説明

ノック式塗布具

【課題】 高粘度の内容物の繰出す際に、ノック力の損失を防ぎつつ操作感をさらに軽くでき、かつ部品点数を削減しかつ製造を容易化できるノック式塗布具を提供する。
【解決手段】 ノック操作により前記繰出し体20を前進させたときは、繰出し体のガイド溝20aおよび突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の一方向への回転動作に変換し、伝達カム体18のカム部18aが回転カム体16の後部のカム部16bに噛合って、前記伝達カム18体の回転で回転カム体16を回転作動させて前記ネジ軸14の前進でピストン12を前進させ、一方、ノック操作の解除により、スプリング18c弾発力で繰出し体20を後退させ、ガイド溝20aおよび突起部18bによって当該後退動作を伝達カム体18の他方向への回転動作に変換して原位置に復帰し、前記回転カム体16さらにピストン12の作動が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作によって化粧料、修正液、インキ等、特に、高粘度の化粧液等の液状の内容物を繰出して塗付体に供給するノック式塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノック式化粧品、ノック式筆記具等のノック式繰出し容器では、軸筒内の収容部に内容物を収容して、使用者がノックすることによって、その内容物の繰出しを行っている。その繰出しの際には、軸筒後端に設けたノック部をノックすることによってカム体を介してネジ棒を前進させ、ネジ棒前端のピストンを前進させることによって、上記の内容物を塗付体に向けて繰出している。
【0003】
ノック式塗布具に関して、例えば、特開2001−232273号(特許文献1)では、ノック体をノックさせることにより傾斜溝に沿ってノックカムを回転させ、ノックカムの回転によって回転カムを介してネジ棒を回転させる。そして、そのネジ棒の前端に設けたピストンをタンク内で前進させてタンク内の液体を先端塗付体に向けて押し出す構造になっている。
【0004】
また、特開2005−206165号(特許文献2)では、本体に対して着脱可能に装填されたカートリッジと、カートリッジ内のピストンを前方に押し出す操作体とを設け、チャック内面の雌ネジに螺合したネジ棒の先端にピストンを設けて、操作体の回転によってネジ棒を回転させて前進させ、これによってピストンを前進させて内容物を繰出す構造となっている。
【0005】
また、国際公開WO2009/125868号(特許文献3)では、天冠の力を回転の力に変換する機構部と、軸本体に固定したネジ体と、ネジ体に螺合したネジ棒を有し、上記機構部が変換した回転の力(カムの回転の力)でネジ体を介してネジ棒を前進させ、収容部内の内容物をピストンで繰出す構造になっている。
【0006】
なお、特開2008−179000号(特許文献4)は、ノック機構を備えた筆記具において、ノック部内と軸筒の間に外界から密閉され、かつノック部の押し出し操作により容積が変化するダンパー空間を設けて、通常の動作を妨げずに衝撃緩衝作用を実現可能な筆記具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−232273号公報
【特許文献2】特開2005−206165号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/125868号公報
【特許文献4】特開2008−179000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高粘度の内容物の繰出しの場合に、ノック力の損失を防ぎつつ操作感をさらに軽くし、それと共に、部品点数を削減しかつ製造を容易化するという要請があり、従来はその要請に充分に応えなかった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、高粘度の内容物の繰出す際に、ノック力の損失を防ぎつつ操作感をさらに軽くでき、それと共に、部品点数を削減しかつ製造を容易化できるノック式塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塗布液を軸筒内に貯蔵して、軸筒内を摺動するピストンの後部に周面が雄ネジのネジ軸を係合させ、繰出し機構への繰出し操作によってネジ軸を介してピストンを前進させて軸筒内の塗布液を軸筒先端の塗付体に供給するようにしたノック式塗布具において、
前記繰出し機構は、
前部および後部にカム部が形成された回転カム体と、
回転カム体の後部のカム部に噛合うためのカム部が前部に形成され、かつ、側面部に突起部の形成された伝達カム体と、
前記伝達カム体の突起部をガイドするガイド溝が軸方向に対して斜めに形成され、かつ、前記軸筒との相対回転が規制された繰出し体と、
前記繰出し体を後向きに弾発しおよび伝達カム体を前向きに弾発するスプリングと、
後方向きのカム部が形成され、かつ、軸筒との相対回転の規制された固定カム体とを有したものであって、
前記回転カム体および固定カム体のうちの一方にネジ軸との相対回転が規制される係止構造を形成し、他方に前記ネジ軸に螺合するネジ部を設けて、前記回転カム体の回転を係止構造、ネジ部およびネジ軸の協働によって前記ネジ軸を軸筒に対して前進させる運動に変換してピストンを前進させるものであり、
ノック操作により前記繰出し体を前進させたときは、前記ガイド溝および突起部によって当該前進動作を伝達カム体の一方向への回転動作に変換し、伝達カム体のカム部が回転カム体の後部のカム部に噛合って、前記伝達カム体の回転で回転カム体を回転作動させることによって、前記ネジ軸を前進させてピストンを前進させ、
