説明

ハイドロゲル粒子

【課題】従来にない新規で有用なハイドロゲル粒子を提供する。
【解決手段】ハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相と、その連続相に分散した多数の分散相と、を備える。多数の分散相のそれぞれは、油性成分を含む固相であると共に、内部に酸化チタン粒子が分散している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む多数の分散相が分散したハイドロゲル粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野において、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む多数の分散相が分散したハイドロゲル粒子の適用が検討されている。
【0003】
特許文献1には、かかるハイドロゲル粒子において、油性成分が固体脂及び/又は液体油からなるものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、各分散相が油性成分を含む液相であると共に、内部に酸化亜鉛粒子及び酸化チタン粒子が分散しているものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−159838号公報
【特許文献2】特開2002−20228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、従来にない新規で有用なハイドロゲル粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相と、該連続相に分散した多数の分散相と、を備え、
上記多数の分散相のそれぞれは、油性成分を含む固相であると共に、内部に酸化チタン粒子が分散している。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明に係るハイドロゲル粒子は、固相である分散相に酸化チタン粒子が分散した従来にない新規なハイドロゲル粒子であり、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野への適用において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
本実施形態のハイドロゲル粒子は、非架橋型ハイドロゲルの連続相とその連続相に分散した多数の分散相とを備えている。そして、多数の分散相のそれぞれは、油性成分を含む固相であると共に、内部に紫外線防御能を有する酸化チタン粒子が分散している。
【0010】
このようなハイドロゲル粒子は、固相である分散相に酸化チタン粒子が分散した従来にない新規なハイドロゲル粒子であり、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野への適用において有用である。
【0011】
ここで、本出願における「ハイドロゲル粒子」とは、ハイドロゲル中に油性成分を分散させた1個又は複数個の粒子をいう。なお、ハイドロゲル粒子の概念には、外層である外皮と内層である芯成分とからなる、内層と外層とが同心状のカプセルは含まれない。また、本出願における「ハイドロゲル」とは、水を溶媒としてゲル形成剤から得られたゲルをいう。
【0012】
ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は、外観及び生産性の観点から、10〜10000μmが好ましく、10〜5000μmがより好ましく、30〜3000μmが特に好ましい。なお、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径は、粒子径が500μm以上であれば、写真観察によって、粒子径が500μm未満であれば、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いたレーザ回折散乱法によってそれぞれ測定することができる。
【0013】
ハイドロゲル粒子の形状は、特に限定されるものではないが、曲面で構成された回転体の形状を有することが好ましい。ここで、「曲面で構成された回転体」とは、仮想軸及び連続的な曲線で構成された閉じた図を仮想軸で回転させたものをいい、三角錐や円柱等の平面を有する形状は含まない。ハイドロゲル粒子の形状は、美観の観点から、球状体であることがより好ましい。
【0014】
本実施形態のハイドロゲル粒子は非架橋型ハイドロゲルの連続相を備えている。
【0015】
ハイドロゲル粒子における連続相の含有量は、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧品等への配合時の崩壊を防止する観点から、30〜99質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
【0016】
本出願における「非架橋型ハイドロゲル」とは、ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるものをいう。非架橋型ハイドロゲルは、水への溶解温度が一般に75℃以上のものが好ましく、75〜90℃のものがより好ましく、また、水に溶解させた後に冷却したときのゲル化温度が30〜45℃のものが好ましい。
【0017】
連続相は、非架橋型ハイドロゲルであり、ゲル形成剤と水とを含んでいる。
【0018】
