説明

ニトロベンゼンスルフェニル基含有トリプトファンに対するモノクローナル抗体及びそれを用いた抗体カラム

【課題】NBS修飾ペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及びそれらの製造方法と、該モノクローナル抗体を用いた抗体カラム、及び該抗体カラムによりNBS修飾ペプチドを選択的に分離する方法を提供する。
【解決手段】NBS基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体。NBS基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞。アミノ酸残基を含まないNBS基含有トリプトファン誘導体を免疫抗原として用いることにより、ハイブリドーマ細胞を作製する方法。前記ハイブリドーマ細胞にモノクローナル抗体を産生させ、モノクローナル抗体を作製する方法。前記モノクローナル抗体を有する抗体カラム。前記抗体カラムを用いてNBS基を有するトリプトファンを含むペプチドを分離する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテオーム解析(タンパク質の網羅的解析)に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオーム解析(タンパク質の網羅的解析)分野においては、これまで二次元電気泳動と質量分析装置とを組み合わせたPMF(ペプチドマスフィンガープリンティング)解析法が主流であった。これに代わる次世代のプロテオーム解析法として、例えば、Nature Biotechnology, 994-999, 17, 1999、Molecular & Cellular PROTEOMICS, 299-314, 2, 2003 、及びCurrent Opinion in Chemical Biology, 70-77, 7, 2003に記載されているような、安定同位体を用いた手法が考案されている。
【0003】
トリプトファンは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の中で、タンパク質の機能面或いは活性面で非常に重要な役割を有するアミノ酸である。このため、トリプトファンをターゲットとした解析は、タンパク質の機能解析を行うために非常に有効な手段である。また、トリプトファンは、90%以上のタンパク質中に構成アミノ酸残基として含まれている。このため、トリプトファンをターゲットとした解析は、タンパク質の網羅的解析を行うために非常に有効な手段である。
【0004】
ここで、スルフェニル化合物が、トリプトファン残基の選択的ラベル化試薬として知られている。その中でも、酸性溶液中でトリプトファン残基を選択的に化学修飾する試薬としてNBSCl(2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド)試薬が、Scoffone E, Fontana A, Rocchi R., Biochem, Biophys. Res. Commu., 1966, 25, 170及びScoffone E, Fontana A, Rocchi R., Biochemistry, 1968, 7, 971によって報告されている。
【0005】
そして、Rapid Communications in Mass Spectrometry, 1642-1650, 17, 2003及び国際公報第2004/002950号パンフレットには、本発明者らによって開発された手法(NBS法)が記載されている。NBS法においては、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBSCl)の安定同位体標識体(2−ニトロ[136]ベンゼンスルフェニルクロリド)及びその非標識体(2−ニトロ[126]ベンゼンスルフェニルクロリド)を用いる。すなわち、(1)解析すべきタンパク質試料Iとその対照タンパク質試料IIとの2種類の状態のタンパク質試料を用意し、(2)前記タンパク質試料Iを、2−ニトロ[136]ベンゼンスルフェニルクロリド及び2−ニトロ[126]ベンゼンスルフェニルクロリドのいずれか一方を用いて修飾し、別途、前記タンパク質試料IIを、2−ニトロ[136]ベンゼンスルフェニルクロリド及び2−ニトロ[126]ベンゼンスルフェニルクロリドのいずれか他方を用いて修飾し、(3) 修飾されたタンパク質試料I及び修飾されたタンパク質試料IIを混合し、(4)得られた修飾タンパク質混合物を還元・アルキル化した後、修飾ペプチド断片と非修飾ペプチド断片とを含むペプチド混合物へ消化し、(5)ペプチド混合物から修飾ペプチド断片を、疎水クロマトグラフィーカラムを用いて濃縮分離し、(6)質量分析を行う。
【0006】
【非特許文献1】スティーブン・P・ギジ(Steven P. Gygi)、ビート・リスト(Beate Rist)、スコット・A・ゲーバー(Scott A. Gerber)、フランチシェク・タレチェク(Frantisek Turecek)、ミヒャエル・H・ゲルブ(Michael H. Gelb)、及びルディー・エバーソルド(Ruedi Aebersold)著、同位体コードしたアフィニティータグを用いた複雑なタンパク質混合物の定量解析(Quantitative analysis of complex protein mixtures using isotope-coded affinity tags)、「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、1999年、第17巻、p.994−999
【非特許文献2】カーク・C・ハンセン(Kirk C. Hansen)、ジェロルド・シュミット−ウルムス(Gerold Schmitt-Ulms)、ロバート・J・チョークレー(Robert J. Chalkley)、ヤン・ヒルシュ(Jan Hirsch)、ミヒャエル・A・ボールドウィン(Michael A. Baldwin)、及びA・L・バーリンガム(A. L. Burlingame)著、開裂可能な13C同位体コードされたアフィニティータグと多次元クロマトグラフィーとを用いた質量分析による低レベルタンパク質混合物の解析(Mass Spectrometric Analysis of Protein Mixtures at Low Levels Using Cleavable 13C-Isotope-coded Affinity Tag and Multidimensional Chromatography)、「モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular PROTEOMICS)」、2003年、第2巻、p.299−314
【非特許文献3】スコフォン・E(Scoffone E)、フォンタナ・A(Fontana A)及びロッチ・R(Rocchi R)著、「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)」、1966年、第25巻、p.170
【非特許文献4】スコフォン・E(Scoffone E)、フォンタナ・A(Fontana A)及びロッチ・R(Rocchi R)著、「バイオケミストリー(Biochemistry)」、1968年、第7巻、p.971
【非特許文献5】サルバトーレ・セチ(Salvatore Sechi)及びヨシヤ・オダ(Yoshiya Oda)著、マススペクトロメトリーを用いた定量的プロテオミクス(Quantitative proteomics using mass spectrometry )、「カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー(Current Opinion in Chemical Biology)」、(英国)、2003年、第7巻、p.70−77
