説明

ニコチン酸アミド含有油脂組成物

【課題】ニコチン酸アミドを高濃度含有する油脂組成物の提供。
【解決手段】ニコチン酸アミドが1,000〜20,000ppm含有し、水酸基価が9〜100mg−KOH/gである油脂組成物であって、ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(1)の関係を満たす油脂組成物。
(数1)
[Ln(C/850)]/X≦0.038 (Ln:自然対数) (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン酸アミド含有油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は、タンパク質、糖質とともに重要な栄養素で、特にエネルギー源として有用である。また、油脂は調理上、熱媒体等としても用いられる。また、油脂そのものの持つ良好な風味を付与する重要な素材である。近年の健康指向を背景に、食用油に栄養成分を強化して商品の訴求力を上げる試みがなされており、例えば、生理活性が高いα−、β−トコフェロールを高い含有量で含む安定化トコフェロール含有油脂組成物(特許文献1)等が報告されている。
前記トコフェロールは、脂溶性ビタミンであるビタミンEの一種で、もともと油脂に天然成分として含まれている成分である。しかし、栄養成分の中には油に不溶のものも多く、本来強化したい量を加えられないものが多い。
【0003】
一方、ニコチン酸アミドは、ニコチン酸と共にナイアシン(ビタミンB3)と総称される水溶性ビタミンの一つである。ニコチン酸アミドは、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)として、糖質・脂質・タンパク質の代謝系の補酵素として糖質の代謝、神経機能正常化等に関与するものであり、ヒトの健康維持にとって適量のニコチン酸アミドを摂取することは重要であるが、欠食率の増加や加工食品への依存等が原因で不足しがちである。ニコチン酸アミドを栄養素強化食品で補う場合、「第6次改定日本人の栄養所要量」を基準に1日の所要量の1/3以上摂取できるのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−173035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、従来から使用され、トリアシルグリセロールを主な構成成分とする食用油にニコチン酸アミドを溶解させようと試みたが、強化したい量を溶解させられないことがわかった。
従って、本発明の課題は、ニコチン酸アミドを高濃度溶解する油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、油脂組成物の水酸基価(OHV)が一定以上で、かつニコチン酸アミドの溶解量と該水酸基価の値とが一定の関係を満たす場合に、ニコチン酸アミドを高濃度溶解させることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ニコチン酸アミドを1,000〜20,000ppm含有し、水酸基価が9〜100mg−KOH/gである油脂組成物であって、ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(1)の関係を満たす油脂組成物を提供するものである。
(数1)
[Ln(C/850)]/X≦0.038 (Ln:自然対数) (1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度のニコチン酸アミドを溶解して含有する油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における油脂組成物は、水酸基価(OHV)が9〜100mg−KOH/gであるが、特に20〜100mg−KOH/g、殊更40〜100mg−KOH/gであるのが、ニコチン酸アミドの溶解性向上の点から好ましい。
ここで、水酸基価は日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「ヒドロキシル価(ピリジン−無水酢酸法 2.3.6.2−1996)」により測定した値をいう。
水酸基価の測定方法の詳細は実施例に記載した。
【0010】
本発明の水酸基価(OHV)が9〜100mg−KOH/gである油脂組成物は、水酸基価が前記範囲になるように油脂や乳化剤等を単独で、または適宜組み合わせて調製できるが、モノアシルグリセロール及び/又はジアシルグリセロールの含有割合の高いものを使用するのが好ましい。
なお、本発明において「油脂」とは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものとする。
本発明の油脂組成物中、ジアシルグリセロールの含有量は10質量%(以下、単に「%」とする)以上が好ましく、更に20%以上、特に40%以上であるのが、ニコチン酸アミドの溶解性向上の点から好ましい。上限は特に規定されないが、99%以下が好ましく、98%以下がより好ましく、97%以下が更に好ましい。
また、モノアシルグリセロールの含有量は、0〜5%が好ましく、更に0〜2%、特に0.1〜2%であるのが、ニコチン酸アミドの溶解性向上の点、食用油としての風味の点、工業的生産性の点から好ましい。
【0011】
本発明の油脂組成物中の油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれを原料とするものでもよい。具体的な原料としては、例えば、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、米糠油、コーン油、パーム油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、シソ油等の植物性油脂、更に魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂、あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができるが、水素添加していないものであることが、食用油脂を構成する全脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。
