説明

ハイブリッドウイルス粒子とその製造方法

【課題】アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターよりも大きなパッケージング限界及び形質導入効率を有するウイルスベクターを製造する。
【解決手段】(a)AAVキャプシド;及び(b)該AAVキャプシドとは血清型が異なっていることを条件として、該AAVキャプシド内にパッケージングされるAAVゲノムを含むハイブリッドウイルス粒子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願情報)
本出願は、本明細書中でそれらの全体が援用される1998年11月10日に出願された出願番号第60/107,840号及び1999年3月10日に出願された出願番号第60/123,651号の各々の仮出願の利益を請求するものである。
【0002】
(連邦支援陳述)
本発明は、一部は、国立衛生研究所からの第DK42701号及び第5−32938 0−110号の助成金のもと政府支援によりなされた。合衆国政府は本発明に対する一定の権利を有する。
【0003】
本発明はウイルスベクターに関し、特に、改変されたパルボウイルスベクターとその製造及び投与の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
パルボウイルスは、直径が20乃至30ナノメートルの小型の一本鎖からなる非エンベロープ型DNAウイルスである。パルボウイルスのゲノムは約5000ヌクレオチドの長さであり、2つの開放読み枠を含有する。左側の読み枠は複製(Rep)の原因であるタンパク質をコードするが、右側の開放読み枠はキャプシド(Cap)の構造的タンパク質をコード化する。すべてのパルボウイルスは、通常、最小のCapタンパク質である主要Capタンパク質、及び1個又は2個の副Capタンパク質からなる正二十面体対称のビリオンを有する。Capタンパク質は、異なる開始コドンからの翻訳を開始する単一の遺伝子から生成される。これらのタンパク質は同一のC−終端を有するが、異なる開始コドンにより独特なN−終端を持つ。
【0005】
ほとんどのパルボウイルスの宿主範囲は狭く、B19の向性はヒト赤血球系細胞である(非特許文献1参照)が、イヌパルボウイルスは成体イヌにおけるリンパ球の向性を有する(非特許文献2、非特許文献3参照)。他方、アデノ随伴ウイルスは、イヌ、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、及び適切なヘルパーウイルスが存在するとき、多数のヒト系において十分に複製することができる。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVはこれらの細胞型のすべてにおいて感染して潜伏を確立し、AAV受容体が種間で共通であり、保存されることを示す。AAVのいくつかの血清型は、血清型1、2、3、4、5及び6を含めて確認されている。
【0006】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、別のウイルス(アデノウィルス又は一部のヘルパーウイルス群のいずれか)との共感染を要求し、培養細胞中で増殖性感染を起こす、大きさ20ナノメートルの依存性パルボウイルスである。ヘルパーウイルスとの共感染の非存在下では、AAVビリオンは細胞受容体と結合して細胞に入り、核に移動し、宿主染色体内への組み込みにより潜伏を確立しうる一本鎖DNAゲノム送達する。ベクターとしてのAAVにおける関心が、このウイルスの生物学をめぐって集中している。その独特な生活環のほか、AAVは感染力の宿主範囲が広く(ヒト、マウス、サル、イヌ、等)、ヒトにおいて偏在性であり、完全に非病原性である。このウイルス(4.5kb)の有限のパッケージング能は、過去においてこのベクターの使用を小型の遺伝子又はcDNAに制限していた。AAV遺伝子送達の見込みを進歩させるには、大型の遺伝子を保有するのに十分なベクターを開発する必要がある。また、他を形質導入することなく限定された細胞型を特異的かつ効率的に標的にするビリオンが臨床応用には要求される。
【0007】
AAV2のキャプシドタンパク質はVp1、2、および3であり、それぞれ87、73、及び63kDaの分子量を有する。Vp3は無傷ビリオン中総タンパク質のほぼ80%を代表し、Vp1及びVp2は各々10%である(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6参照)。AAV2の初期の研究は、3つのキャプシドユニットのすべてが二本鎖DNAを複製するプールから一本鎖ゲノムを抽出するために必要であることを裏づけている。
【0008】
AAV2キャプシドのパルボウイルス変異原性研究では、Vp3ドメインにおける挿入及び欠失が一本鎖ビリオンの蓄積及び感染性粒子の産生を完全に抑制することが示されている(非特許文献7;非特許文献8参照)。Yangら(非特許文献9参照)は、AAV2 Vp1、Vp2又はVp3コード領域の5’末端でのヒトCD34に対する一本鎖抗体の可変領域をコード化する配列の挿入を報告している。これらの研究者は、Vp2融合タンパク質を含有するAAVビリオンによりKG−1を発現するCD34のきわめて低い形質導入を確認した(1.9形質導入単位/ml以下、1934〜35にわたる文)。KG−1細胞は野生型rAAVベクターによる感染に対して許容的でないことが報告されている。Vp2融合AAVによる結果は、抗AAVキャプシド抗体に対して本質的に非感受性であったこのウイルスによるKG−1細胞の形質導入と思われるが(430vs.310形質導入単位/ml;表2)、HeLa細胞の形質導入はこの抗体により顕著に減少した(63,2000vs.<200形質導入単位/ml;表2)。推定上のビリオンの特徴づけは行われず、粒子がVp2融合タンパク質を含むこと、抗体はキャプシド表面上に発現すること、又は粒子がCD34タンパク質を結合することを確認した。また、rAAV粒子は3つの野生型キャプシドサブユニットのすべてが、キメラサブユニットのほかに供給された場合のみ生成しえた(1934ページ、第2欄、5〜12行)。まとめると、これらの結果は、キメラサブユニットが生存可能なAAV粒子に組み込まれず、実際に、標的細胞内で観察された低レベルのキメラタンパク質がキメラキャプシドタンパク質又他のメカニズムより凝集したタンパク質の細胞接種によるものであったことを示している。
【0009】
いくつかの研究では、パルボウイルスキャプシドタンパク質が変異し、ビリオン集合を試験できることが明らかにされている。一研究において、雌鶏の卵白リゾチームの147アミノ酸のコード領域が、B19 Vp1固有コード配列に置換された。この改変により、リゾチーム酵素活性を保持する空の粒子が精製された(非特許文献10参照)。また、B19 Vp2におけるペプチド(9及び13残基)の発現より、挿入の表面発現を支持するマウスにおいて免疫原性である空の粒子が得られた(非特許文献11参照)。さらに最近の研究では、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ヌクレオタンパク質に対するウイルスCD8+CTLエピトープ(残基118〜132)が、ブタパルボウイルス(ppv)のVp2キャプシドタンパク質へ挿入された(非特許文献12参照)。このキャプシドタンパク質は、N末端でクローンされたエピトープとともに、バキュロウイルス系において発現すると自己組織化した。次いで、このキメラウイルス様粒子を用いて、LCMVからの致死惹起に対してマウスを免疫化した。これらの研究ではキャプシドの構造及び集合が評価されたが、改変キャプシド内へのB19ゲノムのパッケージングの問題は扱われなかった。
【0010】
組換え(r)AAVベクターは、ウイルスを産生するために4679塩基のcisにおける逆方向末端反復配列のみを必要とする。他のすべてのウイルス配列は不必要であり、transにおいて供給されうる(非特許文献13参照)。遺伝子治療のためのAAVベクターの魅力的な特徴は、このウイルスの安定性、遺伝子の単純性、及び遺伝子操作の容易さである。これらの因子の各々は根拠が確実であるが、rAAVベクターの適用への一部の障壁が最近、明らかにされた。これらは、ベクター系質導入及びパッケージング束縛の非能率が含む。このウイルスの隠れた性質を挙げれば、その生物学への新しい洞察が、野生型AAVと比較して容易に分析されるrAAVベクターによる集中的な研究後のみに表面化したことは意外ではない。
【0011】
ベクター形質導入の効率に関して、いくつかの最近の研究では、in vivo導入遺伝子発現の持続時間の点からきわめて有望であることが示されているが、しかし、in vitroでの以前の結果に基づき予想されなかった形質導入の効率の不足が認められている(非特許文献14参照)。In vivoでのrAAVの有用性を明らかにするげっは類における最初の実験のひとつはラットにおける脳組織の形質導入が目標とされた(非特許文献15参照)。脳のほか、筋がAAVによるin vivoで効率的に形質導入されることがわかっており、長期間の遺伝子発現(少なくとも1年半)、免疫応答の欠如、及び非ベクター毒性を示している(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19参照)。有効なベクター送達に影響する主要なステップは、ウイルス侵入及び二次鎖合成の変換である(非特許文献20参照)。
【0012】
一般的目的のウイルスベクターとしてのAAVの全体的な成功は、完全長AAVゲノム(5kb)よりも大きいゲノムをrAAVベクターにパッケージングする能力に左右される。Dongらによる研究(非特許文献21参照)では、rAAVベクターを用いたパッケージングの限度が104%乃至108%と測定された。このパッケージング制限は、ヒトの遺伝子治療用に現在試験されている多数の重要な遺伝子の使用を妨げる(例えば、ジストロフィン遺伝子又は現在のミニジストロフィン作成物)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Munshiら、(1993)J. Virology 67:562
【非特許文献2】Parrishら、(1988)Virology 166:293
【非特許文献3】Changら、(1992)J. Virology 66:6858
【非特許文献4】Muzyczka、(1992)Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97
【非特許文献5】Rollingら、(1995)Molec. Biotech. 3:9
【非特許文献6】Wistubaら(1997)J. Virology 71:1341)
【非特許文献7】Hermonatら、(1984)J. virology 51:329
【非特許文献8】Ruffingら、(1992)J. Virology 66:6922)
【非特許文献9】Yangら、(1988)Human Gene Therapy 9:1929
【非特許文献10】Miyamuraら、(1994)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:8507
【非特許文献11】Brownら、(1994)Virology 198:477
【非特許文献12】Sedlikら(1997)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 94:7503
【非特許文献13】Muzyczka、(1992)Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97
【非特許文献14】Flotteら、(1993)proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:10613
【非特許文献15】Kaplittら、(1994)Nature Genet. 7:148
【非特許文献16】Xiaoら、(1996)J. Virol. 70:8098
【非特許文献17】Clarkら、(1996)Hum. Gene Ther. 8:659
【非特許文献18】Fisherら、(1997)Nat. Med. 3:306
【非特許文献19】Monahanら(1998)Gene Ther. 5:40
【非特許文献20】Ferrariら、(1996)J. Virology 70:3227-34
【非特許文献21】Dongら(1996)Hum. Gene Ther. 7:2101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、AAVベクターよりも大きなパッケージング限界及び形質導入効率を有するウイルスベクターの改良に対する技術上の必要が依然として存在する。また、AAVベクターと比較して変化した向性を有するウイルスベクターが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の開示)
本発明は、導入(すなわち、送達)及び、好ましくは、細胞へヌクレオチド配列を発現するためのパルボウイルスベクターを提供する。本発明は、一部は、現在のベクターと比較して独特な構造及び特徴を持つパルボウイルスベクターが、外来配列(すなわち、外来性アミノ酸配列)をパルボウイルスキャプシドへ置換又は挿入することで作成しうるという発見に基づく。本発明は、異なるパルボウイルスキャプシド内のパルボウイルスゲノム(好ましくは、AAVゲノム)を交差パッケージングすることにより生成される新規なベクターをさらに提供する。本発明は、現在のAAVベクターと比較して独特かつ有利な抗原特性、パッケージング能力、及び細胞向性を持ちうる新規なパルボウイルスベクターのレパートリーを提供する。
【0016】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の発明の説明においてさらに詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】AAV2キャプシドに対する挿入性変異原性法を示す図である。EcoRV及びNaeI部位によりフランキングされたKan遺伝子を含有するカセットがプラスミドpAV2Capへクローン化された。AAV2キャプシドの開放読み枠を含有するpAV2Capは、部分的にHaeIII、NlaIV、及びRsaIで別個に消化され、単位長生成物が分離された。これらの酵素の制限部位の43位置がキャプシド開放読み枠の図の上部に示されている。Kan挿入の位置は制限酵素の消化によりマッピングされ、ある場合には配列決定された。位置が決定されると、Kan遺伝子はEcoRVにより除去され、キャプシドドメインはpACGにサブクローン化された。この方法により、12塩基対フラグメントが、独特なEco RV部位をフランキングする半NaseI部位とともに、それぞれHae III部位、Nla VI部位、及びRsa I部位に挿入された。12塩基対は4個のアミノ酸をコードし、その1個がpACG2の図の上部に示されている。
【図2】PACG2の野生型及び挿入変異体ヘルパープラスミドを形質移入した細胞内のキャプシドタンパク質の発現を示す図である。1、H2285;2、H2634;3、H2690;4、N2944;5、H2944;6、H3595;7、H4047;8、野生型を形質移入した293細胞からの細胞ライセートをアクリルアミドゲル電気泳動及びB1モノクローナル抗体による免疫ブロットにより分析し、ペルオキシダーゼ共役二次抗体により検出した。ウエスタンブロットの左側は分子量標準物質の位置であり、右側は主要キャプシドタンパク質、VP3及び副キャプシドタンパク質VP2並びにVP1の位置である。
【図3】挿入変異体又は野生型ウイルスを形質移入した細胞内のLac Z導入遺伝子の発現を示す図である。パネルA。Lac Z導入遺伝子とのドットブロットハイブリッド形成。挿入変異体又は野生型ヘルパープラスミド及びベクター含有Lac Z導入遺伝子を形質移入したアデノウィルス感染293細胞の細胞ライセートを塩化セシウム等密度勾配にさらした。勾配からのフラクションをドットブロッティング前にDNA分解酵素及びRNA分解酵素で処置し、パッケージングされていない核酸を除去し、フラクション番号がドットブロット上に表示されている。フラクション1の密度は1.377〜1.41であり、フラクション2の密度は1.39〜1.435であり、フラクション3の密度は1.42〜1.45である。β−ガラクトシダーゼ遺伝子を対照テンプレートとして用いて、粒子数を推計した。1μgの1000bp DNA仮定して引き出された粒子数の推定値は、9.1×1011分子である。パネルB。Lac Z導入遺伝子を含有する種々の挿入変異体及び野生型キャプシドからの1.75×10粒子とのHeLa細胞の感染。導入遺伝子を発現する細胞は、X−ゲルで染色するとブルーに見える。
【図4】電子顕微鏡を用いた挿入変異体の特徴づけを示す図である。勾配のピークフラクションからの各ウイルスの200uL試料を1×PBS+1mM MgClに対して透析して高速真空乾燥し、20uLの蒸留HO中に再懸濁した。試料を2%リンタングステンで陰性染色した。パネルA。野生型ビリオンを有するrAAV2。感染性挿入ウイルスH2690(パネルB)、及びH2591(パネルC)。非感染性ウイルスH2285(パネルD)、H2634(パネルB)及び、H3595(パネルF)。黒のバーは100nmであり、各パネルの倍率は等しい。
【図5】塩化セシウム勾配遠心分離により細胞ライセートから分離された野生型及び種々の挿入変異体からのビリオン成分の分析を示す図である。ウイルスのピークフラクションをドットブロットハイブリッド形成により測定し、1×PBS+1mM MgClに対して透析した。各々について、1.0×10粒子と2.5×10粒子との間のウイルス粒子を用いた。1.野生型rAAV2;2.H2285;3.R2349;4.H2591;5.H2634;6.H2690;7.H3766;及び8.N4160からのビリオンをアクリルアミドゲル電気泳動及びB1モノクロナール抗体による免疫ブロットにより分析するとともに、ペロオキシダーゼ共役二次抗体により検出した。ウエスタンブロットの左側は分子量標準物質の位置であり、右側は主要キャプシドタンパク質、VP3及び副キャプシドタンパク質VP2並びにVP1の位置である。
【図6】ドットブロットハイブッリッド形成によるへパリンアガロースとの野生型及び非感染性挿入変体ウイルスバッチの分析を示す図である。キャプシド内の野生型ビリオン及び挿入を有するウイルスを0.5×PBSと1mM MgClに対して透析した。100マイクロリットルの各ウイルスを室温で1時間、100μlのへパリンアガロースと結合させた。試料を各々500μlの洗浄緩衝液で6回洗浄した後、各々100μlの0.5、1.0及び1.5M NaClで溶出し、各洗浄及び溶出ステップからの上清を保存した。各ステップ及び20μlのアガロースペレットからの20マイクロリットルの上清を用いてドットブロットハイブリッド形成用とした。対の洗浄を組み合わせ、各対から総量の1/50を用いてドットブロットハイブリッド形成用とすると同時に、溶出上清及びアガロース総容積の5分の1を用いた。100%の結合はへパリンアガロースに添加したウイルスの5分の1に等しい。試料1.野生型ビリオンを有するrAAV2;2.H2285:3.H2416;4.H2634;及び5.H3761。
【図7】AAV2/4サブユニットキメラを表わす模式図である。
【図8】ヘルパープラスミドpAAV2/B19p2Capを示す図である。
【図9】pAAV/B19p2Capにより生成されるキメラウイルス粒子のEM分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、in vitro及びin vivoでの核酸を細胞に送達するためのパルボウイルスベクターを提供する。あるいは、本発明は、例えば、ワクチンとして又は細胞に化合物を送達するための使用に新規なキャプシド構造物を提供する(例えば、Samulskiらに対する米国特許第5,863,541号に記載され、その開示の全体が本明細書中で援用される)。本発明のパルボウイルスベクターはAAVベクターの有利な特性を使用し、これらのベクターで遭遇する問題の一部を軽減することができる。特別な実施例において、パルボウイルスベクターは、抗原特性、パッケージング能力、及び/又は細胞向性を含むがこれらに限定されない、AAVベクターとは異なる又は変化した特徴を持ちうる。
【0019】
本明細書中で用いられる「パルボウイルス」という用語は、自律複製性パルボウイルスや依存性ウイルスを含めて、すべてのパルボウイルスを包含する。自律性パルボウイルスには、パルボウイルス(Parvovirus)属、エリスロウイルス(Erythrovirus)属、デンソウイルス(Densovirus)属、イテラウイルス(Iteravirus)属、及びコントラウイルス(Contravirus)属の仲間が含まれる。典型的なパルボウイルスとして、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、及びB19ウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。他の自律性パルボウイルスは当業者に周知である。例えば、BERNARD N. FIELDら、VIROLOGY、第2巻、第69章(第3版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0020】
依存性ウイルス属は、AAV1型、AAV2型、AAV3型、AAV4型、AAV5型、AAV6型、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、及びヒツジAAVを含むがこれらに限定されないアデノウィルス随伴ウイルス(AAV)を含む。例えば、例えば、BERNARD N. FIELDら、VIROLOGY、第2巻、第69章(第3版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0021】
本発明のパルボウイルス粒子、キャプシド及びゲノムはAAV由来であることが好ましい。
【0022】
本明細書中で用いられる「向性」という用語は、任意にまた好ましくは、例えば、組換えウイルスのための細胞内のウイルスゲノムにより輸送される配列の発現、異種ヌクレオチド配列の発現後の細胞内へのウイルスの侵入を指す。当業者であれば、ウイルスゲノムからの異種核酸配列の転写が、例えば、誘導性プロモーター又は他の調節核酸配列のためのトランス作用性因子の非存在下に開始しえないことは明らかであろう。AAVの場合には、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、非組込みエピソームのほか、ウイルスが細胞へ取り込まれる他の形態から安定に組み込まれたプロウイルスによるとみられる。
【0023】
本発明のパルボウイルスベクターはin vitro及びin vivoで細胞に核酸を送達するために有用である。特に、本発明のベクターは動物細胞に核酸を送達又は導入するために有利に使用できる。関連核酸として、ペプチド及びタンパク質をコード化する核酸、好ましくは治療的(例えば、医療又は獣医用途)又は免疫原性(例えば、ワクチン用)ペプチド又はタンパク質が挙げられる。
【0024】
「治療的」ペプチド又はタンパク質は、細胞又は対象におけるタンパク質の非存在又は欠損の結果起こる症状を軽減又は除去しうるペプチド又はタンパク質である。あるいは、「治療的」ペプチド又はタンパク質は、他の利点、例えば、抗癌効果を患者に与えるものである。治療的ペプチド又はタンパク質として、CFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)、ジストロフィン(ジストロフィンミニ遺伝子のタンパク質生成物を含む、例えば、Vincentら、(1993)Nature Genetics 5:130を参照)、ウトロフィン(Tinsleyら、(1996)Nature 384:349を参照)、凝固因子(XIII因子、IX因子、X因子、等)、エリトロポエチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバモイラーゼ、β−グロビン、α−グロビン、スペクトリン、α−アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼ、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、ホルモン、成長因子(例えば、インスリン様成長因子1及び2、血小板由来成長因子、上皮性成長因子、神経成長因子、向神経性因子−3及び−4、脳由来向神経性因子、グリア由来因子、トランスフォーミング成長因子−α及び−β、等)、サイトカイン(例えば、α−インターフェロン、β−インターフェロン、インターフェロン−γ、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン12、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシン、自殺遺伝子生成物(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、チトクロムP450、デオキシシチジンキナーゼ、及び腫瘍壊死因子)、癌治療において使用される薬物に対する耐性を与えるタンパク質、腫瘍抑制遺伝子生成物(例えば、p53、Rb、Wt−1、NF1、VHL、APC、等)、及びその必要のある対象における治療効果を有する他のペプチド又はタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