【非特許文献6】九山浩樹(Hiroki Kuyama)、渡辺真(Makoto Watanabe)、戸田千香子(Chikako Toda)、安藤英治(Eiji Ando)、田中耕一(Koichi Tanaka)及び西村紀(Osamu Nishimura)著、トリプトファン残基のラベル化による定量的プロテオーム解析法(An Approach to Quantitative Proteome Analysis by Labeling Tryptophan Residues)「ラピッド・コミュニケーションズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Rapid Communications in Mass Spectrometry)」、2003年、第17巻、p.1642−1650
【特許文献1】国際公報第2004/002950号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来法では、NBSCl試薬で修飾されたトリプトファン含有ペプチド(NBS修飾ペプチド)を濃縮(精製)するために、担体としてC18(ODS)又はSephadex LH-20を用いて逆相分離を行っている。しかしながら、これらの方法は、当該ペプチドの分離能・再現性にばらつきが見られ、測定結果において不安定性などの種々の影響が生じることがある。したがって、目的分子である当該ペプチドを特異的に濃縮することは困難となることがあった。
【0008】
そこで本発明の目的は、NBS修飾ペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及びそれらの製造方法と、該モノクローナル抗体を用いた抗体カラム、及び該抗体カラムによりNBS修飾ペプチドを選択的に分離する方法を提供することにある。
【0009】
本発明は、以下の発明を含む。
下記<1>〜<3>は、モノクローナル抗体に関する。
【0010】
<1> ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体。
<2> 受託番号FERM P-20495として寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される、<1>に記載のモノクローナル抗体。
<3> 受託番号FERM P-20496として寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される、<1>に記載のモノクローナル抗体。
【0011】
下記<4>〜<6>は、ハイブリドーマ細胞に関する。
<4> ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞。
<5> 受託番号FERM P-20495として寄託されている、<4>に記載のハイブリドーマ細胞。
<6> 受託番号FERM P-20496として寄託されている、<4>に記載のハイブリドーマ細胞。
【0012】
下記<7>〜<13>は、免疫抗原として用いることができる化合物に関する。
【0013】
<7> 下記式(1):
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Yはアミノ基の保護基、Yは、アミノ酸残基を含まない鎖状構造を表す)で表されるニトロベンゼンスルフェニル基含有トリプトファン誘導体。
【0016】
<8> 前記保護基Yが、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、メチル基、及びエチル基から選ばれる、<7>に記載のトリプトファン誘導体。
【0017】
<9> 前記鎖状構造Yが、下記式(2):
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、nは1〜10の整数である)で表される、<7>又は<8>に記載のトリプトファン誘導体。
【0020】
<10> 前記鎖状構造Yが、下記式(3):
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、Zは直接結合又は二価の結合基、Zは直接結合又は二価の結合基、mは3〜30の整数である)で表される、<7>又は<8>に記載のトリプトファン誘導体。
【0023】
<11> <7>〜<10>のいずれかに記載のトリプトファン誘導体と、キャリア高分子化合物との、トリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体。
【0024】
下記<12>は、ハイブリドーマ細胞の作製法に関する。
<12> <7>〜<10>のいずれかに記載のトリプトファン誘導体、又は<11>に記載のトリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体を免疫抗原として用いる、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製する方法。
【0025】
下記<13>は、モノクローナル抗体の作製法に関する。
<13> <7>〜<10>のいずれかに記載のトリプトファン誘導体、又は<11>に記載のトリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体を免疫抗原として用い、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製し、前記ハイブリドーマ細胞に前記モノクローナル抗体を産生させる、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体を作製する方法。
【0026】
下記<14>〜<17>は、抗体カラム、その作製法、及びそれを用いたペプチド分離法に関する。
<14> <1>〜<3>のいずれかに記載のモノクローナル抗体を有する抗体カラム。
<15> <1>〜<3>のいずれかに記載のモノクローナル抗体を支持体に固定させることによって抗体カラムを作製する方法。
【0027】
<16> <14>に記載の抗体カラムを用いて、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを含むペプチドを分離する方法。
<17> 前記ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを含むペプチドは、トリプトファンを含むペプチドを、ニトロベンゼンスルフェニルクロリドを用いて修飾を行うことによって得られる、<16>に記載のペプチドを分離する方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、NBS修飾ペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及びそれらの製造方法と、該モノクローナル抗体を用いた抗体カラム、及び該抗体カラムによりNBS修飾ペプチドを選択的に分離する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ、該モノクローナル抗体及び該ハイブリドーマの作製において免疫抗原として用いることができる化合物、該化合物を用いた該モノクローナル抗体及び該ハイブリドーマの作製方法、該モノクローナル抗体を有する抗体カラム、該抗体カラムの作製方法、及び、該抗体カラムを用いたペプチドの分離方法を提供する。
【0030】
本発明のモノクローナル抗体の認識構造、すなわちニトロベンゼンスルフェニル基(NBS基)を有するトリプトファンの構造は、下記式のとおりである。下記式に示す認識構造においては、トリプトファンのインドール環にNBS基が結合している。式中、X及びXは任意の基である。例えば、ペプチド中の認識構造である場合、Xとしては、水素原子、アミノ基の保護基、アミノ酸、ペプチド鎖などが挙げられる。また、同様の場合、Xとしては、水酸基、カルボキシル基の保護基、アミノ酸、ペプチド鎖等が挙げられる。ベンゼン環上のニトロ基の置換位置は任意であるが、例えば2−ニトロ置換体などが挙げられる。
【0031】
本発明におけるモノクローナル抗体は、例えば、この構造が構成要素として含まれるペプチド鎖などを特異的に認識することができる。本発明のモノクローナル抗体の具体例としては、免疫グロブリンクラスとしてIgGに属し、軽鎖としてκ鎖を保有するものである。