ゲル形成剤としては、例えば、寒天、カラギーナン、ゼラチン等が挙げられる。ゲル形成剤は、これらのうち1種又は2種以上を混合したもので構成することができる。但し、これらの中では、寒天が好ましい。なお、非架橋型ハイドロゲルのゼリー強度は、化粧品等に適用した場合の使用時の感触の観点から、147kPa(1500g/cm)以下であることが好ましく、19.6kPa(200g/cm)〜127kPa(1300g/cm)であることがより好ましい。ゼリー強度は、日寒水式法により求めることができる。具体的には、ゼリー強度は、ゲル形成剤の1.5質量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固させたゲルに、日寒水式ゼリー強度測定器((株)木屋製作所製)により荷重をかけ、20℃においてゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cmあたりの最大質量(g)として求めることができる。
【0019】
連続相におけるゲル形成剤の含有量は、化粧品等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧品等への配合時の崩壊を防止するという観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。また、ハイドロゲル粒子におけるゲル形成剤の含有量は、化粧品等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧品等への配合時の崩壊を防止するという観点から、8.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以下が特に好ましい。
【0020】
本実施形態のハイドロゲル粒子は連続相に分散した多数の分散相を備えている。
【0021】
ハイドロゲル粒子における分散相の含有量は、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧品等への配合時の壊れの防止の観点から、1〜70質量%であることが好ましく、7.5〜70質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。
【0022】
分散相の体積基準平均粒子径は、ハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。具体的には、分散相の体積基準平均粒子径は、化粧品等に適用した場合に皮膚上で滑らかに延ばすことができるという観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。また、分散相の体積基準平均粒子径は、化粧品等に適用した場合の皮膚へのなじみ性が良好であるという観点から、0.01μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。以上より、分散相の体積基準平均粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましく、4〜100μmであることがさらに好ましく、5〜50μmであることが特に好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。なお、分散相の体積基準平均粒子径は、粒子化前の分散液の状態で、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いて測定することができる。
【0023】
本実施形態のハイドロゲル粒子は各分散相が油性成分を含んでいる。
【0024】
全分散相における油性成分の総含有量は、化粧品等に適用した場合の使用時における感触が良好であるという観点から、1〜99質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましい。
【0025】
ハイドロゲル粒子における油性成分の総含有量は、化粧品等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、ハイドロゲル粒子の洗浄時及び化粧品等への配合時の崩壊を防止するという観点から、0.01〜60質量%であることが好ましく、7.5〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
分散相の融点は、高温保存時にハイドロゲル粒子から油性成分が漏出するのを抑制する観点から、35℃以上であることが好ましく、40〜90℃であることがより好ましく、45〜90℃であることがさらに好ましく、50〜80℃であることが特に好ましい。なお、油性成分の融点は、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)によって測定することができる。後述の固体脂や液体油の融点もこれによって測定することができる。
【0027】
油性成分は、固体脂と液体油とを含んでいるものであってもよい。
【0028】
油性成分における固体脂の含有量は、ハイドロゲル粒子からの油性成分が漏出を抑制するという観点及び化粧品等に適用した場合の皮膚上での延ばしやすさの観点から、1〜80質量%であることが好ましく、6〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましく、15〜50質量%であることが特に好ましい。
【0029】
固体脂の融点は、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を抑制するという観点から、35℃以上であることが好ましく、40〜120 ℃であることがより好ましく、50〜90℃であることがさらに好ましく、50〜80℃であることが特に好ましい。
【0030】
固体脂としては、例えば、固体のセラミド、固体のスフィンゴ脂質、固形パラフィン、固体の高級アルコール、ワセリン、固体のシリコーン、固体の油剤及び固体の香料等が挙げられる。固体脂は、これらのうち1種又は2種以上で構成することができる。これらの中では、固体の高級アルコール、特に炭素数14〜22の固体の高級アルコールが好ましい。なお、固体脂を固体の高級アルコールで構成する場合、固形パラフィンを併用することが好ましく、固形iso−パラフィンの併用がより好ましい。
