説明

ハイドロフルオロアルカンおよびアシル化シクロデキストリンを含む医薬スプレー製剤

部分的におよび完全にアシル化されたシクロデキストリンがHFA噴射剤の中で可溶であることが見出され、それ故に、懸濁液および溶液の両方として安定なHFA pMDI類を製剤化するために使用され得る、新規な製剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
序言
薬効物質の吸入送達の様式の一つは、pMDI類(加圧式定量噴霧式吸入器類)を使っている。これらは、液化噴射剤、現在ではHFA(ハイドロフルオロアルカン)またはHFA 227もしくはHFA 134aのような、HFA類の混合物の中の薬物の懸濁液または溶液からなっている。
【0002】
安定なpMDI製剤を形成するためには、安定剤もしくは可溶化剤を加えることがしばしば必要である。安定剤はポリマーもしくは表面活性剤であり得て、薬物の懸濁剤の中で粒子の凝集および相分離を低減することを助けている。可溶化剤は、エタノールのような、HFA類と混和性の有機溶媒であり得て、HFA類の中に薬物を溶解することを助けている。多くの場合には、両方の安定剤および可溶化剤の添加が必要であり得て、そのときには安定剤は、例えば可溶化のために、共溶媒を必要とする。
【0003】
HFA pMDI類を製剤化するために使用できる添加物(安定剤および可溶化剤)の範囲は、HFA噴射剤の貧弱な溶媒性質のために、限定されている。結果として、HFA pMDI製剤に関連する特許発明の大部分は、両方の可溶化剤および安定剤の添加に頼っている。しかしながら、本研究においては、それらが効果的な懸濁液の安定剤であるのに十分な量で、もしくは可溶化剤として使用されるのに十分な量でHFA類の中で自然に可溶である添加物が見出された。
【0004】
ポリマーのおよび表面活性剤の安定剤は、薬物粒子の表面に吸着して、かくして立体的安定化の機構を誘発することによりHFA中の薬物懸濁液に溶解性を付与する。安定剤が効果的であるためには、それらは、分散媒体の中に適当なレベルで、少なくとも0.5%w/wの過剰で、この限度は添加物に依存するけれども、可溶である必要がある。
【0005】
可溶化剤の作用様式は、それらが薬物質のための溶媒として作用するので、更に簡単である。それらがHFA類と混和性である限りは、HFA−可溶化剤混合物の中に薬物を溶液の状態にすることができる。シクロデキストリンの場合には、それらの作用様式は異なっている。シクロデキストリンは薬物分子と複合体を形成することが出来て、HFA類の中に可溶化されるのはこの複合体である。
【0006】
本発明の背景
シクロデキストリンは、医薬品製剤の製剤化のために、特にそうでなければ低溶解性の薬物の溶解度を増加させるために、もしくは徐放性の性質を付与するために、広範に使用されている。
【0007】
大いに稀に、シクロデキストリンは、HFA類の中の吸入製品の製剤化に使用されている。現在までに見出される唯一つの例は、WO 03/066031である。大抵のシクロデキストリン、特に天然のシクロデキストリンは、HFA類に不溶であるので、HFA製剤の中でシクロデキストリンの使用は稀である。WO 03/066031では、シクロデキストリンは薬物の懸濁液を安定化するために使用されている。しかしながら、これは、少なくとも一つの共溶媒(PEG:ポリエチレングリコールのような、一つの親水性添加剤)、しかし好ましくは二つ(一つの親水性添加剤およびエタノール)の添加によってのみ可能である。これらの共溶媒は、シクロデキストリンを可溶化して、かくしてそれらを安定剤として有用にする。
本発明は、如何なる共溶媒も必要としない正しいシクロデキストリンを確認した。かくしてWO 03/066031の発明に主要な改良を構成する。
【0008】
本発明の説明
幾らかの修飾シクロデキストリンがHFA噴射剤の中に自然に可溶であることが、今や見出された。それらは、部分的にもしくは完全にアシル化されたアルファー(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)シクロデキストリンである。
【0009】
可溶化された修飾シクロデキストリンが薬物の懸濁液のための非常に良好な安定剤であること、および、シクロデキストリンが薬物分子のための複合体形成剤として作用し得るために、溶液のpMDI類を形成するためにもそれらを使用することができることが見出された。
最初の態様では、本発明は、部分的にもしくは完全にアシル化されたアルファー(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)シクロデキストリンを含むHFA製剤を提供する。
本発明の一つの実施態様では、製剤は懸濁液の形態である。
【0010】
好ましい実施態様では、本発明は、局所のもしくは全身の投与のために、一つもしくはそれ以上の活性分子の肺へのまたは鼻への送達のための安定な分散剤を提供する。それは、噴射剤もしくは噴射剤の混合物の中で一つまたはそれ以上の活性成分と共に修飾シクロデキストリンの物理的混合物を含んでいる。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、懸濁製剤を作成する方法であって、最初に修飾シクロデキストリンを、HFA 134もしくはHFA 227、または両方の混合物の中で可溶化し、0.001%w/w〜20%w/w、好ましくは0.001%w/w〜10%w/w、最も好ましくは0.001%w/w〜5%w/wの、必要とされる濃度レベルにする方法を提供する。次いで、活性成分(薬物)をシクロデキストリン−HFA溶液に加えて、pMDIキャニスターの中に充填する。これに代えて、既知量の薬物を個々のキャニスターに加えて、シクロデキストリン−HFA溶液を重量既知の缶に加えることができる。かくして形成した薬物の懸濁液を、適切な手段:攪拌機、超音波エネルギー等、により均質化することができる。
