説明

ノーパンクタイヤ及びノーパンクタイヤの組立方法

【課題】軽量化が図られると共にタイヤ基体とリムとにより形成される空間内にタイヤチューブを容易に嵌め込むことが可能なノーパンクタイヤを実現する。
【解決手段】本発明によるノーパンクタイヤは、環状のリム(1)と、リムに装着される環状のタイヤ基体(2)と、リムとタイヤ基体とにより規定される空間内に装着されるタイヤチューブ(3)とを有する。タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料から成り、1気圧又はその近傍の圧力の空気が封入されている環状中空体(11)により構成される。この環状中空体は、密封された環状内部空間の圧力が1気圧又はその近傍の圧力下において環状形状を維持する形状自己保持能力を有する。よって、タイヤチューブに損傷が生じても、正常時と同様な弾性反発力を発揮することができる。しかも、環状内部空間内の空気を排気すると偏平状に収縮変形可能な特性を有するので、タイヤチューブをタイヤ基体の内側に収納する作業も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤチューブに損傷が生じても走行可能なノーパンクタイヤに関するものである。
また、本発明は、ノーパンクタイヤの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釘類が刺さっても走行可能なノーパンクタイヤが提案されている。従来から提案されているノーパンクタイヤとして、リムとタイヤ基体とが囲む空間内に固形物が充填されているノーパンクタイヤが既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知のノーパンクタイヤでは、タイヤ内腔部に沿って配置された環状チューブの内部空間内に液状のウレタン樹脂又はエポキシ樹脂が充填され、充填された樹脂を固化させることにより所定の特性を有する環状の固形物が形成されている。
【0003】
別のノーパンクタイヤとして、タイヤバルブを介して溶液状の樹脂を空気チューブ内に注入し、常温条件下で硬化させたタイヤチューブを用いるノーパンクタイヤが既知である(例えば、特許文献2参照)。この既知のノーパンクタイヤは、注入機を用いて液状のエラストマーを圧力を作用させながら空気チューブ内に注入し、常温のもとでエラストマーを硬化させている。
【0004】
さらに、別のノーパンクタイヤとして、リムとタイヤ基体とを有し、それらの間に形成される環状空間内に、圧縮変形することにより嵌め込まれるタイヤチューブを有するノーパンクタイヤが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この既知のノーパンクタイヤでは、タイヤチューブは、エラストマーを原材料とし、押出成型されたほぼ円形の長尺体で構成されている。このタイヤチューブは、圧縮変形可能に構成され、タイヤチューブをタイヤ基体とリムとの間に嵌め込む際、タイヤチューブの圧縮変形を利用して嵌め込むことが可能にされている。
【特許文献1】特開2004−98985号公報
【特許文献2】特開2005−96471号公報
【特許文献3】特開2010−111378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたノーパンクタイヤは、リムとタイヤ基体とにより形成される環状の空間内にウレタン樹脂やエポキシ樹脂の固形物が挿入されているため、タイヤの総重量が重くなる欠点があった。特に、タイヤの重量が重くなると、乗り心地が悪く操縦安定性に問題が発生する。また、リムとタイヤ基体とにより形成される空間の全体にわたって液状の樹脂が充填されるため、液状樹脂が硬化するまでに相当な時間が必要であり、製造のスループットが低い欠点も指摘されている。同様に、特許文献2に記載されたノーパンクタイヤも、空気チューブ内にエラストマーを注入し、常温下で硬化させているため、タイヤの総重量が重くなる欠点がある。
【0006】
特許文献3に記載されたノーパンクタイヤでは、リムとタイヤ基体とにより形成される空間内にエラストマーの長尺体が配置されているため、特許文献1に記載のノーパンクタイヤと同様にタイヤの総重量が重くなる欠点があった。また、長尺体は圧縮変形可能に構成されているが、タイヤ基体とリムとが形成する空間の容積とほぼ等しい体積を有するため、タイヤ基体とリムとの間に嵌め込みにくく、組み立てる際の作業性に難点があった。一方、長尺体を圧縮変形し易い材料で構成すると、タイヤから接地面に対する弾性反発力が小さくなり過ぎ、乗り心地が悪化する不具合がある。すなわち、走行中のタイヤの変形量が大きいため、タイヤ接地面の面積が大きすぎ、乗り心地の観点について改善することが要請されている。
