説明

ネットワークシステム

【課題】 要求元の端末装置から低リソースの端末装置へ通知要求を送信して低リソースの端末装置の状態信号を取得する場合であっても、要求元の端末装置の情報を管理することが可能となるネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 ゲートウェイ装置3は、設備機器2が各々具備するオブジェクトの付与識別子を予め格納した機器構成テーブル3eと、通知要求を受信した場合に当該通知要求に用いられている付与識別子が機器構成テーブル3eに格納されておれば、要求元である端末装置1を当該付与識別子に対応させて記憶する通知設定テーブル3fと、設備機器2から監視情報を付与識別子とともに受信した場合に当該付与識別子が通知設定テーブル3f内の付与識別子と同一であれば、通知設定テーブル3fで当該付与識別子に対応付けされている端末装置1へ監視情報を送信するコマンド解析部3dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、監視対象の端末装置(設備機器)と、設備機器の監視を行う端末装置(クライアント端末)とを、ネットワークを介して接続したネットワークシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなネットワークシステムにおいて、設備機器は、1乃至複数の設備側オブジェクトを有しており、各設備側オブジェクトに付与された付与識別子を用いた実行要求がクライアント端末からあると、対応する設備側オブジェクトを実行して、当該設備機器の動作が制御される。さらに、クライアント端末から付与識別子を用いた通知要求が設備機器に送信されると、設備機器は、自己の状態変化があった場合に発生するイベント情報をクライアント端末へ送信し、クライアント端末では、各設備機器でのイベント発生状況を監視できる。
【特許文献1】特開2007−288447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のネットワークシステムでは、設備機器の能力(CPUやメモリ等)が高ければ、クライアント端末は、各設備機器に対して通知要求を直接送信し、各設備機器において要求元のクライアント端末の情報(コネクション識別子または要求元アドレス)を管理し、設備機器側で状態変化が発生すれば、要求元のクライアント端末を判別してイベント情報を要求元のクライアント端末へ送信すればよい。
【0005】
しかし、設備機器が能力の低い低リソースな機器の場合には、要求元のクライアント端末の情報を管理することが困難となる。また、通知要求に有効期限が設定される場合もあり、有効期限に関する情報も併せて設備機器が管理する場合には、設備機器の能力がさらに問題となる。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、要求元の端末装置から低リソースの端末装置へ通知要求を送信して低リソースの端末装置の状態信号を取得する場合であっても、要求元の端末装置の情報を管理することが可能となるネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、1乃至複数の第1の端末装置が接続した第1のネットワークと、1乃至複数の第2の端末装置が接続した第2のネットワークと、第1の端末装置と第2の端末装置との間の情報授受に介在するゲートウェイ装置とで構成され、第1の端末装置は、監視対象となる機能を有する機能部と、機能部の監視情報を定義した入出力定義を1乃至複数具備して当該入出力定義に基づいて監視情報を機能部から取得する処理を実行するための1乃至複数のオブジェクトを有し、各オブジェクトが機能部から取得した監視情報を当該オブジェクトに付与された付与識別子とともにゲートウェイ装置へ送信する情報処理部とを備え、第2の端末装置は、第1の端末装置が具備するオブジェクトが取得した監視情報を得るために当該オブジェクトに付与された付与識別子を用いた通知要求をゲートウェイ装置に対して行う監視情報取得手段を備え、ゲートウェイ装置は、第1の端末装置が各々具備するオブジェクトに付与された付与識別子を予め格納した第1の記憶手段と、通知要求を受信した場合に当該通知要求に用いられている付与識別子が第1の記憶手段に格納されておれば、当該通知要求の要求元である第2の端末装置の情報を当該付与識別子に対応させて記憶する第2の記憶手段と、第1の端末装置から監視情報を付与識別子とともに受信した場合に当該付与識別子が第2の記憶手段に記憶されている付与識別子と同一であれば、第2の記憶手段で当該付与識別子に対応付けされている第2の端末装置へ監視情報を送信する解析手段とを備え、第2の端末装置の監視情報取得手段は、ゲートウェイ装置から監視