ネットワーク装置およびネットワークシステム
【課題】ホストが多数接続しているレイヤー2ネットワークに接続されるネットワーク装置において、障害復旧時に多数のARPテーブルを作成し、実際のパケット転送が開始されるまでに時間がかかる課題を解決する。
【解決手段】ネットワーク装置1−1は、インタフェース障害時にARPテーブル152は削除される。BACKUP ARPテーブル153を削除させずに宛先アドレスとの対応表を保存しておく。障害復旧時に、BACKUP ARPテーブル153にて一時的に転送処理を開始する。これにより従来ARP解決処理中に廃棄されるパケットに対し、BACKUP ARPテーブルで一時的にでも転送処理を開始する。これにより、ネットワーク装置において障害時間を短縮できる。
【解決手段】ネットワーク装置1−1は、インタフェース障害時にARPテーブル152は削除される。BACKUP ARPテーブル153を削除させずに宛先アドレスとの対応表を保存しておく。障害復旧時に、BACKUP ARPテーブル153にて一時的に転送処理を開始する。これにより従来ARP解決処理中に廃棄されるパケットに対し、BACKUP ARPテーブルで一時的にでも転送処理を開始する。これにより、ネットワーク装置において障害時間を短縮できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置およびネットワークシステムに係り、特に現用系ネットワーク装置およびネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報サービスをユーザーへ提供する目的で構築されるIPネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器および冗長系ネットワーク機器を用いパケット通信経路を2重化し、ネットワークの冗長性を高めることが多い。
【0003】
IPネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器のネットワークインタフェースに障害発生した場合または現用系ネットワーク機器自身に障害発生した場合、冗長系ネットワーク機器へパケット通信経路が切り替わる。現用系ネットワーク機器の障害が回復すると現用系ネットワーク機器へパケット通信経路が切り戻るネットワーク機器動作制御がネットワーク機器に実施されていることが一般的である。
【0004】
一方、IPネットワークにおいて、ネットワーク機器と接続している周辺の機器へパケット転送を行うために、レイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付けるARP(Address Resolution Protocol)によるアドレス解決をネットワーク機器は行なう必要がある。ネットワーク機器がパケット受信し周辺の機器へパケット転送を行なう際、パケット転送宛先のレイヤー3IPアドレスについてARPによるアドレス解決が行なわれていない場合、ARPによるアドレス解決が実施される。
【0005】
情報サービスをユーザーへ提供する目的で構築されるIPネットワークのひとつであるモバイル通信サービス用ネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器が多数の基地局と接続していた場合、現用系ネットワーク機器の障害発生によってパケット通信経路が切り替わり、冗長系ネットワーク機器に多数の基地局の接続が行なわれる。
【0006】
冗長系ネットワーク機器は、多数の基地局向けのパケット転送を行なうためにARPによるアドレス解決を実施する。しかし、多数の基地局向けのアドレス解決を完了させるためには比較的長時間を要する。そのため、アドレス解決を完了するまでの間、冗長系ネットワーク機器に接続している多数の基地局は、パケット通信を再開することができない。この結果、その基地局をもって情報サービスを享受するはずのユーザーに対し情報サービスを提供することができない。
【0007】
特許文献1では、現用系ネットワーク機器のもつアドレス解決結果情報を冗長系ネットワーク機器と共有する手段を提案している。共有手段をもって冗長系ネットワーク機器に要求される多数の基地局向けのアドレス解決を不要とすることにより、迅速な通信経路の切り替わりをモバイル通信サービス用ネットワークは実施することができる。
【0008】
また、冗長系ネットワーク機器に対し基地局から定期的にICMP_ECHO(Internet Control Message Protocol Echo)などのパケット送受信処理を実施する。この結果、冗長系ネットワーク機器は、多数の基地局向けのパケット転送要求を受けなくともアドレス解決を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−144806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなネットワーク冗長性をもったモバイル用サービスネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器の障害回復のため冗長用ネットワーク機器から現用系ネットワーク機器にパケット転送経路が切り戻るとき、現用系ネットワーク機器は障害から復帰した直後のために冗長系ネットワーク機器のアドレス解決結果情報を共有することは難しく、パケット転送ができなかった。また前もって基地局からのICMP_ECHOなどのパケット転送によるアドレス解決を実施することができない。よってパケット送信装置からのパケット転送要求に基づき、あらためてARPによるアドレス解決を実施する必要がある。
【0011】
このようなネットワーク冗長性をもったモバイル用サービスネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器には多数の基地局が接続されるため、ARPによるアドレス解決に要する時間が長期化し、アドレス解決が完了するまでの間は現用系ネットワーク機器障害が回復したにもかかわらずパケット転送処理を現用系ネットワーク機器が行なうことができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するため、本発明は現用系ネットワーク機器内に現用系機器ネットワークの運用状況に関わらずARP解決情報を保持するBACKUP ARPテーブルを具備し、現用系ネットワーク機器の障害回復後にARPによるアドレス解決処理が終了するまでの間、BACKUP ARPテーブルを用いたパケット転送処理を行なう。
【0013】
詳述すると本発明では、現用系ネットワーク機器は通常のARPテーブルの他、BACKUP ARPテーブル、ARPテーブル履歴格納部およびBACKUP ARPテーブル生成処理部を具備し、ARPテーブル生成処理部は現用系ネットワーク機器のARPテーブルを定期的にARPテーブル履歴格納部に格納し、ARPテーブル生成処理部はARPテーブル履歴格納部にある複数のARPテーブルから一定の基準でARPエントリをピックアップしてBACKUP ARPテーブルに格納し、現用系ネットワーク機器の障害回復時にBACKUP ARPテーブルを参照し一時的にパケット転送処理を行なうと同時に、現用系ネットワーク機器は通常のARPによるアドレス解決処理を実施することでアドレス解決処理が長期化した場合にもパケット転送処理を実施できる。
【0014】
