説明

ニトロン化合物、その製造方法およびその医薬用途

【課題】
【解決手段】本発明は、以下の式:




で表される新規のニトロン(nitrone)化合物、その製造方法およびその医薬用途を提供し、記載の化合物は強力な抗酸化性を持ち、フリーラジカルの過剰生成および/または血栓の形成から生じる疾患の処置および/または予防において使用され得る化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、フリーラジカル(free radicals)の過剰生成および/または血栓症から生じる、神経学的疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、心臓・脳血管疾患、神経変性疾患および加齢関連疾患の処置および/または予防のための新規のニトロン(nitrone)化合物、その製造方法およびその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の条件下では、種々の活性酸素種(reactive oxygen species,ROS)生成の速度は、ROSを異化する組織の許容量を超えない。しかし、特定の条件では、これらの防御機構の許容量を超えるか(例えば、照射、環境要因、鉄負荷(iron loading)など)、またはこれらの機構に欠陥がある時(例えば、遺伝的欠損)に、ROSレベルは上昇し、そしてこのROSが、種々の疾患につながる細胞損傷および組織損傷を生じ得、さらには死亡させ得る。タンパク質、脂質、およびDNAは、全て、ROS攻撃に対する基質である。消費された酸素の100トンあたり、2トンが活性酸素種を形成すると計算されている。1日あたり細胞に進入する1012個の酸素分子あたり、1/100がタンパク質を損傷させ、そして1/200がDNAを損傷させる。DNA、タンパク質、および脂質に対するこの損傷は、特に身体の自然な防御に欠陥が生じている場合に、活性酸素種を非常に危険なものとする。
【0003】
酸化的ストレス(oxidative stress)が、加齢において重要な役割を果たすことを示唆する。酸化ナトリウムジスムターゼ(superoxide dismutase,SOD)のようないくつかの抗酸化酵素(antioxidant enzyme)、ならびに尿酸、β−カロチン(beta-carotene)およびビタミンEのような抗酸化剤(antioxidant)のレベルは、種の寿命とのポジティブな関連を有する。すなわち、このレベルは、ヒト、チンパンジー、マウスの順に減少する(Culter,Free Radicals in Biology,第4巻:371,1984)。1つの仮説は、細胞が、フリーラジカルによって損傷を受け、そして損傷した細胞は、適切に機能し得ないというものである。細胞に対する損傷の蓄積は、加齢を導く(Culter、前出)。別の仮説は、フリーラジカルが、細胞を、分化の適切な状態から異常に分化(dysdifferentiate)させるというものである。細胞のこの異常な分化は、加齢およびあらゆる種類の年齢関連疾患を導く(Culter、前出)。フリーラジカルが加齢および年齢関連疾患を生じることを示唆する。フリーラジカルは、卒中、虚血−再潅流、心血管疾患、発癌(carcingogenesis)、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆およびホジキン病を含む、神経学的疾患に関係している。
【0004】
心筋梗塞、卒中および末梢血管疾患のような、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)の合併症は、米国において死亡の半分の原因である。アテローム性動脈硬化症は、内皮細胞に対する損傷で始まり、そして動脈の内側の筋肉細胞の増殖と関連している。アテローム性動脈硬化症のプロセスにおいて、血液は濃くなり、そして血小板、酸化された低密度リポタンパク質(low density lipoprotein,LDL、LDLにおいて主要な脂質はコレステロールエステルである)および他の物質は、動脈の壁に付着し始め、プラークの形成を生じる。LDLの酸化は、フリーラジカルにより引き起こされる。
【0005】
これは、1969年(McCully,Amer.J.Pathol.56:111,1969)に初めに認識され、そして最近なってやっと、高レベルの血漿ホモシステインが、冠状動脈疾患に起因する死亡の割合の増加と関連することが再発見された(Nygardら、N.Engl.J.Med.24:337,1997;Grahamら、JAMA 277:1775,1997)。
【0006】
ホモシステインは、内皮細胞を損傷させ、それにより、過酸化水素(H)の生成を含む、多数の機構を通じて、アテローム性動脈硬化症を引き起こす。ホモシステインは、NO(その生成物ではない)のバイオアベイラビリティー(bioavailability)を低下させ、そして細胞内抗酸化酵素、特に、グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidases)に害を与えたことが報告されている(Upchurchら、J.Biol.chem.272:17012,1997)。このプロセスにおいて重要な事象は、フリーラジカルの生成および存在である。過酸化水素(H)の増加は、原因または結果であり得る。ホモシステインは、スーパーオキシド(O・−)を含むフリーラジカルの生成を引き起こし、このスーパーオキシドは、NOと反応して、バイオアベイラビリティーおよびヒドロキシルラジカル(・OH)の生成の低下を引き起こすか、またはSODによる不均化を受けて、過酸化水素(H)を生成する。過酸化水素(H)は、さらに、Fenton反応および金属触媒Harber−Weiss反応を通じて、活性ヒドロキシルラジカル(・OH)へと転換される。これらの反応の結果として生成されたフリーラジカルは、フリーラジカルの解毒を防ぐ抗酸化酵素を損傷させる。フリーラジカルを除去することは、LDLおよびホモシステインの毒性効果を防ぎ、そしてアテローム性動脈硬化症の予防を生じることが明らかである。
【0007】
広範囲の研究努力が、抗酸化酵素および抗酸化剤の使用を含む、フリーラジカルにより引き起こされる損傷効果に対抗するために行われてきた。残念なことに、タンパク質酵素は、大きすぎて細胞壁および血液脳関門に進入することができない。抗酸化剤のみでは、これらが、フリーラジカルにより消費され、従って、大量に必要とされるという事実を含む、様々な理由により十分ではない。
【0008】
いくつかの活性酸素種が存在する。二原子分子酸素(O)は、容易に反応して、部分的に還元された種を形成する。この種は、一般的に、短命であり、反応性が高く、そしてスーパーオキシドアニオン(O・−)、過酸化水素(H)、およびヒドロキシルラジカル(・OH)を含む。ROSは、ミトコンドリア電子伝達系(mitochondrial electron transport)、種々の酸素を利用する酵素系、ペルオキシソーム、ならびに通常の好気性代謝および脂質過酸化と関連する他のプロセスの副生成物である。これらの損傷副生成物は、互いに、または他の化学物質と、さらに反応して、より毒性の生成物を生じる。例えば、過酸化水素Hは、以下のFenton反応および金属触媒Harber−Weiss反応を通じて、高い反応性のヒドロキシルラジカル(・OH)に転換され得る:
