説明

ネジの保持構造

【課題】板材の一方の主面を固定対象物に密着させた状態で、取付ネジにより板材を固定対象物にネジ止めする構造にあって、取付ネジを板材に保持するネジの保持構造において、取付ネジの保護を図り、定期的なメンテナンスを不要にでき、さらに、固定対象物のネジ孔に対する取付ネジの位置合わせも容易に行えるようにする。
【解決手段】板材31の他方の主面31a側に、板材31の厚さ方向に間隔をあけた位置に保護板23を配する。保護板23と板材31との間隔は、取付ネジ5の頭部6を前記他方の主面31aから離間させて板材31に対向する保護板23の裏面23bに当接させた状態で、挿通孔34に対する取付ネジ5の軸部7の挿入状態が保持されるように設定する。保護板23には、その厚さ方向に貫通して取付ネジ5の頭部6を操作する工具を挿通させるための操作孔28を形成する。操作孔28の大きさを取付ネジ5の頭部6の外径よりも小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネジの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、収容棚内に平積み状態で収容される電気電子機器を収容棚に対して着脱可能に固定する構造や、電気電子機器を構成する筐体の前面に操作パネル等のパネルユニットを着脱可能に固定する構造には、電気電子機器のパネルユニットに備える板材を、軸部及び頭部を有する複数の取付ネジによって収容棚あるいは筐体の外面にネジ止めする構造が数多く採用されている。従来、このようなネジ止め構造では、電気電子機器を収容棚から取り外した状態、あるいは、パネルユニットを筐体から取り外すときの取付ネジの脱落、及び、取り外した状態における取付ネジの紛失を防ぐために、取付ネジが板材から外れないように保持する手法が考えられている。
【0003】
例えば非特許文献1には、取付ネジの軸部を板材の孔に挿通させた上で、軸部の先端側に樹脂製の抜け止めワッシャーを差し込んだ構成が記載されている。この構成では、抜け止めワッシャーの内縁を軸部のねじ山に噛ませることで、取付ネジが板材から脱落することを防いでいる。また、従来では、板材に対する取付ネジの保持手法として、板材に圧入固定される圧入ネジを取付ネジとして採用することも考えられている。この圧入ネジは、板材から脱落しない範囲内で圧入ネジの軸線方向にのみ移動可能とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“TM-137 抜け止めワッシャー”、[online]、株式会社栃木屋、〔平成23年3月9日検索〕、インターネット〈URL: http://tochigiya.jp/catalogue/download.php?output_file=TM-137.pdf&lang=ja〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のネジの保持構造では、収容棚や筐体等の固定対象物に対するパネルユニット(板材)の着脱状態に関わらず、取付ネジの頭部が外部に露出するため、取付ネジの頭部に外力(衝撃)が加えられる等して取付ネジの頭部が傷つき、取付ネジの操作に支障をきたす虞がある。
【0006】
また、非特許文献1のように抜け止めワッシャーを採用したネジの保持構造では、複数の取付ネジにより板材を固定対象物に固定する構成において、固定対象物に対して複数の取付ネジを一つずつ着脱すると、取付ネジの軸部に差し込まれた抜け止めワッシャーが、取付ネジに対してその軸線方向に移動してしまい、取付ネジが脱落する問題がある。また、抜け止めワッシャーの内縁部分が軸部のねじ山によって傷つけられる。このため、抜け止めワッシャーを定期的に交換しなければならず、メンテナンスが面倒になる、という問題も生じる。
【0007】
さらに、圧入ネジを採用したネジの保持構造では、板材に圧入ネジを取り付けた後に、板材に対する圧入ネジの軸線の位置を調整することができないため、寸法公差によるズレが生じた場合、固定対象物のネジ孔に対する圧入ネジの位置合わせが困難となる。なお、圧入ネジの場合には、一度板材に取り付けてしまうと交換することができない、という問題もある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、取付ネジの保護を図ると共に、定期的なメンテナンスを不要にでき、さらに、固定対象物のネジ孔に対する取付ネジの位置合わせも容易に行うことが可能な、ネジの保持構造を提供することを第一の目的とする。
また、取付ネジの交換を容易に行うことが可能な、ネジの保持構造を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のネジの保持構造は、板材の厚さ方向に貫通する挿通孔に取付ネジの軸部を挿通させた上で、固定対象物のネジ孔に螺着させることにより、前記板材の一方の主面を固定対象物に密着させた状態で前記板材を固定対象物に固定する構造にあって、前記板材に前記取付ネジを保持する保持構造であって、前記板材の他方の主面側には、前記板材の厚さ方向に間隔をあけた位置に保護板が配され、当該保護板と前記板材との間隔は、少なくとも前記取付ネジの頭部を前記板材の他方の主面から離間させて前記板材に対向する前記保護板の裏面に当接させた状態で、前記挿通孔に対する前記取付ネジの軸部の挿入状態が保持されるように設定され、前記保護板には、その厚さ方向に貫通して前記取付ネジの頭部を操作する工具を挿通させるための操作孔が形成され、当該操作孔の大きさが前記取付ネジの頭部の外径よりも小さく設定されていることを特徴とする。
なお、取付ネジの頭部を操作する工具は、取付ネジの頭部本体の頂面に形成される操作用の凹部(例えば平面視「−」あるいは「+」形状の溝、平面視多角形状の穴など)に差し込むドライバーや断面多角形の棒(例えば六角レンチ)のことを意味している。
【0010】
上記ネジの保持構造によれば、取付ネジの頭部が板材の他方の主面から離れるように取付ネジを挿通孔から抜くように移動させても、取付ネジの軸部が挿通孔から抜け出る前に取付ネジの頭部が保護板に当接するため、取付ネジが板材から脱落することを防止できる。すなわち、取付ネジを板材に保持することができる。そして、従来のように抜け止めワッシャーを採用することなく、取付ネジの脱落を防止できるため、定期的なメンテナンスが不要となる。
