ニューロテンシンまたはニューロテンシンアナログおよびその使用
本発明は、式:A-X-B(式中、Aは血液脳関門を通過する、または特定の細胞型への化合物の輸送を増強することができるペプチドベクターであり、Xはリンカーであり、ならびにBはニューロテンシン、ニューロテンシンアナログまたはニューロテンシン受容体アゴニストからなる群より選択されるペプチド治療剤である)を有する化合物を特徴とする。本発明の化合物を用いて、ニューロテンシン活性の増大が有用である任意の疾患を治療することができ、また、低体温または鎮痛を誘導することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドベクターに結合したニューロテンシン受容体アゴニスト、ニューロテンシン、またはニューロテンシンアナログを含む化合物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロテンシンは種々の生物学的活性を有する13アミノ酸ペプチドである。中枢神経系へのニューロテンシン注射は、抗精神病性のおよび体温低下作用の他、種々の効果を生じる。しかしながらニューロテンシンの静脈内送達はこのような結果をもたらさない。なぜならば血液脳関門(BBB)が、末梢性ニューロテンシンによる中枢神経系(CNS)にある受容体への到達を効果的に阻むからである。
【0003】
体温の低減(低体温法)は、損傷に起因する脳損傷(例えば神経、脳もしくは脊髄損傷または卒中を負った被験体)に対する最良の神経保護方法の一つである。本発明以前には、体温を低減する方法は適切ではなかった。体温を低減させる物理的手段としては、外的方法の使用(例えば冷却用ブランケット、冷却用ヘルメット、氷嚢、および氷浴)ならびに内的方法の使用(例えば冷却プローブ、冷流体の注入)が挙げられる。こうした技法は複雑であり高額となり得るものであり、体温低減の開始に遅延が生じうる。またこうした方法を用いると低体温の持続的な維持は難しいことがある。最後にこうした方法は深刻な震えを引き起こす可能性があり、そのため麻痺薬または鎮痛薬などの併用処方が必要となりうる。低体温療法が有益となりうる米国で毎年発生する卒中(795,000)、心臓が原因の心不全(325,000)、深刻な外傷性頭部損傷 (300,000)および心臓切開手術(694,000)の数字に鑑みれば、低体温療法を誘導する改善された方法が必要とされているといえる。
【0004】
脳病理学に関する新たな治療法の開発において、BBBは、CNSの障害を治療するための薬物の使用の可能性に対する主要な障害と考えられる。CNS剤の世界市場は2006年において680億ドルであり、米国では心血管疾患のほぼ2倍の人々がCNS疾患を患っているにも関わらず、それは心血管剤の世界市場の約半分であった。この不均衡の理由は、1つには、すべての潜在的CNS剤の98%以上が血液脳関門を通過しないことである。さらに、世界的規模のCNS剤開発の99%以上はCNS剤の発見のみに専念し、CNS剤の送達を目的としているものは1%に満たない。これは、なぜ主要な神経疾患に利用可能な治療上の選択肢が不足しているかを説明することができる。
【0005】
脳は、2つの障壁系:BBBおよび血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在によって潜在的毒物から遮断される。BBBは、その表面積がBCSFBの表面積の約5000倍以上であるため、血清リガンドの取り込みのための主要経路であると考えられる。BBBを構成する脳の内皮細胞は、CNSの多くの障害に対する潜在的薬剤の使用への主要な障害である。原則として、脂溶性低分子のみがBBBを越えて、すなわち、循環している全身の血液から脳へ通過し得る。より大きなサイズまたはより高い疎水性を有する多くの薬剤は、CNS標的において高い効力を示すが、これらの薬剤はBBBを効率的に通過することができないため、動物においては有効ではない。かくして、ペプチドおよびタンパク質治療剤は通常、これらの薬剤に対する脳毛細血管内皮壁のごくわずかな透過性のために、血液から脳への輸送から排除される。脳毛細血管内皮細胞(BCEC)は、密着結合によってしっかりと密封されており、他の器官の毛細血管と比較して窓(fenestrae)およびエンドサイトーシス小胞をほとんど持たない。BCECは、細胞外マトリックス、アストロサイト、周皮細胞、およびミクログリア細胞に囲まれている。内皮細胞のアストロサイト足突起との密接な結合および毛細血管の基底膜は、血液脳物質交換の厳密な制御を可能にするBBB特性の発達および維持にとって重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ニューロテンシンのその標的部位への送達の改善が必要とされている。
【0007】
ペプチドニューロテンシンには、体温を低減させることを含め、いくつかの臨床的用途がある。しかしながら、このような用途の多くでは、該ペプチドが血液脳関門(BBB)を超えることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ニューロテンシンは、それ単独ではBBBを超えることができない。従って本発明者らは、(a)ニューロテンシン、ニューロテンシンアナログ(例えばpELYENKPRRPYIL-OH、式中「pE」はL-ピログルタミン酸を表す、ヒトニューロテンシン(8-13) (NT(8-13))、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、pE-Lys-NT(8-13),)、またはニューロテンシン受容体アゴニストからなる群より選択されるポリペプチド治療剤および(b)血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞の中へと該ペプチド治療剤を輸送することのできるペプチドベクターを含む化合物を合成した。こうした化合物は、ニューロテンシン活性の増大が望まれる場合の障害の治療において有用であり、特に該ポリペプチド治療剤がBBBを超えるまたは特定の種類の細胞中へと輸送されることが望まれるときにそうである。ある特定の例では、該化合物には、体温を低下させるため(例えば神経保護を必要とするおよび/または卒中、心発作、神経損傷 (例えば脊髄、頭部、または脳損傷、例えば外傷性脳損傷を経験した、または心臓手術もしくは心臓切開手術のような大手術を受ける被験体において)、神経障害 (例えば統合失調症、強迫神経症、またはトゥレット症候群)を罹患している患者を治療するため、または糖尿病および肥満のような代謝障害を罹患している被験体を治療するために使用することのできるニューロテンシンまたはニューロテンシン断片が含まれる。別の事例では、該化合物は被験体において血圧を増大または低減することができる。該化合物は単一の、または最初の投与から少なくとも1、2、3、4、6、8、10、12、15、18、21、24、30、36、または48時間の期間に渡る注入により、低体温を誘導しうる。該ペプチドベクターは、該ポリペプチド治療剤を、血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び筋肉)内へと輸送することができる。コンジュゲートがBBBを超えるようにまたは特定の種類の細胞へと標的化されていることから、コンジュゲート化されていないペプチド治療剤と比較して、より低用量または低頻度でも治療的効力が達成可能であり、したがって副作用の重症度または発生率を低減させおよび/または効力を増大させる。化合物はまた、コンジュゲート化されていないペプチド治療剤と比較して、安定性の増大、薬物動態の改善またはin vivoでの分解の低減を示しうる。
【0009】
したがって本発明の第1の態様は、以下の式を有する化合物を特徴とする、
A-X-B
(式中、Aは、血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)内へと輸送されうるペプチドベクターであり、Xはリンカーであり、Bはニューロテンシン、ニューロテンシンアナログ(例えばpELYENKPRRPYIL-OH、ここでpEはピログルタミン酸である)、またはニューロテンシン受容体アゴニスト(例えば本明細書で記載されているもの)からなる群より選択されるペプチド治療剤である)。BBBを超えるまたは細胞内への輸送は、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、200%、500%、750%、1000%、1500%、2000%、5000%、または10,000%増大しうる。化合物は実質的に純粋でありうる。該化合物は製薬上許容可能な担体(例えば本明細書に記載のもの)と製剤化されうる。
【0010】
特定の実施形態では、Bはヒトニューロテンシンにまたはヒトニューロテンシン断片(例えばニューロテンシン(8-13)およびニューロテンシン(9-13))に実質的に同一なポリペプチドを含む。特定の実施形態では、ニューロテンシンの位置1におけるグルタミン酸は、ピログルタミン酸に置き換えられる。特定の実施形態では、該ニューロテンシンアナログはヒトニューロテンシンと実質的に同一である。特定の実施形態では、Bは、ニューロテンシン受容体(ニューロテンシン受容体1型 (NTR1)、ニューロテンシン 受容体2型 (NTR2)、ニューロテンシン受容体3型 (NTR3))のいずれかに対してアゴニストとして作用する。特定の実施形態では、該ニューロテンシン受容体アゴニストは、他の三種の受容体の少なくとも1つと比較して、NTR1、NTR2、またはNTR3の1つに対し選択的である(例えば少なくとも2、5、10、50、100、500、1000、5000、10,000、50,000、もしくは100,000を超える程度まで結合しおよび/または活性化する)。
【0011】
特定の実施形態では、該化合物は次の構造を有する、
【化1】
(式中、pELYENKPRRPYIL配列のリシンに結合した-(CH2)4NH-部分は当該リシンの側鎖を表し、AN2Cys配列のC末端システインに結合した-CH2S-部分は、当該システインの側鎖を表し、かつAN2はAngiopep-2 (配列番号97)の配列を表す。
【0012】
別の態様において、本発明は、化合物A-X-Bを作製する方法を特徴とする。一実施形態においては、前記方法は、ペプチドベクター(A)をリンカー(X)にコンジュゲートさせ、ペプチドベクター-リンカー(A-X)をペプチド治療剤(B)にコンジュゲートさせることによって、化合物A-X-Bを形成させることを含む。別の実施形態においては、前記方法は、ペプチド治療剤(B)をリンカー(X)にコンジュゲートさせ、ペプチド治療剤/リンカー(X-B)をペプチドベクター(A)にコンジュゲートさせることによって、化合物A-X-Bを形成させることを含む。別の実施形態においては、前記方法は、ペプチドベクター(A)をペプチド治療剤(B)にコンジュゲートさせ、ここでAまたはBは必要に応じて、リンカー(X)を含み、化合物A-X-Bを形成させることを含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、化合物A-X-B(式中、化合物はポリペプチドである)をコードする核酸分子を特徴とする。前記核酸分子をプロモーターに機能し得る形で連結してもよいし、またそれは核酸ベクターの一部であってもよい。ベクターは、原核細胞(例えば、細菌細胞)または真核細胞(例えば、酵母もしくはヒト細胞などの哺乳動物細胞)などの細胞中にあってもよい。
【0014】
別の態様においては、本発明は、式A-X-B(式中、A-X-Bはポリペプチドである)の化合物を作製する方法を特徴とする。一実施形態においては、前記方法は、細胞中で前記態様に記載の核酸ベクターを発現させて、前記ポリペプチドを産生させること;および該ポリペプチドを精製することを含む。
【0015】
別の態様においては、本発明は、被験体の体温を低減する方法を特徴とする。該方法は、第1の態様の化合物を被験体の体温を低減させるために十分な量で投与することを含む。被験体は卒中、脳虚血、心虚血、または脳損傷のような神経損傷(例えば外傷性脳損傷)もしくは脊髄損傷を罹患しているかまたは最近罹患しており、または神経保護を必要としうる。被験体は、悪性高体温症を罹患しているかまたは手術(例えば心手術のような大手術)を受けているもしくは手術を受けるところでありうる。
【0016】
別の態様では、本発明は第1の態様の化合物をそれを必要とする被験体に投与することによる疼痛の低減または鎮痛を誘導する方法を特徴とする。該被験体は、急性の疼痛(例えば機械的疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛、および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択されるもの)を患っている者でありうる。他の実施形態では、被験体は、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛を罹患している。
【0017】
別の態様では、本発明は、第1の態様の化合物(例えば有効な量)を被験体に投与することにる、被験体における疼痛感受性を低減する方法を特徴とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、被験体における代謝障害を(例えば予防的に)処置する方法を特徴とする。該方法は、該代謝障害を治療するのに十分な量の第1の態様の化合物を被験体に投与することを含む。前記代謝障害は、糖尿病(例えば、I型もしくはII型)、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧でありうる。被験体は体重超過、肥満または過食症でありうる。
【0019】
別の態様においては、本発明は、不安、強迫神経症、トゥレット症候群、運動障害、攻撃性、精神病、発作、パニック発作、ヒステリー、睡眠障害、アルツハイマー病、およびパーキンソン病からなる群より選択される障害を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。前記方法は、前記障害を治療または予防するのに十分な量の本発明の第1の態様に記載の化合物を被験体に投与することを含む。精神病は統合失調症でありうる。
【0020】
別の態様では、本発明は、それを必要とする被験体における薬物依存を治療または薬物乱用を低減する方法を特徴とする。薬物はアンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、またはアレコリンのような精神刺激薬でありうる。他の実施形態では、該薬物はアルコールである。
【0021】
別の態様では、本発明は、被験体(例えば高血圧または低血圧のいずれかを罹患している被験体)における血圧をモジュレート(例えば増加または低減)する方法を特徴とする。
【0022】
被験体への化合物の投与を含む任意の方法において、十分量は、ペプチドベクターにコンジュゲートされていない場合、同等の用量のペプチド治療剤(例えば、本明細書に記載の任意のもの)にとって必要な量の90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.1%未満であってよい。十分量は、ペプチドベクターにコンジュゲートされていない場合、有効量のポリペプチド治療剤の投与と比較して、副作用を減少させることができる。被験体は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。
【0023】
上記態様のいずれかにおいて、ペプチドベクターは、表1に記載の任意の配列と実質的に同一のポリペプチド、またはその断片であってよい。特定の実施形態においては、ペプチドベクターは、Angiopep-1 (配列番号67)、Angiopep-2 (配列番号97)、Angiopep-3 (配列番号107)、Angiopep-4a (配列番号108)、Angiopep-4b (配列番号109)、Angiopep-5 (配列番号110)、Angiopep-6 (配列番号111)、またはAngiopep-7 (配列番号112)の配列を有する。前記ペプチドベクターまたはコンジュゲートを、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のいずれか1、2、3、4、もしくは5種)に効率的に輸送するか、またはそれは哺乳動物のBBBを効率的に横断することができる(例えば、Angiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、-5、および-6)。別の実施形態においては、ペプチドベクターまたはコンジュゲートは、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のいずれか1、2、3、4、もしくは5種)に進入することができるが、BBBを効率的に横断することはできない(例えば、Angiopep-7などのコンジュゲート)。ペプチドベクターは、任意の長さのもの、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、もしくは500アミノ酸、またはこれらの数の間の任意の範囲であってよい。特定の実施形態においては、前記ペプチドベクターは、10〜50アミノ酸長である。ポリペプチドを、組換え遺伝子技術または化学合成により製造することができる。
【表1】
【0024】
ポリペプチド番号5、67、76および91は、それぞれ、配列番号5、67、76および91の配列を含み、C末端でアミド化されている。ポリペプチド107、109および110は、それぞれ、配列番号97、109および110の配列を含み、N末端でアセチル化されている。
【0025】
上記態様のいずれかにおいて、ペプチドベクターは、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
(式中、X1〜X19の各々(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)は、独立に、任意のアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValなどの天然アミノ酸)であるか、または存在せず、X1、X10およびX15のうちの少なくとも1個(例えば、2個もしくは3個)はアルギニンである)
を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、X7はSerもしくはCysであるか;またはX10およびX15はそれぞれ、独立にArgもしくはLysである。いくつかの実施形態においては、X1〜X19の残基は、包括的に、配列番号1〜105および107〜116(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれか1つの任意のアミノ酸配列と実質的に同一である。いくつかの実施形態においては、アミノ酸X1〜X19のうちの少なくとも1個(例えば、2、3、4もしくは5個)はArgである。いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドは、該ポリペプチドのN末端、該ポリペプチドのC末端、またはその両方に1個以上のさらなるシステイン残基を有する。
【0026】
上記態様のいずれかの特定の実施形態においては、ペプチドベクターまたはペプチド治療剤を改変する(例えば、本明細書に記載のように)。前記ペプチドまたはポリペプチドを、アミド化、アセチル化するか、またはその両方を行うことができる。そのような改変を、ポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端で行うことができる。前記ペプチドもしくはポリペプチドはまた、本明細書に記載の任意のポリペプチドのペプチド模倣物質(例えば、本明細書に記載のもの)を含んでもよい。前記ペプチドまたはポリペプチドは、多量体形態、例えば、二量体形態(例えば、システイン残基を介してジスルフィド結合により形成される)にあってもよい。
【0027】
特定の実施形態では、ペプチドベクターまたはポリペプチド治療剤(例えばニューロテンシン)は、本明細書に記載のアミノ酸配列を有するが、ただし少なくとも1つのアミノ酸置換 (例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12の置換)、挿入、または欠失を有するか、あるいは本明細書に記載のアミノ酸配列と実質的に同一である。該ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、1〜12、1〜10、1〜5、または1〜3のアミノ酸置換、例えば、1〜10(例えば9、8、7、6、5、4、3、2まで)のアミノ酸置換を有しうる。アミノ酸置換は、保存的または非保存的でありうる。例えば、該ペプチドベクターは配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7のいずれかのアミノ酸配列の位置1、10、および15に対応する位置の1、2または3箇所にアルギニンを有しうる。特定の実施形態では、該ポリペプチド治療剤はシステインまたはリシン置換または付加を任意の位置の有しうる(例えばN-またはC-末端位置でのリシン置換)。
【0028】
上記態様のいずれかにおいて、前記化合物は特に、配列番号1〜105および107〜116のいずれかを含むか、またはそれからなるポリペプチド(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)を含まなくてもよい。いくつかの実施形態においては、本発明のポリペプチドおよびコンジュゲートは、配列番号102、103、104、および105のポリペプチドを含まない。
【0029】
上記態様のいずれかにおいて、リンカー(X)は、当業界で公知であるか、または本明細書に記載の任意のリンカーであってよい。特定の実施形態においては、前記リンカーは、共有結合(例えば、ペプチド結合)、化学連結剤(例えば、本明細書に記載のもの)、アミノ酸またはペプチド(例えば、2、3、4、5、8、10個以上のアミノ酸)である。特定の実施形態においては、前記リンカーは、式:
【化2】
(式中、nは2〜15の整数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15)であり;およびYはA上のチオールであり、ZはB上の一次アミンであるか、またはYはB上のチオールであり、ZはA上の一級アミンである)
を有する。
【0030】
「ペプチドベクター」とは、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、もしくは筋肉)に、またはBBBを通過して輸送することができるポリペプチドまたはポリペプチド模倣物質などの化合物または分子を意味する。このベクターを、治療剤に結合させる(共有的もしくは非共有的)か、またはコンジュゲートさせることにより、該治療剤を特定の細胞型に、またはBBBを通過して輸送することができる。特定の実施形態においては、前記ベクターは、癌細胞もしくは脳の内皮細胞上に存在する受容体に結合することによって、トランスサイトーシスにより癌細胞中に、またはBBBを通過して輸送することができる。このベクターは、細胞またはBBBの完全性に影響することなく、高レベルの経内皮輸送が得られる分子であってよい。前記ベクターは、ポリペプチドまたはペプチド模倣物質であってよく、天然のものであっても、または化学合成もしくは組換え遺伝子技術により製造されたものであってもよい。
【0031】
「ニューロテンシン受容体アゴニスト」というとき、これは対照化合物と比較して少なくとも1つのニューロテンシン受容体を活性化することのできる化合物(例えばポリペプチド)を意味する。ニューロテンシン受容体活性にはイノシトールリン酸の産生が含まれる。
【0032】
「実質的に同一」とは、ある参照アミノ酸配列または核酸配列と、少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、またはさらには99%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較する長さは一般に少なくとも4 (例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、または100)アミノ酸である。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、よりこのましくは120ヌクレオチドまたは完全長である。本明細書において、元のポリペプチドのアミノ酸と同一または類似であるアナログのアミノ酸同士の間にギャップが存在しうると理解されたい。ギャップはアミノ酸を含まないか、または元のポリペプチドと同一でもなく類似でもないアミノ酸1以上を含みうる。本発明のベクター(ポリペプチド)の生物学的に活性なアナログは本明細書に包含される。同一性パーセントは、例えばWisconsin Genetics Software Package Release 7.0のnアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTAを用いて、初期設定のギャップウェイトを用いることにより決定することができる。
【0033】
被験体における疾患、障害、または症状を「治療すること」とは、治療剤を被験体に投与することにより、疾患、障害、または症状の少なくとも1種の症候を減少させることを意味する。
【0034】
被験体における疾患、障害、または症状を「予防的に治療すること」とは、疾患、障害、または症状の発生の前に、治療剤を被験体に投与することにより、疾患、障害または症状の発生頻度または重症度を低下させること(例えば、防止すること)を意味する。
【0035】
一例においては、ある障害について治療しようとする被験体は、医師がそのような症状を有すると診断した被験体である。本明細書に記載のものなどの任意の好適な手段により、診断を実施することができる。症状の発生を予防的に治療しようとする被験体は、そのような診断を受けていても、または受けていなくてもよい。当業者であれば、本発明の被験体を標準的な試験にかけるか、または試験なしに、1個以上の危険因子の存在に起因する高危険度として同定することができることを理解できるであろう。
【0036】
「代謝障害」とは、被験体の代謝の変化の結果生じる任意の病理学的症状を意味する。そのような障害としては、例えば、高血糖症をもたらすグルコース恒常性の変化の結果生じるものが挙げられる。本発明に従えば、グルコースレベルの変化は、典型的には、健康な個体におけるそのようなレベルと比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%ものグルコースレベルの増加である。代謝障害としては、肥満および糖尿病(例えば、I型糖尿病、II型糖尿病、MODY、および妊娠性糖尿病)、満腹、ならびに加齢による内分泌異常が挙げられる。
【0037】
「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0038】
「相当する用量」とは、コンジュゲート化されていないポリペプチド治療剤と比較して本発明の化合物中のペプチド治療剤と同じモル量を達成するのに必要とされる本発明の化合物の量を意味する。例えば、1.0 μg ニューロテンシンの相当する用量とは、約2.5 μgの本明細書に記載のニューロテンシン/Angiopep-2-Cys-NH2 コンジュゲートである。
【0039】
「BBBを通過して効率的に輸送される」ポリペプチドとは、少なくともAngiopep-6と同様に効率的にBBBを通過する(すなわち、参照により本明細書に組み入れられるものとする、2007年5月29日に提出された米国特許出願第11/807,597号に記載のin situ脳かん流アッセイにおいて、Angiopep-1(250 nM)よりも38.5%以上高い)ことができるポリペプチドを意味する。従って、「BBBを通過して効率的に輸送されない」ポリペプチドは、より低いレベルで脳に輸送される(例えば、Angiopep-6よりも低い効率で輸送される)。
【0040】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ポリペプチドまたは化合物とは、ポリペプチドまたは化合物が、対照物質より、またはコンジュゲートの場合、コンジュゲートされていない薬剤と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、もしくは10,000%)を超える程度で、その細胞型に蓄積することができる(細胞への輸送の増加、細胞からの排出の減少、またはその組合せのいずれかによる)ことを意味する。そのような活性は、参照により本明細書に組み入れられるものとする国際特許出願公開第WO 2007/009229号に詳細に記載されている。
【0041】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】図1Aは、実施例に記載の分析方法を用いる、精製前(図1A)のECMS-ニューロテンシン化合物(ECMS-NT)を示すクロマトグラムである。
【図1B】1Bは、実施例に記載の分析方法を用いる、精製後(図1B)のECMS-ニューロテンシン化合物(ECMS-NT)を示すクロマトグラムである。
【図2】30 mlの30RPC樹脂を充填したカラムを用いるAKTA-エクスプローラー上でのECMS-NTの精製を示すクロマトグラムである。
【図3A】図3Aは、精製前(図3A)のニューロテンシンAngiopep-2-Cysアミドコンジュゲート(NT-AN2Cys-NH2またはNT-An2)を示すクロマトグラムである。このクロマトグラムは実施例に記載の分析方法を用いて得られたものである。
【図3B】図3Bは、精製後(図3B)のニューロテンシンAngiopep-2-Cysアミドコンジュゲート(NT-AN2Cys-NH2またはNT-An2)を示すクロマトグラムである。このクロマトグラムは実施例に記載の分析方法を用いて得られたものである。
【図4】30 mlの30RPC樹脂を充填したカラムを用いるAKTA-エクスプローラー上でのNT-An2の精製を示すクロマトグラムである。
【図5】NT-An2による低体温誘導を示すグラフである。マウスに、生理食塩水(対照)、NT(1 mg/kg)または2.5 mg/kgもしくは5.0 mg/kg(1および2 mg/kg用量のNTと同等)のNT-An2を投与した。直腸温度を、静脈内注射後、90分間モニターした。
【図6】5、15または20 mg/kgのNT-An2の投与の際のマウスにおける体温の効果を示すグラフである。
【図7】5、10または20 mg/kgの異なる調製物のNT-An2の投与の際のマウスにおける体温の効果を示すグラフである。
【図8】NTおよびNT-An2のin situ脳かん流を示すグラフである。ヨウ素化後、マウスの脳を、指示される時間、Krebsバッファー中の[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体を用いて頸動脈中でかん流した。指示される時間の後、脳をさらに30秒間かん流して、過剰の両化合物を洗浄除去した。脳中の[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体の両方を、βカウンターを用いて定量した。結果を、時間の関数として、脳中の容量の分布(ml/100 g)に関して表した。
【図9】図6について記載されたin situ脳かん流後のNTおよびNT-An2の脳区画化を示すグラフである。脳毛細血管の枯渇を、標準的な手順に従ってデキストランを用いて実施した。脳、毛細血管、および柔組織に存在する[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体の両方を定量し、分布容量(ml/100 g/2分)を報告する。
【図10】NT-An2の5 mg/kgのボーラス注射を投与した後、1時間後に5 mg/kg/30分(すなわち、10 mg/kg/時)の速度でNT-An2を2.5時間注入したマウスの体温を示すグラフである。
【図11】20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時で3.5時間、NT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。
【図12】20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時でNT-An2を注入し、2.5時間後にこれを40 mg/kg/時に増加させたマウスの体温を示すグラフである。
【図13】NT-An2の20 mg/kgの静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時でNT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。
【図14】40 mg/kgのNT-An2を静脈内ボーラス注射を投与した直後、40 mg/kg/時でNT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。これは、実験の12時間について体温の持続的低下をもたらした。
【図15】化合物の投与の直前および15分後の対照マウス(左)、20 mg/kgのNT-An2を受容するマウス(中央)、および1 mg/kgのブプレノルフィン(右)を受容するマウスにおける足なめ応答のマウスにおけるホットプレート試験における待ち時間を示すグラフである。
【図16】7.5 mg/kgのNT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-NT(8-13)、または対照のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。これらの類似体のうち、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)は体温の最も大きい低下をもたらすことが観察された。
【図17】対照、NT、NT-An2、NT(8-13)-An2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。体温の最も大きい低下は、NT-An2およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートについて観察された。
【図18】Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13) (1 mg/kg)またはAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2 (6.25 mg/kg)のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。An2コンジュゲート化分子は、コンジュゲート化されていない分子より高い程度まで体温を低下させることが観察された。
【図19】Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの6.25 mg/kgのボーラス静脈内注射、次いで60分後に6.25 mg/kg/時の該コンジュゲートの注入を受容するマウスの体温を示すグラフである。
【図20】4℃または37℃で40 nMのNTの存在下または非存在下でNTSR1を発現するHT29細胞への放射標識されたNT([3H]-NT)の結合を示すグラフである。
【図21】0.4 nM〜40 nMの濃度のNTの存在下でのHT29への[3H]-NTの結合を示すグラフである。
【図22】NTまたはAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)の存在下でのHT29細胞への[3H]-NTの結合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明者らは、血液脳関門(BBB)を超えるまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)に入る能力の増強されたニューロテンシンコンジュゲートを開発した。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の化合物が、コンジュゲート化されていないニューロテンシンペプチドと比較して、ニューロテンシン応答、例えば体温の低減を、引き起こすのにはるかに効果的であることを示した。本発明の化合物はより高い応答を示すため、コンジュゲート化されたペプチドは低用量で効果的であり、副作用を低減または消去するために使用することができる。あるいはまた、観察された効力の増大は、より高い用量を用いることでより大きな治療効果をもたらしうる。実際に、これらの化合物は、
特定の従来の体温低下技術と異なり、震えを誘発することなく、持続性の体温低下応答を(例えば少なくとも3、4、5、6、8、10、12、15、18、21、24、30、36、または48時間の期間にわたり)迅速に誘導する能力を有する。
【0044】
ニューロテンシン
