説明

ネットワーク切り替え方法および携帯無線端末

【課題】携帯無線端末の接続先ネットワークの検索/切り替え動作を適切に制御することにより、比較的簡単な構成でかつ消費電力をおさえる。
【解決手段】在圏セルの遷移が発生して携帯電話が新たなセルに在圏を開始した場合(S21、Y)、記憶されている接続先ネットワーク優先順位を参照して現在利用しているネットワークの優先順位が最上位でなければ(S22、N)、CPUは無線ネットワーク切り替え履歴を参照し、過去に切り替えがあった事を認知したとき(S23、Y)には、比較的短い周期での検索パターンを採用してネットワーク探索を行う(S24)。一方、無線ネットワーク切り替え履歴(41)に記録されていないセルに在圏した場合(S23、N)には、優先順位の高い無線ネットワークが検索できる可能性は低いと考えられるので、比較的長い周期でのネットワークの検索を行う(S25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信方式の異なる複数の通信システムに対応可能に構成された携帯電話機等の携帯無線端末におけるネットワーク切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動無線通信システムとして、PDC(Personal Digital Cellular)、PHS(Personal
Handy-phone System)、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple
Access)、GSM(Global System for Mobile communication)などの複数の無線システムが混在しており、また、ホットスポットとしても機能する高速通信が可能な無線LANに対する需要も大きくなっているが、これらの無線通信システムは、システム毎に別々の周波数を用いて、別々の規格に従った通信を行っているため、各無線通信システム用の無線端末は、それぞれのシステムに固有の端末となり、その対応システムのみにしか使用できないという問題がある。
【0003】
このような複数の無線システムが混在する状況に対応するために、複数の無線システムに対応した無線機器をあらかじめ内蔵し、複数の無線システムに接続可能にしたマルチモード携帯端末に関する技術が種々提案されている(特許文献1〜5)。これらのマルチモード携帯端末では、ハードウェアやソフトウェアを切り替えることにより、使用無線システムの切り替え、あるいは各無線システムの通信パラメータを変更することができ、ユーザの希望や、使用中の無線システムの伝搬状態等が悪い場合に、他の無線システムにシステム間ハンドオーバを行うことを可能にしている。
【0004】
図1は、複数の無線システムが混在する一般的な携帯電話システムを示しており、無線ネットワークA(12)と無線ネットワークB(13)の両方に対応する機器を内蔵した携帯電話装置(11)は、携帯電話サービス提供事業者が設置する無線ネットワークA(12)に在圏しているときは、無線ネットワークA(12)から携帯電話サービスを受け、携帯電話装置(11)が移動し無線ネットワークA(12)のサービスエリアから外れて無線ネットワークB(13)のサービスエリアに入ると、無線ネットワークB(13)から携帯電話サービスを受ける事になる。
【0005】
一般的に携帯電話サービス提供事業者が設置している無線ネットワークは、その事業者毎に固有のIDを持っている。また、この無線ネットワークは複数の小さな無線サービスエリアの塊で構成されている。この小さな無線サービスエリアはセルと呼ばれ、それぞれに基地局固有のID情報を持っている。この無線ネットワークおよびセルの固有IDは、無線を通じてサービスを受けている携帯電話装置へ通知されており、携帯電話装置は自身がサービスを受けているネットワークおよびセルを識別して特定する事が出来る。
【0006】
このように2つ以上の通信方式あるいは無線周波数帯に対応した携帯電話装置では、通常、より優先順位の高いネットワークへ接続されるように制御される。そのため、現在接続されて有効となっているネットワークの優先度が当該携帯電話装置で利用可能なネットワークの中で優先順位が最上位でない場合、停止しているより優先順位の高い他方の機器も定期的に起動して周辺の電波状況をチェックし、現在有効となっている無線機器に比べて停止中の無線機器の方がより優位にあると判断したとき、利用する通信方式あるいは無線周波数帯の切り替えを行っている。
【0007】
このように、現在接続されて有効となっているネットワークの優先度が当該携帯電話装置で利用可能なネットワークの中で優先順位が最上位でない場合には、通信に直接利用していないより優先順位の高い他方の無線機器も並行して動作させる関係上、単一の通信方式あるいは無線周波数帯にしか対応していない携帯電話装置よりも消費電力が多くなるという問題がある。