【0032】
【化7】

【0033】
本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなモノクローナル抗体の産生能を有するものである。本発明のハイブリドーマ細胞の一例としては、平成17年4月8日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号FERM P-20495として寄託されたもの、及び、平成17年4月8日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号FERM P-20496として寄託されたものが挙げられる。
【0034】
本発明のモノクローナル抗体又はハイブリドーマ細胞は、適当な化合物を免疫抗原として用い、通常のモノクローナル抗体の作製法又はハイブリドーマ細胞作製法に基づいて作製することができる。
免疫抗原として用いる化合物は、通常のモノクローナル抗体の作製に用いられる免疫抗原のように、10〜20アミノ酸の合成ペプチドを免疫抗原とすることができるが、本発明では、抗原部位をニトロベンゼンスルフェニル基(NBS基)含有トリプトファン残基に絞りこむため、下記式(1)のようなトリプトファン誘導体を免疫抗原として用いることが好ましい。
【0035】
【化8】

【0036】
式(1)に示す化合物は、NBS基含有トリプトファンを有し、その他のアミノ酸残基を含まないものである。NBS基は、トリプトファンのインドール環に結合している。また、式中、Yはアミノ基の保護基、Yはアミノ酸残基を含まない鎖状構造を表す。
【0037】
ベンゼン環上のニトロ基の置換位置は任意であるが、例えば2−ニトロ置換体などが挙げられる。たとえば、上記認識構造を、2−ニトロ置換体とする場合は、免疫抗原として用いる化合物も2−ニトロ置換体とする。その他の位置異性体についても同様に、認識構造と免疫抗原とは、同じ位置異性体とする。
【0038】
式(1)の化合物は、トリプトファンのアミノ基が適当な保護基Yで保護されている。保護基Yは、N末端の電荷に対して特異的な抗体ができることを防ぐ。従って、保護基Yとしては特に限定されることはない。例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、メチル基、エチル基などを挙げることができ、好ましくは、アセチル基が挙げられる。
【0039】
式(1)の化合物においては、トリプトファンのカルボキシル基に、アミノ酸残基を含まない鎖状構造Yが結合している。鎖状構造Yとカルボキシル基との結合様式としては、エステル結合やペプチド結合などが挙げられる。また、式(1)のトリプトファン誘導体が、キャリアタンパク質などのキャリア高分子化合物と結合した結合体の状態で免疫抗原として用いられる場合、鎖状構造Yは、トリプトファンのカルボキシル基と結合している方の末端とは反対側の末端に、キャリア高分子化合物と結合することができる基を有する。鎖状構造は、炭素数を例えば6〜90とすることができる。
【0040】
鎖状構造Yの具体例としては、下記式(2)に示すように、ε−アミノカプロン酸(εAhx)をモノマー単位とした鎖状構造が挙げられる。式中、nは、1〜10、好ましくは2〜5の整数であり、例えば2とすることができる。
【0041】
【化9】

【0042】
また、鎖状構造Yの他の具体例としては、下記式(3)に示すように、エチレングリコールをモノマー単位とした鎖状構造(ポリエチレングリコール(PEG)構造)やそれを含む構造が挙げられる。式中、Zは直接結合又は二価の結合基、Zは直接結合又は二価の結合基である。Z及びZにおいて、二価の結合基としては、アミノエチル基(例えば、−NHCHCH−)、ジグリコリルアミノエチルオキシ基(例えば、−OCHNHCOCHOCHCO−)などが挙げられる。また、このような構造はアミノ酸10〜15残基程度の大きさに相当する大きさ程度とすることができる。例えば、式中のmは、3〜30、好ましくは5〜20の整数であり、特に6であることが好ましい。
【0043】
【化10】

【0044】
さらに、このほかにもε−アミノカプロン酸とエチレングリコールの両方がモノマー単位として含まれる鎖状構造であっても良い。
【0045】
鎖状構造が上述の長さより短い場合、例えば以下の可能性が考えられる。本発明では、抗原部分はキャリア高分子化合物に比べて非常に低分子である。キャリア高分子化合物と結合させて免疫抗原を用いる場合、鎖状構造が上述の長さより短いと、抗原部位の分子の自由度が制限されやすくなる傾向を示す可能性が考えられる。
【0046】
反対に、鎖状構造が上述の長さより長い場合、例えば以下のことが考えられる。本発明では、NBS基の存在により、NBS基がない場合よりも抗原部分の疎水性が増している。この上に、例えば、ε−アミノカプロン酸をモノマー単位とする鎖状構造のように、長さが伸長するほど疎水性が増すような鎖状構造を採用する場合、鎖状構造が上述の長さより長いと、疎水性が増すために、次のような傾向を示す可能性が考えられる。すなわち、キャリア高分子化合物との結合の際、溶解性が落ち、反応効率が悪くなる傾向を示すことが考えられる。また、鎖状構造が例えばポリエチレングリコール構造を含む場合など、鎖状構造の伸長によって粘性が極めて増大することがあり、操作性が悪くなる傾向を示す可能性が考えられる。
【0047】
トリプトファンにこのような鎖状構造を導入するためには、対応する適当な鎖状分子又はそのような分子の鎖状骨格を形成することができるモノマーを用い、例えば通常のエステル合成法やペプチド合成法などを用いて結合させると良い。鎖状分子としては、トリプトファンのカルボキシル基と結合することができる基と、上記鎖状構造Yに相当する適当な長さの有機基とを有しているものであれば特に限定されない。式(1)のトリプトファン誘導体が、キャリアタンパク質などのキャリア高分子化合物と結合した状態で免疫抗原として用いられる場合、カルボキシル基と結合することができる基を有する末端とは反対側の末端に、キャリア高分子化合物と結合することができる基を有しているものが用いられる。例えば、6−アミノカプロン酸や、O−[2−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ)エチル]−O’−[2−(ジグリコリルアミノ)エチル]ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール誘導体等の化合物を用いることができる。
【0048】
NBS基は、トリプトファンに対し、適当な修飾試薬を作用させることにより導入することができる。例えば、ニトロベンゼンスルフェニル化合物を修飾試薬として用いることができる。ニトロベンゼンスルフェニル化合物としてはハロゲン化物が挙げられ、具体的には、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリドなどのニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBSCl)を用いることが好ましい。これら修飾試薬は、安定同位体を構成原子として含んでいても良い。2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリドを用いたトリプトファン残基の修飾方法としては、Rapid Communications in Mass Spectrometry, 1642-1650, 17, 2003及び国際公報第2004/002950号パンフレットなどに記載の方法が挙げられる。
【0049】
式(1)のトリプトファン誘導体は、トリプトファンを、保護の工程、鎖状化合物を結合させる工程、及びNBS基を導入する工程に供することによって調製することができる。トリプトファンが供される工程の順番は特に限定されないが、例えば、上記保護及び鎖状化合物の結合を行った後に、NBS基を導入することができる。
【0050】