さらに典型的な治療的ペプチド又はタンパク質として、嚢胞性線維症(及び他の肺疾患)、A型血友病、B型血友病、地中海貧血症、貧血及び他の血液疾患、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、及び他の神経性疾患、癌、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ、ベッカー)、ゴーシェ病、フルラー病、アデノシンデアミナーゼ欠乏症、糖原病及び他の代謝欠損症、網膜変性疾患(及び他の眼病)及び固形臓器(例えば、脳、肝、腎、心臓)の疾患が挙げられるがこれらに限定されない疾患状態の治療において使用しうるもの含む。
【0026】
本発明はワクチンとして有用であるベクターも提供する。ワクチンとしてのパルボウイルスの使用は技術上周知である(例えば、Miyamuraら、(1994)Proc. Nat. Acad. Sci USA 91:8507;その開示の全体が本明細書中で援用される、Samulskiらに対する米国特許第5,882,652号、米国特許第5,863,541を参照)。抗原は、キメラ及び改変パルボウイルスベクターについていかに述べるように、パルボウイルスキャプシドにおいて提示される。あるいは、抗原は組換えAAVゲノムに導入され、本発明のパルボウイルスにより輸送される異種核酸から発現される。関連免疫原はパルボウイルスベクターにより提供される。関連免疫原は技術上周知であり、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、gagタンパク質、腫瘍抗原、癌抗原、細菌性抗原、ウイルス抗原、等を含むがこれらに限定されない。
【0027】
さらに代わりとして、異種核酸配列はレポーターペプチド又はタンパク質(例えば、抗原)をコード化しうる。レポータータンパク質は技術上周知であり、緑色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、等を含むがこれらに限定されない。
【0028】
あるいは、本発明の特別な実施例において、関連核酸はアンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載)、スプライセオソーム媒介trans−スプライシングをもたらすRNA(Puttarajuら、(1999)Nture Biotech. 17:246)、又は「ガイド」RNA(Gormanら、(1988)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95:4929;Yuanらに対する米国特許第5,869,248号)など他の非翻訳RNAをコード化しうる。
【0029】
別に示されている以外は、rAAVゲノム、相補性パッケージングベクター、本発明による一過性及び安定に形質移入されるパッケージング細胞の構成には当業者に周知の標準方法を使用することができる。係る方法は当業者に周知である。例えば、SAMBROOKら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL第2版(Cold Spring Harbor、NY、1989);F.M.AUSUBELらCuRRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(GREEN PUBLISHING ASSOCIATES, INC. 及びJohn Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク)を参照。
【0030】
I. ハイブリッドウイルス
【0031】
本発明のハイブリッドパルボウイルスベクターは、細胞への核酸又は他の分子を送達するためのAAVベクターの不利の一部を克服することができる。
【0032】
本明細書中で使用される「ハイブリッド」パルボウイルスは、異なる(すなわち、別の、異質な、外来性の)パルボウイルスキャプシドへキャプシド形成されるAAVゲノムである。換言すれば、ハイブリッドパルボウイルスは異なるパルボウイルスキャプシドへキャプシド形成されるパルボウイルスゲノムを有する。本明細書中で用いられるように、「異なる」により、AAVゲノムが別のキャプシドへパッケージングされること、例えば、パルボウイルスキャプシドが別のAAV血清型又は自律性パルボウイルスに由来することが意図されている。
【0033】
好ましくは、パルボウイルスゲノムはAAVゲノムである(好ましくは、組換えAAVゲノム)。また、以下に述べるように、AAVゲノムは1つ又はそれ以上のAAV逆方向末端反復を含むことが好ましい。典型的に、以下にさらに詳しく述べるように、組換えAAV(rAAV)ゲノムは、transで供給されるゲノムの残り(例えば、rep/cap遺伝子)とともに、cisにおいて要求される要素(例えば、1つ又はそれ以上のAAV ITR)のみを保持する。
【0034】
特に好ましい実施例では、パルボウイルスキャプシドはAAVキャプシド(すなわちハイブリッドAAVベクター)である。この実施例によれば、AAVキャプシドは異なる血清型(及び好ましくは、1つ又はそれ以上のAAV ITRからの異なる血清型)のAAVゲノムをパッケージングする。例えば、組換えAAV1、2、3、4、5又は6型ゲノムは、AAVキャプシド及びゲノム(及び好ましくは、1つ又はそれ以上のAAV ITR)が異なる血清型であることを条件として、AAV1、2、3、4、5又は6キャプシドへキャプシド形成することができる。
【0035】
本発明による例示のハイブリッドパルボウイルスは、AAV1、3、4、5又は6型キャプシドへパッケージングされたAAV2型ゲノムである。特に好ましい実施例では、ハイブリッドパルボウイルスは、AAV2型ゲノムをパッケージングするAAV3型、4型、又は6型キャプシド、さらに好ましくは、2型ゲノムをパッケージングするAAV3型又は5型キャプシドを含む。
【0036】
他の好ましい実施例では、AAV1、3、4、5又は6型ゲノムが異なるAAVキャプシド(例えば、2、3、4、5、又は6型キャプシド、等における1型ゲノム)へパッケージングされる。
【0037】
また、AAVゲノム(例えば、AAV1、2、3、4、5又は6型ゲノム)がB19キャプシドへパッケージングされるハイブリッドB19/AAVパルボウイルスが好ましい。さらに、ハイブリッドパルボウイルスがB19キャプシド及びAAV2型ゲノムを有することが好ましい。
【0038】
さらに、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、又はガチョウパルボウイルスがAAVゲノム、さらに好ましくはAAV2型ゲノムをパッケージングすることが好ましい。
【0039】
特異的なハイブリッドウイルスとして、付録1(SEQ ID NO:1のヌクレオチド2133乃至4341)に示したAAV2/4ヘルパープラスミドによりコード化されるキャプシド配列を有するものが挙げられる。この配列は、AAV2rep遺伝子及びpBluescriptバックボーンにおけるAAV4キャプシドをコード化する。また、SEQ ID NO:1により示されたキャプシド配列を有するハイブリッドパルボウイルスがAAV2ゲノムであることが好ましい。あるいは、AAV4キャプシドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド2123乃至4341として示されたヌクレオチド配列と実質的に相同である。さらに代わりとして、AAV4キャプシドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1におけるヌクレオチド2123乃至4341によりコード化されたアミノ酸配列をコード化する。「実質的に相同」という用語は以下で定義される。
【0040】
遺伝子送達のための現在のAAVベクターの制約のひとつは、ヒト個体群内のAAVに対する中和抗体の蔓延である。例えば、80%の成人がAAV2型に対して血清陽性である。好ましい実施例では、本発明は、治療される対象における免疫応答の縮小(例えば、減少、低下、緩和、等)に有利に使用されうるハイブリッドパルボウイルスベクターを提供する。このため、例えば、1つ又はそれ以上の異種核酸配列を保有するrAAV2型ベクターゲノムをAAV3型キャプシドへパッケージングし、AAV2型に対して血清陽性であり、AAV3型ウイルスを中和することができない対象に投与することができる。
【0041】
本発明の本態様によれば、rAAVゲノムは、in vitro又はin vivoで細胞に送達するための非相同パルボウイルスキャプシドへパッケージングすることができる。好ましい実施例では、AAVゲノムは、中和抗体を克服するため、及び/又は免疫応答の進展を予防するために非相同キャプシドのアレイへパッケージングされる。特に好ましい実施例では、rAAVは、新しいウイルスベクターで免疫系を絶えず提示するように、一連のハイブリッドウイルス粒子へ送達することができる。この方法は、免疫クリアランスなしに反復投与を可能とする。
【0042】
AAVベクターで遭遇する別の制約は、このウイルスの細胞向性の問題である。AAVの野生型の向性は、AAVが広範囲の細胞系に感染するという点と関連の他の潜在的な標的細胞(例えば、赤血球系細胞)において感染力を示さないという点で問題となる。これと対照的に、自律性パルボウイルスの細胞向性は狭い。特に自律性パルボウイルスの向性は当業者には周知である。自律性パルボウイルスの例示の細胞向性として、B19ウイルス(赤血球系細胞)、イヌパッケージング(腸上皮)、MVM(p)(線維芽細胞);及びガチョウパルボウイルス(心臓の心筋内張り)が挙げられる。さらに、自律性パルボウイルスはAAVよりも広範囲の宿主種を示し、その特徴は、例えば、獣医治療のために、ウシ、イヌ、ネコ、ガチョウ、アヒル、等に投与するAAVベクターの開発に利用することができる。このため、本発明による自律性パルボウイルスキャプシドにおけるAAVゲノムの交差パッケージングを利用し、AAVとは異なる細胞向性を示すウイルスベクターを生成することができる。
【0043】
AAV/AAVハイブリッドに関して、AAV血清型のすべては細胞の広範囲の宿主に感染する。しかし、ベクター形質移入率には差があり、異なる血清型が異なる細胞受容体を使用することを示している。また、結合実験における血清型間には限定された競合のみが観察され、その所見はさらに異なる血清型が別の受容体を使用するために進化したことを示している(Mizukamiら、(1996)Virology 217:124)。したがって、異なる血清型のAAVキャプシドにおけるAAVゲノムをパッケージングする本発明のハイブリッドパルボウイルスは、現在のAAVベクターよりも広範囲の細胞型にAAVベクターを送達する可能性及び/又は特異的な標的細胞にAAVベクターを方向づける可能性も提供する。
【0044】
好ましい実施例では、ハイブリッドパルボウイルス粒子はrAAVゲノムを含有する。本願中で用いられているように、rAAVゲノムは細胞に送達されるべき少なくとも1つの異種核酸配列を保有する。当業者であれば、rAAVゲノムが1種類以上の異種核酸配列(例えば、2、3種類又はそれ以上の異種核酸配列)をコード化することができ、一般にウイルスキャプシドのパッケージング能によりわずかに制限されることが明らかであろう。本発明による使用の関連異種核酸は上述した通りである。
【0045】
本願中で用いられるように、組換えハイブリッドパルボウイルス粒子は、以下に述べる通り、ハイブリッド、キメラ、標的及び/又は改変パルボウイルスキャプシドを有するウイルス粒子を包含する。さらに、当業者であれば、パルボウイルスキャプシドが他の改変又は変異(例えば、欠失、挿入、点及び/又はミスセンス変異、等)を含みうることを理解するであろう。同様に、rAAVゲノムは改変又は変異(例えば、欠失、挿入、点及び/又はミスセンス変異、等)を含みうる。当業者にはさらに、変異が使用されるクローニング法の結果としてAAVゲノム又はパルボウイルスキャプシドに偶発的に導入されうることが明であろう。
【0046】
ハイブリッドパルボウイルスのrAAVは、少なくとも1つのAAV逆方向末端反復(ITR)、好ましくは2つのAAV ITR、さらに好ましくは、細胞に送達すべき異種核酸配列をフランキングする2つの相同AAV ITRをコード化することが好ましい。AAV ITRはいずれかのAAV由来であって、1、2、3、4、5又は6型が好ましく、2型が最も好ましい。「逆方向末端反復」という用語は、その開示の全体が本明細書中で援用されるSamulskiらに対する米国特許第5,478,745号に記載された「二重−D配列」など、AAV逆方向末端反復として機能する合成配列を含む。単一の165bp二重−D配列のみが、ベクター配列の部位特異的な組み込み、複製、及びキャプシド形成のためにcisにおいて要求されることが明らかにされている。本発明によるAAV ITRは、ITRが機能してウイルスパッケージング、複製、組み込み、及び/又はパルボウイルスの救出、等を仲介する限り、野生型ITR配列(例えば、野生型配列は挿入、欠失、切断又はミスセンス変異により変化されうる)を有する必要はない。
【0047】
本発明によるハイブリッドパルボウイルスでは、AAV ITRはパルボウイルスキャプシドと異なる。さらに、キャプシドがAAVキャプシドである場合は、キャプシド及びITRはAAV血清型が異なる。好ましい実施例では、AAV ITRはAAV2型由来であり、パルボウイルスキャプシドはAAV3、4又は5型キャプシドであり、さらに好ましくはAAV3又は5型キャプシドである。別の好ましい実施例では、ハイブリッドパルボウイルスはB19キャプシドを有し、AAV ITRはAAV2型由来である。
【0048】
さらに、本発明のrAAVゲノムは、細胞に送達すべき異種核酸配列と操作可能に随伴した、転写/翻訳制御シグナル、複製源、ポリアデニル化シグナル、及び内部侵入部位(IRES)、プロモーター、エンハンサー、等など発現制御要素を含みうる。当業者には、各種のプロモーター/エンハンサー要素を所望のレベル及び組織特異的発現によって使用することができることが明らかであろう。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現パターンによって、構成的又は誘導的でありうる。プロモーター/エンハンサーは未変性又は外来性でよく、天然又は合成の配列であることができる。外来性によって、プロモーター/エンハンサー領域が、プロモーター/エンハンサー領域が導入される野生型宿主において見出せないことが意図されている。
【0049】
治療すべき標的細胞又は対象に対して未変性であるプロモーター/エンハサーであることが好ましい。また、異種核酸配列に対して未変性であるプロモーター/エンハンサーが好ましい。プロモーター/エンハンサーは、関連の標的細胞において機能するように選択される。哺乳動物プロモーター/エンハンサーであることも好ましい。
【0050】
誘導性発現制御要素は、異種核酸配列の発現にわたって調節を提供することが望ましい用途において好ましい。遺伝子送達のための誘導性プロモーター/エンハンサー要素は好ましくは組織特異的プロモーター/エンハンサー要素であり、筋特異的(心筋、骨格及び/又は平滑筋を含む)、神経組織特異的(脳特異的を含む)、肝特異的、骨髄特異的、膵特異的、脾特異的、網膜特異的、及び肺特異的プロモーター/エンハンサー要素を含む。他の誘導性プロモーター/エンハンサー要素として、ホルモン誘導性要素及び精神誘導性要素が挙げられる。典型的な誘導性プロモーター/エンハンサーは、Tet on/off要素、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、及びメタロチオネインプロモーター含むがこれらに限定されない。
【0051】
異種核酸配列が転写されて標的細胞に翻訳される本発明の実施例では、配列をコードする挿入タンパク質の効率的な翻訳のために特異的な開始シグナルが一般に必要である。これらの外因性翻訳制御配列は、ATG開始コドン及び隣接した配列を含みうるが、天然及び合成の各種の源であることができる。
【0052】
本発明のパルボウイルスベクターのAAVゲノムは、AAV Cap及びRepタンパク質をコード化する遺伝子を任意に含みうる。好ましい実施例では、AAV Capタンパク質の少なくとも1つ又はAAV Repタンパク質の少なくとも1つをコード化する遺伝子はrAAVゲノムから欠失する。本実施例によれば、Cap及びRep機能は、in trans、例えば、トランス相補性パッケージングベクターから又は安定に変換されたパッケージング細胞系により提供することができる。さらに好ましい実施例では、AAV Capタンパク質のすべて又はAAV Repタンパク質のすべてをコード化する遺伝子は、rAAVゲノムから欠失する。最後に、最も好ましい実施例では、AAVcap遺伝子のすべて及びAAVrep遺伝子のすべてがAAVベクターから欠失する。この配置は、AAVゲノムにより輸送される異種核酸配列のサイズを最大限にし、クローンング手順を簡単にするとともに、in transで提供されるrAAVゲノムとrep/capパッケージング配列との組換えを最小限にする。
【0053】
本発明によるハイブリッドパルボウイルスでは、パルボウイルスキャプシド遺伝子(存在する場合)は、パルボウイルス、好ましくはAAVからのCapタンパク質をコード化しうる。これとは対照的に、rep遺伝子(存在する場合)は典型的にかつ好ましくはAAVrep遺伝子となる。さらに、AAVゲノムにより輸送されるrep遺伝子とAAV逆方向末端反復は血清型が同じであることが好ましい。さらに、cap遺伝子がAAVcap遺伝子である場合は、rep遺伝子はAAVcap遺伝子とAAV血清型が異なることが好ましい。
【0054】
異なるAAV血清型のrep遺伝子/タンパク質は、過度の実験なしに特定のハイブリッドパルボウイルスと関連して最高力価のベクターを示すものについて評価することができる。特に好ましい実施例では、AAVrep遺伝子は、Gavinら、(1999)J. Virology 73:9433(その開示の全体は本明細書中で援用される)により記載された通り、温度感受性Rep78及び/又はRepタンパク質をコード化する。
【0055】
上述した通り、ハイブリッドパルボウイルスのCapタンパク質はAAVゲノムとは異なる(すなわち、Capタンパク質は異なるAAV血清型又は自律性パルボウイルスのいずれかである)。また、上述した通り、Capタンパク質は典型的にかつ好ましくはrep遺伝子(存在する場合)とは異なる。
【0056】
したがって、特に好ましい実施例では、ハイブリッドパルボウイルスはAAV3、4、又は5型キャプシドを有し、AAV2型ITRを含むAAV2型ゲノムを保有する。さらに、AAVゲノムはAAVrep遺伝子(好ましくは2型)及びAAVcap遺伝子(好ましくは、それぞれAAV3、4、又は5型)を含みうる。しかし、典型的に、AAVゲノムはrAAVゲノムとなり、rep及びcap遺伝子はそこから欠失する。別の好ましい実施例では、ハイブリッドパルボウイルスはB19キャプシドを有し、AAVゲノム、さらに好ましくは、AAV ITRを含めてAAV2型ゲノムを保有する。AAVゲノムは、AAV Repタンパク質(好ましくはAAV2型)及びB19キャプシドタンパク質を任意にコード化することができるが、好ましくはこれらの配列を欠くrAAVゲノムである。
【0057】
本発明は、本発明によるハイブリッドパルボウイルスを生成するための本発明によるAAVゲノム及びパルボウイルスcap遺伝子並びにAAVrep遺伝子をコード化するヌクレオチド配列及びベクター(クローニング及びパッケージングベクターを含む)も提供する。上述した通り、好ましい実施例では、少なくともAAVrep遺伝子の1つ又はAAVcap遺伝子の1つ、さらに好ましくはAAVrep遺伝子及びAAVcap遺伝子のすべてがAAVゲノムから欠失する。Rep及びCap機能はパッケージングベクターによるin transで提供しうる。複数のパッケージングベクター(例えば、2、3、等)を使用しうるが、典型的にかつ好ましくはRep及びCap機能のすべてが単一のパッケージングベクターにより提供される。
【0058】
クローニングベクター及びパッケージングベクターは技術上周知のベクターであればどれでもよい。例示のベクターとして、プラスミド、裸のDNAベクター、細菌人工染色体、酵母人工染色体、及びウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいウイルスベクターとして、AAV、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプシュタイン−バールウイルス(EBV)、バキュロウイルス、及びレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクター、さらに好ましくは、アデノウィルスベクター及びヘルペスウイルスベクターである。
【0059】
本発明は本発明によるベクターを含有する細胞も提供する。細胞は、細菌細胞、原虫細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞(例えば、昆虫、ニワトリ、哺乳動物)を含めて技術上周知のいずれの細胞であってよい。
【0060】
さらに、本発明のハイブリッドパルボウイルスを製造するためのパルボウイルスcap遺伝子及び/又はAAVrep遺伝子をコード化する配列を発現する安定に変換されたパッケージング細胞が提供される。技術上周知の適切な細胞が、パルボウイルスcap及び/又はrep遺伝子を発現するために使用できる。哺乳動物細胞が好ましい(例えば、HeLa細胞)。また、複製欠損性ヘルパーウイルス、例えば、293細胞又は他のE1aトランス相補性細胞から欠失した機能を提供するトランス相補性パッケージング細胞系も好ましい。
【0061】
特に好ましい実施例では、少なくとも1つのrep遺伝子又は少なくとも1つのcap遺伝子、さらに好ましくはcap遺伝子のすべて又はrep遺伝子のすべてがパッケージング細胞の遺伝物質に安定に組み込まれ、そこから発現する。典型的に、かつ最も好ましくは、パルボウイルスcap遺伝子のすべて及びAAVrep遺伝のすべてが安定に組み込まれ、パッケージング細胞により発現することである。
【0062】
cap及びrep並びにタンパク質は、ハイブリッドAAVゲノムに関して上述した通りである。このため、パッケージングベクター及び/又はパッケージング細胞は、すべてのパルボウイルスからのcap遺伝子をコード化しうる。好ましいのは、B19、AAV3型、AAV4型及びAAV5型cap遺伝子である。同様に、パッケージングベクター及び/又はパッケージング細胞は、すべてのパルボウイルスからのrep遺伝子をコード化しうる。しかし、repはAAV遺伝子であることが好ましく、AAV2型、AAV3型、AAV4型及びAAV5型rep遺伝子であることがさらに好ましい。rep遺伝子はAAV2型rep遺伝子であることが最も好ましい。特に好ましい実施例では、AAVrep配列は、Gavinら、(1999)J. Virology 73:9433により記載されているように、温度感受性のRep78又はRep68タンパク質をコード化する。
【0063】
cap遺伝子及びrep遺伝子の発現は、rAAVゲノム、パッケージングベクターにより輸送されるか、又はパッケージング細胞のゲノムに組み込まれるかどかに関係なく、詳しく上述したように、技術上周知のプロモーター又はエンハンサーにより駆動されうる。好ましくは、cap遺伝子又はrep遺伝子(さらに好ましくは両方)がパルボウイルスプロモーターを操作可能に随伴していることである。最も好ましい実施例では、cap遺伝子及びrep遺伝子はそれらの標準のプロモーター(すなわち、未変性プロモーター)に操作可能に随伴している。
【0064】
以前の報告では、B19/AAV2型ハイブリッドベクターからのパルボウイルスcap遺伝子の発現は、標準のプロモーターを用いて達成不可能であることを示している。Ponnazhagenら、(1998)J. Viroligy 72:5224は、AAV2型ゲノムをパッケージングするB19パルボウイルスキャプシドを製造するためのヘルパーベクターの生成を試みた。これらの研究者は、ヘルパーベクター上のcap遺伝子が標準のAAV p40又はB19 p6プロモーターのいずれかによって駆動されると、ウイルスがパッケージングできないことを報告した。ウイルスのパッケージングは、CMVプロモーター(強力なプロモーター)で標準のプロモーターが置換される場合のみ有効に達成された。cap遺伝子の自然の調節が破壊され、cap遺伝子の発現はrep及びcapコード領域を分裂させ、外来性プロモーターを用いてcap遺伝子の発現を駆動することによってのみ修復されると思われる。
【0065】