【0008】
図9は、一般的な2つ以上の無線方式に対応した携帯電話装置において、より優先順位の高いネットワークへの接続を試みる為の無線処理部の検索動作を行う際に、停止している優先順位の高い他方の機器を定期的に起動して周辺の電波状況をチェックする検索手法として採用されている時間軸を主に用いた代表的なモデルを示しており、優先順位の低いネットワークのセルに在圏している場合、在圏当初は頻繁に他ネットワークの検索を行うが、発見できない場合は、検索頻度を段々と下げていく方法が採られている。図9のパターンの場合、例えば、最初の3本は60秒毎、次の2本は10分毎、以降、20分毎、という具合に検索が行われる。
【0009】
なお、優先順位の高いネットワークのセルに在圏している場合には、現在在圏しているネットワークを継続して利用していく事が困難な状況となったとき(電波状況が悪くなった場合など)に、優先順位の低いネットワークへの接続を試みる為の無線処理部の検索動作が行われる。
【0010】
このような方法により省電力化を図ってはいるが、停止している他方の無線機器も定期的に起動して一定の頻度で周辺の電波状況をチェックしているために、単一の通信方式あるいは無線周波数帯にしか対応していない携帯電話装置に比べて消費電力が多くなる。そのため、1回の充電で利用可能な時間が短くなり、またそれをカバーする為に大型電池を搭載した場合には、重量/装置サイズ/価格などの面で不利となる。
【0011】
このような問題を解消する方法として、例えば特許文献1では、通信方式の異なる複数の通信システムの電波を送受信できる通信端末装置の記憶手段に、過去に待受け状態になった時点における自局の位置情報と、どのシステムで待受け状態になったかを示すシステム情報とを予め記憶させておき、位置検出手段により自局の位置を検出した際に制御手段により前記記憶手段の記憶内容を参照し、前記検出された自局の位置に応じて前記複数の通信システムにより設定される無線チャネルのいずれかを選択するようにシステム切り替え手段を制御することによって、実際に通信できるまでの待ち時間を短縮するとともに、電池の持続時間を長くする方法が提案されている。
【0012】
また特許文献4では、無線LANによる通信モードと1xEV−DO等の他の通信方式による通信モードとを有する携帯端末において、携帯端末が無線LANのホットスポットに入ったことを検出すると、通信モードを1xEV−DOから無線LANに自動的に切替えるとともに、GPSで取得した位置情報を無線LANにより基地局を介してサーバにアップロードし、ホットスポットから出たことを検出すると、無線LANから1xEV−DOへ自動的に切り替えると共に、GPSで取得した位置情報を1xEV−DOによりサーバにアップロードして、サーバに備えられたメモリに格納されるホットスポット情報を更新することにより、常に最新のホットスポット情報をサーバで管理し、最新のホットスポット情報に基づいて通信モードの切り替えを自動的に行えるようにしている。
【0013】
【特許文献1】特開2001−103569号公報
【特許文献2】特開2003−284150号公報
【特許文献3】特開2004−289756号公報
【特許文献4】特開2005−079844号公報
【特許文献5】特開2005−136553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献1に記載の発明によれば、過去に待受け状態になった時点における自局の位置情報と、どのシステムで待受け状態になったかを示すシステム情報とを予め記憶させておき、位置検出手段により自局の位置を検出した際に前記記憶手段の記憶内容を参照し、自局の位置に応じて前記複数の通信システムにより設定される無線チャネルのいずれかを選択するので、選択されていない無線システムの電波状況をチェックする必要はなく消費電力を抑えることができるが、そのために、GPS等の位置検出用の受信手段を別途備える必要があるので、その分コストアップとなるとともに、この位置検出用の受信手段よる電力消費のため、低消費電力化の面でもそれほど効果が得られないという問題がある。
【0015】
また、特許文献4に記載の発明の場合も、携帯電話装置側のGPS機能追加やソフトウェア改良に加え、サーバの設置やメンテナンスなどコストが増加するという問題がある。