また、取付ネジの頭部が保護板によって覆われるため、不意に取付ネジの頭部に外力が加わることを防いで、取付ネジの頭部を保護することができる。なお、保護板には、取付ネジ操作用の工具を挿通させる操作孔が形成されているため、保護板が工具による取付ネジの操作を阻害することはない。また、操作孔の大きさが取付ネジの頭部の外径よりも小さいため、取付ネジが操作孔から外側に脱落することもない。
さらに、取付ネジが板材の一方の主面側から抜け落ちない範囲で、板材の挿通孔の大きさを軸部の外径よりも大きく設定するだけで、挿通孔の軸線に対する取付ネジの軸線位置を調整する自由度が向上し、板材に対する取付ネジの軸線の位置を容易に調整することができる。したがって、固定対象物のネジ孔に対する取付ネジの位置合わせを容易に行うことができる。
【0011】
そして、前記ネジの保持構造において、前記板材と前記保護板との間には、これらの間で前記厚さ方向に移動可能とされた中間可動板が設けられ、当該中間可動板には、その厚さ方向に貫通して前記取付ネジの軸部を挿通させるための第二挿通孔が形成され、前記取付ネジの軸部が、前記保護板の裏面に対向する前記中間可動板の前面側から前記第二挿通孔、及び、前記板材の挿通孔に順番に挿通され、前記取付ネジの頭部は、前記取付ネジの軸部を前記第二挿通孔に挿通させた状態で、前記中間可動板の前面に当接するように形成されているとよい。
【0012】
例えば、上記中間可動板が無い場合、あるいは、中間可動板が板材側に配されている場合には、取付ネジの軸部のネジ先が板材の一方の主面から突出することで、取付ネジの軸線が、板材の厚さ方向(固定対象物のネジ孔や板材の挿通孔の軸線)に対して傾斜してしまうことがある(図9(a)参照)。
そこで、上記中間可動板を設けておけば、この中間可動板を板材側から保護板に向けて移動させることで、挿通孔と第二挿通孔との間隔が広がるため、また、取付ネジの頭部が中間可動板と保護板との間に挟み込まれるため、取付ネジの軸線の向きを板材の厚さ方向に近づけることができる(図9(b)参照)。すなわち、中間可動板を保護板側に配置しておくことで、板材の厚さ方向に対する取付ネジの軸線の傾斜角度を緩和できるため、板材を固定対象物にネジ止めする際には、取付ネジを容易に固定対象物のネジ孔に螺着させることが可能となる。
【0013】
また、前記中間可動板を備える前記ネジの保持構造においては、前記取付ネジの頭部が、当該取付ネジの軸線に直交する方向に延在する平板状のフランジ部を備えることが好ましい。
【0014】
この保持構造では、取付ネジのフランジ部を保護板と中間可動板との間に挟み込むことで、取付ネジの軸線を板材の厚さ方向に一致させることが可能となる。したがって、板材を固定対象物にネジ止めする際に、取付ネジのフランジ部を保護板と中間可動板との間に挟み込ませておくことで、取付ネジをさらに容易に固定対象物のネジ孔に螺着させることができる。
【0015】
さらに、前記中間可動板を備える前記ネジの保持構造では、前記中間可動板を前記板材から前記保護板に向けて付勢する付勢手段を備えているとさらによい。
【0016】
この保持構造では、板材を固定対象物にネジ止めしない限り、取付ネジの頭部が、付勢手段の付勢力によって保護板と中間可動板との間に挟み込まれた状態に保持されるため、中間可動板が保護板から離れて取付ネジの軸線の傾斜角度が大きくなってしまうことを確実に防止できる。
また、板材を取付ネジにより固定対象物にネジ止めした状態では、中間可動板が付勢手段の付勢力に抗って板材の他方の主面に密着するが、取付ネジを固定対象物のネジ孔から取り外すだけで、中間可動板が付勢手段の付勢力によって板材から保護板に向けて自動的に移動し、取付ネジの頭部を保護板と中間可動板との間に挟み込むことができる。
以上のことから、手動で中間可動板を保護板に向けて移動させる必要が無くなり、この構造を有するユニットの取り扱いが簡便となる。
【0017】
さらに、前記ネジの保持構造において、前記板材は、前記挿通孔が前記保護板と前記厚さ方向に重なる保持位置と、前記保護板と前記厚さ方向に重ならない着脱位置との間で、前記保護板に対して前記主面に沿う方向に移動可能であるとよい。
【0018】
また、前記中間可動板を備える前記ネジの保持構造においては、前記板材及び前記中間可動板は、前記挿通孔及び前記第二挿通孔が前記保護板と前記厚さ方向に重なる保持位置と、前記保護板と前記厚さ方向に重ならない着脱位置との間で、前記保護板に対して前記主面に沿う方向に移動可能であるとよい。
【0019】
これらの保持構造では、板材や中間可動板を保持位置に配することで、前述したように取付ネジが板材から脱落することを防止できる。一方、板材や中間可動板を着脱位置に配した状態では、取付ネジの頭部が板材の他方の主面から離れるように取付ネジを板材や中間可動板に対して移動させても、取付ネジの頭部は保護板に当接しないため、取付ネジを板材や中間可動板に対して容易に着脱できる。言い換えれば、取付ネジを容易に交換することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、取付ネジの脱落を防止しながら、定期的なメンテナンスが不要となる。また、固定対象物のネジ孔に対する取付ネジの位置合わせを容易に行うことができる。そして、取付ネジの保護を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るネジの保持構造を備える電気電子機器、及び、これを収容固定する収容棚を示す概略斜視図である。
【図2】図1の電気電子機器を収容棚の収容部に収容する途中の状態を示す概略平断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】図2,3に示す電気電子機器のパネルユニットを示す分解斜視図である。
【図5】図2〜4に示すパネルユニットに備えるネジの保持構造を示す拡大平断面図であり、(a)は固定用板材及び中間可動板を保持位置に配した状態、(b)は固定用板材及び中間可動板を着脱位置に配した状態を示す。
