説明

ハイドロリックシール構造

【課題】オイル溜まりの冷却効率を高めるハイドロリックシール構造を提供することを目的にする。
【解決手段】低速回転軸2の外周から外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を囲むよう高速回転軸4に形成されて下流空間室27を構成するフランジ受部23と、フランジ受部23から延在して上流空間室32を構成する入側受部29と、上流空間室32と下流空間室27を連通する貫通孔34とを備え、
高速回転軸4の回転の際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室32に上流側オイル溜まり36を形成すると共に、下流空間室27に下流側オイル溜まり37を形成し、更に、オイルは、上流側オイル溜まり36から貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流下し、下流側オイル溜まり37から流出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの高速回転軸と低速回転軸の間をシール状態にするハイドロリックシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジェットエンジン等のガスタービンエンジンは、空気を取り入れるように上流側に配置される高圧コンプレッサ及び低圧コンプレッサと、燃焼ガスにより回転駆動する高圧タービン及び低圧タービンと、高圧タービンの回転力を高圧コンプレッサに伝達する高速回転軸と、高速回転軸の内側で同軸上に配置され且つ低圧タービンの回転力を低圧コンプレッサに伝達する低速回転軸とを備えている。
【0003】
又、高速回転軸と低速回転軸の間には、高圧雰囲気を維持するハイドロリックシール構造が形成されている場合がある。
【0004】
図5に示す如く、ハイドロリックシール構造1は、低速回転軸2の外周面2aから外方に向かって形成されるフランジ3と、フランジ3を外周側で囲むように高速回転軸4の外周に形成されるフランジ受部5とを備えており、フランジ受部5は、高速回転軸4の外周端から径方向で外方へ向かって形成される壁面状の支持部6と、支持部6から高速回転軸4の延在方向と略平行に形成される外周部7と、外周部7の先端から低速回転軸2のフランジ3を挟み込むよう低速回転軸2の外周面2aに向かって配置される壁面状の側面部8とを備え、フランジ3の両面側に所定幅の空間室9を構成すると共に、側面部8の下端と低速回転軸2の外周面2aとの間に、空間室9と低速回転軸2側の外部とを連通する開口10を形成している。
【0005】
又、ハイドロリックシール構造1は、低速回転軸2側でフランジ受部5に隣接するようにオイルノズル11を備え、オイルノズル11は、下方の噴射口(図示せず)より、開口10へ向けてオイルを噴射するようになっている。ここで、図中、12は低速回転軸2に接するベアリング、13はベアリング12を支持するベアリング支持部、14はオイル漏れを防止するシール部材を示している。
【0006】
ガスタービンエンジンを駆動する際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、空間室9にオイル溜まり15を形成し、フランジ3とフランジ受部5の間をシール状態にし、低速回転軸2と高速回転軸4の間を高圧雰囲気で保持するようにしている。
【0007】
次に、オイルノズル11からオイルを噴射し、オイルを、開口10を介してオイル溜まり15へ流入させ、更にオイル溜まり15内で循環をさせてから同じ開口10より排出し、フランジ3とフランジ受部5の相対速度の差により生じるオイル溜まり15の発熱による温度上昇、特に図6に示す如くフランジ3の発熱h1やフランジ受部5の発熱h2による温度上昇を抑制するようにしている。
【0008】
ここで、上記したハイドロリックシール構造としては、特許文献1及び特許文献2に示されるものがある。
【特許文献1】特開2003−286806号公報
【特許文献2】特開2003−214111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなハイドロリックシール構造1は、図6に示す如く、オイル溜まり15への流入と排出が同じ開口10であるため、オイル溜まり15のオイルの排出が阻害され、オイル溜まり15の冷却効率が十分でないという問題があった。又、オイルノズル11から噴射されたオイルは、オイル溜まり15の奥まで循環することなく排出されるため、オイル溜まり15の奥に位置する部分を十分に冷却できず、冷却のために多くのオイルが必要となる問題があった。
【0010】
本発明は、オイル溜まりの冷却効率を高めるハイドロリックシール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むよう高速回転軸に形成され且つフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、前記フランジ受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、前記上流空間室と下流空間室を連通する貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成すると共に、下流空間室に下流側オイル溜まりを形成し、更に前記オイル供給手段によって噴射されたオイルは、上流側オイル溜まりから貫通孔を介して下流側オイル溜まりへ流下し、下流側オイル溜まりから流出するように構成されたことを特徴とするハイドロリックシール構造に係るものである。
【0012】
本発明において、前記フランジ受部は、高速回転軸の外周から外方に向かって形成される支持部と、支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、下流側外周部から低速回転軸のフランジを挟み込むよう低速回転部の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記入側受部は、フランジ受部の支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される上流側外周部と、上流側外周部から高速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記オイル供給手段は、上流空間室の上流側開口に向かってオイルを噴射するように配置されることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記貫通孔は、回転軸線の径方向でフランジの外周先端よりも外方に配置されることが好ましい。
【0015】
本発明は、前記上流空間室に、オイルに遠心力を発生させるフィンを備えることが好ましい。
【0016】
