説明

ネットワーク会議システム

【課題】課金残高が無くなる時にユーザに課金の必要性を通知するとともに、使い勝手の良いネットワーク会議システムを提供する。
【解決手段】管理サーバ101は、ネットワーク100に接続中の音声会議装置111の課金状況を検出し(S202)、課金残高が所定金額以下であれば、該当する音声会議装置111に対して音質低下制御信号を送信する(S203→S204)。該当する音声会議装置111は、音質低下制御信号を受信すると(S104)、放音制御部12にて、放音音声の音質を低下させる制御を行う(S105)。この制御は、課金残高が「0」であっても放音を停止させることなく継続して行う。管理サーバ101が課金残高を確認し、音質復帰制御信号を音声会議装置111に送信すると(S205→S206→S207)、音声会議装置111は、音質を通常状態に復帰させる(S106→S107→S103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークを介して複数の会議装置を接続して会議を行うネットワーク会議システム、特に課金制度を用いたネットワーク会議システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の遠隔地点間に設置された会議装置をネットワークで接続し、各会議装置間で音声データや映像データを送受信することで会議を行うネットワーク会議システムが数多く提案されている。
【0003】
このようなネットワーク会議システムでは、各会議装置をP2Pで直接接続する方式と、中継用の管理サーバを備え、当該管理サーバを介して会議装置間の送受信を行う方式とが存在する。そして、管理サーバを介する方式では、管理サーバの運用費を、各会議装置を利用するユーザに賄ってもらうために、課金制度を用いることが一般的である。
【0004】
課金制度では、当然のことながら課金していないか、課金残高が0になると、この会議システムを利用することができない。このため、課金残高が0になる前に、通信が停止されることをユーザに通知する方法が各種考案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、プリペイド残高が所定閾値を下回った場合に、通話相手端末に対して通信切断アラームを送信し、まもなく通信が切れる旨の音声アナウンスを流す方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−364224公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、プリペイド残高すなわち課金残高が無くなるまでは、通常の状態と変わらず通話を行うことができるが、課金残高が無くなると、完全に通話できなくなってしまう。すなわち、通話ができるかできないかという二者選択的な処理しか行えなかった。そして、このような装置では、課金残高が無くなる間際に通話していた内容が突然遮断されるので、後に課金し直して話を再開する場合に、どこから再会したらよいのか分からなくなるという問題も生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、課金残高が無くなるのに近づいて、音声や映像の通信データの再生品質を低下させることでユーザに課金の必要性を通知するとともに、課金残高が無くなっても、辛うじて会話を継続することができるネットワーク会議システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数の音声会議装置を管理する管理サーバと、該管理サーバを介してそれぞれに音声データを送受信し、受信した音声データに基づく放音を行うとともに、収音に基づく音声データを送信する複数の音声会議装置と、を備えたネットワーク会議システムに関するものである。このネットワーク会議システムでは、管理サーバは、各音声会議装置に対する課金状況の管理を行う。そして、管理サーバが、ある音声会議装置の課金残高が所定額以下に達したことを検出すると、該管理サーバまたは課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、当該音声会議装置からの放音音声の音質を、課金残高が所定額よりも高い時よりも低下させる制御を行うことを特徴としている。
【0009】
