説明

ハイブリッド光ディスクの再生装置、再生方法及び再生プログラム

【課題】再生中の記録層が、何らかのトラブルによって読み取れなくなった場合であっても、他の記録層における対応箇所から継続して読み取りができる。
【解決手段】DVD層とBD層の記録層を有するハイブリッド光ディスク1を再生するために、各記録層からの情報を読み取る光ヘッド2を有する。光ヘッド2によるBD層からの情報の読み取り中に、再生に関する異常を検出する異常検出部12と、異常検出部12によって異常が検出された場合に、DVD層において、異常と判定された箇所に対応する箇所を、光ヘッド2による読み取り対象として選択させる選択制御部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録層を有するハイブリッド光ディスクの再生装置、再生方法及び再生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、映像記録用の光ディスクとして広く普及しているのは、DVD(Digital Versatile Disc)である。ただし、最近では、大画面、高画質の表示装置の普及とともに、そこに表示される映像の記録用として、大容量のBD(Blu-ray Disc:登録商標)の需要が増してきている。このような状況の下、一般的なBDの再生装置は、既存のDVDの再生も可能に構成されている。
【0003】
さらに、一枚のディスクに、BDとDVDという物理フォーマットの異なる記録層を有するハイブリッド光ディスクが開発されている(特許文献1参照)。これに対応して、かかるハイブリッド光ディスクに記録されたBD層およびDVD層を選択して再生可能な再生装置も登場している。
【0004】
このようなハイブリッド光ディスクの利用方法の一例は、次の通りである。すなわち、高密度記録層であるBD層に、HD(High Definition)ビデオ品質の映像を記録する。一方、DVD層には、SD(Standard Definition)ビデオ品質の映像を記録する。すると、かかるハイブリッド光ディスクの映像を視聴するユーザは、自己が使用する表示装置の性能に応じて、ビデオ品質の選択を行いながら再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−172574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光ディスクを記録再生する装置は、光ヘッド(光ピックアップ)を搭載している。光ヘッドは、光ディスクに記録された信号を読み取る際に、レーザ光による光スポットを光ディスクの記録面に照射し、その反射光を電気信号に変換して出力する機能を有する。かかる光ヘッドによる読み取りの原理は、BDもDVDも同様である。
【0007】
ただし、BDは、DVDよりも大容量の記録を実現するために、光スポットの面積が非常に小さい。これは、BDの光ヘッドが、レーザ光の波長の短い光源を用い、開口数NAの高いレンズを使用していることによる。このように、レーザ光の波長が短く、光スポット径が小さいと、射程距離が短くなる。このため、BDの記録層は、DVDの記録層よりも光ディスクの表面に近い位置に設定されている。
【0008】
ところが、記録層が光ディスク表面に近いと、光ディスクの表面の傷、汚れ、埃等の影響を受けやすくなる。例えば、表面の傷等が存在すると、読み取り不能による再生中断等のトラブルが発生する可能性が高い。かかる場合、ユーザは、通常、中断箇所から視聴を再開したいと考える。そのためには、ユーザ自身が、リモコン等の入力装置を用いて、既に視聴済みの部分からスキップさせて行き、中断箇所までアクセスさせなければならなかった。
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、再生中の記録層が、何らかの原因で再生できなくなった場合であっても、他の記録層における対応箇所から継続して再生できるハイブリッド光ディスク装置及びその再生方法、再生プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも二層の記録層を有する光ディスクを再生するために、前記記録層からの情報を読み取る読取部を有するハイブリッド光ディスクの再生装置において、前記読取部によるいずれか一の記録層からの情報の読み取り中に、再生に関する異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部によって異常が検出された場合に、他のいずれか一の記録層において、前記異常と判定された箇所に対応する箇所を、前記読取部による読み取り対象として選択させる選択制御部と、を有することを特徴とする。なお、本発明は、ハイブリッド光ディスクの再生方法の観点からも、再生プログラムの観点からも捉えることができる。
