説明

ナレッジマネージメントシステム

【課題】データベースに蓄積されている情報の全体像を、ディスプレイの表示を概観しただけでデータベースのユーザに理解させること。
【解決手段】業務の内容と関連付けて知識データベースに記憶された業務の項目を体系的に展開したフロー52を表面に配置した球体51(又はその一部)の3D画像を、クライアント端末のキーボードやマウスの操作によって指定された視点に対応する表示倍率及び視認方向で、クライアント端末のディスプレイにポータル画面45として表示させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナレッジマネージメントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、製造業における生産技術部門においては、生産性を高めるための様々な知識や技術が蓄積される。このような知識、技術は、後に同様の工程を含む生産計画が生じた場合等に、有効に活用されることが望ましい。そこで、生産技術における知識や技術に関する情報を可視化し組織内で共有することが重要となる。
【0003】
このような知識や技術の可視化に関して従来から、知識や技術に関する情報をデータベース化して蓄積し、蓄積した情報を必要に応じて端末から参照させる等して、生産技術に携わる設計者等に提供することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上述したようなデータベースでは、データベースの情報を参照するユーザが使用する、マンマシンインタフェースとしてのポータル画面を、どのように構成するかが重要となる。例えば、ポータル画面が単にデータベースに蓄積された情報のタイトルを羅列するだけのものであると、タイトルを指定しないことにはデータベースから情報が出力されないので、必要な情報がデータベースに蓄積されていることをユーザが予め認識していて、そのユーザがタイトルを指定できる場合にしか、データベースの情報を活用することができない。
【0005】
そこで、ポータル画面において、データベースに蓄積されている情報のタイトルを、概念の大小等に応じて体系化したツリー形式でディスプレイに表示させることが考えられる。情報のタイトルがツリー表示されていれば、必要な情報がデータベースに蓄積されていることをユーザが予め認識していなくても、そのツリーの全体を概観することで、参照する必要がある情報の有無をユーザが自身で認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−139600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したポータル画面でデータベースに蓄積されている情報のタイトルをツリー表示する場合、タイトルの数が増えると、ツリーの全体がディスプレイの画面に収まりきれなくなることがある。その場合には、ツリーの一部をディスプレイに表示させ、ツリーの残る部分を見るときには画面を上下又は左右にスクロールさせてディスプレイに表示させることになる。このような形の画面スクロールを伴うポータル画面表示では、データベースに蓄積されている情報の全体像を、ディスプレイの表示を概観しただけではユーザに理解させることが難しい。このような問題は、生産技術部門において蓄積された知識や技術のデータベース化に限って発生する問題ではなく、例えば製造系の現場で培われた技能等、あらゆる分野で生まれた情報のデータベース化においても同様に発生し得る問題である。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、データベースに蓄積されている情報の全体像を、ディスプレイの表示を概観しただけでデータベースのユーザに理解させることができるナレッジマネージメントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムは、
体系化された複数の項目と各項目に対応する複数の内容とが関連付けて記憶されたデータベースの格納情報をディスプレイに表示させるナレッジマネージメントシステムにおいて、
前記複数の項目を体系的に展開したフローが表面に配置された球体を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイに表示させる前記球体の視点を指定する視点指定手段と、
前記視点指定手段によって指定された視点から前記球体までの距離に対応する倍率で、前記指定された視点に対応する方向から視認可能な前記球体の表面部分を、前記フローのうち前記表面部分に配置されたフロー部分と共に前記ディスプレイに表示させる球体表示手段と、
前記ディスプレイに表示される前記フロー部分に配置された1又は複数の前記項目から所望の項目を指定する項目指定手段と、
前記項目指定手段によって指定された項目に関連付けて前記データベースに記憶された前記内容を前記ディスプレイに表示させる内容表示手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムによれば、データベースに記憶された複数の項目を体系的に展開したフローが、指定された視点に対応する倍率及び指定された視認方向の球体の表面上に配置されて、ディスプレイに表示される。したがって、適切な視点及び視認方向の指定により、球体のフローが配置された表面部分の全体をディスプレイに表示させることができる。これにより、データベースに記憶された項目の全体像を、ディスプレイの表示を概観しただけで体系的に理解させることができる。
【0011】
また、請求項2に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムは、請求項1に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムにおいて、前記球体表示手段が、前記倍率に応じて、前記表面部分と共に前記ディスプレイに表示させる前記フロー部分の表示内容の詳細度を変更することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムによれば、請求項1に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムにおいて、ディスプレイにおける球体の表示倍率に応じて、ディスプレイの球体の表面に表示されるフローの表示内容の詳細度が変更される。したがって、球体の表示倍率が高い場合は、各項目に大きな表示領域を確保してフローの表示内容の詳細度を高くすることができる。一方、球体の表示倍率が低く各項目に大きな表示領域を確保できない場合は、各項目の表示領域に表示するフローの内容の詳細度を低くすることができる。
