説明

ノルボルネン系重合体

耐熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度が高度にバランスされたノルボルネン系重合体を提供する。主鎖の少なくとも一部を構成するノルボルネン環由来の環状炭化水素構造(I)と、該環状炭化水素構造(I)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4〜6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を、全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有するノルボルネン系重合体であって、13C−NMRにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、Mnが18,000〜28,000、Mwが20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系重合体に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れ、かつ低複屈折性及び機械的強度のバランスに優れたノルボルネン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系重合体は透明性、低複屈折性などの光学特性;耐湿性、耐熱性などの耐候性特性;低誘電率、低誘電正接などの電気特性;に優れているため、様々な分野において成形材料として使用されている。
ノルボルネン系重合体の中でも1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンのような縮合多環構造中に芳香環を有するノルボルネン系単量体を開環重合し、次いで、得られた開環重合体を水素添加して、主鎖の二重結合を飽和させると共に、飽和シクロヘキサン環に変換したノルボルネン系開環重合体水素化物は、従来のノルボルネン系重合体に比較して、複屈折率が小さく、かつ耐油脂劣化性に優れていることが知られている。しかしながら、このような繰返し単位を構成する縮合多環構造中にシクロヘキサン環を有するノルボルネン系重合体は、ガラス転移温度(Tg)が高々140℃程度であり、耐熱性が十分ではなかった。
そのため、繰返し単位を構成する縮合多環構造中にシクロヘキサン環を有するノルボルネン系重合体が持つ優れた透明性、低複屈折、耐油脂劣化性などの特性を維持しつつ、耐熱性を挙げる検討が行われている。
耐熱性に優れたノルボルネン系重合体として、特許文献1には、主鎖の少なくとも一部を構成するノルボルネン環由来の環状炭化水素構造(I)と、該環状炭化水素構造(I)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4ないし6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を、全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有するノルボルネン系重合体であって、数平均分子量が1,000〜1,000,000の範囲で、かつ、重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける前記環状炭化水素構造(III)中のメチレン基に由来するメチレンピ−クの高磁場側のピ−ク面積(A)と低磁場側のピ−ク面積(B)とが、式 B/(A+B)≦0.3の関係を満足することを特徴とするノルボルネン系重合体が開示されている。
【特許文献1】国際公開WO99/09085号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光学製品は、小型化や構造の簡素化が進んでいる。そのため、レンズやプリズムなどの光学部材は、高熱に曝されたり、又、光学製品の形状を維持するための構造体としての機能も求められるようになり、光学部材に用いられる樹脂には耐熱変形性や低複屈折性のみならず、機械的強度の高さが求められるようになってきている。
しかしながら、特許文献1に記載のノルボルネン系重合体は低複屈折性や機械的強度が不十分なことがあった。
例えば、特許文献1の実施例3に記載されている、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの開環重合体の水素添加物(B/(A+B)=0.12、重量平均分子量=4,250、数平均分子量=24,700)は、機械的強度に優れるが複屈折性が高い(本願比較例6)。
従って本発明の課題は、耐熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度が高度にバランスされたノルボルネン系重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献1に記載されているような、ノルボルネン環を含む縮合多環構造を有するノルボルネン系単量体の立体異性(エンド−エキソ異性)の組成比を制御して、エンド体を50モル%以上含有するノルボルネン系単量体を用いたノルボルネン系重合体においては、数平均分子量及び重量平均分子量が、耐熱変形性、低複屈折性及び機械的強度に影響を与えることを見出した。本発明者等は、更に検討を重ねた結果、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体は、耐熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度が高度にバランスされていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
かくして本発明によれば、主鎖の少なくとも一部を構成するノルボルネン環由来の環状炭化水素構造(I)と、該環状炭化水素構造(I)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4乃至6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を、全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有するノルボルネン系重合体であって、重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体が提供される。
また、本発明によれば、ノルボルネン環構造(I’)と、該ノルボルネン環構造(I’)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4ないし6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体(i)20〜100モル%と、該ノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)0〜80モル%とを含む単量体または単量体混合物を、重合することにより、又は重合後水素添加することにより得られたノルボルネン系重合体であって、
重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体が提供される。
本発明のノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系開環重合体水素添加物であると好ましい。