上述した課題は、レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続するネットワーク装置において、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、第2のテーブルの内容を維持し、障害が回復したとき、第2のテーブルを参照して、レイヤー3ネットワークからのパケットをレイヤー2ネットワークへ転送するネットワーク装置により、解決できる。
【0015】
また、レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続する現用系ネットワーク装置と予備系ネットワーク装置とからなるネットワークシステムにおいて、現用系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、第2のテーブルの内容を維持し、障害が回復したとき、第2のテーブルを参照して、レイヤー3ネットワークからのパケットをレイヤー2ネットワークへ転送するネットワークシステムにより、解決できる。
【発明の効果】
【0016】
BACKUP ARPテーブルを具備した現用系ネットワーク機器を用いることで、現用系ネットワーク機器障害回復時に一時的なパケット転送処理を実施させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通信ネットワークのブロック図である。
【図2】ネットワーク装置のブロック図である。
【図3】ARPテーブルを説明する図である。
【図4】ARPテーブル履歴格納部を説明する図である。
【図5】BACKUP ARPテーブルを説明する図である。
【図6A】パケット送信装置とネットワーク装置とホストとの間のパケット転送処理のシーケンス図(その1)である。
【図6B】パケット送信装置とネットワーク装置とホストとの間のパケット転送処理のシーケンス図(その2)である。
【図7】現用系ネットワーク装置の障害復旧時のパケット転送処理のフローチャートである。
【図8】BACKUP ARPテーブル生成処理部によるBACKUP ARPテーブル生成処理のフローチャートである。
【図9】BACKUP ARPテーブル生成処理部によるBACKUP ARPテーブル生成処理のフローチャートである。
【図10】BACKUP ARPテーブル参照による優先アドレス解決処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0019】
図1を参照して、通信ネットワーク10の構成を説明する。通信ネットワーク10は、パケット送信装置4と、2台のスイッチ5と、2台のネットワーク装置1と、L2ネットワーク2と、多数のホスト3とから構成されている。ネットワーク装置1は、ARPテーブル152と、BACKUP ARPテーブル153と、BACUP_ARPテーブル生成処理部143とを含む。
【0020】
パケット送信装置4には、スイッチ5ー1とスイッチ5ー2とが、接続されている。スイッチ5ー1とスイッチ5ー2とは、相互接続されている。また、スイッチ5ー1には現用系ネットワーク装置1ー1、スイッチ5ー2には予備系ネットワーク装置1ー2が接続されている。L2ネットワーク2には、ネットワーク装置1ー1と、ネットワーク装置1ー2と、多数のホスト3とが接続されている。
【0021】
通信ネットワーク10は、パケット送信装置4から送信されたパケットをスイッチ5−1とスイッチ5−2を経由してネットワーク装置1−1とネットワーク装置1−2からL2ネットワーク2に収容されているホスト3−1、ホスト3−2からホスト3−1000までの多くのホスト3と通信を行なうネットワークである。
【0022】
ネットワーク装置1−1は、スイッチ5−1から送信されてきたパケットをARPテーブル152の情報を用いることでパケットを正常に転送する。ARPテーブル152に登録されていないパケット転送先があった場合、この転送先のレイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付ける新しい情報をARPテーブル152に登録する。このARPテーブル152を生成すると同時にBACKUP ARPテーブル生成処理部143はARPテーブル152と同じBACKUP ARPテーブル153を生成する。
【0023】
ネットワーク装置1−2は、ネットワーク装置1−1と同じARPテーブル152を保持する。ネットワーク装置1−2は、ネットワーク装置1−1と同様の動作でARPテーブル152を生成し、BACKUP ARPテーブル生成処理部143でARPテーブル152と同じBACKUP ARPテーブル153を生成する。
【0024】
ネットワーク装置1−1およびネットワーク装置1−2は、このBACKUP ARPテーブル153を用いることでARPテーブル152が参照できない状況が発生してもBACKUP ARPテーブル153を利用することで安定したパケット転送処理が可能なネットワーク装置1である。
【0025】
ネットワーク装置1−1とL2ネットワーク2との間でパケット転送が出来ない障害が発生し、予備系装置であるネットワーク装置1−2を使用したパケット転送に切り替わった場合、ネットワーク装置1−1のARPテーブル152のレイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付ける情報(ARPテーブル152)は、削除される。しかし、ネットワーク装置1−1は、BACKUP ARPテーブル153を保持しているため、ネットワーク装置1−1とL2ネットワーク2との間でパケット転送ができない障害が復旧し、パケット転送がネットワーク装置1−2からネットワーク装置1−1へ戻った場合でも、即時にBACKUP ARPテーブル153を利用したパケット転送の再開が可能である。
【0026】
図2を参照して、ネットワーク装置1のハードウェアブロックを説明する。図2において、ネットワーク装置1は、複数のネットワーク回線を収容したネットワーク回線I/F11と、入出力装置12と、プロセッサ13と、メモリ14および15と、内部通信線16とからなっている。
【0027】
メモリ14は、プロセッサ13にて実行されるソフトウェアとして、パケット転送処理部141と、アドレス解決処理部143と、BACHKUP_ARP生成処理部143とを保持する。パケット転送処理部141は、パケット転送ルーチンを実行する。アドレス解決処理部143は、アドレス解決ルーチンを実行する。BACHKUP_ARP生成処理部143は、BACHKUP_ARP生成ルーチンを実行する。
【0028】
また、メモリ15は、メモリ14の各ルーチンの処理結果および基本情報を格納するエリアとして、ルーティングテーブル151と、ARPテーブル152と、BACHKUP_ARPテーブル153と、ARPテーブル履歴格納部154とが形成されている。
【0029】
通常のネットワーク装置1において、ネットワーク回線I/F11を経由してネットワーク装置1に入ってきたパケットは、メモリ14に格納される。
【0030】
メモリ14に格納されたパケットについて、プロセッサ13は、アドレス解決処理を行なう。アドレス解決処理を行なったパケットについて、プロセッサ13は、メモリ15のルーティングテーブル151を参照し、送信先の情報を取得し、パケット処理141によって再度ネットワーク回線I/F11を経由して送信先へ転送する。
【0031】
ルーティングテーブル151を参照するとき、プロセッサ13は、パケットの情報がARPテーブル152記録されている場合、パケットの情報を更新する。
【0032】