【0016】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、複数の無線システムに対応可能な携帯無線端末が備えている構成の範囲で、携帯無線端末の接続先ネットワークの検索/切り替え動作を適切に制御することにより、比較的簡単な構成でかつ消費電力をおさえることができるマルチモード携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワークが利用可能であって、現在利用している無線ネットワーク以外の無線ネットワーク用の機器を定期的に起動して他ネットワークの探索を行い、より優位の無線ネットワークが検出されたときに当該優位の無線ネットワークに切り替える携帯無線端末のネットワーク切り替え方法において、前記携帯無線端末に、過去に在圏したことのあるセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴を記憶しておき、該携帯無線端末が移動中に、在圏しているセル情報が変化したとき前記無線ネットワークの切り替え履歴を検索し、現在在圏中のセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴が検出されたときには、第1のパターンにより前記他ネットワークの探索を行い、現在在圏中のセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴が検出されなかったときには、前記第1のパターとは異なる第2のパターンにより前記他ネットワークの探索を行うことを特徴とし、過去に現在在圏しているセルでネットワークの切り替えが行われたか否かに応じて、他ネットワークの探索頻度を最適に調整することによって無駄な電力消費を避けるようにする。
【0018】
例えば、前記第1のパターンとして、在圏しているセル情報が変化した当初のみ短い周期で他ネットワークの探索を行うパターンを用い、前記第2のパターンとして、前記第1のパターンの周期よりも長い周期で他ネットワークの探索を行うパターンを用いることができる。
【0019】
また本発明の、通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワークを利用可能に構成された携帯無線端末は、前記携帯無線端末が移動しながら前記無線ネットワークから通信サービスを受けているとき、直前に在圏した無線ネットワークのセル情報と現在在圏している無線ネットワークのセル情報が順次更新されて記憶されるセル遷移履歴記憶領域、および前記携帯無線端末が過去に在圏して通信サービスを受けたときに実行した前記無線ネットワーク間の切り替え履歴が前記無線ネットワークのセル情報と関連付けして記憶される無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域を有するメモリ部と、前記セル遷移履歴記憶領域に記憶された前記直前に在圏した無線ネットワークのセルと現在在圏している無線ネットワークのセルの間で無線ネットワークの切り替えが発生したとき、該直前に在圏した無線ネットワークのセル情報と現在在圏している無線ネットワークのセル情報を前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に記憶する無線ネットワーク切り替え履歴記憶手段と、前記携帯無線端末が移動中に、在圏しているセル情報が変化したとき前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域の前記直前に在圏した無線ネットワークのセル情報の中から現在在圏中のセル情報を検索する現セル情報検索手段と、前記現セル情報検索手段による検索の結果、前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に現在在圏中のセル情報が検出されたときには、第1のパターンにより他ネットワークの探索を行い、前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に現在在圏中のセル情報が検出されないときには、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンにより他ネットワークの探索を行う他ネットワーク探索手段と、前記他ネットワーク探索手段により現在利用中の無線ネットワークよりも優位の無線ネットワークが検出されたとき、利用ネットワークを前記優位の無線ネットワークに切り替えるネットワーク切り替え手段と、を備えていることを特徴としている。
【0020】
前記第1のパターンとして、例えば前記セル遷移履歴が更新された当初のみ短い周期で他ネットワークの探索を行うパターンを採用し、前記第2のパターンとして、前記セル遷移履歴が更新されてから次の更新まで長い周期で他ネットワークの探索を行うパターンを採用することにより、他ネットワーク探索のための消費電力を減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、過去のネットワーク切り替えやセルの遷移情報を蓄積する事で、他ネットワーク探索に際して無駄な無線制御部動作を省く事が出来、その結果、携帯電話装置の消費電力を削減する事が出来る。
