説明

ハイブリット車の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒

【課題】動力として内燃機関とモータとを使用するハイブリット車の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】発泡金属の骨格表面が、平均膜厚50〜500nmの酸化層で被覆されてなる発泡金属体から構成され、発泡金属体の気孔率は50〜99体積%、発泡金属体の最外面に開口する空隙の平均開口径は50〜600μm、該空隙の開口率は15〜85面積%であるハイブリット車の排気浄化用発泡金属体、さらに、該排気浄化用発泡金属体の表面に、白金等の貴金属コロイド粒子を被覆したハイブリット車の排気浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力として内燃機関とモータとを使用するハイブリット車の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネ、省資源および環境問題対策として、動力として内燃機関とモータとを使用するハイブリット車が実用化されてきており、特に、ガソリン車に比して、二酸化炭素排出量等の削減が可能であることから環境にやさしい車として脚光を浴びている。
そして、ハイブリット車における排気浄化システムとしては、例えば、特許文献1に示すように、内燃機関を発電専用として使用し、モータで駆動するシリーズ式ハイブリット車においては、ハニカム構造のセラミックス製の触媒担体上に白金等の触媒金属を担持した三元触媒により、排ガス中の炭化水素と一酸化炭素を、二酸化炭素と水に変えるとともに、窒素酸化物のうち一酸化窒素を二酸化窒素に変化させる排気浄化システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4066191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の白金等の触媒金属を担持した三元触媒により、ハイブリット車の排ガス中に含まれる有害物質、即ち、炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物、を同時に除去しようとした場合、三元触媒を機能させるためには加熱が必要となるが、特に、プラグインハイブリッド車では発熱が少ないため、三元触媒は十分な触媒機能を発揮することができないという問題点があった。
つまり、三元触媒は比較的低温では還元能力が低いため、これを改善するためにエンジン排気部に近づけて配置し、早期に昇温させ還元能力が高まるのを促進しているが、その反面、過度に高温にさらされ続けると三元触媒が熱的に破損することから、排気量がそれほど多くなく、また、発熱が少ないハイブリッド車では、三元触媒は十分な触媒機能を発揮することができない。
そこで、この発明では、ハイブリット車の排気を効率よく浄化することができる排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、三元触媒を機能させるためのエネルギーを低下させ、ハイブリット車の排気を短時間で効率よく浄化することができる排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒について鋭意研究を行なった結果、次のような知見を得たのである。
即ち、発泡金属の骨格表面を酸化層で被覆して三元触媒を担持する発泡金属体を構成することにより、発泡金属と触媒との相互拡散を防止し、さらに、該発泡金属体の気孔率、該発泡金属体の最外面に開口する空隙の平均開口径および空隙の開口率を所定数値範囲内に定めることにより、三元触媒を機能させるための投入エネルギーを低下させ、昇温速度を速めることにより、ハイブリット車の排気を短時間で効率よく浄化できるハイブリット車の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒を見出したのである。
【0006】
ここで、発泡金属とは、Ti、Cu、Ni、Al、Ag、ステンレス鋼等の金属焼結体の骨格により辺が構成されてなる複数の多面体状の空隙が相互に連続状態に形成されている金属多孔質体をいい、空隙は、骨格により辺が構成された複数の多面体状のポア(気孔)が相互に連続するように形成されている。
【0007】
この発明でいう発泡金属に占める空隙全体の気孔率(体積割合)とは、発泡金属の重量をWpおよび同じ外形寸法の中実体の同じ金属材料とした時の重量をWとした場合、
気孔率(体積%)=(W−Wp)/W×100
によって算出される値である。
また、平均開口径は、最外面を撮影した25〜300倍の顕微鏡写真を用い、画像処理ソフト(WinROOF)で画像処理及び平均口径計測を行って得られた値である。