パケットの情報がARPテーブル152に記録されていない場合、プロセッサ13は、アドレス解決処理部142にて行なったアドレス解決処理の結果をARPテーブル152に書き込む。
【0033】
ARPテーブル152に書き込まれた情報は一定時間使用されないと削除されてしまう。また、ARPテーブル152は、障害が発生した場合、蓄積されたパケット情報をクリアされてしまう。そこで、本実施例では、バックアップARPテーブル153を利用する。
【0034】
メモリ14に格納されたパケットのアドレス解決処理を行なう際、同時にBACKUP ARPテーブル生成処理をBACKUP ARPテーブル生成処理部143にて行なう。BACKUP ARPテーブル生成処理によって生成された情報はBACKUP ARPテーブル153に格納される。
【0035】
BACKUP ARP生成処理部143でBACKUP ARP生成処理を行なう際には、ARPテーブル履歴格納部154に格納されている情報を参照する。
【0036】
ARPテーブル履歴格納部154にはネットワーク回線I/F11を経由して到着したパケットの統計情報等が格納されており、宛先頻度の高いアドレス情報や優先度の高い宛先アドレスなどの情報が格納されている。
【0037】
図3を参照して、ARPテーブルを説明する。図3において、ARPテーブル152は、IPアドレス21、MACアドレス22、バックアップ23から構成されている。ARPテーブル152は、IPアドレス21とMACアドレス22とを関連付けする。ネットワーク装置1は、ARPテーブル152を参照して、パケット転送処理行なう。また、バックアップ23の○は、BACKUP ARPテーブル153に登録するフラグであり、ネットワーク管理者が各ARPテーブルエントリの重要度を考慮して任意に付与することができる。
【0038】
TCP/IPネットワークにおいて、ARPテーブル152がない場合、ネットワーク装置1は、パケット転送ができない。そこで、ネットワーク装置1は、ARP REQUESTを送信し、送信したいIPアドレス先からのARP REPLYを受け取ることによってARPテーブル152を作成する(ARP解決処理)。ここで、ARP REPLYの中には、送信したいIPアドレスに関連付けたMACアドレスが含まれている。
【0039】
図4を参照して、ARPテーブル履歴格納部154を説明する。図4において、ARPテーブル履歴格納部154は、優先指定31と、通信履歴32と、IPアドレス33と、MACアドレス34とから構成される。ARPテーブル履歴格納部154は、ネットワーク回線を経由して到着したパケットの統計情報を格納している。ARPテーブル履歴格納部154は、宛先としての頻度の高いアドレス情報、優先度の高い宛先アドレスなどを格納する。図4では、最終通信時間が短いほどを宛先頻度が高いとしている。また、優先指定31の○は、ARP REQUESTを優先的に送信する送信先であることを意味する。
【0040】
図5を参照して、BACKUP ARPテーブル153を説明する。図5において、BACKUP ARPテーブル153は、IPアドレス41と、MACアドレス42とから構成されている。BACKUP ARPテーブル153は、BACKUP ARPテーブル生成処理によって生成される。
【0041】
図6を参照して、パケット転送装置4と、ネットワーク機器1と、ホスト3との間のパケット転送のシーケンスを説明する。図6において、パケット送信装置4は、ホスト3のいずれか宛のパケットを現用系ネットワーク装置1−1に送信する(S1)。ネットワーク装置1−1は、パケット送信装置4からのパケットをパケット転送処理部141で受信する。パケット転送処理部141は、パケットを受信するとARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する(S2)。ARPテーブル152は、ARPテーブル要求に対応するARP情報をARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S3)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152からARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する。
【0042】
ネットワーク装置1−1にてホスト3との接続部分で障害が発生すると、ARPテーブル152が消失する。しかし、BACKUP ARPテーブル153は、ARP情報を保持し続ける。
【0043】
ネットワーク装置1−1と、ネットワーク装置1−2とは、正常時、互いにヘルスチェックを交換している。ネットワーク装置1−1の障害発生後、ヘルスチェックの不着により、ホスト3への通信は、ネットワーク装置1−2に切り替わる。障害発生中、パケット送信装置4からのパケットについて、ネットワーク装置1−2が受信する(S6)。ネットワーク装置1−2は、ホスト3へパケットを送信する(S7)。
【0044】
ここで、ネットワーク装置1−1の障害が復旧する。ネットワーク装置1−1の障害回復後、ホスト3への通信はネットワーク装置1−1に切り替わる。障害回復後、パケット送信装置4からのパケットは、パケット転送処理部141が受信する(S8)。パケット転送処理部141は、通常であればARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する。しかし、障害回復直後のARPテーブル152は、ARPテーブルが消失している。このためパケット転送処理部141は、BACKUP ARPテーブル153へBACKUP ARPテーブル要求を送信する(S9)。BACKUP ARPテーブル153は、BACKUP ARPテーブル要求に対応するARP情報をBACKUP ARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S11)。パケット転送処理部141は、BACKUP ARPテーブル153からBACKUP ARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する(S12)。
【0045】
BACKUP ARPテーブル153で維持しているARP情報は、障害発生前のARP情報のため障害発生中に実際のARP情報が変更されている可能性がある。そこで、ネットワーク装置1−1は、最新のARP情報を収集するためBACKUP ARPテーブル153を使用したパケット送信と並行してパケット転送処理部141からホスト3に対してARP REQUESTを送信する(S13)。ARP REQUESTを受信したホスト3は、パケット転送処理部141に対してARP REPLYを送信する(S14)。ARP REPLYを受信したパケット転送処理部141は、ARPテーブル152のARP情報を最新にするためにARPテーブル152にARP情報更新要求を送信する(S15)。ARP情報更新要求を受信したARPテーブル152は、ARP情報更新要求を元にARP登録情報を最新の情報に更新する(S16)。
【0046】
ARPテーブル152のARP登録情報更新後にパケット送信装置4からパケットをパケット転送処理部141が受信する(S17)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する(S18)。ARPテーブル152は、ARPテーブル要求に対応するARP情報をARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S19)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152からARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する(S21)。