【0022】
また、この効果を生む為には、携帯電話装置のソフトウェア制御のみを変更する事で対応が可能であり、安価なコストで実現が出来る。
【0023】
更に、異なる方式間のネットワークの切り替え時だけでなく、同様に無線部のパラレル的動作を必要とする周波数帯の異なるネットワークの検索でも同様に周波数帯の切り替え履歴テーブルを持つ事で、同じロジックで同じ効果を得る事が出来る。
【0024】
この消費電力の削減によって携帯電話装置の電池寿命が向上する事から、同じ待受時間を確保するのであれば電池の小型化による筐体サイズ/重量の削減、電池などのコスト削減が出来、同じ電池サイズであれば待受時間の向上を図る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明が適用される、複数の無線システムが混在する携帯電話システムの例を示しており、互いに異なる無線方式の無線ネットワークA(12)と無線ネットワークB(13)が、隣接あるいは一部オーバラップして存在しており、携帯電話装置(11)は、無線ネットワークA(12)および無線ネットワークB(13)の携帯電話サービスを、各エリアにおいてそれぞれの無線方式で受けることができる構成を有している。
【0026】
図2は、図1に示す携帯電話システムの詳細を示しており、この両無線ネットワークA(12)およびB(13)は、それぞれセルと呼ばれる小単位の無線サービスエリアの塊で構成されている。
【0027】
即ち、無線ネットワークA(12)は、セルA1(21)、セルA2(22)、…、セルA11(25)、セルA12(26)などの複数のセルで構成されており、無線ネットワークA(12)とは別の無線方式を用いている無線ネットワークB(13)は、セルB1(23)、セルB2(24)、…、セルB11(27)、セルB12(28)など、こちらも複数のセルで構成されている。また、両無線ネットワークA(12)およびB(13)は隣接しており、無線ネットワークA(12)のセルA2(22)、セルA12(26)等は、無線ネットワークB(13)のセルB1(23)、セルB11(27)等と一部オーバラップして存在している。
【0028】
この様なネットワーク状況で携帯電話装置(11)が図2に示す点線に沿って移動した場合、携帯電話装置(11)は、セルA1、セルA2、…と接続先セルを切り替えながら無線ネットワークAを利用した携帯電話サービスを受け、セルA2において、より接続優先度の高い無線ネットワークBを検知すると、無線ネットワークAから無線ネットワークBへの接続先ネットワークの切り替えを行い、セルB1でサービスを受け始める。その後、セルB2からセルB12、セルB11と接続先セルを切り替えながら携帯電話装置(11)は移動していく。ここでセルB11から外れネットワークBのサービス圏外となった場合、ネットワーク検索を行い、再びネットワークAからセルA12を用いてサービスを受け始め、セルA11へ接続先セルを切り替えて到達する。
【0029】
携帯電話サービス提供事業者が設置しているこの無線ネットワークA(12)、無線ネットワークB(13)は、それぞれその事業者毎に固有のIDを持っており、また、各無線サービスエリアにおけるセルは、それぞれの基地局固有のID情報を持っている。この無線ネットワーク固有のIDおよびセルの固有IDは、無線を通じてサービスを受けている携帯電話装置(11)へ通知されており、携帯電話装置(11)は自身がサービスを受けているネットワークおよびセルをこの固有のIDを識別することにより特定する。なお以下の説明では、便宜上、無線ネットワークA(12)はGSM方式、無線ネットワークB(13)はW‐CDMA方式であるとして説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態を示す携帯電話装置の概略ブロック図である。
【0031】
携帯電話装置(11)は、メモリ部(32)に格納されている制御プログラムおよび各種の情報を処理して本携帯電話装置の動作を制御するCPU部(31)と、制御プログラムおよび各種の情報を記憶しているメモリ部(32)と、第1の無線通信方式(GSM方式)を担当する無線処理部A(33)と、無線処理部Aとは別方式の第2の無線通信方式(W‐CDMA方式)を担当する無線処理部B(34)と、利用者への情報表示および利用者から入力された情報の解析を担当するUI(User-Interface)部(35)等から構成されている。
【0032】
