説明

ノイズの多い推定値をフィルタリングして推定誤差を低減するための方法および装置

【課題】ノイズの多い推定値をフィルタリングして推定誤差を低減する。
【解決手段】受信機からの入力サンプルy(k)は、チャネル推定器310およびデータ有限インパルス応答(FIR)フィルタ360に送られる。チャネル推定器310では、初期チャネル推定器320により、基地局と無線デバイスとの間の無線チャネルに対するチャネルインパルス応答推定値(CIRE)が得られ、チャネルIIRフィルタ330が更新され、計算ユニット350によりイコライザ係数が求められる。この係数のデータFIRフィルタ360により、フィルタリングが行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に通信に関し、より詳細には、フィルタリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、送信機は、典型的には、トラヒックデータを処理して(例えば、符号化し変調して)、データ符号を生成する。コヒーレントシステムでは、送信機は、パイロット符号をデータ符号と多重化し、多重化されたデータ符号およびパイロット符号を処理して無線周波数(RF)信号を生成し、無線チャネルを介してRF信号を送信する。無線チャネルでは、チャネル応答により送信RF信号に歪みが生じ、さらに、ノイズと干渉により信号が劣化する。
【0003】
受信機は、送信RF信号を受信し、受信RF信号を処理して、サンプルを取得する。コヒーレントデータ検波では、受信機は、受信されたパイロットに基づき無線チャネルの応答を推定し、チャネル推定を導き出す。次いで、受信機は、チャネル推定を使ってサンプルに対しデータ検波(例えば、等化)を実行し、送信機により送信されたデータ符号の推定である、符号推定を取得する。次いで、受信機は、符号推定を処理し(例えば、復調および復号を行い)、復号されたデータを取得する。
【0004】
チャネル推定の品質は、データ検波性能に大きな影響を及ぼし、また符号推定の品質とともに復号されたデータの信頼性にも影響を与える可能性がある。したがって、当業では、無線通信システムにおいて高品質のチャネル推定を導き出す技術が必要である。
【発明の開示】
【0005】
本出願は、本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、2005年11月15日に出願された「Prediction Based Optimal Adaptation of Pilot Filter Coefficients for Improved Channel Estimation」という表題の米国仮出願第60/737,256号の優先権を主張する。
【発明の概要】
【0006】
ノイズの多い推定値をフィルタリングし、推定誤差を低減し、より高品質の推定値を得る技術について、以下で説明する。これらの技術は、様々な用途に使用することができ、またノイズの多い推定値としては、スカラー、ベクトル、または行列がある。これらの技術の例示的な一用途は、通信チャネルの時間領域応答である、チャネルインパルス応答(CIR)のノイズの多い推定値をフィルタリングするものである。
【0007】
一実施形態では、入力値系列が、少なくとも1つの係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタによりフィルタリングされ、出力値系列を取得する。入力値系列は、初期チャネルインパルス応答推定値(CIRE)に対するものとしてよく、出力値系列は、フィルタリングされたCIREに対するものとしてよい。IIRフィルタの(複数の)係数は、本明細書で説明されている更新技術のうちの1つを使って入力値系列に基づき更新される。IIRフィルタは、アルファと呼ばれる単一の係数を持つことができる。
【0008】
一実施形態では、IIRフィルタの(複数の)係数は、適応フィルタに基づいて更新される。この実施形態では、予測値系列は、入力値系列に基づいて導き出され、出力値系列の遅延された形態に等しいものとしてよい。予測値系列と入力値系列との間の予測誤差が決定され、フィルタリングされて(例えば、IIRフィルタの(複数の)係数により)、フィルタリングされた予測誤差が得られる。次いで、IIRフィルタの(複数の)係数は、予測誤差およびフィルタリングされた予測誤差に基づいて更新される。
【0009】
他の実施形態では、IIRフィルタの(複数の)係数は、1バンクの予測フィルタバンクに基づいて更新される。この実施形態では、入力値系列が複数の予測フィルタによりフィルタリングされ、複数の予測値系列を取得する。それぞれの予測フィルタは、少なくとも1つの係数からなる異なる係数集合を有する。複数の予測フィルタのうち予測誤差が最小である予測フィルタが識別される。識別された予測フィルタに対する(複数の)係数の集合は、入力値系列のフィルタリングに使用できるように選択される。
【0010】
さらに他の実施形態では、IIRフィルタの(複数の)係数は、正規化された変化量の技術に基づいて更新される。この実施形態では、実際のサンプル系列の変化量(例えば、CIR)は、入力値系列に基づいて推定される。これは、入力値系列のエネルギーを推定し、入力値系列内のノイズを推定し、入力サンプル系列の変化量を推定することにより得られる。次いで、実際のサンプルの系列の変化量は、入力値系列の推定されたエネルギー、推定されたノイズ、および推定された変化量に基づいて推定されうる。IIRフィルタの(複数の)係数は、例えば、ルックアップテーブルを使用するか、または直接的な計算により、実際のサンプルの系列の推定された変化量に基づいて決定される。
【0011】
以下では、本発明の様々な態様および実施形態について、さらに詳しく説明する。
【0012】
本発明の特徴および特性は、類似の参照文字は図全体を通して対応する形で識別する図面と併せて以下で述べる詳細な説明を読むとさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線通信システムの送信を示す図。
【図2】基地局および無線デバイスを示すブロック図。
【図3】無線デバイスのイコライザを示すブロック図。
【図4】チャネルIIRフィルタを示すブロック図。
【図5】3つの速度に関するシナリオに対するスループットとアルファに関するグラフを示す図。
【図6】適応フィルタに基づいてアルファを更新するユニットを示す図。
【図7】1バンクの予測フィルタに基づいてアルファを更新するユニットを示す図。
【図8】正規化された変化量の技術に基づいてアルファを更新するユニットを示す図。
【図9】ノイズの多い推定値をフィルタリングするプロセスを示す図。
【図10】適応フィルタに基づいてアルファを更新するプロセスを示す図。
【図11】1バンクの予測フィルタに基づいてアルファを更新するプロセスを示す図。
【図12】正規化された変化量の技術に基づいてアルファを更新するプロセスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「例示的な」という単語は、本明細書では、「一実施例、事例、または例示として使用する」ことを意味するために使用される。本明細書で「明示的」と説明されている実施形態または設計は、必ずしも、他の実施形態または設計よりも好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。
【0015】
図1は、無線通信システムの例示的な送信を示している。話を簡単にするため、図1は、1つの基地局110と1つの無線デバイス120のみを示している。基地局は、一般的に、無線デバイスと通信する固定局であり、ノードB、アクセスポイント、ベーストランシーバ基地局(BTS)、または他の何らかの専門用語の名称で呼ぶことができる。無線デバイスは、固定式でも移動式でもよく、これもまた、ユーザ装置(UE)、移動局、ユーザ端末、加入者ユニット、または他の何らかの専門用語の名称で呼ぶことができる。無線デバイスは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、無線モデムカード、ハンドヘルドデバイス、または他の何らかのデバイスもしくは装置とすることができる。
【0016】
基地局110は、RF信号を無線デバイス120に送信する。RF信号は、直接的経路および/または反射路を含むことができる、1つまたは複数の経路を介して無線デバイス120に到達しうる。反射路は、無線環境内の障害物(例えば、建物、樹木、車両、および他の構造物)による電波の反射により生じる。無線デバイス120は、送信RF信号の複数のインスタンスまたはコピーを受信することができる。それぞれの受信信号インスタンスは、異なる信号経路を介して得られ、特定の複素利得、およびその信号経路により決定される特定の時間遅延を有する。無線デバイス120の受信RF信号は、受信信号インスタンスのすべての重ね合わせである。無線デバイス120は、さらに、図1の破線により示されている、他の送信局からの干渉伝送を受信する可能性がある。
【0017】
本明細書で説明されているフィルタリング技術は、符号分割多元接続(CDMA)システム、時分割多元接続(TDMA)システム、周波数分割多元接続(FDMA)システム、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システム、単一搬送波FDMA(SC−FDMA)システムなどの様々な通信システムに使用することができる。CDMAシステムは、広帯域CDMA(W−CDMA)、cdma2000などの1つまたは複数の無線技術を実装することができる。cdma2000は、IS−2000、IS−856、およびIS−95標準に対応している。TDMAシステムでは、グローバル移動体通信システム(GSM(登録商標))などの無線技術を実装することができる。これらの様々な無線技術および標準は、当業で知られている。W−CDMAおよびGSMは、「第三世代パートナーシッププロジェクト」(3GPP)という名前の組織から出されている文書において説明されている。cdma2000は、「第三世代パートナーシッププロジェクト2」(3GPP2)という名前の組織から出されている文書において説明されている。3GPPおよび3GPP2文書は、公開されている。OFDMAシステムは、OFDMを使用し、直交する副搬送波上で周波数領域の変調符号を送信する。SC−FDMAシステムは、直交する副搬送波上で時間領域の変調符号を送信する。
【0018】
本明細書で説明されているフィルタリング技術は、無線デバイスに使用できるが、もちろん基地局にも使用できる。分かりやすくするため、これらの技術は、以下では、W−CDMAシステムまたはcdma2000システムであるとしてよい、CDMAシステム内の無線デバイスに関して説明されている。
【0019】
図2は、基地局110および無線デバイス120のブロック図を示している。基地局110では、送信(TX)データプロセッサ210は、サービスを受ける無線デバイスのトラヒックデータを受信し、そのトラヒックデータを処理(例えば、符号化、インターリーブ、および符号マップ)して、データ符号を生成する。本明細書で使用されているように、データ符号は、データ用の変調符号であり、パイロット符号は、パイロット用の変調符号であり、変調符号は、(例えば、M−PSK、M−QAMに対する)信号点配置内の1つの点に対する複素値であり、パイロットは、基地局と無線デバイスの両方により先験的に知られているデータである。CDMA変調器220は、データ符号およびパイロット符号を処理し、出力チップを送信機(TMTR)230に送る。送信機230は、出力チップを処理し(例えば、アナログに変換し、増幅し、フィルタリングし、高い周波数に変換し)、アンテナ232から送信される、RF信号を生成する。
【0020】
無線デバイス120で、アンテナ252は、直接路および/または反射路を介して送信RF信号を受信し、受信RF信号を受信機(RCVR)254に送る。受信機254は、受信RF信号を処理し(例えば、フィルタリングし、増幅し、低い周波数に変換し、デジタイズし)、受信サンプルを取得する。受信機254は、受信サンプルに対し前処理を実行し、入力サンプルをイコライザ/レーキ受信機260に送る。この前処理は、例えば、自動利得制御(AGC)、周波数修正、デジタルフィルタリング、サンプルレート変換などを含むことができる。イコライザ/レーキ受信機260は、入力サンプルを(例えば、イコライザまたはレーキ受信機により)処理し、出力サンプルを送る。CDMA復調器(Demod)270は、CDMA変調器220による処理を補完する形で出力サンプルを処理し、基地局110により無線デバイス120に送信されるデータ符号の推定値である、符号推定値を与える。レーキ受信機およびCDMA復調器は、さらに組み合わせることもできる。受信(RX)データプロセッサ280は、符号推定値を処理し(例えば、符号逆マップし、逆インターリーブし、復号し)、復号されたデータを与える。一般に、CDMA復調器270およびRXデータプロセッサ280による処理は、基地局110で、それぞれCDMA変調器220およびTXデータプロセッサ210による処理を補完するものである。
【0021】
コントローラ/プロセッサ240および290は、それぞれ、基地局110および無線デバイス120における様々な処理ユニットのオペレーションを指令する。メモリ242および292は、それぞれ、基地局110および無線デバイス120用のデータおよびプログラムコードを格納する。
【0022】
無線デバイス120において、受信機254からの入力サンプルは、
【数1】