更に、本発明によれば、前記ノルボルネン系重合体を含有してなる成形材料及び、該成形材料を成形してなる成形体が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明のノルボルネン系重合体は、耐熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度が高度にバランスされている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(MTF)開環重合体水素添加物の13C−NMRスペクトルの一部である。
【符号の説明】
【0007】
A : メチレン基由来ピ−クA
B : メチレン基由来ピ−クB
a : ピ−クAの積分曲線
b : ピ−クBの積分曲線
Ha: ピ−クAのピ−ク面積値に相当する高さ
Hb: ピ−クBのピ−ク面積値に相当する高さ
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のノルボルネン系重合体は、前記特定の構造(I)〜(III)を有する、ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を前記特定の割合で含む。ここで、便宜上「環状炭化水素構造(II)」と呼ぶ構造については、環の一以上炭素原子が窒素原子、酸素原子などにより置換された環をも含む。
このような重合体は、ノルボルネン環構造(I’)と、該ノルボルネン環構造(I’)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4ないし6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体(i)20〜100モル%と、該ノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)0〜80モル%とを含む単量体または単量体混合物を重合することにより、又は、得られた重合体を必要に応じて水素添加することにより得ることができる。
【0009】
(単量体)
ノルボルネン系単量体(i)としては、特開平5−97719号公報、特開平7−41550号公報、及び特開平8−72210号公報に記載されているものなどを挙げることができ、具体的には、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−クロロ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−ブロモ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン等の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン類;1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−9H−フルオレン類;1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾフラン類;1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、1,4−メタノ−9−フェニル−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール等の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール類;7,10−メタノ−6b,7,10,10a−テトラヒドロフルオランセン類;7,10−メタノ−6b,7,10,10a−テトラヒドロフルオランセンにシクロペンタジエンをさらに付加した化合物、アセアントリレンにシクロペンタジエンを付加した化合物、アセフェナントリレンにシクロペンタジエンを付加した化合物、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、14,15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンなどが挙げられる。
【0010】
これらのノルボルネン系単量体(i)の中でも、環状炭化水素構造(II)が5員環であり、環状炭化水素構造(III)が単環の6員環であるノルボルネン系単量体が、耐熱性などの面から好ましく、機械的強度や入手の容易性の観点から、式(1)
【化1】

で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、及び式(2)
【化2】

で表される1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−9H−フルオレンが特に好ましい。
【0011】
これらのノルボルネン系単量体(i)は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0012】
ノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)としては、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ペンタジクロペンタデセン、ペンタジクロペンタデカジエンなどのノルボルネン系単量体(i)以外のノルボルネン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン;シクロブテン、1−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロブテン、3,4−ジイソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、シクロオクテン、1−メチルシクロオクテン、5−メチルシクロオクテン、シクロオクタテトラエン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン;アセチレンや、プロピン、1−ブチンなどの置換アセチレンであるアセチレン類;1,6−ヘプタジエンなどの両端部分に二重結合をもつジエン類;などが挙げられる。
【0013】
これらの中でも、特に耐熱性に優れる理由から、ノルボルネン系単量体が好ましく、さらには、主鎖を構成するノルボルネン環と、該ノルボルネン環と一つの炭素−炭素結合を共有するノルボルナン環を有するようなテトラシクロドデセン系単量体が最も好ましい。
【0014】
このようなテトラシクロドデセン系単量体としては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンや8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどが挙げられる。
【0015】
これらのノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
また、ノルボルネン系単量体(i)及び、ノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)は、置換基を有していても良い。置換基としては、炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基などが挙げられる。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
炭化水素基としては、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基;炭素原子数が2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基;及び炭素原子数3〜15、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜6のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0018】