【0047】
図7を参照して、ネットワーク装置1において、障害復帰時にBACKUP ARPテーブル153によりパケット転送を開始するパケット転送処理を説明する。図7において、障害復旧時のパケット転送処理では、ネットワーク装置1は、パケットの宛先アドレスに対応するMACアドレスがあるかBACKUP ARPテーブル153を検索する(S101)。宛先アドレスに対応するMACアドレスがBACKUP ARPテーブル153に存在する場合(S101:YES)、ネットワーク装置1は、そのMACアドレスで転送処理を開始する(S102)。宛先アドレスに対応するMACアドレスがBACKUP ARPテーブル153に存在しない場合(S101:NO)およびステップ102の次に、ネットワーク装置1は、宛先アドレス宛てにARP REQUESTを送信する(S103)。次に、ネットワーク装置1は、宛先アドレスに対応したARP REPLYを受信したか判定する(S104)。ARP REPLYを受信したとき(S104:YES)、ネットワーク装置1は、ARPテーブル152にARP REPLY結果を格納する(S105)。最後に、ネットワーク装置1は、ARPテーブル152による転送処理に切り替えて(S106)、終了する。
【0048】
一方、ステップ104にてARP REPLYが受信できなかった場合、宛先アドレスに対応した通信先が存在しないので、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブル153から宛先アドレスを削除する(S107)。最後に、ネットワーク装置1は、送信元にエラーを返し、転送処理を停止して(S108)、終了する。
【0049】
図8および図9を参照して、2種類のBACKUP ARP生成処理を説明する。まず、図8を参照して、BACKUP ARP生成処理部143による第1のBACKUP ARPテーブル生成処理を説明する。図8において、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル履歴格納部154の最新履歴を取得する(S201)。次にARPテーブル152のエントリに管理者から付与されたBACKUPフラグあるかを判定する(S202)。ARPテーブル152のエントリにBACKUPフラグがある場合、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブルエントリをBACKUP ARPテーブルに格納して(S203)、終了する。ARPテーブル152のエントリにBACKUPフラグがない場合、BACKUP ARP生成処理部143は、そのまま処理を終了する。
【0050】
次に、図9を参照して、BACKUP ARP生成処理部143による第2のBACKUP ARPテーブル生成処理を説明する。図9のBACKUP ARP生成処理によって、管理者から付与されたBACKUPフラグが無いエントリについても、自動的にBACKUP ARPテーブルに格納することを可能とする。図9において、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル履歴格納部154の履歴を取得する(S301)。次に、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル152のエントリが全取得履歴中に80%以上エントリされているかを判定する(S302)。ステップ302でYESのとき、BACKUP ARP生成処理部143は、当該ARPテーブルエントリをBACKUP ARPテーブルに格納して(S303)、終了する。ステップ302でNOのとき、BACKUP ARP生成処理部143は、そのまま処理を終了する。
【0051】
図10を参照して、BACKUP ARPテーブルによるネットワーク装置のパケット一時転送中での優先アドレス解決処理を説明する。図10において、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブルに優先指定31のアドレスがあるかを判定する(S401)。優先指定アドレスが無い場合(NO)、ネットワーク装置1は、処理を終了する。優先指定アドレスがある場合(YES)、ネットワーク装置1は、優先指定アドレス宛にARP REQUESTを送信する(S402)。次に、ネットワーク装置1は、ARP REPLYを受信したかを判定する(S403)。ARP REPLYを受信した場合(YES)、ネットワーク装置1は、ARPテーブルにARP REPLY結果を格納して(S404)、終了する。ARP REPLYを受信しない場合は、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブルから当該宛先アドレスを削除して(S405)、終了する。
【0052】
本実施例に拠れば、現用系ネットワーク機器に対して大量の基地局が接続されるようなモバイル用サービスネットワークにおいて、BACKUP ARPテーブルを具備した現用系ネットワーク機器を用いることで、現用系ネットワーク機器障害回復時に一時的なパケット転送処理を実施させることが可能となる。その結果、ARPによるアドレス解決処理の長期化によってパケット転送を停止してしまう可能性のあるパケット送信装置からのパケット転送要求を救済することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ネットワーク装置、2…L2ネットワーク網、3…ホスト、4…パケット送信装置、5…スイッチ、6…ネットワーク回線、10…通信ネットワーク、11…ネットワーク回線I/F、12…入出力装置、13…プロセッサ、14…メモリ、141…パケット転送処理部、142…アドレス解決処理部、143…BACKUP ARPテーブル生成処理部、15…メモリ、151…ルーティングテーブル、152…ARPテーブル、153…BACKUPARPテーブル、154…ARPテーブル履歴格納部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置およびネットワークシステムに係り、特に現用系ネットワーク装置およびネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報サービスをユーザーへ提供する目的で構築されるIPネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器および冗長系ネットワーク機器を用いパケット通信経路を2重化し、ネットワークの冗長性を高めることが多い。
【0003】
IPネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器のネットワークインタフェースに障害発生した場合または現用系ネットワーク機器自身に障害発生した場合、冗長系ネットワーク機器へパケット通信経路が切り替わる。現用系ネットワーク機器の障害が回復すると現用系ネットワーク機器へパケット通信経路が切り戻るネットワーク機器動作制御がネットワーク機器に実施されていることが一般的である。
【0004】
