説明

ネットワーク通信システム

【課題】メンテナンスの作業効率の向上を図ったネットワーク通信システムを提供する。
【解決手段】サーバ側通信装置SNと、クライアント側通信装置CNとの間をIPネットワークNWを介して一対一で接続し、クライアント側通信装置CNにより、マウスMS及びキーボードKBの操作信号を対向するサーバ側通信装置SNに送信し、サーバ側通信装置SNにより、その操作信号を受け取ってサーバ側コンピュータSCに出力するようにする。また、サーバ側通信装置SNにより、サーバ側コンピュータSCから出力されるモニタ信号を対向するクライアント側通信装置CNに送信し、クライアント側通信装置CNにより、そのモニタ信号を受け取ってモニタMNに出力するようにして、あたかもサーバ側コンピュータSCとクライアント側のモニタMN、マウスMS、及びキーボードKBとの間が無限長の延長ケーブルで接続されているかのごとく振る舞うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば企業や家庭、店舗等に設置されたネットワーク端末から、遠隔地に設置されたサーバコンピュータへアクセスするためのネットワーク通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各企業や家庭、店舗等には、パーソナル・コンピュータ(以下、PCと称する)が設置され、これを介してインターネットに接続して、WWW(World-Wide Web)の閲覧や電子メールのやり取りを行っている。一般的に使用されているPCは、CPU、ROM、RAM、HDD等のコンポーネントで構成されており、オペレーティングシステム(以下、OSと称する)を介して動作している。しかし、この方法では、OSやHDDに障害が発生した場合に重要な情報が消滅してしまったり、悪意あるメールに添付されるウィルスによりシステム全体が破壊されてしまったりするおそれがある。
【0003】
こうした問題を解決するため、市場では「シンクライアント」もしくは「ダム端末」と呼ばれるクライアント端末を導入するケースが増加しつつある。これらの端末は、現状のPCからHDD等の記憶デバイスを排除し、同機能をサーバ側コンピュータに持たせたものであり、端末自体が各利用者のデータを保存せず、全てサーバ側コンピュータにて処理・保存を行う仕組みになっている。一般的な「シンクライアント」もしくは「ダム端末」は、用途を特化した端末であり、基本的な構造は、一般的に普及しているPCと変わりは無い。つまり、クライアント端末で所定のOSが動作しており、サーバ側コンピュータとは、OSを介して接続している(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
【非特許文献1】「ブレードクライアントコンピュータ CLEARCUBE」 <URL:http://www.hitachi-system.co.jp/clearcube/sp/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記述べたように「シンクライアント」や「ダム端末」では、クライアント側の構成は基本的にはPCそのものであり、個人データの保存やアプリケーションソフトウェアの実行等を遠隔地に設置されたサーバ側コンピュータで行うものであった。この場合、クライアント側端末では、従来通りのOSが動作するコンピュータとして機能するため、OSにセキュリティホールがある場合には、外部からハッキングもしくはクラッキングされる可能性がある。また、各クライアント端末に対するOSのアップデート処理が必要となり、メンテナンス作業に労力がかかる。さらに、従来技術では、クライアント側端末での処理はOSに依存しているため、サーバ側コンピュータで動作するOSにも必然的に制限が発生し、サーバ側OSを自由に選択することができなかった。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、使用するOS、アプリケーションソフトの選択に自由度を与え、メンテナンスの作業効率及び信頼性の向上を可能とするネットワーク通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明に係わるネットワーク通信システムは、サーバ側コンピュータにTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)による通信ネットワークを介してクライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置を接続するためのネットワーク通信システムであって、前記サーバ側コンピュータと前記通信ネットワークとの間に介在されるサーバ側通信装置と、前記クライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置と前記通信ネットワークとの間に介在されるクライアント側通信装置とを具備する。