【0023】
として表すことができ、ただし、
x(k)は、無線デバイス120に対する注目する信号成分であり、
p(k)は、基地局110からのパイロットであり、
h(k)は、基地局110と無線デバイス120との間の無線チャネルの時間領域インパルス応答であり、
w(k)は、x(k)およびp(k)により観察される全ノイズおよび干渉であり、
y(k)は、無線デバイス120における入力サンプルであり、
記号
【数2】

【0024】
は畳み込みを表す。
【0025】
式(1)では、x(k)は、無線デバイス120において注目すべき物理的チャネルの信号成分としてよい。w(k)は、基地局110からの他の物理チャネル、様々なソースからのノイズ、および他の送信局からの干渉に対する信号成分を含むことができる。話を簡単にするため、w(k)は、平均が0で分散がσである加法的白色ガウスノイズ(AWGN)と仮定する。入力サンプルy(k)は、イコライザにより処理され、これにより望ましい信号x(k)の推定値を取得することができる。
【0026】
図3は、図2のイコライザ/レーキ受信機260の一実施形態である、イコライザ260aのブロック図を示している。この実施形態では、受信機254からの入力サンプルy(k)は、チャネル推定器310およびデータ有限インパルス応答(FIR)フィルタ360に送られる。チャネル推定器310は、基地局110と無線デバイス120との間の無線チャネルに対するチャネルインパルス応答推定値(CIRE)
【数3】