【0031】
固体のセラミドとしては、分散安定性が良好で、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を抑制するという観点から、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが好ましい。
【0032】
固体の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、アラキディルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらのうち、1種だけが含まれていても、また、2種以上が含まれていてもよい。これらの中では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキディルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく、これらの高級アルコールのうち2種類以上を併用することがより好ましい。
【0033】
固形パラフィンとしては、例えば、JIS K 2235に記載されているパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、セレシン、軟ロウ、日本薬局方のパラフィン等が挙げられる。これらのうち、1種だけが含まれていても、また、2種以上が含まれていてもよい。
【0034】
固体のシリコーンとしては、例えば、アルキル変性シリコーン、高分子シリコーン・アルキル共変性アクリル樹脂等が挙げられる。
【0035】
固体の油剤としては、例えば、硬化油や高級脂肪酸が挙げられる。硬化油としては、例えば、原料油がヤシ油やパーム油や牛脂である硬化油が挙げられる。高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0036】
固体の香料としては、例えば、メントールやセドロール等が挙げられる。
【0037】
油性成分における液体油の含有量は、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を抑制するという観点及び化粧品等に適用した場合の皮膚上での延ばしやすさの観点から、50〜99質量%であることが好ましく、20〜94質量%であることがより好ましく、30〜90質量%であることがさらに好ましく、50〜85質量%であることが特に好ましい。
【0038】
液体油は融点が35℃未満であるものをいい、液体の皮膚保護剤、液体の油剤及び液体の香料等が挙げられる。なお、液体油には、皮膚を保護する観点から、液体の皮膚保護剤が含有されていることが望ましい。
【0039】
液体の皮膚保護剤は、皮膚を柔軟にしたり、或いは、平滑にすることにより、肌荒れを防止する成分である。液体の皮膚保護剤としては、例えば、液体のパラフィン、液体のエステル油、液体の高級アルコール、液体のスクワラン、液体のグリセライドなどの液体油脂類;セチロキシプロピルグリセリルメトキシプロピルミリスタミドなどの液体のセラミド;1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールなどの液体のスフィンゴ脂質が挙げられる。これらのうち、1種だけが含まれていても、また、2種以上が含まれていてもよい。
【0040】
液体の油剤としては、例えば、液体の炭化水素油、液体の植物油、液体の脂肪酸等;液体のエチレングリコールジ脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数は12〜36)、液体のジアルキルエーテル(炭素数は12〜36)などの液体の油脂類;液体のシリコーン類等が挙げられる。液体の油剤は、揮発性であっても、また、不揮発性であってもいずれでもよい。液体の植物油としては、例えば、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油等が挙げられる。液体の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、カプリル酸等が挙げられる。液体のシリコーン類としては、シラノール骨格を有するものであればよく、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。また、液体の油剤としては、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルなどの有機紫外線吸収剤も挙げられる。これらのうち、1種だけが含まれていても、また、2種以上が含まれていてもよい。
【0041】
液体の香料としては、従来から使用されている一般的なものが挙げられる。
【0042】
本実施形態のハイドロゲル粒子は各分散相が固相である。
【0043】
これにより、酸化チタン粒子が分散相内に固定化されて安定して存在することとなる。
【0044】
本出願における「固相の分散相」とは、分散相を構成する組成物について、試験機用スタンド(日本電産シンポ(株)製、商品名:FGS−50V−L)に取り付けたデジタルフォースゲージ(日本電産シンポ(株)製、商品名:FGS−0.2R、最小測定荷重2mN)を用いて測定した圧縮破断応力の値が2kPa以上であるものをいう。なお、ここで言う圧縮破断応力とは、荷重曲線の極大値のことである。また、測定子には、平面形状のアダプタを用い、測定子の下降速度を10mm/min、測定温度を25℃とする。
【0045】
本実施形態のハイドロゲル粒子は各分散相の内部に紫外線防御能を有する酸化チタン粒子が分散している。
【0046】