同様に、Lebkowskiらに対する米国特許第5,681,731号により提案された、rAAVゲノム(col.15〜16)をキャプシド形成する自律性パルボウイルスキャプシドを含むハイブリッドウイルスを生成するためのクローニング法は、パッケージングウイルスにおいて成果は得られない。
【0066】
これとは対照的に、本発明は、パルボウイルスプロモーター、好ましくは標準のプロモーターを用いてパルボウイルスcap遺伝子及びrep遺伝子の発現を駆動し、本発明のハイブリッドパルボウイルスを製造するハイブリッドパッケージングベクター及びパッケージング細胞を提供する。標準のプロモーターを用いたハイブリッドパルボウイルスcap/rep遺伝子作成物を生成する以前の努力は成功しなかったが、少なくとも一部は、以上の研究者がrep遺伝子の適切な工程に必要なスプライス部位の完全性を保存できなかったためである。今回の研究では、rep遺伝子内のスプライス部位が保存されているシームレスクローニング法(Stratagene USA)を利用した。あるいは、部位定方向突然変異(又は同様の方法)を用いてハイブリッドウイルス作成物に対するスプライス部位を保存することができる。
【0067】
本発明はさらに、本発明のハイブリッドパルボウイルスを製造する方法を包含する。本発明によるハイブリッドパルボウイルス粒子は、複製すべきAAVゲノムを導入することで製造し、技術上理解される用語である許容的又はパッケージング細胞にパッケージングすることができる(例えば、「許容的」細胞はウイルスにより感染又は形質導入することができ、「パッケージング」細胞は、ヘルパー機能を提供する安定な形質転換細胞である)。好ましくは、AAVゲノムは、少なくとも1つのAAV ITRによりフランキングされる異種核酸配列をコード化するrAAVゲノムである。rAAVゲノム、AAV ITR、及び異種核酸配列はすべてさらに詳しく上述されている。AAVゲノムは、上述したように、適切なベクターにより細胞に提供することができる。
【0068】
AAVゲノムを保有したベクターを許容的細胞に導入する方法は、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈降法、微量注入法、陽イオン又は陰イオンリポソーム、及び核局在化シグナルと結合したリポソームを含むがこれらに限定されないものを使用することができる。AAVゲノムがウイルスベクターにより提供される実施例では、ウイルス感染を得るための標準の方法を使用することができる。
【0069】
技術上周知の適切な許容的又はパッケージング細胞を使用してAAVベクターを製造することができる。哺乳動物細胞が好ましい。複製血管性ヘルパーウイルス、例えば、293細胞又は他のE1aトランス相補性細胞から欠失した機能を提供するトランス相補性パッケージング細胞系も好ましい。
【0070】
AAVゲノムは、本願中に記載したように、AAVcap遺伝子及びrep遺伝子の一部又はすべてを含有しうる。しかし、好ましくは、cap機能及びrep機能の一部又はすべてが、上述したように、細胞にパッケージングベクターを導入することでin transで提供されることである。あるいは、細胞は、安定に形質転換されてcap及び/又はrep遺伝子を発現するパッケージング細胞である。パッケージングベクター及びパッケージング細胞は上述した通りである。
【0071】
また、新しいウイルス粒子を増殖させるためにエピトープベクターにはヘルパーウイルス機能が提供される。アデノウィルス及び単純ヘルペスウイルスはAAVのヘルパーウイルスとして使用しうる。BERNARD N. FIELDら、VIROLOGY、第2巻、第69章(第3版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。例示のヘルパーウイルスとして、単純ヘルペス(HSV)水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、及びエプシュタイン−バールウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。感染効率(MOI)及び感染期間は使用されるウイルス型及び使用されるパッケージング細胞系に依存する。適切なヘルパーベクターであればすべて使用しうる。好ましくは、ヘルパーベクターは、例えば、Xiaoら、(1998)J. Virology 72:2224により記載されたプラスミドである。ベクターは、上述した通り、技術上周知の適切な方法によりパッケージング細胞に導入することができる。
【0072】
AAVベクターは技術上周知の適切な方法により製造することができる。AAVベクターの伝統的な製造は、アデノウィルスで感染したヒト細胞へAAVヘルパー及びAAVベクターをコード化するrep/capベクターの同時形質移入を必要とする(Samulskiら、(1989)J. Virology 63:3822)。最適化された条件下、この手順ではml当たり10感染単位のrAAVを得ることができる。しかし、この方法の1つの欠点は、rAAV製剤において混入する野生型アデノウィルスの同時生産を生じることである。ヒトにおいて細胞毒性T−リンパ球(CTL)免疫応答を生じるいくつかのアデノウィルスタンパク質(例えば、線維、へクソン、等)が知られているため(YangとWilson、(1995)J. Immunol. 152:2564;Yangら、(1995)J. Virology 69:2004;Yangら、(1994)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:4407)、このことは、これらのrAAV製剤を用いる場合の重大な欠点を表わす(Monahanら、(1998)Gene Therapy 5:40)。
【0073】
混入ヘルパーウイルスのないAAVベクターストックは、技術上周知の方法で得ることができる。例えば、AAV及びヘルパーウイルスはサイズに基づき容易に区別しうる。AAVはヘパリン基質に対する親和性に基づきヘルパーウイルスから分離することもできる(Zolotukhinら、(1999)Gene Therapy 6:973)。
【0074】
好ましくは、いかなる混入ヘルペスウイルスも複製適格性ではないように欠失型複製欠損性ヘルパーウイルスが用いられる。さらに代わりとして、アデノウィルスの早期遺伝子発現のみがAAVウィルスのパッケージングを仲介するために必要であるため、後期遺伝子発現を欠いたアデノウィルスヘルパーを使用しうる。後期遺伝子発現とって欠損のあるアデノウィルス変異体が技術上周知である(例えば、ts100K及びts149アデノウィルス変異体)。
【0075】
感染性アデノウィルスによるヘルパー機能を提供する好ましい方法では、効率的なAAV製造に必要なヘルパー遺伝子のすべてを保有する非感染性アデノウィルスミニプラスミドを使用する(Ferrariら、(1997)Nature Med. 3:1295;Xiaoら、(1998)J. Virology 72:2224)。この方法は、アデノウィルスとの同時形質移入を必要としない(Holscherら、(1994)、J. Virology 68:7169;Clarkら、(1995)Hum. Gene Ther. 6:1329;TrempeとYang、(1993)、第五回パルボウイルスワークショップ、Crystal River、FL)。
【0076】
rAAVストックを製造する他の方法が記載されており、rep遺伝子及びcap遺伝子を分離発現カセットに分割し、複製適格性AAVの生成を防ぐ方法(例えば、Allenら、(1997)J. Virol. 71:6816を参照)、パッケージング細胞系(例えば、Gaoら、(1998)Human Gene Therapy 9:2353;Inoueら、(1998)J. Virol. 72:7024を参照)、及び他のヘルパーウイルスを含まない系(例えば、Colosiらに対する米国特許第5,945,335号を参照)使用する方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
したがって、パッケージングすべきAAVゲノム、パルボウイルスcap遺伝子、AAVrep遺伝子、及びヘルパー機能を細胞(例えば、許容的又はパッケージング細胞)に提供され、AAVゲノムを保有するAAV粒子を製造する。AAVゲノム及び/又はパッケージングベクター及び/又は安定に変換されたパッケージング細胞によりコード化されるrep遺伝子及びcap遺伝子の発現の組み合わせにより、パルボウイルスキャプシドがAAVゲノムをキャプシド形成するハイブリッドパルボウイルスが製造される。ハイブリッドパルボウイルス粒子は細胞へ集合され、次いで当業者に周知の方法により回収される。
【0078】
本明細書中で開示される試薬及び方法を使用して高力価ストックの本発明によるパルボウイルスベクターを製造することができる。好ましくは、パルボウイルスストックの力価は少なくとも約10形質導入単位(tu)/mlであり、さらに好ましくは少なくとも約10形質導入単位(tu)/mlであり、さらに好ましくは約10tu/mlであり、なおさらに好ましくは約10tu/mlであり、なおさらに好ましくは約1010tu/mlであり、またなお好ましくは約1011tu/ml、又はそれ以上である。
【0079】
別の述べ方をすれば、パルボウイルスの力価は少なくとも約1tu/細胞が好ましく、さらに好ましくは少なくとも約5tu/細胞であり、さらに好ましくは少なくとも約20tu/細胞であり、さらに好ましくは少なくとも約50tu/細胞であり、さらに好ましくは少なくとも約100tu/細胞であり、さらに好ましくは少なくとも約250tu/細胞であり、最も好ましくは約500tu/細胞、又はそれ以上である。
【0080】
パルボウイルスは実質的に野生型の力価で製造されることも好ましい。
【0081】
当業者には、本発明が、キャプシドへのアミノ酸配列の挿入により改変され、各々以下でさらに詳しく述べるように、変化した向性又は他の特徴を与えるハイブリッドパルボウイルスベクターを包含することが明らかであろう。ウイルスキャプシドは他の改変、例えば、欠失、挿入、点及び/又はミスセンス変異、等をも含む。
【0082】
当業者にはさらに、変異が使用される特定のクローニング法の結果としてcap及び/又はrep遺伝子に偶発的に導入しうることが明であろう。例えば、上述したハイブリッドパルボウイルスゲノムをコード化する配列の構成により、rep及びcap配列の重複のためキメラrep遺伝子(及びタンパク質)が生じる(例えば、キャプシド遺伝子及びrep遺伝子の3’末端はAAV3型であり、rep遺伝子の残部はAAV2型でありうる)。上述したように、3’領域が自律性パルボウイルス由来であるキメラAAVrep遺伝子は、部位定方向突然変異誘発、又は同様の方法を用いてハイブリッドウイルス作成物に対するスプライシング部位を修復しない限り、AAV及び自律性パルボウイルス間で保存されないスプライシングシグナルとして一般に機能しない。
【0083】
II. キメラウイルス
本発明はさらに、独特の構造及び特徴をもつキメラパルボウイルスを構成しうる発見を提供する。上述した方法は、異なるパルボウイルス内のAAVゲノムを交差パッケージングすることによるAAVウイルスの構造及び機能を変化させることが焦点であった。ウイルス粒子における別の多様性は、異なる(すなわち別の又は異質の)パルボウイルスからのキャプシドの一部分でパルボウイルスキャプシドの一部分を置換することにより達成しうる。あるいは、一部分の異なるパルボウイルスキャプシドをパルボウイルスキャプシドへ挿入(すなわち置換ではなく)し、キメラパルボウイルスキャプシドを生成することができる。また、キメラパルボウイルス粒子を構成するためのベクター、パッケージング細胞、及び方法も開示される。本明細書中で開示されるキメラパルボウイルスは、新しい抗原特性、パッケージング能力、及び/又は細胞向性を持つ。本発明のキメラキャプシド及びウイルス粒子は、新規なキャプシド構造に対するキメラ特異的抗体を産生するために有用である。
【0084】
パルボウイルス、AAV、及びrAAVゲノムは、ハイブリッドパルボウイルスに関して上述した通りである。
【0085】
本明細書中で用いられる「キメラ」パルボウイルスは、異なるパルボウイルスからの異質の(すなわち、外来性)キャプシド領域がパルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換されている。好ましくは、異質のキャプシド領域は未変性キャプシド領域のひとつで置換されていることである。特別な実施例では、異質のキャプシド領域はパルボウイルスキャプシド内の相同キャプシド領域で交換されている。パルボウイルスキャプシドがAAVキャプシドであることも好ましい。この実施例によれば、AAVキャプシドはいずれのAAV血清型であってもよい(例えば、上述したように、1型、2型、3型、4型、5型、6型、等)。さらに好ましくは、AAVキャプシドはAAV2型、3型、4型、又は5型キャプシドであり、AAV2型キャプシドであることが最も好ましい。
【0086】
当業者には、キメラパルボウイルスがさらにハイブリッドパルボウイルス(上述した通り)又は標的、もしくは改変パルボウイルス(以下に述べる通り)でありうることがあきらかであろう。当業者にはさらに、パルボウイルスキャプシドタンパク質をコード化する配列の重複により、単一の挿入又は置換が1つ以上のキャプシドサブユニットに影響を及ぼすことが明らかであろう。
【0087】
異質のパルボウイルスキャプシド領域は、上述した通り、いずれのパルボウイルス(例えば、自律性パルボウイルス又は依存性ウイルス)であってもよい。好ましくは、異質のキャプシド領域はヒトB19パルボウイルス由来又はAAV3型、4型、又は5型由来である。
【0088】
異質のパルボウイルスキャプシド領域はすべて又は実質的にすべてのキャプシドサブユニット(すなわち、領域、例えばAAVのVp1、Vp2及びVp3サブユニット又はB19ウイルスのVp1及びVp2サブユニット)又は一部分のキャプシドサブユニットを構成しうる。逆に、1つ又はそれ以上の異質のキャプシドユニットは、パルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換しうる。同様に、一部分のパルボウイルスキャプシドサブユニット又は1つ又はそれ以上のパルボウイルスキャプシドサブユニットが、1つ又はそれ以上の異質のキャプシドサブユニット、又はその一部分で置換しうる。さらに、キメラパルボウイルスキャプシドは、キャプシド内の1つ以上の部位で挿入及び/又は置換を含有しうる。この実施例によれば、複数の挿入/置換は1つ又はそれ以上のパルボウイルス(例えば、2、3、4、5以上)由来でありうる。一般に、パルボウイルスキャプシド由来の少なくとも1つのサブユニットがキメラキャプシドにおいて保持されることが好ましいが、これは必要というわけではない。
【0089】
本発明の特別の実施例では、未変性パルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換される異質のパルボウイルスキャプシド領域のアミノ酸の長さは少なくとも約2、5、10、12、15、20、30、50、又は100である。
【0090】
本発明のキメラパルボウイルスはすべてのパルボウイルスゲノム、好ましくはAAVゲノム、さらに好ましくは組換えAAVゲノムを含有しうる。AAVが同じ血清型のキメラキャプシド内でパッケージングされる実施例も好ましい。AAV2型ゲノムが、キメラパルボウイルスキャプシドの組成に関係なく最も好ましい。
【0091】
本発明の好ましい実施例では、キメラパルボウイルスはAAVキャプシド、さらに好ましくは、B19パルボウイルスからのキャプシド領域がAAVキャプシド領域の1つで置換されているAAV2型キャプシドを含む。他の好ましい実施例では、キメラパルボウイルスは、AAVキャプシドのVp3サブユニットがB19 Vp2サブユニットで置換されているAAVキャプシド(さらに好ましくは、AAV2型キャプシド)を含む。
【0092】
別の好ましい実施例では、キメラパルボウイルスはVp1及びVp2サブユニットがB19パルボウイルスのVp1サブユニットで置換されるAAVキャプシド(好ましくは2型)を含む。
【0093】
他の好ましくは実施例では、キメラパルボウイルスは2型Vp1サブユニットがAAV1、3、4、5、又は6型キャプシド、好ましくは3、4、又は5キャプシドからのVp1サブユニットにより置換されているAAV2型キャプシドを含む。あるいは、キメラパルボウイルスは、2型Vp2サブユニットがAAV1、3、4、5、又は6型キャプシド、好ましくは3、4、又は5キャプシドからのVp2サブユニットにより置換されているAAV2型キャプシドを含む。同様に、AAV1、3、4、5又は6(さらに好ましくは、3、4又は5型)からのVp3サブユニットがAAV2型キャプシドのVp3サブユニットで置換されているキメラパルボウイルスが好ましい。さらに代わりとして、AAV2型サブユニットの2つが異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5又は6型)のAAVからのサブユニットにより置換されうキメラパルボウイルスが好ましい。この実施例による例示のキメラパルボウイルスでは、AAV2型キャプシドのVp1及びVp2、又はVp1及びVp2、又はVp2及びVp3サブユニットが異なる血清型のAAVの対応するサブユニット(例えば、AAV1、3、4、5又は6型)により置換される。同様に、他の実施例では、キメラパルボウイルスは、1つ又は2つのサブユニットが、AAV2型について上述したように、異なる血清型のAAVからのもので置換されているAAV1、3、4、5又は6型キャプシド(好ましくは2、3又は5型キャプシド)を有する。
【0094】
さらに他の好ましくは実施例では、1つのパルボウイルスの副サブユニットが別のパルボウイルスの副サブユニットで置換しうる(例えば、AAV2型のVp2はAAV3型のVp1で置換され、B19のVp1はAAVのVp1及び/又はVp2を置換しうる)。同様に、1つのパルボウイルスの主要キャプシドサブユニットは、別のパルボウイルスの主要キャプシドサブユニットで置換しうる。
【0095】
特異的なキメラキャプシドのヌクレオチド配列は、付録2(SEQ ID NO:2)のヌクレオチド2133乃至4315)に示したヘルパープラスミドでコード化されたものを含む。この配列はpBluescriptバックボーンにおけるAAV2repコード配列、ほとんんどのAAV2 Vp1及びVp3コード配列、及び全体のAAV4 Vp2コード配列及び一部のAAV4 Vp1及びVp3コード配列を含有する。好ましくは、SEQ ID NO:2に示したヘルパーによりコード化されるキャプシドを有するキメラパルボウイルスは、AAV2ゲノムを保有する。
【0096】
あるいは、キメラキャプシドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2のヌクレオチド2133乃至4315として示されたキャプシドコードは配列と実質的に相同性である。さらに代わりとして、キメラキャプシドのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:2のヌクレオチド2133乃至4315と同じアミノ酸配列をコード化する。「実質的に相同性」という用語は、以下に定義される通りである。
【0097】
本発明は、キメラパルボウイルスが構成物パルボウイルスキャプシドに似ることのない独特のキャプシド構造物を生成しうる発見も提供する。例えば、今回の研究では、AAV2型のVp3サブユニットがヒトB19ウイルスのVp2サブユニットにより置換されるB19/AAV2型キメラにより、期待される23〜28nm粒子(wtAAVに典型的)及び新規な33〜38nm粒子が得られることが発見された。大きな粒子が、セシウム等密度の勾配における23〜28nm粒子と同じ密度で存在した。
【0098】
本発明の特定の理論とするつもりはないが、これらの結果はこの粒子がT=1からT=3への三角数を変更することで形成され、60の代わりに主要キャプシド成分の180コピーを含有する大粒子を産生することを示している。この新規な粒子はそのサイズの増大により野生型ゲノムよりも大きくパッケージングすることができる。特に好ましくは実施例では、B19/AAV2型キメラパルボウイルスキャプシド(AAV2 Vp3で交換されたB19 Vp2)がSEQ ID NO:3(付録3)で示された配列を有する。
【0099】
本発明はさらに、野生型よりも大きなキャプシド構造(例えば、直径が約28nm、30nm、32nm、34nm、36nm、38nm、40nm以上)を有するB19/AAVキメラキャプシド及びパルボウイルスを提供する。別の述べ方をすれば、本発明は野生型よりも多くのキャプシドサブユニット(例えば、約90以上のキャプシドサブユニット、約120以上のキャプシドサブユニット、約180以上のキャプシド)を含有するキャプシド構造を有するB19/AAVキメラキャプシド及びパルボウイルスを提供する。さらに別の述べ方をすれば、本発明は野生型ゲノム以上に効率的にパッケージングする(例えば、約4.8kb、5.0kb、5.2kb、5.4kb、5.6kb、5.8kb、6.0kb、6.2kb、6.4kb、6.8kb以上)B19/AAVキャプシド及びパルボウイルスを提供する。好ましくは、大型のゲノムが効率的にパッケージングされ、上述した力価を有するウイルスストックを生成することである。
【0100】
B19/AAVキメラが抗原特性を変化していることも好ましい。特に、B19/AAVキメラが免疫クリアランスなしにAAVの血清型に対する抗体を有する、すなわち、キメラがAAV血清型特異的抗体抗体により認識されない対象に投与されることが好ましい。
【0101】
本発明の他の好ましくは実施例では、B19/AAVキメラキャプシドのヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:3で示した配列と実質的に相同性であり、キメラパルボウイルスキャプシドをコード化する。この定義は、他の血清型のAAV及び非ヒトB19ウイルスを含むことが意図されている。本明細書中で用いられる、「実質的に相同性」である配列は、少なくとも75%であり、さらに好ましくは80%、85%、90%、95%、又は99%以上の相同性である。
【0102】
相同性ヌクレオチド配列のハイブリッド形成を可能にする厳密性の高いハイブリッド形成法の条件は技術上周知である。例えば、SEQ ID NO:3に示した配列にハイブリッド形成する相同性ヌクレオチド配列のハイブリッド形成法は、42℃下100μgの単鎖DNA及び5%デキシトラン硫酸とともに、25%ホルマリン、5X SSC、5Xデンハルト液中、42℃で15分間、25%ホルムアミド、5X SSC、0.1%SDSの洗浄条件で実施し、相同性が約60%の配列のハイブリッド形成を可能にする。さらに厳密な条件は、標準のin situハイブリッド形成アッセイを用いた60℃又は70℃下、0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、0.1%SDSの洗浄の厳密性により表わされる。(SAMBROOKら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第2版1989)を参照)。
【0103】
他の好ましい実施例では、キメラB19/AAVキャプシドはSEQ ID NO:3(付録4;SEQ ID NO:4)に示した配列によりコードかされたアミノ酸配列を有する。
【0104】
他の特に好ましい実施例では、パルボウイルスキャプシドの非保存キャプシド領域が、別のパルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換、好ましくは置換される。好ましくは、非保存領域は異なるパルボウイルスからの同じ(すなわち、相同性)領域で置換される。パルボウイルス特異的(AAV血清型特異的を含む)特徴は、係る非保存領域に随伴する可能性が高い。また、非保存領域は変化に最もよく耐性である可能性も高い。特別な実施例では、パルボウイルスの主要キャプシドサブユニットのループアウト領域を2つのパルボウイルス間、さらに好ましくはAAVとパルボウイルスとの間、なおさらに好ましくは血清型が異なる2つのAAV間で交換される。
【0105】
特にAAV2型に関して、このウイルスの結晶構造は解明されていないが、構造的相関は配列情報に基づき得られている。その構造的相関は、AAV2型のVp3サブユニットが8β−バーレルのモチーフを有し、これらのモチーフがループアウト領域により分離されていることを示している(Chapmanら、Virology 194:419)。最近、AAV3型の配列が、Murayamaら、(1996)Viorogy 221:208により確認されている。AAV2型とAAV3型のVp3間のアミノ酸の相同性は89%であり、領域は70%の相同性を有するループ3/4と規定されている(同上)。さらに、AAV3型はAAV2型と同じ受容体と結合することはない(Mizukamiら、Virology 217:124)。ループ3及び4の多岐にわたるアミノ酸配列は、AAV2型及びAAV3型により用いられる細胞受容体における差、及び結果としての細胞向性の相違を説明しうる。したがって、本発明の好ましい実施例では、キメラAAV粒子は、AAV2型のループ3/4、又はその一部分がAAV3型のループ3/4で交換され、又はその逆で同じく交換されて構成されている。
