説明

ノイズフィルタ

【課題】 ケースの上面に通風孔を形成せず、ケース上面を型番や品名等の表示部として確保しながら、ケース内部の熱気をケースの外側上方へ排熱することができ、これによって放熱効率の向上を図り、またコイルおよびコンデンサ等の回路構成部品がケース内にコンパクトに収容されることにより、ケース外形の小形化を図ったノイズフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】 本願発明に係るノイズフィルタ1は、フィルタ回路構成部品が搭載される底板5および側板6をもつ箱形本体部3とこの本体部3の上部を蓋閉する蓋体4とを有するノイズフィルタにおいて、この蓋体4は平坦な天板17と、この天板17の対向両側縁から箱形本体部3の側板6へ向って傾斜した傾斜板18とを有し、この傾斜板18に放熱孔20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小形化と放熱性を確保したノイズフィルタ、特に、山形ないし台形形状のケース蓋体をもつ箱型ノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズフィルタは一般に矩形箱形のケース内にチョークコイルおよびコンデンサや抵抗等のフィルタ回路構成部品が収容され、前記ケースの両端部、特に矩形ケースの長手方向両端部に外部接続端子部が設けられた構成を有している。ケース内は前記フィルタ回路構成部品の固定およびコイルから発生する熱の吸収容量を高めるために樹脂充填がなされる場合もある。
【0003】
この種のノイズフィルタはチョークコイルから発生する熱の影響を受けやすく、特に大電流用のノイズフィルタはケース内の昇温も大きく、これを避けるためコイルの巻線材を太くしたり、巻線するコアの外径を大きくして所要の巻回数を確保することなどが行われているが、このような方法ではフィルタ全体の外形が大形となり、充填する樹脂量も多く、高価となりがちであった。
【0004】
ノイズフィルタをできるだけ小形化し、かつ放熱性を確保するために、例えば特許文献1に記載するように、樹脂充填型のノイズフィルタにおいて、底板上にかぶせる直方体状の容器本体の上面および横側面に予め放熱器取付用のねじ孔を形成しておき、設置箇所等の状況に応じて前記容器本体の上面あるいは横側面に放熱器を取り付けるようにしている。また、特許文献2のラインフィルタにおいても、直方体形の容器にかぶせる直方体状の蓋体の側部に放熱用の通風孔を形成した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−120918号公報
【特許文献2】特開2002−57541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の箱型ノイズフィルタは直方体形のケース外形を有するため、トロイダル形のコイルを内蔵した場合、どうしてもケース内の隅部、特にケース長手方向に沿ったケース上隅部内側に無駄な空間部が生じやすい。また、最も目に触れやすい直方体形ケースの上面は製品の仕様、型番や製品名等のラベルが貼られるため、この部分に放熱用の通風孔やスリットを形成できず、これらの放熱用孔は通常ケースの垂直な側面に形成される。しかし、ケース内に籠もる熱気は垂直なケース側面の通風孔からケースの外側上方へ逃げずらく、ケース上面に通風孔を形成した場合と比べて、熱気の効率的な排出効果が得られない。また、特許文献2に示す構造のものは、ケース内を回路構成部品で3つの区画に分け、ケースの底板部中央にトロイダル形コイルを横置きし、その両側の区画にコンデンサ等の回路構成部品を収容する構造としているので、ケースが横長となり、小形化しずらい構造となっている。
【0007】
本発明は、ケースの上面に通風孔を形成せず、ケース上面を型番や品名等の表示部として確保しながら、ケース内部の熱気を該ケースの外側上方へ排熱することができ、これによって放熱効率の向上を図ったノイズフィルタを提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、コイルおよびコンデンサ等の回路構成部品がケース内にコンパクトに収容されることにより、ケース外形の小形化を図ったノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係るノイズフィルタは、フィルタ回路構成部品が搭載される底板および側板をもつ箱形本体部と該本体部の上部を蓋閉する蓋体とを有するノイズフィルタにおいて、前記蓋体は平坦な天板と、該天板の対向両側縁から前記箱形本体部の前記側板へ向って傾斜した傾斜板とを有し、前記傾斜板に放熱孔が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの形態によれば、前記箱形本体部の前記底板に前記フィルタ回路構成部品のコイルが横置き状態に設置され、そのほかの回路構成部品がコイル上端面上に配置されることを特徴とする。
このようにコイルをケース底面に横置き状態に設置し、コイルの上にコンデンサ等他の回路構成部品を配置することにより、ケースは前記回路構成部品の最も面積の広いコイルが収容される分の底面積を確保すればよく、ノイズフィルタの小形化が可能となる。
【0011】
本発明の他の形態によれば、前記箱形本体部の前記底板に前記フィルタ回路構成部品のコイルが縦置き状態に設置され、そのほかの回路構成部品が前記コイルの横側に配置されることを特徴とする。
コイルをケース中央に縦置き状態に配置し、その周囲にコンデンサ等他の回路構成部品を配置することにより、ケースは前記回路構成部品のうち最も大きいコイル外径に対応する高さを確保すればよく、しかもコイル以外の回路構成部品はコイルの周囲に配置することで、小形のノイズフィルタを得ることができる。