一方、IPネットワークにおいて、ネットワーク機器と接続している周辺の機器へパケット転送を行うために、レイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付けるARP(Address Resolution Protocol)によるアドレス解決をネットワーク機器は行なう必要がある。ネットワーク機器がパケット受信し周辺の機器へパケット転送を行なう際、パケット転送宛先のレイヤー3IPアドレスについてARPによるアドレス解決が行なわれていない場合、ARPによるアドレス解決が実施される。
【0005】
情報サービスをユーザーへ提供する目的で構築されるIPネットワークのひとつであるモバイル通信サービス用ネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器が多数の基地局と接続していた場合、現用系ネットワーク機器の障害発生によってパケット通信経路が切り替わり、冗長系ネットワーク機器に多数の基地局の接続が行なわれる。
【0006】
冗長系ネットワーク機器は、多数の基地局向けのパケット転送を行なうためにARPによるアドレス解決を実施する。しかし、多数の基地局向けのアドレス解決を完了させるためには比較的長時間を要する。そのため、アドレス解決を完了するまでの間、冗長系ネットワーク機器に接続している多数の基地局は、パケット通信を再開することができない。この結果、その基地局をもって情報サービスを享受するはずのユーザーに対し情報サービスを提供することができない。
【0007】
特許文献1では、現用系ネットワーク機器のもつアドレス解決結果情報を冗長系ネットワーク機器と共有する手段を提案している。共有手段をもって冗長系ネットワーク機器に要求される多数の基地局向けのアドレス解決を不要とすることにより、迅速な通信経路の切り替わりをモバイル通信サービス用ネットワークは実施することができる。
【0008】
また、冗長系ネットワーク機器に対し基地局から定期的にICMP_ECHO(Internet Control Message Protocol Echo)などのパケット送受信処理を実施する。この結果、冗長系ネットワーク機器は、多数の基地局向けのパケット転送要求を受けなくともアドレス解決を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−144806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなネットワーク冗長性をもったモバイル用サービスネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器の障害回復のため冗長用ネットワーク機器から現用系ネットワーク機器にパケット転送経路が切り戻るとき、現用系ネットワーク機器は障害から復帰した直後のために冗長系ネットワーク機器のアドレス解決結果情報を共有することは難しく、パケット転送ができなかった。また前もって基地局からのICMP_ECHOなどのパケット転送によるアドレス解決を実施することができない。よってパケット送信装置からのパケット転送要求に基づき、あらためてARPによるアドレス解決を実施する必要がある。
【0011】
このようなネットワーク冗長性をもったモバイル用サービスネットワークにおいて、現用系ネットワーク機器には多数の基地局が接続されるため、ARPによるアドレス解決に要する時間が長期化し、アドレス解決が完了するまでの間は現用系ネットワーク機器障害が回復したにもかかわらずパケット転送処理を現用系ネットワーク機器が行なうことができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するため、本発明は現用系ネットワーク機器内に現用系機器ネットワークの運用状況に関わらずARP解決情報を保持するBACKUP ARPテーブルを具備し、現用系ネットワーク機器の障害回復後にARPによるアドレス解決処理が終了するまでの間、BACKUP ARPテーブルを用いたパケット転送処理を行なう。
【0013】
詳述すると本発明では、現用系ネットワーク機器は通常のARPテーブルの他、BACKUP ARPテーブル、ARPテーブル履歴格納部およびBACKUP ARPテーブル生成処理部を具備し、ARPテーブル生成処理部は現用系ネットワーク機器のARPテーブルを定期的にARPテーブル履歴格納部に格納し、ARPテーブル生成処理部はARPテーブル履歴格納部にある複数のARPテーブルから一定の基準でARPエントリをピックアップしてBACKUP ARPテーブルに格納し、現用系ネットワーク機器の障害回復時にBACKUP ARPテーブルを参照し一時的にパケット転送処理を行なうと同時に、現用系ネットワーク機器は通常のARPによるアドレス解決処理を実施することでアドレス解決処理が長期化した場合にもパケット転送処理を実施できる。
【0014】
上述した課題は、レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続するネットワーク装置において、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、第2のテーブルの内容を維持し、障害が回復したとき、第2のテーブルを参照して、レイヤー3ネットワークからのパケットをレイヤー2ネットワークへ転送するネットワーク装置により、解決できる。
【0015】
また、レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続する現用系ネットワーク装置と予備系ネットワーク装置とからなるネットワークシステムにおいて、現用系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、第2のテーブルの内容を維持し、障害が回復したとき、第2のテーブルを参照して、レイヤー3ネットワークからのパケットをレイヤー2ネットワークへ転送するネットワークシステムにより、解決できる。
【発明の効果】
【0016】
BACKUP ARPテーブルを具備した現用系ネットワーク機器を用いることで、現用系ネットワーク機器障害回復時に一時的なパケット転送処理を実施させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通信ネットワークのブロック図である。
【図2】ネットワーク装置のブロック図である。
【図3】ARPテーブルを説明する図である。
【図4】ARPテーブル履歴格納部を説明する図である。
【図5】BACKUP ARPテーブルを説明する図である。
【図6A】パケット送信装置とネットワーク装置とホストとの間のパケット転送処理のシーケンス図(その1)である。
【図6B】パケット送信装置とネットワーク装置とホストとの間のパケット転送処理のシーケンス図(その2)である。
【図7】現用系ネットワーク装置の障害復旧時のパケット転送処理のフローチャートである。
【図8】BACKUP ARPテーブル生成処理部によるBACKUP ARPテーブル生成処理のフローチャートである。
【図9】BACKUP ARPテーブル生成処理部によるBACKUP ARPテーブル生成処理のフローチャートである。
【図10】BACKUP ARPテーブル参照による優先アドレス解決処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0019】
図1を参照して、通信ネットワーク10の構成を説明する。通信ネットワーク10は、パケット送信装置4と、2台のスイッチ5と、2台のネットワーク装置1と、L2ネットワーク2と、多数のホスト3とから構成されている。ネットワーク装置1は、ARPテーブル152と、BACKUP ARPテーブル153と、BACUP_ARPテーブル生成処理部143とを含む。