【0027】
を導き出す。計算ユニット350は、CIRE
【数4】

【0028】
を受け取り、これに基づき、また例えば、線形最小平均2乗誤差(LMMSE)、最小平均2乗(LMS)、再帰最小2乗(RLS)、直接行列反転(DMI)、ゼロ強制、または他の何らかの技術を使用してイコライザ係数を導き出す。FIRフィルタ360は、イコライザ係数で入力サンプルy(k)をフィルタリングし、望ましい信号x(k)の推定値である、出力サンプル
【数5】

【0029】
を与える。
【0030】
基地局110と無線デバイス120との間の時間領域チャネルインパルス応答(CIR)は、Lを任意の値、例えば、L=64とし、L個のチャネルタップh(1)からh(L)までを有するものとして考えることができる。それぞれのチャネルタップh(l)(l=1,...,L)は、特定の複素利得および特定の時間遅延を有し、両方とも無線環境により決められる。CIRは、
【数6】

【0031】
のようなベクトル形式で与えることができ、ただし、
は、時間間隔nにおけるCIRに対するL×1ベクトルであり、
」は、転置を表す。
【0032】
無線デバイス120は、CIRにおけるL個のチャネルタップの正確な推定値を導き出そうとする。チャネル推定器310内では、初期チャネル推定器320が、基地局110から受信したパイロットに基づいて初期CIREを導き出す。一実施形態では、初期CIREは、
【数7】

【0033】
として導き出せるが、ただし、
【数8】

【0034】
は、時間間隔nのチャネルタップh(l)の初期推定値であり、
Kは、累積長であり、
」は、複素共役を表す。
【0035】
式(3)において「l−1」であるのは、インデックスlが0でなく1から始まるからである。
【0036】
式(3)では、チャネルタップh(l)は、時間オフセットl−1のパイロット系列p(k)により時間領域内の入力サンプルy(k)を逆拡散することにより推定される。L個の異なるチャネルタップは、L個の異なる時間オフセットにより推定されうる。それぞれの時間オフセットに対する逆拡散は、その時間オフセットに対する入力サンプルy(k)に複素共役パイロットチップp(k)を乗算し、K個のチップについて結果を累算することにより得られる。Kは、パイロットに使用される直交符号の長さの整数倍数である。パイロット直交符号は、W−CDMAでは256チップ長であり、cdma2000では128チップ長である。Kは、1パイロット符号、複数のパイロット符号、1スロット、複数のスロット、1フレーム、または他の何らかの持続時間に等しいものとしてよい。1スロットは、W−CDMAでは、2560チップおよび10パイロット符号に対応し、cdma2000では、768チップおよび6パイロット符号に対応する。
【0037】
初期CIREは、それぞれ時間間隔nについて導き出すことができる。時間間隔は、スロット、フレーム、または他の何らかの時間長としてよい。初期CIREは、L個のチャネルタップ推定からなり、
【数9】

【0038】
として与えられうる。初期CIREは、推定誤差およびノイズを含むため、複数の時間間隔にわたってフィルタリングすることで、推定誤差およびノイズを低減することができる。
【0039】
図3に示されている一実施形態では、チャネルIIRフィルタ330は、
【数10】

【0040】
のように初期CIREをフィルタリングするが、ただし、
【数11】

【0041】
は、時間間隔nにおけるフィルタリングされたCIREに対するL×1ベクトルであり、
αは、時間間隔nに対する係数である。
【0042】
式(4)のIIRフィルタリングは、L個のチャネルタップのそれぞれについて個別に実行される。係数計算ユニット340は、IIRフィルタ330に対する係数αを導き出す。
【0043】
図4は、図3のチャネルIIRフィルタ330の一実施形態のブロック図を示している。この実施形態では、チャネルIIRフィルタ330は、L個のチャネルタップについてL個の1タップIIRフィルタ410aから410lを含む。それぞれのIIRフィルタ410は、1つのタップインデックスについてフィルタリングを実行する。タップインデックスl(l∈{1,...,L})に対する1タップIIRフィルタにおいて、乗算器412は、係数αを持つ初期チャネルタップ推定値
【数12】

【0044】
を受け取って、乗算する。加算器414は、係数αを1.0から差し引いて、(1−α)を出力する。乗算器416は、レジスタ420からの遅延チャネルタップ推定値
【数13】

【0045】
と(1−α)とを乗算する。加算器418は、乗算器412および416の出力を加算し、フィルタリングされたチャネルタップ推定値
【数14】

【0046】
を与える。次の時間間隔で使用するために、レジスタ420はフィルタリングされたチャネルタップ推定値
【数15】

【0047】
を格納する。
【0048】
式(4)のフィルタリングで、ノイズを低減し、推定精度を改善する。したがって、フィルタリングされたCIRE
【数16】

【0049】
は、一般的に、CIR の改善された推定値である。係数αは、フィルタリングの量を決定する。一般に、大きなαは小さなフィルタリングに対応して1>α>0であり、またその逆も成り立つ。以下の説明では、係数αは、アルファと呼ばれる。
【0050】
改善された性能は、異なる動作シナリオにおいて初期CIRREに対する異なる量のフィルタリングにより実現されうることはわかる。アルファに適した値は、速度、受信信号品質、および場合によっては他の因子に依存しうる。
【0051】
図5は、3つの異なる速度に関するシナリオに対するスループットとアルファに関するグラフを示す。グラフ510は、120Km/時の高速シナリオに対するスループットとアルファの関係を示し、グラフ512は、30Km/時の中速シナリオに対するスループットとアルファの関係を示し、グラフ514は、3Km/時の低速シナリオに対するスループットとアルファの関係を示す。これらのグラフは、最高のスループットは、高速シナリオでは0.8から1.0までのアルファについて達成され、中速シナリオでは0.5から0.7までのアルファについて達成され、低速シナリオでは0.2から0.3までのアルファについて達成されうることを示している。
【0052】
図5は、アルファのよい選択は、移動性に依存することを示している。ゆっくり変化するチャネルに対しては、アルファは小さい(フィルタリングが強い)ほどよく、速く変化するチャネルに対しては、アルファは大きい(フィルタリングが弱い)ほどよい。アルファのよい選択は、さらに、受信信号品質にも依存することがわかる。所定の速度に関して、受信信号品質が低い場合には、アルファは小さい(フィルタリングが強い)ほどよく、受信信号品質が高い場合には、アルファは大きい(フィルタリングが弱い)ほどよい。図5のグラフで示唆されるように、性能は、アルファに不適切な値が使用されると著しく低下しうる。
【0053】
本明細書で説明されているフィルタリング技術により、推定誤差が低減され、様々な動作シナリオに対しよい性能を実現できる。これらの技術は、予測ベースの技術および正規化された変化量の技術を含む。予測ベースの技術は、適応フィルタまたは1バンクの予測フィルタにより実装されうる。
【0054】
予測ベースの技術の一実施形態では、アルファは、適応フィルタを使っていくつかの小さなステップで更新される。一実施形態では、式(4)のIIRフィルタは、さらに、次の時間間隔でチャネルタップを予測する予測フィルタとして使用される。したがって、時間間隔n−1で、IIRフィルタにより生成されるフィルタリングされたCIRE
【数17】

