、現在位置を算出する現在位置算出手段と、カーブが連続する道路区間であるカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを検出するカーブ連続区間内走行検出手段と、少なくともカーブ連続区間内走行検出手段が前記カーブ連続区間内に前記現在位置があると検出している期間中、当該カーブ連続区間に対して設定した方向である基準方向を上方向とし、当該基準方向と垂直な方向を左右方向とする、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向の最大幅に従って定まる当該最大幅以上の左右方向の幅を持つ地図表示範囲であって、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向の存在範囲を当該地図表示範囲の左右方向の範囲の内に含み、かつ、当該地図表示範囲内に前記現在位置を含む前記地図表示範囲を設定する地図表示範囲設定手段と、設定された地図表示範囲内の地図を表す所定サイズの地図画像を、当該地図表示範囲の上下方向を当該地図画像の上方向とし当該地図表示範囲の左右方向を当該地図画像の左右方向として生成する地図画像生成手段と、生成された地図画像上に、現在位置を表すマークを描画した案内画像を表示する案内画像表示手段とを備えたものである。
【0007】
このようなナビゲーション装置によれば、少なくとも現在位置がカーブ連続区間内にある期間は、当該カーブ連続区間に対して設定した基準方向を上方向として地図表示範囲を設定して案内画像の表示を行うので、ワインディングロード等において案内画像に含まれる地図画像の表示方向がめまぐるしく変化してしまうことを排除することができる。また、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向についての存在範囲を、前記地図表示範囲の左右方向の範囲の内に含むように地図表示範囲を設定するので、ワインディングロードの左カーブ付近を走行している時点で、次に走行すべき右カーブが地図の表示範囲から外れてしまうようなことを極力排除して、ドライバに対して次のカーブをより確実に予告することができるようになる。
【0008】
ここで、以上のようなナビゲーション装置は、前記地図表示範囲設定手段において、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向についての存在範囲の中央が、前記地図表示範囲の左右方向の範囲の中央となるように前記地図表示範囲を設定するように構成してもよい。このようにすることにより、地図画像を表示する範囲である地図表示範囲が表示上の左右方向に移動しないようにすることができるので、ドライバの前方道路の道路形状などの把握がより容易になる。また、これらのナビゲーション装置は、前記地図表示範囲設定手段において、前記現在位置の、前記地図表示範囲内における上下方向の位置が、固定的に所定の位置となるように前記地図表示範囲を設定するようにすることも好ましい。このようにすることにより、現在位置の表示を地図画像上で上下に移動せずに左右にのみ移動するようにすることができるので、ドライバにとって、より現在位置を認識し易い案内画像の表示を行うことができるようになる。
【0009】
なお、以上のナビゲーション装置におけるカーブ連続区間に現在位置があるかどうかの検出は、あらかじめ、ナビゲーション装置に、前記カーブ連続区間となる道路区間を示すカーブ連続区間情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え、前記カーブ連続区間内走行検出手段において、地図データに記録されたカーブ連続区間情報に従って、前記カーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを判定することにより行うようにしてもよい。または、ナビゲーション装置に、道路形状を表す地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え、前記カーブ連続区間内走行検出手段において、地図データに記録された道路形状に基づいて前記カーブ連続区間を検出し、検出したカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを判定することにより行うようにしてもよい。
【0010】
また、以上のナビゲーション装置において、前記カーブ連続区間に対して設定した基準方向は、当該カーブ連続区間を構成する道路の平均的な進行方向とすることも好ましい。
なお、以上のナビゲーション装置において、前記地図画像生成手段は、地図表示範囲内の地図を表す地図画像を、地図表示範囲の上下方向を当該地図画像の左右方向として当該地図表示範囲の左右方向を当該地図画像の上下方向として生成するようにしてもよい。すなわち、以上のナビゲーション装置における案内画像の表示の上下と左右は、これを入れ替えるようにしてもよい。
