ノズル及び塗布膜の製造方法
【課題】被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制する。
【解決手段】ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じて被塗布物へ噴出されたが、被塗布物に付着せずに浮遊する霧状の浮遊塗布液は、吸引流路36から吸引される。これにより、浮遊塗布液がその自重によって被塗布物へ落下することが抑制される。
【解決手段】ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じて被塗布物へ噴出されたが、被塗布物に付着せずに浮遊する霧状の浮遊塗布液は、吸引流路36から吸引される。これにより、浮遊塗布液がその自重によって被塗布物へ落下することが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル及び塗布膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スプレーガンのスプレーノズル内に円筒状またはパイプ状樹脂ガイドを挿入し固定すると共に、前記スプレーガンの塗工液入口および出口の接液部に樹脂コーティングを施した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−288375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、被塗布物に液滴を噴出する噴出流路と、前記噴出流路から噴出されて浮遊する液滴を吸引口から吸引する吸引流路と、を備えるノズルである。
【0006】
請求項2の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じている請求項1に記載のノズルである。
【0007】
請求項3の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の断面積よりも前記吸引口の下流に設けられた排出口の断面積が狭い請求項2に記載のノズルである。
【0008】
請求項4の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じ、前記吸引流路で吸引された液滴が前記噴出流路から再噴出される請求項1に記載のノズルである。
【0009】
請求項5の発明は、前記吸引流路は、前記噴出流路での噴出に伴って生じる前記吸引口と前記排出口との圧力差によって前記液滴を吸引する請求項4に記載のノズルである。
【0010】
請求項6の発明は、前記吸引口の外周に設けられ、前記液滴を前記吸引口へ案内する案内部材を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のノズルである。
【0011】
請求項7の発明は、前記案内部材の先端が、前記噴出流路の噴出口よりも噴出方向へ突出している請求項6に記載のノズルである。
【0012】
請求項8の発明は、被塗布物に対して液滴を噴出する噴出工程と、前記噴出工程で噴出されて浮遊する液滴を吸引する吸引工程と、前記吸引工程で吸引した液滴を前記被塗布物に対して再噴出する再噴出工程と、を備える塗布膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の構成によれば、吸引流路を備えない構成に比べ、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制できる。
【0014】
本発明の請求項2の構成によれば、吸引流路の排出口が噴出流路と通じていない構成に比べ、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【0015】
本発明の請求項3の構成によれば、液滴を吸引するための動力源が不要となる。
【0016】
本発明の請求項4の構成によれば、吸引流路で吸引された液滴が噴出流路から再噴出されない構成に比べ、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【0017】
本発明の請求項5の構成によれば、液滴を吸引するための動力源が不要となる。
【0018】
本発明の請求項6の構成によれば、案内部材を備えない構成に比べ、浮遊する液滴を効率よく吸引できる。
【0019】
本発明の請求項7の構成によれば、案内部材の先端が突出していない構成に比べ、浮遊する液滴を効率よく吸引できる。
【0020】
本発明の請求項8の構成によれば、再噴出工程を備えない構成に比べ、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制できると共に、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る塗布装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る塗布装置の供給機構を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る塗布装置の供給機構の変形例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係るノズルの構成を概略的に示す側断面図である。
【図5】本実施形態に係るノズルを先端側から見た図である。
【図6】本実施形態に係るノズルにおいて、被塗布物に対する案内部材と噴出口との位置関係を示す図である。
【図7】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の先端が噴出口よりも後端側に引っ込んだ構成を示す側断面図である。
【図8】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の先端と噴出口との位置が一致する構成を示す側断面図である。
【図9】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材が設けられていない構成を示す側断面図である。
【図10】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の周方向における一部が、外周側に大きく張り出した構成を示す側断面図である。
【図11】図10に示す構成において、ノズルを先端側から見た図である。
【図12】複数のノズルを用いた構成において、案内部材がノズル部の外周を一括で囲むようにした構成を示す側断面図である。
【図13】図12に示す構成において、ノズルを先端側から見た図である。
【図14】ポンプの駆動力を用いて、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行う構成を模式的に示す側断面図である。
【図15】ポンプの駆動力を用いて、浮遊塗布液の吸引のみを行う構成を模式的に示す側断面図である。
【図16】塗布装置によって製造される感光体の構成を模式的に示す概略図である。
【図17】塗布装置によって製造される感光体の変形例を模式的に示す概略図である。
【図18】塗布装置によって製造される有機電界発光素子の構成を模式的に示す概略図である。
【図19】比較例に係るノズルの構成を概略的に示す側断面図である。
【図20】実施例及び比較例の評価結果を示す結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る塗布装置50の全体構成)
まず、本実施形態に係る塗布装置50の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係る塗布装置50の全体構成を示す概略図である。
【0023】
本実施形態に係る塗布装置50は、図1に示すように、室内で被塗布物54に対して、塗布液を塗布するための塗布室52を備えている。なお、図1に示す例では、被塗布物54として、円筒状の基体が用いられているが、これに限られるものではない。
【0024】
塗布室52には、外部から室内へ空気を供給可能な給気口52Aと、室内から外部へ空気を排出可能な排気口52Bと、が形成されている。塗布室52では、給気口52Aを通じて清潔な空気が室内に供給されることで、塗布液や粉塵により汚染された空気が排気口52Bから排出されるようになっている。
【0025】
塗布室52の室内には、被塗布物54を回転駆動する駆動装置56と、塗布液の液滴を被塗布物54に噴出するノズル10と、駆動装置56によって回転する被塗布物54の回転軸方向に沿ってノズル10を移動させる移動機構58と、が設けられている。
【0026】
また、塗布装置50は、図2に示すように、塗布液をノズル10に供給する供給機構60を備えている。供給機構60は、塗布液を貯留する貯留部62と、貯留部62に貯留された塗布液をノズル10へ供給するポンプ64と、を備えて構成されている。
【0027】
なお、塗布液をノズル10に供給する供給機構としては、図3に示すように、塗布液を循環可能な供給機構70であっても良い。この供給機構70は、塗布液を貯留する貯留部72と、貯留部72からノズル10へ塗布液を送る往路74A及びノズル10から貯留部72へ塗布液を戻す復路74Bで構成される循環路74と、を備えている。
【0028】
循環路74の往路74Aには、循環ポンプ76と、第1バルブ78と、定量ポンプ80とが、流通方向に沿ってこの順で設けられている。循環路74の復路74Bには、第2バルブ79が設けられている。
【0029】
ノズル10において塗布液の塗布を行わないときは、第1バルブ78及び第2バルブ79を開いた状態で循環ポンプ76が駆動し、貯留部72の塗布液を循環路74で循環させるようになっている。ノズル10において塗布液の塗布を行うときは、第1バルブ78を開き第2バルブ79を閉じた状態で定量ポンプ80が駆動し、ノズル10へ定量的に塗布液が供給されるようになっている。このように、供給機構70では、塗布液の塗布を行わないとき塗布液を循環させることにより、塗布液に含まれる顔料等の沈殿が抑制される。
【0030】
(本実施形態に係るノズル10の構成)
次に、本実施形態に係るノズル10の構成を説明する。図4は、本実施形態に係るノズル10の構成を概略的に示す側断面図である。なお、以下の説明では、ノズル10において、塗布液を噴出する側(図4における下側であって、矢印S側)を先端側とし、その反対側(図4における上側であって、矢印K側)を後端側とし、軸中心Cから見て半径方向外側(図4における矢印G側)を外周側とし、その反対側(図4における矢印N側)を内周側として説明する。
【0031】
本実施形態に係るノズル10は、図4に示すように、先端部がテーパ形状(後端から先端に向かって徐々に縮径されて先細りとなった形状)に形成された円筒状のノズル本体12を備えている。ノズル本体12の先端には、ノズル本体12の大径部分よりも、小径とされた円筒状のノズル部40が形成されている。なお、図4では、ノズル本体12を一体的なものとして図示しているが、ノズル本体12は、複数の部品(部材)が組み付けられて構成されている。