ニューロテンシン(NT)は、中枢神経系および胃腸管に存在する13アミノ酸のペプチドである。脳において、NTは、ドーパミン作動性受容体および他の神経伝達物質系と関連している。末梢NTは、消化系および心臓血管系の両方に対してパラクリンペプチドおよびエンドクリンペプチドとして作用する。脳においてその生理学的作用を発揮するためには、NTは脳に直接注射または送達されなければならない。なぜならばNTはBBBを超えることができず、全身投与後には迅速にペプチダーゼにより分解されるからである。前臨床的薬理学的研究(そのほとんどはNTを脳に直接注射するものである)によると、NT受容体のアゴニストは、精神病、統合失調症、パーキンソン病、疼痛、および神経刺激薬の乱用を含む神経精神病学的症状の治療に臨床的に有用であろうことが強く示唆されている。特に、種々の動物研究では、NTの脳室内注射は痛覚抑制実験において低体温および鎮痛をもたらした。
【0045】
ペプチド治療剤は、ニューロテンシンまたはそのアナログでありうる。ヒトニューロテンシンは配列QLYENKPRRPYILを有する13アミノ酸のペプチドである。例示的なニューロテンシンアナログとしては、(VIP-ニューロテンシン)ハイブリッドアンタゴニスト、アセチルニューロテンシン(8-13)、JMV 1193、KK13 peptide、ニューロメジンN、ニューロメジンN前駆体、ニューロテンシン(1-10)、ニューロテンシン(1-11)、ニューロテンシン(1-13)、ニューロテンシン(1-6)、ニューロテンシン(1-8)、ニューロテンシン(8-13)、Asp(12)-ニューロテンシン(8-13)、Asp(13)-ニューロテンシン(8-13)、Lys(8)-ニューロテンシン(8-13)、N-メチル-Arg(8)-Lys(9)-neo-Trp(11)-neo-Leu(12)-ニューロテンシン(8-13)、ニューロテンシン(9-13)、ニューロテンシン 69L、Arg(9)-ニューロテンシン、アジドベンゾイル-Lys(6)-Trp(11)-ニューロテンシン、Gln(4)-ニューロテンシン、ヨード-Tyr(11)-ニューロテンシン、ヨード-Tyr(3)-ニューロテンシン、N-α-(フルオレセイニルチオカルバミル)グルタミル(1)-ニューロテンシン、Phe(11)-ニューロテンシン、Ser(7)-ニューロテンシン、Trp(11)-ニューロテンシン、Tyr(11)-ニューロテンシン、rat NT77、PD 149163、proニューロテンシン、stearyl-Nle(17)-ニューロテンシン(6-11)VIP(7-28)、99mTc-NT-XI、TJN 950、および血管作動性腸管ペプチド-ニューロテンシンハイブリッドが挙げられる。
【0046】
他のニューロテンシンアナログとしては、NT64L [L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT72D [D-Lys9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT64D [D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT73L [D-Lys9,L-neo-Trp11]NT(9-13)、NT65L [L-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT73D [D-Lys9,D-neo-Trp11]NT(9-13)、NT65D [D-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT74L [DAB9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT66L [D-Lys8、L-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT74D [DAB9,Pro,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT66D [D-Lys8、D-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT75L [DAB8 L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT67L [D-Lys8、L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT75D [DAB8,D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT67D [D-Lys8、D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT76L [D-Orn9,L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT69L [N-メチル-Arg8,L-Lys9 L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT76D [D-Orn9,D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT69D [N-メチル-Arg8 L-Lys9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT77L [D-Orn9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT71L [N-メチル-Arg8,DAB9 L-neo-Trp11,tert-leu12]NT(8-13)、NT77D [D-Orn9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT71D [N-メチル-Arg8,DAB9,D-neo-Trp11,tert-leu12]NT(8-13)、NT78L [N-メチル-Arg8,D-Orn9 L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT72L [D-Lys9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、およびNT78D [N-メチル-Arg8,D-Orn9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、ここでneo-Trpは(2-アミノ-3-[1H-インドリル]プロパン酸)が挙げられる。他のニューロテンシンアナログとしては、β-ラクトテンシン (NTR2選択的)、JMV-449、およびPD-149またはPD-163 (NTR1選択的; ニューロテンシンの還元されたアミド結合8-13断片)が挙げられる。
【0047】
さらに他のNTアナログとしては、モルモットNT、[Gln4]NT、[D-Trp11]NT、NT(9-13)、frog NT、[Gln4]NT、[D-Phe11]NT、[D-Trp11]NT、[D-Tyr11]NT、Ac-NT(8-13)、[Lys8,9]NT(8-13)、[3,5-diBr-Tyr11]NT、Nα-Acetyl-NT(8-13)、Nα,Nε-di-Boc-[Lys9]NT(9-13) メチルエステル、Boc-[Lys9]NT(9-13)-メチルエステル、[Trp11]NT、[Dab9]NT (8-13)、[Lys9,Trp11,Glu12]NT(8-13) (シクロ (-Arg-Lys-Pro-Trp-Glu)-Leu-OH)、[Lys8-(置換記号)-Lys9]NT(8-13) (ここで該式中の置換記号はペプチド結合のCH2NH置換を示す)、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-(4-oxo)Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-(2,6diMe)Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-mTyr-tBuGly-Leu-OH、ここでmTyrはメタチロシンを示しすなわちTyrの-OH基がメタ位にあることを表す、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-PipGly-Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-AzeCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-AzeCA-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-Achc-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Cpa-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Cha-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-tBuAla-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-PipCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-DPipCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-Chg-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-DTyr-tBuGly-Leu-OH、並びに米国特許出願公開第2009/0062212号に記載のものである、D-Lys L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile D-Leu、L-Arg L-Arg Gly L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Ala L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Leu L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Val L-Leu、D-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Arg D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Arg L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Lys D-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAB L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAB L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAB DAB L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro CHA L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-3,2-Nal-L-Ile L-Leu、L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Orn L-Pro D-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro D-Tyr L-Ile L-Leu、DAP L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAP L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAP DAP L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-homoArg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-homoArg L-homoArg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-homoArg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-TIC L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-TIC L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-3,2-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pip L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro BPA L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu BPA L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg BPA L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAB L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-Trp L-Ile L-Leu、N- メチル-Arg L-Lys L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、p-Glu L-Leu L-ヨード-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、N-メチル-Arg DAB L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、DAB L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル-Arg D-Orn L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル-Arg D-Orn L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal tert-Leu L-Leu、およびN-メチル-Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal L-Ile L-Leuが挙げられる。略記号は次のとおりである: BPA = ベンゾイルフェニルアラニン; CHA = シクロヘキシルアラニン; DAB = ジアミノ酪酸; DAP = ジアミノプロピオン酸; homoArg = ホモアルギニン; Orn = オルニチン; Nal = ナフチル-アラニン; Pip = 1-ピペコリン酸; neo-Trp = ネイティブトリプトファンの部位異性体 (Fauq ら、Tetrahedron: Asymmetry 9:4127-34 (1998)); TIC = 1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)。
【0048】
他のニューロテンシンアナログとしては、改変アミノ酸(例えば本明細書に記載のもの)を有するものが挙げられる。ニューロテンシンアナログは、他のNTR受容体の少なくとも1つまたは両方と比較して、NTR1、NTR2、またはNTR3(例えばNTR1、NTR2、またはNTR3の少なくとも1つと、少なくとも2、5、10、50、100、500、1000、5000、10,000、50,000、または100,000倍強く、結合するまたはそれを活性化すること)について選択されうる。
【0049】
改変型のポリペプチド治療剤
本明細書に記載の任意のポリペプチド治療剤(例えば、ニューロテンシン、ニューロテンシンアナログまたはニューロテンシン受容体アゴニスト)を、改変してもよい(例えば、本明細書に記載のように、または当業界で公知のように)。米国特許第6,924,264号に記載のように、ポリペプチドをポリマーに結合させて、その分子量を増加させることができる。ポリマーの例としては、ポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ酸、アルブミン、ゼラチン、スクシニル-ゼラチン、(ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、脂肪酸、ポリサッカリド、脂質アミノ酸、およびデキストランが挙げられる。
【0050】
1つの事例においては、ポリペプチドを、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)またはその類似体もしくは断片、または免疫グロブリンのFc部分の付加により改変する。そのような手法は、例えば、米国特許第7,271,149号に記載されている。
【0051】
一例においては、ポリペプチドを、PCT公開第WO 98/08871号に記載のように、親油性置換基の付加により改変する。親油性置換基としては、部分的もしくは完全に水素化されたシクロペンタノフェナトレン骨格、直鎖状もしくは分枝状アルキル基;直鎖状もしくは分枝状脂肪酸のアシル基(例えば、CH3(CH2)nCO-もしくはHOOC(CH2)mCO-(式中、nもしくはmは4〜38である)などの基);直鎖状もしくは分枝状アルカンα,ω-ジカルボン酸のアシル基; CH3(CH2)p((CH2)q,COOH)CHNH-CO(CH2)2CO-(式中、pおよびqは整数であり、p+qは8〜33である); CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-(式中、rは10〜24である); CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-(式中、sは8〜24である); COOH(CH2)tCO-(式中、tは8〜24である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3(式中、uは8〜18である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3(式中、wは10〜16である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)xCH3(式中、xは10〜16である); または-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)yCH3(式中、yは1〜22である)が挙げられる。
【0052】
他の実施形態においては、ポリペプチド治療剤を、米国特許第6,593,295号に記載のように、マレイミド基などの化学的反応基の付加により改変する。これらの基は、血液成分上の利用可能な反応性官能基と反応して、共有結合を形成し、有効な治療剤の改変ポリペプチドのin vivoでの半減期を延長することができる。タンパク質上の官能基との共有結合を形成させるために、化学的反応基として、ヒドロキシル部分がペプチドを改変するのに必要なレベルで生理学的に許容し得る様々な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を用いることができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル (GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)マレイミドヘキサン酸(MHA)、およびマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0053】
一級アミンは、NHSエステルの主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する接近可能なα-アミノ基およびリジンのε-アミンは、NHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲーション反応物が一次アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する時に形成される。これらのスクシンイミド含有反応基を、本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明の特定の実施形態においては、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAまたはMPA)などのマレイミド含有基であろう。そのようなマレイミド含有基を本明細書ではマレイド基と呼ぶ。
【0054】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4である場合にペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば、血清アルブミンまたはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度は、アミンとの反応速度より1000倍速い。かくして、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル結合が形成され、これは生理的条件下では切断することができない。
【0055】
ペプチドベクター
本発明の化合物は、本明細書に記載の任意のポリペプチド、例えば、表1に記載の任意のペプチド(例えば、Angiopep-1もしくはAngiopep-2)、またはその断片もしくは類似体を特徴とする。特定の実施形態においては、ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドに対して少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはさらには100%の同一性を有してもよい。ポリペプチドは、本明細書に記載の配列の1つと比較して1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)の置換を有してもよい。他の改変を、以下でより詳細に説明する。
【0056】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能的断片)をも特徴とする。特定の実施形態においては、この断片を、特定の細胞型(例えば、肝臓、眼、肺、腎臓、もしくは脾臓)に効率的に輸送するか、もしくはその中に蓄積させるか、またはBBBを通過して効率的に輸送することができる。前記ポリペプチドのトランケーションは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはその組合せから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上のアミノ酸であってよい。他の断片としては、前記ポリペプチドの内部部分が欠失した配列が挙げられる。
【0057】
さらなるポリペプチドを、本明細書に記載のアッセイまたは方法の1つを用いることにより同定することができる。例えば、候補ポリペプチドを、従来のペプチド合成により製造し、パクリタキセルとコンジュゲートさせ、実験動物に投与することができる。生物学的に活性なポリペプチドコンジュゲートを、例えば、腫瘍細胞を注入され、コンジュゲートで治療されなかった(例えば、コンジュゲート化されていない薬剤で治療された)対照と比較してコンジュゲートで治療された動物の生存率を増加させる能力に基づいて同定することができる。例えば、生物学的に活性なポリペプチドを、in situ脳かん流アッセイにおいて、柔組織中のその位置に基づいて同定することができる。
【0058】
同様に、他の組織での蓄積を決定するためのアッセイを実施することができる。ポリペプチドの標識されたコンジュゲートを動物に投与し、様々な器官における蓄積を測定することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、Cy5.5などの近赤外線蛍光分光標識)にコンジュゲートさせたポリペプチドは、生のin vivoでの可視化を可能にする。そのようなポリペプチドを動物に投与し、器官中のポリペプチドの存在を検出し、かくして、所望の器官におけるポリペプチドの蓄積の速度および量を決定することができる。他の実施形態においては、前記ポリペプチドを放射性アイソトープ(例えば、125I)で標識することができる。次いで、ポリペプチドを動物に投与する。一定時間後、動物を犠牲にし、器官を取り出す。次いで、各器官における放射性アイソトープの量を、当業界で公知の任意の手段を用いて測定することができる。特定の器官における標識された候補ポリペプチドの量と、標識された対照ポリペプチドの量とを比較することにより、候補ポリペプチドが特定の組織に接近し、そこに蓄積する能力を確認することができる。好適な陰性対照としては、特定の細胞型に効率的に輸送されないことが知られた任意のペプチドまたはポリペプチド(例えば、BBBを通過しないAngiopepと関連するペプチド、または任意の他のペプチド)が挙げられる。
【0059】
さらなる配列は、米国特許第5,807,980号(例えば、本明細書に記載の配列番号102)、第5,780,265号(例えば、配列番号103)、第5,118,668号(例えば、配列番号105)に記載されている。アプロチニン類似体をコードするヌクレオチド配列の例は、atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag; 配列番号6; Genbank受託番号X04666である。アプロチニン類似体の他の例を、国際特許出願第PCT/CA2004/000011号に開示された合成アプロチニン配列(またはその一部)を用いてタンパク質BLAST(Genbank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。アプロチニン類似体の例は、受託番号CAA37967(GI:58005)および1405218C(GI:3604747)の下でも見出される。
【0060】
改変ポリペプチド
本発明において用いられるペプチドベクターおよびポリペプチド治療剤は、改変アミノ酸配列を有してもよい。特定の実施形態においては、前記改変は所望の生物活性(例えば、BBBを通過する能力またはニューロテンシン作動作用)を有意に破壊しない。この改変は、元のポリペプチドの生物活性を減少させる(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、もしくは95%)、それに対する効果を有さないか、またはそれを増加させる(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、もしくは1000%)ことができる。改変ペプチドまたはポリペプチドは、in vivoでの安定性、生体利用能、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性、およびコンジュゲーション特性などのポリペプチドの特性を有するか、またはそれを最適化することができる。
【0061】
改変としては、翻訳後プロセッシングなどの天然プロセスによるもの、または当業界で公知の化学的改変技術によるものが挙げられる。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含むポリペプチド中のどこでも行うことができる。同じ型の改変が、所与のポリペプチド中のいくつかの部位に同じか、または異なる程度で存在してもよく、ポリペプチドは2個以上の型の改変を含んでもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝状であってもよく、それらは分枝鎖を含むか、または含まない環状であってもよい。環状、分枝状、および分枝環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスの結果生じてもよいし、または合成的にそれを作製することもできる。他の改変としては、PEG化、アセチル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フィアビンへの共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬剤の共有結合、マーカー(例えば、蛍光もしくは放射性)の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加が挙げられる。
【0062】
改変ポリペプチドはまた、ポリペプチド配列中の保存的または非保存的な、アミノ酸挿入、欠失、または置換(例えば、Dアミノ酸、デスアミノ酸)を含んでもよい(例えば、そのような変化がポリペプチドの生物活性を実質的に変化させない場合)。特に、本発明の任意のポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端への1個以上のシステイン残基の付加は、例えば、ジスルフィド結合によるこれらのポリペプチドのコンジュゲーションを容易にすることができる。例えば、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)またはAngiopep-7(配列番号112)を、アミノ末端に1個のシステイン残基(それぞれ、配列番号71、113および115)またはカルボキシ末端に1個のシステイン残基8それぞれ、配列番号72、114および116)を含むように改変することができる。アミノ酸置換は、保存的(すなわち、ある残基を同じ一般型もしくは基の別の残基により置換する場合)または非保存的(すなわち、ある残基を別の型のアミノ酸により置換する場合)であってよい。さらに、非天然アミノ酸を、天然アミノ酸に置換することができる(すなわち、非天然保存的アミノ酸置換または非天然非保存的アミノ酸置換)。
【0063】
合成的に作製されたポリペプチドは、DNAによって天然にコードされないアミノ酸の置換(例えば、非天然アミノ酸)を含んでもよい。非天然アミノ酸の例としては、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、PEG化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のωアミノ酸、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンなどの中性非極性アミノ酸が挙げられる。フェニルグリシンはTrp、Tyr、またはPheに置換することができる;シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性非極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンをヒドロキシプロリンで置換することができ、それはコンフォメーション付与特性を保持する。
【0064】
置換的突然変異誘発により類似体を作製することができ、それは元のポリペプチドの生物活性を保持する。「保存的置換」として同定された置換の例を表2に示す。そのような置換が望ましくない変化をもたらす場合、表2に「例示的置換」として特色付けられるか、またはアミノ酸クラスを参照して本明細書にさらに記載される他の型の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0065】
機能または免疫学的同一性における実質的な改変を、(a)例えば、シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換領域中のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さの維持に対するその効果が大きく異なる置換を選択することにより達成する。天然残基は、一般的な側鎖特性に基づいて以下の群に分割される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2)中性疎水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、
(3)酸性/負荷電:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、
(5)鎖の向きに影響する残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、
(6)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln、
(8)塩基性/正荷電:Arg、Lys、His、および
(9)荷電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0066】
他のアミノ酸置換を表2に列挙する。
【表2】
【0067】
ポリペプチド誘導体およびペプチド模倣剤
天然アミノ酸からなるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣剤またはポリペプチド類似体も本発明により包含され、本発明の化合物において用いられるペプチドベクターまたはペプチド治療剤を形成することができる。ポリペプチド類似体は、鋳型ポリペプチドのものと類似する特性を有する非ペプチド薬剤として製薬業界において一般的に用いられている。非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物質」またはペプチド模倣剤と呼ばれる(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283-287, 1986およびEvansら、J. Med. Chem. 30:1129-1239, 1987)。治療上有用なペプチドまたはポリペプチドと構造的に関連するペプチド模倣物質を用いて、等価な、または増強された治療または予防効果をもたらすことができる。一般的には、ペプチド模倣剤は、天然受容体結合ポリペプチドなどの模範的ポリペプチド(すなわち、生物活性もしくは薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当業界でよく知られた方法(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983; Spatolaら、Life Sci. 38:1243-1249, 1986; Hudsonら、Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979; およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein(編)Marcel Dekker, New York)によって、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合により置換されていてもよい1個以上のペプチド結合を有する。そのようなポリペプチド模倣物質は、より経済的な生産、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効能、効率)、低下した抗原性などの天然ポリペプチドを超える有意な利点を有してもよい。
【0068】
本明細書に記載のペプチドベクターはBBBを効率的に通過するか、または特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)を標的化することができるが、その有効性はプロテアーゼの存在により減少し得る。同様に、本発明において用いられるポリペプチド治療剤の有効性も同様に減少し得る。血清プロテアーゼは、切断のためのL-アミノ酸およびペプチド結合などの特定の基質要求性を有する。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の多くの顕著な成分であるエキソペプチダーゼは通常、ポリペプチドの第1のペプチド結合に対して作用し、遊離N末端を要する(Powellら、Pharm. Res. 10: 1268-1273, 1993)。これに照らせば、改変された型のポリペプチドを使用することが有利であることが多い。改変ポリペプチドは、元のL-アミノ酸ポリペプチドの構造特性を保持するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断の影響を容易に受ける。
【0069】
