説明

ニトリド半導体素子ならびにその製法

【課題】シリコン表面上にニトリド半導体素子の層構造を製造する方法を提供する。
【解決手段】この方法は、シリコン表面を有する基板を提供する工程、アルミニウム含有のニトリド核形成層を基板のシリコン表面上に堆積させ、場合によりアルミニウム含有のニトリドバッファ層をニトリド核形成層上に堆積させ、マスキング層をニトリド核形成層又は存在する場合には第一のニトリドバッファ層上に堆積させ、かつガリウム含有の第一のニトリド半導体層をマスキング層上に堆積させる工程から成る。
【効果】完成した層構造中の引張応力は、公知の解決法と比べて減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製法に関する。更にまた本発明は、ニトリド半導体素子の製法にも関する。最後に本発明はニトリド半導体素子、特にニトリド半導体をベースとする薄膜発光ダイオード(LED)ならびにニトリド半導体製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリド半導体は、周期系の第3主族の1つ以上の元素ならびに第5主族の1つ以上の元素を含有する半導体化合物である。このような半導体には、例えば、半導体GaN、InGaN、InGaAsN、AlGaNなどが含まれる。本発明の意味する範囲内で、ニトリド半導体の他の共通の名称は、第III族ニトリドと第III−V族ニトリドである。これらの名称は、本明細書中では同じ意味で相互に使用される。
【0003】
ニトリド半導体は、可視及び紫外線スペクトル領域内で発光される発光構造内で特に使用される。これ以外に、電子ニトリド半導体素子、例えば、HEM(高電子移動度)トランジスターのようなものも公知であり、これは特に、無線電送技術のような周波数の用途に適切である。ニトリド半導体素子は、いわゆる"出力装置"の形でハイパワーエレクトロニックスにおいても使用される。
【0004】
ニトリド半導体素子の層構造の安価なホモエキタキシは、現時点で入手可能なニトリド半導体から成る基板の小さな大きさと乏しい品質ゆえに、商業的関心が殆ど集まっていない。従って、入手可能なニトリド半導体素子、例えば、青色又は緑色発光ダイオードは、サファイア(Al23)基板又はシリコンカーバイド(SiC)基板上に堆積した層構造を含有する。これらの基板材料は、様々な欠点を有する。一方では、これらは高価であり、他方では通常入手可能なこれらの材料の基板は、比較的に小さく、従って、所定の基板表面に対して収率が比較的に低いので、1素子当たりの製造コストが更に高くなる。これに加えて、モース硬度スケールで9を上回り、かつ費用のかかるダイヤモンド鋸と研磨材料を用いてのみ機械処理が可能であるこれらの材料の著しい硬さが問題になる。
【0005】
従って、周知のように大きな直径を有し、安価に得られるシリコン基板は大きな表面積の成長にますます使用される。
【0006】
ニトリド半導体の層構造に一般的な成長温度は、商業的に通常の気相エピタキシでは、1000℃の温度を上回る。シリコン及びニトリド半導体材料の種々の熱膨張率は、成長後に堆積したニトリド半導体層構造の冷却の際に、約0.7GPa/μmのニトリド半導体層の高い引張応力を生じ、かつ1μm未満の層厚から亀裂形成を生じる。
【0007】
シリコン上でGaN層の成長の際に亀裂形成を回避するために、非常に低い温度(1000℃未満)で成長する薄い中間層、いわゆる低温AlN又はAlGaN中間層が使用される。これらの層の作用は、AlN又はAlGaN中間層上で圧縮応力を有するGaN層の成長による引張応力の部分的な補償による。層を堆積した後の冷却の際に、このGaN層の圧縮応力は、種々の熱膨張係数により生成された引張応力をうち消し、かつその結果減少した引張応力を生じる。
【0008】
この技術の欠点は、中間層上で成長するGaN層中の高い転位密度である。よってDE10151092A1(これを以って本明細書の開示に参照して取り入れることにする)には、転位密度を減少するために、窒化ケイ素中間層を成長するGaN層へ更に挿入することが提唱されている。必ずしも完全に閉じていないSixy中間層は、引き続くGaNの成長のマスキングとして使用される。DE10151092A1によれば、中間層の厚さは、その上に、100nmから数μmまでの間隔をおいて僅かな成長島が生じるように選択される。これは、成長の更なる過程で、SiN中間層からの成長表面の距離が増すにつれて、層はいわゆる融合厚(coalescence thickness)から融合し、閉じた層表面を形成する。特にシリコン上のGaNエピタキシ中のSiN中間層だけが、顕著な島成長、ひいては著しい融合厚を生成し、これはSiN厚さの増大に伴って成長する。これらの成長島の融合を促進する適切な手順により、成長島が融合する前に、前記の危機的な亀裂の厚さの達成を回避することができる。
【0009】
A.Dadgar等による文献"Reduction of Stress at the Initial Stages of GaN Growth on Si(111)", Applied Physics Letters, Vol.82, 2003, No.1、28〜30頁(以後、短く"Dadgar等"と称し、これを以って本明細書の開示に参照して取り入れることにする)からは、シリコンドーピングしたAlN核形成層と最大で約1.5単層の呼称厚さのSiN−マスキング層を堆積した後に、GaN層を作製することが公知である。このようなSiNマスキング層なしの成長と比べて、成長するGaN中の引張応力は減少する。
【0010】
この作用は、SiNマスキング層厚に応じて、特定の厚さから飽和現象を示し、完全な応力補償は期待できない。それというのも、一方でSiNマスキング層はその厚さが増すにつれて、AlN核形成層と引き続く(すなわち、SiNマスキング層の後に)成長するGaN層の間の構造結合を干渉するか、又は妨げるからである。この結果、AlN−核形成層に所望の補償作用はもはや生じず、かつ不所望に高い引張応力が完成したニトリド半導体層に残ってしまう。他方で、厚いSiN層は、亀裂形成に危機的な層厚が保持されないような値まで融合厚さを公知の方法で増やす。
【0011】
結果として、SiNマスキング層を挿入してもニトリド半導体層構造中での引張応力を取り除くことができない。
【0012】
不均一な引張応力は、更なる欠点を有する。これは、既に述べた高い転位密度の他に、成長する層構造とその下にある基板の曲率の原因にもなる。この問題は、薄層発光ダイオードのような薄層素子にも影響を与え、その際、シリコン基板は、製造の過程で除去される。湾曲したニトリド半導体層構造のプロセシングは、既に困難を生じ、従って素子製造の出費と価格を増すことになる。従って、湾曲したニトリド半導体層構造は、通常は担体に結合され、かつ担体から簡単に取り外され、かつ相応の素子は不所望に短い寿命を有することになる。
【0013】
C. Mo等による文献"Growth and characterization of InGaN blue LED structure on Si(111)by MOCVD"、Journal of Crystal Growth, 285(2005)、312-317頁(以後、短く"C. Mo等"と称し、これを以って本明細書の開示に参照して取り入れることにする)からは、AlN核形成層上でGaNバッファ層を成長させることにより、引張応力を減少させることが公知である。この場合に、高温気相エピタキシにおけるGaNバッファ層の成長に関して、ガリウム前駆体の窒素前駆体に対する気流密度の小さな比が調節される。これは以降のGaN層の島成長を促進する。しかし、ここでの欠点は、引張強度がニトリド半導体層構造内に残ることである。更に、この公知の発光ダイオードは不所望に高い抵抗を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】DE10151092A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A.Dadgar等、"Reduction of Stress at the Initial Stages of GaN Growth on Si(111)", Applied Physics Letters, Vol.82, 2003, No.1、28〜30頁
【非特許文献2】C. Mo等、"Growth and characterization of InGaN blue LED structure on Si(111)by MOCVD"、Journal of Crystal Growth, 285(2005)、312-317頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明に基づく技術的な問題は、シリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製法ならびにニトリド半導体素子を提供することであり、その際、完成した層構造中の引張応力は、この問題の公知の解決法と比べて更に減少している。
【0017】