【0032】
ノズル本体12の軸中心部には、円柱状とされた内部空間12Aが、ノズル本体12の軸方向に沿って形成されている。内部空間12Aは、先端部がテーパ形状に形成されている。
【0033】
ノズル本体12における内部空間12Aの先端側には、内部空間12Aの大径部分よりも小径とされたノズル孔22が形成されている。ノズル部40には、ノズル孔22と通じ、ノズル孔22を延長するノズル孔延長部38が設けられている。すなわち、ノズル10におけるノズル孔は、ノズル孔22とノズル孔延長部38とで構成されている。なお、ノズル孔延長部38は、ノズル孔22よりも大径に形成されている。
【0034】
また、内部空間12Aには、ノズル本体12の内径よりも外径が小さいニードル14が挿入されている。ニードル14は、先端部が、ノズル孔22よりも大径部分を含むテーパ形状に形成されている。この先端部の一部は、ノズル孔22内に達している。ニードル14の後端部には、内部空間12Aの後端部を封止する封止部材の一例としてのパッキン18及びOリング20が設けられている。
【0035】
内部空間12Aの後端側におけるノズル本体12の側壁には、内部空間12Aから外周方向へノズル本体12を貫通する貫通孔24が形成されている。この貫通孔24に一端部が接続された管体26が、ノズル本体12に設けられている。この管体26の他端部には、前述の貯留部62(図2参照)が接続されている。
【0036】
これにより、ポンプ64(図2参照)によって貯留部62(図2参照)から供給された塗布液は、管体26の管内26A、貫通孔24及び内部空間12Aを通ってノズル孔22に達するようになっている。すなわち、管体26の管内26A、貫通孔24及び内部空間12Aによって、塗布液が流通する塗布液流路16が構成されている。
【0037】
ノズル本体12の側壁内であって、かつ、内部空間12Aの外周側には、円筒状の円筒状空間30が形成されている。円筒状空間30は、先端部がテーパ形状に形成されている。円筒状空間30の先端は、ノズル孔22と通じている。
【0038】
円筒状空間30の後端側におけるノズル本体12の側壁には、円筒状空間30から外周方向へノズル本体12を貫通する貫通孔32が形成されている。この貫通孔32に一端部が接続された管体34が、ノズル本体12に設けられている。この管体34の他端部には、コンプレッサ等の空気供給装置(図示省略)に接続されている。
【0039】
これにより、空気供給装置(図示省略)から供給された空気は、管体34の管内34A、貫通孔32及び円筒状空間30を通ってノズル孔22に達するようになっている。すなわち、管体34の管内34A、貫通孔32及び円筒状空間30によって、空気が流通する空気流路28が構成されている。
【0040】
そして、ノズル10では、空気流路28を通じてノズル孔22に達した空気によって、塗布液流路16を通じてノズル孔22に達した塗布液が霧状(液滴)になってノズル孔延長部38から噴出するようになっている。すなわち、ノズル孔22及びノズル孔延長部38によって、被塗布物54へ塗布液の液滴を噴出する噴出流路23が構成されている。また、ノズル孔延長部38の先端部開口が、噴出流路23における噴出口38Aを構成している。
【0041】
ここで、ノズル本体12の先端側であって、かつ外周側には、ノズル孔延長部38から噴出されて被塗布物54に付着せずに浮遊する霧状の塗布液(以下、浮遊塗布液と称する)を吸引する吸引流路36が複数設けられている。
【0042】
各吸引流路36は、円孔で構成されると共に、塗布液が吸引される吸引口36Aと、塗布液が排出される排出口36Bと、を有している。吸引口36Aは、図5に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、ノズル孔延長部38の外周側で、ノズル孔延長部38の周方向に沿って配列されている。各排出口36Bは、図4に示すように、ノズル孔延長部38と通じている。
【0043】
各吸引流路36の流通方向は、吸引口36Aからノズル本体12の後端側へ進行すると共に、ノズル本体12の先端側であってかつ内周側へ折り返して、ノズル孔延長部38と通じる排出口36Bへ向かっている。すなわち、複数の吸引流路36は、ノズル孔延長部38から見て放射状に設けられている。なお、吸引流路36は、吸引口36Aよりも排出口36B側の流通断面積が狭くされている。
【0044】
本実施形態では、ノズル孔延長部38から塗布液が、空気流路28からの空気によって霧状となる程度の速度で噴出されると、ノズル孔延長部38(吸引流路36の排出口36B)での圧力が低下する。すなわち、吸引流路36の排出口36Bにおける噴出流体の流速が、吸引口36Aにおける噴出流体の流速よりも速く、排出口36Bにおける圧力が、吸引口36Aにおける圧力よりも低い状態となる(ベルヌーイの定理)。これにより、吸引流路36において、吸引口36Aから排出口36Bへ向かう流れ(気流)が生じ、吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引されるようになっている。そして、吸引口36Aから吸引された浮遊塗布液は、排出口36Bからノズル孔延長部38へ排出され、空気流路28を通じてノズル孔22に達した空気によって、霧状(液滴)になってノズル孔延長部38から再噴出されるようになっている。
【0045】
なお、吸引流路36は、複数である場合に限られず、単数であっても良い。また、吸引流路36は、円孔で構成される場合に限られず、例えば、円環状であっても良い。
【0046】
吸引流路36の吸引口36Aの外周には、浮遊塗布液を吸引口36Aへ案内する案内部材42が設けられている。案内部材42は、図5に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、ノズル孔延長部38の外周を、ノズル孔延長部38の周方向に沿って囲んでいる。これにより、案内部材42は、円環状を構成している。
【0047】
案内部材42の内周側であって、ノズル孔延長部38の外周には、浮遊塗布液を案内する案内空間43が形成されている。案内空間43は、ノズル部40の外周壁によってノズル孔延長部38と隔てられている。
【0048】
また、案内部材42は、先端側が徐々に拡径された末広がりに張り出している。これにより、案内空間43も先端側において、空間が外周側へ広がっている。また、案内部材42の先端42Aは、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも、噴射方向(先端方向)へ突出している。
【0049】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用として、塗布膜の製造方法について説明する。
【0050】
本実施形態に係る塗布装置50では、ノズル10が、移動機構58によって被塗布物54の回転軸方向へ移動しながら、駆動装置56によって回転駆動される被塗布物54に対して、塗布液を噴出する。これにより、被塗布物54の外周に塗布膜が形成される。
【0051】
具体的には、ノズル10では、空気流路28からの空気によって、塗布液流路16からの塗布液が霧状になって、ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じ、被塗布物54へ噴出される(噴出工程)。
【0052】
ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じて被塗布物54へ噴出されたが、被塗布物54に付着せずに浮遊する霧状の浮遊塗布液は、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって、吸引流路36から吸引される(吸引工程)。
【0053】
吸引流路36から吸引された浮遊塗布液は、さらに、その圧力差によってノズル孔延長部38へ導かれ、空気流路28からの空気によって霧状になって、ノズル孔延長部38を通じ被塗布物54へ再び噴出される(再噴出工程)。
【0054】
このように、浮遊塗布液は、吸引流路36から吸引されるので、浮遊塗布液がその自重によって被塗布物54へ落下することが抑制される。また、吸引流路36から吸引された浮遊塗布液は、被塗布物54へ再び噴出されるので、被塗布物54への塗布液の付着効率が向上する。
【0055】
また、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行うので、吸引及び再噴出を行うための駆動力を発生させる動力源が不要である。
【0056】
また、案内部材42によって、浮遊塗布液が案内されて、吸引流路36で吸引されるので、浮遊塗布液を効果的に吸引する。また、案内部材42は、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出しているため、図6に示すように、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも案内部材42の先端が被塗布物54に近接し、浮遊塗布液が効果的に取り込まれる。
【0057】
なお、本実施形態では、案内部材42の先端42Aがノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出する構成であったが、案内部材42の先端42Aがノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出していない構成であってもよい。具体的には、図7に示すように、案内部材42の先端42Aが、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも後端側に引っ込んでいても良いし、図8に示すように、案内部材42の先端42Aとノズル孔延長部38の噴出口38Aとの位置が一致していてもよい。
【0058】
また、ノズル10としては、図9に示すように、案内部材42が設けられていない構成であっても良い。この構成では、吸引流路36の吸引口36Aが、ノズル本体12の側壁の外周面に形成されている。
【0059】
また、案内部材42は、図10及び図11に示すように、周方向における一部が、周方向における他の一部に対して、外周側に大きく張り出す構成であっても良い。案内部材42において外周側に張り出す側は、移動機構58における移動方向下流側とされる。
【0060】
ノズル10が移動機構58によって移動しながら塗布液を噴出する場合では、ノズル10の移動方向下流側に浮遊塗布液が多くなるが、図10及び図11に示す構成によれば、その浮遊塗布液を回収しやすくなる。
【0061】