そして、前記サーバ側通信装置は、前記サーバ側コンピュータの映像出力端子から出力されるマルチメディア信号をTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記クライアント側通信装置に向け送信する送信手段と、前記クライアント側通信装置から送信される前記操作信号表すTCP/IPパケットを前記通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記サーバ側コンピュータの操作信号入力端子に出力する受信手段とを備える。そして、前記クライアント側通信装置は、前記操作器から出力される操作信号を入力してTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記サーバ側通信装置に向け送信する送信手段と、前記サーバ側通信装置から送信される前記マルチメディア信号を表すTCP/IPパケットを通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記マルチメディア信号処理装置に出力する受信手段とを備えるものである。
【0008】
上記構成によるネットワーク通信システムでは、サーバ側通信装置とクライアント側通信装置との間が通信ネットワークを介して一対一で接続される。そして、クライアント側通信装置により操作器の操作信号が対向するサーバ側通信装置に送信されてサーバ側コンピュータに入力される。また、サーバ側コンピュータから出力されるマルチメディア信号は、サーバ側通信装置によりクライアント側通信装置に向け送信されマルチメディア信号処理装置に出力される。これにより、あたかもサーバ側コンピュータと、クライアント側システムに設置されるマルチメディア信号処理装置及び操作器との間が通信ネットワークを介した無限長の延長ケーブルで接続されているかのごとく振る舞う。
【0009】
これにより、クライアント側には、OSが存在しないため、OSのアップデートの必要がなく、システム管理者は、サーバ側コンピュータに対するメンテナンスのみを行えばよい。よって、メンテナンスの作業効率及び信頼性の向上を可能とするネットワーク通信システムを実現できる。また、従来技術では、クライアント側での通信処理がOSに依存していたため、サーバ側コンピュータで動作するOSにも必然的に制限が発生したが、本発明では、所望のOSでサーバ側コンピュータを動作させることが可能となる。
【0010】
また、この発明のネットワーク通信システムは、次のような各種構成を備えることも特徴とする。
第1に、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの送信手段は、前記TCP/IPパケットを暗号化する暗号化手段をさらに備え、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの受信手段は、前記暗号化手段で暗号化されたパケットから元のTCP/IPパケットを復号する復号手段を備えることを特徴とする。
通信ネットワークを伝送するパケットに対し暗号化処理を施すことにより、インターネットのような公衆ネットワークを利用する場合でも、秘匿性を保持しつつ安全な通信を行うことが可能となる。
【0011】
第2に、前記通信ネットワークがVPN(Virtual Private Network)により構成される場合に、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの暗号化手段は、前記TCP/IPパケットを前記VPNに規定されるVPN通信用パケットに変換し、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの復号手段は、前記VPN通信用パケットを元のTCP/IPパケットに変換することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、さらに、サーバ側コンピュータとクライアント側との間は、IPSec(Internet Protocol Security)などの暗号化方式で暗号化されたVPNトンネルとして、完全にトランスペアレントな形で接続されるゲートウェイ機能として動作する。このようにすることで、伝送パケットの盗聴や改ざんなどの危険性を防止し、既設のネットワークを専用線のように利用することが可能となる。
【0013】
第3に、前記クライアント側のユーザを認証するユーザ認証手段をさらに具備し、前記ユーザ認証手段により認証確認された場合にのみ、前記サーバ側コンピュータに接続されることを特徴とする。