【0012】
もう一つの態様では、本発明は、pMDI溶液製剤の生成に関与する。薬物およびシクロデキストリンを一般的な溶媒の中に最初に可溶化する。2、3日間に亘って溶液を平衡化させる。複合体が形成されるときに、それを、例えば噴霧乾燥、凍結乾燥もしくは超臨界液体抽出により抽出する。次いで、形成された固体を、修飾シクロデキストリンの溶解度のために、HFAもしくはその混合物の中で可溶化する。
【0013】
修飾シクロデキストリンは、図1に示される、一般式:R−CO−のアシル基R'で部分的にもしくは完全に置換されたアルファー(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)シクロデキストリンである。特に、置換する基を、以下の選択肢から選ぶことができる:アセチル、アクリロイル、アラニル、アミノカルボニル、β−アラニル、アルキルアゼラオイル、ベンゾイル、tert−ブトキシ、ブチニル、カプロイル、クロトモイル、ホルミル、アルキルグルタリル、グリコロイル、グリシル、グリオキシロイル、ヘプタデカノイル、ヒドロペルオキシ、ヒドロキシアミノ、イソブチニル、イソバレニル、ラクトイル、レニル、レブリノイル、アルキルマロニル、マンデロイル、メタクリロイル、ミリストイル、モナノイル、アルキルオキサリル、パルミトイル、アルキルピメロイル、ピバロイル、プロパニル、サリチロイル、セリル、ソルボイル、ステアロイル、アルキルスベロイル、アルキルスクシニル、テロニル、トルノイル、バレリル、バリル。好ましくは、アセチル基は、ホルミル、アセチルおよびプロパニルである。
【0014】
薬物は、吸入送達に用いられる任意の医薬的に活性な成分である。それを、呼吸器疾患の処置におけるような、目標とされる送達に必要であるならば、微粉化することができる。それは、任意の治療的もしくは診断的薬剤から選択され得る。例えば、それは、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、気管支収縮剤、肺表面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエン阻害剤もしくはアンタゴニスト、抗コリン作動剤、肥満細胞阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、麻酔剤、抗結核剤、造影剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの併用の群から選択され得る。
【0015】
特に、本発明にしたがう薬理学的に活性な薬剤には、ブデソニド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸エステルとして)、モメタゾン(例えば、フランカルボン酸エステルとして)、ベクロメタゾン(例えば、17−プロピオン酸もしくは17,21−ジプロピオン酸エステルとして)、シクレソニド、トリアムシノロン(例えば、アセトニドとして)、フルニソリド、ゾチカソン(zoticasone)、フルモキソニド(flumoxonide)、ロフレポニド、ブチクソコルト(butixocort)(例えば、プロピオン酸エステルとして)、プレドニゾロン、プレドニゾン、チプレダン、WO 2002/12265、WO 2002/12266およびWO 2002/88167にしたがうステロイドエステル(I)、例えば、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル、および6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、DE 4129535にしたがうステロイドエステル(II)等のような糖質コルチコステロイドが含まれる。長時間作用性βアゴニストには、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、TA 2005(化学的に2(1H)キノロンとして確認されている)、8−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[[2−(4−メトキシ−フェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−モノ塩酸塩, [R−(R,R)] (ケミカルアブストラクトサービス登録番号137888−11−0としても確認され、そして米国特許第4,579,854号の中に開示されている)、ホルムアニリド誘導体(III)、例えば、WO 2002/76933に開示されるように、3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}−ブチル)ベンゼンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド誘導体(IV)、例えば、WO 2002/88167に開示されるように、3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}−ブチル)ベンゼンスルホンアミド、ヒアルロン酸等が含まれ、これらに限定されない。これらの化合物の幾らかは、薬理学的に許容され得るエステル、塩、水和物のような、溶媒和物、または、もしあれば、そのようなエステルもしくは塩の溶媒和物の形態で、投与され得る。上の化合物のラセミ混合物ならびに一つもしくはそれ以上の光学異性体の両方は、本発明の範囲内である。