【図6】図2〜5に示す電気電子機器を収容棚の収容部に収容固定した状態を示す概略平断面図である。
【図7】図6のB−B矢視断面図である。
【図8】図2〜7に示すネジの保持構造において、同一の固定用板材及び中間可動板に取り付けられた複数の取付ネジのうち、一部の取付ネジのみが収容棚のネジ孔に螺着され、残りの取付ネジがネジ孔に螺着されていない状態を示す概略側断面図である。
【図9】図2〜8に示すネジの保持構造において、中間可動板の位置と取付ネジの向きとの関係を示す拡大側断面図であり、(a)は中間可動板が固定用板材側に位置する場合、(b)は中間可動板が正面パネルの保護板部側に位置する場合である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態のネジの保持構造は、図1〜3に示すように、収容棚(固定対象物)1に対してネジ止め固定される電気電子機器10に設けられている。
ここで、収容棚1は、その前面(外面)1aに開口する収容部2を備え、電気電子機器10はこの収容部2に対して一方向(図示例におけるY軸方向、挿抜方向とも呼ぶ。)に挿抜可能とされている。そして、収容棚1の前面1aのうち収容部2の開口周縁の領域には、収容部2に収容された電気電子機器10を取付ネジ5によって収容棚1に固定するためのネジ孔3が形成されている。なお、本実施形態では、収容棚1が収容部2を一つだけ備えているが、例えば複数備えていてもよい。
【0023】
また、本実施形態における取付ネジ5は、例えば図2〜4に示すように、頭部及び軸部を有する通常のネジのうち、頭部側に位置する軸部7の首部に平座金を嵌め込んだ座金組み込みネジであるが、本実施形態では、通常のネジの頭部及び平座金を組み合わせたものを、取付ネジ5の「頭部6」と定義する。
さらに、本実施形態では、通常のネジの頭部に相当する部分(ドライバー、六角レンチ等の工具でネジを操作するための凹部を形成した部分)を取付ネジ5の「頭部本体6A」と定義し、平座金の部分を取付ネジ5の「フランジ部6B」と定義する。すなわち、本実施形態では、取付ネジ5の頭部6が、頭部本体6A及びフランジ部6Bによって構成されている。なお、フランジ部6Bは、取付ネジ5の軸線L1に直交する方向に延在する平板状に形成される。
そして、本実施形態では、取付ネジ5のうち丸みを帯びた頭部本体6Aの頂面に形成される操作用の凹部が、ドライバー(工具)で操作するための形状(図4では平面視「+」形状)を呈しているが、これに限ることは無く、例えば六角レンチ等の他の工具で操作できる形状(例えば平面視多角形状)を呈していてもよい。
【0024】
電気電子機器10は、例えばCDデッキ、DVDデッキ等、各種記録媒体の再生や記録を行うためのオーディオ機器であり、図1〜4に示すように、概略直方体状に形成されて収容部2内に収容される筐体11と、筐体11の前面(筐体11を収容部2内に収容した状態で収容棚1の前面1aと同じ方向に向く筐体11の面)側に固定されたパネルユニット12とを備えている。なお、本実施形態のネジの保持構造は、このパネルユニット12に設けられている。
筐体11は、その前面側が開口する箱状に形成され、筐体11内部には、例えば電気電子機器10の電気電子回路等が収容されている。なお、図示はしないが、電気電子機器10を収容した状態で収容部2の内面に対向する筐体11の背面や側面等の外面には、電源用や電気信号用の端子や配線コードが設けられていてもよい。
【0025】
一方、パネルユニット12は、図2〜5に示すように、筐体11の開口部分を覆うための正面パネル20と、正面パネル20の幅方向(X軸方向)の両端部に着脱自在に固定される一対の固定用板材30及び中間可動板40とを備えている。
正面パネル20は、主に折り曲げ加工を施した板材からなり、筐体11の前面開口を覆う平板状の本体板部21と、本体板部21の幅方向の両端部に一体に形成された平板状の側板部22及び保護板部(保護板)23とを一体に形成して構成されている。
本体板部21は、その厚さ方向が電気電子機器10の挿抜方向に一致するように設けられている。また、本体板部21の表面には、電気電子機器10を収容部2に対する挿抜作業時に把持する把持部25が設けられている。なお、図示はしないが、この本体板部21の表面には、例えば電気電子機器10の各種機能を操作するための操作パネル等が形成されていてもよい。
【0026】
各側板部22は、本体板部21に対して折り曲げられて、本体板部21よりも電気電子機器10の挿入方向(Y軸正方向)に延びており、筐体11に接続されている。なお、図示例では、側板部22が筐体11と一体に形成されているが、例えばネジ止め等によって筐体11に接続されてもよい。これにより、正面パネル20が筐体11に対して一体に固定されている。
そして、各側板部22には、ネジ止めによって固定用板材30を正面パネル20に対して着脱可能に固定するためのネジ孔26、及び、後述する固定用板材30のスライド軸35を挿通させるための貫通孔27が、それぞれ一対形成されている。なお、図示例では、一対のネジ孔26及び貫通孔27が、それぞれ正面パネル20の高さ方向(Z軸方向)に間隔をあけて配列されているが、これに限ることは無い。
【0027】
保護板部23は、本体板部21の高さ方向(Z軸方向)の両端部において、本体板部21と共に単一の平板をなすように、本体板部21の幅方向の各端部よりもさらに外側に延出している。すなわち、保護板部23は、本体板部21の幅方向の両端部においてそれぞれ一対形成されている。これにより、各保護板部23は筐体11の側壁部よりも外側に突出して、正面パネル20全体の幅寸法が筐体11の幅寸法よりも長くなっている。
そして、各保護板部23には、その厚さ方向(Y軸方向)に貫通する操作孔28が形成されている。この操作孔28は、取付ネジ5の頭部6を操作する工具を挿通させるためのものであり、その大きさ(内径寸法)は、取付ネジ5の頭部6の外径よりも小さく設定されている。なお、本実施形態における操作孔28の大きさは、取付ネジ5の頭部本体6Aの外径よりも大きく、かつ、フランジ部6Bの外径よりも小さく設定されている。すなわち、操作孔28には、取付ネジ5の頭部6のうち頭部本体6Aのみを挿入することができる。