一方、前記ノック操作で前記繰出し体を前進させた後に当該ノック操作を解除したことにより、繰出し体がスプリングの弾発力で後退し、前記ガイド溝および突起部によって当該後退動作を伝達カム体の他方向への回転動作に変換して原位置に復帰し、それと共に、回転カム体の前部のカム部が前記固定カム体のカム部に噛合って、前記回転カム体の回転作動が規制されて前記ネジ軸およびピストンの作動が規制されたことを特徴とするノック式塗布具である。
【0011】
本発明においては、前記固定カム体の後部にはそのカム部を囲んで後方に向かう筒状部が延在し、この筒状部内に回転カム体、伝達カム体、繰出し体およびスプリングを配置したことが好適である。
【0012】
本発明においては、ネジ軸は、横断面視で周の一部を切り欠いた異形形状を呈しており、
前記回転カム体には、ネジ軸を通してネジ軸との相対回転を規制しかつ軸方向移動可能にする異形孔が形成され、
伝達カム体のカム部および前記回転カム体の後ろ向きカム部は、互いが当接状態の際に、伝達カム体が一方向に回転したときに噛み合い、逆に、伝達カム体が他方向に回転したときに噛み合いが容易に外れる鋸歯形状に形成されており、
前記固定カム体には、中心軸部にネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジが形成され、後方向きのカム部に前記回転カム体の前向きカム部が対向し、
回転カム体の前向のカム部および前記固定カム体の後方向きのカム部は、互いが当接状態の際に、回転カム体が他方向に回転したときに噛み合い、逆に、回転カム体が一方向に回転したときに噛み合いが容易に外れる鋸歯形状に形成されており、
前記繰出し体が固定カム体との相対回転の規制された状態で、軸方向に一定範囲で移動可能に配設され、
前記繰出し体を前方向に押圧操作したときに、前記スプリングの弾発力に抗して前記繰出し体が前方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が一方向に回転し、
伝達カム体の一方向の回転が、伝達カム体および回転カム体の互いに当接するカム部同士が噛合い、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および前記固定カム体の後方向きのカム部の噛み合いが外れることにより回転カム体の回転に伝達され、この回転カム体の回転によってネジ軸が回転して前記固定カム体の雌ネジの作用によって前進し、
前記繰出し体の押圧操作を解除したときに、前記スプリングの弾発力により繰出し体が後方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が他方向に回転し、
伝達カム体および回転カム体の互いに当接するカム部同士の噛合いが外れ、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および固定カム体の後方向きのカム部同士が噛み合うことにより、伝達カム体の他方向への回転が回転カム体に伝達されないようにしたことが好適である。
【0013】
本発明において、ネジ軸は、横断面視で周の一部を切り欠いた異形形状を呈しており、
前記回転カム体には、ネジ軸を通してネジ軸との相対回転を規制しかつ軸方向移動可能にする異形孔が形成され、
前記固定カム体には、前方部に中心軸部にネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジが雌ネジ部が前方に突出形成された概略筒状を呈し、
その雌ネジ部は前端から後方向きに切り込みが形成されたものであって、ネジ軸の装着の際に雌ネジ部は切り込みが開くように弾性変形して全体が拡径するものであることが好適である。
【0014】
本発明において、前記繰出し体のガイド溝は、当該ガイド溝に突起部を嵌めて周方向に伝達カム体を回転させる範囲が、伝達カム体および回転カム体の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体の前向きのカム部および前記固定カム体の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチよりも長くなるように形成したことが好適である。
本発明において、伝達カム体および回転カム体の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体の前向きのカム部および前記固定カム体の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチが同じであり、かつ、回転カム体の後ろ向きのカム部と前向きのカム部の歯の位相がズレていることが好適である。
本発明において、繰出し体の外周と固定カム体の筒状部内周との間にリング状の弾性体が周状に位置していることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のノック式塗布具によれば、繰出し機構において、繰出し体のガイド溝が軸方向に対して角度を持って斜めに形成されていて、ノック操作により前記繰出し体を前進させたときは、前記ガイド溝および突起部によって当該前進動作を伝達カム体の一方向への回転動作に変換し、伝達カム体のカム部が回転カム体の後部のカム部に噛合って、前記伝達カム体の回転で回転カム体を回転作動させて前記ネジ軸の前進でピストンが前進し、一方、ノック操作の解除により、スプリングの弾発力で繰出し体を後退させたときは、前記ガイド溝および突起部によって当該後退動作を伝達カム体の他方向への回転動作に変換して原位置に復帰し、かつ、回転カム体の前部のカム部が前記固定カム体のカム部に噛合って、前記回転カム体の回転作動が規制されて前記ネジ軸およびピストンの作動が規制されたので、繰出し体のノック操作したときの力をピストンの押圧力に力のロス無く伝えることができ、高粘度の内容物の繰出しの場合に、ノック力の損失を防ぎつつ操作感をさらに軽くできる。
【0016】
それと共に、固定カム体の後部に後方向きのカム部を設けたので、このカム部を別体に設けていないことから、別体に設けた従来品(例えば、特開2001−232273号公報)に比較して部品点数を削減できかつ製造を容易化できる。