【0007】
本発明の目的は、タイヤの重量が軽く軽量化されたノーパンクタイヤを実現することにある。
さらに、本発明の目的は、軽量化が図られると共にタイヤ基体とリムとにより形成される空間内にタイヤチューブを容易に嵌め込むことができ、タイヤ交換の作業性が改善されたノーパンクタイヤを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるノーパンクタイヤは、環状のリムと、リムに装着される環状のタイヤ基体と、リムとタイヤ基体とにより規定される空間内に装着されるタイヤチューブとを有し、
前記タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料から成り、1気圧又はその近傍の圧力の空気が蜜封されている環状内部空間を含む環状中空体により構成され、
前記環状中空体は、環状内部空間に1気圧の空気が蜜封された場合ほぼ円形の断面形状を形成し、環状内部空間内の空気を排気した場合偏平な断面形状を形成し、前記環状内部空間内の空気が排気された状態において、工具を介して前記環状内部空間を外部と連通させた場合弾性復元力により断面がほぼ円形形状に復元することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料の環状中空体により構成され、環状中空体の密封された環状内部空間はほぼ1気圧に設定されているので、総重量が相当軽量なノーパンクタイヤが実現される。しかも、環状中空体の環状内部空間は、先端が鋭利な中空体の工具を介して環状内部空間が外部と連通した状態で押圧することにより環状内部空間内の空気が排気され、タイヤチューブが偏平形状に変形するので、タイヤチューブをタイヤ基体に収納する嵌め込み作業も容易になる。この結果、タイヤの交換作業が大幅に簡単になる。
【0010】
本発明によるノーパンクタイヤの好適実施例は、タイヤチューブは、EVA樹脂スポンジ又はNBRゴムスポンジにより構成されていることを特徴とする。EVA樹脂スポンジは、優れた弾性反発力を有し、且つ、他の樹脂材料と比べて比重が軽い特性を有するので、他のタイヤチューブを用いる場合よりも優れた乗り心地が得られる。特に、酢酸ビニルの含有量を調整することにより、弾性反発力を高くすることができるので、軽量化が図られると共にタイヤと地面との間の接地面積が一層小さくなり、使用者に対して一層優れた軽快感を与える利点がある。NBRゴムスポンジも、同様に優れた弾性反発力を有するので、地面との間の接地面積が一層小さくなり、使用者に対して一層優れた軽快感を与える利点がある。
【0011】
本発明によるノーパンクタイヤの組立方法は、環状のリムと、リムに装着される環状のタイヤ基体と、タイヤ基体とリムとにより規定される空間内に装着されるタイヤチューブとを有し、前記タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料から成り、1気圧又はその近傍の圧力の空気が封入されている密封された環状内部空間を含む環状中空体により構成されるノーパンクタイヤの組立方法であって、
1気圧又はその近傍の圧力の空気が封入されている密封された環状内部空間を含み、断面がほぼ円形の環状中空体を用意する工程と、
前記環状中空体の環状内部空間内の空気を排気して、環状中空体の断面を偏平な形状に変形させる排気工程と、
前記環状内部空間内の空気が排気された環状中空体をタイヤ基体の内側空間内に収納する工程と、
前記環状中空体が収納されたタイヤ基体を前記リムに取り付ける工程と、
前記環状中空体の環状内部空間を中空体の工具を介して外部と連通させることにより、前記環状内部空間内に1気圧の空気を封入すると共に環状中空体の断面形状をほぼ円形に復元させる復元工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤチューブは、ほぼ1気圧の空気が密封された環状中空体により構成され、タイヤの弾性反発力は、主として環状中空体の弾性力が負担するので、従来のノーパンクタイヤよりも一層軽量なノーパンクタイヤが実現される。また、タイヤチューブを構成する環状中空体に形成されている内部空間の空気は簡単な作業により排気され、タイヤチューブが偏平状に収縮変形するので、タイヤの交換の作業性も大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるノーパンクタイヤの一例を示す断面図である。
【図2】環状中空体の製造工程を示す図である。
【図3】本発明によるノーパンクタイヤの組立工程を示すフローチャートである。
【図4】環状中空体を排気する一連の工程を示す図である。
【図5】排気されたタイヤチューブをから本発明によるノーパンクタイヤを組み立てる一連の工程を示す図である。