【0012】
本発明のさらに他の形態によれば、前記コイルはトロイダル形コイルであることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の形態によれば、前記傾斜板が連接していない部位の天板両側縁に近接して端子部が前記箱形本体部に設けられることを特徴とする。
この端子を保持する端子保持部材を取り換えることで、ケース本体部を変えることなく単相型と3相型のノイズフィルタに容易に変更できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るノイズフィルタによれば、フィルタケースの上部の対向両側部を下方へ拡がった傾斜面とし、この傾斜面に放熱孔を形成したので、従来の垂直ケース側面に放熱孔を形成した場合と比べて、ケース内の熱気を外側上方へ有効に逃がすことができる。また、直方体形のケースにみられるようなケース上隅に無駄な内部空間が生じることがなく、全体としてノイズフィルタの小形化が図られる。蓋体の上面に製品の型番や仕様を自由に表示することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1によるノイズフィルタの外観斜視図である。
【図2】図1に示すノイズフィルタの上面図である。
【図3】本発明の実施例2によるノイズフィルタの蓋体組付け前の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例3によるノイズフィルタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を図面を参照して各種の実施例について説明する。図1,図2を参照すれば、実施例1のノイズフィルタ1のケース2は、箱形本体部3およびこの箱形本体部3の上部にかぶさる蓋体4によって構成されている。箱形本体部3は長方形の底板5と該底板5に対して垂直な長手方向に沿う側板6および端板7とを有している。底板5は端板7から長手方向外側へ部分的に張り出しており、この張出部8に外部機器等へのフィルタ取付孔9が形成されている。端板7は段差を有しており、この段差部10に端子保持部11が設置されている。実施例1のノイズフィルタ1は単相型のフィルタであり、図2に明示される如く、端子保持部11にはケース長手方向の両側に各々一対のライン端子12が設けられている。このほか、段差部10にはアース端子13が設けられている。なお、実施例1の形態では、段差部10から上側部分の端板7に端子保持部11がねじ止め等の手段で固着されているが、これ以外に段差部10の部分に端子保持部11が取り付けられてもよいことは勿論である。
【0017】
段差部10より上側部分の端板7は底板5に平行な上縁16と、この端板上縁16および側板上縁14に連接するよう傾斜した傾斜縁15とが形成されている。なお、図4に明示されるように、端板7の上縁中央部はライン端子にライン線を引き出すための切欠き19が形成されている。
【0018】
段差部10から上側の端板7の上縁16およびその両側の傾斜縁15に接して、平坦頂部をもつ山形あるいは台形の形状に折曲した蓋体4が設けられ、これによって箱形本体部3が蓋閉されている。図示のように蓋体4は端板7の上縁16に接する平坦な天板17と、天板17に連接して形成され、かつ端板7の傾斜縁15に密着する傾斜板18とを有しており、この傾斜板18に複数個の放熱孔20が形成されている。箱形本体部3への蓋体4の取付け形態については図3,図4を参照して後述する。
【0019】
図3は本発明の実施例2に係るノイズフィルタの内部構造を示す斜視図である。この実施例2のフィルタケース2は実施例1で説明したケース2と同様の構造を有している。ケース2の長手方向両端の端板部分について、段差部10から上側の端板7の傾斜縁15にはケース内方へ張り出た舌片部21が形成され、この舌片部21に蓋体取付け用のねじ孔22が形成されている。蓋体4を前述のようにして箱形本体部3にかぶせた後、蓋体4に形成した取付孔23から舌片部21のねじ孔22に取付ねじ(図示省略)をねじ込むことで蓋体4の固定がなされる。
【0020】
次に、実施例2におけるケース内部のフィルタ回路構成部品の配置形態について説明する。実施例2の単相型ノイズフィルタ1において、フィルタ回路構成部品の一対のトロイダル形コイル25が底板5の上面に横置き状態で、かつケース長手方向に並べて設置されている。ここで、横置き状態とは、トロイダル形コイル25の中心軸線が底板5の板面に垂直になる方向、つまりコイル25の端面が底板5の面に対峙するような向きに配置されることを指している。この配置により、底板5からのコイル25の設置高さが低くなり、コイル25の上側端面と蓋体4の天板17との間にスペースの余裕ができる。実施例2では、この余裕のできたスペースにコンデンサや抵抗素子等コイル以外の回路構成部品26,27が配置される。コンデンサや抵抗素子等コイル以外の回路構成部品26,27は図3に示すように筐体内に収納してモジュール化してもよいし、基板に搭載してもよい。
【0021】
具体的には、一対のトロイダル形コイル25の間に角柱状の回路構成部品26が設けられ、この回路構成部品26の上部に前記回路構成部品27が設置されている。なお、この回路構成部品27はトロイダル形コイル25を底板5に対して固定する機能も有している。また、前述のように蓋体4の長手方向に沿った両側部は中央の天板部分からケース両側部にかけて傾斜した形態(側部傾斜板18)となっているので、従来の直方体形の蓋体に比べてケース内部に余分な空間部が少なくなり、全体として高さの低い小形のノイズフィルタ1となる。
【0022】