また、ノズル10を複数用いて構成される場合には、案内部材42は、図12及び図13に示すように、複数のノズル孔延長部38(ノズル部40)の外周を一括で囲むように構成しても良い。このように、複数のノズル10に対して案内部材42を共通化することにより、部品点数が低減される。なお、案内部材42は、図13に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、対向する長辺と、対向する曲線で囲まれた形状とされているが、案内部材42としては、4辺で囲まれた四辺形状(例えば長方形状)であっても良い。
【0062】
また、本実施形態では、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行っていたが、図14に示すように、駆動力を用いて、吸引及び再噴出を行う構成であっても良い。この構成では、各吸引流路36中にポンプ41が設けられている。ポンプ41を駆動することにより、吸引流路36の吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引される。この吸引された浮遊塗布液は、排出口36Bからノズル孔延長部38へ排出され、空気流路28からの空気によって霧状になって、ノズル孔延長部38を通じ被塗布物54へ再び噴出される。また、この構成においては、排出口36Bを管体26につないで、塗布液流路16を通じてノズル孔延長部38から噴出されるように構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態では、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行っていたが、図15に示すように、浮遊塗布液の吸引のみを行う構成であっても良い。この構成では、吸引流路36の排出口36Bは、ノズル孔延長部38に接続されず、ポンプ39に接続されている。ポンプ39を駆動することにより、吸引流路36の吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引される。なお、吸引された浮遊塗布液は、例えば、貯留部等に貯留される。
【0064】
(感光体80及びその製造)
次に、塗布装置50によって製造される製造物としての、電子写真機器に使用される感光体80及びその製造について説明する。
【0065】
感光体80は、図16に示すように、基体82と、その外周面上に形成された感光層84と、を備えて構成される。この基体82が、上記の被塗布物54に相当し、感光層84は、基体82へ塗布液が塗布されることで基体82上に形成される塗布膜に相当する。
【0066】
感光体80の基体82としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケルなどの金属のドラム及びシート、紙、プラスチック又はガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス、銅−インジウムなどの金属を蒸着するか、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属酸化物を蒸着するか、金属箔をラミノートするか、又はカーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅などを結着樹脂に分散し、塗工することによっても導電処理したドラム状、シート状、プレート状のものなど、公知の材料が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
感光層84としては、図16に示すように、例えば、電荷発生材料で形成された電荷発生層84Aと電荷輸送材料で形成された電荷輸送層84Bとを備えた機能分離型の積層構造がある。また、感光層84としては、電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単一層構造であってもよい。
【0068】
電荷発生材料としては特に制限はなく、例えば、従来より公知のものが使用される。このような電荷発生材料としては、具体的には、非晶質セレン、結晶性セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等のセレン化合物又はセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系化合物、スクアリウム系化合物、アントアントロン系化合物、ペリレン系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ピレン系化合物、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料又は染料、等が挙げられる。
【0069】
また、電荷輸送材料としては特に制限はなく、例えば、従来より公知のものが使用される。このような電荷輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、芳香族第3級アミノ化合物、芳香族第3級ジアミノ化合物、1,2,4−トリアジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、α−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質;キノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、フルオレノン系化合物、オキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン系化合物、ジフェノキノン系化合物等の電子輸送物質等が挙げられる。
【0070】
更に、感光層84に使用されるバインダ樹脂としては特に制限はなく、従来より公知のものが使用される。このようなバインダ樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0071】
更にまた、感光層84の表面層は、無機フィラー、ポリエチレン粉体、フッ素原子含有樹脂微粒子、硬化型樹脂又はシリコーン樹脂からなる球状樹脂微粉末、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物又はベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物の微粒子、等の微粒子を含有していることが好ましい。表面層が、このような微粒子を含有していると、電子写真感光体の耐摩耗性及び潤滑性が向上する傾向にある。
【0072】
なお、図17に示すように、感光層84と基体82との間に下引き層86を設けてもよい。下引き層86とは、積層構造を有する感光層が帯電した場合に、基体82から感光層84へ電荷が流入することを阻止するとともに、感光層84を基体82に対して一体的に接着保持させる接着層として機能し、更にその材質によっては、基体82の光反射を防止する層を意味する。ここで、下引き層86に使用するバインダ樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、これらのバインダ樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。更に、これらのバインダ樹脂は、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、シリコーン樹脂等の微粒子と混合して使用してもよい。
【0073】
また、感光層84には、酸化防止剤、光安定化剤、熱安定剤等の添加剤を配合してもよい。ここで、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、p−フェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等;光安定化剤としてはベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン及びこれらの誘導体等、が挙げられる。
【0074】
感光層84が電荷発生層84Aと電荷輸送層84Bとを備えた機能分離型の積層構造である場合は、先ず、電荷発生材料及びバインダ樹脂を含有する溶液をノズル10から基体82上に噴出して塗布し、電荷発生層84Aを成膜する。次に、電荷輸送材料を含有する溶液をノズル10から電荷発生層84A上に更に噴出して塗布し、電荷輸送層84Bを成膜する。これにより、感光体80が製造される。
【0075】
なお、電荷発生層84A及び電荷輸送層84Bの成膜の少なくとも一方において、塗布装置50が用いられていれば良い。また、感光体80としては、電荷発生層84A、電荷輸送層84B及び下引き層86以外の機能層を有していてもよく、その場合ではその機能層の成膜において、塗布装置50を用いても良い。
【0076】
ここで、電荷発生材料及び電荷輸送材料を溶解させる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環上又は直鎖状のエーテル類、等が挙げられ、これらの溶剤は単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。また、電荷発生材料及び電荷輸送材料を溶剤に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ダイノミール等を用いた従来より公知の方法が使用される。
【0077】
更に、電荷発生層84A及び電荷輸送層84Bの膜厚に特に制限はないが、電荷発生層84Aの膜厚は、通常0.01〜5μm、好ましくは0.05〜2μmであり、電荷輸送層84Bの膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。
【0078】
感光層84が、電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単一層構造である場合は、電荷輸送材料及び電荷発生材料を分散させた溶液を、ノズル10から基体82上に噴出して塗布する。これにより、感光体80が製造される。ここで、使用する溶剤及び溶剤に分散させる方法としては、例えば、上記の積層型感光層の場合と同様のものが使用される。また、感光層84の膜厚に特に制限はないが、通常5〜100μm、好ましくは10〜40μmである。
【0079】
(有機電界発光素子90及びその製造)
次に、塗布装置50によって製造される製造物としての有機電界発光素子(有機EL素子)90及びその製造について説明する。
【0080】
有機電界発光素子90は、図18に示すように、例えば、透明基板91上に、透明電極(陽極)92、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95、電子輸送層96及び背面電極97(陰極)が順次積層されて構成されている。
【0081】
透明基板91としては、発光を取り出すため透明なものが望ましく、ガラス基板、プラスチックフィルム基板等が用いられる。
【0082】