【0013】
さらに、請求項3に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムは、請求項1又は2に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムにおいて、前記各項目が、互いに異なる複数の体系のうちいずれか1つにそれぞれ属しており、前記球体の表面に、体系別の複数の前記フローがそれぞれ配置されており、前記データベースの格納情報上では、属する体系が互いに異なる前記項目どうしが関連付けされており、前記球体表示手段が、前記表面部分の上方の空間において、属する体系が互いに異なる前記項目どうしを各項目のそれぞれ属するフロー部分間で接続するサブフローを、前記ディスプレイに表示させることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムによれば、請求項1又は2に記載した本発明のナレッジマネージメントシステムにおいて、体系が異なる複数のフロー中の項目どうしがデータベースの格納情報上で関連付けられている場合は、それらの項目どうしを接続するサブフローが、ディスプレイに表示された球体の表面部分の上方空間に表示される。したがって、ディスプレイに表示されている球体の表面部分に配置されたフロー部分の項目の上方空間にサブフローが表示されている場合は、その項目に関連性のある項目が別のフロー上に存在することを、ディスプレイの表示により認識させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナレッジマネージメントシステムによれば、データベースに記憶された項目の全体像を、ディスプレイの表示を概観しただけで体系的に理解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るナレッジマネージメントシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の知識データベースの記憶内容を示す説明図である。
【図3】図1のクライアント端末のディスプレイに表示される説明画面の説明図である。
【図4】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図5】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図6】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図7】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図8】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図9】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図10】図9の説明画面にリンクを設定した状態を示す説明図である。
【図11】図10のリンク先の説明画面が元の説明画面に重ねてクライアント端末のディスプレイに表示された状態を示す説明図である。
【図12】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図13】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図14】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図15】図14のポータル画面の表示倍率を高くした状態を示す説明図である。
【図16】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図17】図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【図18】図17のポータル画面の表示倍率を高くした状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るナレッジマネージメントシステムの概略構成を示す説明図、図2は図1の知識データベースの記憶内容を示す説明図、図3は図1の知識データベースにおいて知識の項目と関連付けられて記憶されている知識の内容を示すクライアント端末のディスプレイによる表示例の説明図である。
【0019】
本実施形態のナレッジマネージメントシステムは、図1に示すように、知識データベース10、画像データサーバ20、WEBサーバ30、及び、複数のクライアント端末40,40,…をLAN接続したイントラネットによって構成されている。一部又は全部のクライアント端末40は、インターネット(図示せず)を介して、知識データベース10、画像データサーバ20、及び、WEBサーバ30に接続してもよい。各クライアント端末40は、ディスプレイ41、キーボード42、及び、マウス43をそれぞれ有している。
【0020】
前記知識データベース10は、例えば、製造業における生産技術部門において開発された、生産性を高めるための様々な知識や技術の項目(タイトル)と、その内容とを関連付けて記憶するものである。ここで、項目としては、図2に示すように、「業務フロー」と「ノウハウ」とがある。本実施形態では、これら「業務フロー」と「ノウハウ」のいずれもが、オントロジーを用いて体系化されている。そのために、知識データベース10には、「業務フロー」に関係する多数の項目どうしや、「ノウハウ」に関係する多数の項目どうしが、OWL(Web Ontology Language )を用いて、ロールとクラスの少なくとも一方の概念で体系的に関連付けされている。また、知識データベース10においては、「業務フロー」に関係する項目の一部と「ノウハウ」に関係する項目の一部とが、OWLを用いてロールの概念で関連付けされている。
【0021】
上述したようなOWLを用いた項目どうしの関連付けは、例えば、大阪大学溝口研究室の法造サイト(http://www.hozo.jp/hozo/)において配布されているソフトウェア「法造」のオントロジエディタを利用して行うことができる。また、各項目と関連する内容は、例えば、図3に示すようなものである。図3は、図1に示すクライアント端末40のディスプレイ41に表示される知識内容の説明画面を示す説明図である。図3の説明画面46では、「業務G−2−3」という業務の項目に関連付けられた業務の内容を例示している。このような説明画面46をクライアント端末40のディスプレイ41に表示させるのに必要なデータが、対応する項目と関連付けて、知識データベース10に記憶されている。なお、説明画面46の表示に必要なデータの代わりに、説明画面46がウェブブラウザに表示されるインターネット上又はイントラネット上のウェブアドレスを、対応する項目と関連付けることもできる。