【図6】タイヤ交換の作業手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明によるノーパンクタイヤの一例を示す図であり、タイヤの回転軸線Lを含みタイヤ赤道面と直交する面で切って示す断面図である。本発明によるノーパンクタイヤは、環状のリム1を有する。リム1には環状のタイヤ基体2が装着される。タイヤ基体2は、リムに取付けられるビード部2a及び2bと、接地面2cとを有する。
【0015】
タイヤ基体2の内側空間内にタイヤチューブ(空気チューブ)3が配置される。タイヤチューブ3は、弾性ゴム材料から成り、密封された環状の中空体で構成する。この環状中空体は、単泡性のスポンジゴム材料で構成され、例えばCRゴム、NBRゴム、EPDMゴム、NRゴム、PUゴム、Si ゴム等の単泡性スポンジゴム材料で構成することができる。また、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)の発泡体、PE樹脂の発泡体、PP樹脂の発泡体を用いることもできる。環状中空体3の密封された環状の内部空間3aの圧力は、ほぼ1気圧(常圧)に設定する。環状中空体の環状内部空間3a及び環状中空体は、1気圧の密封状態において断面がほぼ円形になるように構成する。
【0016】
環状中空体3を構成するスポンジゴム材料の硬度は比較的高い硬度、例えばアスカC硬度で40〜70°程度に設定する。また、環状中空体を構成するゴム材料の硬度及び厚さは、内部空間3a内の圧力が1気圧又はその近傍の条件下において通常使用時の負荷が作用した場合、適切な弾性反発力が作用するように設定する。すなわち、通常使用時の負荷が作用した場合に、環状形状を保持できる形状自己保持能力が発揮されると共に環状内部空間内の空気圧が1気圧に設定されても適切な弾性反発力が発揮するように設定する。
【0017】
次に、本発明によるノーパンクタイヤに用いられるタイヤチューブを構成する環状中空体の製造工程について説明する。図2は本発明によるノーパンクタイヤに用いられる環状中空体の製造工程を示す図である。本例では、自転車用のノーパンクタイヤに用いられる環状中空体の製造工程を例として示す。図2(A)に示すように、中空円筒状のゴムチューブ10を用意する。ゴムチューブ10及びその内側が空間の断面はほぼ円形とする。自転車用のノーパンクタイヤの場合、例えばゴムチューブ10の長手方向の寸法は2000mmとし、外径r1=24mm〜34mmとし、内径r2=10〜16mm又はその近傍に設定する。また、ゴム材料として、ゴム硬度が60°〜70°(アスカC硬度)程度の単泡性のNBRゴムスポンジやEVA樹脂スポンジを用いることができる。
【0018】
次に、必要に応じて中空円筒状のゴムチューブ10の内周面に粘着剤を塗布し、粘着剤層11を形成する。この粘着剤層11は、釘類等が突き刺さった場合及び中空体の工具が挿入された場合、形成された割れ目や微細な孔等を埋め、損傷箇所を補修する自己補修機能を発揮する。
【0019】
次に、図2(C)に示すように、ゴムチューブ10の端面10a及び10bに接着剤を塗布し、端面同士を突き合わせて接合する。これにより、内圧が1気圧の密封された環状の密封された内部空間を有し、円形断面の環状中空体12が完成する。この環状中空体は、中空体を構成するゴム材料が強い弾性反発力を有するので、内部空間の圧力が1気圧であっても、通常の空気入りタイヤとほぼ同等の弾性反発力を発揮することができる。
【0020】
次に、本発明によるノーパンクタイヤの組立工程について説明する。図3は本発明によるノーパンクタイヤの一連の製造工程を示すフローチャートである。初めに、図2に示す1気圧の空気が封入された密封状態のタイヤチューブ(環状中空体12)を用意する(ステップ1)。
【0021】
次に、得られたタイヤチューブの内部空間内の空気を排気し、偏平な断面形状に収縮したタイヤチューブを製造する(ステップ2)。この収縮したタイヤチューブは製品として出荷することができる。或いは、収縮したタイヤチューブを用いてノーパンクタイヤ完成させ、ノーパンクタイヤとして出荷することもできる。
【0022】
続いて、偏平な断面形状に収縮したタイヤチューブをタイヤ基体2の内側空間内に収納する(ステップ3)。この際、タイヤチューブは偏平状に収縮しているので、容易にタイヤ基体の内側空間内に収縮することができる。
【0023】