【0008】
また、この発明の発泡金属は、その最外面に多数の空隙開口を有しており、この最外面に開口する空隙の開口率(面積割合)とは、最外面を撮影した25〜300倍の顕微鏡写真を用い、視野面積Aと、この視野中に観察される最外面の全ての空隙開口の面積和Apとを観察測定した場合、
開口率(面積%)=Ap/A×100
によって算出される値である。
【0009】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 発泡金属の骨格表面が、平均膜厚50〜500nmの酸化層で被覆されてなる発泡金属体から構成され、該発泡金属体の気孔率は50〜99体積%であり、また、該発泡金属体の最外面に開口する空隙の平均開口径は50〜600μmであって、空隙の開口率は15〜85面積%を占めることを特徴とするハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体。
(2) 前記(1)に記載されるハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体の表面に、貴金属コロイド粒子が被覆されていることを特徴とするハイブリッド車の排気浄化用触媒。」
に特徴を有するものである。
【0010】
この発明のハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体およびこれを用いた排気浄化用触媒は、発泡金属の骨格表面が平均膜厚50〜500nmの薄い酸化層で被覆されていることにより、発泡金属と三元触媒との相互拡散が防止されるとともに、酸化物層の厚さが薄いので、短時間で触媒表面層を所定の温度まで上げることができるので、排気浄化が効率よく行われる。
【0011】
このような発泡金属体は、例えば、以下の工程で作製することができる。
【0012】
発泡性スラリーの作製:
まず、金属粉末と発泡剤とを含有する発泡性スラリーを作製する。
発泡性スラリーは、骨格を形成する金属粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)、発泡剤および水と、必要に応じて界面活性剤および/または可塑剤とを混合することにより作製される。
より具体的には、まず金属粉末、バインダおよび水を含有するスラリーを作製した後、このスラリーに発泡剤を添加し、ミキサーなどの攪拌装置で攪拌する。金属粉末としては、特に限定されず、Ni,Cu,Ti,Al,Ag,ステンレス鋼等を用いることができる。
【0013】
また、この金属粉末は平均粒径0.5μm以上30μm以下が好ましい。このような粉末は、水アトマイズ法,プラズマアトマイズ法などのアトマイズ法、酸化物還元法,湿式還元法,カルボニル反応法などの化学プロセス法によって製造することができる。
【0014】
バインダ(水溶性樹脂結合剤)としては、メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースアンモニウム,エチルセルロース,ポリビニルアルコールなどを使用することができる。
【0015】
発泡剤は、ガスを発生してスラリーに気泡を形成できるものであればよく、揮発性有機溶剤、例えば、ペンタン,ネオペンタン,ヘキサン,イソヘキサン,イソペプタン,ベンゼン,オクタン,トルエンなどの炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤を使用することができる。この発泡剤の含有量としては、発泡性スラリーに対して0.1〜5重量%とすることが好ましい。
【0016】
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩,α‐オレフィンスルホン酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルエーテル硫酸エステル塩,アルカンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤、ポリエチレングリコール誘導体,多価アルコール誘導体などの非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤などを使用することができる。
【0017】
可塑剤は、スラリーを成形して得られる成形体に可塑性を付与するために添加され、例えばエチレングリコール,ポリエチレングリコール,グリセリンなどの多価アルコール、鰯油,菜種油,オリーブ油などの油脂、石油エーテルなどのエーテル類、フタル酸ジエチル,フタル酸ジNブチル,フタル酸ジエチルヘキシル,フタル酸ジオクチル,ソルビタンモノオレート,ソルビタントリオレート,ソルビタンパルミテート,ソルビタンステアレートなどのエステル等を使用することができる。