【0011】
また、併せて、本発明は、ナビゲーション装置において、地図を表示する地図表示方法として、現在位置を算出するステップと、カーブが連続する道路区間であるカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを検出するステップと、少なくとも前記カーブ連続区間内に前記現在位置がある期間中、当該カーブ連続区間の全体に対して設定した唯一の方向である基準方向を表示の上方向として、前記現在位置を含む範囲の地図を表す、所定サイズの地図画像を生成するステップと、生成された地図画像上に、現在位置を表すマークを描画した案内画像を表示するステップとを有する方法も提供する。
【0012】
このような地図表示方法によれば、少なくとも現在位置がカーブ連続区間内にある期間は、当該カーブ連続区間の全体に対して唯一設定した基準方向を上方向として地図表示範囲を設定して案内画像の表示を行うので、ワインディングロードにおいて地図画像の表示方向がめまぐるしく変化したり、突然大きく変化してしまうことを排除することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、ワインディングロード等のカーブが連続する区間について、よりユーザが道路形状等の地図情報を把握し易い形態で地図表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示す。
図示するように、ナビゲーションシステムは、ナビゲーション装置1と、操作部2と、表示装置3と、車両状態センサ4と、GPS受信機5とを備えて構成される。ここで、車両状態センサ4は、角加速度センサや地磁気センサなどである方位センサや車速パルスセンサなどである車速センサなどの車両状態を検出するセンサ群である。
【0015】
そして、ナビゲーション装置1は、地図を表す地図データを記憶したDVDドライブやHDDなどの記憶装置である地図データ記憶部11、現在状態算出部12、ユーザとの間の入出力インタフェースを制御するGUI制御部13、ルート探索部14、メモリ15、制御部16、案内画像生成部17を有する。
【0016】
但し、以上のナビゲーション装置1は、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリや、その他のグラフィックプロセッサやジオメトリックプロセッサ等の周辺デバイスを有する一般的な構成を備えたCPU回路であって良く、この場合、以上に示したナビゲーション装置1の各部は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより具現化するプロセスとして実現されるものであって良い。また、この場合、このようなプログラムは、記録媒体や適当な通信路を介して、ナビゲーション装置1に提供されるものであって良い。
【0017】
次に、図2に地図データ記憶部11に記憶される地図データの内容を示す。
ここで、地図データは、所定の地理的区域毎に図葉と呼ばれる単位で管理されており、各図葉の地図は、1つまたは複数のユニットよりなる。そして、各ユニットは、自身が属する図葉の地理的区域またはこれを分割した区域の地図を表現したものである。
【0018】
そして、図2に示すように、地図データは、地図データの製作日時などを記述した管理データ、地図を表す基本地図データ、路線データを含んで構成される。
そして、基本地図データは、前述したユニット毎のユニットデータと、各ユニットデータと図葉や区域との関係を記述したユニット管理データを含む。そして、各ユニットデータはユニット内の道路網を表す道路ユニットと、ユニット内の表示地図を規定する描画ユニットとを有する。
【0019】
そして、道路ユニットは道路網を表すデータであり、ノードリストと、リンクテーブルと、接続データと、多旋回区間情報とを有する。
ここで、道路ユニットでは、道路を直線であるリンクの集合として表現しており、この各リンクの端点がノードである。このようなノードは、交差点等の道路の接続点に必ず設けられる他、隣接するユニットの境界に必ず設けられる。また、各リンクは方向を持ち、リンクを介して隣接する二つのノードの間には、その道路が双方向である場合には基本的には相互に逆方向の二つのリンクが設けられる。
【0020】
さて、ノードリストは、各ノード毎のノードレコードを含み、各ノードレコードは、ノードの識別子であるノードオブジェクト番号、ノードの座標、当該ノードが交差点や高速道路の出入口に対応するノードであるか等を表すノード属性、ノードに接続するリンクのリンク番号のリストである接続リンク番号リスト、ノードにリンクを介して隣接する他のノードのノードオブジェクト番号のリストである隣接ノードオブジェクト番号リストが記述される。
【0021】