【0012】
本発明の油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸は、特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、40〜100%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは80〜100%、さらに90〜100%であるのが外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、さらに16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。
【0013】
また、油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は60%未満であることが好ましく、より好ましくは0〜20%、さらに0〜10%であるのが、外観、生理効果、油脂の工業的生産性の点で好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、特に16〜22のものが好ましい。
【0014】
油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸のうち、トランス不飽和脂肪酸の含有量は、0〜4%、好ましくは0.1〜3.5%、さらに0.2〜3%であるのが風味、生理効果、外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0015】
本発明の油脂組成物に用いられる乳化剤としては、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールの他、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のポリオール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0016】
本発明における油脂組成物は、ニコチン酸アミドを1,000〜20,000ppm含有するものであるが、その含有量はさらに1,000〜15,000ppm、特に1,000〜6,000ppm、尚更1,000〜4,500ppmであることが安定性、生理効果の点から好ましい。油脂組成物におけるニコチン酸アミドの含有量は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0017】
本発明においてニコチン酸アミドは、市販品を使用することができる。
【0018】
本発明における油脂組成物は、ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)とが、下記(1)式の関係を満たす。
(数1)
[Ln(C/850)]/X≦0.038 (1)
Ln:自然対数
【0019】
また、本発明における油脂組成物は、ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)とが、下記(2)式の関係を満たすことで、油脂組成物へのニコチン酸アミドの溶解量をさらに増大させることができる。
(数2)
[Ln(C/679)]/X≦0.039 (2)
C:上記と同じ
Ln:上記と同じ
【0020】
さらに、ニコチン酸アミドの含量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)とが下記(3)式を満たすことで、油脂組成物へのニコチン酸アミドの溶解量を増大させるのみでなく、ニコチン酸アミド由来の苦味を抑制することができることを本発明者は見出した。
(数3)
[Ln(C/854)]/X≦0.031 (3)
C:上記と同じ
Ln:上記と同じ
【0021】
さらに、ニコチン酸アミドの含量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)とが下記(4)式を満たすことで、ニコチン酸アミド由来の苦味をさらに抑制することができることを本発明者は見出した。
(数4)
[Ln(C/859)]/X≦0.024 (4)
C:上記と同じ
Ln:上記と同じ
【0022】
すなわち、本発明においては、油脂組成物の水酸基価により溶解するニコチン酸アミドの量が変化する。具体的には、ニコチン酸アミドの含有量が1,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、油脂組成物の水酸基価は9mg−KOH/g以上100mg−KOH/g以下であるが、ニコチン酸アミドの含有量が2,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は28mg−KOH/g以上であることが好ましく、ニコチン酸アミドの溶解性及び苦味抑制の点から35mg−KOH/g以上であることがさらに好ましい。
また、ニコチン酸アミドの含有量が5,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は51mg−KOH/g以上であることが好ましく、さらに73mg−KOH/g以上であることが同様の点から好ましい。ニコチン酸アミドの含有量が6,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は55mg−KOH/g以上であることが好ましく、さらに80mg−KOH/g以上であることが同様の点から好ましい。
【0023】
また、本発明においては、ニコチン酸アミドの溶解性及び苦味抑制の点から、ニコチン酸アミドの含有量が2,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は22mg−KOH/g以上であることが好ましく、27mg−KOH/g以上であることがさらに好ましい。