【0055】
は、時間間隔nに対する予測されたCIREとして使用される。
【0056】
初期CIREと予測されたCIREとの間の予測誤差は、
【数18】

【0057】
で表すことができ、ただし、
=[e(1) e(2)...e(L)]は、時間間隔nにおけるL個の予測チャネルタップに対する予測誤差のL×1ベクトルである。
【0058】
アルファは、
【数19】

【0059】
のようにそれぞれの時間間隔nで適応可能なように更新することができ、ただし、
は、予測誤差ベクトルのノルムの平方であり、
χは、アルファに対する適応率を決定する係数である。
【0060】
式(6)では、最小平均平方誤差(MMSE)を求めるために予測誤差のノルムの平方を最小にするようにアルファを更新する。偏導関数項∂‖e/∂αは、誤差勾配を示す。アルファは、予測誤差のノルムの平方の勾配に基づき、またその勾配の反対方向に更新される。適応の速度は、良好な性能となるように選択されうる係数χにより決定される。係数χは、0.01または他の何らかの値に設定できる。
【0061】
式(6)の偏導関数項は、
【数20】

【0062】
で表すことができ、ただし、
」は、共役転置を表す。
【0063】
式(7)の項
【数21】

【0064】
は、
【数22】

【0065】
で表すことができ、ただし、
=[f(1) f(2)...f(L)]は、時間間隔nにおけるL個のチャネルタップに対するフィルタリングされた予測誤差のL×1ベクトルである。
【0066】
式(7)は、項
【数23】

【0067】
が、現在の時間間隔nで計算された予測誤差および現在の時間間隔nに対するフィルタリングされた予測誤差に基づいて導き出されうることを示している。
【0068】
次いで、式(6)の偏導関数項は、
【数24】

【0069】
で表すことができる。
【0070】
次いで、アルファは、
【数25】

【0071】
として更新されうる。
【0072】
式(6)から(10)で示されている実施形態では、単一のアルファは、L個のチャネルタップすべてに使用され、このアルファは、L個のチャネルタップすべてに基づいて更新される。他の実施形態では、別のアルファが、それぞれのチャネルタップについて使用され、
【数26】

【0073】
および
【数27】

【0074】
のように、そのチャネルタップに対する予測誤差に基づいて更新されうる。
【0075】
アルファは、以下のように適応フィルタに基づいて更新できる。最初に、フィルタリングされたCIRE
【数28】

【0076】
およびフィルタリングされた予測誤差は、ゼロに初期化される。アルファは、大半の動作シナリオに対し良好な性能を有する値、例えば、α=0.6に初期化できる。これ以降、アルファは、以下のように、それぞれの時間間隔nで更新することができる。
【0077】
1.初期CIRE
【数29】

【0078】
を、例えば、式(3)に示されているようにして取得する。
【0079】
2.式(5)に示されているように予測誤差を計算する。
【0080】
3.式(9)に示されているように、予測誤差およびフィルタリングされた予測誤差に基づいて偏導関数項∂‖/∂αを計算する。
【0081】
4.式(10)に示されているように偏導関数項およびステップサイズχに基づいてアルファを更新する。
【0082】
5.式(8)に示されているように、予測誤差および更新されたアルファαn+1に基づいてフィルタリングされた予測誤差を更新する。
【0083】
更新されたアルファαn+1は、次の時間間隔で初期CIREをフィルタリングするために使用できる。
【0084】
図6は、適応フィルタでアルファを更新する係数計算ユニット340aの一実施形態を示している。チャネルIIRフィルタ330は、現在のアルファαで初期CIRE
【数30】

【0085】
をフィルタリングし、フィルタリングされたCIRE
【数31】

【0086】
を与える。ユニット340a内で、予測誤差計算ユニット610は、初期CIRE
【数32】

【0087】
および予測されたCIRE
【数33】

【0088】
をレジスタ616から受け取る。ユニット610は、式(5)に示されているように予測誤差を計算する。アルファ更新ユニット614は、予測誤差およびフィルタリングされた予測誤差を受け取り、式(9)および(10)に示されているようにアルファを更新し、更新されたアルファαn+1を次の時間間隔で与える。フィルタ612は、式(8)に示されているように予測誤差をフィルタリングし、フィルタリングされた予測誤差を次の時間間隔で与える。レジスタ616は、次の時間間隔で予測されたCIREとして使用される、フィルタリングされたCIRE
【数34】

【0089】
を受け取って格納する。
【0090】
適応フィルタを使用してアルファを更新することには、様々な利点があると考えられる。第1に、フィルタリングされたCIRE、フィルタリングされた予測誤差、およびアルファは、比較的少ない計算量および少ないメモリ容量で導き出すことができる。第2に、フィルタリングされた予測誤差は、式(8)に示されているように、可変IIRフィルタに基づいて得られるため、収束速度を速くすることができる。第3に、適応速度は、係数χに対し適当な値を選択することにより制御できる。
【0091】
予測ベースの技術の他の実施形態では、アルファは、異なるアルファを有する1バンクの予測フィルタから選択される。この実施形態では、初期CIREは、
【数35】

【0092】
のようにM個の異なる予測フィルタによりフィルタリングすることができ、ただし、
【数36】

【0093】
は、時間間隔nにおける予測フィルタmからの予測されたCIREに対するL×1ベクトルであり、
α(m)は、予測フィルタmに対するアルファである。
【0094】
M個の異なるアルファは、M個の予測フィルタに使用することができ、ただし、一般に、M>1である。一実施形態では、M個のアルファは、0から1までの間に均等に分散され、例えば、a(m)=m/Mである。例えば、Mは、10に等しく、10個の予測フィルタは、0.1、0.2、...、1.0の10個の等しい間隔で並ぶアルファにより実装できる。M個のアルファは、さらに、他の値に設定でき、例えば、無線でバイスが動作すると予測されるある範囲内により集中する。
【0095】
それぞれの予測フィルタに対する予測誤差は、
【数37】

