説明

ノイズフィルタ

【課題】大型のクランプフィルタを都度用意せずとも汎用のクランプフィルタを用いたノイズ対策を行い得るノイズフィルタの提供。
【解決手段】クランプフィルタを構成する、円筒状をなすケース内に収容された長軸方向に貫通孔を有するノイズフィルタであって、ベースBと、ベース上に直列配置された複数のクランプフィルタF3,F4と、フィルタF3,F4夫々の締結手段或いはフィルタF3,F4夫々自身に備えられた第1の係合部と、第1の係合部と係合可能な第2の係合部でフィルタF3,F4を直列配置できる様予めベース上の所定位置に設けられたものと、フィルタF3,F4全体を貫通する貫通孔とフィルタF3,F4外面との間に巻回されたケーブルとからなり、第1の係合部を第2の係合部に係合させて複数のクランプフィルタをベース上に直列配置させるノイズフィルタとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用電化製品や事務機器をはじめとする電子機器の電源部には、一般的に高周波ノイズの吸収効果やサージノイズなどのEMS(イミュニティ)効果を得るためにノイズフィルタが備えられている。
さらに、近年では、上記電子機器のほか、電気自動車の内部回路や充電器等と言った広義の電気製品にも、ノイズフィルタの装着が行われるようになっている。
【0003】
図10に例示するのは、上記ノイズフィルタに利用される、フェライトコアと略称される従来知られたクランプフィルタFの一例を示す図である。図10Aはケース51を開けてフェライトコア50の両半片をそれぞれ外部に露出させて示した図である。図10Bはケース51を閉じた状態におけるクランプフィルタFの右側面または左側面を示す図である。図10Cはケース51を閉じた状態におけるクランプフィルタFの正面または背面を示す図である。
【0004】
図10に示す通り、クランプフィルタFは、ケース51と、ケース51内に収容されるフェライトコア50とからなっている。
ケース51は、ヒンジ53で連結された各半片からなり、閉じた状態で円筒状になるものである。ここで、各半片に設けられた係止部52同士を互いに係合させることによりケース51は閉じられる。
フェライトコア50は、組み合わせた状態で円筒状となる半片同士からなり、それぞれの半片の内面側には長軸方向に延びる凹部が形成されている。したがって、フェライトコア50は、両半片を組み合わせた状態において長軸方向に延びる貫通孔が形成されるようになっている。
同様に、ケース51には、閉じた状態において上記貫通孔に一致する孔が長軸方向の両端面に形成されるように、各半片の長軸方向両端面には凹部が設けられている。
【0005】
上記構成からなるクランプフィルタFについては、単に電源ラインや信号ラインのケーブルを、ケース51を開いた状態のクランプフィルタFにおけるフェライトコア50の両半片で挟み、その後、ケース51を閉じることによってケーブルをクランプして用いる使用態様のほか、電源ラインや信号ラインのケーブルを、クランプフィルタFを貫通する貫通孔とクランプフィルタ外面との間に存在するクランプフィルタの一部分に巻回することにより、ノイズフィルタとしての利用がなされている。
なお、クランプフィルタFにケーブルを巻回する態様の一例としては、ケーブルに予めループ部を形成しておいたのち、当該ループ部の一部を、ケース51を開いた状態のクランプフィルタFにおけるフェライトコア50の両半片で挟み、その後、ケース51を閉じることによってケーブルをクランプフィルタFに巻回する手法がある。
【0006】
ところで、クランプフィルタFは、装着される対象製品が扱う電力が例えば大電力から小電力まで多岐にわたってくると、各状況に応じて多くの種類のクランプフィルタFを用意する必要性が生じて来る。このように、対象製品に複数適用されるクランプフィルタの種類が増えてくると、部品種類の増大に伴う管理コストのアップや多品種少量調達を強いられることによる調達コストのアップが避けられず、全体的な製造コストの引き下げの妨げとなっていた。
【0007】
また、例えば比較的大電力を扱う回路に対してクランプフィルタFを装着する際には、発生するノイズ量等も増大することが当然に予想されることから、ノイズ除去性能の向上を図ろうとすることが通常考えられる。このとき、設計段階で大型の専用クランプフィルタを採用することなく、複数の汎用小型クランプフィルタを直列配置したものを採用しようと企図が働く可能性については完全に否定できない(特許文献1)。
しかしながら、その場合であっても、これまで知られたクランプフィルタFの装着方法は、単にケーブルをクランプフィルタFにおけるフェライトコア50の両半片でクランプするか、或いは単にケーブルをクランプフィルタFを貫通する貫通孔とクランプフィルタ外面との間に存在するクランプフィルタの一部分に巻回するだけのものであった。そのため、直列配置するクランプフィルタ同士の連結態様がきちんと維持されないために電気的特性が不安定であったり、クランプフィルタに挿通させたケーブルが不必要に揺動して劣化するという問題があった。これらの問題は、クランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを車載する際には振動の影響により特に顕著となるので、十分な対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−182193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、例えば比較的大電力を扱う回路に対して大型のクランプフィルタを都度用意しなくとも、小型汎用のクランプフィルタを活用したノイズ対策を行うことが可能なノイズフィルタを提供することを課題とする。
