説明

ハイドロゲル

【課題】生体に対する粘着力が大きく、保水性に優れ、粘着力の経時低下が少ないハイドロゲルを提供すること。
【解決手段】側鎖に下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂(A)と1価または2価の金属塩(B)を含有。
【化1】



[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは0または正の整数を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイドロゲルに関し、さらに詳しくは生体に対する粘着力が大きく、保水性に優れ、粘着力の経時低下が少ないハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)を用いた高分子ハイドロゲルは、含水率、強度、生体への親和性などに優れることから、ソフトコンタクトレンズ材料、創傷被覆材、経皮吸収製剤の基材、眼、皮膚、関節などの生体ゲル代替材料、生体電極材料、酵素や菌体の固定化担体、保冷用熱媒体、アクチュエーター材料など、広範な用途への応用が検討、実用化されている。
かかるPVA系ハイドロゲルの製造法としては、PVA水溶液を凍結乾燥あるいは繰り返し凍結・融解する方法や、アルデヒド化合物等を架橋剤として用いる方法、ホウ素等の金属化合物によって配位結合や水素結合を形成させる方法、紫外線、放射線等を照射する方法などが知られている。しかし、これらの方法で得られたPVA系ハイドロゲルは粘着力が不充分であり、創傷被覆材、経皮吸収製剤の基材、生体電極材料等の生体表面への粘着力が必要な用途に対しては適用が困難であった。
【0003】
そこで、これらの課題を解決するために、水、PVAおよび二価の金属塩を主成分とする粘着性ハイドロゲル組成物(例えば、特許文献1参照。)や、水、PVAおよびシクロデキストリンを主成分とする粘着性ハイドロゲル組成物(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【特許文献1】特開平1−230659号公報
【特許文献2】特開平5−066151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が特許文献1、2に記載の粘着性ハイドロゲル組成物について詳細に検討を行ったところ、生体に対する粘着力についてはかなり改善されているものの、保水性が不充分であるため長時間にわたって使用する場合には経時で水分が蒸発し、それとともに粘着力が低下することが判明した。
すなわち、生体に対する粘着力が大きく、保水性に優れ、粘着力の経時低下が少ないハイドロゲルが望まれるところである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、側鎖に下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(A)と1価または2価の金属塩(B)を含有するハイドロゲルが上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【化1】


[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは0または正の整数を示す]
【発明の効果】
【0006】
本発明のハイドロゲルは生体に対する粘着力が大きく、保水性に優れ、粘着力の経時低下が少ないため長期間にわたり良好な粘着力を保持することから、創傷被覆材、経皮吸収製剤の基材、生体電極材料等の材料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明で用いられる側鎖に下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(A)について詳しく説明する。
【化1】


上記一般式(1)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又はアルキル基である。該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。また、R4は、単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは0又は正の整数を示す。
【0008】
かかるPVA系樹脂(A)を得るに当たっては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、
【化3】


[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはR7−CO−(式中、R7は、アルキル基である)である。]
【0009】
(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、
【化4】


[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはR7−CO−(式中、R7は、アルキル基である)である。]
【0010】
(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、
【化5】


[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立した水素又はアルキル基である。]
【0011】
(iv)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(5)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、などが好ましく用いられる。
【化6】


