説明

ナフタレン誘導体

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、Δεが負の化合物において、より大きいΔεの絶対値を有する1-(トリフルオロメチル)ナフチル基および1-(トリフルオロメトキシ)ナフチル基を有する液晶性化合物の製造中間体を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、1-(トリフルオロメチル)ナフチル基および1-(トリフルオロメトキシ)ナフチル基を有する液晶性化合物の製造に有用な一般式(I)
【化1】


で表されるナフタレン誘導体を提供する。この化合物を提供することにより、ナフタレン誘導体が安価に製造可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な、1-置換ナフチル基を有する液晶性化合物の製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、低電圧作動、薄型表示等の優れた特徴から現在広く用いられている。従来の液晶表示素子の表示方式にはTN(ねじれネマチック)、STN(超ねじれネマチック)、またはTNをベースにしたアクティブマトリックス(TFT:薄膜トランジスタ)等があり、これらは誘電率異方性値が正の液晶組成物を利用するものである。しかし、これら表示方式の欠点の一つとして視野角の狭さがあり、近年高まっている液晶パネルの大型化の要求に伴い、その改善が大きな課題となっている。
【0003】
この解決策として近年、垂直配向方式、IPS(インプレインスイッチング)等の表示方式が新たに実用化されてきた。垂直配向方式は液晶分子の垂直配向を利用して視野角の改善を図った方式であり、誘電率異方性(Δε)が負の液晶組成物が使用される。またIPSは、ガラス基板に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせることで視野角の改善を図った方法であり、Δεが正または負の液晶組成物が使用される。このように、視野角改善のために有効な表示方式である垂直配向方式およびIPSにはΔεが負である液晶化合物ならびに液晶組成物が必要であり、強く要望されるようになってきた。従来、Δεが負の液晶組成物は、2,3-ジフルオロフェニレン基を有する化合物が主として用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、この化合物を用いた液晶組成物はΔεの絶対値が十分に大きくないとの問題を有していた(特許文献2)。
【0004】
そこで、2,3-ジフルオロフェニレン基を有する化合物より絶対値の大きい負のΔεを有する化合物としてトリフルオロナフタレン誘導体が報告されている(特許文献3)。しかしながら、液晶表示素子においてより消費電力を低減する要求は強く、トリフルオロナフタレン骨格を用いてもなお、Δεの絶対値が十分大きいとは言えない問題を有していた。
【0005】
一方、ベンゼン環の側方にトリフルオロメチル基を有する化合物は報告されている(特許文献4)。又、ベンゼン環の側方にトリフルオロメチルメトキシ基を有する化合物は報告されている(特許文献5)。更に当該引用文献記載の化合物は、大きな負のΔεを有する液晶組成物の成分として有利に使用できることも報告されている。しかしながら、ベンゼン環の側方にトリフルオロメチル基ないしトリフルオロメトキシ基を有した化合物は、次のようなことから誘電率異方性の絶対値が十分大きくならない問題を有している。すなわち、負のΔεを有する化合物において、Δεの絶対値を大きくするためには、電子吸引性の大きい置換基を側方に置換する必要がある。しかし、1,4-フェニレン基において側方置換位置は2位および3位の2箇所しかなく、Δεの絶対値を増大することには限界がある。また、ビフェニル骨格のように1,4-フェニレン基を連結した構造においては、2つのフェニレン基に置換した電子吸引性基が同じ方向を向く可能性は低くΔεの絶対値は増大しないことが一般的である。
【0006】
以上のように、Δεが負の化合物において、より大きいΔεの絶対値を有する化合物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平2−503441号公報
【特許文献2】特開平10−176167号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第19522195号明細書
【特許文献4】特開平8−40953号公報
【特許文献5】特開2001−72626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、Δεが負の化合物において、より大きいΔεの絶対値を有する化合物の製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表し、
X3は、水素原子、水酸基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、ベンジルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの-CH2-基は独立的に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置換されていてもよく、
X4は、水素原子、水酸基または-B(OR1)2基を表し、-R1基は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、
nは0又は1を表す。)で表されるナフタレン誘導体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、1-(トリフルオロメチル)ナフチル基および1-(トリフルオロメトキシ)ナフチル基を有する液晶性化合物の製造に有用である。また、当該液晶性化合物はΔεが負であって極めて大きい絶対値を有し、更に、熱、光、水等に対し、化学的に安定であり、現在汎用されている液晶化合物あるいは液晶組成物との相溶性に優れているため、低電圧駆動が可能である実用的な液晶組成物の成分として適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般式(I)において、X1およびX2は、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表すが、Δεの絶対値をより大きくするためには、X1およびX2がそれぞれフッ素原子であることが好ましい。
【0014】
X3は、水素原子、水酸基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、ベンジルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの-CH2-基は独立的に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置換されていてもよいが、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜7のアルコキシル基または炭素数2〜7のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基または炭素原子数1〜5の直鎖状アルコキシル基がより好ましい。
【0015】
X4は、水素原子、水酸基または-B(OR1)2基を表し、-R1基は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表すが、X4は、水素原子または水酸基であることが好ましい。
【0016】
上述のように一般式(I)の化合物はそのX1、X2、X3およびX4の選択により多種の化合物を包含しうるわけであるが、これらの中では以下の一般式(I-a)〜一般式(I-x)で表される各化合物が好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R2は、水素原子または炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を表し、R3は、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表し、R5は、炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を表す。)
本発明の(I)の化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0020】
一般式(IV)
【0021】
【化4】