【0096】
で表すことができ、ただし、
【数38】

【0097】
は、時間間隔nにおける予測フィルタに対する予測誤差のL×1ベクトルである。
【0098】
それぞれの時間間隔nで、M個のアルファのうちの1つを使用するため、
【数39】

【数40】

【0099】
のように選択でき、ただし、
E{ }は、期待値演算を表し、
【数41】

【0100】
は、予測フィルタmに対する予測平均平方誤差(MSE)であり、
は、予測MSEが最小である予測フィルタのインデックスである。
【0101】
式(13)では、L個のチャネルタップすべてに対する最小の予測MSEを与える予測フィルタが選択される。式(14)において、選択された予測フィルタのアルファは、初期CIREをフィルタリングするために使用されるアルファとして与えられる。
【0102】
予測MSEは、それぞれの予測フィルタmについて、
【数42】

【0103】
のようにして推定することができるが、ただし、
【数43】

【0104】
は、時間間隔nにおける予測フィルタmに対する推定された予測MSEであり、
ηは、予測MSEに対する平均する量を決定する係数である。係数ηは、0.05または他の何らかの値に設定できる。
【0105】
アルファは、以下のように1バンクの予測フィルタに基づいて導き出すことができる。最初に、M個の予測フィルタのそれぞれに対する予測されたCIRE
【数44】

【0106】
および推定された予測MSE
【数45】

【0107】
は、ゼロに初期化される。これ以降、アルファは、以下のように、それぞれの時間間隔nで選択することができる。
【0108】
1.初期CIRE
【数46】

【0109】
を、例えば、式(3)に示されているようにして取得する。
【0110】
2.式(12)に示されているように、それぞれの予測フィルタについて予測誤差
【数47】

【0111】
を計算する。
【0112】
3.式(15)に示されているように、それぞれの予測フィルタについて推定された予測誤差MSE
【数48】

【0113】
を、予測誤差
【数49】

【0114】
に基づいて計算する。
【0115】
4.式(13)および(14)に示されているように、推定された予測MSEが最小である予測フィルタのアルファを選択する。
【0116】
5.式(11)に示されているそれぞれの予測フィルタを更新する。
【0117】
図7は、1バンクの予測フィルタに基づいてアルファを導き出す係数計算ユニット340bの一実施形態を示している。ユニット340bは、M個の異なるアルファに対するM個の処理セクション710aから710m、検出器720、およびセレクタ730を備える。
【0118】
それぞれの処理セクション710内で、予測フィルタ712は、式(11)に示されているように、割り当てられたアルファα(m)で初期CIRE
【数50】

【0119】
をフィルタリングし、フィルタリングされたCIRE
【数51】

【0120】
を供給する。レジスタ714は、次の時間間隔で予測されたCIREとして使用される、フィルタリングされたCIRE
【数52】

【0121】
を格納する。ユニット716は、初期CIRE
【数53】

【0122】
および予測されたCIRE
【数54】

【0123】
を受け取り、式(12)に示されているように予測誤差
【数55】

【0124】
を計算する。MSE推定器718は、式(15)に示されているように、予測誤差
【数56】

【0125】
に基づいて推定された予測誤差MSEを導き出す。
【0126】
検出器720は、M個のMSE推定器718aから718mまでのすべてから推定された予測MSEを受け取り、最小の推定された予測MSEを有する最良の予測フィルタを識別し、次の時間間隔のアルファαn+1として最良の予測フィルタに対するアルファを与える。セレクタ730は、最良の予測フィルタからのフィルタリングされたCIREをフィルタリングされたCIRE
【数57】

【0127】
として与える。
【0128】
一実施形態では、別のチャネルIIRフィルタが保持され、このIIRフィルタに対するアルファは、それぞれの時間間隔で最良の予測フィルタのアルファに基づいて更新される。他の実施形態では、最良の予測フィルタからのフィルタリングされたCIREは、フィルタリングされたCIRE
【数58】

【0129】
として与えられる。この実施形態では、予測フィルタの1つは、それぞれの時間間隔でチャネルIIRフィルタとして動作する。
【0130】
1バンクの予測フィルタを使用してアルファを更新することには、いくつかの利点があると考えられる。第1に、フィルタバンクは、最良のアルファ値に素早く整定する。第2に、フィルタバンクは、式(15)において予測MSEを推定するために使用されるIIRフィルタに依存する収束遅延とともに変化するチャネル状態に適応することができる。しかし、フィルタバンクは、一般に、上述の適応フィルタに比べて使用する計算量が多く、また使用するメモリ容量も大きい。
【0131】
正規化された変化量の技術の一実施形態では、アルファは、無線チャネルの推定された変化量に基づいて導き出される。無線チャネルは、初期CIREに対するフィルタリングの時定数に関係する、「メモリ」を有するようにモデル化されうる。無線チャネルの変化量は、チャネルのメモリに反比例する。したがって、アルファのよい値を決定するために、チャネルの変化量またはチャネルのメモリを推定し、使用することができる。
【0132】
初期CIREは、CIRのノイズの多い推定値であり、
【数59】

【0133】
で表すことができ、ただし、
は、時間間隔nにおけるノイズおよび推定誤差のL×1ベクトルである。
【0134】
無線チャネルの正規化された変化量は、
【数60】

【0135】
として定義でき、ただし、
E{‖n−1}は、時間間隔nにおけるCIRの期待される差であり、
E{‖}は、時間間隔nにおける期待されるチャネルエネルギーであり、
NVは、無線チャネルの正規化された変化量である。
【0136】
式(17)の正規化された変化量は、
【数61】

【0137】
と書き直すことができ、ただし、
【数62】

【0138】
は、時間間隔nにおける初期CIREの期待される差であり、
【数63】

【0139】
は、時間間隔nにおける初期CIREの期待されるエネルギーであり、
E{‖}は、時間間隔nにおける期待されるノイズエネルギーである。
【0140】
式(18)の中の3つの異なる期待量はそれぞれ、初期CIREに基づいて推定されうる。値
【数64】