【0017】
なお、前記固定カム体の後部にはそのカム部を囲んで後方に向かう筒状部が延在し、この筒状部内に、回転カム体、伝達カム体、繰出し体およびスプリングを配置してコンパクト化および一体化を図ることができ、一体化できることから部組し易く、かつ、部組して軸筒に入れればよいので製造の容易化、生産コストの低減かを確実に図ることができる。
【0018】
また、繰出し体を前方向に押圧操作したときに、前記スプリングの弾発力に抗して前記繰出し体が前方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が一方向に回転し、伝達カム体の一方向の回転が、伝達カム体および回転カム体の互いに対向するカム部同士が噛合い、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および前記固定カム体の後方向きのカム部の噛み合いが外れることにより回転カム体の回転に伝達され、この回転カム体の回転によってネジ軸が回転し前記ネジ部の雌ネジの作用によって前進し、
前記繰出し体の押圧操作を解除したときに、前記スプリングの弾発力により繰出し体が後方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が他方向に回転し、伝達カム体および回転カム体の互いに当接するカム部同士の噛合いが外れ、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および固定カム体の後方向きのカム部が噛み合うようにしたことにより、伝達カム体の他方向への回転が回転カム体に伝達されないようにして繰出し体の押圧操作(ノック操作)の繰り返しによってピストンをスムーズに押し出すことができる。
【0019】
本発明において、ネジ軸は、横断面視で周の一部を切り欠いた異形形状を呈しており、
前記回転カム体には、ネジ軸を通してネジ軸との相対回転を規制しかつ軸方向移動可能にする異形孔が形成され、前記固定カム体には、前方部に中心軸部にネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジが雌ネジ部が前方に突出形成された概略筒状を呈したものにして、その雌ネジ部は前端から後方向きに切り込みが形成されたものであって、ネジ軸の装着の際に雌ネジ部は切り込みが開くように弾性変形して全体が拡径するものにすれば、ネジ軸を回して雌ネジ部にネジ込む必要なく組付けができるので、製造ラインにおいて容易かつ確実な装着を可能にして作業負荷を格段に軽減させることができる。
【0020】
また、本発明において、伝達カム体および回転カム体の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体の前向きのカム部および前記固定カム体の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチが同じであり、かつ、回転カム体の後ろ向きのカム部と前向きのカム部の歯の位相がズレて形成すれば、繰出し体のノック操作前に回転カム体のカム歯が筒状部のカム歯に嵌り込んでいる状態であり、繰出し体のノック操作時に伝達カム体のカム部が回転カム体の後ろ向きの歯と位相がずれているので、繰出し体の前進で伝達カム体か回転する。そして、繰出し体のノック解除時に確実に回転カムとカム部同士が噛み合い、回転カムの戻り回転するのを確実に防ぐことができる。
【0021】
また、本発明において、繰出し体の外周と固定カム体の筒状部内周間にリング状の弾性体が周状に位置しているものにすれば、リング状の弾性体が繰出し体から後方への気密を確保して内容物の乾燥や変質を確実に防止することができる等の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布具のキャップ装着状態の全体図で、(a)が斜視図、(b)が側方視図である。
【図2】図1の塗布具のキャップを外した状態の全体図で、(a)が斜視図、(b)が側方視図である。
【図3】同塗布具の作動を説明する全体縦断面図で、(a)がピストンの前進限状態(塗付繰出し終了時状態)、(b)が繰出し体の非ノック時の状態(通常時)、(c)が繰出し体のノック時の状態をそれぞれ示す。
【図4】同塗布具の繰出し機構における、ピストン、ネジ体、ネジ軸、回転カム体、伝達カム体、スプリング、および繰出し体を部組した状態の説明図であって、(a)が一側面側から見た斜視図、(b)が他側面側から見た斜視図、(c)が(a)状態での縦断面図、(d)が同側面図、(e)が(b)状態での縦断面図、(f)が同側面図である。
【図5】同塗布具の繰出し機構における、(図4の状態からネジ体を除いた)ネジ軸、回転カム体、伝達カム体、スプリング、および繰出し体を部組した状態の説明図であって、(a)が前方側から見た斜視図、(b)が縦断面図、(c)が90°回転させて側面図、(d)さらに90°回転させた側面図、(e)が(d)の状態の縦断面図、(f)が後方側から見た斜視図である。
【図6】同塗布具の繰出し機構におけるネジ体の説明図であって、(a)が前方視図、(b)が前方側から見た斜視図、(c)が縦断面図、(d)が90°回転させた側面図、(e)がさらに90°回転させた側面図、(f)が(d)の状態の縦断面図、(g)が後方視図、(h)が(c)のA−A線に沿う断面図、(i)が後方側から見た斜視図である。
【図7】同塗布具の繰出し機構におけるカム動作を説明するネジ体、回転カム体、伝達カム体、および繰出し体の模式図による動作説明図であって、(a)が各部の説明図,(b)が初期状態の図、(c)のノックの開始時の状態の図をそれぞれ示す。