Fe2++H → Fe3++・OH+OH
・OH+OH→O・−+H+(Fenton反応)
・−+H → ・OH+OH+O(Fe3+/Fe2+触媒Harber−Weiss反応)
スーパーオキシド(O・−)は、一酸化窒素(NO)と反応して、毒性のパーオキシナイトライト(ONOO)を形成する。このパーオキシナイトライト(ONOO)は、さらに分解されてヒドロキシルラジカル(・OH)を放出する。
【0009】
・−+NO → ONOO → NO+・OH
ヒトは、スーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」)、カタラーゼ、ペルオキシダーゼのような酵素、およびビタミン(例えば、ビタミンA、β−カロチン、ビタミンCおよびビタミンE)、グルタチオン、尿酸および他のフェノール類化合物のような抗酸化剤を含む代謝の毒性副生成物に対する防御系を有する。SODは、スーパーオキシド(O・−)の過酸化水素(H)および酸素(O)への転換を触媒する。
【0010】
2H+O・−+O・− → H+O(SODにより触媒される)
過酸化水素(H)は、カタラーゼおよびペルオキシダーゼにより、酸素(O)および水へと転換され得る。
【0011】
2H → O+HO(カタラーゼおよびペルオキシダーゼにより触媒される)
防御系の高い効果にもかかわらず、これらの損傷種のいくつかは免れる。免れた活性酸素種およびこれらの生成物は、細胞DNA、タンパク質および脂質と反応して、DNAの損傷および膜脂質の過酸化を生じる。活性酸素種により引き起こされる有害な結果は、酸化的ストレスと呼ばれる。この酸化的ストレスは、通常の遺伝子発現、細胞分化に影響し(Culter,Free Radicals in Biology、第4巻、371頁、1984;Culter,Ann.New York Acad.Sci.621:1,1991)、そして細胞死を導く。酸化的ストレスは、現在、心血管疾患および神経学的疾患、癌および他の加齢関連疾患、ならびにヒト加齢プロセスのような多くの健康問題の原因であると考えられている。
【0012】
コレステロール斑(Cholesterol plaque)は、動脈壁の肥厚および動脈血管の狭いことを引き起こす。アテローム性動脈硬化症は、動脈の狭いことを引き起こして、それによって動脈が血液に足りて、体の部分の器官を使用して、正常な機能を維持することができない。例えば、アテローム性動脈硬化症が足に供給する動脈に起きると、足に血流を減らして、歩くことおよび運動がある時に、足の痛み、足の潰瘍、または足の傷口が癒合しにくいです。アテローム性動脈硬化症が脳に供給する動脈に起きると、血管性痴呆および脳卒中が起きる。
【0013】
先進国において、脳血管疾患とは、心疾患・癌に次いで、三大死因となっている。65歳以上の高齢者において、脳卒中の発症率は5%である。米国において、50万人以上が脳卒中になっている(Digravio, G., J. Am. Med. Assoc. 296:2923, 2006) 。70%−85%脳卒中は、虚血性脳卒中から生じる。この虚血性脳卒中は、大きい疾病率および15%−33%死亡率を持っている。急性虚血性脳卒中のための救急療法は、防御因子増強剤(cytoprotective agent)および血栓溶解薬(thrombolytic agent)の使用を含む(Phillips ら, Prog. Cardiovasc Dis., 50: 264, 2008)。虚血および再潅流療法における、防御因子増強療法は、細胞死亡の予防を試み。また血栓溶解療法は、早期に血栓溶解薬を使用して、それによって動脈が血液に足ります。広範囲の研究努力ながらも、卒中は最壊減的疾患の一つだ。一つの理由は、現在卒中療法が効果のなくて、1種の薬物は同時に防御因子増強剤と血栓溶解薬の作用を持つことができません。
【0014】
冠状アテローム性動脈硬化症が心筋に供給する動脈に起きると、冠動脈心疾患が起きる。この冠動脈心疾患が、心臟発作、突然死、胸痛(狭心痛)、心臟調律異常および心筋の脆弱化から生じる心不全を含む。
【0015】
これらの結果として冠動脈疾患(CAD)は、大部分の心臟発作を起きる。冠動脈疾患(CAD)は、冠動脈内壁にプラークの集積を生じる。時に、部分的に破裂したプラークは、血栓の形成を誘発する。血栓が大部分または全部の動脈に起きると、心臟発作が起きる。血流において20−40分で回復していなければ、心筋の不可逆死が起きる。心臟発作から、心筋は6−8時間以内持続的に死亡を形成する。心臟発作のための療法は、まず血栓溶解薬を使用して、血栓を溶かす。その後、損傷された心筋細胞の防御および/または救助において使用され得る抗酸化剤を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、活性酸素種(ROS)の過剰産生および/または血栓の形成から生じる疾患の処置および予防において使用され得る化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の化合物は、以下の式(I)のものであるかまたは薬学的に受容可能なその塩である:


【0018】
ここで:
、RおよびR3は、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アミノ基またはカルバミン基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そして
XおよびYは、C、N、OおよびSであり、ただし、 XおよびYは同時にCではない。
【0019】
式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびRは、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アミノ基またはカルバミン基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そしてXおよびYは同時にNです。
【0020】
別の式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびR3は、アルキル基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そしてXおよびYは同時にNである。
【0021】
式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびRは、メチル基であり;そしてXおよびYは同時にNである。この化合物は、以下の式(II)のものである:


【0022】
本発明は、活性酸素種の過剰産生および/または血栓の形成から生じる疾患の処置および/または予防する方法を提供する。この方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび以下の式(I)の化合物または薬学的に受容可能なその塩のうちの1以上の有効量を患者に投与する工程を包含する:


【0023】
ここで:

、RおよびRは、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アミノ基またはカルバミン基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そして
XおよびYは、C、N、OおよびSであり、ただし、 XおよびYは同時にCではない。
【0024】
本発明はまた、活性酸素種の過剰産生および/または血栓の形成から生じる疾患の処置および予防する方法を提供する。この方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび以下の式(II)の化合物または薬学的に受容可能なその塩の有効量を患者に投与する工程を包含する:


【0025】
本発明はまた、神経学的疾患、心血管疾患、炎症性疾患または癌の処置または予防において使用され得る医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび式(I)または式(II)のものである。
【0026】
本発明はまた、式(I)または式(II) 化合物の製造方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、神経学的疾患、心血管疾患、炎症性疾患または癌の処置および/または予防において使用され得る式(I)、式(II) 化合物またはこの医薬組成物の使用を提供する。
【0028】
本発明はまた、神経学的疾患、心血管疾患、炎症性疾患または癌の処置または予防において使用され得る式(II) 化合物またはこの医薬組成物の使用を提供する。
【0029】
上記の記載は、以下の本発明の詳細な説明が理解され得るように、そして当該分野への本発明の寄与がより良好に認識され得るように、本発明を広範に記載するというよりも、本発明のより重要な特徴を記載する。本発明の他の目的および特徴は、添付の図面を一緒に考慮した、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、図面は、添付の特許請求の範囲への参照がなされるべきである、本発明の例示の目的のためのみに設計され、そして本発明の限定の定義としては設計されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】テトラメチルピラジン(tetramethylpyrazine,TMP)および2-[[(1,1-ジメチルエチル) オキシドイミノ] メチル]-3,5,6-トリメチルピラジン(2-[[(1,1-Dimethylethyl)oxidoimino]methyl]-3,5,6-trimethylpyrazine ,TBN)の化学構造を示す。
【図2】TBNの合成を示す。
【図3】別のTBNの合成を示す。
【図4】TBNによる神経細胞の酸化的損傷からの防護を示す。三つの実験の数値は、平均値±SEM(標準誤差)で示した。有意の差はU testを用い、過酸化水素に比べてと、P<0.05かどうかで調べられた。
【図5】TBNによる神経細胞の興奮毒的損傷からの防護を示す。
【図6】MCAoラットにおけるTBNによる卒中からの保護を示す。このラットは、頸動脈を2時で閉鎖する。頸動脈を開き、そして24時後、除去した血液を再潅流することによって、虚血を停止する。全部医薬組成物は、モル投与量を投与する。全ての数値は、U testを用いて、制御データに比較すると、マーク“*”を示す。
【図7】ラットにおいて、血栓溶解活性を示す。この医薬組成物の投与量は、TMP(2mg/kg) およびTBN(3.25 mg/kg)である。そして、モル投与量は、TMPおよびTBN同−です。また、全ての数値は、U testを用いて、制御データに比較すると、マーク“*”を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、式(I)の化合物を提供する:


【0032】
ここで:
、RおよびRは、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アミノ基またはカルバミン基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そして
XおよびYは、C、N、OおよびSであり、ただし、 XおよびYは同時にCではない。
【0033】
式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびRは、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アミノ基またはカルバミン基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そしてXおよびYは同時にNである。
【0034】
別の式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびRは、アルキル基であり、そして、同じであっても異なっていてもよく;そしてXおよびYは同時にNである。
【0035】
式(I)の化合物の好ましい実施形態では、R、RおよびRは、メチル基であり;そしてXおよびYは同時にNです。この化合物は、以下の式(II)のものである:


【0036】
本発明の化合物は、活性酸素種の過剰産生および/または血栓の形成から生じる疾患の処置および予防するのに効果的である。本発明の新規の化合物は、抗酸化特性を有する防御因子である。これらの防御因子の結果として、これらの化合物は、心臓・脳血管疾患、神経学的疾患、炎症性疾患および加齢関連疾患の予防および処置に有用である。
【0037】
本明細書内において本発明を記述するために使用されるさまざまな用語の意味及び範囲を説明し、定義するために、以下の定義を示す。
【0038】
本発明で使用する術語:“アルキル基”は未置換され又は置換された直鎖、側鎖又は15個炭素鎖まで含有する環形アルキル基である。直鎖アルキル基はメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-アミル、n-ヘキシル、n-へブチル、n-オクチル等が挙げられる。シクロアルキルの例として、シクロブロビル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。アルキル基は一つ、又は幾つかの置換基に置換され得る。前記置換基の非限定例は、NH2、NO2、N(CH3)2、ONO2、F、Cl、Br、I、OH、OCH3、CO2H、CO2CH3、CN、アリール、ヘテロアリール等が挙げられる。
【0039】
術語“アルキル基”は又、未置換され又は置換される直鎖、側鎖又は15個炭素鎖まで、鎖には最低一つのヘテロ原子(例えば、酸素又は硫黄原子)を含有するアルキル基も指す。前記のアルキル基の例として、例えばCH2CH2OCH3、CH2CH2N(CH3)2とCH2CH2SCH3等、側鎖ラジカルはCH(CH2CH2)2O、H(CH2CH2)2NCH3和CH(CH2CH2)2S等が挙げられる。前記のシクロ ラジカルは、一つ、又は幾つの置換基に置換され得る。置換基の非限定例はNH2、NO2、N(CH3)2、ONO2、F、Cl、Br、I、OH、OCH3、CO2H、CO2CH3、CN、アリール、ヘテロアリール等が挙げられる。また、この術語は、へテロ原子が酸化され、N−酸化物、ケトン、スルホンに形成する等も含む