【0011】
以上のような発明では、いずれか一の記録層を再生中に、再生の異常が発生した場合に、ユーザの入力操作等がなくても、他のいずれか一の記録層における対応箇所の再生に切り替わり、再生を継続できる。
【0012】
他の態様は、前記選択制御部は、いずれか一の記録層の再生箇所に関する情報を記憶する再生箇所記憶部と、前記再生箇所に関する情報に基づいて、他のいずれか一の記録層において、異常と判定された箇所に対応する箇所を探索する探索部と、前記探索部により探索された箇所を、前記読取部による読み取り箇所として指示する再生箇所指示部と、を有することを特徴とする。
【0013】
以上のような態様では、異常が発生した時の記録層の再生箇所に基づいて、他のいずれか一の記録層の対応箇所を探索して、読み取り箇所とするので、中断位置若しくはこれに近似した位置から継続再生できる。
【0014】
他の態様は、前記複数の記録層は、記録密度及び変調方式の異なる記録層を含むことを特徴とする。
以上のような態様では、光ディスクの状態の影響を受けやすい記録層を再生している場合に、再生に異常が発生しても、より影響を受けくい他の記録層によって、継続再生できる。
【0015】
他の態様は、前記異常検出部は、前記読取部が読み取った信号のレベルに基づいて、異常を検出することを特徴とする。
他の態様は、前記異常検出部は、前記読取部による読み取りのエラーに基づいて、異常を検出することを特徴とする。
以上のような態様では、再生の不能による異常を正確に判定できる。
【0016】
他の態様は、前記探索部の探索のために、前記複数の記録層に対応する管理情報を記憶する管理情報記憶部を有することを特徴とする。
以上のような態様では、光ディスクの管理情報に基づいて、中断位置及び継続再生位置を決定できる。
【0017】
他の態様は、前記管理情報は、タイトル情報及びチャプター情報を含むことを特徴とする。
以上のような態様では、タイトル情報及びチャプター情報に基づいて、中断位置及び継続再生位置を簡易且つ迅速に決定できる。
【0018】
他の態様は、前記管理情報は、再生時間に関する情報を含むことを特徴とする。
以上のような態様では、再生時間に基づいて、中断位置及び継続再生位置を正確に決定できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、再生中の記録層が、何らかの原因で再生できなくなった場合であっても、他の記録層における対応箇所から継続して再生できるハイブリッド光ディスク装置及びその再生方法、再生プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ハイブリッド光ディスクの記録層の構造の一例を示す説明図である。
【図2】図1の各記録層におけるタイトルのチャプター構成の一例を示す説明図である。
【図3】本発明のハイブリッド光ディスク再生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】図1の実施形態におけるディスク再生処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態(以下、実施形態とする)について、図面を参照して具体的に説明する。
[1.ハイブリッド光ディスク]
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に用いられるハイブリッド光ディスク(以下、光ディスク1とする)について説明する。この光ディスク1は、記録密度及び変調方式の異なる二種の記録層(BD層R1、DVD層R2)を有している。光ディスク1は、一方の表面からレーザ光を照射することで、各記録層R1、R2へのアクセスが可能となっている。なお、上述の通り、BD層R1の方が、光ディスク1の表面に近くなっている。
【0022】
図1は、各記録層R1、R2に記録されたコンテンツ毎のタイトル構成を示している。タイトルは、各記録層R1、R2に一つ若しくは複数存在する。図3は、各記録層R1、R2のタイトル内を区分するチャプター構成を示す説明図である。チャプターは、各タイトルに一つ若しくは複数存在する。
【0023】
BD層R1には、主に、HDビデオ品質のコンテンツが記録されている。DVD層R2には、主に、SDビデオ品質のコンテンツが記録されている。両記録層R1、R2のコンテンツの内容は同等である。つまり、各記録層R1、R2における各タイトルナンバー、タイトルに存在するチャプター等は同一となっている。
【0024】