【図8】同塗布具の繰出し機構におけるカム動作を説明する図7に続く動作説明図であって、(a)がノックを最後までしたときの状態図、(b)がノックを解除して戻り始めた状態の図、(c)がノックが完全に戻って初期状態となった状態図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図8は発明の実施形態に係る塗布具の説明図であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る塗布具のキャップ装着状態の全体図、図2は、同塗布具のキャップを外した状態の全体図、図3は、同塗布具の作動を説明する全体縦断面図、で図4は、同塗布具のピストン、ネジ体、ネジ軸、回転カム体、伝達カム体、スプリング、および繰出し体からなる繰出し機構を部組した状態の説明図、図5は、同塗布具の繰出し機構における、(図4の状態からネジ体を除いた)ネジ軸、回転カム体、伝達カム体、スプリング、および繰出し体を部組した状態の説明図、図6は、同塗布具の繰出し機構におけるネジ体の説明図、図7は、同塗布具の繰出し機構におけるカム動作を説明するネジ体、回転カム体、伝達カム体、および繰出し体の模式図による動作説明図、図8は、同塗布具の繰出し機構におけるカム動作を説明する図7に続く動作説明図である。
【0025】
実施形態に係るノック式塗布具は、図1〜図6に示すように、塗布液を貯蔵する軸筒(後軸)10と、軸筒10内を摺動するピストン12と、周面に雄ネジが形成され当該ピストン12の後部に係合させたネジ軸14とを有して、使用者が繰出し機構について、軸筒10内に没する方向へ繰出し体20をノック操作(繰出し操作)することによってネジ軸14を介してピストン12を前進させて軸筒10内の塗布液を軸筒10先端の塗付体24に供給するようにしたものである。
【0026】
前記ノック式塗布具は、繰出し機構Aに、ネジ軸14との相対回転が規制され、前部および後部にそれぞれカム部16aおよび16bの形成された回転カム体16と、回転カム体16の後部のカム部16bに噛合うためのカム部18aが前部に形成され、かつ、側面部に突起部18bの形成された伝達カム体18と、伝達カム体18の突起部18bをガイドするガイド溝20aを有し、かつ、前後動によってガイド溝20aおよび突起部18bを介して前記伝達カム体18を回動させる前記繰出し体20と、前記繰出し体20を後向きに弾発しおよび伝達カム体18を前向きに弾発するスプリング18cと、伝達カム体18、回転カム体16、スプリング18c、ネジ軸14、および繰出し体20を内蔵し、かつ、内部に後方向きのカム部22cが一体形成された筒状部22aを後部に、および前記ネジ軸14に螺合するネジ部22bを前部に有するネジ体(「固定カム体」に相当)22とを設けたものである。なお、ネジ体22とネジ軸14との相対回転を規制し、回転カム16とネジ軸14とを螺合する構成の繰出し機構にしてもよい。
【0027】
そして、前記繰出し体20のガイド溝20aが軸方向(塗布具の前後方向)に対して角度を持って斜めに形成されている。
【0028】
上記ノック式塗布具においては、繰出し機構Aに対して、ノック操作により前記繰出し体20を前進させたときは、前記ガイド溝20aおよび突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の一方向(実施形態では軸前方向き右回転方向)への回転動作に変換し、伝達カム体18のカム部18aが回転カム体16の後部のカム部16bに噛合って、前記伝達カム18体の回転で回転カム体16を回転作動させて前記ネジ軸14の前進でピストン12が前進し、一方、ノック操作の解除により、スプリング18cの弾発力で繰出し体20を後退させたときは、前記ガイド溝20aおよび突起部18bによって当該後退動作を伝達カム体18の他方向(実施形態では軸前方向き左回転方向)への回転動作に変換して原位置に復帰し、かつ、回転カム体16の前部のカム部16aが前記筒状部22のカム部22cに噛合って、前記回転カム体16の回転作動が規制されて前記ネジ軸14およびピストン12の作動が規制されたものである。
【0029】
図1〜3に示すように、前記ノック式塗布具において、塗付体24は先軸26によって軸筒(後軸)10の先端部10aに取り付けられている。塗付体24は、樹脂製の繊維束または多孔質体等塗布液を含浸して塗付可能な材質なら特に指定しないが、実施形態では、その後端部が熔融によって束ねられてフランジ状を呈している。
【0030】
軸筒10の塗布液収容部10bに収容する塗布液は化粧液、筆記具用インク、薬品溶液であるが、特に高粘度(好ましくは粘度300Pa・s以上)の化粧液の場合に繰出し性の容易差が大きい。
【0031】
また、軸筒(後軸)10の先端部10aが軸筒10内の塗布液収容部10bの部分よりも段状に細径に形成されている。その先軸26及び塗付体24を覆って軸筒10の先端部10aに着脱可能に自在にキャップ28が嵌められる。先軸26の軸筒10先端部10a内に嵌入している箇所の内側部に継手30があり、継手30の先端部と先軸26内面部で前記塗付体24の後端部のフランジを挟み付けて、塗付体24を固定している。その継手30の中央孔からSUSや樹脂製のパイプ32が塗付体24内に延びて配置され、パイプ32によって塗付体24先端部に向けて塗布液を流通可能にしている。
【0032】
前記軸筒10の先端部10aの段状に細径に成る部分(段差部10c)の外周面側は、その前方向き面にキャップ28が当接する。また、当該段差部10cの内周面側は、その後方向き面が、塗布液収容部10b内に面しており、その後方向き面には、ピストン12が前進端時に当接して位置規制する。
【0033】
前記軸筒10の前方部内が上記の塗布液収容部10bになり、後方部内に、当該塗布液収容部10b内でピストン12を前進させて塗布液を塗付体24に向けて繰出す機能を有する、ネジ体22、ネジ軸、回転カム体16、伝達カム体18、スプリング18c、および繰出し体20からなる繰出し機構Aを配設している。
【0034】
以下に繰出し機構Aの構造を説明する。
【0035】