で表される7,8-ジフルオロ-2-ナフトールを、ハロゲン化ベンジル等によりベンジル化してベンジルエーテル誘導体(V-1)
【0022】
【化5】

【0023】
を得る。得られた化合物(V-1)をN-ヨードコハク酸イミド、ヨウ素等によりヨード化して1-ヨードナフタレン誘導体(II-1)
【0024】
【化6】

【0025】
を得る。得られた化合物(II-1)を、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非極性プロトン溶媒中、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のフッ素化物および塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等の銅塩存在下、トリフルオロメチルトリメチルシランを作用させることにより、一般式(I-b)
【0026】
【化7】

【0027】
で表される化合物を得ることができる。
【0028】
得られた化合物(I-b)をパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒存在下、接触水素還元するなど脱ベンジル化することにより、一般式(I-a)
【0029】
【化8】

【0030】
で表される化合物を得ることができる。
【0031】
得られた化合物(I-a)にピリジン、トリエチルアミン等の塩基存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、塩化トリフルオロメタンスルホニル等を作用させることにより、一般式(I-c)
【0032】
【化9】

【0033】
で表される化合物を得ることができる。
【0034】
得られた化合物(I-c)に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ニッケル(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)等のパラジウム、ニッケルあるいは鉄系遷移金属触媒存在下、1-アルキン(VI)
【0035】
【化10】

【0036】
(式中、R2は水素原子または炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を表す。)を作用させることにより、一般式(I-d)
【0037】
【化11】

【0038】
(式中、R2は水素原子または炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0039】
得られた化合物(I-d)をパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒存在下、接触水素還元することにより一般式(I-e)
【0040】
【化12】

【0041】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0042】
得られた化合物(I-e)にn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムヂイソプロピルアミド等のリチオ化剤を作用させた後、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸トリアルキルエステルを作用させることにより、一般式(I-g)
【0043】
【化13】

【0044】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、R5は、炭素数1〜4の分岐してもよりアルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0045】
得られた化合物(I-g)に塩酸などを作用させて加水分解することにより、一般式(I-i)
【0046】
【化14】

【0047】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0048】
得られた化合物(I-g)に過酸化水素などを作用させて酸化することにより、一般式(I-k)
【0049】
【化15】

【0050】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0051】
あるいは、7,8-ジフルオロ-2-ナフトール(IV)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、ハロゲン化アルキル、硫酸エステル等を作用させてアルキル化してアルキルエーテル誘導体(V-2)
【0052】
【化16】

【0053】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)を得る。得られた化合物(V-2)をN-ヨードコハク酸イミド、ヨウ素等によりヨード化して1-ヨードナフタレン誘導体(II-2)
【0054】
【化17】

【0055】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)を得る。得られた化合物(II-2)を、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非極性プロトン溶媒中、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のフッ素化物および塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等の銅塩存在下、トリフルオロメチルトリメチルシランを作用させることにより、一般式(I-f)
【0056】
【化18】

【0057】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)を得ることができる。
【0058】
得られた化合物(I-f)にn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムヂイソプロピルアミド等のリチオ化剤を作用させた後、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸トリアルキルエステルを作用させることにより、一般式(I-h)
【0059】
【化19】

【0060】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表し、R5は、炭素数1〜4の分岐してもよりアルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0061】
得られた化合物(I-h)に塩酸などを作用させて加水分解することにより、一般式(I-j)
【0062】
【化20】

【0063】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0064】
得られた化合物(I-j)に過酸化水素などを作用させて酸化することにより、一般式(I-l)
【0065】
【化21】

【0066】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0067】
あるいは、化合物(I-c)に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ニッケル(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)等のパラジウム、ニッケルあるいは鉄系遷移金属触媒存在下、1-アルキン(VI)を作用させることにより、一般式(VII)
【0068】
【化22】

【0069】
(式中、R2は水素原子または炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得る。得られた化合物(VII)をパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒存在下、接触水素還元することにより一般式(V-3)
【0070】
【化23】

【0071】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得る。得られた化合物(V-3)をN-ヨードコハク酸イミド、ヨウ素等によりヨード化して1-ヨードナフタレン誘導体(II-3)
【0072】
【化24】

【0073】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得る。得られた化合物(II-3)を、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非極性プロトン溶媒中、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のフッ素化物および塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等の銅塩存在下、トリフルオロメチルトリメチルシランを作用させることにより、一般式(I-e)で表される化合物を得ることもできる。
【0074】
あるいは、化合物(I-c)に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ニッケル(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)等のパラジウム、ニッケルあるいは鉄系遷移金属触媒存在下、有機金属化合物(VIII)
【0075】
【化25】

【0076】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、Z2は塩化マグネシウム、塩化亜鉛、リチウム、銅、銅リチウム、トリアルキルケイ素、ホウ酸等の金属あるいは金属塩を表す。)を作用させることにより、一般式(I-e)で表される化合物を得ることもできる。
【0077】
あるいは、一般式(V-3)で表される化合物に、N-クロロコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド、塩化スルフリル、臭素等によりハロゲン化して1-ハロゲノナフタレン誘導体(IX)
【0078】
【化26】