本発明に基づくもう1つの技術的な問題は、公知の解決法よりもニトリド半導体層構造の曲率が減少した、シリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製法ならびにニトリド半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第一の態様によれば、前記の技術的な問題は、次の工程:
− シリコン表面を有する基板を提供し:
− 基板のシリコン表面上にアルミニウム含有ニトリド核形成層を堆積させ;
− 任意に、アルミニウム含有ニトリドバッファ層をニトリド核形成層上に堆積させ;
− マスキング層をニトリド核形成層又は、存在する場合には、第一のニトリドバッファ層上に堆積させ;
− ガリウム含有の第一のニトリド半導体層をマスキング層上に堆積させる
を有し、その際、マスキング層は、第一のニトリド半導体層の堆積工程において、初めに融合層厚を上回って融合する別々の微結晶が成長し、かつ成長したニトリド半導体層の層平面中、成長方向に対して垂直に少なくとも0.16μm2の平均表面積を占めるようにするように堆積される、シリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製法により解決された。
【0019】
意外にも、本発明による方法を用いると第一のニトリド半導体層の成長の際に、高い圧縮応力をその中で生成できることが見出され、これは適切なプロセシング工程で種々の熱膨張係数により生じる引張応力σの完全な又は殆ど完全な補償を作用できる。室温で冷却した後に、完全に応力の無い又は0.2GPa/μmを著しく下回る(むしろ通常は0.1GPa/μmを下回る)σの値を有する殆ど応力が無く、かつ極めて僅かな転位密度を有し、かつ極めて僅かな亀裂を有するか、もしくは全く亀裂の無い層構造を成長させることもできる。
【0020】
同時に、本発明による方法は、特に高い又はむしろ無限の曲率半径を有する層構造の製造に適切であり、これは特に発光ダイオードのような薄膜素子の製造においても特に有利である。
【0021】
このように、ニトリド半導体をベースとする薄膜素子の安価な成長は、大きなフォーマットのシリコンウエハ又はSOI(シリコン・オン・インシュレーター)ウエハの製造において特に可能である。
【0022】
これらの利点は、有利にはSiNから成る適切に堆積したマスキング層を上回って融合する微結晶が、成長の際にそれらの融合によりニトリド半導体層中で0.16μm2以上の平均微結晶表面積を達成し、十分に強い圧縮応力を生成することにおそらく起因する。この強い圧縮応力は、後に生じる未知の引張応力を良好に補償できる。
【0023】
ニトリド半導体層内で、融合層厚を上回る層平面中の微結晶の平均微結晶表面積は、例えば、以下に2つの例を用いて詳説するように、平面投影図透過電子顕微鏡(TEM)画像の評価のような画像補助分析法を用いて決定できる。自明ながら、この分析は微結晶の十分に大きな任意抽出試験を基礎にするのがよい。
【0024】
従来技術では、上記の観察された飽和作用に基づいてSiNマスキング層(Dadgar 等)と、同じく上記の観察された部分的な応力減少だけを用いる場合に、GaNバッファ層(Mo等)を利用する場合には、この作用ならびに殆ど完全な応力補償が生じる可能性が予期できなかった。この意外な作用は、本発明によって特にシリコン表面上で僅かに応力を加えられた、又は応力を加えられていないニトリド半導体層構造の製造に利用され、これから特に有利なニトリド半導体素子を引き続き製造できる。
【0025】
請求項が、個々の機能(核形成層、バッファ層、中間層など)を有するアルミニウム含有ニトリド層に関する場合には、これは第III族の金属だけ、又は他の第III族の金属との組合せでアルミニウムを含有する個々の機能の層を意味すると解釈される。周期系の他の族の元素での、例えば、シリコン又はマグネシウムのような元素でのドーピングは、この定義の目的とは無関係である。しかし自明ながら、このようなドーピング物質を含めてもよい。
【0026】
核形成層は、数ナノメーターだけの厚さであり、かつ必ずしも閉じた層でなくてもよいが、しかし可能性として有り得る乏しい微結晶及び/又は化学量論的特性にもかかわらず、その上で成長する層の後続の層成長の基礎を形成するか、又はこれから更なる層成長が開始する。
【0027】
マスキング層は、完全な又は部分的な表面の被覆に使用され、かつしばしば幾つかの単一層の厚さであるか、又は1つ未満の単一層の厚さである。
【0028】
本発明の第二の態様は、次の工程:
− ニトリド半導体素子の層構造を、本発明の第一の態様による方法による、又は本明細書中に後で記載される実施態様のうち1つによる、又は関連する独立請求項のうち1つのシリコン表面上に作製し、
− 層構造と担体を、層構造の成長上面が担体に向かい合うように結合させ、
− 基板を除去し、
− コンタクト構造を作製する、
を有する、ニトリド半導体素子の製法に関する。
【0029】
本発明の第二の態様による方法は、本発明の第一の態様の方法を有利に発展させたものであり、かつ特にニトリド半導体素子の簡単で安価なプロセシングを可能にする。
【0030】
本発明の3番目の態様によれば、上記の技術的問題は、
− 成長方向に対して垂直な層平面で少なくとも0.16μm2の平均表面積を占める融合する微結晶の構造を有するガリウム含有の第一のニトリド半導体層、
− 第一のニトリド半導体層に隣接するアルミニウム含有ニトリド中間層、及び
− 最後の層をガリウム含有の更なる第二のニトリド半導体層に付ける、ニトリド半導体素子により解決された。
【0031】
シリコン表面上の製造に特徴的なニトリド半導体層の構造を有するこのような素子は、低い製造コストと共に商業的用途に重要である長い寿命かつ好ましい運転パラメーターを有する。
【0032】
本発明の3番目の態様のニトリド半導体素子は、本発明による方法手順の特徴である構造特徴を有し、かつこの方法により製造されたニトリド半導体素子を、他のニトリド半導体素子から区別することができる。
【0033】
サファイア基板を使用する際に大きな平均表面積を有する微結晶が形成されることが可能であり、かつ自体公知である。しかし、100nm以上の厚さのAlGaN層を含有しないサファイア基板上で製造されたニトリド半導体素子は、アルミニウム含有ニトリド半導体中間層を有さず、特に窒化アルミニウム中間層を有さない。サファイア基板上の半導体層の成長は、本明細書で記載されているようなシリコン基板上の成長とは完全に異なる境界条件に課される。よって、サファイア基板上の層成長が冷却後に常に二軸圧縮応力層を生じる。成長の際にGaN層の圧縮応力を生じるアルミニウム含有ニトリド中間層を用いた歪み工学は、そこでは必ずしも必要ではなく、むしろLED構造では望ましくない。それというのも、これは800℃周辺のInGaN層の成長の際にならびに方法の終わりに、極めて大きな基板曲率を生じるからである。冒頭に記載したように、シリコン上のニトリド半導体層の成長では、歪み工学にアルミニウム含有ニトリド半導体中間層を用いることが自体公知である。
【0034】
しかし、これらの2つの特徴の組合せは、かつては技術的に達成できなかった。本発明の第一の態様による方法手順を用いて、はじめてシリコン基板上に十分に大きな表面積の微結晶を有する層を製造することができるようになった。厚さ約1300nmよりも厚いニトリド半導体層を製造するための、これらのニトリド半導体層の連続した成長の際に、歪み工学−中間層は、シリコン表面を有する基板に基づく成長にだけ必要であり、これにより、引き続く冷却の際に発生する引張応力を完全に又は殆ど完全に補償できる十分に大きな圧縮応力を成長の際に用いることができる。専門家の間では、これまでは本発明の3番目の態様によるニトリド半導体素子を製造することができなかった。
【0035】
シリコン表面上での堆積の際に初めに製造される層、すなわち、アルミニウム含有ニトリド核形成層とマスキング層は、薄膜LEDのような薄膜素子を製造するため、更なるプロセシングの枠内で、成長した層をストリッピングした後にシリコン表面から一般に除去される。従って、ニトリド半導体素子は、本発明による方法により製造でき、本発明による方法手順が核形成層及びマスキング層の存在を証明できないが、層構造中のアルミニウム含有ニトリド半導体中間層の存在は、成長中のシリコン基板の使用を明らかに示唆している。
【0036】
本発明の第4の態様によれば、上記の技術的な問題は、次のもの:
− シリコン表面を有する基板、
− シリコン表面に隣接するアルミニウム含有ニトリド核形成層、
− 任意に:ニトリド核形成層に隣接するアルミニウム含有ニトリドバッファ層、
− ニトリド核形成層上、又は存在する場合には、ニトリドバッファ層上のマスキング層、ならびに、
− マスキング層に隣接して配置され、かつ成長した微結晶の構造を有するガリウム含有の第一のニトリド半導体層を有し、その際、微結晶は融合層厚を上回り、かつ層平面中で成長方向に対して垂直に、少なくとも0.16μm2の平均表面積を占めるニトリド半導体製品により解決される。
【0037】
本発明のニトリド半導体製品は、一般に素子製造の中間製品とは独立に得ることができる。これはシリコン表面を有する存在する基板上ならびに基板をストリッピングした後に他の担体上の両方で使用して素子を製造するか、又は大きな面積の非担持層、大きな面積のニトリド半導体基板、又は非担持素子の製造に使用してよい。