(ノルボルネン系重合体の製造方法)
本発明のノルボルネン系重合体の製造方法としては、開環重合法および付加重合法などが挙げられ、開環重合法が好ましい。
開環重合法においては、単量体成分を、開環重合触媒を用いて、溶媒中または無溶媒で開環重合する。
【0019】
開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩、またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、及びモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;あるいは、特開平7−179575号公報、J.Am.Chem.Soc.,1986,108,733、J.Am.Chem.Soc.,1993,115,9858、及びJ.Am.Chem.Soc.,1996,118,100などに開示されている公知のシュロック型やグラッブス型のリビング開環メタセシス触媒などが挙げられる。
これらの触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択されればよいが、全ノルボルネン系単量体量に対するモル比で、通常1/1,000,000〜1/10、好ましくは、1/100,000〜1/100である。
【0020】
本発明においては、上記触媒系に、さらに極性化合物を加えて、重合活性や開環重合の選択性を高めることができる。
極性化合物としては、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他のルイス酸などが挙げられ、中でも、イソブタノール、ジイソプロピルエーテルが好ましい。
これらの極性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は、適宜選択されるが、上記触媒中の金属との比、すなわち、極性化合物/金属の比(モル比)で、通常1〜100,000、好ましくは5〜10,000の範囲である。
【0021】
溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;スチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの含窒素炭化水素類;などが挙げられる。
【0022】
重合温度は、通常、−50℃〜200℃、好ましくは−30℃〜180℃、より好ましくは−20℃〜150℃の範囲であり、重合圧力は、通常、0〜50kgf/cm2、好ましくは0〜20kgf/cm2の範囲である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間の範囲である。
【0023】
本発明においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ドデセン、等のα―オレフィン類;1、4−ヘキサジエンなどが挙げられ、中でもα―オレフィン類等が好ましく、1―ヘキセンがより好ましい。連鎖移動剤を用いると重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の調整を行うことができる。α―オレフィンの添加量は、重合触媒種、重合触媒量、単量体種、単量体量、α―オレフィン種など種種の条件によって適宜調節するが、一般に添加量が多いと、重量平均分子量、数平均分子量とも小さくなり、逆に添加量が少ないと、重量平均分子量、数平均分子量とも大きくなる。
連鎖移動剤の添加方法としては、本発明における特定範囲の分子量を有する重合体を安定的に得るためには、高精度で反応系に添加することが必要である。例えば、反応溶剤等で連鎖移動剤を予め希釈して用いたり、計量精度の高い装置を用いて秤量し、添加することが好ましい。秤量の精度としては、連鎖移動剤の必要添加量の、通常3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下のときに、最適な分子量の重合体が得られる。
【0024】
付加重合法においては、単量体成分を、溶媒中または無溶媒で、チタン、ジルコニウム、又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系の存在下で、通常、−50〜100℃の重合温度、0〜50kg/cm2の重合圧力で重合させる。
【0025】
(水素添加反応)
本発明において、ノルボルネン系重合体は水素添加されていると好ましい。
【0026】
水素添加触媒としては、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報等に記載されているものを使用することができ、均一系触媒でも不均一系触媒でもよい。均一系触媒は、水素添加反応液中で分散しやすいので添加量が少なくてよく、また、高活性を有するので、少量の触媒で短時間に水素添加することができる。不均一触媒は、高温高圧にすることで高活性となり、短時間で水添でき、さらに除去が容易である等の生産効率に優れる。
【0027】
均一系触媒としては、ウィルキンソン錯体、すなわち、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I);遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒、具体的には、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。
【0028】
不均一系触媒としては、Ni、Pd等の水素添加触媒金属を担体に担持させたものなどが挙げられ、担持される水素添加触媒金属としては活性や水素添加効率、あるいは異性化率の観点からNiを用いることが好ましい。Pd触媒を用いると、異性化の進行が促進され、軟化点が低くなる。担体としては、不純物等の混入が少ないほど好ましい場合は、アルミナやケイソウ土等の吸着剤を用いることが好ましい。
【0029】
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。
【0030】
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素類;などを挙げることができ、これらの中でも、環状の芳香族炭化水素類や脂環族炭化水素類が好ましい。
これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
水素添加反応は、常法に従って行うことができるが、水素添加触媒の種類や反応温度によって水素添加率が変わる。
反応温度は、通常200℃以下、好ましくは195℃以下、最も好ましくは190℃以下で行われる。
反応温度は、100〜200℃の範囲が好ましく、130〜195℃の範囲がより好ましい。200℃を越える温度で水素添加反応を行うと、重合体の各繰り返し単位中で異性化反応が起こりやすくなり、水素添加反応が進行するにつれて得られるノルボルネン系重合体の耐熱性が経時的に低下する。
水素圧は、通常、0.1〜100kgf/cm2、好ましくは0.5〜60kgf/cm2、さらに好ましくは1〜50kgf/cm2とする。
【0032】
水素添加反応終了後の触媒の除去は、遠心、ろ過等の常法に従って行えばよい。
必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加したりしてもよい。
医療用器材等、残留した遷移金属が溶出するのが好ましくない用途では、実質的に遷移金属が残留しないことが好ましいが、そのような重合体水素添加物を得るためには、特開平5−317411号公報などで開示されているような、特定の細孔容積と比表面積を持ったアルミナ類等の吸着剤を用いたり、樹脂溶液を酸性水と純水で洗浄したりすることが好ましい。