また本発明は、クランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを例えば車載する場合のような過酷な状況下において問題となる振動対策として十分有用なノイズフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本願発明者は、
i) 複数のクランプフィルタそれぞれを締結する締結手段に備えられた第1の係合部をベースの所定位置に設けられた第2の係合部と組み合わせる、
ii) 上記所定位置に設けられた第2の係合部を、複数のクランプフィルタを直列配置できるように予めベースに設けられたものとする、さらに、
iii) 上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する貫通孔にケーブルを挿通させる、より好ましくは、上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する貫通孔と上記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間にケーブルを巻回する、
構成とすることにより上記課題を解決可能なことを見い出し、本発明を完成した。
【0011】
上記課題を解決可能な本発明のノイズフィルタは、(1)筒状をなすケース内に収容された長軸方向に貫通孔を有するフェライトコアから構成されたクランプフィルタを用いたノイズフィルタであって、
ベースと、
前記ベース上に直列配置された複数のクランプフィルタと、
前記複数のクランプフィルタを締結する締結手段と、
前記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する前記貫通孔に挿通されたケーブルと
を備え、
前記締結手段は、前記ベースに係合可能に構成された第1の係合部を有する一方、前記ベースは、前記第1の係合部と係合可能に構成され、前記複数のクランプフィルタを直列配置できるように予め前記ベース上の所定位置に設けられた第2の係合部を有し、
前記第1の係合部を前記第2の係合部に係合させることにより前記複数のクランプフィルタを前記ベース上に直列配置させることを特徴とするものである。
上記(1)に係る本発明のノイズフィルタにおいては、(2)前記ケーブルが、前記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する前記貫通孔と前記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間に巻回されたものであることが好ましい。
【0012】
また、上記(1)または(2)に係る本発明のノイズフィルタにおいては、(3)前記直列配置された複数のクランプフィルタが複数組並列配置されると共に、並列配置されたそれぞれのクランプフィルタ同士が、前記第1の係合部を外面の一部に有する結束手段を用いて結束されることが好ましい。
【0013】
さらに、上記(3)に係る本発明のノイズフィルタにおいては、(4)前記結束手段同士が互いに連結されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のクランプフィルタそれぞれを締結する締結手段に備えられた第1の係合部がベースの所定位置に設けられた第2の係合部と組み合わされる。ここで、上記所定位置に設けられた第2の係合部は、複数のクランプフィルタを直列配置できるように予めベースに設けられたものである。
したがって本発明によれば、複数のクランプフィルタを安定してベースに直列配置することが可能となるので、例えば比較的大電力を扱う回路に対して大型のクランプフィルタを都度用意しなくとも、複数のクランプフィルタを直列配置したものを適用でき、装置全体の低コスト化を図ることが可能となる。
また、装置全体で必要とされるクランプフィルタの種類の低減が実現されるので、在庫管理の省力化や、少品種を大量購入することによる調達コストの実現もなし得る。
さらに、ベース上で複数のクランプフィルタを直列配置した状態が確実に維持されるので、例えばクランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを車載する場合のような過酷な状況下においても、直列配置したクランプフィルタの電気的特性が極端に変化することや、クランプフィルタに挿通させたケーブルが不必要に揺動して劣化することを防ぐことができる。すなわち、本発明によれば、クランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを例えば車載する場合のような過酷な状況下において問題となる振動対策として十分有用なノイズフィルタを提供することができる。
【0015】
以上の通り、本発明によれば、例えば比較的大電力を扱う回路に対して大型のクランプフィルタを都度用意しなくとも、小型汎用のクランプフィルタを活用したノイズ対策を行うことが可能なノイズフィルタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】外部フィルタボックス−車載用充電器間の配線ブロック図である。