続いて、タイヤチューブが収納されたタイヤ基体をリムに装着する(ステップ4)。最後に、リムに形成されている開口部から、タイヤチューブに先端が鋭利な中空体の工具を内部空間と連通するように装着し、中空工具を介してタイヤチューブの内部空間内に空気を封入し、内部空間の空気圧を1気圧に設定する。すなわち、タイヤチューブは、内部空間が強制的に排気され、偏平状に収縮している場合、タイヤチューブ自身に断面が円形に拡張するように弾性復元力が作用する。そして、この弾性復元力により外部の空気が中空工具を介して内部空間内に流入し、タイヤチューブの内部空間はほぼ1気圧になると共にタイヤチューブすなわち環状中空体の断面はほぼ円形形状に復元し、走行可能なノーパンクタイヤが組み立てられる。尚、中空工具を取り外す際、中空工具を介して接着剤を注入しながら工具を抜きさることにより、工具を装着した際に形成された孔は接着剤により塞がれる。
【0024】
図4は、図2に示すタイヤチューブを製品として出荷するまでの一連の工程を示す。出荷に先立って、環状中空体12(タイヤチューブ)の内部空間12aに封入されている空気を排気装置20を用いて排気し、断面が偏平形状に収縮したタイヤチューブを形成する。1気圧の空気が密封された環状中空体12を排気装置20のステージ21上に配置する。ステージ21には、アーム22の一端が連結され、アームの他端は押圧プレート23に連結する。押圧プレート23には押圧円盤24が取付けられると共に把手25が固定される。押圧プレート23は、把手25を矢印方向に上下動させることにより、アームを中心にして上下方向に回動することができる。
【0025】
排気に際し、環状中空体12に、注射針のような先端が鋭利な中空体の工具26を装着する。工具26は、その先端が内部空間12aと連通するように装着する。よって、環状中空体12の内部空間12aは中空状の工具26を介して外部と連通する。この状態において、排気装置20の押圧プレートの把手を下方に降下させると、環状中空体の内部空間12aに封入されている空気は、中空体の工具26を介して外部に排気され、図4(B)に示すように、断面が偏平形状に収縮変形する。この状態を維持しながら、工具26に注射器のような接着剤供給装置27を連結し、接着供給装置から工具26を介して接着剤を注入しながら、工具26を引き戻す。その後、排気装置の押圧プレートを上方に回動する。
【0026】
工具26を突き刺した際に形成される孔は、工具26を環状中空体12から引き抜く際に、接着剤により埋められるため、工具を突き刺した際に形成される孔は接着剤により充填される。この結果、密封された1気圧の環状の内部空間が形成される。この状態を図4(C)に示す。このようにして、偏平状に収縮変形したタイヤチューブ12が完成する。
【0027】
次に、収縮したタイヤチューブをタイヤ基体の内側に収納する作業工程について説明する。図5は、収縮したタイヤチューブをタイヤ基体の内側空間内に収納する一連の作業工程を示す。偏平状に収縮したタイヤチューブである環状中空体12は、タイヤの赤道面と直交する方向、すなわちタイヤの回転軸線Lと平行な方向に収縮しているので、簡単な作業でタイヤ基体の内側空間内に環状中空体12を収納することが可能である。タイヤ基体2の内側に環状中空体12が収納された状態を図5(A)に示す。続いて、図5(B)に示すように、タイヤチューブが収納されたタイヤ基体をリム1に装着する。この際、タイヤチューブは収縮しているので、簡単な作業でタイヤ基体をリムに装着することが可能である。
【0028】
次に、図5(C)に示すように、リムの内側から、リムに形成されている開口部を介して注射針のような中空体の工具30を環状チューブ12に差し込む。この際、中空工具の先端が環状中空体12の環状内部空間と連通するように差し込む。中空工具30が環状中空体の内部に差し込まれると、内部空間12aが中空工具を介して外部と連通し、中空工具30を介して環状中空体の内部空間内に空気が流入する。すなわち、タイヤチューブである環状中空体の内部空間12aは、断面が円形の状態から断面が偏平な形状に強制的に変形されているため、タイヤチューブの弾性復元力が作用し、内部空間12aを拡張するように作用する。この弾性復元力により工具30を介して外部から空気が流入し、環状内部空間12aの内部気圧は外部と等しい1気圧に到達する。同時に、タイヤチューブは、断面が偏平形状から元の円形形状に復元する。この状態を図5(D)に示す。空気の流入が終了した時点において、図4に示す接着剤供給装置27と同様な接着剤供給装置を中空工具30に連結し、接着剤を供給しながら工具30を引き抜く。この場合、環状中空体の内部空間12aの内圧と外部の気圧は等しいため、供給された接着剤が移動する不具合は発生しない。この結果、工具を差し込んだ際に形成された孔は供給された接着剤により塞がれ、断面が元のほぼ円形の密封された1気圧の内部空間が形成されることになる。尚、リムに形成されている開口部は、ゴムパッキンを用いて閉止することができる。
【0029】