コンセンサス配列の1個以上のアミノ酸の同じ型のD-アミノ酸との体系的置換(例えば、エナンチオマー;L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なポリペプチドを作製することができる。かくして、本明細書に記載のポリペプチド誘導体またはペプチド模倣剤は、全てのL-、全てのD-または混合D,Lポリペプチドであってよい。ペプチダーゼは基質としてD-アミノ酸を用いることができないため、N末端またはC末端D-アミノ酸の存在は、ポリペプチドのin vivoでの安定性を増加させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。逆-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含むポリペプチドと比較して、逆配列に整列された、D-アミノ酸を含むポリペプチドである。かくして、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基は、D-アミノ酸ポリペプチドにとってN末端などになる。逆D-ポリペプチドは、L-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次コンフォメーション、従って、同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoで酵素的分解に対してより安定であり、かくして、元のポリペプチドよりも高い治療効力を有する(BradyおよびDodson, Nature 368:692-693, 1994ならびにJamesonら、Nature 368:744-746, 1994)。逆-D-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束されたポリペプチドを、当業界でよく知られた方法により作製することができる(Rizoら、Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束されたポリペプチドを、ジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を付加することにより作製し、それによって環状ポリペプチドを得ることができる。環状ポリペプチドは遊離NまたはC末端を有さない。従って、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質溶解の影響を受けにくいが、それらは勿論、エンドペプチダーゼの影響を受けやすく、ポリペプチド末端で切断しない。N末端もしくはC末端D-アミノ酸を有するポリペプチドと環状ポリペプチドのアミノ酸配列は通常、それぞれ、N末端もしくはC末端D-アミノ酸残基の存在、またはその環状構造を除いて、それらが一致するポリペプチドの配列と同一である。
【0070】
分子内ジスルフィド結合を含む環状誘導体を、アミノおよびカルボキシ末端などの環化のために選択される位置に好適なS-保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる(Sahら、J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。鎖集合の完了後、(1)S-保護基を選択的に除去して、対応する2個の遊離SH-官能基の結果として生じる支持体上での酸化を用いてS-S結合を形成させた後、支持体から生成物を従来通り除去し、好適な精製手順を行うか、または(2)側鎖を完全に脱保護すると共に支持体からポリペプチドを除去した後、高度に希釈した水性溶液中で遊離SH-官能基を酸化することにより、環化を実施することができる。
【0071】
分子内アミド結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖保護されたアミノ酸誘導体を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノ保護側鎖を有するアミノ酸残基および好適なS保護システインまたはホモシステインを組込みながら、従来の固相化学により調製することができる。
【0072】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基に作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するための別の有効な手法は、改変ポリペプチドが最早ペプチダーゼの基質ではなくなるように、ポリペプチド末端に化学基を付加することである。1つのそのような化学的改変は、いずれか、または両方の末端でのポリペプチドのグリコシル化である。特定の化学的改変、特に、N末端グリコシル化は、ヒト血清中でのポリペプチドの安定性を増加させることが示された(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を増強する他の化学的改変としては、限定されるものではないが、アセチル基などの1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN末端アルキル基の付加、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加が挙げられる。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を担持するポリペプチドからなる改変ポリペプチドを含む。
【0073】
また、誘導体がポリペプチドの所望の機能的活性を保持するという条件で、通常はポリペプチドの一部ではないさらなる化学部分を含む他の型のポリペプチド誘導体も本発明に含まれる。そのような誘導体の例としては、(1)アミノ末端もしくは別の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(ここで、アシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-mocなどのブロッキング基(フルオレニルメチル-O-CO-)であってよい);(2)カルボキシ末端または別の遊離カルボキシもしくはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアもしくは好適なアミンとの反応により産生されたカルボキシ末端もしくは別の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化誘導体が挙げられる。
【0074】
本明細書に記載のポリペプチドへの追加アミノ酸残基の付加の結果生じるより長いポリペプチド配列も、本発明に包含される。そのようなより長いポリペプチド配列は、上記のポリペプチドと同じ生物活性および特異性(例えば、細胞指向性)を有すると期待することができる。実質的な数の追加アミノ酸を有するポリペプチドは排除されないが、いくつかの大きいポリペプチドは有効な配列を隠す配置をとり、それによって標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーのメンバー)への結合を阻害し得ると認識されている。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用し得る。かくして、本発明はポリペプチドまたは伸長を有する本明細書に記載のポリペプチドの誘導体を包含するが、この伸長は該ポリペプチドまたはその誘導体の細胞標的化活性を破壊しないのが望ましい。
【0075】
本発明に含まれる他の誘導体は、短いストレッチのアラニン残基またはタンパク質溶解のための推定部位などにより(例えば、カテプシンによる、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照されたい)、直接的に、またはスペーサーを介して互いに共有結合した、本明細書に記載のような、2個の同じか、または2個の異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本明細書に記載のポリペプチドの多量体は、同じか、または異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーからなる。
【0076】
本発明はまた、そのアミノもしくはカルボキシ末端、またはその両方で、異なるタンパク質のアミノ酸配列に連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含むキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体も包含する。そのようなキメラまたは融合タンパク質を、該タンパク質をコードする核酸の組換え発現により製造することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、等価な、またはより高い機能的活性を有するキメラまたは融合タンパク質をもたらすことが望ましい1個の記載のポリペプチドと共有される少なくとも6個のアミノ酸を含んでもよい。
【0077】
ペプチド模倣剤を同定するためのアッセイ
上記のように、本明細書に記載のポリペプチドの主鎖形状および薬理作用団展示(ペプチド模倣剤)を複製するために作製された非ペプチジル化合物は、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用期間、およびより良好な生体利用能の特性を有することが多い。
【0078】
ペプチド模倣化合物を、生物ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行固相もしくは液相ライブラリー、解析を要する合成ライブラリー方法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法、およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法などの、当業界で公知のコンビナトリアルライブラリー方法におけるいくつかの手法のいずれかを用いて取得することができる。生物ライブラリー手法はペプチドライブラリーに限られるが、他の4つの手法はペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーにも適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当業界で、例えば、DeWittら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993); Erbら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994); Zuckermannら(J. Med. Chem. 37:2678, 1994); Choら(Science 261:1303, 1993); Carellら(Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994および同書、2061); およびGallopら(Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出すことができる。化合物のライブラリーを、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)またはビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)上もしくはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)上、またはルシフェラーゼ上で提供し、酵素標識を好適な基質の生成物への変換の決定により検出することができる。
【0079】
一度、本明細書に記載のポリペプチドを同定したら、限定されるものではないが、溶解度の差(例えば、沈降)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティ、イオン交換、およびサイズ排除)などの任意の数の標準的な方法、またはペプチド、ペプチド模倣剤、もしくはタンパク質の精製のために用いられる任意の他の標準的な技術により単離および精製することができる。同定された目的のポリペプチドの機能特性を、当業界で公知の任意の機能アッセイを用いて評価することができる。細胞内シグナリングにおける下流の受容体機能を評価するためのアッセイを用いるのが望ましい(例えば、細胞増殖)。
【0080】
例えば、本発明のペプチド模倣化合物を、以下の3段階プロセス:(1)本明細書に記載のポリペプチドを走査して、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するのに必要な二次構造の領域を同定すること;(2)コンフォメーションが拘束されたジペプチド代理物を用いて、主鎖形状を改良し、これらの代理物に対応する有機プラットフォームを提供すること;および(3)最良の有機プラットフォームを用いて、天然ポリペプチドの所望の活性を模倣するように設計された候補のライブラリー中の有機薬理作用団を展示すること、を用いて取得することができる。より詳しくは、この3段階は以下の通りである。段階1においては、リード候補ポリペプチドを走査し、その構造を短縮して、その活性のための要件を同定する。一連の元のポリペプチド類似体を合成する。段階2においては、最良のポリペプチド類似体を、コンフォメーション的に拘束されたジペプチド代理物を用いて調査する。ヨードリジジン-2-オン、ヨードリジジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のペプチド候補の主鎖形状を研究するためのプラットフォームとして用いる。これらの、および関連するプラットフォーム(Halabら、Biopolymers 55:101-122, 2000およびHanessianら、Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に概説されている)を、ポリペプチドの特定の領域に導入して、異なる向きの薬理作用団の方向を合わせることができる。これらの類似体の生物学的評価により、活性のための形状要件を模倣する改良されたリードポリペプチドを同定する。段階3においては、最も活性の高いリードポリペプチドに由来するプラットフォームを用いて、天然ペプチドの活性を担う薬理作用団の有機代理物を展示する。この薬理作用団と足場を、平行合成形式で混合する。ポリペプチドの誘導および上記段階を、当業界で公知の方法を用いる他の手段により達成することができる。
【0081】
前記ポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣剤または本明細書に記載の他の小分子から決定された構造機能相関を用いて、類似するか、またはより良好な特性を有する類似体分子構造を精製し、調製することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特性および側鎖特性を共有する分子も含む。
【0082】
まとめると、本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、薬剤を特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)に対して標的化するための化合物を同定するのに有用であるペプチドおよびペプチド模倣剤スクリーニングアッセイを開発することができる。本発明のアッセイを、低効率、高効率、または超高効率スクリーニング形式のために開発することができる。本発明のアッセイは、自動化に従うアッセイを含む。
【0083】
リンカー
ポリペプチド治療剤(ニューロテンシン)を、直接的に(例えば、ペプチド結合などの共有結合を介して)またはリンカーを介してベクターペプチドに結合することができる。リンカーとしては、化学的連結剤(例えば、切断可能なリンカー)およびペプチドが挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態においては、リンカーは化学的連結剤である。ポリペプチド治療剤とペプチドベクターを、スルフヒドリル基、アミノ基(アミン)、および/もしくは炭水化物または任意の好適な反応基を介してコンジュゲートさせることができる。ホモ二官能性およびヘテロ二官能性交叉リンカー(コンジュゲーション剤)が、多くの商業的起源から利用可能である。交叉連結に利用可能な領域を、本発明のポリペプチド上に見出すことができる。交叉リンカーは、可撓性アーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の炭素原子を含んでもよい。交叉リンカーの例としては、BS3([ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート];BSは、接近可能な一次アミンを標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドとN-エチル-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;NHS/EDCは一次アミン基とカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSは、スルフヒドリル基およびアミノ基に対して反応するヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である)、ヒドラジド(多くのタンパク質は露出した炭水化物を含み、ヒドラジドは一次アミンにカルボキシル基を連結するための有用な試薬である)、ならびにSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸;SATAは、アミンと反応し、保護されたスルフヒドリル基を付加する)が挙げられる。
【0085】
共有結合を形成するために、化学反応基として、ヒドロキシル部分が、ペプチドを改変するのに必要なレベルで生理学的に許容し得る、様々な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を用いることができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、およびマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0086】
一級アミンは、NHSエステルのための主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する接近可能なα-アミン基およびリジンのε-アミンはNHSエステルと反応する。NHSエステルコンジュゲーション反応物が一次アミンと反応する時にアミド結合が形成され、N-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する。これらのスクシンイミドを含有する反応基を、本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明の特定の実施形態においては、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAもしくはMPA)などのマレイミド含有基であろう。そのようなマレイミド含有基を、本明細書ではマレイド基と呼ぶ。
【0087】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5-7.4である場合、ペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば、血清アルブミンまたはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度は、アミンとの反応速度よりも1000倍速い。かくして、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル結合を形成させることができる。
【0088】
他の実施形態においては、前記リンカーは、少なくとも1個のアミノ酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40または50個のアミノ酸のペプチド)を含む。特定の実施形態においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、Cysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態においては、米国特許第7,271,149号に記載のような、配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは1、2、3、4、5または6である)を有するペプチドなどのグリシン-リッチペプチドを用いる。他の実施形態においては、米国特許第5,525,491号に記載のような、セリン-リッチペプチドリンカーを用いる。セリンリッチペプチドリンカーとしては、式[X-X-X-X-Gly]y(式中、Xのうち最大2個はThrであり、残りのXはSerであり、yは1〜5である)のもの(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Gly(式中、yは2以上である))が挙げられる。いくつかの事例においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、GlyまたはCysなどの任意のアミノ酸)である。
【0089】
好適なリンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu、およびAsp、またはGly-Lysなどのジペプチドである。リンカーがコハク酸である場合、その1個のカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、その他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドまたは置換基のアミノ基とアミド結合を形成することができる。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、そのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成することができる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーを、Lysのε-アミノ基と置換基との間に挿入することができる。1つの特定の実施形態においては、さらなるリンカーは、例えば、Lysのε-アミノ基と、および置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。一実施形態においては、さらなるリンカーは、GluまたはAsp(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、置換基に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成する)である、すなわち、置換基はNε-アシル化リジン残基である。
【0090】
ニューロテンシンアゴニスト活性アッセイ
化合物がニューロテンシンアゴニスト活性を有するかどうかの決定を、当業界で公知の任意の方法を用いて実施することができる。ニューロテンシン受容体(例えば、ヒト受容体またはラット受容体)を発現する細胞からのイノシトールリン酸産生を、化合物の存在下および非存在下で測定することができ、イノシトールリン酸産生の増加が、該化合物がニューロテンシン受容体アゴニストであることを示唆する。
【0091】
Watson ら, J Neurochem 59:1967-1970, 1992に記載されているある例では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がラットニューロテンシン受容体で形質転換された。ニューロテンシンアゴニストの結合は、検出可能に標識化されたニューロテンシン(例えば3Hで標識されたもの)を接触させ、試験化合物との競合を測定することにより、測定できる。第2メッセンジャー合成(D-myo-イノシトール1-リン酸(IP1))は、細胞を予めD-myo-[3H]イノシトールで標識することにより測定することができる。[3H]イノシトール1-リン酸の産生は、アニオン交換クロマトグラフィーにより分離される。
【0092】
治療的適応
本発明の化合物を、ニューロテンシン活性が有益である任意の好適な治療的適応において用いることができる。本発明の化合物は、ニューロテンシン活性の活動が有益となる任意の適当な治療的用途に用いることができる。ニューロテンシン (NT)は、中枢神経系および胃腸管に存在する13アミノ酸ペプチドである。脳では、NTはドーパミン作動性受容体および他の神経伝達物質系と関連している。末梢NTは、消化系および心臓血管系の両方に対してパラクリンペプチドおよびエンドクリンペプチドとして作用する。種々の治療用途がニューロテンシンについて提案され、そうしたものには神経障害、代謝障害、および疼痛が含まれる。ロテンシンが、統合失調症と関連する脳の領域での神経伝達をモジュレートすることが示されていることから、ニューロテンシンおよびニューロテンシン受容体アゴニストは抗鬱剤として提唱されてきた。
【0093】
神経疾患
本明細書に記載のポリペプチドはBBBを通過して薬剤を輸送することができるため、本発明の化合物はまた、神経変性疾患または中枢神経系(CNS)、末梢神経系、もしくは自律神経系(例えば、神経細胞が失われるか、もしくは退化している)の他の症状などの神経疾患の治療にとって有用である。ニューロテンシンは抗精神病療法において提唱され、したがって統合失調症や双極性障害などの疾患の治療において有用でありうる。多くの神経変性疾患は、運動失調(すなわち、非協調的筋肉運動)および/または記憶喪失を特徴とする。神経変性疾患としては、アレキサンダー病、アルパー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS;すなわち、ルー・ゲーリック病)、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レヴィー小体認知症、マチャド・ジョセフ病(3型脊髄小脳失調)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、シルダー病(すなわち、副腎白質ジストロフィー)、統合失調症、脊髄小脳失調、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー病、および脊髄癆が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物によって治療されうる他の神経学的および精神医学的疾患としては、トゥレット症候群および強迫神経症が挙げられる。
【0095】
体温低下の誘導
本発明の化合物は、被験体の体温を低下させるために使用されうる。神経保護を必要とする被験体例えば卒中、脳虚血、心虚血、または脊髄損傷または頭部もしくは脳損傷(例えば外傷性脳損傷)のような神経損傷を罹患しているかまたは最近それを罹患した被験体において体温の低減が有益であることが示されていることから、かかる治療は従ってこうした症状における合併症を低減するのに有用でありうる。体温の低減はまた、心手術(例えば心臓切開手術)もしくは他の大手術のような手術中において、または被験体が悪性低体温を罹患している場合に、望まれうる。
【0096】
疼痛
ニューロテンシンはまた、鎮痛作用を有することでも知られている。したがって本発明の化合物は、被験体における疼痛の低減に使用されうる。被験体は急性疼痛(例えば機械的疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛、および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択される疼痛)を罹患している者でありうる。他の種類の疼痛としては、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛が挙げられる。
【0097】
代謝障害
ニューロテンシンが代謝障害の治療に使用可能である証拠がある。例えば米国特許出願第2001/0046956号を参照されたい。したがって本発明の化合物はかかる障害を治療するために使用されうる。代謝障害は糖尿病(例えばI型、またはII型)、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧であり得る。被験体は重量過剰、肥満または過食症でありうる。
【0098】
薬物依存/乱用
ニューロテンシンはまた、被験体における薬物依存の治療または薬物乱用の低減(特に精神刺激薬での場合)に使用可能であることが提唱されている。したがって本発明の化合物は、アンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、およびアレコリンのような薬物の依存または乱用を治療するのに有用でありうる。NTはまた、アルコール依存を治療するのに使用されうる。
【0099】
投与および用量
本発明はまた、治療上有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物を特徴とする。前記組成物を、様々な薬剤送達系における使用のために製剤化することができる。1種以上の生理学上許容し得る賦形剤または担体を、適切な製剤のために前記組成物中に含有させることもできる。本発明における使用のための好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 第17版、1985に見出される。薬剤送達のための方法の簡単な概説については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0100】
前記医薬組成物は、予防的および/または治療的治療のための、非経口、鼻内、局所、経口、または経皮手段などによる、局所投与のために意図される。前記医薬組成物を、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下注射)、または経口摂取によるか、または血管症状もしくは癌症状に罹患した領域での局所適用もしくは関節内注入により投与することができる。さらなる投与経路としては、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、心室内、硬膜内、ならびに鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、もしくはエアロゾル吸入投与が挙げられる。デポー注射または浸食性埋込み物もしくは成分などの手段による、持続放出投与も本発明に特に含まれる。かくして、本発明は、許容し得る担体、好ましくは、水性担体、例えば、水、緩衝化水、塩水、PBSなどに溶解または懸濁した上記薬剤を含む非経口投与のための組成物を提供する。前記組成物は、pH調節剤および緩衝化剤、等張性調節剤、湿潤剤、洗剤などの生理学的条件を近似するように必要な製薬上許容し得る補助物質を含んでもよい。本発明はまた、錠剤、カプセル剤などの製剤化のための結合剤または充填剤などの不活性成分を含んでもよい、経口送達のための組成物も提供する。さらに、本発明は、クリーム、軟膏などの製剤化のための溶媒または乳化剤などの不活性成分を含んでもよい局所投与のための組成物を提供する。
【0101】
これらの組成物を、従来の滅菌技術により滅菌するか、または滅菌濾過することができる。得られる水性溶液を、使用のために充填するか、または凍結乾燥し、凍結乾燥調製物を投与前に滅菌水性担体と混合することができる。調製物のpHは、典型的には、3〜11、より好ましくは5〜9または6〜8、および最も好ましくは7〜8、例えば、7〜7.5であろう。固体形態の得られる組成物を、それぞれ固定量の上記薬剤を含む複数の単回用量単位中、例えば、錠剤またはカプセル剤の密閉包装中に充填することができる。固体形態の前記組成物を、局所適用可能なクリームまたは軟膏のために設計された絞れるチューブなどの、自在量のための容器中に充填することもできる。
【0102】
有効量を含む組成物を、予防的または治療的治療のために投与することができる。予防的適用においては、組成物を、素因が臨床的に決定されたか、または代謝障害もしくは神経疾患に対する罹患率が高い被験体に投与することができる。本発明の組成物を、被験体(例えば、ヒト)に、臨床疾患の開始を遅延させる、減少させるか、または好ましくは防止するのに十分な量で投与することができる。治療的適用においては、疾患(例えば、本明細書に記載の代謝障害、もしくは神経疾患)に既に罹患している被験体(例えば、ヒト)に、その症状およびその合併症の症候を治癒するか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。この目的を達成するのに十分な量を、「治療上有効量」、疾患または医学的症状に関連するいくつかの症候を実質的に改善するのに十分な量と定義する。例えば、代謝障害(例えば、本明細書に記載のもの)の治療においては、前記疾患または症状の任意の症候を減少させ、防止し、遅延させ、抑制するか、または停止させる薬剤または化合物は治療上有効であろう。薬剤もしくは化合物の治療上有効量は、疾患もしくは症状を治癒させるのに必要ではないが、疾患もしくは症状の開始を遅延させる、妨害するか、もしくは防止するか、または疾患もしくは症状の症候が改善するか、または疾患もしくは症状の期間が変化するか、または例えば、個体における重篤度が低いか、または回復が加速されるような、疾患もしくは症状のための治療を提供するであろう。
【0103】
この使用にとって有効な量は、疾患もしくは症状の重篤度および被験体の全身状態に依存し得るが、一般的には、被験体あたり約0.05μg〜約1000μg(例えば、0.5〜100μg)の範囲の相当する用量のエキセンジン-4である。初回投与および追加投与のための好適な計画は、典型的には、初回投与に次いで、毎時間、毎日、毎週、または毎月1回以上の間隔でその後の投与を反復投与することである。本発明の組成物中に存在する薬剤の合計有効量を、比較的短い期間にわたって単回用量として、ボーラス注射として、もしくは輸液により哺乳動物に投与するか、または複数用量をより長期間にわたって(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、もしくは18〜24時間毎、もしくは2〜4日毎、1〜2週間毎、月に1回の投与)投与する、分割治療プロトコルを用いて投与することができる。あるいは、血中で治療上有効濃度を維持するのに十分な連続静脈内輸液が意図される。
【0104】
当業者であれば、本発明の組成物内の存在し、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される本発明の方法において用いられる1種以上の薬剤の治療上有効量を、哺乳動物の年齢、体重、および症状における個々の差異を考慮して決定することができる。本発明の特定の化合物はBBBを通過する高い能力を示すため、本発明の化合物の用量は、コンジュゲート化されていないアゴニストの治療効果のために必要な相当する用量よりも低いものであってよい(例えば、約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下)。治療される被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において望ましい結果(例えば、血糖の低下、体重増加の減少、体重減少の増加、および食物摂取の減少)をもたらす量である有効量の本発明の薬剤を、該被験体に投与する。当業者であれば、治療上有効量を経験的に決定することもできる。
【0105】
被験体はまた、週に1回以上(例えば、週に2、3、4、5、6もしくは7回以上)、用量あたり0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、もしくは0.1)μg用量/日または週の範囲の用量のニューロテンシンと比較して、これに相当する量の約0.05〜10,000μgの範囲の薬剤を受容してもよい。被験体はまた、2または3週間に1回、用量あたり0.1〜3,000μgの範囲の前記組成物の薬剤を受容してもよい。
【0106】
有効量を含む本発明の組成物の単回または複数回投与を、治療する医師により選択される用量レベルおよびパターンで実行することができる。用量および投与スケジュールを、被験体における疾患または症状の重篤度に基づいて決定および調整し、臨床医により一般的に実施されるか、または本明細書に記載の方法に従う治療過程を通してモニターすることができる。
【0107】
本発明の化合物を、治療もしくは療法の従来の方法と共に用いるか、または治療もしくは療法の従来の方法とは別々に用いることができる。
【0108】
本発明の化合物を他の薬剤との組合せ療法において投与する場合、それらを個体に対して連続的に、または同時に投与することができる。あるいは、本発明に従う医薬組成物は、本明細書に記載のような製薬上許容し得る賦形剤、および当業界で公知の別の治療剤もしくは予防剤と共に、本発明の化合物の組合せを含んでもよい。
【実施例】
【0109】
実施例1
ニューロテンシン-Angiopep-2コンジュゲートの合成
例示的ニューロテンシン-Angiopep-2コンジュゲートを、以下に記載のスキームを用いて合成した。これらの例において用いられる省略形NTとは、以下に記載のpE-置換ニューロテンシンペプチドを指す。
【化3】
【0110】
ニューロテンシンペプチド合成