情報を取得することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ゲートウェイ装置が通知要求に対する応答処理を代行することによって、要求元の端末装置から低リソースの端末装置へ通知要求を送信して低リソースの端末装置の状態信号を取得する場合であっても、要求元の端末装置の情報を管理することが可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ゲートウェイ装置は、通知要求を受信した場合、当該通知要求に用いられている付与識別子を付与されたオブジェクトを具備する第1の端末装置へ当該通知要求を送信し、通知要求を受信した第1の端末装置は、監視情報を自装置からゲートウェイ装置へ送信する動作を開始することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、低リソースの端末装置は、監視情報を送信するか否かという最低限の情報のみを管理しており、通常は監視情報の送信を行わず、通知要求を受信してから監視情報の送信を開始するので、ネットワーク負荷の軽減を図ることができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2において、前記ゲートウェイ装置は、通知要求を受信した場合に当該通知要求に用いられている付与識別子が第1の記憶手段に格納されておれば、当該通知要求の要求元である第2の端末装置および当該通知要求の有効期限を当該付与識別子に対応させて第2の記憶手段に記憶し、現在時刻が有効期限を過ぎれば当該有効期限に対応する付与識別子を付与されたオブジェクトを具備する第1の端末装置へ無効要求を送信し、無効要求を受信した第1の端末装置は、監視情報を自装置からゲートウェイ装置へ送信する動作を停止することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、不要な監視情報の送信を行わないので、ネットワーク負荷をさらに軽減できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明では、要求元の端末装置から低リソースの端末装置へ通知要求を送信して低リソースの端末装置の状態信号を取得する場合であっても、要求元の端末装置の情報を管理することが可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本実施形態のネットワークシステムの構成を示し、端末装置1(第2の端末装置に相当し、本実施形態では3台の端末装置11,12,13とする)が、イーサネット(登録商標)を用いた高速ネットワークNT1(第2のネットワーク)に接続し、1乃至複数の端末装置2(第1の端末装置に相当し、本実施形態では3台の端末装置21,22,23とする)が、低速の専用線通信を用いた低速ネットワークNT2(第1のネットワーク)に接続し、高速ネットワークNT1と低速ネットワークNT2とはゲートウェイ装置3を介して互いに接続しており、高速ネットワークNT1と低速ネットワークNT2とで宅内ネットワークを構成している。
【0016】
また、高速ネットワークNT1は宅内サーバ4を通じてインターネットNT3に接続しており、インターネットNT3に接続したセンタサーバ5を介して外部の携帯端末等の端末装置61と上記各端末との間で通信を行うことも可能である。さらに宅内サーバ4は、インターネットNT3に接続されたセンタサーバ5との間の通信と、宅内ネットワーク(高速ネットワークNT1および低速ネットワークNT2)に接続された端末装置との間の通信との両方の機能を備える。さらに、宅内サーバ4における宅内ネットワークとの通信機能のうち重要な機能は、宅内ネットワークを構成する端末装置の検出と管理である。宅内サーバ4では、UPnP(Universal Plug and Play)を応用して宅内ネットワークに接続された端末装置を自動的に検出し、高速ネットワークNT1上の監視制御装置(端末装置1)で端末装置の監視ないし制御が可能になる。なお、宅内サーバ4の代わりにルータを用いてもよい。
【0017】
高速ネットワークNT1に接続した端末装置1は、CPUやメモリ等の能力が高い高リソースの端末装置であり、他の端末装置から高速ネットワークNT1経由で宅内の電気機器(図示無し)の操作を行うネットリモコン装置や、高速ネットワークNT1を介して情報を送受信して他の端末装置を監視制御する機能を有する監視制御装置等で構成される。例えば、外部の端末装置61から、センタサーバ5、インターネットNT3、宅内サーバ4を通して高速ネットワークNT1経由でネットリモコン装置(端末装置1)による宅内の電気機器の操作を行ったり、さらには監視制御装置(端末装置1)が高速ネットワークNT1上および低速ネットワークNT2上の各端末装置の監視制御を行うことができる。