[式中、R1、R2、R3、R8、R9はそれぞれ独立した水素又はアルキル基である。]
【0012】
なお、本発明で用いられるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
以下、かかる(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の方法について説明する。
【0013】
[(i)の方法]
本発明で用いられる上記一般式(2)で示される化合物において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはR7−CO−(式中、R7は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
【0014】
式(2)で示される化合物としては、具体的に3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセンなどが挙げられる。なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R1、R2、R3が水素、R4が単結合、R5、R6がR7−CO−でありR7がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、そのなかでも特にR7がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンがより好ましい。
なお、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、ブタジエン法により1,4−ブタンジオールを製造する過程で生じる3,4−ジアセトキシー1−ブテンを使用することも可能である。
【0015】
かかるビニルエステル系モノマーと3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとを共重合するに当たっては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、式(2)で示される化合物に由来する構造単位がポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特にはHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
【0016】
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
【0017】
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル、t−ブチルパーオキシネオデカネート、ジーn―プロピルパーオキシジカーボネート等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられ、重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.01〜0.2モル%が好ましく、特には0.02〜0.15モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
【0018】
得られた共重合体は次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては上記で得られた共重合体をアルコール等の溶媒に溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。代表的な溶媒としては、20℃での誘電率32以下の溶媒が使用され、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、キシレン、アセトン、トリクロロエチレン、イソプロピルアセテート等が挙げられるが、工業的にはメタノールやメタノール/酢酸メチルの混合液が特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0019】
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマーおよび式(2)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルの割合が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
【0020】
[(ii)の方法]
本発明で用いられる上記一般式(3)で示される化合物において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはR7−CO−(式中、R7は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
【0021】
式(3)で示される化合物としては、具体的にはグリセリンモノアリルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、などが挙げられる。なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R1、R2、R3が水素、R4がメチレン、R5、R6が水素であるグリセリンモノアリルエーテルや、R1、R2、R3が水素、R4がメチレン、R5、R6がR7−CO−でありR7がメチル基である2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパンが好ましく、そのなかでもグリセリンモノアリルエーテルがより好ましい。
【0022】
かかるビニルエステル系モノマーと一般式(3)で示される化合物とを共重合およびケン化するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
なお、重合触媒の使用量については、アゾビスイソブチロチトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.05〜0.7モル%とすることが好ましく、特には0.1〜0.5モル%とすることが好ましい。
【0023】
[(iii)の方法]
本発明で用いられる上記一般式(4)で示される化合物において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられる。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3が水素であるビニルエチレンカーボネートが好適である。
【0024】
ビニルエステル系モノマーと一般式(4)で示される化合物とを共重合およびケン化するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
なお、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒によるが、40℃〜沸点程度とすることが好ましく、ケン化反応の反応温度は10〜150℃(さらには10〜60℃、特には20〜50℃)が好ましい。
【0025】
脱炭酸については、通常、ケン化後に特別な処理を施すことなく、上記ケン化条件下で該ケン化とともに脱炭酸が行われ、エチレンカーボネート環が開環することで1,2−ジオール成分に変換される。
また、一定圧力下(常圧〜1×107Pa)で且つ高温下(50〜200℃)でビニルエステル部分をケン化することなく、脱炭酸を行うことも可能であり、かかる場合、脱炭酸を行った後、上記ケン化を行うこともできる。
【0026】
[(iv)の方法]
本発明で用いられる上記一般式(5)で示される化合物において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R8、R9はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3が水素で、R8、R9がメチル基である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランが好適である。
【0027】
ビニルエステル系モノマーと上記一般式(5)で示される化合物とを共重合およびケン化するに当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
なお、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒によるが、40℃〜沸点程度とすることが好ましく、ケン化反応の反応温度は10〜150℃(さらには10〜60℃、特には20〜50℃)が好ましい。
【0028】
上記共重合体のケン化物の脱ケタール化については、上記ケン化がアルカリ触媒を用いて行われる場合は、ケン化した後、更に酸触媒を用いて水系溶媒(水、水/アセトン、水/メタノール等の低級アルコール混合溶媒等)中で脱ケタール化が行われ、1,2−ジオール成分に変換される。脱ケタール化に用いられる酸触媒としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等が挙げられる。
また、上記ケン化が酸触媒を用いて行われる場合は、通常、ケン化後に特別な処理を施すことなく、上記ケン化条件下で該ケン化とともに脱ケタール化が行われ、1,2−ジオール成分に変換される。
【0029】
また、本発明に用いるPVA系樹脂(A)においては、本発明の目的を阻害しない範囲においてその他の不飽和モノマーを共重合性成分として共重合することもできる。該不飽和モノマーとして、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0030】