全分散相における酸化チタン粒子の総含有量は、紫外線防御能の観点から、5〜60質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。ハイドロゲル粒子における酸化チタン粒子の総含有量は、紫外線防御能の観点から、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、1〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
酸化チタン粒子は紫外線防御能を有する。ここで、「紫外線防御能を有する」とは、領域が280〜400nmの範囲の紫外線、特に280〜340nmのUVB、UVAIIを吸収または散乱する効果を有することを意味する。
【0048】
酸化チタン粒子の一次粒子の平均粒子径は、塗布時の使用感の点から0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましい。また、平均粒子径は、化粧料を塗布したときの透明性の点から0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.06μm以下であることがさらに好ましい。なお、特に指定のない限り、平均粒子径は、電子顕微鏡写真で測定した粒子径の数平均値である。
【0049】
酸化チタン粒子は、表面処理されていないものであっても、また、表面処理されて、粒子表面に表面活性を抑制する水酸化アルミニウム(或いはアルミナ)、含水ケイ酸などの表面活性抑制剤が付着したものであってもどちらでもよい。
【0050】
一般的に、水酸化アルミニウムや含水ケイ酸といった表面活性抑制剤によって表面処理された酸化チタン粒子は、イオン性水溶性高分子化合物で増粘した水相に添加されると、表面活性抑制剤由来のイオンとイオン性水溶性高分子化合物との相互作用によって、製剤の粘度の増加や低減を誘起し、そのため製剤の安定性を損なうという問題を有している。
【0051】
しかしながら、本実施形態のハイドロゲル粒子によれば、酸化チタン粒子が分散した分散相が固相であり、酸化チタン粒子が分散相内に固定化されて安定して存在することとなるので、酸化チタン粒子が、表面処理されて、粒子表面に表面活性抑制剤が付着したものであっても、表面活性抑制剤に起因した製剤の粘度の増加や低減を遅延させることができ、従って、長期間の製剤の安定性を得ることができる。なお、かかる表面活性抑制剤としては、水酸化アルミニウムや含水ケイ酸の他、例えば、アルミナ、シリカ、ステアリン酸、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0052】
連続相は、非架橋型ハイドロゲルのゲル形成剤及び水以外に、特開2000−126586号公報に記載の糖類、多価アルコール、水溶性高分子化合物、水溶性香料等の水溶性有機化合物の成分を含有していてもよい。
【0053】
連続相及び分散相のそれぞれは、着色剤、防腐剤等の成分を含有していてもよい。
【0054】
着色剤としては、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
【0055】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の無機顔料、タール色素等の有機顔料が挙げられる。
【0056】
染料としては、例えば、油溶性染料、建染染料、レーキ染料等が挙げられる。
【0057】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸及びその塩類等が挙げられる。
【0058】
また連続相及び分散相のそれぞれは、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等に用いられる保湿剤、制汗剤、抗菌剤、殺菌剤、粉体等の成分を含有していてもよい。
【0059】
また、連続相及び分散相のそれぞれには、紫外線防御能を有する酸化亜鉛粒子を含有させることができる。酸化亜鉛粒子の一次粒子の平均粒子径は、塗布時の使用感の点から0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましく、0.01μm以上であることがさらに好ましい。また、平均粒子径は、化粧料を塗布したときの透明性の点から0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.06μm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
本実施形態のハイドロゲル粒子は、前記連続相及び分散相の他、有機紫外線吸収剤、感触調整剤などの油剤を含有し酸化チタン粒子を含有しない油性分散相を備えていてもよい。
【0061】
次に、本実施形態のハイドロゲル粒子の製造方法について説明する。
【0062】
まず、水性成分としてゲル形成剤をイオン交換水と混合し、その溶解温度以上の温度に加熱して十分に溶解させる。一方、油性成分の構成成分を混合して加熱溶解させる。
【0063】
そして、ゲル化温度以上の温度で、水性成分と油性成分とを混合して水中油型分散液を調製する。水中油型分散液を調製する方法は特に限定されない。また、水中油型分散液を調製する際には、各種攪拌機、分散機等による公知の技術を用いることができる。
【0064】
このとき、水中油型分散液の安定性の観点から、水性成分及び/又は油性成分に乳化分散剤を添加することが好ましく、水性成分に乳化分散剤を添加することが特に好ましい。
【0065】
乳化分散剤を添加する場合、その量は、化粧品等に適用した場合の使用時の感触が良好であり、水中油型分散液の安定性及びハイドロゲル粒子に分散させた油性成分の漏出防止の観点から、水中油型分散液全量100質量部に対して0.001〜20質量部とするのが好ましく、0.01〜5質量部とするのがより好ましい。
【0066】
乳化分散剤としては、例えば、高分子乳化分散剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらのうち、1種だけ用いても、また、2種以上を用いてもよい。