透明電極92は、透明基板91と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが望ましく、例えば、酸化膜(例えば酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、又は酸化亜鉛等)、金属膜(例えば金、白金、又はパラジウム等)が好適に用いられる。この透明電極92は、例えば、蒸着法、又はスパッタリング法などにより透明基板91上に形成される。
【0083】
正孔注入層93を構成する正孔注入材料としては、例えば、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、銅フタロシアニン、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)又はこれらの混合物が望ましく用いられる。
【0084】
正孔注入層93は、正孔注入材料を含有する溶液がノズル10から透明電極92上に噴出されて塗布されることで、透明電極92上に成膜される。
【0085】
用いる塗布液の溶剤としては、原料有機材料(発光材料、電荷輸送材料等)を溶解させるものであることがよく、且つ、揮発性の有機溶剤であることがよい。この有機溶剤として代表的なものは、例えば、2−メチル−1−プロパノール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0086】
正孔輸送層94を構成する正孔輸送材料としては、例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が望ましく用いられる。
【0087】
正孔輸送層94は、正孔輸送材料を含有する溶液がノズル10から正孔注入層93上に噴出されて塗布されることで、正孔注入層93上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0088】
発光層95を構成する発光材料としては、他の状態よりも固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が挙げられ、例えば、低分子発光材料、又は高分子発光材料が挙げられる。低分子発光材料としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。高分子発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
【0089】
発光層95は、発光材料を含有する溶液がノズル10から正孔輸送層94上に噴出されて塗布されることで、正孔輸送層94上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0090】
電子輸送層96を構成する電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、又はフルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。
【0091】
電子輸送層96は、電子輸送材料を含有する溶液がノズル10から発光層95上に噴出されて塗布されることで、発光層95上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0092】
背面電極97は、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に望ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム、又はこれらの合金が挙げられる。背面電極97は、例えば、蒸着法や、スパッタリング法などにより電子輸送層96上に形成される。
【0093】
なお、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95及び電子輸送層96の成膜の少なくとも一方において、塗布装置50が用いられていれば良い。また、有機電界発光素子90としては、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95及び電子輸送層96以外の機能層を有していてもよく、その場合では、その機能層の成膜において、塗布装置50を用いても良い。さらに、有機電界発光素子90としては、発光層95を有していれば、正孔注入層93、正孔輸送層94及び電子輸送層96を有していない構成であっても良い。
【0094】
[実施例]
以下、実施例および比較例を示して、具体的に説明する。但し、特にこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例において製造された感光体について、富士ゼロックス株式会社のデジタルコピー機(Apeos Port III C4400)を使用し、次の判定基準により「画像品質」、「塗膜欠陥・異物付着」を評価した。
【0095】
「画像品質」は、目視により出力画像の濃淡ムラ、画像欠陥、画像汚れのないものを○、わずかに発生を△、発生を×として判定した。また、「塗膜欠陥・異物付着」は、塗布済みの感光体の表面を目視判定し、発生なしを○ 、わずかに発生を△、発生を×とした。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、以下のように、感光体の基体を作成した。まず、ダイヤモンドバイトを用いた鏡面旋盤により、直径84mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウムパイプに鏡面切削加工を行い、表面粗さRa(JIS B0601(2001)に規定されている算術平均粗さ)が0.04μmである平滑面に表面を仕上げた。次に、この基体に対して、湿式のブラストを用いて粗面化処理を行なった。
【0097】
次に、支持体に保持された基体をロボットにより洗浄処理槽に移動させた後、支持体の軸とリングノズルの中心とが一致するように配置して、イオン交換水を用いて洗浄処理を行った。
【0098】
上記の方法により粗面化処理を行なった基体を用いて、以下の手順に従って感光体を製造した。
【0099】
先ず、有機ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、松本製薬(株)製)100重量部、シランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカー(株)製)10重量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学(株)製)10重量部及びn−ブチルアルコール130重量部を混合して塗布液を調製した。得られた塗布液を浸漬塗布法により基体表面に塗布し、140℃で15分間加熱して、膜厚1.0μmの下引き層を成膜した。
【0100】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学(株)製)の2重量%シクロヘキサノン溶液と、ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料(特開平5−263007号公報に記載のもの)とを、顔料と樹脂との比が2:1となるように混合し、サンドミルにより3時間分散処理を行なった。得られた分散液を更に酢酸n−ブチルで希釈して下引き層上に浸漬塗布し、膜厚0.15μmの電荷発生層を成膜した。
【0101】
次に、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(m−トリル)ベンジジン4重量部及びポリカーボネートZ樹脂6重量部をモノクロロベンゼン36部に溶解させ、得られた溶液を電荷発生層上に、塗布装置50によって塗布し、連続500本のスプレー塗工を行った。その後、115℃で40分間乾燥して、膜厚24μmの電荷輸送層を成膜して感光体を得た。
【0102】
実施例1では、案内部材42の先端42Aと塗布液流路16の噴出口38Aとの位置が一致した(ギャップg(図4参照)が0mm)ノズル10を用いた(図8参照)。
【0103】
(実施例2)
実施例2では、案内部材42の先端42Aが塗布液流路16の噴出口38Aよりも5mm引っ込んだ(ギャップg(図4参照)が−5mm)ノズル10を用いて(図7参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0104】
(実施例3)
実施例3では、案内部材42の先端42Aが塗布液流路16の噴出口38Aよりも5mm突出した(ギャップg(図4参照)が+5mm)ノズル10を用いて(図4参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0105】
(実施例4)
実施例4では、案内部材42が設けられていないノズル10を用いて(図9参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0106】
(比較例)
比較例では、吸引流路36が設けられていないノズル100を用いて(図19参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0107】
この結果、図20の結果表に示すように、「塗膜欠陥・異物付着」は、実施例1、2、4でわずかに発生し、実施例3では発生せず、比較例では発生した。「画像品質」は、実施例1、3で、濃淡ムラ・画像欠陥・画像汚れがなく、実施例2では濃淡ムラ・画像欠陥・画像汚れがわずかに発生した。
【0108】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 ノズル
23 噴出流路
36 吸引流路
36A 吸引口
36B 排出口
38A 噴出口
42 案内部材
54 被塗布物
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル及び塗布膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スプレーガンのスプレーノズル内に円筒状またはパイプ状樹脂ガイドを挿入し固定すると共に、前記スプレーガンの塗工液入口および出口の接液部に樹脂コーティングを施した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−288375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、被塗布物に液滴を噴出する噴出流路と、前記噴出流路から噴出されて浮遊する液滴を吸引口から吸引する吸引流路と、を備えるノズルである。
【0006】
請求項2の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じている請求項1に記載のノズルである。
【0007】
請求項3の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の断面積よりも前記吸引口の下流に設けられた排出口の断面積が狭い請求項2に記載のノズルである。
【0008】