【0079】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、Z3は塩素原子または臭素原子を表す。)を得る。得られた化合物(IX)にN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非極性プロトン溶媒中、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム等のヨウ化物および塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等の銅塩を作用させることにより、1-ヨードナフタレン誘導体(II-3)を得ることもできる。
【0080】
あるいは、7,8-ジフルオロ-2-ナフトール誘導体(IV)に、N,N-ジメチルホルムアミドと塩化ホスホリル等の活性化剤から調製したビルスマイヤー試薬を作用させるか、水酸化ナトリウム存在下、クロロホルムを作用させるか、或いは四塩化チタン等のルイス酸存在下、ジクロロメチルエーテルを作用させることにより、1-ホルミル-2-ナフトール誘導体(X)
【0081】
【化27】

【0082】
を得た後、ハロゲン化ベンジル等によりベンジル化してベンジルエーテル誘導体(XI)
【0083】
【化28】

【0084】
を得る。得られたベンジルエーテル誘導体(XI)をホウ酸等の酸化剤を作用させることにより、1-ナフトール誘導体(III-1)
【0085】
【化29】

【0086】
を得る。得られた1-ナフトール誘導体(III-1)をS-トリフルオロメチル塩などの梅本試薬あるいは高原子ヨウ素化トリフルオロメチル塩などのトニ試薬を作用させることにより、一般式(I-n)
【0087】
【化30】

【0088】
で表される化合物を得ることができる。
【0089】
梅本試薬としてはトリフルオロメタンスルホン酸=S-(トリフルオロメチル)-3,7-ジニトロジベンゾチオフェニウムが好ましく、トニ試薬としては1-(トリフルオロメチル)-1,2-ベンズヨードキソール-3-(1H)-オンが好ましい。
【0090】
得られた化合物(I-n)をパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒存在下、接触水素還元するなど脱ベンジル化することにより、一般式(I-m)
【0091】
【化31】

【0092】
で表される化合物を得ることができる。
【0093】
得られた化合物(I-m)にピリジン、トリエチルアミン等の塩基存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、塩化トリフルオロメタンスルホニル等を作用させることにより、一般式(I-o)
【0094】
【化32】

【0095】
で表される化合物を得ることができる。
【0096】
得られた化合物(I-o)に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ニッケル(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)等のパラジウム、ニッケルあるいは鉄系遷移金属触媒存在下、1-アルキン(VI)を作用させることにより、一般式(I-p)
【0097】
【化33】

【0098】
(式中、R2は水素原子または炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0099】
得られた化合物(I-p)をパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒存在下、接触水素還元することにより一般式(I-q)
【0100】
【化34】

【0101】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0102】
得られた化合物(I-q)にn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムヂイソプロピルアミド等のリチオ化剤を作用させた後、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸トリアルキルエステルを作用させることにより、一般式(I-s)
【0103】
【化35】

【0104】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、R5は、炭素数1〜4の分岐してもよりアルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0105】
得られた化合物(I-s)に塩酸などを作用させて加水分解することにより、一般式(I-u)
【0106】
【化36】

【0107】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0108】
得られた化合物(I-u)に過酸化水素などを作用させて酸化することにより、一般式(I-w)
【0109】
【化37】

【0110】
(式中、R3は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0111】
あるいは、化合物(I-m)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、ハロゲン化アルキル、硫酸エステル等を作用させてアルキル化することにより、一般式(I-r)
【0112】
【化38】

【0113】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)を得ることができる。
【0114】
あるいは、1-ホルミル-2-ナフトール(X)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、ハロゲン化アルキル、硫酸エステル等を作用させてアルキル化することにより、一般式(XII)
【0115】
【化39】

【0116】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表されるエーテル誘導体を得る。得られたベンジルエーテル誘導体(XII)をホウ酸等の酸化剤を作用させることにより、一般式(XIII)
【0117】
【化40】

【0118】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表される1-ナフトール誘導体(XIII)を得る。得られた1-ナフトール誘導体(XIII)をS-トリフルオロメチル塩などの梅本試薬あるいは高原子ヨウ素化トリフルオロメチル塩などのトニ試薬を作用させることにより、一般式(I-r)を得ることもできる。
【0119】
得られた化合物(I-r)にn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムヂイソプロピルアミド等のリチオ化剤を作用させた後、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸トリアルキルエステルを作用させることにより、一般式(I-t)
【0120】
【化41】

【0121】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表し、R5は、炭素数1〜4の分岐してもよりアルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0122】
得られた化合物(I-t)に塩酸などを作用させて加水分解することにより、一般式(I-v)
【0123】
【化42】

【0124】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0125】
得られた化合物(I-v)に過酸化水素などを作用させて酸化することにより、一般式(I-x)
【0126】
【化43】

【0127】
(式中、R4は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【実施例】
【0128】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を更に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
なお、相転移温度の測定は温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡および示差走査熱量計(DSC)を併用して行った。また、化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外共鳴スペクトル(IR)、質量スペクトル(MS)等により確認した。
(実施例1)6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-1)の製造
【0130】
【化44】