【0028】
さらに、正面パネル20は、本体板部21の高さ方向の両端部及び各保護板部23に対して一体に形成された一対の被覆板部24も備えている。各被覆板部24は、本体板部21及び保護板部23に対して折り曲げられて、本体板部21や被覆板部24よりも電気電子機器10の挿入方向(Y軸正方向)に延びるように配されている。
【0029】
各固定用板材30は、主に折り曲げ加工を施した板材からなり、平板状の固定板本体(板材)31、第一取付板部32及び第二取付板部33を一体に形成して構成されている。
第一取付板部32は、正面パネル20を構成する側板部22の外側面に平行するように対向配置されている。この第一取付板部32には、側板部22に向けて突出する棒状のスライド軸35が一対設けられている。そして、一対のスライド軸35は、側板部22の外側面から側板部22の一対の貫通孔27にそれぞれ挿通されることで、固定用板材30が正面パネル20に対してその幅方向(X軸方向)に移動可能とされている(図5参照)。なお、各スライド軸35の突出方向先端にはフランジ35Aが形成されているため、各スライド軸35が側板部22の貫通孔27から抜け落ちることは無い。言い換えれば、固定用板材30は、スライド軸35及びフランジ35Aによって、正面パネル20に対してX軸方向に移動可能とされているものの、着脱不能に取り付けられている。
また、第一取付板部32には、その厚さ方向(X軸方向)に貫通するネジ用貫通孔36が一対形成されている。各ネジ用貫通孔36に固定用ネジ8を挿通させた上で、側板部22の各ネジ孔26に螺着させることで、第一取付板部32を側板部22の外側面に密着させた状態で第一取付板部32を側板部22に固定することができる。
【0030】
固定板本体31は、正面パネル20の高さ方向に延びる帯板状に形成され、正面パネル20の本体板部21や保護板部23に平行するように、言い換えれば、固定板本体31の厚さ方向(Y軸方向)が電気電子機器10の挿抜方向に一致するように、折り曲げ加工によって第一取付板部32に対して垂直に屈曲している。ここで、第一取付板部32に対する固定板本体31の屈曲方向は、正面パネル20の側板部22から外側に離間する方向に設定されている。
【0031】
固定板本体31の高さ方向(Z軸方向)の両端部には、その厚さ方向に貫通して、取付ネジ5の軸部7を挿通させるための挿通孔34が形成されている。なお、挿通孔34の大きさ(内径寸法)は、取付ネジ5の軸部7の外径よりも大きければよいが、例えば取付ネジ5の頭部6の外径よりも小さく設定されていてもよい。
そして、取付ネジ5の軸部7は、正面パネル20側に向く固定板本体31の表面(他方の主面)31a側から上記挿通孔34に挿通された上で、収容棚1のネジ孔3に螺着されるようになっている(図6,7参照)。すなわち、本実施形態の電気電子機器10は、固定板本体31の裏面(一方の主面)31bを収容棚1の前面1aに密着させた状態で、収容棚1に固定されるようになっている。
【0032】
第二取付板部33は、後述する中間可動板40を固定用板材30に取り付ける部分であり、固定板本体31の高さ方向の両端に一対形成されている。
各第二取付板部33は、前述した固定板本体31と同様に、正面パネル20の本体板部21や保護板部23に平行するように第一取付板部32に対して垂直に屈曲している。ただし、第一取付板部32に対する第二取付板部33の屈曲方向は、正面パネル20の側板部から内側に入り込む方向に設定されている、すなわち固定板本体31とは逆向きに屈曲している。
そして、各第二取付板部33には、後述する中間可動板40のスライド軸を挿通させるための貫通孔37が形成されている。
【0033】
以上のように構成される固定用板材30を固定用ネジ8によって正面パネル20に固定した状態では、固定板本体31の高さ方向の両端部が、上下一対の保護板部23の裏面23b側に対して間隔をあけて対向配置される。言い換えれば、保護板部23と固定板本体31とが、電気電子機器10の挿入方向(Y軸正方向)に間隔をあけて順番に配列されている。
また、この固定状態では、固定板本体31の各挿通孔34と保護板部23の操作孔28とが、保護板部23や固定板本体31の厚さ方向に重なるように配列される。なお、図示例では、固定板本体31及び保護板部23の厚さ方向に延びる挿通孔34及び操作孔28の軸線が互いに一致しているが、少なくとも工具を正面パネル20の操作孔28に挿通させた上で、固定板本体31の挿通孔34に挿通された取付ネジ5の頭部本体6Aを工具で操作することができれば、挿通孔34及び操作孔28の軸線は互いにずれていても構わない。
【0034】
そして、保護板部23の裏面23bと固定板本体31の表面31aとの間隔は、取付ネジ5全体の長手寸法よりも短く設定されている。より具体的に説明すれば、この間隔は、取付ネジ5のうち軸部7及びフランジ部6Bを足し合わせた長手寸法よりも短く設定されている。したがって、この固定状態では、取付ネジ5の頭部6を固定板本体31の表面31aから離間させて保護板部23の裏面23bに当接させても、固定板本体31の挿通孔34に対する取付ネジ5の軸部7の挿入状態が保持されることになる。すなわち、本実施形態におけるネジの保持構造は、正面パネル20の保護板部23及び固定用板材30の固定板本体31を備えて構成されている。
【0035】
また、保護板部23の裏面23bと固定板本体31の裏面31bとの間隔は、取付ネジ5の軸線L1が保護板部23や固定板本体31の厚さ方向に一致するように、取付ネジ5のフランジ部6Bを保護板部23の裏面31bに当接させた状態で、取付ネジ5のネジ先(頭部6側から突出する軸部7の先端)が固定板本体31の裏面31bから突出しないように設定されている。より具体的に説明すれば、この間隔は、取付ネジ5のフランジ部6Bを保護板部23の裏面23bに当接させた状態で、取付ネジ5のネジ先が固定板本体31の裏面31bと面一になるように設定されている。
【0036】