前記繰出し体20は、後端の閉鎖された概略筒状を呈し、その前部の二つの櫛歯状に延びた部分に内外周面を貫通してガイド溝20aが軸方向に対して角度を持って斜めに形成されている。繰出し体20は、その閉鎖された後端面外周を使用者がノック操作することにより、前記繰出し体20を前進させたときに前記ガイド溝20aおよび伝達カム体18側面の突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の回転動作に変換し、当該伝達カム体18の回転によって回転カム体16を回転作動させて前記ネジ軸14を前進させて、ピストン12を前進させるようにしたものである。
【0036】
なお、繰出し体20の後側の側部に弾性変形可能なカンチレバー状の腕部外側に突起20bが形成されている。また、繰出し体20の中央部の外周面には、全周にシール溝20cが形成されていて、ゴム若しくはエラストマー、または、シリコーン製のOリングなどの弾性体からなるリング状のシール体34が嵌め込まれて、その繰出し体20の外周とネジ体22の筒状部22a内周間に位置している。繰出し体20および筒状部22a間の気密を維持するようにしている。
【0037】
前記回転カム体16には、軸方向前方部および後方部のそれぞれに前向きおよび後ろ向きのカム部16aおよび16bがそれぞれ形成されると共に、前記伝達カム体18の前方部に形成されたカム部18aが前記回転カム体16の後ろ向きカム部16bに対向して配設されている。具体的には、回転カム体16は、概略円柱状を呈し前方部端面に前向きカム部16aが形成され、後方部では筒状に前方に潜り込んだ途中部にカム部16bが形成される。また、伝達カム体18の前方部はやや細径になって回転カム体16の筒状の後部内に差し込まれて伝達カム体18前方部のカム部18aがカム部16bに対向する。
【0038】
伝達カム体18のカム部18aおよび前記回転カム体16の後ろ向きカム部16bは、互いが当接状態の際に、伝達カム体18が一方向に回転したときに噛み合い、逆に、伝達カム体18が他方向に回転したときに噛み合いが容易に外れるように、鋸歯形状に形成されている。具体的には、後述の図7の概略示すように、伝達カム体18のカム部18aが斜面の一方向(例:右回転方向)に傾いた三角状の山の複数形成された鋸歯であり、前記回転カム体16の後ろ向きカム部16bが斜面の他方向(例:左回転方向)に傾いた三角状の山の複数形成された鋸歯である。
【0039】
ネジ体22は、図6に示すように前後の開放した概略筒状を呈し、前方のネジ部(「雌ネジ部」に相当)22bは筒状部22aよりも段状に細径になっている。ネジ部22bは筒状部22a前端から概略筒状に延びているが、軸方向に切り込まれた先割れ部22b1によって二股状に分かれて形成され、径方向に弾性変形可能になっている。ネジ部22bの内周部にはネジ軸14に螺合可能な複数条(例えば、1〜3条)の雌ネジ山22b2が内向きに突出形成されている。また、ネジ部22bの外周部には、軸筒10内周面に当接するためのフランジ状の羽根部22b3が形成されている。
【0040】
前記筒状部22aの外周部には、軸筒10に対して回り留めするためにスリット溝(またはスプライン溝)22a2が軸方向に延在するように形成されている。なお、スリット溝22a2途中に窓部22a1が位置して形成されている。
【0041】
上記の先割れ部22b1でネジ部22bが二股状になっているので、ネジ軸14の組付けに際して、ネジ軸14をネジ部22b内に押し込めばネジ部22bが弾性変形して装着できる。したがって、ネジ軸14を回してネジ部22bにネジ込む必要なく組付けができるので、製造ラインにおいて容易かつ確実な装着を可能にして作業負荷を格段に軽減させることができる。
【0042】
また、前記ネジ体22には、ネジ部22bより後方の筒状部22a内に後方向きに傾斜面の複数からなるカム部22cが形成されて、その後方向きのカム部22cに前記回転カム体16の前向きカム部16aが対向して配置されている。
【0043】
ネジ体22の筒状部22a内部に傾斜面によって後方向きのカム部22cを形成するので、繰出し機構におけるカム体を別途に設けることなくカム部を形成でき、カム体を別途に設けた場合に比較して部品点数を削減できる。また、ネジ部22bは、内側の雌ネジ山22b2がネジ軸14と螺合し、外周部の羽根部22b3が軸筒10内との接触部に当り、一部薄肉になっている羽根部22b3を形成することで、成形時に引けによるネジ体22が開いてしまうのを防止している。羽根部22b3は軸筒10内面全周と当接するように組付けている。羽根部22b3の枚数は、塗布液の充填量を満足しかつ開き防止の両立から2枚が好ましい。また、先割れ部22b1の形成により、成形金型の設計の自由度が向上するため、コストダウンに繋げることができる。
【0044】
筒状部22aの窓部22a1は、繰出し体20の突起20bと係止する構造となっており、繰出し体20を押圧した際を押圧した際に、繰出し体20が回らないようになっている。吐出不良を防ぐことができる。
【0045】
スリット溝22a2は、軸筒10内に形成した突起とスプライン状に嵌合し係止する構造となっていて、ネジ体22の回り止めすることによってノック時の回転不良を防止している。この構成はノック式塗布具でなく回転式、スライド式の塗布具にも応用できる。
【0046】
回転カム体16の前向のカム部16aおよび前記ネジ体22の筒状部22a内の後方向きのカム部22cは、互いが当接状態の際に、回転カム体16が他方向に回転したときに噛み合い、逆に、回転カム体16が一方向に回転したときに噛み合いが容易に外れる鋸歯形状に形成されている。具体的には、後述の図7の概略示すように、回転カム体16の前向のカム部16a斜面の一方向(例:右回転方向)に傾いた三角状の山の複数形成された鋸歯であり、前記ネジ体22の筒状部22a内の後方向きのカム部22cが斜面の他方向(例:左回転方向)に傾いた三角状の山の複数形成された鋸歯である。
【0047】