遠心方法やろ過方法は、用いた触媒が除去できる条件であれば、特に限定されない。
ろ過による除去は、簡便かつ効率的であるので好ましい。ろ過する場合、加圧ろ過しても、吸引ろ過してもよく、また、効率の点から、ケイソウ土、パーライト等のろ過助剤を用いることが好ましい。
【0033】
(ノルボルネン系重合体)
本発明のノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系単量体(i)由来の繰り返し単位を、該重合体の全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有する。
中でも、その割合が、25〜100モル%であると好ましく、30〜100モル%であるとより好ましい。ノルボルネン系単量体(i)由来の繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性が損なわれ、高温時の変形が大きくなるため好ましくない。
ノルボルネン系単量体(i)由来の繰り返し単位の割合は、重合に用いるノルボルネン系単量体(i)と、必要に応じて用いるその他の単量体(ii)の割合及びそれらの重合転化率により求めることができる。
本発明において、ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位とは、ノルボルネン系単量体を開環(共)重合または付加(共)重合し、次いで、水素添加して不飽和結合を飽和して得られる繰り返し単位、あるいは、水素添加反応の前または後に、例えば、不飽和単量体をグラフト反応させるなどの変性反応により得られる繰り返し単位などをも包含するものである。
【0034】
本発明のノルボルネン系重合体は、重クロロホルム中(TMS(テトラメチルシラン)基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける前記環状炭化水素構造(III)中のメチレン基に由来するメチレンピークの高磁場側のピーク面積(A)と低磁場側のピーク面積(B)とが、式B/(A+B)≦0.3の関係を有している。中でも、B/(A+B)≦0.25であると好ましく、B/(A+B)≦0.2であるとより好ましい。B/(A+B)値がこの範囲にあると、耐熱性の点で好ましい。
【0035】
13C−NMRで測定した環状炭化水素構造(III)中のメチレン基に由来するメチレンピークは、ノルボルネン系単量体(i)由来の繰り返し単位の立体構造の違いによって、二つのピークに分裂する。この立体構造の違いは、ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位のエンド−エキソ異性に起因するものであり、ひいては、使用するノルボルネン系単量体のエンド−エキソ異性に起因するものである。
【0036】
環内に少なくとも一つの炭素−炭素不飽和結合を有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)を有する縮合多環構造のノルボルネン系単量体を重合し、次いで、該環内の炭素−炭素不飽和結合を水素添加すると、水素添加前の重合体には存在しない環中のメチレン基由来のピークが二つに分裂した状態で新たに生じる。
具体例として、ノルボルネン系重合体が1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの単独開環重合体の水素添加物である場合、重クロロホルム中で測定した13C−NMRスペクトル(TMS基準)チャートは、図1に示すとおりになる。
【0037】
図1に示されるように、水素添加によって生成した繰り返し単位におけるシクロヘキサン環中の任意のメチレンピークは、6種類のメチン炭素の立体配置によって、高磁場側(A)と低磁場側(B)に分裂し、それぞれ21〜22ppm、及び22〜22.5ppmに現れている。
これらのメチレンピークA及びBのそれぞれ面積の計算値(A)及び(B)は、図1において、それぞれのピークの積分曲線(a)及び(b)の高さ(Ha)及び(Hb)の値で表される。
そこで、メチレンピークの高磁場側のピーク面積(A)と低磁場側のピーク面積(B)との面積比は、図1のデータに基づいて以下のように算出される。
B/(A+B)=Hb/(Ha+Hb)
=162.900/(565.540+162.900)
=0.2236
【0038】
ノルボルネン系重合体の種類が変わると、前述のメチレン基由来のピーク位置は、図1の場合とは異なった位置に現れるが、いずれの場合にも、そのピークは、高磁場側と低磁場側に分裂している。その分裂した2対のピーク位置は、分裂して対をなすものとしては13C−NMRチャートの測定領域の範囲の最も高磁場側に現れるために容易に確認することができる。よって、全てのノルボルネン系重合体について、前記の面積比は、積分曲線のデータから計算して求めることができる。
【0039】
B/(A+B)値は、重合に用いるノルボルネン系単量体(i)のエンド体(a)とエキソ体(b)との組成比(a:b)によって調整することができる。
ノルボルネン系単量体(i)は、ノルボルネン環(橋かけ環)を有するため、立体異性体として、エンド−エキソ異性体が存在する。例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(MTF)の場合、式(3)
【化3】

で表されるエンド体と、式(4)
【化4】

で表されるエキソ体とが存在する。
即ち、ノルボルネン環の橋かけ構造と結合している二つの三級炭素および二つの5員環接合部の二つの三級炭素の立体構造より、エンド体とエキソ体とが存在する。このようなノルボルネン系単量体の立体異性は、重合後及び水素添加後にも、実質的に維持される。例えば、MTFを開環重合後、穏やかな温度条件で水素添加すると、多少の異性化が起こるものの、得られる繰り返し単位の立体構造は、用いたMTFの立体構造を反映したものとなっている。このエンド−エキソ異性は、先に説明した13C−NMRスペクトルにおける芳香環を水素添加することで生じるメチレンピークの面積比と一定の相関関係がある。
【0040】
本発明に用いるノルボルネン系単量体(i)のエンド体(a)とエキソ体(b)との組成比(a:b)は通常50:50〜100:0、好ましくは70:30〜100:0、より好ましくは80:20〜100:0(モル%)である。
本発明に用いるノルボルネン系単量体(i)は、シクロペンタジエンとジエン類の縮合などにより、エンド体(a)とエキソ体(b)の混合物として得られる。得られた混合物のエンド体(a)とエキソ体(b)の組成比(a:b)は、酸触媒の存在下での異性化反応や、蒸留精製、組成比の異なる混合物の配合などによって調整することができる。
【0041】
本発明のノルボルネン系重合体は、数平均分子量が、18,000〜28,000の範囲にあり、かつ重量平均分子量が、20,000〜42,000の範囲にある。
中でも、数平均分子量が、19,000〜28,000の範囲であると好ましく、19,500〜28,000の範囲であるとより好ましく、20,000〜28,000の範囲にあると特に好ましい。
また、重量平均分子量が、20,000〜42,000の範囲であると好ましく、20,000〜40,000の範囲であるとより好ましく、20,000〜35,000の範囲にあると特に好ましい。
数平均分子量が大きいほど機械的強度が高くなる傾向があるが、数平均分子量が18,000より小さい場合、数平均分子量の低下に対する機械的強度低下の割合が著しく、数平均分子量が18,000を超える場合、数平均分子量の増加に対する機械的強度の増加の割合は小さくなる。