【0020】
パケット送信装置4には、スイッチ5ー1とスイッチ5ー2とが、接続されている。スイッチ5ー1とスイッチ5ー2とは、相互接続されている。また、スイッチ5ー1には現用系ネットワーク装置1ー1、スイッチ5ー2には予備系ネットワーク装置1ー2が接続されている。L2ネットワーク2には、ネットワーク装置1ー1と、ネットワーク装置1ー2と、多数のホスト3とが接続されている。
【0021】
通信ネットワーク10は、パケット送信装置4から送信されたパケットをスイッチ5−1とスイッチ5−2を経由してネットワーク装置1−1とネットワーク装置1−2からL2ネットワーク2に収容されているホスト3−1、ホスト3−2からホスト3−1000までの多くのホスト3と通信を行なうネットワークである。
【0022】
ネットワーク装置1−1は、スイッチ5−1から送信されてきたパケットをARPテーブル152の情報を用いることでパケットを正常に転送する。ARPテーブル152に登録されていないパケット転送先があった場合、この転送先のレイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付ける新しい情報をARPテーブル152に登録する。このARPテーブル152を生成すると同時にBACKUP ARPテーブル生成処理部143はARPテーブル152と同じBACKUP ARPテーブル153を生成する。
【0023】
ネットワーク装置1−2は、ネットワーク装置1−1と同じARPテーブル152を保持する。ネットワーク装置1−2は、ネットワーク装置1−1と同様の動作でARPテーブル152を生成し、BACKUP ARPテーブル生成処理部143でARPテーブル152と同じBACKUP ARPテーブル153を生成する。
【0024】
ネットワーク装置1−1およびネットワーク装置1−2は、このBACKUP ARPテーブル153を用いることでARPテーブル152が参照できない状況が発生してもBACKUP ARPテーブル153を利用することで安定したパケット転送処理が可能なネットワーク装置1である。
【0025】
ネットワーク装置1−1とL2ネットワーク2との間でパケット転送が出来ない障害が発生し、予備系装置であるネットワーク装置1−2を使用したパケット転送に切り替わった場合、ネットワーク装置1−1のARPテーブル152のレイヤー2MACアドレスとレイヤー3IPアドレスとを関連付ける情報(ARPテーブル152)は、削除される。しかし、ネットワーク装置1−1は、BACKUP ARPテーブル153を保持しているため、ネットワーク装置1−1とL2ネットワーク2との間でパケット転送ができない障害が復旧し、パケット転送がネットワーク装置1−2からネットワーク装置1−1へ戻った場合でも、即時にBACKUP ARPテーブル153を利用したパケット転送の再開が可能である。
【0026】
図2を参照して、ネットワーク装置1のハードウェアブロックを説明する。図2において、ネットワーク装置1は、複数のネットワーク回線を収容したネットワーク回線I/F11と、入出力装置12と、プロセッサ13と、メモリ14および15と、内部通信線16とからなっている。
【0027】
メモリ14は、プロセッサ13にて実行されるソフトウェアとして、パケット転送処理部141と、アドレス解決処理部143と、BACHKUP_ARP生成処理部143とを保持する。パケット転送処理部141は、パケット転送ルーチンを実行する。アドレス解決処理部143は、アドレス解決ルーチンを実行する。BACHKUP_ARP生成処理部143は、BACHKUP_ARP生成ルーチンを実行する。
【0028】
また、メモリ15は、メモリ14の各ルーチンの処理結果および基本情報を格納するエリアとして、ルーティングテーブル151と、ARPテーブル152と、BACHKUP_ARPテーブル153と、ARPテーブル履歴格納部154とが形成されている。
【0029】
通常のネットワーク装置1において、ネットワーク回線I/F11を経由してネットワーク装置1に入ってきたパケットは、メモリ14に格納される。
【0030】
メモリ14に格納されたパケットについて、プロセッサ13は、アドレス解決処理を行なう。アドレス解決処理を行なったパケットについて、プロセッサ13は、メモリ15のルーティングテーブル151を参照し、送信先の情報を取得し、パケット処理141によって再度ネットワーク回線I/F11を経由して送信先へ転送する。
【0031】
ルーティングテーブル151を参照するとき、プロセッサ13は、パケットの情報がARPテーブル152記録されている場合、パケットの情報を更新する。
【0032】
パケットの情報がARPテーブル152に記録されていない場合、プロセッサ13は、アドレス解決処理部142にて行なったアドレス解決処理の結果をARPテーブル152に書き込む。
【0033】
ARPテーブル152に書き込まれた情報は一定時間使用されないと削除されてしまう。また、ARPテーブル152は、障害が発生した場合、蓄積されたパケット情報をクリアされてしまう。そこで、本実施例では、バックアップARPテーブル153を利用する。
【0034】
メモリ14に格納されたパケットのアドレス解決処理を行なう際、同時にBACKUP ARPテーブル生成処理をBACKUP ARPテーブル生成処理部143にて行なう。BACKUP ARPテーブル生成処理によって生成された情報はBACKUP ARPテーブル153に格納される。
【0035】
BACKUP ARP生成処理部143でBACKUP ARP生成処理を行なう際には、ARPテーブル履歴格納部154に格納されている情報を参照する。
【0036】
ARPテーブル履歴格納部154にはネットワーク回線I/F11を経由して到着したパケットの統計情報等が格納されており、宛先頻度の高いアドレス情報や優先度の高い宛先アドレスなどの情報が格納されている。
【0037】
図3を参照して、ARPテーブルを説明する。図3において、ARPテーブル152は、IPアドレス21、MACアドレス22、バックアップ23から構成されている。ARPテーブル152は、IPアドレス21とMACアドレス22とを関連付けする。ネットワーク装置1は、ARPテーブル152を参照して、パケット転送処理行なう。また、バックアップ23の○は、BACKUP ARPテーブル153に登録するフラグであり、ネットワーク管理者が各ARPテーブルエントリの重要度を考慮して任意に付与することができる。
【0038】
TCP/IPネットワークにおいて、ARPテーブル152がない場合、ネットワーク装置1は、パケット転送ができない。そこで、ネットワーク装置1は、ARP REQUESTを送信し、送信したいIPアドレス先からのARP REPLYを受け取ることによってARPテーブル152を作成する(ARP解決処理)。ここで、ARP REPLYの中には、送信したいIPアドレスに関連付けたMACアドレスが含まれている。
【0039】
図4を参照して、ARPテーブル履歴格納部154を説明する。図4において、ARPテーブル履歴格納部154は、優先指定31と、通信履歴32と、IPアドレス33と、MACアドレス34とから構成される。ARPテーブル履歴格納部154は、ネットワーク回線を経由して到着したパケットの統計情報を格納している。ARPテーブル履歴格納部154は、宛先としての頻度の高いアドレス情報、優先度の高い宛先アドレスなどを格納する。図4では、最終通信時間が短いほどを宛先頻度が高いとしている。また、優先指定31の○は、ARP REQUESTを優先的に送信する送信先であることを意味する。