【図2】本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す平面図である。
【図3】本実施例で用いたベースを示す平面図である。
【図4】本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す底面図である。
【図5】本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す底面図であって、ベースを透視した状態を示す図である。
【図6】本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す正面図である。
【図7】本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す背面図である。
【図8】本発明に係る、ノイズフィルタの第1変形例について示す斜視図である。
【図9】本発明に係る、ノイズフィルタの第2変形例について示す斜視図である。
【図10】クランプフィルタの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る、ノイズフィルタの詳細に付き、一実施例を用いて説明する。なお、各図面に関し、同一箇所については同一の参照符を用いるものとする。
【実施例】
【0018】
[構成]
図1に、本発明に係る、ノイズフィルタが適用される一実施例である外部電源と車載用充電器とのインターフェイス部100を示す。
これは、不図示の外部電源に接続される対外部電源入力コネクタ110から車載用充電器102へと電力を供給する配線ブロックを示したもので、本実施例においては対外部電源入力コネクタ110から車載用充電器102へと電力を供給するに当たり、外部フィルタボックス109のほかに複数のクランプフィルタを直列配置したもの(F1およびF2、或いはF3およびF4)を経由させることを表している。
【0019】
なお、外部フィルタボックス109および複数のクランプフィルタを直列配置したもの(F1およびF2、或いはF3およびF4)は、主に車載用充電器102に入力される電力に含まれるノイズを吸収する目的で、車載用充電器102の外部に別途設けられたものである。
【0020】
図1の残りの構成につき引き続き説明すると、外部フィルタボックス109および車載用充電器102は、シャーシ101上すなわち自動車側に取り付けられている。シャーシ101は通常、鋼板からなっている。車載用充電器102は、不図示の車載バッテリと電気的に接続されており、外部から給電されることに伴って車載バッテリを充電するものである。本実施例の車載用充電器102は、外部よりAC100V或いは200Vの入力を受けるもので、数kW程度の電力を取り扱うことが可能なものである。
外部フィルタボックス109と車載用充電器102との間は、コネクタ108および103を介してケーブル接続されており、このケーブルに、直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)が備えられている。このクランプフィルタについて、本実施例では一例として、TDK株式会社製のケーブルコード用クランプフィルタZCAT−V−BKシリーズ(ZCAT08V−BK、或いはZCAT12V−BK)が用いられている。
【0021】
複数のクランプフィルタを直列配置したもの(F1およびF2、或いはF3およびF4)に関しては、従来であれば上記直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)全体を貫通する貫通孔と上記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間に存在する上記直列配置された複数のクランプフィルタの一部分にケーブルが巻回されるだけであって、直列配置するクランプフィルタ同士の連結態様の維持等につき十分な検討がなされておらず、当然振動対策等も行われていなかったが、本実施例においては、次に図2以下を用いて説明する通り、十分な検討がなされている。
【0022】
ここで、ライブ側ACケーブル104およびニュートラル側ACケーブル105は、一端側がコネクタ108に接続され、他端側がコネクタ103に接続されているが、その一端側と他端側との間に、直列配置された複数のクランプフィルタF1およびF2が備えられている。
また、第2の接地ケーブル107は、一端側がコネクタ108に接続され、他端側がシャーシ101にネジ端子112を介してねじ止めされ、接地されるようになっているが、その一端側と他端側との間に、直列配置された複数のクランプフィルタF3およびF4が備えられている。
なお、第1の接地ケーブル106については、一端側がコネクタ103に接続され、そのまま、他端側がシャーシ101にネジ端子111を介してねじ止めされ、接地されている。
【0023】