また、溶解性の点から、ニコチン酸アミドの含有量が5,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は46mg−KOH/g以上であることが好ましい。同様の点から、ニコチン酸アミドの含有量が6,000ppm以上20,000ppm以下の場合は、水酸基価は51mg−KOH/g以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の油脂組成物には、さらにビタミンB1誘導体又はその塩を含有させることができる。ビタミンB1は、ニコチン酸アミドと同様にトリアシルグリセロールを主な構成成分とする油脂への溶解量が少ないものである。ビタミンB1誘導体又はその塩としては、例えば、ビスベンチアミンジスルフィド、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、ジベンゾイルチアミン、シコチアミン、スルブチアミン、アセチアミン、ジセチアミン、又はそれらの塩が挙げられる。塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。なかでも、ビタミンB1誘導体、特にビスベンチアミンジスルフィドが溶解性、生理効果の点で好ましい。
ビタミンB1誘導体又はその塩の含有量は、チアミン換算で44ppm以上が好ましく、さらに44〜5,000ppm、特に44〜3,000ppm、殊更44〜2,000ppmであることが生理効果の点から好ましい。
【0025】
本発明の油脂組成物には、更に一般の食用油脂と同様に、保存性及び風味安定性の向上の観点から、抗酸化剤を添加することができる。抗酸化剤としては、天然抗酸化剤、トコフェロール、BHT、BHA、リン脂質、有機カルボン酸、ポリフェノール等が挙げられる。
【0026】
本発明の油脂組成物中の水分量は、15,000ppm以下であるのが好ましく、更に10,000ppm以下、特に3,000以下であるのが、保存安定性及び加熱調理時の使用性の点から好ましい。
【0027】
本発明の油脂組成物は、一般の食用油脂と同様に使用でき、また各種飲食品、飼料及び医薬品に利用することもできる。飲食品としては、例えば、ドリンク、デザート、アイスクリーム、ドレッシング、トッピング、マヨネーズ、焼肉のたれ等の水中油型油脂加工食品;マーガリン、スプレッド等の油中水型油脂加工食品;ピーナッツバター、フライングショートニング、ベーキングショートニング等の加工油脂食品;ポテトチップ、スナック菓子、ケーキ、クッキー、パイ、パン、チョコレート等の加工食品;ベーカリーミックス;加工肉製品;冷凍アントレ;冷凍食品等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
〔分析方法〕
(i)グリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
【0029】
(ii)脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists.Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
【0030】
(iii)水酸基価
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「ヒドロキシル価(ピリジン−無水酢酸法 2.3.6.2−1996)」に従い、首長の丸底フラスコに油脂サンプル約5gを計量し、アセチル化試薬5mlを加え、フラスコの首に小さな漏斗をのせ、フラスコの底部を加熱浴に約1cmの深さに沈めて95〜100℃に加熱した。1時間後、加熱浴からフラスコを取り出し冷却し、漏斗から1mlの蒸留水を加え、再度加熱浴に入れ10分間加熱した。再び常温まで冷却し、漏斗やフラスコの首に凝縮した液を5mlの中性エタノールでフラスコ内に洗い流し、0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液でフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定した。なお、本試験と並行して空試験を行い、滴定結果から下記の式をもとに算出した値を「水酸基価(mg−KOH/g)」(OHV)とした。
水酸基価=(A−B)×28.05×F/C+酸価
(A:空試験の0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)、B:本試験の0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)、F:0.5mol/L水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター、C:試料採取量(g))
【0031】
(iv)ニコチン酸アミドの定量
油脂サンプル1gにメタノール2mlを加えボルテックスミキサーでよく攪拌し、分相後、メタノール相採取した。残留液にメタノール2mlを加えて同様に抽出した。合わせてメタノールで3回の抽出操作を行い、メタノール相を合わせて室温窒素気流下で乾燥させた。アセトニトリル1mlに転溶後、ヘキサン1mlで3度洗浄した。洗浄後のアセトニトリル相を室温窒素気流下で乾燥させ、再度、アセトニトリルに溶解・定容し、HPLCに供した。
HPLC条件:
カラム:ODS−3(4.6ID×250mm), GLサイエンス製
カラム温度:40度C
移動相:0.05N−りん酸二水素ナトリウム(A)/メタノール(B)の混合溶媒
グラジエント:A/B=95/5(0min)→A/B=5/95(50min)
移動相流量:0.5ml/min
注入量:20μl
検出:UV検出器260nm
【0032】
(v)ビスベンチアミンジスルフィドの定量
油脂サンプル0.5gに、ツィーン80を0.3g、酢酸緩衝液5ml、10%チオ尿素溶液1mlを添加し、pHを4.5に調整した。