【0022】
上述した「業務フロー」と「ノウハウ」は、クライアント端末40のディスプレイ41にウェブブラウザを利用して表示される後述のポータル画面45(図4参照)中に、体系的に展開したフローとして表示される。ポータル画面45中に表示させるフローは、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって、「業務フロー」と「ノウハウ」の一方又は両方のどちらかに選択設定することができる。そして、選択された項目のOWLを用いた体系的な関連付けのデータは、例えば本システムの起動時に、後述するWEBサーバ30に出力される。
【0023】
前記画像データサーバ20は、上述したポータル画面45(図4参照)において球体の画像を表示させるのに必要なデータを、クライアント端末40に供給するものである。供給されたデータを用いて球体の画像をポータル画面45に表示させるために、クライアント端末40には、専用のアプリケーションソフトがインストールされている。このアプリケーションソフトは、画像データサーバ20から供給されたデータを用いてモデリング及び3Dレンダリングを行い、ディスプレイ41のウェブブラウザ上で球体の画像を表示させるためのものである。このようにしてウェブブラウザ上で表示される球体の表面とその上方空間の一部には、知識データベース10からWEBサーバ30に出力された、クライアント端末40側で選択された項目の体系的なフローが表示される。
【0024】
本実施形態では、画像データサーバ20のベースとして、地球の3D画像を提供する米国グーグル社のGoogle Earth(Googleは登録商標)用にグーグル社から提供されるGoogle Earth Server を用いている。このGoogle Earth Server は、地球の3D画像をディスプレイ41のウェブブラウザ上で表示させるためのデータを、要求に応じてクライアント端末40に供給するものである。Google Earth Server からクライアント端末40に供給されるデータによる地球の3D画像は、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作により入力指定された視認方向から見た地球の画像となる。また、Google Earth Server からクライアント端末40に供給されるデータによる地球の3D画像は、キーボード42やマウス43の操作により入力指定された視点(図示せず)から地球までの距離に対応する倍率の地球の画像となる。したがって、ウェブブラウザ上で表示される地球の3D画像は、倍率や視認方向次第で地球全体となることもあれば、地球の一部となることもある。
【0025】
クライアント端末40のディスプレイ41のウェブブラウザ上で表示される地球の3D画像には、クライアント端末40において、地球の表面が無地のマスク画像で覆われた球体となるような加工を施すことができる。また、ウェブブラウザ上で表示される地球の3D画像には、知識データベース10に記憶されている項目のOWLを用いた体系的な関連付け関係を示す体系的な項目のフローの画像を、重畳表示させる加工を施すことができる。このフローでは、節と節とを接続する線によって体系が表現され、各節の部分に項目が体系的に配置される。なお、各節には、項目と共に、画鋲のピンのようなアイコンの画像が表示される。
【0026】
上述したマスク画像で地球の3D画像の表面を覆う加工や、フローの節と節を接続する線を表示させる加工は、Google Earth Server の国境や州境等を地球の3D画像に重ねて表示させる機能を利用して実現することができる。また、フローの節となる項目の位置に画鋲のピンのようなアイコンを表示させる画像データ加工は、Google Earth Server の指定した地点にランドマークとしてのピンのアイコンを表示させる機能を利用して実現することができる。これらの機能は、基本的に、クライアント端末40にインストールされるGoogle Earth専用のアプリケーションソフトによって実現される。
【0027】
したがって、項目の体系的なフローの画像データをディスプレイ41のウェブブラウザ上で地球の3D画像に重畳表示させるには、OWLによる項目どうしの関連付け関係の定義内容に基づいて、各項目を上述したマスク(地球の3D画像の表面)上に配置するための、各項目の座標値(フロー上の節となる箇所の座標値)を決定しておく必要がある。この座標値は、マスクの下にある地球の3D画像に合わせて、地球の緯度、経度、高度によって表される。
【0028】
上述のようにして、OWLによる各項目の座標値を決定することで、例えば、クラスレベルが1である項目やそのパートオブの関係にある項目は、地球の経度線方向に所定ピッチ(所定経度)ずつ間隔をおいて展開、配置される。その下のクラスレベル2の項目やそのパートオブの関係にある項目は、地球の緯度線方向に、クラスレベル1における項目間の所定ピッチよりも短いピッチ(所定緯度)ずつ間隔をおいて展開、配置される。以後、クラスレベルが3、4、5、6…と下がる(体系上の項目の階層が下がる)につれて、展開方向を緯度線方向、経度線方向、緯度線方向、経度線方向、…と90゜ずつ変え、かつ、項目間のピッチを縮めながら、各項目やそのパートオブの関係にある項目が展開、配置される。
【0029】
前記WEBサーバ30は、例えば本システムの起動の際に、知識データベース10の記憶内容をロードする。そして、ロードした記憶内容から、上述したOWLによる各項目の座標値を、OWLによる項目どうしの関連付け関係の定義内容に基づいて決定する。
【0030】
また、前記WEBサーバ30は、上述した画像データサーバ20から供給される球体の3D画像の画像データを、ウェブブラウザ上で表示可能なデータ形式とする。また、WEBサーバ30は、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって指定された項目に関連する知識の内容を示す説明画面のデータを、ウェブブラウザ上で表示可能なXML又はHTML形式で生成する。この説明画面のデータは、指定された項目に関連付けて知識データベース10に記憶されている知識の内容のデータを参照して生成される。
【0031】
