説明

ネットワーク型監視カメラ装置及び制御プログラム並びに監視カメラシステム

【課題】 侵入者の撮影タイミングを逃すことが少ないネットワーク型監視カメラ装置を提供する。
【解決手段】 各監視カメラ装置1は、監視カメラ装置群の設置場所に関する情報を格納したカメラ群情報格納手段2と、ネットワーク15上の或る監視カメラ装置から伝達された情報と監視カメラ装置群設置場所情報とに基づいて次の監視カメラ装置の撮影方向等の初期値を設定する連係動作手段3とを備える。これにより、侵入者や侵入物体などの被写体の移動先となる監視カメラ装置は、予め自身の撮影方向等の初期値を設定して侵入者等に先回りして待ち構えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワーク型監視カメラ装置等に係り、特に、複数台の監視カメラ装置をネットワークに接続したときの監視カメラ装置間での追跡対象の受け渡しを好適に行うことができるネットワーク型監視カメラ装置及び制御プログラム並びに監視カメラシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、下記特許文献1記載の従来の監視カメラシステムの構成図である。ネットワーク80には任意台数の監視カメラ装置が接続されるが、図示する例では、2台の監視カメラ装置101だけを示している。各監視カメラ装置101は同一構成であり、夫々、画像撮影手段102と、撮影された画像を認識して特徴情報を抽出する特徴情報抽出手段103と、特徴情報を比較する特徴情報比較手段104と、映像を伝送する映像伝送手段105と、特徴情報交換手段106とを備え、映像伝送手段105と特徴情報交換手段106がネットワーク80に接続される。また、ネットワーク80には、遠隔の監視所に設置されたモニタ装置107が接続されている。このモニタ装置107には、特徴情報比較手段108と特徴情報交換手段109または記録手段110とが設けられる。
【0003】
各監視カメラ装置101は、撮影画像中の侵入物体等の移動物体の特徴情報を認識し、映像伝送手段105がその画像をネットワーク80を介して遠隔のモニタ装置107に伝送すると共に、特徴情報交換手段106がネットワーク80を介し、移動物体の特徴情報を他の監視カメラ装置101の特徴情報交換手段106に送る。また、各監視カメラ装置101は、撮影した画像の中に、他の監視カメラ装置101から送られてきた特徴情報と同じ特徴情報を認識したとき、この画像をネットワーク80を介してモニタ装置107に伝送すると共に、移動物体の特徴情報を、ネットワーク80を介して他の監視カメラ装置101に送る。
【0004】
以上の様にして、従来の監視カメラシステムでは、被監視画像の特徴情報を監視カメラ装置101間で引き継ぎ、死角が多い空間でも、追跡対象を追跡し続けることができる様にしている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−324720号公報(段落番号0007〜0034)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の監視カメラシステムでは、ある監視カメラ装置(第1の監視カメラ装置とする。)から別の監視カメラ装置(第2の監視カメラ装置とする。)に追跡対象の特徴情報を受け渡しても、第2の監視カメラ装置は、その追跡対象が自身の撮影画角の中に何時どちらの方向から入ってくるか分からない。このため、第2の監視カメラ装置では、追跡対象が撮影画角に侵入してきたとき、追跡対象を捕捉するためにカメラの向き等を合わせるまでにタイムラグが生じ、追跡対象の不審行動の決定的タイミングを撮り逃がしてしまうという可能性があった。
【0007】
このために、従来は、魚眼レンズなどを搭載した広角カメラを用い、侵入物体など注目すべき追跡対象が広範囲の撮影画角に入ってきたときに、カメラをパン、チルト操作したり、ズーム、フォーカス操作することで、より詳細な監視画像を撮影できる様にしている。しかし、パン、チルト操作やズーム、フォーカス調節などは機構制御を伴うことが多く、カメラの設定が追跡対象に合うまでにやはり時間を要し、決定的タイミングを撮り逃す可能性が残る。このため、監視カメラの設置台数を増やして撮影画角のオーバーラップ領域を広くとれば小さくなるが、監視カメラシステムのコストが嵩んでしまうということが生じる。また、従来の監視カメラシステムでは、いつ第2の監視カメラ装置の撮影画角に侵入物体などが入ってくるか判らないため、全ての監視カメラ装置や認識装置の電源を常時オンにしておく必要がある。
【0008】