【0018】
そして、図2に示すように、端末装置1は、通信部1aと、情報処理部1bと、機能部1cとを備え、通信部1aは、各端末装置1に固有のアドレス情報(IPアドレスおよびMACアドレス)を格納しており、このアドレス情報に基づいてネットワーク通信を行う。
【0019】
一方、低速ネットワークNT2に接続した端末装置2は、CPUやメモリ等の能力が低い低リソースの端末装置であり、照明機器のオン・オフ・調光制御を行う照明装置や、照明機器のオン・オフ・調光操作を行う照明用スイッチ装置や、空調機器の制御を行う空調装置や、空調機器のオン・オフ・温度設定を行う空調用スイッチ装置等の設備機器を構成する(以降、設備機器21,22,23と称し、設備機器21,22,23を区別しないときは設備機器2と称す)。
【0020】
そして、図3に示すように、設備機器2は、通信部2aと、情報処理部2bと、機能部2cとを備え、通信部2aは、各設備機器2に固有の情報(MACアドレスまたは他のプライベートアドレス)を格納しており、このアドレス情報に基づいてネットワーク通信を行う。
【0021】
端末装置1および設備機器2において、機能部1c,2cは、各端末装置1および設備機器2が提供するサービス(端末装置1および設備機器2の機能)に応じて構成された監視対象または制御対象であり、例えば、監視制御端末では、ネットワークNT1を介して情報を送受信して他の端末装置を監視制御する手段で構成され、照明装置では、照明負荷の点灯、消灯や明るさを制御する機能を有した点灯手段で構成され、照明用スイッチ装置では、スイッチ操作による操作情報を出力する機能を有した信号処理手段で構成される。
【0022】
情報処理部1b,2bは、本実施形態のネットワークシステムにおけるオブジェクトサーバ機能を実現するために、オブジェクトが含まれたソフトモジュール(以下、ソフトウェアモジュールと称す)が組み込まれており、機能部1c,2cに動作指示(動作制御)するための関数を与える処理、機能部1c,2cの現在状態を示す変数を取得する処理、さらには機能部1c,2cの状態変化が発生したことを示すイベント情報を取得する処理等を行う。
【0023】
本実施形態の端末装置1および設備機器2は、サービス提供のための処理を行う際に用いる1乃至複数のオブジェクトを、上記のように情報処理部1b,2b内に組み込まれたソフトウェアモジュールに具備しており、各オブジェクトは、機能部1c,2cが提供するサービスに対応する制御情報または監視情報(変数、関数、イベント情報、またはその組み合わせ)を定義した入出力定義(以下、インターフェースと称す)を1乃至複数具備し、各オブジェクトには、当該オブジェクトに固有に付与されたオブジェクト固有識別子(以下、OIDと称す)と、当該オブジェクトが具備する各インターフェースに付与されたインターフェース識別子(以下、IIDと称す)とで構成された付与識別子[OID+IID]を付与されている。
【0024】
そして、情報処理部1b,2bは、付与識別子を用いたコマンドを受け取った場合、当該コマンドに応じてオブジェクトを実行して、制御情報を機能部1c,2cへ与える処理や、監視情報を機能部1c,2cから取得する処理を行う。コマンドは、図4に示すように、コマンドの種類を示すオペコードと、提供するサービス(機能)を示す上記IIDと、対象を示す上記OIDと、さらにはオペコードの種類により必要に応じて付加されるパラメータとで構成される。
【0025】
オペコードとしては、コマンド内で指定したOID,IIDを付与されたオブジェクトがネットワーク上に存在するか否かを検索するための「Watch」、コマンド内で指定したOID,IIDを付与されたオブジェクトの値を取得するための「Get」、コマンド内で指定したOID,IIDを付与されたオブジェクトに値を設定するための「Set」、コマンド内で指定したOID,IIDを付与されたオブジェクトの機能を実行させる実行要求である「Invoke」等がある。
【0026】
また、コマンド内のOID,IIDは、全てのOID,IIDを示す「Wildcard」を設定可能であり、例えば、コマンド内のOID,IIDともに「Wildcard」を指定し、オペコード「Watch」を指定して、当該コマンドをネットワークの物理ブロードキャストで送信した場合、ネットワーク上に存在する全てのオブジェクトのOID,IIDの組を返送する。
【0027】
また、コマンド内のIIDのみに「Wildcard」を指定し、オペコード「Watch」を指定して、当該コマンドをネットワークの物理ブロードキャストで送信した場合、ネットワーク上に存在する全てのオブジェクトのうち指定したOIDを付与されたオブジェクトについて、指定したOIDと、当該指定したOIDに組み合わされたIIDとの組を返送する。