また、メモリ部(32)には、この携帯電話装置が受ける事の出来る携帯電話サービス提供事業者についての情報が、その優先度と共に格納されている。加えて、2つの無線処理部の動作パターンなどの制御用データ、UI部(35)で使う各種の文字や画面データあるいは制御データ等が格納されている。更に本実施形態では、このメモリ部(32)には、本実施形態の携帯電話装置の接続先ネットワークの検索/切り替え動作を適切に制御するために参照される無線ネットワーク切り替え履歴データと、セル遷移履歴データを格納する領域が用意されている。
【0033】
図4は、本実施形態のメモリ部に格納された無線ネットワーク切り替え履歴データおよびセル遷移履歴データの記録テーブルの例を示す図である。
【0034】
メモリ部(32)の記録テーブルに格納されている無線ネットワーク切り替え履歴(41)には、2つの無線方式の切り替えが行われた際にサービスを終了したセルの固有情報、ならびに新たにサービスを受ける事になったセルの固有情報が、無線方式の切り替え方向と関連付けて格納され、セル遷移履歴(42)には、携帯電話装置(11)がセル間を移動した際の直前及び現在のセルの情報が格納される。また、接続先ネットワーク優先順位(43)は、予め携帯電話サービス提供事業者との間の契約による優先順位に従ってその情報が格納されている。
【0035】
図4には一例として、無線ネットワーク切り替え履歴(41)の履歴「AB2」に、GSM方式からW‐CDMA方式へのネットワーク切り替えが行われたことを示す履歴が格納され、無線ネットワーク切り替え履歴(41)の履歴「BA3」に、W‐CDMA方式からGSM方式へのネットワーク切り替えが行われたことを示す履歴が格納されていることが示されており、セル遷移履歴(42)には、現在サービスを受けているセルIDとしてセルA2(22)が格納され、直前までサービスを受けていたセルIDとしてセルA1(21)が格納されていることが示されている。また、接続先ネットワーク優先順位(43)のテーブルには、この携帯電話装置が携帯電話サービスを受けることができる無線ネットワーク情報が、優先順位とその無線方式と合わせて格納されている。
【0036】
この図4に示されているメモリ(32)の記録テーブルをみれば、携帯電話装置(11)が嘗て図2に示されている複数の無線システムが混在する携帯電話システムのエリア内において、点線で示されているようなルートを移動しながら通信を行うことにより、セルA2(22)からセルB1(23)に遷移する際、およびセルB11(27)からセルA12(26)に遷移する際にネットワークの切り替えが行われたこと、および携帯電話装置(11)は現在、セルA1(21)からセルA2(22)へ移行した状態であり、GSM方式のネットワークを利用して通信していることが分かる。
【0037】
図5は、本実施形態におけるセル遷移履歴(42)へのデータ格納動作を示すフローチャートであり、図6は、本実施形態におけるネットワーク無線ネットワーク切り替え履歴(41)へのデータ格納動作及びネットワーク切り替え動作を示すフローチャートである。また、図7は、本実施形態における周辺の電波状況検索パターンを示す図であり、図8は、本実施形態における周辺電波状況の検索動作を示すフローチャートである。以下、本実施形態の動作について説明する。
【0038】
携帯電話装置(11)が移動し、新たなセルへの在圏が開始される際、CPU部(31)はS2に示す様に現在在圏しているセルの固有ID情報をメモリ部(32)のセル遷移履歴(42)にある直前セルID欄へ格納する。その後S3で、実際に新たなセルへの移動が実施されると、S4に示す様にメモリ部(32)のセル遷移履歴(42)にある現在セルID欄へ新セルの固有IDを格納する。またその際、現在セルID欄へ格納された新セルが、無線ネットワーク切り替え直近のセル切り替え(新ネットワークで最初のセル切り替え)であった場合(S5、Y)には、S6に示す様にセルの更新にあわせて遷移履歴(42)の内容を無線ネットワーク切り替え履歴(41)の切り替え直後履歴欄へ転記を行う。
【0039】
例えば図4に示されているメモリ部(32)の記録テーブルにおけるセル遷移履歴(42)の内容が、直前セルIDがセルA2(22)、現在セルIDがセルB1(23)となった場合には、セル遷移履歴(42)の更新とともに、無線ネットワーク切り替え履歴(41)として、GSM方式からW‐CDMA方式へのネットワーク切り替えが行われたことを示す履歴が格納される。なお、図4では、ネットワーク切り替え直前の2つのセル(セルA1(21)、セルA2(22))と、ネットワーク切り替え直後の2つのセル(セルB1(23)、セルB2(24))を格納しているが、それぞれ1つのセル(ネットワーク切り替え直前のセルA2(22)と、ネットワーク切り替え直後のセルB1(23))を格納する構成であってもよい。
【0040】