この構成では、管理サーバは、ネットワークを介して接続される各音声会議装置に対する課金状況を監視する。そして、管理サーバが、ある音声会議装置の課金残高が所定額以下であることを検知すると、該当する音声会議装置が受信する音声データを管理サーバか該当する音声会議装置が制御することで、該当する音声会議装置から放音される音声の音質を低下させる。これにより、課金残高が所定額以下となった音声会議装置を利用するユーザには、通常状態すなわち課金残高が所定額より高い状態よりも悪い音質の音が放音される。この結果、ユーザは、課金残高が少なくなったことを知り、新たに課金する等の処理を行い、放音音質を元に戻すことができる。この際、音声会議装置は、課金残高が0になっても、放音を中止することなく、悪い音質の状態で放音を続ける。これにより、突然、放音音声がなくなることがないので、ユーザにとっては聞きにくいものの、会議が突然中断されることがない。
【0010】
なお、放音される音声に対する音質低下を行うとともに、自装置で収音して相手先に送信する音声の音質を低下させる処理を行っても良い。
【0011】
この発明のネットワーク会議システムでは、管理サーバは、課金残高が所定額以下に達した音声会議装置に送信される音声データの通信制限を行うことを特徴としている。
【0012】
この構成では、管理サーバが音声データの通信帯域制限を行ったり、複数チャンネルを利用する通信であれば利用チャンネル数を減らすことで、通信制限を行う。これにより、音声会議装置が通常通りの処理のままでも、放音音声の音質が低下する。
【0013】
この発明のネットワーク会議システムでは、課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、受信した音声データを課金残高に応じて間引きして再生することを特徴としている。
【0014】
この構成では、課金残高が所定額以下に達した音声会議装置が、デジタル形式の音声データからアナログ形式の音声信号に復調する場合に、音声データを間引きして復調(再生)する。これにより、管理サーバが通常の通信制御処理を行っていても、該当する音声会議装置の放音音声の音質が低下する。
【0015】
この発明のネットワーク会議システムでは、課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、課金残高が所定額以下になったことを表示することを特徴としている。
【0016】
この構成では、課金残高が所定額以下に達した音声会議装置が音質を低下させるとともに、課金残高が所定額以下になったことを示す表示を行うことで、課金残高が少なくなったことを、さらに確実にユーザへ提示することができる。
【0017】
この発明は、複数のテレビ会議装置を管理する管理サーバと、該管理サーバを介してそれぞれに映像データを送受信し、受信した映像データに基づく放映を行うとともに、撮像に基づく映像データを送信する複数のテレビ会議装置と、を備えたネットワーク会議システムに関するものである。このネットワーク会議システムでは、管理サーバは、各テレビ会議装置に対する課金状況の管理を行う。そして、あるテレビ会議装置の課金残高が所定額以下に達したことを管理サーバが検出すると、該管理サーバまたは課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、当該テレビ会議装置の表示映像の画質を、課金残高が所定額よりも高い時よりも低下させる制御を行うことを特徴としている。
【0018】
この構成では、管理サーバは、ネットワークを介して接続される各テレビ会議装置に対する課金状況を監視する。そして、管理サーバが、あるテレビ会議装置の課金残高が所定額以下であることを検知すると、該当するテレビ会議装置が受信する映像データを、管理サーバか該当するテレビ会議装置が制御することで、該当するテレビ会議装置で放映される映像の画質を低下させる。これにより、課金残高が所定額以下となったテレビ会議装置を利用するユーザには、通常状態すなわち課金残高が所定額より高い状態よりも悪い映像が放映される。この結果、ユーザは、課金残高が少なくなったことを知り、新たに課金する等の処理を行い、映像画質を元に戻すことができる。この際、テレビ会議装置は、課金残高が0になっても、放映を中止することなく、悪い画質の状態で放映を続ける。これにより、突然、放映映像がなくなることがないので、ユーザにとっては見にくいものの、会議が突然中断されることがない。
【0019】
なお、放映映像に対する画質低下を行うとともに、自装置で撮像して相手先に送信する映像の画質を低下させる処理を行っても良い。
【0020】
また、この発明のネットワーク会議システムでは、管理サーバは、課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置に送信される映像データの通信制限を行うことを特徴としている。
【0021】