本発明において、フィンは、オイルを貫通孔へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハイドロリックシール構造によれば、オイルを上流側オイル溜まりから貫通孔を介して下流側オイル溜まりへ流下させ、更に下流側オイル溜まりから流出させるので、オイル溜まりへのオイルの流入と排出が同じ開口である場合と異なり、オイルの流入と排出を別々にして下流側オイル溜まりの冷却効率を高め、オイル溜まりの温度上昇を抑制することができる。又、オイルを上流側オイル溜まりから貫通孔を介して下流側オイル溜まりへ流下させるので、オイル溜まりの奥に位置する部分にオイルが流下してオイル溜まりを冷却し、オイル溜まりの奥に位置する部分の温度上昇を適切に抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施する形態の第一例を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明のハイドロリックシール構造を実施する形態の第一例であり、図5、図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0019】
ハイドロリックシール構造21は、低速回転軸2の外周面から外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を外周側で囲むよう高速回転軸4の外周に形成されるフランジ受部23とを備えており、フランジ受部23は、高速回転軸4の外周端から径方向で外方へ向かって形成される壁面状の支持部24と、支持部24から高速回転軸4の延在方向と略平行に形成される下流側外周部25と、下流側外周部25の端部から低速回転軸2のフランジ22を挟み込むよう低速回転軸2の径方向で外周面2aに向かって配置される壁面状の側面部26とを備え、フランジ22の両面との間に、所定幅の下流空間室27を構成すると共に、側面部26の下端と低速回転軸2の外周面2aとの間に、下流空間室27と低速回転軸2側の外部とを連通する下流側開口28を形成している。
【0020】
又、ハイドロリックシール構造21は、高速回転軸4側でフランジ受部23に隣接するよう、フランジ受部23から延在する入側受部29を備えており、入側受部29は、フランジ受部23の下流側外周部25と連なるよう、支持部24から下流側外周部25と反対側へ高速回転軸4の延在方向に沿って配置される上流側外周部30と、上流側外周部30の端部から高速回転軸4の径方向で外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部31とを備え、入側受部29に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室32を構成すると共に、側面部31の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室32と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口33を形成している。
【0021】
ここで、支持部24は、上流空間室32と下流空間室27を連通するよう、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置し且つ周方向に沿って所定の間隔で形成される複数の貫通孔34を備えており、貫通孔34は、低速回転軸2及び高速回転軸4による回転軸線Sの径方向でフランジ22の外周先端よりも外方に配置するように、回転軸線Sから形成位置までの距離R1を、回転軸線からフランジ22の外周先端までの距離R0よりも長くし(R1>R0)、フランジ22と支持部24との隙間から何らかの理由で空気が下流空間室27に流れ込む場合であっても、空気がフランジ22の先端側から下流空間室27側へ流下し、貫通孔34には空気が流れ込まないようになっている。
【0022】
更に、ハイドロリックシール構造21は、高速回転軸4側(低速回転軸2と反対側)で入側受部29に隣接するようにオイル供給手段のオイルノズル35を備え、オイルノズル35は、下方の噴射口(図示せず)より、上流側開口33へ向かってオイルを噴射するようになっている。
【0023】
以下本発明のハイドロリックシール構造21を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0024】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室32に上流側オイル溜まり36を形成して貫通孔34をオイルで満たすと共に、下流空間室27に下流側オイル溜まり37を形成してフランジ22の先端とフランジ受部23との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。
【0025】
更に、オイルノズル35の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口33から上流側オイル溜まり36へ給油し、次いで上流側オイル溜まり36のオイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流入させ、更に下流側オイル溜まり37の奥部から排出側(低圧雰囲気の発熱部)へ流下させて下流側オイル溜まり37の全体を冷却し、下流側開口28から排出させる。
【0026】
ここで、上流側オイル溜まり36は、高速回転軸4の高速回転の影響のみを受けて高圧状態になり、下流側オイル溜まり37は、高速回転軸4の高速回転と低速回転軸2の低速回転との影響を受けて低圧状態になり、上流側オイル溜まり36と下流側オイル溜まり37の間には差圧を生じてオイルが上流側オイル溜まり36から貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ向かうようになっている。又、上流側オイル溜まり36は、高速回転軸4の回転の影響のみを受け、下流側オイル溜まり37の如き発熱は生じないようになっている。
【0027】
このように、実施の形態の第一例によれば、フランジ受部23から延在して上流空間室32を構成する入側受部29と、入側受部29の上流空間室32へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段のオイルノズル35と、上流空間室32からフランジ受部23の下流空間室27を連通する貫通孔34とを備え、オイルを上流側オイル溜まり36から貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流下させ、更に下流側オイル溜まり37から流出させるので、オイル溜まり15(図6参照)へのオイルの流入と排出が同じ開口である従来の場合と異なり、オイルの流入と排出を上流側開口33と下流側開口28で別々にして下流側オイル溜まり37の冷却効率を高め、下流側オイル溜まり37の温度上昇を抑制することができる。特に、オイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37の下流側開口28へ流下させて下流側オイル溜まり37の全体を冷却するので、冷却効率を高めて下流側オイル溜まり37の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を抑制することができる。ここで、従来の構造において、入側受部29を設けることなく、支持部6(図6参照)に単に貫通孔34を形成し、且つオイルノズル35を設けたのみでは、オイル溜まり15にオイルが流入せず、結果的に従来例と同じ問題を生じる。