【0028】
また、コマンド内のOIDのみに「Wildcard」を指定し、オペコード「Watch」を指定して、当該コマンドをネットワークの物理ブロードキャストで送信した場合、ネットワーク上に存在する全てのオブジェクトのうち指定したIIDを付与されたオブジェクトについて、指定したIIDと、当該指定したIIDに組み合わされたOIDとの組を返送する。
【0029】
なお、提供サービスに対応する定義内容が同一のインターフェース、つまり同じIIDを付与したインターフェースは複数のオブジェクト下に割り当てることが許されるものである。さらに、特定の端末装置1または設備機器2を指定することが必要の無いサービスでは、同一のOIDを複数の端末装置1,設備機器2に割り当てることも可能である。
【0030】
また、本実施形態のネットワークシステムにおけるプロトコルには、OSI7階層モデルを用い、最上位階層のアプリケーション層としては、端末装置1,設備機器2の情報処理部1b,2bのソフトウェアモジュールが他の端末装置との間で変数、イベント情報、関数の各情報の授受を行うための独自のオブジェクトアクセスプロトコル(Object Access Protocol=OAP)を用いている。
【0031】
次に、ゲートウェイ装置3は、図1に示すように、ネットワークI/F部3aと、ネットワークI/F部3bと、ネットワーク変換部3cと、コマンド解析部3d(解析手段)と、機器構成テーブル3e(第1の記憶手段)と、通知設定テーブル3f(第2の記憶手段)とで構成される。
【0032】
ネットワークI/F部3aは、高速ネットワークNT1との間で情報授受を行い、ネットワークI/F部3bは、低速ネットワークNT2との間で情報授受を行い、ネットワーク変換部3cは、ネットワークI/F部3a,3b間で互いにやり取りされる情報を一方のネットワークの通信プロトコルから他方のネットワークの通信プロトコルに変換する。また、機器構成テーブル3eは、全設備機器2が各々具備するオブジェクトに付与された付与識別子(OID,IIDの組)を、設備機器2のアドレス情報に対応させて予め格納している。
【0033】
そして、端末装置1が上記コマンドを高速ネットワークNT1に送出すると、高速ネットワークNT1上の端末装置1や、ゲートウェイ装置3を介した低速ネットワークNT2上の設備機器2へ送信され、設備機器2が上記コマンドを低速ネットワークNT2に送出すると、低速ネットワークNT2上の設備機器2や、ゲートウェイ装置3を介した高速ネットワークNT1上の端末装置1へ送信される。端末装置1、設備機器2では、情報処理部1b、情報処理部2bがコマンドを受け取ると、当該コマンドに応じた上記処理を行う。
【0034】
さらに、コマンドに設定されるオペコードとして、上記以外に、コマンド内で指定したOID,IIDを付与されたオブジェクトに対して当該オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生を通知させる通知要求である「Subscribe」がある。この通知要求コマンドは、1つのオブジェクトから行われるだけでなく、複数のオブジェクトから行われることもあり、これはシステムに依存する。例えば、一定時間毎にイベントを発生するタイマ機能を有するインターフェースを備えるタイマオブジェクトの場合、システム内の他のオブジェクトがタイマオブジェクトに対して通知要求を行うことによって、通知要求元のオブジェクトはタイマオブジェクトのタイマ機能と連動した動作を実現できる。また、タイマオブジェクトが、一定時間毎に互いに異なるタイミングでイベントを発生する複数のインターフェースを備えている場合、これらの複数のインターフェースのいずれかに対して通知要求を行うことによって、通知要求元のオブジェクトは、所望のタイミングでイベントを受け取ることができる。
【0035】
また、通知要求コマンドのパラメータには通知要求の有効期限が指定されており、この有効期限は、通知要求元のオブジェクトが故障、離脱等によってシステム上から消失した場合に、通知要求先のオブジェクトがイベントを通知し続けることを防止するために設定されており、通知要求元のオブジェクトは一定時間毎に通知要求コマンドを送信し、要求の更新がなされない場合(通知要求に対して受信確認パケット「Subscribe Accepted」が返信されない場合)は、その通知要求を無効にする処理を行う。
【0036】
次に、オペコード「Subscribe」を指定した通知要求コマンドが端末装置1から送出された場合の処理について、以下説明する。なお、コマンドを高速ネットワークNT1に送出する端末装置1として端末装置11(以降、クライアント端末11と称す)に特定する。