この構成では、管理サーバが映像データの通信帯域制限を行ったり、複数チャンネルを利用する通信であれば利用チャンネル数を減らすことで、通信制限を行う。これにより、テレビ会議装置が通常通りの処理のままでも、放映映像の画質が低下する。
【0022】
また、この発明のネットワーク会議システムでは、課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、受信した映像データから再生する画質を課金残高に応じて低下させることを特徴としている。
【0023】
この構成では、課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置が、デジタル形式の映像データからアナログ形式の映像信号に復調する場合に、映像データの復調(再生)品質を低下させる。これにより、管理サーバが通常の通信制御処理を行っていても、該当するテレビ会議装置の放映映像の画質が低下する。
【0024】
また、この発明のネットワーク会議システムでは、課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、課金残高が所定額以下になったことを表示することを特徴としている。
【0025】
この構成では、課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置に対する画質を低下させるとともに、課金残高が所定額以下になったことを示す表示を行うことで、課金残高が少なくなったことを、さらに確実にユーザへ提示することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、課金残高が無くなるのに近づいて、音声や映像の通信データの再生品質を低下させることでユーザに課金の必要性を容易に且つ確実に通知するとともに、課金残高が無くなっても辛うじて会話を継続させることで、ユーザにとって使い勝手の良い課金制のネットワーク会議システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のネットワーク会議システムについて図を参照して説明する。
なお、本実施形態では2台の音声会議装置をネットワークおよび管理サーバに接続した構成について示すが、より多くの音声会議装置を接続した構成であっても良い。また、一台の音声会議装置に対して二人が在席する場合を示したが、在席する人数もこれに限るものではない。
【0028】
図1は本実施形態のネットワーク会議システムの構成図である。
図2は本実施形態の音声会議装置の主要構成を示すブロック図である。
図3は本実施形態の管理サーバの主要構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のネットワーク会議システムは、それぞれに放音および収音を行う音声会議装置111A,111Bと、管理サーバ101とを、ネットワーク100で接続した構成からなる。音声会議装置111Aには会議者A,Bが在席し、音声会議装置111Bには会議者C,Dが在席している。
【0030】
管理サーバ101と、音声会議装置111A,111Bとは、SSL−VPN形式のネットワークを構成している。すなわち、管理サーバ101には、SSL−VPN装置が内蔵または外付けされており、ネットワーク100を介して音声会議装置111A,111Bとの間でSSL−VPNトンネルを生成する。
【0031】
そして、通常の会議状態では、音声会議装置111Aで収音した会議者A,Bからの音声信号は、トンネリング技術を利用して管理サーバ101を介して音声会議装置111Bに送信され、音声会議装置111Bは、この受信した音声信号を会議者C,Dに放音する。一方、音声会議装置111Bで収音した会議者C,Dからの音声信号は、トンネリング技術を利用して管理サーバ101を介して音声会議装置111Aに送信され、音声会議装置111Aは、この受信した音声信号を会議者A,Bに放音する。
【0032】
音声会議装置111A,111B(以下、総じて記載する場合には、音声会議装置111とする。)は、図2に示すように、複数のマイクMIC、複数のスピーカSP、メイン制御部10、通信制御部11、放音制御部12、収音制御部13、エコーキャンセル部14、操作表示部15を備える。
【0033】
音声会議装置111A,111Bは、図1に示すような長尺状の筐体を有し、筐体の長尺方向に沿う両側面に、当該長尺方向に沿って複数のマイクMICが所定パターンで配列設置されている。また、複数のスピーカSPは、筐体の底面に、長尺方向に沿って所定パターンで配列設置されている。
【0034】