BD層R1のディスクフォーマットは、例えば、トラックピッチ0.34μm、1−7PP変調方式を採用し、25GBの記録容量を実現することが規格により規定されている。
【0025】
DVD層R2のディスクフォーマットは、例えば、トラックピッチ0.74μm、EFM+変調方式を採用し、一層で4.7GB、2層構成で8.5GBの記憶容量を実現している。
【0026】
また、図示はしないが、光ディスクには、BD層R1、DVD層R2に対応する管理情報が記録されている。この管理情報としては、例えば、タイトル情報や、チャプター情報等が含まれる。タイトル情報には、例えば、タイトル数、タイトルナンバー等が含まれる。チャプター情報には、例えば、チャプター数、チャプターナンバー、チャプターを構成するセルの再生時間等が含まれる。
【0027】
これらの管理情報のフォーマットには、例えば、ビデオ管理情報(VMGI:Video Manager Information)、ビデオタイトルセット情報(VTSI:Video Title Set Information)等が存在する。VMGIには、タイトルサーチポインタテーブルが存在し、これに基づいて、タイトルナンバー、チャプターナンバーを探索できる。
【0028】
[2.構成]
次に、本実施形態の構成を、図3のブロック図を参照して説明する。すなわち、本実施形態は、光ディスクの回転機構(図示せず)、光ヘッド2、制御装置3、音声データ出力部4、映像データ出力部5、入力部6等を有している。
【0029】
[2−1.回転機構]
回転機構は、図示はしないが、光ディスク1を回転させるための機構である。典型的な回転機構とてしては、例えば、ターンテーブル及びスピンドルモータがある。ターンテーブルは、再生する光ディスク1を支持するテーブルである。スピンドルモータは、光ディスクを支持したターンテーブルを回転させるモータである。なお、上記は例示であり、光ディスク1を支持して回転できる機構であれば、一般的に普及しているものを含めて、現在又は将来において利用可能なあらゆる構造のものを適用可能である。
【0030】
[2−2.光ヘッド]
光ヘッド2は、光ディスク1の情報を光学的に読み取るための読取部である。この光ヘッド2は、例えば、対物レンズ、アクチュエータ、BDレーザ光源、DVDレーザ光源、光学素子部、光検出器等を有している(図示せず)。また、光ヘッド2は、スレッドモータを駆動源とする送り機構(図示せず)によって、光ディスク1の半径方向に移動可能に設けられている。
【0031】
対物レンズは、光ディスク1にレーザ光を集光するレンズである。アクチュエータは、対物レンズを支持する部材に構成され、対物レンズを電磁的に駆動するためのコイル及び磁石等であり、例えば、駆動電圧によって対物レンズをトラッキング方向及びフォーカス方向の2方向に駆動する2軸アクチュエータが考えられる。
【0032】
BDレーザ光源、DVDレーザ光源は、BD及びDVDの信号の検出用のレーザ光を出力するレーザダイオードである(照射部)。光学素子部は、ビームスプリッタ、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ等により構成されている。
【0033】
ビームスプリッタは、BDレーザ光源、DVDレーザ光源からのレーザ光を、それぞれコリメータレンズを介して対物レンズに導くとともに、光ディスク1からの反射光をシリンドリカルレンズを介して光検出器に導く分光器である。光検出器は、光ディスク1からの反射光を電気信号に変換するフォトダイオードである。
【0034】
上記のような光ヘッド2は、レーザ波長λと対物レンズの開口数NAの切り替え、DVDの記録層及びBDの記録層へのアクセス、記録ピット(マーク)の読み取り等を行うことができる。
【0035】
例えば、BD層R1の記録ピット(マーク)に対しては、開口数NA=0.85の対物レンズによって、BDレーザ光源から波長λ=405nm(青紫)のレーザ光を照射し、反射光から再生信号を得る。DVD層R2の記録ピットに対しては、開口数NA=0.60の対物レンズによって、DVDレーザ光源から波長λ=650mm(赤色)のレーザ光を照射し、反射光から再生信号を得る。
【0036】
なお、上記は例示であり、光ヘッド2及び送り機構の構造は、一般的に普及しているものを含めて、現在又は将来において利用可能なあらゆる構造のものを適用可能である。
【0037】
[2−3.制御装置]
制御装置3は、上記の回転機構、光ヘッド2及び送り機構の駆動と、読み取り信号の処理を行う制御部である。この制御装置3は、プリアンプ7、データ復調部8A、8B、選択器9、バッファメモリ10、復号器11、異常検出部12、選択制御部13、駆動制御部14、記憶部15等を有している。