本発明は、従来の監視カメラシステムの問題を解決するためになされたもので、追跡対象の決定的タイミングを撮り逃す可能性が小さく、また、省エネルギを図ることができるネットワーク型監視カメラ装置、監視カメラ装置用制御プログラム、記憶媒体、監視カメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置は、ネットワークに接続している複数の監視カメラ装置間における信号の送信及び受信を行う回線制御インタフェース手段と、
監視カメラ装置の監視カメラの撮影画像から前記監視カメラの撮影範囲への侵入物体を検知し、前記侵入物体の移動方向を検知し、前記侵入物体に関する情報を発信する画像信号処理手段と、
前記画像信号処理手段が検知した前記侵入物体の移動方向から、前記侵入物体を撮影可能なネットワークに接続した他の監視カメラ装置を、各監視カメラ装置の設置場所をもとに特定し、特定した前記他の監視カメラ装置に前記情報を送信し、前記他の監視カメラ装置では前記受信した情報から監視カメラの撮影動作を設定する連係動作手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成により、いつどちらの方向から撮影画角内に侵入物体などが入って来るのかを事前に知ることができ、侵入物体などの被写体の動きを先回りして待ち構えることができ、侵入物体の不審な行動など決定的なタイミングを撮り逃してしまう失敗を少なくすることができる。
【0011】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置は、前記設置場所情報を格納した情報格納手段を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成により、監視カメラ装置が設置されている建物構内等の構造や通路のパスなどの情報に合わせて的確に次に被写体が進む場所に設置された監視カメラ装置を迅速に決定できる。
【0013】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置の前記撮影動作とは、パン、チルト、ズーム、フォーカスの少なくとも1つの動作であることを特徴とする。
【0014】
この構成により、予め被写体の侵入位置に撮影方向を合わせ、あるいは焦点位置を合わせることができ、被写体の追尾が容易となる。
【0015】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置は、前記特定された他の監視カメラ装置は前記画像信号処理手段からの情報を受信したとき待機状態から電源オン状態に移行させ撮影を行い、撮影範囲から前記侵入物体が外れたとき前記待機状態に戻る電源制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成により、従来システムに比べて大幅な省電力化を図ることができると共に、待機状態からの電源オン状態への復帰動作をより迅速に行うことができ、かつ、電源制御すべき監視カメラ装置の選択の確度を高めることができ、監視の信頼性と省電力化の両立を図ることができる。
【0017】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置は、自身の設置場所を認識する位置情報認識手段を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、監視カメラ装置の設置位置を監視カメラ装置自身で認識することができ、監視カメラ装置群の各設置場所に関する情報を予め用意しておく必要が無くなり、また設置場所の変更に伴う情報の変更も容易なため、設置工事に関わる省力化が図れる。
【0019】
本発明のネットワーク型監視カメラ装置用の制御プログラム及び記憶媒体に格納された制御プログラムは、ネットワークに接続している複数の監視カメラ装置間における信号の送信及び受信を行う処理と、監視カメラ装置の監視カメラの撮影画像から前記監視カメラの撮影範囲への侵入物体を検知し、前記侵入物体の移動方向を検知し、前記侵入物体に関する情報を発信する処理と、検知した前記侵入物体の移動方向から、前記侵入物体を撮影可能なネットワークに接続した他の監視カメラ装置を各監視カメラ装置の設置場所をもとに特定し、特定した前記他の監視カメラ装置に前記情報を送信し、前記他の監視カメラ装置では前記受信した情報から監視カメラの撮影動作を設定する処理とを行うことを特徴とする。
【0020】
この構成により、いつどちらの方向から撮影画角内に侵入物体などが入って来るのかを監視カメラ装置が事前に知ることができ、侵入物体などの被写体の動きを監視カメラ装置が先回りして待ち構えることができ、侵入物体の不審な行動など決定的なタイミングを撮り逃してしまう失敗を少なくすることができ、コンピュータ化された監視カメラシステムを容易に構築可能となる。