メイン制御部10は、音声会議装置111の全体制御を行うとともに、操作表示部15により入力された操作命令に従って、音声会議装置111の各部を制御する。また、メイン制御部10は、通信制御部11を介してネットワーク100上の管理サーバ101から各種の制御信号を受け付けると、この制御信号に従う制御を音声会議装置111の各部に行う。具体的には、管理サーバ101から音質低下制御信号を受け付けると、メイン制御部10は、放音制御部12に放音音質低下制御信号を与える。また、必要に応じて、メイン制御部10は、収音制御部13にも収音音質低下制御信号を与える。一方、管理サーバ101から音質復帰制御信号を受け付けると、メイン制御部10は、放音制御部12に放音音質復帰制御信号を与える。また、必要に応じて、メイン制御部10は、収音制御部13にも収音音質復帰制御信号を与える。
【0035】
通信制御部11は、管理サーバ101、ネットワーク100を介して相手先装置からのSSL−VPN方式に基づいて暗号化された音声データを受信して復号し、放音用音声信号を生成する。通信制御部11は、この放音用音声信号をエコーキャンセル部14を介して放音制御部12に与える。通信制御部11は、エコーキャンセル部14から出力された収音ビーム信号を、SSL−VPN方式に基づいて暗号化し、ネットワーク100、管理サーバ101を介して、相手装置に送信する。また、通信制御部11は、管理サーバ101からのSSL−VPN方式に基づいて暗号化された各種制御信号を復号し、メイン制御部10に与える。
【0036】
放音制御部12は、放音ビーム生成部、D/Aコンバータ、放音用AMPを備える。放音ビーム生成部は、メイン制御部10から与えられる放音範囲に従って、放音音声信号に基づく音声が指定放音範囲で放音されるように、各スピーカSPに与える個別放音音声信号を生成する。この際、放音ビーム生成部は、各個別放音音声信号の遅延関係および振幅関係を制御することで、放音範囲への放音を制御する。
【0037】
また、放音制御部12は、メイン制御部10から音質低下制御信号を受け付けると、各スピーカSPに与える個別放音音声信号の音質を低下させる処理を行う。例えば、デジタル形式の各個別放音音声信号を間引きして(サンプルデータの間隔を広げて)、D/Aコンバータに与える。また、放音制御部12は、メイン制御部10から音質復帰制御信号を受け付けると、各スピーカSPに与える個別放音音声信号の音質を復帰させる処理を行う。
【0038】
D/Aコンバータは、与えられた個別放音音声信号をデジタル−アナログ変換して、放音用AMPに与え、放音用AMPはアナログ形式に変換された個別放音音声信号を増幅して、対応するスピーカSPに与える。
【0039】
各スピーカSPは、与えられた個別放音音声信号に基づいて放音する。このように、各スピーカSPが与えられた個別放音音声信号に基づく放音を行うことで、指定放音範囲に音声が放音される。
【0040】
各マイクMICは、自装置周りの音声を収音して電気変換することで収音音声信号を生成して、収音制御部13に与える。
【0041】
収音制御部13は、収音用AMP、A/Dコンバータ、収音ビーム生成・選択部を備える。収音用AMPは、各マイクMICの収音音声信号を増幅して、A/Dコンバータに与え、A/Dコンバータはアナログ形式の収音音声信号をデジタル形式に変換して、収音ビーム生成・選択部に与える。
【0042】
収音ビーム生成・選択部は、各収音音声信号の遅延処理および振幅処理等を行うことにより、予め指定された収音範囲(例えば、前述の放音範囲と同等)からの音声のみを収音してなる収音ビーム信号を生成する。この際、収音ビーム生成・選択部は、予め設定しておけば複数の収音範囲に対応する収音ビーム信号をそれぞれ生成する。そして、収音ビーム生成・選択部は、例えば、所定閾値以上の音量を有する収音ビーム信号を選択してエコーキャンセル部14に出力する。
【0043】
また、収音制御部13は、メイン制御部10から音質低下制御信号を受け付けると、収音ビーム信号の音質を低下させる処理を行う。例えば、収音制御部13は、エコーキャンセル部14に出力する収音ビーム信号を間引きして(サンプルデータの間隔を広げて)出力する。また、収音制御部13は、メイン制御部10から音質復帰制御信号を受け付けると、収音ビーム信号の音質を復帰させる処理を行う。
【0044】
エコーキャンセル部14は、収音制御部13から与えられた収音ビーム信号に対して、既知のエコーキャンセル処理を行って、通信制御部11に与える。ここで、簡単にエコーキャンセル処理とは、通信制御部11から入力される放音音声信号と装置の設置環境に基づく擬似回帰音信号を生成する。そして、エコーキャンセル処理は、収音制御部13から与えられる収音ビーム信号から擬似回帰音信号を減算することにより行われる。