【0016】
本発明にしたがって使用のための好ましい薬理学的に活性な糖質コルチコステロイド剤には、フランカルボン酸モメタゾン、シクレソニド、ゾチカソン、フルモキソニド、WO 2002/88167からのステロイド、例えば、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル、および6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、DE 4129535からのステロイド、プロピオン酸フルチカゾンおよびブデソニドが含まれ、なおさらに好ましいのはブデソニドである。好ましい薬理学的に活性な長時間作用性βアゴニストは、サルメテロールキシナホエート、ホルムアニリド誘導体(III)、ベンゼンスルホンアミド誘導体(IV)およびホルモテロール(例えば、フマル酸エステル二水和物として)であって、なおさらに好ましいのはフマル酸ホルモテロール二水和物である。
【0017】
薬理学的に活性な成分の併用には、プロピオン酸フルチカゾン/サルメテロールキシナホエート、シクレソニド/フマル酸ホルモテロール二水和物、フランカルボン酸モメタゾン/フマル酸ホルモテロール二水和物、プロピオン酸フルチカゾン/フマル酸ホルモテロール二水和物、およびブデソニド/フマル酸ホルモテロール二水和物が含まれる。
【0018】
他の好ましい併用には、WO 2002/88167からのステロイド/WO 2002/76933からのホルムアニリド誘導体、WO 2002/88167からのステロイド/WO 2002/88167からのベンゼンスルホンアミド誘導体、DE 4129535からのステロイド/フマル酸ホルモテロール二水和物、ゾチカソン/WO 2002/88167からのベンゼンスルホンアミド誘導体、およびゾチカソン/ホルムアニリド誘導体が含まれる。
最も好ましい併用は、ブデソニド/フマル酸ホルモテロール二水和物である。
【0019】
図1は、修飾βシクロデキストリンの一般構造を示している。“R'”は、シクロデキストリン環上でアシル官能基で置換され得る基である。
図2は、過アセチル化βシクロデキストリン有り(右の容器)および無し(左の容器)での、HFA 227中の硫酸テルブタリンのpMDI懸濁液を示している。左の試料:10秒振とう後の、HFA 227中の硫酸テルブタリン(C=1.03%w/w)。右の試料:5分23秒振とう後の、HFA 227中の飽和溶液の中の硫酸テルブタリン(C=0.97%w/w)。
【0020】
図3は、HFA 227中のHFA pMDI溶液製剤を示している。左の試験管は、HFA 227中にC=0.04%w/wでブデソニドを含有している。中央の試験管は、懸濁剤のセクションで調製された通りの、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の物理的混合物を含有している。右の試験管は、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の噴霧乾燥された1:1複合体を含有している。
【実施例】
【0021】
HFA類中の過アセチル化シクロデキストリンの溶解度
HFA噴射剤中の過アセチル化シクロデキストリン(アルファ、ベータおよびガンマ)の溶解度を連続pMDIバルブでクリンプした透明なPETバイアルの中で目視で評価した。既知量のシクロデキストリンをPETバイアルの中に秤量した。連続バルブをバイアル上でクリンプして、HFA類を圧力下に必要とされる量まで加えた。試料を放置して、一週間に亘り平衡化して、目視で検査した。室温での修飾シクロデキストリンの溶解度を、懸濁液の中にまだ固体粒子を有した試料との対比によって澄明であった試料を区別することにより、評価した。
【0022】
この方法に従って、HFA 227中の過アセチル化アルファ(α)シクロデキストリンの溶解度は、0.5%w/w以上であると示された。HFA 134a中のその溶解度は、1%w/w以上であると示された。
HFA 227中の過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンの溶解度は、0.1%w/w以上であると示された。HFA 134a中のその溶解度は、1%w/w以上であると示された。
【0023】
HFA 227中の過アセチル化ガンマ(γ)シクロデキストリンの溶解度は、1%w/w以上であると示された。HFA 134a中のその溶解度は、1%w/w以上であると示された。
参考までに、対応する天然のシクロデキストリンは、両方の噴射剤の中で不溶である。過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンを、本発明を例示するために選んだ。
【0024】
過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンの懸濁液の安定剤としての有効性