以上のような構成により、本実施形態のナレッジマネージメントシステムでは、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって選択された項目の関連付け関係を示す体系的な項目のフローを表面に配置した、無地のマスク画像で覆われた球体の3D画像を、クライアント端末40のディスプレイ41のウェブブラウザ上で表示させることができる。
【0032】
次に、本実施形態のナレッジマネージメントシステムの動作(作用)について説明する。図4乃至図13は図1のクライアント端末のディスプレイに表示されるポータル画面の説明図である。
【0033】
本実施形態のナレッジマネージメントシステムにおいては、システムのプログラムをクライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって起動させると、クライアント端末40においてウェブブラウザが起動されてディスプレイ41に表示される。そして、このウェブブラウザによって、図4に示すポータル画面45がディスプレイ41に表示される。このポータル画面45では、項目の体系的なフロー52を表面に配置した球体51の3D画像が表示される。
【0034】
球体51の表面にフロー52を配置させる項目は、ポータル画面45の左側に表示される項目一覧のチェックボックスを、キーボード42やマウス43の操作によってチェックすることで選択することができる。また、球体51は、システム起動時のデフォルト状態では、球体51の正面で最も球体51から離れた箇所を視点とした場合の倍率と、球体51を正面から視認した場合の視認方向で、ポータル画面45上に表示される。
【0035】
クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって、上述したデフォルト状態から視認方向を変えずに視点を球体51に近づけると、図5の説明図に示すように、ポータル画面45における球体51の3D画像の表示倍率が、図4の状態よりも高くなる。図5に示す場合には、表示倍率が高くなった結果、図4の一点鎖線の枠で囲んだ球体51の一部の表面がポータル画面45の全体に表示されることになる。また、表示倍率が低い図4の状態では表示されていない知識の項目名やフロー52上の項目の位置を示すピンが、表示倍率の高い図5の状態では表示されるようになる。つまり、フロー52の表示内容の詳細度が、球体51の表示倍率の変化に伴って変更されることになる。このような表示形態の変更は、画像データサーバ20のベースとなるGoogle Earth Server の、地球上の主要な都市名等の表示を地球の3D画像の表示倍率に応じて行ったり行わなかったりさせる機能を利用して実現することができる。
【0036】
なお、図5の状態において、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって、表示倍率を変えずに球体51の視認方向を正面からポータル画面45の上方に移動させると、図6の説明図に示すように、ポータル画面45に表示される球体51の3D画像が、球体51の正面よりも上方を斜めに視認した画像となる。
【0037】
さらに、図5の状態において、視認方向を変えずに視点を球体51に近づけると、図7の説明図に示すように、ポータル画面45における球体51の3D画像の表示倍率が図5の状態よりもさらに高くなる。なお、図7の状態において、クライアント端末40のキーボード42やマウス43の操作によって、表示倍率を変えずに球体51の視認方向を正面からポータル画面45の右上方に移動させると、図8の説明図に示すように、ポータル画面45に表示される球体51の3D画像の視認方向が、球体51の正面よりも右上方に変化する。
【0038】
また、図8の状態において、例えば、クライアント端末40のマウス43の操作によりポインタ(図示せず)を「業務G−2−3」の項目に対応するピンに重ならせると、「業務G−2−3」の項目に対応する知識内容の説明画面を表示させるためのポップアップ画像53が、ポータル画面45上に表示される。そして、このポップアップ画像53中の「業務G−2−3」のハイパーリンクをマウス43の操作等によりクリックすると、図9の説明図に示すように、「業務G−2−3」の項目に対応する知識内容として知識データベース10に記憶されている内容を示す、図3を参照して説明した「業務G−2−3」の説明画面46が、図9に示すように、ポータル画面45とは別のウェブブラウザを用いて、ポータル画面45に重ねてディスプレイ41に表示される。
【0039】
さらに、ディスプレイ41に表示された説明画面46による知識の内容中に、これと関連のある情報が存在する場合に、これを予め検索して抽出しておくことにより、対応する情報の画面をディスプレイ41にポップアップ表示させるためのリンクを、説明画面46中に自動的に貼るように構成することもできる。例えば、図10の説明図に示す説明画面46中の枠で囲まれたキーワードは、対応する情報が存在する項目であり、これを囲む枠がリンクの存在を示す表示となる。この枠で囲まれたキーワードをマウス43の操作等によってクリックすることで、クリックしたキーワードのリンク先のウェブアドレスの画面を表示する別のウェブブラウザが新しく開かれて、ディスプレイ41に表示される。即ち、図11の説明図に示すように、クリックしたキーワードに対応する情報を示す説明画面46が、新しく開かれたウェブブラウザを用いてディスプレイ41に表示される。
【0040】
なお、図11の説明図に示すポップアップ表示された説明画面46で表示する情報は、キーワードの項目に関連付けて知識データベース10に記憶されたウェブアドレスに存在する情報であってもよく、知識データベース10の記憶内容とは別にキーワードの項目に関連付けされた特定のウェブアドレスに存在する情報の画面であってもよい。
【0041】
このような構成は、例えば、英国Knowledge Media Institute(KMi)のサイト(http://kmi.open.ac.uk/)において配布されているソフトウェア「Magpie The Semantic Filter」を利用して実現することができる。この場合、説明画面46中のリンクの存在を示す枠で囲むキーワードとリンク先のウェブアドレスとを関連付けて記憶する専用のサーバ(以下、「リンクサーバ」という。)50を、イントラネット上に接続して用いるのが好適である。但し、他のサーバと物理的に共用することも否定しない。
【0042】