【0045】
通信制御部11は、エコーキャンセル処理された収音ビーム信号を、ネットワーク形式の音声データに変換して、ネットワーク100、管理サーバ101、ネットワーク100を介して相手先装置に送信する。
【0046】
管理サーバ101は、システム制御部102、ネットワーク制御部103、課金状況管理部104を備える。システム制御部102は、管理サーバ101全体の制御を行う。また、システム制御部102は、課金状況管理部104から課金状況を取得して、所定金額以下の課金残高しか有しない音声会議装置111がネットワーク100に接続していれば、該当する音声会議装置に対して通信制限を行う制御をネットワーク制御部103に与える。また、システム制御部102は、音声会議装置111の接続時間を計測し続け、取得した課金残高から接続時間に応じた金額を順次減算して、課金残高を更新する。そして、該当する音声会議装置111の接続が停止されると、その時点の課金残高を課金状況管理部104に与える。また、システム制御部102は、ユーザからの課金処理を検出すると、課金状況管理部104に課金情報を与える。そして、課金残高不足であった音声会議装置111の課金残高が所定金額より高くなったことを検出すると、通信制限解除を行う制御をネットワーク制御部103に与える。
【0047】
ネットワーク制御部103は、ネットワーク100に接続されている音声会議装置111の情報を取得するとともに、双方で通信させる音声データの通信制御を行う。また、システム制御部102から通信制限を行うべき音声会議装置111の情報を受け付けると、ネットワーク制御部103は、対応する音声会議装置111に対して音声低下制御信号を与える。また、システム制御部102から通信制限解除を行うべき音声会議装置111の情報を受け付けると、ネットワーク制御部103は、対応する音声会議装置111に対して音声復帰制御信号を与える。
【0048】
課金状況管理部104は、ネットワーク100に接続される音声会議装置111毎の課金状況データと、課金残高の閾値データ(前述の課金残高に対する所定金額に相当)とを記憶する。課金状況管理部104は、システム制御部102からの読み出し要求に応じてこれらのデータをシステム制御部102に与えるとともに、システム制御部102から新たな課金情報を受け付けると、課金状況データを更新記憶する。
【0049】
このような音声会議システムでは、通常状態すなわち通信を行う各音声会議装置111の課金残高が所定金額より高い場合には、音声会議装置111はこのような音声信号処理を行い、管理サーバ101を介して双方の音声会議装置111間で通話を行う。一方で、通信を行う各音声会議装置111の課金残高が所定金額以下である場合には、通信制限が行われ、課金残高が所定金額以下の音声会議装置111における放収音音声の音質が低下する。
【0050】
図4は前述の音質低下処理および音質復帰処理を示すフローチャートである。
【0051】
管理サーバ101は、ネットワーク100に対する音声会議装置111の接続状況を常時監視している。
【0052】
会議者が音声会議装置111を起動し、ネットワークへの通信を開始する操作を行うと、音声会議装置111は、ネットワーク100への接続を開始する(S101)。そして、音声会議装置111は、管理サーバ101に対して自装置の装置IDとともに接続開始情報を送信する(S102)。
【0053】
管理サーバ101は、接続開始情報を受信すると(S201)、装置IDを取得して、該当する音声会議装置111の課金状況を取得する(S202)。ここで、管理サーバ101は、課金残高が予め設定した所定金額以下であることを検出すると、該当する音声会議装置111へ音質低下制御信号を送信する(S203→S204)。一方、管理サーバ101は、課金残高が所定金額よりも高ければ、継続して課金状況を監視する。この際、管理サーバ101は、接続時間に応じて課金残高を減少させながら監視を行う。
【0054】
音声会議装置111は、音質低下制御信号を受け付けていない状態では、受信した音声データに基づく放音用音声信号をそのまま放音し、自装置が収音する収音音声信号に基づいて音声データを生成して送信する(S103)。
【0055】
