説明

ノイズフィルタカバー

【課題】ノイズフィルタを接続する配線の絶縁を考慮し、配線の引き回しによりフィルタの効果が変化することを避けることを考慮した良好な製品を提供する。
【解決手段】電磁ノイズフィルタと電力変換装置の主回路配線の接続導電体を覆い隠し、電線引廻しのルートが決まるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノイズフィルタカバーに関し、例えばモータ等に電力を供給する電力変換装置の電磁ノイズを抑制するためのフィルタを追加で取付ける際のフィルタ電気接続部を絶縁するカバーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置での電磁ノイズに関する規格では、CE規格、EN55011、EN61800が知られている。この規格は、使用される機器、使用環境分類により電磁ノイズの限度値を規定し、他の電気機器等へ影響を及ぼさないように表したものである。
【0003】
この電磁ノイズ対策については、電磁ノイズフィルタを用いることが考え出されており、例えば特許文献1には、電磁遮蔽及び電磁耐性に優れた電気装置の技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−51912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、電磁ノイズ対策において、電磁ノイズフィルタを設けることが、一般的に行われている。
【0005】
しかしながら、電磁ノイズフィルタを設けると、このノイズフィルタと電力変換装置とを接続する配線が製品の外部に露出することになることが多い。このため、例えばブスバー等、導電体がむき出しの状態で配線した場合、導電体同士や導電体への接触による感電防止のために、絶縁を考慮する必要がある。また、その接続を電線等、フレキシブルな導電物で接続した場合、配線の引き回しによりフィルタの効果が変化することを考慮することが必要となる。
【0006】
この問題は、その電力変換装置に合せたノイズフィルタ(カスタマイズ品)によって解決することもできるが、通常カスタマイズ品は非常にコストが掛かってしまう。
【0007】
そこで、価格的に安価な汎用品のノイズフィルタを用いても上述の問題を回避できることが望ましい。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、汎用品の電磁ノイズフィルタを電力変換装置に取り付けた場合に、配線の露出を防止し、かつ電磁ノイズフィルタの効果を適正に発揮させることに資するノイズフィルタカバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のノイズフィルタカバーは、電磁ノイズフィルタと電力変換装置の主回路配線の接続導電体を覆い隠す構成となっている。また、本発明のノイズフィルタカバーでは、電線引廻しのルートが決まり、用いる電線の長さが所定(規定)範囲内に収まるようになっている。
【0010】
即ち、本発明によるノイズフィルタカバーは、電力変換装置の配線を被うように、ノイズフィルタと電力変換装置に取り付けられるノイズフィルタカバーであって、配線を固定する配線固定部を備えることを特徴とする。この配線固定部は複数個設けられている。このため、ノイズフィルタから電力変換装置への入力配線と、電力変換装置からの出力配線とを分離して固定することができるようになっている。これにより入出力配線の交差をも防止することができる。
【0011】
また、配線固定部は、L字状のフックで構成されている。そして、このL字状のフックの先端部は、電力変換装置の主回路配線用端子面の方向を向いている。これにより、配線をまとめ易くなるという効果が期待できる。或いは、このL字状のフックの先端部が、電力変換装置の主回路配線用端子面とは反対の方向を向いているようにしてもよい。取り付け易さは主回路配線用端子面の方向を向いている場合より劣るが、より強く固定することには優れていると言える。
【0012】
なお、ノイズフィルタカバーは、下部材と上部材とで構成され、これらが嵌合するようにしても良い。この場合、下部材が配線固定部(L字状フック)を備えるようにすると良い。
【0013】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インバータ装置に電磁ノイズフィルタを追加で取付けた場合について、良好な絶縁特性を有し、フィルタ効果の変化の少ない製品を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、電磁ノイズ対策用の汎用品の電磁ノイズフィルタを電力変換装置に取り付け、取り付け配線のブスバー接続時の絶縁、電線接続時の引き回しの考慮等を実現するノイズフィルタカバーを提供する。
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0017】