【0038】
本発明の様々な方法と装置の実施態様を以下に記載する。明らかに不可能でない限り、実施態様は相互に組み合わせてもよい。
【0039】
本発明の第一の態様によるシリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製法の実施態様を以下に記載する。
【0040】
層の品質は特に大きな微結晶表面で改善される。従って有利な実施態様では、マスキング層は、第一のニトリド半導体層の堆積工程において、初めに別々の微結晶が成長し、該当微結晶が融合層の厚さを上回って融合し、かつ成長方向に対して垂直に融合するニトリド半導体層の層平面中で少なくとも0.36μm2の平均表面積を占めるように堆積される。
【0041】
更なる実施態様では、まず成長島の形で成長する第一のニトリド半導体層の場合に、マスキング層から少なくとも600nmの距離から、少なくとも80%閉じた層表面を生じることができるような層厚でマスキング層が堆積される。この実施態様の方法手順は、試験において良好な再現性で、600nmの層厚を上回って大規模に融合し、かつ核形成層からのこの距離を上回って、層平面中でその平均表面積が0.16μm2を上回る大きな面積の微結晶を有するガリウム含有ニトリド半導体層を生じた。
【0042】
本発明による方法手順及び特に先に記載した実施態様の方法手順では、マスキング層から出発し、これはその下にあるニトリド核形成層、又は存在する場合には、第一のニトリドバッファ層の少なくとも95%の被膜を提供する。この被膜の度合いでは、マスキング層の上に比較的に僅かな成長核が形成され、これは更なる層堆積の過程で、三次元成長(島成長)により発達して大きな微結晶を形成することができる。
【0043】
これまでに、窒化ケイ素から成るマスキング層を用いて最善の結果が得られている。しかし、原則として他の適切な材料、例えば、核形成層の湿潤を妨げる抗界面活性剤のようなものをマスキング層に使用することも考えられる。この場合に、原則として例えばニトリド半導体堆積の高い成長温度で使用される全ての金属ニトリドが適切である。しかしアモルファス成長する物質がむしろ適切である。それというのも、このような表面上で核形成が生じないか、又は遅れた核形成だけが生じるからである。
【0044】
有利な実施態様での方法手順は、成長表面の反射強さのトラッキング測定を伴う(レフレクトメトリ)。層成長を監視する自体公知のこの方法は、マスキング層の堆積の継続期間の制御と定義づけられた調節を可能にし、これは第一のニトリド半導体層の堆積工程の際に、約600nmの光波長での成長表面の反射強度のトラッキング測定が、発振振幅が増すにつれて5回の振動サイクルの後に最も早く、ほぼ一定の最大値に達する振動強度挙動を示すように選択される。マスキング層の堆積の継続期間の正確な値は、多くのパラメーターにより、これは1つの成長反応器から別の成長反応器に変えることもできる。本発明の実施態様の指示を用いて、個々の成長反応器についてマスキング層の堆積の適切な継続期間を幾つかの実験を用いて決定できる。
【0045】
本発明による方法により第一のニトリド半導体層は、既に圧縮応力で成長する。融合を促進するどの成長パラメーター(例えば、増大した成長温度又は高いV/III比)も調節されないのが有利である。これらの条件下では、特に圧縮層成長が得られ、かつこれにより冷却後に減少した引張応力ひいては均一に応力を加えた又は応力を加えていないニトリド半導体層構造を製造できる。
【0046】
ニトリド半導体をより大きな層厚で堆積する場合には、第一のニトリド半導体層は、以後説明するように更に層が成長する前に、有利には800〜1600nmの層厚で堆積され、これがより高い層厚を生じる。有利には、この場合にアルミニウム含有ニトリド中間層は、第一のニトリド半導体層上に堆積され、次にこの最後の層の上に、ガリウム含有の更なるニトリド半導体層が堆積される。アルミニウム含有ニトリド中間層(これは第一のニトリド半導体層としてのGaNの成長の場合に、有利には低温AlN層である)では、層構造中の圧縮応力を更に上げることができる。よってアルミニウム含有ニトリド中間層の機能は、歪み工学である。
【0047】
アルミニウム含有ニトリド中間層とガリウム含有の更なるニトリド半導体層の堆積の順番は、繰り返し行うことができる。このように、第一のニトリド半導体層の後に第二、第三、第四などのニトリド半導体層を続けることができ、それぞれの場合に、予め堆積したアルミニウム含有中間層を有する。これは、ニトリド中間層とは別に、第一、第二、場合により第三などのニトリド半導体層から成る厚いニトリド半導体層を製造する。必要な場合には、他の機能を有する更なる中間層をこの中に明らかに組み込むこともできる。
【0048】
アルミニウム含有ニトリド中間層の厚さは、例えば、低温AlN中間層を用いる場合には8〜15nmである。AlGaN中間層の使用も考えられ、この場合には、ほぼ同じ層厚が適切である。歪み工学の目的で高温で成長したより厚いAlN中間層の使用は、本出願者のDE−102004038573A1から公知である。この場合に、約30nmの層の厚さから、高い抵抗の層構造を形成する傾向があり、これが発光体の製造には不利であることが経験により分かっていることを留意しておく。また亀裂形成に対する傾向も高くなる。
【0049】
アルミニウム含有ニトリド中間層を使用しない場合には、第一のニトリド半導体層は有利には1300nm(GaNの場合)の厚さで堆積される。この層厚を上回ると、冷却の際に引張応力素子のため亀裂が生じ得る。
【0050】
発光ニトリド半導体素子の製造のため、ニトリド半導体材料から成るマルチ・クォンタム・ウェル構造が第二のニトリド半導体層の上、又は先に説明した繰り返される層の堆積を用いる方法手順により、他の更なるニトリド半導体層の上に堆積される。発光ニトリド半導体素子用のマルチ・クォンタム・ウェル構造は自体公知であり、かつ本明細書中で更に説明する必要はない。
【0051】
マルチ・クォンタム・ウェル構造が堆積している更なるニトリド半導体層を堆積する直前に、シリコンから成る少なくとも1つの第二のマスキング層を堆積させることは、発光に決定的に重要である層構造の領域内に特に良好な層品質を作製すことが見出された。
【0052】
光電子素子を製造するために、第一のニトリド半導体層、又は存在する場合にはマルチ・クォンタム・ウェル構造の前に堆積された更なるニトリド半導体層に、n型ドーピングを施すのが有利である。p型ドーピングした領域を作製するために、有利にはマルチ・クォンタム・ウェル構造上にp型ドーピングしたガリウム含有ニトリド半導体カバー層が堆積される。
【0053】
特に、厚い層構造の成長には、ニトリド半導体層構造中に生じる応力が、基板にも作用し、かつ基板曲率につながるという問題を考慮しなくてはならない。このような曲率は、例えばサファイアのような他のヘテロ基板からも公知である。この曲率の減少は、基板、特にその厚さが少なくともDGAN*x(式中、DGaNは、基板上に堆積すべきニトリド半導体層の層厚を意味し、又は1つ以上のニトリド半導体層を堆積すべき場合には、基板上に堆積すべきニトリド半導体層と、存在するニトリド中間層の層厚の合計を表し、かつその際、ドーピングしたシリコン基板を使用する場合には、xは少なくとも110であり、かつドープしていない基板を使用する場合には少なくとも200である)である導電性シリコン基板を提供する工程である有利な実施態様に含まれる。これらの層厚の値では、Si基板中の圧縮プレストレスによる可能性としてあり得る可塑変形は、それぞれの場合にうまく阻害できる。もはや、このように変形した結晶は平面ではないので、これは有利である。
【0054】
この実施態様の更なる特徴は、独立して保護する価値のある本発明の概念を示す。従って、シリコン表面上のニトリド半導体素子の層構造の製造に、独立して保護する価値のある方法には、最後に述べた実施態様の付加的な特徴に相応するシリコン基板を提供する工程が含まれる。本発明の第一の態様の方法の更なる工程ならびに、ここで記載された発明の第一の態様の方法の実施態様は、独立して保護する価値のあるこの方法の実施態様を形成する。特に、より高く応力を加えた層構造の場合には、この方法を用いるとシリコン基板の過剰な曲率の発達を妨げることができる。
【0055】
前記の実施態様は、シリコン基板が、
【数1】

[式中、y=基板直径(cm)/3.5]
以上の厚さを有する場合には、更に改善される。この付加的な条件は、特にInGaN層又はAlGaN層を有する発光ダイオードに有利である。
【0056】
ニトリド半導体素子の製造に関わる、本発明の第二の態様による方法の実施態様を以下に記載する。この方法は、本発明の第一の態様の方法の全ての工程を含み、よってその利点を分ける。
【0057】
本発明の第二の態様によるこの方法の有利な実施態様では、導電性コンタクト層が、本発明の第一の態様による方法により製造された層構造の成長上面に堆積される。
【0058】