本書使用する術語“アリール基”は未置換され或いは置換されたアリール基化合物、炭素ラジカルとヘテロアリール基である。アリール基は単環、又は多環粘稠化合物。例えば、ベンゼンは単環アリール基、ナフタリンは多環粘稠化合物である。アリール基は一個、又は幾つの置換基に置換されることができる。置換基の非限定例として、NH2、NO2、N(CH3)2、ONO2、F、Cl、Br、I、OH、OCH3、CO2H、CO2CH3、CN、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。
【0040】
本発明で使用する術語:“ヘテロアリール基”は置換或いは未置換され単環又は多環ラジカルに関する。環内は最低でも一つのヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄原子硫等)を有する。典型のヘテロ環ラジカルは一個、又はそれ以上の窒素原子を含んでいる。例えば、テトラゾリル、ピロールピリル、ピりジン(例えば4-ピりジン、3-ピりジン、2-ピりジン)、ビラジン、インドキシル、キノリン(例えば2−キノリン、3−キノリン)、イミダゾール、イソキノリン、ビーラゾール、ビラジン、プリミジン、ビリドン等の誘導体。典型一個の酸素原子を含む2−フラン、3−フラン或いはベンゾフラン、硫黄原子を含むチオフェン、ベンゾチオフェン、代表的なヘテロ環ラジカルはフラザ二ル、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、フェノチオキシンが例示される。ヘテロ環ラジカルは一個又はそれ以上の置換基に置換され得る。例えば、NH2、NO2、O-アルキル基、NH-アルキル基、N(アルキル)2、NHC(O)-アルキル基、ONO2、F、Cl、Br、I、OH、 OCF3、OSO2CH3、CO2H、CO2-アルキル基、CN及びアリール基と多アリール基。また、この術語は、環内へテロ原子が酸化され、N−酸化物、ケトン、スルホンに形成する等も含む。
【0041】
本発明で使用する“薬学的に許容される”とは、化合物、例えば塩又は賦形剤に受けられない毒性はないである。薬学的に受ける塩は無機アニオン、例えば塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸ラジカル、亜硫酸ラジカル、硝酸ラジカル、亜硝酸ラジカル、リン酸ラジカル等。有機アニオンはラジカル、ピルビン酸ラジカル、プロピオン酸ラジカル、ケイ皮酸ラジカル、トルエンスルホン酸ラジカル、クエン酸ラジカル、乳酸ラジカル、ブドウ糖酸ラジカル、グルコン酸ラジカル等が挙げられる。薬学的に受ける賦形剤は後に記載がある。 E W. Martin, in Remington’s Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Company (1995), Philadelphia, PA, 19th ed に参照。
【0042】
また近年で報告から、脳卒中の処置において使用され得る漢方薬(traditional Chinese medicine)は多いです。漢方薬の研究は、紅参およびセンキュウ(テトラメチルピラジン, またはTMP)を集める。この紅参およびセンキュウは、卒中の処置するに対して非常に効果的である(Li Kejian, Lishizhen Medicine and Material Medica Research 17:1874,2006)。このTMPは、いろいろな薬的効能を包含する:
(1)このTMPは、血栓阻止に対して有意な効果を持っている。TMPは、LPS-誘発PAT-1タンパクおよびその内皮細胞のmRNAの発現を保護。TMPは、イノツトール・リン脂質の分裂およびTXA2の形成を抑制することが低用量投与し、糖蛋白bまたはIIIaの結合経由で血小板凝集能(platelet aggregation)を保護することが高用量投与する(Sheuら,Thromb Res.88:259,1997)。
【0043】
(2)このTMPは、血栓溶解活性を持っている。TMPは、ラットの動脈モデルおよび静脉血栓モデルにおいて血栓溶解活性を示唆する(Liu and Sylvester, Thromb Res. 58:129, 1990)。TMPは、血小板活量、Ca2+流入量およびホスホジエステラーゼ活量(phosphodiesterase activity)を抑制して、cAMPレベルを高める(Liu and Sylvester, Thromb Res.. 75:51, 1994)。TMPは、ADP-誘発急性肺塞栓の死亡率を減らす。TMPの静脈内投与を用いた際に有意に長い。このラットの動脈出血時間は現今に比べてと1.5倍であり、抗凝固性を示す(Sheu ら,Thromb Res.88:259, 1997)。
【0044】
(3)TMPは、神経細胞を有意に保護する(Hsiao ら, Planta Med. 72:411-417, 2006; Kao ら, Neurochem Int.48:166, 2006)。TMPは、MCAo誘発ラットの虚血損傷が大幅に改善されて、人の好中球から生じるフリーラジカルを減らす。TMPは、Bcl-2およびBaxの発現を調節して、神経細胞アポトーシスを減らす。
【0045】
(4)TMPは、Ca2+のチャンネル遮断薬であり、また、カリウムのチャンネルを開きから、フリーラジカルを生成です。TMPは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を高めて、脂貭過酸化および炎症反応を保護する(Zhu ら, Eur J Pharmacol. 510:187, 2005)。
【0046】
要約すれば、積年のTMPの臨床用途は、TMPにおけて両方の血栓溶解活性および抗酸化活性を示す。
【0047】
ニトロン(Nitrone)およびニトロキシド(nitroxide)は、細胞透過性であり、かつ安定なフリーラジカルである。ニトロンは、フリーラジカルと反応して、スーパーオキシドジスムターゼとして作用し、スーパーオキシドアニオンの不同変化を模倣し、触媒するニトロキシドを形成し(Samuniら,J.Biol.Chem.263:17921,1988;Krishnaら,J.Biol.Chem.271:26018,1996;Krishnaら,J.Biol.Chem.271:26026,1996)、フリーラジカル媒介性損傷から細胞の保護を生じるヘムタンパク質のカタラーゼ様活性を刺激する(Krishnaら,J.Biol.Chem.271:26026,1996)。他の抗酸化物質を超える、ニトロキシド(nitroxide)の1つのさらなる利点は、ニトロキシドが触媒として作用するので、その濃度が、反応の前後で依然として同じであることである。例えば、フェニル−tert−ブチルニトロン(phenyl-tert-butyl nitrone,PBN)は、フリーラジカルと反応して、以下のニトロキシドを形成する:


【0048】
ニトロキシドは、フリーラジカルと直接反応することによりまたは還元された金属を酸化し、それによりフェントン反応および金属触媒性Harber−Weiss反応を阻害する(Mohsenら,Mol.Cellul.Biochem.145:103,1995)。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl,TEMPOL)は、以下の様式にてスーパーオキシド(O2・−)を除去する:



【0049】
ニトロンとフリーラジカルとの反応の最終産物は、ヒドロキシルアミン(hydroxylamine)誘導体、アルデヒドおよびアミンを含む。これらの生成物は、フリーラジカルよりはるかに細胞に対する損傷が少ない(Chamulitratら,J.Biol.Chem.268:11520,1993;Janzenら,Free Rad.Biol.Med.12:169,1992;KotakeおよびJanzen,J.Am.Chem.Soc.113:948,1991)。感覚が促進された(sensescence accelerated)マウスへのPBNの1日1回の腹腔内注射は、寿命が33%延びた(Edamatsuら,Biochem.Biophys.Res.Commun.211:847,1995)。24ヶ月齢のラットに、9.5ヶ月間にわたり、1日1回、32mg/kgの用量のPBNを腹腔内注射した場合、認知機能に重要な2つの脳領域、新皮質および淡蒼球の内部の脂質過酸化が減少し、老齢のラットの認知機能が改善された。より印象的なことには、研究に入って32ヶ月目に、11匹のPBN処置ラットのうちの7匹がまだ生きていた(Sackら,Neurosci.Lett.205:181,1996)。
【0050】
別の実験において、ニトロキシドである、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl)は、実験的な疼痛性末梢性ニューロパシーを有するラットにおける熱痛覚過敏を緩和した(Tal,Neuroreport 7:13183,1996)。単離されたラット心臓において、ニトロキシドは、心拍数の減少でも不整脈の直接抑制でもなく、ヒドロキシルラジカル(・OH)の形成を防止することによって、再潅流に対して強力に保護した(Gelvanら、Proc.Natl.Acad.Sci.88:4680、1991)。ニトロキシドは、過酸化水素の毒性に由来する毒性の副作用なしで、ミリモル濃度で、培養物中のラットの心筋細胞の全保護を提供した(Mohsenら、Mol.Cellul.Biochem.145:103,1995)。
【0051】
スチルバズレニルトロン(stilbazulenyl nitrone ,STAZN)は、齧歯類の脳虚血および外傷の神経予防を報告する(J. Pharmacol and Expert. Thera. 313:1090-1100, 2005; Brain Res. 1180: 101-110, 2007)。生理的に調整のラットは、2時間で脳動脈腔内縫合の使用を提供して、スチルバズレニルトロンまたはジメチル・スルホキシドを処置する。乗り物制御に比べてと、スチルバズレニルトロンは、神経欠損を改善して、脳虚血を持続的に予防する。
【0052】
別のニトロキシドとして4‐[(テルト‐ブチルイミノ)メチル]ベンゼン‐1,3‐ジスルフォネート‐N‐オキシド(4-[(tert-butylimino)methyl]benzene-1,3-disulfonate N-oxide,NXY‐059)は、脳卒中の処置において有効性を示唆する。雄性ウィスター系ラットにおいて2時間で閉塞の後に、再循環に1時間でNXY‐059を提供して、48時間または7日でその梗塞容積を有意に減らす(Kuroda ら, J. Cereb. Blood Flow Metab. 19, 778-787, 1999)。NXY‐059の処置のサルは、生理的食塩水で処置されたサルより、永久的右中大脳動脈閉塞から生じる梗塞容積を形成して、50%面積の減少を報告されている(Marshallら、Stroke 32, 190-198, 2001)。
【0053】
このデータは、フリーラジカル捕捉ニトロンおよびニトロキシドの、ヒト疾患のための治療剤または加齢予防剤としての有用性を示した。
【0054】
本発明の新規の化合物は、TMPニトロン誘導体(式(I))およびTMPニトロキシド誘導体(式(II)および(III))を含む。式(I)、(II)および(III)のTMPニトロンおよびTMPニトロキシド誘導体は、抗酸化特性を有する抗酸化物質である。さらに、この化合物は、神経細胞中のフリーラジカル(スーパーオキシド(O・−)、パーオキシナイトライト(ONOO)およびヒドロキシルラジカル(・OH)を含む)を除去し、また血管中の血栓を溶かす。結果的に、この化合物はフリーラジカルおよび/または血栓の過剰産生から生じる疾患および/または血栓の形成の処置および予防において有用であり得る。本発明の化合物および組成物を使用して、多くの疾患状態を処置し得る。処置され得る虚血または低酸素状態から生じる神経学的障害の例としては、発作、外傷、アルツハイマー病、癲癇、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、多発性硬化症、慢性疼痛、陰茎強直症、膵嚢胞性線維症、精神分裂病、抑うつ、月経前症候群、不安、嗜癖、片頭痛のような神経変性疾患もまた、処置され得る。処置され得る心血管疾患の例としては、心肺バイパス、虚血性再潅流障害、虚血性再潅流、トキシック・ショック症候群、成人呼吸窮迫症候群、悪液質、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患および心発作のような心血管疾患もまた、処置され得る。処置され得る炎症性疾患の例としては、炎症性腸疾患、糖尿病、慢性関節リウマチ、喘息、肝硬変、拒絶反応、脳脊髄炎、髄膜炎、膵炎、腹膜炎、脈管炎、リンパ球性脈絡髄膜炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、胃腸運動性疾患、肥満症、過食症、肝炎および腎不全のような炎症性疾患もまた、処置され得る。処置され得る眼科疾患の例としては、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、緑内障、眼瞼炎、霰粒腫、アレルギー性眼疾患、角膜潰瘍、角膜炎、白内障、加齢黄斑変性症および視神経炎のような眼科疾患もまた、処置され得る。この化合物はまた、癌の例としては神経芽細胞腫および加齢の処置および/または予防に有用であり得る。
【0055】
本発明のTMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体は、薬学的に受容可能な塩の形態または薬学的組成物で、患者に投与され得る。薬学的組成物の形態で投与される化合物は、治療的に有効な量が存在するように、適切なキャリアまたは賦形剤と混合される。用語「治療的に有効な量」とは、所望の終点(例えば、フリーラジカルの過剰生成の防止、発作、心発作および炎症性疾患の結果としての神経損傷の減少など)を達成するのに必要なTMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体の量をいう。