【0131】
(実施例1-1)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロナフタレン
7,8-ジフルオロ-2-ナフトール(150 g、0.832 mol)、ヨードブタン(230 g、1.249 mol)、炭酸カリウム(305 g、2.206 mol)の2-ブタノン(1,000 ml)懸濁液を3時間加熱還流した。不溶物を濾別した後、溶媒を留去し、水、酢酸エチルを加え、有機層を分離した。得られた有機層を10%食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色液体を得た。減圧蒸留した後、さらに再結晶(ヘキサン)を行い、白色結晶(136 g)を得た。(収率69%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.10 (t, J = 5.6Hz, 3H), 1.50−1.59 (m, 2H), 1.81−1.88 (m, 2H), 4.11 (t, J = 4.8Hz, 2H), 7.11−7.18 (m, 2H), 7.26−7.29 (m, 1H), 7.47−7.50 (m, 1H), 7.70 (dd, J = 6.8, 1.4Hz, 1H)、MS m/z 236 (M+)
(実施例1-2)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-8-ヨードナフタレン
7-ブトキシ-1,2-ジフルオロナフタレン(100 g、0.423 mol)、メタ過ヨウ素酸二水和物(21.0 g、0.092 mol) 、ヨウ素(44.0 g、0.173 mol)の酢酸(200 ml)溶液に、30℃以下に保ちながら15%硫酸水溶液(100 ml)と酢酸(300 ml)の混合溶液を約10分間かけて滴下して加えた。70℃で2時間攪拌した後、室温まで放冷し、水(1,000 ml)、トルエン(800 ml)を加えた。有機層を分離した後、水層からトルエンで2回抽出した。有機層を合わせ、水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物を再結晶(メタノール、エタノール)し、褐色結晶(136 g)を得た。(収率89%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.00 (t, J = 2.7Hz, 3H), 1.58−1.66 (m, 2H), 1.86−1.93 (m, 2H), 4.17 (t, J = 4.7Hz, 2H), 7.12 (d, J = 6.9Hz, 1H), 7.21−7.26 (m, 1H), 7.51−7.75 (m, 1H), 7.76 (d, J = 6.6Hz, 1H)、MS m/z 362 (M+)
(実施例1-3)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン
7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-8-ヨードナフタレン(65.0 g、0.179 mol)、ヨウ化銅(49.6 g、0.260 mol)、フッ化カリウム(13.6 g、0.234 mol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、325 ml)懸濁液に、30℃以下に保ちながらトリフルオロメチルトリメチルシラン(39.0 ml、0.264 mol)を約10分間かけて滴下して加えた。70℃で3.5時間攪拌した後、室温まで放冷し、水(1,000 ml)、酢酸エチル(500 ml)を加えた。不溶物を濾別し、有機層を分離した後、水層から酢酸エチル(250 ml)で2回抽出した。有機層を合わせ、5%アンモニア水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、さらに再結晶(ヘキサン)を行い、白色結晶(51.3 g)を得た。(収率94%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.00 (t, J = 5.5Hz, 3H), 1.50−1.59 (m, 2H), 1.81−1.88 (m, 2H), 4.18 (t, J = 4.8Hz, 2H), 7.25−7.31 (m, 2H), 7.53−7.57 (m, 1H), 7.90 (d, J = 6.9Hz, 1H)、MS m/z 304 (M+)
(実施例1-4)6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-1)
ジイソプロピルアミン(24.0 g、0.237 mol)のテトラヒドロフラン(THF、240 ml)溶液に、0℃を保ちながら1.57 Mブチルリチウムヘキサン溶液(141 ml、0.221 mmol)を滴下して加えた。-5〜0℃で30分間攪拌した後、反応液を-60℃まで冷却した。-55℃以下に保ちながら、7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-8-トリフルオロメチルナフタレン(48.0 g、0.158 mol)のTHF溶液(144 ml)を約30分間かけて滴下して加え、-60℃で1時間攪拌した。55℃以下に保ちながらホウ酸トリイソプロピル(42.0 g、0.223mol)を約30分間かけて滴下して加えた後、-60℃で1時間攪拌した。10%塩酸を加えた後、室温まで放冷し、酢酸エチル(240 ml)で3回抽出した。有機層を合わせ、10%食塩水で洗浄した。溶媒を留去し、再結晶(ヘキサン)を行い、白色結晶(43.6 g)を得た。
【0132】
得られた白色結晶(全量)をトルエン(430 ml)、THF(215 ml)に溶かした溶液に、15%過酸化水素水(40 g)を滴下して加えた後、35℃で3.5時間攪拌した。室温まで放冷した後、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。得られた有機層を、水、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶(34.9 g)を得た。(収率69%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.99 (t, J = 6.9Hz, 3H), 1.49−1.61 (m, 2H), 1.80−1.87 (m, 2H), 4.14 (t, J = 4.8Hz, 2H), 6.97 (dd, J = 5.7, 1.5Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.0Hz, 1H), 7.77 (d, J = 7.0Hz, 1H)、MS m/z 320 (M+)
(実施例2)3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-6-ペンチル-2-ナフトール(I-2)の製造
【0133】
【化45】