【0106】
他の実施例では、キメラパルボウイルスは、Vp3サブユニットのループ1、2、3、及び/又は4が異なる血清型(例えば、1、3、4、5又は6型)のAAVの対応するループ領域により置換されているAAV2型キャプシドを含む。例示の実施例では、AAV2型Vp3サブユニットのループ2〜4の血清型が3型又は4型ウイルスのループ2〜4領域により置換されている。
【0107】
同様に、他の好ましい実施例では、キメラパルボウイルスは、Vp3サブユニットのループ1、2、3及び/又は4領域が異なるAAV血清型の対応する領域により置換される。例示の実施例として、Vp3サブユニットのループ2〜4領域がAAV2型ループ2〜4領域により置換されるAAV3型又は4型キャプシドを含むキメラパルボウイルスが挙げられるがこれに限定されない。
【0108】
本発明はさらに、主要Vp3サブユニットが、自律性パルボウイルスの主要サブユニットからループ領域(好ましくは、対応するループ領域)により置換されるAAVキャプシドを含むキメラパルボウイルスを提供する。特に、AAV1、2、3、4、5、又は6型のVp3サブユニットからのループ領域1、2、3及び/又は4が自律性パルボウイルスの主要サブユニットからのループ領域で置換される。
【0109】
特異的キメラキャプシドのヌクレオチド配列として、付録5(SEQ ID NO:5のヌクレオチド2133乃至4342)に示したヘルパープラスミドによりコード化されるキャプシド配列を有するものが挙げられる。この配列はAAV2repコード配列を含有し、AAV2 Vp3サブユニットからのループ2〜4が、pBluescriptバックボーンにおいて、AAV3からの対応する領域で置換されたことを除き、ほとんどのAAV2キャプシドコード配列を含有する。
【0110】
あるいは、キメラキャプシドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5のヌクレオチド2133乃至4342で示した配列と実質的に相同性である。さらに代わりとして、キメラキャプシドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5のヌクレオチド2133乃至4342によりコード化されるキャプシドと同じアミノ酸配列を有する。「実質的に相同性」という用語は、上で定義した通りである。
【0111】
キメラパルボウイルスは、本明細書中で開示された通り、又は技術上周知の他の標準方法により構成することができる。同様に、当業者は、本明細書中で記載されている通り、又は技術上周知の他の標準方法により、過度の実験をせずに、アセンブリ、パッケージング、細胞向性、等のために生成されるキメラパルボウイルスを評価することができる。
【0112】
本発明の別の態様は、別のパルボウイルスからの少なくとも1つのキャプシド領域が挿入又は置換(好ましくは、置換)されているキメラパルボウイルスキャプシド(好ましくはAAV Vp1、Vp2又はVp3タンパク質)である。パルボウイルスキャプシドへの異質のキャプシドタンパク質の導入により、キメラパルボウイルスキャプシドタンパク質を組み込むウイルスキャプシド又は粒子(好ましくはパルボウイルスキャプシド又は粒子)に対して変化した特徴(例えば、免疫原性、向性、等)が提供される。あるいは、キメラパルボウイルスキャプシドタンパク質は、キメラパルボウイルスキャプシドタンパク質を組み込むウイルスキャプシド又は粒子(好ましくはパルボウイルスキャプシド又は粒子)の検出又は精製を促進しうる。特に好ましい実施例では、特定の血清型のAAVキャプシド又は粒子の抗原特性が変化(例えば、変更又は改変)され、又は未変性キャプシド領域のキメラパルボウイルスキャプシド領域の組み込みにより減少(例えば、縮小又は軽減)される。この実施例によれば、キメラキャプシドタンパク質を用いて、AAVキャプシド又は粒子の血清型に対して免疫を有する対象における免疫クリアランスを除去又は減少しうる(例えば、複数のウイルス投与を可能にする)。抗原特性の変化又は縮小は、例えば、キメラパルボウイルスキャプシドタンパク質の存在を除き同一であるAAVキャプシド又は粒子との比較で評価しうる。
【0113】
本発明は空のキメラパルボウイルスキャプシド構造物も包含する。空のキャプシドは、ペプチド又はタンパク質(例えば、免疫応答を生じる抗原)、核酸、又は他の化合物の提示又は送達のために使用できる(例えば、Miyamuraら、(1994)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:8507;その開示の全体が本明細書中で援用される、Youngらに対する米国特許第5,916,563号、Mazzaraらに対する第5,905,040号、Samulskiらに対する米国特許第5,882,652号、米国特許第5,863,541号を参照)。空のキャプシドは技術上周知の方法により生成しうる(例えば、同上を参照)。
【0114】
本発明のキメラパルボウイルス及びキャプシドはさらに、新規なキャプシド構造物に対する抗体の増大に使用しうる。抗体は当業者に周知である方法により製造しうる。
【0115】
本発明は、クローニングベクター、トランス相補性パッケージングベクター、パッケージング細胞、及び本明細書中で開示された本発明のキメラパルボウイルス粒子を製造するための方法も提供する。一般に、ベクター、パッケージング細胞、及びキメラパルボウイルスを製造するための方法は、ハイブリッドパルボウイルスに関して上述した通りである。また、少なくとも1つのcap遺伝子(rAAVゲノム、パッケージングベクター、又はパッケージング細胞によりコード化される)は、非相同性パルボウイルス(上述した通り)からの異質のアミノ酸配列をコード化する少なくとも1つの核酸配列を挿入している。
【0116】
III. 標的パルボウイルス
本発明の別の態様は、外来性ターゲティング配列がパルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換されている、パルボウイルスキャプシド及び組換えAAVゲノムを含むパルボウイルスベクターである。パルボウイルスベクターは、パルボウイルスキャプシドへの外来性ターゲティング配列の置換又は挿入によりターゲティングされている(すなわち、特定の細胞型又は複数の細胞型に方向づけられている)ことが好ましい。別の述べ方をすれば、外来性ターゲティング配列はパルボウイルスに対して変化した向性を与えることが好ましい。さらに別の述べ方をすれば、ターゲティング配列は細胞への標的ベクターの送達の効率を増大させる。
【0117】
以下でさらに詳しく述べるように、外来性ターゲティング配列は、特定の細胞にパルボウイルスの感染を方向づけるウイルスキャプシド配列(例えば、自律性パルボウイルスキャプシド配列、AAVキャプシド配列、又は他のウイルスキャプシド配列)でありうる。代わりとして、外来性アミノ酸配列は、細胞へのパルボウイルスベクターの侵入を方向づけるペプチド又はタンパク質をコード化しうる。好ましい実施例では、パルボウイルスキャプシドはAAVキャプシド、さらに好ましくは、AAV2型キャプシドである。
【0118】
本明細書中で用いられる「変化した」向性は、ターゲティング配列を欠く未変性パルボウイルスと比較して特定の細胞型に関して感染力の縮小又は増強を含む。「変化した」向性は新しい向性の作成も包含する(すなわち、パルボウイルスは特定の細胞型に対して、外来性アミノ酸配列の非存在下には有意な、あるいは検出可能な程度に感染することがない)。あるいは、「変化した向性」は、未変性パルボウイルスと比較して特定の細胞型に対するパルボウイルスベクターのより方向づけられたターゲティングを指しうるが、標的細胞は典型的に未変性パルボウイルスによっても感染しうる(例えば、狭くした向性)。さらに代わりとして、「変化した」向性は、未変性パルボウイルスと比較して標的パルボウイルスのより効率的な送達を指す(例えば、感染効率(MOI)の減少)。
【0119】
本明細書中で用いられる「感染力の縮小」は、野性型向性の消失及び野生型向性又は特定の細胞型への感染力の減少を包含することが意図されている。感染力の減少は、感染力の野生型レベルに対して感染力の25%、50%、75%、90%、95%、99%以上の減少でありうる。「感染力の増強」により、特定の細胞型に対する感染力が野生型パルボウイルスで観察される感染力を上回り、例えば、少なくとも25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、又は500%以上に増大することを意味する。
【0120】
外来性ターゲティング配列はキャプシドサブユニットの一部又はすべて、あるいは1つ上のキャプシドサブユニットを交換又は置換しうる。さらに代わりとして、1つ以上のターゲティング配列(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の配列)がパルボウイルスキャプシドへ導入しうる。別の実施例では、副キャプシドサブユニット(例えば、AAVのVp1及びVp2)内の挿入及び置換が好ましい。AAVキャプシドについては、Vp2又はVp3における挿入又は置換も好ましい。
【0121】
当業者には、パルボウイルスキャプシドタンパク質をコード化する配列の報復により、単一の挿入又は置換が1つ以上のキャプシドサブユニットに影響を及ぼしうることがあきらかであろう。
【0122】
上述したように、特別な実施例では、本発明は独特な構造及び特性を有するキメラパルボウイルス粒子を提供する。別の領域にキメラパルボウイルスキャプシドを作成する1つ又はそれ以上のパルボウイルスキャプシド領域の置換及び/又は挿入により、野生型パルボウイルスの向性の喪失及び/又は外来性キャプシド領域と関連した新しい向性の進展が生じる。したがって、標的パルボウイルスは、詳しく上述した通り、キメラパルボウイルスでありうる。特に、標的キメラパルボウイルスは、主要なキャプシドサブユニットからのキャプシドサブユニット又はループ領域が別のパルボウイルスからのキャプシドサブユニット又はループ領域で置換されているところに提供される。
【0123】
したがって、本発明の特別な実施例では、キメラパルボウイルス粒子は、野生型パルボウイルスの向性をコード化するキャプシド領域が異なるパルボウイルス配列からのキャプシド領域又はサブユニットで交換されているところで向性され、それにより野生型の向性を縮小又は完全に消失させる。これらの感染−未変性パルボウイルスは、ターゲティング向性を有するパルボウイルスを作成するテンプレートとして使用しうる。このようにして、新しい又は方向づけられた向性を有するが、野生型の向性を欠いたパルボウイルスを生成することができる。
【0124】
別の好ましい実施例では、未変性又は野生型の向性に方向づけられるパルボウイルスキャプシド領域が、別のパルボウイルスの向性に方向づけられるキャプシド領域で交換され、それにより未変性の向性を縮小又は切断すると同時にキメラパルボウイルスに対して新しい向性を与える。他の実施例では、異質のキャプシド領域が、野生型の向性を縮小又は消失させることなくパルボウイルスキャプシドへ置換又は挿入される。さらに代わりとして、1つ以上の異質のパルボウイルスキャプシド領域(例えば、2、3、4、5以上)がパルボウイルスキャプシドへ交換される。例えば、第1のキャプシド領域は野生型の向性に方向づけられる未変性のキャプシド領域を置換しうる。別の異質のキャプシド領域は新しい向性を有するキメラキャプシドを提供する。
【0125】
ヘパラン硫酸(HS)は最近、AAVの主要な受容体として確認されている(SummerfordとSamulski、(1998)J. Virology 72:1438)。このため、キャプシド構造を改変し、AAVの細胞受容体との結合を促進又増強し、又はそれとの結合を抑制又は予防することができる。例えば、AAVの向性は、例えば、HS結合領域又は他の配列を含有する他のパルボウイルスからの配列により、AAVキャプシドに対するHS結合を交換することにより変化しうる。
【0126】
いくつかのコンセンサス配列が、HS受容体と結合するリガンドの中で確認されている。一般に、HSは塩基性アミノ酸のクラスターを含む配列と結合するように見える。例示のコンセンサス配列として、BBXB、BBBXXB、及びRXFRXKKXXXKが挙げられるがこれらに限定されず、ここでBは塩基性アミノ酸であり、Xはいずれかのアミノ酸である。塩基性アミノ酸のクラスターを含有する3つの配列は、以下の通り、AAV2型のVP1キャプシドタンパク質の最初の170個のアミノ酸残基中に存在する:アミノ酸116乃至124でのRXRKR、アミノ酸137乃至144でのKXKKR、及びアミノ酸161乃至170でのKXRKR(Srivastavaら、(1983)J. Virology 45:555により記載されたAAV2型配列及び番号、Ruffingら、(1994)J. Gen. Virology 75:3385、Muzycka、(1992)Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97、及びCassinottiら、(1988)Virology 167:176による修正)。また、コンセンサス配列(RXFRPKRLNFK)が、アミノ酸299乃至315でのAAV2型のVP1キャプシドサブユニットにおいて見出されている。
【0127】
AAV血清型4及び5が細胞性HS受容体と結合することはなく、又は結合の効率は低いように思われる。したがって、特別の実施例では、AAV血清型1、2、3、又は6のHS結合領域はAAV血清型4又は5の対応する領域で置換され、HS結合を縮小又は消失するとみられる。同様に、HS結合は、AAV1、2、3又は6からのHS結合領域での挿入又は置換によりAAV血清型4又は5に対して与えられるとみられる。
【0128】
HSコンセンサス配列は大量の塩基性アミノ酸により特徴づけられる。AAV2型Vp1Capタンパク質の最初の170個の残基へは、3系統の塩基性アミノ酸を含め、正の電荷をもつアミノ酸が高密度で認められ、これは細胞表面とのイオン相互作用に関係しているとみられる。したがって、本発明の1つの特別な実施例では、HS受容体に対するAAVキャプシドの親和性が、一部又はすべての塩基性配列が他の配列、例えば、HS結合領域を含有しない別のパルボウイルスからの他の配列により置換される標的パルボウイルスを作成することにより縮小又は除去される。
【0129】
あるいは、呼吸器合胞体ウイルスへパリン結合領域を典型的にHS受容体(例えば、AAV4、AAV5、B19)と結合することがないウイルスへ挿入又は置換し、結果として生じる変異体にへパリン結合を与えることができる。
【0130】
B19はその受容体としてグロボサイドを用いて一次赤血球前駆細胞に感染する(Brownら、(1993)Science 262:114)。したがって、B19キャプシドのグロボサイド受容体結合領域は他のパルボウイルスキャプシド(好ましくはAAVキャプシド、さらに好ましくは、AAV2型キャプシド)へ挿入/置換され、結果として生じるキメラパルボウイルスを赤血球細胞にターゲティングすることができる。
【0131】
さらに好ましい実施例では、外来性ターゲティングは、パルボウイルスキャプシドへ挿入又は置換されてパルボウイルスの向性を変化させるペプチド又はタンパク質をコード化するアミノ酸配列であってよい。未変性パルボウイルスの向性はアミノ酸配列の挿入又は置換により縮小又は消失しうる。あるいは、外来性アミノ酸配列の挿入又は置換はパルボウイルスを特定の細胞型にターゲティングする。さらに好ましい実施例では、外来性ターゲティング配列はパルボウイルスキャプシドへ置換又は挿入され、野生型の向性を同時に切断し、新しい向性を導入する。例えば、ターゲティングペプチドをAAVキャプシドのターゲティング領域へ直接挿入し、未変性向性を(例えば、細胞性へパラン硫酸受容体との結合に干渉することにより)同時に破壊し、標的AAVベクターを特定の細胞に方向づけることができる。
【0132】
当業者には、パルボウイルスの未変性向性が、受容体結合の原因となるパルボウイルスキャプシドの領域へ直接、外来性ターゲティング配列を置換又は挿入することなく縮小又は除去しうることが明らかであろう。野生型の向性を喪失した変異体が、本明細書中で開示された新規な向性を有するパルボウイルスを作成するためのテンプレートとして有用である。野生型の向性の喪失を生じる置換又は挿入が受容体結合及び/又は細胞内への侵入のレベルで作用することが好ましい。換言すれば、変化したパルボウイルスは、その他の点で他の手段により、例えば、二重特異性抗体により、本明細書中で開示されたターゲティングペプチド又はタンパク質により、又は技術上周知の他の手段により、細胞内への侵入が提供される場合は、細胞への感染能力があることが好ましい。
【0133】
外来性ターゲティング配列は、パルボウイルスの向性を変化させるタンパク質又はペプチドをコード化するアミノ酸配列であってよい。特別の実施例では、ターゲティングペプチド又はタンパク質は天然に発生し、あるいは、完全に又は部分的に合成的でありうる。例示のペプチド及びタンパク質として、RGBペプチド配列、ブラジキニン、ホルモン、ペプチド成長因子(例えば、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、シンスリン様成長因子I及びII、等)、サイトカイン、メラニン細胞刺激ホルモン(例えば、α、β又はγ)、神経ペプチド及びエンドルフィン、等など細胞受容体及び糖タンパク質と結合するリガンドや他のペプチド、及びそれらの同族受容体に細胞をターゲティングする能力を保持するフラグメントが挙げられる。他の例示のペプチド及びタンパク質として、サブスタンスP、ケラチノサイト成長因子、神経ペプチドY、ガストリン放出ペプチド、インターロイキン2、雌鶏の卵白リゾチーム、エリスロポエチン、ゴナドリベリン、コルチコスタチン、β−エンドルフィン、ロイエンケファリン、リモルフィン、α−ネオーエンケファリン、アンジオテンシン、プノイマジン、血管作用性小腸ペプチド、ニューロテンシン、モチリン及び上述したそのフラグメントが挙げられる。さらに代わりとして、ターゲティングペプチド又はタンパク質は、例えば、抗受容体抗体など細胞表面エピトープを認識する抗体又はFabフラグメントであってよい。さらに代わりとして、毒素(例えば、α−ブンガロトキシン、等など破傷風抗毒素又は蛇毒)を用いて、本発明のパルボウイルスベクターを関連の特定の標的細胞にターゲティングすることができる。さらに好ましい実施例では、パルボウイルスベクターを「非古典的な」輸入/輸出シグナルペプチド(例えば、線維芽成長因子−1及び−2、インターロイキン1、HIV−1Tatタンパク質、ヘルペスウイルスV22タンパク質、等)を用いて、Cleves、(1997)Current Biology 7:R318により記載されたように、細胞に送達することができる。また、特異的細胞、例えば、肝細胞により摂取されるFVFLPペプチドモチーフトリガーにより摂取を方向づけるペプチドモチーフも包含される。ファージディスプレイ法、及び技術上周知の他の方法を用いて、好ましくは特異的に関連の細胞型を認識するペプチドを確認することができる。
【0134】
本明細書中で用いられる「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを含めてすべての型の免疫グロブリンを指す。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであってよく、(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、又はヒトを含めてどの種の起源であってもよく、あるいはキメラ抗体であってもよい。「抗体」という用語により、当業者には周知の二重特異性抗体又は「架橋」抗体も包含される。
【0135】
本発明の範囲内の抗体フラグメントとして、例えば、Fab(ab’)2、及びFcフラグメント、及びIgG以外の抗体から得られる対応するフラグメントが挙げられる。係るフラグメントは周知の方法により製造することができる。
【0136】
あるいは、ターゲティング配列は、受容体(例えば、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質又はプロテオグリカン)を含めて細胞表面結合部位にパルボウイルス粒子をターゲティングするペプチド又はタンパク質、及び逆に荷電分子(ターゲティング配列又はパルボウイルスキャプシドと比較して)、又はターゲティング配列又は標的パルボウイルスが相互作用して細胞と結合する他の分子をコード化することにより、細胞の侵入を促進する。細胞表面結合部位の例として、へパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、及び他のグリコサミノグリカン、ムチンで見出されるシアル酸成分、糖タンパク質、及びガングリオシド、MHC I糖タンパク質、マンノース、N−アセチル−ガラクサミン、N−アセチル−グルコサミン、フコース、等を含めて膜糖タンパク質で見出される炭水化物成分が挙げられるがこれらに限定されない。
【0137】
さらに代わりとして、ターゲティング配列は、細胞へのパルボウイルスの侵入を方向づける別の分子との化学結合(例えば、アルギニン又はリジン残基のアミノ酸側鎖による)のために使用されるペプチド又はタンパク質であってもよい。
【0138】
他の実施例では、外来性ターゲティング配列がキャプシドへ置換又は挿入され、細胞受容体(例えば、HS受容体)結合及び/又は細胞への侵入を乱す。例えば、外来性アミノ酸配列は、細胞受容体と結合及び/又はその他の点でウイルスの細胞への侵入を仲介するAAVキャプシドの領域に置換又は挿入することができる。好ましくは、外来性ターゲティング配列は、細胞HS受容体(上述した通り)と相互作用するキャプシド領域に挿入されることである。しかし、完全なAAVビリオンを形成する1例としての挿入変異体はへパリンアガロースと結合せず、又は感染Hela細胞はAAV2型ゲノム(Vp3cap遺伝子領域)のbp3761でのアミノ酸配列の挿入により生成される。
【0139】
さらに別の実施例では、パルボウイルスキャプシドへ挿入される外来性アミノ酸配列は、パルボウイルスの精製を促進するものである。本発明のこの態様にによれば、外来性アミノ酸配列が改変パルボウイルスの向性も変化させることは必要ではない。例えば、外来性アミノ酸配列は、当業者には周知であるように、ニッケルカラム上のパルボウイルスを精製するために有用であるポリ−ヒスチジンを含むことができる。あるいは、硫酸をパルボウイルスキャプシドへ置換又は挿入し、パルボウイルスをへパリンとの結合により精製することができるが、これは例えば、Zoloyukhinら、(1999)Gene Therapy 6:973により記載され、その 開示の全体が本明細書中で援用される。
【0140】
他の実施例では、アミノ酸配列が、標準の免疫精製法によりAAVを精製するために使用できる抗原性ペプチド又はタンパク質をコード化する。あるいは、アミノ酸配列は、アフィニティー精製又は技術上周知の他の方法(例えば、分化サイズ、密度、電荷、又は等電、イオン交換クロマトグラフィー、又はペプチドクロマトグラフィー)により改変パルボウイルスを精製するために使用できる受容体リガンド又は他のペプチドもしくはタンパク質をコード化しうる。
【0141】
本発明のさらに別の実施例では、アミノ酸配列をパルボウイルス粒子へ挿入又は置換され、その検出を促進する(例えば、技術上周知の通り、抗体又は他の検出試薬による)。例えば、「フラッグ」エピトープをパルボウイルスキャプシドへ挿入し、市販の抗体(Eastman-Kodak、Rochester、NY)を用いて検出すうことができる。検出可能なウイルスは、例えば、細胞、組織又は対象中のウイルスの存在及び/又は残留性を追跡するために使用できる。
【0142】
さらに別の実施例では、抗原性タンパク質をコード化する外来性アミノ酸配列が改変キャプシドにおいて発現しうる(例えば、ワクチンにおける使用のため)。
【0143】
以下及び表1に示したように、今回の研究では、ペプチド挿入に耐性であるキャプシド内の位置を確認するために、AAV血清型2のキャプシドコード配列の挿入突然変異を用いた。生存可能な変異体は、各々のキャプシドサブユニット全体にわたる挿入で確認された。これらの挿入変異体は、例えば、ウイルスの精製及び/又は検出、又はキャプシドへの抗原ペプチド又はタンパク質を挿入するために、AAVキャプシドへペプチド又はタンパク質配列を挿入することが望ましい。表1(実施例を参照)に示したヌクレオチドの位置は、制限部位が作られ、例えば、新しい配列が次のヌクレオチドで開始する位置である。例えば、表1に示した挿入変異体について、ヌクレオチド2285で挿入したため、新しい挿入配列はヌクレオチド2286で開始することになる。
【0144】