又、数平均分子量が、28,000を超えると、重量平均分子量を前記範囲にすることが困難になる。
一方、重量平均分子量が42,000を超えると成形時の配向による成形品の複屈折が大きくなり、走査長32mm、測定波長650nmでのレタデーションの値が220nmを超える。例えば、レーザービームプリンタのFθレンズの成形材料にレタデーションの値が220nmを超えるものを用いると、像のブレが著しく大きくなるのでレンズとしての使用に問題となる。
重量平均分子量が小さいほど複屈折は小さくなる傾向があるが、重量平均分子量が20,000より小さいと、前述の数平均分子量の範囲を維持することが困難になる。
従って、数平均分子量及び重量平均分子量が前記範囲にあると、機械的強度と、低複屈折性が高度にバランスされる。
本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリイソプレン換算値である。
数平均分子量及び重量平均分子量を前記範囲にする方法は限定されないが、例えば、前述の連鎖移動剤により調整することができる。連鎖移動剤の添加量は、重合触媒種、重合触媒量、単量体種、単量体量、連鎖移動剤など種々の条件によって適宜調節するが、一般に添加量が多いと、重量平均分子量、数平均分子量とも小さくなり、逆に添加量が少ないと、重量平均分子量、数平均分子量とも大きくなる。
【0042】
本発明のノルボルネン系重合体の主鎖構造中の炭素−炭素二重結合を有する繰り返し単位の割合は、20モル%〜0モル%であると好ましく、10モル%〜0モル%であるとより好ましく、2モル%〜0モル%であると特に好ましい。
主鎖構造中の炭素−炭素二重結合を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると耐光性の点で好ましい。
ノルボルネン系重合体が開環(共)重合体である場合には、主鎖中に炭素−炭素二重結合が生成するが、水素添加することにより、主鎖構造中の炭素−炭素二重結合を有する繰り返し単位の割合を前記範囲にすることができる。
【0043】
本発明のノルボルネン系重合体の炭素−炭素不飽和結合を環内に持つ繰返し単位、即ち、未水添の繰り返し単位の割合は、50モル%〜0モル%であると好ましく、30モル%〜0モル%であるとより好ましく、10モル%〜0モル%であると特に好ましい。
未水添の繰り返し単位の割合がこの範囲にあると耐熱性の点で好ましい。
【0044】
本発明のノルボルネン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、耐熱変形性と関係があるため、通常145℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上である。高度の耐熱性が要求される場合には、Tgを165℃以上に調整することができる。
【0045】
本発明のノルボルネン系重合体は、必要に応じて、特開平3−95235号公報等で公知の方法により、α,β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合と加水分解可能な基とを持つ有機ケイ素化合物、または不飽和エポキシ単量体などを用いて変性させてもよい。変性は、水素添加反応の前または後に行う。
【0046】
本発明のノルボルネン系重合体は、熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度特性が高度にバランスされている。
【0047】
(成形材料)
本発明のノルボルネン系重合体は、必要に応じて公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で含有させ成形材料とすることができる。公知の添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、ゴム質重合体やその他の熱可塑性樹脂等のその他の高分子材料、熱安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、離型剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0048】
これらの添加剤の中でも、成形時の耐酸化性や耐熱性を向上させるために、酸化防止剤が好ましく、また、成形体の耐光性などを向上させるために、光安定剤が好ましい。
前記酸化防止剤としては、フェノ−ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノ−ル系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノ−ル系酸化防止剤が好ましい。
【0049】
フェノ−ル系酸化防止剤としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキスメチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネ−ト)メタン[すなわち、ペンタエリスリチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネ−ト)]などのアルキル置換フェノ−ル系化合物;2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレ−ト、2,4−ジ−t−アミル−6−{1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル}フェニルアクリレ−トなどのアクリレ−ト系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノ−ル系化合物などが挙げられる。
【0050】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。
【0051】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネ−トなどが挙げられる。
【0052】
これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、その添加量は、ノルボルネン系重合体100重量部に対し、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.02〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部の範囲である。
【0053】
一方、光安定剤としては、ヒンダ−ドアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾエ−ト系光安定剤などが挙げられ、これらの中でもヒンダ−ドアミン系光安定剤が好ましい。
【0054】
HALSの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、1−〔2−{3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9,−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、
【0055】
テトラキス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジノ−ルとトリデシルアルコ−ルとの縮合物、
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、
ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、
ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルとの重合物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などが挙げられる。
【0056】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノ−ルとの重合物などの数平均分子量が2,000〜5,000のものが好ましい。
これらの光安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、その添加量は、ノルボルネン系重合体100重量部に対し、通常0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲である。
【0057】
ゴム質重合体は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以下の重合体であって、通常のゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。ゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、使用目的に応じて適宜選択され、通常、5〜300である。
ゴム状重合体としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム質重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。
【0058】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。
これらの熱可塑性エラストマーのうち、好ましくは、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などであり、具体的には、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
これらのゴム質重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。ゴム質重合体の配合割合は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0059】
その他の熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、及び本発明以外のノルボルネン系重合体などが挙げられる。
また、機械的特性などを調整する目的で、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の異種の熱可塑性樹脂等を配合することもできる。
これらのその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0060】
成形材料は、その調製法によって特に限定されない。
例えば、各種添加剤を適当な溶剤に溶解してノルボルネン系重合体の溶液に添加した後、溶剤を除去することにより成形材料を得る方法;ノルボルネン系重合体と必要に応じて添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合器を用いて混合することによって、または更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等により溶融混練する方法等が挙げられる。
成形材料は、成形性の点で、造粒あるいは粉砕、又はペレット化することが好ましい。
【0061】
(成形体)
本発明の成形材料は、公知の成形手段、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法などを用いて成形体にすることができる。成形体の形状は用途に応じて適宜選択できる。
【0062】
成形条件は、特に制限はないが、成形時の樹脂温度は、使用するノルボルネン系重合体のガラス転移温度をt1℃とすると、t1+40℃〜t1+260℃の範囲であると好ましく、t1+110℃〜t1+190℃の範囲であるとより好ましく、t1+125℃〜t1+150℃の範囲であると特に好ましい。
成形時の樹脂温度がこの範囲であると、複屈折率及び、生産性の点で好ましい。
また金型を使用する場合の金型温度は、使用するノルボルネン系重合体のガラス転移温度をt1℃とすると、通常、室温〜t1+15℃、好ましくはt1−30℃〜t1+10℃、より好ましくはt1−20℃〜t1+5℃で行われる。(ただし、(t1−30℃)<室温、あるいは(t1−20)℃<室温である場合は、室温以上とする。)
【0063】
本発明の成形体は、所望によりアニ−ル処理を施すことができる。これにより、得られる成形体の屈折率分布をシャ−プにすることができる。アニ−ル処理工程は、成形後に80〜110℃で5〜24時間加熱処理を行う。
【0064】
また、本発明の樹脂組成物から作製された成形体の表面には、無機化合物、シランカップリング剤などの有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などからなるハードコート層を形成することができる。
ハードコート層を形成すると、成形体の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐摩耗性及び耐水性などを向上させることができる。
ハードコート層の形成方法としては、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法を挙げることができる。
【0065】
(用途)
本発明のノルボルネン系重合体は、耐熱変形性に優れ、かつ、低複屈折性と機械的強度が高度にバランスされており、通常のノルボルネン系重合体の特性である透明性、耐湿性、耐衝撃性、溶液安定性、低吸水性、低透湿性、及び耐薬品性についても優れているので、各種成形品において有用である。
例えば、医療器材;電気絶縁材料;電子部品処理用器材;光学材料;受光素子用窓等の電子部品;窓、機械部品、ハウジング等の構造材料や建材;バンパー、ルームミラー、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、インストルメントパネル等の自動車器材;スピーカーコーン材、スピーカー用振動素子、電子レンジ容器等の電気用器材;ボトル、リターナブルボトル、哺乳瓶等の食品容器;ラップ等の包装材料;フィルム、シート、ヘルメット等の種種の用途に利用できる。
中でも、光学部品として好適に使用することができ、具体的にはカメラレンズ、ビデオカメラレンズ、ファインダーレンズ、光ディスク用ピックアップレンズ、レーザープリンタ用fθレンズ、眼鏡レンズ、医療検査用プラスチックレンズ、コリメートレンズ、プロジェクションテレビ用投影レンズ、OHP用投影レンズ、またはジオデシックレンズ、フレネルレンズ、レンティキュラーレンズもしくはグレーティングレンズ等の導波型レンズなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。以下において、部または%は、特に断りが無い限り重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。評価結果を表1に示す。
なお、各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)分子量
分子量はシクロヘキサンを溶媒にして、40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。
(2)水素添加率