このリンクサーバ50に記憶されるキーワードとリンク先のウェブアドレスとの関連付けデータのうち、少なくともキーワードの内容は、知識データベース10に項目として記憶されている内容に含まれる。また、リンク先のウェブアドレスも、知識データベース10に項目として記憶されている内容に含まれている場合がある。そこで、リンクサーバ50の記憶内容は、定期的に知識データベース10の最新の記憶内容に合わせて更新することが望ましい。知識データベース10の記憶内容をそのままリンクサーバ50の記憶内容として利用する場合は、知識データベース10に対応するデータ形式からリンクサーバ50に対応するデータ形式にデータコンバートしてインポートすればよい。
【0043】
なお、「Magpie The Semantic Filter」を利用する場合は、このソフトウェアによってリンクの存在を示す枠で囲んで説明画面46中に表示させるキーワードを、複数のグループの中から選ぶことができる。グループの選択は、ウェブブラウザの設定によって説明画面46のメニューバーの付近に表示される不図示のグループ選択ボタンのクリック操作で行うことができる。このようなグループ選択を行えるようにするために、リンクサーバ50のキーワードとリンク先のウェブアドレスとの関連付けデータには、キーワードとそのキーワードが属する1又は複数のグループとを関連付けるデータを含ませることになる。
【0044】
また、Marginalia等のオープンソースを利用して、説明画面46中に書き込みを追記することができるようにしてもよい。MarginaliaはJavaScript(登録商標)のウェブ注釈システムであり、ユーザがウェブブラウザに表示されたテキストを指定しハイライトさせて、そのテキストに関するマージンメモを書くことができるようにするものである。Marginaliaのソフトウェアは、geofのホームページ(http://www.geof.net/)から入手することができる。
【0045】
そして、例えばMarginaliaを利用して説明画面46中への書き込みを可能とする場合には、図3の中央の欄に記載された文章の書き込みに関連する文節又は単語を、マウス43の操作によって範囲指定する。これにより、範囲指定した文節又は単語の真横に位置する説明画面46の中央欄の右側寄り部分に、書き込み内容の入力欄が表示される。この入力欄にキーボード42の操作によって所望の書き込み内容を入力し、保存入力することで、以後ディスプレイ41に表示される説明画面46の中央の欄の右側寄り部分には、先に入力した書き込み内容が表示されることになる。この一連の動作においてMarginaliaは、説明画面46上における書き込みの入力内容を、説明画面46を構成する知識内容の更新内容として取得し、これを知識データベース10の対応する知識内容の更新に適したフォーマットに加工して知識データベース10に追加保存させる。この追加保存は、元の知識内容を含めた上書き保存形式によって行ってもよい。
【0046】
ちなみに、図12の説明図に示すように、ポータル画面45において、球体51の表面に「業務フロー」と「ノウハウ」の各フロー52が共に配置されている場合、それぞれのフロー52上に配置された「業務フロー」に関係する項目と「ノウハウ」に関係する項目との間が、球体51の上方の空間を通るサブフロー54で接続される場合がある。このサブフロー54は、知識データベース10において、「業務フロー」に関係する項目と「ノウハウ」に関係する項目とが関連付けて記憶されている場合に、ポータル画面45に表示される。図12では、「業務フロー」の、「業務F−3−8−1−1」の項目の下のクラスに位置する「業務F−3−8−1−1−1」の項目が、「ノウハウ」に関係する項目と関連付けられている例を示している。具体的には、図13の説明図に示すように、「ノウハウ」の「ノウハウA−2−1−1」、「ノウハウA−2−2−1」、「ノウハウB−2−1」等の項目が、サブフロー54によって、「業務F−3−8−1−1」の項目に連なるフロー52として表示されている。
【0047】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態のナレッジマネージメントシステムにおいては、知識データベース10が請求項中のデータベースに相当している。また、本実施形態では、クライアント端末40のキーボード42やマウス43が、請求項中の視点指定手段、方向指定手段、及び、項目指定手段に相当している。さらに、本実施形態では、画像データサーバ20及びWEBサーバ30が、請求項中の球体表示手段を構成している。また、本実施形態では、WEBサーバ30が請求項中の内容表示手段を構成している。
【0048】
このように構成された本実施形態のナレッジマネージメントシステムによれば、知識の内容と関連付けて知識データベースに記憶された知識の項目を体系的に展開したフロー52を表面に配置した球体51(又はその一部)の3D画像を、クライアント端末のキーボードやマウスの操作によって指定された視点に対応する表示倍率及び視認方向で、クライアント端末のディスプレイにポータル画面45として表示させる構成とした。
【0049】
このため、適切な視点及び視認方向をキーボード42やマウス43の操作によって指定することで、球体51のフロー52が配置された表面部分の全体をディスプレイ41のポータル画面45に表示させることができる。これにより、知識データベース10に記憶された知識の項目の全体像を、ディスプレイ41(ポータル画面45)の表示を概観しただけで体系的に理解させることができる。また、球体51の視認方向を指定することができるので、注目する項目を含むフロー52を所望の方向から見た表示がディスプレイ41(ポータル画面45)において行われるようにして、知識の項目の体系をより把握しやすい態様でフロー52をディスプレイ41(ポータル画面45)に表示させることができる。
【0050】
なお、本実施形態のナレッジマネージメントシステムでは、球体51の表示倍率が低い図4の状態では表示されていない知識の項目名やフロー52上の項目の位置を示すピンが、表示倍率の高い図5の状態では表示されるようになる構成とした。このような、フロー52の表示内容の詳細度を球体51の表示倍率の変化に伴って変更させるための構成は、省略してもよい。しかし、本実施形態のようにその構成を設けることとすれば、ディスプレイ41(ポータル画面45)に表示される球体51の倍率と連動するフロー52の表示分解能が低いときには、フロー52の表示内容の詳細度を低くし、フロー52の表示分解能が低いときにはフロー52の表示内容の詳細度を高くして、フロー52の表示内容を目視で判別できる内容に調整することができる。
【0051】