【0018】
さらに、スラリーの特性や成形性を向上させるために任意の添加成分を加えてもよい。例えば、防腐剤を添加してスラリーの保存性を向上させたり、結合助材としてポリマー系化合物を加えて成形体の強度を向上させたりすることができる。
このように作成した発泡性スラリーから、成形装置を用いて、グリーンシートを成形し、これを発泡乾燥させ、焼結することにより、発泡金属を作製する。
【0019】
グリーンシートの成形:
成形装置は、ドクターブレード法を用いてシートを形成する装置であり、発泡性スラリーが貯留されるホッパ、ホッパから供給された発泡性スラリーを移送するキャリアシート、キャリアシートを支持するローラ、キャリアシート上の発泡性スラリーを所定厚さに成形するブレード(ドクターブレード)、発泡性スラリーを発泡させる恒温・高湿度槽、発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽を備えている。
なお、キャリアシートの下面は、支持プレートによって支えられている。
上記の成形装置において、まず、均一化した発泡性スラリーをホッパに投入しておき、このホッパから発泡性スラリーをキャリアシート上に供給し、キャリアシート上に供給された発泡性スラリーは、キャリアシートとともに移動しながらブレードによって薄板状に成形される。
【0020】
発泡乾燥工程:
次いで、薄板状の発泡性スラリーは、所定条件(例えば温度30℃〜40℃、湿度75%〜95%)の恒温・高湿度槽内を、例えば10分〜20分かけて移動しながら発泡する。続いて、この恒温・高湿度槽内で発泡したスラリーは、所定条件(例えば温度50℃〜80℃)の乾燥槽内を例えば10分〜20分かけて移動し、乾燥される。
これにより、スポンジ状のグリーンシートが得られる。
【0021】
焼結工程:
このようにして得られたグリーンシートを脱脂・焼結することにより、薄板状の焼結体からなる本発明の発泡金属を作製する。
具体的には、例えば真空中、温度550℃〜650℃、25分〜35分の条件下でグリーンシート中のバインダ(水溶性樹脂結合剤)を除去(脱脂)した後、さらに、真空中、1200℃〜1300℃、60分〜120分の条件下で焼結する。
なお、焼結後、圧延することにより、任意の厚さ、気孔率に調整することが可能である。
例えば、焼結後、5〜90%の圧延率で圧延することによって、本発明の気孔率50〜99体積%を得ることができる。
ここで、圧延率とは、[1−(圧延後の板厚/圧延前の板厚)]×100で表される。
【0022】
この発明では、発泡金属に形成された空隙全体の気孔率(=(W−Wp)/W×100(体積%)。但し、Wp:発泡金属の重量,W:同じ外形寸法の中実体の同じ金属材料とした時の重量)は、50〜99体積%とすることが必要である。
気孔率が50体積%未満では、排気ガスの透過が妨げられ、排気を効率よく浄化できなくなり、一方、気孔率が99体積%を超えると、発泡金属体としての強度が不足するため、気孔率は50〜99体積%とすることが必要である。
【0023】
また、この発明では、発泡金属の平均開口径を50〜600μmとすることが必要である。
発泡金属の平均開口径が50μm未満では、排気ガスの透過に時間を要し、効率の良い浄化の妨げとなる。また、排気ガスに含まれる粒状物質により開口が塞がれ、排気ガスが透過できなくなる問題も発生する。
一方、平均開口径が600μmを超えると、排気ガスの透過が早くなりすぎ、浄化反応が完了しないうちに通り抜けてしまう問題が発生する。
したがって、発泡金属の平均開口径は50〜600μmと定めた。
【0024】
さらに、この発明では、発泡金属の開口率を15〜85面積%とすることが必要である。
発泡金属の開口率が15面積%未満では、平均開口径が50μm未満の場合と同様、排気ガスの透過に時間を要し、効率の良い浄化の妨げとなり、また、排気ガスに含まれる粒状物質により開口が塞がれ、排気ガスが透過できなくなる問題も発生する。
一方、開口率が85面積%を超えると、平均開口径が600μmを超えた場合と同様に、排気ガスの透過が早くなりすぎ、浄化反応が完了しないうちに通り抜けてしまう問題が発生する。
したがって、発泡金属の開口率は15〜85面積%と定めた。
【0025】
この発明では、上記の製法で作製した所定の気孔率、平均開口径、開口率を有する発泡金属に対して白金等の貴金属コロイド粒子を被覆するが、貴金属コロイドの作製法および被覆法は次のとおりである。
【0026】
貴金属コロイドの作製:
還元剤と溶媒を兼ねたエチレングリコールに、例えば、1g/lの濃度となるように塩化白金酸を溶かし、さらに、保護剤としてポリビニルピロリドンを1g/lの濃度となるように添加し溶解する。