【0067】
乳化分散剤の中では、化粧品等に適用した場合の皮膚上での延ばしやすさの観点と、洗浄時及び化粧品等への配合時のハンドリング性が良好であることの観点とから、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は、両性界面活性剤と高分子乳化分散剤との併用が好ましく、非イオン性界面活性剤と高分子乳化分散剤との併用がより好ましく、高分子乳化分散剤単独がさらに好ましい。乳化分散剤として高分子乳化分散剤を用いる場合、界面活性剤の添加を低減又はなくすことができるので、化粧品等に適用した場合に皮膚に塗布した際の界面活性剤によるべとつきを低減させることができる。
【0068】
高分子乳化分散剤としては、例えば、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、特開平7−100356号公報に記載された両性高分子化合物と高級脂肪酸とから合成される複合体、特開平8−252447号公報及び特開平9−141079号公報にそれぞれ記載された水溶性両親媒性高分子電解質、特開平9−141080号公報及び特開平9−141081号公報にそれぞれ記載された水溶性架橋型両親媒性高分子電解質、特開平10−53625号公報に記載されたアクリル酸系共重合体、特許第3329689号、特開平10−330401号公報及び特開平11−106401号公報にそれぞれ記載された多糖誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール或いはその誘導体、ポリアクリルアミド、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の酸化エチレン付加物などの合成高分子化合物、グアヤガム、カラヤガム、トラガントガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、カゼインなどの天然高分子化合物等が挙げられる。これらのうち、1種だけ用いても、また、2種以上を用いてもよい。
【0069】
高分子乳化分散剤の中では、化粧品等に適用した場合に皮膚に塗布した際のべとつきを低減させる観点から、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ(株)製、商品名:PEMULEN等)、ポリビニルアルコール(例えば、日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセノール等)、特許第3329689号公報に記載された多糖誘導体を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールと特許第3329689号公報に記載された多糖誘導体とを併用することがより好ましい。
【0070】
乳化性及び分散性を向上させる観点から、中和された高分子乳化分散剤を添加してもよく、分散前又は分散後の水性成分及び/又は油性成分に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を添加して高分子乳化分散剤を中和してもよい。中和後のpHは、通常、4〜8、好ましくは6〜7であることが望ましい。
【0071】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0072】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン酸等が挙げられる。
【0073】
非イオン性界面活性剤としては、製造されるハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を防止する観点から、非イオン性界面活性剤のHLBが10以下のものを用いることが好ましく、8以下のものを用いることがより好ましく、5以下のものを用いることがさらに好ましく、3以下のものを用いることが特に好ましい。HLBは、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59−5−20)p.8−12に記載の計算式に基づいて求めることができる。
【0074】
これらの非イオン性界面活性剤の中では、製造されるハイドロゲル粒子を化粧品等に適用した場合に皮膚刺激性が小さいという観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いることが好ましく、ソルビタンモノステアレートを用いることがより好ましい。また、非イオン性界面活性剤の中では、製造されるハイドロゲル粒子から油性成分が漏出するのを抑制する観点から、融点が35℃以上であるものを用いることが好ましく、40〜90℃のものを用いることがより好ましく、50〜90℃のものを用いることがさらに好ましく、60〜80℃のものを用いることが特に好ましい。
【0075】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、レシチン等が挙げられる。
【0076】
水中油型分散液を調製した後、その水中油型分散液から一般的な滴下法、噴霧法、或いは、攪拌法によりハイドロゲル粒子を製造する。但し、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を抑制する観点から、攪拌法よりも滴下法、或いは、噴霧法で製造することが好ましい。
【0077】
滴下法は、孔から水中油型分散液を吐出させ、吐出された水中油型分散液がその表面張力又は界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を空気等の気相中又は液相中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。なお、粒径の均一なハイドロゲル粒子を製造する観点から、孔から吐出される水中油型分散液に振動を与えることが好ましい。