さらに実施例2では、蓋体4の側部傾斜板18は、横置きしたトロイダル形コイル25の周側部から上端面にかけてのコイル部位に近接し、しかも傾斜板18には多数の放熱孔20が形成されているので、コイル25から発生する熱はケース内に籠もることなく、傾斜板18の斜め上向きの放熱孔20を通って効果的に上方へ排出され、放熱効率のよいノイズフィルタとなる。
【0023】
図4は本発明の実施例3によるノイズフィルタ1を示した分解斜視図である。実施例3においてもフィルタケース自体は実施例1,2の場合と同様であり、同じ部材には共通の符号を付し、その重複した説明は可能な限り省略するが、実施例3ではトロイダル形コイル25およびコンデンサ等の回路構成部品の配置状態が実施例2とは異なっている。この実施例3では、一対のトロイダル形コイル25が縦置き状態で、かつケース2の長手方向にコイル端どうしが対峙するように並べて設置されている。ここで縦置き状態とは、トロイダル形コイル25の中心軸線が底板5の板面に対して平行となるように、つまりコイル25の周部が底板5に接するように配置される形態を指している。この配置形態により、ケース2内はケース長手方向にスペースの余裕ができ、したがってコイル以外のコンデンサ等の回路構成部品は一対のトロイダル形コイル25の間および該コイル25の外端面に隣接して配置される。
【0024】
図4に明示されるように、実施例3では底板5に3つの角柱状の回路構成部品28が設けられており、これによって2つのコイル収容区画29,30が形成されている。回路構成部品28はトロイダル形コイル25の端面部位を拘束して該コイル25を底板5上に固定する機能を有する。コンデンサや抵抗素子等コイル以外の回路構成部品28は図4に示すように筐体内に収納してモジュール化してもよいし、基板に搭載してもよい。
【0025】
実施例3の場合は、ノイズフィルタ1の底板5からの高さ、あるいは長手方向に直角な横幅は、高々トロイダル形コイル25の外径を僅かに超える程度でよく、長手方向のケース長さも小さくすることができ、これによってノイズフィルタ1の全体外形を小形化できる。また、先に述べた実施例2と同様に、蓋体4の長手方向に沿った両側部は中央の天板17部分からケース両側部にかけて傾斜した形態(傾斜板18)となっているので、従来の直方体形の蓋体に比べてケース内部に余分な空間部が少なくなり、全体として高さの低い小形のノイズフィルタとなる。
【0026】
また、蓋体4の側部傾斜板18は、縦置きしたトロイダル形コイル25の周側部に近接し、しかも傾斜板18には多数の放熱孔20が形成されているので、コイル25から発生する熱はケース内に籠もることなく、傾斜板18の斜め上向きの放熱孔20を通って効果的に上方へ排出され、放熱効率のよいノイズフィルタとなる。
【0027】
上述の各実施例では、単相型のノイズフィルタとして構成した場合であるが、本発明はフィルタの回路構成として単相型に限定されるものではなく、三相回路のノイズフィルタにも同様に適用可能である。単相型から三相型に変更する場合も、端子保持部11の構造を3端子形に変えるだけで、簡単に仕様変更が可能である。
【0028】
また、上述の各実施例では、ケース内にトロイダル形コイル25およびコンデンサ等の回路構成部品を固定するための樹脂を用いない例を示したが、これらのフィルタ回路構成部品をケース2に配置した後、ケース内に放熱性の樹脂を充填してトロイダル形コイルの固定を行う形態としてもよい。また、ノイズフィルタの天板17には図2に示すようにノイズフィルタの型番や品名、製造会社を表示したラベル40を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ノイズフィルタ
2 フィルタケース
3 箱形本体部
4 蓋体
5 底板
6 側板
7 端板
8 張出部
9 フィルタ取付孔
10 段差部
11 端子保持部
12 ライン端子
13 アース端子
14 側板上縁
15 傾斜縁
16 端板上縁
17 天板
18 傾斜板
20 放熱孔
21 舌片部
22 ねじ孔
23 取付孔
25 トロイダル形コイル
26 回路構成部品
27 回路構成部品
28 回路構成部品
29,30 コイル収容区画
40 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ回路構成部品が搭載される底板および側板をもつ箱形本体部と該本体部の上部を蓋閉する蓋体とを有するノイズフィルタにおいて、前記蓋体は平坦な天板と、該天板の対向両側縁から前記箱形本体部の前記側板へ向って傾斜した傾斜板とを有し、前記傾斜板に放熱孔が形成されることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
前記箱形本体部の前記底板に前記フィルタ回路構成部品のコイルが横置き状態に設置され、そのほかの回路構成部品がコイル上端面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
前記箱形本体部の前記底板に前記フィルタ回路構成部品のコイルが縦置き状態に設置され、そのほかの回路構成部品が前記コイルの横側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
前記コイルはトロイダル形コイルであることを特徴とする請求項2または3に記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
前記傾斜板が連接していない部位の天板両側縁に近接して端子部が前記箱形本体部に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−79959(P2012−79959A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224676(P2010−224676)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】