【0021】
本発明の監視カメラシステムは、上記のいずれかに記載された監視カメラ装置が複数台ネットワークに接続されて構成されることを特徴とする。
【0022】
この構成により、追跡対象を容易に追尾することが可能な監視カメラシステムが構築できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数台の監視カメラ装置間の連係を的確に行って各監視カメラ装置の撮影方向等を侵入者の進みに先回りして合わせることができるため、侵入物体の行動など決定的なタイミングの撮り逃しを大幅に少なくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るネットワーク型監視カメラ装置の構成ブロック図である。図示するネットワーク型監視カメラ装置1は、監視映像を撮像する撮像手段5と、監視箇所の音声を採るマイク6と、監視箇所に音声出力するスピーカ7とが取り付けられ、パン用及びチルト用の回転台12に設置される。
【0026】
監視カメラ装置1の内部に設けられる制御系としては、撮像手段5から取り込んだ画像情報を信号処理する画像信号処理手段8と、マイク6やスピーカ7に接続される音声信号処理手段10と、ネットワークに接続された監視カメラ装置群の各設置場所に関する情報を格納したカメラ群情報格納手段2と、画像信号処理手段8や音声信号処理手段10の各出力を符号化してネットワーク15に送信する符号化手段9と、ネットワーク15との間で通信制御を行う回線制御インタフェース手段4と、ネットワーク15を介して遠方監視所から指令された音声出力データを復号して音声信号処理手段10に出力する復号化手段11と、詳細は後述する連係動作手段3とを備える。
【0027】
画像信号処理手段8は、撮像手段5が取り込んだ撮影画像をアナログ/デジタル変換して符号化手段9に送ったり、撮影画像に対して物体検出処理や動き検出処理を施して異常発生の検知、侵入者の検知、侵入者の移動方向予測などを行い、その情報を発信する。
【0028】
連係動作手段3は、画像信号処理手段8が発信した情報を、回線制御インタフェース手段4からネットワークを介して別所設置の他の監視カメラ装置(図示せず)に送信する。この情報送信の際には、送信対象とすべき監視カメラ装置の選択や送信先IPアドレスを指定するために、カメラ群情報格納手段2の格納情報を参照するように構成されていてもよい。また、侵入者検知や異常検知の結果、他の監視カメラ装置の回転台12に、回転台12の回転方向、回転角度等の制御を行う、制御指令13を出す構成としてもよい。
また、連係動作手段は3は、別所に設置されている別の監視カメラ装置(図示せず)の画像信号処理手段8が発信し、ネットワーク15を介して送られてきた情報を回線制御インタフェース手段4から取り込み、この情報とカメラ群情報格納手段2内の格納情報とから、自身の、動作方向の初期値(初期撮影方向)を設定すべく回転台12に制御指令13を出力する。
【0029】
ネットワーク15は、有線で構成されても無線で構成されても良いが、監視カメラ装置の設置台数が多くなることや設置工事の平易さから、無線ネットワークであるのがより好ましい。また最近ではビル内や集合住宅内にLAN配線が敷設されている所謂“LAN対応”のオフィスビルや集合住宅も増加していることから、有線LANによる接続も、より好ましい。無線ネットワークとしては、無線LAN、ブルートゥース(Bluetooth)などのローカルエリアの無線規格やPHS、PDC、W-CDMAなどの公衆回線規格によるものが使用可能であるが、常時接続での利用も容易である点において、無線LAN規格による無線ネットワークがより好ましい。無線LAN規格としてはIEEE802.11aやIEEE802.11b, IEEE802.11gなど標準化された規格や独自規格が使用可能である。また有線ネットワークの場合は、前述のとおり、有線LANによる接続がより好ましい。
【0030】
連係動作手段3の制御指令13に基づいて動作する回転台12はモータにより動作し、監視カメラ装置1のパン、チルト動作を実現する。尚、連係動作手段3の制御指令13は、回転台12の制御指令の他、撮像手段5のズーム動作や感度切り替え、マイク6の集音方向、集音特性、スピーカ7の指向性や音量制御などの各種制御に用いられる構成とすることも可能である。
【0031】