【0141】
を推定するために、量
【数65】

【0142】
をまず最初に
【数66】

【0143】
として計算することができるが、ただし、
【数67】

【0144】
は、時間間隔nおよびn−1に対する初期チャネルタップ推定値間の差のノルムの平方である。
【0145】
差のノルムの平方
【数68】

【0146】
は、
【数69】

【0147】
のようにしてフィルタリングすることができ、ただし、
【数70】

【0148】
は、
【数71】

【0149】
の推定値であり、
μは、
【数72】

【0150】
に対する平均の量を決定する係数である。
【0151】
係数μは、0.5または他の何らかの値に設定できる。
【数73】

【0152】
を推定するために、量
【数74】

【0153】
をまず最初に
【数75】

【0154】
として計算することができるが、ただし、
【数76】

【0155】
は、時間間隔nに対する初期チャネルタップ推定値のノルムの平方である。
【0156】
チャネルのノルムの平方
【数77】

【0157】
は、
【数78】

【0158】
のようにしてフィルタリングすることができ、ただし、
【数79】

【0159】
は、
【数80】

【0160】
の推定値である。
【0161】
E{‖}を推定するために、初期CIREの一端または両端のいくつかのチャネルタップは、純粋なノイズを含み、信号を含まないと仮定することができる。次いで、時間間隔nに対するノイズエネルギーは、
【数81】

【0162】
と表されるが、
【数82】

【0163】
として推定することができる。
【0164】
式(23)では、第1のA初期チャネルタップ推定値は、最後のB初期チャネルタップ推定値はもちろんのこと、純粋なノイズである。AおよびBは、良好なノイズ推定性能をもたらすように選択できる。一実施形態では、L=64およびA=B=4である。L、A、およびBに、他の値を使用することもできる。ノイズエネルギーも、他の方法で、例えば、低エネルギーの初期チャネルタップ推定値に基づいて推定することができる。
【0165】
ノイズエネルギー
【数83】

【0166】
は、
【数84】

【0167】
のようにしてフィルタリングすることができ、ただし、
【数85】

【0168】
は、E{‖}の推定値である。
【0169】
同じ係数μを、それぞれ、式(20)、(22)、および(24)に示されているように、3つの量
【数86】

【0170】
および
【数87】

【0171】
のすべてを導き出すために使用できる。それとは別に、異なる量に対し、異なる係数を使用することができる。
【0172】
無線チャネルは、
【数88】

【0173】
のように、ガウス・マルコフチャネルモデルにより表すことができ、ただし、
γ∈[0,1]は、無線チャネルのメモリとみなすことができ、
は、互いに独立で同一の分布に従う(i.i.d.)ガウス確率変数のL×1ベクトルである。
【0174】
チャネルメモリγは、無線チャネルにおけるドップラー効果をパラメータ化するもう1つの手段となる。γの値が大きいほど、無線チャネルは、より長いメモリを有し、これは、より強いフィルタリングに対応する。
【0175】
式(17)と(25)を組み合わせることで、正規化された変化量は、
【数89】

【0176】
として与えられうる。
【0177】
次いで、チャネルメモリは、
【数90】

【0178】
として表すことができる。
【0179】
式(18)の中の正規化された変化量の3つの期待量は、上述のように推定できる。次いで、チャネルメモリは、
【数91】

【0180】
のように推定することができ、ただし、
【数92】

【0181】
は、時間間隔nにおける推定されたチャネルメモリである。
【0182】
一実施形態では、アルファは、チャネルメモリγまたは正規化された変化量NVの異なる値について決定され(例えば、コンピュータシミュレーション、計算、および/また経験による測定に基づいて)、ルックアップテーブルに格納される。これ以降、チャネルメモリまたは正規化された変化量は、上述のように推定され、ルックアップテーブルに送られるようにできる。次いで、ルックアップテーブルでは、初期CIREをフィルタリングするために使用するアルファ値を返す。
【0183】
他の実施形態では、アルファは、直接計算される。フィルタは、
【数93】

【0184】
のように定義されうるが、ただし、
aおよびbは、2つの係数である。値
【数94】

【0185】
、E{‖}、およびγが与えられると、aおよびbの値は、期待される推定誤差
【数95】

【0186】
が最小になるように決定できる。
【0187】
上記の基準に対する解は、以下のようにして導き出せる。変数rおよびρは、
【数96】

【数97】

【0188】
として定義できる。
【0189】
次いで、上記基準を満たすaおよびbの値は、
【数98】

【数99】

【0190】
として与えることができる。
【0191】
次いで、アルファは、
【数100】

【0192】
として表すことができる。
【0193】
アルファは、以下のように正規化された変化量の技術に基づいて導き出すことができる。最初に、量
【数101】

【0194】
および
【数102】

【0195】
は、ゼロに初期化される。これ以降、アルファは、以下のように、それぞれの時間間隔nで導き出すことができる。
【0196】
1.初期CIRE
【数103】

【0197】
を、例えば、式(3)に示されているようにして取得する。
【0198】
2.式(19)から(24)に示されているように、初期CIREに基づいて、
【数104】

【0199】
および
【数105】

【0200】
を計算する。
【0201】
3.式(28)に示されているように、チャネルメモリの推定値
【数106】

【0202】
を計算する。
【0203】
4.rの推定値を
【数107】

【0204】
として計算する。
【0205】
5.式(31)に示されているようにρの推定値を計算する。
【0206】
6.式(32)および(33)に示されているようにaおよびbの推定値を計算する。
【0207】
7.式(34)に示されているように、アルファを計算する。
【0208】
計算されたアルファαn+1は、次の時間間隔で初期CIREをフィルタリングするために使用できる。
【0209】
図8は、正規化された変化量の技術に基づいてアルファを導き出す係数計算ユニット340cの一実施形態を示している。ユニット340c内において、初期CIRE
【数108】

【0210】
は、ユニット810、812、および814ならびにレジスタ816に送られる。レジスタ816は、
【数109】

【0211】
を格納し、
【数110】

【0212】
を供給する。ユニット810は、式(21)および(22)に示されているように、
【数111】

【0213】
の推定値を導き出し、この推定値を
【数112】

【0214】
として与える。ユニット812は、式(23)および(24)に示されているように、E{‖}の推定値を導き出し、この推定値を
【数113】

【0215】
として与える。ユニット814は、さらに、レジスタ816から
【数114】

【0216】
を受け取り、式(19)および(20)に示されているように、
【数115】

【0217】
の推定値を導き出し、この推定値を
【数116】

【0218】
として与える。
【0219】
一実施形態では、チャネルメモリ推定器820は、式(28)に示されているように
【数117】

【0220】
および
【数118】

【0221】
に基づいてチャネルメモリを推定し、推定されたチャネルメモリ
【数119】

【0222】
を与える。ルックアップテーブル822は、推定されたチャネルメモリを受け取り、次の時間間隔でアルファαn+1を与える。他の実施形態では、計算ユニット830は、
【数120】