次に、リンクテーブルは、各リンク毎のリンクレコードを含み、各リンクレコードには、リンクの識別子であるリンクオブジェクト番号、リンクの始点となるノードのノードオブジェクト番号を示す始点ノードオブジェクト番号、リンクの終点となるノードのノードオブジェクト番号を示す終点ノードオブジェクト番号、リンクに対応する道路の区間についての各種情報を表すリンク属性、リンクの距離、リンクの方位、リンクに与えた経路探索用のコストであるリンクコスト、リンクの属する路線の路線番号等が記述される。ここで、リンク属性としては、リンクが属する道路の有料道路や国道や県道などの種別を表す道路種別や、リンクに対応する道路区間の道路幅や車線数や、リンクが属する多旋回区間についての多旋回区間レコードの区間識別子等が記述される。なお、多旋回区間、多旋回区間レコードについては後述する。
次に、描画ユニットは、地形図形や道路図形や建物図形などの地図の地理的な表示要素となる各図形を規定するデータや、建物名称や道路名称や交差点名称などの地図上に表示する各文字列を規定するデータや、駐車場やガソリンスタンド等の施設の存在を表すために地図上に表示するマークを規定するデータなどを含む。
【0022】
次に、多旋回区間情報は、多旋回区間毎に設けた多旋回区間レコードを有する。
多旋回区間とは、カーブが連続している道路区間であり、たとえば、図3aに示すような左右にワインディング(蛇行)している(複数のカーブが連続して表れる)道路区間や、高速道路のジャンクションやインターチェンジで良く見られる図3bに示すようなループ状の(一つのカーブが長く連続している)道路区間を指す。なお、図3a、図3bにおいて、黒丸はノードでありノードを端点とする直線がリンクである。そして、図中において、太線で表したリンクが多旋回区間を構成するリンクである。
【0023】
さて、このような多旋回区間毎に設けた多旋回区間レコードには、多旋回区間の識別子である区間番号、区間標準進行方向、区間幅、区間中央線、多旋回区間を構成するリンクのリンク番号のリストが記述される。
ここで、区間標準進行方向とは、たとえば、図3aの301や図3bの311として示したように、多旋回区間を構成するリンクの方向の平均として求めた方向である。ただし、区間標準進行方向としては、多旋回区間を構成するリンクの方向のリンクの距離を重みとした加重平均として求めた方向や、図3aの302や図3bの312として示したように、多旋回区間の入口となるノードから多旋回区間の出口となるノードに向かう方向などとしてもよい。また、多旋回区間の出口で高速道路本線に連結しているような場合には、区間標準進行方向を図3bの313として示したように、多旋回区間の出口の先に連結しているリンクの方向としても良い。
【0024】
次に、区間幅とは、多旋回区間の区間標準進行方向と垂直な方向の最大幅またはこの最大幅に所定のマージンを加えた幅であり、図3aの301の区間標準進行方向に対しては区間幅はたとえば同図中Wの幅となり、図3bの311の区間標準進行方向に対しては区間幅はたとえば同図中Wの幅となる。なお、前述した区間標準進行方向は、逆に、この区間幅が最小となる方向として設定するようにしてもよい。
【0025】
そして、区間中央線とは、区間幅の中央を通る区間標準進行方向と平行な線を示すデータであり、図3aの301の区間標準進行方向に対しては同図中CLの線が区間中央線となり、図3bの311の区間標準進行方向に対しては同図中CLの線が区間中央線となる。
【0026】
次に、地図データに含まれる路線データは、各道路毎に設けられた路線レコードを有し、各路線レコードには、道路の識別子である路線番号や、各道路の高速道路、国道、県道などの路線種別や、各道路の道路名称が記述される。
さて、このような構成において、ナビゲーション装置1の現在状態算出部12は、以下の処理を繰り返し行う。
すなわち、現在状態算出部12は、車両状態センサ4やGPS受信機5の出力から推定される現在位置に対して、地図データ記憶部11から読み出した地図データが示す前回決定した現在位置の周辺の地図とのマップマッチング処理などを施して、現在位置として最も確からしい座標と、現在の進行方向として最も確からしい方向と、現在の走行中のリンクとして最も確からしいリンクとを、それぞれ現在位置、現在進行方位、走行中リンクとして決定し、メモリ15に設定する。
【0027】
また、制御部16は、ユーザの目的地設定要求に応じて、ユーザから操作部2、GUI制御部13を介して目的地の設定を受付け、これをメモリ15にセットし、目的地までの推奨ルートをルート探索部14に探索させる。ルート探索部14は、必要地理的範囲の道路ユニットのデータを地図データ記憶部11から読み出し、メモリ15に設定されている現在位置から目的地までの、走行中リンクを最初に辿る最小コストの経路を、リンクテーブルの各リンクレコードに記述されたリンクコストなどを用いた所定のコストモデルに基づいて推奨ルートとして算出し、算出した推奨ルートの経路データを、メモリ15にセットする。