本発明では、クライアント側からのセッションが切断された際にも、サーバ側コンピュータ上は使用状態をそのまま保持することができる。この状態で、再度セッションを確立するためには、ユーザ認証を行う必要がある。従来使用されているIDとパスワードによる認証の他に、指紋認証等のバイオメトリクスと組み合わせることで、ユーザ認証を簡単かつ確実に行え、安全性を向上することができる。また、上記のようなユーザ認証を導入することで、一個のクライアント側システムを、複数のユーザが共有して用いることも可能となる。
【0014】
また、上記ネットワーク通信システムにおいて、サーバ側コンピュータにOS/アプリケーションサーバが接続されている場合に、クライアント側通信装置から送信されるOS/アプリケーションソフトウェア選択要求に応じて、サーバ側コンピュータがアプリケーションサーバにアクセスして、サーバ側コンピュータのOS/アプリケーションソフトウェアを設定および更新することを特徴とする。
【0015】
従来のシンクライアントシステムでは、クライアント側端末に所定のOSを用いるものがほとんどであったため、サーバ側コンピュータで動作させるOSが必然的に決められていた。本発明ではそのような制限が無いため、OS/アプリケーションサーバを設けることで、利用者はサーバ側コンピュータに対し、所望のOS又はアプリケーションソフトウェアをインストールすることが可能となり、利用者が自分に合った環境を容易に構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
したがってこの発明によれば、使用するOS、アプリケーションソフトの選択に自由度を与え、メンテナンスの作業効率及び信頼性の向上を可能とするネットワーク通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係るネットワーク通信システムの一実施形態を示すブロック構成図である。このシステムは、サーバ側コンピュータが設置されるデータセンタ1とクライアント側システム2との間をIP(Internet Protocol)ネットワークNWを介して接続可能にしたものである。
【0018】
データセンタ1には、LAN(Local Area Network)11が敷設され、このLAN11は、ゲートウェイ12及びルータ13を介してIPネットワークNWに接続されている。IPネットワークNWは、例えば、既設されているTCP/IPをベースとした一般的なインターネット回線を利用する。データセンタ1には、利用者ごとにサーバ側コンピュータSC1〜SCnが設置され、それぞれ上記LAN11に接続されている。尚、本実施形態では、サーバ側コンピュータSC1〜SCnは、各利用者に1台ずつ割り当てられるとしたが、複数の利用者が1台のサーバ側コンピュータを共有するように構成してもよい。
【0019】
また、データセンタ1には、サーバ側コンピュータSC1〜SCnごとにサーバ側通信装置SN1〜SNnが設けられる。各サーバ側通信装置SN1〜SNnは、サーバ側コンピュータSC1〜SCnの入出力端子、ここでは、キーボード入力端子、マウス入力端子、及びモニタ出力端子に対応するキーボード出力端子、マウス出力端子、モニタ入力端子を備え、それぞれの端子がサーバ側コンピュータSC1〜SCnの対応する端子にケーブル接続されている。また、サーバ側通信装置SN1〜SNnは、LAN11への接続端子を有し、このLAN11を介してIPネットワークNWに接続される。
【0020】
また、データセンタ1には、上記LAN11上にアプリケーションソフト格納サーバ14が接続されており、各利用者の指定に応じたOS、またはアプリケーションソフトを、各サーバ側コンピュータSC1〜SCnにロードすることができる。
クライアント側システム2には、利用者ごとにクライアント側通信装置CN1〜CNnが設けられる。ただし、これらのクライアント側通信装置CN1〜CNnは、複数のユーザが一個の装置を共有して使用することも可能であるため、必ずしも利用者数分のクライアント側通信装置が必須となるわけでは無い。クライアント側通信装置CN1〜CNnは、マルチメディア信号処理装置としてのモニタMN1〜MNnを接続するためのモニタ出力端子、操作入力装置としてのキーボードKB1〜KBn、及びマウスMS1〜MSnを接続するためのキーボード入力端子、マウス入力端子を備え、それぞれの端子が対応する機器の端子にケーブル接続される。また、クライアント側通信装置CN1〜CNnは、それぞれクライアント側システム2に敷設されるLAN21への接続端子を有し、このLAN21に接続することでゲートウェイ22及びルータ23を介してIPネットワークNWに接続される。
【0021】
ここで、サーバ側通信装置SN1〜SNn及びクライアント側通信装置CN1〜CNnの構成について説明する。以下、サーバ側通信装置SN1〜SNnの参照符号をSN、クライアント側通信装置CN1〜CNnの参照符号をCNとする。また、サーバ側コンピュータSC1〜SCnの参照符号をSC、モニタMN1〜MNn、キーボードKB1〜KBn、及びマウスMS1〜MSnの参照符号をそれぞれMN、KB、及びMSとして説明する。図2はサーバ側通信装置SNのブロック構成図、図3はクライアント側通信装置CNのブロック構成図である。