【0038】
プリアンプ7は、記録ピットの読み取り信号に対し、帯域制限、増幅等を行う処理部(増幅部)である。データ復調部8A、8Bは、各記録層からの読み取り信号に対する変調方式に従い、復調処理を行う処理部である。データ復調部8Aは、DVDの変調方式に対する復調処理を行う。データ復調部8Bは、BDの変調方式に対する復調処理を行う。
【0039】
選択器9は、再生すべきデータとして、各データ復調部8A,8Bから得られる復調データのうち、いずれか一方を選択する処理部である。バッファメモリ10は、選択後の復調データを一時的に蓄積する記憶部である。復号器11は、蓄積されたビデオ、オーディオデータに対して、復号処理(デコード)を行う処理部である。
【0040】
異常検出部12は、光ディスク1の再生に関する異常を検出する処理部である。異常とは、正常に再生ができない状況を広く含む。その検出方法としては、例えば、次のような場合が考えられる。ただし、これらの手法は例示であり、異常を検出するための周知のあらゆる手法が適用可能である。
【0041】
・光ヘッド2からの信号(例えば、RF信号)のレベルが、所定のしきい値若しくは所定の範囲を超えた場合
・サーボエラーとなった場合
・エラーレート(読み取りエラーの発生率)が、所定のしきい値以上となった場合
・トラブルにより復調データが得られずに、バッファメモリ10のバッファ残量が、所定のしきい値以下若しくは0になった場合
・復調データが得られずに、所定の時間が経過した場合
・誤り訂正が不可能となった場合
【0042】
選択制御部13は、記録層において、異常検出部12により異常が検出された場合に、切り替えるべき記録層を選択する制御部である。この選択制御部13は、管理情報記憶部131、再生箇所記憶部132、切替指示部133、探索部134、再生箇所指示部135等を有している。
【0043】
管理情報記憶部131は、再生開始前若しくは記録層の切り換え前に、記録層の管理情報を記憶する記憶部である。再生箇所記憶部132は、異常検出部12によって異常が検出された時の再生箇所を記憶する記憶部である。探索部133は、異常が検出された記録層の再生箇所と、他方の記録層の管理情報とに基づいて、他方の記録層における対応箇所を探索する処理部である。
【0044】
再生箇所指示部134は、探索部133による探索結果に基づいて、切り替える記録層として、他の記録層における対応箇所を指示する処理部である。切替指示部135は、選択器9に、再生すべき記録層の切り替えを指示する処理部である。
【0045】
なお、選択制御部13は、システムコントローラ等、装置全体の制御を行う制御部の機能の一部として構成される。この制御部は、光ディスクの再生に必要な基本的機能を制御する。例えば、駆動制御部14に指示を与えることによるスピンドルモータの回転制御、光ヘッド2のアクセス制御、各種サーボ制御等の駆動系の制御、読み取り信号の誤り訂正等の信号処理系の制御を行う機能を有している。ただし、これらは周知技術であるため、説明は省略する。
【0046】
駆動制御部14は、回転機構、光ヘッド2及び送り機構の駆動を制御する処理部である。この駆動制御部14は、上述の各レーザ光源の発光、各モータの駆動等を制御することにより、光ヘッド2の再生目的位置へのアクセス及びサーボ等を実現する。
【0047】
記憶部15は、本実施形態の処理に必要な種々の情報を記憶する記憶部である。例えば、異常検出部12が異常を検出するための基準となるしきい値、時間等の各種設定を記憶することができる。
【0048】
なお、制御装置3は、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。従って、以下に説明する手順で本装置の動作を制御するためのコンピュータプログラム及びこれを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0049】
また、バッファメモリ10、管理情報記憶部131、再生箇所記憶部132、記憶部15等は、コンピュータを構成する各種の記憶媒体により実現可能である。記憶媒体としては、典型的には、内蔵された若しくは外部接続された各種メモリ、ハードディスク等により構成できるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を利用可能である。記憶媒体におけるどの記憶領域を活用して実現するかも自由である。
【0050】
[2−4.音声データ出力部]
音声データ出力部4は、復号部8によって復号された音声データを出力する出力装置である。例えば、スピーカ、ヘッドフォン、イヤフォン等、現在又は将来において利用可能なあらゆる音声出力装置が含まれる。なお、音声として出力するための、DA変換、音量音質調整等の処理部については、周知の技術であるため、説明を省略する。