【0028】
また、制御部16は、メモリ15にセットされた現在位置が目的地近傍となったならば、目的地到着と判定し、メモリ15にセットされている目的地と推奨ルートをクリアする処理も行う。
そして、案内画像生成部17は、制御部16が設定した表示縮尺と表示上方向と表示基準位置に従って定まる地図表示範囲内の、設定された表示上方向とする地図画像を、地図データ記憶部11に記憶された地図データに基づいて描画する。また、描画した地図画像上に、メモリ15にセットされている現在位置や推奨ルートや目的地を表した案内画像を生成し、GUI制御部13を介して表示装置3に表示する。
【0029】
ここで、制御部16が設定する表示縮尺と表示上方向と表示基準位置と、地図表示範囲との関係は、以下の通りである。
すなわち、地図表示範囲の大きさは、予め固定的に設定された地図画像の大きさに表示縮尺の逆数を乗じた大きさに等しい。そして、地図表示範囲の向きは表示上方向が上となる向きである。また、地図表示範囲の位置は、表示地図縮尺による縮尺で地図表示範囲内の領域の地図を地図画像として表示上方向を上として表示した場合に、表示基準位置が、図3cに示すように地図画像321中の下部中央のXで示した位置となる位置である。すなわち、地図表示範囲が変化しても地図画像中の表示基準位置は常に下部中央の位置となる。
【0030】
さて、制御部16は、このような表示縮尺と表示上方向と表示基準位置の設定のために表示属性設定処理を行う。
図4に、表示属性設定処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、制御部16は、操作部2を用いたユーザの表示縮尺変更操作が発生したかどうかをGUI制御部13を介して調べ(ステップ402)、発生していればユーザの表示縮尺変更操作に応じた表示縮尺を設定し(ステップ424)、ステップ402に戻る。
【0031】
また、制御部16は、ユーザの表示縮尺変更操作が発生していなければ、現在の地図表示モードとしてノースアップモードが設定されているか(ステップ404)、ヘッドアップモードが設定されているか(ステップ406)を調べる。そして、ノースアップモードが設定されていれば、表示上方向として真北を設定し(ステップ426)、表示基準位置としてメモリ15に設定されている現在位置を設定する(ステップ428)。そして、ステップ402からの処理に戻る。
【0032】
一方、もし、ヘッドアップモードが設定されている場合には、メモリ15に設定されている走行中リンクのリンクレコードのリンク属性に多旋回区間レコードの区間識別子が登録されているかどうかより、現在位置が多旋回区間内に進入したかどうかを調べ(ステップ408)、現在位置が多旋回区間内でなければ、表示上方向としてメモリ15に設定されている現在進行方位を設定し(ステップ430)、表示基準位置としてメモリ15に設定されている現在位置を設定する(ステップ432)。そして、ステップ402からの処理に戻る。
【0033】
また、現在位置が多旋回区間内に進入している場合には、まず、メモリ15に設定されている走行中リンクのリンクレコードのリンク属性に登録されている区間識別子の多旋回区間レコードを走行中多旋回区間レコードとして読み込み、走行中多旋回区間レコードに記述されている区間標準進行方向を表示上方向として設定する(ステップ410)。そして、現在設定されている表示縮尺を保存した上で(ステップ412)、現在の表示縮尺による地図表示範囲の左右方向の幅が、走行中多旋回区間レコードに記述されている区間幅以上であるかどうかを調べ(ステップ414)、そうでなければ、予め定めたいくつかの異なる縮尺のうちで、地図表示範囲の左右方向の幅が、走行中多旋回区間レコードに記述されている区間幅以上となる最小の縮尺を表示縮尺として設定し(ステップ422)、ステップ416に進む。また、現在の表示縮尺による地図表示範囲の左右方向の幅が、走行中多旋回区間レコードに記述されている区間幅以上であれば、そのままステップ416に進む。
【0034】
ステップ416では、図3dに示すように、メモリ15に設定されている現在位置331から、走行中多旋回区間レコードに記述されている区間中央線CLに下ろした垂線と、区間中央線CLとの交点(垂線の足の位置)332を表示基準位置として設定する。そして、現在位置が多旋回区間から脱するまで、すなわち、メモリ15に設定されている走行中リンクが走行中多旋回区間レコードにリンク番号が記述されているリンクでなくなるまで(ステップ418)、ステップ416を繰り返し実行し、現在位置の変化に応じて表示基準位置を更新する処理を繰り返す。
【0035】
そして、現在位置が多旋回区間から脱したならば、(ステップ418)、ステップ412で保存しておいた表示縮尺を現在の表示縮尺として設定し(ステップ420)、ステップ402からの処理に戻る。