【0022】
図2において、サーバ側通信装置SNは、モニタ入力端子201と、マウス出力端子202と、キーボード出力端子203キーボード出力端子203と、A/D変換器204と、モニタ信号処理部205と、マウス信号処理部206と、キーボード信号処理部207と、通信処理部208と、LANコネクタ209とを備える。モニタ入力端子201、マウス出力端子202、及びキーボード出力端子203は、サーバ側コンピュータSCのモニタ出力端子、マウス入力端子、及びキーボード出力端子とそれぞれケーブルにより接続される。LANコネクタ209は、データセンタ1内のLAN11に接続される。
【0023】
サーバ側コンピュータSCから出力されたモニタ信号は、モニタ入力端子201により取り込まれ、A/D変換器204においてデジタル信号に変換される。デジタル化されたモニタ信号は、モニタ信号処理部205においてビデオRAMに展開され、ブロック単位で通信処理部208に供給される。通信処理部208は、TCP/IPによる送受信機能及びIPSecによる暗号化/復号化機能を有するハードウェア回路で構成される。このように構成することで、上記処理をソフトウェアで行った場合と比較すると、TCP/IPパケット化及び暗号化を高速に行うことができるため、接続できるクライアント数を増加することができる。通信処理部208において、パケット化及び暗号化されたモニタ信号は、LANコネクタ209によりLAN11に送出され、IPネットワークNWを介してクライアント側システム2に向け送信される。
【0024】
また、LANコネクタ209には、クライアント側システム2から送信されるパケット化及び暗号化されたマウス信号がIPネットワークNWを介して到来する。パケット化及び暗号化されたマウス信号は、通信処理部208において復号され、元のフォーマットに変換されたのちマウス信号処理部206に入力される。上記変換されたマウス信号は、マウス信号処理部206において基準クロックに乗せて、マウス出力端子202によりサーバ側コンピュータSCに入力される。キーボード信号についても、マウス信号と同様にサーバ側コンピュータSCに入力される。
【0025】
一方、クライアント側通信装置CNは、図3に示すように、モニタ出力端子301と、マウス入力端子302と、キーボード入力端子303と、D/A変換器304と、モニタ信号処理部305と、マウス信号処理部306と、キーボード信号処理部307と、通信処理部308と、LANコネクタ309とを備える。モニタ出力端子301、マウス入力端子302、及びキーボード入力端子303は、モニタMN、マウスMS、及びキーボードKBとそれぞれケーブルにより接続される。LANコネクタ309は、クライアント側システム2内のLAN21に接続される。
【0026】
サーバ側コンピュータSCから送信されたパケット化及び暗号化されたモニタ信号は、IPネットワークNWを介してLANコネクタ309により取り込まれ、通信処理部308に供給される。通信処理部308は、サーバ側通信装置SNの通信処理部208と同様にTCP/IPによる送受信機能及びIPSecによる暗号化/復号化機能を有するハードウェア回路で構成される。パケット化及び暗号化されたモニタ信号は、通信処理部308において復号され、元のフォーマットに変換される。上記変換されたモニタ信号は、モニタ信号処理部305においてビデオRAMに展開されたのち、D/A変換器304によりアナログ信号に変換される。そうして、モニタ出力端子301からモニタMNに出力される。
【0027】
また、マウスMSから入力されるマウス信号は、マウス入力端子302により取り込まれ、マウス信号処理部306を介してブロック単位で通信処理部308に供給される。通信処理部308において、パケット化及び暗号化されたマウス信号は、LANコネクタ309によりLAN21に送出され、IPネットワークNWを介してサーバ側コンピュータSCに向け送信される。キーボード信号についても、マウス信号と同様にサーバ側コンピュータSCに向け送信される。
【0028】
図4に、サーバ側通信装置の製品形状を示す。サーバ側通信装置SNは、モニタ入力端子201と、マウス出力端子202と、キーボード出力端子203と、LANコネクタ209とが配置されるボックス形状で構成される。また、図5に示すように、モニタ入力端子201、マウス出力端子202、キーボード出力端子203、及びLANコネクタ209を設けた基板51で構成されるボード形状とすることも可能である。このボードのコネクタ52をサーバ側コンピュータSCのPCIバス等に接続することで、サーバ側コンピュータSCとサーバ側通信装置SNとを一体化することが可能になる。
【0029】
一方、クライアント側通信装置CNも、上記図4に示すサーバ側通信装置SNと同様なボックス形状で構成される。また、クライアント側通信装置CNでは、ボックス形状の他にも、例えばモニタディスプレイに内蔵するタイプや、キーボード本体に内蔵するタイプで構成することも可能である。