この液を撹拌しながら徐々に150℃まで加温し、10時間保持すると、液の色が変わり白金が還元され、白金コロイドが形成される。
この液を1分間遠心分離器にかけ、固液を分離し、上澄み液を十分に捨てたところへ、エタノールを添加し、白金ナノ粒子をエタノールに再分散させて所定の濃度の白金コロイドとする。
【0027】
貴金属コロイドの被覆:
予め作製した所定の気孔率、平均開口径、開口率を有する発泡金属を、上記所定の濃度の白金コロイドに浸漬し、引き上げた後、液を十分にきってから室温で乾燥させる。
その後、真空または不活性雰囲気で750℃×1時間の焼付けを行い、さらに、450℃×0.5時間大気中で処理を行って平均膜厚50〜500nmの酸化層を形成することにより、本発明の、ハイブリッド車の排気浄化用触媒を作製する。
【発明の効果】
【0028】
この発明のハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒は、発泡金属が所定の気孔率、平均開口径、開口率を有し、かつ、発泡金属と白金等の三元触媒間に所定平均膜厚の酸化層が形成されていることにより、発泡金属と三元触媒間の相互拡散が防止されるとともに、三元触媒の機能を発揮させるための昇温速度が速いことから、排気温度がそれほど高温にならないハイブリッド車においても、排気の浄化を短時間で効率よく行うことができる。
さらに、この発明のハイブリッド車の排気浄化用触媒は、排ガス処理後直ちに冷却可能であるため、白金等からなる三元触媒のシンタリング(熱劣化)が防止され、その結果、触媒の長寿命化が図られるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の排気浄化用触媒の昇温状況を測定するための装置の概略説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明について、実施例を用いて以下に説明する。
【実施例】
【0031】
発泡金属の作製:
金属粉末として平均粒径10μmのSUS316Lの粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としてメチルセルロース10%を含む水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを用意し、これらを原料粉末20質量%、水溶性樹脂結合剤10質量%、可塑剤1質量%、界面活性剤3質量%、発泡剤0.6質量%、残部:水となるように配合し、15分間攪拌し、発泡スラリーを作製した。
得られた発泡スラリーをブレードギャップ0.5mmでドクターブレード法によりキャリアシート上に成形し、恒温・高湿度槽に供給し、そこで温度35℃、湿度90%の恒温・高湿度槽内を20分かけて移動し、引き続き温度80℃の乾燥槽内を20分かけて移動し、スポンジ状のグリーンシートを作製した。
このグリーンシートをキャリアシートから剥離し、アルミナ板上に載せ、真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度550℃、180分間保持の条件で脱脂し、引き続いて真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度1200℃、1時間保持の条件で焼結し、室温にて、表1に示す圧延条件(圧下率)で圧延することにより、同じく表1に示す種々の気孔率、平均開口径、開口率を有する、厚さ2.0mmのSUS316L製発泡金属1〜5(以下、発泡金属1〜5という)を作製した。
得られた発泡金属1〜5を縦20mm、横20mmの寸法になるように切断して試験片を作製した。
【0032】
白金コロイドの作製:
エチレングリコールに、1g/lの濃度となるように塩化白金酸を溶かし、さらに、保護剤としてのポリビニルピロリドンを1g/lの濃度となるように添加し溶解した。
この液を撹拌しながら徐々に150℃まで加温して10時間保持した後、液の色が変わり白金が還元され、白金コロイドが形成された時点で、この液を1分間遠心分離器にかけ、固液分離し、上澄み液を捨て、その後、エタノールを添加して、白金ナノ粒子をエタノールに再分散させて白金コロイドを作製した。
【0033】
白金コロイド粒子の被覆:
ついで、上記の発泡金属1〜5を、上記で作製した白金コロイド中に浸漬し、引き上げた後、液を十分にきってから室温で乾燥させ、その後、真空または不活性雰囲気で750℃×1時間の焼付けを行い、さらに、表2に示す条件で大気中処理を行って、同じく表2に示す平均膜厚の酸化層を形成し、同時に、白金触媒を担持する本発明の排気浄化用触媒1〜5(以下、本発明触媒1〜5という)を作製した。
【0034】
