説明

ネットワーク装置

【課題】既に稼動している中央処理装置、スイッチ、ネットワークカードに影響を与えずにネットワークカードの増設が可能なネットワーク接続装置の要求がある。
【解決手段】中央処理装置とメインメモリとで構成された主制御部と、受信したパケットの転送を行うスイッチと、ネットワークインタフェースカードを収容する複数のスロットとを備え、ネットワークインタフェースカードは、パケットデータを格納するメモリと、このメモリ内のパケットデータをネットワーク回線に転送するスイッチデバイスと、パケットデータのディジタル信号とネットワーク信号との変換を行い、かつループバック機能を有するPHYデバイスと、外部回線と接続可能な回線モジュールとを実装し、スロットへの挿入による電源投入を検出したとき、メモリとPHYデバイスと間の疎通テストを行う制御回路を備えるネットワーク装置により、達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置に係り、特にネットワークカードへの電源投入のみで疎通テストを実施するネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で示されるネットワーク装置の回線の疎通テストでは、自装置から出力したフレームが折り返されて戻ってきたフレームを、フレーム破棄が起きないように制御を行い、そのフレームのチェックすることで回線の障害を検出している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−286456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャーシ型ネットワーク装置は、ネットワークインタフェースカード(以下、ネットワークカードまたはNIFと記載)を後より増設、またはネットワークカードの構成変更をユーザの要求に合わせて、自由に行える特徴である。しかし、ネットワークカードの増設の際に、新しいネットワークカードを実装し、ソフトウェアが動いた時にネットワークカードのハード不良が原因のネットワーク障害が発生するケースがある。
【0005】
このため、ネットワークカードを実装後に回線の疎通テストを行い動作を確認した後でソフトウェア動作をすることで、ネットワーク障害の防止を行いたい要求がある。しかし、ネットワークカードの疎通テストによる既にソフトウェア制御を行っているCPUへの負荷の増加、ネットワークカードの疎通テストの実行に掛かる時間を考慮した場合、実現が難しい。
そこで、既に稼動しているCPU、スイッチ、ネットワークカードに影響を与えずにネットワークカードの増設が可能なネットワーク接続装置の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
新規実装するネットワークカード内に、回線の疎通テストを電源投入で自動に行う制御回路を実装することで、既に稼動しているネットワーク装置に影響を与えない回線の疎通テストを実現する。制御回路においては、プログラム可能なLSIを使用し、書換え可能な不揮発性メモリに、プログラムデータとテストデータを格納しておく事で、ネットワークカードの構成変更による制御回路の動作変更や、疎通テストのテストデータの変更にも柔軟に対応できるようにする。
【0007】
上述した課題は、筐体内に、電源部と、中央処理装置とメインメモリとで構成された主制御部と、受信したパケットの転送を行うスイッチと、ネットワークインタフェースカードを収容する複数のスロットとを備え、ネットワークインタフェースカードは、パケットデータを格納するメモリと、このメモリ内のパケットデータをネットワーク回線に転送するスイッチデバイスと、パケットデータのディジタル信号とネットワーク信号との変換を行い、かつループバック機能を有するPHYデバイスと、外部回線と接続可能な回線モジュールとを実装し、スロットへの挿入による電源投入を検出したとき、メモリとスイッチデバイスとPHYデバイスと間の疎通テストを行う制御回路を備えるネットワーク装置により、達成できる。
【発明の効果】
【0008】
既に稼動しているCPU、スイッチ、ネットワークカードに影響を与えずにネットワークカードの増設が可能なネットワーク接続装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照して詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。ここで、図1はシャーシ型スイッチ装置の斜視図である。図2はシャーシ型スイッチ装置のハードウェアブロック図である。図3はメモリ上のプロプログラムを説明する図である。図4はネットワークカードのハードウェアブロックである。図5はシャーシ型スイッチ装置の動作フローである。
【0010】
図1において、シャーシ型スイッチ装置1000は、筐体500に挿入された1台の制御部200と、2台のスイッチ部300と、6台のネットワークカード100と、4台のファンユニット400と、図示しない複数の電源ユニットとから構成される。制御部200とスイッチ部300とネットワークカード100は、前方よりスロットに挿入して、いずれかの電源ユニットと接続される。具体的には、制御部200とスイッチ部300とネットワークカード100は、図1のネットワークカード100に示すように、フロントパネル110と、フロントパネル110と先端部分で接続されたプリント基板120と、プリント基板120の後端に実装されたコネクタ130とを含み、コネクタ130から給電される。
【0011】