【0030】
次に、このように構成されるネットワーク通信システムの動作について説明する。
クライアント側通信装置CNを起動させると、サーバ側コンピュータSCにアクセスするために設置されたサーバ側通信装置SNとの間で、利用者ごとのセッションが張られ、両者の装置はVPNトンネルによりゲートウェイ12、22を介して接続される。各利用者は、利用者個人を特定するため、IDとパスワードによる本人認証を行うことで、サーバ側コンピュータSCを利用することが可能となる。認証方法については、より安全性を向上させるため、バイオメトリクス(生体認証)を併用することが効果的である。バイオメトリクスを併用する場合には、クライアント側通信装置CNに生体センサを設けるか、あるいは外部接続可能とする。その認証処理自体は、センサ情報をサーバ側コンピュータSC、クライアント側通信装置CNのどちらで行ってもよい。
【0031】
セッションが確立した後は、クライアント側のマウスMS及びキーボードKBの操作信号がクライアント側装置CNからサーバ側通信装置SNに送信され、サーバ側コンピュータSCに入力される。サーバ側コンピュータSCは、上記入力された操作信号をもとに動作する。また、サーバ側コンピュータSCのモニタ出力は、モニタ信号として、サーバ側通信装置SNを介してクライアント側装置CNに送信される。これによりクライアント側装置CNに接続されるモニタMNには、上記操作結果が表示される。
【0032】
つまり、サーバ側コンピュータSCとクライアント側に設置されたキーボードKB、マウスMS、モニタMNとは、無限長の延長ケーブルで接続された状態と等価となり、利用者は各自のデスクで、遠隔地に設置されたサーバ側コンピュータSCを自分専用のPCとして利用することが可能となる。
【0033】
さらに、利用者が外出、出張を行った際には、クライアント側通信装置CNとキーボードKB、マウスMS、モニタMNを携帯することにより、インターネットに接続できる環境であれば、どこからでも自分専用のサーバ側コンピュータSCに接続することが可能となる。この場合、外出、出張先に、本発明のクライアント側通信装置CNとキーボードKB、マウスMS、モニタMNが既に設置されている場合には、利用者は一切の設備を携行することなく、外出、出張先の設備を利用して、自分専用のサーバ側コンピュータSCに、個人認証を介して安全に接続、利用することができる。この際、通信路はIPSecによるVPNトンネルで暗号化されるため、情報の秘匿性は確保される。
【0034】
サーバ側コンピュータSCのメンテナンスは、すべてデータセンタ1内部で実施し、各利用者は従来のようにPCのメンテナンスを行うことは不要となる。利用者がどのようなOSを導入するか、またどのようなアプリケーションを利用するかは、データセンタ1内部に設置されたアプリケーション格納サーバ14に指示を出し、そこから必要なOS、アプリケーションソフトウェアを自分専用のサーバ側コンピュータSCにロードすることで、簡単に設定を行うことが可能となる。
【0035】
以上述べたようにこの実施形態では、データセンタ1に設置されるサーバ側通信装置SNと、クライアント側システム2に設置されるクライアント側通信装置CNとの間がIPネットワークNWを介して一対一で接続される。マウスMS及びキーボードKBの操作信号は、クライアント側通信装置CNにより、対向するサーバ側通信装置SNに送信され、サーバ側コンピュータSCに入力される。サーバ側コンピュータSCから出力されるモニタ信号は、サーバ側通信装置SNによりクライアント側通信装置CNに向け送信され、モニタMNに出力される。これにより、あたかもサーバ側コンピュータSCと、クライアント側システム2に設置されるモニタMN、マウスMS、及びキーボードKBとの間がIPネットワークNWを介した無限長の延長ケーブルで接続されているかのごとく振る舞う。
【0036】
したがって上記実施形態によれば、クライアント側システム2には、OSが存在しないため、OSのアップデートの必要がなく、システム管理者は、データセンタ1にて一括して、サーバ側コンピュータSCに対するメンテナンスのみを行えばよい。これにより、メンテナンスの作業効率及び信頼性の向上を可能とするネットワーク通信システムを実現できる。また、従来技術では、クライアント側での通信処理がOSに依存していたため、サーバ側コンピュータSCで動作するOSにも必然的に制限が発生したが、本発明では、所望のOSでサーバ側コンピュータSCを動作させることが可能となる。これにより、利用者が自分に合った環境を容易に構築できる他、OSメーカ、アプリケーションメーカでは、OSやアプリケーションのオンデマンド課金供給といった新しいビジネスを行うことも可能となる。
【0037】