【0028】
又、オイルを上流側オイル溜まり36から貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流下させるので、下流側オイル溜まり37の奥に位置する部分(フランジ22の先端及び側面部26の奥側内方面)にオイルを流下させ、下流側オイル溜まり37の奥に位置する部分の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
更に、上流側オイル溜まり36のオイルが差圧により貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37に確実に供給されるので、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間のシール状態を適切に保持すると共に、冷却効率が上がりオイルノズル35のオイル供給量を低減することができる。更に又、オイルを、貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ供給するので、オイルは下流側オイル溜まり37の隅々(全体)まで流下し、下流側オイル溜まり37の温度分布を均一にするように冷却し、結果的に、高速運転時においても下流側オイル溜まり37の温度が安定し、シール状態を適切に保持することができる。
【0030】
実施の形態の第一例において、フランジ受部23は、高速回転軸4の外周面4aから外方に向かって形成される支持部24と、支持部24から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される下流側外周部25と、下流側外周部25から低速回転軸2のフランジ22を挟み込むよう低速回転軸2の外周に向かって配置される側面部26とを備え、入側受部29は、フランジ受部23の支持部24から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される上流側外周部30と、上流側外周部30から高速回転軸4の外周に向かって配置される側面部31とを備えると、上流側オイル溜まり36及び下流側オイル溜まり37を適切に形成し、オイルを、上流側オイル溜まり36から貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37の下流側開口28へ流下させるので、下流側オイル溜まり37を好適に冷却し、下流側オイル溜まり37の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0031】
実施の形態の第一例において、オイル供給手段のオイルノズル35は、上流空間室32の上流側開口33に向かってオイルを噴射するように配置されると、上流側オイル溜まり36にオイルを適切に供給して貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37の下流側開口28へ流下させるので、下流側オイル溜まり37を好適に冷却し、下流側オイル溜まり37の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0032】
実施の形態の第一例において、貫通孔34は、回転軸線Sの径方向でフランジ22の外周先端よりも外方に配置されると、フランジ22と支持部24との隙間から何らかの理由で空気が下流側溜まりに流れ込む場合であっても、空気がフランジ22の先端から下流側へ流下し、貫通孔34には空気が流れ込まないので、シール状態が破断するようなシールブレイクを確実に防止し、シール状態を適切に保持すると共に、下流側オイル溜まり37を好適に冷却することができる。
【0033】
以下、本発明を実施する形態の第二例を添付図面を参照して説明する。
図2〜4は本発明のハイドロリックシール構造41を実施する形態の第二例であって、第一例の上流空間室32の構造を変形したものであり、第一例と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0034】
第二例のハイドロリックシール構造41は、第一例と略同様に、低速回転軸2の外周面から外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を外周側で囲むよう高速回転軸4に形成されるフランジ受部23と、フランジ受部23から延在する入側受部29と、上流空間室32と下流空間室27を連通する複数の貫通孔34と、高速回転軸4側(低速回転軸2と反対側)で入側受部29に隣接するオイル供給手段のオイルノズル35とを備えている。
【0035】
高速回転軸4側でフランジ受部23に隣接する入側受部29は、第一例と略同様に、フランジ受部23の下流側外周部25と連なるよう支持部24から下流側外周部25と反対側へ高速回転軸4の延在方向に沿って配置される上流側外周部30と、上流側外周部30の端部から高速回転軸4の外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部31とを備え、支持部24、上流側外周部30、側面部31に囲まれる部分に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室32を構成すると共に、側面部31の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室32と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口33を形成している。
【0036】
又、複数の貫通孔34は、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置するように支持部24に形成され且つ周方向に沿って所定の間隔で配置されており、上流空間室32には、図3に示す如く、複数の貫通孔34に対応するよう、回転方向で貫通孔34の後方に位置し且つ高速回転軸4の径方向に沿って外周端から内方に向かって所定長さで形成されるフィン42が備えられている。ここで、フィン42の他の例としては、図4に示す如く、外周端から内方に向い且つ径方向に対して内方側を高速回転軸4の回転方向に傾斜させるフィン43がある。なお、図4では径方向から角度αで傾斜していることを示している。
【0037】
以下本発明のハイドロリックシール構造41を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0038】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室32に上流側オイル溜まり36を形成して貫通孔34をオイルで満たすと共に、下流空間室27に下流側オイル溜まり37を形成してフランジ22の先端とフランジ受部23との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。この時、上流空間室32ではフィン42によりオイルに遠心力を更に発生させ、上流側オイル溜まり36を適切に形成している。