稀なアミノ酸L-ピログルタミン酸(pE)を用いるpELYENKPRRPYIL-OHを、SPPS(固相ペプチド合成)を用いて合成した。SPPSを、Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)アミノ末端保護を用いるProtein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置上で実行した。樹脂に対して5倍過剰のFmoc-アミノ差(200 mM)を用いる100μmol規模でペプチドを合成した。HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸)およびNMM(N-メチルモルホリン)を含むDMF中の1:1:2のアミノ酸/アクチベーター/NMMを用いて、カルボキシル末端酸のための予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)により、カップリングを実施した。20%ピペリジン/DMFを用いて脱保護を実行した。室温で2時間、TFA/水/TES:95/2.5/2.5から構成される溶液を用いて、樹脂に結合した生成物を定法的に切断した。
【0111】
予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、および稀なL-ピログルタミン酸をSigma-Aldrich社から購入した。アミノ酸のための側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt(トリチル)、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu(ter-ブチル)、アルギニンについてはPbf(ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)、およびリジンについてはtBoc(t-ブチルオキシカルボニル)であった。
【0112】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー(Waters Delta Prep 4000)により精製した。回収された画分からアセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥したところ、純白色の固体(204 mg、61%、98%を超える純度)が得られた。ESI-TOF MS (Bruker Daltonics; 計算値1672.92;実測値1671.90、m/z 558.31(+3)、836.96(+2))により、質量を確認した。
【0113】
EMCS-NT
NTのN-リジン一次アミンを、NTの溶液(25 mg、14.9μmol、3.5 mlのPBS 4X、pH 7.64中1当量)を、スルホ-EMCS(N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)(Pierce Biotechnology)の溶液(6.1 mg、14.9μmol、1 mlのPBS 4X中1当量)で処理することにより活性化した。以下に記載の分析方法を用いて反応のモニタリングを行った(図1Aおよび1Bのクロマトグラム1-2を参照)。室温で1時間、反応(3.32 mM、pH 7.61)を進行させた。スルホ-EMCS(4.5 mg、10.9μmol、1 mlのPBS 4X中0.73当量)を添加して1時間、改変を1回繰り返した。混合物をFPLCクロマトグラフィー(AKTA explorer、図2のクロマトグラム3を参照)により精製した。EMCS-NTの精製を、30 RPC樹脂(ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、30 mlを含むカラム上で実施した。サンプルを反応バッファー(4 ml)、H2O中の10%アセトニトリル(ACN)、0.05%TFA(200μl)中に35 mgとして充填した。溶液AはH2O、0.05%TFAであり、溶液BはACN、0.05%TFAであった。流速は5〜9 ml/分、勾配は10〜25%の溶液Bであった。
【0114】
アセトニトリルを蒸発させた後、次の工程のために水の容量を5 mlまで減少させた。純粋なEMCS-改変NT(98%を超える純度)の無色の溶液を得た。質量をESI-TOF MS (Bruker Daltonics)により調べたところ、計算値は1867.13であり、実測値は1866.00、m/z 623.01(+3)、934.00(+2)であった。
【0115】
NT-AN2Cys−NH2
マレイミド含有EMCS-NTおよびAN2Cys-NH2の遊離チオール残基を用いてコンジュゲーションを実施した。0.1 N NaOH溶液をゆっくり添加することにより、EMCS-NTの溶液のpHを1.65〜6.42に調整した。pHの調整の間に、加水分解副反応が起こり得る(5%以下、加水分解されたEMCS-NTの分子量=1833)。AN2Cys-NH2の溶液(46.4 mg、14.9μmol、2.5 mlのPBS 4x、pH 7.64中1当量)を、EMCS-NTの溶液に添加した。以下の分析方法を用いて、反応をモニタリングした(図3Aおよび3Bのクロマトグラム4-5を参照)。反応(1.9 mM、pH 6.3)を室温で30分間進行させた。混合物をFPLCクロマトグラフィー(AKTA explorer、図4のクロマトグラム6を参照)により精製した。NT-AN2Cys-NH2の精製を、30 RPC樹脂(ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、30 mlを含むカラム(GE Healthcare)を用いて実施した。4 mlの反応バッファー(H2O中の10%ACN、0.05%TFA(200μl))中、74 mgの量でサンプルを充填した。溶液AはH2O、0.05%TFAであり、溶液BはACN、0.05%TFAであった。流速は5〜9 ml/分であり、10〜25%の勾配の溶液Bを用いた。
【0116】
アセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した後、純白色の固体(5.5 mg、2工程にわたって9%、95%を超える純度)としてコンジュゲート化NT-AN2Cys-NH2が得られた。質量をESI-TOF MS (Bruker Daltonics)により確認したところ、分子量の計算値は4270.76であり、実測値は4269.17(m/z 712.54(+6)、854.84(+5)、1068.29(+4)、1424.04(+3))であった。
【0117】
コンジュゲートを窒素雰囲気下、-20℃以下で保存した。
【0118】
分析方法
上記のように以下の方法を用いた。精製の間にサンプルを分析するために、Waters Acquity UPLCシステムをBEHフェニルカラム、1.7μm、2.1 x 50 mmと共に用いた。検出を229 nmで実施した。溶液AはH2O、0.1%FAであり、溶液Bはアセトニトリル(ACN)、0.1%FAであった。以下の表に示されるように、流速は0.5 ml/分であり、10〜90%のBの勾配を用いた。
【0119】
【0120】
実施例2
NT-AN2Cys-NH2コンジュゲートの特性評価
NT-AN2Cys-NH2(NT-An2)コンジュゲートの薬理学的効果および脳への浸透を調査するために、本発明者らは、マウスの体温に対するその効果をモニターした(図5)。マウスの体温は、1 mg/kgのNTまたは塩水対照の静脈内投与によっては影響されなかった。対照的に、相当する用量のコンジュゲート(2.5 mg/kg)の静脈内投与は、体温の急速な低下をもたらし、低体温を誘導した。より高い用量(5 mg/kg)のNT-An2の注射は、体温のより強い低下を引き起こしたが、これはNT-An2の効果が用量依存的であることを示唆している。
【0121】
本発明者らはまた、より高用量のコンジュゲートが低体温のより大きい誘導をもたらすかどうかを試験した。マウスに5、15、または20 mg/kgのコンジュゲートを投与し、投与後の体温の低下を、投与後120分間にわたってモニターした。これらの高用量間で小さな差異が観察された(図6)。
【0122】
この実験を、NT-An2化合物の第2の小バッチを用いて再度繰り返したところ、同様の活性が得られた。生成物をスケールアップする試みの一部として生成された第3のバッチは、図7に示されるように、類似するが、いくらかより低い活性を示した。
【0123】
NT-An2コンジュゲートがBBBを通過することを確認するために、NTとコンジュゲートの両方を標準的な手順を用いてヨード化し、当業界で標準的な方法を用いてin situ脳かん流を実施した。初期の輸送を時間の関数として測定した(図8)。結果は、NT-An2コンジュゲートの初期の脳による取込みは、コンジュゲート化されていないNTよりも高いことを明確に示唆している。さらに、in situかん流の2分後、毛細血管枯渇を行って、脳の柔組織に認められるNT-An2の量を定量した(図9)。NTと比較した場合、脳の柔組織においてより高いレベルのNT-An2が認められた。さらに、これらの結果は、NT-An2が脳の毛細血管中に捕捉されないことを示唆している。全体として、本発明者らの結果は、新規NT-An2誘導体が、体温の制御に関与するその受容体を活性化するのに必要とされる十分な濃度でBBBを通過することを証明している。
【0124】
実施例3
Angiopep-NTコンジュゲートを用いる持続的低体温の誘導
本発明者らは、コンジュゲートがマウスおよびラットにおいて持続的低体温を誘導することができるかどうかを試験するためのさらなる実験を実施した。
【0125】
1回目の実験において、マウスは最初にNT-An2の静脈内5 mg/kgボーラス注射を受けた後、1時間後、2.5時間にわたって静脈内注入(10 mg/kg/時)を受けた。注入の間に体温は低下し続け、−11℃の最低状態に達した(図10)。注入が終わった後、体温はゆっくりと37℃に戻り、動物は回復した。
【0126】
同様の実験をラットにおいても実施した。ここで、ラットに20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後に、3.5時間にわたって20 mg/kg/時の注入を行った。これにより、90分後に約3.5℃の最大温度低下が得られた(図11)。
【0127】
持続的低体温実験を、20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射、その直後に2.5時間にわたって20 mg/kg/時の注入を用いて実施した。この時点で、注入を40 mg/kg/時まで増加させた。初期の37℃の体温の低下が、実験の360分間の経過にわたって観察された(図12)。
【0128】
同様の実験をラットにおいても行った。この実験において、ラットに20 mg/kgのNT-An2を静脈内注射した直後、20 mg/kg/時の注入を行った。この実験の360分間の経過の間に、体温の持続的低下も観察された(図13)。
【0129】
また、12時間にわたって行われるさらなる実験を、ラットにおいて実施した。この実験は、NT-An2の40 mg/kgの静脈内ボーラス注射、その直後の20 mg/kg/時のNT-An2の注入を含んでいた。図14に示されるように、これは実験の過程にわたって体温の持続的低下をもたらした。
【0130】
実施例4
NT-An2による鎮痛誘導
本発明者らはまた、マウスにおいて鎮痛を誘導するNT-An2の能力を試験した。本発明者らは、対照マウス、20 mg/kgのNT-An2を投与したマウス、および陽性対照としての1 mg/kgのブプレノルフィン(麻薬性鎮痛剤)を投与したマウスにおけるホットプレート足曝露と足なめ行動との間の潜伏時間を試験した。NT-An2およびブプレノルフィンは共に、注射の15分後に統計学的に有意な様式で足なめ行動の潜伏時間を増加させたが、これはNT-An2が鎮痛剤として作用し得ることを示唆している(図15)。
【0131】
実施例5
より短いニューロテンシン類似体の作製
本発明者らはさらに、いくつかのより短いニューロテンシン類似体を作製した。これらの類似体としては、NT(8-13) (RRPYIL)、Ac-LysNT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-LysNT(8-13)、MHA-NT(8-13)、およびβ-メルカプトMHA-NT(8-13)が挙げられる(以下を参照されたい)。
【0132】
【0133】
NTおよびNT(8-13)類似体を、Protein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置およびFmoc化学上でSPPS方法を用いることにより合成した。予め充填したFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、稀なpEをSigma-Aldrich社から、非天然D-チロシンをChemImpex社から、スルホ-EMCSをPierce Biotechnology社から購入した。アミノ酸の側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu、アルギニンについてはPbf、およびリジンについてはtBocであった。質量をESI-TOF MS (MicroTof, Bruker Daltonics)により確認した。
【0134】
一般的手順-ニューロテンシン(NT)(pELYENKPRRPYIL-OH)の合成
NTを、稀なL-ピログルタミン酸(pE)および樹脂に対して5倍過剰のFmoc-AA(200 mM)を用いて合成した。DMF中の1:1:4のAA/HBTU/NMMを用いてカルボキシル末端酸のために予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)からカップリングを実施した。20%ピペリジン/DMFを用いて脱保護を実行した。樹脂に結合した生成物を、室温で2時間、TFA/水/TES:95/2.5/2.5から構成されるカクテル溶液を用いて日常的に切断した。
【0135】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Kromasil 100-10-C18、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法A」)により精製した。アセトニトリルを回収された画分から蒸発させ、凍結乾燥した。これにより白色でふわふわした固体が形成された(800 mg、80%収率、98%を超えるHPLC純度、計算値1672.92、実測値1671.90、m/z 558.31(+3)、836.96(+2))。
【0136】
MHA-NT(8-13)(MHA-RRPYIL-OH)の合成
NTと同じ手順を用いた。100 mMのFmoc-AA溶液、およびTBTUを用いた。切断の前に、樹脂に結合した遊離N末端アミノ酸を室温で1.5時間、スルホ-EMCSの18 mM溶液(DMF中、1.2当量)で処理することにより、N末端MHA基をSPPS上で導入した。粗ペプチドを、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Waters BEHフェニル、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法B」)により精製した。これにより55 mgの生成物、73%収率、HPLC純度95%以上、計算値1010.19、実測値1010.59、m/z 505.81(+2)。
【0137】
Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)(Ac-KRRPD-YIL-OH)の合成
NTと同じ手順を用いた。D-チロシン、100 mMのFmoc-AA溶液、およびTBTUを用いた。切断の前に、室温で10分間、大過剰の1:1:3 v/v/vの無水酢酸/DIEA/DMFを用いてその後のキャッピング反応を行った。ペプチドを方法Aにより精製した。これにより、白色でふわふわの固体が形成された(426 mg、82%収率、HPLC純度95%以上、計算値987.20、実測値987.58、m/z 494.30(+2))。
【0138】
ANG-Cys-NH2 (H-T1FFYGG6S7RGKRNNFKTEEYC-NH2)の合成
樹脂に対して5倍過剰のFmoc-AA(200 mM)を用いてANG-Cys-NH2を合成した。G6S7をプソイドプロリン時ペプチドGSとしてカップリングさせた。DMF中の1:1:4のAA/HCTU/NMMを用いて、カルボキシル末端アミドのためにNle(0.40 mmol/g)を含むRinkアミドMBHA樹脂からカップリングを実施した。樹脂に結合した生成物の切断を、室温で2時間、TFA/水/EDT/TES:94/2.5/2.5/1を用いて実行した。
【0139】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Kromasil 100-10-C18およびWaters BEHフェニル、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法C」)により2回連続で精製した。回収された画分からアセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した。これにより、白色でふわふわした固体が形成された(565 mg、28%収率、HPLC純度90%超、計算値2403.63;実測値2402.05、m/z 1202.53(+2)、802.04(+3)、601.78(+4))。
【0140】
一般的手順-MHA-NTの合成
NT(1当量)をPBS 4x(pH 7.3)に溶解し、0.1 N NaOH溶液を添加することにより溶液のpHを7.1に調整した。この溶液に、スルホ-EMCSの溶液(PBS 4x中1当量)を添加した。反応のモニタリングを分析方法を用いて行った。反応(9.0 mM、pH 7.1)をRTで2時間進行させた。0.1 N NaOH溶液を添加することにより反応液のpHを5.2から7に調整した。
【0141】
スルホ-EMCS(PBS 4x中0.3当量)を2回目に添加した後、反応を1時間繰り返した。FPLCクロマトグラフィー、AKTA explorer、30RPC樹脂、酸を含まないH2O/ACN(「方法D」)により、混合物を精製した。蒸発の前に、得られた純粋なプール画分を、水、0.1%TFAに溶液を用いてpH 4に酸性化した。
【0142】
アセトニトリルを蒸発させた後、水の容量を最小容量まで減少させ、その後のコンジュゲーション工程において直接用いた。これにより無色の溶液が得られ、278 mg、83%収率、HPLC純度98%超、計算値1867.13、実測値1866.00、m/z 623.01(+3)、934.00(+2)であると見積もられた。
【0143】
AcLys(MHA)NT(8-13)(D-Tyr11)の合成
AcLysNT(8-13)(D-Tyr11)から、MHA-NTと同じ手順を用いた。スルホ-EMCS(PBS 4x中1当量)の溶液を最初に添加した後、反応(5.0 mM、pH 6.8)を室温で2時間進行させた。これにより無色の溶液が得られ、24 mg、67%収率、HPLC純度95%以上、計算値1180.40、実測値1180.64、m/z 590.83(+2)であると見積もられた。
【0144】
上記合成方法の説明においては、以下の省略形が用いられている。
【0145】
【0146】
実施例6
ニューロテンシン類似体の特性評価
どのNT類似体がAngiopep-2へのコンジュゲーションにとって最も適合しているかを決定するために、本発明者らは、それぞれの類似体がマウスにおける低体温を誘導する能力を評価した。7.5 mg/kgのNT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-NT(8-13)、および対照のボーラス静脈内注射を実施し(図16)、120分間にわたって体温を測定した。Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)が、試験した類似体の体温における最大の低下を示した。従って、この類似体をコンジュゲーションおよびさらなる実験のために選択した。
【0147】
実施例7
ニューロテンシン類似体コンジュゲートの作製
3種のニューロテンシンおよびNT類似体コンジュゲート、NT-AN2(上記のもの)、NT(8-13)-AN2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-AN2を作製した。これらのコンジュゲートのそれぞれの構造を、以下の表に示す。
【0148】
【0149】
コンジュゲート類似体を、Protein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置およびFmoc化学上でSPPS方法を用いて合成した。予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、稀なpEをSigma-Aldrich社から、非天然D-チロシンをChemImpex社から、スルホ-EMCSをPierce Biotechnology社から購入した。アミノ酸の側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu、アルギニンについてはPbf、およびリジンについてはtBocであった。質量をESI-TOP MS (MciroTof, Bruker Daltonics)により確認した。以下の方法において用いられる全ての省略形は、上記の実施例5に定義されている。
【0150】
一般的手順-ANG-NTの合成
マレイミド含有MHA-NTとANG-Cys-NH2の遊離チオール残基を用いてコンジュゲーションを実施した。
【0151】
MHA-NTの予め調製された溶液のpHを、0.1 N NaOH溶液をゆっくり添加することにより4.2から5に調整した。MHA-NTのこの溶液に、ANG-Cys-NH2(PBS 4X、pH 7.3中の1当量)の溶液を添加した。反応のモニタリングを、分析方法を用いて行った。反応(2.5 mM、pH 5.1)を室温で1時間進行させた。FPLCクロマトグラフィー、AKTA explorer、30RPC樹脂、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法E」)により混合物を精製した。
【0152】
アセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した後、純白色の固体としてコンジュゲート化ANG-NTが得られた(412 mg、65%収率、2工程にわたって54%、HPLC純度95%超、計算値4270.76、実測値4269.17、m/z 712.54(+6)、854.84(+5)、1068.29(+4)、1424.04(+3))。
【0153】
ANG-NT(8-13)の合成
MHA-NT(8-13)についてはANG-NTと同じ手順を用いた。MHA-NT(8-13)(1当量)をDMSO(19 mM)中に溶解した。混合物を方法Bにより精製した(上記参照)。これにより、白色でふわふわした固体が得られた(597 mg、88%収率、HPLC純度95%以上、計算値3413.82、実測値3413.46、m/z 683.75(+5)、854.19(+4)、1138.91(+3))。
【0154】
ANG-AcLys-[D-Tyr11]NT(8-13)の合成
AcLys(MHA)-[D-Tyr11]NT(8-13)については、ANG-NTと同じ手順を用いた。ペプチドを方法Eにより精製した。これにより白色の固体が得られた(17 mg、24%収率、HPLC純度95%以上、計算値3584.03、実測値3583.79、m/z 598.30 (+6)、717.76 (+5)、896.70 (+4)、1195 (+3))。
【0155】
実施例8
NT類似体コンジュゲートの特性評価
低体温を誘導するNT類似体コンジュゲートの能力を決定するために、対照、コンジュゲート化されていないNT、NT-An2、NT(8-13)-An2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2のボーラスをそれぞれマウスに静脈内注射し、120分間にわたって体温をモニターした。対照とコンジュゲート化されていないNTの間にはわずかな差異があり、NT(8-13)-An2コンジュゲートについてはいくらかの効果が観察され、NT-An2とAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの両方についてはより大きい効果が観察された(図17)。
【0156】
本発明者らはまた、1 mg/kgのコンジュゲート化されていないAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)と6.25 mg/kgのAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの体温を低下させる能力を比較した。これらの実験から、前記コンジュゲートが、コンジュゲート化されていない化合物よりも高い程度で体温を低下させることが観察された(図18)。
【0157】
Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートのボーラス注射(6.25 mg/kg)、次いで、1時間後に6.25 mg/kgのこのコンジュゲートの注入も実施した(図19)。
【0158】
実施例9
NT受容体NTSR1へのNTおよびNT類似体およびそのコンジュゲートの結合
NT、NT類似体、およびNT、またはNT類似体のコンジュゲートをさらに特性評価するために、高親和性NTSR1受容体を発現するHT29細胞(ヒト結腸腺癌悪性度II細胞系)を用いる競合結合アッセイを用いた。初期試験として、本発明者らは、[3H]-ニューロテンシンが40 nMの未標識のNTにより前記細胞から完全に置換され得ることを証明することができた(図20)。次いで、本発明者らは、0.4 nM〜40 nMで用量応答試験を実施した。これらの結果から、本発明者らは、NTがこの系において1.4 nMのIC50を有することを決定した(図21)。
【0159】
次いで、本発明者らは、NTの結合とAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2の結合とを比較した。この実験から、この類似体の結合が、天然のNTよりも1000倍以上弱いことが観察された(図22に示されるように、3.5 nMと5389 nMのIC50)。
【0160】
これらの方法を用いて、本発明者らは、ニューロテンシン、NT類似体、およびコンジュゲートの間で、結合と誘導された体温低下の両方を比較した。これらの結果を以下の表に提示する。NTおよびANG-NT(すなわち、NT-An2)に関して異なる結果は、各化合物の異なる産生バッチに由来する結果である。
【0161】
【0162】
他の実施形態
本明細書に記載の、2009年7月14日、2009年5月26日および2008年12月5日にそれぞれ提出された米国特許仮出願第61/225,486号、第61/181,144号、及び第61/200,947号などの全ての特許、特許出願、および刊行物は、あたかもそれぞれ独立した特許、特許出願、または刊行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドベクターに結合したニューロテンシン受容体アゴニスト、ニューロテンシン、またはニューロテンシンアナログを含む化合物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロテンシンは種々の生物学的活性を有する13アミノ酸ペプチドである。中枢神経系へのニューロテンシン注射は、抗精神病性のおよび体温低下作用の他、種々の効果を生じる。しかしながらニューロテンシンの静脈内送達はこのような結果をもたらさない。なぜならば血液脳関門(BBB)が、末梢性ニューロテンシンによる中枢神経系(CNS)にある受容体への到達を効果的に阻むからである。
【0003】
体温の低減(低体温法)は、損傷に起因する脳損傷(例えば神経、脳もしくは脊髄損傷または卒中を負った被験体)に対する最良の神経保護方法の一つである。本発明以前には、体温を低減する方法は適切ではなかった。体温を低減させる物理的手段としては、外的方法の使用(例えば冷却用ブランケット、冷却用ヘルメット、氷嚢、および氷浴)ならびに内的方法の使用(例えば冷却プローブ、冷流体の注入)が挙げられる。こうした技法は複雑であり高額となり得るものであり、体温低減の開始に遅延が生じうる。またこうした方法を用いると低体温の持続的な維持は難しいことがある。最後にこうした方法は深刻な震えを引き起こす可能性があり、そのため麻痺薬または鎮痛薬などの併用処方が必要となりうる。低体温療法が有益となりうる米国で毎年発生する卒中(795,000)、心臓が原因の心不全(325,000)、深刻な外傷性頭部損傷 (300,000)および心臓切開手術(694,000)の数字に鑑みれば、低体温療法を誘導する改善された方法が必要とされているといえる。
【0004】
脳病理学に関する新たな治療法の開発において、BBBは、CNSの障害を治療するための薬物の使用の可能性に対する主要な障害と考えられる。CNS剤の世界市場は2006年において680億ドルであり、米国では心血管疾患のほぼ2倍の人々がCNS疾患を患っているにも関わらず、それは心血管剤の世界市場の約半分であった。この不均衡の理由は、1つには、すべての潜在的CNS剤の98%以上が血液脳関門を通過しないことである。さらに、世界的規模のCNS剤開発の99%以上はCNS剤の発見のみに専念し、CNS剤の送達を目的としているものは1%に満たない。これは、なぜ主要な神経疾患に利用可能な治療上の選択肢が不足しているかを説明することができる。
【0005】
脳は、2つの障壁系:BBBおよび血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在によって潜在的毒物から遮断される。BBBは、その表面積がBCSFBの表面積の約5000倍以上であるため、血清リガンドの取り込みのための主要経路であると考えられる。BBBを構成する脳の内皮細胞は、CNSの多くの障害に対する潜在的薬剤の使用への主要な障害である。原則として、脂溶性低分子のみがBBBを越えて、すなわち、循環している全身の血液から脳へ通過し得る。より大きなサイズまたはより高い疎水性を有する多くの薬剤は、CNS標的において高い効力を示すが、これらの薬剤はBBBを効率的に通過することができないため、動物においては有効ではない。かくして、ペプチドおよびタンパク質治療剤は通常、これらの薬剤に対する脳毛細血管内皮壁のごくわずかな透過性のために、血液から脳への輸送から排除される。脳毛細血管内皮細胞(BCEC)は、密着結合によってしっかりと密封されており、他の器官の毛細血管と比較して窓(fenestrae)およびエンドサイトーシス小胞をほとんど持たない。BCECは、細胞外マトリックス、アストロサイト、周皮細胞、およびミクログリア細胞に囲まれている。内皮細胞のアストロサイト足突起との密接な結合および毛細血管の基底膜は、血液脳物質交換の厳密な制御を可能にするBBB特性の発達および維持にとって重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ニューロテンシンのその標的部位への送達の改善が必要とされている。
【0007】
ペプチドニューロテンシンには、体温を低減させることを含め、いくつかの臨床的用途がある。しかしながら、このような用途の多くでは、該ペプチドが血液脳関門(BBB)を超えることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ニューロテンシンは、それ単独ではBBBを超えることができない。従って本発明者らは、(a)ニューロテンシン、ニューロテンシンアナログ(例えばpELYENKPRRPYIL-OH、式中「pE」はL-ピログルタミン酸を表す、ヒトニューロテンシン(8-13) (NT(8-13))、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、pE-Lys-NT(8-13),)、またはニューロテンシン受容体アゴニストからなる群より選択されるポリペプチド治療剤および(b)血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞の中へと該ペプチド治療剤を輸送することのできるペプチドベクターを含む化合物を合成した。こうした化合物は、ニューロテンシン活性の増大が望まれる場合の障害の治療において有用であり、特に該ポリペプチド治療剤がBBBを超えるまたは特定の種類の細胞中へと輸送されることが望まれるときにそうである。ある特定の例では、該化合物には、体温を低下させるため(例えば神経保護を必要とするおよび/または卒中、心発作、神経損傷 (例えば脊髄、頭部、または脳損傷、例えば外傷性脳損傷を経験した、または心臓手術もしくは心臓切開手術のような大手術を受ける被験体において)、神経障害 (例えば統合失調症、強迫神経症、またはトゥレット症候群)を罹患している患者を治療するため、または糖尿病および肥満のような代謝障害を罹患している被験体を治療するために使用することのできるニューロテンシンまたはニューロテンシン断片が含まれる。別の事例では、該化合物は被験体において血圧を増大または低減することができる。該化合物は単一の、または最初の投与から少なくとも1、2、3、4、6、8、10、12、15、18、21、24、30、36、または48時間の期間に渡る注入により、低体温を誘導しうる。該ペプチドベクターは、該ポリペプチド治療剤を、血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び筋肉)内へと輸送することができる。コンジュゲートがBBBを超えるようにまたは特定の種類の細胞へと標的化されていることから、コンジュゲート化されていないペプチド治療剤と比較して、より低用量または低頻度でも治療的効力が達成可能であり、したがって副作用の重症度または発生率を低減させおよび/または効力を増大させる。化合物はまた、コンジュゲート化されていないペプチド治療剤と比較して、安定性の増大、薬物動態の改善またはin vivoでの分解の低減を示しうる。
【0009】
したがって本発明の第1の態様は、以下の式を有する化合物を特徴とする、
A-X-B
(式中、Aは、血液脳関門 (BBB)を超えてまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)内へと輸送されうるペプチドベクターであり、Xはリンカーであり、Bはニューロテンシン、ニューロテンシンアナログ(例えばpELYENKPRRPYIL-OH、ここでpEはピログルタミン酸である)、またはニューロテンシン受容体アゴニスト(例えば本明細書で記載されているもの)からなる群より選択されるペプチド治療剤である)。BBBを超えるまたは細胞内への輸送は、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、200%、500%、750%、1000%、1500%、2000%、5000%、または10,000%増大しうる。化合物は実質的に純粋でありうる。該化合物は製薬上許容可能な担体(例えば本明細書に記載のもの)と製剤化されうる。
【0010】
特定の実施形態では、Bはヒトニューロテンシンにまたはヒトニューロテンシン断片(例えばニューロテンシン(8-13)およびニューロテンシン(9-13))に実質的に同一なポリペプチドを含む。特定の実施形態では、ニューロテンシンの位置1におけるグルタミン酸は、ピログルタミン酸に置き換えられる。特定の実施形態では、該ニューロテンシンアナログはヒトニューロテンシンと実質的に同一である。特定の実施形態では、Bは、ニューロテンシン受容体(ニューロテンシン受容体1型 (NTR1)、ニューロテンシン 受容体2型 (NTR2)、ニューロテンシン受容体3型 (NTR3))のいずれかに対してアゴニストとして作用する。特定の実施形態では、該ニューロテンシン受容体アゴニストは、他の三種の受容体の少なくとも1つと比較して、NTR1、NTR2、またはNTR3の1つに対し選択的である(例えば少なくとも2、5、10、50、100、500、1000、5000、10,000、50,000、もしくは100,000を超える程度まで結合しおよび/または活性化する)。
【0011】
特定の実施形態では、該化合物は次の構造を有する、
【化1】
(式中、pELYENKPRRPYIL配列のリシンに結合した-(CH2)4NH-部分は当該リシンの側鎖を表し、AN2Cys配列のC末端システインに結合した-CH2S-部分は、当該システインの側鎖を表し、かつAN2はAngiopep-2 (配列番号97)の配列を表す。
【0012】