式(1)のトリプトファン誘導体は、免疫抗原としては抗原決定基が短いため、抗体価を挙げる手段を用いることが好ましい。そのような手段としては、通常、免疫原性を有するキャリア高分子化合物と結合させる手段が用いられる。このような高分子化合物としては、タンパク質(キャリアタンパク質)がよく用いられる。キャリアタンパク質としては、公知のものを特に限定することなく用いることができる。例えば、アルブミン、ミオグロビン、ヘモシアニンなどが挙げられる。
【0051】
キャリア高分子化合物の結合は、保護、鎖状化合物の結合、及びNBS基の導入を全て行った後に行うことが好ましい。キャリア高分子化合物の結合方法としては、公知の方法を特に限定することなく用いることができる。例えばキャリアタンパク質を結合させる場合、架橋剤或いは結合剤を用いる方法が挙げられる。より具体的には、架橋剤としてm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(m-maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester; MBS)を用い、抗原側に付加しておいたシステイン残基のSH基とキャリアタンパク質側のアミノ基とを反応させ、共有結合を形成させるMBS法や、縮合剤として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide; EDC)、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)−カルボジイミド メチル−p−トルエンスルホネート(N-cyclohexyl-N-(2-morpholinoethyl)carbodiimide methyl-p-toluenesulfonate; CMC)などを用い、カルボジイミドにより活性化された抗原側のC末端のカルボキシル基とキャリアタンパク質側のアミノ基とを反応させ、共有結合を形成させるEDC法などが挙げられる。
【0052】
このように、トリプトファン誘導体や、適当なキャリア高分子化合物に結合させたトリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体は、免疫抗原や固相化抗原として用いることができる。
【0053】
免疫抗原は、哺乳動物に投与して免疫する。免疫される哺乳動物としては、マウス、ラット、及びその他通常法において用いられる動物を特に限定することなく用いることができる。投与法についても、腹腔内注射、皮下注射、静脈内注射など、通常用いられる方法を特に限定することなく用いることができる。その他、免疫の際の具体的な条件も、当業者が適宜決定することができる。
【0054】
最終免疫後、抗体産生が確認された動物から、抗体産生細胞を採取する。抗体産生細胞は形質細胞腫の細胞と融合され、ハイブリドーマが得られる。抗体産生細胞としては、脾臓細胞を用いるのが一般的であるが、これに限定されない。形質細胞腫の細胞としては、一般的に入手可能な骨髄腫細胞(ミエローマ)を用いることができる。抗体産生細胞と形質細胞腫細胞との融合反応は、特に限定されることなく、公知の方法によって行うことができる。融合反応は、ポリエチレングリコール(PEG)などの融合促進剤を用いて行うと良い。また、電気処理(電気融合)による方法を用いることもできる。その他、細胞融合における諸条件は、当業者が適宜決定することができる。
【0055】
得られたハイブリドーマは、所望の抗体の産生能を確認するためスクリーニングに供される。スクリーニング法としては、通常の方法を特に限定することなく用いることができる。例えば、上記の免疫抗原を用いて酵素免疫測定法により行うことができる。
【0056】
ハイブリドーマのクローニングは、通常の方法により行うことができる。例えば、限界希釈法、軟寒天法、ソータークローン法などを用いることができる。
【0057】
クローニングされたハイブリドーマは大量培養される。これにより、モノクローナル抗体を得ることができる。例えば、通常の細胞培養法によって培養上清として得ることができる。また、腹水形成法によって腹水又は血清として得ることができる。
【0058】
本発明のモノクローナル抗体は、トリプトファンを含有するタンパク質の細胞や組織レベルでの発現、局在に関する知見などが得られる非常に広い分野で利用することができる。例えば、本発明のモノクローナル抗体は抗体カラムに用いることができる。
【0059】
本発明の抗体カラムは、NBS基含有トリプトファンを特異的に認識するモノクローナル抗体をリガンドとしたアフィニティーカラムである。モノクローナル抗体は抗原認識が一つであることから、非常に高い特異性を発揮する。抗体カラムの作製法としては、特に限定されず、通常の方法によって、本発明のモノクローナル抗体を直接的又は間接的に固相支持体へ固定化させれば良い。このようにして得られた抗体カラムにより、例えばNBS基含有トリプトファン残基を含むペプチドの分離精製を行うことができる。この場合、NBS基含有トリプトファン残基を含むペプチドは、通常、トリプトファン残基を含むペプチドにNBS基を導入するための修飾を行うことによって得たものである。
【0060】
NBS基は、トリプトファンに対し、適当な修飾試薬を作用させることにより導入することができる。例えば、ニトロベンゼンスルフェニル化合物を修飾試薬として用いることができる。ニトロベンゼンスルフェニル化合物としてはハロゲン化物が挙げられ、具体的には、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(2−NBSCl)を用いることが好ましい。これら修飾試薬は、安定同位体を構成原子として含んでいても良い。2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリドを用いたトリプトファン残基の修飾方法としては、Rapid Communications in Mass Spectrometry, 1642-1650, 17, 2003及び国際公報第2004/002950号パンフレットなどに記載の方法が挙げられる。
【0061】
本発明の抗体カラムは、トリプトファンをターゲットとしたタンパク質解析において、例えばペプチド中のトリプトファンを予めNBSClなどの修飾試薬を用いて修飾することによって、トリプトファンを含有するペプチドの効率的且つ安定的な精製を可能にする。このため、本発明の抗体カラムは、タンパク質の機能解析やタンパク質の網羅的解析に大きく貢献することができる。
【実施例】
【0062】
[実験例1]
<抗原ペプチド様分子の合成>
島津製作所製ペプチド合成機・PSSM-8を用いてAc−Trp−εAhx−εAhx−OH及びAc−Trp−PEG−OHの2種類のペプチド様分子を合成した。Ac−Trp−εAhx−εAhx−OHは、鎖状分子として6−アミノカプロン酸を用いて合成し、Ac−Trp−PEG−OHは、鎖状分子としてO−[2−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノ)エチル]−O’−[2−(ジグリコリルアミノ)エチル]ヘキサエチレングリコール(O-[2-(9-fluorenylmethyloxycarbonylamino)ethyl]-O’-[2-(diglycolylamino)ethyl]hexaethylene glycol)を用い、Fmoc法によって合成した。
【0063】
合成したAc−Trp−εAhx−εAhx−OH 12mgと2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(2−NBSCl)試薬92mgとを、70%酢酸水溶液(v/v)中において室温で一晩反応させた。反応後、高速液体クロマトグラフィーにより精製を行い、前記ペプチド様分子のNBSラベル化体(Ac−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−OH;下記式4)の精製物7mgを得た。同様に、合成したAc−Trp−PEG−OH 17mgとNBSCl試薬90mgとの反応及び精製を行い、10.7mgのNBSラベル化ペプチドの精製物(Ac−Trp(NBS)−PEG−OH;下記式5)を得た。