音声会議装置111は、管理サーバ101からの音質低下制御信号を検出すると、放音音声に対する音質低下制御を行って放収音処理を行う(S104→S105)。例えば、前述のように、デジタル形式の個別放音音声信号を間引きして放音したり、個別放音音声信号の周波数帯域を制限して放音したりする。さらには、各スピーカから放音される音声をビーム化して、非常に狭い範囲にしか放音しないようにする。この際、収音信号に対しても、間引き処理や周波数帯域制限処理を行うようにしても良い。このような音質低下制御は、管理サーバ101から音質復帰制御信号が与えられるまで継続的に行われる。
【0056】
管理サーバ101は、ネットワークを介した課金処理や、他の方法、例えばインターネット上に設けられた当該音声会議システムに対するWebを介して課金処理が行われると、該当する音声会議装置に対する課金情報を更新する。そして、管理サーバ101は、課金された音声会議装置が、音質低下制御中の音声会議装置であり、課金後の課金残高が前述の所定金額よりも高くなったことを検出すると、該当する音声会議装置に対して音質復帰制御信号を送信する(S205→S206→S207)。
【0057】
音質低下制御中の音声会議装置111は、管理サーバ101からの音質復帰制御信号を検出すると、放音音声に対する音質低下制御を解除して、通常の放収音処理を行う(S106→S107→S103)。
【0058】
このようなシステム処理を行うことにより、各音声会議装置を利用するユーザ(会議者)に、課金残高が残り少ないことを認識させることができる。これにより、会議者に対して課金の必要性を容易に且つ確実に促すことができる。そして、課金残高に応じて突然通信が遮断されないので、会議を続行したいが急な課金ができないような状況で、音声品質が悪いものの会議を続けることができる。
【0059】
なお、この際、課金残高に応じて音質低下量を変化させても良い。すなわち、課金残高が少なくなるほど音質を徐々に悪くし、課金残高が「0」になった時点で音質を最も悪くするようにしても良い。この場合、課金残高が「0」であっても、音声データの通信を完全には遮断しない。このような処理方法を用いることで、課金残高が無くなっても放音機能(および収音機能)が制限されるものの、完全に遮断されることがないので、会議を続行したいが急な課金ができないような状況で、音声品質が悪いものの会議を続けることができる。
【0060】
このように本実施形態の構成を用いることで、課金制度に対応しながら、使い勝手の良い音声会議システムを構成することができる。
【0061】
なお、前述の説明では、各音声会議装置で音質低下制御および音質復帰制御を行う場合を示したが、管理サーバで音質低下制御および音質復帰制御を行うようにしても良い。
【0062】
図5は、管理サーバ101で音質低下制御および音質復帰制御を行う場合のフローチャートである。このような場合、音声会議装置111は通常の放収音処理を常時行う(S301→S302→S303)。したがって、管理サーバ101の処理のみを具体的に説明する。
【0063】
管理サーバ101は、接続開始情報を受信すると(S401)、装置IDを取得して、該当する音声会議装置111の課金状況を取得する(S402)。ここで、管理サーバ101は、課金残高が予め設定した所定金額以下であることを検出すると、該当する音声会議装置111への音声データの通信制限を行う。例えば、管理サーバ101は、音声データの帯域制限を行ったり、複数チャンネルで通信を行っている場合には、使用チャンネル数を減少させる(S403→S404)。一方、管理サーバ101は、課金残高が所定金額よりも高ければ、継続して課金状況を監視する。この際、管理サーバ101は、接続時間に応じて課金残高を減少させながら監視を行う。
【0064】
そして、管理サーバ101は、通信制限中の音声会議装置に対する課金処理を検出し、且つ課金後の課金残高が前述の所定金額よりも高くなったことを検出すると、該当する音声会議装置に対しての通信制御を解除する。例えば、管理サーバ101は、音声データの帯域制限を解除したり、使用可能なチャンネル数を増加させる(S405→S406→S407)。
【0065】
このように、管理サーバ101により、帯域制限等の通信制限制御を行うことで、音声会議装置の放収音処理の切り替え制御を行うことなく、課金残高が所定金額以下である音声会議装置からの放音音声の音質を低下させることができる。これにより、前述のように、会議者に対して課金の必要性を容易に且つ確実に促すことができる。また、課金残高が「0」になった時点で通信を遮断することなく、制限を厳しくするようにしても良い。この場合、課金残高が「0」であっても、音声データの通信を完全には遮断しない。このような処理方法を用いることで、課金残高が無くなっても放音機能(および収音機能)が制限されるものの、完全に遮断されることがないので、会議を続行したいが急な課金ができないような状況で、音声品質が悪いものの会議を続けることができる。そして、課金残高が少ないながらも有る場合と、課金残高が全くない場合とを聴覚的に異ならせて知らせることができる。