過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンのHFA薬物の懸濁液の安定剤としての有効性を、薬物化合物を選択して試験した。
【0025】
最初に、HFA類中の純粋な薬物の参照試料を作製した。次いで、可溶化された過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンおよび微粉化された薬物を含む試料を作製した。これらの試料における薬物の濃度は、参照試料における濃度と同一であった。シクロデキストリン濃度は飽和レベルであった。
【0026】
参照試料(純粋な薬物)を、薬物をPETバイアルの中に秤量することにより作製した。次いで、バイアル上でバルブをクリンプして、噴射剤を圧力下に加えた。次いで、バイアルを少なくとも15分間超音波処理して、放置して、一週間平衡化した。
【0027】
薬物−シクロデキストリン試料を、既知量の薬物をPETバイアルの中に秤量することにより作製した。次いで、バイアルを連続バルブでクリンプした。過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンの溶液をかくして作製した:大量のシクロデキストリンを大きい金属缶の中に入れ、それをクリンプして、噴射剤の一つで充填した。この缶を放置して、少なくとも一週間室温で平衡化した。平衡化に達したときに、飽和のシクロデキストリン溶液を、0.2nmのPTFEフィルターを通して、既知の薬物量を含有するPETバイアルの中にろ過した。この方法で、最大量の可溶なシクロデキストリンを懸濁液の中で使用した。次いで、バイアルの中の薬物の濃度を、加えられた噴射剤/シクロデキストリンの重量の正確な記録により計算した。
次いで、両方の試料(純粋な薬物およびシクロデキストリンを伴うもの)に存在する相分離現象を写真撮影によって記録した。
HFA pMDI懸濁液の実施例の選択は以下である。
【0028】
硫酸テルブタリン
HFA 227中の試料
2個の試料を作製した:純粋な薬物をC=1.03%w/wで含有する参照試料、およびその飽和レベルでの過アセチル化ベータ(β)シクロデキストリンと共に同様な薬物濃度(C=0.97%w/w)を含む試料。HFA 227を加圧充填により加えながら秤量することにより、試料を作製した。修飾シクロデキストリンを含有する試料は、シクロデキストリン無しの試料より遥かに安定であった。純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。図2を参照されたい。
【0029】
HFA 134a中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=1.16%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=1.18%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に大いに改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するより、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0030】
サルブタモール塩基
HFA 227中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.1%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.11%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0031】
HFA 134a中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.13%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.11%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0032】
硫酸サルブタモール
HFA 227中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.11%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.12%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0033】
HFA 134a中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.14%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.11%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0034】
フマル酸ホルモテロール二水和物
HFA 227中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.017%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.0014%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0035】