パルボウイルス副Capサブユニット内、例えばAAV Vp1及びVp2サブユニットの外来性アミノ酸配列を挿入することが好ましい。あるいは、Vp2又はVp3の挿入が好ましい。また、AAV2型cap内のヌクレオチド2285、2356、2364、2416、2591、2634、2690、2747、2944、3317、3391、3561、3595、3761、4046、4047、及び/又は4160での挿入変異体が好ましく、好ましくは、本明細書中に記載される向性が変化したAAV2型ベクターを生成する(本明細書中で用いられるAAV2型ナンバリングは、Srivastavaら、(1983)J. Virology 45:555により記載され、Ruffingら(1994)J. Gen. Virology 75:3385、Muzycka、(1992)Curr. Topics Microbiol. Immunol. 158:97、及びCassinottiら、(1988)Virology 167:176により改変された通りである)。
【0145】
AAV2のこれらのヌクレオチド位置での挿入は、AAV2キャプシドコード領域(アミノ酸1としてVp1の開始メチオニン残基を用いた)、又は当業者には周知の他の血清型のAAVの対応する領域内のアミノ酸28(nu2285)、51(nu2356)、54(nu2364)、71(nu2416)、130(nu2591)、144(nu2634)、163(nu2690)、182(nu2747)、247(nu2944)、372(nu3317)、396(3391)、452(nu3561)、464(nu3595)、520(nu3761)、521(nu3766)、615(nu4046及び4047)、及び653(nu4160)後のアミノ酸挿入を増大させる。当業者であれば、AAVキャプシドコード領域における重複により、これらの挿入が1個以上のキャプシドタンパク質内の挿入を増大しうることは明らかであろう。
【0146】



あるいは、外来性アミノ酸配列は、当業者に周知の他の血清型のAAVキャプシドにおける上述した相同部位に挿入する(例えば、Chioriniら、(1999)J. Virology 73:1309を参照)。AAVキャプシド内のアミノ酸は、AAV血清型間に高度に、しかも完全に保存されているように見える。したがって、特別な実施例において、外来性アミノ酸配列は、血清型2以外(例えば、血清型1、3、4、5又は6)のAAVにおける表2(次のアミノ酸で開始する新しい配列)に示したアミノ酸位置で置換される。
【0147】
さらに代わりとして、外来性アミノ酸配列は上記の位置でAAVキャプシドに挿入し、上述したように、改変パルボウイルスの精製及び/又は検出を促進し、又は抗原提示を目的としてもよい。
【0148】
1つの特別なAAV2型変異体が、ゲノムのヌクレオチド位置2634(Vp2cap遺伝子領域;上述したAAV2ナンバリング)でアミノ酸配列を挿入することにより製造される。この変異体は、Vp1及びVp2サブユニットの検出可能発現の非存在下に電子顕微鏡分析により正常な形態を有するAAV2型を形成する。さらに、この変異体はウイルスゲノムを保護し、へパリンアガロースマトリックスとの結合を保持するが、HeLa細胞における感染力は明らかではない。この変異体は、Vp1及びVp2サブユニットに対する免疫応答を避ける対象に投与するために有用である。さらに、大きなペプチド又はタンパク質をAAVキャプシド構造物へ挿入するために使用できる。1つの実例として、アデノウィルスノブタンパク質をこの変異体へ挿入し、コクサッキーアデノウィルス受容体(CAR)に対してウイルスをターゲティングする。
【0149】
別の特定のAAV2型挿入変異体が、ゲノムのbp3761(Vp3キャプシドコード領域内)での外来性アミノ酸配列の挿入により製造される。この変異体はウイルスゲノムを保護し、形態学的に正常なキャプシド構造物を形成するが、へパリン−アガロースと結合することがなく、HeLa細胞には感染しない。この変異体は、未変性向性を欠いたAAVベクターを作成するための試薬として有用である。例えば、新しいターゲティング領域がbp3761又は別の部位でこの変異体へ導入することができる。表1に示したように、今回の研究では、外来性ペプチドの挿入に耐性であり、感染力を保持するAAVキャプシド内のさまざま位置が発見された(例えば、AAV2型ゲノムのbp2356、2591、2690、2944、3595、及び/又は4160)。
【0150】
他の好ましい実施例では、複数の挿入及び/又は置換を有するAAVベクターを作成し、所望のパターンの感染力、例えば、非感染性挿入/置換突然変異を示すAAVベクターを提供し、感染性突然変異(例えば、表1に示した通り)を単一AAVベクターで併用することができる。1つの実例として、ペプチド挿入がAAV2型ゲノムのbp3761(Vp3サブユニット内)で作られ、非感染性へパリン結合陰性変異体を作成した。第2のペプチド挿入をbp2356(あるいは、bp2591、2690、2944、3595又は4160)で行い、ベクターにターゲティングした。挿入ペプチドは、AAV2型ベクターを関連の標的細胞に対して方向づけるものであってよい。特別な実施例では、ブラジキニンを前述の部位のいずれかで挿入し、肺上皮細胞に対してベクターをターゲティングすることができる(例えば、嚢胞性線維症又は他の肺疾患の治療用)又はアデノウィルスノブタンパク質を前述の部位で挿入しCAR受容体を発現する細胞に対してベクターをターゲティングすることができる。あるいは、このベクターは免疫応答を得る抗体提示のために使用することができる。
【0151】
他の実施例では、置換又は挿入(好ましくは挿入)がAAV2ゲノムのヌクレオチド3789又は3961(例えば、新しい配列はそれぞれ、nu3790及び3962で開始する)、又は当業者には周知である他のAAV血清型の対応する部位で行われる。これらの位置はそれぞれ、AAVキャプシド(アミノ酸としてVp1のMet#1;表2)。特別な実施例では、クローニング法の一環としての制限部位の作成より、ヌクレオチド3790〜3792(Glu→lle)又はヌクレオチド3960〜3961(Glu→Val)でそれぞれ、ミスセンス突然変異が認められる。本発明の好ましい実施例では、nu3789又は3961でのターゲティング挿入が3761突然変異と結合し、これによりへパリン結合の喪失が生じ、標的キャプシド又はパルボウイルスを作成する。
【0152】
他の好ましい実施例では、挿入又は置換(好ましくは、挿入)がヌクレオチド3753、3858、3960、又は3987(次のヌクレオチドでの新しい配列の開始)、又は他の血清型のAAVにおける対応する部位でのAAV2キャプシドにおいて行われる。これらの部位は、それぞれAAVキャプシド、又は当業者には周知の他の血清型のAAVキャプシドにおける対応する部位(アミノ酸としてVp1のMet#1;表2)のアミノ酸517、552、586、又は595の後の挿入又は置換に対応する。
【0153】
他の好ましい実施例では、挿入又は置換は他の血清型、例えば(1、2、3、5又は6)のAAVキャプシドのアミノ酸517、552、586、又は595の後に行われる。
【0154】
標的又は改変パルボウイルスキャプシドが所望の特性(例えば、アセンブリー、パッケージング、感染力)を保持している限り、ウイルスキャプシドに挿入又は置換しうるアミノ酸配列の長さに対する特別な下限又は上限はない。外来性アミノ酸配列は、長さが100、50、20、16、12、8、4又は2アミノ酸という短さであってもよい。同様に、外来性アミノ酸配列はタンパク質全体をコード化する。好ましくは、パルボウイルスキャプシドへ挿入/置換される外来性アミノ酸配列は、改変パルボウイルスキャプシドの外側表面で発現することである。
【0155】
本発明はさらに、上述した通り、ターゲティング配列がパルボウイルスキャプシドタンパク質へ挿入又は置換される標的パルボウイルスキャプシドタンパク質を提供する。標的パルボウイルスキャプシドタンパク質は、未変性ウイルスベクター又は標的パルボウイルスキャプシドタンパク質の非存在下のウイルスキャプシドの向性と比較して、その中に標的パルボウイルスキャプシドタンパク質を組み込んだウイルスベクター又はウイルスキャプシド(好ましくは、パルボウイルスベクター又はキャプシド)に対する変化した向性を与える。同様に、改変キャプシドタンパク質(パルボウイルスについて上述した改変)が本発明の別の態様である。改変キャプシドはパルボウイルスキャプシド又は粒子へ組み込まれ、例えば、その精製及び/又は検出を促進し、又は抗原提示を目的とすることができる。
【0156】
さらに、キメラパルボウイルスキャプシドと関連して、さらに詳しく上述した通り、標的及び/又は改変パルボウイルスキャプシドが提供される。特別な実施例では、本発明は、AAVキャプシドについて、米国特許第5,863,541号などにより記載されている通り、標的パルボウイルス「キャプシド媒体」を提供する。
【0157】
本発明によるパルボウイルスキャプシドによりパッケージングされ、細胞へ移入される分子として、その後に標的細胞ゲノムへ有利に組み込まれる組換えAAVゲノム、及び他の異種DNA分子、RNA、タンパク質及びペプチド、又は小有機分子、又はその組み合わせが挙げられる。異種分子は、パルボウイルス感染においては自然に見出されない分子、すなわちパルボウイルスゲノムによりコード化されない分子と定義される。本発明の好ましい実施例では、キャプシド形成すべきDNA配列が、ウイルスパッケージングシグナルを含有するAAV ITRと結合され、これによりキャプシド形成及び/又はゲノムへの標的組み込みの効率が増大する。
【0158】
本発明はさらに、宿主標的細胞への分子の移入するための本発明のパルボウイルスキャプシドの外観と治療的に有用な分子との関連に向けられている。係る関連分子として、DNA、RNA、炭水化物、脂質、タンパク質又はペプチドが挙げられる。本発明の1実施例では、治療的に有用な分子がキャプシドタンパク質と共有結合的に結合される(すなわち、共役又は化学的結合)。共有結合的に分子を結合する方法は当業者には周知である。
【0159】
本発明の標的及び/又は改変パルボウイルスのキャプシドタンパク質、キャプシド、及びウイルス粒子は、これらの新規な構造物に対する抗体を増大するために使用できる。あるいは、外来性アミノ酸配列を細胞に対する抗原提示のために、例えば、対象に投与して外来性アミノ酸配列に対する免疫応答を得るために、パルボウイルスキャプシドへ挿入することができる。この後者の実施例によれば、外来性アミノ酸配列もパルボウイルスの向性を変化させることは必要ではない。
【0160】
当業者には、上述した改変/標的ウイルス及びキャプシドが前節で述べたキメラ及び/又はハイブリッドパルボウイルスであってもよいことは明らかであろう。当業者にはさらに、本明細書中に記載された挿入変異体が他の改変、例えば、欠失、挿入又はミスセンス突然変異のパルボウイルスを含むことは明であろう。また、その突然変異は使用される特定のクローニング法の結果としてパルボウイルスキャプシド又はrAAVゲノムへ偶発的に導入される。
【0161】
パルボウイルス、AAV、およびrAAVゲノムは、ハイブリッドパルボウイルスに関して上述した通りである。本発明は、クローニングベクター、トランス相補性パッケージングベクター、パッケージング細胞、及び上記の改変及び/又は標的rAAV粒子を製造するための方法も提供する。一般に、ヘルペス、パッケージング細胞、及び標的又は改変パッケージングを製造するための方法は、ハイブリッド及びキメラウイルスに関して上述した通りである。また、少なくとも1つのcap遺伝子(rAAVゲノム、パッケージングベクター、又はパッケージング細胞によりコード化)は外来性ターゲティング配列(上述した通り)又は外来性アミノ酸配列(例えば、精製、検出又は抗原提示について上述した通り)をコード化する少なくとも1つの核酸配列を挿入又は置換している。
【0162】
IV. 遺伝子導入技術
本発明の方法は、細胞の分割と非分割を含め、広範囲の宿主細胞へ異種核酸配列を送達する手段を提供する。本発明のベクターや他の試薬、方法や医薬組成物は、治療又はその他の方法として、それを必要とする対象に対しタンパク質又はペプチドを投与する方法においてさらに有用である。このようにして、タンパク質又はペプチドは対象のin vivoで得ることができる。対象は、その対象がタンパク質又はペプチドの欠損を有しているため、又は対象におけるタンパク質又はペプチドの産生が一部の治療的効果に影響するため、治療又はその他の手段として、またさらに以下で説明されるように、タンパク質又はペプチドの必要がある。
【0163】
一般に、本発明を使用し、生物学的効果を有する異質の核酸を送達して遺伝子発現と関連した疾患に伴う症状を治療又は寛解させることができる。例示の疾患状態として、嚢胞性線維症(及び他の肺疾患)、A型血友病、B型血友病、地中海貧血症、貧血及び他の血液疾患、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、及び他の神経性疾患、癌、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ、ベッカー)、ゴーシェ病、フルラー病、アデノシンデアミナーゼ欠乏症、糖原病及び他の代謝欠損症、網膜変性疾患(及び他の眼病)及び固形臓器(例えば、脳、肝、腎、心臓)の疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
遺伝子導入は、これらの状態の治療の理解と提供における実質的に有力な用途を有する。欠損性遺伝子が知られ、クローン化されている数多くの先天性疾患がある。ある場合には、これらのクローン化遺伝子の機能は知られている。一般に、上記の疾患状態は2分類化される。すなわち、一般に劣性様式で遺伝性である、通常、酵素の欠損性状態と、優性様式で遺伝性ある、調節又は構造タンパク質を少なくとも時々巻き込む不均衡性状態である。欠損性状態の疾患については、遺伝子導入を用いて補充療法のために疾患組織へ正常な遺伝子を導くほか、アンチセンス突然変異を用いて疾患の動物モデルを作成することができよう。不均衡性疾患状態については、遺伝子導入を用いてモデル系において疾患状態を作成し、次いでこれを疾患状態に対抗する努力において使用できよう。このため、本発明の方法は遺伝子疾患の治療を可能とする。本明細書中で用いられるように、疾患状態は、疾患の原因となり、それをさらに重篤にする欠損又は不均衡を部分的又は全体的に治療することにより治療される。核配列の部位特異的組み込みを用いて突然変異を誘発することや欠損を矯正することも可能である。
【0165】
本発明を使用して、in vitro又はin vivoの細胞にアンチセンス核酸を供給することもできる。標的細胞におけるアンチセンス核酸の発現は、細胞による特定タンパク質の発現を減少する。したがって、アンチセンス核酸を投与して、それを必要となる対象における特定タンパク質の発現を減少させることができる。アンチセンス核酸をin vitroの細胞に投与して細胞生理を調節すること、例えば、細胞又は組織培養系を最適化することもできる。本発明は他の非翻訳RNA、例えば、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載)、スプライセオソーム性トランス−スプライシングをもたらす(Puttarajuら、(1999)Nature Biotech. 17:246)又は「ガイド」RNA(例えば、Gormanら、(1988)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95:4929;Yuanらに対する米国特許第5,869,248号を参照)RNAを標的細胞に送達するために有用である。
【0166】
最後に、本発明はさらに診断法や検査法における用途があり、これにより関連の遺伝子が一時的に又は安定に細胞培養系、あるいは、遺伝子導入動物モデルにおいて発現される。
【0167】
V. 対象、医薬組成物、ワクチン、及び投与様式
本発明は獣医用及び医療用に使用される。適切な対象として、トリ及び哺乳動物が挙げられ、哺乳動物であることが好ましい。本明細書中で用いられる「トリ」という用語は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ及びキジを含むがこれらに限定されない。本明細書中で用いられる「哺乳動物」という用語は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、等を含むがこれらに限定されない。ヒト対象が最も好ましい。ヒト対象は新生児、乳児、小児、及び成人を含む。
【0168】
特別な実施例では、本発明は、薬学的に許容される担体又は他の医療薬剤、医薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、等での本発明のウイルス粒子を含む医薬組成物を提供する。注射のために、担体は典型的に液体となる。他の投与方法のために、担体は、無菌の発熱物質を含まない水又は無菌の発熱物質を含まないリン酸緩衝生理食塩水など固体又は液体のいずれかであってよい。吸入投与のために、担体は呼吸可能なものとなり、好ましくは固体又は液体の粒子性の形態となる。注射媒体として、滅菌剤、塩又は食塩水、及び/又は緩衝液など注射液に有用な添加剤を含む。
【0169】
他の実施例では、本発明は、AAVプロウイルスが薬学的に許容される担体また他の医薬剤、医薬品、担体、アジュアンント、希釈剤、等でゲノムへ組み込まれる細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0170】
「薬学的に許容される」により、生物学的又はその他の点で望ましくないものではない物質、すなわち、その物質が望ましくない生物学的作用を引き起こすことなくウイルスベクターとともに対象に投与しうることが意味される。このため、例えば、ex vivo細胞の形質移入又はウイルス粒子の対象への直接投与において、係る医薬組成物を用いることができる。
【0171】
本発明のパッケージングウイルスを投与して免疫原性反応(例えば、ワクチンとして)を誘発することができる。典型的に、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と併用して本明細書中で開示されている免疫原性量の感染性ウイルス粒子を含む。「免疫原性量」は、医薬組成物が投与される対象における免疫応答を誘起するのに十分である感染性ウイルス粒子の量である。典型的に、治療される対象の年齢や種よって、1用量につき約10乃至約1015の量のウイルス粒子、及び好ましくは約10乃至1010の、さらに好ましく約10乃至10ウイルス粒子が適切であり、免疫応答がそれに対する免疫原が望ましい。対象及び免疫原は上述した通りである。
【0172】
本発明は、細胞へヌクレオチド配列を送達する方法をさらに提供する。インビトロでの方法のために、ウイルスは、技術上周知のように、標準のウイルス形質導入法により細胞に投与することができる。ウイルス粒子は、特定の標的細胞に適切な標準の形質導入法により適切な複数の感染で細胞に添加される。投与するウイルスの力価は、標的細胞型及び特定のウイルスベクターによって変動しうるが、過度の実験なしに当業者により決定できることができる。あるいは、本発明のアデノウィルスベクターは、以下に記載するように、技術上周知の他の手段により達成することができる。
【0173】
組換えウイルスベクターは、生物学的に有効な量で細胞に投与されることが好ましい。ウイルスベクターの「生物学的に有効な」量は、細胞において異種核酸配列の感染(又は形質導入)及び発現が生じるのに十分である量である。ウイルスがin vivo細胞に投与される(例えば、ウイルスを以下に着さした対象に投与される)場合は、ウイルスベクターの「生物学的に有効な」量が、標的細胞における異種核酸配列の形質導入及び発現を生じるのみ十分である量である。
【0174】
本発明のウイルスベクターが投与される細胞は、神経細胞(末梢又は中枢神経系、特に脳細胞)、肺細胞、網膜細胞、上皮細胞(例えば、腸及び呼吸器上皮)、筋細胞、膵細胞(島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、胚細胞、等を含むがこれらに限定されないどの型でもありうる。あるいは、細胞は前駆細胞であってもよい。さらに代わりとして、細胞は幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝幹細胞)。さらに、細胞は、上記したように、どの種の起源でもありうる。
【0175】
本発明の特別の実施例において、細胞は対象から除去され、パルボウイルスベクターがその中に導入されて、細胞が対象に戻されて置換される。Ex vivo治療のために対象から細胞を除去し、対象に戻されて導入される方法は技術上周知である。あるいは、rAAVベクターを別の対象からの細胞、培養細胞、又は他の適切な源からの細胞へ挿入し、その細胞がそれを必要とする対象に投与される。
【0176】
Ex vivo遺伝子療法の適切な細胞として、肝細胞、神経細胞(末梢又は中枢神経系、特に脳細胞)、膵細胞、脾細胞、線維芽細胞(例えば、皮膚線維芽)、ケラチン生成細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋芽細胞、造血細胞、骨髄間質細胞、前駆細胞、及び幹細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0177】
対象に投与される細胞の投与量は、対象の年齢、状態及び種、細胞の型、細胞により発現される核酸、投与様式、等によって変動する。典型的に、少なくとも1用量につき約10乃至約10、好ましくは約10乃至1010細胞で投与される。好ましくは、細胞は「治療的に有効な量」で投与されることである。
【0178】
本明細書中で用いれる「治療的に有効な」量は、疾患状態と関連した症状の少なくとも1を軽減(例えば、緩和、減少、縮小)するのに十分である量である。別の述べ方をすれば、「治療的に有効な」量は、対象の状態に何らかの改善を与えるのに十分である量である。
【0179】
本発明の別の態様は、本発明のウイルス粒子によりin vivoで対象を治療する方法である。本発明のパルボウイルス粒子のそれを必要とする対象又は動物の投与は、ウイルスベクターを投与するための技術上周知の手段により行うことができる。
【0180】
実例としての投与様式は、経口、直腸、経粘膜、局所、経皮、吸入、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋内、及び関節内)投与、等、及び直接組織(例えば、筋)又は臓器投与(例えば、中枢神経系に送達するための肝内、脳内)、選択的に、くも膜下腔内、直接筋内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射を含む。注射剤は、液体溶液又は懸濁液としてのいずれかの在来形態で、注射前の液体中の溶液又は懸濁液の適した形態、又は乳濁液として調製することができる。選択的に、全身ではなく局所的に、例えば、デポー又は持効性製剤でウイルスを投与することができる。
【0181】
本発明の特に好ましい実施例では、関連のヌクレオチド配列が対象の肝臓に送達される。肝臓への投与は、静脈内投与、門脈内投与、胆道内投与、動脈内投与、及び肝実質内への直接注射を含むが、これらに限定されない、技術上周知の方法により達成することができる。
【0182】
好ましくは、細胞(例えば、肝細胞)はペプチド又はタンパク質をコード化する組換えパルボウイルスベクターにより感染し、細胞はコード化ペプチド又はタンパク質を発現するとともに、それを治療的に有効な量で循環系に分泌することである(上述した通り)。あるいは、ベクターは、脳、膵、脾又は筋を含むがこれらに限定されない別の細胞又は組織に送達され、それらにより発現される。
【0183】
他の好ましい実施例では、本発明のパルボウイルス粒子は筋内投与され、さらに好ましくは筋内注射又は局所投与により投与される(上述した通り)。他の好ましい実施例では、本発明のパルボウイルス粒子は肺に投与される。
【0184】
本明細書中で開示されたパルボウイルスは、適切な手段により対象の肺に投与することができるが、対象が吸引する本発明のパルボウイルスを含む呼吸可能な粒子のエアロゾル懸濁剤を投与することにより投与されることが好ましい。呼吸可能な粒子は液体又は固体であってもよい。本発明のパルボウイルスを含む液体粒子のエアロゾルは、当業者には周知の通り、圧力推進エアロゾルネブライザー又は超音波ネブライザーなど、適切な手段により生成しうる。例えば、米国特許第4,501,729号を参照。本発明ウイルスベクターを含む固体粒子のエアロゾルは同様に、製薬技術で周知の方法により、固体の粒子性薬物エアロゾル発生装置により生成しうる。
【0185】
投与量は、投与様式、疾患又は治療される状態、個々の対象の状態、特定のウイルスベクター、及び送達される遺伝子によって決まり、ルーチン的に決定することができる。治療効果を達成するための実例としての投与量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1011、1012、1013、1014、1015形質導入単位以上であり、好ましくは約10〜1014形質導入単位であり、さらに好ましくは1012形質導入単位である。
【0186】
本発明の特別の実施例では、1回以上の投与(例えば、2、3、4回、又はそれ以上の投与)を行い、遺伝子発現の治療的レベルを達成することができる。この実施例によれば、また上述した通り、各投与で異なる抗原特性を有するパルボウイルスベクターを使用し、中和抗体の影響を除去することが好ましい。上述した通り、本発明の特別な実施例では、本発明のキメラパルボウイルスを治療すべき対象の包囲する中和抗体に投与し、対象における免疫応答の進展を予防する。