別の態様において、本発明は、化合物A-X-Bを作製する方法を特徴とする。一実施形態においては、前記方法は、ペプチドベクター(A)をリンカー(X)にコンジュゲートさせ、ペプチドベクター-リンカー(A-X)をペプチド治療剤(B)にコンジュゲートさせることによって、化合物A-X-Bを形成させることを含む。別の実施形態においては、前記方法は、ペプチド治療剤(B)をリンカー(X)にコンジュゲートさせ、ペプチド治療剤/リンカー(X-B)をペプチドベクター(A)にコンジュゲートさせることによって、化合物A-X-Bを形成させることを含む。別の実施形態においては、前記方法は、ペプチドベクター(A)をペプチド治療剤(B)にコンジュゲートさせ、ここでAまたはBは必要に応じて、リンカー(X)を含み、化合物A-X-Bを形成させることを含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、化合物A-X-B(式中、化合物はポリペプチドである)をコードする核酸分子を特徴とする。前記核酸分子をプロモーターに機能し得る形で連結してもよいし、またそれは核酸ベクターの一部であってもよい。ベクターは、原核細胞(例えば、細菌細胞)または真核細胞(例えば、酵母もしくはヒト細胞などの哺乳動物細胞)などの細胞中にあってもよい。
【0014】
別の態様においては、本発明は、式A-X-B(式中、A-X-Bはポリペプチドである)の化合物を作製する方法を特徴とする。一実施形態においては、前記方法は、細胞中で前記態様に記載の核酸ベクターを発現させて、前記ポリペプチドを産生させること;および該ポリペプチドを精製することを含む。
【0015】
別の態様においては、本発明は、被験体の体温を低減する方法を特徴とする。該方法は、第1の態様の化合物を被験体の体温を低減させるために十分な量で投与することを含む。被験体は卒中、脳虚血、心虚血、または脳損傷のような神経損傷(例えば外傷性脳損傷)もしくは脊髄損傷を罹患しているかまたは最近罹患しており、または神経保護を必要としうる。被験体は、悪性高体温症を罹患しているかまたは手術(例えば心手術のような大手術)を受けているもしくは手術を受けるところでありうる。
【0016】
別の態様では、本発明は第1の態様の化合物をそれを必要とする被験体に投与することによる疼痛の低減または鎮痛を誘導する方法を特徴とする。該被験体は、急性の疼痛(例えば機械的疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛、および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択されるもの)を患っている者でありうる。他の実施形態では、被験体は、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛を罹患している。
【0017】
別の態様では、本発明は、第1の態様の化合物(例えば有効な量)を被験体に投与することにる、被験体における疼痛感受性を低減する方法を特徴とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、被験体における代謝障害を(例えば予防的に)処置する方法を特徴とする。該方法は、該代謝障害を治療するのに十分な量の第1の態様の化合物を被験体に投与することを含む。前記代謝障害は、糖尿病(例えば、I型もしくはII型)、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧でありうる。被験体は体重超過、肥満または過食症でありうる。
【0019】
別の態様においては、本発明は、不安、強迫神経症、トゥレット症候群、運動障害、攻撃性、精神病、発作、パニック発作、ヒステリー、睡眠障害、アルツハイマー病、およびパーキンソン病からなる群より選択される障害を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。前記方法は、前記障害を治療または予防するのに十分な量の本発明の第1の態様に記載の化合物を被験体に投与することを含む。精神病は統合失調症でありうる。
【0020】
別の態様では、本発明は、それを必要とする被験体における薬物依存を治療または薬物乱用を低減する方法を特徴とする。薬物はアンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、またはアレコリンのような精神刺激薬でありうる。他の実施形態では、該薬物はアルコールである。
【0021】
別の態様では、本発明は、被験体(例えば高血圧または低血圧のいずれかを罹患している被験体)における血圧をモジュレート(例えば増加または低減)する方法を特徴とする。
【0022】
被験体への化合物の投与を含む任意の方法において、十分量は、ペプチドベクターにコンジュゲートされていない場合、同等の用量のペプチド治療剤(例えば、本明細書に記載の任意のもの)にとって必要な量の90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.1%未満であってよい。十分量は、ペプチドベクターにコンジュゲートされていない場合、有効量のポリペプチド治療剤の投与と比較して、副作用を減少させることができる。被験体は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。
【0023】
上記態様のいずれかにおいて、ペプチドベクターは、表1に記載の任意の配列と実質的に同一のポリペプチド、またはその断片であってよい。特定の実施形態においては、ペプチドベクターは、Angiopep-1 (配列番号67)、Angiopep-2 (配列番号97)、Angiopep-3 (配列番号107)、Angiopep-4a (配列番号108)、Angiopep-4b (配列番号109)、Angiopep-5 (配列番号110)、Angiopep-6 (配列番号111)、またはAngiopep-7 (配列番号112)の配列を有する。前記ペプチドベクターまたはコンジュゲートを、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のいずれか1、2、3、4、もしくは5種)に効率的に輸送するか、またはそれは哺乳動物のBBBを効率的に横断することができる(例えば、Angiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、-5、および-6)。別の実施形態においては、ペプチドベクターまたはコンジュゲートは、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のいずれか1、2、3、4、もしくは5種)に進入することができるが、BBBを効率的に横断することはできない(例えば、Angiopep-7などのコンジュゲート)。ペプチドベクターは、任意の長さのもの、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、もしくは500アミノ酸、またはこれらの数の間の任意の範囲であってよい。特定の実施形態においては、前記ペプチドベクターは、10〜50アミノ酸長である。ポリペプチドを、組換え遺伝子技術または化学合成により製造することができる。
【表1】
【0024】
ポリペプチド番号5、67、76および91は、それぞれ、配列番号5、67、76および91の配列を含み、C末端でアミド化されている。ポリペプチド107、109および110は、それぞれ、配列番号97、109および110の配列を含み、N末端でアセチル化されている。
【0025】
上記態様のいずれかにおいて、ペプチドベクターは、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
(式中、X1〜X19の各々(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)は、独立に、任意のアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValなどの天然アミノ酸)であるか、または存在せず、X1、X10およびX15のうちの少なくとも1個(例えば、2個もしくは3個)はアルギニンである)
を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、X7はSerもしくはCysであるか;またはX10およびX15はそれぞれ、独立にArgもしくはLysである。いくつかの実施形態においては、X1〜X19の残基は、包括的に、配列番号1〜105および107〜116(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれか1つの任意のアミノ酸配列と実質的に同一である。いくつかの実施形態においては、アミノ酸X1〜X19のうちの少なくとも1個(例えば、2、3、4もしくは5個)はArgである。いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドは、該ポリペプチドのN末端、該ポリペプチドのC末端、またはその両方に1個以上のさらなるシステイン残基を有する。
【0026】
上記態様のいずれかの特定の実施形態においては、ペプチドベクターまたはペプチド治療剤を改変する(例えば、本明細書に記載のように)。前記ペプチドまたはポリペプチドを、アミド化、アセチル化するか、またはその両方を行うことができる。そのような改変を、ポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端で行うことができる。前記ペプチドもしくはポリペプチドはまた、本明細書に記載の任意のポリペプチドのペプチド模倣物質(例えば、本明細書に記載のもの)を含んでもよい。前記ペプチドまたはポリペプチドは、多量体形態、例えば、二量体形態(例えば、システイン残基を介してジスルフィド結合により形成される)にあってもよい。
【0027】
特定の実施形態では、ペプチドベクターまたはポリペプチド治療剤(例えばニューロテンシン)は、本明細書に記載のアミノ酸配列を有するが、ただし少なくとも1つのアミノ酸置換 (例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12の置換)、挿入、または欠失を有するか、あるいは本明細書に記載のアミノ酸配列と実質的に同一である。該ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、1〜12、1〜10、1〜5、または1〜3のアミノ酸置換、例えば、1〜10(例えば9、8、7、6、5、4、3、2まで)のアミノ酸置換を有しうる。アミノ酸置換は、保存的または非保存的でありうる。例えば、該ペプチドベクターは配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7のいずれかのアミノ酸配列の位置1、10、および15に対応する位置の1、2または3箇所にアルギニンを有しうる。特定の実施形態では、該ポリペプチド治療剤はシステインまたはリシン置換または付加を任意の位置の有しうる(例えばN-またはC-末端位置でのリシン置換)。
【0028】
上記態様のいずれかにおいて、前記化合物は特に、配列番号1〜105および107〜116のいずれかを含むか、またはそれからなるポリペプチド(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)を含まなくてもよい。いくつかの実施形態においては、本発明のポリペプチドおよびコンジュゲートは、配列番号102、103、104、および105のポリペプチドを含まない。
【0029】
上記態様のいずれかにおいて、リンカー(X)は、当業界で公知であるか、または本明細書に記載の任意のリンカーであってよい。特定の実施形態においては、前記リンカーは、共有結合(例えば、ペプチド結合)、化学連結剤(例えば、本明細書に記載のもの)、アミノ酸またはペプチド(例えば、2、3、4、5、8、10個以上のアミノ酸)である。特定の実施形態においては、前記リンカーは、式:
【化2】
(式中、nは2〜15の整数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15)であり;およびYはA上のチオールであり、ZはB上の一次アミンであるか、またはYはB上のチオールであり、ZはA上の一級アミンである)
を有する。
【0030】
「ペプチドベクター」とは、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、もしくは筋肉)に、またはBBBを通過して輸送することができるポリペプチドまたはポリペプチド模倣物質などの化合物または分子を意味する。このベクターを、治療剤に結合させる(共有的もしくは非共有的)か、またはコンジュゲートさせることにより、該治療剤を特定の細胞型に、またはBBBを通過して輸送することができる。特定の実施形態においては、前記ベクターは、癌細胞もしくは脳の内皮細胞上に存在する受容体に結合することによって、トランスサイトーシスにより癌細胞中に、またはBBBを通過して輸送することができる。このベクターは、細胞またはBBBの完全性に影響することなく、高レベルの経内皮輸送が得られる分子であってよい。前記ベクターは、ポリペプチドまたはペプチド模倣物質であってよく、天然のものであっても、または化学合成もしくは組換え遺伝子技術により製造されたものであってもよい。
【0031】
「ニューロテンシン受容体アゴニスト」というとき、これは対照化合物と比較して少なくとも1つのニューロテンシン受容体を活性化することのできる化合物(例えばポリペプチド)を意味する。ニューロテンシン受容体活性にはイノシトールリン酸の産生が含まれる。
【0032】
「実質的に同一」とは、ある参照アミノ酸配列または核酸配列と、少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、またはさらには99%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較する長さは一般に少なくとも4 (例えば少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、または100)アミノ酸である。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、よりこのましくは120ヌクレオチドまたは完全長である。本明細書において、元のポリペプチドのアミノ酸と同一または類似であるアナログのアミノ酸同士の間にギャップが存在しうると理解されたい。ギャップはアミノ酸を含まないか、または元のポリペプチドと同一でもなく類似でもないアミノ酸1以上を含みうる。本発明のベクター(ポリペプチド)の生物学的に活性なアナログは本明細書に包含される。同一性パーセントは、例えばWisconsin Genetics Software Package Release 7.0のnアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTAを用いて、初期設定のギャップウェイトを用いることにより決定することができる。
【0033】
被験体における疾患、障害、または症状を「治療すること」とは、治療剤を被験体に投与することにより、疾患、障害、または症状の少なくとも1種の症候を減少させることを意味する。
【0034】
被験体における疾患、障害、または症状を「予防的に治療すること」とは、疾患、障害、または症状の発生の前に、治療剤を被験体に投与することにより、疾患、障害または症状の発生頻度または重症度を低下させること(例えば、防止すること)を意味する。
【0035】
一例においては、ある障害について治療しようとする被験体は、医師がそのような症状を有すると診断した被験体である。本明細書に記載のものなどの任意の好適な手段により、診断を実施することができる。症状の発生を予防的に治療しようとする被験体は、そのような診断を受けていても、または受けていなくてもよい。当業者であれば、本発明の被験体を標準的な試験にかけるか、または試験なしに、1個以上の危険因子の存在に起因する高危険度として同定することができることを理解できるであろう。
【0036】
「代謝障害」とは、被験体の代謝の変化の結果生じる任意の病理学的症状を意味する。そのような障害としては、例えば、高血糖症をもたらすグルコース恒常性の変化の結果生じるものが挙げられる。本発明に従えば、グルコースレベルの変化は、典型的には、健康な個体におけるそのようなレベルと比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%ものグルコースレベルの増加である。代謝障害としては、肥満および糖尿病(例えば、I型糖尿病、II型糖尿病、MODY、および妊娠性糖尿病)、満腹、ならびに加齢による内分泌異常が挙げられる。
【0037】
「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0038】
「相当する用量」とは、コンジュゲート化されていないポリペプチド治療剤と比較して本発明の化合物中のペプチド治療剤と同じモル量を達成するのに必要とされる本発明の化合物の量を意味する。例えば、1.0 μg ニューロテンシンの相当する用量とは、約2.5 μgの本明細書に記載のニューロテンシン/Angiopep-2-Cys-NH2 コンジュゲートである。
【0039】
「BBBを通過して効率的に輸送される」ポリペプチドとは、少なくともAngiopep-6と同様に効率的にBBBを通過する(すなわち、参照により本明細書に組み入れられるものとする、2007年5月29日に提出された米国特許出願第11/807,597号に記載のin situ脳かん流アッセイにおいて、Angiopep-1(250 nM)よりも38.5%以上高い)ことができるポリペプチドを意味する。従って、「BBBを通過して効率的に輸送されない」ポリペプチドは、より低いレベルで脳に輸送される(例えば、Angiopep-6よりも低い効率で輸送される)。
【0040】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ポリペプチドまたは化合物とは、ポリペプチドまたは化合物が、対照物質より、またはコンジュゲートの場合、コンジュゲートされていない薬剤と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、もしくは10,000%)を超える程度で、その細胞型に蓄積することができる(細胞への輸送の増加、細胞からの排出の減少、またはその組合せのいずれかによる)ことを意味する。そのような活性は、参照により本明細書に組み入れられるものとする国際特許出願公開第WO 2007/009229号に詳細に記載されている。
【0041】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】図1Aは、実施例に記載の分析方法を用いる、精製前(図1A)のECMS-ニューロテンシン化合物(ECMS-NT)を示すクロマトグラムである。
【図1B】1Bは、実施例に記載の分析方法を用いる、精製後(図1B)のECMS-ニューロテンシン化合物(ECMS-NT)を示すクロマトグラムである。
【図2】30 mlの30RPC樹脂を充填したカラムを用いるAKTA-エクスプローラー上でのECMS-NTの精製を示すクロマトグラムである。
【図3A】図3Aは、精製前(図3A)のニューロテンシンAngiopep-2-Cysアミドコンジュゲート(NT-AN2Cys-NH2またはNT-An2)を示すクロマトグラムである。このクロマトグラムは実施例に記載の分析方法を用いて得られたものである。
【図3B】図3Bは、精製後(図3B)のニューロテンシンAngiopep-2-Cysアミドコンジュゲート(NT-AN2Cys-NH2またはNT-An2)を示すクロマトグラムである。このクロマトグラムは実施例に記載の分析方法を用いて得られたものである。
【図4】30 mlの30RPC樹脂を充填したカラムを用いるAKTA-エクスプローラー上でのNT-An2の精製を示すクロマトグラムである。
【図5】NT-An2による低体温誘導を示すグラフである。マウスに、生理食塩水(対照)、NT(1 mg/kg)または2.5 mg/kgもしくは5.0 mg/kg(1および2 mg/kg用量のNTと同等)のNT-An2を投与した。直腸温度を、静脈内注射後、90分間モニターした。
【図6】5、15または20 mg/kgのNT-An2の投与の際のマウスにおける体温の効果を示すグラフである。
【図7】5、10または20 mg/kgの異なる調製物のNT-An2の投与の際のマウスにおける体温の効果を示すグラフである。
【図8】NTおよびNT-An2のin situ脳かん流を示すグラフである。ヨウ素化後、マウスの脳を、指示される時間、Krebsバッファー中の[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体を用いて頸動脈中でかん流した。指示される時間の後、脳をさらに30秒間かん流して、過剰の両化合物を洗浄除去した。脳中の[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体の両方を、βカウンターを用いて定量した。結果を、時間の関数として、脳中の容量の分布(ml/100 g)に関して表した。
【図9】図6について記載されたin situ脳かん流後のNTおよびNT-An2の脳区画化を示すグラフである。脳毛細血管の枯渇を、標準的な手順に従ってデキストランを用いて実施した。脳、毛細血管、および柔組織に存在する[125I]-NTまたは[125I]-NT-An2誘導体の両方を定量し、分布容量(ml/100 g/2分)を報告する。
【図10】NT-An2の5 mg/kgのボーラス注射を投与した後、1時間後に5 mg/kg/30分(すなわち、10 mg/kg/時)の速度でNT-An2を2.5時間注入したマウスの体温を示すグラフである。
【図11】20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時で3.5時間、NT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。
【図12】20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時でNT-An2を注入し、2.5時間後にこれを40 mg/kg/時に増加させたマウスの体温を示すグラフである。
【図13】NT-An2の20 mg/kgの静脈内ボーラス注射を投与した直後、20 mg/kg/時でNT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。
【図14】40 mg/kgのNT-An2を静脈内ボーラス注射を投与した直後、40 mg/kg/時でNT-An2を注入したラットの体温を示すグラフである。これは、実験の12時間について体温の持続的低下をもたらした。
【図15】化合物の投与の直前および15分後の対照マウス(左)、20 mg/kgのNT-An2を受容するマウス(中央)、および1 mg/kgのブプレノルフィン(右)を受容するマウスにおける足なめ応答のマウスにおけるホットプレート試験における待ち時間を示すグラフである。
【図16】7.5 mg/kgのNT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-NT(8-13)、または対照のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。これらの類似体のうち、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)は体温の最も大きい低下をもたらすことが観察された。
【図17】対照、NT、NT-An2、NT(8-13)-An2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。体温の最も大きい低下は、NT-An2およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートについて観察された。
【図18】Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13) (1 mg/kg)またはAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2 (6.25 mg/kg)のボーラス静脈内注射を受容するマウスの体温を示すグラフである。An2コンジュゲート化分子は、コンジュゲート化されていない分子より高い程度まで体温を低下させることが観察された。
【図19】Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの6.25 mg/kgのボーラス静脈内注射、次いで60分後に6.25 mg/kg/時の該コンジュゲートの注入を受容するマウスの体温を示すグラフである。
【図20】4℃または37℃で40 nMのNTの存在下または非存在下でNTSR1を発現するHT29細胞への放射標識されたNT([3H]-NT)の結合を示すグラフである。
【図21】0.4 nM〜40 nMの濃度のNTの存在下でのHT29への[3H]-NTの結合を示すグラフである。
【図22】NTまたはAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)の存在下でのHT29細胞への[3H]-NTの結合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明者らは、血液脳関門(BBB)を超えるまたは特定の種類の細胞(例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)に入る能力の増強されたニューロテンシンコンジュゲートを開発した。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の化合物が、コンジュゲート化されていないニューロテンシンペプチドと比較して、ニューロテンシン応答、例えば体温の低減を、引き起こすのにはるかに効果的であることを示した。本発明の化合物はより高い応答を示すため、コンジュゲート化されたペプチドは低用量で効果的であり、副作用を低減または消去するために使用することができる。あるいはまた、観察された効力の増大は、より高い用量を用いることでより大きな治療効果をもたらしうる。実際に、これらの化合物は、
特定の従来の体温低下技術と異なり、震えを誘発することなく、持続性の体温低下応答を(例えば少なくとも3、4、5、6、8、10、12、15、18、21、24、30、36、または48時間の期間にわたり)迅速に誘導する能力を有する。
【0044】
ニューロテンシン
ニューロテンシン(NT)は、中枢神経系および胃腸管に存在する13アミノ酸のペプチドである。脳において、NTは、ドーパミン作動性受容体および他の神経伝達物質系と関連している。末梢NTは、消化系および心臓血管系の両方に対してパラクリンペプチドおよびエンドクリンペプチドとして作用する。脳においてその生理学的作用を発揮するためには、NTは脳に直接注射または送達されなければならない。なぜならばNTはBBBを超えることができず、全身投与後には迅速にペプチダーゼにより分解されるからである。前臨床的薬理学的研究(そのほとんどはNTを脳に直接注射するものである)によると、NT受容体のアゴニストは、精神病、統合失調症、パーキンソン病、疼痛、および神経刺激薬の乱用を含む神経精神病学的症状の治療に臨床的に有用であろうことが強く示唆されている。特に、種々の動物研究では、NTの脳室内注射は痛覚抑制実験において低体温および鎮痛をもたらした。
【0045】
ペプチド治療剤は、ニューロテンシンまたはそのアナログでありうる。ヒトニューロテンシンは配列QLYENKPRRPYILを有する13アミノ酸のペプチドである。例示的なニューロテンシンアナログとしては、(VIP-ニューロテンシン)ハイブリッドアンタゴニスト、アセチルニューロテンシン(8-13)、JMV 1193、KK13 peptide、ニューロメジンN、ニューロメジンN前駆体、ニューロテンシン(1-10)、ニューロテンシン(1-11)、ニューロテンシン(1-13)、ニューロテンシン(1-6)、ニューロテンシン(1-8)、ニューロテンシン(8-13)、Asp(12)-ニューロテンシン(8-13)、Asp(13)-ニューロテンシン(8-13)、Lys(8)-ニューロテンシン(8-13)、N-メチル-Arg(8)-Lys(9)-neo-Trp(11)-neo-Leu(12)-ニューロテンシン(8-13)、ニューロテンシン(9-13)、ニューロテンシン 69L、Arg(9)-ニューロテンシン、アジドベンゾイル-Lys(6)-Trp(11)-ニューロテンシン、Gln(4)-ニューロテンシン、ヨード-Tyr(11)-ニューロテンシン、ヨード-Tyr(3)-ニューロテンシン、N-α-(フルオレセイニルチオカルバミル)グルタミル(1)-ニューロテンシン、Phe(11)-ニューロテンシン、Ser(7)-ニューロテンシン、Trp(11)-ニューロテンシン、Tyr(11)-ニューロテンシン、rat NT77、PD 149163、proニューロテンシン、stearyl-Nle(17)-ニューロテンシン(6-11)VIP(7-28)、99mTc-NT-XI、TJN 950、および血管作動性腸管ペプチド-ニューロテンシンハイブリッドが挙げられる。
【0046】
他のニューロテンシンアナログとしては、NT64L [L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT72D [D-Lys9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT64D [D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT73L [D-Lys9,L-neo-Trp11]NT(9-13)、NT65L [L-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT73D [D-Lys9,D-neo-Trp11]NT(9-13)、NT65D [D-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT74L [DAB9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT66L [D-Lys8、L-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT74D [DAB9,Pro,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、NT66D [D-Lys8、D-neo-Trp11、tert-Leu12]NT(8-13)、NT75L [DAB8 L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT67L [D-Lys8、L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT75D [DAB8,D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT67D [D-Lys8、D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT76L [D-Orn9,L-neo-Trp11]NT(8-13)、NT69L [N-メチル-Arg8,L-Lys9 L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT76D [D-Orn9,D-neo-Trp11]NT(8-13)、NT69D [N-メチル-Arg8 L-Lys9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT77L [D-Orn9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT71L [N-メチル-Arg8,DAB9 L-neo-Trp11,tert-leu12]NT(8-13)、NT77D [D-Orn9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT71D [N-メチル-Arg8,DAB9,D-neo-Trp11,tert-leu12]NT(8-13)、NT78L [N-メチル-Arg8,D-Orn9 L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、NT72L [D-Lys9,L-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(9-13)、およびNT78D [N-メチル-Arg8,D-Orn9,D-neo-Trp11,tert-Leu12]NT(8-13)、ここでneo-Trpは(2-アミノ-3-[1H-インドリル]プロパン酸)が挙げられる。他のニューロテンシンアナログとしては、β-ラクトテンシン (NTR2選択的)、JMV-449、およびPD-149またはPD-163 (NTR1選択的; ニューロテンシンの還元されたアミド結合8-13断片)が挙げられる。
【0047】