HFA 134a中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.021%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.019%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
【0036】
ブデソニド
HFA 227中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.27%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.27%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で大いに改良された。
【0037】
HFA 134a中の試料
前述の実施例における方法と類似の方法を用いて、純粋な薬物(C=0.32%w/w)を含有する参照試料、ならびに薬物(C=0.25%w/w)および修飾シクロデキストリンをその飽和レベルで含有する試料を作製した。安定化された薬物懸濁液のクオリティーは、修飾シクロデキストリンの添加で前述の実施例と同様に改良された。即ち、純粋な薬物試料に対するよりも、その相分離、綿状沈殿および沈降分離は大いに遅く、懸濁液は大いに微細であって、ヘッドスペース付着は少なかった。
以下の実施例は全て、HFA pMDI溶液製剤の生成に関する。
【0038】
過アセチル化βシクロデキストリンの可溶化剤としての有効性
修飾シクロデキストリンの可溶化剤としての有効性を、ブデソニドおよび過アセチル化βシクロデキストリンでもって試験した。これらの二つの分子に対する良効な溶媒はクロロホルムである。クロロホルム中でシクロデキストリンを伴うブデソニドの五つの溶液を秤量により作製した。シクロデキストリン対ブデソニドのモル比を増加させるように、それらを作製した。即ち、以下のブデソニド:シクロデキストリンの比率を作製した:1:1、1:2、1:3、1:4および1:5。これらの溶液を放置して、2、3日間平衡化した。次いで、溶液を噴霧乾燥して、薬物−シクロデキストリン複合体の固体粒子を形成した。次いで、乾燥粉末をガラス管の中に秤量して、既知量の噴射剤を圧力下に加えた。目視の観察を実施した。比較のために、2つのタイプの参照試料を作製した。一番目の参照試料は、薬物−シクロデキストリンの噴霧乾燥された複合体の中の薬物と同一の濃度における純粋な薬物の懸濁液であった。二番目の参照試料は、噴霧乾燥された複合体における濃度と同一の濃度における薬物およびシクロデキストリンの物理的混合物であった。
【0039】
HFA 227中の1:1ブデソニド−シクロデキストリン複合体
1:1固定モル比のブデソニド:過アセチル化βシクロデキストリンの溶液をクロロホルムの中で作製した。この溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された粉末を、噴射剤の添加で、HFA 227の中に溶解させた。溶解は瞬間的であって、澄明な溶液に至った。
【0040】
図3は、薬物−シクロデキストリン複合体を含むHFA pMDI溶液製剤の形成の写真的証拠を示している。左にある試験管は、HFA 227中にC=0.04%w/wでブデソニドを含有し、中央の試験管は、前述のセクションで調製された通りの、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の物理的混合物を含有している。これらの2個の試料は懸濁液である。右にある、第3の試験管は、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の噴霧乾燥された複合体を含有している。この第3の試験管は、澄明な溶液を含有している。
それ故に、修飾シクロデキストリンを含むHFA pMDI溶液製剤を形成することは可能である。
【0041】
HFA 227中の1:2ブデソニド−シクロデキストリン複合体
1:2固定モル比のブデソニド:過アセチル化βシクロデキストリンの溶液をクロロホルムの中で作製した。この溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された粉末を、噴射剤の添加で、HFA 227の中に溶解させた。溶解は瞬間的であった。
【0042】
HFA 227中の1:3ブデソニド−シクロデキストリン複合体
1:3固定モル比のブデソニド:過アセチル化βシクロデキストリンの溶液をクロロホルムの中で作製した。この溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された粉末を、噴射剤の添加で、HFA 227の中に溶解させた。溶解は瞬間的であった。
【0043】
HFA 227中の1:4ブデソニド−シクロデキストリン複合体
1:4固定モル比のブデソニド:過アセチル化βシクロデキストリンの溶液をクロロホルムの中で作製した。この溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された粉末を、噴射剤の添加で、HFA 227の中に溶解させた。溶解は瞬間的であった。
【0044】
HFA 227中の1:5ブデソニド−シクロデキストリン複合体