以上、制御部16が行う表示属性制御処理について説明した。
以上のようなナビゲーションシステムの動作によって表示装置3に表示される案内画像の例を図5に示す。
ここでは、図5aに示すように、車両が多旋回区間外から、図中で太線で示したリンクよりなる多旋回区間内に進入し、また、多旋回区間外に進出する場合を例にとる。すなわち、図5aにおいて、時間順に順次、t1地点、t2地点、t3地点、t4地点、t5地点、t6地点、t7地点と自動車が進んだ場合を例にとる。
【0036】
この場合、t1〜t7の各地点において設定される地図表示範囲は、図5a中の矩形501〜507に示すようになる。すなわち、t1地点では地図表示範囲501が設定され、t2地点では地図表示範囲502が設定され、t3地点では地図表示範囲503が設定され、t4地点では地図表示範囲504が設定され、t5地点では地図表示範囲505が設定され、t6地点では地図表示範囲506が設定され、t7地点では地図表示範囲507が設定される。なお、各地図表示範囲の辺上に表示した矢印は、その地図表示範囲が設定されるときの地図表示方向を表している。また、図5a中の3つのX印は、多旋回区間内の地点で設定される表示基準位置を表しており、各々下から順に、t3地点で設定される表示基準位置、t4地点で設定される表示基準位置、t5地点で設定される表示基準位置を表している。なお、その他の多旋回区間外の地点で設定される表示基準位置は、現在位置に等しい。
【0037】
そして、図5bに示すように、地図表示範囲の地図画像511上に現在位置を示す現在位置マーク512を現在進行方向に向けて表す案内画像は、t1〜t7の各地点において、b1〜b7に示すものとなる。すなわち、t1地点では案内画像b1が表示され、t2地点では案内画像b2が表示され、t3地点では案内画像b3が表示され、t4地点では案内画像b4が表示され、t5地点では案内画像b5が表示され、t6地点では案内画像b6が表示され、t7地点では案内画像b7が表示される。
【0038】
図中b1、b2に示すように、多旋回区間に自動車が進入する前のt1地点、t2地点における案内画像は、現在進行方向を上方向として、ユーザなどが設定した表示縮尺で地図画像511が表示されたものとなる。また、案内画像における現在位置を示す現在位置マーク512の位置や向きは固定となる。すなわち、現在位置マーク511に対して地図画像511として表示される地図表示範囲の移動や回転を行うことにより、現在位置の移動や現在進行方向の変化を表現するものとなっている。
【0039】
一方、この後、多旋回区間に自動車が進入した後のt3、t4、t5地点における案内画像は、図中b3、b4、b5に示すように、その多旋回区間の区間標準方向を上方向として、多旋回区間内の道路の表示上の左右方向の全てが地図画像に含まれるように設定した表示縮尺で地図画像が表示されたものとなる。また、案内画像における現在位置を示す現在位置マーク512の左右方向の位置や向きは現在位置の進行に伴って変化する。また、地図画像511として表示される地図表示範囲も、現在位置の進行に伴って表示上の上下方向に変化する。すなわち、現在位置の区間標準方向と平行な方向の移動については地図画像511として表示される地図表示範囲を表示上の上下に動かすことにより、現在位置の区間標準方向と垂直な方向の移動については現在位置マーク512を表示上の左右に動かすことにより表現される。また、現在位置マーク512の向きの変化により現在進行方向の変化が表現される。
【0040】
そして、多旋回区間から自動車が進出した後のt6、t7の地点では、図中b6、b7に示すように表示縮尺は、多旋回区間に自動車が進入するまえの表示縮尺に復帰し、案内画像は、多旋回区間に自動車が進入する前のt1地点、t2地点における案内画像と同様、現在位置マーク511に対して地図画像511として表示される地図表示範囲の移動や回転を行うことにより、現在位置の移動や現在進行方向の変化を表現するものとなる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態では、多旋回区間の定義や多旋回区間についての各種情報(多旋回区間を形成するリンク、区間標準方向、区間幅、区間幅中央線)を予め地図データの一部として設けたが、これらの情報は地図データに含めずに、走行中に適宜、地図データが示す道路形状から求めるようにしてもよい。
【0042】
すなわち、たとえば、多旋回区間や多旋回区間についての各種情報は、多旋回区間外のリンクを走行中に、定期的にまたは走行中リンクが変化するたびに、制御部16が、図6に示す多旋回区間設定処理を行うことにより設定するようにしてもよい。
図示するように、この多旋回区間設定処理では、現在走行している路線上の、現在位置から道程距離L(たとえば、1.5km)現在進行方向上前進方向に進んだ地点と現在位置との間の道路区間を対象区間とする(ステップ602)。