2つの二者択一的な実施態様のうち1つでは、コンタクト層はp型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも高い屈折率を有する。コンタクト層は、ニトリド半導体層構造の成長上面のようにコンタクト層が存在しない場合には、更に金属化していてもよい。このように、ニトリド半導体素子の光収率は増大する。その屈折率がp型ドーピングしたニトリド半導体カバー層のものよりも高いコンタクト層を用いる二者択一的な実施態様のうち初めの1つ目では、ニトリド半導体カバー層は、有利には
【数2】

[式中、
m=0、1、2、3、・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さで堆積される。これは、完成した素子の中にニトリド半導体カバー層がn>n(ニトリド)で材料中に埋め込まれる場合に、光収率を高める。これらには、金属又は高屈折率の材料、例えば高い屈折率の半導体が含まれる。
【0059】
2つの二者択一的な実施態様の2つ目では、コンタクト層はp型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも低い屈折率を有する。この実施態様では、ニトリド半導体カバー層は、有利には、
【数3】

[式中、
m=0、1、2、3、4・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さで堆積される。この式は、ニトリド半導体カバー層がより小さい屈折率の材料、例えば、様々なプラスチック材料、空気などで覆われる場合に当てはまる。これは標準的なLEDを用いるより一般的な場合であるが、しかしストリップしたLEDを用いる場合ではない。
【0060】
結合に使用すべき表面が導電性又は反射性又は金属性である担体を使用することが有利であることが分かった。公知のように、殆どの金属は有利な方法でこれらの特性が組合わさっている。このように、素子からの熱放散が改善される。有利には金属表面又は全体の担体は、銅、アルミニウム、窒化アルミニウム、シリコン又はアルミニウム−シリコンもしくはアルミニウム−シリコン−カーボンから形成される。
【0061】
特に適切な他の担体材料は、高い、好ましくは少なくとも70%を上回るシリコン含有量有するアルミニウム−シリコン(Al/Si)であり、これは銅又はアルミニウム以外に電気的かつ熱的に優れた導電化合物であり、GaNと比較して実質的に同じ膨張係数を有し、より高いシリコン含有量では、むしろ同じ膨張係数を有する。これは、LEDを取り付け、かつ運転する際の問題を妨げる。それというのも、その際に生じる応力は、素子のストリッピングを導くか、又は層中の亀裂を生じるからである。従って、現時点ではLEDは例えば弾性接着剤によりAl担体に結合している。それというのも、このような場合にだけ極めて様々な熱膨張係数(GaN〜5.6ppmK-1、Al>20ppmK-1)を制御できるからである。しかし弾性接着剤の使用は不利である。更に独立に保護する価値のある発明は、発光薄膜ニトリド半導体素子を製造するためのAl/Si担体の使用ならびにAl/Si担体それ自体を有する発光薄膜ニトリド半導体素子であり、その際、Al/Si担体の組成物は本発明によれば、この素子のニトリド半導体材料の熱膨張係数に等しいか又は殆ど等しい熱膨張係数を有するように選択される。弾性接着剤の欠点は、Al/Si担体(例えば7.5ppmK-1のAlSi(30/70)の膨張係数)で完全に回避できる。この担体材料の熱伝導性は、アルミニウムの半分だけ良好であり、従ってSiの熱伝導性よりも1桁以上良い。
【0062】
結合は、有利には低温で実施され、これは280〜500℃の範囲内にある。現時点では、280℃の温度が特に有利である。このように、冷却の際に結合後の付加的な張力は形成されないか、又は僅かにしか形成されない。金属は280℃以下では液体ではない。500℃の温度は、可能性として生じる応力により、既に多くの担体の臨界上限に向いているが、この温度は他の担体にとっては実行可能である。500℃よりも高い温度では、コンタクトメタルは、使用される材料に応じて深刻に被害を受ける。
【0063】
本発明の第二の態様の方法での基板の除去は、有利には研磨により行われる。更に湿式化学又は乾式化学エッチングを用いることもできる。
【0064】
更なる実施態様では、基板の除去により暴露される成長背面は、抗反射層を形成するように構造化される。これは、極めて簡単に、N面、すなわち、材料の窒素面(000−1)をKOH(水酸化カリウム)でエッチングすることにより行ってもよく、かつ適切な方法手順では、殆どピラミッドの形である極めて適した構造を提供する。
【0065】
独立に保護すべき4番目の発明を形成する二者択一的な方法手順によれば、基板は本発明の又はその実施態様の第二の態様による方法手順で記載したように完全にではなく、3〜10μmの残りの層厚に薄くされ、かつ酸化される。しかし、薄くされ、かつ次に酸化されてなる。このように形成された酸化ケイ素層は透明層として粗く構造化される。従って、該方法は次の工程:
− ニトリド半導体素子の層構造を、シリコン表面上に作製し、
− 層構造を担体に、層構造の成長上面が担体に向かい合うように結合させ、
− 基板を除去し、有利には5〜10μmの厚さである薄いシリコン層にし、
− シリコン層を酸化して、二酸化ケイ素層を形成し、
− コンタクト構造を作製する、
を有する。
【0066】
この方法手順は、改善された光減結合に使用できるという利点を有する。これとは別に、シリコン基板の酸化は、前者の基板の伸びを生成し、その結果、ニトリド半導体(例えばGaN)層の僅かな圧縮応力を生じる。GaN層を僅かな引張応力に課す場合には、これは特に有利である。
【0067】
圧縮応力により、GaN層の亀裂と曲げが確実に避けられる。酸化したSi基板の残留により、6〜20μmの範囲内の厚さの厚い層の積み重ねは特に高い機械的強さを有し、このことは素子の製造を簡単にする。
【0068】
本発明の3番目の態様による本発明によるニトリド半導体素子の実施態様を、本発明による上記の方法の実施態様から直接に判明しない限りにおいてこの後に記載する。有利には、ニトリド半導体素子はニトリド半導体層構造の担体を含有するが、その上に層構造が成長した基板とは異なる。特に適切な担体は、基本的に銅、アルミニウム又はAl/Siから成る。このように、ニトリド半導体素子の運転の際に生成される熱の放散は改善される。
【0069】
発光半導体素子(LED、レーザーダイオード)、ならびに電子部品(トランジスターなど)では通常であるp型ドープ領域とn型ドープ領域を用いる実施態様は、電気接触素子を用いる有利な実施態様においてそれぞれ提供される。
【0070】
もう1つの有利な実施態様では、マルチ・クオンタム・ウェル構造が堆積している更なるニトリド半導体層に直接に隣接しているが、この更なるニトリド半導体層のマルチ・クオンタム・ウェル構造から離れている側に配置された窒化ケイ素から成る更なる少なくとも1つのマスキング層を含有する。このように、マルチ・クオンタム・ウェル構造に最も近くにある素子の領域では、層の品質が改善され、従って、電荷担体の運転寿命に著しい影響を与える。層の品質を改善することにより、より長い電荷担体の運転寿命を達成でき、この事は欠点での不所望な再結合の抑制に寄与する。
【0071】
本発明によるニトリド半導体素子の製造で形成された中間体製品は、本発明による多くのニトリド半導体素子が配置されている担体ウエハである。この担体ウエハは、シリコンテクノロジーにおいてプロセシングしたウエハに匹敵する中間製品を形成する。担体ウエハ上に配置されたニトリド半導体素子の分離は、プロセシングした担体ウエハ自体の製造により実施できるか、又は素子製造へ移った後に行うことができる。
【0072】
この態様での本発明の利点は、特に大きな担体ウエハを使用できることである。それというのも、本発明による方法は大量に、市場的に幅広いシリコンウエハで実施できるからである。シリコンウエハ上で成長したニトリド半導体層構造を取り除いた後に、これを相応の大きさの担体ウエハに結合できる。従って、本発明は特に素子の安価な製造を可能にする。それらの全体においてニトリド半導体素子は、例えば担体上に少なくとも24cmの横方向の寸法を有していてもよい。
【0073】
本発明の4番目の態様によるニトリド素子半導体素子の実施態様を、先に記載した本発明の他の態様の実施態様から直接に判明しない限りにおいてこの後に記載する。
【0074】
有利な実施態様では、ニトリド半導体製品は、基板表面の背面に垂直な方向に基板上で測定可能な曲率を有し、これは少なくとも10mの曲率半径に、又は無限に大きな極率半径に相応する。このような大きな曲率半径は、低温歪み工学の中間層の挿入によって成長の際に十分に高い圧縮応力が生じ、これが後続の冷却の際に、次に生じる引張応力により出来る限り正確に補償される場合には、本発明による方法手順により可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明によるニトリド半導体素子の製造の際の中間製品を形成するニトリド半導体製品の実施態様を示す図である。
【図2】図1の半導体製品の、その製造の際の曲率半径の成長、ならびに従来技術によるニトリド半導体製品の、その製造の際の曲率半径との比較を示す図である。