2.5%−タカジアスターゼ溶液を3ml添加し、40度で一晩おいた。2Nの塩酸5mlとエタノール70mlを添加し、70℃で30分間、時々かき混ぜながら処理した。蒸留水で100mlに定容後ろ過したものを抽出液とした。抽出液5mlに0.7%−システイン溶液を1ml、4N−水酸化ナトリウム溶液を1ml添加し、室温で30分反応させた後、4N−塩酸1mlを添加し蒸留水で20mlに定容したものをHPLCに供した。
HPLC条件:
カラム:ODS−3(4.6ID×250mm), GLサイエンス製
カラム温度:40度C
移動相:(0.01mol−りん酸2水素ナトリウム+0.15mol/L−過塩素酸ナトリウム)混合溶液(pH2.2):メタノール=95:5
移動相流量:1ml/min
注入量:20μl
検出:蛍光検出器Ex=375nm,Em=440nm
反応液:0.05%フェリシアン化カリウム+15%−水酸化ナトリウム
反応液流量:0.4ml/min
【0033】
(vi)水分量の測定
タイトランド851型(メトローム・ジャパン製)を用いてカールフィッシャー電量滴定法により、油脂組成物の水分量を測定した。
【0034】
〔原料油脂(1)の調製〕
大豆油脂肪酸:菜種油脂肪酸=7:3(質量比)の混合脂肪酸100質量部とグリセリン15質量部とを混合し、酵素によりエステル化反応を行い、ジアシルグリセロール含有油脂を得た。得られたエステル化物から、蒸留により脂肪酸とモノアシルグリセロールを除去し、酸処理(10%クエン酸水溶液を2%添加)及び水洗、脱臭を行ったものを油脂(1)とした。グリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0035】
菜種油(日清オイリオグループ(株)社製)を原料油脂(2)とし、グリセリン脂肪酸モノエステル(O−95R、花王(株)製)を原料油脂(3)とした。原料油脂(2)および(3)のグリセリド組成、脂肪酸組成を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
原料油脂(1)〜(3)を表2に示した質量比で混合して油脂A〜Gを調製した。油脂A〜Gのグリセリド組成及び水酸基価を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
〔溶解性試験〕
加温・攪拌後の油脂組成物を室温に24時間放置した後の状態を観察し、以下に示す判定基準に従って、溶解性を評価した。
○:透明に溶解している
×:濁り、溶け残りがある
【0040】
〔官能評価〕
専門パネルにより油脂組成物1〜2gを生食し、以下に示す判定基準に従って、苦味を評価した。
3:苦い
2:やや苦い
1:苦くない
【0041】
実施例1
油脂A〜Gに対し、表3に示した質量比でニコチン酸アミド(シグマ・アルドリッチ製)を添加し、80℃の湯浴中にて2時間の加温・攪拌を行う事により油脂組成物1〜22を調製した。分析値を表3、4に示す。
【0042】
次に、各油脂組成物を用いて、上記の溶解性試験、苦味の官能評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表3から分かるように、本発明の油脂組成物は、ニコチン酸アミドを高濃度に溶解して含有することができた。油脂組成物16〜22では未溶解のニコチン酸アミドが観察された。
さらに、油脂組成物4、6〜15、特に油脂組成物4、7、8、10〜15は、ニコチン酸アミド由来の苦味が抑制され、食用油として好ましいものであった。
【0046】
実施例2
油脂C又はGに対し、表5に示した質量比でニコチン酸アミド(シグマ・アルドリッチ製)及びビスベンチアミンジスルフィド(田辺三菱製薬製)を添加し、80℃の湯浴中にて2時間の加温・攪拌を行う事により油脂組成物23〜26を調製した。分析値を表5に示す。
【0047】
次に、油脂組成物23〜26を用いて、上記と同様に溶解性試験、苦味の官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
表5から分かるように、本発明の油脂組成物はニコチン酸アミドに加え、さらにビタミンB1誘導体を高濃度に溶解して含有することができ、且つ苦味の少ないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミドを1,000〜20,000ppm含有し、水酸基価が9〜100mg−KOH/gである油脂組成物であって、ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(1)の関係を満たす油脂組成物。
(数1)
[Ln(C/850)]/X≦0.038 (Ln:自然対数) (1)
【請求項2】
ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(2)の関係を満たす請求項1記載の油脂組成物。
(数2)
[Ln(C/679)]/X≦0.039 (Ln:自然対数) (2)
【請求項3】
ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(3)の関係を満たす請求項1記載の油脂組成物。
(数3)
[[Ln(C/854)]/X≦0.031 (Ln:自然対数) (3)
【請求項4】
ニコチン酸アミドの含有量C(ppm)と水酸基価X(mg−KOH/g)が次式(4)の関係を満たす請求項1記載の油脂組成物。
(数4)
[Ln(C/859)]/X≦0.024 (Ln:自然対数) (4)
【請求項5】
ニコチン酸アミドを1,000〜4,500ppm含有する請求項3又は4記載の油脂組成物。
【請求項6】
さらに、ビタミンB1誘導体又はその塩を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項7】
ビタミンB1誘導体がビスベンチアミンジスルフィドである請求項6記載の油脂組成物。
【請求項8】
食用油である請求項1〜7のいずれか1項記載の油脂組成物。

【公開番号】特開2011−229525(P2011−229525A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85133(P2011−85133)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】