また、この固定状態では、固定板本体31が正面パネル20の上下一対の被覆板部24の間に入り込んでいる。すなわち、一対の被覆板部24同士の間隔は、固定板本体31の高さ寸法よりも大きく設定されている。なお、図示例(図3)では、固定板本体31の裏面31bが、被覆板部24の延在方向の先端よりも電気電子機器10の挿入方向に位置している、すなわち、固定板本体31の裏面31b側部分は一対の被覆板部24の間に入り込んでいないが、これに限ることはない。
【0037】
中間可動板40は、平板状の板材であり、正面パネル20の本体板部21及び保護板部23や、固定用板材30の固定板本体31及び第二取付板部33に平行するように、本体板部21や保護板部23と、固定板本体31や第二取付板部33との間に配される。この中間可動板40は、中間板本体41及び一対の延出板部42を一体に形成して構成されている。
中間板本体41は、固定用板材30の固定板本体31と同様に、正面パネル20の高さ方向に延びる帯板状に形成されている。この中間板本体41の高さ方向の両端部には、その厚さ方向に貫通して、取付ネジ5の軸部7を挿通させるための第二挿通孔44が形成されている。第二挿通孔44の大きさ(内径寸法)は、取付ネジ5の軸部7の外径よりも大きく、かつ、取付ネジ5の頭部6の外径よりも小さく設定されている。
【0038】
この中間板本体41は、固定板本体31の表面31aに対向配置され、固定板本体31の挿通孔34及び中間板本体41の第二挿通孔44が、固定板本体31や中間板本体41の厚さ方向に重なるように配列される。なお、図示例において、これら挿通孔34及び第二挿通孔44の軸線は互いに一致しているが、取付ネジ5の軸部7を挿通孔34及び第二挿通孔44の両方に挿通できる範囲内であれば互いにずれていても構わない。
このように配列された固定板本体31及び中間板本体41に対し、取付ネジ5の軸部7は、正面パネル20側に向く中間可動板40の中間板本体41の表面(前面)41a側から上記第二挿通孔44に挿通された上で、固定用板材30の固定板本体31の挿通孔34に挿通される。なお、このように取付ネジ5の軸部7を第二挿通孔44に挿通させるため、取付ネジ5の頭部6は中間可動板40の中間板本体41の表面41aに当接し、固定板本体の表面31aには当接しない。
【0039】
一対の延出板部42は、前述の中間板本体41の高さ方向の両端部からその幅方向に延出しており、それぞれ固定用板材30の第二取付板部33に対向配置されている。各延出板部42には、各第二取付板部33に向けて突出する棒状のスライド軸45が設けられ、第二取付板部33の貫通孔37に挿通されている。これによって、中間可動板40は、固定板本体31や第二取付板部33に対してその厚さ方向(Y軸方向)に移動可能とされている。なお、各スライド軸45の突出方向先端にはフランジ45Aが形成されているため、各スライド軸45が第二取付板部33の各貫通孔37から抜け落ちることは無い。すなわち、中間可動板40は、スライド軸45及びフランジ45Aによって、固定用板材30に対してY軸方向に移動可能とされているものの、着脱不能に取り付けられている。
【0040】
そして、固定用板材30の第二取付板部33と中間可動板40の延出板部42との間には、コイルスプリング(付勢手段)13が取り付けられている。このコイルスプリング13は、中間可動板40が固定用板材30から離間するように、中間可動板40を電気電子機器10の抜出方向(Y軸負方向)に付勢している。なお、図示例においては、コイルスプリング13が中間可動板40のスライド軸45に巻回されているが、これに限ることはなく、例えばスライド軸45から離れた位置に配されてもよい。
【0041】
以上のように構成される固定用板材30及び中間可動板40は、図5に示すように、正面パネル20の貫通孔27及び固定用板材30のスライド軸35によって、中間可動板40の第二挿通孔44及び固定用板材30の挿通孔34が、保護板部23と固定板本体31や中間板本体41の厚さ方向に重なる位置(保持位置、図5(a))と、保護板部23と前記厚さ方向に重ならない位置(着脱位置、図5(b))との間で、固定用板材30の表面や裏面に沿う方向に移動可能となっている。なお、保持位置は、固定用板材30及び中間可動板40が、固定用ネジ8によって正面パネル20に固定される位置である。また、着脱位置は、スライド軸35に形成されたフランジ35Aが正面パネル20の側板部22の内側面に当接する位置である。
そして、図示例では、保持位置に配された挿通孔34、第二挿通孔44及び操作孔28の軸線が互いに一致しているが、少なくとも取付ネジ5の軸部7を第二挿通孔44及び挿通孔34に挿通させて固定板本体31及び中間板本体41に取り付けられた取付ネジ5の頭部6を、正面パネル20の操作孔28に挿通した工具で操作することができれば、挿通孔34、第二挿通孔44及び操作孔28の軸線は互いにずれていても構わない。
【0042】
図5(a)に示すように、固定用板材30及び中間可動板40が保持位置に配されている場合には、取付ネジ5の頭部6が固定板本体31の表面31aから離れるように、取付ネジ5の軸部7を挿通孔34から抜く方向(電気電子機器10の抜出方向、Y軸負方向)に移動させようとしても、保護板部23と固定板本体31との間隔が前述したように設定されていることで、取付ネジ5の軸部7は挿通孔34から抜け出る前に取付ネジ5のフランジ部が保護板部23の裏面23bに当接するため、また、操作孔28の大きさが取付ネジ5のフランジ部6Bの外径よりも小さく設定されているため、取付ネジ5が挿通孔34や第二挿通孔44から抜け落ちることはない。
【0043】
また、固定用板材30及び中間可動板40が保持位置に配されている場合、中間可動板40の中間板本体41は、固定板本体31の表面31aと保護板部23の裏面23bとの間で固定板本体31の厚さ方向に移動可能となる。さらに、中間板本体41は、コイルスプリング13によって固定板本体31側から保護板部23の裏面23bに向けて付勢される。このように中間板本体41が付勢されていることで、固定板本体31及び中間板本体41に取り付けられた取付ネジ5の頭部6は、中間板本体41と保護板部23との間に挟み込まれることになる。
【0044】