さらに他のNTアナログとしては、モルモットNT、[Gln4]NT、[D-Trp11]NT、NT(9-13)、frog NT、[Gln4]NT、[D-Phe11]NT、[D-Trp11]NT、[D-Tyr11]NT、Ac-NT(8-13)、[Lys8,9]NT(8-13)、[3,5-diBr-Tyr11]NT、Nα-Acetyl-NT(8-13)、Nα,Nε-di-Boc-[Lys9]NT(9-13) メチルエステル、Boc-[Lys9]NT(9-13)-メチルエステル、[Trp11]NT、[Dab9]NT (8-13)、[Lys9,Trp11,Glu12]NT(8-13) (シクロ (-Arg-Lys-Pro-Trp-Glu)-Leu-OH)、[Lys8-(置換記号)-Lys9]NT(8-13) (ここで該式中の置換記号はペプチド結合のCH2NH置換を示す)、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-(4-oxo)Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-(2,6diMe)Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-mTyr-tBuGly-Leu-OH、ここでmTyrはメタチロシンを示しすなわちTyrの-OH基がメタ位にあることを表す、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-PipGly-Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-AzeCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-AzeCA-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-Achc-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Cpa-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-Cha-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-tBuGly-tBuAla-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-PipCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-DPipCA-Tyr-tBuGly-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-Tyr-Chg-Leu-OH、DTPA-DLys-Pro-Gly(PipAm)-Arg-Pro-DTyr-tBuGly-Leu-OH、並びに米国特許出願公開第2009/0062212号に記載のものである、D-Lys L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile D-Leu、L-Arg L-Arg Gly L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Ala L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Leu L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Val L-Leu、D-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Arg D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Arg L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys D-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Lys L-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Lys D-Lys L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Orn D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAB L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAB L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAB DAB L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro CHA L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-3,2-Nal-L-Ile L-Leu、L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Orn L-Pro D-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro D-Tyr L-Ile L-Leu、DAP L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAP L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、DAP DAP L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-homoArg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-homoArg L-homoArg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-homoArg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-TIC L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-TIC L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro D-3,2-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pip L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro BPA L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu BPA L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg BPA L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、L-Arg DAB L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg D-Orn L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、p-Glu L-Leu L-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-3,1-Nal L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、L-Arg L-Arg L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、D-Lys L-Arg L-Pro L-Trp L-Ile L-Leu、N- メチル-Arg L-Lys L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、p-Glu L-Leu L-ヨード-Tyr L-Glu L-Asn L-Lys L-Pro L-Arg L-Arg L-Pro L-Tyr L-Ile L-Leu、N-メチル-Arg DAB L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、D-Lys L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、DAB L-Arg L-Pro L-neo-Trp L-Ile L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、L-Arg D-Orn L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル-Arg D-Orn L-Pro L-neo-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル-Arg D-Orn L-Pro L-Trp tert-Leu L-Leu、N-メチル Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal tert-Leu L-Leu、およびN-メチル-Arg L-Arg L-Pro D-3,1-Nal L-Ile L-Leuが挙げられる。略記号は次のとおりである: BPA = ベンゾイルフェニルアラニン; CHA = シクロヘキシルアラニン; DAB = ジアミノ酪酸; DAP = ジアミノプロピオン酸; homoArg = ホモアルギニン; Orn = オルニチン; Nal = ナフチル-アラニン; Pip = 1-ピペコリン酸; neo-Trp = ネイティブトリプトファンの部位異性体 (Fauq ら、Tetrahedron: Asymmetry 9:4127-34 (1998)); TIC = 1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)。
【0048】
他のニューロテンシンアナログとしては、改変アミノ酸(例えば本明細書に記載のもの)を有するものが挙げられる。ニューロテンシンアナログは、他のNTR受容体の少なくとも1つまたは両方と比較して、NTR1、NTR2、またはNTR3(例えばNTR1、NTR2、またはNTR3の少なくとも1つと、少なくとも2、5、10、50、100、500、1000、5000、10,000、50,000、または100,000倍強く、結合するまたはそれを活性化すること)について選択されうる。
【0049】
改変型のポリペプチド治療剤
本明細書に記載の任意のポリペプチド治療剤(例えば、ニューロテンシン、ニューロテンシンアナログまたはニューロテンシン受容体アゴニスト)を、改変してもよい(例えば、本明細書に記載のように、または当業界で公知のように)。米国特許第6,924,264号に記載のように、ポリペプチドをポリマーに結合させて、その分子量を増加させることができる。ポリマーの例としては、ポリエチレングリコールポリマー、ポリアミノ酸、アルブミン、ゼラチン、スクシニル-ゼラチン、(ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、脂肪酸、ポリサッカリド、脂質アミノ酸、およびデキストランが挙げられる。
【0050】
1つの事例においては、ポリペプチドを、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)またはその類似体もしくは断片、または免疫グロブリンのFc部分の付加により改変する。そのような手法は、例えば、米国特許第7,271,149号に記載されている。
【0051】
一例においては、ポリペプチドを、PCT公開第WO 98/08871号に記載のように、親油性置換基の付加により改変する。親油性置換基としては、部分的もしくは完全に水素化されたシクロペンタノフェナトレン骨格、直鎖状もしくは分枝状アルキル基;直鎖状もしくは分枝状脂肪酸のアシル基(例えば、CH3(CH2)nCO-もしくはHOOC(CH2)mCO-(式中、nもしくはmは4〜38である)などの基);直鎖状もしくは分枝状アルカンα,ω-ジカルボン酸のアシル基; CH3(CH2)p((CH2)q,COOH)CHNH-CO(CH2)2CO-(式中、pおよびqは整数であり、p+qは8〜33である); CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-(式中、rは10〜24である); CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-(式中、sは8〜24である); COOH(CH2)tCO-(式中、tは8〜24である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3(式中、uは8〜18である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3(式中、wは10〜16である); -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)xCH3(式中、xは10〜16である); または-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)yCH3(式中、yは1〜22である)が挙げられる。
【0052】
他の実施形態においては、ポリペプチド治療剤を、米国特許第6,593,295号に記載のように、マレイミド基などの化学的反応基の付加により改変する。これらの基は、血液成分上の利用可能な反応性官能基と反応して、共有結合を形成し、有効な治療剤の改変ポリペプチドのin vivoでの半減期を延長することができる。タンパク質上の官能基との共有結合を形成させるために、化学的反応基として、ヒドロキシル部分がペプチドを改変するのに必要なレベルで生理学的に許容し得る様々な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を用いることができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル (GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)マレイミドヘキサン酸(MHA)、およびマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0053】
一級アミンは、NHSエステルの主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する接近可能なα-アミノ基およびリジンのε-アミンは、NHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲーション反応物が一次アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する時に形成される。これらのスクシンイミド含有反応基を、本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明の特定の実施形態においては、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAまたはMPA)などのマレイミド含有基であろう。そのようなマレイミド含有基を本明細書ではマレイド基と呼ぶ。
【0054】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4である場合にペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば、血清アルブミンまたはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度は、アミンとの反応速度より1000倍速い。かくして、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル結合が形成され、これは生理的条件下では切断することができない。
【0055】
ペプチドベクター
本発明の化合物は、本明細書に記載の任意のポリペプチド、例えば、表1に記載の任意のペプチド(例えば、Angiopep-1もしくはAngiopep-2)、またはその断片もしくは類似体を特徴とする。特定の実施形態においては、ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドに対して少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはさらには100%の同一性を有してもよい。ポリペプチドは、本明細書に記載の配列の1つと比較して1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)の置換を有してもよい。他の改変を、以下でより詳細に説明する。
【0056】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能的断片)をも特徴とする。特定の実施形態においては、この断片を、特定の細胞型(例えば、肝臓、眼、肺、腎臓、もしくは脾臓)に効率的に輸送するか、もしくはその中に蓄積させるか、またはBBBを通過して効率的に輸送することができる。前記ポリペプチドのトランケーションは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはその組合せから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上のアミノ酸であってよい。他の断片としては、前記ポリペプチドの内部部分が欠失した配列が挙げられる。
【0057】
さらなるポリペプチドを、本明細書に記載のアッセイまたは方法の1つを用いることにより同定することができる。例えば、候補ポリペプチドを、従来のペプチド合成により製造し、パクリタキセルとコンジュゲートさせ、実験動物に投与することができる。生物学的に活性なポリペプチドコンジュゲートを、例えば、腫瘍細胞を注入され、コンジュゲートで治療されなかった(例えば、コンジュゲート化されていない薬剤で治療された)対照と比較してコンジュゲートで治療された動物の生存率を増加させる能力に基づいて同定することができる。例えば、生物学的に活性なポリペプチドを、in situ脳かん流アッセイにおいて、柔組織中のその位置に基づいて同定することができる。
【0058】
同様に、他の組織での蓄積を決定するためのアッセイを実施することができる。ポリペプチドの標識されたコンジュゲートを動物に投与し、様々な器官における蓄積を測定することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、Cy5.5などの近赤外線蛍光分光標識)にコンジュゲートさせたポリペプチドは、生のin vivoでの可視化を可能にする。そのようなポリペプチドを動物に投与し、器官中のポリペプチドの存在を検出し、かくして、所望の器官におけるポリペプチドの蓄積の速度および量を決定することができる。他の実施形態においては、前記ポリペプチドを放射性アイソトープ(例えば、125I)で標識することができる。次いで、ポリペプチドを動物に投与する。一定時間後、動物を犠牲にし、器官を取り出す。次いで、各器官における放射性アイソトープの量を、当業界で公知の任意の手段を用いて測定することができる。特定の器官における標識された候補ポリペプチドの量と、標識された対照ポリペプチドの量とを比較することにより、候補ポリペプチドが特定の組織に接近し、そこに蓄積する能力を確認することができる。好適な陰性対照としては、特定の細胞型に効率的に輸送されないことが知られた任意のペプチドまたはポリペプチド(例えば、BBBを通過しないAngiopepと関連するペプチド、または任意の他のペプチド)が挙げられる。
【0059】
さらなる配列は、米国特許第5,807,980号(例えば、本明細書に記載の配列番号102)、第5,780,265号(例えば、配列番号103)、第5,118,668号(例えば、配列番号105)に記載されている。アプロチニン類似体をコードするヌクレオチド配列の例は、atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag; 配列番号6; Genbank受託番号X04666である。アプロチニン類似体の他の例を、国際特許出願第PCT/CA2004/000011号に開示された合成アプロチニン配列(またはその一部)を用いてタンパク質BLAST(Genbank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。アプロチニン類似体の例は、受託番号CAA37967(GI:58005)および1405218C(GI:3604747)の下でも見出される。
【0060】
改変ポリペプチド
本発明において用いられるペプチドベクターおよびポリペプチド治療剤は、改変アミノ酸配列を有してもよい。特定の実施形態においては、前記改変は所望の生物活性(例えば、BBBを通過する能力またはニューロテンシン作動作用)を有意に破壊しない。この改変は、元のポリペプチドの生物活性を減少させる(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、もしくは95%)、それに対する効果を有さないか、またはそれを増加させる(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、もしくは1000%)ことができる。改変ペプチドまたはポリペプチドは、in vivoでの安定性、生体利用能、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性、およびコンジュゲーション特性などのポリペプチドの特性を有するか、またはそれを最適化することができる。
【0061】
改変としては、翻訳後プロセッシングなどの天然プロセスによるもの、または当業界で公知の化学的改変技術によるものが挙げられる。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含むポリペプチド中のどこでも行うことができる。同じ型の改変が、所与のポリペプチド中のいくつかの部位に同じか、または異なる程度で存在してもよく、ポリペプチドは2個以上の型の改変を含んでもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝状であってもよく、それらは分枝鎖を含むか、または含まない環状であってもよい。環状、分枝状、および分枝環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスの結果生じてもよいし、または合成的にそれを作製することもできる。他の改変としては、PEG化、アセチル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フィアビンへの共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬剤の共有結合、マーカー(例えば、蛍光もしくは放射性)の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加が挙げられる。
【0062】
改変ポリペプチドはまた、ポリペプチド配列中の保存的または非保存的な、アミノ酸挿入、欠失、または置換(例えば、Dアミノ酸、デスアミノ酸)を含んでもよい(例えば、そのような変化がポリペプチドの生物活性を実質的に変化させない場合)。特に、本発明の任意のポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端への1個以上のシステイン残基の付加は、例えば、ジスルフィド結合によるこれらのポリペプチドのコンジュゲーションを容易にすることができる。例えば、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)またはAngiopep-7(配列番号112)を、アミノ末端に1個のシステイン残基(それぞれ、配列番号71、113および115)またはカルボキシ末端に1個のシステイン残基8それぞれ、配列番号72、114および116)を含むように改変することができる。アミノ酸置換は、保存的(すなわち、ある残基を同じ一般型もしくは基の別の残基により置換する場合)または非保存的(すなわち、ある残基を別の型のアミノ酸により置換する場合)であってよい。さらに、非天然アミノ酸を、天然アミノ酸に置換することができる(すなわち、非天然保存的アミノ酸置換または非天然非保存的アミノ酸置換)。
【0063】
合成的に作製されたポリペプチドは、DNAによって天然にコードされないアミノ酸の置換(例えば、非天然アミノ酸)を含んでもよい。非天然アミノ酸の例としては、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、PEG化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のωアミノ酸、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンなどの中性非極性アミノ酸が挙げられる。フェニルグリシンはTrp、Tyr、またはPheに置換することができる;シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性非極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンをヒドロキシプロリンで置換することができ、それはコンフォメーション付与特性を保持する。
【0064】
置換的突然変異誘発により類似体を作製することができ、それは元のポリペプチドの生物活性を保持する。「保存的置換」として同定された置換の例を表2に示す。そのような置換が望ましくない変化をもたらす場合、表2に「例示的置換」として特色付けられるか、またはアミノ酸クラスを参照して本明細書にさらに記載される他の型の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0065】
機能または免疫学的同一性における実質的な改変を、(a)例えば、シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換領域中のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さの維持に対するその効果が大きく異なる置換を選択することにより達成する。天然残基は、一般的な側鎖特性に基づいて以下の群に分割される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2)中性疎水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、
(3)酸性/負荷電:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、
(5)鎖の向きに影響する残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、
(6)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln、
(8)塩基性/正荷電:Arg、Lys、His、および
(9)荷電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0066】
他のアミノ酸置換を表2に列挙する。
【表2】
【0067】
ポリペプチド誘導体およびペプチド模倣剤
天然アミノ酸からなるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣剤またはポリペプチド類似体も本発明により包含され、本発明の化合物において用いられるペプチドベクターまたはペプチド治療剤を形成することができる。ポリペプチド類似体は、鋳型ポリペプチドのものと類似する特性を有する非ペプチド薬剤として製薬業界において一般的に用いられている。非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物質」またはペプチド模倣剤と呼ばれる(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283-287, 1986およびEvansら、J. Med. Chem. 30:1129-1239, 1987)。治療上有用なペプチドまたはポリペプチドと構造的に関連するペプチド模倣物質を用いて、等価な、または増強された治療または予防効果をもたらすことができる。一般的には、ペプチド模倣剤は、天然受容体結合ポリペプチドなどの模範的ポリペプチド(すなわち、生物活性もしくは薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当業界でよく知られた方法(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983; Spatolaら、Life Sci. 38:1243-1249, 1986; Hudsonら、Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979; およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein(編)Marcel Dekker, New York)によって、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合により置換されていてもよい1個以上のペプチド結合を有する。そのようなポリペプチド模倣物質は、より経済的な生産、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効能、効率)、低下した抗原性などの天然ポリペプチドを超える有意な利点を有してもよい。
【0068】
本明細書に記載のペプチドベクターはBBBを効率的に通過するか、または特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)を標的化することができるが、その有効性はプロテアーゼの存在により減少し得る。同様に、本発明において用いられるポリペプチド治療剤の有効性も同様に減少し得る。血清プロテアーゼは、切断のためのL-アミノ酸およびペプチド結合などの特定の基質要求性を有する。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の多くの顕著な成分であるエキソペプチダーゼは通常、ポリペプチドの第1のペプチド結合に対して作用し、遊離N末端を要する(Powellら、Pharm. Res. 10: 1268-1273, 1993)。これに照らせば、改変された型のポリペプチドを使用することが有利であることが多い。改変ポリペプチドは、元のL-アミノ酸ポリペプチドの構造特性を保持するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断の影響を容易に受ける。
【0069】
コンセンサス配列の1個以上のアミノ酸の同じ型のD-アミノ酸との体系的置換(例えば、エナンチオマー;L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なポリペプチドを作製することができる。かくして、本明細書に記載のポリペプチド誘導体またはペプチド模倣剤は、全てのL-、全てのD-または混合D,Lポリペプチドであってよい。ペプチダーゼは基質としてD-アミノ酸を用いることができないため、N末端またはC末端D-アミノ酸の存在は、ポリペプチドのin vivoでの安定性を増加させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。逆-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含むポリペプチドと比較して、逆配列に整列された、D-アミノ酸を含むポリペプチドである。かくして、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基は、D-アミノ酸ポリペプチドにとってN末端などになる。逆D-ポリペプチドは、L-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次コンフォメーション、従って、同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoで酵素的分解に対してより安定であり、かくして、元のポリペプチドよりも高い治療効力を有する(BradyおよびDodson, Nature 368:692-693, 1994ならびにJamesonら、Nature 368:744-746, 1994)。逆-D-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束されたポリペプチドを、当業界でよく知られた方法により作製することができる(Rizoら、Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束されたポリペプチドを、ジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を付加することにより作製し、それによって環状ポリペプチドを得ることができる。環状ポリペプチドは遊離NまたはC末端を有さない。従って、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質溶解の影響を受けにくいが、それらは勿論、エンドペプチダーゼの影響を受けやすく、ポリペプチド末端で切断しない。N末端もしくはC末端D-アミノ酸を有するポリペプチドと環状ポリペプチドのアミノ酸配列は通常、それぞれ、N末端もしくはC末端D-アミノ酸残基の存在、またはその環状構造を除いて、それらが一致するポリペプチドの配列と同一である。
【0070】
分子内ジスルフィド結合を含む環状誘導体を、アミノおよびカルボキシ末端などの環化のために選択される位置に好適なS-保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる(Sahら、J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。鎖集合の完了後、(1)S-保護基を選択的に除去して、対応する2個の遊離SH-官能基の結果として生じる支持体上での酸化を用いてS-S結合を形成させた後、支持体から生成物を従来通り除去し、好適な精製手順を行うか、または(2)側鎖を完全に脱保護すると共に支持体からポリペプチドを除去した後、高度に希釈した水性溶液中で遊離SH-官能基を酸化することにより、環化を実施することができる。
【0071】
分子内アミド結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖保護されたアミノ酸誘導体を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノ保護側鎖を有するアミノ酸残基および好適なS保護システインまたはホモシステインを組込みながら、従来の固相化学により調製することができる。
【0072】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基に作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するための別の有効な手法は、改変ポリペプチドが最早ペプチダーゼの基質ではなくなるように、ポリペプチド末端に化学基を付加することである。1つのそのような化学的改変は、いずれか、または両方の末端でのポリペプチドのグリコシル化である。特定の化学的改変、特に、N末端グリコシル化は、ヒト血清中でのポリペプチドの安定性を増加させることが示された(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を増強する他の化学的改変としては、限定されるものではないが、アセチル基などの1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN末端アルキル基の付加、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加が挙げられる。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を担持するポリペプチドからなる改変ポリペプチドを含む。
【0073】
また、誘導体がポリペプチドの所望の機能的活性を保持するという条件で、通常はポリペプチドの一部ではないさらなる化学部分を含む他の型のポリペプチド誘導体も本発明に含まれる。そのような誘導体の例としては、(1)アミノ末端もしくは別の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(ここで、アシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-mocなどのブロッキング基(フルオレニルメチル-O-CO-)であってよい);(2)カルボキシ末端または別の遊離カルボキシもしくはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアもしくは好適なアミンとの反応により産生されたカルボキシ末端もしくは別の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化誘導体が挙げられる。
【0074】
本明細書に記載のポリペプチドへの追加アミノ酸残基の付加の結果生じるより長いポリペプチド配列も、本発明に包含される。そのようなより長いポリペプチド配列は、上記のポリペプチドと同じ生物活性および特異性(例えば、細胞指向性)を有すると期待することができる。実質的な数の追加アミノ酸を有するポリペプチドは排除されないが、いくつかの大きいポリペプチドは有効な配列を隠す配置をとり、それによって標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーのメンバー)への結合を阻害し得ると認識されている。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用し得る。かくして、本発明はポリペプチドまたは伸長を有する本明細書に記載のポリペプチドの誘導体を包含するが、この伸長は該ポリペプチドまたはその誘導体の細胞標的化活性を破壊しないのが望ましい。
【0075】
本発明に含まれる他の誘導体は、短いストレッチのアラニン残基またはタンパク質溶解のための推定部位などにより(例えば、カテプシンによる、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照されたい)、直接的に、またはスペーサーを介して互いに共有結合した、本明細書に記載のような、2個の同じか、または2個の異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本明細書に記載のポリペプチドの多量体は、同じか、または異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーからなる。
【0076】
本発明はまた、そのアミノもしくはカルボキシ末端、またはその両方で、異なるタンパク質のアミノ酸配列に連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含むキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体も包含する。そのようなキメラまたは融合タンパク質を、該タンパク質をコードする核酸の組換え発現により製造することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、等価な、またはより高い機能的活性を有するキメラまたは融合タンパク質をもたらすことが望ましい1個の記載のポリペプチドと共有される少なくとも6個のアミノ酸を含んでもよい。
【0077】
ペプチド模倣剤を同定するためのアッセイ
上記のように、本明細書に記載のポリペプチドの主鎖形状および薬理作用団展示(ペプチド模倣剤)を複製するために作製された非ペプチジル化合物は、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用期間、およびより良好な生体利用能の特性を有することが多い。
【0078】