請求項4の発明は、前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じ、前記吸引流路で吸引された液滴が前記噴出流路から再噴出される請求項1に記載のノズルである。
【0009】
請求項5の発明は、前記吸引流路は、前記噴出流路での噴出に伴って生じる前記吸引口と前記排出口との圧力差によって前記液滴を吸引する請求項4に記載のノズルである。
【0010】
請求項6の発明は、前記吸引口の外周に設けられ、前記液滴を前記吸引口へ案内する案内部材を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のノズルである。
【0011】
請求項7の発明は、前記案内部材の先端が、前記噴出流路の噴出口よりも噴出方向へ突出している請求項6に記載のノズルである。
【0012】
請求項8の発明は、被塗布物に対して液滴を噴出する噴出工程と、前記噴出工程で噴出されて浮遊する液滴を吸引する吸引工程と、前記吸引工程で吸引した液滴を前記被塗布物に対して再噴出する再噴出工程と、を備える塗布膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の構成によれば、吸引流路を備えない構成に比べ、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制できる。
【0014】
本発明の請求項2の構成によれば、吸引流路の排出口が噴出流路と通じていない構成に比べ、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【0015】
本発明の請求項3の構成によれば、液滴を吸引するための動力源が不要となる。
【0016】
本発明の請求項4の構成によれば、吸引流路で吸引された液滴が噴出流路から再噴出されない構成に比べ、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【0017】
本発明の請求項5の構成によれば、液滴を吸引するための動力源が不要となる。
【0018】
本発明の請求項6の構成によれば、案内部材を備えない構成に比べ、浮遊する液滴を効率よく吸引できる。
【0019】
本発明の請求項7の構成によれば、案内部材の先端が突出していない構成に比べ、浮遊する液滴を効率よく吸引できる。
【0020】
本発明の請求項8の構成によれば、再噴出工程を備えない構成に比べ、被塗布物に付着せずに浮遊した液滴が被塗布物に落下することで生じる塗布膜の欠陥を抑制できると共に、液滴の被塗布物への付着効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る塗布装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る塗布装置の供給機構を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る塗布装置の供給機構の変形例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係るノズルの構成を概略的に示す側断面図である。
【図5】本実施形態に係るノズルを先端側から見た図である。
【図6】本実施形態に係るノズルにおいて、被塗布物に対する案内部材と噴出口との位置関係を示す図である。
【図7】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の先端が噴出口よりも後端側に引っ込んだ構成を示す側断面図である。
【図8】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の先端と噴出口との位置が一致する構成を示す側断面図である。
【図9】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材が設けられていない構成を示す側断面図である。
【図10】本実施形態に係るノズルにおいて、案内部材の周方向における一部が、外周側に大きく張り出した構成を示す側断面図である。
【図11】図10に示す構成において、ノズルを先端側から見た図である。
【図12】複数のノズルを用いた構成において、案内部材がノズル部の外周を一括で囲むようにした構成を示す側断面図である。
【図13】図12に示す構成において、ノズルを先端側から見た図である。
【図14】ポンプの駆動力を用いて、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行う構成を模式的に示す側断面図である。
【図15】ポンプの駆動力を用いて、浮遊塗布液の吸引のみを行う構成を模式的に示す側断面図である。
【図16】塗布装置によって製造される感光体の構成を模式的に示す概略図である。
【図17】塗布装置によって製造される感光体の変形例を模式的に示す概略図である。
【図18】塗布装置によって製造される有機電界発光素子の構成を模式的に示す概略図である。
【図19】比較例に係るノズルの構成を概略的に示す側断面図である。
【図20】実施例及び比較例の評価結果を示す結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る塗布装置50の全体構成)
まず、本実施形態に係る塗布装置50の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係る塗布装置50の全体構成を示す概略図である。
【0023】
本実施形態に係る塗布装置50は、図1に示すように、室内で被塗布物54に対して、塗布液を塗布するための塗布室52を備えている。なお、図1に示す例では、被塗布物54として、円筒状の基体が用いられているが、これに限られるものではない。
【0024】
塗布室52には、外部から室内へ空気を供給可能な給気口52Aと、室内から外部へ空気を排出可能な排気口52Bと、が形成されている。塗布室52では、給気口52Aを通じて清潔な空気が室内に供給されることで、塗布液や粉塵により汚染された空気が排気口52Bから排出されるようになっている。
【0025】
塗布室52の室内には、被塗布物54を回転駆動する駆動装置56と、塗布液の液滴を被塗布物54に噴出するノズル10と、駆動装置56によって回転する被塗布物54の回転軸方向に沿ってノズル10を移動させる移動機構58と、が設けられている。
【0026】
また、塗布装置50は、図2に示すように、塗布液をノズル10に供給する供給機構60を備えている。供給機構60は、塗布液を貯留する貯留部62と、貯留部62に貯留された塗布液をノズル10へ供給するポンプ64と、を備えて構成されている。
【0027】
なお、塗布液をノズル10に供給する供給機構としては、図3に示すように、塗布液を循環可能な供給機構70であっても良い。この供給機構70は、塗布液を貯留する貯留部72と、貯留部72からノズル10へ塗布液を送る往路74A及びノズル10から貯留部72へ塗布液を戻す復路74Bで構成される循環路74と、を備えている。
【0028】
循環路74の往路74Aには、循環ポンプ76と、第1バルブ78と、定量ポンプ80とが、流通方向に沿ってこの順で設けられている。循環路74の復路74Bには、第2バルブ79が設けられている。
【0029】
ノズル10において塗布液の塗布を行わないときは、第1バルブ78及び第2バルブ79を開いた状態で循環ポンプ76が駆動し、貯留部72の塗布液を循環路74で循環させるようになっている。ノズル10において塗布液の塗布を行うときは、第1バルブ78を開き第2バルブ79を閉じた状態で定量ポンプ80が駆動し、ノズル10へ定量的に塗布液が供給されるようになっている。このように、供給機構70では、塗布液の塗布を行わないとき塗布液を循環させることにより、塗布液に含まれる顔料等の沈殿が抑制される。
【0030】
(本実施形態に係るノズル10の構成)
次に、本実施形態に係るノズル10の構成を説明する。図4は、本実施形態に係るノズル10の構成を概略的に示す側断面図である。なお、以下の説明では、ノズル10において、塗布液を噴出する側(図4における下側であって、矢印S側)を先端側とし、その反対側(図4における上側であって、矢印K側)を後端側とし、軸中心Cから見て半径方向外側(図4における矢印G側)を外周側とし、その反対側(図4における矢印N側)を内周側として説明する。
【0031】
本実施形態に係るノズル10は、図4に示すように、先端部がテーパ形状(後端から先端に向かって徐々に縮径されて先細りとなった形状)に形成された円筒状のノズル本体12を備えている。ノズル本体12の先端には、ノズル本体12の大径部分よりも、小径とされた円筒状のノズル部40が形成されている。なお、図4では、ノズル本体12を一体的なものとして図示しているが、ノズル本体12は、複数の部品(部材)が組み付けられて構成されている。
【0032】
ノズル本体12の軸中心部には、円柱状とされた内部空間12Aが、ノズル本体12の軸方向に沿って形成されている。内部空間12Aは、先端部がテーパ形状に形成されている。
【0033】
ノズル本体12における内部空間12Aの先端側には、内部空間12Aの大径部分よりも小径とされたノズル孔22が形成されている。ノズル部40には、ノズル孔22と通じ、ノズル孔22を延長するノズル孔延長部38が設けられている。すなわち、ノズル10におけるノズル孔は、ノズル孔22とノズル孔延長部38とで構成されている。なお、ノズル孔延長部38は、ノズル孔22よりも大径に形成されている。
【0034】
また、内部空間12Aには、ノズル本体12の内径よりも外径が小さいニードル14が挿入されている。ニードル14は、先端部が、ノズル孔22よりも大径部分を含むテーパ形状に形成されている。この先端部の一部は、ノズル孔22内に達している。ニードル14の後端部には、内部空間12Aの後端部を封止する封止部材の一例としてのパッキン18及びOリング20が設けられている。
【0035】
内部空間12Aの後端側におけるノズル本体12の側壁には、内部空間12Aから外周方向へノズル本体12を貫通する貫通孔24が形成されている。この貫通孔24に一端部が接続された管体26が、ノズル本体12に設けられている。この管体26の他端部には、前述の貯留部62(図2参照)が接続されている。
【0036】
これにより、ポンプ64(図2参照)によって貯留部62(図2参照)から供給された塗布液は、管体26の管内26A、貫通孔24及び内部空間12Aを通ってノズル孔22に達するようになっている。すなわち、管体26の管内26A、貫通孔24及び内部空間12Aによって、塗布液が流通する塗布液流路16が構成されている。
【0037】
ノズル本体12の側壁内であって、かつ、内部空間12Aの外周側には、円筒状の円筒状空間30が形成されている。円筒状空間30は、先端部がテーパ形状に形成されている。円筒状空間30の先端は、ノズル孔22と通じている。
【0038】