【0187】
対象はハイブリッドのアレイ内又はキメラパルボウイルスキャプシド内のrAAVゲノムをパッケージングすることで表面上、新しいウイルスベクターを提示することができる。
【0188】
前述の考察は、本発明のパルボウイルスキャプシド及び他の試薬を含有する医薬組成物並びにそれを投与する方法にも関する。
【0189】
要約すると、本発明のパルボウイルスベクター、試薬、及び方法を用いて分割又は非分割細胞に核酸を方向づけ、その中に異種核酸を安定に発現させることができる。このベクター系を用いることで、細胞生理に影響を及ぼすタンパク質をコード化する遺伝子を、in vivo又はin vitroで細胞へ導入することがここで可能となる。このため、本発明のベクターは疾患状態のための遺伝子療法及び細胞生理学の実験的改変のためにおいて有用であると言える。
【0190】
本発明の特別な実施例において、1回以上の投与(例えば、2、3、4回又はそれ以上の投与)を行って、遺伝子発現の治療レベルを達成することができる。
【0191】
実施例1
AAVベクター
これらの研究で使用されるAAVベクターのすべての製造では、Ferrariら、(1997)Nature Med. 3:1295及びXiaoら、(1998)J. Virology 72:2224に記載されたベクター製造スキームが利用される。一過性形質移入法を利用することにより、アデノウィルスを欠くrAAVが生成されている。同上。このプロトコールでは、ウイルス複製及び後期遺伝子発現のために無能力化されているアデノウィルスDNAゲノムを利用する。複製及び子孫の産生が不可能であるミニAdプラスミドは、293細胞におけるアデノウィルス遺伝子発現では生存可能である。この作生物を用いて、新しいAAVヘルパープラスミド(pAAV/Ad ACG)及びAAVベクターDNA(sub201)に関与したAAVパッケージング法が有効に補完されている(Samulskiら、(1989)J of Virology 63:3822)。この新しい作成物は典型的に293細胞の10〜10/10cm皿のrAAVを生成する(Xiaoら、(1998)J.Virology 72:2224)。Adの完全非存在下のこれらのベクターについて効率的な遺伝子送達が筋、脳及び肝において観察された。
【0192】
実施例2
細胞及びウイルス
ヒト293細胞及びHeLa細胞をストレプトマイシン及びペニシリン(Lieneberger包括的癌センター、Capel Hill、NC)とともに、Dulbeccoの改変Ragles培地(Gibco BRL)中に10%ウシ血清(Hyclone)中5%CO飽和で37℃下に維持した。4x10293細胞を形質移入の前日に10cmプレート上にプレーティングした。製造元の規格に従い、細胞をリン酸カルシウム(Gibco BRL)又はSuperfection(Qiagene)の両方で形質移入した。以下に述べる挿入変異体パッケージングプラスミドを核局在化シグナルによりCMV駆動Lac Z遺伝子を含有するぱB11とともに形質移入した。各々の形質移入について、同じ量のパッケージングプラスミド(12μg)及びぱpAB11(8μg)を各々の10cmプレートに用いた。各々の形質移入について、変換効率を評価するためのみの導入遺伝子プラスミドを含有する追加のプレートを用いた。形質移入後、細胞を5のMOlでヘルパーウイルスAd5 dl309を感染させ、48時間後に細胞を溶解し、ウイルスを精製した。
【0193】
組換えウイルスを塩化セシウム等密度又はイオジキサノール勾配を用いて精製した。両方の場合に細胞を1500rpms(Sorvall RT 6000B)で4℃下10分間遠心分離した。硫酸アンモニア(30%w/v)を用いて上清からタンパク質を沈降し、1xリン酸緩衝食塩水(PBS)(137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM NaHPO7HO、1.4mM KHPO)中に再懸濁した。細胞ペレットを3サイクルの凍結融解で溶解した0.1mg/mlDNaseI(Boehringer Mannheim)含有1xPBS中に再懸濁し、上清のタンパク質部分と結合し、37℃下30分間インキュべートした。この材料を50%dutyで25バースト、出力コントロール2の超音波処理(Branson Sonifier 250、VWR Scientific)にかけた。細胞片を遠心分離(Sorvall RT 6000B)により除去した。各々のミリリットルの上清に塩化カルシウム(CsCl)0.6gを添加し、溶液を12〜18時間、55,000rpms下、TLS55ローターで遠心分離した(Beckman Optima TLX超遠心機)。あるいは、上清を60%、45%、30%及び15%のlodixanol(OptiPre-Nycomed Pharma As、ノルウェー、オスロ)の上部で溶解した。この勾配を1時間100,000rpmでTLN100ローターを用いてBeckman Optima TLX超遠心機で遠心分離した。これらの勾配からフラクションを回収し、各々のフラクションの10μlを用いてドットブロットハイブリッド形成を行い、どちらのフラクションが最高保護ビリオンを含有したかを判定した(実施例5を参照)。
【0194】
実施例3
AAVパッケージングプラスミドの構成
Hind IIIを用いてpAAV/Adのキャプシド領域をPBS+(Stratagene)へクローン化し、pAV2Capを得た。制限酵素Hae III、Nla、IV、及びRsa Iを用いたpAV2Capの部分消化及び単位長DNA断片のゲル精製により、クローン化の開始材料を得た。SaIIで消化したpUC4K(Pharmacia)のカナマイシン耐性(Kan)を付与したアミノグリコシド3’−ホスホとランスフェラーゼ遺伝子をNaeI及びEco RV部位、一端でオーバーハングしたSaII、他の一端でオーバーハングしたEco RI(上部5’− AATTCGCCGGCGATATC−3’、SEQ ID NO:6、下部5’− TCGAGATATCGCCGGC−3’、SEQ ID NO:7)を含有するリンカーでフランキングした。この断片をpBIuescript SK+(Stratagene)のEco Rl部位へクローン化した。Naeによる消化はKan遺伝子を放出し、この断片をpAV2Cap部分へ結合した。こうして得られたプラスミドをキャプシド領域への挿入についてスクリーニングし、次いでEco RVで消化し、キャプシド領域へ12塩基対の挿入5’−GGCGATATCGCC−3’(SEQ ID NO: 8)を残したKan遺伝子を除去した。複数の酵素消化及びDNA塩基配列決定法を用いて、キャプシドコード領域内の12bp挿入の位置を判定した。酵素消化としてEco RVIBanII、Eco RVIBst NI、Eco RVIPstII及びEco RVIHind IIIが挙げられる。得られたプラスミドのキャプシド領域はAsp718で消化し、3’−Asp718部位を重複した1つのNIaIVを除き、pACG2パッケージングプラスミド(Liら、1997 J. Virology 71:5236)へサブクローン化した。この挿入変異体をHind III/Nsi I消化を用いてpAAV/Adへクローン化した。
【0195】
実施例4
ウエスタンブロット分析
凍結溶解及び超音波処理後の細胞ライセートを遠心分離し、大きな細胞片を除去した。20マイクロリットルの上清を直ちにジチオスレイトール含有2xSDSゲル添加液20μlに添加し、5分間煮沸した。タンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析し、電気泳動によりニトロセルロースへ移した。ニトロセルロース膜を抗Vp3モノクロナール抗体B1(Jurgen A. Kleinschmidtより寄贈)を用いて免疫ブロットした。各々の挿入変異体を少なくとも2回、ウエスタンブロット分析で試験した。二次抗マウス西洋わさびペルオキシダーゼIgGを用いて強化化学発光(ECL-Amersham)によりタンパク質を間接的に視覚化した。ウエスタンブロットを強化化学発光から走査露光BioMaxフィルム(Kodak)からAdobe PhotoShopへ、ImageQuaNTソフトウエア(Molecular Dynamics Inc.)により分析した。
【0196】
ウイルスタンパク質をウエスタンブロット分析による視覚化後、上述した通りに免疫ブロットを行った。各々試料に1.0x10及び2.5x10ウイルス粒子を用いた。ウイルスをドットブロットで測定したピークセシウム勾配フラクションから分離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動の前に0.5mM MgCl含有0.5xPBSに対して透析した。
【0197】
実施例5
組換えウイルスの力価
CsCl勾配からのフラクションを針吸引により得た。屈折計(Leica MarkII)を用いて屈折率を得、その屈折率を用いてフラクションの密度を測定した。1.36g/ml〜1.45g/mlのフラクションから10μlのアリコートをドットブロットハイブリッド形成による保護粒子の存在について試験した。アリコートをウイルス希釈緩衝液(50mM Tris HCl、1mM MgCl、1mM CaCl 10μg/ml RNase、10μg/ml DNae)中に1:40で希釈し、37℃下30分間インキュべートした。サルコシン(最終濃度0.5%)及びEDTA(最終10mM)を試料に添加し、70℃下10分間インキュべートした。プロテイナーゼK(Boehringer Mannheim)を最終濃度1mg/mlになるまで添加し、試料を37℃下2時間インキュべートした。このインキュべションの後、NaOH(350mM最終)及びEDTA(25mM最終)中で試料を変性させた。ドットブロットマニフォールド(Manifold I、schleicher and Schuell)を用いて平衡nytran(Gene Screen Plus、NEN Life Science Products)に試料をかけた。膜をランダム開始(Boehringer Mannheim)32P−dCTP標識Lac Z DNA断片でプローブした。膜をフィルム(BioMax MR、Kodak)又は蛍光体イメージングスクリーン(Molecular Dynamics)に露光し、密度推計をImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics)を用いて行った。次いでウイルスのピークフラクションを形質導入の力価のために1xPBS中で透析した。
【0198】
Lac Z活性に対する組織化学染色により形質導入の力価を測定した。HeLa細胞は感染効率5で1時間、Ad dl309に感染させていた。次いで細胞を1xPBSで洗浄し、新鮮培地を添加した。1.75x10粒子に相当するピークフラクションからのウイルスアリコートを用いてHeLa細胞に感染させた。20乃至24時間後に細胞を1xPBSで洗浄、固定(1xPBS中2%ホルムアルデヒド0.2%グルタルアルデヒド)、洗浄し、1xPBS pH7.8、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、2mM MgCl中1mg/mlに希釈したN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma)中に溶解した5’−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(Gold Bio Technology)で37℃下12〜24時間染色した。染色HeLa細胞を10箇所の400X顕微鏡野でカウントした。10野の染色細胞の数を平均し、プレート上の数で掛け、その数を保護テンプレートのナノグラム数で割ることにより形質導入数を判定した。
【0199】
実施例6
電子顕微鏡観察
野生型ビリオン又は変異誘発ビリオンを有するrAAVのピークフラクションを0.5x0.5mM MgCl含有PBS中で透析した。10μl滴のウイルスを反転させることにより400メッシュのグロー放電した炭素グリッド上にウイルスを室温で10分間配置した。その後、各1分間3回1xPBS洗浄した。ウイルスを1%リンタングステン酸中で1分間染色した。Zeiss EM910電子顕微鏡を用いて試料を視覚化した。
【0200】
実施例7
へパリンアガロース結合アッセイ
野生型キャプシド又はキャプシドへ挿入を含有する組換えウイルスを0.5x0.5mM MgCl含有PBSに対して透析した。100マイクロリットルの各ウイルスを100μlのへパリンアガロース1型(0.5x0.5mM MgCl含有PBS20容積中に前平衡したH−6508 Sigma)に1.5mlミクロチューブ中に室温下1時間、結合した。各ステップ後、結合洗浄及び溶出試料を2000rpm(Sorvall MC 12V)で2分間遠心分離し、上清を採集した。試料を0.5x0.5mM MgCl含有PBS0.5mlで6回洗浄し、上清を採集した。0.5x0.5mM MgCl含有PBS中に0.5、1.0及び1.5M NaClを含有する100μl容積の3つのステップ中に溶出して上清を採集した。各ステップからの上清20μlの各サンプルを用いてドットブロットハイブリッド形成を行った。100%結合対照をドットブロットで使用した各入力ウイルスの5分の1に相当する内規準とした。へパリンアガロースウイルス混合液を容積0.5x0.5mM MgCl含有PBSで6回洗浄し、1:15625の希釈を得た。
【0201】
実施例8
rAAVにおける挿入突然変異の構成
アセンブリー及び感染力におけるAAV構造タンパク質の役割を評価するために、われわれはキャプシドリンカー挿入変異体を生成した。AAV2のキャプシド領域の配列コードを含有するpAAV/Adの2.8kb Hind III断片(Samulskiら、(1989)J. Virology 63: 3822)をpBS+へサブクローニングした。このプラスミド、pAV2CapをHae III、Na IV、及びRsa Iで部分消化し、キャプシド特異的挿入の基質を生成した(図1)。これら3つのDNA制限酵素は、4つのみが重複するAAV−2キャプシドコード配列上にまたがる43の部位を構成する。挿入を含有するクローンを効率的に確認するために、新規のオリゴ(Nae IIEcoR V)によりフランキングされたカナマイシン耐性遺伝子(Kan)を部分消化、全長、直線化したpAV2Capと結合した(実施例3及び図1を参照)。E.coliにおけるアンピシリン及びカナマイシン選択を用いて、挿入変異体を確認し、Kan遺伝子をEco RV部位の入れ子状の対で消化及び再結合することでキャプシドコード領域から移動させた(実施例3を参照)。これにより、キャプシドコード配列における独特なEco RV部位の単一コピーを保有する12の塩基対(bp)の特異的なリンカー挿入が得られた。リンカー挿入の正確な位置をさらに制限酵素消化により、及び6カセット配列決定で精製した(データは示さず)。挿入変異体の位置は、部分消化で用いた酵素の最初の文字で確認され、その後にAAV2ゲノムにおける制限部位のヌクレオチド位置が確認され、例えばNla IV4160はN4160となる。
【0202】
これらの位置づけられた挿入変異体からのキャプシドコード配列を、in vivoの生物学的特徴づけのためにヘルパーベクターpACG2又はpAAV/Adへサブクローニングした(図1)(Liら、(1997)J. Virology 71:5326;Samulskiら、(1989)J. Virology 63:3822)。配列分析は、この12の塩基対により43の挿入部位のいずれの終止コドンも得られないことを示している(表1)。コドン枠の使用及びNla IV認識配列の縮重に関して酵素(Hae III、Nla IV、及びRsa I)の切断部位のコドンの性質のため、12bpリンカーは枠1のアミノ酸GDIA及び3つすべての酵素の枠3におけるAISPの挿入が得られたが、枠2の挿入はRsa IのWRYRH、Hae IIIのGRYRP、及びNla IVのGRYRHの両方が得られた。これらの実施例における大型アミノ酸はミスセンス突然変異を表わす(表1)。変異体ヘルパー作成物、pACG2INは、アデノウィルスd/309(MOI=5)感染細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する、AAV受容体ベクターとともに293細胞へ個別に形質移入された(Liら、(1997)J. Virology 71:5236)。次いで、形質移入細胞はキャプシド発現及び組換えウイルス産生について検定された(実施例5;Liら、(1997)J. Virology 71:5236を参照)。
【0203】



実施例9
キャプシドタンパク質の分析
相補性アッセイにおいて変異体キャプシド作成物を用いたベクター産生の検定のために、各挿入変異体の形質移入後の293細胞におけるキャプシドサブユニットの発現について試験した。正常な化学量論でのVp1、Vp2、及びVp3産生能は、リンカー挿入がキャプシドタンパク質発現、又は安定性を変化させなかったことを示すであろう。リンカーは終止コドンを導入しなかった、各挿入は3つのすべてのキャプシドを精製すると予想された。形質移入の48時間後、細胞ライセートをAAVについてウエスタンブロット分析で分析した。図2のウエスタンブロット分析は、細胞ライセートにおける挿入変異体キャプシド発現を表わす。H2634(図2レーン2)を除き、3つのキャプシドサブユニットの化学量論は野生型の対照と大きな違いはないように思われる(図2のレーン1、3〜7乃至8を比較)。このアッセイにより、挿入変異体H2634はVp3サブユニットを生成するのみであると思われる(図2;レーン2)。長い曝露では、図4レーン5及び6の副キャプシドサブユニットが明らかであった(データは示さず)。
【0204】
実施例10
変異体キャプシドの安定なビリオンの産生能
DNase消化からベクターゲノムを保護する安定なビリオンの産生について試験するために、われわれは細胞ライセートを塩化セシウム(CsCl)勾配遠心分離にかけた。ウイルス密度を屈折計により測定し、適切なフラクションからのアクリオートをドットブロットハイブリッド形成にかけた(図3a)。この分析に基づき、完全な組換えゲノムをパッケージングする粒子は、野生型と同様の浮遊密度を示し、野生型よりもわずかに高い浮遊密度を有するH2944を除き、NNase処置に対して耐性であるはずである。このアッセイの結果、挿入変異体が2つのクラスに分けられた。クラスI変異体はウイルスゲノムの保護に対して陰性であったが、クラスII変異体はベクター基質のパッケージング及び保護に対して正常であるように思われた(表I)。
【0205】
クラスII変異体のすべては野生型AAV2キャプシドの範囲内で浮遊道度を示した(図3a)。ドットブロット分析により、N2944は組換えゲノムをパッケージングしたが、等密度勾配における野生型よりもわずかに高い密度の位置に移動した(図3a、N2944レーン3)。挿入変異体の数(7)は、<1x10粒子/μlの感受性を示したこのアッセイによりDNAをパッケージングすることはなかった(定量の方法を参照)(表I)。これらの変異体がパッケージングに欠陥があるか、又は精製時に不安定であるかどうかは判定されないままである。
【0206】
実施例11
クラスII挿入変異体の感染力
相補性アッセイにおける挿入変異体により生成されるビリオンの感受性について、ヒト細胞におけるLac受容体遺伝子の形質導入をモニタリングすることで試験した。ドットブロッドハイブリッド形成から得られたウイルス力価を用いて、HeLa細胞を同じ粒子数での変異体ウイルスストックに感染させた。
【0207】
感染の24時間後、導入遺伝子の発現をX−gal染色により検出した。この分析の代表図を示し(図3b)、分析したすべての変異体を表1に示す。このアッセイにおいて、野性型ビリオンは5.6x10HeLa細胞/1.75x10保護粒子を形質導入した(図3b)。このアッセイの感受性に基づき、クラスIIの挿入変異体の感染効率は0乃至1.6x10形質導入単位/1.75x10保護粒子であった。この分析の結果によりさらにキャプシド挿入変異体がクラスII(ベクター基質のパッケージング及び保護が正常)からクラスIII表現型(ベクター基質及び感染ビリオンのパッケージング及び保護が正常)に細分された。感染力に対して陰性であり、CsCl生成及びDNase保護クラスII変異体に基づきクラスII変異体と最初に確認された2つの挿入変異体(N2944、H3595)は、イオジキサノール段階勾配を用いた精製後の試験ではウイルス形質導入に対して陽性であった(表1)。ウイルス精製法はCsClほど厳しくはなく、ウイルスの回復が10倍増大することが示されている(Zolotukhinら、(1999)Gene Therapy 6:973)。しかし、他のクラスII変異体はイオジキサノール段階勾配を用いた精製後に非感染性のままであった(データは示さず)。われわれは挿入変異体ウイルスN2944及びH3595がLac Z形質導入アッセイを用いて感染性であると判定したが、これらの変異体から生じる感染力価は低く(1x10形質導入単位/ng)、以前に発表された(Hemonatら、(1984)J. Virology 51:329)lip変異体とほぼ同じであることに注意すべきである。
【0208】
実施例12
クラスII及びクラスIII変異体の電子顕微鏡観察
生物学的な違いについてクラスII及びIIIのrAAV2挿入変異体をさらに特徴づけるために、われわれは電子顕微鏡観察(EM)により変異体粒子を視覚化した。EM分析は感染性クラスIIIウイルスの全体の形態のみを示し、これらは野性型ビリオンと区別不可能であった(図4aと4b、cを比較)。しかし、野生型ビリオン(図4a及び4f−下の4パネル)と比較するとクラスII/III変異体ウイルスH3595間に明確な違いが観察された。H3595のEM像はわずかに大きな粗い五角形の輪郭を示したが、野性型ウイルスはサイズが不均一であり、六角形であった。興味深いことに、クラスII変異体H2634は、ウエスタンブロットではVp1又はVp2に対して陰性であったが(図2レーン2)、EM分析(図4d)による形態は正常に見えた。この分析に基づき、ビリオンの形態のみがクラスII変異体をクラスIIIと区別するのに不十分であり、それはキャプシド内の小さな挿入により非検出可能である(図4b、c、d、e)か、ビリオン構造(図4f−下の4パネル)の変化が注目すべきあったかのいずれかのためである。しかし、この方法ではこれらのリンカー挿入変異体のわれわれの特徴づけに追加のデータを提供することはできなかった(図4、a乃至fを比較)。
【0209】
実施例13
クラスIIとクラスIIIのビリオンのキャプシド比
Roseら(1971)は、AAV2粒子が1:1:20の比でVp1、Vp2、Vp3からなることを証明した(Roseら、(1971)J. Virology 8:766)。クラスIIとクラスIIIの変異体ビリオンがこの比を維持したかどうかを判定する努力において、塩化セシウム精製ウイルスでウエスタンブロット分析を実施した。ウエスタンブロット分析により分析された精製ウイルスは、サンプリングしたすべての変異体でほぼ同じ量のVp3を示し、1x10〜2.5x10ウイルス粒子を各試料に用いた。Vp2とVp1の量も、副キャプシド成分が確認されなかったH2634を除くすべての被験試料でほぼ同じであった(図5レーン5)。H2634の副キャプシド成分の欠如は、細胞ライセートからのウエスタンの結果と一致している(図2)。この分析における検出限界では、クラスIIの挿入変異体H2634は、Vp1及びVp2のないAAVビリオンを構築するように見えるが、EM分析では、この変異体は正常な形態を有することを示している(図4d)。
【0210】
実施例14
クラスIとクラスIIIの変異体のへパリン結合
最近われわれの実験室では、AAV−2は感染力の一次受容体としてへパラン硫酸プロテオグリカンを使用することを証明した(SummerfordとSamulski、(1998)J. Virology 72:1438)。へパリン結合がクラスII粒子の細胞感染能がない点、及びクラスIIIウイルスのへパリンアガロースとの結合能の点でどのような役割があるかを判定するために、へパリンバッチ結合実験を実施した。クラスIIIのすべての変異体がへパリンに対して陽性であり、大多数のウイルスが1M Nacl段階に溶出した(データは示さず)ことは意外ではない。クラスII変異体ウイルスの感染力の喪失がへパリン結合の欠如と関連があったかどうかを判定するために、バッチ結合実験をドットブロットハイブリッド形成により分析した(図6)。試験した各々のウィルス試料について、100%結合を判定する内部対照をへパリン結合とは無関係にフィルター上にスポットした(図6;100%結合)。これにより、われわれは、へパリン精製の各段階で保持されたウイルスのパーセントを判定することができた。へパリンアガロースとの結合後、試料を洗浄し、塩濃度を増大させることで溶出した(実施例7を参照)。野性型ビリオンのシェルを有する組換えAAV2は90%の結合を示し、洗浄で10%放出後、溶出液中で60%回復し、へパリンアガロースとの結合して20%残った(図6、レーン1)。クラスII変異体H2285、H2426、及びH2634は同様の結合及び溶出プロフィールを示した(図6、レーン2〜4)。しかし、クラスII変異体H3761は、そのへパリンアガロース結合プロフィールが異なり、大多数のビリオンが結合緩衝液及び洗浄に認められた(図6、レーン5)。このバッチアッセイにおけるへパリン結合の欠如の理由を判定するには、さらに分析が必要である。