【0056】
種々の調製物が、TMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体(固体形態、半固体形態、液体形態および気体形態を含む)を含有する薬学的組成物を処方するために使用され得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company(1995),Philadelphia,PA,第19版)。錠剤、丸剤、顆粒剤、糖剤、ゲル、シロップ、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルが、このような処方物の例である。この処方物は、局所的様式または全身的様式のいずれかで、あるいは、貯蔵放出様式または持続性放出のいずれかで、投与され得る。この組成物の投与は、種々の様式で実施され得る。とりわけ、経口手段、経頬手段、経直腸手段、非経口手段、腹腔内手段、皮内手段、経皮手段および気管内手段が、使用され得る。
【0057】
TMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体が注射によって与えられる場合、この誘導体は、これを水性溶媒または非水性溶媒に、溶解するか、懸濁するかまたは乳化することによって処方され得る。植物性油または類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルおよびプロピレングリコールが、非水性溶媒の例である。この化合物は、好ましくは、水溶液(例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液または生理的食塩緩衝液(physiological saline buffer))中に処方される。
【0058】
このTMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体が経口的に与えられる場合、この誘導体は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって処方され得る。このキャリアにより、この化合物は、例えば、患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、懸濁液、液体またはゲルとして処方され得る。経口用途の処方物は、この化合物を固体賦形剤と混合すること、必要に応じて得られた混合物を粉砕すること、適切な補助剤を添加すること、およびこの顆粒混合物を加工することを含む種々の様式で得られ得る。以下の列挙は、経口処方物で使用され得る賦形剤の例を挙げる:糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール);セルロース調製物(例えば、トウモロコシスターチ、コムギスターチ、ポテトスターチ、ゼラチン、ゴム、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyproylmethyl-cellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone,PVP))。
【0059】
本発明のTMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体はまた、加圧パック、噴霧器または乾燥粉末吸入器から、エアロゾル噴霧調製物中に送達され得る。噴霧器で使用され得る適切なプロペラントとしては、例えば、以下が挙げられる:ジクロロジフルオロ−メタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンおよび二酸化炭素。その投薬量は、加圧エアロゾルの場合、調節された量の化合物を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、治療有効量のTMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体を含有する。この化合物の量は、処置される患者に依存する。患者の体重、病気の重篤度、投与様式および処方する医師の判断が、適切な量を決定する際に考慮される。アミノアダマンタンの誘導体治療有効量を決定することは、当業者の能力の十分範囲内である。
【0061】
TMPニトロンおよびTMPニトロキシド、ならびにそれらの誘導体の治療有効量は、処置される患者によって変化するが、適切な用量は、代表的には、約10mgと10gとの間の化合物の範囲である。
【0062】
いくつかの場合において、患者を処置するために規定された範囲外の投薬量を使用する必要性があり得る。これらのケースは、処方する医師には明らかである。必要な場合、医師はまた、特定の患者の反応と組み合わせて処置を中断、調整または終了する方法および場合を理解している。
【0063】
本発明の特定の実施形態の上記詳細な説明して、ただし先の添付の特許請求の範囲に関して制限することを意図しない。特に、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の置換、変更、および改変が、本発明に対してなされ得ることが、本発明者らによって企図される。本発明の化合物の効率は、以下の実施形態に従って、生体内実験および疾患モデル動物を検出する。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明を制限するものではない。
(実施例1) TBNの合成(図2)
2-[[(1,1-ジメチルエチル) オキシドイミノ] メチル]-3,5,6-トリメチルピラジン
(2-[[(1,1-Dimethylethyl)oxidoimino]methyl]-3,5,6-trimethylpyrazine ,TBN)
tert-ブチルヒドロキシルアミン(tert-butylhydroxylamine)(1g, 0.011モル)をメタノール(200 mL)中に溶解されて、アルデヒド 5(1.9g、0.013モル)に添加した。そして、この溶液を2時間で還流させる。また、別のtert‐ブチルヒドロキシルアミン(1g, 0.011モル)は、溶液に添加した。さらに、このアルデヒド反応が終わる後、溶液を連続的に還流させる。真空でこの溶剤を除去し、生成物を抽出した。無水Na2SO4で溶液を乾燥し、真空濃縮する。そして生成物をクロマトグラフィーによって精製して、酢酸エチルおよび石油エーテル(1/1、v/v)の混合物で溶出し、TBNを淡黄色固形物(1.1 g,収率38%)として得た。mp:68−70℃。1H NMR (重水素化クロロホルム, ppm): 7.82 (s, 1H), 2.47 (s, 3H), 2.50 (s, 3H), 2.52 (s, 3H), 1.63 (s, 9H). ESI-MS: 222 [M+H]+, 244 [M+Na]+. Anal. (C12H19N3O) C, H, N.