【0066】
また、管理サーバ101で音質低下制御を行う場合には、音声会議装置が受信する時点で音声データは音質が低下したものとなっている。このため、エコーキャンセル部14に入力される放音用音声信号も既に音質が低下したものとなる。この場合、エコーキャンセル部14は、この音質低下後の放音用音声信号を用いて擬似回帰音信号を生成するので、実際に放音する音声と同等の音質レベルの放音用音声信号による擬似回帰音信号が得られる。したがって、エコーキャンセル部14は、より効果的にエコーキャンセル処理を行うことができる。これにより、自装置の通信相手である、課金残高に問題のない音声会議装置に送信する音声データのS/N比を高くすることができ、課金残高に問題のない音声会議装置の放音時にエコーの少ない音声を放音させることができる。このような考え方を、前述の音声会議装置で音声低下制御を行う装置に適応するため、音声低下制御を通信制御部11で行うようにしても良い。また、図2の破線で示すように、放音制御部12で音声低下制御された後の音声信号をエコーキャンセル部14に与えるようにしても良い。
【0067】
なお、前述の各方法では、放音音声を制御する方法を示したが、収音音声を制御する方法を併用することで、課金残高が所定金額以下である音声会議装置と通信をしている相手側装置に対しても通知を行うことができる。
【0068】
また、前述の説明では、聴覚的に会議者に課金残高の低下を知らせる方法を用いたが、これに加え、音声会議装置に備えられている操作表示部15に、課金残高が所定金額以下であることを知らせる表示を行わせても良い。この場合、課金残高が所定金額以下であることを示すテキスト表示を行ったり、操作表示部15の表示色(例えば、バックライト発光色)を、通常時と異なるものにすれば良い。
【0069】
また、前述の説明では、音声データを通信する音声会議システムを例に説明したが、それぞれの音声会議装置に対して液晶ディスプレイ等の表示装置や、カメラ等の撮像装置を加えたテレビ会議装置に対しても前述の構成および処理を適用することができる。
【0070】
図6はテレビ会議装置の主要構成を示すブロック図である。
図6に示すテレビ会議装置は、図2に示した音声会議装置111に対して、さらに、映像制御部16、カメラ17、表示器18を備えたものである。このような構成のテレビ会議装置同士では、映像データと音声データとをSSL−VPN方式に基づいて暗号化したり、復号することで、通信を確立する。
【0071】
映像制御部16は、映像用CODECとカメラ制御部とを備える。映像用CODECは、通信制御部11で復号された映像データを、デコードして表示器18に与える。また、映像用CODECは、カメラ17が撮像した映像信号をエンコードして通信制御部11に与える。映像制御部16は、収音方向等に基づいてカメラ17の撮像方向を制御する。カメラ17は、自装置周囲を撮像して映像信号を出力し、表示器18はデコードされた映像信号を表示する。
【0072】
この場合、品質低下制御を行う対象を音声データのみでなく映像データを含むようにしても良い。例えば、課金残高が所定金額以下である場合に、映像データの画質を低下させ、さらに音声データの音質を低下させるようにしても良い。
【0073】
この場合、画質低下の方法としては、映像用CODECの設定を制御し、(1)映像データのフレームレートを低下させたり、(2)映像データの解像度を低下させたり、(3)動画を静止画にしたり、(4)モザイク処理を行う、等の処理を行う。そして、これらの処理は、前述の音声制御の場合と同様に、管理サーバで通信制限を行うことにより実現しても良い。また、このような処理は課金残高に応じて、徐々に画質や音質が低下するように設定しても良い。この際、課金残高が有る状態と、課金残高が「0」の状態とで異ならせるようにしても良い。例えば、課金残高が有る場合には、フレームレートの低い動画に設定し、課金残高が「0」まで達すると静止画に切り替えるようにする。これにより、課金残高が少ないながらも有る場合と、課金残高が全くない場合とを容易に識別することができる。
【0074】