【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
<キャリアタンパク質との結合>
精製した2種のNBSラベル化ペプチドの各々について、カルボジイミド法により、2種類のキャリアタンパク質、BSA及びThyroglobulin(以下、ThyroglobulinをTGと略す)のいずれかと結合させることによって、4種類の免疫用抗原、Ac−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSA、Ac−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TG、Ac−Trp(NBS)−PEG−BSA、及びAc−Trp(NBS)−PEG−TGを得た。ここで、免疫用抗原を得るために用いたカルボジイミドは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)である。
【0067】
別途、精製した2種NBSラベル化ペプチドの各々について、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)−カルボジイミド メチル−p−トルエンスルホネート(CMC)を用いたカルボジイミド法によって、前記2種類のタンパク質のいずれかに結合させ、4種のELISA用抗原を得た。
【0068】
<免疫・抗体価測定・特異性確認>
BALB/cマウス(Charles River Japan、雌・4週齢)を、一週間以上予備飼育を行った。免疫用抗原のPBS溶液(1mg/ml)と、FCA(完全フロイントアジュバント)(Cappel社製)とを等量混合してエマルジョンを調製した。エマルジョンを、マウスの皮下数箇所に0.2mlずつ投与することにより免疫を行った。追加免疫は、2週間間隔で実施し、抗体価が上昇したと判断されるまで実施した。なお、2回目以降の抗原投与においては、不完全フロイントアジュバントを使用した。
【0069】
眼叢静脈より毛細管を用いて試採血を行い、採取した血液は室温下で数時間静置した後、3000×gで30分間遠心分離を行った。得られた血清画分に、0.1%NaN水溶液(w/v)を添加し、4℃で保存を行った。
【0070】
抗体価測定は、免疫用抗原に対応したELISA用抗原を固相化し、免疫前血清及び試採血血清の希釈系列(1000倍からの2倍希釈系列)についてELISAで測定を行った。その結果を図1〜4に示す。
【0071】
図1は、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを用いた場合の結果(横軸:抗血清の希釈倍率(Dilution of Anti Serum)(×1,000)、縦軸:450nmにおける吸光度(ABS at 450nm))である。図2は、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−TGを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを用いた場合の結果(横軸:抗血清の希釈倍率(Dilution of Anti Serum)(×1,000)、縦軸:450nmにおける吸光度(ABS at 450nm))である。図3は、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを用いた場合の結果(横軸:抗血清の希釈倍率(Dilution of Anti Serum)(×1,000)、縦軸:450nmにおける吸光度(ABS at 450nm))である。図4は、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−TGを用いた場合の結果(横軸:抗血清の希釈倍率(Dilution of Anti Serum)(×1,000)、縦軸:450nmにおける吸光度(ABS at 450nm))である。
【0072】
BSAをキャリアタンパク質に用いた2つの免疫用抗原(図3及び4)は、TGをキャリアタンパク質に用いた2つの免疫用抗原(図1及び図2)よりも明らかに抗体価が低い結果となった。
【0073】
また、特異性の確認のために、WAGGDASG−OH(配列番号1)及びW(NBS)AGGDASG−OH(配列番号2)をそれぞれ阻害剤として用いた間接競合阻害ELISAを行った。ここでは、図1〜図4の結果から抗体価が高いと判断した、TGをキャリアタンパク質に用いた2つの免疫用抗原に関して行った。
【0074】
阻害剤を用いた間接競合阻害ELISAは、以下のように行った。免疫用抗原に対応したELISA用抗原を固相化し、試採血血清の希釈液と阻害剤の多段階希釈液との1:1(v/v)混合液を一次抗体の反応に用いた。なお、希釈倍率は、抗体価測定時の最大吸光度の1/2となる倍率を目安にした。
【0075】
間接競合阻害ELISAの結果を図5及び図6に示す。
図5は、免疫抗原にAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを、固相化抗原にAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを用いた場合の結果(横軸:阻害剤の濃度(Conc. of Inhibitor)(ng/ml)、縦軸:405nmにおける吸光度(Abs. at 405 nm))である。図5の試採血血清の希釈倍率は、No.1及びNo.3が×10000、No.2が×5000、No.5が×20000である。図5中、白の(Open)ドットは、阻害剤としてWAGGDASG−OHを、黒の(Closed)ドットは、阻害剤としてW(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合の結果である。
【0076】
図6は、免疫抗原にAc−Trp(NBS)−PEG−TGを、固相化抗原にAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを用いた場合の結果(横軸:阻害剤の濃度(Conc. of Inhibitor)(ng/ml)、縦軸:405nmにおける吸光度(Abs. at 405 nm))である。図6の試採血血清の希釈倍率は、No.1が×40000、No.2が×15000、No.3が×20000、No.4が×10000、No.5が×30000である。図6中、白の(Open)ドットは、阻害剤としてWAGGDASG−OHを、黒の(Closed)ドットは、阻害剤としてW(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合の結果である。
【0077】
試採血血清中に阻害剤と反応する抗体が含まれていれば、阻害剤の濃度が高いほど、阻害剤と反応する抗体が増え、ELISAプレートに固相化された抗原と反応できる抗体量が減少し、吸光度が低下する。すなわち、W(NBS)AGGDASG−OHを阻害剤に用いた場合に、濃度依存的に吸光度が変化する一方で、WAGGDASG−OHを阻害剤に用いた場合に、吸光度の変化がなければ、NBS基含有トリプトファンに対する特異的な抗体の存在を確認することができる。
【0078】
抗体価の試験結果(図1〜図4)及び特異性確認の試験結果(図5及び図6)から、Ac−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを免疫した図5のNo.5のマウス(「AT5」とする)と、Ac−Trp(NBS)−PEG−TGを免疫した図6のNo.1及び図6のNo.5のマウス(それぞれ「BT1」及び「BT5」とする)とを、細胞融合に供するマウスに選定した。
【0079】
<細胞融合>
AT5、BT1及びBT5のそれぞれのマウスについて、以下のように細胞融合を行った。
ミエローマを、10%FCS(ウシ胎仔血清)を含有するIMDM培地(v/v)にて対数増殖期(5×105/ml前後)に保ちながら培養を開始した。