また、本実施形態のナレッジマネージメントシステムでは、ポータル画面45において球体51の表面に表示された「業務フロー」のフロー52の項目と「ノウハウ」のフロー52の項目との間が、球体51の上方の空間を通るサブフロー54で接続される場合がある構成とした。このような構成は省略してもよい。しかし、本実施形態のようにその構成を設けることとすれば、体系が異なる「業務フロー」と「ノウハウ」とにそれぞれ関係する知識項目どうしに関連性がある場合に、知識データベース10上でその関連付けを定義しておくことで、体系間を横断した知識の項目の体系的なフロー52をディスプレイ41(ポータル画面45)に表示させて、これから実行する業務からその業務に関連するノウハウを容易に認識させ、かつ、その内容を把握させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、知識データベース10に記憶されている知識の項目及びその内容が、「業務フロー」に関するものと「ノウハウ」に関するものである場合について説明した。しかし、知識データベース10に記憶させる知識は「業務フロー」や「ノウハウ」に限らず任意である。また、本実施形態では、2つの体系(「業務フロー」や「ノウハウ」)のいずれかに属する知識(項目、内容)が知識データベース10に記憶されているものとしたが、知識データベース10に記憶される知識は単一の体系に属するもののみであってもよく、3つ以上の異なる体系のいずれかに属する知識であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、あるクラスレベルの項目と、それより一つ下のクラスレベルの項目とが、互いに展開方向を90゜ずつ方向を変えて(緯度線方向又は経度線方向)配置される場合について説明した。しかし、各クラスレベル毎の項目の配置は、このような配置に限定されない。
【0054】
例えば、「ノウハウ」は一つのクラスレベルの項目に対して一つ下のクラスレベルの項目が複数並列に関連付けられる場合が多い。そのような場合は、上位の項目から下位の項目に向かって分岐を繰り返すツリーによって体系的なフローを表現するのが、使い勝手上好ましい。
【0055】
このようなケースに対応して、球体51上の一点を基点とし、この基点から放射状に展開して体系的なフロー52をディスプレイ41に表示させるようにしてもよい。その場合、フロー52上の各クラスレベル(階層)に属する各項目を、例えば、ディスプレイ41の画面に平面状に表示される球体51の画像上において、同じ階層どうしはフロー52の基点からの距離がおおよそ同じになり、異なる階層どうしは基点からの距離が明らかに異なるように、階層毎に分散して配置するようにしてもよい。
【0056】
この場合は、上位のクラスレベルに属する項目ほどフロー52の基点の近くに配置したフロー52をディスプレイ41に表示させることになる。このとき、ディスプレイ41に表示された球体51の平面画像の中心をフロー52の基点とするならば、上位のクラスレベルから下位のクラスレベルに至る(クラスレベルが例えば3、4、5、6、…と下がる)につれて、直上のクラスレベルに属する項目とのフロー52の基点からの距離差を順次短くしてもよい。このようにすることで、画面上では平面状に表示されるが実際には球面である球体51の表面に、各クラスレベルの項目を立体的な遠近感を伴って表示させることができる。
【0057】
また、最下位のクラスレベルに属する項目の球体51の平面画像の中心(フロー52の基点)からの距離は、球体51の平面画像の中心から外周までの最短距離よりも短くして、フロー52をディスプレイ41に表示させるのが望ましい。
【0058】
そして、最も下のクラスレベルに属する項目の球体51の平面画像の中心(フロー52の基点)からの距離を、球体51の平面画像の中心から球体51の外周までの最短距離よりも小さくすることで、全てのクラスレベルに属する項目を球体51の平面画像上に配置することができる。これにより、球体51の裏面側に項目が配置されるクラスレベルが発生するのを防ぎ、項目が球体51の裏側に隠れて球体51の平面画像上に表示されなくなるのを防ぐことができる。
【0059】
ところで、各クラスレベルの項目(節)の配置は、上述したように地球の緯度、経度、高度による座標値で表される。そこで、同じクラスレベルの項目を球体51の平面画像上における中心からおおよそ同じ距離の位置に配置する場合には、球体51の平面画像の中心に設定するフロー52の基点を地球の北極や南極の座標位置に設定するのが好ましい。これにより、同じクラスレベルの項目に地球の同じ緯度の座標値を与えることで、それらの同じクラスレベルの項目を球体51の平面画像上における中心からおおよそ同じ距離の位置に容易に配置することができる。以後、フロー52の基点を地球の北極(又は南極)の座標位置に設定するものとして説明する。
【0060】
次に、各項目の経度に関する座標値を決定する方法について説明する。ディスプレイ41に表示された球体51の平面画像上における中心、つまり、地球の北極(又は南極)から放射状に展開される各フローは、自身よりも一つ下位のクラスレベルの項目が1又は複数関連付けられたブランチの項目と、自身に関連付けられた一つ下位のクラスレベルの項目が一つも存在しないリーフの項目との集合によって構成される。
【0061】
したがって、各項目の経度に関する座標値を決定するのに当たっては、各フローの全ての項目に、球体51の平面画像(地球の表面)上に重ならずに配置するためのスペース(経度角度幅)を配分する必要がある。
【0062】
このとき、上位のクラスレベルの項目が、例えば、緯度線に沿って経度角の値が増す方向に項目A、項目B、項目C、…の順で地球の表面上に配置されているならば、項目Aに関連する下位のクラスレベルの項目(項目群)も、上位のクラスレベルの項目と同じ配列順で、地球の表面上に配置するのが望ましい。
【0063】
なぜならば、上位のクラスレベルと下位のクラスレベルとで項目の配列順が入れ替わると、上位のクラスレベルと下位のクラスレベルとの間で関連する項目どうしを接続する線が、線どうしで干渉したり、周辺の項目の表示と干渉してしまうからである。
【0064】
但し、上位のクラスレベルと下位のクラスレベルとで項目の配列順を同じにしても、上位のクラスレベルと下位のクラスレベルとの間で関連する項目どうしを接続する線を、地球の表面上で他の線や項目の表示と絶対に干渉しないようにできるとは限らない。これを確実に防ぐには、後述する例のような条件で各項目にスペースを配分する必要がある。
【0065】
後述する条件を満たすように各項目にスペースを配分すれば、そのスペース内に項目の座標値を設定することで、地球の表面上に各項目とそれらを接続する線とを互いに干渉することなく配置できるようになる(但し、表示の解像度不足でディスプレイ41に表示される項目や線が重なる状態を除く)。