<ノイズフィルタカバーの取り付け状態>
図1は、本発明によるノイズフィルタカバーを電磁ノイズフィルタ及びインバータ装置(電力変換装置)に取り付ける場合の外観を示す図である。
【0018】
図1において、1は電磁ノイズフィルタ、2はインバータ装置、3はノイズフィルタカバー、4はノイズフィルタの出力線(R相)、5はノイズフィルタの出力線(S相)、6はノイズフィルタの出力線(T相)を示している。
【0019】
図1に示されるように、汎用の電磁ノイズフィルタ1は、例えばインバータ装置2の底面に取り付けられる。また、図示しない電源装置は、電磁ノイズフィルタ1の側面110に取り付けられる。本発明では、電磁ノイズフィルタ1は汎用品であるため、インバータ装置2と電磁ノイズフィルタとの接続線4、5、6等は、外部に露出する状態となっている。
【0020】
図1からも理解できるように、ノイズフィルタカバー3は、このような接続線の露出を回避し、導電体同士や導電体への接触による感電を防止する機能を有している。
【0021】
なお、図2はノイズフィルタの概略回路構成を示す図である。7はノイズフィルタの入力線(R相)、8はノイズフィルタの入力線(S相)、9はノイズフィルタの入力線(T相)、10はXコンデンサ、11は零相リアクトル、12はX−Yコンデンサである。
【0022】
ノイズ源は、インバータ装置となるため、ノイズフィルタの出力線4、5及び6からノイズは入ってくることになる。そのノイズを、電源につながっているノイズフィルタの入力線7、8及び9に伝わらないように零相リアクトル11が壁となっている。また、その壁で止められたノイズは、X−Yコンデンサ12を通し、インバータ側へ戻される。
【0023】
しかし、零相リアクトル11は、ノーマルモードノイズしか壁となることが出来ず、コモンモードノイズは壁となり止らないため、Xコンデンサ10で線間を通し、インバータ側へ戻ることになる。
【0024】
<ノイズフィルタカバーの構成>
図3は、ノイズフィルタカバー3の裏面の構成を示す図である。図3(a)は下部材31にのみフックを設けた構成例であり、図3(b)は上部材32及び下部材31の双方にフックを設けた構成例である。
【0025】
下部材31には、後述のネジ41(図4参照)が螺着するネジ締結部36と、フック33乃至35が設けられている。なお、締結する手段はネジに限られるものではなく、ピンであっても良い。ノイズフィルタカバー3の側面部に設けられたフック33及び34は、図3においては、カバー部材39に隠れて見えないようになっている。また、フック35は、カバー3の裏面からL字状に、先端が下方向に延びて構成されている。
【0026】
上部材32には、インバータ装置2の裏面カバー(図示せず)を取り付けるための溝に係合する係合部37及び38が設けられている。下部材31はネジ等の締結部材により締結されるが、上部材32はインバータ装置側の溝と係合部37及び38との係合によってインバータ装置2に固定される。
【0027】
図3(b)に示されるように、上部材32にもフックを設けることにより、利用者の好みにより、或いは、下部材のフックが利用しづらい配線状況の場合に、上部材のフックを用いることが可能となる。
【0028】
<ノイズフィルタカバーの取り付け手順>
図4は、ノイズフィルタカバー3を、電磁ノイズフィルタ1が取り付けられたインバータ装置2に取り付ける手順を示す図である。
【0029】
図4(a)で示されるように、まずノイズフィルタカバー下部材31を電磁ノイズフィルタ1の上面端部に例えばネジ41によってネジ留めする。なお、ネジ留めは一例であり、固定できる構造であれば、ノイズフィルタカバー下部材31が電磁ノイズフィルタ上面端部に嵌合するような構造であってもよい。
【0030】
続いて、図4(b)に示されるように、電磁ノイズフィルタ1からのインバータ装置2への入力線を束ねてフック33に係合させてまとめる。また、インバータ装置2からモータ等の動力装置への出力線を束ねてフック34及び35に係合させて引き回すようにする。これにより、入力線と出力線とが交差しないようになるため、電磁ノイズフィルタ1の作用を適正に維持することができるようになる。
【0031】
なお、図5は、フック33乃至35の構成例を示す図である。図5(a)は配線をL字状フックに係合させて配線を引き回した状態の拡大図であり、図5(b)及び(c)は、A−A’で断面を取り、矢印方向から見た断面図である。図5(b)に示すフックは、その先端部36がノイズフィルタカバーの方を向いている。一方、図5(c)に示すフックは、その先端部36がインバータ装置2の背面部の方を向いている。図5(c)に示すフックの場合には、配線はポケット部37にまとめるだけなので、嵌めることのできる図5(b)に示すフックの方がより強く固定することができる。ただし、配線の引き回し易さについては図5(c)に示すフックの方が優れている。
【0032】