【0211】
興味深いことに、H2634は以上の条件下にへパリンアガロースと結合することであるが、これはウエスタンブロットにより検出可能なVp1又はVp2サブユニットを保有することはない(図5、レーン4)。へパリンアガロースとの結合能とともにH2634におけるVp1及びVp2の欠如は、へパリン結合領域がVp3キャプシドタンパク質に位置していることを示す。
【0212】
実施例15
リンカー挿入変異体
ポリ−リシン、ポリ−ヒスチジン、RGDモチーフ、又はブラジキニンをコード化する挿入配列を表1に記載したリンカー変異体に挿入した。われわれは、AAV2キャプシド遺伝子のコード領域への異なるリンカーの挿入を確認するPCRベースの方法を開発した。簡単に言えば、キャプシドコード領域の外側及びリンカーに正確に対応するリンカーをそれぞれ1つ用いた。リンカーが正しい配向にある場合は、PCR産物の大きさは挿入変異体の位置によって決まる。
【0213】
ライゲーション反応の変換後、細菌コロニーをピペットの先端で採集し、抗生物質とともにLB培地を含有する96穴プレートのウェルに4〜5回浸漬した。次いでピペットの先端をPCR反応緩衝液を含有する96穴プレートのウェルへ配置した。PCR産物をアガロースゲル上に取り出し、陽性クローンを確認した。この情報は外部プライマーに関して挿入変異体の配向及び位置を指示した。
【0214】
対応するウェルにあるLB培地をPCR陰性として用いて、この物質を大(5mL)容積で増殖させた。一晩の増殖期後、プラスミドDNAを分離し、DNA15回(Bst NI)を制限する酵素で消化した。これらの消化産物を5〜6%アクリルアミドゲルで分離した。リンカー挿入のサイズ及び対応する非挿入フラグメントのサイズによって、挿入の数を測定した。このため、挿入部位にリンカーを結合した2日以へ、われわれはリンカー挿入の配向がわかり、われわれは十分なDNAをウイルス産生用の10cmプレートに形質導入した。
【0215】
Bst NIで消化したときの挿入のないpACG2(Liら、1997 J. Virology 71:5236)は以下のフラグメントを産生する:
3900bp
1121bp
1112bp
445bp −H2944シフト
347bb −H2634、H2690シフト
253bp −H3595シフト
215bp −R22356、H2416シフト
121bp
111bp
64bp
63bp −H2285シフト
33bp −H2591シフト
13bp
9bp
異なる挿入変異体によるバンドシフトも指示される。
【0216】
Ban Iで消化したときの挿入のないpACG2は以下のフラグメントを産生する。
【0217】
2009bp
1421bp
168bp
843bp −H4047シフト
835bp
734bp −H2634シフト
464bp
223bp
218bp
211bp
50bp
各々の挿入は最初の12塩基対のEco RV部位を含有する。また、各々のリンカーは以下の塚の塩基対を付加する:
・RGB=36bp+12=単一挿入で48bp。
【0218】
・ブラジキニン(BRDY)=69bp+12=単一挿入で81bp。注:BRDY挿入はBstNI部位を含有する。
【0219】
・ヒスチジン(8HIS)=51bp+12=単一挿入で63bp。
【0220】
・ポリリシン(PLY)=63bp+12=単一挿入で75bp。
【0221】
外部プライマーはHind III部位の近くにあり、AAV2/4 5’と呼ばれる。このプライマーを用いてAAV血清型2及び4を増幅することができる。
【0222】
最初の挿入変異体にエピトープリンカーを生成するために使用したプライマー配列を以下に示す。注:挿入変異体に対して3つの枠があるため、各プライマーセットに対して3つのプライマーがある。
【0223】
ヒスチジンのプライマー対:
枠1:
上部プライマー48mer(SEQ ID NO:9):
5’−GCT AGC GGC GGA CAC CAT CAC CAC CAC CAT CAC GGC GGA AGC GCT−3’
下部プライマー48mer(SEQ ID NO:10):
5’−AGC GCT GCC GTG GTG ATG GTG GTG GTG ATG GTG TCC GGC GCT AGC−3’
枠2:
上部プライマー51mer(SEQ ID NO:11):
5’−AC GCT AGC GGC GGA CAC CAT CAC CAC CAC CAT CAC CAC GGC GGA AGC GCT T−3’
下部プライマー51mer(SEQ ID NO:12):
5’−A AGC GCT TCC GCC GTG GTG ATG GTG GTG GTG ATG GTG TCC GCC GCT AGC GT−3’
枠3:
上部プライマー51mer(SEQ ID NO:13):
5’−G GGT TCC GGA CAC CAC CAT CAC CAC CAC CAT CAC GGA GGC GCC AGC GA−3’
下部プライマー51mer(SEQ ID NO:14):
5’−TC GCT GGC TCC GTG ATG GTG GTG GTGATG GTG GTG CCC TCC GGA ACC C−3’
ブラジキニンプライマー対:
枠1:
上部プライマー60mer(SEQ ID NO:15):
5’−GCC GGA TCC GGC GGC GGC TCC AGA CCC CCC GGC TTC AGC CCC TTC AGA TCC GGC GGC GCC−3’
下部プライマー60mer(SEQ ID NO:16):
5’−GGC GCC GCC GGA TCT GAA GGG GCT GAA GCC GGG GGG TCT GGA GCC GCC GCC GGA TCC GGC−3’
フレーム2:
上部プライマー69mer(SEQ ID NO:17):
5’−GA GGT TCA TGT GAC TGC GGG GGA AGA CCC CCT GGC TTC AGC CCA TTC AGA GGT GGCTGC TTC TGT GGC G−3’
下部プライマー69mer(SEQ ID NO:18)
5’−C GCC ACA GAA GCA GCC ACC TCT GAA TGG GCT GAA GCC AGG GGG TCT TCC CCC GCA GTC ACA TGA ACC TC−3’
枠3:
上部プライマー60mer(SEQ ID NO:19):
5’−A GGT TCA TGT GAC TGC GGG GGA AGA CCC CCT GGC TTC AGC CCA TTC AGA GGT GGC TGC TTC TGT GGC GG−3’
下部プライマー60mer(SEQ ID NO:20):
5’−CC GCC ACA GAA GCA GCC ACC TCT GAA TGG GCT GAA GCC AGG GGG TCT TCC CCC GCA GTC ACA TGA ACC T−3’
RGDプライマー対:
枠1:
上部プライマー36mer(SEQ ID NO:21):
5’−GGA TCC GAC TGC AGG GGC GAT TGT TTC TGC GGC−3’
下部プライマー36mer(SEQ ID NO:22):
5’−GCC GCA GAA ACA ATC GCC CCT GCA GTC GCA GGA TCC−3’
枠2:
上部プライマー36mer(SEQ ID NO:23):
5’−GA TCC TCG GAC TGC AGG GGC GAT TGTTTC TGC GGC G−3’
下部プライマー36mer(SEQ ID NO:24):
5’−C GCC GCA GAA ACA ATC GCC CCT GCA GTC GCA GGA TC−3’
枠3:
上部プライマー36mer(SEQ ID NO:25):
5’−A GGA TCC TGC GAC TGC AGG GGC GAT TGT TTC TGC GG−3’
下部プライマー36mer(SEQ ID NO:26):
5’−CC GCA GAA ACA ATC GCC CCT GCA GTCGCA GGA TCC T−3’
ポリリシンプライマー対:
注:3プライマー対の枠のみが作成された。
【0224】
枠3:上部プライマー63mer(SEQ ID NO:27):
5’−A GGT TCA TGT GAC TGC GGG GGA AAG AAG AAG AAG AAG AAG AAG GGC GGC TGC TTC TGT GGC GG−3’
下部プライマー63mer(SEQ ID NO:28):
5’−CC GCC ACA GAA GCA GCC GCC CTT CTT CTT CTT CTT CTT TCC CCC GCA GTC ACA TGA ACC T−3’
外部プライマーAAV2/4 5’上部プライマー(SEQ ID NO:29):
5’−TGC CGA GCC ATC GAC GTC AGA CGC G−3’
RGDリンカーは、表1のH2285、R2356、H2591、H2634、H2690、H/N3761、及びH/N4947変異体に挿入された。
【0225】
ブラジキニンリンカーは、表1のH2285、H2416、H2591、H2634、H2690、H/N2944、及びH/N3761変異体に挿入された。
【0226】
ポリ−Lysリンカーは、表1のH2285、H2591、H2690、及びH/N3761変異体に挿入された。
【0227】
ポリ−Hisリンカーは、表1のH2285、H2416、H2591、H2634、H2690、H/N2944、N3561、H3766、及びH/N4047変異体に挿入された。
【0228】
実施例16
挿入変異体の特徴づけ
部位H2690での挿入変異体はすべて最初の12bp挿入と力価がほぼ同じである。ELISAアッセイ及び抗ヒスチジン抗体を用いて、この部位へのポリHis挿入がビリオンの表面上に表示されることが示された。
【0229】
ポリHisエピトープも部位H2634に挿入すると表面上にあることが示された。興味深いことに、H2634での12bp挿入のウエスタンブロット分析では、形成されているいかなるVP1又はVP2サブユニットは示されなかった。VP2におけるこの挿入はVP1及びVP2サブユニットの核局在化シグナルに近いことが明らかにされている。この領域は最初の挿入により破壊され、8−ヒスチジンの添加により領域が修復されたと考えられる。この8Hisウイルスのドットブロットはウイルス粒子の存在を示したが、これらの粒子は感染性ではなかった。
【0230】
挿入部位H2591はVP1にある。この部位へのリンカーエピトープの挿入は、この部位での最初の12bp挿入以上に力価に対する影響はなかった(表1)。
【0231】
部位N4160での挿入は、カルボシキ終端近くのVP3にある。この挿入変異体は、最初の12bp挿入が野生型と等しいレベルで細胞に感染するという点で興味深い(表1)。
【0232】
以前に表1に記載されている変異体R3317は、ドットブロット分析によりビリオンを保護することはないように見えた。Lac導入遺伝子でこの実験を繰り返すことにより、同じ結果が確認され、すなわち保護された粒子は確認されなかった。しかし、独立性クローン及びGFP導入遺伝子(Lacよりも〜1000bp小さい)を用いたところ、保護された粒子が確認された。また、GFP発現ビリオンは、野生型と同じ高レベルでHeLa細胞を形質導入した。この異なる結果がなぜ異なる導入遺伝子で観察されるのかは明らかではない。
【0233】
また、呼吸器合胞体ウイルスへパリン結合領域をコード化するリンカーが、生存力を失うことなく挿入に耐容性を示す部位でH2690変異体に挿入され、この変異体に対するへパリン結合を修復した。
【0234】
実施例17
独特の制限部位の変異体
AAV2型のキャプシド内の独特の制限部位を作成し、挿入変異体の生成を促進した。部位は、キャプシドのヌクレオチド配列に導入される変異体が保存的であるよう、すなわち、ミスセンス変異体ではなく、又は終止コドンを来たさないように選択した。アミノ酸位置586、529、595、及び517(アミノ酸#1としてVP1メチオニン)を選択した。529を除き、これらの位置すべてについて、独特のHpaI部位を操作した。アミノ酸529での位置では、独特のEco RV部位を操作した。これらの制限部位の各々により、インフレームの平滑断端した消化産物が得られる。そこで枠1リンカーを用いてこれらの部位に挿入した。重複プライマーを用いて独特の部位を生成し、外部プライマーを用いて挿入の右及び左のフラグメントを生成した。
【0235】
次いで右フラグメントをNsi I及びEco RV又はHpa Iのいずれかで消化し、左フラグメントをHind III及びEco RV又はHpa Iのいずれかで消化した。われわれはこれらの消化産物を、すでにHind III及びNsi Iで消化したぱCGベクターにクローン化した。次いで、得られたプラスミドをXcm I及びBsi WIで消化した。これらの酵素にょり、操作した独特の制限部位の周囲に〜750bpフラグメントが得られる。この方法の結果として、PCR生成配列は小さいため誤りの蓄積はほとんどない。
【0236】
プライマー:
595上部プライマー(SEQ ID NO:30):
5’−GCA GAT GTT AAC ACA CAA GGC GTT CTT CCA−3’
595下部プライマー(SEQ ID NO:31):
5’−TTG TGT GTT AAC ATC TGC GGT AGC TGC TTG−3’
586上部プライマー(SEQ ID NO:32):
5’−CAG AGA GTT AAC AGA CAA GCA GCT ACC GC−3’
586下部プライマー(SEQ ID NO:33):
5’−GTC TGT TAA CTC TCT GGA GGT TGG TAG ATA−3’
注:この構成物によりグリシンのバリンへのミスセンス変異が生じる。
【0237】
552上部プライマー(SEQ ID NO:34):
5’−ACA AAT GTT AAC ATT GAA AAG GTC ATG ATT−3’
552下部プライマー(SEQ ID NO:35):
5’−TTC AAT GTT AAC ATT TGT TTT CTC TGA GCC−3’
529上部プライマー(SEQ ID NO:36):
5’−GGA CGA TAT CGA AAA GTT TTT TCC TCA G−3’
529下部プライマー(SEQ ID NO:37):5’−ACT TTT CGA TAT CGT CCT TGT GGC TTGC−3’
注:この構成物によりグルタミン酸からイソロイシンへのミスセンス変異が生じる。
【0238】
517上部プライマー(SEQ ID NO:38):
5’−TCT CTG GTT AAC CCG GGC CCG GCC ATG GCA−3’
517下部プライマー(SEQ ID NO:39):
5’−GCC CGG GTT AAC CAG AGA GTC TCT GCC GCC ATT−3’
外部プライマーは以下の通りであった:
5’−(SEQ ID NO:40):
5’−TGC GCA GCC ATC GAC GTC AGA CGC G−3’
3’プライマー(SEQ ID NO:41):
5’−CAT GAT GCA TCA AAG TTC AAC TGA AAC GAA T−3’
529Eco RV部位に挿入されたRGD及び8Hisリンカー(実施例15)によって4つのクローンも生成された。5つの8Hisリンカー及び1つのRGDリンカー挿入変異体が586Hpa I部位に生成された。
【0239】
3790〜3792(アミノ酸529;EcoRV)での独特の制限部位ミスセンス変異はHeLa細胞に感染したが、効率は比較的低かった(野生型の〜1/100乃至〜1/1000)。8Hisエピトープ挿入をこの部位に挿入すると、得られるウイルスはlip表現型(すなわち、低感染性粒子)を有した。
【0240】
8His及びRGDの3960〜3961(アミノ酸586;Hpa I)での独特のミスセンス制限部位への挿入は両方ともきわめて感染性であり、少なくとも野生型ウイルスと同じくHeLa細胞を形質導入した。
【0241】
実施例18
二重変異体
単一変異体H3761(表1)をテンプレートとして用いて二重変異体を生成した。H3761挿入変異体は、バッチ及びカラム結合実験の両方で評価されたようにへパリン硫酸と結合することはない。この変異体は、試験した限りではどの細胞系にも感染しないが、電子顕微鏡観察ではこのウイルスが正常なパルボウイルスシェルを形成し、ドットブロットによりこのウイルスがウィルスゲノムを効率的にパッケージングすることを示しているという点で興味深い。
【0242】
H3761挿入を含有する配列をコードするキャプシドの領域は他の挿入変異体へサブクローン化され、二重変異体を生成した。H2690(AA#163)挿入変異体を選択したのは、これがウイルス表面でポリ−His挿入エピトープを示すことがわかっているためである(配座特異的抗体を用いてウイルスをELISAプレートに結合し、西洋わさびペルオキシダーゼに抱合した抗ヒスチジン抗体を用いてヒスチジン含有ウイルスを検出することで評価された)。
【0243】
ブラジキニン挿入(実施例15)を含有するH2690挿入変異体ヘルパープラスミド(pACG H2690 BRDY)及びpACG H3761挿入変異体をHind III及びBsi Wlで消化した。Hind III部位はrep遺伝子にあるが、Bsi Wl部位は2690と3761との間にある。小さな断片はpACG H2690 BRDYを含有するが、大きい断片はpACG H3761を含有する。
【0244】
ブラジキニン挿入がH2690部位に挿入されている二重変異体pACG H2690 BRDYは、親のA9細胞のみと比較してブラジキニン受容体を発現するA9細胞の感染力が5倍増大することを示した。これらの結果は、(1)H3761の結合における欠陥が細胞性HS受容体との結合点である可能性が高いが、このウイルスは別の経路で細胞へ方向づけられた場合は感染力を保持すること、及び(2)ブラジキニン二重変異体は細胞を発現するブラジキニン受容体へウイルスの侵入をターゲティングしたことを示している。
【0245】
H3761挿入変異体は独特な制限部位ミスセンス突然変異(実施例17)、AA#586(Hpa I)及びAA#529(EcoRV)へもクローン化されている。制限酵素NcolはH3761と526(Glu→lle)及び586(Gly→Val)ミスセンス突然変異との間にあり、この酵素がrep遺伝子内で切断する。消化によりpACG2ヘルパープラスミドはH3761とNco Iを有する586と529の独特な部位を含有し、H3761挿入突然変異を含有する小さなNco I断片(3142bps)及び586と529の独得な部位を含有する大きなNco I断片(5034bps)を分離した。連結後、正しい配向を有する作成物が確立され、これらのクローンを用いてウイルスを作成した。
【0246】
RGDモチーフ(実施例15)を含有する独得な制限部位ミスセンス突然変異もこのクローニング法に用いた。このため、独得な部位での挿入を含有しない二重変異体と同位置でRGDエピトープを含有する二重変異体がある。
【0247】
H3761変異体はHeLa又はCHO−K1細胞を形質導入することはない。これとは対照的に、586−RGD二重変異体はこれらの細胞型の両方の形質導入を示した。これらの結果は、形質導入は586の独得な制限部位へ導入されたRGDモチーフにより仲介されたことを強くしめしている。
【0248】
独得な制限部位を有するが、挿入がない二重変異体、及び529−RGD二重変異体はHeLa又はCHO−K1細胞の効率的な形質導入を示すことはなかった。
【0249】
実施例19
MSH−ターゲティングAAVベクター
本発明の1実施例では、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が、MSH受容体を発現する細胞にAAVベクターをターゲティングするために使用される。研究によって、このペプチドがリガンド随伴複合体が特異的にメラニン細胞NEL−M1細胞へ方向づけ(Murphyら、(986)Proc. Nat. Acad. Sci USA 82:8258)、便利な試験系を提供することがわかっている。例えば、MSHリガンドをコード化する12残基ペプチドに繋がれたジフテリア毒素が、MSH受容体発現細胞のみを殺傷することにおいて効率的であった(Morandiniら、(1994)Internat. J. Ca. 56:129)。細胞死は特異的リガンド送達の受容体介在性エンドサイトーシスに起因した。
【0250】
MSHはAAV2型キャプシドのループ3へ挿入される。第1のステップでは、Bgl II−SpH I断片がループ3をコード化する配列から除去されると、AAV2型欠失変異体が12アミノ酸欠失により作成される。次いでMSHペプチドをコード化する配列を欠失領域へ挿入する。
【0251】
ループ3及びループ4挿入突然変異を作成するためのプライマー配列は以下の通りである:
ループ3 5’上部プライマー(SEQ ID NO:42):
5−’GATACTTAAGATCTAGTGGAACCACCACCACGCACTCAAGGCTT−3’
cttaagはAfl II部位であり、agatctはBgl II部位である。これら2つの部位は2つの塩基対により重複する。AAV配列との相同性は位置3556で開始、3583で終わる。
【0252】
ループ3 3’下部プライマー(SEQ ID NO:43):
5−’CTAGCTTAAGCATGCATACACAGGTACTGGTCGATGAGAGGATT−3’
gcatgcはSphl部位であり、cttaagはAfl II部位である。これら2つの部位は1つの塩基対により重複する。AAV配列との相同性は位置3505で開始、3531で終わる(これは下部鎖であることに注意)。
【0253】
これらのプライマーは3532乃至3555のAAV2型配列の24bp(すなわち、8個のアミノ酸)を除去する。欠失アミノ酸配列は、アミノ酸444乃至451のTyl Leu Ser Arg Asn Thr Proである(Vp1−Metがアミノ酸#1)。
【0254】
以下の配列における5’Sph I Afl II Bgl II3’部位:5−’GCATGCTTAAGATCT−3’は5個のアミノ酸Ala Cys Leu Arg Serが追加される。
【0255】
ウイルスは標準のパッケージング法により生成される。MSH−標的AAV2型ベクターは、HeLa細胞及びMSH受容体を有する細胞(例えば、メラニン細胞)について評価される。
【0256】
実施例20
キメラAAV2/4ウイルス−キャプシドタンパク質置換
AAV血清型のビリオンが、3つのタンパク質サブユニットVP1VP2及びVp3で作り上げられる。VP3は最も豊富なサブユニットであり、ビリオンを作り上げる60のサブユニットの80から90%を代表し、VP1及びVP2は各々5〜10%のビリオンを作り上げる。これらのサブユニットは重複転写から翻訳され、VP3配列はVP2とVP1の両方の内部にあり、VP2配列はVP1内部にある。
【0257】
われわれは、完全なサブユニットが置換できるプライマー及びAAV2とAAV4のと間のサブユニットの独得な領域をデザインした。AAV4はAAV2と大きく異なる特性を有する。このため、これらの異なる特性の原因となる領域を規定することは、例えば、遺伝子療法用ベクターをデザインするために価値がある。
【0258】
われわれは、シームレスのクローニング法を選び、サブユニット又はこれら2つの血清型間のサブユニットの独得な領域をクローン化した。
【0259】
AAV2及びAAV4上部プライマー(SEQ ID NO:44):
5’−TGC CGA GCC ATC GAC GTC AGA CGC G−3
AAV2及びAAV4下部プライマー(SEQ ID NO:45):
5’−CAT GAT GCA TCA AAG TTC AAC TGA AAC GAA T−3’
AAV2 VP3上部プライマー(SEQ ID NO:46):
5’−CGA GCT CTT CGA TGG CTA CAG GCA GTG GCG CAC−3’
AAV2 VP3下部プライマー(SEQ ID NO:47):
5’−AGC GCT CTT CCC ATC GTA TTA GTT CCC AGA CCA GAG−3’
AAV2 VP2上部プライマー(SEQ ID NO:48):
5’−CGA GCT CTT CGA CGG CTC CGG GAA AAA AGA GGC−3’
AAV2 VP2下部プライマー(SEQ ID NO:49):
5’−AGC GCT CTT CCC GTC TTA ACA GGT TCC TCA ACC AGG−3’
AAV4 VP3上部プライマー(SEQ ID NO:50):
5’−CGA GCT CTT CGA TGC GTG CAG CAG CTG GAG GAG CTG−3’
AAV4 VP3下部プライマー(SEQ ID NO:51):
5’−AGC GCT CTT CGC ATC TCA CTG TCA TCA GAC GAG TCG−3’
AAV4 VP2上部プライマー(SEQ ID NO:52):