前記筒状部22a内に、前記繰出し体20がネジ体22との相対回転の規制された状態で、軸方向に一定範囲で移動可能に配設される。この相対回転の規制は、具体的には、図4、図5に示すように、繰出し体20の側部に弾性変形可能なカンチレバー状の腕部外側に突起20bが形成され、その突起20bが筒状部22aの軸方向に長い窓部22a1に前後動可能に嵌り込んでいる構成によるものである。また、伝達カム体18の突起部18bがガイド溝20aに嵌り、かつ、前記繰出し体20及び伝達カム体18との間にスプリング18cが介装されて互いを弾発した構造になっている。スプリング18cは、金属または樹脂等によって製作したコイルスプリングが好適である。
【0048】
次に、上記した実施形態のノック式塗布具の作動を図3、図7〜図8を参照して説明する。
【0049】
図3(b)と図7(a)および(b)に示すものは、ノック式塗布具の非ノック時の状態(原位置)である。
【0050】
図7(a)に示すように、ノック式塗布具においては、繰出し体20の後端面外周を使用者がノック操作することにより、図3(c)に示すように、前記繰出し体20を前進させる。そのときに前記ガイド溝20aおよび伝達カム体18側面の突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の回転動作(一方向:符号Fで示す)に変換する。伝達カム体18の回転角が図中のθで示し、繰出し体20のノックストロークを符号Lで示している。
【0051】
当該伝達カム体18の回転によって回転カム体16を一方向に回転作動させて、前記ネジ軸14を前進させて、ピストン12を前進させる。一方、押圧の解除によって繰出し体20が後方に戻り、かつ、伝達カム体18が他方向に回転して原位置に戻る。
【0052】
詳しくは、図7(b)〜(c)から図8(a)に示すように、まず、前記繰出し体20を前方向に押圧操作したときに、前記スプリング18cの弾発力に抗して前記繰出し体20が前方に移動する。これによってガイド溝20aに沿って突起部18bが摺動して前記伝達カム体18が一方向に回転する。この伝達カム体18の一方向への回転が、伝達カム体18および回転カム体16の互いに当接するカム部18aおよび16b同士が噛合って回転カム体16が回転する。そして、図7(c)に示すように、繰出し体20が下死点に到達する前に、回転カム体16の前方向きのカム部16aの歯が前記筒状部22a内の後方向きのカム部22cの歯を1ピッチ以上進んだところで乗り越えて、図8(a)に示すように、下死点に到達したら次のピッチの歯に嵌る。
【0053】
これにより、回転カム体16の回転に伝達され、この回転カム体16の回転によってネジ軸14が回転し前記ネジ部22bの雌ネジ(雌ネジ山)22b2の作用によって前進する。このネジ軸14の前進によって、ピストン12が塗布液収容部10b内を前進して塗布液を塗付体24に向けて繰出す。
【0054】
一方、前記繰出し体20の押圧操作を解除したときに、図8(a)〜(c)の順に示すように、前記スプリング18cの弾発力により繰出し体20が後方に移動することによってガイド溝20aに沿って突起部18bが摺動して前記伝達カム体18が他方向(Fの反対方向)に回転する。この回転カム体16の前方向きのカム部およびネジ体22の筒状部22a内の後方向きのカム部の歯同士が噛み合って、回転カム体16の回転が規制されるので、伝達カムのみが回転する(図8(b)〜(c)参照)。そして、前記伝達カム体18および回転カム体16の互いに当接するカム部18aおよび16bの歯同士の噛合いが外れて、歯を1ピッチ以上進んだところで乗り越えて次のピッチの歯に嵌ることにより、伝達カム体18の他方向への回転が回転カム体16に伝達されず、回転カム体16において1ピッチ隣の歯に嵌る。その際は、図8(c)に示す1ピッチ戻った初期状態になる。
【0055】
ここで、上記回転角θについて条件を考える。
繰出し体20のノックストロークLだけノックすると、伝達カム体18は回転角θ度回転する。伝達カム体18と回転カム体16(後部カム部16b)の1山の回転角をBとすると、「θ>B」の関係が必要である。
【0056】
すなわち、回転角θが1山の回転角Bより大きないと、カム部の山を乗り越えられないからである。
また、最後までノックしたとき回転カム体16の前方向きかムン部16aがネジ体22のカム部22cを乗り越えて進んだ角度をCとし、同様にノックを元に戻したときに回転カム体16が伝達カム体18を乗り越えてからさらに進んだ角度をAとすると
θ=A+B+Cであり、余分に回転するAやCを適宜設定することで、「θ>B」とすることができる。
【0057】
AやCが小さいと(少ないと)部品の公差やバラツキでカムを乗り越えられない場合があり、多くしすぎると無駄にノックストロークを増やさねばならず効率的でない。
一つの実施例を考えると、カムは16等配とすれば、B=360/16=22.5度となる。AとCは5.55度に設定すれば、ノックによる回転角はθ=22.5+5.55+5.55=33.6度になる。
【0058】
以上のように実施形態のノック式塗布具によれば、繰出し体20のガイド溝20aが軸方向に対して角度を持って斜めに形成されていて、ノック操作により前記繰出し体20を前進させたときは、前記ガイド溝20aおよび突起部18bによって当該前進動作を伝達カム体18の一方向への回転動作に変換し、伝達カム体18のカム部が回転カム体16の後部のカム部に噛合って、前記伝達カム体18の回転で回転カム体16を回転作動させて前記ネジ軸14の前進でピストン12が前進し、一方、ノック操作の解除により、スプリング18cの弾発力で繰出し体20を後退させたときは、前記ガイド溝20aおよび突起部18bによって当該後退動作を伝達カム体18の他方向への回転動作に変換して原位置に復帰し、かつ、回転カム体16の前部のカム部が前記筒状部22aのカム部に噛合って、前記回転カム体16の回転作動が規制されて前記ネジ軸14およびピストン12の作動が規制されたので、繰出し体20のノック操作したときの力をピストン12の押圧力に力のロス無く伝えることができ、高粘度の内容物の繰出しの場合に、ノック力の損失を防ぎつつ操作感をさらに軽くできる。