【0040】
図5を参照して、BACKUP ARPテーブル153を説明する。図5において、BACKUP ARPテーブル153は、IPアドレス41と、MACアドレス42とから構成されている。BACKUP ARPテーブル153は、BACKUP ARPテーブル生成処理によって生成される。
【0041】
図6を参照して、パケット転送装置4と、ネットワーク機器1と、ホスト3との間のパケット転送のシーケンスを説明する。図6において、パケット送信装置4は、ホスト3のいずれか宛のパケットを現用系ネットワーク装置1−1に送信する(S1)。ネットワーク装置1−1は、パケット送信装置4からのパケットをパケット転送処理部141で受信する。パケット転送処理部141は、パケットを受信するとARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する(S2)。ARPテーブル152は、ARPテーブル要求に対応するARP情報をARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S3)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152からARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する。
【0042】
ネットワーク装置1−1にてホスト3との接続部分で障害が発生すると、ARPテーブル152が消失する。しかし、BACKUP ARPテーブル153は、ARP情報を保持し続ける。
【0043】
ネットワーク装置1−1と、ネットワーク装置1−2とは、正常時、互いにヘルスチェックを交換している。ネットワーク装置1−1の障害発生後、ヘルスチェックの不着により、ホスト3への通信は、ネットワーク装置1−2に切り替わる。障害発生中、パケット送信装置4からのパケットについて、ネットワーク装置1−2が受信する(S6)。ネットワーク装置1−2は、ホスト3へパケットを送信する(S7)。
【0044】
ここで、ネットワーク装置1−1の障害が復旧する。ネットワーク装置1−1の障害回復後、ホスト3への通信はネットワーク装置1−1に切り替わる。障害回復後、パケット送信装置4からのパケットは、パケット転送処理部141が受信する(S8)。パケット転送処理部141は、通常であればARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する。しかし、障害回復直後のARPテーブル152は、ARPテーブルが消失している。このためパケット転送処理部141は、BACKUP ARPテーブル153へBACKUP ARPテーブル要求を送信する(S9)。BACKUP ARPテーブル153は、BACKUP ARPテーブル要求に対応するARP情報をBACKUP ARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S11)。パケット転送処理部141は、BACKUP ARPテーブル153からBACKUP ARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する(S12)。
【0045】
BACKUP ARPテーブル153で維持しているARP情報は、障害発生前のARP情報のため障害発生中に実際のARP情報が変更されている可能性がある。そこで、ネットワーク装置1−1は、最新のARP情報を収集するためBACKUP ARPテーブル153を使用したパケット送信と並行してパケット転送処理部141からホスト3に対してARP REQUESTを送信する(S13)。ARP REQUESTを受信したホスト3は、パケット転送処理部141に対してARP REPLYを送信する(S14)。ARP REPLYを受信したパケット転送処理部141は、ARPテーブル152のARP情報を最新にするためにARPテーブル152にARP情報更新要求を送信する(S15)。ARP情報更新要求を受信したARPテーブル152は、ARP情報更新要求を元にARP登録情報を最新の情報に更新する(S16)。
【0046】
ARPテーブル152のARP登録情報更新後にパケット送信装置4からパケットをパケット転送処理部141が受信する(S17)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152にARPテーブル要求を送信する(S18)。ARPテーブル152は、ARPテーブル要求に対応するARP情報をARPテーブル応答としてパケット転送処理部141に送信する(S19)。パケット転送処理部141は、ARPテーブル152からARPテーブル応答を受信し、ARPテーブル応答を元に、ホスト3に対してパケットを送信する(S21)。
【0047】
図7を参照して、ネットワーク装置1において、障害復帰時にBACKUP ARPテーブル153によりパケット転送を開始するパケット転送処理を説明する。図7において、障害復旧時のパケット転送処理では、ネットワーク装置1は、パケットの宛先アドレスに対応するMACアドレスがあるかBACKUP ARPテーブル153を検索する(S101)。宛先アドレスに対応するMACアドレスがBACKUP ARPテーブル153に存在する場合(S101:YES)、ネットワーク装置1は、そのMACアドレスで転送処理を開始する(S102)。宛先アドレスに対応するMACアドレスがBACKUP ARPテーブル153に存在しない場合(S101:NO)およびステップ102の次に、ネットワーク装置1は、宛先アドレス宛てにARP REQUESTを送信する(S103)。次に、ネットワーク装置1は、宛先アドレスに対応したARP REPLYを受信したか判定する(S104)。ARP REPLYを受信したとき(S104:YES)、ネットワーク装置1は、ARPテーブル152にARP REPLY結果を格納する(S105)。最後に、ネットワーク装置1は、ARPテーブル152による転送処理に切り替えて(S106)、終了する。
【0048】
一方、ステップ104にてARP REPLYが受信できなかった場合、宛先アドレスに対応した通信先が存在しないので、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブル153から宛先アドレスを削除する(S107)。最後に、ネットワーク装置1は、送信元にエラーを返し、転送処理を停止して(S108)、終了する。
【0049】
図8および図9を参照して、2種類のBACKUP ARP生成処理を説明する。まず、図8を参照して、BACKUP ARP生成処理部143による第1のBACKUP ARPテーブル生成処理を説明する。図8において、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル履歴格納部154の最新履歴を取得する(S201)。次にARPテーブル152のエントリに管理者から付与されたBACKUPフラグあるかを判定する(S202)。ARPテーブル152のエントリにBACKUPフラグがある場合、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブルエントリをBACKUP ARPテーブルに格納して(S203)、終了する。ARPテーブル152のエントリにBACKUPフラグがない場合、BACKUP ARP生成処理部143は、そのまま処理を終了する。
【0050】