さらに、サーバ側通信装置SNとクライアント側通信装置CNとの間で送受信される操作信号やモニタ信号は、TCP/IPパケット化及びIPSecによる暗号化が行われ、既存のIPネットワークを介してVPNによる通信が行われる。このように構成することで、遠隔地のデータセンタ1とクライアント側システム2との間の通信路のセキュリティを確保することができる。
【0038】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、操作信号としてマウス信号及びキーボード信号、マルチメディア信号としてモニタ信号を例に挙げて説明したが、この発明ではサーバ側通信装置SNとクライアント側通信装置CNとの間で送受信される信号として、これらの信号に限定されないものとする。例えば、マルチメディア信号として、音声信号を適用することもできる。この場合、サーバ側通信装置SNは音声入力端子を備え、この端子をサーバ側コンピュータSCの音声出力端子にケーブル接続することで、サーバ側コンピュータSCから出力される音声信号を取り込んでクライアント側通信装置CNに向けて送信可能とする。一方、クライアント側通信装置CNは、音声出力端子を備え、この音声出力端子にスピーカ装置を接続することで、サーバ側通信装置SNから送信される音声信号を取り込んで、マルチメディア信号処理装置としてのスピーカ装置に出力できるようにする。
【0039】
また、クライアント側通信装置CNに音声入力端子、サーバ側通信装置SNに音声出力端子を設けるようにしてもよい。このようにすれば、クライアント側通信装置CNの音声入力端子にマイクロホンを接続し、集音された音声をデジタルデータに変換してサーバ側コンピュータSCに入力することが可能となる。さらに、クライアント側通信装置CNに映像入力端子、サーバ側通信装置SNに映像出力端子を備えることで、クライアント側通信装置CNの映像入力端子に接続されるカメラによる映像信号をサーバ側コンピュータSCに送信するようにすることが可能となる。このように構成することにより、テレビ会議システムのような映像及び音声による双方向通信システムを簡易に構築することが可能となる。
【0040】
その他、データセンタ1及びクライアント側システム2のシステム構成、サーバ側通信装置SN及びクライアント側通信装置CNのブロック構成とその動作手順と内容についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るネットワーク通信システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】上記実施形態のサーバ側通信装置の構成を示すブロック図。
【図3】上記実施形態のクライアント側通信装置の構成を示すブロック図。
【図4】上記実施形態のサーバ側通信装置の製品形状を示す外観図。
【図5】上記実施形態のサーバ側通信装置の製品形状の他の例を示す側面図。
【符号の説明】
【0042】
1…データセンタ、2…クライアント側、NW…IPネットワーク、SC1〜SCn…サーバ側コンピュータ、SN1〜SNn…サーバ側通信装置、11…LAN、12…ゲートウェイ、13…ルータ、14…アプリケーションソフト格納サーバ、CN1〜CNn…クライアント側通信装置、MN1〜MNn…モニタ、KB1〜KBn…キーボード、MS1〜MSn…マウス、21…LAN、22…ゲートウェイ、23…ルータ、201…モニタ入力端子、202…マウス出力端子、203…キーボード出力端子、204…A/D変換器、205…モニタ信号処理部、206…マウス信号処理部、207…キーボード信号処理部、208…通信処理部、209…LANコネクタ、301…モニタ出力端子、302…マウス入力端子、303…キーボード入力端子、304…D/A変換器、305…モニタ信号処理部、306…マウス信号処理部、307…キーボード信号処理部、308…通信処理部、309…LANコネクタ、51…基板、52…コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ側コンピュータにTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)による通信ネットワークを介してクライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置を接続するためのネットワーク通信システムであって、
前記サーバ側コンピュータと前記通信ネットワークとの間に介在されるサーバ側通信装置と、
前記クライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置と前記通信ネットワークとの間に介在されるクライアント側通信装置とを具備し、