【0066】
以下、各項目にスペースを配分する際の条件について説明する。この条件の一例として、地球の北極(又は南極)に近い緯度に配置されるクラスレベルから順に、各項目にスペースを配分する方法がある。この方法では、まず、クラスレベル=1の項目の数で経度=360°を等分した経度方向の角度幅を、クラスレベル=1の各項目に割り当てる。次に、クラスレベル=1の一つの項目に割り当てられた経度方向の角度幅を、自身に関連付けられたクラスレベル=2の項目の数で等分した経度方向の角度幅を、クラスレベル=2の各項目に割り当てる。
【0067】
以後、同様の操作を一番末端のクラスレベルの各項目に至るまで繰り返すことで、一つのフロー上に存在する全ての項目(ブランチの項目及びリーフの項目)に、地球の表面上の互いに重ならないスペースを付与する。
【0068】
上述した方法で配分されたスペースの中央の経度値を、各項目の経度に関する座標値とし、各項目のクラスレベルに応じた緯度値を、各項目の緯度に関する座標値とすることで、各項目とそれらを接続する線とが互いに干渉することがないように、各項目と線とをそれぞれ地球の表面上に配置することができる。そのように各項目や線が地球の表面上に配置されたポータル画面45を図14の説明図に示す。
【0069】
この方法で各項目の経度に関する座標値を決定すると、同じクラスレベルの項目の間で、それぞれの項目に関連付けられた下位のクラスレベル(直下及びそれよりもさらに下位の各クラスレベルを含む)に存在するリーフの項目の数に極端な差がある場合に、図15の説明図に示すように、一部の項目において、ディスプレイ41上における球体51の表示倍率を限界まで高くしても、球体51の平面画像上において、同じクラスレベルの項目が重なって表示されてしまう。これは、上位のクラスレベルの項目に割り当てられた経度方向のスペースに対して、それよりも下位のクラスレベルに関連付けられたリーフの項目の数が多すぎることで発生する現象である。
【0070】
そこで、図15に示すような現象が発生しないようにするために、地球の北極(又は南極)から遠い緯度方向の座標値が割り当てられたクラスレベル(低いクラスレベル)から順に、各項目にスペースを配分する方法が考えられる。この方法では、まず、クラスレベルの高低を問わず、リーフの項目の総数で経度=360°を等分した経度方向幅のスペースを、各リーフの項目に割り当てる。そして、割り当てられたスペースの経度方向における中央の経度値を、各リーフの項目の経度に関する座標値とする。
【0071】
次に、各リーフの項目の一つ上のクラスレベルにあるブランチの項目の経度に関する座標値を、そのブランチの項目に関連付けられた一つ下のクラスレベルに位置する各リーフの項目にそれぞれ割り当てられたスペースの全体の、経度方向における中央の経度値を、ブランチの項目の経度に関する座標値とする。
【0072】
続いて、同一のブランチの項目に関連付けられた、緯度に関する座標値が決定された一つ下のクラスレベルのブランチの項目やリーフの項目にそれぞれ割り当てられたスペースの全体の、経度方向における中央の経度値を、それらの項目と関連付けられた一つ上のクラスレベルのブランチの項目の経度に関する座標値に決定する。
【0073】
以後、同様の操作をクラスレベル=1のブランチの各項目に至るまで繰り返す。各項目の緯度に関する座標値は、先に説明したスペースの配分方法と同じく、各項目のクラスレベルに応じた緯度値とする。これにより、一つのフロー52上に存在する全ての項目(ブランチの項目及びリーフの項目)に、地球の表面上の互いに重ならないスペースを付与する。これにより、各項目とそれらを接続する線とが互いに干渉することなく配置される。
【0074】
しかし、この方法で各項目の経度に関する座標値を決定すると、図14を参照して説明した方法では図15に示す現象が発生するような、下位のクラスレベルに存在するリーフの項目数に極端な差があるときには、図16の説明図に示すように、上下のクラスレベルの関連付けられた項目どうしを接続する線の向きが、球体51の中心から離れて下のクラスレベルに移るにつれて極端に変わってしまう場合がある。このようになると、フロー52の全体の体系が一見しただけで理解するのが困難になり、使い勝手上好ましくない。
【0075】
そこで、各クラスレベル毎の項目に、それぞれ、経度方向幅の割合を割り当てて、その合計を経度=360°に割り付けることで、各項目にスペースを配分する方法を用いる。例えば、クラスレベル=1の各項目に、ブランチの項目であるかリーフの項目であるかを問わず、経度方向幅について一定値分の一の割合を一律に割り当てることとする。ここでは、一定値=2とした場合を例に取って説明する。
【0076】
そして、クラスレベルが下がるにつれて、それぞれのクラスレベルの項目に割り当てる割合を、一定値分の一よりも小さい値に順次下げていく。具体的には、線形的に割合を下げる線形モード、指数的に割合を下げる指数モード、べき乗的に割合を下げるべき乗モード等が考えられる。
【0077】
線形モードでは、クラスレベルの値に反比例して一定値を小さくした値を、各クラスレベルの項目に経度方向幅の割合として割り当てる。例えば、クラスレベル=2の各項目については、「一定値分の一=1/2」を「1/2」した「1/4」という割合が割り当てられる。クラスレベル=3の各項目については、「一定値分の一=1/2」を「1/3」した「1/6」という割合が割り当てられる。
【0078】
指数モードでは、一定値のクラスレベル乗に反比例した値を、各クラスレベルの項目に経度方向幅の割合として割り当てる。例えば、クラスレベル=2の各項目については、一定値=2の2乗分の一である「1/4」という割合が割り当てられる。クラスレベル=3の各項目については、一定値=2の3乗分の一である「1/8」という割合が割り当てられる。
【0079】
べき乗モードでは、クラスレベルの一定値乗に反比例した値を、各クラスレベルの項目に経度方向幅の割合として割り当てる。例えば、クラスレベル=2の各項目については、クラスレベルの「2」を一定値乗した=2×2の逆数である「1/4」という割合が割り当てられる。クラスレベル=3の各項目については、クラスレベルの「3」を一定値乗した=3×3の逆数である「1/9」という割合が割り当てられる。
【0080】