【0134】
(実施例2-1)7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロナフタレン
7,8-ジフルオロ-2-ナフトール(100 g、0.555 mol)、炭酸カリウム(115 g、0.832mol)のアセトン(300 ml)懸濁液に、塩化ベンジル(77 ml、0.669 mol)を加えた後、2時間加熱還流した。塩化ベンジル(20 ml、0.173 mol)を追加し、さらに3時間加熱還流した。室温まで放冷し、不溶物を濾別した後、水、トルエンを加え、有機層を分離した。得られた有機層を水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物を再結晶(ヘキサン)で精製し、白色結晶(107 g)を得た。(収率71%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.21 (s, 2H), 7.16−7.52 (m, 9H), 7.73 (dd, J = 6.8, 1.1Hz, 1H)
(実施例2-2)7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロ-8-ヨードナフタレン
7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロナフタレン(100 g、0.370 mol)、メタ過ヨウ素酸二水和物(19.0 g、0.083 mol)、ヨウ素(38.5 g、0.151 mol)の酢酸(500 ml)溶液に、30℃以下に保ちながら、15%硫酸水溶液(100 ml)を約10分間かけて滴下して加えた。60℃で3.5時間攪拌した後、室温まで放冷した。水(1,250 ml)を加え、室温で30分攪拌した後、濾別した。得られた結晶を水で洗浄し、減圧下乾燥した。得られた粗生成物を再結晶(アセトン)し、褐色結晶(99.5 g)を得た。母液からさらに再結晶(アセトン、ヘキサン)し、褐色結晶(38.9 g)を得た。(収率94%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.32 (s, 2H), 7.15−7.57 (m, 8H), 7.75 (dd, J = 6.6, 0.9Hz, 1H)
(実施例2-3)7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン
7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロ-8-ヨードナフタレン(125 g、0.315 mol)、ヨウ化銅(84 g、0.441 mol)、フッ化カリウム(26 g、0.448 mol)のDMF懸濁液(1,250 ml)に、30℃以下を保ちながらトリフルオロメチルトリメチルシラン(72.0 g、0.506 mol)を約10分間かけて滴下して加えた。80℃で3時間攪拌した後、室温まで放冷した。水(2,500 ml)、トルエン(1,000 ml)を加え、不溶物を濾別した後、有機層を分離し、水層からトルエンで抽出した。有機層を合わせ、5%アンモニア水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、白色結晶(108 g)を得た。(収率100%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.31 (s, 2H), 7.27−7.58 (m, 8H), 7.89 (d, J = 6.6Hz, 1H)
(実施例2-4)7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール
7-ベンジルオキシ-1,2-ジフルオロ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン(99.0 g、0.292 mol)、5%パラジウムカーボン(50%含水品、9.9 g)のTHF(500 ml)溶液を、水素圧(0.5MPa)下、室温で3時間撹拌した。触媒を濾別した後、溶媒を留去し、黄色結晶(73.4 g)を得た。(収率100%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.12 (d, J = 6.9Hz, 1H), 7.28-7.34 (m, 1H), 7.54-7.58 (m, 1H), 7.84 (d, J = 6.9Hz, 1H)、MS m/z 248 (M+)
(実施例2-5)トリフルオロメタンスルホン酸7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-2-ナフチル
7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(70.0 g、0.282 mol)のジクロロメタン(420 ml)溶液に、5℃以下を保ちながらトリフルオロメタンスルホン酸無水物(52.0 ml、0.306 mol)を約30分間かけて滴下して加えた後、5〜10℃で1時間半攪拌した。水(300 ml)を加えた後、有機層を分離し、水層からジクロロメタン(150 ml)で抽出した。有機層を合わせ、5%塩酸で2回、飽和食塩水の順で洗浄した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色結晶を得た。さらに再結晶(ヘキサン、トルエン)を行い、白色結晶(94.7 g)を得た。(収率88%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.45 (d, J = 6.6Hz, 1H), 7.55-7.61 (m, 1H), 7.74-7.78 (m, 1H), 8.11 (d, J = 6.3Hz, 1H)、MS m/z 380 (M+)
(実施例2-6)1,2-ジフルオロ-7-(1-ペンチニル)-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン
トリフルオロメタンスルホン酸7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-2-ナフチル(92 .0 g、0.241 mol)、トリエチルアミン(52.0 g、0.513 mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.5 g、0.005 mol)、ヨウ化銅(1.7 g、0.009 mol)のDMF(325 ml)懸濁液に、100℃以下を保ちながら1-ペンチン(29.0 ml、0.293 mol)を約1時間かけて滴下して加えた。90℃で1時間攪拌した後、水(200 ml)を加え室温まで放冷した。トルエン(200 ml)、濃塩酸(66 ml)を加えた後、不溶物を濾別し、トルエンで2回抽出した。有機層を合わせ、5%アンモニア水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をヘキサン(1,000 ml)に溶解し、不溶物を濾別した。得られたヘキサン溶液に、70% t-ブチルヒドロペルオキシド(10 ml)を加え、室温下1時間攪拌した。水(100 ml)を加え、不溶物を濾別した後、トルエンで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色液体(15.0 g)を得た。(収率21%)
(実施例2-7)1,2-ジフルオロ-7-ペンチル-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン
1,2-ジフルオロ-7-(1-ペンチニル)-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン(15.0 g、0.050 mol)、5%パラジウムカーボン(50%含水品、1.5 g)のエタノール(65 ml)溶液を、水素圧(0.5MPa)下、室温で1時間撹拌した。触媒を濾別し、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色液体(14.0 g)を得た。(収率92%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.92 (t, J = 5.2Hz, 3H), 1.37-1.43 (m, 4H), 1.69-1.72 (m, 2H), 2.95-3.00 (m, 2H), 7.31-7.42 (m, 2H), 7.58-7.62 (m, 1H), 7.84 (d, J = 6.3Hz, 1H)、
MS m/z 302 (M+)
(実施例2-8)3,4-ジフルオロ-6-ペンチル-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-2)
ジイソプロピルアミン(7.0 g、0.069 mol)のTHF(70 ml)溶液に、-5℃以下を保ちながら1.65 M ブチルリチウムヘキサン溶液(39.9 ml、0.066 mol)を滴下して加えた後、-5〜0℃で30分間攪拌した。反応液を-60℃まで冷却し、-55℃以下を保ちながら7-ペンチル-1,2-ジフルオロ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン(14.0 g、0.046 mol)のTHF(42 ml)溶液を約30分間かけて滴下して加えた後、-60℃で1時間攪拌した。-55℃以下を保ちながら、ホウ酸トリイソプロピル(12.3 g、0.065 mol)を約30分間かけて滴下して加えた後、-60℃で1時間攪拌した。10%塩酸を加えた後、室温まで放冷し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体(16.0 g)を得た。
【0135】
得られた褐色液体(全量)のトルエン(80 ml)、THF(80 ml)混合溶液に、15%過酸化水素水(17.0 g)を滴下して加えた後、35℃で4時間攪拌した。室温まで放冷し、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。得られた有機層を、水、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(ヘキサン)を行い、白色結晶(11.1 g)を得た。(収率75%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.92 (t, J = 5.4Hz, 3H), 1.33-1.44 (m, 4H), 1.66-1.71 (m, 2H), 2.90-2.96 (m, 2H), 5.75 (brs, 1H), 7.17 (dd, J = 6.0, 1.5Hz, 1H), 7.27 (d, J = 5.7Hz, 1H), 8.11 (d, J = 6.3Hz, 1H)、MS m/z 318 (M+)
(実施例3)3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメトキシ)-6-ペンチル-2-ナフトール(I-3)の製造
【0136】
【化46】