次に、セルを移動しながらの通信中に、S11でネットワーク切り替えの要求が発生した場合、CPU部(31)はS12に示す様に、メモリ部(32)の無線ネットワーク切り替え履歴(41)の中に、移動中の携帯電話機(11)が現在位置しているセルの履歴があるかチェックを行う。ここで履歴があった場合はS13に従って、履歴が無かった場合はS14に従って無線ネットワーク切り替え履歴(41)テーブルの書き換えを行う。この書き換えが完了後、S15に示すようにネットワーク切り替えを行い、メモリ部の無線ネットワーク切り替え履歴(41)の切り替え直後履歴に新セル情報をS16およびS17に示す様に追記する。
【0041】
この無線ネットワーク切り替え履歴(41)の書き換えと共に、S18に示すセル遷移履歴(42)の更新も実施する。S12で履歴があった場合にもS13で更新するのは、例えば、通信ネットワークが未だ固定されておらず、セル配置の見直しや新規基地局の増強などにより変化することが考えられるので、切り替え前後のセル情報のアップデートを含めて、過去履歴があった場合には上書きする形で書き込むようにしている。
【0042】
本発明では、このメモリ部(32)に蓄積したネットワーク切り替えおよびセル遷移履歴を用いる事で、より優先順位の高いネットワークへの接続を試みる為の無線処理部の検索動作を最適化し目的である省電力化を達成する。
【0043】
図9で説明したように、本発明の無線ネットワーク切り替え履歴(41)およびセル遷移履歴(42)を備えていない従来の携帯電話装置では、周辺電波状況の検索動作は、接続先ネットワーク優先順位(43)のテーブルのみを参照し、図9に示す所定の交信先検索パターンに従って現在サービスを受けているネットワークよりも順位の高いネットワークが周囲に無いか定期的にチェックを行う事で最善のネットワークへの切り替え接続制御を行うことになるが、この定期的なチェックを行う際、現在サービスを受けるために動作させている無線制御部とは異なる無線方式あるいは異なる周波数帯を検索する関係上、現在サービスを受けているネットワークへの接続に利用しているのとは別の無線制御モジュールを動かす必要があり、このことが電力消費の要因となっている。
【0044】
例えば、携帯電話装置(11)が図2に示す無線ネットワークA1(21)からGSM方式でサービスを受けているとき、携帯電話装置はCPU部(31)を用いてメモリ部(32)に格納されている図4の接続先ネットワーク優先順位(43)を参照し、優先順位の高い携帯電話サービス提供事業者が運営する無線ネットワーク、ここではW‐CDMA方式でサービスを提供している無線ネットワークBを検索するため、現在GSM方式でサービスを受ける為に動作している無線処理部A(33)に加えて、定期的にCPU部(31)はW‐CDMA方式に対応した無線処理部B(34)を起動しW‐CDMA方式に対応したより優先順位の高い無線ネットワークを利用する為に図9に示す検索パターンに従って周辺の電界状況を検索させる事がこれに該当する。
【0045】
一方、本実施形態においては、無線ネットワーク切り替え履歴(41)およびセル遷移履歴(42)を参照することにより、現在位置しているセルにおいて、嘗て無線ネットワークの切り替え動作が行われたことがあるか否かを判定し、嘗て無線ネットワークの切り替え動作が行われたことを示す履歴がある場合には、比較的短い周期での検索パターン(図7のパターン1)を採用して短時間のうちに目的のネットワークを検索することにより検索のための回数を減らし、また、嘗て無線ネットワークの切り替え動作が行われたことを示す履歴がない場合には、比較的長い周期(図7のパターン2)でのネットワークの検索を行う事で検索のための回数を減らすことにより、無駄な電力消費を避けるようにする。
【0046】
このように、本発明では、図7のパターン1およびパターン2に示す様に、過去のネットワークの切り替え前後のセル情報を携帯電話装置内へ蓄積し、その情報を参照する事で、過去に現在在圏しているセルでネットワークの切り替えが行われたかどうかで検索の頻度を調整する。
【0047】
在圏セルの遷移が発生して携帯電話装置が新たなセルに在圏を開始した場合(S21、Y)、メモリ部(32)の接続先ネットワーク優先順位(43)を参照して現在利用しているネットワークの優先順位が最上位でなければ(S22、N)、より優先順位の高い無線ネットワークを探索する為の周辺の電界状況を検索する。
【0048】
その際、CPU部(31)はメモリ部(32)の無線ネットワーク切り替え履歴(41)を参照し、過去に切り替えがあった事を認知したとき(S23、Y)には、比較的短い周期での検索パターン(パターン1)を採用してネットワーク探索を行う(S24)。この場合、過去に切り替え履歴がある事から、短い時間で目的のネットワークが検索できる事が期待されるため、電力の消費も最小限で済む事になる。
【0049】