比較のために、本発明実施例と同様な方法で、発泡金属1〜5を作製し、これを、上記で作製した白金コロイド中に浸漬し、引き上げた後、液を十分にきってから室温で乾燥させ、その後、真空または不活性雰囲気で750℃×1時間の焼付けを行うことにより白金触媒を担持する比較例の排気浄化用触媒1〜5(以下、比較例触媒1〜5という)を作製した。
(つまり、本発明触媒1〜5とは異なり、比較例触媒1〜5では酸化層の形成を行っていない。)
【0035】
参考のために、市販の排気浄化用触媒を参考例触媒1として用いた。
なお、上記参考例触媒1は、メタルハニカムの上にアルミナを主成分とする触媒が担持された酸化物層が、厚さ0.5mm程度塗布されている構造になっている。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
触媒昇温試験:
上記の本発明触媒1および参考例触媒1について、同一加熱条件でそれぞれの触媒を昇温させた場合の、触媒表面と触媒内部の温度変化を知るための触媒昇温試験を実施した。
即ち、上記で作製した本発明触媒1および参考例触媒1から、それぞれ、外径60mm、高さ50mmの試験片を切り出し、図1に示すように、外周をコイルヒータで囲まれた試験装置の中央にそれぞれの試験片を載置し、試験片には、その表面外周に外側温度測定用熱電対、また、試験片の中央部には中央温度測定用熱電対を装着する。
コイルヒータと試験片の間隙に温度制御用熱電対を配置し、試験片の外側温度が2分で650℃になるようにコイルヒータを昇温させ、一定時間ごとに、試験片の外側温度、中央温度を測定した。
この結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
排ガス浄化試験:
上記本発明触媒1〜5、比較例触媒1〜5について、実機のガソリンエンジン排気部に取り付けた場合の排気ガス浄化率を測定した。
排気ガス浄化率は触媒を装着する前のCO,CH,NOの総量をB、試験中の処理ガス中のCO,CH,NOの総量をBpとした場合、
排気ガス浄化率=Bp/B×100
で表される値である。
この結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表3に示す触媒昇温試験の結果から、本発明触媒1については、試験片の外側温度、中央温度ともに昇温速度が速く、かつ、試験片の外側、中央ともに、短時間で内外均一に所定の温度にまで達することが分かる。
このことから、本発明触媒は、排気温度がそれほど高温にならないハイブリッド車においても、排気の浄化を短時間で効率よく行えることが分かる。
これに対して、参考例触媒1では、試験片の外側のみ急速昇温するものの、中央部の温度上昇は遅いことから、排気の浄化を短時間で効率よく行うことはできず、したがって、ハイブリッド車の排気浄化触媒として劣ることは明らかである。
【0043】
また、表4に示す排ガス浄化試験の結果から、本発明触媒1〜5は、長時間使用しても排気ガス浄化率の低下が少ないのに対して、比較例触媒1〜5では使用時間とともに排気ガス浄化率が劣化していることが分かり、本発明触媒は長時間の使用によっても触媒機能の低下が少なく、長寿命を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の排気浄化用発泡金属体および排気浄化用触媒は、排気量、排気温度がそれほど高くならないハイブリッド車用の排気浄化システムとして好適であるが、これに限らず、一般的な排気浄化システムとして多方面の分野への適用が大いに期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡金属の骨格表面が、平均膜厚50〜500nmの酸化層で被覆されてなる発泡金属体から構成され、該発泡金属体の気孔率は50〜99体積%であり、また、該発泡金属体の最外面に開口する空隙の平均開口径は50〜600μmであって、空隙の開口率は15〜85面積%を占めることを特徴とするハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体。
【請求項2】
請求項1に記載されるハイブリッド車の排気浄化用発泡金属体の表面に、貴金属コロイド粒子が被覆されていることを特徴とするハイブリッド車の排気浄化用触媒。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−101872(P2011−101872A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258676(P2009−258676)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】