ペプチド模倣化合物を、生物ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行固相もしくは液相ライブラリー、解析を要する合成ライブラリー方法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法、およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法などの、当業界で公知のコンビナトリアルライブラリー方法におけるいくつかの手法のいずれかを用いて取得することができる。生物ライブラリー手法はペプチドライブラリーに限られるが、他の4つの手法はペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーにも適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当業界で、例えば、DeWittら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993); Erbら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994); Zuckermannら(J. Med. Chem. 37:2678, 1994); Choら(Science 261:1303, 1993); Carellら(Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994および同書、2061); およびGallopら(Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出すことができる。化合物のライブラリーを、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)またはビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)上もしくはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)上、またはルシフェラーゼ上で提供し、酵素標識を好適な基質の生成物への変換の決定により検出することができる。
【0079】
一度、本明細書に記載のポリペプチドを同定したら、限定されるものではないが、溶解度の差(例えば、沈降)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティ、イオン交換、およびサイズ排除)などの任意の数の標準的な方法、またはペプチド、ペプチド模倣剤、もしくはタンパク質の精製のために用いられる任意の他の標準的な技術により単離および精製することができる。同定された目的のポリペプチドの機能特性を、当業界で公知の任意の機能アッセイを用いて評価することができる。細胞内シグナリングにおける下流の受容体機能を評価するためのアッセイを用いるのが望ましい(例えば、細胞増殖)。
【0080】
例えば、本発明のペプチド模倣化合物を、以下の3段階プロセス:(1)本明細書に記載のポリペプチドを走査して、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するのに必要な二次構造の領域を同定すること;(2)コンフォメーションが拘束されたジペプチド代理物を用いて、主鎖形状を改良し、これらの代理物に対応する有機プラットフォームを提供すること;および(3)最良の有機プラットフォームを用いて、天然ポリペプチドの所望の活性を模倣するように設計された候補のライブラリー中の有機薬理作用団を展示すること、を用いて取得することができる。より詳しくは、この3段階は以下の通りである。段階1においては、リード候補ポリペプチドを走査し、その構造を短縮して、その活性のための要件を同定する。一連の元のポリペプチド類似体を合成する。段階2においては、最良のポリペプチド類似体を、コンフォメーション的に拘束されたジペプチド代理物を用いて調査する。ヨードリジジン-2-オン、ヨードリジジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のペプチド候補の主鎖形状を研究するためのプラットフォームとして用いる。これらの、および関連するプラットフォーム(Halabら、Biopolymers 55:101-122, 2000およびHanessianら、Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に概説されている)を、ポリペプチドの特定の領域に導入して、異なる向きの薬理作用団の方向を合わせることができる。これらの類似体の生物学的評価により、活性のための形状要件を模倣する改良されたリードポリペプチドを同定する。段階3においては、最も活性の高いリードポリペプチドに由来するプラットフォームを用いて、天然ペプチドの活性を担う薬理作用団の有機代理物を展示する。この薬理作用団と足場を、平行合成形式で混合する。ポリペプチドの誘導および上記段階を、当業界で公知の方法を用いる他の手段により達成することができる。
【0081】
前記ポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣剤または本明細書に記載の他の小分子から決定された構造機能相関を用いて、類似するか、またはより良好な特性を有する類似体分子構造を精製し、調製することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特性および側鎖特性を共有する分子も含む。
【0082】
まとめると、本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、薬剤を特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)に対して標的化するための化合物を同定するのに有用であるペプチドおよびペプチド模倣剤スクリーニングアッセイを開発することができる。本発明のアッセイを、低効率、高効率、または超高効率スクリーニング形式のために開発することができる。本発明のアッセイは、自動化に従うアッセイを含む。
【0083】
リンカー
ポリペプチド治療剤(ニューロテンシン)を、直接的に(例えば、ペプチド結合などの共有結合を介して)またはリンカーを介してベクターペプチドに結合することができる。リンカーとしては、化学的連結剤(例えば、切断可能なリンカー)およびペプチドが挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態においては、リンカーは化学的連結剤である。ポリペプチド治療剤とペプチドベクターを、スルフヒドリル基、アミノ基(アミン)、および/もしくは炭水化物または任意の好適な反応基を介してコンジュゲートさせることができる。ホモ二官能性およびヘテロ二官能性交叉リンカー(コンジュゲーション剤)が、多くの商業的起源から利用可能である。交叉連結に利用可能な領域を、本発明のポリペプチド上に見出すことができる。交叉リンカーは、可撓性アーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の炭素原子を含んでもよい。交叉リンカーの例としては、BS3([ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート];BSは、接近可能な一次アミンを標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドとN-エチル-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;NHS/EDCは一次アミン基とカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSは、スルフヒドリル基およびアミノ基に対して反応するヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である)、ヒドラジド(多くのタンパク質は露出した炭水化物を含み、ヒドラジドは一次アミンにカルボキシル基を連結するための有用な試薬である)、ならびにSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸;SATAは、アミンと反応し、保護されたスルフヒドリル基を付加する)が挙げられる。
【0085】
共有結合を形成するために、化学反応基として、ヒドロキシル部分が、ペプチドを改変するのに必要なレベルで生理学的に許容し得る、様々な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を用いることができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、およびマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0086】
一級アミンは、NHSエステルのための主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する接近可能なα-アミン基およびリジンのε-アミンはNHSエステルと反応する。NHSエステルコンジュゲーション反応物が一次アミンと反応する時にアミド結合が形成され、N-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する。これらのスクシンイミドを含有する反応基を、本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明の特定の実施形態においては、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAもしくはMPA)などのマレイミド含有基であろう。そのようなマレイミド含有基を、本明細書ではマレイド基と呼ぶ。
【0087】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5-7.4である場合、ペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば、血清アルブミンまたはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度は、アミンとの反応速度よりも1000倍速い。かくして、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル結合を形成させることができる。
【0088】
他の実施形態においては、前記リンカーは、少なくとも1個のアミノ酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40または50個のアミノ酸のペプチド)を含む。特定の実施形態においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、Cysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態においては、米国特許第7,271,149号に記載のような、配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは1、2、3、4、5または6である)を有するペプチドなどのグリシン-リッチペプチドを用いる。他の実施形態においては、米国特許第5,525,491号に記載のような、セリン-リッチペプチドリンカーを用いる。セリンリッチペプチドリンカーとしては、式[X-X-X-X-Gly]y(式中、Xのうち最大2個はThrであり、残りのXはSerであり、yは1〜5である)のもの(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Gly(式中、yは2以上である))が挙げられる。いくつかの事例においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、GlyまたはCysなどの任意のアミノ酸)である。
【0089】
好適なリンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu、およびAsp、またはGly-Lysなどのジペプチドである。リンカーがコハク酸である場合、その1個のカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、その他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドまたは置換基のアミノ基とアミド結合を形成することができる。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、そのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成することができる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーを、Lysのε-アミノ基と置換基との間に挿入することができる。1つの特定の実施形態においては、さらなるリンカーは、例えば、Lysのε-アミノ基と、および置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。一実施形態においては、さらなるリンカーは、GluまたはAsp(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、置換基に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成する)である、すなわち、置換基はNε-アシル化リジン残基である。
【0090】
ニューロテンシンアゴニスト活性アッセイ
化合物がニューロテンシンアゴニスト活性を有するかどうかの決定を、当業界で公知の任意の方法を用いて実施することができる。ニューロテンシン受容体(例えば、ヒト受容体またはラット受容体)を発現する細胞からのイノシトールリン酸産生を、化合物の存在下および非存在下で測定することができ、イノシトールリン酸産生の増加が、該化合物がニューロテンシン受容体アゴニストであることを示唆する。
【0091】
Watson ら, J Neurochem 59:1967-1970, 1992に記載されているある例では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がラットニューロテンシン受容体で形質転換された。ニューロテンシンアゴニストの結合は、検出可能に標識化されたニューロテンシン(例えば3Hで標識されたもの)を接触させ、試験化合物との競合を測定することにより、測定できる。第2メッセンジャー合成(D-myo-イノシトール1-リン酸(IP1))は、細胞を予めD-myo-[3H]イノシトールで標識することにより測定することができる。[3H]イノシトール1-リン酸の産生は、アニオン交換クロマトグラフィーにより分離される。
【0092】
治療的適応
本発明の化合物を、ニューロテンシン活性が有益である任意の好適な治療的適応において用いることができる。本発明の化合物は、ニューロテンシン活性の活動が有益となる任意の適当な治療的用途に用いることができる。ニューロテンシン (NT)は、中枢神経系および胃腸管に存在する13アミノ酸ペプチドである。脳では、NTはドーパミン作動性受容体および他の神経伝達物質系と関連している。末梢NTは、消化系および心臓血管系の両方に対してパラクリンペプチドおよびエンドクリンペプチドとして作用する。種々の治療用途がニューロテンシンについて提案され、そうしたものには神経障害、代謝障害、および疼痛が含まれる。ロテンシンが、統合失調症と関連する脳の領域での神経伝達をモジュレートすることが示されていることから、ニューロテンシンおよびニューロテンシン受容体アゴニストは抗鬱剤として提唱されてきた。
【0093】
神経疾患
本明細書に記載のポリペプチドはBBBを通過して薬剤を輸送することができるため、本発明の化合物はまた、神経変性疾患または中枢神経系(CNS)、末梢神経系、もしくは自律神経系(例えば、神経細胞が失われるか、もしくは退化している)の他の症状などの神経疾患の治療にとって有用である。ニューロテンシンは抗精神病療法において提唱され、したがって統合失調症や双極性障害などの疾患の治療において有用でありうる。多くの神経変性疾患は、運動失調(すなわち、非協調的筋肉運動)および/または記憶喪失を特徴とする。神経変性疾患としては、アレキサンダー病、アルパー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS;すなわち、ルー・ゲーリック病)、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケーン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レヴィー小体認知症、マチャド・ジョセフ病(3型脊髄小脳失調)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、シルダー病(すなわち、副腎白質ジストロフィー)、統合失調症、脊髄小脳失調、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー病、および脊髄癆が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物によって治療されうる他の神経学的および精神医学的疾患としては、トゥレット症候群および強迫神経症が挙げられる。
【0095】
体温低下の誘導
本発明の化合物は、被験体の体温を低下させるために使用されうる。神経保護を必要とする被験体例えば卒中、脳虚血、心虚血、または脊髄損傷または頭部もしくは脳損傷(例えば外傷性脳損傷)のような神経損傷を罹患しているかまたは最近それを罹患した被験体において体温の低減が有益であることが示されていることから、かかる治療は従ってこうした症状における合併症を低減するのに有用でありうる。体温の低減はまた、心手術(例えば心臓切開手術)もしくは他の大手術のような手術中において、または被験体が悪性低体温を罹患している場合に、望まれうる。
【0096】
疼痛
ニューロテンシンはまた、鎮痛作用を有することでも知られている。したがって本発明の化合物は、被験体における疼痛の低減に使用されうる。被験体は急性疼痛(例えば機械的疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛、および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択される疼痛)を罹患している者でありうる。他の種類の疼痛としては、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛が挙げられる。
【0097】
代謝障害
ニューロテンシンが代謝障害の治療に使用可能である証拠がある。例えば米国特許出願第2001/0046956号を参照されたい。したがって本発明の化合物はかかる障害を治療するために使用されうる。代謝障害は糖尿病(例えばI型、またはII型)、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧であり得る。被験体は重量過剰、肥満または過食症でありうる。
【0098】
薬物依存/乱用
ニューロテンシンはまた、被験体における薬物依存の治療または薬物乱用の低減(特に精神刺激薬での場合)に使用可能であることが提唱されている。したがって本発明の化合物は、アンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、およびアレコリンのような薬物の依存または乱用を治療するのに有用でありうる。NTはまた、アルコール依存を治療するのに使用されうる。
【0099】
投与および用量
本発明はまた、治療上有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物を特徴とする。前記組成物を、様々な薬剤送達系における使用のために製剤化することができる。1種以上の生理学上許容し得る賦形剤または担体を、適切な製剤のために前記組成物中に含有させることもできる。本発明における使用のための好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 第17版、1985に見出される。薬剤送達のための方法の簡単な概説については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0100】
前記医薬組成物は、予防的および/または治療的治療のための、非経口、鼻内、局所、経口、または経皮手段などによる、局所投与のために意図される。前記医薬組成物を、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下注射)、または経口摂取によるか、または血管症状もしくは癌症状に罹患した領域での局所適用もしくは関節内注入により投与することができる。さらなる投与経路としては、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、心室内、硬膜内、ならびに鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、もしくはエアロゾル吸入投与が挙げられる。デポー注射または浸食性埋込み物もしくは成分などの手段による、持続放出投与も本発明に特に含まれる。かくして、本発明は、許容し得る担体、好ましくは、水性担体、例えば、水、緩衝化水、塩水、PBSなどに溶解または懸濁した上記薬剤を含む非経口投与のための組成物を提供する。前記組成物は、pH調節剤および緩衝化剤、等張性調節剤、湿潤剤、洗剤などの生理学的条件を近似するように必要な製薬上許容し得る補助物質を含んでもよい。本発明はまた、錠剤、カプセル剤などの製剤化のための結合剤または充填剤などの不活性成分を含んでもよい、経口送達のための組成物も提供する。さらに、本発明は、クリーム、軟膏などの製剤化のための溶媒または乳化剤などの不活性成分を含んでもよい局所投与のための組成物を提供する。
【0101】
これらの組成物を、従来の滅菌技術により滅菌するか、または滅菌濾過することができる。得られる水性溶液を、使用のために充填するか、または凍結乾燥し、凍結乾燥調製物を投与前に滅菌水性担体と混合することができる。調製物のpHは、典型的には、3〜11、より好ましくは5〜9または6〜8、および最も好ましくは7〜8、例えば、7〜7.5であろう。固体形態の得られる組成物を、それぞれ固定量の上記薬剤を含む複数の単回用量単位中、例えば、錠剤またはカプセル剤の密閉包装中に充填することができる。固体形態の前記組成物を、局所適用可能なクリームまたは軟膏のために設計された絞れるチューブなどの、自在量のための容器中に充填することもできる。
【0102】
有効量を含む組成物を、予防的または治療的治療のために投与することができる。予防的適用においては、組成物を、素因が臨床的に決定されたか、または代謝障害もしくは神経疾患に対する罹患率が高い被験体に投与することができる。本発明の組成物を、被験体(例えば、ヒト)に、臨床疾患の開始を遅延させる、減少させるか、または好ましくは防止するのに十分な量で投与することができる。治療的適用においては、疾患(例えば、本明細書に記載の代謝障害、もしくは神経疾患)に既に罹患している被験体(例えば、ヒト)に、その症状およびその合併症の症候を治癒するか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。この目的を達成するのに十分な量を、「治療上有効量」、疾患または医学的症状に関連するいくつかの症候を実質的に改善するのに十分な量と定義する。例えば、代謝障害(例えば、本明細書に記載のもの)の治療においては、前記疾患または症状の任意の症候を減少させ、防止し、遅延させ、抑制するか、または停止させる薬剤または化合物は治療上有効であろう。薬剤もしくは化合物の治療上有効量は、疾患もしくは症状を治癒させるのに必要ではないが、疾患もしくは症状の開始を遅延させる、妨害するか、もしくは防止するか、または疾患もしくは症状の症候が改善するか、または疾患もしくは症状の期間が変化するか、または例えば、個体における重篤度が低いか、または回復が加速されるような、疾患もしくは症状のための治療を提供するであろう。
【0103】
この使用にとって有効な量は、疾患もしくは症状の重篤度および被験体の全身状態に依存し得るが、一般的には、被験体あたり約0.05μg〜約1000μg(例えば、0.5〜100μg)の範囲の相当する用量のエキセンジン-4である。初回投与および追加投与のための好適な計画は、典型的には、初回投与に次いで、毎時間、毎日、毎週、または毎月1回以上の間隔でその後の投与を反復投与することである。本発明の組成物中に存在する薬剤の合計有効量を、比較的短い期間にわたって単回用量として、ボーラス注射として、もしくは輸液により哺乳動物に投与するか、または複数用量をより長期間にわたって(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、もしくは18〜24時間毎、もしくは2〜4日毎、1〜2週間毎、月に1回の投与)投与する、分割治療プロトコルを用いて投与することができる。あるいは、血中で治療上有効濃度を維持するのに十分な連続静脈内輸液が意図される。
【0104】
当業者であれば、本発明の組成物内の存在し、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される本発明の方法において用いられる1種以上の薬剤の治療上有効量を、哺乳動物の年齢、体重、および症状における個々の差異を考慮して決定することができる。本発明の特定の化合物はBBBを通過する高い能力を示すため、本発明の化合物の用量は、コンジュゲート化されていないアゴニストの治療効果のために必要な相当する用量よりも低いものであってよい(例えば、約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下)。治療される被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において望ましい結果(例えば、血糖の低下、体重増加の減少、体重減少の増加、および食物摂取の減少)をもたらす量である有効量の本発明の薬剤を、該被験体に投与する。当業者であれば、治療上有効量を経験的に決定することもできる。
【0105】
被験体はまた、週に1回以上(例えば、週に2、3、4、5、6もしくは7回以上)、用量あたり0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、もしくは0.1)μg用量/日または週の範囲の用量のニューロテンシンと比較して、これに相当する量の約0.05〜10,000μgの範囲の薬剤を受容してもよい。被験体はまた、2または3週間に1回、用量あたり0.1〜3,000μgの範囲の前記組成物の薬剤を受容してもよい。
【0106】
有効量を含む本発明の組成物の単回または複数回投与を、治療する医師により選択される用量レベルおよびパターンで実行することができる。用量および投与スケジュールを、被験体における疾患または症状の重篤度に基づいて決定および調整し、臨床医により一般的に実施されるか、または本明細書に記載の方法に従う治療過程を通してモニターすることができる。
【0107】
本発明の化合物を、治療もしくは療法の従来の方法と共に用いるか、または治療もしくは療法の従来の方法とは別々に用いることができる。
【0108】
本発明の化合物を他の薬剤との組合せ療法において投与する場合、それらを個体に対して連続的に、または同時に投与することができる。あるいは、本発明に従う医薬組成物は、本明細書に記載のような製薬上許容し得る賦形剤、および当業界で公知の別の治療剤もしくは予防剤と共に、本発明の化合物の組合せを含んでもよい。
【実施例】
【0109】
実施例1
ニューロテンシン-Angiopep-2コンジュゲートの合成
例示的ニューロテンシン-Angiopep-2コンジュゲートを、以下に記載のスキームを用いて合成した。これらの例において用いられる省略形NTとは、以下に記載のpE-置換ニューロテンシンペプチドを指す。
【化3】
【0110】
ニューロテンシンペプチド合成
稀なアミノ酸L-ピログルタミン酸(pE)を用いるpELYENKPRRPYIL-OHを、SPPS(固相ペプチド合成)を用いて合成した。SPPSを、Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)アミノ末端保護を用いるProtein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置上で実行した。樹脂に対して5倍過剰のFmoc-アミノ差(200 mM)を用いる100μmol規模でペプチドを合成した。HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸)およびNMM(N-メチルモルホリン)を含むDMF中の1:1:2のアミノ酸/アクチベーター/NMMを用いて、カルボキシル末端酸のための予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)により、カップリングを実施した。20%ピペリジン/DMFを用いて脱保護を実行した。室温で2時間、TFA/水/TES:95/2.5/2.5から構成される溶液を用いて、樹脂に結合した生成物を定法的に切断した。
【0111】
予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、および稀なL-ピログルタミン酸をSigma-Aldrich社から購入した。アミノ酸のための側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt(トリチル)、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu(ter-ブチル)、アルギニンについてはPbf(ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)、およびリジンについてはtBoc(t-ブチルオキシカルボニル)であった。
【0112】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー(Waters Delta Prep 4000)により精製した。回収された画分からアセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥したところ、純白色の固体(204 mg、61%、98%を超える純度)が得られた。ESI-TOF MS (Bruker Daltonics; 計算値1672.92;実測値1671.90、m/z 558.31(+3)、836.96(+2))により、質量を確認した。
【0113】
EMCS-NT
NTのN-リジン一次アミンを、NTの溶液(25 mg、14.9μmol、3.5 mlのPBS 4X、pH 7.64中1当量)を、スルホ-EMCS(N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)(Pierce Biotechnology)の溶液(6.1 mg、14.9μmol、1 mlのPBS 4X中1当量)で処理することにより活性化した。以下に記載の分析方法を用いて反応のモニタリングを行った(図1Aおよび1Bのクロマトグラム1-2を参照)。室温で1時間、反応(3.32 mM、pH 7.61)を進行させた。スルホ-EMCS(4.5 mg、10.9μmol、1 mlのPBS 4X中0.73当量)を添加して1時間、改変を1回繰り返した。混合物をFPLCクロマトグラフィー(AKTA explorer、図2のクロマトグラム3を参照)により精製した。EMCS-NTの精製を、30 RPC樹脂(ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、30 mlを含むカラム上で実施した。サンプルを反応バッファー(4 ml)、H2O中の10%アセトニトリル(ACN)、0.05%TFA(200μl)中に35 mgとして充填した。溶液AはH2O、0.05%TFAであり、溶液BはACN、0.05%TFAであった。流速は5〜9 ml/分、勾配は10〜25%の溶液Bであった。
【0114】
アセトニトリルを蒸発させた後、次の工程のために水の容量を5 mlまで減少させた。純粋なEMCS-改変NT(98%を超える純度)の無色の溶液を得た。質量をESI-TOF MS (Bruker Daltonics)により調べたところ、計算値は1867.13であり、実測値は1866.00、m/z 623.01(+3)、934.00(+2)であった。
【0115】
NT-AN2Cys−NH2
マレイミド含有EMCS-NTおよびAN2Cys-NH2の遊離チオール残基を用いてコンジュゲーションを実施した。0.1 N NaOH溶液をゆっくり添加することにより、EMCS-NTの溶液のpHを1.65〜6.42に調整した。pHの調整の間に、加水分解副反応が起こり得る(5%以下、加水分解されたEMCS-NTの分子量=1833)。AN2Cys-NH2の溶液(46.4 mg、14.9μmol、2.5 mlのPBS 4x、pH 7.64中1当量)を、EMCS-NTの溶液に添加した。以下の分析方法を用いて、反応をモニタリングした(図3Aおよび3Bのクロマトグラム4-5を参照)。反応(1.9 mM、pH 6.3)を室温で30分間進行させた。混合物をFPLCクロマトグラフィー(AKTA explorer、図4のクロマトグラム6を参照)により精製した。NT-AN2Cys-NH2の精製を、30 RPC樹脂(ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、30 mlを含むカラム(GE Healthcare)を用いて実施した。4 mlの反応バッファー(H2O中の10%ACN、0.05%TFA(200μl))中、74 mgの量でサンプルを充填した。溶液AはH2O、0.05%TFAであり、溶液BはACN、0.05%TFAであった。流速は5〜9 ml/分であり、10〜25%の勾配の溶液Bを用いた。
【0116】
アセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した後、純白色の固体(5.5 mg、2工程にわたって9%、95%を超える純度)としてコンジュゲート化NT-AN2Cys-NH2が得られた。質量をESI-TOF MS (Bruker Daltonics)により確認したところ、分子量の計算値は4270.76であり、実測値は4269.17(m/z 712.54(+6)、854.84(+5)、1068.29(+4)、1424.04(+3))であった。
【0117】
コンジュゲートを窒素雰囲気下、-20℃以下で保存した。
【0118】
分析方法
上記のように以下の方法を用いた。精製の間にサンプルを分析するために、Waters Acquity UPLCシステムをBEHフェニルカラム、1.7μm、2.1 x 50 mmと共に用いた。検出を229 nmで実施した。溶液AはH2O、0.1%FAであり、溶液Bはアセトニトリル(ACN)、0.1%FAであった。以下の表に示されるように、流速は0.5 ml/分であり、10〜90%のBの勾配を用いた。
【0119】
【0120】
実施例2
NT-AN2Cys-NH2コンジュゲートの特性評価
NT-AN2Cys-NH2(NT-An2)コンジュゲートの薬理学的効果および脳への浸透を調査するために、本発明者らは、マウスの体温に対するその効果をモニターした(図5)。マウスの体温は、1 mg/kgのNTまたは塩水対照の静脈内投与によっては影響されなかった。対照的に、相当する用量のコンジュゲート(2.5 mg/kg)の静脈内投与は、体温の急速な低下をもたらし、低体温を誘導した。より高い用量(5 mg/kg)のNT-An2の注射は、体温のより強い低下を引き起こしたが、これはNT-An2の効果が用量依存的であることを示唆している。
【0121】
本発明者らはまた、より高用量のコンジュゲートが低体温のより大きい誘導をもたらすかどうかを試験した。マウスに5、15、または20 mg/kgのコンジュゲートを投与し、投与後の体温の低下を、投与後120分間にわたってモニターした。これらの高用量間で小さな差異が観察された(図6)。
【0122】
この実験を、NT-An2化合物の第2の小バッチを用いて再度繰り返したところ、同様の活性が得られた。生成物をスケールアップする試みの一部として生成された第3のバッチは、図7に示されるように、類似するが、いくらかより低い活性を示した。
【0123】
NT-An2コンジュゲートがBBBを通過することを確認するために、NTとコンジュゲートの両方を標準的な手順を用いてヨード化し、当業界で標準的な方法を用いてin situ脳かん流を実施した。初期の輸送を時間の関数として測定した(図8)。結果は、NT-An2コンジュゲートの初期の脳による取込みは、コンジュゲート化されていないNTよりも高いことを明確に示唆している。さらに、in situかん流の2分後、毛細血管枯渇を行って、脳の柔組織に認められるNT-An2の量を定量した(図9)。NTと比較した場合、脳の柔組織においてより高いレベルのNT-An2が認められた。さらに、これらの結果は、NT-An2が脳の毛細血管中に捕捉されないことを示唆している。全体として、本発明者らの結果は、新規NT-An2誘導体が、体温の制御に関与するその受容体を活性化するのに必要とされる十分な濃度でBBBを通過することを証明している。
【0124】
実施例3
Angiopep-NTコンジュゲートを用いる持続的低体温の誘導
本発明者らは、コンジュゲートがマウスおよびラットにおいて持続的低体温を誘導することができるかどうかを試験するためのさらなる実験を実施した。
【0125】