本実施形態の連係動作手段3としては、演算装置が用いられる。演算装置としては、電子回路、リレー回路などが用いられ、特に小型で構成が簡単に行える電子回路が好ましい。電子回路としては、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサのようなデジタル情報の演算処理を行う演算部品、コンパレータなどのアナログ部品による比較器、またはそれらを包含する演算回路やコンピュータが用いられる。電子回路としてコンピュータが用いられる場合には、制御プログラムが図示しないメモリ内に保持され、この制御プログラムをコンピュータが実行することで、後述の連係動作が実行される。
【0032】
カメラ群情報格納手段2は、メモリにより構成される。メモリとしては、書き換え可能な記録読み出し媒体が用いられ、例えば半導体メモリ、ハードディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブなどが使用可能である。特に、高速に読み出しが可能で小型であることから半導体メモリが好ましい。また、メモリは、カード型やリムーバブルメディアのように監視カメラ装置1から着脱可能に構成されるとなおよい。また、各々のネットワーク型監視カメラ装置1がカメラ群情報格納手段2を保持するのではなく、ネットワーク15に接続されたハードディスク等のネットワークストレージにカメラ群情報格納手段2を設けて各監視カメラ装置1が共通に使用する構成でもよい。
【0033】
回線制御インタフェース手段4は、ネットワーク15との間のデータ送受信や回線制御を行う。回線制御インタフェース手段4は、ネットワーク15の所定プロトコルに基づいて、符号化手段9から送出されるオーディオビジュアル(AV)多重データや復号化手段11に送られる音声符号化データなどのAVデータの送受信を行い、また、別所設置の監視カメラ装置1との間で情報を交換し、連係動作を行うための信号を調停する。
【0034】
次に、上述した監視カメラ装置の動作を、図2から図7を参照して説明する。
【0035】
図2は、監視カメラ装置の設置箇所を示す或る構内の見取り図である。構内は、玄関を真ん中にして、中央廊下と、西廊下と、東廊下とで構成されるU字型の廊下を中心に構成されており、廊下の各ポイントに、図1に示す監視カメラ装置(以下、カメラと略称する。)A〜Hが設置されている。各カメラA〜Hは、それぞれが図1に示すネットワーク15に接続されている。図2に示す構内では、玄関に直接つながる廊下は中央廊下であり、また西廊下側から東廊下側へ行くためには、物理的に中央廊下を通過する必要がある。
【0036】
図3は、カメラ群情報格納手段2に格納される情報の一例を説明する説明図である。図3ではカメラの2次元配置情報を記載しているが、カメラの高さ方向の情報を加えた3次元情報としてもよい。図3では、図2の見取り図に適応した各カメラA〜Hの構内配置が、構内の物理的経路によるノード情報と関連付けられて格納されている。例えば、西廊下に設置されているカメラE側から、東廊下に設置されているカメラG側に移動する際には、中央廊下にあるカメラB付近を通過する必要があるというノード情報が格納されている。また、各々のカメラが設置されている絶対位置の座標や、カメラ間の相対距離データなども格納されている。また各カメラのIPアドレスなどが関連付けられて格納されている。
【0037】
図4(a)(b)、図5(a)(b)、図6(a)(b)、図7(a)(b)は、玄関から入った侵入者が、中央廊下から西廊下側へ通過する場合の、連係動作手段3による具体的なカメラ制御の遷移を説明する連係動作説明図である。尚、図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)中の「カメラ電源」の項目は、後述の第2の実施の形態で説明し、本実施形態では、全て監視カメラ装置1が常時電源オン状態にあることを前提とする。
【0038】
まず、侵入者が玄関から建物内部に侵入してきた場合を、図4(a)(b)を用いて説明する。玄関に設置された監視カメラAの構成要素としての撮像手段5が侵入者を撮影し、画像信号処理手段8が侵入者を検知すると、画像信号処理手段8は、検知した情報を連係動作手段3に送信し、連係動作手段3は、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照し、カメラAが検知した侵入者の構内経路として、次はカメラBの設置位置が最も可能性が高いという情報を得る。そして、回線制御インタフェース手段4がカメラBに「いまカメラAで侵入者を検知し、次はカメラBの位置に移動する」という情報を、侵入者の画像から抽出した特徴情報と共に伝達する。
【0039】