【0078】
噴霧法は、噴霧ノズルを用い、噴霧ノズルから分散液を気相に噴霧させると共に、その表面張力によって液滴を形成させ、その液滴を気相で冷却させて固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0079】
攪拌法は、水中油型分散液と実質的に混じり合わない性状を有し且つゲル化温度以上の温度に調整した液に水中油型分散液を投入し、攪拌による剪断力により水中油型分散液を微粒化し、界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を水中油型分散液と実質的に混じり合わない液中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0080】
滴下法、噴霧法、及び攪拌法のいずれの場合も、吐出時、噴霧時、又は投入時の水中油型分散液の温度を、ゲル化温度以上で且つ100℃以下の温度とすることが好ましい。また、美観に優れた球状の粒子を容易に製造することができるという観点から、その水中油型分散液の温度を、ゲル化温度+10℃以上とすることが好ましく、ゲル化温度+20℃以上とすることがより好ましい。なお、この温度の上限は、水の沸点である100℃である。
【0081】
以上のようにして製造されたハイドロゲル粒子を必要に応じてさらに粉砕等により、微細なハイドロゲル粒子にしてもよい。
【0082】
また、上記のハイドロゲル粒子を配合することにより、紫外線防御効果を有する化粧料を得ることができる。
【0083】
その場合、w/o型、o/w型のいずれの化粧料にも適用することが可能であるが、o/w型の化粧料に用いることが好ましい。
【0084】
化粧料中のハイドロゲル粒子の含有量は5〜70質量%が好ましく、10〜65質量%がより好ましい。化粧料中の酸化チタン粒子の含有量は0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0085】
化粧料に、さらに有機紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線吸収効果をより高めることができる。
【0086】
このとき用いる有機紫外線吸収剤としては特に限定されず、油溶性、水溶性のいずれのものも好適に使用することができる。油溶性の有機紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系、アセトラニリック酸系、サリチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系のものが挙げられる。
【0087】
化粧料中の有機紫外線吸収剤の配合量は、剤型等により異なるが、全組成中に0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【実施例】
【0088】
(融点の測定方法)
示差走査熱量計(株式会社リガク製 DSC8230)を用い、実施例1、2で作製したハイドロゲル粒子の分散相の融点を測定した。測定温度範囲は20〜90℃、昇温速度は5℃/minとした。なお、分散相の融解に由来するピークの中で最も高温側のピークを分散相の融点とした。
【0089】
(ハイドロゲル粒子)
以下の実施例1及び2並びに比較例1及び2の化粧料を作製した。それぞれの詳細については表1及び2にも示す。
【0090】
<実施例1>
下記の油性成分及び水性成分からなるハイドロゲルを調製した。各成分の混合組成割合は表1に示す通りである。
○油性成分:
・高級アルコール (花王(株)製、商品名:KALCOL220−80、融点72℃、炭素数18〜22の混合物、ベヘニルアルコール含有量80質量%以上)
・固形パラフィン (日本精蝋(株)製、商品名:HiMic1045、融点70℃)
・酸化チタン微粒子分散液 (信越化学工業(株)製、商品名:SPD−T5、粒子表面に酸化アルミニウム及びステアリン酸を付着させた酸化チタン微粒子40質量部、ポリグリセリル変性シリコーン(信越化学工業(株)製 KF−6104(常温で液体))10質量部、及びシクロペンタシロキサン50質量部からなる分散液)
○水性成分:
・寒天 (伊那食品工業(株)社製 商品名:UP−16、ゼリー強度58.8kPa)
・ポリビニルアルコール
・多糖誘導体 (花王(株)製 商品名:SPS−S、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム)
・イオン交換水
油性成分と水性成分溶液とを質量比35:65の割合となるように合計1000g準備し、油性成分を80℃及び水性成分溶液を90℃でそれぞれ加熱溶解させた後、80℃の油性成分と80℃に冷却した水性成分溶液とをアンカー式攪拌機を用いてで攪拌し、それらの混合液を得た。なお、油性成分の融点は63℃であった。
【0091】
次いで、この混合液を乳化機〔特殊機化(株)製、商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型〕を用いて回転数8000rpmで1分間攪拌して水中油型分散液を調製した。
【0092】
そして、その水中油型分散液を80℃にし、12kg/hrの流量でスプレーノズル((株)いけうち製空円錐ノズル;K−010)から3.4mの高さにおいて、25℃の気相中に噴霧し、気相中を沈降した粒子を回収することで、ハイドロゲル粒子を得た。得られたハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所(株)製、型番:LA−910)を用いて測定したところ250μmであった。
【0093】