【0223】
および
【数121】

【0224】
を受け取り、式(30)から(34)に示されているように、アルファαn+1を計算する。
【0225】
わかりやすくするため、フィルタリング技術は、特に推定誤差を低減するため初期CIREをフィルタリングすることについて説明されている。一般に、これらの技術は、任意のタイプのスカラー、ベクトル、および行列をフィルタリングするために使用することができる。例えば、パラメータiの異なる値についてベクトルの列を取得することができる。パラメータiは、時間、周波数などについてのパラメータであってよい。ベクトルの列を、上述の技術のいずれかに基づいてフィルタリングすることで、推定誤差を低減し、特性の改善されたベクトルの出力列を取得することができる。
【0226】
図9は、ノイズの多い推定値をフィルタリングするプロセス900の一実施形態を示す。入力値系列が、少なくとも1つの係数を有するIIRフィルタによりフィルタリングされ、出力値系列を取得する(ブロック910)。一実施形態では、入力値系列は、初期CIREに対するものであり、出力値系列は、フィルタリングされたCIREに対するものである。他の実施形態では、入力値系列は、初期周波数領域チャネル周波数応答推定値に対するものであり、出力値系列は、フィルタリングされたチャネル周波数応答推定値に対するものである。入力値および出力値は、他の量に関するものであってもよい。IIRフィルタの少なくとも1つの係数は、例えば本明細書で説明されている技術のうちのどれかを使って、入力値系列に基づき更新される(ブロック920)。
【0227】
図10は、適応フィルタでIIRフィルタの少なくとも1つの係数を更新するプロセス920aの一実施形態を示している。プロセス920aは、図9のブロック920に使用されうる。予測値系列は、入力値系列に基づいて導き出される(ブロック1012)。予測値系列は、適宜遅延された、出力値系列に等しくてもよい。予測値系列と入力値系列との間の予測誤差が決定される(ブロック1014)。予測誤差は、フィルタリングされ(例えば、IIRフィルタの(複数の)係数を使って)、フィルタリングされた予測誤差が得られる(ブロック1016)。IIRフィルタの(複数の)係数は、予測誤差およびフィルタリングされた予測誤差に基づいて更新される(ブロック1018)。予測誤差の誤差勾配は、さらに、他の方法でも決定することができ、IIRフィルタの(複数の)係数は、誤差勾配に基づいて更新されうる。
【0228】
図11は、1バンクの予測フィルタでIIRフィルタの少なくとも1つの係数を導き出すプロセス920bの一実施形態を示している。プロセス920bは、さらに、図9のブロック920にも使用されうる。入力値系列が複数の予測フィルタによりフィルタリングされ、複数の予測値系列を取得する(ブロック1112)。それぞれの予測フィルタは、少なくとも1つの係数からなる異なる係数集合を有する。複数の予測フィルタのうち予測誤差が最小である予測フィルタが識別される。これは、それぞれの予測フィルタについて入力値系列と予測値系列との間の誤差を計算し(ブロック1114)、予測フィルタに対する誤差に基づきそれぞれの予測フィルタについて平均平方誤差を決定し(ブロック1116)、平均平方誤差が最小の予測フィルタを識別する(ブロック1118)ことにより実行できる。識別された予測フィルタに対する少なくとも1つの係数の集合は、入力値系列のフィルタリングに使用できるように選択される(ブロック1120)。
【0229】
図12は、正規化された変化量の技術に基づきIIRフィルタの少なくとも1つの係数を更新するプロセス920cの一実施形態を示している。プロセス920cは、さらに、図9のブロック920にも使用されうる。入力サンプル系列は、実際の値の系列のノイズの多い推定値である。実際のサンプル系列の変化量は、入力値系列に基づいて推定される。これは、入力値系列のエネルギーを推定し(ブロック1212)、入力値系列内のノイズを推定し(ブロック1214)、入力サンプル系列の変化量を推定する(ブロック1216)ことにより実行できる。次いで、実際のサンプルの系列の変化量は、入力値系列の推定されたエネルギー、推定されたノイズ、および推定された変化量に基づいて推定されうる(ブロック1218)。IIRフィルタの少なくとも1つの係数は、例えば、ルックアップテーブルを使用するか、または直接的な計算により、実際のサンプルの系列の推定された変化量に基づいて決定される(ブロック1220)。
【0230】
本明細書で説明されているフィルタリング技術は、様々な手段により実装することができる。例えば、これらの技術は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せで実装することができる。ハードウェア実装では、フィルタリングおよび更新を実行するために使用される処理ニットは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明されている機能、またはこれらの組合せを実行するように設計された他の電子ユニット内に実装することができる。
【0231】
ファームウェアおよび/またはソフトウェア実装では、これらの技術は、本明細書で説明されている機能を実行するモジュール(例えば、プロシージャ、関数など)で実装されうる。ファームウェアおよび/またはソフトウェアのコードは、メモリ(例えば、図2のメモリ292)に格納され、プロセッサ(例えば、プロセッサ290)により実行されうる。メモリは、プロセッサ内に、またはプロセッサの外部に実装することができる。
【0232】
開示されている実施形態を前記のように提示したのは、当業者が本発明を製作または使用することができるようにするためである。これらの実施形態に対し様々な修正を加えられることは、当業者にとっては明白であろうし、また本明細書で定義されている一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態にも適用することができる。したがって、本発明は、本明細書に示されている実施形態に限定されることを意図されておらず、本明細書で開示されている原理および新規性のある特徴と一致する最も広い範囲を適用されることを意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタで入力値系列をフィルタリングして出力値系列を取得し、前記入力値系列に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するように構成されている少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備える装置。
【請求項2】
前記入力値系列が、初期チャネルインパルス応答推定値(CIRE)に対するものであり、前記出力値系列が、フィルタリングされたCIREに対するものである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記IIRフィルタが、単一の係数を有する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記入力値系列に基づき予測値系列を導き出し、前記予測値系列と前記入力値系列との間の予測誤差を決定し、前記予測誤差に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記出力値系列を前記予測値系列として使用するように構成されている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記予測誤差をフィルタリングしてフィルタリングされた予測誤差を取得し、前記予測誤差および前記フィルタリングされた予測誤差に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するように構成されている請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記予測誤差を前記IIRフィルタの前記少なくとも1つの係数でフィルタリングして前記フィルタリングされた予測誤差を取得するように構成されている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記予測誤差の誤差勾配を決定し、前記誤差勾配に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するように構成されている請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサが、それぞれが少なくとも1つの係数の異なる集合を有する複数の予測フィルタで前記入力値系列をフィルタリングして複数の予測値系列を取得し、前記複数の予測フィルタのうち最小の予測誤差を有する予測フィルタを識別し、前記識別された予測フィルタに対する少なくとも1つの係数の前記集合を使用して前記入力値系列をフィルタリングするように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサが、それぞれの予測フィルタについて前記入力値系列と前記予測値系列との間の誤差を計算し、前記予測フィルタに対する前記誤差に基づきそれぞれの予測フィルタについて平均平方誤差を決定し、平均平方誤差が最小の前記予測フィルタを識別するように構成されている請求項9に記載の装置。
【請求項11】