(実施例2) TBNの合成(図3)
Na2WO4・2H2O (0.4 g)および30%過酸化水素(2.5 mL)をメタノール(100 mL)中に溶解された化合物7(1.0g, 0.005 モル)に添加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した。生成物を濾過した、溶媒を真空で除去して、残渣を得た。この残渣を飽和Na溶液(8mL)で処理した。この生成物は、酢酸エチル (3 × 25mL)により抽出する。この溶液はNaSOで乾燥、真空濃縮する。そして生成物をクロマトグラフィーによって精製して、酢酸エチルおよび石油エーテル(1/1、v/v)の混合物で溶出し、TBNを淡黄色固形物(0.4 g,収率36%)として得た。
【0065】
(実施例3) TBNは神経細胞を酸化損傷から防護する
皮質細胞 (9×10 cells/well)をそれぞれ96ウェル培養板(90 μL/ウェル)に接種し、37℃で,5%CO2、飽和湿度の培養ケースで24時間培養する。別つ媒質を加え、12時間培養する。種々の濃度のTBNを加え、37 °Cで,0.5時間培養する。過酸化水素を加え、37 °Cで、5% CO2で24時間培養する。3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐イル)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウムブロミド(3-(4,5-dimethylthiazol-2-ly)-2,5-diphenyl-tetrazoliun bromide,MTT)溶液を加え、4時間培養する,DMSO を加える。さらに、この結晶に溶解するが終わる後(0.5時間)、分光光度計(Bio-Rad Model 680, 日本)で (570nm)吸光度を測定する。この成果は、対照群を示す(生理的食塩型)。
【0066】
図4のデータがTBNはTMPまたはPBNより、もっと皮質細胞のH誘発損傷に対する強く保護作用を持っている。TBNは、H誘発損傷に対して、
3‐メチル‐1‐フェニル‐2‐ピラゾリン‐5‐オン(Edaravone)に比べてと、10μm濃度で強く保護作用を持っている。
【0067】
(実施例4) TBNは神経細胞を興奮毒的損傷から防護する
皮質細胞 (9×10 cells/well)をそれぞれ96ウェル培養板(90 μL/ウェル)に接種し、37℃で,5%CO2、飽和湿度の培養ケースで24時間培養する。別つ媒質を加え、12時間培養する。種々の濃度(1000 μM, 100 μM, 10 μM, 1 μM)のTBNを加え、37℃で,0.5時間培養する。N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA、15mL)を加え、37℃で,5%CO224時間培養する。図5のデータがTBNは神経細胞をNMDA毒から有意に防護する。
【0068】
(実施例5) TBNはMCAoラットにおいて神経細胞を卒中から防護する
雌SDラット、体重210-240 g、注射10%抱水クロラール400 mg/kg。右総頚動脈(CCA)を慎重に確認。外頚動脈(ECA)の後頭枝を凝固して、また内頚動脈(ICA)を分離する。ポリ‐L‐リシン‐被覆ナイロン糸(直径0.32 mm)は、ECAを埋没して、CCAの分岐まで逆行的に縫合して、どこから近似的に18−20mmICAを埋没して、中大脳動脈(MCA)を閉塞する。外科結びにより結紮して、傷口閉そくによる抜管。中大脳動脈の閉塞の1時間で後に、TMP (50 mg/kg), TBN (80 mg/kg), PBN (65 mg/kg), Eda (62 mg/kg) および生理的食塩をそれぞれ患者に投与する。2時間で中大脳動脈において閉塞の後に、頸動脈を開き、そして除去した血液を再潅流することによって、虚血を停止する。24時間で再潅流の後に、このラットは、10%抱水クロラール(400 mg/kg)を注射して、断頭によって屠殺し、摘出し、そして脳を迅速に取り出す。この脳は、PBSでさらした、−20℃冷蔵庫中で貯蔵した凍結まで。この脳は、刃で大脳前頭極から2mmを薄く切る。薄片は、2,3,5‐トリフェニルテトラゾリウムクロリド(2,3,5-triphenyltetrazolium chloride,TTC)を37℃で,0.5時間染色する。
【0069】
切片のエレクトロニック・イメージは、高解像度カメラ(Sony X700, 日本)を用いる。この梗塞区域をOsiris 4ソフトウェアで定量化して、また全脳領域百分率により成果を発現する。
【0070】
図6のデータがTBNはMCAoラットにおいて神経細胞を卒中から有意に防護する。
【0071】
(実施例6) ラットにおいて血栓溶解活性
Sprague‐Dawleyラット、体重180-210 g、注射10%抱水クロラール400 mg/kg。下大静脈を分離して、また腎静脈分岐下で外科結びにより結紮する。そのとき腹部を閉塞する。背尾靜脈によって、結紮の後で薬物を2時間投与する。また1時間で結紮の後で、腹部を開通する。この血栓を除去して、また血栓を50℃で,24時間乾燥させる。
【0072】
図7のデータがTBNはラットモデルにおいて有意な血栓溶解活性を持っている。
【0073】
本明細書の種々の節において引用される科学刊行物、特許または特許出願は、全ての目的について、本明細書中において参考として援用される。
【0074】
本発明の特定の実施形態の上記詳細な説明から、フリーラジカルの過剰生成から生じる、神経学的疾患、心血管疾患、炎症性疾患および/または癌の処置および/または予防に使用され得る新規化合物、ならびにこの疾患を処置する独特の方法が記載されたことが明らかである。
【0075】
特定の実施形態が本明細書中において詳細に開示されているが、これは、単なる説明の目的のために例としてなされ、先の添付の特許請求の範囲に関して制限することを意図しない。特に、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の置換、変更、および改変が、本発明に対してなされ得ることが、本発明者らによって企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される化合物または薬学的に受容可能なその塩(ここで、R、RおよびRは、H、OH、NH、COOH、アルキル基、アリール基(aryl)、ヘテロアリール基(heteroaryl)、エステル基、アミド基およびカルバミン基(carbamate)からなる群から独立して選ばれる。R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。ただし、R、RおよびRは同時に水素ではない。XおよびYは独立してC、N、OまたはSである。ただし、XおよびYは同時にCではない)。