また、このような表示器18を備えるテレビ会議装置の場合、映像を覆うように表示画面の全面に課金残高が所定金額以下であることを知らせる表示を行わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態のネットワーク会議システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態の音声会議装置の主要構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の管理サーバの主要構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の音質低下処理および音質復帰処理を示すフローチャートである。
【図5】管理サーバ101で音質低下制御および音質復帰制御を行う場合のフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態のテレビ会議装置の主要構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
100−ネットワーク、101−管理サーバ、102−システム制御部、103−ネットワーク制御部、104−課金状況管理部、111,111A,111B−音声会議装置、10−メイン制御部、11−通信制御部、12−放音制御部、13−収音制御部、14−エコーキャンセル部、15−操作表示部、16−映像制御部、111’−テレビ会議装置、17−カメラ、18−表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音声会議装置を管理する管理サーバと、
該管理サーバを介してそれぞれに音声データを送受信し、受信した音声データに基づく放音を行うとともに、収音に基づく音声データを送信する複数の音声会議装置と、を備えたネットワーク会議システムであって、
前記管理サーバは、各音声会議装置に対する課金状況の管理を行い、
ある音声会議装置の課金残高が所定額以下に達したことを前記管理サーバが検出すると、該管理サーバまたは前記課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、当該音声会議装置からの放音音声の音質が、前記課金残高が所定額よりも高い時よりも低下する制御を行うネットワーク会議システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、前記課金残高が所定額以下に達した音声会議装置に送信される音声データの通信制限を行う請求項1に記載のネットワーク会議システム。
【請求項3】
前記課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、受信した音声データを前記課金残高に応じて間引きして再生する請求項1に記載のネットワーク会議システム。
【請求項4】
前記課金残高が所定額以下に達した音声会議装置は、前記課金残高が所定額以下になったことを表示する請求項1〜3のいずれかに記載のネットワーク会議システム。
【請求項5】
複数のテレビ会議装置を管理する管理サーバと、
該管理サーバを介してそれぞれに映像データを送受信し、受信した映像データに基づく放映を行うとともに、撮像に基づく映像データを送信する複数のテレビ会議装置と、を備えたネットワーク会議システムであって、
前記管理サーバは、各テレビ会議装置に対する課金状況の管理を行い、
あるテレビ会議装置の課金残高が所定額以下に達したことを前記管理サーバが検出すると、該管理サーバまたは前記課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、当該テレビ会議装置の表示映像の画質が、前記課金残高が所定額よりも高い時よりも低下する制御を行うネットワーク会議システム。
【請求項6】
前記管理サーバは、前記課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置に送信される映像データの通信制限を行う請求項5に記載のネットワーク会議システム。
【請求項7】
前記課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、受信した映像データから再生する画質を前記課金残高に応じて低下させる請求項5に記載のネットワーク会議システム。
【請求項8】
前記課金残高が所定額以下に達したテレビ会議装置は、前記課金残高が所定額以下になったことを表示する請求項5〜7のいずれかに記載のネットワーク会議システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−60720(P2008−60720A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232551(P2006−232551)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】