それぞれの予測フィルタが、単一の係数を有し、前記複数の予測フィルタが、異なる複数の係数を有する請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記入力サンプル系列が、実際の値の系列のノイズの多い推定値であり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記入力値系列に基づき前記実際のサンプルの系列の変化量を推定し、前記実際のサンプルの系列の前記推定された変化量に基づき前記少なくとも1つの係数を決定するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記入力値系列のエネルギーを推定し、前記入力値系列中のノイズを推定し、前記入力サンプル系列の変化量を推定し、前記推定されたエネルギー、前記推定されたノイズ、および前記入力値系列の前記推定された変化量に基づき前記実際のサンプルの系列の前記変化量を推定するように構成されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記実際のサンプルの系列の前記推定された変化量に基づき、ルックアップテーブルを使用して、前記少なくとも1つの係数を決定するように構成されている請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記入力サンプル系列が、実際の値の系列のノイズの多い推定値であり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記入力値系列に基づき通信チャネルのメモリを推定し、前記推定されたチャネルメモリに基づき前記少なくとも1つの係数を決定するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項16】
入力値系列を、少なくとも1つの係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタによりフィルタリングして出力値系列を取得すること、および、
前記入力値系列に基づき前記少なくとも1つの係数を更新することを備える方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの係数を前記更新することが、
予測値系列を前記入力値系列に基づき導き出すこと、
前記予測値系列と前記入力値系列との間の予測誤差を決定すること、
前記予測誤差をフィルタリングしてフィルタリングされた予測誤差を取得すること、および、
前記予測誤差および前記フィルタリングされた予測誤差に基づき前記少なくとも1つの係数を更新することを備える請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの係数を前記更新することが、
それぞれが少なくとも1つの係数の異なる集合を有する複数の予測フィルタで前記入力値系列をフィルタリングして複数の予測値系列を取得すること、
前記複数の予測フィルタのうち予測誤差が最小である予測フィルタを識別すること、および、
前記識別された予測フィルタに対する少なくとも1つの係数の前記集合を前記少なくとも1つの係数として選択することを備える請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記最小の予測誤差を有する前記予測フィルタを前記識別することが、
それぞれの予測フィルタについて前記入力値系列と前記予測値系列との間の誤差を計算すること、
前記予測フィルタの前記誤差に基づきそれぞれの予測フィルタについて平均平方誤差を決定すること、および、
最小の平均平方誤差を有する前記予測フィルタを識別することを備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの係数を前記更新することが、
実際のサンプルの系列の変化量を前記入力値系列に基づき推定すること、および、
前記実際のサンプルの系列の前記推定された変化量に基づき前記少なくとも1つの係数を決定することを備える請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記実際のサンプルの系列の前記変化量を前記推定することが、
前記入力値系列のエネルギーを推定すること、
前記入力値系列中のノイズを推定すること、
前記入力サンプル系列の変化量を推定すること、および、
前記実際のサンプルの系列の前記変化量を前記入力値系列の前記推定されたエネルギー、前記推定されたノイズ、および前記推定された変化量に基づいて推定することを備える請求項20に記載の方法。
【請求項22】
入力値系列を、少なくとも1つの係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタによりフィルタリングして出力値系列を取得するための手段と、
前記入力値系列に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するための手段とを備える装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの係数を更新するための手段が、
予測値系列を前記入力値系列に基づき導き出すための手段と、
前記予測値系列と前記入力値系列との間の予測誤差を決定するための手段と、
前記予測誤差をフィルタリングしてフィルタリングされた予測誤差を取得するための手段と、
前記予測誤差および前記フィルタリングされた予測誤差に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するための手段とを備える請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの係数を更新するための手段が、
それぞれが少なくとも1つの係数の異なる集合を有する複数の予測フィルタで前記入力値系列をフィルタリングして複数の予測値系列を取得するための手段と、
前記複数の予測フィルタのうち予測誤差が最小である予測フィルタを識別するための手段と、
前記識別された予測フィルタに対する少なくとも1つの係数の前記集合を前記少なくとも1つの係数として選択するための手段とを備える請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記最小の予測誤差を有する前記予測フィルタを識別するための手段が、
それぞれの予測フィルタについて前記入力値系列と前記予測値系列との間の誤差を計算するための手段と、
前記予測フィルタの前記誤差に基づきそれぞれの予測フィルタについて平均平方誤差を決定するための手段と、
最小の平均平方誤差を有する前記予測フィルタを識別するための手段とを備える請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの係数を更新するための手段が、
実際のサンプルの系列の変化量を前記入力値系列に基づき推定するための手段と、
前記実際のサンプルの系列の前記推定された変化量に基づき前記少なくとも1つの係数を決定するための手段とを備える請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記実際のサンプルの系列の前記変化量を推定するための手段が、
前記入力値系列のエネルギーを推定するための手段と、
前記入力値系列中のノイズを推定するための手段と、
前記入力サンプル系列の変化量を推定するための手段と、
前記実際のサンプルの系列の前記変化量を前記入力値系列の前記推定されたエネルギー、前記推定されたノイズ、および前記推定された変化量に基づいて推定するための手段とを備える請求項26に記載の装置。
【請求項28】
入力値系列を、少なくとも1つの係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタによりフィルタリングして出力値系列を取得し、
前記入力値系列に基づき前記少なくとも1つの係数を更新するように無線デバイス内で動作可能な命令を格納するためのプロセッサ可読媒体。
【請求項29】
係数を有する無限インパルス応答(IIR)フィルタで初期チャネルインパルス応答推定値(CIRE)をフィルタリングしてフィルタリングされたCIREを取得し、初期CIREに基づいて予測されたCIREを導き出し、前記初期CIREと前記予測されたCIREとの間の誤差を決定し、前記誤差をフィルタリングしてフィルタリングされた誤差を取得し、前記誤差および前記フィルタリングされた誤差に基づき前記係数を更新するように構成されている少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリとを備える装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記フィルタリングされたCIREを前記予測されたCIREとして使用し、前記誤差を前記IIRフィルタの前記係数でフィルタリングして前記フィルタリングされた予測誤差を取得するように構成されている請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つのプロセッサが、異なる時間オフセットで擬似乱数(PN)列により入力サンプルを逆拡散することで初期CIREを導き出すように構成されている請求項29に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−151865(P2012−151865A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−43265(P2012−43265)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【分割の表示】特願2008−541473(P2008−541473)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】