【図3】ニトリド半導体製品の、その製造の際に成長表面から反射された光の時間に対する成長を示す図である。
【図4a】従来技術の方法により製造されたGaN層の微分干渉(DIC)顕微鏡画像を示す図である。
【図4b】従来技術の方法により製造されたGaN層の微分干渉(DIC)顕微鏡画像を示す図である。
【図4c】本発明の方法により製造されたGaN層のDIC画像を示す図である。
【図5a】従来技術の方法により製造されたGaN層の平面の透過電子顕微鏡画像を示す図である。
【図5b】本発明の方法により製造されたGaN層の平面の透過電子顕微鏡画像を示す図である。
【図6a】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【図6b】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【図6c】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【図6d】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【図6e】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【図6f】図1のニトリド半導体製品からのLEDの製造における方法段階を示す図である。
【実施例】
【0076】
図1は、ニトリド半導体製品100の層構造の図式投影図を示している。ニトリド半導体製品100は、図6a)〜6f)を用いて以下により詳細に説明するように、ニトリド半導体素子の製造の際に中間製品を形成する。
【0077】
図1の描写はスケール通りではない。特に記載された個々の層の層厚同士の正確な比は図からは決定できない。従って、図に示された層厚の関係は、きわめて大まかな手掛かりしか提供できない。以下の説明には、描写の詳細を欠いているので、装置の側面に平行して方法を説明する。
【0078】
ニトリド半導体製品100は、シリコンウエハ104上の層構造102を有している。図1の紙の平面に対して垂直にあるウエハの使用された成長表面は(111)シリコン表面である。シリコンウエハの代わりに、SOI基板又は他の幾つかの任意の基板、有利には(111)シリコン表面を有するものを使用してもよい。
【0079】
図1中、層の説明を明確にするために、参照番号106〜122の数字の他に記号A〜Fを個々の層の左側に示しておく。これに関連して、同じ記号は同じタイプの層を特徴付ける。特に、
A バッファ層と組合わさったニトリド核形成層;
B マスキング層、
C ニトリド半導体層、ここでは特にn型−導電性GaN層、
D マルチ・クォンタム・ウェル構造、
E p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層、ここでは特にp型−GaN、及び
F 歪み工学用の低温AlN又はAlGaN中間層。
【0080】
層構造の更なる詳細と、その製造を以下に記載する。
【0081】
層を堆積する前にウエハ104の成長表面を不動態化する。これは、前記成長表面が湿式化学処理により、又は1000℃を上回る温度で真空もしくは水素中で加熱することにより脱酸素し、かつ水素終端表面が形成されることを意味する。
【0082】
核形成層106は10〜50nmの厚さを有する。本実施態様ではその上に堆積されたバッファ層を有するが、方法手順では原則として任意のバッファ層とのコンポジットの形で最大で400nmの層厚が生じる。
【0083】
低温で、すなわち1000℃未満の例えば600〜800℃で、又は高温で、すなわち1000℃を超えるAlNの対する通常の成長温度で成長するAlN核形成層が適切である。任意のバッファ層は、有利には同様にAlNから成り、これは高い成長温度の場合でも設置される。しかしバッファ層はAlGaNから成っていてもよい。AlGaNを使用する場合には、核形成層は比較的に大きな厚さ、例えば約600nmを有していてもよい。
【0084】
核形成層を成長させる場合には、基板のニトロ化を妨げるために、窒素前駆体を添加する前にアルミニウム前駆体を反応器に添加して開始するのが得策である。基板のニトロ化は、AlNの不所望な多結晶の成長を生じ得る。
【0085】
核形成層とバッファ層106から成るコンポジット上に、窒化ケイ素から成るマスキング層が堆積される。この堆積は、同時にシラン又はジシラン又は有機ケイ素化合物のようなシリコン前駆体と、アンモニア又はジメチルヒドラジンのような窒素前駆体を挿入することにより行われる。成長表面上では、これらの2つの前駆体が窒化ケイ素を形成しながら反応する。
【0086】
SiNマスキング層の厚さは、第一のニトリド半導体層110の後続の成長の際に、630nmの波長で同時に実施されるレフレクトメトリ測定で、完全な振動強度が4回以上の振幅の後に漸く得られるように選択される。これは、約600nmの層厚に相応する。これは、一般に5%未満の僅かな孔密度だけを有する表面、すなわち原則としてレフレクトメトリにより解析できない元の島の間で平坦化されていない領域を生じる。簡単な実験により、この規則に倣い適切なSiN層厚を決定できる。レフレクトメトリで使用される他の波長への技術的教示の転用は、当業者には問題ではない。
【0087】
第一のニトリド半導体層110(これは図1の例では、基本的にGaNから成っているのでGaN層110と称する)の成長の際に、融合促進成長パラメーターは本発明の実施態様で調節されない。すなわち、温度と窒素前駆体:ガリウム前駆体の比が増大しないことを意味する。このようなパラメーターを使用しながら、GaN層110の十分な圧縮成長ならびに、これを用いて冷却後にはるかに小さな引張強度、ひいては実質的に殆ど曲がっていない、均一に弛緩した素子構造が得られる。
【0088】
前記の成長条件は、層の品質を改善し、かつ同様に亀裂形成の傾向を下げる大きな島の成長につながる。
【0089】
GaN層110の層厚は、800〜1600nmの間である。この上に歪み工学のために、低温AlN中間層112の形のアルミニウム含有ニトリド半導体中間層が堆積される。ここでは、低温AlN中間層は8〜15nmの厚さを有する。
【0090】
低温AlN中間層は、圧縮応力−コンポーネントを増大する。この層を省略する場合には、SiNマスキング層108により厚さ1300nmのGaN層は、亀裂なしに成長できる。なぜならば、この場合に冷却の際に、引張応力−コンポーネントは、この厚さを上回ると亀裂を生じるからである。
【0091】
従って、低温AlN中間層112の挿入は、更なるGaN層と低温AlN中間層の連続した成長により達成されるべきGaN層のより大きな全体的な層厚を可能にする。その結果として、低温AlN中間層112に、約800〜1600nmの厚さの第二のGaN層114が続き、次に更なる低温AlN中間層115が続く。この上に、第三のGaN層116が堆積される。再び、この上にSiNから成る第二のマスキング層が堆積される。第二のSiNマスキング層117は、次の第四のGaN層118中で転位密度の減少を生じる。4つのGaN層110、114、116及び118は、n型ドープされている。ドーピングは、成長の際に適切なドーピング物質の前駆体を添加することにより実施される。
【0092】
従って、これまでに記載された方法手順は、第一のGaN層110で既に関連し、これは先に記載の第一のニトリド半導体層、圧縮応力での成長に相応する。このように達成された減少した引張応力は、引き続く除去ならびにウエハ104の担体への結合を容易にする。よって接着剤に作用する力は少ない。従って、層構造102は、全体的に簡単に担体に接着する。既に第一のGaN層110中で改善された微結晶構造と減少した引張応力は、層構造102のストリッピングの間と後に既に亀裂形成の傾向を更に下げる。
【0093】
第四のGaN層118上に、マルチ・クォンタム・ウェル構造が堆積される。このマルチ・クォンタム・ウェル構造120の材料の選択と正確な層構造は、発光の所望の波長に相応して調節される。このために調節すべきパラメーター、例えば層化学量論及び層厚は、当業者に公知である。一般的に公知のように、インジウムの添加によりニトリド半導体のバンドギャップは、例えば純粋なGaNから始まり、窒化インジウムのバンドギャップの方向で減少する。アルミニウムの添加により、バンドギャップはAlNの値に向けて増大する。このように、発光は、赤から紫外線スペクトル領域内にある所望の波長を有して調節できる。
【0094】
図1には記載されていないが、例えば10〜30nm厚さの注入バリヤーを、任意にマルチ・クォンタム・ウェル構造120の上に提供してもよい。
【0095】
記載されているのは、むしろマルチ・クォンタム・ウェル構造120に直接に隣接するp型−GaNから成るカバー層122である。
【0096】
上記の説明は、本発明によるニトリド半導体素子の実施態様に関連する。自明ながら、他の素子、例えば、電場効果トランジスターは、層構造の詳細ならびに層ドーピングは、自体公知の方法で調節しなくてはならない。
【0097】