【0137】
(実施例3-1)7,8-ジフルオロ-1-ホルミル-2-ナフトール
7,8-ジフルオロ-2-ナフトール(50.0 g、0.277 mol)のジクロロメタン(250 ml)溶液を5~10℃に冷却しながら激しく攪拌している中に、ジクロロメチルメチルエーテル(71 ml、0.800 mol)を加えた後、さらに内温を5~10℃に保ちながら、続けて塩化チタン(IV)(117 ml、1.066 mol)のジクロロメタン(200 ml)溶液を1.0時間かけて滴下して加えた後、内温を5~10℃に保ちながら1時間攪拌した。反応液を氷水に滴下して加えて反応を停止させた後、室温で0.5時間攪拌した。有機層を分離し、水層からジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせた後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗條し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。塩を濾別後、溶媒を留去し、褐色の固体を得た。得られた固体を再結晶(ジクロロメタン、メタノール)することにより、赤桃色の粉末(40.9 g)を得た。(収率71%)
(実施例3-2)2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-ナフタルデヒド
7,8-ジフルオロ-1-ホルミル-2-ナフトール(40.9 g、0.196 mol)と無水炭酸カリウム(54.5 g、0.394 mol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、400 ml)懸濁液を室温で0.5時間激しく攪拌した。1-ヨードブタン(43.3 g、0.235 mol)を加えた後、6時間加熱還流し、室温まで放冷した。反応液を水に加えて反応を停止させた後、析出した固体をトルエンに溶解させた。有機層を分離し、水層をトルエンで抽出した。有機層を合わせた後、飽和食塩水で洗條し、そのままカラム(シリカゲル)を通過させ、さらにトルエンを用いてカラムを洗滌した。有機層を合わせた後、溶媒を留去することにより、褐色の液体を得た。得られた液体を減圧蒸留し、淡黄色の液体を得た。さらに得られた液体を再結晶(アセトン、メタノール)することにより、薄赤色の固体(45.2 g)を得た。(収率87%)
(実施例3-3)2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-ナフトール
ホウ酸(58.7 g、0.949 mol)のテトラヒドロフラン(600 ml)懸濁液を室温で激しく攪拌している中に、30%過酸化水素水(65.0 g、0.541 mol)を滴下して加えた後、室温で0.5時間激しく攪拌した。2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-ナフタルデヒド(45.2 g、0.171 mol)のテトラヒドロフラン(90 ml)溶液を加えた後、室温で24時間激しく攪拌した。反応液を濾過してホウ酸を濾別した後、少量のテトラヒドロフランでホウ酸を洗滌し、有機層を合わせた後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗條し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。塩を濾別後、溶媒を留去し、褐色の固体を得た。得られた固体をカラム(シリカゲル、トルエン)により精製することにより、薄黄色の固体(29.3 g)を得た。(収率68%)
(実施例3-4)2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)ナフタレン
2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-ナフトール(26.2 g、0.104 mol)、フッ化カリウム(12.8 g、0.220 mol)、ヨウ化銅(I)(46.4 g、0.244 mol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド(440 ml)懸濁液を激しく攪拌している中に、1-(トリフルオロメチル)-1,2-ベンズヨードキソール-3-(1H)-オン(131.4 g、0.416 mol)を加えた。90℃で24時間加熱攪拌した後、反応液を放冷し、水に空けて反応を終了させた。セライトを用いて銅塩を濾別した後、塩を酢酸エチルで洗滌し、濾液を合わせ、有機層を分離し、水層から酢酸エチルで抽出した。有機層を集めた後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗條し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた橙色の固体をカラム(シリカゲル/ヘキサン、酢酸エチル)を用いて精製し、再結晶(アセトン、メタノール)することにより、薄黄色の固体(18.2 g)を得た。(収率55%)
(実施例3-5)6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメトキシ)-2-ナフトール(I-3)
ジイソプロピルアミン(8.7 g、0.085 mol)のTHF(90 ml)溶液に、-5℃以下を保ちながら1.60 M ブチルリチウムヘキサン溶液(50 ml、0.080 mol)を滴下して加えた後、-5〜0℃で30分間攪拌した。反応液を-60℃まで冷却し、-55℃以下を保ちながら2-ブトキシ-7,8-ジフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)ナフタレン(14.0 g、0.057 mol)のTHF(70 ml)溶液を約30分間かけて滴下して加えた後、-60℃で1時間攪拌した。-55℃以下を保ちながら、ホウ酸トリイソプロピル(17.0 g、0.090 mol)を約30分間かけて滴下して加えた後、-60℃で1時間攪拌した。10%塩酸を加えた後、室温まで放冷し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、褐色液体(20.5 g)を得た。
【0138】
得られた褐色液体(全量)のトルエン(100 ml)、THF(100 ml)混合溶液に、15%過酸化水素水(22.0 g)を滴下して加えた後、35℃で4時間攪拌した。室温まで放冷し、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。得られた有機層を、水、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(ヘキサン)を行い、白色結晶(13.6 g)を得た。(収率71%)
(応用例1)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-3-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)メトキシ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン(J-1)の製造
【0139】
【化47】