なお、本実施形態では、保護板部23の操作孔28の大きさが、取付ネジ5の頭部本体6Aの外径よりも大きく、かつ、フランジ部6Bの外径よりも小さく設定されているため、頭部本体6Aのみが操作孔28に挿入され、フランジ部6Bは中間板本体41と保護板部23との間に挟み込まれることになる。ここで、フランジ部6Bは取付ネジ5の軸線L1に直交する方向に延在する平板であるため、フランジ部6Bが挟み込まれた状態では、取付ネジ5の軸線L1が固定板本体31の厚さ方向に一致することになる。
【0045】
一方、図5(b)に示すように、固定用板材30及び中間可動板40が着脱位置に配されている場合には、取付ネジ5の頭部6が固定板本体31の表面31aから離れるように、取付ネジ5の軸部7を挿通孔34や第二挿通孔44から抜く方向(Y軸負方向)に移動させても、取付ネジ5の頭部6は保護板部23に当接しない。したがって、取付ネジ5を固定用板材30や中間可動板40に対して着脱することができる。
なお、本実施形態では、固定用板材30及び中間可動板40の保持位置から着脱位置までの移動距離が取付ネジ5の着脱を可能とする最低限の距離となるように、スライド軸35の長さやフランジ35Aの形成位置が設定されている。
【0046】
次に、上記構成の電気電子機器10を収容棚1に対して着脱する際の作用について説明する。
例えば、電気電子機器10を収容棚1の収容部2に固定する場合には、はじめに、図2,3に示すように、電気電子機器10の筐体11をその背面側から収容部2内に挿入し、固定板本体31の裏面31bを収容棚1の前面1aに密着させる。この当接の際、取付ネジ5の頭部6がコイルスプリング13の付勢力によって保護板部23の裏面23bに押し付けられていることで、取付ネジ5のネジ先は固定板本体31の裏面31bから突出しない(図2,3参照)ため、取付ネジ5のネジ先は収容棚1の前面1aに衝突しない。言い換えれば、コイルスプリング13の付勢力によって取付ネジ5の軸部7の保護が図られている。
【0047】
そして、図6,7に示すように、各取付ネジ5の軸部7を収容棚1の各ネジ孔3に螺着させることで、電気電子機器10が収容棚1に固定されることになる。
この螺着の際には、取付ネジ5の軸線L1を収容棚1のネジ孔3の軸線に一致させる必要があるが、本実施形態では、固定板本体31の挿通孔34及び中間板本体41の第二挿通孔44の大きさが取付ネジ5の軸部7の外径よりも大きく設定されている。このため、電気電子機器10と収容棚1との寸法公差によるズレが生じていても、収容棚1のネジ孔3の軸線に対する取付ネジ5の軸線L1の位置合わせを容易に行うことができる。
また、取付ネジ5のフランジ部6Bが中間板本体41と保護板部23との間に挟みこまれた状態では、取付ネジ5の軸線L1が固定板本体31の厚さ方向、すなわち、収容棚1のネジ孔3の軸線と平行するため(図2,3参照)、収容棚1のネジ孔3の軸線に対する取付ネジ5の軸線L1の向きも容易に合わせることができる。
【0048】
そして、この螺着の際には、取付ネジ5の頭部本体6Aの凹部に工具の先端を挿入した上で、取付ネジ5を回転させる(操作する)ことで、取付ネジ5の頭部6が保護板部23の裏面23bから離れ、固定板本体31の表面31aに近づいていく。これに伴い、中間板本体41が、コイルスプリング13の付勢力に抗って固定板本体31の表面31aに近づき、密着する。すなわち、取付ネジ5をネジ孔3に螺着した状態では、取付ネジ5の締結力によって、固定板本体31が収容棚1の前面1aと中間板本体41とによって挟み込まれることになる。
また、この螺着の際には、取付ネジ5の頭部本体6Aが保護板部23の裏面23bから離れていく。すなわち、取付ネジ5の頭部本体6Aが保護板部23によって覆われるようになるが、保護板部23には工具を挿通させる操作孔28が形成されているため、保護板部23が工具による取付ネジ5の操作を阻害することはない。
【0049】
さらに、本実施形態では、同一の固定板本体31及び中間板本体41が複数(図示例では二つ)の取付ネジ5によって収容棚1の前面1aにネジ止め(固定)される。このため、例えば図8に示すように、複数の取付ネジ5を一つずつ順番にネジ孔3に螺着する場合、最初の一つの取付ネジ5(図8における下側の取付ネジ5)を螺着した時点で、中間板本体41が残りの取付ネジ5(図8における上側の取付ネジ5)のフランジ部6Bから離間するが、残りの取付ネジ5の軸線L1は、収容棚1のネジ孔3の軸線に平行した状態に維持される。
【0050】
この平行状態の維持は、保護板部23と固定板本体31との間隔が、取付ネジ5のフランジ部6Bを保護板部23の裏面23bに当接させた状態で取付ネジ5のネジ先が固定板本体31の裏面31bと面一となるように設定されていること、及び、固定板本体31が収容棚1の前面1aに密着することで、取付ネジ5のネジ先が固定板本体31の裏面31bから突出しないこと、に起因している。
すなわち、本実施形態のネジの保持構造では、取付ネジ5のフランジ部6Bが中間板本体41と保護板部23との間に挟み込まれていなくても、固定板本体31を収容棚1の前面1aに密着させるだけで、取付ネジ5の軸線L1が収容棚1のネジ孔3の軸線と平行するため、収容棚1のネジ孔3の軸線に対する取付ネジ5の軸線L1の向きを特に容易に合わせることができる。
【0051】
一方、図6,7に示す状態から電気電子機器10を収容部2から抜き出す場合には、はじめに、取付ネジ5を収容棚1のネジ孔3から取り外し、その後、正面パネル20の把持部25を把持する等して電気電子機器10を抜出方向(Y軸負方向)に移動させればよい。なお、取付ネジ5を取り外す際には、前述した取付ネジ5を螺着させる場合と同様に、工具を操作孔28に挿通させた上で、工具により取付ネジ5を操作すればよい。
また、本実施形態では、前述したように同一の固定板本体31及び中間板本体41が複数(図示例では二つ)の取付ネジ5によってネジ止めされているため、例えば図8に示すように、複数の取付ネジ5を一つずつ順番に取り外す場合、最後の一つの取付ネジ5(図8における下側の取付ネジ5)を取り外すまでは、固定板本体31及び中間板本体41が収容棚1の前面1aに密着した状態に維持される。