そして、メモリ15に設定されている走行中リンクと、リンクテーブルの各リンクレコードの路線番号より、対象区間に属する各リンクを求める。そして、求めたリンクのリンクレコードのリンク方位より、図3eに示すような各隣接するリンク間の角度θを求め、求めた各角度θの絶対値の総和を評価値とする(ステップ604)。
【0043】
次に、求めた評価値が所定のしきい値Th(たとえば、3π/2)より大きいかどうかを調べ、大きくなければ、処理を終了する。
一方、求めた評価値が所定のしきい値Thより大きければ、対象区間を仮多旋回区間として設定する(ステップ608)。また、走行中路線の仮多旋回区間の終点より前進方向にΔL(たとえば、300m)進んだ地点を対象地点として設定し(ステップ610)、対象地点から現在進行方向上後退方向に戻った地点と対象地点との間の道路区間を対象区間として(ステップ612)前述のように評価値を求めて(ステップ614)、求めた評価値がしきい値Thより大きければ(ステップ616)仮多旋回区間をΔL、現在進行方向上前進方向に延長する処理(ステップ618)を、評価値がしきい値Th以下となるまで(ステップ616)繰り返す。そして、評価値がしきい値Th以下となったならば(ステップ616)、仮多旋回区間を多旋回区間として設定し、この多旋回区間の区間標準方向、区間幅、区間幅中央線を、地図データのリンクテーブルが表す、多旋回区間を形成するリンクの形状から前述のように求め設定する(ステップ620)。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、現在位置が多旋回区間内にある期間は、多旋回区間に対して設定した区間標準方向を上方向として地図表示範囲を設定して案内画像の表示を行うので、ワインディングロードにおいて案内画像に含まれる地図画像の表示方向がめまぐるしく変化してしまうことを排除することができる。また、各道路区間が地図表示範囲内に含まれているか否かを問わず、カーブが連続している各道路区間の全体を一つの多旋回区間として、この多旋回区間に対して唯一の区間基準方向を設定するので、ワインディングロードにおいて地図表示範囲の変化に伴い案内画像に含まれる地図画像の表示方向が突然大きく変化してしまうことを排除することができる。また、表示縮尺や表示基準位置を、多旋回区間内の走行中に、多旋回区間内の道路が表示上の左右方向について地図画像から外れることのないように設定するので、左カーブ付近を走行している時点で、次に走行すべき右カーブが地図画像の表示範囲から外れてしまうようなことを極力排除して、ドライバに対して次のカーブをより確実に予告することができるようになる。
【0045】
なお、現在位置が多旋回区間内にある期間は、地図画像の表示の上下と左右は、これを入れ替えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る地図データの内容を示す図である。
【図3】本発明の実施形態で設定する多旋回区間を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示属性制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の表示例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る多旋回区間設置を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1…ナビゲーション装置、2…操作部、3…表示装置、4…車両状態センサ、5…GPS受信機、11…地図データ記憶部、12…現在状態算出部、13…GUI制御部、14…ルート探索部、15…メモリ、16…制御部、17…案内画像生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上に現在位置を表した案内画像を表示するナビゲーション装置であって、
現在位置を算出する現在位置算出手段と、
カーブが連続する道路区間であるカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを検出するカーブ連続区間内走行検出手段と、
少なくともカーブ連続区間内走行検出手段が前記カーブ連続区間内に前記現在位置があると検出している期間中、当該カーブ連続区間に対して設定した方向である基準方向を上方向とし、当該基準方向と垂直な方向を左右方向とする、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向の最大幅に従って定まる当該最大幅以上の左右方向の幅を持つ地図表示範囲であって、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向の存在範囲を当該地図表示範囲の左右方向の範囲の内に含み、かつ、当該地図表示範囲内に前記現在位置を含む前記地図表示範囲を設定する地図表示範囲設定手段と、