一方、メモリ部(32)の無線ネットワーク切り替え履歴(41)に記録されていないセルに在圏した場合(S23、N)には、より優先順位の高い無線ネットワークが検索できる可能性は低いと考えられるので、比較的長い周期(パターン2)でのネットワークの検索を行う(S25)事により、無駄な電力消費を避けるようにする。なお、現在利用しているネットワークの優先順位が最上位の場合(S22、Y)には、他のネットワークの検索は停止する。
【0050】
上記実施形態においては、図4のメモリ部(32)のセル遷移時の無線ネットワーク切り替え履歴(41)を参照してネットワーク探索パターンを切り替えたが、この無線ネットワーク切り替え履歴(41)に加えて、周波数帯の切り替え履歴を追加し同様のロジックで異周波数帯のネットワーク検索を行う頻度を調整する事が出来る。この事により、単一の無線制御部で構成される携帯電話装置であっても、待受以外のネットワーク検索処理を削減する事で同様の効果が得られる。
【0051】
また上記実施形態では、過去の履歴がある/ない、でネットワークの検索間隔を決定する手法を提示しているが、ネットワーク切り替えの成功/失敗の履歴や過去の回数情報など、メモリ部への蓄積データを増やす事でネットワークの検索間隔のパターンをよりきめ細かく分けて制御する手法も考えられる。
【0052】
また、ネットワーク切り替え発生セルの直前に在圏したセルという情報も検索パターン選定の条件に加味する事で、過去に切り替えが起こった直前のセルに新たに在圏した際の検索パターンも制御に加えて、サービスエリアの拡大や電波状況のゆれが起こった場合を想定したロジックを持つ事も可能である。
【0053】
さらには、圏外となったセルや圏外から復帰したセルの情報、あるいは切り替え時の電界情報も蓄積すれば、ネットワーク検索の頻度決定の追加情報として、検索頻度をさらにきめ細かく制御する事が出来る。
【0054】
なお実施例では、W‐CDMA方式とGSM方式のネットワーク切り替えを用いた例について説明したが、その他の方式、例えば無線LANやPHS、PDC、など、他の通信手段との間の切り替えの場合も同様の手法を用いる事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される、複数の無線システムが混在する携帯電話システムの例を示す図である。
【図2】図1に示す携帯電話システムの詳細を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す携帯電話装置の概略ブロック図である。
【図4】本実施形態のメモリ部に格納された無線ネットワーク切り替え履歴データおよびセル遷移履歴データの記録テーブルを示す図である。
【図5】本実施形態におけるセル遷移履歴へのデータ格納動作を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるネットワーク切り替え履歴へのデータ格納動作を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における周辺の電波状況検索パターンを示す図である。
【図8】本実施形態における周辺電波状況の検索動作を示すフローチャートである。
【図9】従来の周辺電波状況検索パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
11 携帯電話装置
12、13 無線ネットワーク
21〜28 セル
31 CPU部
32 メモリ部
33、34 無線処理部
35 UI(User-Interface)部
41 ネットワーク切り替え履歴
42 セル遷移履歴
43 接続先ネットワーク優先順位データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワークが利用可能であって、現在利用している無線ネットワーク以外の無線ネットワーク用の機器を定期的に起動して他ネットワークの探索を行い、より優位の無線ネットワークが検出されたときに当該優位の無線ネットワークに切り替える携帯無線端末のネットワーク切り替え方法において、
前記携帯無線端末に、過去に在圏したことのあるセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴を記憶しておき、該携帯無線端末が移動中に、在圏しているセル情報が変化したとき前記無線ネットワークの切り替え履歴を検索し、現在在圏中のセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴が検出されたときには、第1のパターンにより前記他ネットワークの探索を行い、現在在圏中のセルと関連付けされた前記無線ネットワークの切り替え履歴が検出されなかったときには、前記第1のパターとは異なる第2のパターンにより前記他ネットワークの探索を行うことを特徴とする携帯無線端末のネットワーク切り替え方法。