【0052】
このため、他の取付ネジ5(図8における上側の取付ネジ5)をネジ孔3から取り外しても、他の取付ネジ5の軸線L1は、複数の取付ネジ5を順番に螺着させる場合と同様に、傾かずに保護板部23の操作孔28の軸線に平行した状態に維持される。したがって、ネジ孔3から外れた他の取付ネジ5の頭部本体6Aを、容易に保護板部23の操作孔28に挿入することができる。
そして、最後の取付ネジ5を取り外すと、コイルスプリング13の付勢力によって中間板本体41が固定板本体31側から保護板部23に向けて移動するため、図3に示すように、全ての取付ネジ5のフランジ部6Bが中間板本体41と保護板部23との間に挟み込まれる。このため、電気電子機器10を収容部2から抜き出した後であっても、全ての取付ネジ5の軸線L1は、固定板本体31の厚さ方向に維持されることになる。また、全ての取付ネジ5の頭部本体6Aが、保護板部23の操作孔28に挿入された状態に維持される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によるネジの保持構造によれば、固定板本体31と保護板部23とを備えることで、従来のように抜け止めワッシャーを採用しなくても、取付ネジ5が固定板本体31及び中間板本体41からの脱落を防止できるため、抜け止めワッシャーから取付ネジが脱落する問題を回避でき、また、抜け止めワッシャーを交換するための定期的なメンテナンスが不要となる。
さらに、取付ネジ5の軸部7を収容棚1のネジ孔3に螺着させる際には、ネジ孔3の軸線に対する取付ネジ5の軸線L1の位置を容易に合わせることができるため、取付ネジ5を容易にネジ孔3に螺着させることが可能となる。
また、取付ネジ5の頭部6は、電気電子機器10を収容棚1にネジ止めした状態において、正面パネル20の保護板部23や被覆板部24によって覆われるため、不意に取付ネジ5に外力が加わることを防いで、取付ネジ5の頭部6を保護することができる。
【0054】
ところで、本実施形態のネジの保持構造では、固定板本体31が収容棚1の前面1aから離間した状態で、例えば図9(a)に示すように、中間板本体41にこれを保護板部23側から固定板本体31側に移動させる外力が作用する場合がある。これによって、中間板本体41が固定板本体31側に配されていると、取付ネジ5の軸部7のネジ先が固定板本体31の裏面31bから突出することで、取付ネジ5の軸線L1が、固定板本体31の厚さ方向に対して傾斜してしまうことがある。
ただし、本実施形態のネジの保持構造では、上記外力が解除された時点で、図9(b)に示すように、中間板本体41がコイルスプリング13の付勢力によって保護板部23に向けて自動的に移動する。これによって、挿通孔34と第二挿通孔44との間隔が広がり、さらに、取付ネジ5のフランジ部6Bが中間板本体41と保護板部23との間に挟み込まれる。したがって、取付ネジ5の軸線L1の向きを自動的に固定板本体31の厚さ方向に近づけ、一致させることができる。
【0055】
以上のことから、本実施形態のネジの保持構造によれば、中間板本体41を備えていることで、固定板本体31の厚さ方向に対する取付ネジ5の軸線L1の傾斜角度を緩和し、取付ネジ5の軸線L1を固定板本体31の厚さ方向に平行させることができるため、電気電子機器10を収容棚1にネジ止めする際に、取付ネジ5を容易にネジ孔3に螺着させることが可能となる。
また、中間板本体41がコイルスプリング13によって保護板部23側に付勢されていることで、手動で中間可動板40を保護板部23に向けて移動させる必要が無くなるため、電気電子機器10の取り扱いが簡便となる。
【0056】
さらに、本実施形態のネジの保持構造によれば、固定用板材30及び中間可動板40を保持位置と着脱位置との間で移動可能とすることで、取付ネジ5を固定用板材30や中間可動板40に対して容易に着脱することができる。すなわち、取付ネジ5を容易に交換することが可能となる。
また、本実施形態では、固定用板材30及び中間可動板40を保持位置と着脱位置との間で移動可能としながらも、正面パネル20に対して着脱不能としているため、固定用板材30や中間可動板40の紛失を防止できる。
さらに、固定用板材30及び中間可動板40を保持位置から着脱位置に移動させると、電気電子機器10内部の電気電子回路が露出する場合があるが、本実施形態では、保持位置から着脱位置までの移動距離を必要最低限としているため、上記電気電子回路の露出度合いを最小限に抑えることができる。したがって、作業者が電気電子回路に触れて感電したり、電気電子回路に故障が生ずることを抑制できる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
すなわち、上記実施形態では、本願発明のネジの保持構造を収容棚1に対してネジ止め固定される電気電子機器10に適用して説明したが、これに限ることは無い。本願発明のネジの保持構造は、少なくとも任意の固定対象物に対してネジ止め固定される板材に適用することが可能であり、例えば、電気電子機器10の筐体11にネジ止め固定されるパネルユニット12にも適用することができる。なお、筐体11にパネルユニット12をネジ止めする構成は、上記実施形態の筐体11から分離したパネルユニット12だけを上記実施形態の収容棚1にネジ止め固定する構成として考えればよい。
【0058】
また、本願発明のネジの保持構造は、パネルユニット12を構成する正面パネル20、固定用板材30及び中間可動板40によって構成されることに限らず、少なくとも正面パネル20の保護板部23、固定用板材30の固定板本体31及び中間可動板40の中間板本体41を備えていればよい。そして、これら保護板部23、固定板本体31及び中間板本体41の相互の位置関係や動作が、上記実施形態と同様に設定されていれば、相互の部材の取付手法・固定手法などは任意であってよく、上記実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0059】
具体的に説明すれば、例えば、中間板本体41を固定板本体31に対してその厚さ方向に移動可能とする構成は、上記実施形態のように、中間可動板40のスライド軸45やこれを挿通させる固定用板材30の貫通孔37に限らない。