ノルボルネン系重合体における、主鎖及び環状炭化水素構造(III)の水素添加率は、1H−NMRスペクトルを測定し算出した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
ノルボルネン系重合体のTgはDSCにより測定した。
(4)機械的強度
ノルボルネン系重合体の機械的強度は、樹脂板A(長さ10cm×幅1cm×厚さ1mm)を用いて、ASTM D790に基づいて、支点間距離30.0mm、圧力30MPa、方法A、温度23℃、湿度50%、成形後40時間の条件で、島津製作所製オートグラフAGS-10kNDを用いた曲げ強度を測定した。
(5)複屈折
ノルボルネン系重合体の複屈折は、樹脂板B(長さ60mm×幅60mm×厚さ2mm)を用いて、複屈折計(王子計測器製:KOBRA−CCD/X)により測定し、樹脂板中心部の、測定波長650nmでのレタデーションの値によって比較した。レタデーションの値は小さいほど良いが、220nmを超えると、例えばレーザービームプリンタのFθレンズの成形材料に用いた際に、像のブレが許容範囲を超えるのでレンズとしての使用に問題となる。よって表1では、レタデーションが0〜79nmのものを「A」、80〜220nmのものを「B」、150〜199nmのものを「C」、220nmを超えるものを「D」とした。
【0067】
[実施例1]
乾燥し、窒素置換したステンレス製耐圧容器に、脱水したシクロヘキサン/トルエン(重量比2/1)混合溶液400部に1−ヘキセン0.87部、ジイソプロピルエ−テル0.25部、イソブチルアルコ−ル0.18部、トリイソブチルアルミニウム0.48部及び六塩化タングステン0.77重量%トルエン溶液42部を室温で反応容器に入れ混合した後、45℃で1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン200部及び六塩化タングステン0.77重量%トルエン溶液25重量部を2時間かけて連続添加し、重合した。
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300重量部を攪拌器付きオートクレーブに移し、珪藻土担持ニッケル触媒(日産ガードラ−触媒製;G−96D、ニッケル担持率58重量%)11部を加え、180℃、4.5MPaで10時間反応させた。水素添加反応終了後、ラジオライト♯800をろ過床として、加圧ろ過器[フンダフィルタ−、石川島播磨重工社製]を使用し、圧力0.25MPaで加圧ろ過して、無色透明な溶液を得た。次いで、得られた溶液に、重合体固形分100重量部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]0.05重量部を加えて溶解させた。
この溶液を金属ファイバ−製フィルタ−[孔径0.5μm、ニチダイ社製]にてろ過した。次いで、ろ液を「ゼ−タプラスフィルタ−30S」(孔径0.5〜1μm、キュノ社製]でろ過し、さらに、金属ファイバ−製フィルタ−(孔径0.2μm、ニチダイ社製)でろ過して異物を除去した。
次いで、上記で得られたろ液(重合体濃度=20重量%)を予備加熱装置で250℃に加熱し、圧力3MPaで円筒型濃縮乾燥機[日立製作所製]に連続的に供給した。濃縮乾燥機の運転条件は、圧力60kPa、内部の濃縮された重合体溶液の温度が290℃となるように調節した。濃縮された溶液は、濃縮乾燥機から連続的に導出し、さらに同型の濃縮乾燥機に温度290℃を保ったまま、圧力1.5MPaで供給した。運転条件は、圧力1.5kPa、温度290℃とした。溶融状態の重合体は、濃縮乾燥機から連続的に導出し、クラス100のクリ−ンル−ム内でダイから押し出し、水冷後、ペレタイザ−[OSP−2、長田製作所製]でカッティングしてノルボルネン系重合体のペレットを得た。
このノルボルネン系重合体を、13C−NMRスペクトルで測定した,一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の炭化水素構造(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17であった。
このノルボルネン系重合体の、Mwは31,800、Mnは19,000、主鎖部分の水素転化率は99.4%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
金型として、所定のパタ−ン形状を有する金属部材(SUS製)の表面に平均膜厚40μmのポリイミド層を真空蒸着により形成し、さらにその上に保護層として厚さ10μmのCr層をCVD法により形成したものを用意し、前記ノルボルネン系重合体を射出成形機[ファナック社製「ロボショットα−100B」、型締め力最大100t]により、樹脂温度280℃、金型温度135℃、射出圧力100MPaにて、長さ10cm×幅1cm×厚さ1mmの樹脂板A1、及び長さ60mm×幅60mm×厚さ2mmの樹脂板B1を作製し、樹脂板A1を用いて機械的強度を、樹脂板B1を用いて複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例2]
モノマーを1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−9H−フルオレン200部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは31,800、Mnは19,000、主鎖部分の水素転化率は99.4%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A2及び樹脂板B2を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
モノマーを1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン120部およびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン80部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは31,900、Mnは19,000、主鎖部分の水素転化率は99.4%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A3及び樹脂板B3を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例4]
実施例3のノルボルネン系重合体を用いて、樹脂温度を290℃とした以外は実施例1と同様にして、樹脂板A4及び樹脂板B4を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
1−ヘキセンを0.55部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは41,700、Mnは21,000、主鎖部分の水素転化率は99.6%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A5及び樹脂板B5を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例6]
実施例5のノルボルネン系重合体を用いて、樹脂温度を290℃とした以外は実施例1と同様にして、樹脂板A6及び樹脂板B6を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
1−ヘキセンを0.99部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは27,300、Mnは19,000、主鎖部分の水素転化率は99.7%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A7及び樹脂板B7を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例2]