そして、アクリル酸共重合体(日光ケミカルズ(株)製 商品名:カーボポールETD2020)、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ(株)製 商品名:PEMULEN TR−2)、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルパラベン、液体苛性カリ(48%)、及び精製水を混合し、それに上記作製したハイドロゲル粒子を仕込み、ハイドロゲル粒子を分散したカルボキシルビニルポリマー水溶液の化粧料を作製した。この化粧料を実施例1とした。なお、化粧料の各成分の混合組成割合は表2に示す通りである。
【0094】
<実施例2>
油性成分に固体脂の固形パラフィンを含めず、油性成分と水性成分溶液との混合質量比を32.5:67.5としたことを除いて、実施例1のものと同一構成のハイドロゲル粒子を作製した。得られたハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径を上記と同様に測定したところ250μmであった。なお、油性成分の融点は65℃であった。
【0095】
そして、これを用いて実施例1と同様の化粧料を作製した。この化粧料を実施例2とした。
【0096】
<比較例1>
油性成分に固体脂の高級アルコール及び固形パラフィンを含めず、従って、液体油だけで油性成分を構成し、油性成分と水性成分溶液との混合質量比を30:70としたことを除いて、実施例1のものと同一構成のハイドロゲル粒子を作製した。得られたハイドロゲル粒子の体積基準平均粒子径を上記と同様に測定したところ250μmであった。
【0097】
そして、これを用いて実施例1と同様の化粧料を作製した。この化粧料を比較例1とした。
【0098】
<比較例2>
ハイドロゲル粒子の代わりに酸化チタン微粒子分散液(信越化学工業(株)製、商品名:SPD−T5、粒子表面に酸化アルミニウム及びステアリン酸を付着させた酸化チタン微粒子40質量部、ポリグリセリル変性シリコーン(信越化学工業(株)製 KF−6104(常温で液体))10質量部、及びシクロペンタシロキサン50質量部からなる分散液)を用いた、つまり、混合液に酸化チタン微粒子分散液を直接分散させたことを除いて、実施例1と同様にして化粧料を作製した。この化粧料を比較例2とした。なお、化粧料の各成分の混合組成割合は表2に示す通りである。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
(試験評価方法)
実施例1及び2並びに比較例1及び2の化粧料のそれぞれについて、室温及び50℃におけるpHを経時的に測定した。
【0102】
(試験評価結果)
図1及び2並びに表3及び4は試験結果を示す。
【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
これらの結果によれば、いずれもpHが初期に一旦低下した後に上昇しているが、実施例1及び2では、pHが一旦低下した後に上昇するのに要する期間が比較例1及び2に比較して短いことが分かる。また、実施例1及び2では、比較例1及び2がゲル化した期間を経過しても、かかるゲル化の兆候は見られなかった。すなわち、実施例1及び2は、比較例1及び2の化粧料よりも安定性が高いことが分かる。なお、初期のpHの低下は酸化チタン粒子の粒子表面に付着したステアリン酸が遊離した影響によるものと考えられ、その後のpHの上昇は酸化チタン粒子の粒子表面に付着した水酸化アルミニウムが遊離した影響によるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、非架橋型ハイドロゲルの連続相に油性成分を含む多数の分散相が分散したハイドロゲル粒子であり、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野への適用において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】室温における経時日数と化粧料のpHとの関係を示すグラフである。
【図2】50℃における経時日数と化粧料のpHとの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋型ハイドロゲルの連続相と、該連続相に分散した多数の分散相と、を備え、
上記多数の分散相のそれぞれは、油性成分を含む固相であると共に、内部に酸化チタン粒子が分散しているハイドロゲル粒子。
【請求項2】
上記油性成分は、融点35℃以上の固体脂と融点35℃未満の液体油とを含む請求項1に記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項3】
上記固体脂は、炭素数14〜22の高級アルコールを含む請求項2に記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項4】
上記固体脂は、さらに固形パラフィンを含む請求項3に記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項5】
上記液体油は、シリコーンを含む請求項1〜4のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項6】
体積基準平均粒子径が10〜10000μmである請求項1〜5のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。
【請求項7】
上記酸化チタン粒子は、粒子表面に表面活性抑制剤が付着している請求項1〜6のいずれかに記載されたハイドロゲル粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303163(P2008−303163A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150731(P2007−150731)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】