更に、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、エチレンカーボネート等も挙げられる。又、重合温度を100℃以上にすることにより、PVA主鎖中に1,2−ジオールを1.6〜3.5モル%程度導入したものを使用することが可能である。
【0031】
かくして得られるPVA系樹脂(A)のケン化度は、95モル%以上(さらには97モル%以上、特には98モル%以上であることが好ましく、かかるケン化度が95モル%未満では1価乃至2価の金属塩と配合した際のハイドロゲル生成が困難となるため好ましくない。
【0032】
本発明のPVA系樹脂(A)の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は150〜4500(さらには300〜2800、特には500 〜2600)のものが好ましく、かかる平均重合度が150未満ではハイドロゲルの粘着力、柔軟性が不十分となる場合があり、4500を超えるものは1,2−ジオール構造単位を多く導入することが困難となる場合があるため、好ましくない。
【0033】
また、本発明のPVA系樹脂(A)中の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、0.5〜30モル%(さらには1.0〜15モル%、特には1.5〜10モル%)のものが好ましく、かかる含有量が0.5未満では本発明の効果である粘着性・柔軟性の維持、保水力の改善が充分ではなく、30モル%を超えるものはポリビニルアルコール系樹脂の重合度が低くなりすぎたりするためか、ハイドロゲルの強度、粘着力が低くなる場合があるため、好ましくない。
【0034】
次に、本発明で用いられる1価または2価の金属塩(B)について説明する。
かかる金属塩(B)としては、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化セシウム、硝酸セシウム、硫酸セシウムなどのアルカリ金属の塩酸塩、硫酸塩または硝酸塩、塩化ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸バリウムなどのアルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩または硝酸塩、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、などの遷移金属の塩酸塩、硫酸塩または硝酸塩などが挙げられる。
これらの金属塩(B)の中でも、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硫酸マグネシウム、硫酸リチウムが側鎖1,2―ジオールを有するポリビニルアルコールの結晶性を低下させる効果やジオール成分との相互作用が強く、金属塩を従来のポリビニルアルコールに比べ、より多く内包させることが出来る為か、ハイドロゲルの保水性、柔軟性、粘着性向上、ゲル強度向上の点で好適に用いられる。
【0035】
本発明は、上述の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(A)と1価または2価の金属塩(B)を含有してなるハイドロゲルであり、かかるPVA系樹脂(A)に対する金属塩(B)の含有割合(重量%)は特に限定されないが、1〜250%、好ましくは25〜170%、更に好ましくは40〜150%である。金属塩(B)の含有量がPVA(A)に対して1%未満となる場合、ハイドロゲルの強度、保水性、粘着力の経時変化の低減効果等が低くなり、また250%を超えるとハイドロゲルの柔軟性が低下する場合があるため好ましくない。
【0036】
次に本発明のハイドロゲルの製造法について説明する。
PVA系樹脂の水溶液を調整する際に、該PVA水溶液中に各種無機塩を添加させながら溶解作業を行う必要がある。通常、未変性PVAは、鹸化度95モル%以上になると常温水には、溶解し難くなる。従って、このような常温で溶解し難いPVAを無機塩存在下で溶解するには、温度を97℃以上に上げたり、オートクレーブや高圧クッカー等を使用して110℃程度で溶解しなければならないという問題があった。しかし、本発明の側鎖1,2―ジオールを有するPVAならば、無機塩存在下でも、オートクレーブや高圧クッカーを用いなくても充分に溶解することが可能性であり、また、従来のPVAの様な溶解時の発泡の問題なく、無機塩含有PVA水溶液の調整時の作業性を大幅に改善することが可能となった。
本発明のハイドロゲルの製造法は特に限定されないが、例えばPVA系樹脂(A)と金属塩(B)を含有する水溶液を冷却ゲル化させる方法が好ましく用いられる。
かかる冷却ゲル化法による本発明のハイドロゲルの製造法において、PVA系樹脂(A)と金属塩(B)を含有する水溶液の濃度は10〜80%(重量%)(さらには25〜75%、特には40〜75%)であることが好ましい。かかる濃度が10重量%未満ではハイドロゲルの保水性、強度、粘着力が低くなりすぎる場合があり、逆に80重量%を超えるとハイドロゲルの粘着性が低下したり、柔軟性が低下する場合があるため好ましくない。
【0037】
かかる水溶液を使用目的に応じた任意の形状の容器や鋳型中に、あるいは金属板、ガラス板、プラスチック板やフィルム上に流延した後、低温条件下に置くことで本発明のハイドロゲルが得られる。その場合の温度は40℃〜−30℃(さらには25〜−20℃、特には8〜−10℃)であることが好ましい。かかる温度が40℃より高いとハイドロゲルの生成が困難となる場合があり、逆に−30℃より低温の場合は工業的な生産性の面において問題となる場合があるため好ましくない。
【0038】
かくして得られたハイドロゲルは、ゲル強度を向上させる目的で各種後処理を施してもよい。かかる後処理としては、冷却状態で真空乾燥し水分含有量を調整する方法、一旦融解させた後、再び冷却ゲル化させ、そのサイクルを繰り返して結晶化度を向上させる方法、氷点以上の温度に一定時間保持して結晶成長させる方法、放射線、電子線、紫外線を照射して架橋密度を上げる方法などが挙げられ、これらを組み合せることも可能である。
【0039】
本発明におけるハイドロゲルは、上述したように一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(A)と、1価または2価の金属塩(B)および水を含有するものであり、固体でありながら分子間に多量の水分を安定して含有するため、弾力性と柔軟性を有するものである。
かかるハイドロゲル中の水の含有量は、通常、20〜90%(重量%)である。
また、かかるハイドロゲルは保水性および粘着力保持性に優れており、後述で定義される離水率が20%以下、好ましくは17%以下である。また、後述で定義される36時間後の粘着面積保持率が60%以上、好ましくは70%以上である。
なお、ハイドロゲルの構造および大きさは特に限定されないが、例えば粒径1〜10mmの粒状物として、あるいは厚さ0.5〜5mmのシート状物として使用される。
【0040】
本発明のハイドロゲルは保水性および生体への粘着性に優れるものであるが、さらにこれらの特性を向上させるためにグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、シクロデキストリン、プルラン、グアガムなどの多糖類、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプン類、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子類を併用することも可能である。また、ゲル強度や硬度を向上させるため、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどの無機粉体、天然繊維、合成繊維などの短繊維、あるいはその織物や不織布などをハイドロゲル製造時に水溶液中に共存させることで、これらの材料とハイドロゲルからなる複合材料とすることも可能である。
【0041】
また、本発明のハイドロゲルを経皮吸収製剤の基材あるいは創傷被覆材として適用させる場合には、ハイドロゲル中に経皮吸収性薬剤、経皮吸収促進剤、消毒剤、抗菌剤、血行改善薬、生理活性物質などを含有させれば良く、その製造法としては、ゲル化前の水溶液に薬剤を添加しゲル化させる方法が好ましい。
その他、本発明の目的を阻害しない範囲において、吸水性樹脂、pH調節剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、多価アルコール等を添加することも可能である。
また、本発明のハイドロゲルの用途として生体研究用、生体治療用、生体診断用等の生体電極用のイオン導電性粘着剤、及び経皮吸収製剤用、冷却治療用等の含水貼附剤の基剤として用いられたり、帯電を防止能を有するハイドロゲル組成物にも有効である。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0043】
製造例1:PVA系樹脂(A1)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノール50g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン120g(6モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.03モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を開始した酢酸ビニルの重合率が72%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A1)を得た。