カメラBは自身内の回線制御インタフェース手段4を通じてその情報を受け取ると、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照し、カメラBの撮影画角を、図4(a)に示すB1から、侵入者が入ってくるB2方向へパン、チルトし、その焦点距離を、図3に示す距離αA−Bに応じて図4(a)に示すB3付近に初期設定する。これにより、カメラBは、侵入者が玄関方向から入ってくるのを先回りして待ち構えることができる。
【0040】
カメラBは、初期設定位置(B2方向、焦点B3)にて先回りで侵入者を待ち構え、侵入者の画像を捕捉したとき、自身の画像信号処理手段8の情報をもとに連係動作手段3から出力される制御指令13により、自身のパン、チルト、ズーム、フォーカス機能を動作させることで撮像手段5を侵入者に合わせ、侵入者の追尾を開始する。
【0041】
次の段階として、侵入者が中央廊下部に侵入してきた場合を、図5(a)(b)を用いて説明する。カメラBは、侵入者の追尾を開始するとともに、次なる移動先の可能性がある場所を判断する。この判断は、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照し、構内経路から次はカメラCとカメラDの設置位置が最も可能性が高いという情報を得て行う。そして、カメラBの回線制御インタフェース手段4は、カメラCとカメラDに対して「いまカメラBで侵入者を追尾開始し、次はカメラCまたはカメラDの位置に移動する」との情報を伝達する。
【0042】
カメラCは、自身のカメラ内の回線制御インタフェース手段4を通じてその情報を受け取ると、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照し、カメラの画角をC1方向から、侵入者が居るC2方向へパン、チルトし、その焦点距離を、距離αB−Cに応じてC3付近に初期設定する。カメラCは、初期設定位置(C2方向、焦点C3)にて侵入者の画像を捕捉したとき、連係動作手段3からの制御指令13により、自身のパン、チルト、ズーム、フォーカス機能を動作させて侵入者を追尾する。
【0043】
カメラDについても同様で、カメラD内の回線制御インタフェース手段4を通じてカメラBからの情報を受け取ると、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照し、カメラの画角をD1方向から、侵入者が居るD2方向へパン、チルトし、その焦点距離を、距離αB−Dに応じてD3付近に初期設定する。カメラDは、初期設定位置(D2方向、焦点D3)にて侵入者を捕捉したら、連係動作手段3からの制御指令13により、自身のパン、チルト、ズーム、フォーカス機能を動作させ、侵入者を追尾する。
【0044】
次の段階として、侵入者が中央廊下部から西廊下部方向へ移動している場合を図6(a)(b)を用いて説明する。カメラDは、侵入者の追尾により、自身の方向に侵入者が移動していることを検知したとき、次なる移動先の可能性がある場所を判断する。この判断は、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照して行い、カメラEの設置位置が最も移動先として可能性が高いと判断し、この判断情報すなわち「いまカメラDで侵入者を追尾開始し、次はカメラEの位置に移動する」との情報をカメラEに伝達する。
【0045】
カメラEは、上記と同様に自身内の回線制御インタフェース手段4を通じてその情報を受け取ると、カメラ群情報格納手段2に格納されている図3の情報を参照して、自身の撮影画角をE1方向から、侵入者が入ってくるE2方向へパン、チルトし、その焦点距離を、距離αD−Eに応じてE3付近に初期設定する。これにより、カメラEは、侵入者が中央廊下側から西廊下側へ入ってくるのを、先回りして待ち構えることができる。
【0046】
侵入者が未だ廊下の曲がっておらず侵入者がカメラEの死角位置にいる場合でも、カメラEは、初期設定位置(E2方向、焦点E3)にて侵入者を先回りして待ち構えることができる。侵入者が廊下の角を曲がるまでの間は、カメラEは、侵入者を捕捉できないが、カメラBとカメラDでは未だ追尾可能なため、侵入者の捕捉は続けられる。
【0047】
侵入者が中央廊下から西廊下に差し掛かったあたりで、カメラEは、初期設定位置(E2方向、焦点E3)にて、侵入者の画像を捕捉することができるため、連係動作手段3からの制御指令13により、カメラEは、自身のパン、チルト、ズーム、フォーカス機能を動作させ、侵入者の追尾を行う。
【0048】
最後に、侵入者が西廊下部を移動した場合を図7(a)(b)に示す。詳細な動作は図4、図5、図6と同様であり、カメラEからの情報により、カメラFの初期設定位置(E2方向、焦点E3)が事前に設定され、カメラFは侵入者を先回りして待ち構える。