【請求項2】
前記第1のパターンとして、在圏しているセル情報が変化した当初のみ短い周期で他ネットワークの探索を行うパターンが用いられ、前記第2のパターンとして、前記第1のパターンの周期よりも長い周期で他ネットワークの探索を行うパターンが用いられることを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末のネットワーク切り替え方法。
【請求項3】
前記携帯無線端末は、前記通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワーク間の優先順位を記憶しており、現在利用中の無線ネットワークの優先順位が最上位の順位であるときには、前記他ネットワークの探索を中止することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯無線端末のネットワーク切り替え方法。
【請求項4】
通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワークを利用可能に構成された携帯無線端末において、
前記携帯無線端末が移動しながら前記無線ネットワークから通信サービスを受けているとき、直前に在圏した無線ネットワークのセル情報と現在在圏している無線ネットワークのセル情報が順次更新されて記憶されるセル遷移履歴記憶領域、および前記携帯無線端末が過去に在圏して通信サービスを受けたときに実行した前記無線ネットワーク間の切り替え履歴が前記無線ネットワークのセル情報と関連付けして記憶される無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域を有するメモリ部と、
前記セル遷移履歴記憶領域に記憶された前記直前に在圏した無線ネットワークのセルと現在在圏している無線ネットワークのセルの間で無線ネットワークの切り替えが発生したとき、該直前に在圏した無線ネットワークのセル情報と現在在圏している無線ネットワークのセル情報を前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に記憶する無線ネットワーク切り替え履歴記憶手段と、
前記携帯無線端末が移動中に、在圏しているセル情報が変化したとき前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域の前記直前に在圏した無線ネットワークのセル情報の中から現在在圏中のセル情報を検索する現セル情報検索手段と、
前記現セル情報検索手段による検索の結果、前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に現在在圏中のセル情報が検出されたときには、第1のパターンにより他ネットワークの探索を行い、前記無線ネットワーク切り替え履歴記憶領域に現在在圏中のセル情報が検出されないときには、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンにより他ネットワークの探索を行う他ネットワーク探索手段と、
前記他ネットワーク探索手段により現在利用中の無線ネットワークよりも優位の無線ネットワークが検出されたとき、利用ネットワークを前記優位の無線ネットワークに切り替えるネットワーク切り替え手段と、
を備えていることを特徴とする携帯無線端末。
【請求項5】
前記第1のパターンは、前記セル遷移履歴が更新された当初のみ短い周期で他ネットワークの探索を行うパターンであり、前記第2のパターンは、前記セル遷移履歴が更新されてから次の更新まで長い周期で他ネットワークの探索を行うパターンであることを特徴とする請求項4に記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記メモリ部には、前記通信方式あるいは無線周波数帯の異なる複数の無線ネットワーク間の優先順位が記憶された接続先ネットワーク優先順位記憶領域が設けられており、前記他ネットワーク探索手段は、前記接続先ネットワーク優先順位記憶領域を参照して、現在利用中の無線ネットワークの優先順位が最上位の順位であるときには、前記探索を中止する機能を有していることを特徴とする請求項4または5に記載の携帯無線端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−274152(P2007−274152A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95045(P2006−95045)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】