細胞融合3日前に、免疫用抗原(50μg/0.2mlPBS)をマウスの尾静脈に投与した。最終免疫3日後のマウスについて断頭全採血を行った。そして、無菌下での脾臓の摘出及び脾細胞の単離を行い、単離した脾細胞を遠沈管に回収した。
また、予め培養していたミエローマも同様に遠沈管に回収した。
【0080】
遠沈管に回収したマウス脾細胞及びミエローマ細胞それぞれについて、1400rpmで6分間の遠心分離、上清の吸引除去、及び無血清IMDMへの再懸濁の一連の操作を3回繰り返し、その後、洗浄を行った。洗浄後、それぞれの細胞を10mlの無血清培地に再懸濁し、トリパンブルー染色法により生細胞数を計測した。細胞数が5:1(脾細胞:ミエローマ細胞)となるように混合し、800rpmで6分間の遠心分離及び上清の吸引除去を行った。PEGを用いた定法により細胞融合を実施し、無血清培地で希釈し、800rpmで6分間の遠心分離及び上清の吸引除去を行った。その後、HAT培地に脾細胞数として2.5×106cells/mlとなるように再懸濁し、96ウェルプレートに100μl/wellずつ播いた。7%CO2雰囲気(v/v)下、37℃で培養を行い、週2回、半分の体積量の培地を新鮮なHAT培地で交換した。
【0081】
<一次スクリーニング・二次スクリーニング>
一次スクリーニングとしては、免疫抗原に対応したELISA用抗原を固相化し、細胞の増殖しているウェルの培養上清についてELISAを行った。全ウェルのうち、抗体産生が確認されたウェル:AT5マウス由来−ウェル番号2G10;及び、BT5マウス由来−ウェル番号1D11、1F7、1F12、2E1、3D6、3G2、3H5、4B11、4C12、4E12、5A1、5A3、5F2、6C5、6E2、6G11、及び7E11についての結果を図7及び図8に示す。図7においては、ウェル中の試料(sample)について、希釈倍率(Dilution)ごとの吸光度(450nm)を表に示している。図8は、図7をグラフ化したものであり、横軸に希釈倍率(Dilution)、縦軸に450nmにおける吸光度(Abs. (450nm))を示す。
【0082】
二次スクリーニングとしては、抗体産生が確認された上記ウェルについて間接競合阻害ELISAを実施し、特異性を確認した。この結果を図9及び図10に示す。図9においては、ウェル中の試料について、阻害剤の濃度ごとの吸光度(450nm)を表に示している。図10は、図9において阻害剤W(NBS)AGGDASG−OH用いた場合をグラフ化したものであり、横軸に阻害剤(Inhibitor)の濃度(ng/ml)、縦軸に450nmにおける吸光度(Abs. (450nm))を示す。
なお、図9及び図10に記載されている希釈倍率は、一次スクリーニングにおける吸光度が0.7程度になる希釈倍数の1/2を目安にしたものであり、二次スクリーニングはこの希釈倍率で行った。
【0083】
この結果、AT5マウス由来−ウェル番号2G10(AT5−2G10)、BT5マウス由来−ウェル番号1F7(BT5−1F7)、及びBT5マウス由来−ウェル番号7E11(BT5−7E11)における3つの抗体が、低い濃度で阻害されており、特異性が確認された。
交差反応性の観点からの間接競合阻害ELISAの評価は、以下の4とおり(すなわち、ウェル番号2G10、1F7及び7E11における抗体、ウェル番号5A3及び5F2における抗体、ウェル番号6C5における抗体、及び、その他のウェル番号における抗体のそれぞれについて)に分かれる。
【0084】
<ウェル番号2G10、1F7及び7E11における抗体>
ウェル番号2G10、1F7及び7E11では、阻害剤WAGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が1ng/mlでは吸光度に変化がないが、10ng/mlでは顕著に低下している。一方、阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が10μg/ml及び100μg/mlではいずれも吸光度に変化はない。この阻害剤の濃度が1mg/mlで吸光度が低下すると考えると、これらの抗体と、阻害剤WAGGDASG−OH及びW(NBS)AGGDASG−OHとの間の交差反応性については、以下のように評価することができる。
【0085】
吸光度の変化のない濃度範囲における最大濃度は、実際に詳細な測定はされていないが、図中の濃度を参照すると、阻害剤WAGGDASG−OHの場合は1ng/mlより大きい濃度、阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHの場合は100μg/mlより大きい濃度であるといえる。これら図9中の濃度に基づいて算出される商は、100μg/ml÷1ng/ml=100,000である。濃度に対する吸光度の変化の傾向を考慮すると、実際の最大濃度から導き出される商は、100,000よりも大きい値になることがわかる。このことから、これらの抗体と阻害剤WAGGDASG−OHとの交差反応性は、これらの抗体と阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHとの交差反応性よりも10万倍以上強いということがいえる。
【0086】
<ウェル番号5A3及び5F2における抗体>
ウェル番号5A3及び5F2では、阻害剤WAGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が100ng/mlでは吸光度に変化がないが、1μg/mlでは顕著に低下している。一方、阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が10μg/ml及び100μg/mlではいずれも吸光度に変化はない。この阻害剤の濃度が1mg/mlで吸光度が低下すると考えると、これらの抗体と、阻害剤WAGGDASG−OH及びW(NBS)AGGDASG−OHとの間の交差反応性については、上記と同様、以下のように評価することができる。図9中の濃度に基づいて算出される商は、100μg/ml÷100ng/ml=1,000であるから、これらの抗体と阻害剤WAGGDASG−OHとの交差反応性は、これらの抗体と阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHとの交差反応性よりも千倍以上強いということがいえる。
【0087】
<ウェル番号6C5における抗体>
ウェル番号6C5では、阻害剤WAGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が100ng/mlで吸光度が低下している。一方、阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が10μg/mlと100μg/mlとで吸光度に変化が生じている。図においては阻害剤の有無により吸光度が変化しているという傾向に基づくと、100μg/mlで始めて吸光度が低下したと考えられる。そこでこの抗体と、阻害剤WAGGDASG−OH及びW(NBS)AGGDASG−OHとの間の交差反応性については、上記と同様、以下のように評価することができる。図9中の濃度に基づいて算出される商は、10μg/ml÷10ng/ml=1,000であるから、この抗体と阻害剤WAGGDASG−OHとの交差反応性は、この抗体と阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHとの交差反応性よりも約千倍強いということがいえる。
【0088】
<その他のウェル番号における抗体>
その他のウェル番号では、阻害剤WAGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が10ng/mlでは吸光度に変化がないが、100ng/mlでは顕著に低下している。一方、阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHを用いた場合、阻害剤の濃度が10μg/ml及び100μg/mlではいずれも吸光度に変化はない。この阻害剤の濃度が1mg/mlで吸光度が低下すると考えると、これらの抗体と、阻害剤WAGGDASG−OH及びW(NBS)AGGDASG−OHとの間の交差反応性については、上記と同様、以下のように評価することができる。図9中の濃度に基づいて算出される商は、100μg/ml÷10ng/ml=10,000であるから、これらの抗体と阻害剤WAGGDASG−OHとの交差反応性は、これらの抗体と阻害剤W(NBS)AGGDASG−OHとの交差反応性よりも1万倍以上強いということがいえる。