図2には、本発明の方法によるニトリド半導体製品の、その製造の際の曲率の成長、ならびに従来技術によるニトリド半導体製品の、その製造の際の曲率との比較を示す図が記載されている。図の横軸に分で示された時間がプロットしてあり、シリコン基板(111)上での層堆積の開始と、成長した層構造の冷却の終わりの間に続いている。縦軸には、曲率、すなわち、ニトリド半導体製品の曲率半径の逆数がプロットしてある。曲率の測定は、現代の測定方を使用して高い精度で可能である。曲率の測定の詳細については、A. krost等による刊行物、phys. Stat. sol. (b) 242, 2570-2574(2005)及びA. Krost等、Phys. Stat. sol. (a) 200, 26-35(2003)から引用できる。縦軸にプロットされた−0.2と0.2の間の曲率値は、5mと無限の間の曲率半径の値を有する曲率に相当する。
【0098】
図2の図には、2つの異なる測定曲線がプロットしてある。従来技術による通常のニトリド半導体の成長の際の曲率の測定曲線は、点線で示されている。本発明によるニトリド半導体製品の曲率の時間経過は、実線で示されている。
【0099】
4つの異なる成長相は、本発明による方法手順で区別でき、これは図2中で垂直の点線で相互に分けられている。このように定義された時間間隔はアラビア数字1〜4により識別される。時間間隔1では、AlN核形成層106の成長ならびにGaNの堆積に適切な1000℃を上回る成長温度までの加熱が行われる。初めの消えている曲率(無限の曲率半径に相当する)から出発して、この時間間隔で2つの異なる構造において、僅かにプラスの曲率が確立する。成長開始後30分後に開始し、約45分間続く次の時間間隔2では、SiNマスキング層(図1の例では108)と第一のGaN層(図1中110)が成長する。この時間間隔でGaN成長島の融合の開始が生じる。本発明による方法により製造された層構造の曲率が、この段階でSiNマスキング層を使用することなく通常の方法により成長させた比較構造中よりも高い値を呈することが明らかに分かる。
【0100】
次の時間間隔3で、第一のGaN層(図1中110)は成長した。通常の方法手順による比較試料では、中間相が無いので、ここでは手段が相違し、かつ時間間隔3は成長開始後、30〜80分を僅かに上回って続いていた。この場合には、低温AlN成長相はAlN中間層112の製造に挿入されていない。
【0101】
両方の構造は、層の堆積が完了した後に冷却される(時間間隔4)。従来技術により製造された比較試料中では、本発明により製造した試料の場合のように、方法開始後、冷却を90分間行い、かつ比較試料では約0.17m-1の比較的に著しい試料の曲率を生じ、これは約5.8mの曲率半径に相当する。本発明により製造された層構造では、冷却プロセスが完了した後の曲率は、約0.12m-1であり、これは約8.3mの曲率半径に相当する。この値は、図1の層構造のように、更に低温AlN層を挿入することで更に最適化でき、その結果殆ど差がない小さな曲率を有するニトリド半導体製品を製造できる。
【0102】
図3は、ニトリド半導体製品を、それぞれ図2に基づいて記載した比較試料(点線曲線)の方法手順と、本発明により製造された試料の方法手順で製造した際に、成長表面から反射された光の時間に対する成長を示す図である。従って、図は、図2中で説明した方法手順に相応して、約600nmの光波長での層構造の成長の際のレフレクトメトリ測定の結果を示している。反射した光の強度は、時間に対してプロットされている。同じように図は、図2中のように、時間区間1、2、3及び4に細分されている。周知のように層成長の際に振動する反射光の強度の最初の強度最大は、区間2の矢印で示されている。比較試料とは異なり、本発明により製造された試料では、最小強度と最大強度の間の全ての振れは、5〜6回の振動の後に達成されていることが分かる。このようなパターンがレフレクトメトリ測定で生じるようにマスキング層の成長の期間が調節される場合には、初めに別々の微結晶がGaN層の堆積工程で存在することが分かっている。前記微結晶は、融合層厚を上回って融合し、かつ成長するニトリド半導体層の層平面中、成長方向に対して垂直に少なくとも0.16μm2〜0.36μm2の平均表面積を占める。更に成長パラメーターを最適化する場合には、より大きな平均表面積を達成できることも予測される。
【0103】
図4a)とb)は、従来技術による方法により製造されたGaN層の微分干渉(DIC)顕微鏡画像である。図4c)は、従来技術による方法により製造されたGaN層のDIC画像を示す。
【0104】
図4a)〜c)の走査型電子顕微鏡画像は、同じスケールで示された様々に製造されたGaN層の表面を示している。図4a)に示されている試料は、SiNマスキング層無しで製造され、かつ約2.5μmの厚さを有するものである。この表面は、多数の亀裂を有していることが明らかに分かる。図4b)に示されている表面は、SiNマスキング層により製造されているが、しかし歪み工学用のAlN中間層を含んでいない2.4μmの厚さで製造された試料に属す。この層は、先に記載した試料に比べて僅かな亀裂だけを有する著しく改善された構造を示す。
【0105】
それに対して、本発明の、すなわち適切なSiNマスキング層と低温AlN中間層を用いた2.8μmの厚さにまで成長させた図4c)に記載の試料の表面は、画像区域内に何の亀裂形成も無く、はるかに改善された品質を示している。
【0106】
図5a)は、従来技術による方法により製造されたGaN層の平面の透過電子顕微鏡画像を示している。図5b)は、本発明の方法により製造されたGaN層の平面の透過電子顕微鏡画像を示している。この画像は、様々に成長したGaN層のほぼ同じスケールを示している。図5a)で示した層を成長させる場合には、SiNマスキング層は使用しなかった。その代わりに、図5b)で示した層を成長させる場合に本発明による方法の順番を合わせた。
【0107】
画像を評価するために、記載した層平面で目に見える微結晶の大きさを概算し、かつこのために融合した微結晶の認識可能な輪郭を大体なぞる円形もしくは楕円形の環を画像の上に重ね合わせた。
【0108】
ヘテロエピタキシの転位は、一方では境界面での整合転位として生じ、かつ他方では大抵は島成長により形成されることを説明として加えておく。島が微結晶構造の強い不整合で成長する場合には、これらは常に僅かに傾斜して、又はねじれて成長する。この場合に、2つの微結晶の境界面での傾斜は螺旋転位の形成を生じる。ねじれは、2つの微結晶の境界面で刃状転位を生じる。従って、これらの転位は、層厚の増大に伴って生じる融合方法により、2つの微結晶の境界面で形成される。僅かな転位だけは、これらの作用と無関係に例えば基板との境界面で直接に生じる。従って、認識可能な刃状転位と螺旋転位は、ほぼ融合する微結晶の境界面を示す。それというのも、隣接する微結晶が僅かに方向性を失う場合に、これらを修飾するからである。微結晶の平均表面積を調べるために、マスキング層から700±50nmの距離で層平面を使用するのがよい。
【0109】
記載した表面積と同定した微結晶の数との比から、記載した交差平面中の微結晶により占有される平均表面積を計算した。この交差平面は、調査した両方の試料で融合層厚を上回っている。図5a)中に記載した試料では、894nm×1195nm=1.0681μm2の面積上で38個の微結晶が数えられた。これは、微結晶1つあたり、0.0281μm2の平均表面積を生じる。
【0110】
それに対して、図5b)に記載した本発明によるニトリド半導体製品の試料中では、2982nm×2238nm=6.67μm2の表面積で35個の微結晶が数えられた。これは、微結晶1つあたり0.19μm2の平均表面積を生じる。
【0111】
図5b)で調査した試料は、その品質に関して、本発明による方法で達成できる値の下限にあると指摘すべきである。有利には、この方法手順は平均表面積が少なくとも0.36μm2であるように実施される。このように、GaN層中の圧縮応力は著しく増大し、この事は完成した素子の曲率半径と引張応力に良好な結果を生じる。
【0112】
図6a)〜6f)は、図1のニトリド半導体からLEDを製造する際の種々の方法工程を示している。ここで記載した方法手順は、図1のニトリド半導体素子の製造の後に続く。
【0113】
これに関連して、ニトリド半導体製品100の上面の金属化が施される。これは、一方では引き続く担体126の結合に、他方では、形成された素子からの光減結合を改善するのに役立つ。
【0114】
担体126は、銅又はAlSiから作られていて、結合に使用される一方の側128で金属化130される。図6b)は、結合後のプロセス段階を示している。結合は280℃の温度で実施される。このような低温の使用は、結合の際の熱循環により付加的応力が何も生じないという利点を有する。
【0115】
次の工程でSiウエハ104は除去される。これは図6c)に図式的に記載されている。Siウエハ104は、研磨とエッチングにより除去される。エッチングは、湿式化学又は乾式化学エッチングであってよい。従って、図6d)に記載された構造が製造され、その際、先にSiウエハに結合する核形成層106は次に上面を形成し、かつp−カバー層122は金属化124/130と直接に接触している。次の工程では、上面はエッチングにより構造化される。素子からの光減結合を改善するピラミッド状構造は、例えばKOH又はH3PO4でエッチングにより形成される。最後に、コンタクト構造が作製される。LEDの流れ極性を同定するために、マイナスの極性を表面上の末端のコンタクト136に設置し、かつプラスの極性を担体上の末端のコンタクトに設置した。