このネットワークカード100を、筐体500のネットワークカード用スロット550に挿入することによって、ネットワークカード100を7台実装したシャーシ型スイッチ装置1000とすることができる。なお、このときシャーシ型スイッチ装置1000の電源をOFFする必要はない。すなわち、ネットワークカード100は、活線挿入が可能である。
なお、制御部200の右側のスロットと、スイッチ部300−1とスイッチ部300−2の間のスロットは、空きスロットであり、カバーのみ取り付けられている。
【0012】
図2において、シャーシ型スイッチ装置1000は、内部通信線600に接続された中央処理装置(CPU)210とメインメモリ220とスイッチ部300と2台のネットワークカード100とから構成される。なお、内部通信線600には増設するネットワークカードとの接続部を事前に準備してある。
【0013】
CPU210とメインメモリ220は、図1の制御部200に実装されている。また、スイッチ部300には、スイッチ310を実装する。さらに、ネットワークカード100には、FPGA107とスイッチ102とPHY104と光モジュール105Aとを実装する。FPGA107とスイッチ102とPHY104とに付いては、図4を参照して説明する。光モジュール105Aは、XFP(10Gbit/s small Form-factor Pluggable)、SFP(Small Form-factor Pluggable)等の光トランシーバを収容する電気のモジュールである。
なお、本明細書において、接続する物理回線の種類の違い(光/電気、速度等)に関わらずネットワークカード100、回線モジュール105と表記する。
【0014】
図3において、メインメモリ220は、装置制御プログラム221と、障害処理制御プログラム222と、割込み制御プログラム223と、ネットワーク制御プログラム224と、初期化制御プログラム225とをストアしている。これらのプログラム221〜225をCPU210が実行することにより、コンピュータを、それぞれ装置制御部、障害処理制御部、割込み制御部、ネットワーク制御部、初期化制御部として、機能させる。
【0015】
ここで、装置制御プログラム221は、ファンユニット400、電源を含めた装置全体の監視制御と、ボードの実装認識等の装置管理を実施する。障害処理制御プログラム222は、障害検出時に障害検出ボードのDump採取、障害よりの復旧処理等の障害処理を実施する。割込み制御プログラム223は、各ボードよりの割込み通知を判断し、各制御部に制御を促す。ネットワーク制御プログラム224は、構成定義に従ってスイッチ部300およびネットワークカード100を制御する。初期化制御プログラム225は、ネットワークカード種別(光/電気、速度等)を判別し、ネットワークカード100とスイッチ部300の初期化を行う。
【0016】
図4において、ネットワークカード100は、回線モジュール105と、回線モジュール105と接続されたPHYデバイス104と、PHYデバイス104と接続されたスイッチデバイス102と、スイッチデバイス102と接続されたメモリ103と、PHYデバイス104とスイッチデバイス102とに接続されたFPGA(Field Programmable Gate Array)107と、FPGA107と接続されたFLASHメモリ101とLED106とから構成される。
【0017】
メモリ103は、回線から受信したパケットデータを格納する。スイッチデバイス102は、メモリ103に格納されたパケットデータをスイッチング制御する。PHYデバイス104は、スイッチデバイス102から受信したディジタル信号を回線モジュール105に適したネットワーク信号に変換する。PHYデバイス104は、また、回線モジュール105から受信したネットワーク信号をディジタル信号に変換する。PHYデバイス104は、受信信号を自デバイス内にてループバック可能に構成する。回線モジュール105は、物理ケーブルにて他の回線と接続する。
【0018】
FPGA107は、電源投入されると回線の疎通テストを自動で行い結果を収集する。FLASHメモリ101は、FPGAデータ1011とテストデータ1012を格納しており、疎通テストの結果を障害情報1013に格納する。LED106は、疎通テストの結果を目視にて確認可能にする。
【0019】
ネットワークカード100の回線疎通テストの動作を説明する。ネットワークカード100は、電源投入されると、FPGA107にFLASHメモリ101より、FPGAデータ1011がコンフィグレーションされ、疎通テストの制御パターンがプログラミングされる。
【0020】
FPGA107は、スイッチデバイス102とPHYデバイス104間の回線を設定する。FPGA107は、FLASHメモリ101に格納されているテストデータ1012をメモリ103へ転送し、スイッチデバイス102のパケットデータ転送制御を行う。
【0021】
FPGA107から指示されたスイッチデバイス102は、回線側にパケットデータを転送する。疎通テストの制御パターンによりPHYデバイス104は、内部でループバックを行う。スイッチデバイス102は、戻ってきたパケットデータを受信して、メモリ103に格納する。
【0022】
FPGA107は、疎通テストが完了後にスイッチデバイス102の統計情報の送信パケットデータ数と受信データ数の確認のチェック、メモリ内のパケットデータのデータチェックを行い、エラー判別を行う。エラー検出時FPGA107は、スイッチデバイス102の統計情報とメモリ1103のパケットデータを障害解析用の情報として収集し、FLASHメモリ101の障害情報1013に格納する。FPGA107は、LED106を制御して、目視にてエラー判断可能なようにする。FPGA107は、疎通テストに問題がなかった場合、完了通知信号にてCPU210に通知を行う。これを受けてCPU210は、新規に実装されたネットワークカード100にアクセスを行い、ソフトウェア稼動を行う。