【0089】
ELISA及び間接競合阻害ELISAの結果から、AT5−2G10、BT5−1F7及びBT5−7E11に関してクローニングを実施した。
【0090】
<ハイブリドーマ細胞のクローニング>
AT5−2G10、BT5−1F7及びBT5−7E11中の細胞を、限界希釈法でクローニングした。培地は、増殖因子(Briclone等)を添加したHT培地を用い、細胞濃度は50cells/mlと100cells/mlとの2種とし、96ウェルプレートへ、100μl/well量でそれぞれ48ウェルずつ播いた。1週間後に培地を2滴ずつ添加した。細胞の増殖しているウェル(なるべく1コロニーのもの)の培養上清について、ELISAによりアッセイを行った。2回連続してアッセイした全てのウェルで抗体を産生するまでクローニングとアッセイとを繰り返し行った。その結果、NBS基含有トリプトファンを特異的に認識するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマBT5−1F7及びBT5−7E11を得た。
【0091】
<抗体のキャラクタライゼーション>
クローン化した抗体を、Mouse monoclonal antibody isotyping Kit(Amersham社製)を用いて、サブクラスの同定を行った。その結果、いずれもIgG1(κ)に属する抗体であることが確認された。
【0092】
なお、本実施例で得られたハイブリドーマ細胞BT5−1F7は、受託番号FERM P-20496として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成17年4月8日付で寄託されている。また、本実施例で得られたハイブリドーマ細胞BT5−7E11は、受託番号FERM P-20495として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成17年4月8日付で寄託されている。
【0093】
<抗体の大量作製と精製>
それぞれのハイブリドーマ細胞から、以下のように抗体の大量作製と精製とを行った。
BALB/cマウスに細胞投与1−4週間前にプリスタンを0.5ml/匹、腹腔内投与しておいた。培養細胞を回収し、2−4×106cell/mlになるように無血清培地又はPBSに再懸濁し、1匹につき1−2×106個の細胞を腹腔内に投与した。
投与後10日目から腹水がたまり採取可能となったマウス腹部に、18Gの注射針を指し、滴下してくる腹水を採取した。この操作を、腹水が採取できなくなるまで1−2日おきに繰り返した。採取した腹水は、3000rpmで30分間遠心分離を行い、上清を採取し、0.45μmφのフィルターで濾過した。そして、飽和度50%の硫安で塩析し、その後、透析したものをProtein Gカラムを用いて精製した。
【0094】
<抗体カラムの作製>
それぞれの抗体について、以下のように抗体カラムを作製した。
精製抗体溶液(4.4mg/ml)3mlを、カップリングバッファー(0.1M NaOAc、pH5.5、1M NaCl)に対して透析を行った。透析後の抗体溶液に1/10体積量の過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(20.8mg/ml)を添加し、室温・遮光下で1時間転倒混和を行って反応させた。次いで、反応させた抗体溶液をイオン交換水及びカップリングバッファーで透析し、脱塩を行った。Affi-Gel HZ(BIO RAD社製)5mlを、10mlのカップリングバッファーで洗浄し、その上清を除去後、ゲルと等量のカップリングバッファーを添加した。ここに抗体溶液を加え、室温で10−24時間転倒混和することにより反応を行い、反応後のゲルをカラムに充填し、抗体カラムとした。抗体カラムは、使用するまで0.02%NaN含有PBSで充填し4℃で保存した。
【0095】
<抗体カラムによるNBSラベル化ペプチドの濃縮>
精製タンパク質4種類(Ovalbumin、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、Lysozyme、及びα-lactalbumin;全てSIGMA社より購入)を25μgずつ混合し合計100μgとした混合試料を2つ用意し、島津製作所から発売されている「13CNBS Isotope Labeling Kit」のプロトコルに準じて、一方の混合試料についてはNBS Reagent Heavyによるラベル化、他方の混合試料についてはNBS Reagent Lightによるラベル化を行った。具体的には、試料の可溶化を、5mM EDTAを含む6Mグアニジン塩酸塩水溶液を用いて行い、ラベル化は、50%酢酸水溶液(v/v;終濃度)を用いて反応時間を1時間としたこと以外は、前記プロトコルに従った。ラベル化された2つの試料を混合し、50mM Tris-HClバッファー(pH8.8)を含む8M尿素水溶液で再溶解後、還元・アルキル化及びトリプシン消化を行った。抗体カラムは、保存溶液を流出後、カラム体積の5倍量の50mMTris-HClバッファー(pH7.8)で平衡化を行った。その後、トリプシン消化を行った試料をアプライした。50mMTris-HClバッファー(pH7.8)で2カラム分、非ラベル化ペプチドの洗浄を行った。ラベル化ペプチドの溶出は、0.1%TFA−40%アセトニトリル水溶液(v/v/v)で5カラム分行った。溶出したラベル化ペプチドを、AXIMA−CFR(島津製作所製)を用いてMS測定を行った。
【0096】
得られたマススペクトルを、抗体カラムによる濃縮前のマススペクトルとともに図9に示す(横軸:質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸:イオンの相対強度)。なお図9には、BT5−1F7を用いた抗体カラムによる結果を示した。図9(A)は、抗体カラムによる濃縮前のマススペクトル;図9(B)は、抗体カラムによる溶出画分2(Fraction 2)のマススペクトル(図9(B´)は、図9(B)のMass/Charge 760-805部分に相当し、溶出画分2をさらにC18カラムを用いて分画した場合に得られたマススペクトルである。);図9(C)は、抗体カラムによる溶出画分3(Fraction 3)のマススペクトルである。また、楕円で囲ったピークは、NBSラベル化ペプチドのペアピーク(すなわち、互いに対応するNBSCl Reagent Lightによるラベル化を受けたペプチドと、NBSCl Reagent Heavyによるラベル化を受けたペプチドとに相当する、質量数6の差を有するペアピーク)を示す。
【0097】
以下に、600-2400(m/z)で検出されたNBSラベル化ペプチドのペアピーク(すなわちトリプトファン含有ペプチドのペアピーク)について、m/z値とそのペアピークの由来するペプチドとを、以下に示す。
1:627.3, 633.3(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)
2:759.3, 765.3(α-lactalbumin)
3:785.3, 791.3(Ovalbumin)
4:1198.5, 1204.5(Lysozyme)
5:1244.5, 1250.5(α-lactalbumin)
6:1299.4, 1311.4(Lysozyme)
7:1353.6, 1359.6(α-lactalbumin)
8:1478.6, 1484.6(Lysozyme)
9:1734.7, 1740.7(Ovalbumin)
10:1916.8, 1922.8(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)