このようにして各クラスレベルの項目に割り当てた割合を合計し、例えばその合計が「9/2」であれば、これに経度=360°に割り付けて、例えば割合「1/2」を経度方向幅=20゜に換算する。そして、各クラスレベルの項目に、それぞれに割り当てられた割合に相当する経度方向幅のスペースを割り当てて、割り当てられたスペースの経度方向の中央の経度値を、経度に関する座標値とする。また、各項目の緯度に関する座標値は、先に説明したスペースの配分方法と同じく、各項目のクラスレベルに応じた緯度値とする。
【0081】
上述した線形モード、指数モード、べき乗モードのいずれを用いても、各クラスレベルの項目の配置は、経度方向において360°の範囲内に収まるように割り付けることができる。そして、同じクラスレベルのリーフの項目に対して同じ経度角度幅のスペースを配分すれば、傾向として図17の説明図に示すように、同じクラスレベルの項目を経度方向において粗密のばらつき無く配置することができる。これにより、上下の各クラスレベルの関連付けられた項目どうしのフロー上における位置関係に一定の方向性が見られるようになる。
【0082】
こうすることで、球体51の実際の経度方向幅とフロー52上における各項目の体系とに見合った、粗密のばらつきが少ない項目の配置を実現することができる。そのため、フロー52の全体の体系を一見して理解できるレイアウトが維持され、使い勝手がよいものとなる。
【0083】
そして、上述した線形モード、指数モード、べき乗モードのいずれかを用い、同じクラスレベルのリーフの項目に対して同じ経度角度幅のスペースを配分して、各項目の経度に関する座標値を決定すると、球体51の中心から緯度方向に離れたクラスレベルの項目に関連付けられた一つ下のクラスレベルの項目が多数存在しても、図18の説明図に示すように、球体51の表示倍率を高くすると同じクラスレベルの項目が間隔をおいて表示されるようになる。
【0084】
以上に説明した3通りの方法のいずれでも、上位の項目から下位の項目に向かって分岐を繰り返すツリーによって各クラスレベルの項目の体系的なフロー52を表現することができる。よって、球体51上に表示する項目の数やクラスレベル毎の内容等に応じて、適切な方法を選択してツリー状の体系的なフロー52を球体51上に表示させればよい。
【0085】
上述した各項目の球体51上における配置を決定する一連の処理は、本実施形態では、WEBサーバ30が知識データベース10からロードした記憶内容を参照して決定する。したがって、以上に説明した3通りの方法のいずれを実行する場合にも、画像データサーバ20及びWEBサーバ30が、請求項中の球体表示手段を構成することになる。
【0086】
このように構成された本実施形態のナレッジマネージメントシステムによっても、適切な視点及び視認方向をキーボード42やマウス43の操作によって指定することで、球体51のフロー52が配置された表面部分の全体をディスプレイ41のポータル画面45に表示させることができる。これにより、知識データベース10に記憶された知識の項目の全体像を、ディスプレイ41(ポータル画面45)の表示を概観しただけで体系的に理解させることができる。また、球体51の視認方向を指定することができるので、注目する項目を含むフロー52を所望の方向から見た表示がディスプレイ41(ポータル画面45)において行われるようにして、知識の項目の体系をより把握しやすい態様でフロー52をディスプレイ41(ポータル画面45)に表示させることができる。
【0087】
なお、上述した各実施形態では、製造業における生産技術部門において開発された、生産性を高めるための様々な知識や技術のデータベース化を例に取って説明したが、本発明のナレッジマネージメントシステムは、例えば製造系の現場で培われた技能等、あらゆる分野で生まれた情報のデータベース化に際して使用されるナレッジマネージメントシステムに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 知識データベース
20 画像データサーバ
30 WEBサーバ
40 クライアント端末
41 ディスプレイ
42 キーボード
43 マウス
45 ポータル画面
46 説明画面
50 リンクサーバ
51 球体
52 フロー
53 ポップアップ画像
54 サブフロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体系化された複数の項目と各項目に対応する複数の内容とが関連付けて記憶されたデータベースの格納情報をディスプレイに表示させるナレッジマネージメントシステムにおいて、
前記複数の項目を体系的に展開したフローが表面に配置された球体を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイに表示させる前記球体の視点を指定する視点指定手段と、
前記ディスプレイに表示させる前記球体の視認方向を指定する方向指定手段と、
前記視点指定手段によって指定された視点から前記球体までの距離に対応する倍率で、前記指定された視認方向から視認可能な前記球体の表面部分を、前記フローのうち前記表面部分に配置されたフロー部分と共に前記ディスプレイに表示させる球体表示手段と、
前記ディスプレイに表示される前記フロー部分に配置された1又は複数の前記項目から所望の項目を指定する項目指定手段と、
前記項目指定手段によって指定された項目に関連付けて前記データベースに記憶された前記内容を前記ディスプレイに表示させる内容表示手段と、
を備えることを特徴とするナレッジマネージメントシステム。
【請求項2】
前記球体表示手段は、前記倍率に応じて、前記表面部分と共に前記ディスプレイに表示させる前記フロー部分の表示内容の詳細度を変更することを特徴とする請求項1記載のナレッジマネージメントシステム。
【請求項3】
前記各項目は、互いに異なる複数の体系のうちいずれか1つにそれぞれ属しており、前記球体の表面には、体系別の複数の前記フローがそれぞれ配置されており、前記データベースの格納情報上では、属する体系が互いに異なる前記項目どうしが関連付けされており、前記球体表示手段は、前記表面部分の上方の空間において、属する体系が互いに異なる前記項目どうしを各項目のそれぞれ属するフロー部分間で接続するサブフローを、前記ディスプレイに表示させることを特徴とする請求項1又は2記載のナレッジマネージメントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−138495(P2011−138495A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270680(P2010−270680)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】