円筒状空間30の後端側におけるノズル本体12の側壁には、円筒状空間30から外周方向へノズル本体12を貫通する貫通孔32が形成されている。この貫通孔32に一端部が接続された管体34が、ノズル本体12に設けられている。この管体34の他端部には、コンプレッサ等の空気供給装置(図示省略)に接続されている。
【0039】
これにより、空気供給装置(図示省略)から供給された空気は、管体34の管内34A、貫通孔32及び円筒状空間30を通ってノズル孔22に達するようになっている。すなわち、管体34の管内34A、貫通孔32及び円筒状空間30によって、空気が流通する空気流路28が構成されている。
【0040】
そして、ノズル10では、空気流路28を通じてノズル孔22に達した空気によって、塗布液流路16を通じてノズル孔22に達した塗布液が霧状(液滴)になってノズル孔延長部38から噴出するようになっている。すなわち、ノズル孔22及びノズル孔延長部38によって、被塗布物54へ塗布液の液滴を噴出する噴出流路23が構成されている。また、ノズル孔延長部38の先端部開口が、噴出流路23における噴出口38Aを構成している。
【0041】
ここで、ノズル本体12の先端側であって、かつ外周側には、ノズル孔延長部38から噴出されて被塗布物54に付着せずに浮遊する霧状の塗布液(以下、浮遊塗布液と称する)を吸引する吸引流路36が複数設けられている。
【0042】
各吸引流路36は、円孔で構成されると共に、塗布液が吸引される吸引口36Aと、塗布液が排出される排出口36Bと、を有している。吸引口36Aは、図5に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、ノズル孔延長部38の外周側で、ノズル孔延長部38の周方向に沿って配列されている。各排出口36Bは、図4に示すように、ノズル孔延長部38と通じている。
【0043】
各吸引流路36の流通方向は、吸引口36Aからノズル本体12の後端側へ進行すると共に、ノズル本体12の先端側であってかつ内周側へ折り返して、ノズル孔延長部38と通じる排出口36Bへ向かっている。すなわち、複数の吸引流路36は、ノズル孔延長部38から見て放射状に設けられている。なお、吸引流路36は、吸引口36Aよりも排出口36B側の流通断面積が狭くされている。
【0044】
本実施形態では、ノズル孔延長部38から塗布液が、空気流路28からの空気によって霧状となる程度の速度で噴出されると、ノズル孔延長部38(吸引流路36の排出口36B)での圧力が低下する。すなわち、吸引流路36の排出口36Bにおける噴出流体の流速が、吸引口36Aにおける噴出流体の流速よりも速く、排出口36Bにおける圧力が、吸引口36Aにおける圧力よりも低い状態となる(ベルヌーイの定理)。これにより、吸引流路36において、吸引口36Aから排出口36Bへ向かう流れ(気流)が生じ、吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引されるようになっている。そして、吸引口36Aから吸引された浮遊塗布液は、排出口36Bからノズル孔延長部38へ排出され、空気流路28を通じてノズル孔22に達した空気によって、霧状(液滴)になってノズル孔延長部38から再噴出されるようになっている。
【0045】
なお、吸引流路36は、複数である場合に限られず、単数であっても良い。また、吸引流路36は、円孔で構成される場合に限られず、例えば、円環状であっても良い。
【0046】
吸引流路36の吸引口36Aの外周には、浮遊塗布液を吸引口36Aへ案内する案内部材42が設けられている。案内部材42は、図5に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、ノズル孔延長部38の外周を、ノズル孔延長部38の周方向に沿って囲んでいる。これにより、案内部材42は、円環状を構成している。
【0047】
案内部材42の内周側であって、ノズル孔延長部38の外周には、浮遊塗布液を案内する案内空間43が形成されている。案内空間43は、ノズル部40の外周壁によってノズル孔延長部38と隔てられている。
【0048】
また、案内部材42は、先端側が徐々に拡径された末広がりに張り出している。これにより、案内空間43も先端側において、空間が外周側へ広がっている。また、案内部材42の先端42Aは、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも、噴射方向(先端方向)へ突出している。
【0049】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用として、塗布膜の製造方法について説明する。
【0050】
本実施形態に係る塗布装置50では、ノズル10が、移動機構58によって被塗布物54の回転軸方向へ移動しながら、駆動装置56によって回転駆動される被塗布物54に対して、塗布液を噴出する。これにより、被塗布物54の外周に塗布膜が形成される。
【0051】
具体的には、ノズル10では、空気流路28からの空気によって、塗布液流路16からの塗布液が霧状になって、ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じ、被塗布物54へ噴出される(噴出工程)。
【0052】
ノズル孔22及びノズル孔延長部38を通じて被塗布物54へ噴出されたが、被塗布物54に付着せずに浮遊する霧状の浮遊塗布液は、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって、吸引流路36から吸引される(吸引工程)。
【0053】
吸引流路36から吸引された浮遊塗布液は、さらに、その圧力差によってノズル孔延長部38へ導かれ、空気流路28からの空気によって霧状になって、ノズル孔延長部38を通じ被塗布物54へ再び噴出される(再噴出工程)。
【0054】
このように、浮遊塗布液は、吸引流路36から吸引されるので、浮遊塗布液がその自重によって被塗布物54へ落下することが抑制される。また、吸引流路36から吸引された浮遊塗布液は、被塗布物54へ再び噴出されるので、被塗布物54への塗布液の付着効率が向上する。
【0055】
また、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行うので、吸引及び再噴出を行うための駆動力を発生させる動力源が不要である。
【0056】
また、案内部材42によって、浮遊塗布液が案内されて、吸引流路36で吸引されるので、浮遊塗布液を効果的に吸引する。また、案内部材42は、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出しているため、図6に示すように、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも案内部材42の先端が被塗布物54に近接し、浮遊塗布液が効果的に取り込まれる。
【0057】
なお、本実施形態では、案内部材42の先端42Aがノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出する構成であったが、案内部材42の先端42Aがノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも噴出方向へ突出していない構成であってもよい。具体的には、図7に示すように、案内部材42の先端42Aが、ノズル孔延長部38の噴出口38Aよりも後端側に引っ込んでいても良いし、図8に示すように、案内部材42の先端42Aとノズル孔延長部38の噴出口38Aとの位置が一致していてもよい。
【0058】
また、ノズル10としては、図9に示すように、案内部材42が設けられていない構成であっても良い。この構成では、吸引流路36の吸引口36Aが、ノズル本体12の側壁の外周面に形成されている。
【0059】
また、案内部材42は、図10及び図11に示すように、周方向における一部が、周方向における他の一部に対して、外周側に大きく張り出す構成であっても良い。案内部材42において外周側に張り出す側は、移動機構58における移動方向下流側とされる。
【0060】
ノズル10が移動機構58によって移動しながら塗布液を噴出する場合では、ノズル10の移動方向下流側に浮遊塗布液が多くなるが、図10及び図11に示す構成によれば、その浮遊塗布液を回収しやすくなる。
【0061】
また、ノズル10を複数用いて構成される場合には、案内部材42は、図12及び図13に示すように、複数のノズル孔延長部38(ノズル部40)の外周を一括で囲むように構成しても良い。このように、複数のノズル10に対して案内部材42を共通化することにより、部品点数が低減される。なお、案内部材42は、図13に示すように、ノズル本体12の先端側から見た場合において、対向する長辺と、対向する曲線で囲まれた形状とされているが、案内部材42としては、4辺で囲まれた四辺形状(例えば長方形状)であっても良い。
【0062】
また、本実施形態では、排出口36Bと吸引口36Aとの圧力差によって浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行っていたが、図14に示すように、駆動力を用いて、吸引及び再噴出を行う構成であっても良い。この構成では、各吸引流路36中にポンプ41が設けられている。ポンプ41を駆動することにより、吸引流路36の吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引される。この吸引された浮遊塗布液は、排出口36Bからノズル孔延長部38へ排出され、空気流路28からの空気によって霧状になって、ノズル孔延長部38を通じ被塗布物54へ再び噴出される。また、この構成においては、排出口36Bを管体26につないで、塗布液流路16を通じてノズル孔延長部38から噴出されるように構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態では、浮遊塗布液の吸引及び再噴出を行っていたが、図15に示すように、浮遊塗布液の吸引のみを行う構成であっても良い。この構成では、吸引流路36の排出口36Bは、ノズル孔延長部38に接続されず、ポンプ39に接続されている。ポンプ39を駆動することにより、吸引流路36の吸引口36Aから浮遊塗布液が吸引される。なお、吸引された浮遊塗布液は、例えば、貯留部等に貯留される。
【0064】
(感光体80及びその製造)
次に、塗布装置50によって製造される製造物としての、電子写真機器に使用される感光体80及びその製造について説明する。
【0065】
感光体80は、図16に示すように、基体82と、その外周面上に形成された感光層84と、を備えて構成される。この基体82が、上記の被塗布物54に相当し、感光層84は、基体82へ塗布液が塗布されることで基体82上に形成される塗布膜に相当する。
【0066】