【0037】
クライアント端末11が通知要求コマンドを高速ネットワークNT1上の端末装置1に対して送信した場合のシーケンスが図5に示されており、まずクライアント端末11が具備する通知要求元のオブジェクト(監視情報取得手段)が、特定の付与識別子(OID,IIDの組)、有効期限を指定した通知要求コマンドを高速ネットワークNT1上に送出すると(S1)、通知要求コマンドで指定されている特定の付与識別子を付与された通知要求先のオブジェクトを具備する端末装置12が受信確認パケットをクライアント端末11へ返信する(S2)。そして、端末装置12が具備する通知要求先のオブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があると(S3)、当該変数の変化またはイベントの発生があったオブジェクトに付与された付与識別子と、通知要求先のオブジェクトの現在値(変数、イベント)とを含むChangeパケット(監視情報)が、クライアント端末11が具備する通知要求元のオブジェクトに対して通知される(S4)。端末装置12が具備する通知要求先のオブジェクトは、受け取った通知要求コマンドに指定されている各項目(通知要求元のオブジェクトおよびアドレス、有効期限等)をオブジェクト自身が管理し、この有効期限内においてオブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生がある度に(S5)、Changeパケットの通知を行う(S6)。
【0038】
そして、クライアント端末11が具備する通知要求元のオブジェクトは、最新の通知要求コマンドに設定した有効期限を過ぎるまでに通知要求コマンドを再度送出し(S7)、通知要求が無効化しないように、この通知要求コマンドの再送を一定時間毎に行う。
【0039】
このように通知要求は、本来、通知要求先のオブジェクトに対して直接行われ、通知要求先のオブジェクトは通知要求コマンド内の各項目を管理する必要があるが、低速ネットワークNT2上の設備機器2は、CPUやメモリ等の能力が低い低リソースの端末装置であり、設備機器2が具備するオブジェクトが通知要求コマンド内の各項目を管理することは難しい。このため、高速ネットワークNT1上の端末装置1から低速ネットワークNT2上の設備機器2に対する通知要求は、ゲートウェイ装置3が通知要求元のオブジェクトおよびアドレス、有効期限等の情報管理を代行しており、この代行処理について図6のシーケンスを用いて説明する。
【0040】
まず、クライアント端末11が通知要求コマンドを高速ネットワークNT1に送出すると、ゲートウェイ装置3はネットワークI/F部3aを介して通知要求コマンドを受け取る(S11)。そして、コマンド解析部3dは、受け取ったコマンドが、オペコードに「Subscribe」を指定した通知要求コマンドであれば、当該通知要求コマンドに指定されている付与識別子(OID,IIDの組)が、機器構成テーブル3eに格納されている付与識別子のいずれかと一致するか否かを判定し、一致した場合には、当該通知要求コマンドの要求元であるクライアント端末11の情報(アドレス情報)を当該付与識別子に対応させて通知設定テーブル3fに記憶し、受信確認パケットをクライアント端末11へ返信する(S12)。一方、一致しなければ通知要求を破棄する。
【0041】
通知設定テーブル3fは、図7に示すように、設備機器2からのChangeパケットを転送する通知先のIPアドレス(すなわち、通知要求元であるクライアント端末のIPアドレス)と、クライアント端末11が具備する通知要求元のオブジェクトのOIDと、通知要求先のオブジェクトの付与識別子(すなわち、通知要求コマンドに指定されているOID,IIDの組)と、通知要求コマンドの有効期限とを互いに対応させて、これらの各項目の履歴を通知要求の発生毎に格納している。なお、端末装置1は、各端末装置に固有のIPアドレスに基づいてネットワーク通信を行うことから、コマンド解析部3dは要求元のIPアドレスからコマンドの要求元の端末装置を特定でき、さらに通知要求元のオブジェクトのOIDや、通知要求コマンドの有効期限は、コマンド内のパラメータにおいて指定されている。また、設備機器2からのChangeパケットを転送する通知先のアドレスとしては、通知要求元であるクライアント端末のコネクション先のサーバのIPアドレスでもよい。
【0042】
そして、設備機器2においては、通知要求の有無に関わらず、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があると、変数の変化またはイベントの発生があったオブジェクトの付与識別子と、当該オブジェクトの現在値(変数、イベント)とを含むChangeパケットを、ブロードキャストまたはマルチキャストで低速ネットワークNT2内に通知するように設定されている。