【0023】
なお、FPGA107は、PHYデバイス104と回線モジュール105間の回線を設定してもよい。このとき、ループバックは、回線モジュール105に図示しない折り返しケーブルを接続しての外部ループバックが必要となる。この場合、回線モジュール105の動作確認ができる。
【0024】
図5において、シャーシ型スイッチ装置1000の電源が投入されると、シャーシ型スイッチ装置1000は、CPU210により、各ハードウェアの初期設定を実施する(S11)。次に、シャーシ型スイッチ装置1000のCPU210は、初期設定により把握したハードウェアのソフトウェア動作を開始する(S12)。ここで、あらたなネットワークカード100が、保守者によってスロット550に活線挿入され、ネットワークカード100に電源供給されたとする。
【0025】
ネットワークカード100は、ハードウェアにより初期設定する(S14)。ネットワークカード100は、スイッチデバイス102を介してメモリ103と、スイッチデバイス102と、PHYデバイス104にテスト設定する(S16)。ネットワークカード100は、回線疎通テストを実施し(S17)、障害チェックを実施する(S18)。ステップ18で障害がなければ、ネットワークカード100は、CPU210に完了通知を送信する(S19)。完了通知を受信したCPU210は、再構成されたネットワークカード群によるソフトウェア動作を開始する。
【0026】
一方、ステップ18で障害があるとき、ネットワークカード100は、エラー情報の採取と記録を実施し、LEDによるエラー通知を保守者に実施する。なお、このときシャーシ型スイッチ装置1000は、ステップ12で開始したソフトウェア動作を継続する。
【0027】
本実施例に拠れば、既に稼動しているネットワーク装置に、新規実装したネットワークカードの回線疎通テストを短時間で実行でき、ソフトウェア稼動を行う前に動作保証を確認できる。これは新規実装したネットワークカードが電源投入により、ネットワークカード単体のみで、ハードウェア自律による疎通テストをサポートする事で実現でき、ソフトウェアが既動作部分の処理を行いながら、設定・テスト・解析の回線疎通テスト処理を実行する特許文献1に記載の方法に比べ、大幅にテストの実行時間を短縮できる。
【0028】
また、ネットワークカード単体で実行するテストなので、既に稼動中のCPUやネットワークカードには、回線疎通テストによる処理の負荷増加、または障害を検出した場合の影響もなく、回線疎通テストにて動作保証ができてからソフトウェア動作を行う事で、ネットワークカードの新規増設によるネットワーク障害を防止する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】シャーシ型スイッチ装置の斜視図である。
【図2】シャーシ型スイッチ装置のハードウェアブロック図である。
【図3】メモリ上のプロプログラムを説明する図である。
【図4】ネットワークカードのハードウェアブロックである。
【図5】シャーシ型スイッチ装置の動作フローである。
【符号の説明】
【0030】
100…ネットワークカード(NIF)、101…FLASHメモリ、102…スイッチデバイス、103…メモリ、104…PHYデバイス、105…回線モジュール、106…LED、107…FPGA、110…フロントパネル、120…プリント基板、130…コネクタ、200…制御部、210…中央処理装置(CPU)、220…メインメモリ、300…スイッチ部、400…ファンユニット、500…筐体、550…NIFスロット、600…内部通信線、1000…シャーシ型スイッチ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、電源部と、中央処理装置とメインメモリとで構成された主制御部と、受信したパケットの転送を行うスイッチと、ネットワークインタフェースカードを収容する複数のスロットとを備えたネットワーク装置において、
前記ネットワークインタフェースカードは、パケットデータを格納するメモリと、このメモリ内のパケットデータをネットワーク回線に転送するスイッチデバイスと、パケットデータのディジタル信号とネットワーク信号との変換を行い、かつループバック機能を有するPHYデバイスと、外部回線と接続可能な回線モジュールとを実装し、前記スロットへの挿入による電源投入を検出したとき、前記メモリと前記スイッチデバイスと前記PHYデバイスと間の疎通テストを行う制御回路を備えることを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク装置であって、
前記制御部は、プログラム可能なLSIと、このLSIのプログラムデータと疎通テストのテストデータを書換え可能な不揮発性メモリとから構成されていることを特徴とするネットワーク装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のネットワーク装置であって、
前記ネットワークインタフェースカードは、前記疎通テストで障害無と判定したとき、前記中央処理装置に完了通知を送信し、
前記中央処理装置は、前記完了通知を受信して、前記ネットワークインタフェースカードの制御を開始することを特徴とするネットワーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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