【0116】
本発明によれば、層成長は大きな基板上で可能であり、よって大きな素子の製造又はコスト効率の良い多数の小さな素子の製造が可能にする。記載された方法手順は、通常は、サファイア基板の使用で用いられるレーザーストリッピングなしに実施されるので、より簡素で安価である。フォトリトグラフィー法は、背面コンタクトの作製ならびに素子を分離する前の構造化にとって必要である。
【0117】
上記の記載は、応力を加えていないニトリド半導体層構造の本発明による成長法に基づき、素子の更なる製造工程で特に簡単なプロセシングが可能であることを示している。このように、高い品質で、安価な素子を製造できる。
【0118】
方法手順では、様々な変法が可能である。例えば、p−導電カバー層122は、p−GaNの少なくとも20nmの成長後にSiNマスクで提供できる。引き続く更なるp−GaNの製造は、島の形で実施でき、かつ完全な融合を生じない。これは粗い表面を精製し、かつ図6f)の完成した半導体素子中で、より均一な発光を上向きに生じる。より効率的ではない抗反射層が上面に設置されたとしても、この光は、より効率的に減結合する。
【符号の説明】
【0119】
100 ニトリド半導体製品、 102 層構造、 104 シリコンウエハ、 106 核形成層、 108 SiNマスキング層、 110 ニトリド半導体層、 112 低温AlN中間層、 114 GaN層、 116 GaN層、 117 第二のマスキング層、 118 GaN層、 120 MQW構造、 122 カバー層、 A バッファ層と組合わさったニトリド核形成層、 B マスキング層、 C ニトリド半導体層、 D マルチ・クォンタム・ウェル構造、 E p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層、 F 歪み工学用の低温AlN又はAlGaN中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン表面上にニトリド半導体素子の層構造を製造する方法であって、
− シリコン表面を有する基板を提供する工程:
− 基板のシリコン表面上にアルミニウム含有ニトリド核形成層を堆積させる工程;
− 任意に、アルミニウム含有ニトリドバッファ層をニトリド核形成層上に堆積させる工程;
− マスキング層をニトリド核形成層又は、存在する場合には、第一のニトリドバッファ層上に堆積させる工程;
− ガリウム含有の第一のニトリド半導体層をマスキング層上に堆積させる工程
を有し、その際、マスキング層は、第一のニトリド半導体層の堆積工程において、初めに別々の微結晶が成長し、前記微結晶が融合層の厚さを上回って融合し、かつ成長方向に対して垂直に融合するニトリド半導体層の層平面中で少なくとも0.16μm2の平均表面積を占めるように堆積される、シリコン表面上にニトリド半導体素子の層構造を製造する方法。
【請求項2】
マスキング層は、初めに成長島の形で成長する第一のニトリド半導体層が、マスキング層から平均して少なくとも600nmの距離から、少なくとも80%の閉じた層面積を生じるように堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マスキング層は、その下にあるニトリド核形成層、又は存在する場合には、第一のニトリドバッファ層の少なくとも95%の被膜で堆積される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
窒化ケイ素から成るマスキング層が堆積される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
マスキング層の堆積の期間は、第一のニトリド半導体層の堆積工程の際に、約600nmの光波長での成長表面の反射強度の並行測定が、発振振幅が増すにつれて少なくとも5回の振動サイクルの後に、ほぼ一定の最大値に達する振動強度の推移を示すように選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ニトリド核形成層の堆積は、(111)−シリコン表面上で行われる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第一のニトリド半導体層は、800nm〜1600nmの間の層厚で堆積される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第一のニトリド半導体層上に、アルミニウム含有ニトリド中間層が堆積され、かつこの最後の層の上に、ガリウム含有の更なる第二のニトリド半導体層が堆積される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウム含有ニトリド中間層とガリウム含有の更なるニトリド半導体層の堆積の工程の順番を繰り返し実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更なるニトリド半導体層の上に、ニトリド半導体材料から成るマルチ・クォンタム・ウェル構造を堆積させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
マルチ・クォンタム・ウェル構造が堆積している更なるニトリド半導体層を堆積する直前に、窒化ケイ素から成る少なくとも1つの更なるマスキング層を堆積することに特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
n−ドーピングを第一のニトリド半導体層、および存在する場合には、マルチ・クォンタム・ウェル構造を堆積する前の更なるニトリド半導体層に導入する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
p型ドーピングした、マルチ・クォンタム・ウェル構造の上のガリウム含有ニトリド半導体カバー層を製造する工程を有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
基板を提供する工程は、シリコン基板の提供を含み、その厚さは少なくともDGaN*x[式中、DGaNは、基板上に堆積すべきニトリド半導体層の層厚を表すか、又は1つ以上のニトリド半導体層を堆積すべき場合には、基板上に堆積すべきニトリド半導体層と、存在するニトリド中間層の層厚の合計を表し、その際、ドーピングしたシリコン基板を使用する場合には、xは110であり、かつドープしていない基板を使用する場合には200である]である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
基板の提供の工程は、シリコン基板の提供を含み、その厚さは更に
【数1】

(式中、y=基板の直径(cm)/3.5)
以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ニトリド半導体素子の層構造を、請求項1から15までのいずれか1項に記載のシリコン表面上に作製する工程、
層構造と担体を、層構造の成長上面が担体に向かい合うように結合させる工程、
基板を完全に又は部分的に除去する工程、
コンタクト構造を作製する工程、
を有する、ニトリド半導体素子を製造する方法。
【請求項17】
導電性コンタクト層を、層構造の成長上面の上に堆積させる工程を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コンタクト層には、p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも高い屈折率を有する材料が使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
結合を実施する前に、層構造の成長面、又は存在する場合にはコンタクト層の成長上面を金属化する工程を有する、請求項16から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
結合に使用すべき表面が導電性又は反射性又は金属性である担体を使用する、請求項16から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
層構造のニトリド半導体カバー層を
【数2】

[式中、
m=0、1、2、3、・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さで堆積させる、請求項18から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コンタクト層には、p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも低い屈折率を有する材料が使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
層構造のニトリド半導体カバー層を