11:1981.8, 1993.8(Lysozyme)
12:2012.0, 2018.0(Ovalbumin)
【0098】
このように、溶出画分2及び3に、理論断片が検出された。
なお、溶出バッファーとして、上記バッファー以外に、0.1M Glycine-HCl(pH2.5)など定法で用いられるバッファーによってラベル化ペプチドの溶出を行った。その結果、特定の溶出画分についてのマススペクトルにおいて上記の各ピークが検出された(データ示さず)。
また、BT5−7E11を用いた抗体カラムを用いても同様の結果が得られた(データ示さず)。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実験例1において、抗体価の試験のため、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを用いてELISAを行った結果を表すグラフである。
【図2】実験例1において、抗体価の試験のため、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−TGを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを用いてELISAを行った結果を表すグラフ結果である。
【図3】実験例1において、抗体価の試験のため、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを用いてELISAを行った結果を表すグラフ結果である。
【図4】実験例1において、抗体価の試験のため、免疫抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを、固相化抗原としてAc−Trp(NBS)−PEG−TGを用いてELISAを行った結果を表すグラフである。
【図5】実験例1において、特異性確認のため、免疫抗原にAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−TGを、固相化抗原にAc−Trp(NBS)−εAhx−εAhx−BSAを用いて間接競合阻害ELISAを行った結果を表すグラフである。
【図6】実験例1において、特異性確認のため、免疫抗原にAc−Trp(NBS)−PEG−TGを、固相化抗原にAc−Trp(NBS)−PEG−BSAを用いて間接競合阻害ELISAを行った結果を表すグラフである。
【図7】実験例1において、一次スクリーニングとしてELISAを行った結果を表す表である。
【図8】実験例1において、一次スクリーニングとしてELISAを行った結果を表すグラフである。
【図9】実験例1において、二次スクリーニングとして間接競合阻害ELISAを行った結果を表す表である。
【図10】実験例1において、二次スクリーニングとして間接競合阻害ELISAを行った結果を表すグラフである。
【図11】実験例1によって得られた、抗体カラムによる濃縮前のマススペクトル(A);抗体カラムによる溶出画分2(Fraction 2)のマススペクトル(B);(B)のMass/Charge 760-805部分に相当し、溶出画分2をさらにC18カラムを用いて分画した場合に得られたマススペクトル(B´);及び、抗体カラムによる溶出画分3(Fraction 3)のマススペクトル(C)である。
【配列表フリーテキスト】
【0100】
配列番号1は、合成ペプチドである。
配列番号2は、合成ペプチドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体。
【請求項2】
受託番号FERM P-20495として寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
受託番号FERM P-20496として寄託されているハイブリドーマ細胞によって産生される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞。
【請求項5】
受託番号FERM P-20495として寄託されている、請求項4に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項6】
受託番号FERM P-20496として寄託されている、請求項4に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項7】
下記式(1):
【化1】

(式中、Yはアミノ基の保護基、Yは、アミノ酸残基を含まない鎖状構造を表す)で表されるニトロベンゼンスルフェニル基含有トリプトファン誘導体。
【請求項8】
前記保護基Yが、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、メチル基、及びエチル基から選ばれる、請求項7に記載のトリプトファン誘導体。
【請求項9】
前記鎖状構造Yが、下記式(2):
【化2】

(式中、nは1〜10の整数である)で表される、請求項7又は8に記載のトリプトファン誘導体。
【請求項10】
前記鎖状構造Yが、下記式(3):
【化3】

(式中、Zは直接結合又は二価の結合基、Zは直接結合又は二価の結合基、mは3〜30の整数である)で表される、請求項7又は8に記載のトリプトファン誘導体。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のトリプトファン誘導体と、キャリア高分子化合物との、トリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体。
【請求項12】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のトリプトファン誘導体、又は請求項11に記載のトリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体を免疫抗原として用いる、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製する方法。
【請求項13】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のトリプトファン誘導体、又は請求項11に記載のトリプトファン誘導体−キャリア高分子化合物結合体を免疫抗原として用い、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体の産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製し、前記ハイブリドーマ細胞に前記モノクローナル抗体を産生させる、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを認識するモノクローナル抗体を作製する方法。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を有する抗体カラム。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を支持体に固定させることによって抗体カラムを作製する方法。
【請求項16】
請求項14に記載の抗体カラムを用いて、ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを含むペプチドを分離する方法。
【請求項17】
前記ニトロベンゼンスルフェニル基を有するトリプトファンを含むペプチドは、トリプトファンを含むペプチドを、ニトロベンゼンスルフェニルクロリドを用いて修飾を行うことによって得られる、請求項16に記載のペプチドを分離する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−63179(P2007−63179A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250625(P2005−250625)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】