上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体(F1およびF2、或いはF3およびF4)にケーブル107、或いはケーブル104および105を巻回する構成に関し、本実施例では、ケーブルに予めループ部を形成しておいたのち、当該ループ部の一部を、ケース51を開いた状態のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)におけるフェライトコア50の両半片で挟み、その後、それぞれのケース51を閉じることによってケーブルを上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体に巻回する構成としている(図1のほか、図2、4、6および7参照)。
【0024】
或いは、上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体の一端から他端に向かって上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する貫通孔に挿通させた少なくとも1本のケーブルを、上記直列配置された複数のクランプフィルタの外面に沿わせてから再び上記一端から他端に向かって上記貫通孔に挿通することで、上記ケーブルを上記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する貫通孔と上記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間に存在する上記直列配置された複数のクランプフィルタの一部分に巻回する構成としても構わない。
【0025】
図2は、本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す平面図である。図2は、複数のクランプフィルタF1ないしF4がベースBに係合されてなるノイズフィルタ1のアセンブリ状態を示している。
【0026】
本実施例に係るノイズフィルタにおいては、図2に示す通り、直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)が並列配置される構成となっている。
【0027】
また、本実施例に係るノイズフィルタにおいては、図2ないし図7に示す通り、クランプフィルタF1ないしF4それぞれの締結手段T1ないしT4に備えられた第1の係合部E1ないしE4が、ベースBに設けられた第2の係合部R1ないしR4と確実に係合されるよう構成されている。本実施例に係るノイズフィルタにおいては、このようにして複数のクランプフィルタF1ないしF4がベースB上において確実に保持される。
【0028】
なお、図3或いは後の図4、6および7で示す通り、本実施例では、第1の係合部E1ないしE6を、それぞれ水平方向に弾性拡開する突出部を有する凸形状からなるものとする一方、第2の係合部R1ないしR6をそれぞれベースBに開けた孔であって上記突出部の挿入が可能な程度の大きさを有するものとしている。ここで、図3に見える第2の係合部R5およびR6は、後述する通り、締結手段T5およびT6を用いて束ねたケーブルを、上記同様締結手段T5およびT6に備えられた第1の係合部E5およびE6によってベースB上に係合しておくためのものである。
【0029】
図2に示す本発明のノイズフィルタの一実施例についてより詳細に説明すると、まず、直列配置された複数のクランプフィルタF1およびF2にはライブ側ACケーブル104およびニュートラル側ACケーブル105が巻回されている。巻回要領については上記の通りである。
次に、直列配置された複数のクランプフィルタF3およびF4には第2の接地ケーブル107が同じ要領で巻回されている。なお、図2左側に見える第2の接地ケーブル107の他端側は、図1に示す通り、シャーシ101にネジ端子112を介してねじ止めされ、接地されている。
【0030】
図3は、本実施例で用いたベースBを示す平面図である。本実施例では、ベースBは、プレス鋼板に第2の係合部R1ないしR6その他に必要な孔開け加工等を施して作成した板金からなっている。ベースB自体は、シャーシ101或いは自動車側に取り付けられる。
【0031】
図4は、本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す底面図である。図4のほか、後に示す図6および図7からも理解される通り、第1の係合部E1ないしE4は、ベースBに開けた孔である第2の係合部R1ないしR4を通過したのち、それぞれ水平方向に弾性拡開可能な突出部を有する凸形状からなっている。すなわち、本実施例では、(ベースBに開けた孔である第2の係合部R1ないしR4を通過した)第1の係合部E1ないしE4の突出部が水平方向に弾性拡開することにより、第1の係合部と第2の係合部との確実な係合関係が実現される。
このような構成とすることにより、製造時には大した手間を掛けることなく複数のクランプフィルタF1ないしF4をベースB上に動かないように設置することが可能である一方、必要に応じてベースBからクランプフィルタF1ないしF4を取り外す際においても、第1の係合部E1ないしE4の突出部を摘んで再び第2の係合部R1ないしR4を通過させることにより、ベースBおよびクランプフィルタのいずれにもダメージを何等与えることなく、スムーズな取り外しが可能となっている。
なお、図4において、ベースB中央付近に設けられた、幅方向に細長く伸びる開口部から見えるケーブルの先端部分は、ライブ側ACケーブル104およびニュートラル側ACケーブル105の一端側並びに第2の接地ケーブル107の一端側であり、これらはそれぞれ図1に示すコネクタ108に接続される。
【0032】