感光体80の基体82としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケルなどの金属のドラム及びシート、紙、プラスチック又はガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス、銅−インジウムなどの金属を蒸着するか、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属酸化物を蒸着するか、金属箔をラミノートするか、又はカーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅などを結着樹脂に分散し、塗工することによっても導電処理したドラム状、シート状、プレート状のものなど、公知の材料が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
感光層84としては、図16に示すように、例えば、電荷発生材料で形成された電荷発生層84Aと電荷輸送材料で形成された電荷輸送層84Bとを備えた機能分離型の積層構造がある。また、感光層84としては、電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単一層構造であってもよい。
【0068】
電荷発生材料としては特に制限はなく、例えば、従来より公知のものが使用される。このような電荷発生材料としては、具体的には、非晶質セレン、結晶性セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等のセレン化合物又はセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系化合物、スクアリウム系化合物、アントアントロン系化合物、ペリレン系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ピレン系化合物、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料又は染料、等が挙げられる。
【0069】
また、電荷輸送材料としては特に制限はなく、例えば、従来より公知のものが使用される。このような電荷輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、芳香族第3級アミノ化合物、芳香族第3級ジアミノ化合物、1,2,4−トリアジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、α−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質;キノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、フルオレノン系化合物、オキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン系化合物、ジフェノキノン系化合物等の電子輸送物質等が挙げられる。
【0070】
更に、感光層84に使用されるバインダ樹脂としては特に制限はなく、従来より公知のものが使用される。このようなバインダ樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0071】
更にまた、感光層84の表面層は、無機フィラー、ポリエチレン粉体、フッ素原子含有樹脂微粒子、硬化型樹脂又はシリコーン樹脂からなる球状樹脂微粉末、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物又はベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物の微粒子、等の微粒子を含有していることが好ましい。表面層が、このような微粒子を含有していると、電子写真感光体の耐摩耗性及び潤滑性が向上する傾向にある。
【0072】
なお、図17に示すように、感光層84と基体82との間に下引き層86を設けてもよい。下引き層86とは、積層構造を有する感光層が帯電した場合に、基体82から感光層84へ電荷が流入することを阻止するとともに、感光層84を基体82に対して一体的に接着保持させる接着層として機能し、更にその材質によっては、基体82の光反射を防止する層を意味する。ここで、下引き層86に使用するバインダ樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、これらのバインダ樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。更に、これらのバインダ樹脂は、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、シリコーン樹脂等の微粒子と混合して使用してもよい。
【0073】
また、感光層84には、酸化防止剤、光安定化剤、熱安定剤等の添加剤を配合してもよい。ここで、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、p−フェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等;光安定化剤としてはベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン及びこれらの誘導体等、が挙げられる。
【0074】
感光層84が電荷発生層84Aと電荷輸送層84Bとを備えた機能分離型の積層構造である場合は、先ず、電荷発生材料及びバインダ樹脂を含有する溶液をノズル10から基体82上に噴出して塗布し、電荷発生層84Aを成膜する。次に、電荷輸送材料を含有する溶液をノズル10から電荷発生層84A上に更に噴出して塗布し、電荷輸送層84Bを成膜する。これにより、感光体80が製造される。
【0075】
なお、電荷発生層84A及び電荷輸送層84Bの成膜の少なくとも一方において、塗布装置50が用いられていれば良い。また、感光体80としては、電荷発生層84A、電荷輸送層84B及び下引き層86以外の機能層を有していてもよく、その場合ではその機能層の成膜において、塗布装置50を用いても良い。
【0076】
ここで、電荷発生材料及び電荷輸送材料を溶解させる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環上又は直鎖状のエーテル類、等が挙げられ、これらの溶剤は単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。また、電荷発生材料及び電荷輸送材料を溶剤に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ダイノミール等を用いた従来より公知の方法が使用される。
【0077】
更に、電荷発生層84A及び電荷輸送層84Bの膜厚に特に制限はないが、電荷発生層84Aの膜厚は、通常0.01〜5μm、好ましくは0.05〜2μmであり、電荷輸送層84Bの膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。
【0078】
感光層84が、電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単一層構造である場合は、電荷輸送材料及び電荷発生材料を分散させた溶液を、ノズル10から基体82上に噴出して塗布する。これにより、感光体80が製造される。ここで、使用する溶剤及び溶剤に分散させる方法としては、例えば、上記の積層型感光層の場合と同様のものが使用される。また、感光層84の膜厚に特に制限はないが、通常5〜100μm、好ましくは10〜40μmである。
【0079】
(有機電界発光素子90及びその製造)
次に、塗布装置50によって製造される製造物としての有機電界発光素子(有機EL素子)90及びその製造について説明する。
【0080】
有機電界発光素子90は、図18に示すように、例えば、透明基板91上に、透明電極(陽極)92、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95、電子輸送層96及び背面電極97(陰極)が順次積層されて構成されている。
【0081】
透明基板91としては、発光を取り出すため透明なものが望ましく、ガラス基板、プラスチックフィルム基板等が用いられる。
【0082】
透明電極92は、透明基板91と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが望ましく、例えば、酸化膜(例えば酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、又は酸化亜鉛等)、金属膜(例えば金、白金、又はパラジウム等)が好適に用いられる。この透明電極92は、例えば、蒸着法、又はスパッタリング法などにより透明基板91上に形成される。
【0083】
正孔注入層93を構成する正孔注入材料としては、例えば、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、銅フタロシアニン、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)又はこれらの混合物が望ましく用いられる。
【0084】
正孔注入層93は、正孔注入材料を含有する溶液がノズル10から透明電極92上に噴出されて塗布されることで、透明電極92上に成膜される。
【0085】
用いる塗布液の溶剤としては、原料有機材料(発光材料、電荷輸送材料等)を溶解させるものであることがよく、且つ、揮発性の有機溶剤であることがよい。この有機溶剤として代表的なものは、例えば、2−メチル−1−プロパノール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0086】
正孔輸送層94を構成する正孔輸送材料としては、例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が望ましく用いられる。
【0087】
正孔輸送層94は、正孔輸送材料を含有する溶液がノズル10から正孔注入層93上に噴出されて塗布されることで、正孔注入層93上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0088】
発光層95を構成する発光材料としては、他の状態よりも固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が挙げられ、例えば、低分子発光材料、又は高分子発光材料が挙げられる。低分子発光材料としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。高分子発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
【0089】
発光層95は、発光材料を含有する溶液がノズル10から正孔輸送層94上に噴出されて塗布されることで、正孔輸送層94上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0090】