次に、タイヤ交換について説明する。図6は、タイヤ交換の一連の作業手順を示す図である。タイヤ基体2からタイヤチューブ3を外す際、図3で用いた排気装置20のステージ21上にノーパンクタイヤを配置する。排気に際し、環状中空体12に、注射針のような先端が鋭利な中空体の工具26を装着する。工具26は、その先端が内部空間12aと連通するように装着する。よって、環状中空体12の内部空間12aは中空状の工具26を介して外部と連通する。この状態において、排気装置20の押圧プレート23の把手を下方に降下させると、環状中空体の内部空間12aに封入されている空気は、中空体の工具26を介して外部に排気され、図6(B)に示すように、断面が偏平形状に収縮変形する。この状態を維持しながら、工具26に注射器のような接着剤供給装置を連結し、接着供給装置から工具26を介して接着剤を注入しながら、工具26を引き戻す。その後、排気装置の押圧プレートを上方に回動する。
【0030】
工具26を突き刺した際に形成される孔は、工具26を環状中空体12から引き抜く際に、接着剤により埋められるため、環状中空体12は偏平形状に収縮した状態に維持されるので、タイヤ基体2のビード部とリム1との間に隙間が形成される。続いて、タイヤ基体のビード部とリムとの間にテコのような工具を挿入し、円周方向にそって回せば、リムからタイヤ基体が簡単に取り外される。ノーパンクタイヤからリムが取り外された状態を図6(C)に示す。その後、新品のタイヤを組み立てる工程にしたがって新品のタイヤ基体にタイヤチューブを装着する。このように、タイヤ交換においてもタイヤチューブから排気するだけで、リムとタイヤ基体との間に隙間が形成されるので、タイヤ交換を簡単な作業で行うことが可能である。
【0031】
次に、本発明によるノーパンクタイヤの特性について説明する。初めに、タイヤの総重量について説明する。本発明によるタイヤの総重量は、リム1、タイヤ基体2及び環状中空体のタイヤチューブ3の重量により規定される。本発明では、タイヤチューブを構成する環状中空体は、従来のノーパンクタイヤとは異なり、タイヤチューブの内部にほぼ1気圧の空気が封入されている環状の内部空間が形成されている。このため、タイヤチューブを構成するゴム材料の占める体積自体が相当小さくなり、タイヤチューブの重量が軽くなる。しかも、タイヤチューブは、スポンジゴム材料で構成されているので、従来のノーパンクタイヤよりも相当軽くなる。従って、タイヤの総重量は、タイヤチューブが環状中空体により構成されていること、及び、タイヤチューブがスポンジゴム材料で構成されていることより、従来のノーパンクタイヤよりも相当軽くなり、操縦安定性も改善される。
【0032】
次に、タイヤの走行性能について説明する。走行時において、タイヤには車両の重量及び操作者の体重が接地面2cに作用する。この際、環状中空体は弾性変形可能なゴム材料で構成されると共に中空体であるため、環状中空体の側壁部が搭載重量に応じて弾性変形し、発生する弾性反発力がタイヤ接地面に対して作用する。この際、環状中空体3のサイドウォール部の厚さとゴム材料の硬度とを、使用時における搭載重量を考慮して、適切な弾性反発力が作用するように設計すれば、通常の空気入りタイヤとほぼ同等な走行性能が発揮される。
【0033】
次に、タイヤに釘類が突き刺さりタイヤチューブ3の内部空間3aが外部と連通した状況が発生した場合について説明する。本発明によるノーパンクタイヤに用いられるタイヤチューブの内部空間の内圧は、ほぼ1気圧に設定され、タイヤの弾性反発力は主として環状中空体が負担し、環状中空体の厚さとゴム硬度によりほぼ規定される。従って、釘類が突き刺さってタイヤチューブの内部空間3aが外部と連通しても、タイヤチューブが発揮する弾性反発力はほとんど変化せず、通常の乗り心地が確保される。
【0034】
本発明は上述した実施例に限定されず、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では自転車用のノーパンクタイヤについて説明したが、本発明によるノーパンクタイヤは工事用の1輪車、電動カート用のタイヤ、車椅子用のタイヤ、原動機付け自転車等に用いられるノーパンクタイヤにも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 リム
2 タイヤ基体
3 タイヤチューブ(環状中空体)
10 ゴムチューブ
11 粘着剤層
12 環状中空体
20 排気装置
26 中空体工具
27 接着剤供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリムと、リムに装着される環状のタイヤ基体と、リムとタイヤ基体とにより規定される空間内に装着されるタイヤチューブとを有し、