【0049】
尚、以上の説明では、連係動作手段3は指令13でカメラの回転台12を操作するように説明したが、指令13によってカメラの感度を切り替えたり、マイクの集音方向、集音特性、スピーカの指向性や音量制御などの制御を行うよう動作してもよい。
【0050】
このように、本発明の第1の実施の形態のネットワーク型監視カメラ装置によれば、ネットワーク上の或るカメラからの情報伝達に基づいて次のカメラの動作方向の初期値が自動的に設定されるため、侵入者や侵入物体などの決定的タイミングを撮り逃すリスクが小さくなる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る監視カメラ装置の構成ブロック図であり、図1に示す構成要素と同一要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態の監視カメラ装置20は、第1の実施の形態に係る監視カメラ装置1の構成に加えて、電源制御手段16と、スイッチ14と、電源取り込み部17とを備える。電源取り込み部17から取り込まれた電力は、電源制御手段16、カメラ群情報格納手段2、連係動作手段3、回線制御インタフェース手段4には常時供給され、監視カメラ装置20のその他の構成要素には、電源制御手段16がスイッチ14を閉じたときのみ供給される構成になっている。
【0053】
即ち、電源制御手段16は、ネットワーク15上の別所設置の監視カメラ装置20からの情報伝達に基づいて、自身のカメラ電源の制御を行う。スイッチ14は、電源制御手段16の指令に従って、監視カメラ装置20内の待機可能な構成要素の電源オン、オフ制御を行う。
【0054】
電源制御手段16としては演算装置が用いられる。演算装置としては、電子回路、リレー回路などが用いられ、特に小型で構成が簡単に行える電子回路が好ましい。電子回路としては、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサのようなデジタル情報の演算処理を行う演算部品、コンパレータなどのアナログ部品による比較器、またはそれらを包含する演算回路やコンピュータが用いられる。
【0055】
スイッチ14としては、接点スイッチやPOWER MOS FETなどの半導体スイッチが用いられる。低オン抵抗で制御が容易な点で、半導体スイッチが好ましい。図8に示されるカメラ群情報格納手段2、連係動作手段3、回線制御インタフェース手段4と、電源制御手段16自身は、他の監視カメラ装置20との間の情報通信のために電源系統がスイッチ14で制御される電源系統とは別になっており、常時使用可能な状態になっている。電源取り込み部17は、監視カメラ装置20を駆動する電源を取り込むが、電源としては、AC電源やDC電源が用いられ、必要に応じて電圧の降圧、昇圧が行われても良い。
【0056】
以上のように構成された第2の実施の形態に係る監視カメラ装置について、第1の実施の形態と同じ図4(a)(b)、図5(a)(b)、図6(a)(b)、図7(a)(b)を用いてその動作を説明する。ネットワーク上の各監視カメラ装置20間の情報伝達に基づいて動作する電源制御手段16の動作は、第1の実施形態の連係動作手段3の動作と類似するため、簡単に説明する。
【0057】
常時電源オン状態のカメラA以外のカメラB〜Hは、スイッチ14がオフとなっており、待機状態にある。侵入者が玄関(位置1)から建物内部に侵入してきた場合、図4(a)(b)で説明した様に、カメラAからの情報伝達により、近々、カメラBの設置位置方向に侵入者が入ってくるとの情報をカメラBが得る。これにより、カメラBの電源制御手段16はスイッチ14をオンにし、カメラBは、待機状態から全機能が使用可能なオン状態に変更される。この動作は、侵入者がカメラBが撮影可能な画角に入るまでの間に、先回りして行われる。
【0058】
次に、侵入者が中央廊下部に侵入してきた場合は、図5(a)(b)で説明したように、カメラBは、カメラCとカメラDに情報を伝達する。この情報を受け取ったカメラB、カメラDでは、夫々の内部の電源制御手段16がスイッチ14を閉成(オン)し、自身の電源を待機状態から全機能が使用可能なオン状態に変更する。この動作は、侵入者がカメラCやカメラDが撮影可能な画角に入るまでの間に、先回りして行われる。
【0059】
侵入者が中央廊下部から西廊下部方向へ移動している場合も、図6(a)(b)で説明した様に、カメラEのスイッチ14がオンされてカメラEは待機状態から全機能が動作可能な動作状態に移行する。また、カメラCでは、追尾可能な画角から侵入者が外れることになるため、カメラCの電源制御手段16はスイッチ14をオフし、待機状態に入る。