電子輸送層96を構成する電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、又はフルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。
【0091】
電子輸送層96は、電子輸送材料を含有する溶液がノズル10から発光層95上に噴出されて塗布されることで、発光層95上に成膜される。用いる塗布液の溶剤としては、例えば、上記の有機溶剤が用いられる。
【0092】
背面電極97は、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に望ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム、又はこれらの合金が挙げられる。背面電極97は、例えば、蒸着法や、スパッタリング法などにより電子輸送層96上に形成される。
【0093】
なお、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95及び電子輸送層96の成膜の少なくとも一方において、塗布装置50が用いられていれば良い。また、有機電界発光素子90としては、正孔注入層93、正孔輸送層94、発光層95及び電子輸送層96以外の機能層を有していてもよく、その場合では、その機能層の成膜において、塗布装置50を用いても良い。さらに、有機電界発光素子90としては、発光層95を有していれば、正孔注入層93、正孔輸送層94及び電子輸送層96を有していない構成であっても良い。
【0094】
[実施例]
以下、実施例および比較例を示して、具体的に説明する。但し、特にこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例において製造された感光体について、富士ゼロックス株式会社のデジタルコピー機(Apeos Port III C4400)を使用し、次の判定基準により「画像品質」、「塗膜欠陥・異物付着」を評価した。
【0095】
「画像品質」は、目視により出力画像の濃淡ムラ、画像欠陥、画像汚れのないものを○、わずかに発生を△、発生を×として判定した。また、「塗膜欠陥・異物付着」は、塗布済みの感光体の表面を目視判定し、発生なしを○ 、わずかに発生を△、発生を×とした。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、以下のように、感光体の基体を作成した。まず、ダイヤモンドバイトを用いた鏡面旋盤により、直径84mm、長さ340mm、厚さ1mmのアルミニウムパイプに鏡面切削加工を行い、表面粗さRa(JIS B0601(2001)に規定されている算術平均粗さ)が0.04μmである平滑面に表面を仕上げた。次に、この基体に対して、湿式のブラストを用いて粗面化処理を行なった。
【0097】
次に、支持体に保持された基体をロボットにより洗浄処理槽に移動させた後、支持体の軸とリングノズルの中心とが一致するように配置して、イオン交換水を用いて洗浄処理を行った。
【0098】
上記の方法により粗面化処理を行なった基体を用いて、以下の手順に従って感光体を製造した。
【0099】
先ず、有機ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、松本製薬(株)製)100重量部、シランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカー(株)製)10重量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学(株)製)10重量部及びn−ブチルアルコール130重量部を混合して塗布液を調製した。得られた塗布液を浸漬塗布法により基体表面に塗布し、140℃で15分間加熱して、膜厚1.0μmの下引き層を成膜した。
【0100】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学(株)製)の2重量%シクロヘキサノン溶液と、ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料(特開平5−263007号公報に記載のもの)とを、顔料と樹脂との比が2:1となるように混合し、サンドミルにより3時間分散処理を行なった。得られた分散液を更に酢酸n−ブチルで希釈して下引き層上に浸漬塗布し、膜厚0.15μmの電荷発生層を成膜した。
【0101】
次に、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(m−トリル)ベンジジン4重量部及びポリカーボネートZ樹脂6重量部をモノクロロベンゼン36部に溶解させ、得られた溶液を電荷発生層上に、塗布装置50によって塗布し、連続500本のスプレー塗工を行った。その後、115℃で40分間乾燥して、膜厚24μmの電荷輸送層を成膜して感光体を得た。
【0102】
実施例1では、案内部材42の先端42Aと塗布液流路16の噴出口38Aとの位置が一致した(ギャップg(図4参照)が0mm)ノズル10を用いた(図8参照)。
【0103】
(実施例2)
実施例2では、案内部材42の先端42Aが塗布液流路16の噴出口38Aよりも5mm引っ込んだ(ギャップg(図4参照)が−5mm)ノズル10を用いて(図7参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0104】
(実施例3)
実施例3では、案内部材42の先端42Aが塗布液流路16の噴出口38Aよりも5mm突出した(ギャップg(図4参照)が+5mm)ノズル10を用いて(図4参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0105】
(実施例4)
実施例4では、案内部材42が設けられていないノズル10を用いて(図9参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0106】
(比較例)
比較例では、吸引流路36が設けられていないノズル100を用いて(図19参照)、実施例1と同様に塗布を行った。
【0107】
この結果、図20の結果表に示すように、「塗膜欠陥・異物付着」は、実施例1、2、4でわずかに発生し、実施例3では発生せず、比較例では発生した。「画像品質」は、実施例1、3で、濃淡ムラ・画像欠陥・画像汚れがなく、実施例2では濃淡ムラ・画像欠陥・画像汚れがわずかに発生した。
【0108】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 ノズル
23 噴出流路
36 吸引流路
36A 吸引口
36B 排出口
38A 噴出口
42 案内部材
54 被塗布物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物に液滴を噴出する噴出流路と、
前記噴出流路から噴出されて浮遊する液滴を吸引口から吸引する吸引流路と、
を備えるノズル。
【請求項2】
前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じている請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記吸引流路は、前記吸引口の断面積よりも前記吸引口の下流に設けられた排出口の断面積が狭い請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じ、
前記吸引流路で吸引された液滴が前記噴出流路から再噴出される請求項1に記載のノズル。
【請求項5】
前記吸引流路は、前記噴出流路での噴出に伴って生じる前記吸引口と前記排出口との圧力差によって前記液滴を吸引する請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
前記吸引口の外周に設けられ、前記液滴を前記吸引口へ案内する案内部材を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のノズル。
【請求項7】
前記案内部材の先端が、前記噴出流路の噴出口よりも噴出方向へ突出している請求項6に記載のノズル。
【請求項8】
被塗布物に対して液滴を噴出する噴出工程と、
前記噴出工程で噴出されて浮遊する液滴を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程で吸引した液滴を前記被塗布物に対して再噴出する再噴出工程と、
を備える塗布膜の製造方法。
【請求項1】
被塗布物に液滴を噴出する噴出流路と、
前記噴出流路から噴出されて浮遊する液滴を吸引口から吸引する吸引流路と、
を備えるノズル。
【請求項2】
前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じている請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記吸引流路は、前記吸引口の断面積よりも前記吸引口の下流に設けられた排出口の断面積が狭い請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記吸引流路は、前記吸引口の下流に設けられた排出口が前記噴出流路と通じ、
前記吸引流路で吸引された液滴が前記噴出流路から再噴出される請求項1に記載のノズル。
【請求項5】
前記吸引流路は、前記噴出流路での噴出に伴って生じる前記吸引口と前記排出口との圧力差によって前記液滴を吸引する請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
前記吸引口の外周に設けられ、前記液滴を前記吸引口へ案内する案内部材を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のノズル。
【請求項7】
前記案内部材の先端が、前記噴出流路の噴出口よりも噴出方向へ突出している請求項6に記載のノズル。
【請求項8】
被塗布物に対して液滴を噴出する噴出工程と、
前記噴出工程で噴出されて浮遊する液滴を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程で吸引した液滴を前記被塗布物に対して再噴出する再噴出工程と、
を備える塗布膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−5949(P2012−5949A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143763(P2010−143763)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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