設定された地図表示範囲内の地図を表す所定サイズの地図画像を、当該地図表示範囲の上下方向を当該地図画像の上下方向とし当該地図表示範囲の左右方向を当該地図画像の左右方向として生成する地図画像生成手段と、
生成された地図画像上に、現在位置を表すマークを描画した案内画像を表示する案内画像表示手段とを有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示範囲設定手段は、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向についての存在範囲の中央が、前記地図表示範囲の左右方向の範囲の中央となるように前記地図表示範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示範囲設定手段は、前記現在位置の、前記地図表示範囲内における上下方向の位置が、固定的に所定の位置となるように前記地図表示範囲を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のナビゲーション装置であって、
前記カーブ連続区間となる道路区間を示すカーブ連続区間情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え、
前記カーブ連続区間内走行検出手段は、地図データに記録されたカーブ連続区間情報に従って、前記カーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1、2または3記載のナビゲーション装置であって、
道路形状を表す地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え、
前記カーブ連続区間内走行検出手段は、地図データに記録された道路形状に基づいて前記カーブ連続区間を検出し、検出したカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のナビゲーション装置であって、
前記カーブ連続区間に対して設定した基準方向は、当該カーブ連続区間を構成する道路の平均的な進行方向であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
ナビゲーション装置において、地図を表示する地図表示方法であって、
現在位置を算出するステップと、
カーブが連続する道路区間であるカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを検出するステップと、
少なくとも前記カーブ連続区間内に前記現在位置がある期間中、当該カーブ連続区間に対して設定した方向である基準方向と平行な二つの第1の辺と当該基準方向と垂直な二つの第2の辺を持つ長方形または正方形の、前記第2の辺が前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向の最大幅以上の長さを持つ地図表示範囲であって、前記カーブ連続区間中の道路の前記基準方向と垂直な方向についての存在範囲を当該地図表示範囲の前記基準方向と垂直な方向の範囲の内に含み、かつ、当該地図表示範囲内に前記現在位置を含む地図表示範囲を設定するステップと、
設定された地図表示範囲内の地図を表す所定サイズの地図画像を、当該地図表示範囲の前記第1の辺の方向が当該地図画像の上下方向、または、当該地図画像の左右方向となるように生成するステップと、
生成された地図画像上に、現在位置を表すマークを描画した案内画像を表示するステップとを有することを特徴とする地図表示方法。
【請求項8】
ナビゲーション装置において、地図を表示する地図表示方法であって、
現在位置を算出するステップと、
カーブが連続する道路区間であるカーブ連続区間内に前記現在位置があるかどうかを検出するステップと、
少なくとも前記カーブ連続区間内に前記現在位置がある期間中、当該カーブ連続区間の全体に対して設定した唯一の方向である基準方向を表示の上方向として、前記現在位置を含む範囲の地図を表す、所定サイズの地図画像を生成するステップと、
生成された地図画像上に、現在位置を表すマークを描画した案内画像を表示するステップとを有することを特徴とする地図表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3089(P2006−3089A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176506(P2004−176506)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】