【数3】

[式中、
m=0、1、2、3、4・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さで堆積させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
結合は、280〜500℃の間の範囲内の温度で行われる、請求項16から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
基板の除去の工程は、研削により、又は研削とエッチングの組み合わせにより行われる、請求項16から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
基板の除去工程は、エッチングのみにより行われる、請求項16から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
基板の除去により露出される成長背面は、抗反射作用層を形成するために構造化される、請求項16から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
次のもの:
− 成長方向に対して垂直の層平面で少なくとも0.16μm2の平均表面積を占める成長した微結晶の構造を有する、ガリウム含有の第一のニトリド半導体層、
− 第一のニトリド半導体層に隣接するアルミニウム含有ニトリド中間層、及び
− 最後の層に隣接するガリウム含有の更なる第二のニトリド半導体層
を有する、ニトリド半導体素子。
【請求項29】
微結晶は、成長方向に対して垂直の層平面で、少なくとも400×400nm2の平均寸法を有する、請求項28に記載のニトリド半導体素子。
【請求項30】
微結晶は、成長方向に対して垂直の層平面で少なくとも0.36μm2の平均表面積を占める、請求項28に記載のニトリド半導体素子。
【請求項31】
第一のニトリド半導体層は、800nm〜1600nmの間の層厚を有する、請求項28から30までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項32】
アルミニウム含有ニトリド中間層とガリウム含有の更なるニトリド半導体層の層配列を繰り返し含有している、請求項28から31までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項33】
更なるニトリド半導体層の上にニトリド半導体材料から成るマルチ・クォンタム・ウェル構造を堆積させる、請求項31又は請求項32に記載のニトリド半導体素子。
【請求項34】
マルチ・クォンタム・ウェル構造が堆積した更なるニトリド半導体層に直接に隣接しているが、しかし、この更なるニトリド半導体層のマルチ・クォンタム・ウェル構造から離れている側に隣接している、窒化ケイ素から成る少なくとも1つの更なるマスキング層に特徴付けられる、請求項33に記載のニトリド半導体素子。
【請求項35】
第一のニトリド半導体層、かつ存在する場合には、更なるニトリド半導体層がn型ドープされていて、この側に第一のニトリド半導体層に向かい合っているマルチ・クォンタム・ウェル構造が配置されている、請求項28から34までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項36】
第一のニトリド半導体層から離れているマルチ・クォンタム・ウェル構造の側に配置されている、p型ドーピングしたガリウム含有ニトリド半導体カバー層を有する、請求項33から35までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項37】
第一のニトリド半導体層と結合した担体を有する、請求項28から36までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項38】
担体と第一のニトリド半導体層は金属層により相互に結合している、請求項28から37までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項39】
担体は、実質的に銅又はアルミニウム又はシリコン又は窒化アルミニウム又はAl/Siから成っている、請求項37又は38に記載のニトリド半導体素子。
【請求項40】
担体と第一のニトリド半導体層の間に、導電性コンタクト層が配置されている、請求項28から39までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項41】
コンタクト層は、p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも高い屈折率を有する、請求項36および請求項40に記載のニトリド半導体素子。
【請求項42】
層構造のニトリド半導体カバー層を、
【数4】

[式中、
m=0、1、2、3、・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さで堆積させる、請求項36に記載のニトリド半導体素子。
【請求項43】
コンタクト層は、p型ドーピングしたニトリド半導体カバー層よりも低い屈折率を有する、請求項36および請求項40に記載のニトリド半導体素子。
【請求項44】
層構造のニトリド半導体カバー層は、
【数5】

[式中、
m=0、1、2、3、4・・・;
λは、ニトリド半導体素子の運転の際のマルチ・クォンタム・ウェル構造の発光の波長であり、
Nitrideは、波長λでのニトリドの屈折率であり、かつ
MQWは、マルチ・クォンタム・ウェル構造の厚さを意味する]
の厚さを有する、請求項43に記載のニトリド半導体素子。
【請求項45】
n−側とp−側の電気接触素子を有する、請求項28から44までのいずれか1項に記載のニトリド半導体素子。
【請求項46】
請求項28から45までのいずれか1項に記載の複数のニトリド半導体素子を有する担体ウエハ。
【請求項47】
担体上の複数のニトリド半導体素子は、全部で少なくとも24cmの横方向の寸法を有する、請求項46に記載の担体。
【請求項48】
ニトリド半導体製品であって、
シリコン表面を有する基板、
シリコン表面に隣接するアルミニウム含有ニトリド核形成層、
任意で、ニトリド核形成層に隣接するアルミニウム含有ニトリドバッファ層、
ニトリド核形成層上、又は存在する場合には、ニトリドバッファ層上のマスキング層、ならびに、
マスキング層に隣接して配置され、融合した微結晶の構造を有するガリウム含有の第一のニトリド半導体層
を有し、その際、微結晶は融合層厚を上回り、かつ層平面中で成長方向に対して垂直に、少なくとも0.16μm2の平均表面積を占める、ニトリド半導体製品。
【請求項49】
成長島は、マスキング層から少なくとも600nmの距離で、少なくとも80%融合している、請求項48に記載のニトリド半導体製品。
【請求項50】
ニトリド核形成層は、少なくとも10%のアルミニウム含有量を有する窒化アルミニウム層又は窒化アルミニウムガリウム層である、請求項48又は請求項49に記載のニトリド半導体製品。
【請求項51】
ニトリド核形成層は、10〜100nmの間の層厚を有する、請求項50に記載のニトリド半導体製品。
【請求項52】
ニトリドバッファ層は、最大で400nmの層厚を有する、請求項48から51までのいずれか1項に記載のニトリド半導体製品。
【請求項53】
基板は、基板表面の背面に対して垂直方向に、曲率を有さないか、又は少なくとも10mの曲率半径を有する、請求項48から52までのいずれか1項に記載のニトリド半導体製品。
【請求項54】
第一のニトリド半導体層に隣接するアルミニウム含有ニトリド中間層、および
最後の層に隣接するガリウム含有の更なる第二のニトリド半導体層を有する、請求項48から53までのいずれか1項に記載のニトリド半導体製品。
【請求項55】
微結晶は、成長方向に対して垂直の層平面で少なくとも0.36μm2の平均表面積を占める、請求項48から54までのいずれか1項に記載のニトリド半導体製品。
【請求項56】
基板は、少なくとも24cmの横方向の寸法を有する、請求項48から55までのいずれか1項に記載のニトリド半導体製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【公開番号】特開2011−233936(P2011−233936A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180447(P2011−180447)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2008−555795(P2008−555795)の分割
【原出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507125284)アズッロ セミコンダクターズ アクチエンゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】AZZURRO SEMICONDUCTORS AG
【住所又は居所原語表記】Universitaetsplatz 2, D−39106 Magdeburg, Germany
【Fターム(参考)】