【請求項2】
前記XおよびYが同時にNである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R、RおよびRは、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基からなる群から独立して選ばれる請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R、RおよびR3は、独立してアルキル基である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記R、RおよびR3はメチル基であり、以下の式(II)に示す構造を持つ請求項2に記載の化合物。

【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を製造する方法であって、3,5,6‐トリメチル‐2‐ピラジニルアルデヒド(3,5,6-trimethyl-2-pyrazinylaldehyde)とtert‐ブチルヒドロキシルアミン(tert-butylhydroxylamine)との反応により、前記化合物を生成する方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を製造する方法であって、NAWOの触媒作用で2-[(tert‐ブチルアミノ) メチル]-3,5,6-トリメチルピラジン(2-[(tert-butylamino)methyl]-3,5,6-trimethylpyrazine)と過酸化水素(H)とを処理することにより、前記化合物を生成する方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物或いはその組成物を使用し、発作、外傷、低酸素虚血性脳障害、癲癇、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、AIDS痴呆、多発性硬化症または慢性疼痛を治療するための医薬品を製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物或いはその組成物を使用し、心肺バイパス、虚血性再潅流障害、虚血性再潅流、トキシック・ショック症候群、成人呼吸窮迫症候群、悪液質、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、心発作または別の心血管疾患を治療するための医薬品を製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物或いはその組成物を使用し、炎症性腸疾患、糖尿病、慢性関節リウマチ、喘息、肝硬変、拒絶反応、脳脊髄炎、髄膜炎、膵炎、腹膜炎、脈管炎、リンパ球性脈絡髄膜炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、胃腸運動性疾患、肥満症、過食症、肝炎または腎不全を治療するための医薬品を製造する方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物或いはその組成物を使用し、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、緑内障、眼瞼炎、霰粒腫、アレルギー性眼疾患、角膜潰瘍、角膜炎、白内障、加齢黄斑変性症、網膜虚血または視神経炎を治療するための医薬品を製造する方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物或いはその組成物を使用し、癌を治療するための医薬品を製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を、患者に対して治療上有効な量投与することを含む、発作、外傷、低酸素虚血性脳障害、癲癇、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、AIDS痴呆、多発性硬化症または慢性疼痛の治療方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を、患者に対して治療上有効な量投与することを含む、心肺バイパス、虚血性再潅流障害、虚血性再潅流、トキシック・ショック症候群、成人呼吸窮迫症候群、悪液質、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、心発作または別の心血管疾患の治療方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を、患者に対して治療上有効な量投与することを含む、炎症性腸疾患、糖尿病、慢性関節リウマチ、喘息、肝硬変、拒絶反応、脳脊髄炎、髄膜炎、膵炎、腹膜炎、脈管炎、リンパ球性脈絡髄膜炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、胃腸運動性疾患、肥満症、過食症、肝炎または腎不全の治療方法。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を、患者に対して治療上有効な量投与することを含む、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、緑内障、眼瞼炎、霰粒腫、アレルギー性眼疾患、角膜潰瘍、角膜炎、白内障、加齢黄斑変性症、網膜虚血または視神経炎の治療方法。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を、患者に対して治療上有効な量投与することを含む、癌の治療方法。
【請求項18】
薬学的組成物であって、治療上有効な量の請求項1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能な基剤を含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518789(P2011−518789A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505353(P2011−505353)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/CN2009/071312
【国際公開番号】WO2009/129726
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510283568)曁南大学 (1)
【Fターム(参考)】