【0140】
実施例1で得られた、6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-1、30.0 g、0.094 mol)のDMF(300 ml)溶液に、15℃以下を保ちながら炭酸カリウム(16.2 g、0.117 mol)を加えた後、15℃以下を保ちながら30分攪拌した。トランス-1-ブロモメチル-4-プロピルシクロヘキシン(25.0 g、0.114 mol)を滴下して加え、反応液を85℃で8時間攪拌した。室温まで放冷し、水(600 ml)、トルエン(450 ml)を加え、有機層を分離した。トルエン(300 ml)で抽出した後、有機層を合わせ、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(アセトン、ヘキサン、トルエン)を行い、白色結晶(35.1 g)を得た。(収率82%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.87−1.96 (m, 24H), 3.91 (d, J = 4.8Hz, 2H), 4.13 (t, J = 4.9Hz, 2H), 6.97 (d, J = 4.2Hz, 1H), 7.22-7.26 (m, 1H), 7.77 (d, J = 7.2Hz, 1H)、MS m/z 458 (M+)、相転移温度(℃) Cry 96 (SmB 70) Iso
(応用例2)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-3-(トランス,トランス-4'-プロピルビシクロヘキシル-4-イル)メトキシ-8-トリフルオロメチルナフタレン(J-2)の製造
【0141】
【化48】

【0142】
実施例1で得られた、6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-1、33.0 g、0.103 mol)のDMF(500 ml)溶液に、15℃以下を保ちながら炭酸カリウム(22.0 g、0.159 mol)を加えた後、15℃以下を保ちながら30分攪拌した。この溶液にメタンスルホン酸(トランス,トランス-4'-プロピルビシクロヘキシル-4-イル)メチル(31.2 g、0.099 mol)を加え、反応液を85℃で9時間攪拌した。室温まで放冷し、水(1,500 ml)、トルエン(750 ml)を加え、有機層を分離した。トルエン(500 ml)で抽出した後、有機層を合わせ、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(ヘキサン、トルエン)を行い、白色結晶(42.6 g)を得た。(収率77%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.83-1.86 (m, 34H), 3.90 (d, J = 5.1Hz, 2H), 4.13 (t, J = 4.8Hz, 2H), 6.96 (dd, J = 5.7, 1.5Hz, 1H), 7.22-7.24 (m, 1H), 7.77 (d, J = 6.6Hz, 1H)、MS m/z 540 (M+)、相転移温度(℃) Cry 117 SmA 137 N 202 Iso
(応用例3)1,2-ジフルオロ-7-ペンチル-3-(トランス,トランス-4'-プロピルビシクロヘキシル-4-イル)メトキシ-8-(トリフルオロメチル)ナフタレン(J-3)の製造
【0143】
【化49】

【0144】
実施例2で得られた6-ペンチル-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ナフトール(I-2、10.5 g、0.033 mol)のDMF(105 ml)溶液に、15℃以下を保ちながら炭酸カリウム(6.8 g、0.049 mol)を加えた後、15℃以下を保ちながら30分攪拌した。この溶液にメタンスルホン酸(トランス,トランス-4'-プロピルビシクロヘキシル-4-イル)メチル(10.0 g、0.032 mol)を加え、反応液を85℃で6時間攪拌した。室温まで放冷し、水(360 ml)、トルエン(180 ml)を加え、有機層を分離した。トルエン(200 ml)で抽出した後、有機層を合わせ、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(ヘキサン、トルエン)を行い、白色結晶(12.4 g)を得た。(収率73%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.84-1.97 (m, 36H), 2.90-2.95 (m, 2H), 3.92 (d, J = 4.8Hz, 2H), 6.99 (dd, J = 6.0, 1.2Hz, 1H), 7.26-7.28 (m, 1H), 7.71 (d, J = 6.6Hz, 1H)、MS m/z 538 (M+)、相転移温度(℃) Cry 124 N 166 Iso
(応用例4)7-ブトキシ-1,2-ジフルオロ-3-[2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)メトキシ]-8-(トリフルオロメトキシ)ナフタレン(J-4)の製造
【0145】
【化50】