【0043】
ここで、設備機器21が具備するオブジェクト内において変数の変化またはイベントの発生があった場合(S13)、ブロードキャストまたはマルチキャストで、低速ネットワークNT2内の他の設備機器22,23、およびゲートウェイ装置3へChangeパケット(監視情報)を通知する(S14)。
【0044】
Changeパケットを受け取ったゲートウェイ装置3のコマンド解析部3dは、通知設定テーブル3fを参照して、Changeパケットに含まれる付与識別子が、通知要求先のオブジェクトの付与識別子に設定されているか否かを判別する(S15)。Changeパケットに含まれる付与識別子が、通知要求先のオブジェクトの付与識別子に設定されている場合、当該通知要求先のオブジェクトに対応付けられている通知要求元アドレス(を有するクライアント端末11)にChangeパケットを転送し、クライアント端末11は、Changeパケットを受信して、通知要求先のオブジェクトの現在値(変数、イベント)を通知要求元のオブジェクトに引き渡す(S16)。また、Changeパケットに含まれる付与識別子が、通知要求先のオブジェクトの付与識別子に設定されていない場合は、処理を終了する。
【0045】
そして、クライアント端末11が具備する通知要求元のオブジェクトは、最新の通知要求コマンドに設定した有効期限を過ぎるまでに通知要求コマンドを再度送出し(S17)、通知要求が無効化しないように、この通知要求コマンドの再送を一定時間毎に行う。
【0046】
したがって、高速ネットワークNT1上の端末装置1が、低速ネットワークNT2上の低リソースの設備機器2に対して通知要求を行う場合、ゲートウェイ装置3が上記のように端末装置1の情報管理(通知要求元のオブジェクトおよびアドレス、有効期限等の情報管理)を代行することによって、通知要求元の情報を管理することが可能となり、CPUやメモリ等の能力が低い低リソースの設備機器2であっても、通知要求に対応することができる。
【0047】
なお、本実施形態において高速ネットワークNT1に接続した端末装置1は、CPUやメモリ等の能力が高い高リソースの端末装置としているが、端末装置1を低リソースの端末装置で構成してもよい。
【0048】
(実施形態2)
本実施形態のネットワークシステムにおいて、ゲートウェイ装置3のコマンド解析部3dは、受け取ったコマンドが、オペコードに「Subscribe」を指定した通知要求コマンドであれば、当該通知要求コマンドに指定されている付与識別子(OID,IIDの組)が、機器構成テーブル3eに格納されている付与識別子のいずれかと一致するか否かを判定し、一致した場合には、当該通知要求コマンドの要求元であるクライアント端末11の情報を当該付与識別子に対応させて通知設定テーブル3fに記憶し、受信確認パケットをクライアント端末11へ返信するとともに、通知要求先の付与識別子を付与された低速ネットワークNT2上のオブジェクトに対して通知要求コマンドを転送する。
【0049】
本実施形態の設備機器2は、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生時に、Changeパケット(監視情報)をゲートウェイ装置3へ送信するか否かを切り替える通知設定機能を具備しており、通常は通知設定機能をオフさせて、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があった場合でも、Changeパケットの送信を行わない。しかし、通知要求コマンドを受信した設備機器2では、通知設定機能をオフからオンに切り替えて、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があった場合には、Changeパケットをゲートウェイ装置3へ送信する。この通知設定機能のオン時における設備機器2では、オブジェクトが、通知要求元のオブジェクトおよびアドレス、有効期限等の情報管理を行うことなく、ただ通知設定機能のみをオンするだけであり、低リソースの設備機器2であっても通知要求に対応できる。
【0050】
したがって、設備機器2は、通知設定機能によってChangeパケットを送信するか否かという最低限の情報のみを管理しており、通常は通知設定機能をオフにして、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があった場合でも、Changeパケットの送信を行わず、通知要求を受信して以降は通知設定機能をオンにして、オブジェクトからChangeパケットをゲートウェイ装置3へ送信するので、ネットワーク負荷の軽減を図ることができる。
【0051】