1−ヘキセンを0.91部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは30,000、Mnは17,700、主鎖部分の水素転化率は99.6%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A8及び樹脂板B8を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
[比較例3]
水添温度を220℃とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.41、Mwは31,800、Mnは19,000、主鎖部分の水素転化率は99.8%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは140℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A9及び樹脂板B9を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例4]
水添温度を220℃とした以外は実施例2と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.41、Mwは41,700、Mnは21,000、主鎖部分の水素転化率は99.7%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは140℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A10及び樹脂板B10を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例5]
1−ヘキセンを0.53部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは42,300、Mnは21,100、主鎖部分の水素転化率は99.5%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃であった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A11及び樹脂板B11を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例6]
1−ヘキセンを0.50部とした以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系重合体を得た。
このノルボルネン系重合体のピ−ク面積比B/(A+B)は0.17、Mwは45,200、Mnは24,700、主鎖部分の水素転化率は99.6%、環状炭化水素構造(III)部分の水素転化率は100%、Tgは160℃、機械的強度は117MPa、複屈折は290nmであった。
また、実施例1と同様に、得られたノルボルネン系重合体を用いて、樹脂板A12及び樹脂板B12を作製し機械的強度及び複屈折を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1のことから、以下のことがわかる。
主鎖の少なくとも一部を構成するノルボルネン環由来の環状炭化水素構造(I)と、該環状炭化水素構造(I)と一つの炭素−炭素結合を共有する炭素数4ないし6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を、全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有するノルボルネン系重合体であって、重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体を含有する成形材料を成形した成形体は、機械的強度が高く、かつ低複屈折性に優れている(実施例1〜6)。中でも成形体成形時の樹脂温度が、t1+125℃〜t1+150℃の範囲(ノルボルネン系重合体のガラス転移温度をt1とする)にあると低複屈折性に優れている。(実施例4および6)
それに対して、数平均分子量が19,000に満たないノルボルネン系重合体を含有する成形材料を成形した成形体は、機械的強度が低い(比較例1および2)。
13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の範囲にないノルボルネン系重合体を含有する成形材料を成形した成形体は、機械的強度が低い(比較例3および4)。重量平均分子量が42,000を超えるノルボルネン系重合体を含有する成形材料を成形した成形体は、低複屈折性に劣る(比較例5および6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の少なくとも一部を構成するノルボルネン環由来の環状炭化水素構造(I)と、該環状炭化水素構造(I)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4乃至6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を、全繰り返し単位中20〜100モル%の割合で含有するノルボルネン系重合体であって、
重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体。
【請求項2】
ノルボルネン環構造(I’)と、該ノルボルネン環構造(I’)と一つの炭素−炭素結合(a)を共有する炭素数4ないし6の環状炭化水素構造(II)と、該環状炭化水素構造(II)と該炭素−炭素結合(a)以外の少なくとも一つの炭素−炭素結合を共有する単環または多環の環状炭化水素構造(III)とを有するノルボルネン系単量体(i)20〜100モル%と、該ノルボルネン系単量体(i)と共重合可能なその他の単量体(ii)0〜80モル%とを含む単量体または単量体混合物を、重合することにより又は重合後水素添加することにより得られたノルボルネン系重合体であって、
重クロロホルム中(TMS基準)で測定した13C−NMRスペクトルにおける(III)の環状炭化水素構造由来のメチレンピ−クの高磁場側(A)と低磁場側(B)のピ−ク面積比がB/(A+B)≦0.3の関係にあり、かつ、数平均分子量が18,000〜28,000、重量平均分子量が20,000〜42,000の範囲にあるノルボルネン系重合体。
【請求項3】
ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン系開環重合体水素添加物である請求項1又は2に記載のノルボルネン系重合体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のノルボルネン系重合体を含有してなる成形材料。
【請求項5】
請求項4記載の成形材料を成形してなる成形体。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/080467
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510186(P2006−510186)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001965
【国際出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】