【0051】
[2−5.映像データ出力部]
映像データ出力部5は、復号部8によって復号化された映像データを出力する出力装置である。例えば、LCD、CRT、PDP、有機EL、DLP等、現在又は将来において利用可能なあらゆる表示装置が含まれる。なお、映像として出力するための、描画、画質調整等の処理部については、周知の技術であるため、説明を省略する。
【0052】
[2−6.入力部]
入力部6は、本実施形態に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する入力装置である。この入力部6としては、例えば、リモコンや本体に組み込まれたスイッチの他、キーボード、マウス、タッチパネル(表示装置に構成されたものを含む)等が考えられる。ただし、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力装置を含む。
【0053】
[3.作用]
以上のような構成を有する本実施形態によるディスク再生処理の手順を、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態は、通常のディスク再生装置と同様に、BD層R1、DVD層R2を自動的に判別して再生する機能を有している。
【0054】
また、ハイブリッド光ディスク1の再生の場合には、BD層R1を優先的に判別して再生するように設定されている。これらの判別機能は、周知技術であるため、説明を省略する。以下の説明では、どのような設計や設定を前提としているかを問わず、BD層R1の再生を開始した後、異常が発生した場合に、DVD層R2に切り替える場合を説明する。
【0055】
まず、光ディスク1の再生処理を開始する。すなわち、光ディスク1がディスク装置に挿入されると、ローディング機構等によって再生位置に導かれて、ターンテーブル上に支持される。ターンテーブルが回転し、光ヘッド2が読み取り位置へ移動することにより、BD層R1の信号の再生が開始する(ステップ11)。
【0056】
なお、再生開始前に、光ヘッド2によって、BD層及びDVD層の管理情報が読み込まれて、管理情報記憶部131に記憶される。ただし、DVDの管理情報の読み込みは、異常検出時に、探索部133による探索の前に行ってもよい。つまり、異常検出時、切替指示部135が記録層の切り替えを選択器に指示し、光ヘッド2が読み込んだ管理情報を、管理情報記憶部131が記憶するようにしてもよい。
【0057】
入力部6からの終了指示がなく(ステップ12のNO)、異常が発生しなければ、再生は継続する(ステップ13のNO、ステップ11)。異常が発生した場合、これを異常検出部12が検出する(ステップ13のYES)。異常は、例えば、光ディスク1の表面の傷、汚れ、埃等のように、何らかの原因により、BD層R1の信号の読み取りができなくなった場合である。
【0058】
すると、再生箇所記憶部132は、異常検出部12によって異常と検出された再生箇所に関する情報を記憶する(ステップ14)。再生箇所に関する情報とは、例えば、中断した箇所のタイトル、チャプターナンバー、チャプター数、再生時間等がある。なお、入力部6からの変更指示により、再生する記録層を変更した場合にも、再生箇所記憶部132は、中断箇所を記憶する。
【0059】
探索部133は、再生箇所記憶部132に記憶された再生箇所に関する情報と、管理情報記憶部131に記憶されたDVD層R2の再生管理情報とに基づいて、BD層R1の中断箇所に対応するDVD層R2の箇所を探索する(ステップ15)。例えば、探索部133が、ビデオ管理情報(VMGI:Video Manager Information)内のタイトルサーチポインタテーブルを読み出して、該当箇所のタイトルナンバーとチャプターナンバーを探索する。
【0060】
なお、探索部133は、より正確に中断箇所に一致する箇所を探索してもよい。例えば、該当するタイトルのチャプター数と各チャプターの再生時間から、チャプター数が同数で総再生時間が一致する箇所若しくは最もチャプター数が近く総再生時間が一致する箇所を探索してもよい。総再生時間は、例えば、再生済の各チャプターの再生時間の合計+再生中のチャプターの再生時間から求めることができるが、この方法には限定されない。対応するチャプターの再生時間のみから、一致する箇所を探索してもよい。
【0061】
そして、再生箇所指示部134は、光ヘッド2によるアクセス位置として、探索部133よって探索された位置を指示する(ステップ16)。また、切替指示部135は、選択器9に、DVD層R2への切り替えを指示する。これにより、光ヘッド2は、中断されたBD層R1に対応するDVD層R2のタイトルへアクセスし、該当箇所の再生を行うことができる(ステップ17)。したがって、BD層の再生を中断した位置から、DVD層で再生を継続できる。