【0060】
侵入者が西廊下部を移動している場合についても、上記と同様に、図7(a)(b)で説明した様に、カメラFがカメラEからの情報を得て、自身の電源を待機状態から動作状態に変更し、また、カメラBは待機状態に入る。
【0061】
尚、図4(a)〜図7(a)では、オン状態になっているカメラは黒色、電源待機状態にあるカメラは白色で示している。カメラAは常時オンとして使用され、カメラB、カメラC、カメラD、カメラE、カメラF、カメラG、カメラHは、必要に応じて、電源の制御が行われる。従って、上記の説明で侵入者の移動経路と無関係なカメラGとカメラHについては、ずっと電源待機状態のままであるが、侵入者が東廊下に入ってきた場合には、カメラE、カメラFと同様に制御される。
【0062】
尚、上記説明では、電源制御手段16はカメラ電源を待機状態からオン状態に移行させるよう説明したが、カメラ内にリングバッファなどの蓄積装置を設けた場合にはその電源や起動を一緒に制御するようにしても良い。
【0063】
以上述べた様に、本発明の第2の実施の形態の監視カメラ装置によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる他に、電源待機状態となっている監視カメラ装置が移動先となる場合にその監視カメラ装置の電源をオンする構成のため、省電力化を図ることが可能となる。
【0064】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る監視カメラ装置の構成ブロック図である。第1の実施の形態に係る監視カメラ装置と同一構成要素には同一符号を付してその説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
【0065】
本実施形態の監視カメラ装置30は、位置情報認識手段18を備える。位置情報認識手段18は、自身の監視カメラ装置30の設置場所の位置情報を自ら測位して認識し、その認識結果をカメラ群情報格納手段2に格納する。位置情報認識手段18としては、GPS(Global Positioning System)や超音波などを用いた測位手段が用いられる。
【0066】
本発明の第3の実施の形態に係る監視カメラ装置30は、予めカメラ群情報格納手段2に各々の監視カメラ装置が設置されている絶対位置の座標や、カメラ間距離などの相対距離(図3では相対距離を格納している。)などを格納しておかなくても、カメラ自らが自分の設置場所に関する位置情報を位置情報認識手段18により取得し、カメラ群情報格納手段2に格納するよう動作し、各測位結果すなわち位置認識結果をネットワーク15を介して各監視カメラ装置30が共有することで第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
位置情報の取得は、監視カメラ装置30が初めて設置されたときや、移設されたときに行われるよう動作する。また、定期的に設置位置を測位して格納情報を補正するように動作しても良い。
【0068】
本発明の第3の実施の形態に係る監視カメラ装置によれば、カメラ群情報格納手段に格納されるカメラ群の夫々の設置場所に関する情報を予め格納しておく必要が無くなり、またカメラ設置場所を移動しても設置場所情報の変更が容易になり、設置工事に関わる省力化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明にかかるネットワーク型監視カメラ装置は、決定的タイミングでの侵入物体等の画像を撮り逃すリスクが少なくなるという効果を有し、ネットワークに複数台接続する監視カメラ装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の構成ブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置を設置した構内の一例の見取り図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置のカメラ群情報格納手段に格納される情報例を示す説明図
【図4】(a)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の侵入者検知時の構内見取り図 (b)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の侵入者検知時の説明図
【図5】(a)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その1)の構内見取り図 (b)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その1)の説明図