前記タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料から成り、1気圧又はその近傍の圧力の空気が蜜封されている環状内部空間を含む環状中空体により構成され、
前記環状中空体は、環状内部空間に1気圧の空気が蜜封された場合ほぼ円形の断面形状を形成し、環状内部空間内の空気を排気した場合偏平な断面形状を形成し、前記環状内部空間内の空気が排気された状態において、中空工具を介して前記環状内部空間を外部と連通させた場合弾性復元力により断面がほぼ円形形状に復元することを特徴とするノーパンクタイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のノーパンクタイヤにおいて、走行中に前記環状中空体に損傷が形成され、当該環状中空体の環状内部空間が外部と連通した場合、当該環状中空体は、自己形状保持能力によりほぼ円形の断面形状がそのまま維持され、走行可能なことを特徴とするノーパンクタイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノーパンクタイヤにおいて、前記タイヤチューブは、EVA樹脂スポンジ又はNBRゴムスポンジにより構成されていることを特徴とするノーパンクタイヤ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のノーパンクタイヤにおいて、前記環状中空体の内周面には、自己補修機能を有する粘着剤層が形成され、環状中空体に損傷が形成されても、損傷が形成された箇所は前記粘着剤により補修されることを特徴とするノーパンクタイヤ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のノーパンクタイヤに用いられるタイヤチューブであって、EVA樹脂スポンジ又はNBRゴムスポンジにより構成されていることを特徴とするタイヤチューブ。
【請求項6】
環状のリムと、リムに装着される環状のタイヤ基体と、タイヤ基体とリムとにより規定される空間内に装着されるタイヤチューブとを有し、前記タイヤチューブは、弾性変形可能な単泡性ゴム材料から成り、1気圧又はその近傍の圧力の空気が封入されている密封された環状内部空間を含む環状中空体により構成されるノーパンクタイヤの組立方法であって、
1気圧又はその近傍の圧力の空気が封入されている密封された環状内部空間を含み、断面がほぼ円形の環状中空体を用意する工程と、
前記環状中空体の環状内部空間内の空気を排気して、環状中空体の断面を偏平な形状に変形させる排気工程と、
前記環状内部空間内の空気が排気された環状中空体をタイヤ基体の内側空間内に収納する工程と、
前記環状中空体が収納されたタイヤ基体を前記リムに取り付ける工程と、
前記環状中空体の環状内部空間を中空体の工具を介して外部と連通させることにより、前記環状内部空間内に1気圧の空気を封入すると共に環状中空体の断面形状をほぼ円形に復元させる復元工程とを有することを特徴とするノーパンクタイヤの組立方法。
【請求項7】
請求項6に記載のノーパンクタイヤの組立方法において、前記排気工程において、前記環状中空体の環状内部空間は、先端が鋭利な中空体の工具を介して外部と連通する状態に維持され、環状中空体に対してその回転軸線と平行な方向に作用する押圧力を作用させて環状内部空間内の空気を排気することを特徴とするノーパンクタイヤの組立方法。
【請求項8】
請求項7に記載のノーパンクタイヤの組立方法において、前記環状内部空間内の空気が排気された後前記中空体の工具を取り外す際、中空体の工具を介して環状中空体に接着剤を供給しながら工具を取り外し、工具を環状中空体に取り付ける際に環状中空体に形成された微細な孔を接着剤により補修することを特徴とするノーパンクタイヤの組立方法。
【請求項9】
請求項6、7又は8に記載のノーパンクタイヤの組立方法において、前記復元工程において、前記中空体の工具を環状中空体から取り外す際、当該中空体の工具を介して環状中空体に接着剤を供給しながら工具を取り外し、工具を環状中空体に取り付ける際に環状中空体に形成された微細な孔を接着剤により補修することを特徴とするノーパンクタイヤの組立方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−254785(P2012−254785A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112666(P2012−112666)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(591221167)ミツマ技研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】