次に、図9を参照して、BACKUP ARP生成処理部143による第2のBACKUP ARPテーブル生成処理を説明する。図9のBACKUP ARP生成処理によって、管理者から付与されたBACKUPフラグが無いエントリについても、自動的にBACKUP ARPテーブルに格納することを可能とする。図9において、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル履歴格納部154の履歴を取得する(S301)。次に、BACKUP ARP生成処理部143は、ARPテーブル152のエントリが全取得履歴中に80%以上エントリされているかを判定する(S302)。ステップ302でYESのとき、BACKUP ARP生成処理部143は、当該ARPテーブルエントリをBACKUP ARPテーブルに格納して(S303)、終了する。ステップ302でNOのとき、BACKUP ARP生成処理部143は、そのまま処理を終了する。
【0051】
図10を参照して、BACKUP ARPテーブルによるネットワーク装置のパケット一時転送中での優先アドレス解決処理を説明する。図10において、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブルに優先指定31のアドレスがあるかを判定する(S401)。優先指定アドレスが無い場合(NO)、ネットワーク装置1は、処理を終了する。優先指定アドレスがある場合(YES)、ネットワーク装置1は、優先指定アドレス宛にARP REQUESTを送信する(S402)。次に、ネットワーク装置1は、ARP REPLYを受信したかを判定する(S403)。ARP REPLYを受信した場合(YES)、ネットワーク装置1は、ARPテーブルにARP REPLY結果を格納して(S404)、終了する。ARP REPLYを受信しない場合は、ネットワーク装置1は、BACKUP ARPテーブルから当該宛先アドレスを削除して(S405)、終了する。
【0052】
本実施例に拠れば、現用系ネットワーク機器に対して大量の基地局が接続されるようなモバイル用サービスネットワークにおいて、BACKUP ARPテーブルを具備した現用系ネットワーク機器を用いることで、現用系ネットワーク機器障害回復時に一時的なパケット転送処理を実施させることが可能となる。その結果、ARPによるアドレス解決処理の長期化によってパケット転送を停止してしまう可能性のあるパケット送信装置からのパケット転送要求を救済することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ネットワーク装置、2…L2ネットワーク網、3…ホスト、4…パケット送信装置、5…スイッチ、6…ネットワーク回線、10…通信ネットワーク、11…ネットワーク回線I/F、12…入出力装置、13…プロセッサ、14…メモリ、141…パケット転送処理部、142…アドレス解決処理部、143…BACKUP ARPテーブル生成処理部、15…メモリ、151…ルーティングテーブル、152…ARPテーブル、153…BACKUPARPテーブル、154…ARPテーブル履歴格納部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続するネットワーク装置において、
IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、
障害が発生したとき、前記第2のテーブルの内容を維持し、
前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク装置であって、
前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照する転送と並行して、アドレス解決要求を前記レイヤー2ネットワークへ送信し、受信したアドレス解決応答に基づいて、前記第1のテーブルを生成することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク装置であって、
前記第1のテーブルを生成したとき、生成した前記第1のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項4】
レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続する現用系ネットワーク装置と予備系ネットワーク装置とからなるネットワークシステムにおいて、
前記現用系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、前記第2のテーブルの内容を維持し、前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のネットワークシステムであって、
前記予備系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第3のテーブルのみを保持することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項1】
レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続するネットワーク装置において、
IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、
障害が発生したとき、前記第2のテーブルの内容を維持し、
前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク装置であって、
前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照する転送と並行して、アドレス解決要求を前記レイヤー2ネットワークへ送信し、受信したアドレス解決応答に基づいて、前記第1のテーブルを生成することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワーク装置であって、
前記第1のテーブルを生成したとき、生成した前記第1のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項4】
レイヤー3ネットワークとレイヤー2ネットワークとを接続する現用系ネットワーク装置と予備系ネットワーク装置とからなるネットワークシステムにおいて、
前記現用系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第1のテーブルと、この第1のバックアップである第2のテーブルとを保持し、障害が発生したとき、前記第2のテーブルの内容を維持し、前記障害が回復したとき、前記第2のテーブルを参照して、前記レイヤー3ネットワークからのパケットを前記レイヤー2ネットワークへ転送することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のネットワークシステムであって、
前記予備系ネットワーク装置は、IPアドレスとMACアドレスとを関連づける第3のテーブルのみを保持することを特徴とするネットワークシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−39360(P2012−39360A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177412(P2010−177412)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]