図5は、本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す底面図であって、ベースBを透視した状態を示す図である。
図5において、直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)の右端よりも右側に見える複数のケーブルの先端部分は、ライブ側ACケーブル104およびニュートラル側ACケーブル105の他端側並びに第1の接地ケーブル106の一端側であり、これらはそれぞれ図1に示すコネクタ103に接続される。
なお、図5左上側に見える第1の接地ケーブル106の他端側は、図1に示す通り、シャーシ101にネジ端子111を介してねじ止めされ、接地される。
【0033】
図6および図7は、本発明に係る、ノイズフィルタの一実施例について示す正面図および背面図である。
図6および図7、そして先の図2および図5からも理解される通り、各クランプフィルタF1ないしF4は、それぞれのケース51が開いてしまわないよう、ケース51の周壁が締結手段T1ないしT4で締結されている。そして、各クランプフィルタF1ないしF4は、締結手段T1ないしT4に備えられた第1の係合部E1ないしE4と、ベースBに設けられた第2の係合部R1ないしR4とによって、ベースB上に係合されている。
【0034】
また図6および図7に示す通り、締結手段T5およびT6を用いて束ねられた複数本のケーブルは、締結手段T5およびT6に備えられた第1の係合部E5およびE6と、ベースBに設けられた第2の係合部R5およびR6とにより、各クランプフィルタF1ないしF4と同じ要領でベースB上に係合されている。
【0035】
[作用]
次に、上で一通り説明を行った本実施例のノイズフィルタの作用につき説明する。本実施例によれば、複数のクランプフィルタF1ないしF4それぞれを締結する締結手段T1ないしT4に備えられた第1の係合部E1ないしE4が、ベースBの所定位置に設けられた第2の係合部R1ないしR4と組み合わされる。ここで、上記所定位置に設けられた第2の係合部R1ないしR4は、複数のクランプフィルタを直列配置できるように予めベースBに設けられたものである。
したがって本実施例によれば、複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)を安定してベースBに直列配置することが可能となるので、例えば比較的大電力を扱う回路に対して大型のクランプフィルタを都度用意しなくとも、複数のクランプフィルタを直列配置したものを適用でき、装置全体の低コスト化を図ることが可能となる。
また、装置全体で必要とされるクランプフィルタの種類の低減が実現されるので、在庫管理の省力化や、少品種を大量購入することによる調達コストの実現もなし得る。
さらに、ベースB上で複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)を直列配置した状態が確実に維持されるので、直列配置したクランプフィルタの電気的特性が極端に変化することや、直列配置した複数のクランプフィルタF1およびF2、或いはF3およびF4に挿通させたケーブル104および105、或いは107が不必要に揺動して劣化することを防ぐことができる。このように、本実施例のノイズフィルタは、クランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを例えば車載する場合のような過酷な状況下において問題となる振動対策として十分有用なものである。
【0036】
[変形例]
以上、一実施例に基づき本発明のノイズフィルタに付き説明してきたが、本発明は上記実施例記載の構成に限定されず、種々変形実施することが可能である。
【0037】
例えば、本実施例においては、直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)については、上記直列配置された複数のクランプフィルタF1およびF2、或いはF3およびF4全体を貫通する貫通孔と上記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間に存在する上記直列配置された複数のクランプフィルタの一部分に電源ラインや信号ラインのケーブルを巻回することで、ノイズフィルタとしての利用がなされている。
しかしながら、ノイズフィルタとしての使用態様はこれに限定されず、単に電源ラインや信号ラインのケーブルを、ケース51を開いた状態のクランプフィルタにおけるフェライトコア50の両半片で挟み、その後、ケース51を閉じることによってケーブルをクランプして使用する使用態様を採っても構わない。
【0038】
また、上記本実施例に係るノイズフィルタにおいては、図8に示す通り、直列配置された複数のクランプフィルタ(F1およびF2、或いはF3およびF4)が並列配置されると共に、並列配置されたそれぞれのクランプフィルタ同士(F1およびF3、或いはF2およびF4)が、第1の係合部(E1およびE3、或いはE2およびE4)を外面の一部に有する結束手段T1’或いはT2’を用いて束ねられる構成としても良い(第1変形例)。
なお、図8では、複数のクランプフィルタF1ないしF4がベースBに係合される態様を詳細に説明するために、クランプフィルタに巻回されるケーブルを省略している。