1:5固定モル比のブデソニド:過アセチル化βシクロデキストリンの溶液をクロロホルムの中で作製した。この溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された粉末を、噴射剤の添加で、HFA 227の中に溶解させた。溶解は瞬間的であった。
【0045】
結論
図2は、アシル化βシクロデキストリンのHFA pMDIの薬物懸濁液への添加が、懸濁液の性質を劇的に改良することを示している。特に、それは、装置の付着が僅かないし全く無いことを示している、微細に分散された懸濁液を形成することを助けている。これらの懸濁液は、シクロデキストリンを含まない懸濁液よりも大いに低い速度で相分離をして、容易に再分散可能である。さらに、保管時に凝集化の兆候は見られなかった。
図3は、薬物−シクロデキストリン複合体の適切な処理によりHFA pMDIの溶液製剤を開発することが可能であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、修飾βシクロデキストリンの一般構造を示している。“R'”はシクロデキストリン環上でアシル官能基で置換され得る基である。
【図2】図2は、過アセチル化βシクロデキストリン有り(右の容器)および無し(左の容器)での、HFA 227中の硫酸テルブタリンのpMDI懸濁液を示している。左の試料:10秒振とう後の、HFA 227中の硫酸テルブタリン(C=1.03%w/w)。右の試料:5分23秒振とう後の、HFA 227中の飽和溶液の中の硫酸テルブタリン(C=0.97%w/w)。
【図3】図3は、HFA 227中のHFA pMDI溶液製剤を示している。左の試験管は、HFA 227中にC=0.04%w/wでブデソニドを含有している。中央の試験管は、懸濁剤のセクションで調製された通りの、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の物理的混合物を含有している。右の試験管は、ブデソニド(C=0.04%w/w)および過アセチル化βシクロデキストリン(C=0.04%w/w)の噴霧乾燥された1:1複合体を含有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的にもしくは完全にアシル化されたアルファー(α)、ベータ(β)またはガンマ(γ)シクロデキストリンを含むHFA薬物製剤。
【請求項2】
HFAがHFA 134a、227もしくはそれらの混合物である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
溶液の形態である請求項1もしくは2に記載の製剤。
【請求項4】
懸濁液の形態である請求項1もしくは2に記載の製剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤であって、アセチル、アクリロイル、アラニル、アミノカルボニル、β−アラニル、アルキルアゼラオイル、ベンゾイル、tert−ブトキシ、ブチニル、カプロイル、クロトモイル、ホルミル、アルキルグルタリル、グリコロイル、グリシル、グリオキシロイル、ヘプタデカノイル、ヒドロペルオキシ、ヒドロキシアミノ、イソブチニル、イソバレニル、ラクトイル、レニル、レブリノイル、アルキルマロニル、マンデロイル、メタクリロイル、ミリストイル、モナノイル、アルキルオキサリル、パルミトイル、アルキルピメロイル、ピバロイル、プロパニル、サリチロイル、セリル、ソルボイル、ステアロイル、アルキルスベロイル、アルキルスクシニル、テロニル、トルノイル、バレリルもしくはバリルから選択される一つまたはそれ以上の基でシクロデキストリンがアシル化されている、製剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤であって、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、コルチゾン、プレドニゾン、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、サルブタモール(sabutamol)、アルブテロ−ル、サルメテロール、テルブタリンならびにそれらの薬学的に許容され得る塩および溶媒和物ならびにそれらの併用である、製剤。
【請求項7】
二つの薬物があり、そしてそれらがブデソニドおよびフマル酸ホルモテロール二水和物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
呼吸器疾患の処置もしくは予防のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
喘息もしくはCOPDの処置もしくは予防のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤の治療的に有効な量を患者に投与することを含む、呼吸器疾患を処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515401(P2007−515401A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540609(P2006−540609)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004957
【国際公開番号】WO2005/053637
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】