得られたPVA系樹脂(A1)のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.5モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、1450であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6.2モル%であった。なお、NMR測定には日本ブルカー社製「AVANCE DPX400」を用いた。
【0044】
製造例2:PVA系樹脂(A2)
製造例1において、ケン化の途中でサンプルを抜き取ることによりPVA系樹脂(A2)(部分鹸化物:ケン化度 97.5モル%)を得た。
【0045】
製造例3:PVA系樹脂(A3)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール
190g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン60.5g(2.28モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.06モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、67℃で重合を開始したと同時に3,4−ジアセトキシー1−ブテンの5.4%メタノール溶液を均一に滴下仕込みを行ない酢酸ビニルの重合率が85.3%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して 9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A3)を得た。
得られたPVA系樹脂(A3)のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.6モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、1320であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMRで測定して算出したところ3.2モル%であった。
【0046】
製造例4:PVA系樹脂(A4)
製造例1において、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの配合量を300g(15モル%対仕込み酢酸ビニル)とし、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液の添加量を、共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して11 ミリモルとなる割合にした以外は、製造例1と同様に重合およびケン化を行ない、ケン化度 99.2モル%、平均重合度950、1,2−ジオール構造単位の含有量14.9モル%のPVA系樹脂(A4)を得た。
【0047】
製造例5:PVA系樹脂(A5)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1500g、メタノール
150g、グリセリンモノアリルエーテル138g(6モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が81%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、濃度55%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して6ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A5)を得た。
得られたPVA系樹脂(A5)のケン化度は、97.8モル%であり、平均重合度は、460であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は5.8モル%であった。
【0048】
製造例6:PVA系樹脂(A6)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール190g、ビニルエチレンカーボネート40.1g(2.28モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.06モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、67℃で重合を開始したと同時にビニルエチレンカーボネートを含む10.17%メタノール溶液を仕込みHANNA法に従って重合を行ない、重合率85.3%までに116ml仕込んだ。酢酸ビニルの重合率が85.3%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A6)を得た。
得られたPVA系樹脂(A6)のケン化度は、99.6モル%であり、平均重合度は、1360であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は3.1モル%であった。
【0049】
製造例7:PVA系樹脂(A7)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノール100g、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン14.9g(1モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.045モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、65℃で重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。かかるケン化物を3Nの塩酸(水/メタノール=1/1の混合溶媒)中に分散させ、60℃で脱ケタール化を行ない、生成したPVA系樹脂(A7)を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(A7)のケン化度は、99.3モル%であり、平均重合度は、1110であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は0.95モル%であった。
【0050】
実施例1
PVA系樹脂(A1)100部および硝酸カルシウム(B)130部を含む濃度65%の水溶液(80℃で1時間加熱溶解)を調製し、かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、これを−10℃のフリーザー中に一昼夜おいてゲル化させ、厚さ約1mm、重量固形分64%のハイドロゲルシートを得た。かかるシートを用いて、以下の項目を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
(離水率)
得られたハイドロゲルシートを5cm×5cmに切り出し、23℃、55%RHの恒温恒湿器中に48時間吊り下げ、離水率(%)を測定した。なお、離水率(%)の算出にあたっては、試験前のハイドロゲルシートの重量(Y1)および試験後のハイドロゲルシートの重量(Y2)(いずれもg)を求め、下式にて離水率(%)を求めた。
離水率(%)=[(Y1―Y2)/Y1]×100
【0052】
(粘着面積保持率)
得られたハイドロゲルシートを5cm×5cmに切り出し、被験者10名の肩に貼付し36時間後と48時間後のハイドロゲルシートと皮膚との粘着面積(X)(cm2)を測定、下式にて粘着面積保持率(%)を算出した。表1には10名の平均値を示す。
粘着面積保持率(%)=(X/25)×100
【0053】
実施例2〜7
実施例1において、PVA系樹脂(A1)に替えて、製造例2〜7によるPVA系樹脂(A2〜A7)を用いた以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
実施例8
実施例1において、PVA系樹脂(A1)100部、硝酸カルシウム(B)200部とした以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシート得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
実施例9
実施例1において、硝酸カルシウム(B)に替えて硝酸マグネシウム(B)を用いた以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
実施例1において、硝酸カルシウム(B)を用いなかった以外は実施例1と同様にしたがハイドロゲルシートは得られなかったので、評価は出来なかった。
【0057】
比較例2
実施例1において、PVA系樹脂(A1)に替えて、ケン化度99.9モル%、平均重合度1400の未変性PVA系樹脂を用い無機塩含有のPVA水溶液を調整時に高圧クッカーを用いて110℃、40分かけて溶解作業を行った以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
〔表1〕樹脂組成物の特性