1回目の実験において、マウスは最初にNT-An2の静脈内5 mg/kgボーラス注射を受けた後、1時間後、2.5時間にわたって静脈内注入(10 mg/kg/時)を受けた。注入の間に体温は低下し続け、−11℃の最低状態に達した(図10)。注入が終わった後、体温はゆっくりと37℃に戻り、動物は回復した。
【0126】
同様の実験をラットにおいても実施した。ここで、ラットに20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射を投与した直後に、3.5時間にわたって20 mg/kg/時の注入を行った。これにより、90分後に約3.5℃の最大温度低下が得られた(図11)。
【0127】
持続的低体温実験を、20 mg/kgのNT-An2の静脈内ボーラス注射、その直後に2.5時間にわたって20 mg/kg/時の注入を用いて実施した。この時点で、注入を40 mg/kg/時まで増加させた。初期の37℃の体温の低下が、実験の360分間の経過にわたって観察された(図12)。
【0128】
同様の実験をラットにおいても行った。この実験において、ラットに20 mg/kgのNT-An2を静脈内注射した直後、20 mg/kg/時の注入を行った。この実験の360分間の経過の間に、体温の持続的低下も観察された(図13)。
【0129】
また、12時間にわたって行われるさらなる実験を、ラットにおいて実施した。この実験は、NT-An2の40 mg/kgの静脈内ボーラス注射、その直後の20 mg/kg/時のNT-An2の注入を含んでいた。図14に示されるように、これは実験の過程にわたって体温の持続的低下をもたらした。
【0130】
実施例4
NT-An2による鎮痛誘導
本発明者らはまた、マウスにおいて鎮痛を誘導するNT-An2の能力を試験した。本発明者らは、対照マウス、20 mg/kgのNT-An2を投与したマウス、および陽性対照としての1 mg/kgのブプレノルフィン(麻薬性鎮痛剤)を投与したマウスにおけるホットプレート足曝露と足なめ行動との間の潜伏時間を試験した。NT-An2およびブプレノルフィンは共に、注射の15分後に統計学的に有意な様式で足なめ行動の潜伏時間を増加させたが、これはNT-An2が鎮痛剤として作用し得ることを示唆している(図15)。
【0131】
実施例5
より短いニューロテンシン類似体の作製
本発明者らはさらに、いくつかのより短いニューロテンシン類似体を作製した。これらの類似体としては、NT(8-13) (RRPYIL)、Ac-LysNT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-LysNT(8-13)、MHA-NT(8-13)、およびβ-メルカプトMHA-NT(8-13)が挙げられる(以下を参照されたい)。
【0132】
【0133】
NTおよびNT(8-13)類似体を、Protein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置およびFmoc化学上でSPPS方法を用いることにより合成した。予め充填したFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、稀なpEをSigma-Aldrich社から、非天然D-チロシンをChemImpex社から、スルホ-EMCSをPierce Biotechnology社から購入した。アミノ酸の側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu、アルギニンについてはPbf、およびリジンについてはtBocであった。質量をESI-TOF MS (MicroTof, Bruker Daltonics)により確認した。
【0134】
一般的手順-ニューロテンシン(NT)(pELYENKPRRPYIL-OH)の合成
NTを、稀なL-ピログルタミン酸(pE)および樹脂に対して5倍過剰のFmoc-AA(200 mM)を用いて合成した。DMF中の1:1:4のAA/HBTU/NMMを用いてカルボキシル末端酸のために予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)からカップリングを実施した。20%ピペリジン/DMFを用いて脱保護を実行した。樹脂に結合した生成物を、室温で2時間、TFA/水/TES:95/2.5/2.5から構成されるカクテル溶液を用いて日常的に切断した。
【0135】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Kromasil 100-10-C18、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法A」)により精製した。アセトニトリルを回収された画分から蒸発させ、凍結乾燥した。これにより白色でふわふわした固体が形成された(800 mg、80%収率、98%を超えるHPLC純度、計算値1672.92、実測値1671.90、m/z 558.31(+3)、836.96(+2))。
【0136】
MHA-NT(8-13)(MHA-RRPYIL-OH)の合成
NTと同じ手順を用いた。100 mMのFmoc-AA溶液、およびTBTUを用いた。切断の前に、樹脂に結合した遊離N末端アミノ酸を室温で1.5時間、スルホ-EMCSの18 mM溶液(DMF中、1.2当量)で処理することにより、N末端MHA基をSPPS上で導入した。粗ペプチドを、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Waters BEHフェニル、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法B」)により精製した。これにより55 mgの生成物、73%収率、HPLC純度95%以上、計算値1010.19、実測値1010.59、m/z 505.81(+2)。
【0137】
Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)(Ac-KRRPD-YIL-OH)の合成
NTと同じ手順を用いた。D-チロシン、100 mMのFmoc-AA溶液、およびTBTUを用いた。切断の前に、室温で10分間、大過剰の1:1:3 v/v/vの無水酢酸/DIEA/DMFを用いてその後のキャッピング反応を行った。ペプチドを方法Aにより精製した。これにより、白色でふわふわの固体が形成された(426 mg、82%収率、HPLC純度95%以上、計算値987.20、実測値987.58、m/z 494.30(+2))。
【0138】
ANG-Cys-NH2 (H-T1FFYGG6S7RGKRNNFKTEEYC-NH2)の合成
樹脂に対して5倍過剰のFmoc-AA(200 mM)を用いてANG-Cys-NH2を合成した。G6S7をプソイドプロリン時ペプチドGSとしてカップリングさせた。DMF中の1:1:4のAA/HCTU/NMMを用いて、カルボキシル末端アミドのためにNle(0.40 mmol/g)を含むRinkアミドMBHA樹脂からカップリングを実施した。樹脂に結合した生成物の切断を、室温で2時間、TFA/水/EDT/TES:94/2.5/2.5/1を用いて実行した。
【0139】
粗ペプチドを氷冷エーテルを用いて沈降させ、RP-HPLCクロマトグラフィー、Waters Delta Prep 4000、Kromasil 100-10-C18およびWaters BEHフェニル、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法C」)により2回連続で精製した。回収された画分からアセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した。これにより、白色でふわふわした固体が形成された(565 mg、28%収率、HPLC純度90%超、計算値2403.63;実測値2402.05、m/z 1202.53(+2)、802.04(+3)、601.78(+4))。
【0140】
一般的手順-MHA-NTの合成
NT(1当量)をPBS 4x(pH 7.3)に溶解し、0.1 N NaOH溶液を添加することにより溶液のpHを7.1に調整した。この溶液に、スルホ-EMCSの溶液(PBS 4x中1当量)を添加した。反応のモニタリングを分析方法を用いて行った。反応(9.0 mM、pH 7.1)をRTで2時間進行させた。0.1 N NaOH溶液を添加することにより反応液のpHを5.2から7に調整した。
【0141】
スルホ-EMCS(PBS 4x中0.3当量)を2回目に添加した後、反応を1時間繰り返した。FPLCクロマトグラフィー、AKTA explorer、30RPC樹脂、酸を含まないH2O/ACN(「方法D」)により、混合物を精製した。蒸発の前に、得られた純粋なプール画分を、水、0.1%TFAに溶液を用いてpH 4に酸性化した。
【0142】
アセトニトリルを蒸発させた後、水の容量を最小容量まで減少させ、その後のコンジュゲーション工程において直接用いた。これにより無色の溶液が得られ、278 mg、83%収率、HPLC純度98%超、計算値1867.13、実測値1866.00、m/z 623.01(+3)、934.00(+2)であると見積もられた。
【0143】
AcLys(MHA)NT(8-13)(D-Tyr11)の合成
AcLysNT(8-13)(D-Tyr11)から、MHA-NTと同じ手順を用いた。スルホ-EMCS(PBS 4x中1当量)の溶液を最初に添加した後、反応(5.0 mM、pH 6.8)を室温で2時間進行させた。これにより無色の溶液が得られ、24 mg、67%収率、HPLC純度95%以上、計算値1180.40、実測値1180.64、m/z 590.83(+2)であると見積もられた。
【0144】
上記合成方法の説明においては、以下の省略形が用いられている。
【0145】
【0146】
実施例6
ニューロテンシン類似体の特性評価
どのNT類似体がAngiopep-2へのコンジュゲーションにとって最も適合しているかを決定するために、本発明者らは、それぞれの類似体がマウスにおける低体温を誘導する能力を評価した。7.5 mg/kgのNT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、pGlu-NT(8-13)、および対照のボーラス静脈内注射を実施し(図16)、120分間にわたって体温を測定した。Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)が、試験した類似体の体温における最大の低下を示した。従って、この類似体をコンジュゲーションおよびさらなる実験のために選択した。
【0147】
実施例7
ニューロテンシン類似体コンジュゲートの作製
3種のニューロテンシンおよびNT類似体コンジュゲート、NT-AN2(上記のもの)、NT(8-13)-AN2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-AN2を作製した。これらのコンジュゲートのそれぞれの構造を、以下の表に示す。
【0148】
【0149】
コンジュゲート類似体を、Protein Technologies, Inc. Symphony(登録商標)ペプチド合成装置およびFmoc化学上でSPPS方法を用いて合成した。予め充填されたFmoc-Leu-Wang樹脂(0.48 mmol/g)をChemPep社から、Fmoc-アミノ酸、HBTUをChemImpex社から、稀なpEをSigma-Aldrich社から、非天然D-チロシンをChemImpex社から、スルホ-EMCSをPierce Biotechnology社から購入した。アミノ酸の側鎖保護基は、アスパラギンについてはTrt、グルタミン酸およびチロシンについてはtBu、アルギニンについてはPbf、およびリジンについてはtBocであった。質量をESI-TOP MS (MciroTof, Bruker Daltonics)により確認した。以下の方法において用いられる全ての省略形は、上記の実施例5に定義されている。
【0150】
一般的手順-ANG-NTの合成
マレイミド含有MHA-NTとANG-Cys-NH2の遊離チオール残基を用いてコンジュゲーションを実施した。
【0151】
MHA-NTの予め調製された溶液のpHを、0.1 N NaOH溶液をゆっくり添加することにより4.2から5に調整した。MHA-NTのこの溶液に、ANG-Cys-NH2(PBS 4X、pH 7.3中の1当量)の溶液を添加した。反応のモニタリングを、分析方法を用いて行った。反応(2.5 mM、pH 5.1)を室温で1時間進行させた。FPLCクロマトグラフィー、AKTA explorer、30RPC樹脂、0.05%TFAを含むH2O/ACN(「方法E」)により混合物を精製した。
【0152】
アセトニトリルを蒸発させ、凍結乾燥した後、純白色の固体としてコンジュゲート化ANG-NTが得られた(412 mg、65%収率、2工程にわたって54%、HPLC純度95%超、計算値4270.76、実測値4269.17、m/z 712.54(+6)、854.84(+5)、1068.29(+4)、1424.04(+3))。
【0153】
ANG-NT(8-13)の合成
MHA-NT(8-13)についてはANG-NTと同じ手順を用いた。MHA-NT(8-13)(1当量)をDMSO(19 mM)中に溶解した。混合物を方法Bにより精製した(上記参照)。これにより、白色でふわふわした固体が得られた(597 mg、88%収率、HPLC純度95%以上、計算値3413.82、実測値3413.46、m/z 683.75(+5)、854.19(+4)、1138.91(+3))。
【0154】
ANG-AcLys-[D-Tyr11]NT(8-13)の合成
AcLys(MHA)-[D-Tyr11]NT(8-13)については、ANG-NTと同じ手順を用いた。ペプチドを方法Eにより精製した。これにより白色の固体が得られた(17 mg、24%収率、HPLC純度95%以上、計算値3584.03、実測値3583.79、m/z 598.30 (+6)、717.76 (+5)、896.70 (+4)、1195 (+3))。
【0155】
実施例8
NT類似体コンジュゲートの特性評価
低体温を誘導するNT類似体コンジュゲートの能力を決定するために、対照、コンジュゲート化されていないNT、NT-An2、NT(8-13)-An2、およびAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2のボーラスをそれぞれマウスに静脈内注射し、120分間にわたって体温をモニターした。対照とコンジュゲート化されていないNTの間にはわずかな差異があり、NT(8-13)-An2コンジュゲートについてはいくらかの効果が観察され、NT-An2とAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの両方についてはより大きい効果が観察された(図17)。
【0156】
本発明者らはまた、1 mg/kgのコンジュゲート化されていないAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)と6.25 mg/kgのAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートの体温を低下させる能力を比較した。これらの実験から、前記コンジュゲートが、コンジュゲート化されていない化合物よりも高い程度で体温を低下させることが観察された(図18)。
【0157】
Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2コンジュゲートのボーラス注射(6.25 mg/kg)、次いで、1時間後に6.25 mg/kgのこのコンジュゲートの注入も実施した(図19)。
【0158】
実施例9
NT受容体NTSR1へのNTおよびNT類似体およびそのコンジュゲートの結合
NT、NT類似体、およびNT、またはNT類似体のコンジュゲートをさらに特性評価するために、高親和性NTSR1受容体を発現するHT29細胞(ヒト結腸腺癌悪性度II細胞系)を用いる競合結合アッセイを用いた。初期試験として、本発明者らは、[3H]-ニューロテンシンが40 nMの未標識のNTにより前記細胞から完全に置換され得ることを証明することができた(図20)。次いで、本発明者らは、0.4 nM〜40 nMで用量応答試験を実施した。これらの結果から、本発明者らは、NTがこの系において1.4 nMのIC50を有することを決定した(図21)。
【0159】
次いで、本発明者らは、NTの結合とAc-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)-An2の結合とを比較した。この実験から、この類似体の結合が、天然のNTよりも1000倍以上弱いことが観察された(図22に示されるように、3.5 nMと5389 nMのIC50)。
【0160】
これらの方法を用いて、本発明者らは、ニューロテンシン、NT類似体、およびコンジュゲートの間で、結合と誘導された体温低下の両方を比較した。これらの結果を以下の表に提示する。NTおよびANG-NT(すなわち、NT-An2)に関して異なる結果は、各化合物の異なる産生バッチに由来する結果である。
【0161】
【0162】
他の実施形態
本明細書に記載の、2009年7月14日、2009年5月26日および2008年12月5日にそれぞれ提出された米国特許仮出願第61/225,486号、第61/181,144号、及び第61/200,947号などの全ての特許、特許出願、および刊行物は、あたかもそれぞれ独立した特許、特許出願、または刊行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:A-X-B
(式中、
Aは配列番号1〜105および107〜114、またはその断片からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むペプチドベクターであり;
Xはリンカーであり;ならびに
Bはニューロテンシン、ニューロテンシンアナログまたはニューロテンシン受容体アゴニストからなる群より選択されるペプチド治療剤である)
を有する化合物。
【請求項2】
Aが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記配列同一性が、少なくとも90%である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Bがヒトニューロテンシン、ヒトニューロテンシン(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、pE-Lys-NT(8-13)、またはpELYENKPRRPYIL-OHを含み、ここでpEはL-ピログルタミン酸を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
BがpELYENKPRRPYIL-OHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
AがAngiopep-1 (配列番号67)、Angiopep-2 (配列番号97)、cys-Angiopep-2 (配列番号113)、またはAngiopep-2-cys (配列番号114)を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Xが式
【化1】
(式中、nは2〜15の整数であり、YがA上のチオールでありかつZがB上の1級アミンであるか、あるいは、YがB上のチオールでありかつZがA上の1級アミンである)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
nが3、6または11である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Aがcys-AngioPep-2 (配列番号113)またはAngioPep-2-cys-NH2 (配列番号114)であり、かつ、BがヒトニューロテンシンまたはpELYENKPRRPYIL-OHであり、ここでpEはL-ピログルタミン酸を表し、YはAのシステイン上のチオール基であり、ZはBのLys6のε-アミンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が以下の構造、
【化2】
(式中、pELYENKPRRPYIL配列のリシンに結合された該-(CH2)4NH-部分が当該リシンの側鎖を表し、AN2Cys配列のC末端システインに結合された-CH2S-部分がそのシステインの側鎖を表し、さらにpELYENKPRRPYIL配列およびAN2CysのC末端OHおよびNH2基がそれぞれ、該pELYENKPRRPYIL配列がC末端ヒドロキシル基を有し、該AN2CysがC末端アミン基を有することを示す)
である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
化合物が次の構造、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Xがペプチド結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Xが少なくとも1つのアミノ酸であり、かつAおよびBがそれぞれペプチド結合によりXと共有結合している、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項14または15に記載の化合物をコードする核酸分子。
【請求項17】
核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項16に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項18】
細胞中で請求項17に記載のベクターによりコードされるポリペプチドを発現させ、該ポリペプチドを精製することを含む、請求項14または15に記載の化合物の製造方法。
【請求項19】
固相支持体上で前記化合物を合成することを含む、請求項14または15に記載の化合物の作製方法。
【請求項20】
被験体の体温を低下させる方法であって、体温を低下させるのに十分な量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項21】
前記被験体が、卒中、心発作、脳虚血、心虚血、もしくは神経損傷を罹患しているかまたは罹患したことがあり、または神経保護を必要としている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記神経損傷が脳または脊髄損傷である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脳損傷が外傷性の頭部または脳の損傷である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体が手術を施されているまたは手術を施されるところである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記手術が、心臓手術であるかまたは心臓切開手術である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体が悪性低体温症を罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
被験体における疼痛を処置する方法または予防的に疼痛を処置する方法であって、
前記疼痛を処置するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項28】
前記疼痛が、機械的な疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択される急性疼痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疼痛が、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
被験体における疼痛感受性を低減する方法であって、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に有効な量で投与することを含む前記方法。
【請求項31】
精神障害を有する被験体の治療方法であって、前記障害を治療するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項32】
前記精神障害が統合失調症である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
被験体における薬物依存または薬物乱用を治療する方法であって、前記依存症または乱用を処置するのに十分な量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項34】
前記薬物が精神刺激薬またはアルコールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経刺激薬が、アンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、およびアレコリンからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
代謝障害を有する被験体の治療方法であって、前記障害を治療するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項37】
前記十分な量が、該ペプチドベクターにコンジュゲートされていないときのニューロテンシンアゴニストの相当する用量として必要とされる量の50%未満である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記量が15%未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記代謝障害が、糖尿病、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
被験体における神経学的障害を治療または予防的に処置する方法であって、前記障害を治療または予防するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項41】
前記神経学的障害が統合失調症である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記神経学的障害が強迫神経症またはトゥレット症候群である、請求項40に記載の方法。
【請求項1】
式:A-X-B
(式中、
Aは配列番号1〜105および107〜114、またはその断片からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むペプチドベクターであり;
Xはリンカーであり;ならびに
Bはニューロテンシン、ニューロテンシンアナログまたはニューロテンシン受容体アゴニストからなる群より選択されるペプチド治療剤である)
を有する化合物。
【請求項2】
Aが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記配列同一性が、少なくとも90%である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Bがヒトニューロテンシン、ヒトニューロテンシン(8-13)、Ac-Lys-[D-Tyr11]NT(8-13)、Ac-Lys-NT(8-13)、pE-Lys-NT(8-13)、またはpELYENKPRRPYIL-OHを含み、ここでpEはL-ピログルタミン酸を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
BがpELYENKPRRPYIL-OHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
AがAngiopep-1 (配列番号67)、Angiopep-2 (配列番号97)、cys-Angiopep-2 (配列番号113)、またはAngiopep-2-cys (配列番号114)を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Xが式
【化1】
(式中、nは2〜15の整数であり、YがA上のチオールでありかつZがB上の1級アミンであるか、あるいは、YがB上のチオールでありかつZがA上の1級アミンである)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
nが3、6または11である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Aがcys-AngioPep-2 (配列番号113)またはAngioPep-2-cys-NH2 (配列番号114)であり、かつ、BがヒトニューロテンシンまたはpELYENKPRRPYIL-OHであり、ここでpEはL-ピログルタミン酸を表し、YはAのシステイン上のチオール基であり、ZはBのLys6のε-アミンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が以下の構造、
【化2】
(式中、pELYENKPRRPYIL配列のリシンに結合された該-(CH2)4NH-部分が当該リシンの側鎖を表し、AN2Cys配列のC末端システインに結合された-CH2S-部分がそのシステインの側鎖を表し、さらにpELYENKPRRPYIL配列およびAN2CysのC末端OHおよびNH2基がそれぞれ、該pELYENKPRRPYIL配列がC末端ヒドロキシル基を有し、該AN2CysがC末端アミン基を有することを示す)
である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
化合物が次の構造、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Xがペプチド結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Xが少なくとも1つのアミノ酸であり、かつAおよびBがそれぞれペプチド結合によりXと共有結合している、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項14または15に記載の化合物をコードする核酸分子。
【請求項17】
核酸がプロモーターに機能的に連結されている、請求項16に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項18】
細胞中で請求項17に記載のベクターによりコードされるポリペプチドを発現させ、該ポリペプチドを精製することを含む、請求項14または15に記載の化合物の製造方法。
【請求項19】
固相支持体上で前記化合物を合成することを含む、請求項14または15に記載の化合物の作製方法。
【請求項20】
被験体の体温を低下させる方法であって、体温を低下させるのに十分な量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項21】
前記被験体が、卒中、心発作、脳虚血、心虚血、もしくは神経損傷を罹患しているかまたは罹患したことがあり、または神経保護を必要としている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記神経損傷が脳または脊髄損傷である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脳損傷が外傷性の頭部または脳の損傷である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体が手術を施されているまたは手術を施されるところである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記手術が、心臓手術であるかまたは心臓切開手術である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体が悪性低体温症を罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
被験体における疼痛を処置する方法または予防的に疼痛を処置する方法であって、
前記疼痛を処置するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項28】
前記疼痛が、機械的な疼痛、熱い疼痛、冷たい疼痛、虚血性疼痛および化学的に誘導された疼痛からなる群より選択される急性疼痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疼痛が、末梢または中枢神経病性疼痛、炎症性疼痛、偏頭痛関連疼痛、頭痛関連疼痛、過敏性腸症候群関連疼痛、線維筋痛関連疼痛、関節痛、骨格痛、結合部(関節)痛、胃腸疼痛、筋肉痛、咽頭痛、顔面痛、骨盤痛、跛行、術後疼痛、外傷後疼痛、緊張性頭痛、産科学的疼痛、婦人科医学的疼痛、または化学療法誘導疼痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
被験体における疼痛感受性を低減する方法であって、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に有効な量で投与することを含む前記方法。
【請求項31】
精神障害を有する被験体の治療方法であって、前記障害を治療するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項32】
前記精神障害が統合失調症である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
被験体における薬物依存または薬物乱用を治療する方法であって、前記依存症または乱用を処置するのに十分な量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項34】
前記薬物が精神刺激薬またはアルコールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経刺激薬が、アンフェタミン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、ニコチン、コカイン、メチルフェニデート、およびアレコリンからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
代謝障害を有する被験体の治療方法であって、前記障害を治療するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項37】
前記十分な量が、該ペプチドベクターにコンジュゲートされていないときのニューロテンシンアゴニストの相当する用量として必要とされる量の50%未満である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記量が15%未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記代謝障害が、糖尿病、肥満、肥満の結果としての糖尿病、高血糖症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン耐性、耐糖能異常(IGT)、糖尿病性脂質異常症、高脂血症、心血管疾患、または高血圧である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
被験体における神経学的障害を治療または予防的に処置する方法であって、前記障害を治療または予防するのに十分な量で請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を前記被験体に投与することを含む前記方法。
【請求項41】
前記神経学的障害が統合失調症である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記神経学的障害が強迫神経症またはトゥレット症候群である、請求項40に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−510796(P2012−510796A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538809(P2011−538809)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001779
【国際公開番号】WO2010/063122
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511093410)アンジオケム インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001779
【国際公開番号】WO2010/063122
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511093410)アンジオケム インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
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