次に、図4(c)に示されるように、ノイズフィルタカバー上部材32をノイズフィルタカバー下部材31に取り付ける。上部材32と下部材31とは、例えばオス部材とメス部材のように構成され、互いに嵌合して固定されるようになっている。そして、ノイズフィルタカバー3が取り付けられた様子が図4(d)に示されている。
【0033】
<まとめ>
ノイズフィルタとしては、インバータ装置2に合せた専用(カスタマイズ)品と、特にその製品用には限っていない汎用品がある。絶縁性や取付けを考えると、専用品の方が良いことは明白ではある。一方で、生産コストを考えた場合、汎用品の方が有利である。
【0034】
しかし、汎用品はノイズフィルタからの配線引き出し位置、引き出し方法等が、取付ける製品に合せてはいないため、絶縁性が問題となることがある。
【0035】
このため、この引出線にノイズフィルタカバー3を被せることにより、絶縁を確保することが出来る。また、汎用の電磁ノイズフィルタ1をインバータ装置2に取り付けた場合には、通常配線が露出するという問題の他に、配線が交差して電磁ノイズフィルタの機能を十分に発揮できないという問題が生じる可能性がある。しかし、本発明によるノイズフィルタカバー3を取り付けることにより、配線を引き回して固定することができるので、そのような問題を解決することができるようになる。つまり、入力線や出力線が電線の場合、フックに電線を引っ掛けることにより、電線ルートが一定かつ電線の長さを所定範囲内に収めることができるようになり、配線ルートによりノイズのばらつきが発生しないようにすることができる。
【0036】
なお、一般的には、日本国内向けの配線は、入出力ともに製品の下側から配線するのが好まれるのに対し、欧州では、入力は製品上側、出力は製品下側から配線するのが、好まれる。インバータ製品として、標準機は配線の引き出しを下側にしておくことにより、ノイズフィルタを必要とする場合の少ない日本向けの場合は、そのまま使用すれば、良いことになる。そして、フィルタを取付けることが、必須である欧州市場の場合、フィルタを取り付けることにより、入力配線は上側から、出力配線は下側からと欧州市場で好まれる配線引き回しとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるノイズフィルタカバーを電磁ノイズフィルタ及びインバータ装置(電力変換装置)に取り付ける場合の外観を示す図である。
【図2】ノイズフィルタの概略回路構成を示す図である。
【図3】ノイズフィルタカバー3の裏面の構成を示す図である。2及び下部材31
【図4】ノイズフィルタカバー3を、電磁ノイズフィルタ1が取り付けられたインバータ装置2に取り付ける手順を示す図である。
【図5】フック33乃至35の構成例を示す図である
【符号の説明】
【0038】
1・・・ノイズフィルタ、2・・・インバータ装置、3・・・ノイズフィルタカバー、31・・・フィルタカバー下部材、32・・・フィルタカバー上部材、33乃至35・・・フック、36・・・ネジ締結部、37及び38・・・係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置の配線を被うように、ノイズフィルタと電力変換装置に取り付けられるノイズフィルタカバーであって、
前記配線を固定する配線固定部を備えることを特徴とするノイズフィルタカバー。
【請求項2】
前記配線固定部は複数個設けられ、
前記ノイズフィルタから前記電力変換装置への入力配線と、前記電力変換装置からの出力配線とを分離して固定することを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタカバー。
【請求項3】
前記配線固定部は、複数のL字状のフックで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタカバー。
【請求項4】
下部材と、この下部材と嵌合する上部材とを備え、
前記下部材が前記配線固定部を備えることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタカバー。
【請求項5】
少なくとも1つの前記L字状のフックの先端部は、前記電力変換装置の主回路配線用端子面の方向を向いていることを特徴とする請求項3に記載のノイズフィルタカバー。
【請求項6】
少なくとも1つの前記L字状のフックの先端部は、前記電力変換装置の主回路配線用端子面とは反対の方向を向いていることを特徴とする請求項3に記載のノイズフィルタカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35295(P2010−35295A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193085(P2008−193085)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】