さらに、ゲートウェイ装置3は、通知設定テーブル3fにおいて(図7参照)、現在時刻が有効期限を過ぎて無効になった通知要求の通知要求先のオブジェクトに対して、通知不要パケットを送信する。通知不要パケットを受信した設備機器2では、通知設定機能をオンからオフに切り替えて、オブジェクト内の変数の変化またはイベントの発生があった場合でも、Changeパケットの送信を行わない。
【0052】
したがって、不要なChangeパケットの送信を行わないので、ネットワーク負荷をさらに軽減できる。
【0053】
なお、他の構成は実施形態1と同様であり説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1のネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】同上の高速ネットワーク上の端末装置の構成を示す図である。
【図3】同上の低速ネットワーク上の端末装置の構成を示す図である。
【図4】同上のコマンドの構成を示す図である。
【図5】同上の高速ネットワーク上の通知要求の処理シーケンスを示す図である。
【図6】同上の低速ネットワーク上の通知要求の処理シーケンスを示す図である。
【図7】同上の通知設定テーブルの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 端末装置
2 設備機器
3 ゲートウェイ装置
3d コマンド解析部
3e 機器構成テーブル
3f 通知設定テーブル
NT1 高速ネットワーク
NT2 低速ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1乃至複数の第1の端末装置が接続した第1のネットワークと、1乃至複数の第2の端末装置が接続した第2のネットワークと、第1の端末装置と第2の端末装置との間の情報授受に介在するゲートウェイ装置とで構成され、
第1の端末装置は、監視対象となる機能を有する機能部と、機能部の監視情報を定義した入出力定義を1乃至複数具備して当該入出力定義に基づいて監視情報を機能部から取得する処理を実行するための1乃至複数のオブジェクトを有し、各オブジェクトが機能部から取得した監視情報を当該オブジェクトに付与された付与識別子とともにゲートウェイ装置へ送信する情報処理部とを備え、
第2の端末装置は、第1の端末装置が具備するオブジェクトが取得した監視情報を得るために当該オブジェクトに付与された付与識別子を用いた通知要求をゲートウェイ装置に対して行う監視情報取得手段を備え、
ゲートウェイ装置は、第1の端末装置が各々具備するオブジェクトに付与された付与識別子を予め格納した第1の記憶手段と、通知要求を受信した場合に当該通知要求に用いられている付与識別子が第1の記憶手段に格納されておれば、当該通知要求の要求元である第2の端末装置の情報を当該付与識別子に対応させて記憶する第2の記憶手段と、第1の端末装置から監視情報を付与識別子とともに受信した場合に当該付与識別子が第2の記憶手段に記憶されている付与識別子と同一であれば、第2の記憶手段で当該付与識別子に対応付けされている第2の端末装置へ監視情報を送信する解析手段とを備え、
第2の端末装置の監視情報取得手段は、ゲートウェイ装置から監視情報を取得する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記ゲートウェイ装置は、通知要求を受信した場合、当該通知要求に用いられている付与識別子を付与されたオブジェクトを具備する第1の端末装置へ当該通知要求を送信し、通知要求を受信した第1の端末装置は、監視情報を自装置からゲートウェイ装置へ送信する動作を開始することを特徴とする請求項1記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記ゲートウェイ装置は、通知要求を受信した場合に当該通知要求に用いられている付与識別子が第1の記憶手段に格納されておれば、当該通知要求の要求元である第2の端末装置および当該通知要求の有効期限を当該付与識別子に対応させて第2の記憶手段に記憶し、現在時刻が有効期限を過ぎれば当該有効期限に対応する付与識別子を付与されたオブジェクトを具備する第1の端末装置へ無効要求を送信し、無効要求を受信した第1の端末装置は、監視情報を自装置からゲートウェイ装置へ送信する動作を停止することを特徴とする請求項2記載のネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−239544(P2009−239544A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82095(P2008−82095)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】