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のハイドロゲルは生体に対する粘着力が大きく、保水性に優れ、粘着力の経時低下が少ないため長時間にわたり良好な粘着力が得られることから、創傷被覆材、経皮吸収剤の基材、生体電極材料等の材料として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂(A)と1価または2価の金属塩(B)を含有することを特徴とするハイドロゲル。
【化1】


[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは0または正の整数を示す]
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)がビニルエステル系モノマーと一般式(2)で表される化合物との共重合体をケン化して得られたことを特徴とする請求項1記載のハイドロゲル。
【化2】


[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R5およびR6はそれぞれ独立して水素又はR7−CO−(式中、R7はアルキル基である)である]
【請求項3】
一般式(2)で表される化合物が3,4−ジアシロキシ−1−ブテンであることを特徴とする請求項2記載のハイドロゲル。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)がビニルエステル系モノマーと一般式(3)で表される化合物との共重合体をケン化して得られたことを特徴とする請求項1記載のハイドロゲル。
【化3】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R4は単結合またはアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し、R5およびR6はそれぞれ独立して水素又はR7−CO−(式中、R7はアルキル基である)である]
【請求項5】
一般式(3)で表される化合物がグリセリンモノアリルエーテルであることを特徴とする請求項4記載のハイドロゲル。
【請求項6】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)がビニルエステル系モノマーと一般式(4)で表される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸して得られたことを特徴とする請求項1記載のハイドロゲル。
【化4】

[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立した水素原子又はアルキル基である。]
【請求項7】
一般式(4)で表される化合物がビニルエチレンカーボネートであることを特徴とする請求項6記載のハイドロゲル。
【請求項8】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)がビニルエステル系モノマーと一般式(5)で表される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化して得られたことを特徴とする請求項1記載のハイドロゲル。
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R8、R9はそれぞれ独立した水素原子又はアルキル基である。]
【請求項9】
一般式(5)で表される化合物が2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソランであることを特徴とする請求項8記載のハイドロゲル。
【請求項10】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)のケン化度が95モル%以上であることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載のハイドロゲル。
【請求項11】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)に対する金属塩(B)の含有割合(重量%)が1〜200%であることを特徴とする請求項1〜10いずれか記載のハイドロゲル。










【公開番号】特開2007−31601(P2007−31601A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218104(P2005−218104)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】