【0062】
入力部6からの入力により、BD層R1への復帰指示が入力された場合(ステップ18)、再生箇所記憶部132による中断箇所の記憶、探索部133によるBD層R1の対応箇所の探索、再生箇所指示部134による再生箇所の指示、切替指示部135によるBD層R1への切り替え指示が行われる。このとき、異常検出部12による異常の検出がなければ、BD層R1の再生が可能であるとして(ステップ19のYES)、BD層R1の再生に復帰する(ステップ11)。
【0063】
なお、DVD層R2への切り替え後、あらかじめ記憶部15に記憶された設定時間が経過したことを、タイマに従って判定する判定部を設けることも可能である。つまり、入力部6からの入力ではなく、判定部が設定時間が経過したと判定したら、上記のBD層R1への復帰処理を行ってもよい。
【0064】
一方、再度、異常検出部12により異常が検出され、BD層R1の再生ができない場合には(ステップ19のNO)、終了指示の入力がなければ(ステップ20のNO)、DVD層R2の再生処理を行う(ステップ17)。入力部6からの終了指示の入力があった場合には(ステップ12のYES、ステップ23のYES)、光ディスク1の再生を終了する。
【0065】
なお、DVD層R2の再生箇所と同一箇所へのBD層R1への復帰処理については、必ずしもなくてもよい。つまり、入力部6からの停止指示の入力により、一旦DVD層R2の再生を停止してから、あらためてBD層R1の再生を開始させるだけでもよい。
【0066】
[4.効果]
以上のような本実施形態では、光ディスク1のBD層R1の再生が、何らかの原因により中断せざるを得ない場合であっても、DVD層R2における中断箇所に対応する位置から再生することができる。このため、ユーザは、コンテンツの全てを継続して終端まで視聴することができる。
【0067】
[5.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態には限定されない。例えば、「再生に関する異常」とは、読み取りエラー(ディスクの異常、サーボエラー、誤り訂正不能等を含む)による異常には限定されない。復調部、バッファメモリ、復号部等における処理の不具合等、当該記録層を再生できないような異常を広く含む。
【0068】
また、「再生箇所に対応する箇所」とは、異常発生まで再生していた箇所と正確に一致する箇所には限定されない。再生箇所とチャプターが共通する箇所、再生分数が一致する箇所等、一致する程度にある程度の幅があってもよい。
【0069】
上記の実施形態においては、DVD層とBD層が一層ずつの二層の場合を例示した。しかし、記録層の数及び種類(例えば、記録密度及び変調方式が異なる)は、複数であればよく、二種類、二層の場合には限定されない。例えば、同一種類の記録層を二層以上含めてもよい。さらに、その種類も、DVD層、BD層には限定されない。なお、記録層の種類に応じて、それに対応するレーザ光源も選択される。複数種の記録層について、レーザ光源を共有してもよい。
【0070】
同一内容の記録層が複数存在する場合に、そのタイトルやチャプターの配置位置を異なるものとすれば、一方の記録層の再生箇所が、光ディスクの傷、汚れ、埃等の影響を受ける位置にあっても、他方の記録層における対応する箇所は、その影響から外れ、再生を継続できる可能性を高めることができる。
【0071】
また、あらかじめ設定された値に対する判定において、しきい値を含むか否かは自由である。つまり、範囲外となる場合に、上限の値以上とするか、上限の値より大きいとするか、下限の値以下とするか、下限の値より小さいとするかは、自由である。
【0072】
さらに、本発明が適用される光ヘッドや光ディスク装置の具体的な構成、各光ディスクの判定手法、使用する光ディスクについても、上記の実施形態で例示したものには限定されず、現在又は将来において利用可能なあらゆるものが含まれる。
【0073】
例えば、再生用の光ディスク装置ばかりでなく、記録層に情報を記録する記録部を有する光ディスク装置にも適用可能である。従って、トラブル発生時の動作には、再生動作のみならず、記録動作も含まれる。つまり、記録部が、いずれか一の記録層への情報の記録中に、記録に関する異常を検出する異常検出部と、異常検出部によって異常が検出された場合に、他のいずれか一の記録層を、記録部による記録対象として選択させる選択制御部を有してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…ハイブリッド光ディスク