具体的には、この第1変形例に係るノイズフィルタにおいては、図8に示す通り、上記結束手段T1’或いはT2’は、それぞれ、クランプフィルタF1の締結手段T1とクランプフィルタF3の締結手段T3に代えて用いられるほか、クランプフィルタF2の締結手段T2とクランプフィルタF4の締結手段T4に代えて用いられる構成とされている。
このように、図8に示す第1変形例においては、上記の通り並列配置されたそれぞれのクランプフィルタ同士(F1およびF3、或いはF2およびF4)が結束手段T1’或いはT2’を用いて束ねられる構成となっており、複数のクランプフィルタを当該クランプフィルタよりも少ない数の結束手段を用いてクランプフィルタをベースに保持させることができ、省部材化と、保持に要する工数の低減が図られている。
【0039】
或いはさらに、図9に示す第2変形例の通り、結束手段T1’およびT2’同士を別途連結手段Cで互いに連結する構成としても構わない。このように構成することにより、複数のクランプフィルタを単一部材により一括してベースに保持させることが可能となる。
【0040】
また本実施例では、第1の係合部E1ないしE6をそれぞれ水平方向に弾性拡開する突出部を有する凸形状からなるものとする一方、第2の係合部R1ないしR6をそれぞれベースBに開けた孔であって上記突出部の挿入が可能な程度の大きさを有するものとしたが、第1の係合部と第2の係合部の態様は上記に何ら限定されず、互いに係合可能な態様であれば適宜採用して構わない。第1の係合部が凸形状であって、第2の係合部が上記凸形状に係合可能なもの、と言う関係にも限定されず、これらの関係が逆であっても構わない。
【0041】
その他、ベースBの形状、クランプフィルタFの直列或いは並列数、クランプフィルタFの種類、クランプフィルタFが装着される電力ライン或いは信号ラインの電力容量或いは種類、ケーブルの巻回数その他の態様が上記実施例の構成に何ら限定されないことは言うまでもない。
【0042】
以上の通り、本発明は、比較的大電力を扱う回路に対して大型のクランプフィルタを都度用意しなくとも、小型汎用のクランプフィルタを活用したノイズ対策を行うことが可能であるほか、クランプフィルタおよびこれを装着したケーブルを例えば車載する場合のような過酷な状況下において問題となる振動対策に十分なり得るノイズフィルタを提供する新規かつ有用なるものであることが明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1 ノイズフィルタアセンブリ
50 フェライトコア
51 ケース
52 係止部
53 ヒンジ部
100 外部フィルタボックス−車載用充電器アセンブリユニット
101 シャーシ
102 車載用充電器
103、108 コネクタ
104 ライブ側ACケーブル
105 ニュートラル側ACケーブル
106 第1の接地ケーブル
107 第2の接地ケーブル
109 外部フィルタボックス
110 対外部電源入力コネクタ
111、112 ネジ端子
B ベース
C 連結手段
E1、E2、E3、E4、E5、E6 第1の係合部
F、F1、F2、F3、F4 クランプフィルタ
R1、R2、R3、R4、R5、R6 第2の係合部
T1、T2、T3、T4、T5、T6 締結手段
T1’、T2’ 結束手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすケース内に収容された長軸方向に貫通孔を有するフェライトコアから構成されたクランプフィルタを用いたノイズフィルタであって、
ベースと、
前記ベース上に直列配置された複数のクランプフィルタと、
前記複数のクランプフィルタを締結する締結手段と、
前記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する前記貫通孔に挿通されたケーブルと
を備え、
前記締結手段は、前記ベースに係合可能に構成された第1の係合部を有する一方、前記ベースは、前記第1の係合部と係合可能に構成され、前記複数のクランプフィルタを直列配置できるように予め前記ベース上の所定位置に設けられた第2の係合部を有し、
前記第1の係合部を前記第2の係合部に係合させることにより前記複数のクランプフィルタを前記ベース上に直列配置させることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
前記ケーブルが、前記直列配置された複数のクランプフィルタ全体を貫通する前記貫通孔と前記直列配置された複数のクランプフィルタ外面との間に巻回されたものであることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
前記直列配置された複数のクランプフィルタが複数組並列配置されると共に、並列配置されたそれぞれのクランプフィルタ同士が、前記第1の係合部を外面の一部に有する結束手段を用いて結束されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
さらに、前記結束手段同士が互いに連結されてなることを特徴とする請求項3に記載のノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−94758(P2012−94758A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242169(P2010−242169)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】