【図6】(a)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その2)の構内見取り図 (b)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その2)の説明図
【図7】(a)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その3)の構内見取り図 (b)本発明の第1の実施の形態に係る監視カメラ装置の連係動作時(その3)の説明図
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る監視カメラ装置の構成ブロック図
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る監視カメラ装置の構成ブロック図
【図10】従来の監視カメラ装置を用いた監視カメラシステムのブロック図
【符号の説明】
【0071】
1、20、30 監視カメラ装置
2 カメラ群情報格納手段
3 連係動作手段
16 電源制御手段
18 位置情報認識手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続している複数の監視カメラ装置間における信号の送信及び受信を行う回線制御インタフェース手段と、
監視カメラ装置の監視カメラの撮影画像から前記監視カメラの撮影範囲への侵入物体を検知し、前記侵入物体の移動方向を検知し、前記侵入物体に関する情報を発信する画像信号処理手段と、
前記画像信号処理手段が検知した前記侵入物体の移動方向から、前記侵入物体を撮影可能なネットワークに接続した他の監視カメラ装置を、各監視カメラ装置の設置場所をもとに特定し、特定した前記他の監視カメラ装置に前記情報を送信し、前記他の監視カメラ装置では前記受信した情報から監視カメラの撮影動作を設定する連係動作手段とを備えることを特徴とするネットワーク型監視カメラ装置。
【請求項2】
前記設置場所情報を格納した情報格納手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク型監視カメラ装置。
【請求項3】
前記撮影動作とは、パン、チルト、ズーム、フォーカスの少なくとも1つの動作であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のネットワーク型監視カメラ装置。
【請求項4】
前記特定された他の監視カメラ装置は前記画像信号処理手段からの情報を受信したとき待機状態から電源オン状態に移行させ撮影を行い、撮影範囲から前記侵入物体が外れたとき前記待機状態に戻る電源制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のネットワーク型監視カメラ装置。
【請求項5】
自身の設置場所を認識する位置情報認識手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のネットワーク型監視カメラ装置。
【請求項6】
ネットワークに接続している複数の監視カメラ装置間における信号の送信及び受信を行う処理と、監視カメラ装置の監視カメラの撮影画像から前記監視カメラの撮影範囲への侵入物体を検知し、前記侵入物体の移動方向を検知し、前記侵入物体に関する情報を発信する処理と、検知した前記侵入物体の移動方向から、前記侵入物体を撮影可能なネットワークに接続した他の監視カメラ装置を各監視カメラ装置の設置場所をもとに特定し、特定した前記他の監視カメラ装置に前記情報を送信し、前記他の監視カメラ装置では前記受信した情報から監視カメラの撮影動作を設定する処理とを行うことを特徴とするネットワーク型監視カメラ装置用の制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のネットワーク型監視カメラ装置用の制御プログラムを格納した記憶媒体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された監視カメラ装置が複数台ネットワークに接続されて構成されることを特徴とする監視カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−229450(P2006−229450A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39252(P2005−39252)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】