5’−CGA GCT CTT CGA CGG CTC CTG GAA AGA AGA GAC−3’
AAV4 VP2下部プライマー(SEQ ID NO:53):
5’−AGC GCT CTT CCC GTC TCA CCC GCT TGC TCA ACC AGA−3’
これらのプライマーにより図7に示されているサブユニットの交換が生じる。AAV Vp2が置換されたキメラAAV2キャプシドの代表的な配列を付録2(SEQ ID NO:2)に示す。この配列はAAVrepコード配列を含有し、ほとんどのAAV Vp1及びVp3コード配列、及び全体のAAV Vp2コード配列及び一部のAAV Vp1とVp3コード配列がpBluescriptバックボーンにある。
【0260】
Rep68/78コード配列は、SEQ ID NO:2のnu251で開始し、Rep52/40コード配列はnu923で開始する。Rep78/52終止シグナルはnu2114で終わり、Rep68/40の終止はnu2180である。キャプシドコード配列はnu2133で開始し、終末はnu4315(Vp1はnu2133で開始し、Vp2はnu2544で開始し、Vp3は2744で開始する)。
【0261】
AAV2キャプシド遺伝子におけるVp1のbp2240での第2のXhol部位からVp3のbp3255でのBsi Wl部位までのAAV2配列は、対応するAAV4からの領域(プラスミド配列におけるnu2350〜3149に対応)で置換された。簡単に言えば、AAV2ヘルパープラスミドpACG2は、835bp断片を放出するXhol及びBsi Wlで部分的に消化された。AAV4における同じ消化により、欠失AAV2配列へ連結された799bp断片が生じ、キメラAAV2/4キャプシドをコード化するヘルパーウイルスを生成した。
【0262】
組換えAAVゲノム、好ましくは、典型的にレポーター遺伝子(例えば、GFP)を発現する組換えAAV2ゲノムを保有するビリオンが生成される。これらの変異体ウイルスベクターは、実施例15に記載した通り、ビリオン形成、形態、遺伝子保護、へパリン結合、及び感染力について特徴づけられる。
【0263】
実施例21
B19/AAV−2キメラベクターの構成
Dongら、(1996)Human Gene Therapy 7:2101による研究では、rAAVを用いてパッケージングの限界が明らかにされている。stufferDNAの挿入を増大した組換えAAV DNAを用いることにより、DongらはrAAVベクターのパッケージング能が、104%乃至108%wt(それぞれ4883に対して5083ヌクレオチド)で劇的に低下することを測定した。このパッケージング制限は、ミニ筋ジストロフィー遺伝子及びプロモーター制御嚢胞性線維症配列を含め、重要な遺伝の使用を妨げる。
【0264】
したがって、本発明は、B19のパッケージング能、AAV−2の向性、及びターゲティングベクター用の基質としての機能を維持するB19/AAV−2由来遺伝子療法用ベクターの開発を提示している。ヒトパルボウイルスB19(パッケージング能5.6kb)を選び、大きなベクターゲノムをパッケージングするためのキメラAAVベクターの生成において主要な構造タンパク質Vp2を利用した。B19は2つの重複構造タンパク質(Vp1&2)のみで構成されている。B19はその受容体としてグロボサイドを用いて主要な赤血球前駆細胞に感染する(Brownら、(1993)Science 292:114)。B19の構造は、分解能が8Åであると測定されている(Agbandje-Mckennaら、(1994)Virology 203:106)。
【0265】
キメラAAV粒子は、AAVの主要構造タンパク質Vp3をB19のVp2で交換することで構成された。シームレスクローニング(Strategen USA)を利用して、Vp3主要Capタンパク質(図8;付録3及びSEQ ID NO:3のヌクレオチド配列;付録4及びSEQ ID NO:4のアミノ酸配列)で置換したB19によりAAVタンパク質(Rep 78、68、52、40及びVp1とVp2)のすべてを発現することになるAAVヘルパー作成物を生成した。
【0266】
キメラベクターの開始材料はpAAV−Ad及びpYT103cであった。pYT103cは末端反復なしにB19コード領域を含有する。pAAV−AdのHindIII消化は、AAV2キャプシドコード領域全体及び一部の不ランキング領域を含む2727bl断片を放出した。この断片をHind III消化pBS+(Stragene)へサブクローン化し、pBS+AAVCapを得た。ポリメラーゼ鎖反応を用いてpYT103cからVp2コード領域を増幅した。プライマーは、5’方向において5’−AGTTACTCTTCCATGACTTCAGTTAATTCTGCAGAA3’(SEQ ID NO:54)であり、3’方向において5’−AGTTACTCTTCTTTACAATGGGTGCACACGGCTTTT3’(SEQ ID NO:55)であった。pBS+AAVCapへのプライマーを用いてAAV2のVp3周囲を増幅した。プライマーは5’方向において5’− AGTTACTCTTCTTAATCGTGGACTTACCGTGGATAC3’(SEQ ID NO:56)であり、3’方向において5’−AGTTACTCTTCCCATCGTATTAGTTCCCAGACCAGA3(SEQ ID NO:57)であった。各プライマーの5’末端からの6つのヌクレオチドはEam1104 I部位であり、この部位はこの場合にその認識部位から下流を消化し、重複部位はATGとそのコンプリメント及びTAAとそのコンプリメントである。このサイズはシームレスクローニング法(Stratgene)時に利用された。Eam1104−I及びクローニングによるB19−Vp2及びAAV2PCRの消化により、AAV2 Vp3で置換されたB19のVp2を有するpBS+AAVCapのサブクローンが得られた。このベクターをHind IIIで消化し、クローン化してpAAV−Adへ戻し、配向を測定してpAAV/B19−Adを得た(付録3;SEQ ID NO:3)。この配列はAAV Vp1領域をコード化(nt1で開始)した後、AAV2 vp2領域(nt412で開始)、及びB19 Vp2領域(nt607で開始)をコード化した。
【0267】
実施例22
キメラウイルスの製造
pAAV/B19ヘルパー作成物を実施例1に記載した一時的なパッケージング系において用いた。簡単に言えば、ヘルパープラスミドAd及びぱB11(CMV早期プロモーターの制御下AAV末端反復及びβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有)をリン酸カリウムにより293細胞へ同時形質移入した。形質移入の24時間後、培地を変更し、アデノウィルスdl309(MOI−5)を添加した。48時間後に細胞を遠心分離して上清を捨てた。細胞ペレットのフラクションをHIRTアッセイで用いた。細胞ペレットを塩化セシウム(1.39g/ml)中で溶解し、超音波処理し、41,000rpm下72時間遠心分離した。セシウム勾配からのフラクションを回収し、各々の試料をドットブロットハイブリッド形成に用いてウイルスの粒子数を試験した。ドットブロットをβ−ガラクトシダーゼ遺伝子でプローブし、対照量のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子により粒子数を測定した。ウイルスを含有するピークフラクションをPBS、20%グリセロールに対して透析した。
【0268】
実施例23
キメラウイルスとの細胞の感染
形質移入後48時間に、細胞ライセートを生成し、各種標的細胞への形質移入について試験した。2x10の形質移入力価を生成した。各種量のウイルスを少量の倍地中の293、RT−2ラット神経膠腫、U87神経膠腫のほか、2つの原発性ヒトグリア芽細胞腫細胞系に添加した。エリスロポエチン(EPO)の存在下数種間インキュべートしてあったUT7巨核球にもウイルスを添加した。EPOへのUT7細胞の曝露は、これらの細胞にB19感染に対して許容的にさせることが知られている。
【0269】
アデノウィルスも5のMOIで細胞に添加した。感染の2時間後、ウイルスを洗浄して新鮮培地を添加した。感染後24時間に細胞をPBSで洗浄し、ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド中に固定し、X−galで染色した。12乃至24時間後にブルーの細胞数を10野をカウントすることで測定した。
【0270】
形質導入を神経膠腫及び原発性ヒトグリア芽細胞腫細胞系において得られた。効率的な形質導入は293細胞(典型的にAAVで感染した細胞)では観察されなかった。興味深いことに、UT7細胞で形質導入が確認された。これらの結果は、キメラが未変性のAAV向性を失い、赤血球に対するB19向性を獲得したことを示している。このウイルスを特徴づけ、AAV血清型と関連した抗原特性を保持しているかどうかを判定した。
【0271】
このキメラウイルスのB19グロボサイド結合領域(Vp2ユニットのアミノ酸339〜406のループ4:Brownら(1993)Science 262:114)は欠失し、改変され、又は交換されて赤血球に対するB19向性を縮小又は完全に除去する。
【0272】
実施例24
B19/AAVキメラの特徴づけ
実施例23の結果は、形質移入キメラウイルスが有効に生成されたことを示している。キメラウイルスをさらに総粒子収量及び完全性について評価した。ベクター標本の残りを勾配精製し、キメラウイルスをドットブロット分析で分析し、1x10の粒子力価を測定、EM分析(実施例6を参照)で正確な正二十面体の構造が形成されているかどうかを判定した(図9)。この分析より、生成されたキメラウイルスが典型的なパルボウイルス構造を保持し、超音波処理やCsCl勾配遠心分離など物理的な精製ステップに対して安定であることが確認された。これはほとんどのパルボウイルスが熱安定(65度まで耐性)であり、洗剤(0.5%SDS)に対して耐性であり、極度なpH変化(pH2.0〜11で変動)に耐えることができるため重要な所見である。
【0273】
また、EM分析では意外な結果が得られた(図9)。2種類のサイズのビリオン粒子が観察された(23〜28nm粒子、wtAAVに典型的、33〜38nm粒子、これまで確認されず)。さらなる分析では、粒子が33〜38nmのAAVがT=1からT=3への三角数を変更することで形成され、60の代わりに主要キャプシド成分の180コピーを含有する大粒子を産生することを示している。このような驚くべき結果は、wtAAVより大きな構造のビリオンが生成されたことを示している。このビリオンはwtベクターよりも大きなテンプレートを保有する可能性があるとみられる。大きな33〜38nm粒子は6kb範囲を上回るパッケージング限界の増大に有用であろう(B19の25nm粒子は6kbのDNAをパッケージングする)。
【0274】
実施例25
B19/AAV−キメラのパッケージング能
実施例21からのキメラウイルスのパッケージング能を定量化するために、Dongと共同研究者(1996)Human Gene Therapy 7:2101により開発された一連のベクターを、745乃至1811塩基(最大総ゲノムサイズ6.4kb)に挿入を有するサイズを連続的に増大したゲノムが利用される。小規模生産のキメラ組換えウイルスを用いて、Hirtアッセイを用いたウイルスのDNA含量を試験するとともに、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーターアッセイによりパッケージング効率を検定した。
【0275】
実施例26
他のB19/AAVキメラの構成
他のキメラB19/AAVキャプシドが実施例21におけるように生成され(例えば、AAV Vp1又はVp2をB19 Vp1で交換)、上記の実施例22〜25の通り特徴づけられる。特に、B19 Vp1とVp2はAAV Vp1キメラへ置換され、AAV Vp1及びB19 Vp1とVp2を含有する新規なキメラキャプシドを生成する。
【0276】
これらのキメラは293(典型的にAAVにより感染)及び赤血球(典型的にB19により感染される細胞型)において形質導入の効率について検定され、上述した通りサイズを増大した挿入を有する組換えAAVベクターのパッケージングについて検定される。
【0277】
必要に応じて、これらのベクターのB19グロボサイド結合領域(アミノ酸399〜406のVp2のループ4;Brownら、(1993)Science 262:114)を欠失し、改変又は交換してB19向性を除去することができる。
【0278】
実施例27
AAV血清型間のループ交換
ヘルパーベクターpACG2におけるAAV2のキャプシド遺伝子wp酵素Asp718及びBsi Wlで消化した。Bsi Wlは位置3254bpでのAAV2ゲノムの独得な部位を有し、Asp718は1906及び4158bps(AAV配列数)で2回消化する。AAV2のキャプシドコード領域は部分的にAsp718で消化され、全長(単一切断)断片を分離した。次いでこの断片をBsi Wlで消化し、7272bp断片を分離した。この断片は、VP3ループ2、3、及び4領域のコード領域を含む904bp断片を除去した。
【0279】
AAV4のキャプシドをAsp718及びBsi Wlで消化して完了し、3284bp(BsiWl)乃至4212bps(Asp718)の928bpwp分離した(AAV4配列数)。このAAV4断片はループ2、3及び4を含むVP3における領域をコードする。928bpのAAV4断片及びpACG2からの727bp断片を連結し、クローンを確認した。
【0280】
これらのクローンを用いて、大部分はAAV2及びAAV4のV3領域の部分を含むキメラウイルスを作成した。このウイルスはブルー染色細胞(LacZマーカー遺伝子を発現するウイルス感染細胞)により判定されるHeLa細胞に感染することはなかった。しかし、AAV4のように、これらの細胞は、1x10形質移入単位/mlの低力価でCOS7細胞に感染した。これらのビリオンは、AAV2モノクロナール抗体B1により認識されなかった。
【0281】
AAV2のVp3ループ2〜4がAAV4キャプシドの相同性領域へ置換されたキメラウイルスも作成された。
【0282】
VP3ループ2〜4領域を含有するAAV3キャプシドコード領域を、AAV2/4ループ交換について上述した同じやり方でpACG2へクローン化した。これらのキメラAAV2/3ビリオンはへパリンアガロースと結合し、HeLa及び293細胞に感染する。さらに、これらのビリオンはB1モノクロナール抗体により認識される。
【0283】
同様に、上で開示した方法を用いて、AAV5のVp3ループ2〜4をAAV2のループ2〜4で置換した。
【0284】
さらに、単一ループ(例えば、ループ2、3又は4、もしくはループ2〜3又は3〜4)をAAV3、4又は5からAAV2又はその逆に置換した。
【0285】
これらの変異体ウイルスベクターは、実施例4〜7に記載したように、ビリオン形成、形態、ゲノム保護、へパリン結合、及び感染力について特徴づけられる。
【0286】
キメラAAV2/3キャプシドをコード化する代表的なヘルパープラスミドを付録5(SEQ ID:5)に示す。この配列はAAV2repコード配列を含有し、AAV2キャプシドコード配列のほとんどは、AAV2/Vp3からのループ2〜4が対応するAAV3からの領域で置換されたことを除き、pBluescriptバックボーンにある。Rep68/78コード配列はnu251で開始し、Rep52/40コード配列はnu923で開始する。Rep78/52の終止シグナルはnu2114で終わり、Rep68/40の終止はnu2180である。キャプシドコード配列はnu2133で開始し、終末はnu4315(Vp1はnu2133で開始し、Vp2はnu2544で開始し、Vp3は2739で開始する)。
【0287】
簡単に言えば、AAV2(pACG2)及びAAVヘルパープラスミドは、Bsi Wl及びAsp718で消化される。AAV3ゲノムでは、同じ消化がnu3261〜4168からの907bpを除去する。この904bp断片は欠失AAV2ヘルパーに連結され、SEQ ID NO:5(プラスミドのnu3184〜4092でのAAV3配列)に示したヘルパーとなる。
【0288】
実施例28
ハイブリッドウイルス
プライマーを作り、AAV2におけるHind III部位を重複するAAV4rep遺伝子における独得なHind III部位を作成した。また、repコード配列の3’末端で、独得なNotI部位がポリアデニル化部位の3’末端で作成された。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入したウイルスをPCRのテンプレートとした。
【0289】
Xba I部位からHind III部位へのAAV2rep遺伝子の5’部分をpBluescriptへサブクローニングした。次いでHind III−Not I PCR消化産物をNot I及びHind IIIで消化した5’rep遺伝子を含有するpBluescriptクローン化した。
【0290】
プライマー:
AAV 3’Not Iプライマー(SEQ ID NO:58):
5’−AAG CGC CGC GGC CGC TGC TTA TGT ACG CA−3’
AAV 5’Hind IIIプライマー(SEQ ID NO:59):
5’−GAC GCG GAA GCT TCG GTG GAC TAC GCG −3’
このクローニング法により、AAV2及びAAV4rep遺伝子のハイブリッドであり、AAV4cap遺伝子を含有するヘルパープラスミドが得られる。このヘルパーはHind III部位までAAV2rep遺伝子及びここから配列がAAV4から由来するポリアデニル化部位を含む。
【0291】
このウイルスはAAV2ITRとともに組換えAAV2ゲノムをパッケージングした。このハイブリッドAAV2/4ウイルスはAAV4の結合特性を示し、例えば、これはHSとは結合せず、AAV2形質導入に対して典型的に許容的ではないAAV4標的細胞を形質導入する。
【0292】
ハイブリッドAAV2/4ヘルパープラスミドを付録1(SEQ ID NO:1)に示す。この配列はAAV2rep遺伝子をコード化し、AAV4キャプシドはpBluescriptバックボーンにある。Rep68/78コード配列はnu251で開始し、Rep52/40コード配列はnu923で開始する。repコード配列は、Rep78/52ではnu2120で終わり、Rep68/40ではnu2183で終わる。Capコード領域はnu2123で開始し、nu4341で終わる(Vp1はnu2133で開始し、Vp2はnu2547で開始し、Vp3は2727で開始する)。
【0293】
同じ方法を用いて、組換えAAV2ゲノム(AAV2 ITRとともに)がパッケージングされているハイブリッドAAV2/3。こうして得られるハイブリッドウイルスは生存可能であり、AAV3許容的細胞を効率的に形質導入する。
【0294】
また、最近の報告(Chioroniら、1999)J. Virology 73:1309)とは対照的に、上述した方法を用いて、組換えAAV2ゲノム(AAV2 ITRとともに)AAV5型キャプシドへパッケージングされているハイブリッドAAV2/5を生成した。このウイルスは比較的非効率的にパッケージングされるが、結果として得られる粒子は細胞の形質導入を示した。
【0295】
上述の発明は、明快さ及び理解を目的とした説明及び実施例によりかなり詳細に述べられているが、一部の変更や修正が付属のクレーム及びその等価物の範囲内で実施されうることはあきらかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;及び
(b)該AAVキャプシドとは血清型が異なっていることを条件として、該AAVキャプシド内にパッケージングされるAAVゲノム
を含むハイブリッドウイルス粒子。
【請求項2】
前記AAVゲノムが少なくとも1つのAAV逆方向末端反復を含む、請求項1のウイルス粒子。
【請求項3】
前記AAVゲノムが少なくとも1つの異種核酸配列を含む、請求項1又は請求項2のウイルス粒子。
【請求項4】
前記少なくとも1つの異種核酸配列がペプチド又はタンパク質をコード化する、請求項3のウイルス粒子。
【請求項5】
前記ペプチド又はタンパク質が治療的タンパク質又はペプチドである、請求項4のウイルス粒子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの異種核酸配列が、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子、ジストロフィン、ミニジストロフィン、ウトロフィン、IX因子を含む凝固因子、エリトロポエチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバモイラーゼ、β−グロビン、α−グロビン、スペクトリン、α−アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼ、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、ホルモン、成長因子、β−インターフェロンを含むサイトカイン、自殺遺伝子生成物腫瘍抑制遺伝子生成物からなる群より選択される治療的タンパク質又はペプチドをコード化する、請求項5のウイルス粒子。
【請求項7】
前記ペプチド又はタンパク質が免疫原性ペプチド又はタンパク質である、請求項4のウイルス粒子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの異種核酸配列が非翻訳RNAをコード化する、請求項3のウイルス粒子。
【請求項9】
前記AAVゲノムがAAV血清型1、2、3、4、5及び6からなる群より選択されるAAVから由来する、請求項1−8のいずれかのウイルス粒子。
【請求項10】
前記AAVキャプシドがAAV血清型1、2、3、4、5及び6からなる群より選択されるAAVから由来する、請求項1−9のいずれかのウイルス粒子。
【請求項11】
薬学的に許容される担体における請求項1−10のいずれかのウイルス粒子を含む医薬組成物。
【請求項12】
以下の群:嚢胞性線維症、血友病A、血友病B、サラセミア、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン氏病、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、癌、真性糖尿病、筋ジストロフィー、ゴーシュ病、フルラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、糖原貯蔵症、及び網膜変性疾患から選択される疾患の治療のための医薬品の製造のための請求項1−10のいずれかに記載のウイルス粒子の使用。
【請求項13】
ワクチン組成物としての請求項7に記載のウイルス粒子。
【請求項14】
請求項1のハイブリッドウイルス粒子を製造するための分離核酸であって、前記分離核酸が、前記AAVcap遺伝子と前記AAVrep遺伝子とは血清型が異なることを条件として、AAVcap遺伝子及びAAVrep遺伝子を含む、分離核酸。
【請求項15】
前記AAVcap遺伝子が操作可能に標準AAVポロモーターと随伴している、請求項14の分離核酸。
【請求項16】
請求項14又は請求項15の分離核酸を含むベクター。
【請求項17】
請求項16のベクターを含む細胞。
【請求項18】
請求項14又は請求項15の分離核酸を含む細胞であって、当該分離核酸が当該細胞のゲノムへ安定に組み込まれることを特徴とする細胞。
【請求項19】
ハイブリッドウイルス粒子を製造する方法であって、
増殖性AAV感染を生成するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)rep遺伝子、AAVcap遺伝子、AAVゲノム、及びヘルパー機能を、前記AAVrep遺伝子及び前記AAVcap遺伝子の血清型が異なることを条件として、細胞に供給し;
ハイブリッドウイルス粒子の集合を可能にすることを含む方法。
【請求項20】
細胞に核酸配列を送達するインビトロの方法であって、
請求項3−8のいずれかに記載のハイブリッドウイルス粒子又は請求項11に記載の医薬組成物を細胞へ導入することを含む方法。
【請求項21】
細胞が神経細胞、肺細胞、網膜細胞、上皮細胞、筋細胞、膵細胞、肝細胞、心筋細胞、骨細胞、脾細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、胚細胞、前駆細胞、及び幹細胞からなる群より選択される、請求項20の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−67212(P2011−67212A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250648(P2010−250648)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【分割の表示】特願2000−581171(P2000−581171)の分割
【原出願日】平成11年11月10日(1999.11.10)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【Fターム(参考)】