【0039】
更に、オイルノズル35の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口33から上流側オイル溜まりへ給油し、次いで上流側オイル溜まり36のオイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流入させ、更に下流側オイル溜まり37の奥部から排出側(低圧雰囲気の発熱部)へ流下させて下流側オイル溜まり37の全体を冷却し、下流側開口28から排出させる。ここで、上流空間室32には、フィン42により、貫通孔34をオイルで確実に満たすように上流側オイル溜まり36を形成し、オイルを上流側オイル溜まり36から貫通孔34へ好適に流すようにしている。又、図4の如く、フィン43を傾斜させた場合には、フィン43によりオイルを貫通孔34へ誘導し、オイルを上流側オイル溜まり36から貫通孔34へ好適に流すようにしている。
【0040】
このように、実施の形態の第二例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0041】
又、上流空間室32に、オイルに遠心力を発生させるフィン42を備えると、上流空間室32の上流側オイル溜まり36を適切に構成するので、オイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流下させ、下流側オイル溜まり37全体を適切に冷却し、オイル溜まりの温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を抑制することができる。特に、上流側オイル溜まり36の形状等によって、オイルの流速が上流空間室32の移動速度よりも遅くなり、想定した圧力が得られない場合であっても、フィン42によりオイルに遠心力を発生させて圧力を高めるので、オイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37の下流側開口28まで適切に流下させることができる。
【0042】
更に、フィン43は、オイルを貫通孔34へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されると、上流空間室32の上流側オイル溜まり36を貫通孔34へ適切に誘導するので、オイルを貫通孔34を介して下流側オイル溜まり37へ流下させ、下流側オイル溜まり37全体を適切に冷却し、オイル溜まりの温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
なお、本発明のハイドロリックシール構造は、上記の構成に限定されるものでなく、上流側オイル溜まりから貫通孔を介して下流側オイル溜まりへオイルを流下させるならば他の構成でもよいこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のハイドロリックシール構造の第一例を示す概念図である。
【図2】本発明のハイドロリックシール構造の第二例を示す概念図である。
【図3】図2のIII−III方向断面図である。
【図4】図3においてフィンを他の例に変形したものを示す概念図である。
【図5】従来のハイドロリックシール構造を示す概念図である。
【図6】ハイドロリックシール構造に発熱を生じる状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0045】
2 低速回転軸
4 高速回転軸
22 フランジ
23 フランジ受部
24 支持部
25 下流側外周部
26 側面部
27 下流空間室
29 入側受部
30 上流側外周部
31 側面部
32 上流空間室
34 貫通孔
35 オイルノズル(オイル供給手段)
36 上流側オイル溜まり
37 下流側オイル溜まり
42 フィン
43 フィン
S 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むよう高速回転軸に形成され且つフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、前記フランジ受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、前記上流空間室と下流空間室を連通する貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成すると共に、下流空間室に下流側オイル溜まりを形成し、更に前記オイル供給手段によって噴射されたオイルは、上流側オイル溜まりから貫通孔を介して下流側オイル溜まりへ流下し、下流側オイル溜まりから流出するように構成されたことを特徴とするハイドロリックシール構造。
【請求項2】
前記フランジ受部は、高速回転軸の外周から外方に向かって形成される支持部と、支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、下流側外周部から低速回転部のフランジを挟み込むよう低速回転部の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記入側受部は、フランジ受部の支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される上流側外周部と、上流側外周部から高速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項3】
前記オイル供給手段は、上流空間室の上流側開口に向かってオイルを噴射するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項4】
前記貫通孔は、回転軸線の径方向でフランジの外周先端よりも外方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項5】
前記上流空間室に、オイルに遠心力を発生させるフィンを備えたことを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項6】
前記フィンは、オイルを貫通孔へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されたことを特徴とする請求項5に記載のハイドロリックシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−19608(P2009−19608A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184524(P2007−184524)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】