【0059】
それと共に、内部に後方向きのカム部22cが一体形成された筒状部22aを後部にネジ体22に設けたので、このカム部を別体に設けていないことから、別体に設けた従来品(例えば、特開2001−232273号公報)に比較して部品点数を削減できかつ製造を容易化できる。
【0060】
また、繰出し体20を前方向に押圧操作したときに、前記スプリング18cの弾発力に抗して前記繰出し体20が前方に移動することによってガイド溝20aに沿って突起部18bが摺動して前記伝達カム体18が一方向に回転し、伝達カム体18の一方向の回転が、伝達カム体18および回転カム体16の互いに対向するカム部同士が噛合い、かつ、回転カム体16の前方向きのカム部および前記筒状部22a内の後方向きのカム部の噛み合いが外れることにより回転カム体16の回転に伝達され、この回転カム体16の回転によってネジ軸14が回転し前記ネジ部22bの雌ネジの作用によって前進し、前記繰出し体20の押圧操作を解除したときに、前記スプリング18cの弾発力により繰出し体20が後方に移動することによってガイド溝20aに沿って突起部18bが摺動して前記伝達カム体18が他方向に回転し、伝達カム体18および回転カム体16の互いに当接するカム部同士の噛合いが外れ、かつ、回転カム体16の前方向きのカム部およびネジ体22の筒状部22a内の後方向きのカム部が噛み合うことにより、伝達カム体18の他方向への回転が回転カム体16に伝達されないようにして繰出し体20の押圧操作に繰り返しによってピストン12をスムーズに押し出すことができる。
【0061】
また、伝達カム体18および回転カム体16の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体16の前向きのカム部および前記ネジ体22の筒状部22a内の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチが同じであり、かつ、回転カム体16の後ろ向きのカム部と前向きのカム部の歯の位相がズレて形成すれば、繰出し体20のノック操作前に回転カム体16のカム歯が筒状部22aのカム歯に嵌り込んでいる状態であり、繰出し体20のノック操作時に伝達カム体18のカム部が回転カム体16の後ろ向きの歯と位相がずれているので、繰出し体20の前進で伝達カム体18か回転する。そして、繰出し体20のノック解除時に確実に回転カム体16と筒状部22aとのカム部同士が噛み合い、回転カム体16の戻り回転するのを確実に防ぐことができる。
【0062】
また、繰出し体20の外周とネジ体22の筒状部22a内周間にリング状のシール体(弾性体)34が周状に位置しているものにすれば、リング状のシール体34が繰出し体20から後方への気密を確保して内容物の乾燥や変質を確実に防止することができる等の優れた効果を奏し得る。
【0063】
ここで、本発明では、軸筒10の塗布液収容部10bに収容する塗布液は化粧液、筆記具用インク、薬品溶液であるが、特に高粘度の粧液の場合に繰出し性の容易性が従来に比較して顕著に大きい。そこで、その効果を確認するため、従来品の容器と本発明品のノック式塗布具の塗布液収納部に市販のリップグロー化粧品を一定量充填し、各温度条件下で24時間放置後の使用性について評価した。評価結果を下表に示す。
【表1】

【0064】
表から分かるように、従来品では5℃〜0℃において、ノック動作できず、使用できない状態であったが、本発明品では、5℃〜0℃においてもノック動作できて、使用可能な状態であった。本発明の顕著な効果が確認されたものである。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態のノック式筆記具に限定されず、本発明の範囲内で種々に変形実施ができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のノック式塗布具は、化粧品、薬品、インクにおいて高粘度の塗布液を塗布するための塗布具に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 軸筒(後軸)
10a 軸筒の先端部
10b 塗布液収容部
10c 段差部
12 ピストン
14 ネジ軸
16 回転カム体
16a 前方向きのカム部(前部のカム部)
16b 後方向きのカム部(後部のカム部)
18 伝達カム体
18a カム部
18b 突起部
18c スプリング
20 繰出し体
20a ガイド溝
20b 突起
20c シール溝
22 ネジ体
22a 筒状部
22a1 窓部
22a2 スリット溝
22b ネジ部
22b1 先割れ部
22b2 雌ネジ山
22b3 羽根部
22c カム部
24 塗付体
26 先軸
28 キャップ
30 継手
32 パイプ
34 シール体
A 繰出し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を軸筒内に貯蔵して、軸筒内を摺動するピストンの後部にネジ軸を係合させ、繰出し機構への繰出し操作によってネジ軸を介してピストンを前進させて軸筒内の塗布液を軸筒先端の塗付体に供給するようにしたノック式塗布具において、
前記繰出し機構は、
前部および後部にカム部が形成された回転カム体と、
回転カム体の後部のカム部に噛合うためのカム部が前部に形成され、かつ、側面部に突起部の形成された伝達カム体と、
前記伝達カム体の突起部をガイドするガイド溝が軸方向に対して斜めに形成され、かつ、前記軸筒との相対回転が規制された繰出し体と、
前記繰出し体を後向きに弾発しおよび伝達カム体を前向きに弾発するスプリングと、
後方向きのカム部が形成され、かつ、軸筒との相対回転の規制された固定カム体とを有したものであって、