2…光ヘッド
3…制御装置
4…音声データ出力部
5…映像データ出力部
6…入力部
7…プリアンプ
8A、8B…データ復調部
10…バッファメモリ
11…復号部
12…異常検出部
13…選択制御部
14…駆動制御部
15…記憶部
131…管理情報記憶部
132…再生箇所記憶部
133…探索部
134…再生箇所指示部
135…切替指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二層の記録層を有する光ディスクを再生するために、前記記録層からの情報を読み取る読取部を有するハイブリッド光ディスクの再生装置において、
前記読取部によるいずれか一の記録層からの情報の読み取り中に、再生に関する異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部によって異常が検出された場合に、他のいずれか一の記録層において、前記異常と判定された箇所に対応する箇所を、前記読取部による読み取り対象として選択させる選択制御部と、
を有することを特徴とするハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項2】
前記選択制御部は、
いずれか一の記録層の再生箇所に関する情報を記憶する再生箇所記憶部と、
前記再生箇所に関する情報に基づいて、他のいずれか一の記録層において、異常と判定された箇所に対応する箇所を探索する探索部と、
前記探索部により探索された箇所を、前記読取部による読み取り箇所として指示する再生箇所指示部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項3】
前記複数の記録層は、記録密度及び変調方式の異なる記録層を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、前記読取部が読み取った信号のレベルに基づいて、異常を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、前記読取部による読み取りのエラーに基づいて、異常を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項6】
前記探索部の探索のために、前記複数の記録層に対応する管理情報を記憶する管理情報記憶部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項7】
前記管理情報は、タイトル情報及びチャプター情報を含むことを特徴とする請求項6記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項8】
前記管理情報は、再生時間に関する情報を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7記載のハイブリッド光ディスクの再生装置。
【請求項9】
光ディスクの再生装置が有する読取部が、少なくとも二層の記録層を有する光ディスクからの情報を読み取るハイブリッド光ディスクの再生方法において、
前記再生装置は、異常検出部及び選択制御部を有し、
前記異常検出部が、前記読取部によるいずれか一の記録層からの情報の読み取り中に、再生に関する異常を検出し、
前記選択制御部が、前記異常検出部によって異常が検出された場合に、他のいずれか一の記録層において、前記異常と判定された箇所に対応する箇所を、前記読取部による読み取り対象として選択させる、
ことを特徴とするハイブリッド光ディスクの再生方法。
【請求項10】
コンピュータを制御することにより、光ディスク装置が有する読取部に、少なくとも二層の記録層を有する光ディスクからの情報の読み取りを実行させるハイブリッド光ディスクの再生プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記読取部によるいずれか一の記録層からの情報の読み取り中に、再生に関する異常を検出させ、
異常が検出された場合に、他のいずれか一の記録層において、前記異常と判定された箇所に対応する箇所を、前記読取部による読み取り対象として選択させる、
ことを特徴とするハイブリッド光ディスクの再生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−69225(P2012−69225A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214244(P2010−214244)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】