前記サーバ側通信装置は、前記サーバ側コンピュータのマルチメディア出力端子から出力されるマルチメディア信号をTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記クライアント側通信装置に向け送信する送信手段と、前記クライアント側通信装置から送信される前記操作信号を表すTCP/IPパケットを前記通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記サーバ側コンピュータの操作信号入力端子に出力する受信手段とを備え、
前記クライアント側通信装置は、前記操作器から出力される操作信号を入力してTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記サーバ側通信装置に向け送信する送信手段と、前記サーバ側通信装置から送信される前記マルチメディア信号を表すTCP/IPパケットを前記通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記マルチメディア信号処理装置に出力する受信手段とを備えることを特徴とするネットワーク通信システム。
【請求項2】
前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの送信手段は、前記TCP/IPパケットを暗号化する暗号化手段をさらに備え、
前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの受信手段は、前記暗号化手段で暗号化されたパケットから元のTCP/IPパケットを復号する復号手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信システム。
【請求項3】
前記通信ネットワークがVPN(Virtual Private Network)により構成される場合に、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの暗号化手段は、前記TCP/IPパケットを前記VPNに規定されるVPN通信用パケットに変換し、前記サーバ側通信装置及びクライアント側通信装置それぞれの復号手段は、前記VPN通信用パケットを元のTCP/IPパケットに変換することを特徴とする請求項2記載のネットワーク通信システム。
【請求項4】
前記クライアント側のユーザを認証するユーザ認証手段をさらに具備し、前記ユーザ認証手段により認証確認された場合にのみ、前記サーバ側コンピュータに接続されることを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信システム。
【請求項5】
OS/アプリケーションサーバが接続されるサーバ側コンピュータにTCP/IPによる通信ネットワークを介してクライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置を接続するためのネットワーク通信システムであって、
前記サーバ側コンピュータと前記通信ネットワークとの間に介在されるサーバ側通信装置と、
前記クライアント側の操作器及びマルチメディア信号処理装置と前記通信ネットワークとの間に介在されるクライアント側通信装置とを具備し、
前記サーバ側通信装置は、前記サーバ側コンピュータのマルチメディア出力端子から出力されるマルチメディア信号をTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記クライアント側通信装置に向け送信する送信手段と、前記クライアント側通信装置から送信される前記操作信号を表すTCP/IPパケットを前記通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記サーバ側コンピュータの操作信号入力端子に出力する受信手段とを備え、
前記クライアント側通信装置は、前記操作器から出力される操作信号を入力してTCP/IPパケットに変換し、前記通信ネットワークを介して前記サーバ側通信装置に向け送信する送信手段と、前記サーバ側通信装置から送信される前記マルチメディア信号を表すTCP/IPパケットを前記通信ネットワークを介して受信して元の信号フォーマットに変換し、前記マルチメディア信号処理装置に出力する受信手段とを備え、
前記クライアント側通信装置から送信されるOS/アプリケーションソフトウェア選択要求に応じて、前記サーバ側コンピュータは、前記アプリケーションサーバにアクセスして、前記サーバ側コンピュータのOS/アプリケーションソフトウェアを設定および更新することを特徴とするネットワーク通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−122256(P2007−122256A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311516(P2005−311516)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(505399959)
【出願人】(505399960)
【Fターム(参考)】