前記回転カム体および固定カム体のうちの一方にネジ軸との相対回転が規制される係止構造を形成し、他方に前記ネジ軸に螺合するネジ部を設けて、前記回転カム体の回転を係止構造、ネジ部およびネジ軸の協働によって前記ネジ軸を軸筒に対して前進させる運動に変換してピストンを前進させるものであり、
ノック操作により前記繰出し体を前進させたときは、前記ガイド溝および突起部によって当該前進動作を伝達カム体の一方向への回転動作に変換し、伝達カム体のカム部が回転カム体の後部のカム部に噛合って、前記伝達カム体の回転で回転カム体を回転作動させることによって、前記ネジ軸を前進させてピストンを前進させ、
一方、前記ノック操作で前記繰出し体を前進させた後に当該ノック操作を解除したことにより、繰出し体がスプリングの弾発力で後退し、前記ガイド溝および突起部によって当該後退動作を伝達カム体の他方向への回転動作に変換して原位置に復帰し、それと共に、回転カム体の前部のカム部が前記固定カム体のカム部に噛合って、前記回転カム体の回転作動が規制されて前記ネジ軸およびピストンの作動が規制されたことを特徴とするノック式塗布具。
【請求項2】
前記固定カム体の後部にはそのカム部を囲んで後方に向かう筒状部が延在し、この筒状部内に回転カム体、伝達カム体、繰出し体およびスプリングを配置したことを特徴とする請求項1に記載のノック式塗布具。
【請求項3】
ネジ軸は、横断面視で周の一部を切り欠いた異形形状を呈しており、
前記回転カム体には、ネジ軸を通してネジ軸との相対回転を規制しかつ軸方向移動可能にする異形孔が形成され、
伝達カム体のカム部および前記回転カム体の後ろ向きカム部は、互いが当接状態の際に、伝達カム体が一方向に回転したときに噛み合い、逆に、伝達カム体が他方向に回転したときに噛み合いが容易に外れる鋸歯形状に形成されており、
前記固定カム体には、中心軸部にネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジが形成され、後方向きのカム部に前記回転カム体の前向きカム部が対向し、
回転カム体の前向のカム部および前記固定カム体の後方向きのカム部は、互いが当接状態の際に、回転カム体が他方向に回転したときに噛み合い、逆に、回転カム体が一方向に回転したときに噛み合いが容易に外れる鋸歯形状に形成されており、
前記繰出し体が固定カム体との相対回転の規制された状態で、軸方向に一定範囲で移動可能に配設され、
前記繰出し体を前方向に押圧操作したときに、前記スプリングの弾発力に抗して前記繰出し体が前方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が一方向に回転し、
伝達カム体の一方向の回転が、伝達カム体および回転カム体の互いに当接するカム部同士が噛合い、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および前記固定カム体の後方向きのカム部の噛み合いが外れることにより回転カム体の回転に伝達され、この回転カム体の回転によってネジ軸が回転して前記固定カム体の雌ネジの作用によって前進し、
前記繰出し体の押圧操作を解除したときに、前記スプリングの弾発力により繰出し体が後方に移動することによってガイド溝に沿って突起部が摺動して前記伝達カム体が他方向に回転し、
伝達カム体および回転カム体の互いに当接するカム部同士の噛合いが外れ、かつ、回転カム体の前方向きのカム部および固定カム体の後方向きのカム部同士が噛み合うことにより、伝達カム体の他方向への回転が回転カム体に伝達されないようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のノック式塗布具。
【請求項4】
ネジ軸は、横断面視で周の一部を切り欠いた異形形状を呈しており、
前記回転カム体には、ネジ軸を通してネジ軸との相対回転を規制しかつ軸方向移動可能にする異形孔が形成され、
前記固定カム体には、前方部に中心軸部にネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジが雌ネジ部が前方に突出形成された概略筒状を呈し、
その雌ネジ部は前端から後方向きに切り込みが形成されたものであって、ネジ軸の装着の際に雌ネジ部は切り込みが開くように弾性変形して全体が拡径するものであることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載のノック式塗布具。
【請求項5】
前記繰出し体のガイド溝は、当該ガイド溝に突起部を嵌めて周方向に伝達カム体を回転させる範囲が、伝達カム体および回転カム体の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体の前向きのカム部および前記固定カム体の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチよりも長くなるように形成したことを特徴とする請求項1から4のうちの1項に記載のノック式塗布具。
【請求項6】
伝達カム体および回転カム体の後ろ向きのカム部と、前記回転カム体の前向きのカム部および前記固定カム体の後ろ向きのカム部とにおける各カム部の歯のピッチが同じであり、かつ、回転カム体の後ろ向きのカム部と前向きのカム部の歯の位相がズレていることを特徴とする請求項1から5のうちの1項に記載のノック式塗布具。
【請求項7】
繰出し体の外周と固定カム体の筒状部内周との間にリング状の弾性体が周状に位置していることを特徴とする請求項2に記載のノック式塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194820(P2011−194820A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66526(P2010−66526)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】