【0146】
実施例3で得られた、6-ブトキシ-3,4-ジフルオロ-5-(トリフルオロメトキシ)-2-ナフトール(I-3、13.6 g、0.040 mol)のDMF(140 ml)溶液に、15℃以下を保ちながら炭酸カリウム(6.7 g、0.050 mol)を加えた後、15℃以下を保ちながら30分攪拌した。トランス-1-ブロモメチル-4-プロピルシクロヘキシン(10.6 g、0.049 mol)を滴下して加え、反応液を85℃で8時間攪拌した。室温まで放冷し、水(300 ml)、トルエン(300 ml)を加え、有機層を分離した。トルエン(300 ml)で抽出した後、有機層を合わせ、水、10%食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。さらに再結晶(アセトン、ヘキサン、トルエン)を行い、白色結晶(12.5 g)を得た。(収率66%)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ(ppm) 0.87 (t, 3H), 0.96 (t, 3H), 0.82-1.88 (m, 18H), 3.96 (t, 2H), 4.10 (t, 2H), 6.60-7.22 (m, 3H)
MS m/z 474(M+)
相転移温度(℃) Cr 90 I
(応用例5) 液晶組成物の調製(1)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H)
【0147】
【化51】

【0148】
を調製した。ここで(H)の物性値は以下の通りである。
【0149】
ネマチック相上限温度(TN-I): 103.2℃
誘電率異方性(Δε): 0.03
屈折率異方性(Δn): 0.099
この母体液晶(H)90%と応用例1で得られた(J-1)10%からなる液晶組成物(M-1)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0150】
ネマチック相上限温度(TN-I): 99.3℃
誘電率異方性(Δε): −1.36
屈折率異方性(Δn): 0.101
化合物(J-1)を含有する液晶組成物(M-1)は、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、化合物(J-1)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
【0151】
また、(M-1)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから化合物(J-1)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0152】
(応用例6) 液晶組成物の調製(2)
応用例5で得られた母体液晶(H)90%と応用例2で得られた(J-2)10%からなる液晶組成物(M-2)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0153】
ネマチック相上限温度(TN-I): 111.0℃
誘電率異方性(Δε): −1.23
屈折率異方性(Δn): 0.102
化合物(J-2)を含有する液晶組成物(M-2)は、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、化合物(J-2)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
【0154】
また、(M-2)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから化合物(J-2)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0155】
(応用例7) 液晶組成物の調製(3)
応用例5で得られた母体液晶(H)90%と応用例3で得られた(J-3)10%からなる液晶組成物(M-3)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0156】
ネマチック相上限温度(TN-I): 107.8℃
誘電率異方性(Δε): −0.81
屈折率異方性(Δn): 0.102
化合物(J-3)を含有する液晶組成物(M-3)は、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、化合物(J-3)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
【0157】
また、(M-3)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから化合物(J-2)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0158】
(応用例8) 液晶組成物の調製(4)
応用例5で得られた母体液晶(H)90%と応用例4で得られた(J-4)10%からなる液晶組成物(M-4)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0159】
ネマチック相上限温度(TN-I): 98.9℃
誘電率異方性(Δε): −1.08
屈折率異方性(Δn): 0.102
化合物(J-4)を含有する液晶組成物(M-4)は、母体液晶(H)に比べ、誘電率異方性(Δε)は大きく減少して負の値となった。このことから、化合物(J-4)は、誘電率異方性が負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかる。
【0160】
また、(M-4)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから化合物(J-4)は安定性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかる。
【0161】
(応用例9) 液晶組成物の調製(5)
以下の組成からなる液晶組成物(M-5)を調製した。
【0162】
【化52】

【0163】
この(M-3)の物性値は以下の通りであった。
【0164】
ネマチック相上限温度(TN-I): 89.7℃
誘電率異方性(Δε): −3.59
屈折率異方性(Δn): 0.088
ここで作製した組成物を用いて、電圧保持率を測定したところ80℃で98%と高い値を示し、優れた表示特性を示す液晶表示装置を作成することができた。
【0165】
(応用例10) 液晶組成物の調製(6)
以下の組成からなる液晶組成物(M-6)を調製した。
【0166】
【化53】

【0167】
この(M-4)の物性値は以下の通りであった。
【0168】
ネマチック相上限温度(TN-I): 101.5℃
誘電率異方性(Δε): −3.59
屈折率異方性(Δn): 0.082
ここで作製した組成物を用いて、電圧保持率を測定したところ80℃で98%と高い値を示し、優れた表示特性を示す液晶表示装置を作成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表し、X3は、水素原子、水酸基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、ベンジルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの-CH2-基は独立的に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置換されていてもよく、X4は、水素原子、水酸基または-B(OR1)2基を表し、-R1基は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表されるナフタレン誘導体。
【請求項2】
一般式(I)において、X1およびX2のうち、少なくとも1つはフッ素原子を表す請求項1記載の化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、X1およびX2がフッ素原子を表す請求項1記載の化合物。
【請求項4】
一般式(II)
【化2】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表し、X3は、水素原子、水酸基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、ベンジルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの-CH2-基は独立的に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置換されていてもよく、X4は、水素原子、水酸基または-B(OR1)2基を表し、-R1基は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表される1-ヨードナフタレン誘導体に、触媒存在下、(トリフルオロメチル)トリメチルシランを作用させることによる一般式(I)におけるn=0で表されるナフタレン誘導体の製造方法。
【請求項5】
一般式(III)
【化3】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表し、X3は、水素原子、ベンジルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、ベンジルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基または炭素数2〜12のアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの-CH2-基は独立的に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置換されていてもよく、X4は、水素原子を表し、-R1基は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表される1-ナフトール誘導体に、S-トリフルオロメチル塩などの梅本試薬あるいは高原子ヨウ素化トリフルオロメチル塩などのトニ試薬を作用させることによる一般式(I)におけるn=1で表されるナフタレン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−53117(P2010−53117A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127604(P2009−127604)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】