また、コイルスプリング13は、延出板部42と固定用板材30の第二取付板部33との間に設けられることに限らず、例えば中間板本体41と固定板本体31との間に設けられてもよい。したがって、固定用板材30や中間可動板40には、第二取付板部33や延出板部42が形成されなくても構わない。
【0060】
さらに、中間板本体41を固定板本体31から離間する方向に付勢する構成は、コイルスプリング13に限らず、板バネ等の任意の付勢手段であってよい。また、この付勢手段は特に設けられなくても構わない。このような構成であっても、中間板本体41を手動で固定板本体31側から保護板部23側に移動させることで、上記実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
また、ネジの保持構造を構成する保護板部23は正面パネル20に一体に形成されることに限らず、例えば別個に形成されて正面パネル20や固定用板材30にネジ等によって着脱自在に固定されてもよい。
さらに、固定用板材30や中間可動板40は、正面パネル20に対して着脱不能に取り付けられるとしたが、例えば着脱可能に取り付けられてもよい。言い換えれば、固定用板材30のスライド軸35にはフランジ35Aが形成されていなくてもよい。
【0061】
また、本願発明のネジの保持構造は、中間板本体41を備えることに限らず、少なくとも固定板本体31及び保護板部23を備えていればよい。この構成であっても、固定板本体31に形成される挿通孔34の大きさを適宜設定するだけで、固定板本体31に取付ネジ5を保持することは十分に可能である。
さらに、取付ネジ5は、上記実施形態のように座金組み込みネジに限らず、例えば頭部及び軸部のみを有する通常のネジであっても構わない。ただし、取付ネジ5が通常のネジであっても、ネジの保持構造が中間板本体41を備える場合には、ネジの頭部を平板状に形成する、言い換えれば、取付ネジ5の頭部を平板状のフランジ部6Bのみによって構成することがより好ましい。取付ネジ5がこのように構成されていれば、上記実施形態の場合と同様に、保護板部23と中間板本体41との間に取付ネジ5の頭部を挟み込むだけで、容易に取付ネジ5の軸線L1を固定板本体31の厚さ方向に一致させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 収容棚(固定対象物)
3 ネジ孔
5 取付ネジ
6 頭部
6A 頭部本体
6B フランジ部
7 軸部
13 コイルスプリング(付勢手段)
20 正面パネル
23 保護板部(保護板)
23b 裏面
28 操作孔
30 固定用板材
31 固定板本体(板材)
31a 表面(他方の主面)
31b 裏面(一方の主面)
34 挿通孔
40 中間可動板
41 中間板本体
41a 表面(前面)
44 第二挿通孔
L1 取付ネジの軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材の厚さ方向に貫通する挿通孔に取付ネジの軸部を挿通させた上で、固定対象物のネジ孔に螺着させることにより、前記板材の一方の主面を固定対象物に密着させた状態で前記板材を固定対象物に固定する構造にあって、前記板材に前記取付ネジを保持するネジの保持構造であって、
前記板材の他方の主面側には、前記板材の厚さ方向に間隔をあけた位置に保護板が配され、
当該保護板と前記板材との間隔は、少なくとも前記取付ネジの頭部を前記板材の他方の主面から離間させて前記板材に対向する前記保護板の裏面に当接させた状態で、前記挿通孔に対する前記取付ネジの軸部の挿入状態が保持されるように設定され、
前記保護板には、その厚さ方向に貫通して前記取付ネジの頭部を操作する工具を挿通させるための操作孔が形成され、当該操作孔の大きさが前記取付ネジの頭部の外径よりも小さく設定されていることを特徴とするネジの保持構造。
【請求項2】
前記板材と前記保護板との間には、これらの間で前記厚さ方向に移動可能とされた中間可動板が設けられ、
当該中間可動板には、その厚さ方向に貫通して前記取付ネジの軸部を挿通させるための第二挿通孔が形成され、
前記取付ネジの軸部が、前記保護板の裏面に対向する前記中間可動板の前面側から前記第二挿通孔、及び、前記板材の挿通孔に順番に挿通され、
前記取付ネジの頭部は、前記取付ネジの軸部を前記第二挿通孔に挿通させた状態で、前記中間可動板の前面に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のネジの保持構造。
【請求項3】
前記取付ネジの頭部が、当該取付ネジの軸線に直交する方向に延在する平板状のフランジ部を備えることを特徴とする請求項2に記載のネジの保持構造。
【請求項4】
前記中間可動板を前記板材から前記保護板に向けて付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のネジの保持構造。
【請求項5】
前記板材及び前記中間可動板は、前記挿通孔及び前記第二挿通孔が前記保護板と前記厚さ方向に重なる保持位置と、前記保護板と前記厚さ方向に重ならない着脱位置との間で、前記保護板に対して前記主面に沿う方向に移動可能であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のネジの保持構造。
【請求項6】
前記板材は、前記挿通孔が前記保護板と前記厚さ方向に重なる保持位置と、前記保護板と前記厚さ方向に重ならない着脱位置との間で、前記保護板に対して前記主面に沿う方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のネジの保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7413(P2013−7413A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139371(P2011−139371)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】